【注意】発行当時の原稿をそのまま掲載しております。農薬について記載のある場合は、最新の農薬登録内容を確認し、そ れに基づいて農薬を使用して下さい。また、成果情報によっては、その後変更・廃止されたものがありますのでご注意下さい。 [成果情報名]地下水熱源式ヒートポンプシステムによる効率的な豚房温度管理技術 [要 約]地下水熱源式ヒートポンプを用いたスポット冷房や床暖房により、分娩豚房や離乳豚 房を効率的に温度管理することができる。 [部 署]山形県農業総合研究センター養豚試験場 [連 絡 先]Tel 0234-91-1255 [成 果 区 分]普 [キーワード]地下水熱源式ヒートポンプシステム、スポット冷房、床暖房 -----------------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] 繁殖豚は暑熱ストレス、子豚(哺乳豚、離乳豚)は寒冷ストレスに弱い。このことから、生産性の 向上を図るためには、分娩豚房や離乳豚房の効率的な温度管理が重要となる。今回、地下水熱源式ヒ ートポンプ(以下、 「HP」という。)を用いて効率的な温度管理システムを開発するとともに、その実 用性を検証する。 [成果の内容・特徴] 1 HP(定格能力:温水 12kw、冷水 9kw)システムは、スポット冷房及び床暖房(以下、「HP 床 暖」という。)に利用できる(図 1)。 2 スポット冷房では、豚舎内温度が 30℃の時に 4~5℃低下させる効果が期待できる(図 2) 。また、 15 豚房について、約 8 時間 30 分運転した場合の電気料金は、300 円程度(15.2kwh×@18 円/kw) である(表 1、2) 。 3 HP 床暖では、33℃程度の床上表面温度を確保することが可能で、温度ムラも小さい(表 3、図 3)。 また、24 豚房について、24 時間運転した場合の電気料金は、1,400 円程度(75.7kwh×@18 円/kw) である(表 4、表 5) 。 4 本定格能力の HP 床暖において、暖房能力を維持できる最大規模は、25 豚房である(図 4)。 5 5 豚房以上で HP 床暖はコルツヒーター(100V300W)より使用電力量が少なくなる。また、豚 房数が増える程、その効果は大きくなり、25 豚房の使用電力量を比べると HP 床暖は、コルツヒー ターの約 6 割削減が可能となる。(図 5) 6 熱量千キロカロリーあたりのコストは、HP 床暖において 7.6 円となり、コルツヒーターやガス ブルーダーに比べて、効率的な暖房が可能である(図 6)。 [成果の活用面・留意点] 1 冷暖房を行う豚房の数や位置を考慮して、HP の能力及び台数を選定する必要がある。 2 HP からスポット冷房や HP 床暖を行う場所までの距離が、冷暖房の性能に影響することに留意 する。 [具体的なデータ] HP床暖 (離乳豚用12ヶ所) 地下水 HP HP:ヒートポンプ 離乳豚房 BT:バッファタンク BT FC FC:ファンコイル PD スポット冷房 (繁殖豚用15ヶ所) 分娩豚房 PD:ポリダクト HP システムの概略 図1 ●:循環ポンプ HP床暖 (哺乳豚用12ヶ所) 表1 スポット冷房運転成績(15豚房、8h33min運転) 32.0 項 目 HP稼働時間 30.1 30.0 冷房熱量 28.0 26.0 25.7 24.0 2群間で有意差あり (P<0.01) 22.0 20.0 無処理 スポット冷房処理 図2 スポット冷房の有無と温度 表2 スポット冷房運転効率(15豚房、8h33min運転) 数量 単位 数量 単位 4.8 時間 使用電力量(HP) 項 目 8.2 kWh -39.0 kWh 使用電力量(循環ポンプ:HPとBT間) 1.5 kWh エネルギー消費効率(COP) 4.7 使用電力量(循環ポンプ:BTとFC間) 2.1 kWh システムCOP(SCOP) 2.6 使用電力量(FC) 3.4 kWh HP稼働時水道水温度 15.9 ℃ 合計使用電力量 15.2 kWh