日本学術振興会ストラスブール研究連絡センター活動報告

日本学術振興会ストラスブール研究連絡センター活動報告
(2006 年 1 月~3 月号)
フランス各地での学振事業説明会及び同窓会支部会の開催
12 月 13 日
Rouen 大学及び INSA-Rouen 訪問
Rouen は穀物の輸出港として知られていますが、化学工業、石油精製も盛んなため、Rouen 大学と
INSA(Institut National des Sciences Appliquées)が共同で応用化学分野の研究が活発に行なわれていま
す。Rouen 大学 Prof. Jean-François VERCHERE(前高分子研究所長)、Prof. Georges DUPAS (INSA
教授/Rouen 大学化学—生物博士課程研究科長) 、Prof. Patrice LEROUGE(生物研究科)から、高分子
化学研究所(Laboratoire de Chimie Macromoléculaire)、精密有機化学研究所(Institut de Recherche en
Chimie Organique Fine (IRCOF))、遺伝子治療などの分野で進んでいる INSERM 研究所についての説
明を受けた後、各研究室を訪問しました。次いで、JSPS の事業説明会を学振フランス同窓会ノルマンデ
イー支部会幹部の Prof. Xavier PANNECOUCKE (INSA-Rouen 教授)と共同で行いました。
Prof. Georges DUPAS (INSA 教 授
/Rouen 大学化学—生物博士課程研究科
長)及び Prof. Xavier PANNECOCKE
(INSA-Rouen 教授)
12 月 14 日
Prof. Xavier PANNECOUCKE
(INSA-Rouen 教授、学振同窓会ノル
マンディー支部会幹部)による発表
GANIL、Caen Basse-Normandie 大学、ENSICAEN 訪問
ノルマンデイー公国の首都としてまた、
ノルマンデイー上陸作戦の歴史的スポットとして名高い Caen は、
フランスの誇る GANIL(国立重イオン加速器研究所)や、Rouen-Le Havre-Caen 大学間の共同博士課程
プログラムによって、高度な研究レベルを保っています。GANIL を訪問し、Prof. Sydeney GALES(所
長)
、Dr. Philippe CHOMAZ(副所長)から同研究所の説明を受けた後、重イオン加速器、医学への応用
などの研究施設を見学しました。次いで、Caen Basse-Normandie 大学及び Ecole National Supérieure
Ingénieurs Caen 訪問し、Prof. Xavier HUSSON(Caen Basse-Normandie 大学研究担当副学長)、Prof.
Annie-Claude GAUMONT(同大学化学—生物博士課程研究科長)、Prof. Jacques Rouden(Ecole
Nationale Superience Ingénieurs 国際担当部長)らと意見交換を行い、また、分子化学・有機硫黄化学
研究所を訪問(所長 Dr. Patrick METZNER)しました。その後、JSPS の事業説明会を学振フランス同
窓会ノルマンデイー支部会幹部の Dr. David BOILLEY(Ganil 研究員 JSPS OB)と共同で行いました。
GANIL : 左 か ら Dr. Philippe
CHOMAZ(副所長)、Prof. Sydeney
GALES(所長)、中谷センター長、
Dr. David BOILLEY(Ganil 研究員)
Prof. Annie-Claude GAUMONT
(Caen Basse-Normandie 大学化
学・生物博士課程研究科長)
(中央)
の研究室訪問 1
Dr. David BOILLEY(Ganil 研究員、
学振同窓会ノルマンディー支部会幹
部)による発表
1 月 25 日
Paris
-
Museum National d’Histoire Naturelle 訪問
1635 年に王立薬用植物園として創立された、
国立自然史博物館(Museum
National d’Histoire Naturelle)は、フランス革命時の 1793 年から現在
の形となり、数世紀に渡ってヨーロッパでの優れた自然史博物館として
世界中で知られています。現在7研究科と3展示研究科を有する同博物
館は、220 人の教員、250 人の研究者によって、395 人のマスター、ドク
ターの学生の教育に力を入れる共に活発な研究活動を行なっています。
Dr. Sylvie REBUFFAT(科学顧問)、Prof. Marie-Pascale DEBEY(博
士課程研究科科長)
、Dr. Mayiam NECHAD(国際交流顧問)から、同博
物館の概要の説明を受けた後、日本との共同研究の盛んな 6 研究室(考
古動物学、地質年代学、古生物多様性・古環境学、ナノ分析、分類学・
収集、内分泌調節進化)を訪問し、各室長(Dr. Jean-Denis VIGNE、Prof.
