生物多様性保全のための地理情報の活用 - 農業環境技術研究所

「環 境 保全 型 農業 の ため の 新た な 知見 と 技術 」
生物多様性保全のための地理情報の活用
(独)農業環境技術研究所
生物環境安全部
植生研究グループ(景観生態)
井手
任
1.はじめに
今回の「専門技術研修」では、組換え作物の環境安全性、導入植物の環境影響、水田の
生物多様性などについての研究をはじめ、農業を中心においた生物環境の変化についての
知見が紹介される。侵入・導入植物による周辺生態系への影響を解明することや影響の及
ぶ範囲を予測することは、生物環境の変化を把握する上で重要である。また、農耕地及び
その周辺に生育・生息する希少な生物や身近な生き物を保全することも求められている。
そのためには、それらの状態をモニタリングすることと同時に周辺の環境変化との関連性
を検討することが不可欠であることから、農耕地周辺の植生の変動を全国レベルで把握す
ることが必要となるが、その際、把握される植生あるいは植物分布の変化が、全体的な傾
向なのか、局所的な現象なのか等について、的確に判断する必要がある。
従来より、植生調査等に基づく解析は、フィールド調査を中心とした事例的な調査研究
が大多数であったことから、これらを積み重ねて解析するという方法はなじみにくかった。
そのため、変化の傾向を的確に把握するには、今後、こうした一連の研究をシステマティ
ックに集積する必要がある。ここでは、我が国農業生態系における植生及び植物分布につ
いて、事例的・分散的に実施される調査研究の成果を効果的に蓄積・利用するシステムを
構築する方法について紹介したい。
2.英国のLand ClassificationとCountryside Survey
農村地域を対象とした生物相の体系的な調査・情報システムが少ない中、英国の陸上生
態学研究所(現在は、Centre for Ecology and Hydrology)では、農業生態系のタイプ毎の植
生等の現地調査データを効果的に集積し、他機関の環境情報とリンクさせて植生をはじめ
とする農業環境変化の推定に貢献する調査・情報システム(Countryside Information System
及びCountryside Survey)を構築し、1978年以降、統計的に抽出されたモニタリング地区で
定期的に土地被覆や植生等に関する調査を実施してきた(Barr et al., 1993、Bunce et al.,
1996)。全体の枠組みは図1に示すとおりである。
Countryside Information Systemの基礎となっているは、自然立地条件や社会条件をもとに
1km×1kmメッシュの単位で農村地域を区分して得られた32のランドクラスである。
45
図1:Countryside Information System及びCountryside Surveyの流れ(Stott,eds.,1993
より引用)
各クラスからサンプリングされたモニタリングメッシュ(1990年度調査では全体で508メッ
シュ)において、植生その他のデータが集積され、各クラスにおける植生や土地被覆、ヘ
ッジローなどの景観構成要素の状態を推定することはもとより、国土全体の農村地域での
植生変化やクラス間での状態の比較などが可能となるシステムとなっている。
Countryside Surveyの具体的な内容は、フィールドハンドブック(Barr, 1991)に詳しい。
それによれば、農業生態系のタイプごとにサンプリングした1kmメッシュ内のすべての土
地被覆及び景観構成要素を図化することをはじめ、植生についてはランダムに設定した200
平方メートルプロット(5区)、自然植生や二次植生を対象とした4平方メートルプロッ
ト(5区)のほか、Boundary plot(5区)、Hedgerow plot(5区)などにおいて全出現種、
46
被度などを調査することとなっている。
これらを統合的に利用することで、土地利用や植生を中心として生物生息地の変化を的
確にモニターすることができると同時に、社会経済的な条件を加えた土地利用変化のシナ
リオ作成やそれを利用した環境変化の予測に役立っている。2001年11月に開催されたOE
CD農業生物多様性専門家会合において、英国の国土レベルでのハビタートアカウントを
