年代と精神保健関連事項 1072(延久 4 年) *後三条天皇内親王女に精神異常あるも,京都・岩倉村大雲寺の井戸水 の灌滝と参籠で効能あったと伝えられ,以来,来寺する多くの精神病者 を近隣の農家・茶屋が世話した。寺院を中心にしたこうした保護的宿屋 はベルギーのゲールのそれに類似するものとされた。なお当時,[岩く らの狂女恋せよほととぎす]との俳人・蕪村の一句をみる。 1394(応永 2 年) *光明山順因寺(愛知・岡崎市),癩狂者に灸と漢方薬治療を始める。 1581(天正 9 年) *豊後由布にて,多数の病人,聖水により癒え,悪魔に愚かれた者 10 人または 12 人を癒すとの記録あり。 1599(慶長 4 年) *本多左内,大阪府・泉州南部七山の浄見寺内で家伝の秘薬と祈疇,ま た灸法で精神病者の施療を始める(今日の七山病院)。 1775(安永 4 年) *独国・メスメル,催眠術を医療に応用す。 1792(寛政 4 年) *仏国・ピネル,精神病者を鎖固から開放する。 1808(文化 5 年) *武田一■,広島県内・宮内村の専念寺家伝の秘薬で癩狂病を施療。後 に 1900 年,孫の敏恵,武田精神病院を開設する。 1818(文政 1 年) *大阪城代・御殿医,石丸周吾が精神病専門の収容施設を設置(大阪府 豊中)。漢方薬で癩狂者の施療にあたる。 1819(文政 2 年) *土田献,日本最初の精神病専門書"癩狂経験編"を著す。 1826(文政 11 年) *新潟県中蒲原郡鵜森の永井山順行寺に鵜森狂疾院開設,精神病者の施 療にあたる。ただし,開設年はこの頃とされるが,施療内容は不明。 1840(天保 11 年) *岐阜県不破郡内の鉄塔山天王寺に,祈祷による精神病者救護所が設置 されたが,催眠効果を目したものだった。 1846(弘化 3 年) *東京・葛飾郡内に奈良林一徳,漢方薬による癩狂治療所設置(後に加 命堂脳病院と改称,1919 年に東京府代用精神病院の指定を受ける)。 1849(嘉永 2 年) *緒方洪庵,西洋医学の病学書「病学通論」を刊行。乱心乱気と称され てきた用語につき,初めて「精神錯乱」の語句を用いている。 1851(嘉永 4 年) *ベルギー政府,ゲールを Gheel Colony として公認。 1869(明治 2 年) *金沢市・小野慈善院,若干の精神病者を収容する。 1870(明治 3 年) *[新律綱領(刑法にあたる)]公布。「瘋癩人の殺人罪は一人のときは終 身鎖固の上,埋葬金として被害者の遺族に二五両支払う。二人以上の殺 害したる瘋癩人は絞首刑」と記されている。 1874(明治 7 年) *警視庁布達規第 172 号;精神病者監護の責を家族の義務とする。 *文部省,東京・京都・大阪の三府に医制 76 条を公布(第 25 条に病院 建設の規定,第 26 条に微毒院・癩狂院等の各種病院設置の方法は前条 に則すと規定された)。 *東京衛戌病院(陸軍病院)に精神科病室設置。 *太政官達第 612 号恤救規則に「極貧の独身者にて,廃疾に罹り産業を 営む能はざるものには,一ケ年,一石八斗の米を与えるべし。但し独身 にあらずとも,余の家人 70 年以上 15 年以下にて,その身廃疾にに罹り 窮迫のものは,本文に準じ給与すべし。貧窮な精神病者にもこれを準用 する」と記される。 1875(明治 8 年) *加藤照業,東京府本郷田町で精神病専門で開業。 *衛生行政,文部省から内務省に移管。 *行政警察規則公布「第 18 条;路上狂癩人あれば,穏に之を介抱し, 其暴動する者は取押へ,其地の戸長に引渡すべし」。 *京都府洛東南禅寺に京都癩狂院を設置(日本最初の公立精神病院)。京 都府療病院の所轄となり,岩倉村に宿泊する精神病者を癩狂院に移し, 茶屋六軒は廃業す。 *Donitz,警視庁において裁判医学(精神医学を含む)を講義。 1876(明治 9 年) *神戸文哉,わが国近代精神医学専門書の嚆矢とされる H. Maudsley 著, [精神病約説]を訳出・刊行。本書に「精神病」なる初訳あり。 1878(明治 11 年) *宮内省,東京府に脚気病院・癩狂病院設置費として 2 万 3 千円下賜。 *名古屋監獄に日本最初の監獄の精神病室設置。 *加藤照業,癒癩病院を開く(正式に認可された最初の私立精神病院) *初の公立盲聾学校(京都・盲唖院)設立。 *東京警視庁布達(1878 年),及び改正布達(1880 年)の瘋癩人取扱心得 に「瘋癩人看護のため私宅で鎖固するものはその事由を詳記し,最縁親 族二名以上連署の上,医師の診断書を添え,所轄警察署へ願出許可を受 くべきこと 」と記される。なお 1894 年,同様趣旨の警視庁訓令が 布達された。 *太政官の医学振興布達は「医師の儀は人の生命に関係し,容易ならざ る職に候。然るに近世不学不術の徒頻りに方薬を弄し生命を誤す候者 往々少なからずやに相聞え,大に堅朝仁慈の御趣に相背き甚以て相済ざ る事に候。今般医学所御取建てに相成り候に付いては此度規則相立て学 の成否術の巧拙を篤と試考し免許これあり候上ならでは其業を行う相 成らざる様遊ばされたき思召に候条府県藩に於いてはかねて此旨心得 治下医業の徒へ改めて申聞かせ置き,各覚悟を以て益々学術を研究致す べき旨布令,これある様仰せ出され候事」と記した。 1879(明治 12 年) *上野護国寺跡地に窮民救済を目的として設置(!872 年)されていた養 育院の盲人室を改造し(1875 年),精神障害者を収容していたが,1879 年 7 月,養育院の癩狂室を,癩狂院として精神病者の治療を開始(都立 松沢病院の前身の発足)。長谷川泰,初代癩狂院院長となる。 *E. Baelz,東京大学医学部で精神病学を講義。 *内務省達;府県衛生課事務条項第五「窮民救療の事」に公私立病院及 び貧院,盲院,聾唖院,癩狂院,棄児院等の設立を掌ることと記す。 *愛知医学校の教師,A. von Rorentz,生徒開業医,警察官に訴訟医学 を講義,精神病院の必要を県に建議。 1882(明治 15 年) *上野瘋癩人は直ちに東京府巣鴨病院に護送の上,その理由を該患者の 見認地の区役所又は戸長役場へ通知すべき旨の東京府令出る。(なお東 京府癩狂院は 1881 年に向ケ丘へ,1886 年に巣鴨駕籠町に移転。これを 機に 1889 年,癩狂院は東京府巣鴨病院と改名され,さらに 1919 年,荏 原郡松沢村に移転し,府立松沢病院として開院式が行われている) 1883(明治 16 年) *相馬藩士の錦織剛清,藩主・相馬誠胤が精神病でないにかかわらず, 家令らが不当に藩主を監禁していると主張,相馬家家令志賀直道を告訴 (相馬事件の始まりであり,1895 年,錦織剛清への重禁固 4 年の判決で 事件は終結した)。 1884(明治 17 年) *警視府布達乙第 12 号;許可なき患者を私立癩狂院に入院させること を禁止する。 *相馬誠胤(元相馬藩主),加藤瘋癩病院に入院するも(1884 年),7 日後 退院。その後も精神症状不安定とされ,東京府癩狂院に再々入院するも (1884,1886 年),錦織剛清(旧相馬藩士)らが夜中に東京府癩狂院に侵入 し,入院中の相馬誠胤を連れ出す(1887 年 1 月)。が,途中で取り押さえ られ,帝国大学医科大学教授・榊俶の診察を受け,時発性躁暴狂と診断 された。その後も,錦織の告発,これに対する相馬家側からの誣告告発 も行われたが,"お家騒動"との風評も強まるなかで,1892 年,剛清死亡。 本事件は「精神病者監護法」制定上,きっかけのひとつと見徹されてい る(なお,誠胤の診断に関し,確定されてはいないが,分裂病緊張病型, 回帰型分裂病,時発性情性偏狂,瘋癩症などが推論されている)。 *東大医学部精神病学教室開設。榊俶が教授となり,日本人による初め ての精神医学講義が行われる。 1889(明治 22 年) *在監囚にして精神病に罹り,満期釈放・引取人なき者は東京府巣鴨病 院に入院させ,治療又無籍の行旅病人にして,全治退院者は本人の希望 地に送致すべし,と郡区役所及戸長役場に通達あり。 1891(明治 24 年) *東京府巣鴨病院医員・船岡英之助,精神病者看護講義始む。 *石井亮一,わが国初の精神遅滞児教育施設・東京滝野川学園を設立。 1893(明治 26 年) *Kraepelin[精神医学]6 版で早発痴呆,躁馨病の概念を提唱。 