教員研修評価・改善システムの開発に関する研究 -行動変容の促進

教員研修評価・改善システムの開発に関する研究
―
【研
行動変容の促進要因の分析を通して
究 者】
企画部
主任指導主事 羽村 昭彦
指 導 主 事 石角
剛・小野
専
門
員 主田 泰幸
【研究指導者】 広島大学大学院教育学研究科
裕之・高松
准教授
―
秀樹・谷本
修・泊野
賢治
曽余田浩史
研究の要約
本研究は,教員研修の改善に資する研修評価・改善システムの開発を目的としている。このシステム
開発に係る研究成果は,次の4点である。第一に,平成18年度の研究において措定した仮説を検証する
ため,「教育総合講座」の他に「校内研修の活性化講座」を対象に加えて研修効果測定を実施し,レベ
ル2(理解度)の測定手法として「キーワード法」の有効性を確認した。第二に,レベル3(行動変容
度)の測定・評価において,「行動・特性」を評価指標として受講者の研修前後の変化を測定すること
により,研修受講による資質・能力の向上を確認する手法について一定の有効性を確認した。第三に,
先行研究を基にレベル3に影響を与える要因を「受講者の要因」「教育センターの要因」「学校の要因」
の3つにカテゴリー化し,アンケート調査により各カテゴリーにおける主な促進要因を検証した。その
結果,評価指標として策定した促進要因項目の一定の妥当性を確認した。第四に,「研修内容の活用を
促す研修の枠組み(試案)」を策定した。これはキャファレラ(2002)の理論的枠組み(1)を基に,本研
究で特定した促進要因等を組み入れたものである。そして,以上の成果をPDCAサイクルに位置付けた教
員研修評価・改善システム(案)を開発した。今後の課題は,研修効果の測定手法の有効性についての
検証を重ねるとともに,
「研修内容の活用を促す研修の枠組み(試案)」の更なる構造化を図り,教員の
資質・能力の向上につながる教員研修評価・改善システムとしての精度を高めていくことである。
キーワード: 行動変容
レベル3に影響を与える要因
目 次
はじめに ……………………………………………1
Ⅰ 研究の目的・目標………………………………2
Ⅱ 研究の構想 ……………………………………2
Ⅲ レベル2の効果測定手法の検証………………6
Ⅳ レベル3の効果測定手法の策定………………13
Ⅴ レベル3の促進要因 …………………………17
Ⅵ 研修内容の活用を促す研修の枠組み(試案)
の策定 ……………………………………………22
Ⅶ 研究のまとめ …………………………………24
おわりに ……………………………………………25
資料 …………………………………………………28
はじめに
広島県では,平成18年3月から5年を期間とした
総合計画として「元気挑戦プラン」が実施されてお
り,その重点プログラムの第一の柱には「人づくり」
が位置付けられている。
そうした中,広島県教育委員会は「新たな教育県
ひろしまの創造」を掲げ,
「知・徳・体」の基礎・基
本の定着を図る取組みを徹底するとともに,考える
力やコミュニケーション能力の育成等教育内容の一
層の充実・発展に取組んでいる。また,その基盤と
なる質の高い教職員の育成や学校経営体制の強化等,
広く社会から信頼される学校づくりを推進している。
教育センターは,このような状況の中で,教職員
の資質・能力の向上を担う中核的機関としてどのよ
うなことに配慮すべきであろうか。広島県教育委員
会が作成した『平成19年度教職員研修』の「人材育
成の基本方針」を見ると,各学校の人材育成は授業
研究を中心とした校内研修やOJT(2) を基盤として推
進されること,そして校内における取組みと関連し
て校外研修が活用されることが大切であることが分
- 1 -
かる。教育センターは,これまで教職員個々のライ
フステージに応じた研修において現在及び将来に必
要とされる資質・能力の向上を意図した研修内容を
提供し,また個々の学校が直面する課題に直ちに対
応するような研修内容を提供してきた。しかし,そ
うした研修の成果について,受講者の講座満足度以
外には情報を持ち合わせていないというのが正直な
ところである。現在の教育センターにおいては,受
講者が研修の成果を学校にどのように還元している
かについての把握はなされていない。
このような状況を勘案するとき,我々は研修の効
果を客観的に測定する方法を開発し,その結果に基
づいてより質の高い研修を提供していくことを大き
な課題ととらえていかなければならない。こうした
研修評価・改善システムを開発することにより,教
職員の資質・能力の向上に寄与し,教育センターと
して期待される役割を遂行していくことができると
考える。
Ⅰ
1
必要となる要因を特定することも目的とする。
2
研究の目標
本研究の具体的な目標項目は次のとおりである。
○ レベル2(理解度)の評価指標の検証により,
測定・評価の手法を確立する。
○ レベル3(行動変容度)の測定・評価の手法に
おける仮説の措定
○ 文献研究により行動変容に影響を与える要因を
検討・整理するとともに,レベル3のアンケート
調査を実施することにより, 実証的に行動変容の
促進要因を特定する。
○ 上記の成果,キャファレラ(2002)の理論及び
インタビュー調査により得られた知見を基に,研
修実施における促進の時期(タイミング)や内容
等を検証・考察することにより,
「研修内容の活用
を促す研修の枠組み(試案)」を開発・提案する。
Ⅱ
研究の構想
1
研修効果測定のための前提
研究の目的・目標
研究の目的
本研究は,教育センター研修講座改善に役立つ研
修評価・改善システムを開発することを目的とする
ものである。そして,平成18年度の「教員研修評価・
改善システムの開発に関する研究-研修効果測定の
方法とその評価指標の構築や検証を通して-」
(以下
「平成18年度研究」と表記)の研究の成果から得ら
れた知見をもとに進めるものである。
平成18年度の成果の概要は,次のとおりである。
○ 研修直後アンケートにおいて「重要キーワード」
を記述している受講者は理解度が高い。
○ 理解度が高い受講者は,研修内容を職場で還元
しており,行動変容度も高い。
○ 「キーワード法」を用いて理解度と行動変容度
の仮の判断基準を設け,その妥当性を検証した結
果,仮の理解度判断基準,すなわちランク付けの
妥当性は高い。
これらから,
「重要キーワード」がレベル2(理解
度)の評価指標になるであろうという仮説を得るこ
とができた。
今年度は,この仮説の実証を試みる。その際,受
講後実際にどのような行動変容がみられるのかにつ
いても考察・検証を行い,研修効果の測定手法の信
頼性を確認する必要があると考える。そこで,本研
究は,受講者の受講後の行動変容を追跡するために
本研究における研修効果とは何か,端的に表現す
れば,
「受講者が研修内容を十分に理解し,その内容
を職場において還元することにより,求められる資
質・能力を高めること」である。
ここで,測定と評価の混同を避けるために渡邉
(2002)の理論を基に整理する。渡邉(2002)は,
成人学習の評価を表1に示す二つの種類に分類して
いる。そして,これらの評価が「コインの表裏と同
じように,分けて考えることはできない」1)ことを指
摘している。
表1
対象
内容
成人学習の評価の種類(3)
各学習者の学習そのもの
学習機会
学習者自身が,自らのニーズ等に基
学習のプロセス
づいて設定した学習目標を,当該の
として,研修自体
学習プロセスの中で,効果的に達す
がどれほど有効
ることができたか
であったか
このことを参考に,本研究における研修プログラ
ムの評価と効果測定との関係を図1のように整理し
た。図1に示す1点目の測定手法として受講者の目
標達成,すなわち受講者の理解度(レベル2)及び
受講者の行動変容度(レベル3)に着目し,その測
定手法の策定をめざす。そして,2点目の手法を見
いだすために行動変容を促す要因に着目した測定項
目を含むアンケート調査を開発することとした。
- 2 -
研修プログラムの評価
①研修プログラムの受
②学習目標の達成に対
講による受講者の学習
する研修プログラム自
目標の達成度
体の有効性
研修効果の測定
図1
研修プログラムの評価と研修効果の測定との関係
2 レベル2の効果測定・評価の考え方
(1) レベル2(理解度)の定義
カークパトリック(2006)は,
「ラーニングの測定
は,①どんな知識が身についたか,②どんなスキル
が発展し,改善されたか,③どのように態度がかわ
ったか,の三つのうち一つ以上を検証することであ
る。」と述べ 2),レベル2の内容を示している。この
ことを基に,
「平成18年度研究」と同様,レベル2(理
解度)の定義を「知識・理解,技能等」とする。
なお,本研究において依拠しているカークパトリ
ック(1959)の評価レベルについては「平成18年度
研究」を参照されたい。
(2) 「キーワード法」と研修効果について
本研究のレベル2(理解度)の測定手法の特徴は,
平松(2006)の「キーワード法」(4)を援用している
点にある。これは,受講者の「暗黙知」が具体的な
経験としての受講により,活性化され,内面的な変
容を引き起こし,更にキーワード法により,
「形式知」
へと変換されることで,具体的に行動すべき内容が
明らかになり,行動の変容を促進すると考えられな
いだろうかという仮想によるものでもあった。
これに基づき,昨年度,出現したキーワードを検
証してみると,例えば,
「SWOT分析」を記述した受講
者は,行動変容度が高いという結果が得られた。こ
の理由を分析すると,コルブの学習サイクルの理論
に合致していることがうかがえる。
山川(2004)は,図2に示すようにコルブの学習
サイクルの理論から,学習の4つの要素,
「具体的経
験」,
「反省的観察」,
「抽象的概念化」,
「能動的実験」
を引用し,この四つの要素を循環しながら辿ってい
くプロセスの重要性を主張している(5)。山川(2004)
は,この学習サイクルは,
「直接的・具体的経験が反
省と観察の基礎となり,反省と観察が,活動の新し
い意義が演繹され得るアイデアや仮説に転移され,
続いてこのアイデアや仮説が,次の新しい経験を作
り出す活動を主導するものとして貢献するという,
一連の流れを示す。」3)と述べている。
この考え方を,前記事例に当てはめてみると,次
のようになると考える。受講者は,第一の「具体的
経験」段階において,研修受講による内容の理解を
する。新たな知識を得ることにより,自らの取組み
をふりかえる「反省的観察」の段階に移行する。こ
の段階で内面化による変容,すなわち意識の変容が
生じることになる。次の段階が,第三の「抽象的な
概念化」である。研修直後のアンケート調査におい
て,キーワードやその根拠,今後の見通し等を記述
することにより,理解した内容を自らの経験等に照
らして文字にすることになる。山川(2004)は,こ
の段階を「了解による理解」と定義付け,「了解は,
『概念的な説明や記号論的なシンボルによって進展
する』ものだと説明される。」4)と述べている。そし
て,この了解の段階が,次の「能動的実験」段階へ
と導くことになる。
具体的経験
反省的観察
能動的実験
抽象的概念化
図2
経験学習サイクルモデル(山川:1994)
以上のことから,
「キーワード法」は,行動変容を
見通した理解度(レベル2)の測定に有効であり,
本研究における研修効果を考える上で重要な位置を
占めていると考える。
3 レベル3の効果測定・評価の考え方
レベル2の効果測定の利点は,実際に受講者が研
修内容をどの程度習得・理解しているのかといった
個々の資質・能力の向上を把握することが可能であ
り,レベル3の測定に比して,研修直後に実施する
ためノイズ,すなわち評価に影響する研修以外の要
素が少なく,簡便に測定を実施できる点にある。
また,レベル2の測定の結果をレベル3の測定結
果と関連付けて分析することにより,レベル3の評
価の信頼性を高めることが可能になる。カークパト
リック(2006)は,
「ラーニングの測定は重要である。
なぜなら,一つ以上のラーニングの目標が達成され
ないかぎり,行動の変容が起こらないことが予想さ
- 3 -
れるからである。」5)と述べ,レベル2の達成が行動
変容に強く影響することを指摘している。例えば,
レベル2の測定・評価において十分な理解度が確認
された受講者が,職場において研修内容に直結する
行動変容を起こしたとすれば,かなりの高い確率で
研修の成果として認めることができる。しかし,理
解度が確認されない状況で,受講者の行動変容を測
定したとしても,その成果を研修の成果と結論付け
るには根拠に乏しいといわざるを得ない。
以上のことから,受講者のレベル3(行動変容度)
を期待する研修講座については,その測定において,
レベル2の測定・評価と関連付けることにより,そ
の評価の妥当性・信頼性を高めることが必要である
と考える。そこで,レベル3(行動変容度)につい
て論を進めることにする。
(1) レベル3の定義
カークパトリック(2006)は,行動変容度につい
て,
「受講者が教室を出て,職場に戻ったときどのよ
うなことが起こったか。どれくらい知識やスキル,
態度の転用がなされたか。これが,レベル3の評価
しようとすることである。すなわち,プログラムに
参加して,職場での行動においてどのような変化が
起こったかである」6)と定義付け,受講者が研修プロ
グラムに参加することにより生ずる「行動の変化」
ととらえている。一方,R.M.ガニエ(2007)は,カ
ークパトリック(1959)のレベル3について,
「3つ
めのレベルである学習の転移では,学習者が仕事中
に新しく身に付けた知識・スキル等を使用している
程度を検討する」7)評価であると述べ,受講者の身に
つけた知識・スキルが実際に仕事に活用される点に
着目し,研修内容の「転移」ととらえ直しているこ
とが分かる。
更に,MARY L. BROAD & JOHN W. NEWSTROM(1992)
は,「転移」を,
「研修の中で学んだ知識やスキルを,
研修生が職場と職場外の両方で,仕事に効果的かつ,
継続的に活用・応用することである。
」8)と定義付け,
転移の意味する具体的な状況とは,
「研修生が研修で
学んだことを,少なくとも研修の最終段階でこれら
のスキルを活用したのと同じレベルで仕事に適用す
ること」であり 9),完全に転移した状況を「仕事に
おいて練習を重ねることで,学習が応用されたスキ
ルレベルが,研修の最終段階で活用したレベルを超
「転移」の程度にも言及して
えること」10)ととらえ,
いる。
このことは,本研究で設定している5つの行動変
容度タイプ(「平成18年度研究」において設定)につ
いてさらなる検討を加えることに重要な示唆を与え
ている。
以上のことを踏まえ,本研究では,カークパトリ
ックのレベル3の理論に基づき,レベル3(行動変
容度)を「研修において学習した知識・スキル等を
研修後に職場において活用(還元)している程度」
と定義する。