紹介したStott(2001)の報告の基になっているデータは、まさにこのCountryside Surveyに
よるものであった。
3.数値地図情報を利用した農業生態系の区分
ここでは、植生変化把握のフレームを構築するため、数値地図情報等を用いて全国農業
生態系の区分を試みた例を紹介したい。第2章で紹介した英国での例を参考に、区分した
農業生態系からサンプリングしてモニタリング地区を決め、そこで詳細な土地被覆や植生
のデータを収集し、植生変化の傾向を推定するという枠組みを作ろうというのがねらいで
ある。
ところで、こうした国土区分は、すでにいくつかの視点からなされている。たとえば、
環境庁が平成9年12月に公表した「生物多様性保全のための国土区分」では、生物分布の境
界線、積算温度、年間降水量によって10地域に区分され、区分ごとに注目すべき生態系が
整理されている。一方、やや古い資料だが、農林水産技術会議事務局編(1964)では、農
業生産のための立地区分の手順と方法とともに農業生産の視点からの国土区分が示されて
いる。Takeuchi, et al.(1990)では、数値地図情報から得られる地形や土壌、降水量などの
環境因子データを統計的に処理することにより、国土の自然環境区分が3次メッシュ単位
で提示されている。
ここでは、区分の因子として多くの環境因子を扱うとともに、農業立地条件としての目
安で因子のカテゴリーを分けるなどにより、農業生態系としての特徴が反映されるように
配慮した。区分のために用いた環境因子及び指標、そのデータソースは表1に示すとおり
表1:区分のための指標とそのデータソース
環境因子
指 標
気象
温量指数
年間降水量
暖候期降水量
寒候期降水量
雨 量 効 率 (P- E指 数 )
積 雪 (平 均 最 高 積 雪 深 )
年間日射量
暖候期日射量
土壌
土壌統計
地質
表層地質
地形
地形分類
谷密度
平均標高
起伏量
植生
優 占 す る植 生 単 位
交通立地 道路密度1
道路密度2
カテ ゴ リー 数
ソー ス デ ー タ
9
国 土 数 値 情 報 ・気 候 値 メッシ ュ・気 温 気 候 値 (G02-62M)
8
5
5
4
5
5
3
9
7
9
4
9
9
9
3
3
国 土 数 値 情 報 ・気 候 値 メッシ ュ・降 水 量 気 候 値 (G02-62M)
国 土 数 値 情 報 ・気 候 値 メッシ ュ・降 水 量 気 候 値 (G02-62M)
国 土 数 値 情 報 ・気 候 値 メッシ ュ・降 水 量 気 候 値 (G02-62M)
国 土 数 値 情 報 ・気 候 値 メッシ ュ・降 水 量 気 候 値 及 び 気 温 気
候 値 (G02-62M)
気 象 庁 観 測 平 年 値 ・最 深 積 雪 統 計 値
日 射 エネ ル ギ ー メッシ ュデ ー タ(農 業 環 境 技 術 研 究 所 )
日 射 エネ ル ギ ー メッシ ュデ ー タ(農 業 環 境 技 術 研 究 所 )
国 土 数 値 情 報 ・自 然 地 形 メッシ ュ・土 壌 (G01-56M)
国 土 数 値 情 報 ・自 然 地 形 メッシ ュ・表 層 地 質 (G01-56M)
国 土 数 値 情 報 ・自 然 地 形 メッシ ュ・地 形 分 類 (G01-56M)
国 土 数 値 情 報 ・自 然 地 形 メッシ ュ・谷 密 度 (G01-56M)
国 土 数 値 情 報 ・自 然 地 形 メッシ ュ・平 均 標 高 (G01-56M)
国 土 数 値 情 報 ・地 形 総 合 デ ー タ・起 伏 量
第 3回 自 然 環 境 保 全 基 礎 調 査 ・植 生 ファイル
国 土 数 値 情 報 ・道 路 密 度 ・道 路 延 長 メッシ ュ・道 路 密 度
(N04-53M)
国 土 数 値 情 報 ・道 路 密 度 ・道 路 延 長 メッシ ュ・道 路 密 度
(N04-53M)
47
である。また、次のステップにおいてモニタリング地区をサンプリングする必要があるこ
とから、標準地域メッシュの3次メッシュ単位で客観的に区分することをめざした。
農業生態系の区分についての手順を図2に示した。国土全域から2次メッシュの交点に
よりサンプリングしたサンプル3次メッシュ(3,621)を対象に、気象、土壌、地質、地形、
