は じ め に - 国際労働財団

は
じ
め
に
本報告書は、2004年1月15日に総評会館にて連合との共催という形式で開催した
国際シンポジウム「労働の柔軟化−労働組合の対応」の速記録を編集、整理してま
とめたものです。今回のシンポジウムは、今年度からJILAFが実施することに
なった欧米の労働組合指導者招聘事業の中心的なプログラムとして開催したもので
す。当日は限られた時間内での報告と議論でしたが、本報告書には各報告者に執筆、
提出して頂いたペーパーの全文とそれを日本語に翻訳したものを掲載しています。
JILAFではこれまで発展途上国の若手リーダーを日本に招聘したり、現地で
労働組合が行う教育活動に協力するなどして、労働運動の発展を支援してまいりま
した。IT技術の進展などにより経済のグローバル化が進展していくなかで、世界
規模での産業構造の変化が激しくなっており、各国の労働組合が緊密に連携し、協
力関係を強化していくことはますます重要なことであります。特に、欧米と日本で
は、高齢化の進展や就労者の意識変化、今回のシンポジウムのテーマとも密接な関
係を持つ働き方の多様化など共通の課題も多くなっています。こうした重要な課題
について、各国、地域での状況を互いに学び合い、その取り組みについての意見交
換を今後も継続していきたいと考えています。
今回は、日本国内で最近話題となっているパートやアルバイトなど、いわゆる非
正規雇用の急激な増加を共通現象と捉え、労働組合としての視点からこの現象をど
のように捉え、どう対応していくのか、欧州での経験や最近の情勢を含めて議論を
深めたいと考え企画しました。日本ではとかく、正規と非正規との格差ということ
が問題として挙げられますが、欧州ではパートや臨時雇用など多様な働き方を積極
的に捉える向きもあります。労働の柔軟化が無制限に進んでいくことは防がなけれ
ばなりませんが、この問題は、ワークシェアリング、仕事と生活のバランスなど、
質の高い雇用・労働の実現につながる重要な課題だと考えました。
最後になりましたが、本シンポジウムの開催にご協力頂いた皆様に深く感謝申し
上げます。
国際労働財団理事長
1
得本
輝人
2
目
はじめに
次
…………………………………………………………………………………………
プログラム
………………………………………………………………………………………
1
4
国際シンポジウム
主催者挨拶
基調報告
…………………………………………………………………………………
7
……………………………………………………………………………………
8
パネル報告
…………………………………………………………………………………
12
日本側報告
…………………………………………………………………………………
24
質疑応答・パネルディスカッション
……………………………………………………
29
…………………………………………………………………………
40
………………………………………………………………………
43
……………………………………………………………………………………
45
シンポジウムを終えて
付属資料Ⅰ
参加者プロフィール
組織紹介
付属資料Ⅱ
提出ペーパー(日本語訳)
ETUC報告
ヨーロッパ労連(ETUC)の方針と活動 ………………………
53
ETUI報告
柔軟性についてのヨーロッパの議論 ………………………………
58
DGB報告
“労働の柔軟化−労働組合の対応”
69
…………………………………
−ドイツにおいて柔軟化と社会的安定性を促進する新政策−
NFS報告
労働の柔軟化−労働組合の対応 ……………………………………
79
連 合 報 告
労働の柔軟化と労働組合の対応 ……………………………………
92
提出ペーパー(英語原文)………………………………………………………………… 101
3
連合(日本労働組合総連合会)、財団法人
国際労働財団(JILAF)共催
国際シンポジューム
「労働の柔軟化−労働組合の対応
∼ヨーロッパの最新事情∼」
☆プログラム☆
14時00分∼14時10分
開会挨拶
14時10分∼14時40分
基調報告
Mr. Joel Decaillon (ジョエル・ドゥカイヨン)
欧州労働組合連盟(ETUC)・常任執行委員(政策担当)
14時40分∼15時40分
パネル報告
Ms. Maria Jepson
(マリア・イェプセン)
欧州労働組合研究所(ETUI)上席研究員
Ms. Carola Parniske-Kunz(カローラ・パルニスケ・クンツ)
ドイツ労働総同盟(DGB)政策局担当、執行委員
Mr. Tom Saxen
(トム・サクセン)
北欧労働組合協議会(NFS)事務局長
15時40分∼16時00分
日本側報告
須賀 恭孝 連合総合労働局長
16時00分∼16時15分
休
憩
16時15分∼17時30分
パネルディスカッション
2004年 1 月15日
シンポジウムの模様
5
シンポジウムの模様
6
国際シンポジウム
労働の柔軟化ー労働組合の対応
主催者挨拶
国際労働財団(JILAF)
得 本 輝 人
理事長
本日は、多くの方々にご出席いただきまし
のシンポジウムのテーマは、「労働の柔軟化
て、感謝申し上げます。連合・JILAF共
−労働組合の対応∼ヨーロッパの最新事情
催のこの国際シンポジウムを開催するに当り
∼」というものであります。労働の柔軟化に
まして、主催者を代表して一言ごあいさつを
ついては、本日の各報告の中でも十分詳しい
申し上げます。
説明があろうとは思いますが、ヨーロッパを
中心に長い間いろいろと議論されてきたテー
マであります。労働の柔軟化は一言で言えば、
【シンポジウムの意義】
経済のグローバル化の進展によって、日本
働き方が非常に多様化してきていることだろ
や欧州をはじめ各国の労働組合は、世界規模
うと思います。具体的には、雇用形態が多様
での産業構造の変化や、またIT等の技術革
化しているということであります。日本でも
新、雇用・就労形態の変化など、共通の課題
パートタイム労働やアルバイト、派遣労働と
に直面しております。各国の社会・経済シス
いった、いわゆる非典型の労働と呼ばれる雇
テムや雇用慣行等は歴史的な経緯等もあって、
用形態で働く人たちが、現在1400万人と急増
具体的には状況は違いますし、また労働組合
しております。同じことがヨーロッパ各国で
の対応についても異なる部分もあります。お
も起きていて、臨時雇用、パートタイム労働
互いの経験や具体的な取り組みについて意見
が増加しております。日本もヨーロッパもと
を交換し、相互に理解をし、そして共通認識
もに非典型労働が増加をしているという状態
を深めていくことは、問題解決に当たって、
があるわけですが、では、このことをどのよ
今後の取り組みにとって大変意義のあること
うにとらえて、労働組合としてどう対応しよ
だと考えております。
うとしているのか、本日のシンポジウムで議
論を深めていただきたいと思っております。
【問題の提起】
労働の柔軟化については、一方では働き方
そのような意味で、今回のシンポジウムを
や生き方の多様性を可能にするという、選択
開催できましたことは、国際労働財団(JI
肢の拡大という面から、積極的な評価もでき
LAF)だけでなく、日本の労働運動全体に
るかもしれません。しかし、ほんとうに実態
とっても重要な意義があると思います。本日
はそうなっているのか、雇用の安定性や賃金、
7
労働条件、社会保障などについて問題はない
上げておきますと、開発途上国の若手の労働
のか。こういう面についても、労働の柔軟化
組合リーダーを日本に招聘する事業だけでな
の背景、そして課題を明らかにする必要があ
く、現地の労働組合が行う、例えば組織化や
ると思います。
労使関係の問題、労働安全衛生などに関する
本日は、この問題に関するヨーロッパの経
労働者教育セミナーなどの活動に対する支援
験と取り組みを、4名の方にご報告をしてい
や、また社会開発活動としての児童労働対策、
ただきます。その後、連合総合労働局長の須
また最近ではHIV/エイズ対策への支援の
賀さんに、日本側を代表してご報告していた
検討など、活動の幅を拡大させてきました。
だくことになっております。ヨーロッパの経
今年度からは開発途上国の招聘事業に加えて、
験や現状からは、大いに学ぶべきことがあろ
欧米の労働組合指導者、いわゆる先進国の労
うかと思います。労働の柔軟化に対する労働
働組合リーダーの招聘事業も開始することに
組合の取り組みだけでなくて、社会的なパー
なりました。今回はその第1回目であります。
トナーとしての労働組合の位置づけや役割、
来年度以降も、引き続き欧米の労働組合から
またライフスタイルを含めた働き方について
指導者を招聘して、労働運動として共通して
も参考にして、私たち日本の労働運動の前進
いる課題等々についてディスカッションをし
につなげていければ幸いであると思います。
ながら理解を深めて、お互いの労働運動発展
のためにつなげていきたいと思っております。
【JILAFについて】
最後になりますけれども、本シンポジウム
さて、国際労働財団(JILAF)は、労
と今回の招聘事業では、連合本部をはじめ、
働分野における国際的な交流と協力を推進す
多くの方々にご協力をいただきました。その
るための組織として、1989年、連合の発足し
ことに感謝を申し上げ、主催者を代表しての
た年に、連合によって設立され、今日まで活
ごあいさつとさせていただきます。
動を続けてまいりました。ご承知の方が多い
と思いますが、活動の内容について若干申し
基調報告
●
欧州労働組合連盟(ETUC)
ジョエル ドゥカイヨン
ETUC 常任執行委員(政策担当)
欧州労働組合連盟(ETUC)を代表して、
ETUCにはヨーロッパの35カ国の77のナシ
このシンポジウムへ参加できましたことを光
ョナルセンター、11の欧州産業別組織が加盟
栄に思っております。
しており,加盟人員数は6,000万人であります。
ETUCは1973年に設立されました。現在
8
【ETUCの目標】
EUには2004年5月1日にさらに10カ国が
ETUCは欧州連合(EU)の政策立案過
加盟し、加盟国は25カ国に拡大される予定で
程、立法化過程に対して、各種委員会とか議
す。このEUの拡大は一つの象徴的な出来事
会などに直接代表を送り込むことで影響力を
でありまして、特にETUCにとりましては
行使しています。同時にETUCは、ヨーロ
そうであります。ETUCは、EU拡大の第
ッパをカバーする使用者団体と社会的対話を
一段階が成功裏に完成されて、その中で既に
行い、ヨーロッパ全体を対象にした労使関係
社会的に確立された権利が完全に実施される
を確立させることも目標にしております。E
ことが保証されることを目標にしております。
Uでは、労使が交渉してEUレベルの枠組み
欧州の統合化過程で、経済的統合とともに社
協定を締結する可能性が認められてきました。
会的な統合も進むことが重要です。つまり単
これが一つの大きな踏み台になっていると考
一市場、単一通貨だけではなく、効率良く透
えております。ETUCは、既に欧州の使用
明性の高い、そして民主主義に基いたさまざ
者団体とこのような協定を3つ締結しており
まな制度を導入した社会的、そして政治的な
ます。
統合化が重要であります。
今回のシンポジウムのトピックスは、
「労働
2つ目に、ETUCは、
「基本的権利に関す
の柔軟化−労働組合の対応」であります。そ
る憲章」をEU条約の制度的枠組み条約(a
の中には職場における安全衛生もカバーされ
constitutional treaty)へと格上げすること
ていると思います。今回のシンポジウムは、
を目標にしています。基本的権利に関する憲
今後この分野ですぐれた分析を進める上で、
章は、ETUCが他のNGOと一緒になって
大きなステップになるものと確信します。
働きかけ、2000年12月のニース首脳理事会で
ヨーロッパでは既に20年前から多くの使用
制定された憲章ですが、その実施に向けて活
者がこの柔軟化という概念を導入しておりま
動を展開しております。ETUCにとりまし
した。この概念のもとに多くの雇用が創出さ
て憲章は重要なことでした。この憲章は、I
れてきたことも事実であります。例えばレス
LOの基本的な人権に関する条約を基本とし
トランあるいは商業などではそうでした。私
た人権の確立を唱っています。またグローバ
どもはパートタイムとか臨時雇用とか派遣労
ル化が進展する中で、公正貿易を達成するた
働といったような言葉を、いろいろ違った意
めの新しいルールを制定すること、それに付
味合いで使っております。柔軟な労働の概念
随する義務の履行を確立することが重要であ
あるいは意味、またそれがどのように展開さ
ると思います。基本的な人権、社会的な権利、
れてきたかについては、今回出席しておられ
環境に対する権利、そして健康に対する権利
るETUI(欧州労働組合研究所)の代表か
を確立することです。
ETUCは、持続可能な発展を主流化する
ら説明があると思います。
ことを一つの大きな目標としております。持
私としましては、今回のシンポジウムの導
入として、これから数年の間で、ヨーロッパ
続可能な発展は当然のなことながら環境問題、
ではどのような見通しが立てられているのか
経済的側面、社会的側面などを含んでおりま
ということについて先ず申し上げたいと思い
す。
3つ目に申し上げたい点は、長引く経済不
ます。
9
況の中で、失業が増大している問題でありま
UCが要求していますのは、ヨーロッパの政
す。特にドイツ、オランダなどではそうで、
策立案者、あるいは経営者が社会的な対話や
リストラや解雇が進んでおります。一方でイ
団体交渉などをうまく活用して、ヨーロッパ
タリアのパーマラット社のような金融スキャ
経済の生産性の向上、革新を加速化させ、高
ンダルがあちこちで起こっております。社会
いレベルでの持続可能な成長を達成し、生産
的に地位の高い人々の間で経済に対する信頼
力のある高い質の雇用を創出していくことで
度が落ちてきてきています。これは極めて危
あります。労働組合運動との社会的対話が経
険な状況と言えます。その意味でヨーロッパ
済に積極的な役割を果たすということを、明
の社会モデルをつくり上げることがとても重
確に示さなければなりません。
要になっています。特に経済悪化を背景に、
ETUCは、
「ヨーロッパ雇用戦略」を、よ
極右政党の台頭が目立ってきていることがあ
り多く、よりよい雇用という目的と、効果的
るからです。社会モデルを作り上げていく重
で持続可能な福祉社会を推進する目的のため
要性を再度強調しておきたいと思っておりま
にも、ヨーロッパの労働市場を労働組合との
す。高い、それも持続可能な成長を実現する
密接なかかわり合いの中で改変していく手段
ような政策、それが成長の潜在性を改善する
として支持を再確認しております。より多く、
ことになります。ETUCは、2000年5月の
より良い雇用、それから効果的で持続可能な
リスボンにおける欧州首脳会議で合意された
福祉社会の推進、これがヨーロッパ雇用戦略
「ヨーロッパ雇用戦略」の完全な実現を今後
の中で我々が達成していかなければならない
も求めていく方針であります。
目的だということを、再確認をさせていただ
きたいと思います。
【ETUCの優先課題:ヨーロッパ社会モデ
またETUCは、生産性が高く、そして高
ルの発展】
い質の製品、サービスを生産するような高い
成長を掲げたリスボン合意の目標を達成す
方の道をとらなければならないと考えており
る上で、高く、かつ低くない道をたどってい
ます。この関係で真剣な議論がなされなけれ
かなければなりません。小数の労働者ではな
ばなりません。世界経済フォーラムは、その
く、すべての労働者が革新的で競争力のある
最近の報告の中で、EU諸国を最も競争力の
経済に参加できるようにしなければなりませ
ある経済とランクづけしております。ヨーロ
ん。ETUCは、抑制のない規制緩和を拒否
ッパは生産性も高く、産業の競争力も非常に
します。特に総合的な労働市場の規制緩和を
高いということは統計を見ればわかります。
拒否いたします。ETUCは、19世紀的な自
さらに強調したいことは、ヨーロッパでは革
由な労働市場への回帰は、ヨーロッパの経済
新的な産業政策の強化が必要であるというこ
が21世紀に向かって進む道だとは決して思っ
とであります。産業政策は、リスボン戦略の
ておりません。市場は様々な不完全性と欠陥
目的を達成する上で重要な役割を果たさなけ
を持っておりますので、放置されますと生産
ればなりません。ヨーロッパで完全雇用を達
性や革新は推進されません。またそこから得
成し、社会モデルを強化するという目標を達
られる結果も社会的に決して受け入れられる
成するためには幅広い政策ミックスが必要で
ものではないと考えています。かわってET
あります。その中では構造政策、マクロ経済
10
政策を調整していく必要があります。その中
を口実に、社会的セーフティーネットの弱体
にも産業政策も含まれます。
化や労働者の権利の削減を狙う経営者や政府
の新自由主義的なアプローチを転換するよう
ETUCの2つ目の優先課題は、生涯教育
要求します。
を通じて社会的格差を是正し、競争力を高め
ていくことにあります。生涯教育で能力と資
4つ目は、団体交渉と社会的対話、労使間
格を強化するために労使の行動枠組みを実施
の対話の推進であります。それらがすべての
をしていくことが必要であります。これを「社
加盟国で実施されることを要求しています。
会的対話委員会」を通じて、5年に亘ってフ
完全な労働組合権が国境を越えて拡大され、
ォローアップしていくことが必要であります。
ヨーロッパ大での労使の交渉と対話が行なわ
リスボン戦略の総合的な一部として、生涯教
れて、ヨーロッパ大の労働協約が結ばれるよ
育を実現していくことであります。また部門
うにしていくことを求めています。
別での労使の対話を通しまして、また労働協
5つ目は、男女平等の問題です。ETUC
約を通しまして、生涯教育の戦略を実現して
は男女平等が基本的なEUの価値体系の中に
いかなければなりません。高齢者、低所得層、
盛り込まれることを要求しています。平等な
低学歴者、低技能の非典型の男女労働者を含
賃金を実現し、既に確立された権利がすべて
めて、学習を得られるようにしなければなり
の政策で実現され、そして女性がすべての意
ません。また最低限の教育的な資格を持って、
思決定機関に参加できるようにしていくこと
卒業できるようにしていかなければなりませ
を保障するよう要求しています。ETUCは
ん。基礎教育を終了しないままに、学校をや
人種差別、外国人排斥、また性別、国籍、人
める者の数を少なくする必要があります。そ
種、障害、性的指向による差別にも反対して
して学校教育、訓練、大学での資格が若い人
います。ETUCの前回の執行委員会におき
たちの要請に対応していくようにする必要が
まして移民労働にかかわる決議を採択しまし
あります。
た。移民労働者の問題が、現在ヨーロッパで
政治的に重要な問題となっているからであり
労働組合内での男女の平等を実現していく
ます。
ためにETUCの男女平等計画を実施してい
ます。そして加盟組織の構成に応じて、男性
6つ目の優先課題ですけれども、それは企
と女性の参加をバランスあるものにしていか
業内での新しい民主的な制度を強化していく
なければと思っております。
ことであります。ETUCは、1994年に採択
3つ目の優先課題は、社会的保護制度を高
された欧州労使協議会(EWC)指令の改定
いレベルで維持していくことであります。そ
を求めております。この指令はヨーロッパの
うすることによって、雇用にフレンドリーな
企業、あるいは欧州に進出している多国籍企
制度にしていく必要があります。また家族構
業が、欧州労使協議会を設立することを義務
成の変化、非典型契約や高齢者が十分に考慮
づけております。交渉の末、欧州労使協議会
され、そういった中ですべての労働者が法律
に、各国の労働組合を含めることが合意され
で定められた公的社会保障制度でカバーされ
ました。労働組合にとり企業の戦略を理解す
ているようにしていくことが必要であります。
ることは大変重要なことであります。25年間
ETUCは、EU拡大、競争力の維持・強化
の運動の結果として漸くこの指令の採択にこ
11
ぎつけたわけですが、ETUCとしては更な
おります。労働組合の考え方や優先課題の置
る権利の拡大を要求しております。とりわけ
き方に影響を与えていってほしいと思ってお
リストラや解雇を行う場合には、経済情勢、
ります。また特定のグループのニーズも考慮
経営状況に関する情報への権利を主張してお
しながら社会的な疎外、貧困、そして不平等
り、そしてその上で交渉ができるようにする
と闘っていきます。政策を横断的に考えて、
ことを求めております。ETUC、並びにヨ
社会的、経済的、そして地域的な格差是正を
ーロッパの労働組合にとりましてこれは大き
行い、EUの大きなベースをつくっていき、
な課題でありまして、多国籍企業での新しい
そして富の再配分と社会的正義を実現してい
権利を獲得するべき権利の闘争を展開してお
きたいと思っております。ヨーロッパの労働
ります。
力は多様化を認識しががら、連帯の精神に則
最後は、新しい経済への労働組合の適応の
り、世代間、労使間、そして失業者と就労者
問題であります。その問題で、特に若い世代
の間、そして各種の職業間のバランスをとり
が労働組合に積極的に参加し、社会的な発展
調整を図ることが重要であります
に積極的な影響力を行使してほしいと思って
パネル報告
●
欧州労働組合研究所(ETUI)
マリア イェプセン
ETUI 上席研究員
労働の柔軟化をテーマにした今回の国際シ
い、かつ多様な慣行を述べるために使われる
ンポジウムにご招待していただきましたこと
概念の1つとなってきました。こういった慣行
に、心から御礼申し上げます。
は正に方向が異なっておりますが、しかし最
プレゼンテーションでは、まず、ヨーロッ