(2) レベル3の測定・評価の意義
① 形成的評価としての活用
それでは,レベル3(行動変容度)の測定・評価
はなぜ求められるのであろうか。堀ら(2002)は,
包括的な研修プログラムの評価に関して,
「あらゆる
教育的プログラムの価値付けの最終的な評価は,い
うまでもなく,その支援の下で,参加者が成し遂げ
た実際の行動変容(change in behavior)である。」
と述べ 11),一般にレベル3の評価が,研修の総括的
評価(6)として活用されることを示している。
一方で,レベル3の評価は,研修を改善する手段
としても用いられる。浅野(平成17年)は,行動変
容度の測定を数多く実施している民間企業を視察
し,レベル3測定の結果から研修後に社員の多くは
おおむね望ましい行動を取れるようになったが,依
然としてある行動については十分とは言えない場合
に,どのような対応策をとるべきかといった,次の
研修ニーズの把握に活用する企業が成果を挙げてい
ることに言及している(7)。また,ガニエら(2007)
は,
「新しく獲得したスキルの適用を示すレベル3評
価が,将来提供する研修(コース)改善方法につい
て形成的なフィードバックを供給する」12)ことを指
摘している。これらのことは,レベル3の測定・評
価が,形成的評価(8)として活用できることを示して
いる。
② レベル3の測定・評価の位置付け
「平成18年度研究」において,行動変容を見通し
たレベル2測定・評価の手法について一定の有効性
が確認された。この手法により,学習成果が高い受
講者は,おそらく高い確率で研修内容を活用してい
るであろうと推測でき,全体として望ましい研修効
果が見られたかどうかを判断することができる。つ
まり,
「学習者の達成度評価における総括的なツール
(R.M.ガニエら 2007)」13)として有効であるといえる。
しかし,仮に研修内容を十分理解していたとしても
何らかの要因により,受講者が所属校で期待される
還元をしない場合や部分的な還元にとどまる場合も
考えられる。
よって,研修改善の視点から開発した測定の手法
- 4 -
を活用するためには,研修の直後に測定を行うレベ
ル2評価により理解度(学習達成状況)の把握を行
うと同時にレベル3(行動変容度)の測定を実施し,
研修内容の中核を示す行動が実際に強化されている
か,されていない理由は何か,研修内容の活用を促
すために必要な具体的な手立ては何か等を明らかに
する必要があると考える。
(3) レベル3の測定手法に係る仮説の措定
ではどのようにしたら,レベル3(行動変容度)
の測定手法を策定できるのであろうか。
「平成18年度研究」において実施したレベル3(行
動変容度)の測定は,「教育総合講座」の受講者が,
研修受講後に「学校組織マネジメント」の研修内容
を所属校においてどのように還元したかを追跡調査
したものである。この調査によって得られた受講者
の記述をもとに,その還元状況(内容)から,
「転移」,
「追試」,「検証」,「報告」,「未還元」の五つのタイ
プに分類した(9)。そして,受講者の所属校の上司・
同僚にも同様のアンケート調査を実施した結果,こ
のタイプ分けについての一定の妥当性を確認するこ
とができた。この測定手法は,還元状況をタイプ分
けし,行動変容度の度合いについて一定の指標を得
ることができたという点で,有用なものであると考
える。しかし,受講者が受講前と受講後でどのよう
に変容したのかという向上の度合いを把握すること
はできていない。浅野(平成 17 年)は,レベル3の
効果測定について,
「研修生が研修を受けて,どれだ
け求められる行動を取れるようになったかを測定す
ることで,研修前と研修後の行動の変化の度合いを
見るもの」14)であると述べ,更に測定の進め方につ
いて研修前に行動レベルの目標を立て,これを測定
項目として設定し,研修の効果を測定できることを
指摘している(10)。この考えに基づき,今年度は「校
内研修の活性化講座」を対象に,受講前と受講後の
向上の度合いを測定する手法を策定することとした。
そのために開発したものが,
「求められる行動・特
性」項目であり,これにより求められる行動目標の
達成状況を把握することが可能になる。
4
レベル3に影響を与える要因について
これまで述べてきた手法を用いて仮に効果測定を
実施し望ましい変容が見られたとして,この成果は,
研修の何が原因であると直ちに結論付けることがで
きるであろうか。
ピーター M.センゲら(2004)が,「トレーニングを
終えたメンバーに自分自身の向上の度合を測定して
もらうことによって,学習プロセスと新しく身につ
けたスキルとの関連を評価することができる」15) と
述べているように,成果と学習プロセスとの一定の
関連性について確認することは可能である。
しかし,期待する成果が得られた場合,何が成果
をもたらしたのか,逆に,得られない場合には,何
を改善すべきなのかといった具体的な手立てについ
て答えられるだろうか。つまり,受講者の学習目標
の達成度を測定する手法だけでは,講師のインスト
ラクション等を含めた研修プログラム全体の有効性
を測定し,研修プログラムの評価を正しく実施する
ことができないといえる。それでは,どのようにす
れば,研修プログラム自体の有効性を検証すること
ができるのであろうか。また,その指標はどのよう
に設定できるのであろうか。
我々は,研修を企画するに当たり程度の差こそあ
れ,ID(インストラクショナルデザイン)(11)の理論
を用いて集合研修を設計・実施している。各講座の
学習目標を達成するために,いかに効果的に,そし
てまた効率的に受講者の学習を「意図的」に支援・
促進するかに焦点化している。例えば,期待される
学習の成果に応じて,グループ活動あるいは練習・演
習等をさせるのが最も効果的なタイミングはいつか
等である。しかし,これらの研修の設計・実施の結
果,学習者がどのように変容したか,研修の何が有
効であったのかについて検証する指標を持ち合わせ
ていない。R.M.ガニエら(2007)は,ID の基本的な
想定の2点目として,
「学習はさまざまな変数が関与
する複雑なプロセスである」16)ことを指摘し,ジョ
ン・キャロル(1963)の「学校学習のモデル」にお
ける学習に影響を及ぼす五つの主な変数(12)に言及し
ている。それらの中には,
「インストラクションの質」
や「許された学習時間」の他にも学習者の「適性」
などが含まれ,これらの学習者の「外側と内側の要
因(変数)」を考慮しなければ,学習の効果が期待で
きないことを示している。
このことを,我々の研究における研修効果につい
て当てはめ検討すると,研修のねらいを達成するた
めに行った支援が効果的であったかどうかについて
検証するには,そもそも,その前提としてどのよう
な要因が受講者の行動変容を促すのかについて明確
な知見をもち,それらを意識して研修講座を設計・
実施しなければならないのではないか。
浅野(平成17年)は,受講者の行動変容が,受講
した集合研修以外にも,個人要因(受講者自身の要
因),環境・業務要因,職場要因によって影響を受け
- 5 -
1
ることを指摘している(図3)(13)。
職場
要因
受講し
た研修
職員の行動
個人
要因
環境・
業務要因
図3
行動変容に影響を与える要因(浅野:平成17年)
教育センターが提供した研修だけの効果を厳密に
測定しようとするならば,これらの要因(変数)を
一つ一つ取り除かなければならない。しかし,これ
は非常に困難なことであり,現実的ではない。むし
ろ,教育センターが,受講者の「外側と内側の要因」
を把握し,研修講座のねらいに応じて,その要因を
意識した支援を行えば,期待する研修効果に直結し
た結果を得られると同時に,研修において行った支
援について,それぞれの有効性の有無を把握できる
のではないか。
このような考えを基に,本研究では,
「受講者の行
動変容に影響を与える要因」に着目し,それらの要
因は何かを特定することとした。前記ジョン・キャ
ロル(1963)のモデルを参考にすれば,本研究の特
徴は「集合研修の学習モデル」の変数は何かを明ら
かにすることであるといえる。そして,この成果を
基に開発したものが,
「研修内容の活用を促す研修の
枠組み(試案)」である。
Ⅲ
レベル2の効果測定手法の検証
「平成18年度研究」において,行動変容を見通し
たレベル2測定・評価の手法について一定の有効性
が確認された。
今年度は,昨年度の「平成18年度研究」で得た知
見を基に,別の講座を対象に効果測定を実施し,こ
の手法の有効性及び汎用性を検証する。次に,今年
度の仮説を示す。
レベル2の効果測定手法に係る仮説:
レベル2とレベル3の仮の判断基準を設け,レ
ベル2とレベル3の関連性を分析すれば,それぞ
れの判断基準の妥当性を確認でき,レベル2にお
ける「重要キーワード等」による効果測定手法の
有効性を検証できるのではないか。
検証の概要
前述の仮説の妥当性を検証するために,次の概要
で調査研究を行った。
(1) 前提とする検証の考え方及び進め方
① レベル2のランク付けの考え方及び進め方
レベル2(理解度)の測定手法としてキーワード
法の有効性を検証するため,次のような考え方を採
用した。
○ レベル2のランク付けにおいて,昨年度の成果
を基に,
「重要(関連)キーワード」を評価指標に
加える。
○ キーワード法の精度を高めるため,キーワード
群を設定し,選択形式とした。詳細については巻
末資料1を参照されたい。
○ 本研究において設定した仮の分析・判断基準は
次のとおりである。
・ 重要キーワードの有無及びその個数
・ 関連キーワードの有無及びその個数
・ キーワードの説明及び選択の根拠
・ 所属校における還元の見通し
これらは,
「平成18年度研究」に依拠したもので
あり,詳細については『広島県立教育センター研
究紀要34号』を参照されたい。
○ キーワード法の特徴が,行動変容につながる深
い理解度を測定する点にあることから,
「平成18年
度研究」と同様に,レベル3(行動変容度)にお
ける還元状況と関連付けた分析・検証により,レ
ベル2の測定手法の有効性を確認する。
○ 「平成18年度研究」において用いたレベル2と
レベル3を関連付けたカテゴリー(14)を援用する。
② 研修の特徴による分類と対象とする講座
表2は,
「能力開発型」研修と「課題達成型」研修
の特徴を比較・整理したものである。「能力開発型」
研修は,知識,ノウハウ,技術等を提供することに
重点が置かれた研修であり,平松(2006)は,
「その
(能力開発型)代表的なものが,新入社員研修・中
堅社員研修・管理職研修と言われるもの」17)である
と述べている。更に,この「○○かくあるべし研修」
は,変化の激しい環境に置かれている企業において
は,最近減少傾向にあることを付言している(平松
2006)(15)。当教育センターの「平成18年度研究」に
おいて対象講座とした「教育総合講座」は,この「能
力開発型」研修に分類されるものであると考える。
一方,今年度の研究において着目した専門研修「校
内研修の活性化」講座は,
「課題達成型」研修に位置
付けられる。この講座は,学校の直面する具体的な
- 6 -
課題に対応すること意図したものであり,単に知識,
ノウハウ,技術等を提供することよりも,むしろ学
校現場の知識やノウハウを掘り起こし,共有化や活
用を促進することに重点がある。
このことから,
「校内研修の活性化講座」は,キー
ワード法を用いた効果測定の手法の汎用性を検証す
る講座として適当であると考える。
表2
役割
研修は教育の場
期間
単発・集中
オリエンテーション
10
②
校内研修に望むこと
40
③
校内研修活性化の実際
90
④
校内研修推進者の役割
60
⑤
校内研修計画の改善に
向けて
70
⑥
まとめ
10
題の達成
研修は方向付けと確認の場
分
①
課題達成型研修
知識・技能・態度の学習, 業務に密着した具体的な課
実務課題の設定
校内研修活性化講座第一期の概要
内容
「能力開発型」と「課題達成型」研修の特徴(16)
能力開発型研修
目的
表3
形態
講師
県立教育
センター
講義
報告
協議
講義
演習
協議
演習
県教育委員会
事務局
市立学校教諭
(実践報告者)
県立教育
センター
県立教育
センター
県立教育
センター
職場での実践が重要
③
測定
研修目的別に研修中,研
修後,職場で測定
継続的・長期的
課題とのズレの測定
(2) 対象とする講座及び対象者
「校内研修の活性化講座」の受講者104名
(3) 研修内容
① ねらい
校内研修を「校内の全教職員が自校の教育目標に
対応した学校としての教育課題を達成するために共
通のテーマを設定し,それを学校内外の関係者との
連携を踏まえながら学校全体として計画的,組織的,
科学的に解決していく実践の営み」ととらえ,講義・
実践報告・ワークショップ型研修の演習を通して,
校内研修を活性化するための具体的な方法について
研修する。
② 校内研修の活性化講座第一期の概要
表3は,
「校内研修の活性化講座」第一期の概要を
示している。
これらの全ての内容に渡って,校内研修の活性化
に関する受講者の資質・能力を高めることを目的と
して指導を展開している。内容の中で中核となるも
のは,
「校内研修推進者の役割(概論)」の講義,
「校
内研修計画の改善に向けて(演習)
」である(以下,
これらをまとめて「校内研修の活性化概論・演習」
と表記する)
。その他,県教育委員会事務局の講義や
先進校の実践報告は,それら「校内研修の活性化概
論・演習」でねらいとした「知識・理解」
「技能」等
を支えるための実際的知識や意欲の喚起とし,1日
の内容すべてで,所属校等での「行動変容」を促す
ことを期して設定している。
対象とする研修内容及びそのねらい
表4は,対象とする研修内容及びそのねらいを示
している。
「校内研修の活性化概論・演習」の内容は,
平成18年度の同講座における受講者の課題意識及び
今年度の研修事前に収集した課題意識等を基に作成
しており,「校内研修計画の改善に向けて(演習)」
は,校種ごとの実態を踏まえて「小学校」と「中・
県立学校」では異なる内容(演習)で展開した。
表4
対象とする研修内容とそのねらい
内容
校内研修推進者
の役割(講義)
ねらい
組織としての協働を引き出す校内研修推進者
の役割について,モチベーションのメカニズ
ムを明らかにすることを通して学ぶ。
校内研修計画の
ワークショップ型研修の演習を通して,校内
改善に向けて(協
研修を活性化するための具体的な方法につい
議・演習)
て研修する。
(4) 対象者及び対象とする研修内容の設定理由
① 対象者の設定理由
各校において「校内研修を推進する役割を担う者」
を対象としているため,研究主任等の主任層が応募
している。
このため,次の2点において対象講座としてふさ
わしいと考える。
○ 「求められる教職員像」から「行動・特性」の策
定が容易である。
○ 所属校等における研修内容の還元が比較的行い
やすく,その還元状況に対する注視度が大きいこ