植生、交通立地の因子(106カテゴリー)に対するマトリクスを作成し、これに群集生態学
の解析において分類手法として利用されるTWINSPAN(Hill, 1979)を適用して、サンプル
メッシュを60のクラスに区分した。この結果に基づき、類型先(クラス)を被説明変数、
関係因子を説明変数とする判別モデルを作成し、そのモデルを利用して国土全域を60のク
ラスに類型した。判別モデルによる類型化において、サンプル全体を大きく8クラス(図
3のクラス1~8)に類型する段階での判別率は85%、それぞれをさらに区分する段階で
の判別率は平均で87%であった。
図3に、区分の過程を模式的に示した。まず、レベル1からレベル3に示した主な指標
で国土を8つのクラス(クラス1~クラス8)に区分した。このうちクラス6は、台地・
低地景観(レベル1)のうち、夏期の日射量がやや少なく(レベル2)、さらに積雪が少
なく適湿な(レベル3)景観で、東北地方南部の太平洋側及び関東地方並びに中部地方の
内陸部に分布する農業景観である。クラス6は、レベル4からレベル6に示した主な指標
により、さらに8つのクラス(クラス61~68)に区分される。標高が低く積雪がない(レ
ベル4)、低地域で(クラス5)、水田が多い(レベル6)景観が、クラス66として区分
され、それは関東地方の主な河川流域の水田景観である。
①
国 土 全 域 ( 362,096 個 の 3 次 メ ッ シ ュ ) か ら 2 次 メ ッ シ ュ ( 10km × 10km)
の交点でサンプリング。
→
②
3,621 個のサンプル3次メッシュを抽出
自然環境、農業立地などから類型指標を選定。
→
気象、土壌、地質、地形、植生、交通立地の因子から
17 指標、 106 カテゴリーを設定
③
3,621 のサンプルメッシュ× 17 指標( 106 カテゴリー)のマトリクスに
TWINSPAN を適用して全国農業生態系を客観的に類型。
→
④
一次集約として 60 のクラスに類型
上記の結果をもとに、 3,621 のサンプルメッシュがそれぞれ属する類型及
び関連指標を用いて、類型先(クラス)を被説明変数、関連指標を説明変数
とする判別モデルを作成。それを利用して国土全域を類型化。
⑤
すでに調査済みのデータについては、得られた類型毎に集約・解析するこ
とにより、傾向を把握(たとえば、タンポポ雑種の全国分布等 )。計画的な
調査を実施する場合には、それぞれの類型化からモニタリング地点をサンプ
リングし、国土全体の土地被覆の割合、植物の分布量等を推定。
図2:農業生態系の区分の手順
48
レベル1
レベル2
少日射量が少
なく、多雪
レベル3
多雪の大起
伏山地
レベル4
クラス1
レベル6
丘陵地
クラス61
低丘陵地水
田景観
標高 50m 以下
扇状地性低
地の水田
クラス62
低地水田景
観
温暖
冬期の降水
量が少ない
クラス63
丘陵地水田
景観
冬期の降水
量が非常に
少ない
クラス64
内陸部の水
田景観
温暖で市街
地が多い
クラス65
市街地の多
い水田景観
水田が多い
クラス66
大河川流域
の水田景観
畑地が多い
クラス67
ローム台地
域の畑地景
観
道路密度が
高く市街地
が多い
クラス68
市街地の多
い畑地景観
やや温暖で標
高が低い
積雪 201cm ~
年間日射量
山地・丘陵地
景観
レベル5
温量指数
85 ~ 100
クラス2
3600 ~ 4000
積雪がある
積雪 51 ~ 100cm
褐色森林土
積雪のない
大起伏山地
主要道路なし
夏期少雨で
積雪がある
クラス3
温量指数
100 ~ 120
クラス4
クラス6
多雪で湿潤
夏期の日射量
がやや少ない
クラス5
低地域
未固結堆積物
低地土
暖候期日射量
2300 ~ 2600
台地・低地景
観
積雪が少な
く適湿
クラス6
標高が低く積
雪がない
未固結堆積物
起伏なし
低標高
積雪なし
日射量が多く
温暖で積雪が
ない
クラス7
低標高
台地域
谷密度 5 以下
火山性岩石
年間日射量
4400 ~ 4800
温量指数 120 ~
積雪なし
ローム台地
黒ボク土
夏期少雨
クラス8
●: ク ラス 66
図3:農業生態系の区分模式図及びクラス66の分布域( クラ ス 1は ク ラス 11~18、 クラ ス 2は ク ラ