低限、幾つかの共通性も持っています。まず
パレベルで労働の柔軟化についての議論がど
1つは従来型の雇用と労働のモデル、いわゆ
のような形で進められているのか、そしてヨ
る30数年に亘る黄金時代を特徴づけた典型的
ーロッパで柔軟な雇用、柔軟な労働がどうい
なモデル、すなわち限定のない常用雇用、そ
う意味を持つのかということを紹介した上で、
れも高い継続性を持ちながら単一の使用者の
新しい概念としてのフレクシキュリティーと
下で働くという典型的なモデルから離れてい
いう新しい用語について、話をしていきたい
く動向の一つであるということだと思います。
多くの論者や政治家は、柔軟性の高い労働
と思っております。
過去20年の間、柔軟性という概念は、新し
市場への動向を不可欠であると考えてきまし
い形態の労働組織並びに使用者と労働者の間
た。柔軟な労働市場は、ヨーロッパの長引く
の関係を導く契約形態に関連して、議論の多
失業問題を解決するためだけでなく、ヨーロ
12
ッパの使用者が厳しい競争、特にグローバル
時間の年次化、他部間移動労働といったもの
化の進展や技術の進歩によって引き起こされ
と関連している。このような安定性の想定と
ている厳しい競争に対応できるようにするた
いうのは外部柔軟性にはありません。雇用関
めに必要であると主張してきました。また同
係から、エージェンシーへの下請化、つまり
時に、ヨーロッパの労働市場がどれだけ柔軟
臨時雇用と派遣労働雇用という2つの区分が
であるかということも、今まで色々論じられ
出てまいります。これら柔軟性を区分する方
てきました。議論の中には、先ほど申し上げ
法を組み合わせますと、スライドで示してい
た従来型の典型的な雇用モデルはいまでも続
るような表になります(後掲「ETUI報告」
いている、いまだに主流であるという結論付
表1を参照)
。
けている議論もあります。しかし他の研究で
表1に見る通り、柔軟性を4つの象現に分
は、ヨーロッパの労働市場は、実は人々が考
けて、4つの主な柔軟性の戦略が示されてお
えている以上に柔軟性が高いのだと結論付け
ります。まず外的で量的な柔軟性というのは、
ているものもあります。
雇用のステータスです。それから内的な量的
柔軟性は労働時間に関連しています。一方、
【柔軟性の概念の定義】
外的で質的な柔軟性は主に生産組織、生産シ
では、柔軟性というのを、どういう定義で
ステムに関連し、最後の4つ目は内的で質的
使っているんでしょうか。この定義はとても
柔軟性は労働組織が主に関わる内的で機能的
複雑です。というのは、先ほど言いましたが
な柔軟性です。従って柔軟性は、労働者にそ
柔軟性というのは、いろいろな異なる慣行や
れぞれが異なる結果をもたらす4つの全く異
戦略を寄せ集めたものにすぎないからです。
なる、かなりはっきり区分できる内容を含ん
しかし一つのコンセンサスが形成されつつあ
でいるわけです。
ります。それは柔軟性という言葉を区分して
ここで事例を申し上げたいと思います。デ
使うことです。つまり量的な柔軟性と質的な
ンマークとオランダは見かけは似たような、
柔軟性という区分です。質的な柔軟性という
しかし異なる戦略をとっています。オランダ
のは、例えば専門職員の採用やエージェンシ
の場合は、量的な外的柔軟性と量的な内的柔
ーへの下請化などの慣行に関連し、それに対
軟性を使っております。つまりパートタイム
して量的な柔軟性というのは、労働の量、も
を促進し、また臨時雇用、つまり有期の契約
しくは雇用の量を調整するために使われる慣
を推し進めています。しかし一方では労働市
行に関連しています。
場の保護は極めて少ない。ということは外的
また一方では、外部柔軟性と内部柔軟性と
な量的な柔軟性を、簡単に解雇できる、ある
いう区分も出てまいります。外部柔軟性は、
いは簡単に採用できるという形で導入してい
雇用の量を変動させるために使われる慣行に
るわけです。これらがそれぞれポジティブな
関連し、雇用契約で定義されている雇用関係
柔軟性なのか、あるいはネガチィブな柔軟性
の性格、そこから労働者の地位などに関係す
なのかの評価の仕方は、柔軟性をもたらした
るものであります。内部柔軟性は、雇用関係
いという願いなり要求がどこから発生してき
の安定性を想定はしながらも労働者の能力活
ているかによって大きく変わります。例えば
用も想定しており、内部移動、それから労働
使用者側の求める柔軟性であった場合には、
13
通常は被用者にとってマイナスの影響をもた
クセンブルグでは2%∼3%ですので柔軟性
らすことが多いようです。一方で国が主導権
はあまり高くないと言うでしょう。ヨーロッ
を持っている場合には、被用者に対してプラ
パのどの国のどの人に話しをするかによって、
スとマイナスの両方の効果を持ち得るようで
臨時契約がよく行われている、あるいは全く
す。そして個人が柔軟性を要求している場合
行われていないというふうに、ばらつきが出
には、その個人にとってポジティブな、プラ
てきます。
スの柔軟性が提供されるようです。これは大
2つ目の結論ですけれども、趨勢として臨
変粗削りな方法ですので、もっと細かく見て
時雇用が増加しているか、減少しているかに
いく必要があります。中には使用者が提案し
ついても国によって違います。スペインでは
た柔軟性で被用者にとってもポジティブな柔
1990年には臨時雇用が高かったんですが、
軟性もあります。また個人の柔軟性をあまり
2000年には増加率が下がってきました。それ
にも厳しく要求するがために、要求の仕方に
ほど大きな減少ではありませんが、下がって
よっては、みずからにとってマイナスの要因
きました。フランスの場合には1990年には
をもたらすような柔軟性になってしまう場合
6%だった臨時雇用が、2000年には15%とい
も考えられます。
う大幅な増加となっています。臨時雇用とい
った場合には、有期の派遣労働者、季節労働
【現在の柔軟性の程度】
者、その他を含んでいます。
次に、どの程度柔軟性がヨーロッパ、EU
もう一つ、どのような臨時雇用が伸びてい
で実現されているかをご紹介したいと思いま
るかということです。このチャートには載っ
す。いずれも量的な柔軟性の事例を幾つかの
ておりません。現在はいわゆる典型的な、従
図表で示しておきました。外的・量的柔軟性
来の臨時雇用から脱却しております。つまり
の事例として主に臨時雇用、それから内的・
従来のというのは有期的な契約から、ハイブ
量的柔軟性の例としてパートタイムをご紹介
リッド型の契約へと移行しております。例え
したいと思います。質的な柔軟性というのは、
ばオンコール、それからゼロアワーコントラ
生産システムと労働組織に関係していますが、
クトといったようなものです。つまり臨時雇
それについての分析はまだ進んでいない、統
用についての交渉が、労働組合にとってさら
計もそろっていないというのが現状でありま
に複雑になってきているということです。結
す。従って今申し上げているのは、今までの
果、その従業員、あるいは労働者にとっての
ヨーロッパにおける議論の現状であります。
交渉の結果というのもどんどんばらつきが出
ヨーロッパで労働市場の柔軟性が高いか低い
てきているということです。
かという議論が続いておりますが、図表に見
では次に、臨時の従業員はどのような人間
るとおり各国間で大きな開きがあります。例
なのかということですが、これもばらつきが
えば1990年にはスペインでは臨時雇用は30%
あります。これは日本と似ていると思います
でありましたが、アイルランドでは8%でし
が、2000年で見てみますと、15歳から24歳の
た。30%と8%です。スペインの人に話をす
女性、若い女性が臨時雇用の比率がはるかに
れば、労働市場は柔軟だと言うでしょう。し
大きいということなんです。ちょうど働き盛
かしルクセンブルグの人に話しをすれば、ル
りの男性、25から49歳までの人たちに比べて、
14
はるかに若い女性の臨時雇用比率が高いとい
おります。つまり臨時雇用、臨時契約ではな
うことです。つまり、ありとあらゆるすべて
くて期限を設定していない雇用契約であって、
の種類の労働者が、このような臨時雇用市場
ただ労働時間が少ないということです。パー
に入っているわけではありません。日本同様、
トタイムはギリシャでは5%を切っておりま
やはり若年者、特に若年の女性がこのような
して、オランダでは40%強です。つまり全労
雇用形態に大きく影響されています。つまり
働者、男女合わせた数の40%以上がパートタ
一部の特定の労働力だけが臨時雇用化されて
イムで働いているわけです。ヨーロッパにお
いるということです。この雇用の特徴はヨー
けるパートタイムというのは、ほんとうにば
ロッパ全域で共通で、EUのすべての国は同
らつきが多い。またこの現象の重要性につい
じ問題を抱えています。ただ、新規雇用に入
ても、それだけ認識に違いがあるということ
る労働者を見てみますと、その3分の1は臨
が言えると思います。年齢層で見ても、パー
時契約で入っているという現実もあります。
トタイムが圧倒的に多い年齢層がありますし、
これはすべての年齢層についてそうです。で
パートタイムが大きく伸びているのはどの国
すから若年層のほうがより臨時雇用の割合は
でも共通しています。北欧諸国の場合は、パ
高いんですが、しかし雇用を変える人、新規
ートタイムの比率がこれまで非常に高いとい
雇用を受ける人のうち3分の1は臨時契約で
われていたデンマークやスウェーデンでは、
入っているということなんです。これが恒久
現在は少々減少しているという現象もありま
的な常用雇用への踏み台として使われている
す。また、EU新規加盟国、つまり今年5月
のだったらよいわけですが、しかしそうでは
に新しく加盟する国々は、パートタイムの比
なくて、新しい失業の増加へ向かった動きだ
率が旧加盟国よりも、一般的に言ってはるか
とすれば、それは悪い影響だと言えると思い
に低いということもおわかりいただけると思
ます。また臨時雇用に入った後、常用雇用に
います。
入る確率というのは、若い男性が、女性より
では、パートタイム労働者はどういう労働
も、また高齢者よりも高いということがわか
者でしょうか。これは何も驚きではなくて、
っております。
女性がまず圧倒的に多いということです。女
性のほうが男性よりもパートタイムで雇用さ
【パートタイム労働】
れる割合が多いわけです。つまり女性のほう
では、パートタイムを見てみましょう。こ
が男性よりもパートタイムで働く場合が多い
こで強調したいのは、ヨーロッパにおけるパ
わけですが、これは若い女性だけに限ったも
ートタイムと日本におけるパートタイムの定
のではありません。女性は全年齢層でパート
義の違いです。ヨーロッパのパートタイムと
タイムの雇用の割合が高いわけです。パート
いうのは単純に、個人が通常の、同じ業種の
タイムは、一部若い男性が労働市場に入るた
雇用者の労働時間よりも少ない時間しか毎週
めに使っている、それから高齢の男性が、逆
働かない労働ということです。つまり時間が
に労働市場を去るときに一時的にパートタイ
少ない労働ということです。パートタイムの
ムにかわるというような使われ方もされてお
労働者のほとんどはヨーロッパでは、有期で
ります。
はなくて期限を指定していない契約を使って
15
【フレクシキュリティーの概念】
のをどうやって解消していくか、これが欧州
柔軟性は、確かに拡大しています。しかし、
委員会が掲げている一つの政策です。欧州の
労働市場全体に影響を与えているわけではな
雇用政策としての2003年の雇用ガイドライン
く、その周辺部分でしか拡大していないわけ
は、労働市場で適応性(adapatability)と移動
ですが、それでもそれに対する労働組合の対
性(mobility)を変えていくと、あるいは高め
応も大変大きな問題となってきております。
ていくことを中心に置いています。例えば労
中核を成している労働者だけではなくて、す
働時間、労働組織、そして訓練へのアクセス、
べての労働者に対して、安定性と柔軟性の最
そしてキャリアの開発などを通じて行ってい
適な組み合わせを提供していくことが重要で
くということなんです。つまりフレクシキュ
す。柔軟化を現在の制度を不安定化する要因
リティーという一つのパラダイムを促進して
とさせてはなりません。一方、パートタイム
いく枠組みが構成されつつあります。フレク
労働は主に女性であり、そして臨時雇用は主
シキュリティーというのは、柔軟性を安定性、
に若年であるから、周辺部における柔軟性は、
つまり職業の安定性と組み合わせた形で促進
それほど大きな問題ではないという議論があ
していくための一つの手段だとお考えいただ
ります。これはとても短絡的な見方であって、
きたいと思います。ただこれはどうしても、
今後、例えばイギリスとかフランスに見られ
トレード・オフの戦略にならざるを得ません。
るような女性と子どもの貧困、それから労使
職の安定性と外的、そして内的、機能的、質
関係の不安定さといったような悪影響をもた
的な柔軟性との間のトレードオフなんです。
らしかねないと考えられます。ということで、
雇用の安定と量的・内的な柔軟性という意味
柔軟性というのは、今までとは違った見方で
では、そういう側面も持っているということ
論じられるようになってきていると思います。
です。
政治家、研究者などが柔軟性を見る目が変わ
そういうことで、3種類のフレキシビリテ
ってきている。より多くの安定性と柔軟性を
ィーにここでは限定してますけれども、この
同時に提供する必要があると考えるようにな
3つのフレキシビリティーの中で、雇用の安
ってきています。その結果生まれたのがフレ
定性、そして所得の安定性、それからそれを
クシキュリティー(flexicurity)という概念
組み合わせた安定性というものを同時に促進
です。
していかなければならない。つまりどちらも
お互いがなければ促進はできないというのが、
フレクシキュリティーという概念は考え方
としては決して新しいものではありませんが、
フレクシキュリティーの一つの性格ではない
政策論もしくは戦略論として議論されるよう
かと思います。この戦略を現在実行しようと
になったのは最近のことであります。企業、
しているのがオランダです。有期契約、そし
各国政府、少なくともEUレベルでは二重の
てパートタイムというものを一つの政策課題
期待があります。まず、さらに労働市場を柔
として、国を挙げて実行しております。これ
軟化させたいという要求がある一方で、同じ
によって高い安定性を提供しようとしていま
ぐらい強い要求として、労働者に対する安定
す。労働組合も深くかかわっておりまして、
の提供という要求があるわけです。柔軟性と
コンセンサスに基づいて移行を遂げようとし
安定性の間の乖離、あるいは不一致というも
ています。一方デンマークでは柔軟な労働規
16
制(flexible labor regulation)というのが導
うのはより多くの安定性、職業、あるいは雇
入された結果、解雇と採用が大変容易になっ
用の安定性を必要とするものです。従いまし
てきました。しかし労働市場に対するいろい
てフレクシキュリティーという概念に対して
ろな積極的な措置を講ずることで、その悪影
関心が高いんです。また、こういった戦略の
響を相殺しようとしております。しかしこう
結果についてはまだまだ分析が必要です。こ
いった形の政策や戦略は大変高価な対価を伴
のような戦略の長期的な結果についてはまだ
うことも付言しておかなければなりません。
わかっておりません。先ほど、オランダなど
幾つかフレクシキュリティーの成功例として
結
論
挙げておきましたが、そのような国は、国レ
結論ですけれども、ヨーロッパの労働市場
ベル、産業レベル、そして企業レベルで調整
がどの程度柔軟性を持っているのかについて
と協議と交渉を、労使間で伝統的に行ってき
はコンセンサスはありません。柔軟性という
た国々です。やはりこういった戦略が成功す
のはいろいろな意味を持つからです。柔軟性
るためには、調整、協議、交渉が必要だと思
のどの側面を取り上げるかによって、その柔
います。またトレードオフが行われているす
軟性が決定されるということです。しかし国
べてのレベルで労使、すなわちソーシャルパ
によっては、大変柔軟性が高いところもある
ートナーが大変重要な役割を果たすと言える
と思います。また柔軟性というのは特定の労
と思います。
働者に関するものであると、また柔軟性とい
●
ドイツ労働総同盟(DGB)
カローラ パルニスケ クンツ
DGB 政策局担当
Ⅰ.ドイツの現状
市場経済は、高い失業率、成長の鈍化、財政
本日皆様方とともに、重要なテーマであり
赤字の拡大、困難に直面する社会保障制度の
ます労働の柔軟化について、議論できる機会
中で、社会経済政策の転換を求められており
を得ましたことに感謝します。発表の前半に
ます。それでもドイツは試練に耐えうるに十
おきまして、ドイツの現状について報告した
分な資源を有しています。しかし変わるには
いと思います。
時間がかかります。ドイツでは何百万という
質の高い労働力が存在しています。しかしな
2003年は、どうすれば雇用を拡大できるか、
経済成長を達成できるかについて、随分と議
がら一方では、何百万人もの人々が労働の世
論が展開された年でありました。グローバル
界への参加を妨げられています。2003年には
化、人口構造の変化、社会的変化に照らして、
失業者の数は400万人にのぼり、失業率は年末
将来に向けてどういう改革を行うべきかにつ
には11%という高い水準に達しました。
経済と労働市場の危機は二極分化によって
いて議論が展開されました。ドイツの社会的
17
もたらされております。合理化された資本集
は偏った一方的な見方で行われています。す
約的な輸出産業は依然として成長を続けてい
なわち、ドイツの経済の諸問題は、労働市場
る一方で、内需の低迷は2000年末から続き、
の過剰な規制と、そして社会保障制度におけ
そのため内需を対象とする企業は売り上げが
る柔軟性のない構造に起因するということが
伸びず、そして個人の消費も伸び悩んでおり
言われております。使用者団体や政党の強硬
ます。企業の投資活動は不活発で、消費者は
論者は何年にもわたり、
「労働市場の硬直性」
支出を渋っております。長引く景気低迷は、
というのを名目にいたしまして、労働者の権
企業にとり益々構造的な問題というふうにと
利の切り下げを求めてきました。そして制度
られるようになりました。連邦政府および州
的に社会的市場経済の基盤を破壊しようとし
政府の消極的な財政政策によって経済情勢は
て、労働組合を攻撃してきたわけであります。
益々悪化いたしました。そしてこの景気低迷
しかし、ドイツは新しい労働法は必要として
の結果として、また税制改革の失敗の結果と
おりません。新しいルールでミニジョブや派
して、公的部門の税収入源が枯渇してしまい
遣労働法の抜本的な改革により、工場や企業
ました。
における柔軟性を高めることができました。
ドイツ経済は強固です。ドイツ経済は世界で
【「硬直的な労働市場」という議論】
も強い経済力を持っておりますし、ドイツの
こういった状況下において、社会全体のコ
輸出力は世界の経済の中でもいかに強いかを
ンセンサスとして、やはり改革が必要だとい
示しており、ドイツ経済の効率性を示してい
うことになったわけです。しかしドイツにお
ます。従いましてドイツ経済に国際競争力が
けます改革議論は、柔軟性と安定性を両立さ
ないというのは全く当てはまりません。
せる必要性があるにも関わらず、それと矛盾
Ⅱ.労働の柔軟化 - DGBの提案
した方法で行われてきました。ドイツ政府は
次に労働の柔軟化とDGBの改革案につい
「アジェンダ2010−変化への勇気」というタ
て述べたいと思います。
イトルのもとで、また社会保障制度を長期的
に維持し、ドイツをビジネスの拠点として強
DGBが発表した経済社会政策のアジェン
化するための総合的な経済成長プログラムを
ダは、社会的費用の削減競争は成長と雇用を
打ち出しました。そのプログラムには一連の
更に悪化させるだけであるとうたっておりま
対策が含まれており、政府によると「市民の
す。広範にわたる諸問題を社会福祉の削減で
自己責任を拡大し、そしてドイツの創造的か
解決できるものではありません。雇用の危機
つ経済的潜在力を発揮させる」ようにしてい
は、実質成長率が生産性の向上を上回る時に
くことを目的にしているとしています。社会
のみ初めて統御できるものであります。企業
福祉や失業給付は社会的制度の中で大幅に削
への偏った救済と消費者の財政的負担を基本
減されるように見直されます。そして失業者
とするような改革では、ドイツにとっての危
に迅速に雇用を見出そうとする諸対策が加速
機を解決する手段とはなりません。ドイツは
化されることになります。すなわちこれは雇
経済と労働市場を再び健全化する方向に改革
用維持法の改定を目指すものであります。
しなければなりません。企業、そして消費者
の信頼を回復するためには、経済政策にほん
しかし、経済社会政策の改革に関する議論
18
とうの安定した枠組み条件を設けて、企業と
ような理由でDGBは、目標として雇用、訓
国民の将来の安定を図ることが重要でありま
練、そして資格をターゲットにすることを求
す。
めております。若年層の雇用機会を拡大し、
そして高齢者と女性を労働の世界へ統合して
基本的には改革には2つのことが必要であ
いくことであります。
ります。ドイツ経済が必要としているのは、
経済財政政策の方向性を改めることでありま
【雇用と資格取得へのイニシアティブ】
す。1つは、危機の時代には、成長と雇用を
目的とする政策は、投資と革新、そして需要
高齢者の能力をもっと活用し、そして高齢
の拡大を図っていく必要があります。2つ目
化社会の問題に対応するために、DGBは雇
は、成長と雇用のための政策は、社会保障の
用、教育、そして技能開発のためのイニシア
保険料を削減する方向に持っていかなければ
ティを提案しております。職場段階の交渉、
