窒素酸化物の 13%O2 換算濃度

埼玉工業大学
テーマ M01:
機械工学学習支援セミナー(小西克享)
窒素酸化物の 13%O2 換算濃度-1/2
窒素酸化物の 13%O2 換算濃度
ガソリンエンジンは,当量比が 1 の状態(理論混合気)で完全燃焼が行われるよう制御
されるため,燃焼ガス中に含まれる酸素はほとんどありません.一方,ディーゼルエンジ
ンやガスタービンでは酸素過多の状態で噴霧燃焼が行われるため,燃焼ガス中には多量の
酸素が含まれています.酸素濃度は,エンジンの規模(定格出力や排気量)や同じエンジ
ンでもエンジン負荷によっても異なります.
排気管に空気を混入することで排ガスを希釈すれば,見かけの濃度をいくらでも下げる
ことができます.上述のようにガソリンエンジンの場合は本来排ガス中には酸素が含まれ
ないため,希釈すればすぐに希釈したことがわかってしまいます.一方,ディーゼルエン
ジンやガスタービンでは,最初から排ガス中に酸素が含まれるため,少しくらいなら空気
で希釈しても希釈したことが見た目にはわかりません.
燃焼機関から排出されるガス中に含まれる窒素酸化物を法律で規制するには濃度規制と
総量規制の 2 種類がありますが,濃度規制の場合,運転条件によって酸素濃度が異なるこ
とは規制値を決めるうえで不都合であり,また上述のように,希釈により本来の排出濃度
をごまかすような不正を防がなければなりません.そこで,排ガス中に含まれる酸素濃度
が一定とした場合の窒素酸化物を規制の対象とすることになりました.この酸素濃度は,
排ガス中の平均的な酸素濃度が異なることから,ディーゼルエンジンでは 13%,ガスター
ビンでは 16%が用いられます.
ただし,実際のエンジンを排ガス中の酸素濃度が 13%になるように運転して窒素酸化物
の濃度を計測するのではなく,実測された窒素酸化物と酸素濃度を元に以下の式で,換算
濃度 RNO x ,13%O2 [ppm]を求めるのです.これを窒素酸化物の 13%O2 換算濃度といいます.
RNO x ,13%O 2 
RO 2 , air  0.13
RO 2 , air  RO 2
RNO x [ppm]
ただし, RNO x は排ガス中の NO x 濃度 [ppm], RO 2 は酸素濃度 [m3/m3], RO2 ,air は空気中の酸
素濃度 [m3/m3]です.
一般に RO 2 , air  RO 2 ,RO 2 , air  0.13 であるため,右辺の分子分母とも負になることはありま
せん.
換算式の導出
排ガスを希釈することで,排ガス中の酸素濃度が 13%になったと考えます. m を排気ガ
スモル数 [mol], n を希釈空気モル数 [mol], R O 2 を排気ガス中 O 2 濃度[m3/m3], RO2 ,air は空
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窒素酸化物の 13%O2 換算濃度-2/2
気中の酸素濃度 [m3/m3]とすると
R O 2 m  RO 2 , air n
 0.13
mn
となるので,式を変形すると
0.13m  n  RO 2 m  RO 2 , airn
0.13 R m  R
O2
n
O 2 , air
0.13  R O 2
RO 2 , air  0.13

 0.13 n
m
したがって,排気ガス中の NO x 濃度を RNO x [ppm]とすると,NO x の 13% O 2 換算濃度 RNO x ,13%O2
[ppm]は
RNO x ,13% O 2 
RNO x m
mn

1
RNO x
0.13  RO 2
RO 2 , air  0.13

R
O 2 , air

 0.13 RNO x
RO 2 , air  RO 2

RO 2 , air  0.13
RO 2 , air  RO 2
RNO x
となります.たとえば, RO 2 , air  0.21 とおけば,
RNO x ,13%O 2 
0.08
RNO x
0.21  RO 2
となります.
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/L_Support/SupportPDF/NOx13O2ConvConcetration.pdf
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