ス21~28、ク ラ ス3 は クラ ス31~38、ク ラ ス 4は ク ラス 41~48、ク ラス 5 はク ラ ス51~58、ク ラス 6 は クラ ス61~ 68、
クラ ス 7は ク ラス 71~76、 クラ ス 8は ク ラス 81~86か ら、 そ れぞ れ 構成 さ れる 。 )
4.植生モニタリングのための調査・情報システム
次は、区分した農業生態系からサンプリングしてモニタリング地区を決め、そこで詳細
な土地被覆や植生のデータを収集し、植生変化の傾向を推定する枠組みの段階である。こ
こでは、第一に、農業生態系のクラス毎のモニタリング地区において、休耕・放棄水田、
畦畔、その他農耕地周辺植生等の景観構造を客観的に把握するとともに、サンプル地区内
に設定するコドラート内の植物の種組成を記録し、地形・土壌・水系・周辺植生との関連
性を解析する。そうすることによって、農業生態系のクラスを類型したレベルごとに変化
の傾向を集約したり、クラス間で状況(状態)を比較することが可能となる。
もちろん、そうした調査においては、調査手法自体に工夫が必要である。先の英国の例
に比べ、圧倒的にフロラが豊かな我が国では、すべてのモニタリング地点で出現種を網羅
的に記載しようとする場合、現実的な問題として、専門的な知識や労力の上から、大きな
困難が伴う。したがって、事例調査や既存のデータから共通種(全国レベル、地区レベル)
を抽出し、その増減を把握するとともに分布の変動要因を解析することや、希少種や侵入
・導入種等を対象にその消長や分布域を把握することなど、植生変化に関する簡易な調査
・情報システムを構築することが必要である。こうした点については、環境庁(現、環境
省)による自然環境保全基礎調査における野生生物に関する調査での取り組み(笹岡、2001)
49
が参考になると考えている。
5.利根川流域農村景観を対象とした休耕田等植生の把握
こ こ で は 、先 の 全 国 の 農 業 生 態 系 の 区 分 に 基 づ い て 、利 根 川 流 域 の 休 耕 田 や 畦 畔 、
二次林等の植生の現況について把握した例を紹介したい。
1)モニタリング地区における土地被覆変化:数値地図情報等を用いて類型化し
た 利 根 川 流 域 の 主 要 な 農 業 生 態 系( ク ラ ス 64,66,67,68)か ら 、そ れ ぞ れ 8 つ の 3 次 メ
ッ シ ュ ( モ ニ タ リ ン グ 地 区 ) を ラ ン ダ ム に 抽 出 し 、 空 中 写 真 ( 1999年 ~ 2001年 撮 影 )
の判読等により土地被覆状況を把握した。また、土地被覆状況の変遷を分析するた
め 、 同 様 に 1970年 代 の 土 地 被 覆 状 況 を 把 握 し た 。 こ れ ら は 、 位 置 情 報 を 付 し た ポ リ
ゴンデータとして編集されている。
ク ラ ス 66( 下 流 域 低 地 水 田 景 観 ) と ク ラ ス 67( 下 流 域 台 地 谷 津 田 景 観 ) を 比 較 す
ると、放棄水田の面積に有意な差は見られないものの、現況の水田面積に対する放
棄 水 田 面 積 の 割 合 を 比 較 す る と 、ク ラ ス 66に お い て 、そ の 割 合 が 高 い 結 果 と な っ た 。
ま た 、 谷 津 田 型 の 景 観 が 中 心 と な る ク ラ ス 67で は 、 1970年 代 に 休 耕 さ れ た 場 所 が 、
2000年 時 点 で も 休 耕 さ れ て い る か 、 あ る い は 他 の 土 地 被 覆 に 変 化 し て い る 場 合 が 多
く、一方向的な土地被覆変化であるのに対し、低平地に広がる水田景観が中心とな
る ク ラ ス 66で は 、 休 耕 田 の 面 積 は 大 き く 変 化 せ ず 、 休 耕 さ れ る 場 所 が 変 化 す る 場 合
が多く、ローテーション的な土地被覆変化となっていることが示された。
2)モニタリング地区内における植生調査結果:上記で抽出したモニタリング地
区 内 に お い て 、 そ れ ぞ れ 放 棄 水 田 ( 休 耕 田 を 含 む 、 6 カ 所 ・ 18方 形 区 ( 1m×1m) 、