1894(明治 27 年) *警視庁訓令・精神病者取扱規則布告「私立・官公立精神病院・私宅鎖 固室に収容させる場合,警察医が診察したうえで諾否を決する」, 「収容 を許可した後も時々臨検し,取扱方を視察すること」等の条文もも記さ れた。なお,公的に「精神病」という用語が用いられたのは,この規則 からである。 1895(明治 28 年) *Freud,Breuer[ヒステリー研究]を発表。 *呉秀三[精神病学集要]前・後編完著。 1899(明治 32 年) *政府提案[精神病者監護法]衆議院通過,貴族院にて否決。 1901(明治 34 年) *[精神病者監護法]公布。 *区立函館病院に精神病室を置く。 1902(明治 35 年) *呉秀三,東京府巣鴨病院での拘束手革足革使用を禁止し,監置室の使 用を制限する。 *日本神経学会倉位(日本精神神経学会の前身。呉秀三,三浦謹之助等 賛同者 50 名.機関紙「神経学雑誌」発刊)。 *京都帝大医科大学,精神病学講義開始。 *精神病者慈善救治会設立(呉秀三首唱による)。 *幼年者飲酒禁止法案議会提出。 *東京府巣鴨病院にて作業治療(農業・園芸・牧畜等)・構外運動など始 まる。 1903(明治 36 年) *東京府巣鴨病院背に巣の字を染出した病衣を廃止。 *Barbital・催眠剤創製。 1904(明治 37 年) *東京府巣鴨病院外来診療開始。 *呉秀三を会長として,東京に「精神病科懇話会」設立(注;1919 年に東 京精神病学会と改称)。 *警視庁,精神病者私宅監置室・公私立精神病院の構造設備及び管理に 関する取締規則を制定(警視庁令第 41 号)。 1905(明治 38 年) *東京府巣鴨病院,仮出院(長期外泊・一週間以内)制度制定。 1906(明治 39 年) *第 22 回帝国議会に衆議院議員・山根正次,江原素六提出の[医学校に 精神病科設置に関する建議案]修正可決。 *第二回日本医学会分科会,医学校に精神病科設置の建議案可決。 *ソ連邦・ミタリンガ府癩狂院医師・スチーダ来日,1)日本のゲール・ 岩倉病院の存続,2)東京,京都に精神病学講座あるものの,クリニック なし,3)国立精神病院なし,との所懐を述べる(呉秀三,今村新吉案内 す)。 *国家医学雑誌:1898 年より 1904 年までの 6 年間の自殺者総数 62,880 人(男;38,621,女;24,259)と報告。 *精神障害者調査(1906 年末):総数 24,166 人,監置患者 4,658 人,仮監 置者 116 人。(注:人口総数 47,038 千人) 1907(明治 40 年) *改正刑法公布(1908 年 10 月施行:第 39 条,心神喪失者の行為は之を罰 せず,心神耗弱者の行為は其の刑を軽減す)。 1908(明治 41 年) *従来の区立函館病院の精神病室,独立した 25 病室の施設となる。 *文部省発布の医学専門学校令の教授科目に精神病学が入る。 *東京府巣鴨病院看護長清水耕一,本邦看護者最初の著「新選看護学」 を発行。 1909(明治 42 年) *精神病科懇話会会員組織とし事務所を東京帝大神経病室内に置く。 *京都・岩倉病院付属看護婦学校設置(本邦初の私立精神病付属看護婦 学校)。 *室蘭町立病院内の精神病室,独立の室蘭精神病舎に移転。 *内務省訓令:道府県管内の公私立病院からの精神病退院者につき,中 央衛生会の作成した調査表の事項を記入し,地方庁に提出,これを内閣 統計局に送付すること。 *福岡県・新潟県医師会,帝国議会に精神病院建設の必要を建議。 *東京帝大精神病学教室,私宅監置の実地調査を開始。 1910(明治 43 年) *呉秀三,片山国嘉,栗本庸勝の三氏,精神病院設立に関する建議案を 内務大臣に堤出。 *内務省より精神病者慈善救治会へ貧困精神病者収容所建設を条件と して助成金,千円下付。 *地方長官会議にて,衛生局長が精神病者収容施設設置を勧奨。 1911(明治 44 年) *衆議院議員・山根正次,第 27 帝国議会に官公立精神病院設置建議案 を提出。本会議で可決成立。 *内務省衛生局長,地方長官に通牒し,警察巡閲規則の巡閲事項に,精 神病に関することを追加する。 1912(明治 45 年) *仙台医学専門学校を廃し,東北帝国大学医学専門部を設く。 1913(大正 2 年) *呉秀三,「我邦二於ケル精神病二関スル最近ノ施設」発表。 1914(大正 3 年) *東京帝国大学医科大学精神科外来診 i 療所落成。 1916(大正 5 年) *東北大学医学部精神病学教室開設。 1917(大正 6 年) *保健衛生調査会,精神病者調査票の成案に基ずき,精神病者の全国一 斉調査を地方長官に委嘱。(6 月 30 日時点で,私宅監置;4,500 人,入院 者;4,000 人であり,精神病を疑われる者を含めると,総数;64,941 人で あり,人ロ千に付 1.18 と推定された)。 1918(大正 7 年) *第五回日本医学会・第 10 部会日本神経学会で以下の内務大臣宛建議 案を全員一致で可決:「保健衛生調査会の調査によると,全国の精神病 者凡そ六万五千人,このうち病院で治療を受けている者五千人許りにし て,他は悉く自宅監置のものなり。当局は此辺を深く顧慮され,精神病 者保護治療の設備を整備されることを望む」と。 *呉秀三,樫田五郎編作「精神病者私宅監置ノ実況及其統計的観察」発 表。 *内務大臣,中央衛生会に精神病院法案を諮問可決。 1919(大正 8 年) *精神病院法公布。 *東京府立松沢病院開院式。 *内務省衛生局長,私立精神病院経営者に以下の代用精神病院指定条件 示達す。 1)代用精神病院の患者一日の数は病院毎に最大限数を定める。 2)医員数は院長を加え,患者 60 名につき 1 名以上の専任医を置く。 3)看護人の数は患者 5 名に付 1 名以上の専任を置く。但し,その半数 以上は有資格たること。 *大阪市役所児童相談所を開く。 1920(大正9年) *慶応義塾大学医科大学付属病院開院。 *警視庁告示「精神病院法第二条による精神病者の診断は,警視庁令第 26号の規定により,警察医及警察医員をして施行せしむ」とす。 *九州帝国大学老人科設置。 *日本精神病医協会設立(会長:呉 秀三)。‾精神病に関する制度の研 究,精神病院の発達と精神病者救治の改善」を目的とする。 1921(大正10年) *北海道帝国大学官制公布(医学部新設)。 *精神病者慈善救治会,精神病者救治会と改称。 *内務省衛生局に予防課新設(精神病者も管轄)。 *精神病院設立に関する建議「我国に於ける精神病者は逐年増加の傾向 あり。さきに精神病院法制定されたるに拘らず未だ各府県に之が設立を 見ざるは,誠に昭代の欠陥なりと云わざるべからず。政府は速やかに万 難を排して之が設置を命ぜられんことを望む」が第44回帝国議会で決議 案として可決。 1922(大正11年) *未成年者飲酒禁止法公布。 *健康保険法公布(施行1926年)。 1923(大正12年) *関東大震災。全焼家・家屋464,909戸。死者91,344。 (注)1995年の「阪神・淡路大地震」での被害は,死者6,433,負傷者4 万人以上,全・半壊家屋25万棟と報告されている。 *法定日本医師会創立。 *精神病院法施行令公布(公・代用精神病院経費の補助率等を規定)。 1925(大正14年) *第24回日本神経学会総会は「精神病院法制定の主旨に鑑み道府県立精 神病院を速かに全国に普及せしめ特殊の処置を要する社会的危険なる 精神病者を収容するため国立精神病院を建設せられんことを切望す」と の決議を可決。 *森田正馬「森田療法」の治療成績を発表。 1926(大正15年) *大阪府立中宮精神病院開院(精神病院法第一条による最初の病院)。 *日本精神衛生協会発足するも,しばらくは非公式。 1927(昭和2年) *健康保険法の給付開始。 *精神病者救治会を救治会と機関紙も[救治会会報]と改題。 *日本精神衛生協会機関誌,月刊[脳]創刊。 *北海道大学医学部精神医学教室開設。 1928(昭和3年) *警視庁,精神病者指紋採取開始。 *日本赤十字社,日本で最初の「精神衛生」展覧会を主催。 *警視庁令第10号:1904年の精神病院取締規則を改正し,病室構造につ き,医療の目的をもって収容することを強調し,開放病棟を認める主義 を採用する。 1929(昭和4年) *東京府立松沢病院 入院患者の全定員を985名との予定を計画。 1930(昭和5年) *Washingtonでの第一回国際精神衛生大会に三宅鉱一,植松七九郎が日 本代表として出席。 *府立松沢病院で印刷作業開始。 *世界精神衛生連盟結成。 *自殺者急増。 (注)人口10万対自殺率:1900年13.4,1910年19.1,1920年19.0, 1930年21.6,1940年13.7,1950年19.6,1960年21.6,1970年15.3, 1980年17.7,1990年16.3,2000年25.2,2003年27.0 1931(昭和6年) *日本精神衛生協会発会式,機関誌「精神衛生」発刊。 *大阪府立医科大学(前身は大阪府立高等医学校)を大阪帝国大学医学 部と改称。 *県立愛知医科大学を官立に移管,名古屋医科大学とす。 *長山泰政,「精神病者の院外保護機関の設置」を提唱する。 1932(昭和7年) *内務省主催・第一回公立及代用精神病院協議会開催(以後,内務大臣 諮問に対し,1)精神病院の管理・構造,2)精神病院法及精神病者監護 法改正に関する要望,3)精神病看護人素質向上の方法,4)作業療法の 施設・方法,5)精神病の発症防止,6)保護室の構造・管理法等を議 題 として毎年開催されたが,1936年10月より,協議会は日本精神病院協会 と改称された)。 *Vienna:M.J.Sakel,精神分裂病のInsulin Shock療法を発表(1936 年,療法日本に導入)。 1935(昭和10年) *日本神経学会を日本精神神経学会と改称し,機関誌を[神経学雑誌] 第39巻第1号より[精神神経学雑誌]とする。 *Portugal:E.Moniz,前頭葉白質切除術を創始(1941年,日本に導入) 1937(昭和12年) *Italy:U.Cerl1ettiと L.Bini,電気痙攣療法を発表(1939年,日本 に導入)。 *保健所法公布。 1938(昭和13年) *厚生省設置(精神病に関する事項は予防局の所管となる)。 *国民健康保険法施行。 1940(昭和15年) *傷病軍人武蔵療養所開設。 1941(昭和16年) *精神病者監護法と精神病院法,厚生省予防課の所管となる。 *傷病軍人下総療養所開所。 1943(昭和18年) *救治会・日本精神衛生協会・日本精神病院協会を統合し,「精神厚生 会」を設立。 *精神医学研究所設立(東京武蔵野病院はその付属病院となる)。 *東京府立松沢病院を東京都立松沢病院と改称。 1945(昭和20年) *傷痍軍人肥前療養所開設。 *日本禁酒同盟再建。 *陸・海の傷痍軍人療養所を国立病院・国立療養所として一般に解放。 1946(昭和21年) *医師インターン制度,国家試験制度を採用。 *生活保護法公布。 1947(昭和22年) *児童福祉法施行(厚生省に児童局新設)。 *保健所法全面改正 *全日本看護人協会発足(1958年;日本精神科看護協会.1976年;日本 精神科看護技術協会と改称) *社団法人日本医師会設立。 1948(昭和23年) *医療法,医師法,保健婦・助産婦・看護婦法,人身保護法公布。 *第三回国連総会,全30条の人権に関する[世界人権宣言]を採択(恣 意的逮請・拘禁の禁止条項も含む)。 *国立国府台病院,精神衛生センターとして発足。同院にはじめて精神 医学ソーシャル・ワーカー配置。 1949(昭和24年) *日本精神病院協会設立。 *金子準二,[精神衛生法]につき,法制私案を提起。 *家庭裁判所発足。 *身体障害者福祉法公布。 1950(昭和25年) *第7回通常国会,金子私案等を参考に,中山寿彦議員らが協同提出し た[精神衛生法(案)]を採択,これを制定・公布。 1951(昭和26年) *覚醒剤取締法公布。 *精神厚生会を日本精神衛生会と改称,機関誌「精神衛生」続刊。 1952(昭和27年) *国立精神衛生研究所開設(千葉県市川) *フランスで向精神薬,クロルプロマジンの使用始まる(1954年,日本 に試用導入)。 *全国精神薄弱児育成会結成(手をつなぐ親の会)。 1953(昭和28年) *WHO顧問としてP.V.Lemkau及びD.Blain来日,わが国の精神衛生と 国立精神衛生研究所に対し,勧告を行う。Lemkauは主として,保健所を 中核とする地域精神衛生活動の重要性を指摘し,翌1954年に来日した Blainはデイケア活動,作業治療活動,地域総合病院精神科外来の重要 性,精神科医のトレーニングを強調。 *日本精神衛生連盟結成,世界精神衛生連盟(WFMH)に加盟。 *第1回全国精神衛生大会開催(関係8団体主催)。 *断酒友の会発足。 *麻薬取締法制定。 1954(昭和29年) *第1回精神衛生実態調査実施(標本地区調査による一斉調査方式), 全国推計精神障害者数130万人;有病率人口千対14.8。 *第1回全国精神衛生相談所長会議開催。 1955(昭和30年) *覚醒剤問題対策推進中央本部か内閣に設置され,取締法改正。 *東 教授事件。元日本女子大教授,東佐誉子がパラノイアの診断で精 神病院に入院させられ,措置入院となる。東氏の告訴により,衆議院法 務委員会は精神衛生法の検討を要望する決議を行う 1956(昭和31年) *厚生省に精神衛生課設置。 *厚生省,在院精神障害者の実態調査実施。 *伊藤正雄,肥前療養所で全面開放処遇を行う。 1957(昭和32年) *精神病の治療指針通知(1961年に廃止)。 *新潟精神病院に入院中患者,150名にツツガ虫病原体を接種し,発熱 療法を試みる。法務省人権擁護局長は「人権尊重の見地から到底許し難 い」として人体実験だったことを非難。 *病院精神医学懇話会発足(1983年,病院・地域精神医学会と改称)。 1958(昭和33年) *緊急救護施設設立,その運営に関する通知(社会局施設課長)。 *厚生省事務次官通知「精神病院を 特殊病院 と規定,一般病院での 医師数は入院患者16名につき1名とするが,精神病院では患者48名につ き医師1名で可とする」。 *日本精神科看護協会発足(旧全日本看護人協会を改称)。 *国府台病院デイケアの試み開始。 *国民健康保険法公布。 1959(昭和34年) *日本老年医学会設立総会。 *国民年金法公布。 *精神衛生相談所運営要領について(公衆衛生局長通知)。 1960(昭和35年) *精神薄弱者福祉法(現・知的障害者福祉法),身体障害者雇用促進法 公布。 *第1回指定病院長会議開催。 *精神障害者厚生相談所設置。 *第1回児童精神医学会総会。 1961(昭和36年) *精神科の治療指針通知(保健局長)「精神疾患の治療は,単に一つの 器官を処置するのではなく,人間そのものを治療し,健康な社会生活が できるように回復させることを目標とするものである」。 *国民皆保険制度実現。 *措置入院患者の医療費につき,国の補助を5/10から8/10とする。 1962(昭和37年) *精神神経学会,[保安処分]の基礎問題調査委員会発足。 *第1回日本犯罪学会総会。 1963(昭和38年) *精神衛生法改正の動きが起きる(日本精神病院協会,日本精神神経学 会,厚生省内・精神衛生行政研究会等が改正案を検討)。 *第2回精神衛生実態調査。全国推計精神障害者数124万人;有病率人口 千対12.9,要入院28万人,要通院48万人。 *全国精神衛生連絡協議会発足(現・全国精神保健福祉連絡協議会)。 *精神障害者措置入院制度の強化について(公衆衛生局長通知)。 *国立久里浜療養所にアルコール中毒特別病棟開設。 *老人福祉法公布。 *国立精神衛生研究所でデイケア研究開始。 1964(昭和39年) *アメリカ大使館構内で,ライシャワー駐日米国大使刺傷さる。マスコ ミ各社,精神障害者の 野放し 論調を強める。警察庁は厚生省に精神 衛生法改正等を申入れる。池田首相,「緊急に必要な部分の改正」準備 を閣議で指示。学会・病院関係者は「法の全面改正」を論じて政府と対 決。10日間の攻防後,精神衛生審議会での法改正審議に委任。 *日本精神神経学会総会・シンポジウムに「精神衛生法改正の焦点」 *全国大学病院精神神経科医局連合発足。 *日本精神医学ソーシャル・ワーカー協会結成。 