HP稼働時排水温度 21.0 ℃ 電気料金(18円/kW) 274 円 HP稼働時BTからHPへの冷温水温度 13.4 ℃ HP:ヒートポンプ、BT:バッファタンク、FC:ファンコイル HP稼働時HPからBTへの冷温水温度 10.3 ℃ HP稼働時BTからFCへの冷温水温度 13.3 ℃ HP稼働時FCからBTへの冷温水温度 16.8 ℃ 使用水量 10.6 t HP:ヒートポンプ、BT:バッファタンク、FC:ファンコイル 表3 コルツヒーターとHP床暖における保温箱内温度の比較 コルツヒーター(100V300W) SD 入口 中央 奥 AVE 床上20cm 14.0 19.1 14.9 16.0 ± 2.7 床上5cm 16.5 20.7 13.6 16.9 ± 3.6 床上表面 19.2 23.8 18.8 20.6 ± 2.8 注)保温箱内における測定位置は図3のとおり 入口 16.6 14.2 32.7 (℃) H P 床 暖 SD 中央 奥 AVE 16.3 17.4 16.8 ± 0.6 15.3 18.4 16.0 ± 2.2 33.0 33.7 33.1 ± 0.5 試験区【HP床暖】 対照区【コルツヒーター100V300W】 奥 入口 中央 35cm 入口 35cm 中央 35cm 奥 35cm ※コルツヒーターは中央部の床上40cmに設置 図3 保温箱内における測定位置 表4 HP床暖運転成績(24豚房、24時間) 項 目 数量 HP稼働時間 23.0 暖房熱量 206.6 エネルギー消費効率(COP) 3.3 システムCOP(SCOP) 2.7 HP稼働時水道水温度 13.5 HP稼働時排水温度 9.9 HP稼働時BTからHPへの冷温水温度 42.1 HP稼働時HPからBTへの冷温水温度 45.8 HP稼働時BTからYP(分娩)への冷温水温度 42.4 HP稼働時YP(分娩)からBTへの冷温水温度 39.6 HP稼働時BTからYP(高床)への冷温水温度 42.9 HP稼働時YP(高床)からBTへの冷温水温度 40.2 使用水量 37.0 HP:ヒートポンプ、BT:バッファタンク、YP:床パネル HP稼働時間(h/日) 24 単位 時間 kWh ℃ ℃ ℃ ℃ ℃ ℃ ℃ ℃ t 18 12 6 0 6 12 図4 HP床暖豚房数とHP稼働時間 18 24 25.5 (円/千kcal) 25 y = 0.7617x + 4.55 R² = 0.9515 0 表5 HP床暖運転効率(24豚房、24時間) 項 目 数量 単位 使用電力量(HP) 61.9 kWh 使用電力量(循環P:HPとBT間) 4.9 kWh 使用電力量(循環P:BTとYP(分娩)間) 4.4 kWh 使用電力量(循環P:BTとYP(高床)間) 4.5 kWh 合計使用電力量 75.7 kWh 電気料金(18円/kW) 1,363 円 HP:ヒートポンプ、P:ポンプ、BT:バッファタンク、YP:床パネル 30 豚房数 使用電力量(kWh/日) 200 180 160 140 120 100 80 分岐点 60 40 20 0 4.9 0 6 20.9 20 コルツヒーター y = 7.2x 15 11.3 10 7.6 5 HP床暖房 y = 2.0933x + 25.05 R² = 0.9437 12 18 24 豚房数 図5 コルツヒーターとHP床暖における使用電力量の比較 0 コルツヒーター ガスブルーダー HP床暖 図6 熱量(千kcal)あたりのコスト 試算条件 ・コルツヒーター:100V300W、単価18円/kwh ・ガスブルーダー:12,000kcal/ガス1kg、単価135円/LPガス1kg ・HP:SCOP2.7 、単価18円/kwh [その他] 研究課題名:ヒートポンプを用いた効率的な豚房温度管理システムの確立 予算区分:県単 研究期間:平成27年度(平成25~27年度) 研究担当者:星光雄 発表論文等:第103回日本養豚学会大会
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