とが想定され,そのため,レベル3で行う360度評
価(17)のデータ等の収集が容易である。
② 対象とする研修内容の設定理由
- 7 -
○
所属校等における研修内容の還元を前提とした
指導を重要視して展開する内容である。
○ 第一期(5月末)から第二期(2月)までに,
各校において公開研究授業等を含む校内研修を実
施することが想定され,還元状況を把握するため
数回に渡って追跡調査を実施することができる。
○ 1日の研修内容のねらいが明確であり,それを
達成することを目的として,様々な視点と方法で
展開するため,得られた知見は,他の研修(専門
研修)等への援用が図りやすい。
(5) 調査対象及び方法等
表5は,調査対象及びアンケートの種類及び調査
方法を示している。
表5
管理職
2
表6
コマ
④
調査対象及びアンケートの種類とその方法
対象
受講者
を複数個設定し,それらに基づいて指導を展開した。
受講者に対しては,1日の日程が全て終了した後,各
研修コマに対して35個のキーワード群から研修内容
に最も直結すると考えるキーワードを一つ選び,更
にそのキーワードを挙げた根拠等を記述するように
求めた。
アンケートの種類
・研修事前アンケート(5月)
質問紙
・研修直後アンケート(5月)
(電子
・研修アフターフォローアンケート(12 月)
メール
・研修アフターフォローアンケート(12 月)
⑤
方法
研修コマにおける内容及び設定した重要キーワード等
内容(タイトル)
校内研修推進者の
役割
重要(関連)キーワード
・モチベーション・メカニズム
・(モチベーション・クリエーター,
モチベーション・ブレーカー)
校内研修計画の改
・協働体制
善に向けて
・HOW ツリー
(小学校)
・(ロジックツリー)
校内研修計画の改
善に向けて(中学
校・県立学校)
・マトリクス法
・ブレーンライティング法
*
仮説の検証のため,受講者に対して「重要(関連)キー
ワード」を知らせていない。
* 関連キーワードとは,重要キーワードに次いで重要度の
高いキーワードとして設定したものである。
及び郵
送)
仮説の検証
(1)「校内研修の活性化講座」における効果測定
仮説の検証に当たっては,次の手順・方法で行っ
た。
ア 研修直後アンケート結果(5月)について,キ
ーワード及びその根拠等に基づき全体的に把握・
分析し,その結果をランク付けする(レベル2)。
イ 受講者の研修アフターフォローアンケートの結
果(12月)について,還元状況に基づき全体的に
把握・分析し,その結果からタイプ分けする(レ
ベル3)。
ウ 管理職の研修アフターフォローアンケートの結
果(12月)により,レベル3のタイプ分けの妥当
性を検討する。
エ 以上の分析・検討結果から,レベル2のランク
付け及びレベル3のタイプ分けの妥当性,そして
「重要キーワード等」による測定手法の妥当性を
検証する。
(2) レベル2(理解度)の分析
表6は,
「校内研修の活性化講座」の研修内容及び
設定した重要キーワード等を示している。
「校内研修の活性化概論・演習」の内容の指導に
当たって,指導担当者は,あらかじめ研修内容の中
核的な内容を端的に示す「重要(関連)キーワード」
表7は,各研修コマ(内容)について,回答数に
よりキーワードをランク付けし,最も多く挙げられ
たキーワードとその根拠,及び次に多く挙げられた
キーワードとその根拠等を示している。この結果か
ら分析すると,「校内研修推進者の役割」について,
研修直後アンケートに回答した受講者88名中,23名
(26%)が重要キーワード「モチベーション・メカ
ニズム」を挙げており,また,38名(43%)が関連
キーワード「モチベーション・クリエーター,モチ
ベーション・ブレーカー」を挙げていることが分か
る。更にそれぞれのキーワードを挙げた根拠の記述
から,この研修コマにおいて,受講者は,職務を遂
行する上でどのようなことを期待されているのかを
理解し,メンバーのやる気を引き出す仕組みについ
ての理論的な裏付けを得て,今後の推進者としての
具体的な行動に言及していることが分かる。
表6に示すように,研修内容「校内研修計画の改
善に向けて」については,小学校と中・県立学校で
異なる重要(関連)キーワードを設定している。研
修内容「校内研修計画の改善に向けて(小学校)」に
おいて,研修直後アンケートに回答した受講者(小
学校)54名中,28名(52%)が重要キーワード「協
働体制」を挙げており,また,11名(20%)が関連
キーワード「ロジックツリー」を挙げている。
- 8 -
修」を挙げている。非重要(関連)キーワード「ワ
ークショップ型研修」が挙げられた理由は,
「校内研
修計画の改善に向けて(中・県立学校)」の研修コマ
(内容)において,
「ワークショップ型研修の進め方」
というサブタイトルを設定したため,このタイトル
に影響を受けたことが考えられる。この研修内容に
おけるねらいが,校内研修の活性化に必要な具体的
な手法,すなわち「マトリクス法」及び「ブレーン
ライティング法」を実際の演習等を通して身に付け
ることであることを考慮すれば,タイトル自体が中
核的な内容ではないことは明らかであるといえる。
これらのことから,受講者はそれぞれの研修コマ
の中核的な内容を理解していることが分かり,研修
全体におけるねらいはおおむね達成できていると考
えられる。そして,キーワードとそれを挙げた根拠
を記述させることのみでも,受講者の理解度につい
て全体的な傾向を把握することができると考える。
表7 受講者が挙げたキーワード及びその根拠
校内研修推進者の役割
ランク
重要(関連)
人数
キーワード等
記述した根拠
(モチベーシ
ョン・クリエ
1
ーター,モチ
38 人
ベ ー シ ョ
ン・ブレーカ
メンバーの根源的な欲求を刺激すること
の大切さについて,根拠(理論)をもと
に学ぶことができた。
ー)
教職員のモチベーションをいかに上げて
2
モチベーショ
23 人
ン・メカニズム
いくかが問題意識としてあり,今回,そ
の仕組みがよく分かり,今後に生かせる
と考える。本校では,目標の魅力をいか
に上げていくかが今後の課題である。
校内研修計画の改善に向けて(小学校)
共通理解を得ないまま研修を進めること
1
28 人
協働体制
が,意欲面でブレーキとなっていた。研修
の手法を取り入れていくことで,意識面で
の効果が期待できると分かった。
目標を実現していくためには,実態把握と
2
11 人
分析により方向性と手立てを得ることが
ロジックツリー
大切だ。その方法の一つとしてロジックツ
リーの方法で分析する方法は有効だと感
じた。
校内研修計画の改善に向けて(中学校・県立学校)
1
13 人
2
7人
ブレ ーン ライ
ティング
マトリクス
法
短時間で,効果的な協議の実施を可能にす
る技法であり,容易に研修に取り入れるこ
とができると感じた。
授業研究の発想と同様に重要なものであ
図4
切であるから。
今までは校内研修により個人の力量が高
2
7人
ワークショッ
プ型研修
受講者のレベル2ランクの割合
り,計画的,系統的に組み立てることが大
まると考えていたが,研修の目標・内容や
方法を教職員で共有することにより,組織
風土をかえることができることが理解で
きた。
更に,それぞれのキーワードを挙げた根拠の記述
から,受講者は,研究の方向性や目標を見いだすた
めの具体的な分析手法等を学び,今後職場において
実際に活用できるのではないかという期待感をもっ
ていることが分かる。また,同研修内容(中・県立
学校)においては,研修直後アンケートに回答した
受講者36名中,最も多くの受講者13名(36%)が重
要キーワード「ブレーンライティング」を挙げてい
る。次に,7名(19%)が重要キーワード「マトリ
クス法」を挙げ,同様に7名(19%)が重要(関連)
キーワード以外のキーワード「ワークショップ型研
この考えに基づいて,レベル2の分析を,先に示
した判断基準により分析し,A~Dの評価(ランク
付け)を試みた。
この結果,図4に示すように,Aランク(十分理
解)は,27%(25人),Bランク(おおむね理解)は,
39%(35人)
,Cランク(あまり理解していない)は,
15%(14人)
,Dランク(全く理解していない)は,
19%(17人)と判断した。
なお,この分析・判断の基準は仮のものであり,
この妥当性については後述する。
(3) レベル3の分析・判断基準の検証
① 受講者への追跡調査結果による分析
受講者への追跡調査及び分析は,次の2種類のア
ンケートによって行った。
○ 追跡調査1:研修事後アンケート(9月)
○ 追跡調査2:研修アフターフォローアンケート
(12月)
- 9 -
これらのうち,受講者の「還元(研修内容の活用)
状況」についての測定を主目的とする追跡調査2の
結果に基づき,キーワード法を用いたレベル2の測
定手法について,その有効性を検証した。
表8
追跡調査2:研修アフターフォローアンケート(受講者)
対象
調
査
概
要
調査期間
平成19年12月初旬から平成19年12月末
分析時点
平成20年1月
分析・判断基準例を提示し,選択肢から,受講者自
身の還元状況について最もよく当てはまる項目を選
択し,更に具体的な内容を記述することを求めてい
る。選択肢は,「平成18年度研究」において一定の妥
当性が確認された五つのタイプ,すなわち「転移」,
「追試」,「検証」,「報告」,「未還元」及びタイプ分
けの基準を援用した。
表9
レベル3タイプ別の分析・判断基準
判断基準例
タイプ
調査方法
受講者
調査内容
設問内容
質問紙による五段階評定尺度法及び自由記
所属校において「校内研修の活性化講座」で学んだ研修
述法等
転移
・レベル3の還元(研修内容の活用)状況
応用し,校内研修で活用したり,校内研修以外(授業等)
・レベル3に影響を与える要因(促進要因)
で活用したりした。
・レベル3のタイプ別の判断基準例を提示
所属校において「校内研修の活性化講座」で学んだ研修
追試
し,選択及び還元状況の記述
内容(知識・理解,スキル等)を,校内研修で再現・活
用した。
・レベル3に影響を与える要因項目から選
所属校において「校内研修の活性化講座」で学んだ研修
択し,その理由を記述等
回答率
内容(知識・理解,スキル等)を,所属校の実態に応じて
検証
64%(104人中67人)
内容(知識・理解,スキル等)をもとに,受講者のこれ
までの実践についての振返りや理論的な裏付けを得るこ
とができた。
表8は,追跡調査2(研修アフターフォローアン
ケート)の対象及び調査概要を示している。このア
ンケートは,第一期の研修を終了してから約半年経
た後に,受講者を対象に実施したものである。
所属校において「校内研修の活性化講座」で学んだ研修
報告
内容(知識・理解,スキル等)を,校内研修等で報告・
伝達を行っている。
所属校において「校内研修の活性化講座」で学んだ研修
未還元
内容(知識・理解,スキル等)を活用しておらず,具体
的な実践を行っていない。
表10は,図5のように判断した受講者の典型的な
記述の例である。
表10
タイプ
受講者のレベル3タイプ別の記述例
典型的な記述例
・実態調査の結果から課題を見つけ,その改善を目指し
て,模擬授業などを取り入れた校内研修を実施した。ま
図5
5
受講者のレベル3タイプの割合
転移
図5は,表9のタイプ別の分析・判断基準例に基
づき,タイプ別に分類した割合である。図5から分
かるように,99%の受講者が何らかの行動をしたと
判断しており,中でも「転移」,
「追試」に属する75%
の受講者は,実際に研修内容を生かして実践したと
判断したことを示している。
この設問では,表9に示すレベル3のタイプ別の
- 10 -
た,研究授業の協議会では,KJ法等を取り入れ,短時間
に効果的な協議を行うことができた。
・教師全員で実践記録を作成したり,授業の手立て等を
明らかにするため授業評価表を作成した。
・研究だよりを発行した。
3種類のワークショップ型研修を実施した。具体的に
4
は,マトリックス法,KJ 法,小グループによる討議であ
追試
る。これらの手法を活用することで,全員の意見が反映
され,成果と課題が明確になった。
断している場合が10例あり,管理職の方が,受講者の
還元状況について,その度合いがより大きかったと
判断していることもうかがえる。
今年度は学年単位で研究教科を決め,授業改善に取り組
んでいる。学年部を中心に研究を行うことで教材研究が
3
深まり,自己評価や外部からの評価において結果が向上
検証
している。本校での「学年部」という協働体制の重要性
を認識でき,理論的な裏付けを得ることができた。
2
研修終了後,研修報告書を作成し管理職に報告するとと
報告
もに,担当分掌である教務部の部会で報告をした。
毎年度の研修のまとめをする時に,ブレーンライティン
1
グ法やマトリクス法などを用いて,メンバーの意見を広
未還元
く多く集め,来年度の方向性について検討したい。
このように受講者による自己評価を基に,所属校
における還元状況の全体的な把握を行った。次に,
この判断結果の妥当性を確認するため,管理職が,受
講者の行動変容(還元状況)をどのように見取って
いるのかに着目し,分析・考察を試みた。
② 管理職への追跡調査結果による分析
表11は,追跡調査2(研修アフターフォローアン
ケート)の対象及び調査概要を示している。
図6
表11
管理職と受講者とのレベル3の比較
追跡調査2:研修アフターフォローアンケート(管理職)
対象
管理職
調
査
概
調査期間
平成19年12月初旬から平成19年12月末
分析時点
平成20年1月
調査方法
質問紙による五段階評定尺度法及び自由記述法
調査内容
設問内容
回答率
以上のことから,両者の判断はほぼ一致しており,
管理職もそれぞれのタイプの判断基準を参考にして
受講者の還元状況を見取っていることが分かる。
要
表12
タイプ
・レベル3の還元(研修内容の活用)状況
管理職のレベル3タイプ別の記述例
典型的な記述例
・校内研修の変容状況
・授業研究の際の協議会のもち方について研修内容を
レベル3のタイプ別の判断基準例を提示
積極的に生かしている。具体的には,KJ法の活用など
し,選択及び還元状況の記述
協議会を活性化するための取り組みをしたり,話しや
5
68%(104人中71人)
転移
受講者の所属校の管理職は,受講者の還元状況に
ついてどのように見取っているのかを調査するとと
もに,前項のタイプ分けの信頼性を得るために,管
理職へのアンケートを実施した。
また,図6は,前項の追跡調査2において受講者
の判断したレベル3のタイプ分け結果と,所属校の
管理職が判断したレベル3のタイプ分け結果とを比
較したものである。
受講者と管理職では,タイプ5の一致が12人,タ
イプ4が28人,タイプ3が3人,タイプ2が4人,
タイプ1が1人であり,71.6%の一致であった(相
関係数0.59)
。一致していない結果からは,管理職が
タイプ5,すなわち「転移型」であると判断したにも