1965(昭和40年) *精神衛生法改正法案,第48回通常国会で採択。改正主要点は,1)保 健所による訪問指導体制の強化,2)保健所の行う精神衛生業務の技術 援助,地域内の精神衛生関連調査等の機能をもつ精神衛生センターの設 置,3)申請,通報制度の拡大と緊急入院制度の手続上の整備,4)通院 医療に対する公費負担制度の新設。 *全国精神障害者家族会連合会発足。 *緊急救護施設の整備道営につき,社会局施設課長通知。 *理学療法士及び作業療法士法公布。 *日本アルコール医学会発足。 1966(昭和41年) *保健所における精神衛生業務について(公衆衛生局長通知):業務と して,1)地区住民の精神保健諸資料の蒐集,精神障害者の実態等の整 備・把握,2)精神衛生相談・訪問指導の実施,3)関係機関との連絡協 調等を規定。 *医療施設敷地外に先導的に小規模共同住居(茨城・大みか病院),ホ ステル(友部病院)開設。 1967(昭和42年) *地域精神医学会設立。 *日本精神病院協会,[精神科医療体系]意見書を会員に配布:精神科 医療の1)病者の人格尊重,2)開放治療を原則,3)病者の合意を得た 治療,4)一般の医療体系に近付ける努力等を提起。 *日本精神病院協会・精神衛生法改正委員会が社会復帰施設についての 委員会答申をまとめる。 *WHO顧問,D.H.クラーク来日,地域精神衛生状況を調査。 1968(昭和43年) *クラーク報告書「日本における地域精神医療」がWHO及び日本政府に 提出:1)多くの精神病院は閉鎖的で,慢性化した病者が無為の生活を 送っていた。2)社会復帰活動は困難で,病院規模は巨大化しつつあっ た。3)地域社会内に小規模な施設をつくり,社会復帰活動の推進が望 まれる等の事項が記されていた(注:精神病者の院外保護機関の必要性 については,このクラーク報告に先立つ1931年,ドイツ留学を終えた長 山泰政が論じている)。 *医療審議会,地域ごとの必要精神病床数を,人口1万対25床と答申。 (注)1965年:17.6床,1975年:25.0床,1985年:27.6床,1995年:28.8 床,2003年:28.1床と報告されている。 *中央精神衛生審議会「精神医療体系の現状に対する意見」を提出。 *法制審議会刑事法特別部会総会で「保安処分(治療矯正処分)」につ いての要綱案なる。 1969(昭和44年) *精神衛生センター運営要項について(公衆衛生局長通知):従前の精 神衛生相談所を廃止し,新たに都道府県における精神衛生に関する総合 的技術センターとして,精神衛生センターを設置する。業務は地域精神 衛生活動の技術指導・援助,教育研修,広報普及,調査研究,精神衛生 相談等とする。 *精神障害回復者社会復帰センター設置要綱案を中央精神衛生審議会 が了承。 *中央精神衛生審議会「保安処分」に関する意見をただす。 *日本精神神経学会理事会「精神病院に多発する不祥事件に関連し全会 員に訴える」声明を発表。 *精神病院実態調査。 *我が国初の共同作業所「ゆたか作業所」,名古屋で設立。ついで「み のり作業所」名古屋(1972年), 「あさやけ作業所」東京・小平(1973年), 「こぶし共同作業所」栃木(1974年)が設立。更に「あさやけ第2作業所」 が小平に開所と続き,共同作業所全国連絡会が1977年に結成される。 1970(昭和45年) *精神病院の運営管理に対する指導監督の徹底について(公衆衛生局・ 医務局長通知):1)措置・同意入院患者の病状審査の適正化と不必要 な入院患者の措置解除等を速やかに行うこと,2)入院患者の人権尊重 につき管理者を指導すること,3)患者の過剰入院,職員不足の速やか な是正,4)患者の不当使役なきよう管理者を指導すること。 *心身障害者対策基本法公布(本法は平成5年,障害者基本法に改正) *精神障害回復者社会復帰施設整備費予算化。 *デイケア機能の民間援護施設の先駆として「やどかりの里」埼玉に設 立。 1971(昭和46年) *日本精神神経学会総会にて保安処分制度に反対する決議。 *法制審議会刑事法特別部会「保安処分案」を決定。 *川崎市社会復帰医療センター開所。 *「いのちの電話」東京で開設。ついで関西,沖縄と全国に拡がる。 1972(昭和47年) *精神病院技術職員等研修費,児童精神科専門医研修費,A級精神衛生 センターでのデイケア事業運営費を予算化。 *精神科カウンセリング料新設。 *精神障害者授産施設第1号,創造印刷設立(東京・調布市)。 *東京都・世田谷リハビリセンター開所。 1973(昭和48年) *第三回全国精神衛生実態調査:1)全精神障害者推定数132万,2)在 院患者19.7%(26万人),通院患者約30%(40万人),外来通院を要す る者55.5%(70万人)と推定された。 *行政管理庁「精神衛生に関する行政観察に基づく勧告」を提出:1) 指定病院での医療職員の不足,許可病床数を越える超過入院,2)厚生 省は鑑定医の派遣による症状審査,これに基づく措置解除などの積極的 な指導をすべきである等の勧告を行う。 *東京都精神医学総合研究所設立。 1974(昭和49年) *精神科作業療法,精神科デイケアが社会保険診療報酬で点数化。 *日本精神科診療所医会結成。 *デイケア施設整備費予算化。 1975(昭和50年) *保健所における社会復帰相談指導事業の実施。 *アルコール中毒臨床医等の研修費予算化。 1976(昭和51年) *精神障害者措置入院制度の適正な運用について(公衆衛生局長通 知):1)本制度は公権力をもって強制的に病者を入院させるものだけ に,精神障害者の人権と密接に関係している,2)措置解除の適正化は 徹底すべきである,3)措置患者の知事審査は報告書審査にとどまらず, 鑑定医による実地診察を計画的・積極的に実施されたい等の通知。 1977(昭和52年) *国立久里浜病院にアルコール中毒専門病棟設置。 1978(昭和53年) *中央精神衛生審議会が「精神障害者の社会復帰施設」に閲し,中間報 告を提出:精神障害者の社会復帰推進のためには,医療と福祉の両面の 充実が必要である。このためには,1)医療施設での社会復帰活動の充 実,2)医療施設外の社会復帰施設の整備が必要,との内容。 *国立精神衛生研究所が主体となり精神科デイケア研修開始。 1979(昭和54年) *精神衛生社会生活適応施設整備費,精神衛生センターにおける酒害相 談事業費予算化。 *知的障害者福祉ホーム設置。 1980(昭和55年) *公衆衛生審議会精神衛生部会「老人精神病棟に関する意見」具申。 *職親制度検討委員会設置。 1981(昭和56年) *国立精神衛生研究所;WHO研究・研修センターに指定さる。 *職親制度検討委員会;精神障害者職業参加促進制度に関し中間報告。 *国連「国際障害者年」採択。 *覚醒剤緊急対策策定。 *熊本県「あかね荘」,精神衛生社会生活適応施設として開設。 1982(昭和57年) *通院患者リハビリテーション事業実施。 *老人保健法公布。 *老人精神保健相談事業予算化。 1983(昭和58年) *第四回全国精神衛生実態調査(1983年時入院者総数は334,000):総入 院者の22%,74,000人は訪問指導,社会復帰施設,職親制度,共同作業 所等の条件整備で近い将来,退院可能と推定された。(但し,47都道府 県中,37道府県で実施された調査からの推計値)。 *公衆衛生審議会精神衛生部会「覚せい剤中毒者対策に関する意見」, 「老人精神保健対策に関する意見」を提出。 *公衆衛生審議会精神衛生部会に「緊急精神医療対策専門委員会,アル コール関連問題対策専門委員会」を設置。 1984(昭和59年) *宇都宮病院での患者に対する傷害致死事件報道される。 *日本自由人権協会は国際人権連盟宛に「日本における精神障害者の医 療上の処遇と人権侵害」レポートを送付:「精神障害者に対する日本の 医療上の処遇は,国際規約・B規約9条に違反する」との要旨であり,国 連人権委員会はこれを受理,人権小委員会での審議となる。 *精神病院に対する指導監督等の強化徹底について通知(公衆衛生・医 務・社会の三局長):1)保護室への収容,面会制限等の行動制限は医 療,保護の限度を超えて行うべきでない。2)鑑定医による実地審査は 原則として年一回実施。