なりません。しかしそのために経済発展を妨
そして年齢を特定した年齢指向型の技能開発、
げるものであってはなりません。必要とされ
また職場の安全衛生問題を、育てていく必要
るのは、労働集約的な企業を徐々に救済して
があります。
企業が高齢者を対象に職場で再訓練を行っ
いく方向にもっていくことです。社会保険は、
社会保障拠出金の削減により、失業、疾病、
た場合には、財政的支援が行われることにな
高齢などの生活の危機の負担を労働者に負わ
っております。
せないような方法で改められなければなりま
DGBは再訓練におきまして質の確実性と
せん。税制改革を公正な形で行って現在必要
透明性が改善されることを求めております。
とされている信頼を取り戻すことが緊急の課
その改善の中には、男女の平等の考え方を実
題であります。
施し、全国的に居住地近辺で実施されること
が含まれております。
【雇用拡大と訓練強化のための改革】
良好な雇用機会が得られるかどうかは、や
改革の分野では、訓練の強化が必要であり
はり良好な職業訓練が得られるかどうかにか
ます。社会制度の安定化に必要なものは、人
かっております。年齢、男女、民族、そして
口動態や労働市場のデータ、また賃金や俸給
障害に関わりなく平等な機会を提供すること
レベルのデータだけではありません。個人の
が、全産業に亘る将来の課題であります。
職能暦の開発にも注目する必要があります。
女性の雇用機会を拡大するための枠組み条
戦略として青年の雇用機会の改善と、高齢者
件が整備される必要があります。その枠組み
と女性の雇用の拡大を目標にすることであり
条件の中には、女性が家庭と仕事の両立を図
ます。しかし現在、こういった点について議
ることが可能となるように、託児所、幼稚園
論がほとんどなされておりません。
などが全国的に整備されることが必要であり
ます。
雇用暦の向上と延長は、公的年金保険を救
済する視点からも重要であります。企業に対
【連邦労働局の改革】
して、十分な訓練場所を提供するように、ま
た高齢者を再雇用する機会を増やすように、
ドイツでは、連邦労働省(Federal Labor
要求するだけでは十分ではありません。その
Office)の再編成が計画されています。DGB
19
ていかなければなりません。
は雇用庁(Employment Office)の再編成を支
持しています。雇用庁の第一義的な機能は雇
団体協約当事者は、所定外労働時間に対す
用問題であり、そしてハローワークのような
る法的規制を早急に求めていく必要がありま
ところですが、近代的ジョブセンターに転換
す。
し、個人別の職探しのサポートが得られる場
DGBの立場からは、近代的で柔軟な労働
所にしなければなりません。失業給付を給付
時間形態は雇用の潜在性が大きいと考えてお
だけではなく、個人に合った、目的に合った
りますので、これはもっと利用して、そして
支援を提供する場所に転換しなければなりま
男女両方に言えることですがパートタイムの
せん。また職業紹介のほかにも、麻薬中毒患
労働を適切に扱う。そのためには労働協約に
者などへのカウンセリングなども提供する必
基づきまして、労働時間形態の多様化を図る
要があります。
べきであります。そして景気の悪いときでも
雇用を守るために、革新的な労働時間制度に
長期の失業をなくすためには、低技能者や、
特に開発が遅れている地域の問題のグループ
対する優遇税制を実現することを、DGBは
への支援があってこそ可能です。費用対効果
求めております。
の側面のみ重視する企業指向労働市場政策は、
【革新的な団体交渉政策による成長と雇用】
構造的な失業問題の解決にはなりません。
DGBはドイツの問題解決に貢献したいと
【労働市場の柔軟性】
願っており、そのために革新的な団体交渉を
求めております。団体交渉における柔軟性は、
それでは労働市場の柔軟化の話をさせてい
ただきたいと思います。経済的に困難な時代
時代の要請であり、当然だと思われているこ
の効率的な雇用戦略は、新しい形態の労働時
とを述べているに過ぎません。今も有効であ
間の柔軟性を考えて行わなければなりません。
り、労働組合はそれをさらに進めていきます。
先を見た人事計画は、経済的なボトルネック
100にもおよぶ産業分野の1,300万の労働者と
を解消し、そして人材のバランスを図り、そ
経営者は、柔軟化に関してのルールを合意を
うすることによって生産性向上をもたらすよ
することができるようになりました。しかし
うな仕事の再配分を行っていくことが必要で
労働組合は、労働協約に関して特定の条件の
す。そのためには適切な枠組み条件が必要と
下でのコントロールされた柔軟化を求めてい
なります。
ます。
経営者が求め、そして政治家の間でも推し
【労働時間の柔軟性】
進められてきた「雇用のための同盟」という
労働時間勘定に見合った賃金支払いを保護
考え方があります。使用者の言いなりになっ
する法律が必要であります。信頼できる労働
ておりますと、労働者はソーシャルダンピン
時間勘定に見合った賃金が確実に支払われる
グをすることになってしまいます。そういう
ことが魅力的でありまして、労働者はそうす
理由があるからこそ、自由な団体交渉が、最
ることによって柔軟な労働時間形態を受け入
低条件や優先条項を決めるために保障されな
れることになります。そして柔軟な労働時間
ければなりません。労働協約は賃金、労働条
形態を使いまして、所定外労働時間を削減し
件、労使平和を保障するからであります。企
20
どんどん見られるようになってきました。
業は、製品やサービスの質で競争していけば
労働者の労働生活は複雑化しておりますし、
いいわけでありまして、低賃金や社会保障の
切り下げをめぐっての競争をしてはいけない
作業形態も複雑化しております。さまざまな
わけであります。そうすることによって、高
形態の労働、また非定型雇用も増えておりま
い生産性も実現し、そしてドイツの企業の競
す。他の先進国と同様にドイツにおいても経
争力も世界市場におきまして強化されること
済的にも社会的にも根本的な構造変化が見ら
になります。
れます。それは主として、産業社会から情報
雇用を守るために、制御された柔軟化が未
社会、またサービス社会への転換の中で見ら
だ労働協約の選択肢になっていない産業での
れているわけです。だからこそ、人材の開発
団体交渉のために、労働組合は規制を使用者
が大切です。また技術や知識も必要でありま
と見直しております。ドイツの機構の中で定
す。人材がますます重要な経済資源となって
着している自由な団体交渉は必ず維持されな
おりますし、事業の世界におきましても社会
ければなりません。
にとっても革新の原動力となります。人的資
源こそが改革の源であります。結果として個
企業の競争力は労働者の高い技能水準によ
ってのみ保障され、そして良好な訓練は良好
人のエンプロイアビリティーは能力を開発し、
な雇用を保障します。従って将来の団体交渉
そして労働条件、そして生活条件を改善して
においては、労働組合は、訓練、そして再訓
いくことによって実現していくべきです。だ
練が団体交渉の協議項目となることを求めて
からドイツでは新しい取り組みを始めており
いきます。
ます。これは良好な仕事(good work)と呼ばれ
更に、共同決定でありますけれども、従業
ており、大変重要な課題として取り組まれて
員協議会、あるいは経営協議会の共同決定権
います。昨年も革新をテーマとして議論され
を強化する必要があります。
ました。
最後になりましたけれども、柔軟性を拡大
Ⅲ.労働の革新的な発展
するに当たりましては、人間の労働と安定性
最後の報告になりますが、それは労働の革
の概念を損なってはなりません。そこで労働
新的な発展という課題であります。近年ドイ
組合としては、労働市場の柔軟化に向けての
ツでは、柔軟性というのが政治的にも学界に
新しい概念として、柔軟性と安定性の両立と
おいてもキーワードとなってきました。これ
いう概念に挑戦していきたいと考えておりま
まで雇用における柔軟化が、雇用形態などで
す。
21
●
北欧労働組合協議会(NFS)
トム サクセン
NFS 事務局長
ますが、しばしば小さな賃金格差が失業を助
私のアプローチは、他の同僚とは若干異な
長するという議論も残っているわけです。
ります。まず第一に、できるだけ重複を避け
たいと思っております。それから皆様にとっ
【柔軟性、労働市場の構造、失業】
て関心の高いと思う、最も最近の動向ととし
て交渉制度の在り方についてお話ししたいと
労働者を労働生活における危険や危害から
思います。つまりナショナルセンタレベルあ
守ろうとする措置が労働市場の硬直性を生む
るいは産業別レベルにしろ集権化した交渉な
という言われ方がされます。つまり連帯に基
のか、あるいは個別交渉になっているのか、
づく賃金政策、解雇に対する規制といったよ
そしてそれが労働者にどういう影響を持つの
うな措置が労働者の立場をよくする一方で、
か、また使用者にとってはどうかということ
ほかの影響、結果をもたらし得るんだという
を話したいと思います。
議論があります。労働市場の硬直性は、結果
労働組合は、特に北欧においては、従来で
として恒常的により高い失業率を生むという
すと、無制限な賃金格差の拡大を抑制するこ
わけです。実際、失業は人々を2つのグルー
とを伝統的に目標としてきました。つまりあ
プに分けてしまいます。雇用されていて裕福
らゆるセクターの労働者の所得動向を考慮す
な人と、失業して裕福ではない貧しい人々に
るという目的から、すべての部門をカバーす
分けてしまうというわけです。この不公正な
る全般的な賃金引き上げの協約を締結するこ
区分は雇用関係の柔軟化によって解決するこ
とを目指してきたわけです。そして集権化し
とができるとよく言われます。
た協約というのは、全般的な賃金引き上げの
アメリカは通常、柔軟性の高い労働市場の
ために役立ってきました。集権化した労働協
モデルとしてよく引き合いに出されます。一
約の基本的な賃金政策のねらいの一つは、賃
方でアメリカのモデルは批判もされています。
金格差の無制限な、継続的な拡大を防ぐこと
というのは、雇用が拡大したのは、実質賃金
にあると言えます。これはつまり、労働組合
が大変低く抑えられているから、また賃金格
がお互いに産業別の賃金引き上げ目標で合意
差が拡大しているからにすぎないと。
に達することが必要である。それも経済的に
また柔軟性の概念で、個々の雇用主と被用
最も実現可能な部門と企業で、賃金引き上げ
者との間の個別交渉は、実は全国レベルで見
のための全体的な経済的マージンが、交渉さ
ると硬直性を生みかねないとも言われます。
れる賃金引き上げに直接には含まれないよう
というのは、個別交渉だけに基づくシステム
にするという方法で合意することが必要だと
では、唯一賃金を改定するやり方は、一つ一
思います。
つすべての個々の契約を改定するしかやり方
しかし、集権化された労働協約を基本とし
がないわけです。その結果、このシステムの
た賃金政策は、所得格差の拡大を遅らせはし
中では、改定が企業の収益性の変化とか経済
22
変動によって特に必要とされる状況に限定さ
の国もあります。結論としては、この2つの
れ、それ以外の手段は入っていないわけであ
間の相関関係を示すような証拠はないという
ります。そこで一企業内での恒常的な賃金を
ことです。
めぐる争い、これを回避するには長期の契約
【失業給付期間と失業】
を締結するしかありません。このような長期
一方、図表2(82頁)をごらんいただきま
的な協約というのは、双方に恩恵を与えます。
労使のどちらかがみずからの交渉上の立場が
すと、これは失業給付期間と失業との間の相
強化されたと認識する場合でも、労使双方と
関関係を示したものです。失業給付水準の表
も、労働条件の安定に依存することができる
に比べますと、給付期間と失業の間にはより
ということで、長期契約は恩恵を与えている
高い相関関係が見られます。つまり長期の給
んだと思います。
付期間と失業率の高さの間には、強くはない
が相関関係が見られます。
これはまた、アメリカで締結されている契
約は、通常、ヨーロッパで締結される契約よ
【解雇からの労働者の保護】
りも平均して長いという事実も説明している
図表3(84頁)をご覧下さい。この図表は、
と思います。長期の契約を結ぶことによって、
使用者も被用者も片方が一方的な措置をとる
解雇規制、解雇に対する保護と、それから失
ことから身を守ろうとしているわけです。欧
業との間の相関関係をとったものです。ここ
州では契約は一般的に、全般的な経済状況や
で失業率と解雇規制との間には、明確な相関
産業部門の変化によってのみ改定されるとい
関係は確認されませんでした。しかし、スペ
う合意があるので、比較的短い契約のほうが
インを除きますと、平均失業率は、最も厳し
交わされやすいわけです。つまり交渉当事者
い解雇に対する規制がある5カ国のほうが低
のどちらかの個別レベルでの交渉、立場が変
い。OECDの研究を含めて、こういった研
化した場合ではないわけであります。このこ
究の一番大きな結論は、解雇からの保護政策
とは全国レベルの協約のほうが個別な契約よ
は、全体的には失業率にあまり影響をもたら
りもはるかに柔軟であることを示しておりま
さないのであるということであります。
す。また賃金や給与は、個別に契約を再交渉
交渉制度
交渉制度には、まず集権化された交渉、つ
する必要もない、集権的な方法で改定される
まり労使間の交渉で全産業部門を対象とする
ということになります。
交渉と、それに対して個別交渉、つまり個々
【失業給付の水準】
の労働者と使用者が賃金と労働条件を交渉す
では、それぞれの現象の相関関係を見てみ
る2つのやり方があると思います。その個別
たいと思いますが。まず最初に、図表1から
交渉と集権化された交渉との間に、産業別の
まいります(81頁)。これは失業給付の補償率
交渉というのがあります。北欧諸国は集権化
と失業との間の相関関係を示し、相関関係が
された交渉のいい例であります。産業別の交
あるか否かというのが基本的な問題になりま
渉が最も特徴的なのがドイツやフランスなど
す。図表を見て、国によっては失業率が高く
の欧州の真ん中に位置する国の幾つかです。
て、一方で補償率も低い国もあれば、その逆
残りの国々は主に企業レベルもしくは職場レ
23
ベルでの個別交渉が特徴であります。特にア
ているというのが実情でございます。図表に
メリカなどはそうだと思います。しかし団体
見る通り団体交渉の分権化の度合いと失業と
交渉が、実際上、ほんのわずかな従業員と使
の間にも相関関係はありませんでした。しか
用者しかカバーしないならば、それは意味あ
し、労働組合の間で何らかの形で、交渉の目
るものではないと言えます。ですから労働協
的を調整することができれば、このように団
約の適用範囲、カバー率というのも協約を分
体交渉を分権化する必要はないと言えると思
類する上でのもう一つの重要な要素となると
います。
思います。
【労使団体内での交渉の調整】
【労働組合組織率】
図表7(88頁)ですが、これが最も重要な
図表4(86頁)は労働組合組織率と失業と
ものでして、労働組合内の交渉の調整化の度
の関係を示しています。労働組合組織率が高
合いと失業率の間の関係を示したものです。
い国でも、失業率が低い場合もあります。つ
ナショナルセンターレベルあるいは産業別レ
まり労働組合組織率と失業率の間には、はっ
ベルで、何らかの形で交渉を調整した場合、
きりした相関関係はないということです。ま
よりよい結果が出るということです。調整を
た経済学者は、失業を考える場合に、労使間
しないよりはいい結果が出るということで、
の交渉の調整のレベルを考慮することが重要
これがこの図表の一番の重要なメッセージで
であるという点を強調しております。
す。
次に図表8(89頁)は、その裏面を示して
次に図表5(87頁)は団体協約の適用範囲
と失業との関係を示しています。図表を見て、
おりまして、これは使用者側が賃金交渉の調
団体協約の適用範囲と失業との間には一切相
整を行った場合の失業率への影響、相関関係
関関係がないことがわかります。
を示しています。同じ結論が導き出せます。
つまり調整すればするほど、労使双方で調整
【交渉の集権化】
があればあるほど、社会全体として経済成長
次に図表6(88頁)です、これはお見せし
とか失業率とか、解雇数といったような重要
たくなかった図表です。というのは、言葉が
な経済パラメーターを制御する可能性が高ま
逆転しておりまして、集権化程度となってお
るということです。先ほど、ETUIのマリ
りますが、実は分権化程度とするべきでした。
ア・イェプセンさんが最後のほうで発表しま
言葉が完全に逆になっており、大変失礼いた
したが、労使双方が伝統的に、何か問題が起
しました。
きたとたんにすぐに問題を交渉する、調整す
るというような伝統が育っている国のほうが、
ノルウェー、ドイツ、フィンランドといっ
たような国は、大変集権化されている。しか
こういった問題に対応して解決できる可能性
しこの図表を見るとそうではなくて、交渉制
が高いといえます。私の総論的な結論にもな
度は実は大変分権化されている、個別化され
るのではないかと思います。
24
日本側報告
●
日本労働組合総連合会(連合)
須 賀 泰 孝
連合 総合労働局長
連合総合労働局の須賀でございます。4人
うに思いがちですが、実はその種類と中身の
の方からヨーロッパの状況について、報告が
定義において、かなり差があります。しかし、
あったわけですけれども、今日は参加者の大
その根底に流れております柔軟化という課題
半が日本の方々ですから、私の報告を日本の
については、ヨーロッパであろうと日本であ
方々に聞いてもらってもあまり意味がありま
ろうと、基本的に課題としての認識に大きな
せん。しかしこれから討論を進めていく上で
差はないと言えると思います。そのことを最
重要な部分が幾つかございますので、日本の
初に、申し上げておきたいと思います。
更に、もう一つ大きな違いがあります。1
現状、そしてその課題の背景に何があるのか、
そして連合という立場でそれをどうしようと
つは日本の労働条件決定システムとヨーロッ
しているのかという、大きく3つの視点で、
パのシステムが根本的に違うということです。
お手元にありますレポートをまとめておきま
それから日本の賃金には、労働時間賃金、時
した。私自身がすべての職場での雇用の柔軟
間当たり賃金という概念がほとんど取り入れ
化の状況を把握しているわけではありません。
られていませんが、ヨーロッパやアメリカで
従って私のレポートは一般的な厚生労働省の
は時間当たり賃金という概念が大きく成立し
データ、あるいはいろいろな状況の中でご報
ているという2つ目の違いがあります。
告をいただいています内容を中心にまとめて
更にもう一つ違う点は、私どもにとって極
おります。したがってお手元にあります資料
めても残念なことですが、ヨーロッパから参
は、十分に的を射ていないものになっている
加されている4人の方々は、労働組合組織率
可能性があります。またこの内容は英文に訳
が高い地域および国、裏を返せば社会に対し
して、ヨーロッパからの4人の参加者にも一
て労働組合が大きな影響力を持つ地域および
応目を通していただいておることを、申し上
国の出身だということです。連合もそうあり
げておきます。
たいと願っていますし、そうあるというふう
にまだ思っておりますが、それに比べてもか
【ヨーロッパと日本の違い】
なり影響力が大きい組織が集まっておられま
既にご承知の方も多いと思いますが、ヨー
す。こういう3つの点が違う中で、共通のテ
ロッパの4名の方々の報告を聞いてわかって
ーマについて議論を進めていかなければなり
いただけましたように、日本語で標記すれば、
ませんので、ぜひこの点について、そういう
例えばパートタイム労働とか派遣労働とか、
違いがあるのだということを認識しておいて
有期契約労働とか、いろんな言葉があります
いただきたいと思います。その上でレポート
が、同じようにヨーロッパにもあるというふ
に沿って簡単に、要点だけ説明をさせていた
25
的に言えばヨーロッパの契約労働というのは、
だきます。
日本では請負労働という概念に近いというこ
【日本における非典型労働の種類と定義】
とになると思います。
日本で言うパートタイム労働者の定義等々
4つ目に、一般的な意味での有期契約労働
について、まとめてみました。一般的にはパ
ですが、嘱託型、あるいは高度な専門分野の
ートタイム労働者というのは、1日の労働時
業務に従事する高度専門職型、そして準社員
間が正規の労働者、つまり長期雇用を前提と
という形で契約をされます準社員型、そして
した労働者に比べて短い労働者という意味で
俗に言われているパート・アルバイト型と、
使われています。あるいは週当たり、あるい
こういうふうに大きく4つぐらいに、期間の
は時間当たり、つまり短時間の雇用者という
定めがある契約労働ということで分けること
ものが一つの定義としてあります。2つ目に
ができると思います。いずれにしましても、
は、書き方は十分ではありませんが、家事や
非典型型の雇用に関するいろんな雇用形態の
通学の傍らに、
「仕事を従」として働いている
違い、あるいはそれに基づく労働条件決定の
人の概念であります。そして3つ目に、期間
違いというのは、日本では法規制がほとんど
を限られた契約型の臨時雇用というような形
ないというのが実態だと思います。社会通念
での労働者であります。この3つが大きなパ
的には、日本にはパートタイマーあるいはア
ート労働者の概念だと思います。2002年の時
ルバイターというカテゴリーに位置していな
点で、全体でおよそ1,000万人と、相当大きな
がら、労働時間だけはフルタイムと同じとい
人数に達しています。
う労働者がたくさんあります。ここは欧米の
派遣労働者につきましても、同じような概
方々から見ると、一体何者なんだ、それはど
念でヨーロッパにも存在しますが、日本で違
ういうことなんだということになると思いま
