空間的自己相関を考慮した 外来樹木アカギの分布予測 深澤圭太, 小池文人(横国大), 田中信行(森林総研), 大津佳代(日林協) 空間自己相関を考慮した 湿地における絶滅危惧植物の 分布予測モデル 石濱史子,小熊宏之, 武田知己, 竹中明夫(国環研) 共通キーワード: 空間自己相関 2つの発表に共通しているキーワード、空間自己相関につ いて、まず石濱から説明させていただきます。 1 野外の生き物の分布 • いる場所・いない場所が集中していることが多い • それは環境条件だけで決まるわけではない 単純な統計モデル 生育確率 = f(β草丈×草丈+誤差) 野外の生き物の分布をみると、いる場所・いない場所が集 中していることがよくあります。そして、それは環境条件だ けで決まっているわけではありません。 例えば、このピンクの花の場合、他の植物の草丈が低い ところを好むように見えますが、必ずしも草丈が低いところ 全てにあるわけではありません。 こういった状況では、草丈だけを考慮した単純な統計モ デルではうまく説明できません。 2 集中分布の原因1: 種子散布などによる移入の偶然性 どうしてこのような集中した分布が生じるのでしょうか。考え られる原因の1つが、種子の散布範囲が限られている上に、 偶然性が高いことです。 図のクリーム色のところが草丈が低く、緑のところは草丈が 高いと思って下さい。 3 集中分布の原因1: 種子散布などによる移入の偶然性 好適な環境である、草丈の低いところに、種子が散布され、 そこを中心にピンクの花が拡がっていきます。 しかし、たまたま種子が散布されないところもあります。こ うして花が分布しているところといないところの集中したパ ターンが生じます。 4 集中分布の原因2:未知の環境要因 別の原因として、未知の環境要因というのも考えられます。 今度は、この白い花の分布を見てみます。草丈はどこも 均一なように見えますが・・・ 5 集中分布の原因2:未知の環境要因 実は含水率が高いところだけに分布! よくよく調べてみると、実は土壌含水率が高いところだけに 分布していることが分りました。 このように、空間的に集中して分布する環境要因も生物 の集中分布の原因になります。 6 いる場所・いない場所が集中分布している = 空間的に近いところは似ている、相関がある 空間自己相関 いろいろな仕組みで、いろいろな生き物で見られる 無視していて良いのか? いる場所・いない場所が集中分布していることは、空間的 に近いところが似ている、相関があると言い換えられます。 それで”空間自己相関”と呼びます。 なぜ”自己”が付くかというと、環境要因と花の分布(別々 のもの)が似ているのではなく、”花のあるところの側は花が ある”という花同士の相関だからです。 空間自己相関は、先ほど説明した仕組みなどで、様々 な生物で見られるわけですが、分布予測モデルを作る際 に無視してよいのでしょうか。 7 考慮しないとどうなるか? 特定の要因の効果を 過大 or 過小推定しやすくなる 種子散布がなかった ために生育していな いところが多く、 効果が過小評価 よくありません。 空間自己相関を無視してしまうと、特定の要因の効果を 過大・もしくは過小評価してしまう可能性があります。 たとえば、先ほどの草丈の例です。草丈が低いところは 好適な環境なのですが、たまたま種子が散布されなかっ たために、花が分布していないところがあります(オレンジ の枠で囲ったところ)。 この”草丈が低いのに生育していない”場所があるため に、草丈の効果が過小評価されてしまいます。 8 考慮しないとどうなるか? 特定の要因の効果を 過大 or 過小推定しやすくなる 地盤高の 高いところ 本当は効果がないのに、 たまたま種子散布範囲 と重なっていたため 効果が過大評価 逆に、過大評価になる場合もあります。 地盤高の高さというのは、この花の分布には実は全く影 響ないのですが、たまたま種子散布があったところに重 なっているために、効果があるかのように評価されてしまい ます。 9 さらにサンプリング地点の配置が悪いと・・・ 特定の要因の効果を 過大 or 過小推定しやすくなる 調査地点 •生育している場所を 重点的に調査 •草丈が低く生育する 調査地点が多い さらにサンプリング地点の配置が悪いと問題が生じます。 よくやってしまいがちなのが、花が分布しているところに 集中的に調査地点を置く配置です。こうすると、”草丈が 低くて花がある”という地点が多くなるのがわかると思いま す。 “でも、実際にそういう場所があるんだから、いいじゃな い”と思われるかも知れません。 10 さらにサンプリング地点の配置が悪いと・・・ 特定の要因の効果を 過大 or 過小推定しやすくなる 調査地点 •生育している場所を 重点的に調査 •草丈が低く生育する 調査地点が多い 草丈の効果を 過大評価 しかし、実際には、一塊の花のパッチは、1回の種子散布 に依存したものであって、お互いに独立ではありません。 これらを互いに独立であるかのように扱うと、草丈の効果 を過大評価してしまいます。 11 空間自己相関についてまとめ • 限られた移動分散能力、未知の集中分布する環境要因など が原因で起きる (他にも種間相互作用、環境要因の交互作 用・・・・) • 考慮しないと、環境要因の効果の推定が不正確になる • 調査地点が偏っている場合にも悪影響 考慮すれば、環境要因の効果の正確な推定 未知の要因の発見につながる どうやったら考慮できるのか? ⇒ CARモデル このように見てくると、予測モデルで空間自己相関の効果 を考慮してやれば、環境要因の効果を正確に推定できた り、未知の環境要因を発見することにつながるのがわかり ます。(なお、空間自己相関を生じる要因は、この資料で 説明した2つ以外にもあるのでご注意) では、どうやったら空間自己相関を考慮したモデルを作 れるのでしょうか?生態学でよく使われる方法の1つである、 CARモデルについて解説した深澤さんの別資料をご覧下 さい。 12
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