かかわらず,受講者自身は,タイプ4以下であると判
- 11 -
すい雰囲気をつくったりして全員が発言できるような
進め方を工夫している。
・協議会自体の議論が深まり,充実してきた。また,
先進事例を積極的に収集し,メンバーへ提供するなど
し,共通理解を得て研究推進に役立てている。
・校内授業研修の事後研修において,KJ法を用いて小
4
追試
グループで当該授業の成果と課題を整理した,
・
「今後の授業改善に活かす」という目的が明確で,他
の教職員も目的意識をもち,研修に臨むことができた。
受講者は,これまでも教育センターでの研修や他校で
の公開研究会に参加してきたが,本講座の受講をきっ
3
検証
かけとして,これまで学んできたことをもう一度振り
返り,校内に還元していこうとする姿勢を示している。
研修の立案に当たっても,学んだことを基に他の教職
員とも話し合いながら,すすめている。
2
報告
1
未還元
ベル2の仮の分析・判断基準を検証する。
研修報告書を作成し,管理職に報告している。また,
各部毎に主任が開催する部内研修を実施しているが,
その際に研修成果を活用している。
受講者の姿勢に積極性が見られるが,その準備等や校
内研修の内容から,今回講座を受けた内容を十分還元
できたとはいえない。
また,表12に示す管理職のタイプ別自由記述の例
を,表9及び表10と比較すると,ほぼ同様の傾向を
示していることが分かる。
図8
図7
管理職と測定者とのレベル3の比較
図7は,測定者である我々が受講者のレベル3,す
なわち還元状況の記述を基に判断し,タイプ分けし
た結果と,管理職が判断したタイプ分けの結果とを
比較したものである。
我々と管理職では,タイプ5の一致が7人,タイ
プ4が24人,タイプ3が3人,タイプ2が6人であ
り,58.8%の一致が見られる(相関係数0.56)
。受講
者の還元状況について受講者の管理職がタイプ5と
判断しているのに対し,我々がタイプ3,4と判断
している例が,16例みられるが,全体的な傾向とし
て我々と管理職との判断は,おおむね一致している
と考えられる。
以上のことから,レベル3の判断基準について一
定の妥当性を認めることができると考える。
(4) レベル2の判断基準の妥当性の検討
前項において一定の妥当性を確認できた受講者の
レベル3のタイプ分けの基準を援用し,先述したレ
受講者のレベル2とレベル3との関係
図8は,受講者が記述したキーワードとそのキー
ワードを挙げた根拠等を測定者が分析し,設定した
受講者のレベル2ランクを横軸にとり,測定者が見
取った受講者のレベル3タイプを縦軸にとって受講
者の分布状況を把握しようとしたものである。
この結果は,レベル3タイプにおいて,高い還元
状況を示すと考える5(転移型),4(追試型)に位
置する受講者は,レベル2ランクにおいて,4(十
分理解),3(おおむね理解)に位置している受講者
が多いことを示している。
このことから,先述したレベル2の仮の分析・判
断基準について一定の妥当性を確認することができ
たと考える。
3
検証・考察のまとめ
昨年度一定の有効性,妥当性を確認したレベル2
の測定手法を活用し,別のねらいをもつ対象講座に
おいて測定を実施した。その手順は,昨年度の研究
と同様にレベル2とレベル3の仮の判断基準を設
け,レベル2とレベル3の関連性を分析することに
より,それぞれの妥当性を確認するというものであ
る。その結果から,レベル2において重要キーワー
ド等を挙げ,その根拠等を適切に記述している受講
者は,還元状況においてもより高いレベルを期待で
きることが明らかになった。
このことから,この手法の有効性,汎用性を確認
- 12 -
することができたといえよう。
Ⅳ レベル3の効果測定手法の策定
今年度新たに着手するレベル3(行動変容度)の
測定手法をどのように策定するかについて述べる。
1 レベル3調査に係る基本的な考え方
(1) レベル3の効果測定手法に係る問題の所在
「平成18年度研究」では,受講者の還元状況を基
に五つのタイプを策定し,管理職・同僚による360度
評価により,そのタイプ分けについて検証した。そ
の結果,タイプ分けについての一定の妥当性を確認
することができた。そして,この手法は,教育セン
ターの研修内容が活用されたこと及びその程度の把
握において有効であることが分かった。
しかし,この手法には,教育センターで研修を受
ける以前から,受講者は研修内容に関連する知識や
スキルをすでに有しており,それを所属校でも活用
したにすぎず,教育センターでの研修そのものが受
講者の知識やスキルをどの程度向上させたかについ
ては判断できないのではないかという疑問が残る。
つまり,受講者が研修の前後で知識やスキルをどの
程度向上させたかという伸び率についての正確な把
握及び測定において限界があるのではないかと考え
る。
以上のことから,先述した浅野(平成17年)の考
え方(18)を援用し,今年度は,「求められる行動目標」
(以下「行動・特性」と表記)を評価指標とし,受
講による受講者の知識やスキルの向上の度合いを測
定する手法を策定することとした。
(2) レベル3の効果測定手法に係る仮説の措定
浅野(平成17年)は,
「研修の行動変容度調査には,
事前に職員の求められる行動があり,その実現のた
めに研修を実施する。したがって,行動変容度調査
を実施しようとした場合,
『求められる人材の具体的
な行動レベルのリスト』が不可欠」18) であることを
指摘している。このことは,受講による向上の度合
いを把握する調査を実施するため,本研究の対象講
座において,受講者として想定される研究主任等に
求められる行動を,
「行動・特性」の記述として整理
しなければならないことを意味している。
更に,表13に示すように,浅野(平成17年)は行
動変容度調査に係る八つのステップを提示している。
本研究では,このステップに基づき,行動変容度調
査を実施することとした。
また,本研究の特徴は,レベル2すなわち,研修
内容の理解度の測定・評価を踏まえた上で,レベル
3の測定手法を見いだす点にある。カークパトリッ
ク(2006)は,
「レベル3とレベル4評価は,先にレ
ベル2評価が実施されない限り機能しないという考
えに賛同する。研修を受けた参加者の成果を把握す
ることなしに,その研修の効果を検証することがで
きないということについて研修担当者及び受講者の
上司は納得している」19) と述べている。このことは,
仮に受講者の行動が望ましい方向に,また期待する
程度変容していたとしても,レベル2の測定結果を
踏まえて分析しないかぎり,その変容が研修による
ものであるかどうかを判断することはできないこと
を意味している。
表13
行動変容度調査のステップ(浅野:平成17年)(19)
ステップ
①
②
求められる人材像
求められる人材像の
具体的行動
各ステップの活動内容
「求められる職員像」を確認する。
「求められる職員像」が示す具体的な
行動例を確認し,行動目標(行動リス
ト)を作成する。
行動目標(行動リスト)を基準に,現
③
研修ニーズの把握
在とれていない行動をとりあげ,重要
度,優先度等を考慮する。
④
研修の行動目標設定
⑤
研修の企画
⑥
研修の実施
⑦
研修後の行動調査
⑧
効果測定結果の活用
現在とれていない行動の中で,研修で
バックアップする行動を取り出す。
行動目標が実現できる研修プログラ
ムを設計・企画する。
研修プログラムの行動目標を受講者
に伝える。
研修終了後,1~2ヶ月後受講者の行
動を調査する。
調査結果の集計・分析により,効果測
定を実施する。
以上のことから,本研究において策定をめざす測
定手法の妥当性を検証するために,次のような仮説
を設定した。
レベル3の効果測定手法に係る仮説1:
レベル2の測定・評価における重要キーワード
と強い関連がある「行動・特性」は強化の度合い
が大きいのではないか。
これは,研修内容が学習者の研修ニーズに合致し
ており,学習者が研修内容を十分理解していれば,
研修後「行動・特性」は強化されるはずであり,自
- 13 -
己評価を実施すれば,研修を設計する段階で中核に
据えた内容に直結した「行動・特性」項目において
伸び率が大きいのではないかという想定によるもの
である。
た。各「行動・特性」項目の記述内容については巻
末資料2を参照されたい。
表14
「求められる資質・能力」と「主な職務内容」
資質・能力
レベル3の効果測定手法に係る仮説2:
レベル3(還元状況)において,
「転移」及び「追
試」タイプに分類される受講者は,
「行動・特性」
の強化の度合いが大きいのではないか。
主な職務内容(項目)
・研究テーマ,内容,達成目標の設定
①企画力
・研究成果・課題の分析と改善案の提案
・研修に係る知識・情報(先進事例等)の収集
・研修技法の検討・導入
【組織・システムづくり】
これは,昨年度策定した研修内容の還元状況によ
る測定において,測定者が,所属校で望ましい還元
を行っていると判断した受講者は,新たに策定する
レベル3の測定指標,すなわち「行動・特性」の項
目において伸び率が大きいのではないかという想定
をしたものである。
2
・進捗管理,短期目標や研究計画の微調整
・研究に係る会議の計画,準備,運営
・外部,保護者ニーズの収集
・研修資料の作成,報告書・紀要等の編集
②運営力
【コミュニケーション】
・新たな課題への意欲的な取組み
・研究の意義や方向性の共有
検証の概要
(1) 「求められる行動・特性」項目の作成
研修の受講前と受講後の向上の度合いを把握する
調査を実施するため,本研究の対象である「校内研
修の活性化講座」において,受講者として想定され
る研究主任等に求められる行動を「行動・特性」の
記述として整理することについては先に述べた。
そこで,広島県教育委員会「人材育成の基本方針」
及び「求められる教職員像」
(平成17年3月),
「教職
員に期待される役割と具体的な行動例」
(平成18年3
月),
「人事評価ハンドブック」
(平成19年4月改訂),
「授業改善のための校内研修ハンドブック」
(平成15
年3月)や研究主任(教務主任)の職務に関しての
先行研究等に基づき,次の手順で「行動・特性」を
策定した。
ア 先行文献等から研究主任の職務について検討
イ その職務を遂行するために必要な(求められる)
資質・能力を設定
ウ 更に「行動・特性」について記述
先行文献等から,求められる資質・能力及び主任
の職務についての視点を「企画力」,「運営力」,「指
導助言」ととらえ,それぞれの職務内容の概要を整
理した。特に,前年度の研修に参加した受講者の課
題として明らかになった「運営力」を「組織・シス
テムづくり」と「コミュニケーション」とに分けて
項目を設定した。
表14は,
「校内研修の活性化講座」の受講者として
想定される研究主任等について「資質・能力」と「主
な職務内容」を示している。更に,この内容に基づ
き,30項目からなる「行動・特性」の記述を策定し
・説明・傾聴等のスキルや議論を活性化させる手法
の活用
・場(話し合い等)の設定
個々のメンバーの
③指導助言
・モチベーションや成長を意識
・成果の承認や改善すべき点をアドバイス
・適性・能力を研修に生かす場の設定
(2) 追跡調査1:研修事後アンケートの実施
表15は,追跡調査1:研修事後アンケートの対象
及び調査概要を示している。
表15
追跡調査1:研修事後アンケート(受講者)
対象
調
概
要
調査期間
平成19年9月初旬から平成19年9月末
分析時点
平成19年10月
調査方法
受講者
査
調査内容
設問内容
回答率
質問紙による五段階評定尺度法及び自
由記述法等
レベル3の「行動・特性」
レベル3の還元(研修内容の活用)状況
「行動・特性」項目を提示し,選択及び
還元状況の記述
68%(104人中71人)
この調査(9月)は,第一期の研修を終了してか
ら約3ヶ月経た後に所属校における還元等につい
て,それを行った状況等を記入できるようにして実
施した調査である。記入する内容は,「行動・特性」
項目に対する自己評価及び各研修内容の還元(研修
- 14 -
内容の活用)状況についての自由記述である。
また,受講者の還元を促すため,
「研修内容を活用
する際には,どのような周囲への働きかけが考えら
れるか」等の記入を求める内容を含めた。
表16
追跡調査1:研修事後アンケート(管理職)
対象
受講者
調
査
概
要
調査期間
平成19年9月初旬から平成19年9月末
分析時点
平成19年10月
調査方法
質問紙による自由記述法
調査内容
設問内容
回答率
受講者の還元状況及び変容
管理職の働きかけや体制づくり
等
行動・特性項目を提示し,選択及び還元
状況の記述
64%(104人中67人)
した第1項目から第11項目の平均値は3.7であり,受
講前から既に高い値を示している。一方,
「運営力(コ
ミュニケーション)」として設定した第21項目から第
26項目の平均値は3.3,「指導助言」として設定した
第27項目から第30項目は,平均値が3.0であり,とも
に「企画力」に比して低い値を示している。
この結果は,受講者が,自分自身の「企画力」に
ついては一定の評価を行っている一方で,企画した
研修を職場のメンバーと協同的にすすめたり,指導
助言を通して人材育成を行ったりすることに課題が
あると認識していることを示している。この傾向は,
昨年度の同講座終了後のアンケート及び今年度の研
修事前アンケートにおいてもみられた。そこで,今
年度の研修講座のねらいを受講者の「運営力(コミ
ュニケーション)」と「指導助言」に係る資質・能力
を高めることに焦点化し,研修を展開した。
表16は,管理職に対して実施した研修事後アンケ
ート調査の概要を示したものである。これは,受講
者による還元の具体的な内容を把握し,自己評価の
客観性を高めると同時に,職場での環境(管理職の
支援等)を把握することを意図したものである。
表17
①
②
3
分析と考察
(1) 研修事後アンケートの分析・考察
① 受講者の自己評価の全体的な傾向の把握
図9は,9月に実施した研修事後アンケート調査
の結果を示している。
図9
研修事後アンケート自己評価における平均値
図9中の折れ線グラフは,受講者の4月・5月及
び9月時点の「行動・特性」に対する自己評価の平
均値を示している。各「行動・特性」項目の記述内
容については巻末資料2を参照されたい。折れ線グ
ラフ(4月・5月)について,
「企画力」として設定
③
「行動・特性」群ごとの平均値の変化
求められる資質・能力
受講前
受講後
の「行動・特性」項目群
4・5月
9月
企画力
3.7
4.1
0.4
運営力(組織・システムづくり)
3.5
3.8
0.3
運営力(コミュニケーション)
3.3
3.9
0.6
指導助言
3.0
3.6
0.6
差
その結果,図9の折れ線グラフ(9月)が示すよ
うに全ての項目で伸びがみられるだけでなく,表17
に示すように,受講後9月の平均値が,
「運営力(コ
ミュニケーション)」群において3.9,「指導助言」群