っておりますのは、常用型派遣という、正社
す。そういった意味では、いわゆる常用型と
員と同じ仕事をするという形での派遣や、そ
いうものが非常に多くなってきている。さら
れからこれはヨーロッパにはないんですけれ
にそれだけではなくて、従来は補助的な部門
ども、紹介予定型という派遣、そしてもう一
での、正社員のパート労働者とか派遣労働者
つ登録型派遣というのがあります。登録型は
への置きかえということであったのが、これ
一般的な意味で言いますと、欧米で言われて
が基幹部門にまで進んできているというのが、
いる「呼び出し労働」と性格が似ています。
中身の定義の先に進んでいるのが実態であろ
こういう分け方ができると思います。厳密な
うと思います。
意味では、もう少し正確な定義が必要なんで
【労働力構成にみる柔軟化の実態】
しょうけれども、一応こういうふうな違いが
次に、現在の柔軟化の実態について見てい
あるということを理解いただきたいと思いま
ます。労働力調査で見てみますと、2000年の
す。
3つ目に、契約労働ということを書きまし
数字になりますが、週40時間労働のもとで、
たが、実は日本では契約社員という言葉はあ
週35時間未満の雇用労働者が1,053万人で、そ
りますが、ヨーロッパで言うような契約労働
のうち754万人が女性です。ほぼ7割が女性と
という概念はほとんどありません。もっと端
いうことになります。そして全雇用者中に占
26
【法制面における規制緩和の動向】
める割合も2割になっています。20年前には
およそ1割の390万人という状況であったの
次に、法規制の緩和の動向を見てみます。
が、こんなところまで進んでいるというのが
1つは解雇ルールが、解雇しやすくなるよう
よく理解いただけると思います。要は非正社
な方向になっていきましたので、これを何と
員がかなり増えてきているということであり
か食いとめようという活動を行いました。こ
ます。
れは昨年のことですのでご承知のとおりです。
派遣労働の実態につきましては、実は派遣
直近の動きでは、有期契約の上限年数が1年
労働の労働力調査というのは、あまりありま
から3年までに、原則的にはなりました。専
せん。したがって3ページにありますように、
門分野では3年から5年になりました。ただ
事業報告をベースにやりました。それにより
1つ、幸いであったのは、契約日から1年以
ますと、派遣労働者全体では175万人。常用型、
上経過した場合には、労働者にも退職の自由
登録型、それぞれの区分ごとにはそこに記載
を与えることが、これと引きかえに担保でき
してありますように、15万7000人、145万人と
たことです。裁量労働につきましても、様々
いう状況になっています。それぞれ前年に比
な内容が緩和されていく方向にあります。具
べて大幅な増加をしています。つまり柔軟化
体的な読み上げは省略をさせていただきたい
がどんどん進んでいるというのが実態です。
と思います。
そして平均料金と書きましたが、これは1日
【労働組合組織率の推移】
の単価というふうに考えてもらったらいいと
雇用が柔軟化した、労働が柔軟化したとい
思いますが、16,321円です。
有期契約労働者の状況につきましては、労
うことだけが背景ではありません。報告の4
働力調査によりますと、93年、98年、2003年
ページで、労働組合の組織率の推移を、1950
の数字を次表でまとめてあります通り、正規
年から直近までの推定組織率を挙げておきま
従業員と呼ばれ方をする人たちが確実に減っ
した。加えてパートタイム労働者の組織率、
てきています。それと比較しまして、パート
これも推定ではありますが、挙げておきまし
労働者、あるいは契約、嘱託等の労働者が増
た。つまり常用雇用者、正規従業員がどんど
えてきておる。先ほど紹介をしました7割、
ん減っていく中で、それにつれて労働組合の
3割の実態がこの中で読み取れると思います。
組織率も下がってきているのが見てとれます。
1998年から2003年までの動向について、右側
連合全体でパートタイムの組織化を進めてお
の表で見ています。正規従業員が376万人減っ
りますけれども、数は徐々に増えてはいます
たのに対しまして、パートは以前からずっと
けれども、大きな成果を得るまでには至って
増えてきておりますが、この5年間でもやっ
いないのが見てとれると思います。
ぱり93万人増えておる。さらにそれを上回る
【柔軟化進行の背景】
スピードで派遣、嘱託という形での労働者が
じゃ、どういうことが起こっておるのかと
213万人で、大きく増えてきているというのが
いうことを見ていきたいと思います。この説
実態として見ていただけると思います。
明に入ります前に、これまでどうであったの
かということを考えていきたいと思います。
27
かつては業務の繁忙期に合わせて臨時の雇用
目先の利益を優先して、十分な投資もせずに
を行うというのが多かったわけです。大半の
不採算部門は切り捨てる、あるいは現在利益
正規従業員を抱えて、仕事の繁忙期に合わせ
を出しておるところをなるべく最大化してい
て臨時雇用を行うという形でありました。そ
くという経営姿勢に変わってきているんでは
れが正規社員に代わって非正規社員とか非典
ないかと考えております。そうした短期利益
型労働とかに積極的に置きかえていく動きが
誘導型の姿勢を改めさせなければなりません。
出てきたわけです。本来、労働の柔軟化には
従来、企業の中で人を育成する、そのため
2つの側面があり、1つは労働者がみずから
に長期雇用が必要になってくる、その長期雇
の多様な働き方、あるいは生き方を積極的に
用のもとで仕事と賃金がリンクをしていくと
選択をしていった結果として、それにこたえ
いう、いい意味での長期安定雇用がありまし
る形で柔軟化が進んでいくという側面と、企
た。年功序列とまでは言いませんけれども、
業の側がコスト削減を大きな主目的として、
能力の伸長に見合った、あるいは年功の積み
正規社員を非正規社員に置きかえていく、と
重ねに見合った賃金設定というものがあった
いう側面があります。現在の大きな動きは後
わけですが、そうしたものがどんどんと切り
者の側面である思われます。
捨てられまして、専門型、あるいは雇用柔軟
しかもその中身として、パートだとか有期
型にどんどん置きかえられているというのが
雇用というもの、さらに派遣労働という、非
今の実態だろうと思います。低賃金で使い捨
常に不安定で、かつ低賃金の状況にある労働
ての雇用、安い雇用が急速に進んでいるとい
者を雇い続けて、雇い続けるだけではなくて、
うことが、今の実態だろうと思います。
それを何度も何度も反復更新していくという
【現在の課題】
パターンがとられています。結果として企業
の状況に任せて、いつでも雇用を切れる状況
そういう状況の中で、現在の課題は何かに
が生まれてきているということを申し上げて
ついて4点ほど挙げておきました。その中で、
おきたいと思います。そういう状況の中で、
フリーターの急増に関する点と、年金、社会
現在の日本では非常に失業率が高まっておる
保障に関する点の2点について、若干補足を
中で、一方では不安定雇用の比率が上昇して
しておきたいと思います。先ずフリーターの
いるというのが実態であります。特に雇用の
急増についてであります。フリーターという
柔軟化という面で見ていきますと、柔軟化を
のは、ヨーロッパの皆さんには分かりにくい
進める企業側の理由として、人件費の節約と
かもしれません。要は、正規雇用の従業員に
いうのが圧倒的に多いというのがいろんな調
なれないがゆえに、アルバイトをしながらつ
査の中でもうかがえます。もう一方で景気の
ないでいく、パラサイトシングルというよう
変動に合わせて雇用量を調整をする、そのた
な言われ方もしておりますが、そういう人た
めにパートだとか派遣の労働を促進していく、
ちのことです。こういう人が今では200万人を
そういう経営側の勝手な言い分もうかがえま
超えると言われています。こういう人たちは、
す。
職務経験が積み上がっていきませんので、ス
その背景にありますのが、短期利益を最大
キルが伸びていきません。そういう人たちが
化するための経営の姿勢であります。企業は
200万人も既にいるということは、日本全体と
28
しての人材力が低下をしていく原因になって
差があるがゆえに不利益な取り扱いをされる
きます。その結果、日本全体の成長力も制約
ようなことを禁止するパート・有期労働法、
を受ける、目に見えない形でマイナスインパ
そして労働契約上のトラブルを防止するため
クトがボディーブローのように効いてくると
の民事上のルールを明文化する労働契約法、
いう、そういう状況が懸念されるということ
この2つを法整備として考えております。そ
を指摘しておきたいと思います。
して労働協約を同じ企業に働いているパート
第2点は年金、社会保障等への影響です。特
タイムにも拡張して適用させていくという、
に今失業給付が大きく増えていますので、労
こういう取り組みが必要だろうということで
働の柔軟化を防ぐことによって、社会的な負
提起をさせていただきました。
あとは包括的に申し上げますが、社会保険、
担を減らしていく、そして年金制度あるいは
税金も含めて、社会保障全般の支え手を増や
あるいは雇用保険制度などを改革して、支え
す取り組みが重要じゃないかということで、
手を増やす、あるいはもう一方での税制だと
この柔軟化に対する課題ということで提起を
か各種手当の見直し等を図る。この手当も、
させていただきました。
世帯主要件というようなこともありますけれ
ども、そんなことが必要だろうというふうに
【労働組合の対応】
考えています。そして特に、女性労働力の有
これに対して連合がどう対応しているのか
効な活用、また高齢労働者の有効な活用を行
ということについて、幾つか考え方を整理し
うことです。有効な活用という言い方はよく
ておきたいと思います。
ないんですけれども、これらの人に労働力と
1つは、均等処遇原則の実現です。これは
して労働市場にどんどん入ってきてもらう。
ヨーロッパの皆さんも指摘されています。こ
そして均等待遇のもとにそういう人たちを受
れが一番大きな取り扱いとして目指していか
け入れていくことによって、仕事と家庭が両
なければならない方向だと思っています。そ
立ができるんじゃないかと、連合は考えてお
して、社会保障の適用等を含めて、また賃金、
りますし、目指していきたいと思っておりま
あるいは人事制度等は言うに及ばず、非典型
す。いずれにしましても、雇用の柔軟化の問
労働であるがゆえに不利益な取り扱いを受け
題につきましては、正社員を中心とした今ま
ることがないように、していかなければなり
での連合の取り組みを、もっと大きな視野ま
ません。それを実現するために、具体的には
で広げて、そして非正規の労働者のためにな
労働協約をどう適用させていくのかというの
る、頼れる運動をこれから進めていかなけれ
が非常に大きな取り組みになってきます。そ
ばならないと考えていることを申し上げて、
して連合全体としては、パート・有期労働法、
日本側の基調報告にかえたいと思います。
あるいは労働契約法という形で、就業形態に
29
質疑応答&パネルディスカッション
【パネルディスカッションにあたって】
このパネル討論では、労働市場の柔軟化、
質問に対してパネリストの方からコメントを
とりわけ雇用形態の多様化とそれがもたらす
いただいて、その後、テーマに沿って議論を
問題点、その克服策に焦点を当てて議論をし
行うことにしたいと思います。
たいと思っております。まずフロアーからの
●
質 疑 応 答
質
問
1【労働の柔軟化の影響】
目的は生産性の向上であったかもしれません
が、個人に与える影響ゆえに最終的には生産
労働の柔軟化が技能形成や生産性に与える
性の低下をもたらすこともあり得ます。
影響をどのように考えているか。
ですから、柔軟性がプラスにもマイナスに
イェプセン
も影響を与える。柔軟性には必ず保障(セキ
ュリティー)が伴っていなければなりません。
柔軟化が生産性にどういう影響を与えるか
というご質問ですが、2つの方向性があると
そうでないと生産性の向上を得ることができ
思います。
ません。
使用者が柔軟性を求める目的の1つは生産
さて、技能についてですが、理論的には柔
性の向上です。日本、EUにも同じ例ですが、
軟性はあまり技能には影響がないはずです。
スーパーマーケットのレジの人、たいていは
けれども、実際には影響があります。なぜか
女性ですが、この女性を8時間ではなくて1
と言いますと、パートタイム、臨時雇用の労
日3時間だけ採用する。特に忙しい時期にだ
働者は訓練をあまり受けておりません。使用
け採用することで生産性を向上させようとす
者はそれほど訓練に投資したくないわけです。
るわけです。そうすれば1時間当たりの生産
質
性は高くなるわけです。
問
2【EUの雇用政策】
他方では、科学的にも立証されていること
EUの雇用政策は労働市場の柔軟化に依存
で広く知られていることですが、労働者の福
し過ぎているのではないか。もっと違った方
祉が生産性の向上につながるということです。
法で投資を促し、雇用を確保するような政策
福祉は何によって決まるかと言いますと、雇
を考えるべきではないか。
用保障と所得の保障でして、これらは福祉の
ドゥカイヨン
中でも非常に重要な要素を占めるものです。
ですから、柔軟化を進めても、雇用保障や
リスボン戦略では、知識経済・知識社会へ
所得保障が低下すれば、生産性は下がること
の移行が提示されました。しかし、サクセン
になります。したがって使用者側の柔軟化の
さんやイェプセンさんが示したように、失業
30
率の最も高いスペインはレストランなどの従
労働市場の柔軟化といったことが有効になる
業員といったような臨時雇用が多いわけで、
のだと思います。
知識集約型の社会をつくっているわけではな
質
い。労働市場には、新技術や科学者の市場も
問
3【パート労働者の組織化】
パート労働者の組織化と組合運営、とりわ
あれば、レストランとか商業施設で働くよう
け財政に対する影響について伺いたい。
な労働者の市場もあるわけで、そういった異
なる市場の処遇が同一というわけには決して
サクセン
いかない。
ですから、失業対策は、すべての労働市場
北欧諸国ではパートは正規の労働者と同じ
について同じというわけにはいかない。新し
組合に入っております。それは、組織化の原
い技術を使って事業をする新しい産業での雇
則に従ってそうなっています。例えば金属の
用政策と、レストランとかスーパーでの雇用
会社で働いていれば、労働時間がどれだけで
政策とは違うわけです。しかし、レストラン、
あろうと、契約形態が何であろうと同じ組合
スーパーでも、人を雇用しなければいけない。
に組織化されます。ですから、団体交渉では
労働組合は、やはり連帯を持って新規技術を
正規、非正規の労働者の権利を両方を守るこ
使うような新しい産業でも、レストランとか
とになります。
スーパーのような従来型の雇用市場でも同じ
労働組合の財政への影響ですが、国によっ
ように連帯し、雇用を促進し、調整を行って
て状況は違うかと思いますけれども、収入に
いかなければと思います。
応じて組合費を集めますので、パートタイマ
先ほども説明しましたが、パートタイム労
ーは労働時間の少ない人ですから、当然組合
働が、特にオランダで増えてきています。し
の収入は減ることになります。しかし、労働
かし、昨年のオランダの失業率は大幅に増加
組合はすべてのパートを組織化する可能性も
した。つまり、パートタイムが増えても失業
あるわけです。
が増えている。問題を解決するにはパートタ
ただ、問題は若年者が労働組合に入りたく
イムを増やすだけでは足りないということで
ないという傾向があります。こちらのほうが
す。経済、景気といった根底にある問題を解
大きな問題です。財政的な問題ばかりではな
決しなければいけない。そのためには雇用政
くて労働組合の影響力という視点から見ても
策も当然ですけれども、産業政策が必要です
若年者が組合離れをしていることのほうが大
し、また技術革新を促進するための政策が必
きな問題です。
要であります。そうした政策があってこそ、
●
パネルディスカッション
中嶋
の克服策、あるいは積極面の推進策について
パネル討論の目的であります労働の柔軟化、
の労働組合の取り組みについて議論を進めた
いと思います。
とりわけ雇用形態の多様化に関して、問題点
31
まず、ヨーロッパ側のパネリストの方で、
いうことでよかった。また、その息子の代ま
この点だけは強調しておきたいと、つけ加え
で同じ企業で働き続けることが通常であった
て言いたいという点がございましたら出して
けれども、今はそうではない。金融ネットワ
いただきたいと思います。
ーク、あるいは企業のネットワーク化という
のがどんどん進んでいる中で、企業の寿命が
ドゥカイヨン
過短くなってきている。今の課題は、転職を
【労働組合の目標】
した先にも同じ個人の権利をそのまま持ち歩
私どもは2000年3月に開かれたリスボン欧
けるようにすることで、それが新しい交渉テ
州理事会での決定を支持しています。そこで
ーマとなっています。その良い例がスカンデ
は、2010年までに完全雇用を達成するという
ィナビアです。
目標が掲げられました。つまり、完全雇用を
【労働組合の対応】
支持しているわけで、労働組合の目標は、決
して柔軟化を促進することではなく、完全雇
交渉を通じて労働者の個人的な権利を勝ち
用を達成することです。しかし、今は柔軟化
取り、良好な労使関係と交渉のシステムがで
の波の中にありますが、ヨーロッパの労働組
きれば、フレキシビリティーとセキュリティ
合は、今後もやはり完全雇用を目指していき
ーが両立するはずです。しかし、交渉のため
ます。
の良好な労使関係がなければ、使用者側がフ
レキシビリティーを押しつける形になってし
【柔軟化に関する課題】
まうと思います。労働組合の新しい道は、個
柔軟化には、パートタイム労働もあるし、
人の労働者の権利と、それから団体交渉とを
いろいろな形態があります。例えば、ヨーロ
うまく組み合わせていくことだと思います。
ッパの使用者とパートタイム労働についての
2002年に、ヨーロッパレベルでの合意が形成
協議を持ちました。労働者がパートタイムと
され、
「職業教育訓練分野における欧州レベル
フルタイムを選択できるという選択肢を与え
での協力の強化に係る決定」というものがで
るといった制度についての話し合いです。し
きました。生涯教育や資格の認証、新しい技
かし、労働者によっては、例えばスーパーな
能の獲得、開発に関するものです。その中で
どではそういった選択肢がない場合もある。
使用者は、被用者が転職をした際にも同じ資
使用者がパートタイムかフルタイムかを選ば
格をそのまま持ち歩けるようにすることは可
せない場合もある。自分で働きたい労働時間
能であるということを表明しました。労働組
が選べないということで、業種により、必ず
合としても、交渉をする際にそのような使用
しも条件が同じではないわけです。
者側の支持があると大変心強いわけです。
欧州の労働組合にとっては、移動性(モビ
移動性は、今やヨーロッパのほとんどの労
リティー)も柔軟な働き方という意味で課題
働者にとって現実のことになりました。しか
であり、使用者との協議が必要な問題になっ
し、しっかりした資格を持っていない場合に
ています。20世紀の初めごろですと、ヨーロ
はなかなか労働移動性が持てない。つまり、
ッパの労働者、フランスでもドイツでもどこ
高い資格を有することが重要になります。
労働組合としては、2つの異なる交渉のレ
でも労働者が生涯1つの企業で勤め上げると
32
ベルを使って新しい権利を勝ち取りたいと思
についての議論が展開されてきました。若年
います。つまり、企業レベルと欧州レベルで、
層や高齢者の中にはパートタイムで働きたい
産業別のみならず、個別の交渉というレベル
という人がいるわけです。今日ではいろいろ
でも新しい権利を交渉していきたいと考えて
な非正規という形態での仕事についている、
おります。例えば、一部の企業と限られた労
それはみずから進んでの選択であるという人
働者が交渉をするというような個別的なやり
たちもいるわけです。
方ですと、特に企業の、それも小規模な企業
例えば、銀行で働くとしても、自分のニー
が増えてきている中で、権利の保護は難しく
ズに合わせて柔軟に対応する。若いときは家
なってくると思います。こうした中小企業の
族と一緒にいたいので、短い時間労働する。
経営者とだけ個別で交渉するのではなく、や
40歳ぐらいになると、もうちょっと働いても
はり全体としての交渉も必要になってくる。
いいということになるかもしれません。65歳
欧州の北部でも状況が違いますし、南北で
ぐらいになったときには、もうちょっとゆっ
くりしていたいというようなことです。
も差がある。労働協約、契約を被用者と使用
こういった議論に対して、私たちも十分に
者の間で結ぶという意味でも、その目指すも
受けとめなければいけないと思うんです。問
のはかなり違ってくると思います。
題は、従業員のニーズと使用者のニーズが必
中嶋
ずしも一致するわけではないことです。だか
らこそ、私どもが一つのメカニズムを設けて、
ETUCとしては、労働市場の柔軟化、そ
れ自身を求めていくわけではないと、こうい
問題解決に当たることが大切なんです。労使
うことで移動性の話まで含めてあったのです
が関係を改善して、納得いく解決策を求め、
が、先ほどマリアさんが提起をした問題は、
両者にとって最適な状態を創り出していくこ
フレキシビリティーとセキュリティーの関係、
とが必要です。そうすれば、結果として経済
とりわけ労働組合としてはセキュリティーの
成長、そして雇用も拡大することになるので
部分をどういうふうに重視して実現していく
はないでしょうか。
かという課題につながると思うんですが、今
の意見に対して補足的にご意見を伺いたいと
中嶋
思います。
【労働者のニーズを実現するための戦略】