Christian Jourdain de MUIZON 、 Dr. Sevket SEN 、 Prof. Anders
MEIBOM、Prof. Philippe BOUCHET、Prof. Barbara DEMENEIX)か
ら、研究テーマの説明をうけました。次いで、由緒ある講堂において、
約 50 人の研究者及び大学院生を前に、
学振事業説明会を行ない、
続いて、
JSPS フェローシップにより日本で研究を行った同博物館の数名の研究
者(Prof. Brigitte SENUT など)による体験談が披露されました。
国立自然史博物館見学
Prof.Christian Jourdain de
MUIZON、左から二人目
Prof. Brigitte SENUT(国立
1 月 26 日
Pierre et Marie Curie(パリ第 6)大学訪問
自然史博物館教授、学振同窓会
パリ支部会幹部)による発表
Pierre et Marie Curie 大学(UPMC)は13校あるパリ大学の一つです。パリ大学とは 12 世紀に創設され
たヨーロッパでも最古の部類に入る歴史ある大学で、パリ、クレテイユおよびヴェルサイユの 3 大学区に
ある 13 の大学の総称です。UPMC は 1971 年にそれまで科学学部として属していたパリ大学からラジウム発
見者であるキューリ夫妻の名を冠した一大学として分離独立し、今日フランスにおける最も大きな科学・
医学の複合大学で、その多岐に渡る教育研究分野は、化学、自然科学、情報学、電気学、数学、情報学、
機械学、物理学、地球科学、生命科学の学部、10 分野 59 専攻の修士課程、20 の博士課程を有し、現在教
授・研究者 4,000 人、技官・事務職員 3,000 人、研究室数 180、学生数 30,000 人(うち医学部生 10,000
人)に渡っています。1 年間に修士号取得者 3,000 人、医学博士号取得者 300 人、医学以外の博士号取得
者 700 人を輩出し、2005 年度の上海交通大学による Academic Ranking of World Universities ではフラ
ンス第 1 位の大学にノミネートされました。180 の研究室を有し、その大半は CNRS や INSERM との連盟研
究室です。また、JSPS フェローシッププログラムによって日本との盛んな交流が行なわれています。
同大学分子化学研究科(パリの幾つかの大学、グランゼコール、国立自然史博物館に所属する、9 研究ユ
ニットから構成される総合博士課程)において、約 50 人の研究者及び大学院生を前に、学振事業説明会
を行ない、続いて、JSPS のフェローシップで日本で研究を行なったパリの幾つかの大学、グランゼコール
の 研 究 者 ( Dr. Robert PANSU ( CNRS 主 任 研 究 員 ・ JSPS OB 会 会 計 主 任 )、 Dr. Anne-Lise
POQUET-DHIMANE (パリ第六大学講師・パリ JSPS OB 会幹部)など)による体験談が披露されました。
その後、出席者全員と立食形式による懇談会を行ない、Prof. Max MALACRIA(分子化学博士課程研究
科科長)、Pr. Jean-Marie VALERY(同前研究科科長)、Corinne AUBERT(CNRS 主任研究員、高等教育・
研究担当省エキスパート)、Dr. Virginie VIDAL(CNRS 主任研究員・ENSCP)らと、日仏学術交流につ
いて話合いました。
Prof. Marie-Claire LETT(Louis
Pasteur 大学教授、学振同窓会会長)
による挨拶
Dr. Robert PANSU(CNRS 主
2
任研究員、学振同窓会会計主任)
による発表
2 月 13 日
Paul Sabatier 大学(トゥールーズ)、LAAS-CNRS 訪問
1229 年に創立された Paul Sabatier 大学は、ボローニャ大学、
オックスフォード大学、パリ大学、ハイデルベルグ大学などと並
んで、ヨーロッパにおける最も歴史ある大学として知られていま
す。科学、保険医療、テクノロジー、スポーツなどの学科があり、
その規模と教育レベルの高さではフランスのトップレベルを保
っています。28000 名の学生、2000 名の教職研究者、600 名の
国家機関研究員、1300 人のエンジニア、技術者、職員、図書館
員が、様々な教育研究機関、学科、研究科にそれぞれ携わってい
ます。
同大学はとりわけ、科学技術、医者、外科医、歯医者、薬剤師、
研究者、教育者などの管理職養成、また、現代社会に対応した学
生の就職支援に力を注いでいます。
Paul Sabatier 大学では、固体 NMR を用いて膜タンパク質の構 左から中谷センター長、Prof. Bruno
造解析を行なっている、同大学副学長 Prof. Alain MILON(学振 CHAUDRET(CNRS-LCC 所長)、Dr.