が3.6となり,4月・5月と比べてそれぞれ0.6上昇
し,
「企画力」及び「運営力(組織・システムづくり)」
の伸び率を上回っていることが分かる。特に,
「運営
力(コミュニケーション)
」の平均値は,
「運営力(組
織・システムづくり)」群の平均値3.8を上回った。
このことから,受講者は研修内容のねらいを理解
し,所属校においてその研修内容を活用し,一定の
成果を挙げたことが分かる。受講者の追跡調査の結
果から,研修講座として,そのねらいに迫る内容を
実施することができたといえる。
② 仮説1の検証
次に,レベル2の重要(関連)キーワードとレベ
ル3の「行動・特性」項目に着目し,仮説1の検証
を試みる。図10は,9月に実施した研修事後アンケ
ートの結果を示している。図10中の棒グラフは,受
講者の受講前(4月・5月)の値と受講後(9月)
の値から「行動・特性」30項目のそれぞれの伸び率
- 15 -
を算出したものである。最も顕著な伸びを示してい
る項目は,第29項目「研究に係る業務の進め方など
を個々のメンバーに具体的にアドバイスしている。」
である。これは,研修内容「校内研修推進者の役割」
の中核的な内容を示す重要キーワード「モチベーシ
ョン・メカニズム」に直結する項目である。
図10
研修事後アンケート自己評価における全体の伸び率
この結果から,研修推進者は,校内研修を活性化
するため,メンバーのモチベーションを高めなけれ
ばならないと考え,その際にはモチベーションが高
まる仕組みを理解し,それを具体的に活用すること
が肝要になること,つまりメンバーが自分の業務を
うまく進められるように,研究に係る目標やそれを
達成する方法を個に応じて具体的に助言することが
必要であると判断し,実際に行動に移したのではな
いかと推察する。
次に高い伸び率を示す項目は,第26項目「会議(議
論)を活性化するためアイデアの拡散・収束・整理・
意思決定に必要なスキルやツールを活用している。」
及び,第9項目「研究成果や問題点の分析を行い,
新たな課題を見いだしている。」である。これらは,
いずれも研修における議論を活性化したり,課題を
分析・抽出したりするためのツールに関連しており,
「校内研修計画の改善に向けて」の研修コマ(研修
内容)において中核的な内容として重要キーワード
化した「協働体制」,
「Howツリー」,
「ブレーンライテ
ィング」,「マトリクス法」に直結する項目である。
以上のことから,学習者が研修内容を十分理解し,
職場において還元した結果,「行動・特性」が強化さ
れ,研修において中核に据えた内容に直結した「行
動・特性」項目において大きな伸びが見られたので
はないかと考える。
③ 仮説2の検証
仮説2の検証を行うため,レベル3の還元状況に
よる測定の結果と「行動・特性」の伸び率(強化の
度合い)に着目した。検証の手順は,次に示すとお
りである。
ア 9月に実施した研修事後アンケートの受講者の
還元状況等の記述を分析し,行動変容度が高いと
判断する「転移」及び「追試」タイプの受講者を
抽出する。
イ 9月に実施した研修事後アンケートにおいて,
管理職が受講者の還元状況等について記述したも
のを分析し,行動変容度が高いと判断する「転移」
及び「追試」タイプの受講者を抽出する。
ウ 上記の分析結果から,測定者が「転移」及び「追
試」タイプであると判断した受講者20名を抽出す
る。
エ 還元状況等による分析において,高い行動変容
が見られると判断した20名のグループ(以下「Xグ
ループ」と表記)と,その他のグループ(以下「Y
グループ」と表記)に分け,それぞれの「行動・
特性」の伸び率(強化の度合い)を比較すること
とした。
図11「Xグループ」と「Yグループ」の伸び率の比較
図11は,9月に実施した研修事後アンケートにつ
いて「Xグループ」と「Yグループ」の「行動・特性」
の各項目における伸び率を比較したものである。
「Xグループ」の伸び率の平均が16.9%であるのに
対し,
「Yグループ」の伸び率の平均が12.1%であり,
還元状況等による分析において高い行動変容が見ら
れると判断した「Xグループ」の伸び率が大きいこと
が分かる。更に,各「行動・特性」群に着目すると,
本研修講座において研修内容としての焦点化・重点
化を図った「運営力(コミュニケーション)」及び「指
導助言」の項目において顕著な違いが見られる。
このことは,職場で高いレベルで還元を行ってい
- 16 -
る「Xグループ」の受講者は,自己評価においても,
研修受講により資質・能力の向上があったと認識し
ていることを示している。
表18「行動・特性」群についてX,Yグループの自己評価の伸
び率の比較
①
②
③
求められる資質・能力
X グル
Y グル
の「行動・特性」項目群
ープ
ープ
企画力
13.4
11.1
2.3
運営力(組織・システムづくり)
14.8
10.4
4.4
運営力(コミュニケーション)
22.5
13.4
9.1
指導助言
22.7
16.3
6.4
差
表18は,Xグループ,Yグループそれぞれの自己評価
の伸び率について, 「行動・特性」群ごとの平均値
を示したものである。
以上のことから,レベル3(還元状況)において,
「転移」及び「追試」タイプに分類される受講者は,
「行動・特性」の向上(強化)の度合いが大きいこ
とが明らかになった。
④ 検証の結果及びまとめ
仮説1及び仮説2の検証の結果明らかになったこ
とは次のとおりである。
レベル3(行動変容度)の評価において「行動・
特性」項目に着目し,測定を実施した結果,
○ 重要キーワードに直結する「行動・特性」は強
化の度合いが大きい。
○ 高いレベルの還元を示す「転移」及び「追試」
タイプに分類される受講者は,
「行動・特性」の強
化の度合いが大きい。
以上のことから,
「行動・特性」項目による評価指
標が測定手法として有効なのではないかという仮説
を得た。また,先に検証したレベル2の測定手法「キ
ーワード法」の信頼性及び,レベル3の還元状況に
よる5つのタイプ分け基準の妥当性及び信頼性につ
いても確認できたといえよう。
Ⅴ
レベル3の促進要因
レベル3(行動変容度)に影響を与える要因に着
目し,研修プログラム自体を評価する視点を見いだ
すことを試みる。
1
促進要因に係る先行研究について
(1) 当教育センターにおける過去の研究
当教育センターでは,平成16年の「教員の資質・
能力及び指導力の向上を図る研修の効果に関する研
究Ⅱ-10年経験者研修の効果測定を通して- (20) 」
(以下,
「10年研究」と表記する)において,レベル
3を「意識・行動の変容」と定義付け,その促進要
因に焦点を当てた研究を実施している。
この研究では,受講者の研修後の「意識・行動の
変容」に影響を与えていると考えられる主要因とし
て受講者が所属する職場の雰囲気,すなわち「同僚
性とメンタリング」に研究対象を焦点化し,それら
の変容を測定することにより,研修効果としての「意
識・行動の変容」と「同僚性とメンタリング」との
相関関係を明らかにしようとした。その結果,「意
識・行動の変容」と「同僚性とメンタリング」との
間に存在する相関性を認めることはできたものの,
その関係性は希薄であるとの結論に至っている(21)。
このような当センターの研究の成果と課題を踏ま
え,他の代表的な先行研究を概観することにより,
行動変容に影響を与える要因について考察を進める
こととする。
(2) 主な先行研究についての考察
MARY L.BROAD & JOHN W.NEWSTROM(1992)は,「転
移」,すなわち研修内容の活用に必要な条件について,
JAMES MOSEL(1957)の研究成果を引用して次の3点
に整理している20)。
○ 研修内容が仕事に応用可能でなければならない。
○ 受講者は,研修内容を習得しなければならない。
○ 受講者は,仕事において行動変容するように動
機付けられ,学んだことを活用しなければならな
い。
1点目は,研修内容が受講者の研修ニーズに一致
していなければならないことを示している。2点目
は,受講者の習得状況が重要な要因であることを示
しており,先述した当教育センターの「10年研究」
において言及されていない内容(21)として注目すべき
点であると考える。3点目は,職場における受講者
を取り巻く環境の要因であることが分かる。
次に,カークパトリック(2006)の行動変容度に
係る四つの条件を示す21)。
○ その受講者が変わりたいという願望を持ってい
なければならない。
○ 変わるためには何をすべきか,その方法を知ら
なければならない。
○ 適切な環境で勤務しなければならない。
○ 変化に対して報酬が与えられなければならない。
カークパトリック(2006)は,1点目に個人に係
る要因を挙げており,行動変容において個人の意欲
や願望が重要な要因であることを示している。2点
- 17 -
目は,教育センターが直接的に支援できる,あるい
は中心となって関与できる要因である。これは,研
修内容に受講者が職場において還元することを促進
する手立てが仕組まれていなければ,受講者に実際
の活用を期待することは困難であることを意味して
いる。3,4点目は,受講者が所属する組織におい
て還元できる状況にあるか,あるいは還元による変
化を積極的に認める環境であるかが重要な要因とな
ることを示している。この視点は,行動変容に影響
を与える要因には研修実施機関に関するもの以外に,
受講者の職場の要因が考えられることを示しており,
浅野(平成17年)の指摘(22)に一致している。
表19
レベル3の阻害要因(JOHN W.NEWSTROM:1986)(23)
阻害要因ランク及び阻害要因の内容
1
仕事上の強化不足
(仕事に応用する際の支援不足)
最も責任を
次に責任を負
負う関係者
う関係者
上司
組織・受講者
組織
上司
仕事の環境による支援不足
2
(施設・設備,仕事の不適切な進
捗管理,権限や時間の制限等)
3
4
5
6
7
8
9
組織文化の支援不足
研修内容が実用的でないという
受講者の認識
研修内容が仕事に関連がないと
いう受講者の認識
変えることや努力へ不快感
講師の熱意・支援が受講者に伝
わらない
講座設計や実施・運営が不十分
であるという受講者の認識
同僚からの変えることへの抵抗
組織
講師
受講者・上司
講師
受講者・上司
受講者
講師
上司
講師・受講者
そこで,これまでの主な先行研究に係る検討・考
察を踏まえ上記の仮説を措定した。
これは,
「校内研修の活性化講座」の受講者が実際
に所属校において研修内容を還元する際に最も影響
を受けた要因等を追跡調査によって測定すれば,研
修の設計・実施・評価の段階で着目すべき視点を明
確にできるのではないかという想定に立っている。
3
検証の概要
(1) 検証の進め方
次の手順で検証を進めることとする。
ア 主な先行研究の検討・考察から得られた知見を
基に,行動変容に影響を与えることが想定される
要因項目を検討し,記述する。
イ 研修アフターフォローアンケート調査にレベル
3に影響を与える要因項目(促進要因項目リスト)
を設定し,測定を実施する。この際,
「校内研修の
活性化講座」と同時に「教育総合講座」を対象と
し,測定結果を比較・検討することで妥当性を確
認する。
(2)「促進要因」項目の作成
表20は,主な先行研究について検討・考察したこ
とを基に,本研究におけるレベル3に影響を与える
要因を検討・整理したものである。
表20
講師
受講者
受講者・
レベル3に影響を与える関係者及び要因の概要
関係者
①受講者
上司・組織
(学習者)
上司
②教育センター
また,表19に示すように,JOHN W.NEWSTROM(1986)
は,研修内容の活用を阻害する要因に関する研究に
おいて,その要因の影響の大きさにより1から9に
ランク付けし,各要因に最も責任を負う関係者及び
次に責任を負う関係者を特定している。
2
研究の仮説の措定について
行動変容に影響を与える要因に着目し,これを特
定することが本研究において重要な位置を占めてい
ることについては先に述べたとおりである。
レベル3の促進要因に係る仮説:
先行研究を基に,レベル3に影響を与える要因
について検討・整理し,その各要因の影響度を測
定すれば,本研究の対象講座に影響を与える主要
因を特定できるのではないか。
(講師・運営者)
要因の概要
知識・理解(現状や課題の把握など)
意欲(活用や個人の成長への意欲)
設計・実施(演習やフォローアップ)
研修内容(課題への関連や実用性)
上司(研修推進に係る働きかけ)
③学校
研修内容の還元機会
(上司・同僚)
還元を支援する協働体制(同僚等)
レベル3に影響を与える要因(促進要因)の関係
者を,
「受講者」,
「教育センター」,
「学校」とし,そ
れぞれの要因を三つのカテゴリー(群)に分類した。
更に,表21は,促進要因の三つのカテゴリー(群)
において設定した促進要因項目の具体的な記述内容
を示したものである。
第1項目から第4項目が「受講者要因」群,第5
項目から第8項目が「教育センター要因」群,第9
項目から第14項目が「学校要因」群を示している。
- 18 -
修の活性化講座」の受講者に対して実施したアンケ
ート調査については,表8に示したとおりである。
表21 「促進要因」項目の記述内容
表23
研修アフターフォローアンケート:「教育総合講座」
対象
調
仮説の検証
(1) 対象講座と追跡調査2:研修アフターフォロ
ーアンケートの実施について
表22は,対象講座として設定した「校内研修の活
性化講座」と「教育総合講座」の概要及び特徴を比
較・整理したものである。
表 22 「校内研修の活性化講座」と「教育総合講座」の比較
校内研修の活性化講座
教育総合講座
課題達成型:
能力開発型:
業務に密着した具体的な
知識・技能・態度の学習,
課題の達成
実務課題の設定
主任層(研究主任等)
主任層(教頭候補者)
104 名
120 名
研修期間
2期,1年(5月,2月)
7期,半年(6月~12 月)
測定レベル
主にレベル3,4
主にレベル2,3
研修の型と
その目的
研修対象
要
平成19年12月初旬から平成19年12月末
分析時点
平成20年1月
質問紙による五段階評定尺度法及び自
由記述法等
・レベル3の状況
調査内容
受講者
概
調査期間
調査方法
4
査
・レベル3に影響を与える要因
・レベル3のタイプ別の判断基準例を
提示し,選択及び還元状況の記述
設問内容
・レベル3に影響を与える要因項目か
ら選択し,その理由を記述等
90%(120人中108人)
回答率
(2) 分析と考察
① 全体的な傾向の把握
ア 「校内研修の活性化講座」の分析・考察
図12は,
「校内研修の活性化講座」の受講者を対象
に,12月に実施した追跡調査2(研修アフターフォ
ローアンケート)の結果を示している。
校内研修の活性化講座促進要因
18
・質問紙によるアンケート
測定方法
調査(事前,直後,事後)
・インタビュー調査
測定対象
受講者,管理職,同僚
16
16
14
・質問紙によるアンケート
13