今おっしゃった労働者のニーズを実現して
サクセン
いくためのメカニズムというのは、すべての
【労働者のニーズ】
労働者に対して適用されるようなものでなけ
短い補足でございます。ジョエルが言った
ればならないと思うんです。その場合に、現
とおりだと私は思います。当然、労働組合運
実の問題として、そういうことが可能になる
動としては、あらゆる形の柔軟性に反対して
労働者というのは、高度な知識、技能を持っ
いるというわけではありません。柔軟化は経
ている人に限定されてしまうのではないか。
営者が導入してきたものです。だからといっ
先ほどスーパーマーケットのレジで働いてい
て従業員の側でも柔軟性が必要ないというわ
る人の例が挙げられましたけれども、必ずし
けではありません。長い間、生活の質の向上
も高度な知識・技能を持たない普通の労働者
33
も、自分の望むような生き方に合わせた働き
きてしまうということで、女性の就業が妨げ
方をするということを実現していくようなメ
られるという問題があります。
カニズムというのは、どのようなものになる
労働時間をうまく自分の希望に沿った形で
のでしょうか。それを実現するような具体的
利用することによって、個々人の就業を促進
な運動はどのようになされているのでしょう
しようということもありますけれども、それ
か。
に加えて働く女性のために家庭と仕事の両立
をという考え方もあるわけです。そのために
サクセン
も、もっと積極的にこの法律を利用していく
実際には低賃金であったら選択肢はないと
べきだと思っているわけですが、法律の与え
思います。パートで働くか、フルタイムで働
てくれる可能性をまだまだ男性ですら利用し
くかという選択肢がないのです。これに対す
ていません。
る解決は言うまでもなく連帯です。賃金政策
具体的な例として挙げられるのは、労働時
において連帯を組むということです。低賃金
間貯蓄口座という制度です。これは、働く人
の人たちの生活水準が上がれば上がるほど選
たちが、自分たちが通常の規定の時間以上に
択肢が出てまいります。団体交渉を通して連
働いたとすると、それをちょうど貯金をする
帯を高める、そしてこの連帯の成果として自
ような形で、口座の番号がつくられていて、
分の望むような働き方を実現させていくとい
そこに自分が働いた分の労働時間をためてい
うのが必要なメカニズムだと思います。
きます。そのたまった労働時間を後で休暇に
振りかえることを可能にする制度でありまし
中嶋
て、例えば、それを利用して、1年間休職を
カローラさん、ドイツでは今の課題、つま
して、休職といっても貯めていた労働時間で
り労働者が望むような生き方に合わせる働き
すから、もちろん給料は保障されます。1年
方を実現していくためにどのような取り組み
間仕事を休んで自分の能力をさらに向上させ
がなされているのでしょうか。具体的な例が
るために使うとか、その他にも個人的にいろ
あれば教えていただきたいと思います。
いろな使い道があると思いますけれども、1
年、あるいは場合によっては2年間、3年間
パルニスケークンツ
といったような形で能力開発をする時間を持
つことができると思います。
今のご質問は、どれだけ働く者が労働時間
このような制度は、将来にわたってますま
を自由に決定できるかということだと思いま
す重要になっていくと考えています。なぜか
す。
まず、ドイツ国内におきまして連邦政府が
と申しますと、職業生活を終えて年金生活へ
制定をした、労働時間を定める大変良い法律
と移行していく過程で、昨日までフルタイム
がございます。ただ、法律がありますけれど
で働いていて今日から何もしないという形で
も、ドイツでは構造的に労働時間を自由に決
はなく、徐々にソフトランディングするよう
めていくことを実践しにくいものがあります。
な形で実現することを可能にするからです。
例えば、ドイツの場合に学校が基本的には半
例えば、ある程度の年齢になったときに、労
日であり、小さな子供たちは早く家に帰って
働時間を徐々に減らしていって、最終的に年
34
イェプセン
金生活に移行をすることも、この制度を利用
理論的には、つまり法律的には同一労働同
すれば十分可能になっていくわけです。
しかし、先ほど申しましたように、この制
一賃金です。ヨーロッパでは時間給がベース
度はあまり利用されておりません。それには
となっております。パートタイムは、労働時
2つの理由があると思います。1つ目の理由
間が短いということで収入は少なくなります
は、この制度が非常に斬新な制度であるがゆ
けれども、それは働いている時間が少ないか
えに、中高年の方々にとってはなじみがなく
らその時間に対応しているわけです。しかし、
利用しにくいというのが1つ。
時間当たりの所得は同じなはずです。
それから、もう一つの理由は、この制度に
ただ、パートタイムの問題は、特定の分野
対する法的な保護がきちんとしていないとい
に集中している、非常に階層化された労働市
う点だと思います。現在は、企業の中で労働
場になっています。小売業とかホテル、レス
時間を貯めていけますけれども、職場をかわ
トラン、そして清掃といった分野に集中して
ったときに何の意味も持たないということに
おります。こういったところでは低賃金なわ
なってしまったり、あるいは会社側が労働時
けです。労働時間は短い、しかも賃金は安い
間貯蓄口座にためたものの約束を反故にする
となりますと、多くの労働者はそれだけでは
というようなことがあったときに、法律でき
生活が成り立たない。それが1つのポイント
ちんとそれを保障するということが確立しな
です。
い限り、この手段は今後、幅広く利用されて
では、実際にフルタイムとパートタイムに
いくことにはならないというふうに思ってお
差別があるのか。もし、同じ仕事をやってい
ります。
れば、フルタイム、パートタイム同じ処遇な
のかということですけれども、実際には違う。
今、挙げたこの2つの原因が、私たちがこ
れから解決していかなければいけない問題で
英国では明らかにパートタイムが同じ仕事を
はないかと見ています。
しているフルタイムの労働者より時間当たり
の賃金が安いわけです。
中嶋
また、パートタイムは職業訓練を受ける確
【欧州におけるパートタイム労働】
率が低い。キャリアを伸ばす可能性も少ない
先ほど日本のパートタイム労働者が抱えて
ということです。しかも、昇進、昇格の可能
いる深刻な問題点、例えば雇用が不安定であ
性も少ない。使用者は、フルタイムの労働者
るとか、同一の価値を持つ労働に従事してい
をまず昇進、昇格の対象として考えて、その
るのに賃金が低いとか、労働条件が悪いとか
次にくるのがパートタイムなんです。法制の
いう話が須賀さんの報告の中に含まれており
もとで同一価値労働同一賃金となっておりま
まして、ヨーロッパの場合の多くは、パート
すけれども、現実にはパートタイムに対する
タイム労働者であっても基本的に同種の仕事
差別はあります。
をしていれば、正規の労働者と言われている
それからもう一つ、パートタイムと言った
人々と同じ待遇を受けているというふうに言
場合に、パートタイムにもいろいろな仕事が
われているんですが、その実態というのはど
あると思うんです。先ほどパートタイムとし
うなのでしょうか。
て清掃とかホテル、レストランに集中してい
35
中嶋
ると言いましたが、北欧諸国ではパートタイ
ムは公務の分野でも随分とあります。ヘルス
EU全体を見ていらっしゃるドゥカイヨン
ケア、介護という分野は公共部門ですが、多
さん、特につけ加えるところはございません
くのパートタイムの人たちが働いております。
か。
ここでも、やはり多少の差別はあります。そ
ドゥカイヨン
れでも保障もかなりある。そういう意味で、
マリアさんのコメントにすべて賛成いたし
生活が成り立つような十分な賃金はありませ
ます。
んけれども、フルタイムの労働者に匹敵する
ETUCのヨーロッパにおける挑戦は、今
処遇を受けております。
それからもう一つが金融部門ですけれども、
後のEUの拡大です。例えばポーランドの労
パートタイムは女性が多いということで、南
働市場はどのようなものであるか。ポーラン
部ヨーロッパでは女性が水曜日には働きませ
ドの経済状況自体があまりよくわかっていな
ん。水曜日は学校から早く帰ってきたり、あ
い。それから、ポーランドの鉄鋼産業の将来
るいは学校がなかったりするわけなんです。
はどうか。ポーランドの農業、経済の将来は
したがって、働く母親は水曜日あるいは水曜
どうか。欧州の労働組合にとってはとても難
日の午後は子供と一緒に過ごすということを
しい、見通しの立たない問題です。また、社
しているわけです。それが賃金に随分と反映
会モデルを一本化するのも難しくなってしま
されます。キャリアパスにも、また訓練にも
います。いわゆる社会的に既に確立されてい
影響が出てまいります。
る権利を、ポーランドのような国で確立させ
ていくこと、これが今後の課題となってくる
そういう意味で、いろいろなパートタイム
わけです。
があるので区別して考えなくてはいけない。
労働組合の対応も、それぞれのタイプによっ
一方でヨーロッパのそれぞれの国々が連帯
て変えていかなくてはいけないということで
していかなければいけない。ETUCとして
大変だと思うんです。
は、ヨーロッパ全域の使用者と交渉をして、
フレキシビリティーとセキュリティーの枠組
オランダではパートタイムがうまくいって
おります。なぜかというと、保障(セキュリ
みでの交渉を今後進めていきたいと思います。
ティー)が伴っていたのです。これを強調し
やはりフレキシビリティーとセキュリティー
ておきたいと思います。パートタイムの雇用
の交渉を行う上での労働組合の立場の強化と
が増加したときに、労働組合も協議して合意
いうのがとても大切になってくると思います。
の上で進められたのです。その目的は何かと
労働組合としては、労働者一人一人が同じ
いうと、女性の労働力化であったのです。そ
権利を持って、同じ交渉の可能性を持って、
れがうまくいき、現在では女性の70%がパー
そして国が分かれても同じ価値を求めていく
トタイムです。それでも経済的に自立するだ
という立場をとり続けることが重要ではない
けの所得はないという問題があります。女性
かと思います。欧州委員会、欧州議会との協
は相変わらず夫に財政的には依存しておりま
議ではそういう姿勢を持っていきたいと考え
す。法によって保障はされているものの、や
ています。例えば現在、欧州議会では派遣労
はり問題はあるわけです。
働についての指令案が検討されています。労
36
働組合と使用者の間でなかなか合意ができな
ボランタリー・アグリーメントというものと、
かったので、これを議会のプロジェクト化し
それから委員会が主導で行う合意というのが
ようという決定をいたしました。
あるわけです。その2つに、どちらかによっ
これは、欧州の使用者にとっても労働者に
て各国における実施状況が変わってまいりま
とってもあまりよくない状態です。というの
す。というのは、自主的な合意が特に問題な
は、各国で非常に状況のばらつきがあるから
のです。労働組合は、これは自主的なものと
で、欧州議会で質の高い確実な指令を出して
は思っておりません。欧州レベルで合意があ
いただきたいと思います。例えば、東欧地域
れば、自主的であれ何であれ、各国で実施さ
で臨時雇用自体が制度として育っていないの
れるべきだと考えております。
で、その地域における臨時の労働者の保護の
指令をどのように各国レベルで適用させる
確立というのもまだまだであるという問題が
かということには厳しいルールがあって、欧
あるからです。
州委員会が制定しているわけですが、これは
3者の協議に基づくものになっております。
中嶋
各国における指令の実施の仕方というのは幅
【労使交渉とEU指令】
広いものがあります。一部の国では、3者間
のプロセスで最終的に立法化される国もある。
今、ドゥカイヨンさんからEU指令の話が
出て、たしかパートタイムに関しても指令が
ほかの国では、3者間のプロセスの結果とし
出されていますよね。もちろんパートタイム
て団体協約という形で実施される国もありま
に対する指令に関しては、事前に労使団体の
す。このような自主的な合意というのには、
合意があって、それが欧州議会で指令化され
今までいろいろな問題がありました。合意さ
るというプロセスを経て、今、ご紹介があっ
れた後で国のレベルまで落とされると、立法
た派遣労働に関しては違うプロセスなんです
者、あるいは使用者側は、これは自主的なも
が。そのパートタイムに対する指令が出され
のであって守らなくてもいいんだと言うわけ
て、各国にどのように適用するかという問題
です。多くの国で労働組合側が圧力をかけて、
は当然出てきますよね。各国の適用に関して
それらの欧州レベルでなされた自主的な合意
ばらつきが出てしまうということについては
の実施を働きかけていかなければいけないわ
どのような実態になっているのか。そのばら
けです。
つきを是正して、一定のレベルに、指令がほ
先ほどドゥカイヨンさんのほうからポーラ
んとうに労使間合意に基づいた内容にきちっ
ンドの話がありましたけれども、東欧ですが、
と各国で実施される状況をつくるためにどの
残りの地域とは全く違った慣行を持っている、
ような課題があり、どのような運動をされて
あるいは文化を持っている国であって、そし
いるのか、ちょっと教えていただきたい。
て1対5とか、1対7といったような賃金の
格差がありますので、そういった国が加盟し
サクセン
ますと、すぐに自由労働市場という意味では
大きな問題が出てくると思います。
とても複雑なご質問をいただきました。
まず、EUにおける指令の確立の仕方自体
3者間での交渉といった環境をつくること
がとても複雑なんです。まず、自主的な合意、
だけでも難しい。3者間といいますと、これ
37
は労働組合側からの押しつけであろうという
多様性、選択肢を拡大するというのは、理論
ことで抵抗されてしまう。ですから、新しい
的には言い得ても、実態から考えると難しい。
思考、意識の改革というものを促進して、労
日本の場合はそう言えるわけですが、ヨーロ
使間の良い関係こそが民主主義の一環であっ
ッパはそれに比較すると、例えば時間比例の
て、それこそが労働者の利益にもかなう、政
原則であるとか、社会保障の適用の問題であ
府の利益にもかなう。そして、ひいては使用
るとか、雇用の不安定さについても日本と大
者の利益にもかなうんだというような意識改
きく違う状況がある。
しかしながら、マリアさんが触れたように、
革が必要なんですが、これはとても難しいで
パートタイム労働者、例えばうまくいってい
す。何年もかかります。
ポーランドでは、一党独裁から民主化まで
るというオランダでも、パートタイムに従事
たった10年しかたっておりません。私どもが
している女性労働者が自立して生活ができる
ヨーロッパモデルというのを確立するまでに
だけの水準の収入を確保できているかという
は何十年もかかっています。ですから忍耐が
と、そこにはまだまだ多くの問題があるとい
必要です。ただ、今の段階ではまだまだいろ
うことで、また職種的な差別もあるという実
んな問題が出てくるのは仕方がないと思いま
態も報告されたと思います。
す。やはり自由な労働市場を持ったEUに対
私たちは、フレキシビリティーとセキュリ
する加盟ですので、全く文化の違う環境に加
ティーの、とりわけ労働組合はセキュリティ
盟をしてくる。労働組合との協力、そして、
ーの面をどういうふうに強化をしていくかと
労働組合側から協力を働きかけていく。また、
いう観点の上に立ってこの柔軟化という問題
使用者側からの働きかけ、そして政府との協
に立ち向かわなきゃいけない。とりわけ日本
力も必要だと思います。特に、政府レベルで
の場合はそうだというふうに思います。雇用
こういった労使とのコンタクトを持つことが
形態のいかんにかかわらずディーセント・ワ
重要ではないと軽視されてしまうと、政府自
ークが実現されなければならない。つまり、
体と話ができないという問題も出てまいりま
適切な社会保障、賃金、労働条件が保障され
す。大変大きな課題が残されていると言わざ
た社会的に意味のある労働というものにして
るを得ないと思います。
いくためには、そのセキュリティーの側面を
強化していかなければいけないというふうに
中嶋
思っております。
【結論~今後の取り組み】
限られた時間の中で、基本的な定義に関し
須賀さんが報告の中で触れましたように、
ての違いもあって、また雇用のあり方、賃金、
同じパートタイム労働者といっても、ヨーロ
労働条件の決定システムにも違いがあるとい
ッパの定義と日本の定義にずれがあると。日
うことで、共通する課題とはいえ、運動を具
本の場合に非典型労働者と言われている労働
体的にどういうふうに進めていくかというこ
者群は、雇用の不安定な面でも、賃金、労働
とに関しては、まだまだ多くの違いがあると
条件の面でも、社会保障適用の面でも非常に
いうことも、同時に確認できた。
ただ、ヨーロッパが到達している水準を一
大きな差別的な待遇、格差が強要されている。
つの参考にしながら、日本の中で、柔軟化と
生き方に合った働き方という、その働き方の
38
いうのは、今、避けられない傾向としてあり
取り組みということで、まだ全体合意を連合
ますし、それをよりセキュリティーの面を強
の中で得たわけじゃありませんけれども、や
化することによって人間らしい労働のあり方、
はりこうしたEUの事例に学ぶ、あるいは、
働き方に変えていくというのは労働組合の非
こういう雇用の柔軟化に対して労働組合とし
常に重要な役割であるということですので、
てどう立ち向かっていくのかということにつ
今日の議論を参考にして、連合としても今後
いていろんな形で、今回は招聘という形でJ
の取り組みを強めてまいりたいというふうに
ILAFのご尽力をいただきましたけれども、
思っております。
連合も積極的にETUCの皆さん方と定期交
最後に、須賀さんに一言、担当局長として
流ができるような、しかもある程度専門分野
今後どういうふうにやっていくかという決意
での、雇用問題だけではなくて、幅広い形の
を込めてコメントをいただきたいと思います。
交流ができるように、これから検討させてい
ただきたいと。できれば、定期交流化をさせ
須賀
ていただいて、それなりに責任のある立場の
最初にヨーロッパと日本の定義の違いから
人間が行けるように、そしてその交流によっ
入らせていただきましたけれども、抱えてい
てヨーロッパの事例を学んでいく。また、私
る課題はそんなに差がないというのが私の実
どもも逆になかなかお教えできるような部分
感です。つまり、時間当たり賃金の概念と、
はないんですけれども、そういう課題につい
それから、それをベースに置きつつもやっぱ
て十分に意見交換していく、こんな姿勢が必
り正規社員とそうでない形の社員にいろんな
要じゃないかなということを2つ目に申し上
部分での差がある。それが日本ほど大きくな
げておきたいと思います。
いというだけの違いじゃないかなと私自身は
3つ目に、いずれにしましても、非常に短
考えております。ただ、目指している方向自
時間ではありましたが、参加の皆さん方、そ
体は、いかにそれを、これは積極的な意味で
れぞれ印象は違ったかもしれませんが、中身
労働者みずからが選択できる働き方、あるい
の濃い議論ができたと私は感じております。
は生き方、そのときにちゃんとした正当な処
この場をおかりして4人の皆さん方に連合を
遇が受けられるという世の中をどう実現して
代表して心からお礼を申し上げたいと思いま
いくのかということにおいては、そんなに目
す。ありがとうございました。(拍手)
指しているものとして差がないというふうな
中嶋
認識を私は持ちました。まだまだヨーロッパ
の、今日お集まりの皆さん方から比べると、
須賀さん、ありがとうございました。時間
日本の取り組みは相当に差があるのが実態で
がまいりましたのでこれでパネル討論を閉じ
すけれども、確実にこの差を縮めていかなけ
ます。皆さん、長時間にわたってご協力あり
ればならない。また、そのことが今の私ども
がとうございました。皆さんとともに、この
連合に求められている新しい運動のあり方で
パネルディスカッションの運営に非常に欠く
はないかというふうに考えていることを一つ
ことのできない貴重な役割を果たしていただ
申し上げたいと思います。
きました通訳の皆さんにお礼を申し上げたい
と思います。
(拍手)
そして、もう一つは、これは、これからの
39
シンポジウムを終えて
今回のシンポジウムでは、世界規模での産業構造の変化、雇用・就労形態の変化など多
くの国に共通する課題を取り上げ、欧州の労働組合から指導者を日本に招聘し、意見交換
を行い、その課題への対応について互いの経験から学びあいながら、問題解決に向けた共
同の取り組みを模索することを目的とした。具体的には、シンポジウムを共催した連合と
の話し合いにより、
「労働の柔軟化―労働組合の対応」をテーマとして設定した。テーマを
決めた背景としては、長引く不況のもとで雇用情勢が危機的な状況にあること、企業が短
期的な利益重視の姿勢を強めて賃金の安い、いわゆる非典型の雇用を大幅に増加させてい
ること、労働基準法や労働者派遣法の改正など労働分野での規制緩和が進められていたこ
となどが挙げられる。日本国内のそうした状況を「労働の柔軟化」と位置づけ、決して日
本固有の問題ではなく欧州そして世界に共通の現象であると考え、それへの労働組合の対
応について欧州の経験を中心に紹介してもらい、議論を深めることとした。
<労働の柔軟化>
「労働の柔軟化」というテーマで我々が議論のポイントとして想定していたのは、働き
方の多様化、さらに絞れば雇用形態の多様化ということだった。経済社会の変化に対する
企業の対応により、また一部には労働者の意識変化により、さらにそれらを後押しするよ
うな形での労働法制の規制緩和により、いわゆる非典型雇用と呼ばれる雇用形態で働く
人々が急増していることに焦点をあてたいと考えた。とくに、欧州では労使の協議をベー