畦 畔( 5 カ 所・5 方 形 区( 1m×1m))、二 次 林( 2 カ 所・2 方 形 区( 10m×10m))、
水 田 脇 斜 面 植 生 ( 3 カ 所 ・ 3 方 形 区 ( 1m×1m) ) を 対 象 に 、 種 組 成 、 種 ご と の 高 さ
及び被度等を中心とした植生調査(7~8月)を実施した。
放棄水田植生について、クラスごとの平均出現種数は、クラス間で有意な差は見
ら れ な か っ た 。 ま た 、 畦 畔 植 生 に つ い て は 、 谷 津 田 景 観 を 中 心 と す る ク ラ ス 67で 、
平均出現種数がやや高い値を示したが、クラス間で有意な差は見られなかった。
3)外来植物及び希少植物の分布状況:外来種ハンドブック(日本生態学会編、
2002) に 掲 載 さ れ て い る 外 来 種 リ ス ト ( 維 管 束 植 物 ) を 参 考 に 、 今 回 の 調 査 で 出 現
し た 外 来 種 に つ い て 、出 現 頻 度 や 出 現 3 次 メ ッ シ ュ 数 な ど の 出 現 状 況 を 整 理 し た( 表
2 ) 。 確 認 年 代 が 1990年 代 と さ れ る ア メ リ カ タ カ サ ブ ロ ウ は 、 出 現 頻 度 や 出 現 3 次
メ ッ シ ュ 数 が 比 較 的 高 く 、短 期 間 で 広 く 分 布 す る よ う に な っ た こ と が 読 み と れ る( 図
4)。また、表3のように、外来種の出現種数は、どのクラスにおいても、休耕田
よりも畦畔で多い傾向が示された。一方、国レベルでの絶滅危惧植物や県レベルで
の RDB種 の 出 現 状 況 は 、 表 4 の と お り で あ る 。
50
表2:出現外来種のリストと出現状況
出現3次
出現3次
出現3次
出現3次
出現回数
出現回数
出現回数
出現回数
メッシュ数
メッシュ数
メッシュ数
メッシュ数
(二次林)
(休耕田)
(畦畔)
(全体)
(二次林)
(休耕田)
(畦畔)
(全体)
セイタカアワダチソウ 1908年頃
258
27
12
9
231
27
9
7
アメリカセンダングサ 1920年
95
25
7
7
87
24
1
1
ヒメジョオン
江戸末期
74
24
29
14
38
17
7
5
アメリカアゼナ
1936年
80
22
19
12
61
19
0
0
ヒメムカシヨモギ
1870年頃
52
19
10
9
38
13
4
2
ハルジオン
1920年頃
73
17
46
14
55
11
4
3
シロツメクサ
江戸時代
38
16
29
14
8
5
1
1
ノボロギク
1870年前後
44
15
15
10
28
12
1
1
オオイヌノフグリ
1870年頃
33
15
27
14
5
5
1
1
ハキダメギク
1932年
68
14
14
9
53
14
1
1
オオアレチノギク
1920年前後
31
14
12
9
19
8
0
0
セイヨウタンポポ
1904年以前
31
13
17
7
11
8
3
3
アメリカイヌホウズキ (1951年頃)
37
12
14
9
22
9
1
1
コハコベ
1922年
35
12
14
9
20
8
1
1
オランダミミナグサ 明治末期
16
10
9
8
5
4
2
1
アメリカタカサブロウ 1990年代
66
9
19
8
47
8
0
0
オニノゲシ
1892年
21
9
4
4
11
6
1
1
ヒロハホウキギク
1967年以前
6
5
0
0
6
5
0
0
ヒレタゴボウ
1955年
19
4
4
4
15
3
0
0
オッタチカタバミ
1965以前
8
4
3
2
1
1
4
2
タケトアゼナ
1936年
4
4
1
1
3
3
0
0
ナガバギシギシ
1891年以前
4
4
2
2
2
2
0
0
チクゴスズメノヒエ 戦後
8
3
4
1
4
1
0
0
オオブタクサ
1953年以前
6
3
0
0
6
3
0
0
ヨウシュヤマゴボウ 明治
5
3
0
0
2
2
3
1
アメリカフウロ
昭和
4
3
0
0
4
3
0
0
ウラジロチチコグサ 1965年頃
4
3
0
0
2
2
2
1
エゾノギシギシ
1909年以前
4
3
2
2
2
2
0
0
ネズミムギ
明治
4
3
1
1
3
2
0
0
ホナガアオゲイトウ 1937年