フランス同窓会副会長)の研究室を訪問し、同大学講師や、CNRS Laurent JALABERT(LAAS 研究員)、
研究員らと研究討論を行ないました。また、今回の訪問では、平 Prof. Alain MILON(Paul Sabatier 大学
成 18 年度に開催を予定しているフランス同窓会トゥールーズ支 副学長、学振フランス同窓会副会長)
部会との共同学振事業説明会の準備会議を Prof. Alain MILON
(学振フランス同窓会副会長)及び LAAS-CNRS の Dr. Laurent JALABERT(同研究員、JSPS OB)
と LAAS(Laboratoire d’Analyse et d’Archistecture des Systèmes)にて行いました。LAAS は、1967 年に
創立された CNRS の誇る電子工学・オートメーション・情報工学の大研究所で、429 名の研究者と 108
名のエンジニアで構成されています。外国との共同研究も盛んで 13 のプロジェクトが動いています。ま
た、LAAS は東京大学生産技術研究所と CNRS の国際共同研究所 LIMMS(Laboratory for Integrated
Micro Mechatronic Systems) の 主 要 な 構 成 メ ン バ ー で 、 同 研 究 所 現 研 究 所 長 Dr. Christian
BERGAUD(JSPS OB)は、LAAS の研究者でもあります。
次いで、2006 年 11 月 24 日にストラスブールで開催予定の「第 5 回 JSPS フォーラム:Chemistry
contributing to the society:Green Sustainable Chemistry」で講演予定の Prof. Bruno CHAUDRET
(CNRS-LCC 所長)とも面会し、フォーラムの打合せを行いました。
2 月 14 日
Ecole des Mines d’Albi-Carmaux(アルビ)訪問
Ecole des Mines d’Albi-Carmaux は、経済・財政・産業省が管轄するフランス国内に 7 校ある Ecole des
Mines(パリ、サンテチエンヌ、ナンシー、ナントなど)の一つです。Ecole des Mines はもともとルイ
16 世により 1783 年に当時需要の高かった鉱山技師の養成学校として設立され、現在に至るまで工業技術
分野のエリートを養成するグランゼコールとして重要な役割を担ってきました。アルビ校はその中でも最
も新しく 1992 年に設立され、学生数は約 500 名、教授・研究者数は約 70 名です。最終学年では、薬学、
生物工学、環境工学、エネルギー工学、材料工学、航空宇宙材料、工業プロセス、情報システム工学の 8
専攻別に専門教育が行われ、各学生は在学期間中に 12 ヶ月または 14 ヶ月の企業でのインターンシップを
行うことが義務とされています。卒業後の進路先としては、薬学、化粧品、化学、航空宇宙関連の企業な
ど多岐にわたっています。22 ヘクタールのキャンパスには、最新設備を備えた実験室、24 時間インター
ネットアクセス可能なコンピュータルームや最新機器を備えた大型講義室などを有する近代的な建物
(40,000 ㎡)が一際目を引きます。キャンパス内には学生宿舎、スポーツ施設も備わっており、学生の
快適なキャンパスライフについても配慮されていました。
Ecole des Mines d’Albi-Carmaux で
の学振事業説明会
左から Prof. Michel BARON(同校薬学部長)、中谷
センター長、Prof. Bruno VERLON(同校学長)
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3 月 16 日
Louis Pasteur 大学(ストラスブール)での学振事業説明会
Louis Pasteur 大学は 1538 年設立と長い伝統を誇り、現在まで 17 名のノーベル賞受賞者、1 名のフィー
ルズ賞受賞者、12 名のフランス科学アカデミーメンバーを輩出するフランス屈指の最高学府です。フラ
ンス文部省の評価第 1 位(1999 年度)、Le Nouvel Observatoire のアンケート第 1 位(2003 年度)を獲
得する等、フランスはもちろん欧州内外で高い評価を得ています。こうした実績は外国人学生に対しても
大きな魅力を発揮し、学生総数約 18,000 人のうち、約 4,000 人が外国人学生であり、教授等の研究者で
も外国人の占める割合が高いことが特徴です。現在博士課程に 1,300 人の学生が在籍し、毎年 300 人が博