スにして、EU指令というかたちでパートや有期雇用についての立法措置が取られている
こと、就業率を高めることなどを目標とした雇用戦略や成功例と呼ばれ日本でも注目され
た「オランダモデル」の存在などが議論の材料になるのではないかと考えていた。
しかし、実際に欧州の報告者からペーパーが提出されると、
「労働の柔軟化」というのは、
欧州の労働組合にとってかなり広い意味を持つもの、あるいは複雑な概念であることが明
確になった。ETUIのイェプセンさんは、柔軟化には質的、量的な柔軟性という区分、
外部柔軟性、内部柔軟性といった使い方など、それぞれ重なる部分があるものの労働時間
に関連した問題、雇用の形態による問題、労働組織の問題といった整理を行った。
また、NFSのサクセンさんは、柔軟化に関して、主として労働市場と労働条件の決定
システムに注目し、団体交渉や失業保険に焦点をあてて、それぞれの制度が雇用や賃金に
対して硬直的か否かといった分析を行っていた。
各パネル報告は、期待していた労働組合としての具体的な対応よりも理論的な分析に重
40
点が置かれたきらいはあるものの、パネルディスカッションでは、日本側の関心の高い話
題に焦点を当てて議論を進めることができた。
<欧州の労働組合の課題>
パネル報告やディスカッションの部分で明らかになったように、欧州でも日本と同様に、
雇用形態の多様化が進展している。ただし、柔軟化に伴う問題というのは必ずしも日本と
同じではないことも判明した。また欧州は、EUレベルでの労使交渉や法制度などが整備
されているため、ひと括りにして考えてしまうこともあるが、実際にはEU指令に対する
各国内での措置や考え方など状況は異なるということをパネリストから指摘された。
日本では正社員とパートタイマーの格差や労働の二極化が深刻な問題として認識されてい
るが、欧州では労働時間の違いでしかなく、給与や社会保障の面で問題となることはない、
いわゆる均等待遇ということであった。ただし、欧州でもパートは特定の産業や女性に集
中している点、必ずしも労働者にとって好ましい状況でない場合もあるなど、日本と類似
した問題点も指摘された。
さらに、欧州にとっては経済社会の変化に対応して新たに出てきている課題として、移
動性(Mobility)という概念が紹介された。雇用形態の自由な選択という問題の他に、E
U拡大に伴う労働の移動、とくに経済レベルの違う国からの移入に対して労働組合として
どう対応するのかということが問題提起されていた。
<問題に対する認識と労働組合の対応
‐フレクシキュリティーを求めて>
日本と欧州、欧州域内でも労働市場、労使関係のしくみに違いはあり、いわゆる非典型
雇用労働者が置かれている状況も異なるが、使用者の一方的な措置により柔軟化が進めら
れていくのは問題であること、労働者のニーズを汲み取り柔軟化を進める場合でも、柔軟
性(Flexibility)だけでなく安定性(Security)が伴わなければいけないことが共通の認
識として確認され、フレクシキュリティー(Flexicurity)という言葉が紹介された。
現在の状況に対する労働組合の取り組みとしては、個々の労働者の能力開発が必要であ
り、そのための教育が重要であるとの立場にたち、コスト削減ではなく付加価値を高める
方向に持っていくこと、また、労働組合員だけでなく、社会的弱者の権利をきちんと確立
させていくこと、すなわち連帯が求められているのであり、良好な労使関係とそれに基づ
く団体交渉が有効な手段となり得ること、さらには今回のシンポジウムや招聘プログラム
のように、専門分野での意見交換を深めていくことの重要性などが挙げられた。
今回の「労働の柔軟化―労働組合の対応」というシンポジウムでは、多少、参加者のバ
ックグラウンドの違いなどにより議論が十分に深められなかった部分もあるが、100名を超
41
す方々にご参加頂くなど関心の高いテーマを取り上げることができ、欧州の経験や最新の
状況も知ることができた。パネリストも指摘していたように、国により制度や社会背景が
違うので、問題解決に対する解をすぐに引き出すことはできないし、そうする必要もない
が、あらためて今回の所期の目的である共通の課題に関しての意見交換や、互いの取り組
みを学びあうことがいかに重要であるかを確認することができた。
今回のテーマについても機会を捉えてさらに議論を深めていければと思うし、また違った
テーマについてこのような国際シンポジウムを開催することで、共同の取り組みを模索す
る場としたい。
42
参加者プロフィール
[欧州労働組合連盟(ETUC)]
1
氏
名:Mr. Joel Decaillon ( ジョエル・ドウカイヨン)
役
職:ETUC常任執行委員(政策担当)
出
身:フランス
教
育:1994
略
歴:
(53歳)
ヨーロッパ法で学士号取得(パリ第一パンテオン・ソルボンヌ校)
1969
フランス国営鉄道(SNCF)就職
1975-78
スワソン市鉄道労働組合執行委員
1978-89
鉄道員連盟執行委員、交通労組協議会執行委員
1980-89
交通関連連盟鉄道員側事務局長
(鉄道員、陸上輸送、設備、海員労組の共闘組織)
1984-89
フランス国営鉄道労組執行委員
(38万人:鉄道員、輸送、ホテル、サービスを含む)
1986-88
フランス国営鉄道労組事務局次長、経済委員会議長
1989-00
EU経済社会委員会委員、同委員会環境部会副部会長(1992-94)
2001
フランス経済社会委員会委員
1991-
フランス労働総同盟(CGT)執行委員(ヨーロッパ・国際活動担当)
1999-
ETUC執行委員
2003
5月のETUC大会(プラハ)にて常任執行委員に選出
[欧州労働組合研究所(ETUI)]
2
氏
名:Ms. Maria Jepsen ( マリア・イェプセン)
役
職:ETUI上級研究員
出
身:デンマーク
教
育:ブリュッセル自由大学(ULB)経済学博士号および計量経済学修士号
略
歴:
1994-95
赤十字連絡事務所でプロジェクト調整担当
43
(37歳)
1996-00
ブリュッセル自由大学(ULB)応用経済学部研究員
現在もULB非常勤講師
2001-
1月からETUI上級研究員
(担当:EUの社会保障制度の比較研究および男女平等問題)
[ドイツ労働総同盟(DGB)]
3
氏
名:Ms. Carola Parniske-Kunz ( カローラ・パルニスケ-クンツ)
役
職:ドイツ労働総同盟(DGB)政策局「労働と技術革新」
略
歴:現職には2003年3月に就任
(44歳)
前職はドイツ社会民主党(SPD)青年・学生組織・全国執行委員
(Juso/Hochschulgruppen)
[北欧労組協議会(NFS)]
4
氏
名:Mr. Tom Saxen (トム・サクセン )
役
職:北欧労組協議会(NFS)事務局長
出
身:フィンランド
教
育:政治学修士号
略
歴:
(57歳)
1969-72
消費者協同組合
広報担当
1972-88
フィンランド労働組合中央組織(SAK)広報担当・広報局長
1988-93
労働者貯蓄銀行(STS)企画担当(政党、労働組合などとの折衝)
1993
ホテル・レストラン労働組合企画局長
1994
フィンランド労働組合のヨーロッパ協力(KEY)
(EU加盟を問う国民投票を目的としたプロジェクトチーム)
1995
EU議会フィンランド社会民主党グループ広報担当
1996-00
北欧社会民主労働運動合同委員会(SAMAK)事務局長
2000-
北欧労組協議会事務局長
44
組
織
紹
介
ヨーロッパ労連(ETUC)
設立 :ヨーロッパ労連(ETUC)は欧州統合に伴う労働組合側の経営者側に対する対抗
勢力として1973年に設立された。中東欧諸国の変化に引き続いて多くの新しい労働組合が
ETUCに加盟した。
ETUCは、ヨーロッパの35ヶ国から77のナショナルセンターならびに11の産業別組織
から構成され、その総加盟組合員数は6,000万人である。その他の労働組合組織、例えば
Eurocadres(ヨーロッパ専門職・管理職協議会)やEFREP/FERPA(退職者・高齢
者連盟)はETUCの後援で活動している。ETUCは、国境レベルでの労働組合の協力
を図っている39の労働組合地域間協議会(ITUC)の活動を調整している。
ETUCはEU委員会、EU理事会、およびヨーロッパ自由貿易地域(EFTA)によっ
て、ヨーロッパレベルで唯一の代表的部門を横断する組織として認知されている。
ETUCの活動と目的
単一市場や経済通貨同盟などの動向を始めとしてヨーロッパ統合過程は、ヨーロッパの
労働組合が活動する枠組みを根本的に変えている。EUは勤労者に関連する分野で益々大
きな役割を果たしており、労働組合はその活動を国内レベルに限定できなくなっている。
労働組合の団体交渉力また経済および社会における労働組合の影響力を保持するために、
労働組合はヨーロッパレベルで単一の声で話をし、集団で行動する必要がある。これが、
ETUCが取り上げた挑戦である。
ETUCは、様々な機関(EU委員会、EU議会、EU理事会)に直接意見を述べること
によって、また雇用、社会問題、マクロ経済政策などの分野に社会的パートナーを含めな
がら、EU当局との総合的で多面的な協議過程に労働組合の参加を確保することによって、
ヨーロッパの法制化に影響力を行使する。ETUCは、また、ヨーロッパ経済社会委員会
などの数多くの諮問機関や、職業訓練、生活労働条件、安全衛生などのEU機関への労働
組合の参加を調整している。欧州労使協議会(European Works Council)に関するEU指令、
情報と協議権に関する指令、また基本的権利に関するEU憲章などはETUCの活動の成
果例である。
同時にETUCは、「欧州労使対話(European Social Dialogue)」を通じて使用者側と欧
州レベルにおける労使関係を打ち立てることを求めている。欧州産別組織の責任の下で
様々な部門での労使対話に反映されている。
ソーシャルパートナーが欧州レベルで枠組み協定を交渉する可能性についてEUの承認
45
に続いて、ETUCは親の休暇、パートタイム労働、有期契約について関係欧州使用者団
体と部門を横断する3つの欧州枠組み協定を締結した。
ETUCは、加盟組織に行動を呼びかけることができる。この行動は、EU条約に雇用
に関する新たな条項を盛り込むためにETUCが大きな行動を呼びかけた時に発揮された。
同じ行動は情報と協議に関する労働者の権利に関する指令の時にも発揮された。ETUC
はいくつかの欧州大の行動を組織した。1997年11月のルクセンブルグ、2000年6月のリス
ボン、2000年12月のニース、それらにはほとんどのヨーロッパ諸国から集まった8万人の
労働者が、EU条約の中に「社会的権利の確立されたヨーロッパ(Social Europe)」また「基
本的権利に関するEU憲章」の改善を求めて「Euro-Manif」に参加した。
ETUCの機構
加盟構成組織:35ヶ国、77組織
11欧州産業別組織
大
会:4年毎(先回は2003年5月にプラハで開催された第10回大会)
大会で執行委員会、会長、書記長、書記次長{2名}を選出。
書記長がETUCを代表する。会長は機関会議の議長を務める。
執 行 委 員 会:1年4回開催。加盟組織の代表により構成(数は加盟人員数に応じる)。
運 営 委 員 会:執行委員の中からの21名で構成。年8回開催。
事
務
局:場所
ブリュッセル
書記長:ジョン・モンクス(Mr. John Monks)
イギリスTUC出身
書記次長:マリア・ヘレーナ・アンドレ(Ms. Maria Herena Andre) スペインUGT出身
ライナー・ホフマン(Mr. Reiner Hoffmann)
ドイツDGB出身
常任執行委員:ウオルテール・チェルフェーダ(Mr. Walter Cerfeda)
イタリアCGIL出身
ジョエル・ドウカイヨン(Mr. Joel Decaillon)
ジョゼフ・ニーミエック(Mr. Jozef Niemiec)
カトレーヌ・パシエ(Ms. Catelene Passchier)
フランスCGT出身
ポーランド連帯出身
オランダFNV出身
欧州労働組合研究所(ETUI)
ETUIは社会経済分野および労使関係分野でのETUCの研究調査センター。設立は
1978年。労働組合運動と学界との橋渡役を果たしている。
研究所
ブリュッセル
研究所体制
所
長
ヘニング・ヨルゲンセン(Henning Jorgensen)
46
専
務
マーチン・ヒュッツボート(Martin Hutsbaut)
第1調査研究部門(労使関係のヨーロッパ化)8名の研究員
第2調査研究部門(雇用、労働市場、社会政策)7名の研究員
一般事務部門
広報、資料室、総務関係で17名の職員
刊行物
定期刊行物:
European Trade Union Yearbook
Annual Report on European Collective Bargaining
季刊TRANSFER
季刊SEER(南東ヨーロッパ労働社会問題レビウー)
その他、労働社会問題に関する刊行物多数。
ドイツ労働総同盟(DGB)
正 式 名 称
ドイツ労働総同盟
Deutsher Gewerkschftsbund (DGB)
(Confederation of German Trade Unions)
結
成
1949 年
本
部
ベルリン
組織人員数
770 万人(2003 年 12 月現在)(女性組合員比率
約 30%)
国際組織加盟
ヨーロッパ労連(ETUC)、国際自由労連(ICFTU)
経済開発協力機構・労働組合諮問委員会(TUAC)
組 織 構 造
中央本部の最高機関は「連邦中央執行会議」であり、同会議を構成する5名の委員(現
体制は下記を参照)は、4年に1回開催される連邦中央大会で選出される。会議は組
織の方針、政策および活動を決定する。
組織全体の構造は「民主的なボトムアップ式構造」であり、下から地域委員会(94 支
部)、地域本部委員会(9支部本部)、連邦委員会、連邦中央執行会議と各レベルに
会議が設置され、下からの意見を吸い上げ、本部に集約する。
連邦中央執行会議委員
会長:ミカエル・ゾンマー (Michael Sommer)
(戦略的計画、基本的諸問題、対外関係、国際・EU対策)
副会長:ウルスラ・エンゲレン‐ケーファー博士(Dr. Ursula Engelen-Kefer)
(社会政策、労使関係法・社会立法、社会的平等・女性問題政策、労働市場政策・
国際政策)
ディートマー・ヘクセル(Dietmar Hexel)
47
(人事・労務、共同決定・法制、組織・情報企画)
ハインツ・プッツハンマー(Heinz Putzhammer)
(財政、熟練職、経済・税制、経済構造・環境政策)
イングリッド・シェールボック(Ingrid Sehrbock)
(青年政策、訓練・資格、公務サービス問題)
加盟組織および加盟人員数
下記表を参照
最近の主な課題
・全国、州、地域、市などにおいて対議会活動
・連立政権への政治的働きかけ
・社会補償制度改革、税制改革などへの働きかけ
・失業問題の克服
DGB加盟組織・加盟人員数
1.建設・農業・環境労組
会長:
IG-Bauen-Agrar-Umwelt (IGBAU)
Klaus Wiesehügel
489,802
Industrial union for construction,
agriculture and environment
2.鉱業・化学・エネルギー労組
会長:
IG-Bergbau, Chemie, Energie (IGBCE)
Hubertus Schmoldt
833,693
Industrial union for mining, chemicals and
energy
3.教育・学術労組
会長:
Gewerkschaft Erziehung und Wissenschaft
Dr. Eva-Maria Stange
264,684
(GEW)
Union for education and science
4.金属産業労組
会長:
IG-Metall
Klaus Peters
2,6432,973
Industrial union for metallworkers
5.食品・飲料・ケータリング労組
会長:
Gewerkschaft Nahrung-Genuss –Gaststätten
Franz-Josef öllenberg
245,350
(NGG)
Union for food, bererages and catering
6.警察官労組
会長:
Gewerkschaft der Polizei (GdP)
Konrad Freiberg
Police union
48
184,907
7.鉄道労組
会長:
Transnet
Norbert Hansen
297,371
Transnet railway workers
8.統一サービス産業労組
会長:
Vereinte
Frank Bsirske
2,740,123
Dienstlesitungsgewerkschaft
ver.di
United service union
北欧労組協議会(NFS)
北欧労組協議会(Council of Nordic Trade Unions)は、北欧諸国の労働組合の調整組織
である。構成組織はデンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデ
ンの5カ国のブルーカラー、ホワイトカラー、学術関係の労働組合で構成されている。加
盟人数は北欧諸国の全労働力の約3分の2に当たる800万人である。
主要任務は、特に雇用、経済政策その他様々な社会問題に関して、北欧諸国の労働組合
活動の調整である。
100年の歴史を持つ北欧の協力関係
北欧の労働組合は長い協力関係の伝統をもち、既に19世紀末に開始された。北欧諸国の
労働組合の先駆者は労働組合組織を築き上げて上で初期の段階からお互いに協力・支援し
合った。その協力・支援活動は長い間非公式的なものであり定期的なものではなかったが、
1970年代の始めに公式的なものに編成された。北欧労組協議会(NFS)は、北欧諸国の政
府間機構である北欧閣僚理事会(The Nordic Council of Ministers)が設立された一年後の
1972年に設立された。北欧閣僚理事会の設立は、1952年に設立された北欧諸国議員理事会
(The Nordic Council of Parliamentarians)の設立によって開始された北欧の協力関係の
発展で新たな重要な段階となった。
ヨーロッパ労連(ETUC)の設立と発展、欧州共同体(EC)その後欧州同盟(EU)の発
展、ならびに欧州自由貿易地域(EFTA)の発展は、焦点をヨーロッパに当てさせ、北欧
諸国の協力関係を更に促すこととなった。
東欧における社会主義体制の崩壊後、NFSの関心の多くはバルト海諸国の労働組合に
向けられることになった。
相互依存関係
北欧の5カ国は歴史的にも文化的にも、また経済的にも密接に結びついている。現在北
欧5カ国はそれぞれ独立国ではあるが、以前は何世紀にも亘って様々な政治的統一体の中
49
で一緒に結びついていた。
北欧諸国は、経済的にかなり関係の深い統一体を成している。1954年以来共通労働市場
を有してきた。幾つかの職能を除いて、5カ国の市民はパスポート、ビザ、労働許可証も
なくその地域内のどこでも自由に居住し働くことができる。他の北欧諸国で働く北欧市民
はその国の市民と同じ社会保障やその他の権利を有している。
北欧の共通労働市場は北欧の経済的依存関係を拡大した。ほとんどの企業は北欧諸国を
自国市場とみなしている。北欧の対外貿易の4分の1は北欧諸国内の輸出入である。
北欧の様々な機関への影響力の行使
NFSはその構成組織を代表して北欧の様々な機関に影響力を行使している。北欧閣僚
理事会(北欧5カ国の政府間機関)や北欧議員理事会(北欧5カ国の議員間機関)に経済、
労働、雇用などの問題に関する情報を提供しながら影響力を行使している。それらの機関
が決定する様々な政策勧告に対して意見を述べている。北欧閣僚理事会に対してオブザー
バーの地位を有している。
国際関係
NFSは構成組織を代表して様々な労働組合国際組織に活発に関係している。ヨーロッ
パ労連(ETUC)、国際自由労連(ICFTU)、経済開発協力機構・労働組合諮問委員会(O
ECD・TUAC)でオブザーバーの地位を持っている。NFS構成組織はすべてこれらの
国際組織に直接加盟しており、その機関会議、その他の委員会の候補者についてはNFS
を通じて調整している。
さらにNFSは北欧諸国産業別組織との定期的な関係を持っている。これらの産業別組
織が30ほどあるが、技術革新、産業政策、労働環境などの分野で相互に協力している。N
FSは情報の提供、活動の調整などを行っている。
NFSの機構
NFSの執行機関は年2回開催される執行委員会である。執行委員は加盟組合員数に応
じて各構成組織の代表1ないし2名で構成されている。会長は執行委員会で選出される。
執行委員会の決定は満場一致を原則としており、正式の投票ではなく、交渉と議論を通じ
て共通の決定に到達するようにしている。
最高決議機関は2年に1度開催される幹部会(presidium)で、会長、副会長、事務局長、
およびすべての北欧諸国が代表できるように3名のメンバーで構成される。NFSの事務
局はストックホルムに置かれている。
50
NFS加盟組織
デンマーク
フィンランド
デンマーク労働総連盟(LO)
フィンランド労働組合中央組織(SAK)
デンマーク俸給職員・公務員労組(FTF)
フィンランド俸給職員総同盟(STTK)
デンマーク学術専門家労組(AC)
フィンランド学術専門家労組総連盟
(AKAVA)
アイスランド
ノルウェー
アイスランド労働連盟(ASI)
ノルウェー労働組合総連盟(LO)
ア イ ス ラ ン ド 国 家 公 務 員 ・地 方 公 務 員 連 盟
ノルウェー職業労働組合総連盟(YS)
(BSRB)
スウェーデン
グリーンランド
スウェーデン労働組合総連盟(LO)