3)知事に対する調査請求権制度を周知させる ため,これを病棟内に掲示すること。4)医療監視を強化徹底し,実地 指導の実施は原則として年一回とすること等が概要。 *公衆衛生局精神衛生課を保健医療局精神保健課と改称。 *精神障害者の国立病院及び国立療養所への入院措置について(保健医 療局長通知):精神衛生法第29条規定の入院措置は国の設置した精神病 院・指定病院でも行うこととされているので,患者の受入れに格段の努 力を求む,との通知。 *精神障害者小規模保護作業所調査。 *精神障害者共同作業所適所助成開始。 1985(昭和60年) *心の健康づくり推進事業予算化。 *日本弁護士連合会会長・相木博を委員長とする[精神医療人権基金] 設立:精神障害者の人権擁護を目的として,国際的基準に沿った法体制 の実現を図る。 *国際法律家委員会(ICJ)・国際保健専門職委員会(ICHP)合同ミッシ ョン,精神医療人権基金の招脾に応じ来日。諸施設調査,医療関係者・ 行政当局との討議の上,日本政府に[結論と勧告]を提出:1)在院者 には法的保護が欠如し,長期間の在院者が多く,地域医療と社会復帰活 動に乏しい。2)日本国憲法,批准している国際規約が規定する諸権利 が精神障害者には十分保証されていない。3)強制入院者には年2回の再 審査を行うこと。4)再審査申立に対し,自治体レベルで機能し得る独 立した審査機関の設置。5)治療基準等をチェックする定期的監査条項 を規定すること。6)入院者の有する権利を十分に告知すること。7)自 ら選ぶ代理人と自由に連絡できること等を報告・勧告。 *国連[差別防止及び少数者保護小委員会]において, 日本厚生省精 神保健課長,「精神病者の人権擁護をさらに促進する観点から,精神衛 生法の改正を行う」ことを表明。 *公衆衛生審議会精神衛生部会,「アルコール関連問題対策に関する意 見」を具申。 *精神障害者共同住居調査。 *小規模精神科デイケア補助事業開始。 *保健医療局長,「精神病院入院患者の通信・面会に関するガイドライ ン」を通知:1)精神病院入院患者の院外にある者との通信・面会は原 則として自由とする。2)特に人権擁護機関との通信・面会は制限しな いこととする。3)通信・面会が基本的に自由なることは,文章または 口頭で,患者及び保護義務者に伝えること。4)信書の発受は制限しな いものとする。4)人権擁護に関する機関の職員,患者の代理人である 弁護士との電話・面会は制限しないものとする等が指針とされた。 1986(昭和61年) *精神科集団精神療法,精神科ナイト・ケア,精神科訪問看護指導料等 が社会保険診療報酬で点数化。 *精神障害者社会復帰施設の運営について[デイケア施設名称変更] *保健所における精神科通院医療中断者保健サービス事業の実施につ いて(保健医療局長通知)。 *公衆衛生審議会精神衛生部会「精神障害者の社会復帰に関する意見」 具申:1)精神科医療施設のマンパワーの充実,2)精神科デイケア関連 施設の充実,3)小規模保護作業所・適所授産施設の整備,4)居住施設 の整備,5)職親制度の充実,6)関連民間援護団体の育成,7)保健所 精神衛生相談員の専任化,8)社会復帰に関する精神衛生センター及び 市区町村の役割の明確化。 *国立精神・神経センター設立(国立精神衛生研究所廃止)。 *精神衛生審議会精神衛生部会[精神衛生法改正の基本的な方向につい て(中間メモ)]を発表: 法改正の基本的考え方 として,1)国民の 精神的建康の保持・向上を図る,2)患者の個人としての尊厳を尊重し, 人権を擁護しつつ,適切な精神医療の確保と社会復帰の推進を図る,3) 地域精神保健対策を充実し,一般医療と同様,生活の場に密着した所で 適切な医療を受け得る体制を整備する,4)通院医療を推進し,入院を 要する場合でも,可能な限り本人の意思に基づき,必要限度を超えるこ とのない制度とする,5)社会復帰・社会参加の推進を強力に進める等 を基軸とした。 1987(昭和62年) *精神障害者小規模作業所運営助成事業の実施。 *精神衛生法改正案,国会で可決。名称を[精神保健法]と変更する。 *保健所における精神衛生業務中のデイケア事業について(保健医療局 長通知):1)医学的な管理のもとにデイケア事業を実施し,回復途上 の精神障害者の社会復帰の促進を目的とする,2)デイケア事業計画の 策定にあたって,医師,作業療法士,臨床心理技術者,精神科ソーシャ ルワーカー等を含む連絡会議において,デイケアの内容等を検討し,一 定数(1回15名程度)以上の対象者に週3日以上のプログラム計画を策定 する。 *精神科デイケア施設の運営について[精神障害回復者社会復帰施設の 名称変更](保健医療局長通知)。なお本通知は1988年の「精神科デイ ケア施設運営要綱」通知により廃止となる。 *精神障害者援護寮(後の生活訓練施設)の運営について[精神衛生社 会生活適応施設の名称変更](保健医療局長通知)。運営費の予算化。 1988(昭和63年) *精神障害者社会復帰施設の設置・運営について(保健医療局長通知): 精神障害者の社会復帰・社会参加の促進を図る施設,「社会復帰施設」 の設置・運営は本要綱で定める。1)精神障害者援護案(援護寮),回復 途上の精神障害者に居室等の設備を利用させ,生活の場・生活指導を行 う。2)精神障害者福祉ホーム(福祉ホーム),一定程度の自活能力はあ るが,住居確保の困難者に生活の場を与え,社会参加の促進を図る。 *精神保健法施行(7月1日):1)医療・福祉・教育施設に新たに社会復 帰施設を加え,精神障害者への理解と社会復帰への協力を国民の義務と する。2)地方精神保健審議会を精神医療審査会とし,患者の人権保護 規定,殊に強制入院・行動制限ついて審査・救済条項を規定,3)精神 保健指定医制度を競走し,人権の制限を伴う医療・保護の要否を判定す る権限を付与した。4)本人の同意に基づく同意入院の新設。5)同意入 院を医療保護入院に変更。6)保護拘束条項の削除。 1989(平成元年) *老人性痴呆疾患センター事業実施要綱について(保健医療局長通 知):都道府県が老人性痴呆疾患センターを設置 保健医療・福祉機関 等と連携し,専門医療相談,鑑別診断・治療方針選定,夜間・休日の救 急対応を行い.さらに地域保健医療・福祉関係者に技術援助を行う。 1900(平成2年) *心の健康づくり推進モデル事業実施要領(保健医療局長通知)。:近 年の社会生活環境の複雑化に伴い,ストレスも増大し,ノイローゼ,う つ病等の精神疾患が増加していることに鑑み,精神衛生センターに相談 窓口の設置等により精神的健康の保持増進を目的とする。 1991(平成3年) *老人性痴呆疾患療養病棟の施設整備基準(保健医療局長通知)。 *公衆衛生審議会,「地域精神保健対策に関する中間意見」及び「処遇 困難患者に関する中間意見を厚生大臣に具申。a)地域精神保健対策の 具申の基本は 地域精神保健活動が,住民にとり,住み慣れた生活圏域 内で提供されること,保健・医療・福祉対策が総合的に展開され,ネッ トワークと調整機能の整備が必要 とし,b)処遇困難患者に関しては 措 置入院の申請のあった精神障害者のうち,一般の精神病院では処遇困難 な危険な障害者を[処遇困難者専門病棟]に収容して特別な処遇を行う, と具申。 *精神障害者社会復帰施設設置運営要綱の改正(保健医療局長通知)。 *性に関する心の悩み相談事業の実施について(保健医療局長通知)。 *精神障害者社会復帰促進事業(社会復帰相談窓口)の実施(保健医療局 長):回復途上の精神障害者への継続的支援体制確保のため,社会復帰 施設に土・日・祭日に相談窓口を設置すること。 *地域保健医療計画作成に当たっての老人性痴呆疾患対策に関する留 意事項について(精神保健課長,計画課長)。 1992(平成4年) *精神障害者地域生活援助事業(精神障害者グループホーム)の実施に ついて:精神障害者が地域で自立した生活のできる条件整備を図るため 「精神障害者グループホーム実施要綱を定める(保健医療局長) *第40回精神保健全国大会開催。 1993(平成5年) *公衆衛生審議会「今後における精神保健対策について」意見書提出。