士号を取得し、2,000 人の教授・研究者と 900 人のエンジニアが 62 の研究ユニットに所属しています。
ここ数年 Louis Pasteur 大学に新規採用された教官の 25%が外国人であり、フランス人と同一の選考基
準で採用されています。
また、同大学はヨーロッパ諸国間での学生および教官の交流の為のエラスムス(Erasmus)、ドイツの大
学との間の l’Université franco-allemande(UFA)、ライン川上流地域 7 大学のネットワーク EUCOR に
所属して、積極的に学生・教授・研究者の交流を行っており、さらに、2002 年には LERU(League of
European Research Universities)というヨーロッパで基礎研究、および教育レベルがもっとも高いと評
価されている 12 大学(Cambridge, Edinburgh, Geneve, Heidelberg, Helsinki, Leiden, Leuven, Milan,
Munchen, Oxford, Karolinska, Louis Pasteur)の組織の一員となりました。LERU はヨーロッパでの研
究教育レベルの向上に積極的な役割を果たすものと期待され、2006 年に Amsterdam, Lunds ,College
London, Paris-Sud 11, Utrecht ,Zürich の各大学が加えられさらに強化されています。
同大学で行ったフランス同窓会との合同学振事業説明会には 53 名の参加があり、引き続き行われた説明
会後の懇親会では、参加者と同窓会会員との活発な意見交換が続きました。
学振事業説明を行う荒木良江研修生
(ストラスブール研究連絡センター)
日本紹介を行う Prof. Marie-Claire
LETT(Louis Pasteur 大学、フラン
ス同窓会会長)
参加者と同窓会会員の懇親会
フランス外務省とのSAKURA事業選考委員会の開催
11 月 29 日(火)にフランス外務省において、2006 年度 SAKURA 事業の日仏合同選考会が開催され、12
件の新規採択課題及び4件の補欠候補課題が選ばれました。この事業はフランス外務省と日本学術振興会
による覚書に基づくもので、日仏両国の若手研究者が新たに国際共同研究を開始する能力を養うこと及び
人的ネットワークを形成することを目指して作られた事業です。それぞれの国の研究者が相手側研究者と
協力して行う共同研究の実施に要する経費が支援されます。
事業の詳細につきましては、学振ホームページをご覧ください。
http://www.jsps.go.jp/j-bilat/semin/sakura18_boshu.html(日本語)
http://www.jsps.go.jp/english/e-bilat/french_18.html(フランス語)
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平成 18 年度開催フォーラム等の準備会合
1月9日
フランス科学アカデミー訪問(パリ)
フランス科学アカデミーを訪問し、Prof. André CAPRON(同アカデミーキャビネットメンバー・国際局
長)及び Dr. Michel COHEN-SOLAL(国際担当課長)と共同ワークショップ: “Translational research from
genome-based sciences to clinical medicine” のための打ち合わせを行いました。この共同ワークショップ
は 2006 年 9 月 5 日(火)にフランス学士院(Institut de France、パリ)にて開催されます。
左から中谷センター長、Prof. André CAPRON(国際
局長)、Prof. Michel COHEN-SOLAL(国際担当課
長)
1 月 10 日
Institut de France(パリ)
高等教育及び研究担当省訪問
高等教育及び研究担当省を訪問し、Prof. Roger GUILARD(同省化学担当部長)、Dr. Dominique AUNIS
(同省生物・医学・健康担当部長)と第 5 回 JSPS フォーラム: “Chemistry contributing to the society :
green sustainable chemistry” に関する打合せを行いました。フォーラムの開催日、場所、講演予定者(日
仏各 4 人)及び講演題目は以下の通りです。
Fifth JSPS Forum in France:
« Chemistry contributing to the Society: Green Sustainable Chemistry »