グリーンランド労働連盟(SIK)
スウェーデン専門職員総連盟(TCO)
スウェーデン専門労働組合総連盟
(SACO)
51
52
ETUC報告
ヨーロッパ労連(ETUC)の方針と活動
ETUC常任執行委員(政策担当)
ジョエル・ドゥカイヨン
1.ETUCの目標
平和、自由、民主主義、基本的権利、平等機会と男女間の平等、持続可能な発展、連帯と社会
正義、完全雇用と質の高い雇用、経済的社会的地域的一体化(cohesion)、高度な肉体的精神的健
康、教育・訓練・生涯学習、福祉と繁栄、更にヨーロッパの社会モデルの原則、少数者の保護、
質の高い一般的サービスへの普遍的で平等なアクセス、社会的市場経済を基盤に築かれた欧州連
合(EU)を目指す。
(1)
拡大EUに向けての制度的枠組み条約
・ ETUCの目標に基づく制度的枠組み条約(a constitutional treaty)を求める。
・ 欧州レベルでの基本的権利の認知における第1段階として、法的な拘束力と正当化保障
(guarantee of justifiability)を持つ制度的枠組み条約に「基本的権利に関する憲
章」を完全に統合するための活動を展開する。
・
次のEU拡大の段階が、労働組合にとってもEU自体にとっても機会と挑戦になるこ
とを十分に認識しながら、社会的に既に確立されたものの完全な実施を基本にして成
功裡に完了することを確実にするために行動する。
・
単一市場と単一通貨を超えて経済的側面と社会的側面を結びついた欧州統合過程が、
効率的で透明な民主的制度によって運営される社会的政治的同盟に進むよう活動を展
開する。
・
(2)
真の意味の自由と安全と正義の実現を促進する。
完全雇用と労働の質
・
基本的なマクロ経済政策の目標として完全雇用を求めて闘いを続ける。
・
労働力参加率を高めるために、特に男女間の平等、質の高い労働、生涯学習権、すべ
ての者に開かれた労働市場で選択する権利に基づいた現代的な完全雇用概念を発展さ
せ、また雇用条件の不安定性の拡大を拒否しながら労働の質と労働者の保護を高める
ために社会的最低基準の導入を図る。
(3) 社会的包摂(inclusion)と一体化(cohesion)
・
拡大EUにおいては、特定のグループのニーズを考慮しながら、社会正義、富の再分
配および調和化の前進に基づいて、すべての政策分野で経済的社会的地域的な一体化
(cohesion)を強化しながら、社会的疎外、貧困、不平等と闘っていく。
・
ヨーロッパの労働力の多様性を認識しながら、世代間、就労者と失業者間、現役と退
職者、地域間、部門間、職種間の連帯を打ち立てていく。
(4)
公共部門と一般利益サービス(SGI)
53
・
ヨーロッパ社会モデルを確立するために、基本的市民権を完全に実施するために肝要
な制度として、平等で誰でもアクセスできる質の高い公共サービスと一般的利益サー
ビス(service of general interest)を推進し、しかも高度に質の高い労働力と適切
な資金供給に基づいてあらゆるレベルで公共サービスと一般利益サービスを強化する
ことによって推進する。
(5)
・
社会的保護
法的に規定された、また協約で合意された社会的保護制度の優先性を再確認してそれ
らを強化し、それらへの資金供給を維持可能なもの、かつ雇用にフレンドリーなもの
にし、家族構成の変化、非典型契約、高齢者が直接の権利を強化することによって考
慮されることを確実なものにし、かつすべての労働者と市民が法的な社会的保護制度
でカバーされることを確実なものにする。
・
EU拡大や競争力維持・強化を口実に、社会的セーフティーネットの弱体化や労働者
の権利の削減を狙う経営者や政府の新自由主義的なアプローチを転換させる。
(6) 団体交渉と社会対話(social dialogue)
・
労働組合権と集団的労使関係をすべてのEU加盟国、加盟申請国その他のヨーロッパ
諸国で強化し、団体協約がEU法実施の手段として常に認められる社会パートナー間
の真にヨーロッパ大の交渉を打ち立てるために、国境を越えた完全な労働組合権の確
立に向けてキャンペーンを行う。
(7) 男女間の平等(gender equality)
・
EUの基本的な価値観の中に男女間の平等を包摂すること、およびEUの権能ある機
関でそれを包摂することを要求する。平等な支払いと男女平等問題の主流化(gender
mainstreaming)に関する既に確立された権利が全ての政策で維持されることを確実な
ものにし、あらゆる意思決定機関での女性の参画を促進する。
(8)
・
差別、人種差別、外国人排斥との闘い
EUにおいて、性、国籍、人種、民族、障害、性的指向(sexual orientation)と性
的アイデンティティー(gender identity)、年齢、宗教、門地に関してあらゆる形態
の差別と闘う。
・
(9)
・
(10)
・
労働組合機構の中に固有な偏見と闘う。
指針となる原則として持続可能な発展
環境的、経済的、社会的側面で持続可能な発展を主流化することを支持する。
グローバル化
グローバル化が人々のニーズと労働者の基本的な権利を尊重し、かつそれらに対応す
ることを確かなものにし、また富の分配をグローバルに公平化することを確実なもの
にするために、グローバル化の新自由主義的な観念と闘い、民主的な制度によって規
制されたグローバル化の過程を求めていく。
(11)
・
ETUCの強化、ヨーロッパの労働組合のアイデンティティの強化
ETUCの可視性と自律性を高め、入手可能な資源を強化し、それらの資源の最有効
活用を図る。
・
若い世代の労働組合活動への参加を、青年の労働の仕方、希望、考え方、優先順位を
54
考慮しながら促進し、社会への影響力を行使していく。
2.完全雇用を求める労働組合運動
(1)
リスボン戦略の実施、特にその戦略の「より多く、より良い雇用」、完全雇用、知識基
盤型社会の創造へのコミットメントを、その戦略で強調された3%の持続的年間成長
率という政策と組み合わして実施していくことを求める。
(2)
ルクセンブルグ過程が依然として労働市場政策を調整するための主要な車輪であるこ
とを確認し、一方、欧州理事会経済政策指針もまた完全雇用に貢献するものでなけれ
ばならないことを強調しながら、これらの両過程間の一貫性を要求する。
(3)
雇用と社会的包摂(social inclusion)のための「国内行動計画」で、あらゆるレベ
ルでの、特に全国レベル、地域レベル、地方レベルでの社会的パートナーの参加と協
議を促進し、ETUC加盟組織に対して国内レベルでヨーロッパ雇用戦略(EES)
の実施と評価に関わり、雇用戦略の意識向上を図るよう求めていく。
(4)
労働者にどのような雇用でも受入れるようにさせるよりも、活力化政策をとって訓練、
支援、キャリア指導の点で積極的なインセンティブを与えることに焦点が置かれるよ
うにすることを確かなものにする。
(5)
労働時間、賃金その他の条件、安全衛生、訓練へのアクセスのような問題でEUの法
規定および団体協約を通じて質が高くかつ安定した雇用を促進し、かくして持続可能
な労働生活とEUの競争力の強化に貢献できるようにする。
(6)
すべての臨時雇用契約は特定の目的を持って結ばれていることを確認し、それによっ
て労働市場における不安定な契約の拡大を防止する。
(7)
職場における労働条件と安全衛生の改善に、特に安全衛生に関するEU委員会戦略
(2002‐2006)の実施を通じて取組む。
(8)
団体協約にしろ法的規定によるにしろ、労働者を例えば下請化、臨時労働エージェン
シーなどの雇用における差別や不安定性から保護する拘束力のある規定を求めて闘う。
(9)
不安定な状況にある労働者に対して新情報技術へのアクセスを困難にすることは社会
的に疎外された新しいグループを作り出す危険性があり、それを取り除く措置を求め
る。
(10)
扶養家族に対する公的資金による質の高い介護の提供を始めとして女性の経済的自立
を促進する雇用政策を通じて性による差別と闘い、常用雇用の権利および可能性とし
てパートタイムの権利で女性の雇用の質を改善し、男女間の格差、特に賃金格差を撤
廃し、女性のキャリア形成と機会を促進して伝統的な男女の仕事の垣根を取り払うこ
とを求めていく。
(11)
男女平等問題や労働市場参加の問題で、世帯を対象にした税(joint family taxation)
に代わって個人単位の税(individual taxation)を導入することが重要であることを
強調していく。
(12)
有給の育児休暇(paid parental leave)、またキャリア中断期間中の年金権および社
会保障権の維持を要求し、育児休暇期間中の適切な所得を要求して活動する。
(13)
職場におけるあらゆる形態の差別の撤廃を目的とする活動を全面的に展開するよう加
55
盟組織に求める。
(14)
移民、黒人、民族、宗教に基づく少数労働者に対する、またヨーロッパにおいて性的
指向に基づく、特に労働市場における差別と闘う。
(15)
労働市場から高い比率で排除されている青年労働者と高齢労働者に対する差別の撤廃
を求めて活動する。
(16)
生活条件と労働条件の前向きの収斂させることを目的とする行動とヨーロッパ基準、
また障害者のニーズと意見に応えるような障害者の社会的包摂を求めて活動する。
(17)
密売人や不徳な経営者に刑罰を科すことによる不法労働の撲滅に努力し、すべての労
働者に対する公平な扱いと支持の原則を適用するよう要求する。
(18)
質のある労働と訓練への必要性を満たしながら、また一方では雇用と環境的側面を考
慮に入れながら、労働生活と家庭生活の両立を達成するために、団体協約を介した、
また、すべての労働者に適用されるのを確実にするために、必要ならば労働時間に関
するEU指令の改正を含めた法制化と組み合わせた周35時間労働と革新的な労働時間
短縮措置を求めて今後も活動を展開する。
(19)
ILO第87号条約に従って、移民労働者の労働組合に加盟する権利と結社の自由を確
実なものにする。
3.ヨーロッパ社会モデルの発展
高く持続する成長は、成長潜在力を高める政策を含意する。しかし、高い成長を狙ったリスボ
ン戦略の目標を達成する上で、
「高く」かつ「低くない」道が辿られなければならない。単に少数
の労働者ではなくすべての労働者が、革新的で競争的な経済に参加し、それを支援しなければな
らない。ETUCは市場の、特に労働市場のシステマティックで抑制のない規制緩和への要求を
拒否する。ETUCは、19世紀の「自由な労働市場」への回帰が、ヨーロッパの経済が21世紀に
向かって進む道とは信じない。放置されると「市場」は、数々の不完全性を有しているので、生
産性や革新を推進しない。その結果も社会的な意味で受入れられるものではない。
代わって、ETUCが要求しているのは、ヨーロッパの政策立案者や経営者が社会的対話
(social dialogue:労使対話)や団体交渉を活用して、ヨーロッパ経済の生産性向上や革新を加速
化させ、高い持続可能な成長と生産力のある高品質の雇用を創出していくことである。
ヨーロッパで最も成功している経済は、強力な労働市場や社会制度、さらには建設的な労働組合
運動との社会的対話が積極的な役割を果たしている経済であることを明確に示している。ETUCは
「ヨーロッパ雇用戦略」に対して、
「より多くより良い雇用」というその目的と効果的で持続可能
な福祉社会を推進するためにヨーロッパの労働市場を労働組合との密接な関わり合いの中で改革
していく手段として、その支持を再確認する。
ETUCは、競争力はグローバル化する世界の中で正に必要であり、またヨーロッパの社会モ
デルを強化するために重要であるという考えに同意する。しかし、競争力を守り、かつ高める上
で、低い道ではなく「高い生産性、高い質の財とサービス、高い賃金」という考え方の上に築か
れた高い道を取らなければならないと考える。この関係で真剣な議論と事実関係の指摘がなされ
56
なければならない。
・
「世界経済フォーラム」は、その最近の報告で、EU諸国を最も競争力のある経済と
ランク付けした。
・
輸出量の多さはEU諸国の品質の高さ、競争力、生産性の高さを物語っている。
・
EU諸国の高水準の社会的保護にもかかわらず、ユーロ圏の財政赤字はアメリカの膨
大な赤字に比べてGDPの1%である。
ETUCは、繰りかえすが、革新的なヨーロッパの産業政策の強化の必要性を強調する。産業
政策はリスボン戦略の目標を達成する上で重要な役割を果たす。弱い経済成長率の下では、完全
雇用への復帰という目標およびヨーロッパ社会モデルの強化という目標は、広範に亘る政策ミッ
クスに基づいてのみ達成され、特に、マクロ経済政策と構造政策の枠組みを調整し、産業政策を
取組んでいくことが必要である。
4.社会的一体化(social cohesion)と競争力のための生涯学習
(1)
リスボン戦略の総合的な一部として、
「社会的対話委員会」による5年間に亘る定期的
なフォローアップを行いながら、能力と資格の生涯に亘る向上のための社会的パート
ナーの行動枠組みを実施し、すべての者に生涯学習にアクセスする権利を確保する。
(2)
生涯学習戦略が産業別の社会的対話において、また団体協約を通じて追求されること
を確保する。
(3)
高齢者、低所得者、中退者、低水準資格の非典型労働者や女性を生涯学習に関する措
置に包摂していくことを推進する。
(4)
すべてのEU加盟国で、最適教育資格を有しない数多くの就労者および失業者の数を
削減するための客観的で前進的な目標を各国で設定していくよう要請する。
(5)
基礎教育の資格を得ずに学校を去るものの数を減らすための各国の目標設定を要求す
る。
(6)
事前に学習した教育および非公式に取得した能力への正式の資格授与と証明書の発行
を要求する。
(7)
大学や専門学校で、質の高い教育と訓練へのアクセスを確保し、青年の要請に応えて
いく。
(8)
ETUC平等計画を実施することによって労働組合内での男女平等を達成する。この
ためには均衡ある女性の参加、少なくとも女性の加盟人数に比例した参加を、指導部
を含めてあらゆるレベルで、かつすべての他のヨーロッパの労働組合機構(各種委員
会、労使協議会(EWC))で達成する。
57
ETUI報告
柔軟性についてのヨーロッパの議論
ヨーロッパ労働組合研究所(ETUI)
上席研究員
マリア・イェプセン博士
1.始めに
過去20年の間に、柔軟性(flexibility)は新しい形態の労働組織ならびに使用者と労働者の間の
関係を導く契約形態に関連する一群の議論の多い、かつ多変量の(multivariate)慣行を述べるた
めに使われる概念になってきた。これらの慣行は様々に方向を異にするが、最低限共通したもの
を持っている。つまり、それらはすべて30数年の黄金時代を特徴付けた典型的な雇用と労働のモ
デル、すなわち単一の使用者の下で、高い従属性を特徴とする期間の限定のない(open-ended)フ
ルタイム雇用(Vielle and Walthery 2003)の契約から離れていく動向の一部であるという事実で
ある。
多くの経済学者や政治家は、長引く失業問題を解決するためのみでなく、ヨーロッパの使用者
がグローバル化や技術の進歩から引き起こされている競争に対応できるようにするために(OE
CD 1990)、柔軟な労働市場を必要なものとして前面に押し出してきた。論争のもう一方では、
多くの論者が、労働市場の強力な規制緩和や柔軟化(flexibilization)は労働者の労働条件と生活
水準を崩壊させる(de Nanteuil 2003)としてそれらに反対している。現在においてもヨーロッパ
において柔軟な労働市場はどのような状況にあるかについて依然として活発な議論が続いており、
アウアーとカゼス(Auer and Cazes 2002)は主要な結論として上記した伝統的なモデルは依然と
して広くいきわたっていると論じ、一方、サルベルダ(Salverda 2003)はEUの労働市場は推定さ
れている以上にはるかに柔軟であると明確に論じている。本稿はヨーロッパレベルにおける調査
結果と政策論議を紹介しようとするものである。下記の第2部では柔軟性の概念がどのように理
解されているかを述べる。第3部ではEU加盟国においていくつかの異なる形態の柔軟性が持つ
重要性を述べ、それらの柔軟性を懸念しているのは一定のグループであることを示す。第4部で
はヨーロッパレベルにおけるこの問題の取り扱いに焦点を当て、フレクシキュリティー
(flexicurity)※の概念を提起する。第5部で結論を述べる。
※:フレクシキュリティー(flexicurity)は、flexibility(柔軟性) とsecurity(安定性・
保障)を合わせた用語で「柔軟性と安定性の両立」を意味する。
2.柔軟性(flexibility)の概念の定義
柔軟性の概念は広範でかつ方向の違う一群の慣行を再区分したものである。柔軟性の定義とそ
れがカバーする様々な慣行を扱った多くの著作があるが、これらの異なる定義は参加型経営、タ
イム・クレジット制(time credit) 、労働時間の年次化、成果関連賃金などの問題を含んでいる
ので、本稿でこれらのすべての異なった定義を要約することは範疇外である。
58
ボイヤー(Boyer 1986)は、異なった形態の柔軟性に関して企業の攻撃的戦略と防衛的戦略の間
を差異化することによって最初の区分の一つを行い、その中で攻撃的戦略では企業は技能労働者
に投資し忠実な労働力を確保することを狙い、それと反対に防衛的戦略では企業は需要変動に調
整するために低技能労働力を雇用し労働コスト変数(賃金水準もしくは労働者数)を活用すると
している。
最近、多くの新しい定義が現れてきた。それらは多くの面で共通性があり、通常違いは大きい
ものではない。質的柔軟性(qualitative flexibility)と量的柔軟性(quantitative flexibility)
の間の区分が行われ、前者はエイジェンシーへの下請化と専門職員の採用の慣行に関係し、後者
は労働の量もしくは雇用の量(労働時間や臨時契約)を調整するために使われる戦略である。こ
れが外的柔軟性(external flexibility)と内的柔軟性(internal flexibility)という柔軟性の区
分に結びつけられてくる。外的柔軟性は雇用の量を変動させるために使われる慣行を含む。外的
柔軟性は労働者の雇用契約で明確にされている雇用関係の性格、そこから労働者の地位、例えば
臨時雇用、フリーランス労働(free-lance labor)、採用、解雇などに言及したものである。内的
柔軟性は雇用関係における安定性を想定しているが、能力活用における変動も想定しており、こ
の労働の量の調整は同事業所の施設間の内部移動、労働時間の年次化、多部門移動労働
(multitasking)などを介して遂行されている。柔軟性を区分するこの2つの方法が柔軟性を定義
する共通の方法として現在使われている(Vielle and Walthery 2003)。
表1:柔軟性の形態
外的柔軟性
内的柔軟性
量的柔軟性
質的柔軟性
契約形態:
生産システム:
外的-数量的柔軟性
外的-機能的柔軟性
労働時間:内的-数量的柔軟性
労働組織:内的-機能的柔軟性
資料:ドウ・ナンテイユ(de Nanteill 2003)が示した表を若干修正。
-
外的-数量的柔軟性戦略は事業所内の雇用の量、そこから数的な調整を図り、さらに一
時解雇や採用、また有期契約と臨時労働などの慣行を含むように設計されている。
-
外的-機能的柔軟性慣行は生産システムに関係し、生産の分権化、下請化、フリーラン
ス労働などの戦略を含む。
-
内的・数量的柔軟性は労働の量の臨時的な調整の慣行に言及しており、労働時間、非
典 型 (atypical) 労 働 時 間 、 急 な 通 告 に よ る 労 働 時 間 、 お よ び 労 働 時 間 積 立 制 度
(working-time account scheme)における変形体を含む。
-
内的・機能的柔軟性は組織的な柔軟性に関連し、多部門労働などの慣行を含み、これ
までの従属形態から離れていく動きを意味している。
これらの柔軟性カテゴリーは限定的なものではなく、様々な形態の柔軟性がオーバーラップし
59
ている。例えばパートタイム労働者は同じ事業所内のいくつかの施設間で労働時間を分けること
もある。内的柔軟性と外的柔軟性はお互いに補完し合うことができるが、例えばデンマークの戦
略に対するドイツの戦略のように、お互いに代替し合うこともできる。いくつかのケースでは柔
軟性は労働者により否定的に考えられるかもしれないが、一方では積極的で望ましいものとも考
えられるかもしれないし、これは、一定程度、柔軟性が開始された発端の原因に関係する。柔軟
性の慣行の発端は大きく分けて3つの形態に分類することができる(Vielle and Walthery 2003)。
すなわち労働コストの削減(臨時雇用、パートタイムもしくは有期契約)によって激しい競争環
境に適応するために使用者の方針によって推進される形態と、雇用を削減もしくは拡大するため
に(パートタイム雇用、特別有期請負契約)、政府によって開始される形態がある。さらにもう1
つの柔軟な労働形態は個々人により発意される形態であり、その形態はより自律的な労働形態の
発展と労働市場への女性の進出と同時に起こった。柔軟な労働時間は、それが職業生活と個人の
生活を両立させると考えられるので若い親により積極的に捉えられているが、しばしば柔軟性は
これら2つの生活分野の厳密な限界をぼやかし、それによってマイナスの影響を生み出す。この
ことは、柔軟性が厳しく管理され明確にされないならば、多くの場合柔軟性は否定的に取られる
可能性があることを示している。パートタイム労働はある労働者にとってはその生涯サイクルの
中の一時点で積極的で柔軟性を持つものとして捉えられるかもしれないが、長期的に、また短期
的にも多くの不利な側面を持っている(Jepsen 2001)。
3.様々な柔軟性形態に関する数字