: 意見の基軸は1)より良い環境での質の高い医療,2)入院医療から通院 医療への転換の推進,3)社会復帰施設から地域社会への流れの形成,4〕 障害者か地域住民と同等に生活・活動する[ノーマリゼーション]の理 念の下で[完全参加と平等]を目指す施策の推進等。 *厚生省,[精神保健法の一部を改正する法律案要綱]を策定。公衆衛 生審議会,社会保障制度審議会に諮問・了承され,国会に上程・採択さ れた。採択・新設条項は:1〕精神障害者の定義規定の見直し(精神分裂 病,中毒性精神病,精神薄弱,精神病質,その他の精神疾患を有する者 と条文化),2)[保護義務者]を[保護者]とする,3)精神障害者地 域生活援助事業(グループホーム事業)の法定化,4)精神障害者社会復 帰促進センター創設の法定化,5)都道府県が行ってきた事務処理を政 令指定都市に委譲,6)栄養士等の5資格につき,絶対的から相対的欠格 事由に改正。 *精神障害者社会復帰施設に[ショートステイ施設]追加。 *世界精神保健連盟世界会議(1993年)開催,於;千葉・幕張メッセ。 *「今後におけるアルコール関連問題予防対策について」提出される。 *[障害者基本法(旧心身障害者対策基本法)]可決成立。:1)法の対 象を身体・精神・知的の三障害とする,2)障害者の自立と社会,経済, 文化その他あらゆる分野の活動参加の促進を目的とする,3)政府は障 害者基本計画を策定するとともに,都道府県,市町村も同様の計画策定 に努めること,4)国,地方公共団体は,障害者の医療,施設入所,在 宅障害者への支援及び雇用促進等につき必要な施策を講ずることなど を規定。 1994(平成6年) *精神病院における常勤指定医の確保の徹底等についての通知。 *精神障害者社会復帰促進センターとして,(財)全家連を指定。 *初老期における痴呆対策検討委員会報告。 *「当面の精神保健対策について」意見書を提出(公衆衛生審議会)。: 1988年,精神障害者の人権に配慮した適正な精神医療を確保,社会復帰 の促進,国民の精神的健康の保持・増進を基本理念とする精神保健法施 行以来,約6年経過。「精神病院から社会復帰施設へ」との施策の流れ か形成され,さらに,1993年の精神保健法改正により,「社会復帰施設 から地域社会への流れが形成されつつある。しかし,精神障害者に対す る社会的偏見が除去され.社会の様々な分野に参加する真のノーマリゼ ーションを実現するには,なお多くの課題が残されている。特に,地域 の中での生活を支援していく視点からの「福祉対策」は,他の障害者施 策に比べ不十分と指摘されている。それだけに専門的観点からの研究が さらに必要である,との意見。 *厚生省内に障害者保健福祉施策推進本部を設置。 *地域保健法成立(保健所法改正):保健所の精神障害者への業務につ き,発病から社会復帰に至るまで,一貫したサービスを提供する地域公 的機能機関と規定した。具体的には,相談業務・医療施設の紹介・社会 福祉施設の利用紹介・通院医療費公菖負担の申請受付・措置入院及び医 療保護入院の都道府県への入院届出等の業務を規定。 *厚生省内の保健福祉施策推進本部の関連方針案第5章「精神障害者社 会復帰施策の充実」は,1)精神保健法に福祉的観点を加え,精神保健 福祉法と改正すること,2)地域での保健・福祉両面にわたる支援,3) 社会復帰施設・事業の飛躍的整備,4)精神科救急医療システムの整備 と通院医療・デイケア事業の普及,5)精神科ソーシャルワーカー・臨 床心理士の国家資格化等を提起。 1995(平成7年) *阪神・淡路大震災。 *市町村の障害者計画策定に関する指針について(市町村障害者計画ガ イドラインの策定):1996年時点で全国に344の医療圏策定。但し,精 神医療に関しては各自治体を単位医療圏とする。 *精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)施行。: 1)自立と社会経済活動への参加促進のため,必要な援助を行う,2)社 会復帰施設を生活訓練施設・授産施設・福祉ホーム・福祉工場に4類型 化 3)職親制度名称を 精神障害者社会適応訓練事業 とし,自立と社 会経済活動への参加促進規定,4)本人申請・知事交付の保健福祉手帳 による所得税・住民税の控除 5)措置入院・通院医療に要する医療費に つき,自己負担を優先とする 保健優先 制を採用,6)指定病院につ き,法律上の基準に不適合ならば 指定を取り消す等規定。 *精神科救急医療システム整備事業の実施について(保健医療局長)。 *総務庁行政観察局による定期調査(精神保健対策に関する調査)に基 づく勧告。 *障害者プラン(ノーマリゼーション七カ年戦略)の策定(障害者対策推 進本部決定)。主たる内容は:精神障害者の保健医療福祉対策に関し, 2002年度までに1)福祉ホームを80ケ所から 300ケ所,2)授産施設を83 ケ所から 400ケ所,3)生活訓練施設(援護寮)を83ケ所から300ケ所,4) 福祉工場を1ケ所から59ケ所の整備を目標とする。このプラン策定によ り,4施設の利用可能規模,約4,200人を2002年には約2万人とする。ま た,概ね人口30万人あたり 2ケ所を目標とし,地域生活の支援・相談・ 助言等を行う地域生活支援センターを1996年に創設し,2002年にこれを 650ケ所とすること,及び居宅生活支援事業として,地域生活援助事業 (グループホーム)を220ケ所から920ケ所とし,その規模を1,200人から 5,000人に,更に,社会適応訓練の協力事業所を2,356から3,300事業所 とすることを策定目標とする。更に,精神科デイケア施設を約1,000ケ 所を目標として計画期間内に整備する。また,精神科救急医療システム, 合併症への適切な医療の確保を整備する等。 注(1)2003年6月時点の本プランの達成状況は,1)福祉ホームの従来型 135,これに指導員(精神保健福祉士を含む)を配置するB型福祉ホーム 88,2)適所・入所授産施設がそれぞれ248,29,小規模適所授産施設178, 3)生活訓練施設267,4)福祉工場17,5)グループホーム1,111等が報 告されている。 注(2)2003年に予算化された[新障害者プラン]は2007年までの目標計 画として,1)福祉ホームの利用可能人員を3,900人から5,200人に,2) 授産施設では68,200人から73,700人に,3)援護寮では5,700人から6,700 人に,4)グループホームでは20,000人から30,400人に,5)地域生活支 援センターを410ケ所から470ケ所等が利用規模の達成目標とされた。 1996(平成8年) *精神保健福祉センター運営要領について(保健医療局最適知):セン ターは精神保健・精神障害者福祉に関する総合的技術センターとして, 地域精神保健福祉活動推進の中核となる機能を備えることとする。 *保健所及び市町村における精神保健福祉業務について(保健医療局長 通知)。但し,本通知はその後の精神病院での人権侵害事案の頻発,在 宅精神障害者の増加,家族の高齢化,単身障害者の増加,1999年の要緊 急入院者の移送事項・居宅生活支援事項等の法整備,さらには,うつ病 者の増加,自殺者の増加等があり,心の健康づくり対策の重要性が再認 識されたため,廃止され 2000年3月に改正通知が障害保健福祉部長から 各都道府県に送付された。 *厚生大臣の定める指定病院の基準を定める件の告示:1)常勤する精 保健指定医数・看護師・準看護師数を規定,2)精神病床数は原則とし て,100床以上,3)措置入院者の医療・保護に必要な設備のあること。 *大都市特例の施行について〔保健医療局長通知):地方自治法の規定 する指定都市においては,精神保健福祉法が政令で規定する事務等を当 該都市の機関・職員の権限に属するものとする。 *精神保健福祉法第19条の8に基づく指定病院の指定について(保健医 療局長通知):指定病院の指定基準については,1965年衛発第646号で 規定したが,以後30年以上の期間が経過したものの,この指定基準を上 回る指定病院が3割を占める現状にあり,一方,措置入院者数は近年で は大幅に減少しており,指定病院を措置入院医療にふさわしいものにし てゆく必要がある。従って,基準の施行にあたる留意事項を各自治体に 通知。 *精神保健福祉部の創設。 *精神保健課を精神保健福祉課と名称変更。 1997(平成9年) *精神保健福祉士法案要綱を公衆衛生審議会に諮問,同答申。 *精神保健指定医の指定取消し処分につき,公衆衛生審議会答申[大和 川病院関係]。 *今後の障害保健福祉施策の在り方について(中間報告 、 障害三審議 会合同企画分科会)。 a)序論 1)1996年11月から二障害の保健福祉施策を総合的に見直すため,合同 審議を開始,2)身体・知的・精神の障害をもつ者は約500万人,3)障 害者は,保護される対象としてではなく,国連総会決議「障害者の権利 宣言,1975年」に謳われているすべての権利を享受すべき主体である, 4)社会全体の意識も,「国連・障害者の十年」などの取組みにより, 障害者が地域の中で共に生活することは自然なことであるとの考え方 に変わりつつある。 b)精神障害者の現状 1)1993年の患者調査では,入院患者33万人,在宅患者124万人,合計157 万人となっている,2)1996年の日本精神病院協会総合調査によれば, 入院期間1年未満が24.3%,1年以上5年未満が25.7%,5年以上10年未満 14.3,10年以上が32.2%,となっている。この比率は1983年の厚生省精 神衛生実態調査とほぼ同様であり,この10年間に精神障害者の社会復帰 が進んでいないことを示している,3)1989年の調査では,入院患者(34.6 万人)のうち,65歳以上の患者は21%だった,1996年の調査では28%で あり,入院患者の高齢化はすすんでいる,4)社会復帰施設の利用定員 は生活訓練施設1,365人,福祉ホーム560人,授産施設2,060人,福祉 工場60人と未だ少ない。 c)基本的理念 「精神障害者の保護及び精神保健の改善のための諸原則」(国連決議 (1991年)等を尊重し,障害者があらゆる社会経済活動に参画する「完 全参加と平等に向けた取組みを進めること。 d)基本的な施策の方向 1)障害者の地域生活支援施策の充実,2)障害者の権利擁護と関係審議 会への参画等。 *精神保健福祉士法成立。 1998(平成10年) *精神病院に対する指導監督の徹底について(障害保健福祉部長,健康 政策局長,医薬安全局長,社会・援護局長通知):最近,精神病院にお ける不祥事が相次いで発生し,国民の不信を招き,今後の精神保健福祉 対策の推進を阻害しかねない事態となっている。今般,指導監督等につ き見直したので遺憾なきよう留意されたい。1)適正な精神医療の確保, 2)入院制度等の適正な運用,3)実地指導の指導項目,4)立入検査に 関する技術的助言,5)生活保護指定医療磯関に対する指導の強化徹底, 6)精神医療に関する苦情等の適正な処理。 *国立療養所犀潟病院事件に対する改善命令。 *精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第38条の6,第1項に基づき 国が初めて国立精神病院・療養所に立入検査を実施。 1999(平成11年) *今後の精神保健福祉施策について(意見・公衆衛生審議会精神保健福 祉部会): a)基本的な施策の方向 1)精神障害者への社会的偏見はなお根強く,これを除去するため,地 域の精神保健福祉施策の充実,2)新規人院者の平均在院日数は短期化 しているが,長期在院者の社会復帰の推進,3)精神病院・社会復帰施 設の地域偏在の解消,4)生活圏内での総合的な保健医療福祉サービス の供給体制の確立,5)在院者・施設入所者への適切な処遇の確保,強 制入院等の手続きの客観性の確保,人権擁護に関わる規定違反への対応 の見直し,6)緊急時の精神科医療体制の確保,7)保護者の高齢化に対 応した現行保護者制度の見直し,8)在宅の精神障害者に対する生活支 援制度の創設等。 b)当面講ずべき具体的措置等に付いて 1)精神障害者の人権に配慮した医療・福祉サービスの提供:イ)医療 保護入院要件の明確化と精神保健指定医の要判定,ロ)任意入院者の約 半数が閉鎖処遇にあるか,閉鎖処遇の手続き・概念を明確にするためこ れら患者の処遇基準を明確にすること,ハ)改善命令等に従わない精神 病院の業務停止処分を設ける,ニ)社会復帰施設につき,入所者の処遇 に関する基準を設ける,ホ)精神医療審査会につき,事務局の独立性の 確保が望ましいが,当面は精神保健福祉センターに事務を行わせる,へ) 地域の特性に応じた審査体制を確保するため,委員数の上限を撤廃,卜) 任意入院者に退院制限・隔離・拘束を行った場合,医療保護入院者に際 しての精神保健指定医の診療録記載(当該判定を行った理由等)と同様 の義務を課す,夕)精神保健指定医は,その勤務する病院において精神 保健福祉法上,不適切な処遇がある場合に,改善が図られるよう管理者 に報告すること,チ)精神保健指定医が精神保健福祉法違反等を行った 場合,指定の取消し処分に加え,職務停止処分を新設する等。 2)医療の確保対策について:イ)保護者に治療を受けさせる義務を担 保するため,治療の必要性が判断できない精神障害者の診察・移送に関 する仕組みを設けること,ロ)仮入院制度は廃止する,ハ)措置入院者 を受入れる指定病院につき.基準の見直し・地域的バランスに配慮する こと,及び国公立病院は措置入院を積極的に受入れること。 3)社会復帰対策について:イ)精神障害者訪問介護事業(ホームヘルプ・ サービス)の創設,口)ショートステイ・サービスの法定化,ハ)社会 復帰施設については,施設数が少ないこと,専門性の求められている等 の課題があり,当面は都道府県を実施主体とする,ニ)就労している精 神障害者への生活面での支援と職場定着の支援に配慮すること。 4)保護者について:イ)任意入院者及び通院患者等自らの意思により 医療を受けている期間は,保護者の保護義務を軽減する,ロ)保護者の 義務のうち,自傷他害防止のための監督義務は廃止する。 5)関係機関の役割分担について:イ)都道府県の行うべき事務のうち, 通院医療費の公費負担の判定や障害者保健福祉手帳の交付に際しての, 技術的業務及び精神医療審査会の事務については,新たに精神保健福祉 センターが行う,ロ)保健所は,精神保健相談や訪問指導といった精神 保健サービスの実施機関として,専門性に着目した事業を行う等。 *精神保健福祉法・第19条の2第2項の規定に基づく精神保健指定医の指 定の取消し処分について答申(公衆衛生審議会):犀潟病院事件。 *精神障害者訪問介護(ホームヘルプサービス)試行事業の実施につい て(障害保健福祉部長通知)。 *長期在院患者の療養体制整備車業の実施について(障害保健福祉部長 通知)。 2000(平成12年) *精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律 の施行について(障害保健福祉部長通知) a)精神医療審査会の機能強化に関する事項。 1)適切な審査体制を整備するため,審査会委員の定数規定を削除, 2)必要と認めた際には,委員による診察,関係者に対する意見・報告 を求めること,診療録の提出,出頭審問を行うこととし,協力なき場合 等の罰則を設ける。 b)精神保健指定医に関する事項。 1)指定医が精神保健福祉法に違反・職務に関し不当な行為を行った場 合,期間を定めた業務停止処分を創設。 2)指定医が,措置入院者の退院判定・医療保護入院判定等を行った際 は指定医の氏名等の事項を診療録に記載すること。 3)指定医は勤務する精神病院での患者処遇等に,精神保健福祉法違反 事例を発見した場合,その旨を病院管理者に報告し,入院患者の処遇改 善に必要な措置が講じられるよう努めること。 c)医療保護入院等に関する事項。 1)同意能力の有無の条件により,任意入院と医療保護入院・応急入院 との区分を明確にす る。 2)仮入院制度は廃止する。 d)厚生大臣及び都道府県知事の改善命令等に関する事項。 1)入院患者に関する処遇が厚生大臣の規定する基準に違反していると 認められるか,または著しく不適当と認めるときは,管理者に処遇改善 の措置を命ずることができるとされていたが,今回,措置を講ずべき事 項・期限を示し,改善計画の提出等を求めることができることを追加。 2)管理者が改善命令等に従わないとき,厚生大臣又は都道府県知事は 期間を定めて,新規患者の入院制限,在院患者の転退院等の命ずること ができる。 