in collaboration with French Ministry of Higher Education and Research (MENESR) and
Louis Pasteur University
24 November 2006, ISIS, Louis Pasteur University, Strasbourg
Makoto MISONO, “Chemical Science and Technology for the Future Sustainable Society”
Armand LATTES, “Green Chemistry and Reactivity in Organized Molecular Systems”
Takashi TATSUMI, "Sophisticated microporous and mesoporous materials utilizable for
green and sustainable chemistry"
Bruno CHAUDRET, “Organometallic Nanoparticles : Synthesis and Applications”
Shu KOBAYASHI, "Towards Truly Efficient and Powerful Organic Synthesis"
Jean-Marie TARASCON, “Which materials to design better Li-based storage systems for a
“Green Energy Society”
Susumu KITAGAWA, "Chemistry of Coordination Space Towards New Porous Materials"
Jean-Pierre SAUVAGE, ”From Chemical Topology to Molecular Machines and Motors”
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学術セミナーの開催
10 月から3月にかけては、以下の学術セミナーが開催されました。
第 37 回 北川進教授(京都大学大学院工学研究科)
「金属錯体ポーラス材料の化学と応用」
第 38 回 室伏きみ子教授(お茶の水女子大学理学部生物学科)
「細胞におけるストレス応答の分子メカニズム」
第 39 回 向井千秋客員教授(国際宇宙大学客員教授)
「宇宙連歌 スペースシャトル飛行教育プログラム」
第 40 回 Jean-Luc SOUCIET 教授(Louis Pasteur 大学)
「遺伝子進化:半子囊菌酵母からのアプローチ」
第 41 回 増尾好則氏(産業技術総合研究所グループリーダー)
「環境ストレスがラット脳に及ぼす影響:発達障害モデル動物との比較」
第 42 回 Alain MILON 教授(Paul Sabatier 大学副学長、JSPS 同窓会副会長)
「固体 NMR を用いた生体膜の構造及びダイナミックスの解析」
第 43 回 中谷延二教授(放送大学)
「香辛料に含まれる機能性成分-抗酸化成分を中心に-」
第 44 回 井上丹教授(京都大学)
「RNA アーキテクチャー」
上記セミナーの他にルイ・パスツール大学との共催セミナーが開催されました。
奈良坂紘一教授(東京大学大学院理学研究科)
「
(-)-ソルダリンの全合成」
室伏きみ子教授(お茶の水女子大学)
Prof. Alain MILON(Paul Sabatier 大学
学長)
向井千秋客員教授(国際宇宙大学)
副
中谷延二教授(放送大学)
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フランス学術ニュース
研究プログラム法案 (loi de programme pour la recherche)
1983 年に研究に関する法案が設立されて以来、フランスは研究に対する新しい法案が出されていなかっ
た。2003 年の研究者たちの請願運動をきっかけとして、フランス政府も研究を優先事項にとらえるよう
になり、国を挙げて研究を奨励するために、今回新しい研究プログラム法案が閣議で 2005 年 11 月に決定
され、元老院(SÉNAT)を 12 月に通過して国民議会(ASSEMBLEE NATIONALE)に回り、現在審議中で
ある。
政府は 2010 年までに 21000 人の研究者雇用をするという歴史的転機を促す法案と説明しているが、研究
者たちにはまだとても不十分という声が高く集会が頻繁に行なわれている。