12
12
調査(事前,直後,事後)
10
選
10
択
人
数 8
受講者,管理職
7
6
レベル3に影響を与える要因の特定に係り,
「教育
総合講座」を対象に加え,その測定結果を比較・検
討することについては先述した。これは,二つの講
座の特徴を考慮したとき,課題達成型の「校内研修
の活性化講座」と能力開発型に分類される「教育総
合講座」には,それぞれの異なるねらいがあるため,
レベル3に影響を与える要因についても違いが見ら
れるのではないか,その結果を比較・検討すること
で,より汎用的な視点を得ることが可能になるので
はないかと考えたからである。
表23は,
「教育総合講座」の受講者に対して実施し
たアンケート調査の概要を示したものである。
「教育
総合講座」のねらい及び研修内容の詳細については
「平成18年度研究」を参照されたい。また,
「校内研
5
7
7 7
13
14
5
4
4
2
10
3
4
3 3
3
2
2
1
2
4
4
3
2 2
1
1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
促進項目番号
促進要因1番目
9
10
11
12
促進要因2番目
図12「校内研修の活性化講座」
:最も影響を与えた「促進要
因」及び2番目に影響を与えた「促進要因」の項目について
図12中の棒グラフは,研修内容の還元に影響を与
える項目(以下促進要因と記述)のうち,最も大き
な影響を受けたと受講者が判断した要因及び,2番
目に大きな影響を受けたと判断した要因を示してい
る。これらは,14項目の促進要因を影響の大きさに
よりランク付けしたものである。また,図中の縦軸
は回答者の人数を示し,横軸は各促進要因項目の番
- 19 -
号を示している。
この結果から,回答者72人中16人(22%)が,第
6項目「教育センターの研修には,所属校での活用
を促進するワークショップ(具体的な手法の演習)
がある。」を選択し,最も高い値を示していることが
分かる。次に高い値を示す項目が,第7項目「教育
センターの研修には,所属校での活用に役立つ教
材・資料(実践事例)がある。」である。
39%の回答者が,第6・7項目を選択したことか
ら,受講者は本講座の研修内容の還元において,教
育センターの研修内容や進め方が最も有効であった
と考えており,具体には,研修において学習した研
修内容を活用するために役立つ演習や具体的な実践
事例を重要視していることが分かる。
ケートの結果を示している。図13中の棒グラフが示
す内容は,それぞれ図12と同様である。
表24
図13 「教育総合講座」
:最も影響を与えた「促進要因」及び
教育総合講座促進要因
30
25
24
23
20
17
選
択
人 15
数
10
12
11
10
6
10
5
第6項目
習を実践する場が提供されており,研修参加後の所
他校の実践報告の時間があり,成果も課題も含めて
第7項目
具体的に知ることができ,自校の研修に活かすこと
ができた。
研究主任として,校内の研修や研究の推進をする
3
第 12 項目
3
2 2
1
3
1
1
1
2
3
4
5
6
7
8
促進項目番号
9
10
11
12
13
14
促進要因2番目
最も影響を与えた「促進要因」を選んだ根拠
属校での還元に結び付けやすい。
2
6
6
4
2番目に影響を与えた「促進要因」の項目について
理論を学んだ上にそれを活用することを想定した演
1
8
7
0
ク及びそれを選んだ根拠「校内研修の活性化講座」
ランク
7 7
4 4
促進要因1番目
追跡調査2:最も影響を与えた「促進要因」項目ラン
10
10
8
7
この結果を分析すると,第6項目「教育センター
の研修には,所属校での活用を促進するワークショ
ップ(具体的な手法の演習)がある。」が最も高い値
を示しており,次に高い値を示す項目が,第4項目
「私は,新しい知識や経験を得ることで自ら向上(成
長)しようとしている。
」及び,第3項目「私は,研
修内容を活用しようとする意欲がある。」である。
立場にあり,校内の研修が活性化し,児童に魅力あ
る,力をつける授業や組織になるように推進していく
表25
追跡調査2:最も影響を与えた「促進要因」項目ラン
ク及びそれを選んだ根拠「教育総合講座」
責任がある。
ランク
表24に示す最も影響を与えた促進要因の根拠につ
いて受講者が記述した内容からも,教育センターは,
レベル3に最も影響を与える関係者として,その役
割の重要性を認識しなければならず,研修ニーズに
応じて,知識・理解を深めることのみならず,受講
者が職場で活用することを見通した研修内容の構築
が求められているといえる。
更に,3番目に多くの回答者68人中10人(15%)
が,第12項目「所属校では,研修を推進したり,組
織牽引の役割を担っている。」を選択していることか
ら,組織において率先して取組む立場にあるかどう
かという受講者自身の役割が研修内容の還元におい
て重要な鍵を握っていることが明らかになった。
イ 「教育総合講座」の分析・考察
図13は,
「教育総合講座」の受講者を対象に,12月
に実施した追跡調査2:研修アフターフォローアン
1
第6項目
最も影響を与えた「促進要因」を選んだ根拠
演習やワークショップの内容は実践的で,即座に所属校
で行かせる具体的なものが多かった。
研修によって自分自身が向上することができた。また,自
2
第4項目
分自身に足りない点も見えて。所属校において,これから
もあらゆる場面で推進役としての力量を発揮するために今
回の研修は役に立った。
一番大きく影響を受けたことは,研修内容を活用していこ
3
第3項目
うとする意欲だと思う。研修内容も幅広かったため,あらゆ
る場面で今まで以上に前向きになったと自覚している。
表25は,上記の3項目を選んだ根拠について受講
者が記述した内容のうち代表的なものを示してい
る。図13の棒グラフ及び表25の記述を基に考察する
と,108人中24人(22%)の回答者が,第6項目を選
択したことから,「教育総合講座」の受講者も,「校
内研修の活性化講座」の受講者と同様に,研修内容
- 20 -
の還元において,教育センターの研修内容や進め方
が最も有効であったと考えていることが明らかにな
った。
次に着目すべき点は,108人中23人(21%)の回答
者が,第4項目「私は,新しい知識や経験を得るこ
とで自ら向上(成長)しようとしている。」を選択し
ている点である。
「校内研修の活性化講座」の受講者
とは異なり,還元を促進した要因について受講者自
身の向上の意欲を挙げている。
図14 「教育総合講座」の「促進要因」の影響度の平均値
また,図14は,同アンケートにおいて,各項目が
職場での還元にどの程度影響を与えたかについて問
い,その問いに対する回答の平均値を示したもので
ある。縦軸が影響の大きさを示し,横軸は,各促進
要因項目を示している。各要因群の平均値を比較す
ると,第1項目から第4項目の「受講者要因」群が,
平均値3.5を示し,最も高いことが分かる。この結果
及び表25が示す選択した根拠の記述からも分かるよ
うに,
「教育総合講座」の受講者は,自らの現在の役
割やこれから将来に必要とされる資質・能力を身に
付けることに注目していることがうかがえる。この
ことは,先述のカークパトリック(2006)が指摘して
いる行動変容における条件,すなわち「その受講者
が変わりたいという願望を持っていなければならな
い。」という条件に一致しているといえる。
5
検証・考察のまとめ
これまで,研修プログラム自体を評価する視点を
見いだすために必要な知見を得る目的で,レベル3
に影響を与える要因に着目し,課題達成型研修の「校
内研修の活性化講座」と能力開発型研修「教育総合
講座」を対象として促進要因の特定を試みた。その
結果,次のことが明らかになった。
○
「校内研修の活性化講座」の受講者は,最も影
響を与えた促進要因として,第一に,教育センタ
ーの研修における「研修内容の活用を促す演習」,
第二に「具体的な実践事例」を挙げ,第三に受講
者自身の「職場での推進者としての役割や立場を
有していること」を挙げている。
○ 「教育総合講座」の受講者は,最も影響を与え
た促進要因として,第一に,教育センターの研修
における「研修内容の活用を促す演習」,第二に「受
講者本人の向上(成長)の意欲」,第三に「研修内
容の活用の意欲」を挙げている。
これらのことから,どちらの研修講座についても
最も多くの回答者が,職場での還元に有用であった
要因として教育センターの研修におけるワークショ
ップ(演習)を挙げていることが分かる。このこと
は,講義において職務遂行に必要な知識やスキルを
提示した後に,演習等により,それらをどのように
活用するかといった,いわゆる「手続き的知識」(24)
を提供することが有効であることを示している。つ
まり,レベル3を期待するならば,
「分かった,役立
ちそうだ」というレベルから,「(実際に)やってみ
て,
(やり方を知り)使えそうだ」というレベルまで
引き上げることが肝要であるといえる。
次に着目すべき点は,
「校内研修の活性化講座」に
おいて最も影響を与えた促進要因について,第3番
目に多かったものとして第12項目が挙げられている
一方で,
「教育総合講座」においては,最も影響を与
えた促進要因について,第2番目に多かったものと
して,第4項目,第3番目に多かったものとして,
第3項目が挙げられており,これらはいずれも「受
講者要因」群の項目である点である。
この結果は,それぞれの研修講座がもつねらいに
よって生じたものではないかと考えられる。つまり,
「教育総合講座」は,受講者個人の資質・能力の向
上を図ることをねらいとしているため,職場で研修
内容を活用することを通して,更に資質・能力の向
上を図ることに焦点が置かれている一方で,
「校内研
修の活性化講座」は,校内研修を活性化することを
ねらいとしているため,受講者の資質・能力の向上
が手段として位置付けられている。受講者は,研修
内容を活用し,いかに組織に働きかけるかという点
に注目しているといえる。
これらの結果は,それぞれの講座の受講者が,そ
のねらいに応じた促進要因の項目を選択しているこ
とを示しており,策定した促進要因項目の一定の妥
当性を確認することができたといえる。このことか
- 21 -
ら,この促進要因が研修評価の指標となり得るので
はないかという仮説を得ることができたと考える。
Ⅵ
研修内容の活用を促す研修の枠組み
(試案)の策定
本研究で得た促進要因に係る知見等を基に,所属
校において受講者の行動変容を促す「働きかけ」に
ついて,更に調査・分析する。
1
研修の枠組み(試案)の策定の概要
(1) 策定の目的
この研修の枠組み(試案)を策定する目的は,研
修講座当日の講師のインストラクションや運営等に
限定されず,研修前の企画,教材開発や研修内容の
活用を促す支援計画,そして研修後のアフターフォ
ローを含めた研修プログラム全体を改善するための
視点を得ることである。
(2) 策定の進め方
次の手順・方法で策定を進めることとする。
ア 先行研究で明らかになった知見を基に,受講者
の行動変容を促す「働きかけ」についての関係者,
内容,時期(タイミング)を検討・整理する。
イ 「校内研修の活性化講座」の受講者及び所属校
の管理職・同僚を対象にインタビュー調査を実施
し,その結果について分析・考察を行う。
ウ キャファレラ等の理論的枠組みを基に,
「校内研
修の活性化講座」を対象に実施した追跡調査2(研
修アフターフォローアンケート)の結果及びイン
タビュー調査の分析・考察を加え,本研究におけ
る「研修の枠組み(試案)」の策定を行う。
2
JOHN W.NEWSTROM 1992)。
つまり,研修の設計・実施を行う際に,受講者の
ニーズに応じるだけでなく,それぞれの職場で実際
に研修内容を活用することを想定して,具体的な働
きかけ等を行うことが重要であるという考えを示し
たものである。
先行研究についての考察
(1) 研修内容の活用を促す働きかけの重要性に係
る研究
MARY L.BROAD & JOHN W.NEWSTROM(1992)は,「概
して研修担当者は,あらゆる努力を注ぎ,ニーズ分
析や設計,研修の実施を行う。しかし,これらの努
力の結果にもかかわらず,転移が,我々が支援を受
けない転移とよぶところの相対的に低いレベルにと
どまることを研究者や専門家は指摘している。」 22)
と述べ,研修後の典型的な転移の状況について言及
している。そして,そのような状況に対して,図15
に示すように,
「結果として刺激を与えられ,大きな
転移を得るような『転移のマネジメント』に関する
追加的なレベルの努力,取組みを奨励すること」23)
が重要であることを強調している(MARY L.BROAD &
図15 転移のマネジメントによる効果(25)
(2) 研修内容の活用を促す研修の枠組みに係る研
究
キャファレラ(2002)は,研修内容の「転移」に
影響する主な要因を6点に整理している(26)。その中
で,研修を設計・実施する立場から影響を及ぼしや
すい要因として,次の3点,①受講者,②研修の設
計と実施,③研修内容を取り上げ,表26に示すよう
に,その関係者である設計者,講師・運営者,学習
者が研修前,研修中,研修後のそれぞれの時期(タ
イミング)においてどのような働きかけをすること
が有効であるかを示している。
キャファレラ(2002)の提案する研修の枠組みは,
研修内容の活用を促す枠組みとして,関係者,タイ
ミング,手だてとなる手法・内容を明確にしている
点で有効であると考える。しかし,促進要因に係る
関係者に,受講者が所属する組織や組織の上司,同
僚等が想定されていない。
また,MARY L. BROAD & JOHN W. NEWSTROM(1992)
は,「研修内容の転移を期待するならば,『受講者』,
『講師』,『上司』の3者が極めて重要な鍵を握って
いる」24) と述べ,上司の役割の重要性に言及してい
る。本研究においても,所属校で受講者が研修内容
の還元に係る推進役を担っているかといった「学校
(組織)要因」が,受講者の行動変容と深く係って
いることが明らかになっている。
これらのことから,キャファレラ(2002)の枠組
- 22 -
みに,「学校(組織)の要因」,すなわち「学校(上
司・同僚)」を加えることが必要であると考える。
表26 研修内容の活用を促す研修の枠組み:キャファレラ
(2002) の概略(27)
研修前
研修中
研修後
・還元内容の明確
・講師,コーディネ
・フォローアッ
化
ーターの選定
プの支援
プログラ
・受講者や所属
・講師のモニタリン
・手法の開発
ム設計
校の状況やニー
グ及び支援
・活用の効果
ズの把握
・代替手法の提案
促進
・還元促進のガイ
・計画の修正・支援
者
ドラインの提示
・講座イメー ジの
・学習者主体の学
・様々なフォロ
明確化
習方法の活用
ーアップの手
・研修内容活用の
・学習環境の工夫
法を提供
講師・
場面を想定
・他の活用資源の