e)緊急入院を要する精神障害者の移送に関する事項。 1)都道府県知事は,指定医の診察の結果,直ちに入院を要するが,本 人の同意を得れないと判断されるも,家族の同意があるとき,本人の同 意がなくとも,応急入院指定病院に移送することができる。 2)都道府県知事は,1)の要件に該当する者につき急速を要する等,保 護者の同意を得れない場合でも,応急入院のため移送ができる。 3)その他の事項:措置入院のための移送について,移送の際の告知及 び行動制限について。 f)保護者に関する事項。 1)任意入院者・継続的な通院者については保護者の「保護義務」を除 外したものの,「精神障害者の診断が正しく行われるよう医師に協力す る義務」については,引き続き保護者の義務とする。 2)保護者に課せられていた「精神障害者の自傷・他害の監督」義務は 「治療を受けさせる」義務で十分であり,これを削除する。 g)精神保健福祉センターに関する事項。 精神医療審査会の審査事務の専門性に配慮し,審査の客観性・独立性を 図るため,審査会の事務を精神保健福祉センターに移し,また精神障害 者保健福祉手帳の交付の際の判定業務・通院医療費の公費負担の判定業 務をセンターに行わせることとした。 h)精神障害者社会復帰施設に関する事項。 地域精神保健・精神障害者の福祉に関する問題全般の相談・指導及び助 言,福祉サービスの利用に関する助言,保健所・福祉事務所,社会復帰 施設等との連絡調整を総合的に行うことを目的とする精神障害者地域 生活支援センターを,社会復帰施設に位置づける。 i)精神障害者居宅生活支援に関する事項。 居宅介護等事業(ホームヘルプサービス),短期入所事業(ショートステ イサービス)の2事業を,従来のグループホームとともに新たな在宅福 祉事業と位置づけ,これらを総称して精神障害者居宅生活支援事業とす る(施行は2002年)。 *精神障害者社会復帰施設の設備及び運営に関する基準の公布。 *精神障害者の移送に関する事務処理基準について(障害保健福祉部長 通知)。 *精神病床の設備構造等の基準について(意見:公衆衛生審議会)。 2001(平成13年) *厚生省と労働省が統合し,厚生労働省に。 *精神保健指定医の指定の取消し処分について答申(医道審議会)[朝 倉病院関係]。 2002(平成14年) *「今後の精神保健医療福祉施策について」(報告書:社会保障審議会 障害者部会精神障害分会) a)基本的な考え方。 精神保健医療福祉サービスは,原則として,当事者の居住する地域で提 供されるべきものとの考えに基づき,入院医療主体から,地域における 保健・医療・福祉を中心としたあり方に転換する各種施策を進めること が重要である。具体的な対策を推進する上では,以下の事項を念頭に置 くべきである:1)精神障害者に対する正しい理解の促進,2)「受入れ 条件が整えば退院可能」な約7万2千人の精神病院在院者の退院・社会復 帰を図ること,これに伴い精神病床の減少を見込むこと,3)当事者が 主体的に選択できるよう,地域内に多様なサービスの充実を図ること。 b)具体的な施策のあり方について。 1)在宅福祉サービスの充実,2)グループホーム確保の推進,公営住宅 の優先入居等を介した地域における住まいの確保,3)地域医療の確保, 一般病院・精神科病院・精神科診療所等の連携の推進,4)精神科救急 システムの確立, 「24時間医療相談体制整備事業」の推進・強化を図る, 5)就労支援の多様化を更に検討する等 c)適切な精神医療の確保。 1)精神医療審査会の機能については,退院請求の処理期間からみて不 十分な点があり,審査会の機能の充実と適正化を図ること。2)今後10 年間に,退院・社会復帰の推進・入院期間の短縮傾向からみて,入院患 者数は減少が見込まれるだけに,人員配置を含めた精神病床の機能分化 を推進する。 d)心の健康対策の充実。 1)自殺予防とうつ病対策,2)心的外傷体験へのケア体制,3)睡眠障 害への対応,4)思春期の心の健康等。 *精神保健福祉対策本部(本部長:厚生労働大臣)設置。 *「自殺予防にむけての提言」(報告書:対策有識者懇談会)。 2003(平成15年) *「精神保健福祉の改革に向けた今後の対策の方向」(中間報告:精神 保健福祉対策本部)。 精神疾患は,より一般的な病気となってきている。代表的な精神疾患の 一つである統合失調症も,継続的に治療を行うことにより,長期的に症 状の安定を図ることか可能であることは,糖尿病等の慢性疾患と同様で ある。発症したとしても,早期に適切な対応を行なえば,当事者は地域 で社会生活を継続することは可能であり,また,入院が必要な状態にな っても,手厚い急性期治療により,多くは早期の退院を見込むができる。 たとえ10年,20年を超える長期入院を余儀なくされていた場合でも,適 切な社会生活訓練等のリハビリテーションや退院支援・退院後の居住先 の確保及び地域生活支援で,社会生活が可能となる場合もある。このよ うに,早期対応,早期退院,社会復帰の可能性は,薬物治療の進歩・リ ハビリテーション等の治療技術の向上に負うところが大きく,精神病床 もできるだけ早期に地域生活を可能とするように,その機能を明確化す る必要がある。一方,当事者が地域で安心した生活を送るためには,地 域ケア・支援体制の整備,住居・働く場の整備か不可欠である。 *心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に 関する法律の成立(公布7月16日)。 *司法精神医療専門病棟整備事業の実施(障害保健福祉部長通知)。 2004(平成16年) *「こころのバリアフリー宣言」 (報告:心の健康問題の正しい理解の ための普及啓発検討会)。 *「精神保健福祉の改革ビジョン」(報告:精神保健福祉対策本部)。 2003年にまとめられた「心の健康問題の正しい理解のための普及啓発 検討会」報告書,「精神病床等に関する検討会」最終まとめ,「精神 障害者の地域生活支援の在り方に関する検討会」最終まとめの3検討 会の報告に基づき,今後川年間に改革の軌道を「入院医療中心から地 域生活中心」に転換し,国民各層の意識を変革し,かつ精神保健医療 福祉体系の再編成を推進する。なお,社会的入院を減らすことについ ては,各都道府県の入院患者の平均残存率(1年未満群)を24%以下と し,退院率(1年以上群)を29%以上とする。この目標達成により,10 年間で約7万床相当の病床数の減少が促される。 *厚生労働省,社会保障審議会障害部会に「今後の障害保健福祉施策の 改革試案(改革のグランドデザイン案)」を示す。 a)障害保健福祉施策の総合化:身体・知的・精神等と種別ごとに対応 してきた障害者施策を「市町村を中心にして,一元的な体制を整備し, 地域福祉の実現を図る」 b)自立支援型システムへの転換:政策のレベルで,保護等を中心とし た仕組みから,「障害者のニーズと適性に応じた自立支援」を通じて地 域での生活を促進する仕組みへと転換し,障害者による「自己実現・社 会貢献」を図ることが重要であり,このことにより,地域の活性化など, 地域再生の面でも役割を果たすこととなる。 c)制度の持続可能性の確保:必要なサービスを確保し,障害者の地域 生活を支えるシステムを定着させるため,国民全体の信頼を得られるよ う「給付の重点化・公平化」や 「制度の効率化・透明化」等を図る抜 本的な見直しが不可欠である。 2005(平成17年) *介護保険法,障害者自立支援法,障害者雇用促進法閣議決定・国会上 程。 *障害者雇用促進法改正案,衆議院可決。 *介護保険法改正案,参議院で可決・成立・公布。 *障害者雇用促進法改正案,参議院で可決・成立。 *心神喪失者等医療観察法,施行を閣議決定:法務省推計では,本法の 新規入院対象者は年間300人程度,厚生労働省は国立8ケ所,都道府県立 16ケ所の計24ケ所(792床)に専門病棟を整備予定。 *参議院本会議,障害者自立支援法案を可決,衆議院へ送付・可決,平 成18年4月1日施行。 *精神保健福祉法の一部改正,「精神分裂病」が「統合失調症」に。
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