※ 出典 http://www.pactepourlarecherche.fr/、http://recherche-en-danger.apinc.org/
ParisTech(Grandes Ecoles d’Ingenieurs de Paris, Paris Institute of Technology)について
パリにある科学・技術分野で名高い11のグランゼコールが”ParisTech”(Paris Institute of Technology)
を組織した。これらのグランゼコールを総合すると、1500 人の教員、140 の研究室、126 の修士課程、
1200 人の博士課程学生がいて、年間 2800 人のエンジニア、400 人の博士号を輩出する一大高等教育連盟
機関である。各グランゼエコールの得意とする分野を補足しあって世界のトップレベルを目指している。
加盟校の修士・博士学生の流動性も高まり、研究の上では大型研究予算の共同プロジェクトの推進が図ら
れている。共同での国際交流プロジェクトを推進し、例えば、最近はルノー財団の給費による日本の修士
課程の学生の受入れも行なっている。
※ 出典 ParisTech http://www.paristech.org
フランスにおける化学分野の重点研究テーマについて
フランス高等教育及び研究担当省 Prof. Roger GUILARD 化学担当部長によれば、同省化学部では化学の
分野の著名な 10 人の研究者からなる将来構想委員会を設け下記の 4 テーマについて重点研究を奨励する
ことに決定した。
1)生物に関する化学、 2)グリーン·サステイナブルケミストリー、 3)物質の組織化と機能化
4)生物以前の化学
LERU (Lingue européenne des universités de recherche) の強化
Louis Pasteur 大学 Bernard Carrière 学長によれば、2002 年にヨーロッパ諸国の研究教育の最も優れた
12 の大学*で結成された LERU は、2006 年 1 月 17 日、新たに 6 大学**の加盟により活動をさらに強化
する方針である。
*Cambridge, Edinburgh, Genève, Heidelberg, Helsinki, Karolinska, Leiden, Leuven, Louis Pasteur,
Milan, Munich, Oxford
** Amsterdam, Lunds, College London, Paris-Sud 11, Utrecht, Zürich.
LERU については、http://www.leru.org/ 参照のこと。
CNRS 新会長及び新理事長の就任について
2006 年 1 月 11 日の閣議で、高等教育・研究担当大臣 François GOULARD 氏の提案を受けて、
Catherine BRECHIGNAC 氏が、前会長 Bernard MEUNIER 氏(1 月 5 日辞任)の後任として CNRS
の会長に任命されました。また、2006 年 1 月 18 日の閣議で Arnold MIGUS 氏が高等教育・研究担当大
臣 François GOULARD 氏の提案を受けて、前理事長 Bernard LARROUTUROU 氏(前会長 MEUNIER
氏辞任の後、辞任)の後任として CNRS の理事長(Directeur Général)に任命されました。
CNRS 新部門長の任命について
2 月 1 日付の CNRS 会長 Catherine BRÉCHIGNAC と CNRS 理事長 Arnord MIGUS の書簡で、2 月 2
日付にて 4 部門(数学・情報・物理・地球・宇宙、化学、人間・社会、環境・持続的発展)について、そ
れぞれの新しい部門長(Michel LANOO 氏、Gilberte CHAMBAUD 氏、Marie-Françoise COUREL 氏、
Bernard DELAY 氏)が任命された。
なお、生物部門、国立宇宙科学研究所、国立核物理学・粒子物理学研究所の部長・所長には、それぞれ
Michel van der REST 氏、Sylvie JOUSSAUME 氏, Michel SPIRO 氏がとどまることが決定された。
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ANR(Agence Nationale de la Recherche)について
フランス政府はフランス国の優先研究分野を国の責任で振興・発展させるために、GIP ANR(Groupement
d’intérêt public - Agence Nationale de la Recherche)を 2005 年 2 月 7 日に設立した。この組織は、フ