・試行過程へ
運営者
・プロジェクトの選
提供
の支援
択及び支援者の
・活用計画の作成
・フィードバッ
特定
・学習手法の選択
ク
講後のそれぞれの時期(タイミング)において,ど
のような働きかけ(要因)が行動変容を促したのか
という点について明らかにすることである。
(2) インタビュー調査結果についての考察
表28は,学校訪問によるインタビュー調査の結果,
レベル3の「転移」,「追試」型に分類される受講者
の所属校において,研修内容の活用の促進に影響を
及ぼすと考える関係者がいつ,どのように働きかけ
を行ったかを示している。これによると,受講者は,
すべての時期において研修内容の活用に係っている
こと,そして管理職,同僚は研修前と研修後に,受
講者へ働きかけ等を行っていることが分かる。ただ
し,研修前における同僚の働きかけは日常的な連携
の一部であることがうかがわれ,研修内容の還元に
直接係っているとはいえないものもみられる。
表28
の支援
学習者
・自己課題の明確
・主体的参加
・活用計画の
化
・ 活 用 の 可能 性 を
実施と計画の
・実行可能な自己
探る
改定
目標の具体化
・フィードバックを
・手法の試行
・支援者との連携
返す
・研修内容の
・活用計画の作成
最適化
・学習手法の選択
3
インタビュー調査について
*
関係者と促進時期(タイミング)
関係者
研修前
研修中
研修後
①受講者
○*
○
○
②管理職
○
○
③同僚
△*
○
○:直接的な働きかけ,△:日常的な連携
表29は,研修前に受講者が受けた指導及び,所属
校の管理職が行った指導内容の代表的なものを示し
ている。これらの記述から,受講者は,管理職の働
きかけにより研修に対する期待や意欲を高めると同
時に,学校の課題から自己の課題について絞込みを
行っていることが分かる。
(1) インタビュー調査の実施
表27は,インタビュー調査 (28)の対象者及びその概
要を示している。
表29
研修前における受講者と管理職のかかわり
関係者
研修前
・校長から受講を勧められ,事前の助言を受け,期待を
表27 インタビュー調査の対象者及び概要
対象
受講者
調
概
受講者
要
もって研修に臨めた。
・校長からマンネリ化した研修の改善をするためのヒン
調査期間
平成19年12月初旬から平成19年12月末
トを持ち帰るように言われ,課題意識をもった。
分析時点
平成20年1月
・参加意欲を高め,校長の思いを伝え研究主任に命課し,
調査方法
インタビューによる聞き取り
管理職
同僚
査
管理職
・レベル3の状況
調査内容
法を習得してくるように指導した。
・レベル3に影響を与える要因に係る
関係者,時期及び内容
訪問校数
現状を認識させるため,参考資料を与えた。
・自校の研修改善に生かせるヒントとなる新しい研修方
20校
この調査のねらいは, 受講者が研修プログラムへ
参加することが決定した時点から受講前,受講中,受
表30は,研修後に受講者が受けた指導・支援及び,
所属校の管理職及び同僚が行った指導・支援内容の
代表的なものを示している。これらの記述から,受
講者は管理職,主に校長の指示により,組織全体の
取組みに明確に位置付けられ,同僚,主に教務主任
- 23 -
の具体的な助言や支援により,研修内容の精緻化を
図り,企画・運営等を実施していることが分かる。
表30
研修後における受講者と管理職及び同僚のかかわり
関係者
研修後
受講者
管理職
同僚
表31
研修内容の活用を促す研修の枠組み(試案)の概略
関係者
・管理職に報告後,還元するように指導を受けた。他の
研修前
主任と連携し,ワークショップ型の研修を企画した。
課題の把握と目
学習者*
・校長への報告後,校務運営会議で研修内容の還元計画
的意識の明確化
を提案させ,校内研修を実施させた。
・主任会で報告を聞いた後,研修成果の取り入れ方を助
ニーズの把握と
プログラ
言したり,研修会の運営等の支援をしたりした。
営者
と活用
指導内容の明確
実態に応じた研
研修内容の活用
化
修内容の工夫
への支援
喚起
*
のイメージ化
研修内容の整理
策の検討
受講者の意欲の
同僚
的な習得と活用
師のサポート
課題の明確化と
管理職
研修内容の積極
研修後
実態把握と支援
明確化
講師・運
研修中
形成的評価と講
活用イメージの
ム設計者
また,インタビューにおいて,研修中の促進要因
として受講者が挙げたものは,教育センター研修に
おける「研修推進者としての役割や働きかけ」,「効
果的な手法等についての講義や先進事例の紹介」と,
それらの手法の活用法を学ぶ「演習(ワークショッ
プ型)」であった。これらは,追跡調査2において問
うた促進要因(図12)の結果と一致している。
このように,インタビュー調査及び追跡調査の結
果を分析・検討した結果,管理職の直接的な助言や
同僚の協力等の関与は,教育センターでの研修効果,
すなわち研修内容の活用に,かなりの程度で影響を
及ぼしていていることが明らかになった。
つまり,我々が最も考慮すべきは,教育センター
の提供する研修講座を通して,いかに研修効果を高
めるかであり,そのためには,研修中に内容の習得・
活用に影響を及ぼすと考えられる関係者,内容,時
期(タイミング)を想定して,研修内容づくりを意
図的に進めることであるといえる。
4
も視野に入れた精緻な評価を実施したり,研修内容
や手法について再吟味したりすることが可能になる
のではないかと考える。
研修内容の活用
への指導・助言
学校の課題を共
研修内容の活用
有化
への協力
関係者:
「学習者」とは,キャファレラの区分による表記
を採用したものであり,表33中の関係者:
「受講者」と同義
である。
Ⅶ
研究のまとめ
図16は,以下に示す成果をPDCAサイクルに位置付
けた教員研修評価・改善システム(案)である。
本研究における研修の枠組み(試案)
以上のことから,表31のように「研修の枠組み(概
略)」を策定した。詳細については,巻末資料3(29)を
参照されたい。本研究において策定した研修の枠組
み(試案)は,受講者が学習した知識・スキルを,
所属校において活用できるような支援や働きかけ
が,研修プログラムのそれぞれの時期において適切
になされたかどうかについての測定・評価に活用で
きると考える。
換言すれば,この枠組み(試案)の活用により,
講師やプログラム設計者は,講座中の観察や気づき
に基づく主観的な効果の把握や直後に実施するアン
ケートの記述等に頼る従来の評価手法では見逃して
いた視点について,客観的,網羅的な把握ができる。
そして,学校との研修前・研修後の連携に係る改善
図16 教員研修評価・改善システム(案)
1
○
- 24 -
研究の成果
平成18年度に策定した「キーワード法」による
レベル2の測定手法を用いて,昨年度とは異なる
専門研修講座を対象に研修効果の測定を実施した
結果,その有効性及び汎用性を確認できた。
○
「行動・特性」を仮の評価指標として策定し,
効果測定を実施した結果,レベル2の測定手法に
おける重要キーワードとの関連及びレベル3の還
元状況による「転移」,「追試」タイプとの関連に
よる分析を通して,この評価指標の一定の妥当性
を確認できた。
○ 文献研究を通して行動変容に影響を与える要因
を分析・整理するとともに,レベル3のアンケー
ト調査から実証的に行動変容の促進要因の特定を
試みた結果,策定した促進要因項目の一定の妥当
性を確認できた。
○ 本研究において得た行動変容の促進要因に関す
る知見及びインタビュー調査の結果を基に,研修
の設計・実施に活用可能な「研修内容の活用を促
す研修の枠組み(試案)
」を策定できた。
2
今後の課題
○
「行動・特性」を評価指標としてレベル3(行
動変容度)の効果測定を実施し,今年度の研究で
得た仮説を検証する。
○ レベル2(理解度)の分析結果とレベル3(行
動変容度)を関連付けて行動変容に影響を与える
要因について更なる分析・検証を行う。
○ 「研修内容の活用を促す研修の枠組み(試案)」
の更なる構造化を図り,教員研修評価・改善シス
テム(案)としての精度を高めることである。
おわりに
平成18年12月の教育基本法の改正に続き,昨年6
月には教育三法が改正された。更に,平成20年1月
17日には学習指導要領の改訂に向けた中央教育審議
会答申「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特
別支援学校の学習指導要領等の改善について」が示
されたところである。新しい学習指導要領は,現行
の学習指導要領の理念を引き継ぎ,「生きる力」(30)
が「新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化を
はじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛
躍的に重要性を増す『知識基盤社会』の時代」25)を
担う児童生徒に身に付けさせたい能力であるとして
いる。これは,社会の急激な変化に対応すべく,知
識・技術の更新とその応用が求められる現代では,
「何を知っているか」ではなく,
「知っていることを
どのように応用するか」が問われるためである。
この力を育成していく役割を担う教師・学校は,
児童生徒の現状を踏まえ,何を重点的に指導してい
くのか,また,どのようなテーマでどのような手だ
てを講じることが児童生徒の意欲向上や,思考力や
判断力等の育成につながるのかといった教育内容の
更なる吟味を求められている。
このような状況にある教師・学校を支援するため,
より質の高い研修を提供することが我々の責務であ
ることはいうまでもない。この意味で,本研究にお
いて開発した教員研修評価・改善システム(案)は,
我々が提供した研修の成果を客観的に測定・評価し,
改善に役立つシステムとして,その実用性を期待で
きる。なぜなら,このシステム(案)に組み入れた
測定手法は,受講者の満足度のみならず,理解度や
活用状況等の把握が可能であり,同時に研修内容の
活用を促進する要因の特定を通して,より質の高い
研修づくりへ向けた具体的な改善点を見いだせるか
らである。更に,従来講師が経験的に行ってきた働
きかけや手法等を,先行理論や実証的な研究による
知見を基に整理し,再吟味した「研修内容の活用を
促す研修の枠組み(試案)」は,研修効果を最大限に
引き出す設計・実施に有効な方途となるであろう。
このシステム(案)の考え方が,他の研修機関にお
いても採用され,研修プログラムの設計・実施・評
価に活用されることを期待してやまない。また,学
校にとっても,研修前後に受講者に対して行う働き
かけの指針となることを期待している。そうなれば,
研修内容の「転移」を一層促進するにちがいない。
本稿を終えるに当たり,調査に御協力くださった
「校内研修の活性化講座」並びに「教育総合講座」
の受講者の皆様,所属校の校長・同僚の皆様,また
研究全般に係り御指導・助言をくださった広島大学
大学院教育学研究科曽余田浩史准教授,金川舞貴子
助教,そしてインタビュー調査に係り全面的に御協
力くださった広島大学大学院教育学研究科附属教育
実践総合センター時永益徳准教授に衷心より感謝を
申し上げる。
【注】
(1) ROSEMARY S.CAFFARELLA(2002):『PLANNING PROGRAMS FOR
ADULT LEARNERS』 JOSSEY-BASS A WILEY IMPRINT
pp.203-223参照
(2) OJTとは,実際の職場において,上司が職務や仕事を通し
て日々指導していく方法。五十嵐瞭(2002):
『人材開発に成
功する事典』p.70参照
(3) 渡邊洋子(2002):『生涯学習時代の成人教育学』明石書店
p.198を基に稿者作成
(4) 研修内容の中核的な内容をキーワードとして示し,更に
- 25 -
そのキーワードを記述した根拠を記述するもので,正誤形
式テストでは十分測定できない「なぜそのキーワードを選
効果測定を通して-」
『研究紀要31号』広島県立教育センタ
択したのか」という根拠を含めた深い理解度を見ることが
ー p.2参照
可能である。平松陽一(2006):
『教育研修の効果測定と評価
(21) この「10年研究」の結果は,研修効果の定義付けや測定・
評価に関する考え方及び進め方についての一定の方向性を
のしかた』p.98参照
示したという点での成果は認めることはできるが,次の2
(5) 赤尾勝己,山川肖美(2004):『生涯学習理論を学ぶ人のた
点において不十分である。①受講者が研修内容をどの程度
めに』世界思想社 p.149参照
(6) 総括的評価は,学習者の成績と指導の有効性に関する判
理解しているかということが,職場における研修内容の還
断をするためのものである。R.M.ガニエ,W.W.ウェイジャ
元を左右するということについて考慮されていないため,
ー,K.C.ゴラス,J.M.ケラー(2007):
『インストラクショナル
受講者の理解の程度について客観的,質的な測定・評価が
デザインの原理』p.401参照。
なされていない。②受講者の「意識・行動の変容」に影響
を与える要因として,
「同僚性とメンタリング」に焦点化し
(7) 浅野良一(平成17年):『「研修評価・効果測定の考え方と
進め方」自治大学校
た理由や,他の要因についての言及が十分なされていない。
別冊資料1』p.15-16を稿者要約
(8) 形成的評価とは,学習者に改善へのフィードバックを提
(22) 浅野良一(平成17年)は,受講者の行動変容が,受講した
供したり,研修設計者に研修の改善に必要なデータを提供
集合研修以外にも,受講者自身の要因,環境・業務要因,
職場要因によって影響を受けることを指摘している。
したりするものである。R.M.ガニエ,W.W.ウェイジャ
(23) MARY L.BROAD , JOHN W.NEWSTROM(1992): 『 TRANSFER OF
ー,K.C.ゴラス,J.M.ケラー(2007):前掲書 p.400参照。
TRAINING』ADDISON-WESLEY PUBLISHING COMPANY pp.21-22
(9) レベル3の五つのタイプは,行動変容・還元状況につい
を基に稿者が作成
て受講者及び管理職・同僚が記述した内容を概括的に分
析・考察することにより策定したものである。広島県立教
(24) 心理学において「行動的な知識」として分類されている。
その例としてピアノの弾き方などが挙げられる。
育センター(平成19年):研究紀要34号 p.10参照
(25) MARY L.BROAD,JOHN W.NEWSTROM(1992): 前掲書 pp.8-9
(10) 浅野良一(平成17年): 前掲書 p.13を稿者要約
を基に稿者が作成
(11) IDとは,教育の場などにおいて,学習者の学習を支援し,
高い学習効果が生じることを意図して,具体的な計画を立
(26) キャファレラ(2002)は,研修を企画・実施する立場から
てることである。IDの原理については,R.M.ガニエ,W.W.