4
3
0
0
4
3
0
0
ダンドボロギク
1933年
3
3
0
0
2
2
1
1
イヌムギ
明治初期
6
2
3
1
3
1
0
0
コバナキジムシロ
1930年以前
6
2
3
1
3
1
0
0
ゴウシュウアリタソウ 1933年
5
2
1
1
4
1
0
0
コスモス
栽培逸出
4
2
0
0
4
2
0
0
オランダガラシ
1870年頃
2
2
0
0
2
2
0
0
チチコグサモドキ
大正
2
2
1
1
1
1
0
0
ヒメオドリコソウ
1893年
2
2
0
0
2
2
0
0
ホソアオゲイトウ
1937年以前
2
2
1
1
1
1
0
0
ムラサキツメクサ
1868年前後
2
2
0
0
2
2
0
0
メマツヨイグサ
明治
2
2
0
0
2
2
0
0
ブタナ
1933年
3
1
0
0
3
1
0
0
ホナガイヌビユ
1973年以前
2
1
1
1
1
1
0
0
メリケンガヤツリ
1959年
2
1
0
0
2
1
0
0
メリケンカルカヤ
1940年頃
2
1
0
0
2
1
0
0
アリタソウ
江戸時代
1
1
1
1
0
0
0
0
アレチヌスビトハギ 1940年
1
1
0
0
1
1
0
0
アレチノギク
1890年頃
1
1
1
1
0
0
0
0
オオオナモミ
1929以前
1
1
1
1
0
0
0
0
オオクサキビ
1927年
1
1
0
0
1
1
0
0
オオセンナリ
江戸時代
1
1
0
0
1
1
0
0
オオニシキソウ
1903年
1
1
1
1
0
0
0
0
オオニワゼキショウ 1930年以前
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1
0
0
1
1
0
0
キクイモ
江戸時代末期
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1
0
0
1
1
0
0
キショウブ
1896年頃
1
1
0
0
1
1
0
0
シナダレスズメガヤ 昭和初期
1
1
0
0
1
1
0
0
シマスズメノヒエ
1915年頃
1
1
1
1
0
0
0
0
タチイヌノフグリ
1870年頃
1
1
0
0
1
1
0
0
ツルドクダミ
江戸時代
1
1
0
0
1
1
0
0
ナギナタガヤ
明治
1
1
0
0
1
1
0
0
ネズミホソムギ
雑種
1
1
0
0
1
1
0
0
ハイコヌカグサ
明治
1
1
1
1
0
0
0
0
ハリビユ
明治
1
1
0
0
1
1
0
0
ベニバナボロギク
1950年
1
1
0
0
1
1
0
0
種 名
確認年代
畦畔方形区総数=151
放棄水田方形区総数=564
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図4:アメリカタカサブロウが出現した調査方形区の分布
表3:農業生態系の類型ごとの外来植物種数の傾向(休耕田と畦畔の比較)
外来種種数(1プロット当たり)
休耕田
畦畔
CL64
CL66
CL67
CL68
0.56(0.29) A
1.20(0.58) B
0.40(0.26) A
1.00(0.72) B
0.40(0.17) A
1.37(0.74) B
0.51(0.22) A
1.22(0.46) B
※1 括弧内は標準偏差
※2 A、Bについて、平均値に有意な差が認められる場合に異なる文字で示した
6.おわりに
ここで紹介した例は、いわば生物多様性保全に資することを目的とした地理情報活用の
ためのフレームづくりである。こうした試みを通して、遺伝子レベルでの解析から景観レ
ベルでの変動予測までをつなぐフレームを構築できれば、農業生態系における生物相の状
態とその背景となる土地の利用や管理状況を的確に把握し、環境変化にともなう生物相の
変動予測が可能となり、生物多様性の保全に役立つことはもちろんのこと、我が国農業・
農村と生物多様性の関係を対外的に明解に説明することができるようになるのではないか
と期待している。
52
表 4 : 絶 滅 危 惧 植 物 等 の 出 現 リ ス ト ( 利 根 川 流 域 、 2003年 7 月 ~ 8 月 )
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