ランス国(当時の高等教育担当省、研究担当省、保健省及び産業財政省)と8つの研究機関(*) がメンバー
となっている。ANR は、国の研究政策の枠組みにおいて、基礎及び応用研究、技術革新、産学連携、公
的機関の研究成果の経済界への技術移転を支援することを目的とし、科学技術の優秀さを基準にして、提
案プロジェクトの選考をするものである。事務局を国民教育・高等教育・研究省においている。国が主導
性を示す指標として、決定権の 52%を国が持ち、その他を各研究機関が 6%ずつ持っていることが当機関
の規定に定められている。
当機関は、総会を持たず、評議会がすべてを決定する。評議会のメンバーは研究担当大臣が指名する 2 名、
他省大臣が指名する各 1 名、そのほか各参加研究機関の代表者 1 名ずつから成る。評議会議長は評議会を
必要に応じて会議を招集し、少なくとも年 1 回開催している。評議会によって指名された事務局長が ANR
の実際の運営を行う。評議会事務局には公募事業を企画する 6 つのセクションがあり、そのうち 5 つは国
家の優先研究分野(持続可能なエネルギー及び環境、材料及び情報、生物及び健康、エコシステム及び持
続可能な開発、人文社会科学)で残りの1つは自由課題又は分野横断的課題のセクションである。
2005 年には 35 の公募プロジェクトが提案され、これに対し 5,400 件の申請のうち 1,400 件のプロジェク
ト(4,500 の研究グループ又は個人研究者)が採用され、助成総額は 5 億 4000 万ユーロに及んだ。この
中には、海外で活躍している極めて優秀な研究者をフランスに招へいし研究室を開設するプロジェクトや、
優秀な若手フランス人研究者による独立の研究グループの発足を支援するプロジェクトも含まれている。
各プロジェクトは 2 年~4 年間資金援助される。2006 年の公募がすでに始まっており、総額 8 億ユーロ
の助成が予定されている。
数年前までは CNRS にも競争的公募プロジェクトがあったが、
今では CNRS の総予算に占める割合が 1%
未満と極めて少なくなってきた。ANR が競争的公募プロジェクトを担当するようになり、例えば自由課
題の場合、1 件のプロジェクトにつき年間約 200,000 ユーロを助成している。
* ANVAR(Agence nationale de valorisation de la recherche), CEA(Commissariat à l’énergie
atomique), CNRS(Centre national de la recherche scientifique), INRA(Institut national de la
recherche agronomique), INRIA(Institut national de recherche en informatique et en automatique,
INSERM(Institut national de la santé et de la recherche médicale), ANRT (association national de la
recherche technique) , ACPUR(Association de la Conférence des présidents d’université pour la
recherche)の 8 機関。
~スタッフ交代のお知らせ~
当センターの事務を一年間担当させていただきましたが、このたび 3 月末に任期を終え帰国することにな
りました。一年間、各方面の方々にたいへんお世話になり、心から御礼申し上げます。日仏の研究交流と
いう大きな仕事の一端を担わせていただきとても有意義な毎日を送ることができました。
2006 年 4 月からは、白石賢一副センター長及び吉原英恵国際協力員の 2 名が新しく赴任いたします。中谷
陽一センター長のもとセンターの活動を進めてまいりますので、引き続きご支援賜りますようよろしくお
願いいたします。
日本学術振興会ストラスブール研究連絡センター
事務担当:荒木良江
JSPS Strasbourg Office, Maison Universitaire France-Japon
42a, avenue de la Foret-Noire, 67000 Strasbourg, France,
Tel: +33(0)3 90 24 20 17, Fax: +33(0)3 90 24 20 14, e-mail: [email protected]
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