影響を及ぼしやすい要因として,他に「学んだことを活か
ウェイジャー,K.C.ゴラス,J.M.ケラー(2007):前掲書参照
すために必要な変化(変化を支える環境が整備されている
(12) ジョン・キャロル(1963)は,主な変数として,他に「学
か等)」,「組織の状況(上司のサポート等)」,「組織を取り
習者の辛抱強さ」,「学習者の学習能力」を挙げている。
巻く環境(経済状況等)」の3点を示している。
ROSEMARY S.CAFFARELLA(2002):前掲書 pp.210-211参照
(13) 浅野良一(平成17年): 前掲書 p.15参照
(14) このカテゴリーは,次に示す四つである。受講者は研修
(27) ROSEMARY S.CAFFARELLA(2002):前掲書 p.214 を基に稿
者が作成
内容を①理解しており,行動にも移している。②理解して
いるが,行動には移していない。③理解していないが,行
(28) この調査は,客観性,信頼性を高めるため,広島大学大
動に移している。④理解していないため,行動にも表れて
学院教育学研究科曽余田准教授に依頼した。事前に研修内
いない。
容に係る情報提供や質問内容項目について協議を行った。
(15) 平松陽一(2006):『教育研修の効果測定と評価のしかた』
また,訪問校20校の抽出は,追跡調査1の結果や学校規模等
日興企画 p.16参照
の要件を考慮して行った。
(16) 表6は,平松陽一(2006):『教育研修の効果測定と評価の
(29) この試案は,研修内容の活用を促すための枠組みの一例
しかた』日興企画 p.17を基に,稿者が整理
として促進内容を網羅したものに過ぎず,この内容項目を
(17) 360度評価とは,上司のみでなく職場の同僚,後輩,部下,
全て忠実に実施することを求めているものではない。活用
仕事の関係者等,受講者が接する人から多面的に評価を受
の際には,研修のねらいに応じて内容項目を取捨選択する
ける方法である。五十嵐瞭(2002):
『人材開発に成功する事
必要があろう。また,一般に研修効果に影響を与えると考
典』p.108参照
えられているレディネスを高める働きかけ,すなわち教育
(18) 浅野良一(平成17年): 前掲書 pp.13-19 参照
センターの提示する事前課題等を検証の視点に含めていな
(19) 浅野良一(平成17年): 前掲書 p.19 図表16「行動変容度
い。この点に関しては今後の検討課題ととらえている。
(30)「生きる力」とは,基礎・基本を確実に身に付け,これを
調査のステップ」基に稿者が作成
(20) 島本智子他(平成16年):
「教員の資質・能力及び指導力の
活用して自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よ
向上を図る研修の効果に関する研究Ⅱ-10年経験者研修の
りよく問題を解決する資質や能力等を意味している。中央
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教育審議会答申(平成20年):「幼稚園,小学校,中学校,高
24) MARY L.BROAD,JOHN W.NEWSTROM(1992): 前掲書 p.12
等学校及び特別支援学校の学習指導要領の改善について」
25) 中央教育審議会答申(平成20年):「幼稚園,小学校,中学
校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領の改善につい
リーフレット参照
て」リーフレットp.2
【引用文献】
1) 渡邊洋子(2002):『生涯学習時代の成人教育学』明石書店
【主な参考文献】
浅野良一他(平成15年):
『研修効果測定システムに関する報告
p.198
2) Donald L. Kirkpatrick and James D. Kirkpatrick (2006):
『 Evaluating Training Programs 』 BERRETT-KOEHLER
書』学校法人産業能率大学
浅野良一他(平成19年):
『研修評価・効果測定の考え方と進め
PUBLISHERS,INC p.22
方』兵庫教育大学大学院
3) 赤尾勝己,山川肖美(2004):『生涯学習理論を学ぶ人のた
E・D・ガ二エ(1989):
『学習指導と認知心理学』パーソナルメ
めに』世界思想社 p.150
ディア
4) 赤尾勝己,山川肖美(2004): 上掲書 p.143
桐村晋次(1985):
『人材育成の進め方』日本経済新聞出版社
5) Donald L. Kirkpatrick and James D. Kirkpatrick (2006):
古賀一博他「スクールリーダー養成プログラムのための教育
前掲書 p.42
内容・方法に関する開発的研究」プロジェクト(平成16年):
6) Donald L. Kirkpatrick and James D. Kirkpatrick (2006):
『スクールリーダー養成プログラムのための教育内容・方
前掲書 p.52
法に関する開発的研究』広島大学大学院教育学研究科
7) R.M.ガニエ,W.W.ウェイジャー,K.C.ゴラス,J.M.ケラー
島本智子他(平成16年):
「教員の資質・能力及び指導力の向上
(2007):
『インストラクショナルデザインの原理』北大路書
を図る研修の効果に関する研究Ⅱ-10年経験者研修の効果
房 p.399
測定を通して-」『研究紀要31号』広島県立教育センター
8) MARY L.BROAD,JOHN W.NEWSTROM(1992):『TRANSFER OF
ジャック J.フィリップス(1991):
『教育研修効果測定ハンド
TRAINING』ADDISON-WESLEY PUBLISHING COMPANY p.6
ブック』日本能率協会
9) MARY L.BROAD,JOHN W.NEWSTROM(1992): 上掲書 p.6
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部(2007):『人
10) MARY L.BROAD,JOHN W.NEWSTROM(1992): 上掲書 p.6
材育成の戦略』ダイヤモンド社
11) 堀薫夫,三輪健二(2002):
『成人教育の現代的実践』p.315
独立行政法人教員研修センター(平成17年):
『研修の企画・運
12) R.M.ガニエ,W.W.ウェイジャー,K.C.ゴラス,J.M.ケラー
営講師のための知識・技術』
Donald L. Kirkpatrick and James D. Kirkpatrick (2007):
(2007): 前掲書 p.401
『IMPLEMENTING THE FOUR LEVELS』BERRETT-KOEHLER
13) R.M.ガニエ,W.W.ウェイジャー,K.C.ゴラス,J.M.ケラー
PUBLISHERS,INC
(2007): 前掲書 p.410
14) 浅野良一(平成17年):
『「研修評価・効果測定の考え方と進
め方」自治大学校
長谷川央(2001):『教務主任の役割と実務』文教書店
広島県教育委員会(平成18年):『人事評価ハンドブック(増補
別冊資料1』p.13
15)ピーター M.センゲ(2003):『10の変革課題』日本経済新聞
社 p.235
版)』
広島県教育委員会(平成17年):「人材育成の基本方針」及び「求
16) R.M.ガニエ,W.W.ウェイジャー,K.C.ゴラス,J.M.ケラー
められる教職員像」
(2007):前掲書 p.4
広島県教育委員会(平成15年):『授業改善のための校内研修ハ
17) 平松陽一(2006):『教育研修の効果測定と評価のしかた』
日興企画 p.16
ンドブック』
古川久敬(1990):『構造こわし』誠信書房
18) 浅野良一(平成17年):前掲書 p.16
古川久敬(2004):『チームマネジメント』日本経済新聞社
19) Donald L. Kirkpatrick and James D. Kirkpatrick (2006):
三宅啓介他(平成19年):「教員研修評価・改善システムに関す
前掲書 p.238
る研究-研修効果測定の方法とその評価指標の構築や検証
20) MARY L.BROAD,JOHN W.NEWSTROM(1992):『TRANSFER OF
を通して-」『研究紀要34号』広島県立教育センター
TRAINING』ADDISON-WESLEY PUBLISHING COMPANY pp.7-8
吉田新一郎(2006):『効果10倍の<教える>技術』PHP新書
21) Donald L. Kirkpatrick and James D. Kirkpatrick (2006):
前掲書 p.23
22) MARY L.BROAD,JOHN W.NEWSTROM(1992): 前掲書 p.8
23) MARY L.BROAD,JOHN W.NEWSTROM(1992): 前掲書 p.8
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【巻末資料1】
研修直後アンケート:レベル2測定用
キーワード等の記入用シート
【巻末資料2】
研修事後アンケート:レベル3測定用
研究主任等に求められる「行動・特性」項目
【巻末資料3】
研修内容の活用を促す研修の枠組み(試案)
関係者
受講者
研修前
学習者
プログラム
設計者
研修中
研修内容の積極的な習得と活用のイメージ化
研修内容の整理と活用
○学校の実態や課題を把握し,職場において活用が
期待されている内容等を明確にする。
○自己の課題を把握し,身に付けるべき資質・能力
を明確にする。
○管理職の助言を受け,研修の目的や期待を認識
し,研修参加への意欲を高める。
○研修に主体的,積極的に参加し,自己の課題の
解決に必要な研修内容(知識,技能,態度等及び
手法)を身に付ける。
○所属校の実態や状況と関連付け,研修内容を活
用する場面を想定する。
○他の受講者と積極的に情報交換を行い,所属校
や自己の課題解決に必要な情報を収集する。
○研修内容を整理し,活用したい内容(知識,技
能,態度等及び手法)を明確にする。
○管理職の助言を得たり,同僚と連携したりして,
所属校の実態に応じた活用内容を検討する。
○所属校において検討した内容を活用する。
ニーズの把握と活用イメージの明確化
形成的評価と講師のサポート
実態把握と支援策の検討
○受講者や所属校のニーズを把握する。
○受講者に活用して欲しい内容(知識,技能,態度
等及び手法)を明確にし,講師・運営者に伝え,
講座イメージの構築を支援する。
○形成的評価を行い,研修の進捗状況や受講者の
理解度等を確認する。
○受講者の理解度等を把握し,必要に応じて,講
師に研修内容(知識,技能,態度等及び手法)に
係る代替案を提示する等の支援を行う。
○研修事後のアンケート調査等により,研修効果
を把握する。
○講師・運営者と連携し,把握した研修効果の結
果を基に,受講者が研修内容(知識,技能,態度
等及び手法)を活用する際の課題を分析し,支援
策を検討する。
指導内容の明確化
実態に応じた研修内容の工夫
研修内容の活用への支援
○受講者に活用して欲しい内容(知識,技能,態度
等及び手法)を明確にし,講座イメージをもつ。
○受講者のレディネスを把握し,研修内容を活用す
る場面を想定する中で,研修内容や教材を選択,
配列する。
○受講者が主体的に参加できるワークショップ型
研修等の手法を積極的に活用する。
○受講者が所属する学校の実態に応じて,内容や
グループ編成等を工夫することで活用のイメー
ジ化を促す。
○受講者が研修内容(知識,技能,態度等及び手
法)を活用するために必要な支援策を具体的に検
討する。
○受講者のニーズ等に応じ,個別に研修内容の活
用を支援する。
教育
センター
講師・運営者
管理職
校長・教頭等
課題の明確化と受講者の意欲の喚起
研修内容の活用への指導・助言
○学校や受講者の課題を把握し,身に付けさせたい
資質・能力を明確にしておく。
○学校の実態や課題を受講者に伝え,職場において
活用を期待している内容等を明確にする。
○校長等の期待や研修の意義を受講者に伝え,研
修参加への意欲を高める。
○受講者が習得した研修内容(知識,技能,態度
等及び手法)が,所属校の実態に応じた適切なも
のになるよう検討させる。
○受講者の取組みを肯定的に評価し,活用を促進
する。
○主任等が当事者意識をもち,受講者の取組みを
支援するような体制づくりを行う。
学校の課題を共有化
研修内容の活用への協力
○学校の実態や課題について日常的に情報交換等
を行う。
○活用する研修内容(知識,技能,態度等及び手
法)が所属校の実態に応じた適切なものになるよ
う支援する。
○主任等は当事者意識をもち,受講者の取組みを
支援する。
学校
同僚
研修後
課題の把握と目的意識の明確化
教務主任等
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