様々な柔軟性戦略が持つ重要性を数字で示すことは本稿の範囲を超える。本稿では事業所内の
第1図:臨時雇用
1990
(%)
2000
30
25
20
15
10
5
スイス
キプロス
チェコ
ハンガリー
ラトビア
ポーランド
スロバキア
リトアニア
エストニア
ルーマニア
EU
スペイン
ポルトガル
フィンランド
フランス
スウェーデン
オランダ
ドイツ
デンマーク
ベルギー
イタリア
ギリシャ
オーストリア
イギリス
ルクセンブルグ
アイルランド
0
資料:ETUC/ETUI
60
カ国
IE LU UK AT GR IT BE DK DE NL SE FR FI PT ES EU RO EE LT SK PL LV HU CZ CY SI
15
15
臨時雇用、パートタイム雇用、それらの在職期間など柔軟性の数的な側面に焦点を当てる。
第1図を見て、ヨーロッパが柔軟であるかどうかについて何故意見が一致しないのか、幾つか
の説明を与えてくれる。国によって臨時雇用の重要性が大きく異なるだけでなく、趨勢も異なる。
外的・数量的柔軟性が高いスペインのような国では、趨勢は下降しているが、このような形態の
契約が劇的に増大しているフランスでは正に反対である。
しかし、臨時雇用に関してはヨーロッパ全体に亘って共通の特長があり、この形態の労働に関
連する人口は同じ傾向を有している。若い女性が臨時労働者に占める割合ははるかに高く、働き
盛りの年齢の男性の占める割合は少ない。しかし雇用されている全男性と全女性を考えると、女
性が男性よりも比率が高いとは言え、その差は傾向として極端ではない。ドイツでは差はほんの
1%であり、オランダでは6%である。
第2図:臨時労働者
男性 25-49 歳
女性 15-24 歳
全労働者
80
700
600
500
400
300
200
100
EU
15
カ国
スペイン
ポルトガル
フィンランド
フランス
スウェーデン
オランダ
ギリシャ
ドイツ
デンマーク
イタリア
ベルギー
オーストリア
イギリス
アイルランド
ルクセンブルグ
0
しばしば議論されることに、臨時雇用は労働者が労働市場に参入し、そこで経験を獲得し、そ
れによって労働市場への踏み台になる一方法であり、また一方で使用者は採用戦略の一部として
臨時労働者を活用するという議論がある。しかし、スペインのような国では、大半の新規雇用は
有期契約に結びついており、雇用されている若い女性の70%は有期契約である。しかし臨時契約
がどういう影響を与えるかは、一部分は特定の契約の内容(期間、訓練の可能性)に依存し、一
部分はそれと比較される常用契約の内容に依存する。従って法律、制度、時代による進展など国
の置かれた背景を勘案すべきである。しかしこれらの職務形態で想定される質と危険はキャリア
開発の関連で評価されうる。ある研究調査(「ヨーロッパにおける雇用
2002年」)によると、1995
年から1998年の間に、31%の女性が有期契約から不完全就労(inactive)ないし失業に移り、男性
の場合はその割合は19%だけであった。青年の半数は常用雇用に入るが、高齢労働者の31%のみ
61
がこの機会を得る。これらの数字を見ると、臨時雇用がより良く、より高い質の雇用への踏み台
になるという議論には疑問がある。
パートタイム労働は、内的・数量的柔軟性の戦略の一つを代表し、数量的な柔軟性のもう一つ
の側面を現している。
第3図:パートタイム雇用
1990
(%)
45
2000
40
35
30
25
20
15
10
5
ルーマニア
ラトビア
ポーランド
リトアニア
キプロス
エストニア
スイス
チェコ
ハンガリー
スロバキア
EU
オランダ
イギリス
スウェーデン
ドイツ
デンマーク
ベルギー
フランス
オーストリア
アイルランド
フィンランド
ポルトガル
ルクセンブルグ
スペイン
イタリア
ギリシャ
0
GR IT ES LU PT FI IE AT FR BE DE DK SE UK NL EU SK HU CZ SI EE CY LT PL LV RO
15
カ国
15
ここでもヨーロッパ各国のパートタイム比率の違いは大きくない。しかしほとんどのEU加盟
国でパートタイム雇用の比率は大きく拡大してきた。パートタイム雇用は特に女性が働く部門(医
療、介護、事業所内サービス、小売)で見られる。小売や事業所内サービス(清掃)においては、
それは需要変動(demand flow)に調整するためであり、フルタイム雇用はほとんど見られない。医
療部門では、労働条件が厳しいので(可変的労働時間、重い労働負担など)、労働時間の短縮を求
めるのは一定程度労働者である。しかしながら、パートタイム雇用は低賃金でキャリア形成の展
望のない、また訓練の機会の少ない労働であることが多い。パートタイム労働者は失業もしくは
不完全就労の高い危険性も負っている。
男女による、また年齢層によるパートタイム労働の不均衡な発生は臨時雇用の場合よりも著し
い。若い女性は中核的な男性労働力に比べてはるかに比率が高い。しかし、パートタイムの比率
の高い国もまたすべての年齢層で女性のパートタイム比率が高いことに留意しなければならない。
パートタイムはしばしば家庭生活と職業生活とを両立させる方法として推進されているが、パー
トタイム労働者はしばしば家庭にフレンドリーではない時間帯(清掃人の場合は夕刻とか早朝、
介護サービスの場合は週末)に労働し、更に低賃金パートタイム労働はフランスの場合はパート
タイムで働く女性の多くが唯一の生計維持者であるので女性の貧困の原因ともなっている。しか
62
しパートタイムの労働者への影響は、国の法的枠組みならびにパートタイムである雇用のタイプ
に依存する。清掃婦としてのパートタイム雇用は、水曜日の午後には職場から離れる金融部門の
労働者と同じ意味合いをもつものではない。
第4図:パートタイム労働者
男性 25-49 歳
女性 15-24 歳
全男女 15-59歳
80
70
60
50
40
30
20
10
第5図:勤続期間
16
14
12
10
平均勤続期間 1992
8
平均勤続期間 2000
6
4
2
EU
14
カ国
アメリカ
イギリス
スウェーデン
63
スペイン
資料:Auer and Cazes (2002)
ポルトガル
オランダ
ルクセンブルグ
日本
イタリア
アイルランド
ギリシャ
ドイツ
フランス
フィンランド
デンマーク
ベルギー
0
15
カ国
資料:ETUC/ETUI
EU
オランダ
イギリス
スウェーデン
デンマーク
ベルギー
ドイツ
オーストリア
フランス
アイルランド
フィンランド
ルクセンブルグ
ポルトガル
イタリア
スペイン
ギリシャ
0
数量的な柔軟な労働市場がどのような状況にあるかについてのもう一つの指標は、勤続期間の
動向である。勤続期間は雇用の安定を測る指標であり、その動向により労働市場の変化を知るこ
とができる。
ここでも国によって大きな隔たりが見られる。イギリス、アメリカ、デンマーク、オランダで
は勤続期間が短い。一方、ギリシャ、イタリア、日本、スウェーデン、ポルトガルでは勤続期間
が長い。しかし国による真の違いは勤続期間別労働力を検討するときに現れる。
第6図:勤続期間別労働力の変化
100
80
% 勤続期間 1 年未満の変化 1992-2000
% 勤続期間 10 年以上の変化 1992-2000
60
40
20
EU
アメリカ
イギリス
14
カ国
スウェー デン
スペイン
ポルトガ ル
オランダ
ルクセン ブルグ
日本
イタリア
アイルラ ンド
ギリシャ
ドイツ
フランス
フィンラ ンド
デンマー ク
-20
ベルギー
0
-40
資料:Auer and Cazes (2002)
同じ使用者の下に1年未満留まる労働力の比率が上昇する趨勢が明確に見られる。日本、ルク
センブルグ、ポルトガル、スペインではそうではない。しかし、デンマーク、アイルランド、オ
ランダやイタリアのような国では、1年間同じ使用者下で働く労働者の数が劇的に増加してきた。
これらの数字は2つの点で解釈することができる。第1点は勤続期間の短縮は不況のために採用
が減少したためであり、もう1点は短縮は労働市場の機能が変化したためである。1年未満の勤
続期間の労働力の比率の上昇は、突然な採用騒ぎによるものか、もしくは労働市場の機能が労働
者の高い転職率に向かわせる方向に転換したためである。10年以上の勤続期間を有する労働力の
比率の変化は激しくなく、短い勤続期間の労働力の変化と反対の方向に常に向かっているとは言
えず、長い勤続期間層から短い勤続期間層への転換を意味しない。アウアーとカセズ(Auer and
Casez 2002)は年齢と景気循環の雇用期間への影響を調査し、幾つかの国は平均勤続期間の短縮を
経験したが、この変化に関係したのはほとんどが青年であるという。その調査は次いで、
「労働市
場の変化は区分的なものであり、一方では中核的な労働力が支配的な雇用形態を占め、もう一方
では周辺的労働力(これが増加している)がマージナルな雇用形態を構成している」(Auer and
Cazes 2002)と述べている。中核的労働者と柔軟な周辺的労働者との間の区分は、スペインのよう
に臨時雇用労働者比率が高く勤続期間の長い国に顕著に見られる。
64
このように労働市場の柔軟化は、全労働市場に影響を与えているというよりもむしろ周辺部で
増大しているように思われる。このことは研究者ならびに労働組合が考察し対策を打ち出すべき
方法への挑戦となっている。目標は、全労働者を対象にした最適な解決法、すなわち安定性
(stability)と柔軟性(flexibility)の最適な組み合わせた(optimal combination)を見出すこと
である。最適な柔軟性のみを求めることは、現在の制度を不安定化する。一方、周辺部の柔軟性
は、パートタム労働者(女性)は通常第2の稼ぎ手であるので大きな問題ではないとか、また臨時労
働者(青年)はこのような方法で労働市場に足場を得ることができるとかを述べることは、近視
眼的であり、フランスの女性と子供の貧困のように、また出生率の低下などのように広く破壊的
な副作用をもたらす。従ってここから労働市場の柔軟な側面がすべての当事者に受入れられるも
のにするために、どのような形態の安定性を確保する必要があるのかを考察することが重要であ
る。
4.柔軟性のヨーロッパ的な定義の仕方:フレクシキュリティー(Flexicurity)
ヨーロッパの企業、産業、各国政府、更にEUは、全体として現在二重の期待に直面している。
一方では労働市場、雇用、労働の編成の更なる柔軟化推進に対する強い要請があり、また一方で
は同時に、労働者、特に弱い立場の労働者に安定性を与えることに対する同じように強い要請が
ある。柔軟性と安定性との間の新たな均衡を探っていくことが、ヨーロッパの政策策定で基本的
な戦略となっている。EUの政策策定過程では1993年から始まり、例えば「成長、競争力に関す
る1993年白書」や1997年の「緑書:新しい労働の組織化のためのパートナーシップ」は、
「労働者、
経営者、社会パートナー、政策立案者にとり同様に基本的な問題は、柔軟性と安定性の間の正し
い均衡を図ることにある」と明確に述べている。この同じトピックがヨーロッパの雇用政策(適応
性に関する支柱)や欧州委員会の他の幾つかの文書の中で強調されてきた。特に雇用ガイドライン
の改正に関する欧州理事会決定の中では次の通り述べられている。
「柔軟性と安定性との間に正しい均衡を与えることは、企業の競争力を支え、職場におけ
る質と生産性を向上させ、経済的変化に対する企業と労働者の適応を容易にする」。
柔軟性は使用者の独占物のように見えるが、労働者やその代表もまた、例えば労働と、私的な
義務や責任とを生涯をベースに組み合わせて行く上で、労働者の個人的な選好や境遇に対応する
ために、労働の編成の柔軟化に対する必要性を示している。更に使用者は、安定した雇用関係を
保ち、労働者の企業への関わりあいを確実なものにすることに関心を有すべきであると認識して
いる。欧州委員会の2000年ヨーロッパ労使関係概観で、
「すべての加盟国は積極的な雇用政策と訓
練政策を打ち出すことによって労働市場における柔軟性を促進しようとしてきた。労働市場の機
能の仕方の近代化は、柔軟性と安定性の間の新しい均衡を見出すことを意味する。このことはE
Uレベルでは、社会パートナー間で締結されたパートタイム労働に関する枠組み協定の中に反映
されている」(欧州委員会:2000.83)。
それにも関わらず最近の調査は、柔軟性交渉に関しての新たな乖離(trade-off)についてかなり
悲観的な見方をしている。ドウ・ナンテイユ(de Nanteuil 2003)は、労働市場の柔軟化は、雇用
や所得の安定のような根本的に重要な分野で労働者の権利を大幅に侵害してきたと明確に述べて
65
いる。更に最近の社会保障制度の改革は、柔軟性を容易にすることではなく、コストの削減に焦
点を当てているように見える。この問題は複雑であり、一方では問題は、社会保障制度と労働法
が柔軟化による望ましくない結果をどのように最小化できるかということであり、またもう一方
では、どのような社会保障制度と労働法規が必要な柔軟性を積極的に支えるかについて答えを出
さなければならない。
フレクシキュリティー(Flexicurity)をどのように定義すべきかについて依然として議論が続
いている。ヴィルトハーゲン(Wilthagen)は定式化について次のように答えている。
「フレクシキュリティー(Flexicurity)は、(1)相対的に弱い立場を有する労働者の労働市場に
お け る キ ャ リ ア と 個 人 暦 を 促 進 し 、 か つ 高 い 質 の 労 働 市 場 へ の 参 加 と 社 会 的 受 容 (social
inclusion)を許容する一定の職能、雇用、所得およびそれらが組み合わさった安定性であり、一
方同時に(2)競争力と生産性を維持し向上させるために労働市場による(かつ個々の企業による)
労働市場の(および個々の企業の)変化する条件への適宜かつ適切な調整を許容する一定の数量
的(外的および内的両方の)機能的かつ賃金の柔軟性である」(Wilthagen:近日中に発表)。
フレクシキュリティー(Flexicurity)は未だ政策戦略の主流になっていないことは確かである
が、それは標準的でない労働(non-standard work)の規制への収斂を意味するものではない。更に、
この概念のイデオロギー的な利用に注意を向けるべきである。フレクシキュリティー
(Flexicurity)戦略の安定性の側面がその柔軟性の側面を売り出すためにだけに利用されること
が十分に想像できよう。フレクシキュリティー(Flexicurity)政策は、いくつかの乖離形態として
分析することができる。これらの乖離は、個人間、企業間、労働者グループ間もしくは全体の労
働力間、産業間にあり得る。フレクシキュリティー(Flexicurity) 戦略もしくは政策は上記した
数量的柔軟性概念に強く結びついており、しばしば移行の要素を組み込んでいる。入手できる乖
離を例示する模型を以下のように作ることができる。
第2表:柔軟性対安定性の乖離
柔軟性/安定性
職の安定性
雇用の安定性
所得の安定性
組み合わせ安定性
数量的-外的
数量的-内的
機能的
資料:Wilthagen(近日中に発表)
フレクシキュリティー(Flexicurity)政策の代表として2つの国がしばしば引き合いに出され
る。オランダとその「ポルダーモデル(Polder Model)」であり、もう一つは労働市場の保護程度
が低く、高い社会保障水準を持つデンマークである。
オランダでは有期契約とパートタイム雇用が、これらの雇用形態に安定性を付加した政策を通
66
じて推進された。労働組合運動はこの過程に深く関与し、合意形成を確実なものにした。デンマ
ークでは戦略は全く異なり、柔軟な労働市場法規は容易な採用と解雇を許容するものであるが、
しかし積極的な労働市場への移行を介して滑らかな労働市場への移行を保障する努力がなされた。
これらの戦略は目的を達成する上で成功したとは言え、高価な対価を伴い(両国とも最も高い対
GDP比雇用対策関連支出を有する)、また売残品もある。デンマークの労働市場では弱い立場の
個人が社会から取り残されることがあり、病欠が正に生産的な労働形態から休息をとる方法のよ
うに見える。
5.結論
フレクシキュリティー(flexicurity)パラダイムの中で幾つかの疑問を提起し明確にしておく
必要がある。新たな結びつきの中で政策立案者、議員、労使団体は、柔軟性と安定性という相容
れない目的を両立させるような新たな理論に触発された政策モデルと概念を必要とするのみなら
ず、また労働市場と雇用戦略の評価も必要であり、フレクシキュリティー(flexicurity)戦略のよ
うな政策は、最終的には経験によって立証できる問題であり、そこで経験的、願わくば学際間研
究(multidisciplinary research)に任せられなければならない。
柔軟性/安定性の組み合わせの政治経済学と、労使関係理論に対するその含意について詳細な分
析が必要である。このような研究は、労働市場の柔軟性と安定性の相関関係と両立に関するEU
と各国における議論に関して、その源泉、発展、重要な行為者とそれらのEUについての関心の
厳しい評価、および労働市場の柔軟性と安定性の相関関係と両立に関する各国の議論を含むもの
でなければならない。この背景にある主要な議論は、フレクシキュリティー(flexicurity)は伝統
的な社会政策もしくは雇用政策の代替物と考えられるべきではなく、既存の社会的保護制度の欠
陥を補うものであると考えるべきである。議論の核心は、より多い柔軟性は、より少くない安定
性を必要としているということである。
重要な問題は政治的な論議を実際の政策立案に移すことである。少なくとヨーロッパレベルで
はフレクシキュリティー(flexicurity)に関する政治的論議の収斂が見られるが、この概念の各国
の政策への実際的な実施となると様々に異なるかもしれない。柔軟性は様々な方法で(内的、外
的など)獲得できるし、安定性(雇用の安定、所得の安定)についてもそうである。それで政治
的議論はヨーロッパ全体で同じようになる傾向があるが、実際の国の政策立案となると異なる形
態を取り、そこで機能的な等値(equivalence)を調べることが重要である。
このことは、柔軟性と安定性の間の新しい乖離の経験に基づく研究、特に比較研究が必要であ
ることを意味している。これらの研究は、社会的パートナーが重要な役割を果たしていると仮定
して、現在果たしている役割、また変りつつある役割り、および果たす場所に特別の焦点を当て
るだけではなく、乖離の正確な影響についても正確に指摘すべきである。誰が得をし、誰が損を
するか。これらの疑問で、男女平等の側面を具体化するのは重要である。実際の労働市場の移動
性や移行に関する長期的な研究やデータセットは個々の労働者および使用者のために結果を精確
67
に描き出すために活用できよう。
労働市場の柔軟性と安定性の相互関係と両立に関するEUと各国における議論に関して、その
源泉、発展、主要な行為者およびそれらの利害について、特にEUの議論を中心にして調査する
ことが必要である。また個人に対して柔軟性と安定性の乖離が与える影響を識別し、社会的パー
トナーの役割りに焦点を当てることが重要である。問題は正しい均衡を達成するために、その条
件は、もしそれが存在するとして、何かということである。
以
68
上
DGB報告
“労働の柔軟化-労働組合の対応”
-ドイツにおいて柔軟化と社会的安定性を促進する新政策-
ドイツ労働総同盟(DGB)政策担当・執行委員
カローラ・パルニスケ=クンツ
Ⅰ.現状
ドイツにおいて2003年は、どのように成長を促進し雇用を拡大するかについて、また将来に向
けてグローバル化や人口動態的・社会的変化に照らしてドイツの経済社会制度をどのように改革
するかについて、多くの議論が交わされた年であった。
経済と労働市場は深い危機の中にある。ドイツの社会的市場経済は困難な挑戦に直面している。
高い失業率、成長の鈍化、増大する財政赤字、困難に喘ぐ社会保障制度は、経済社会政策分野の
改革を必然的なものにしている。
ドイツは現在でも1カ国が時代の試練に耐えうるに十分な資源を有している。ドイツでは十分
に訓練された何百万もの労働者が労働し生活している。しかし一方では、何百万人もの人々が労
働の世界への参加を妨げられている。昨年(2002年)、失業者数は再び400万人を超えた。2003年
末の失業率は11%という高さであった。
経済と労働市場の危機は「経済構造の跛行性(slip economic situation)」に起因する。合理化
され資本集約的な輸出産業は依然として成長を続けているが、一方、財とサービスに対する国内
需要は2000年後半以降減少してきた。国内市場中心の企業は、2年以上にも亘って販売は不振で、
個人消費は低迷してきた。企業の投資活動は不活発で、消費者は経済危機を見越して支出を渋っ
ている。
金融市場における急激な価格低落によって少なからず引き金を引かれた経済停滞は恒常化し、
企業にとっては益々構造的な問題になりつつある。徐々に、しかも絶え間なく低下している国内
需要は企業の利潤期待を小さくさせ、企業に生産能力の削減を予定させるに至っている。銀行の
企業への貸し渋りもあり、利潤の低下と損失の累積は企業に投資を逡巡させ、それによって企業
の革新能力を弱体化させている。
連邦政府および州政府の消極的な財政政策が原因で経済状況は悪化した。経済停滞の結果とし
て、また税制改革の構造的な失敗の結果として、公的部門の税財源は枯渇してしまった。失業の
増大が原因で危機のコストが爆発して以来、公的部門の財政赤字は急激に増大した。しかし、こ
の形の拡張的な財政政策は社会的移転の増大によるものであった。対照的に、経済安定化のため
の公共投資は縮小している。特に、地方自治体の財政赤字は極めて大きく、そのため地方自治体
は地域経済の需要創出者としての機能を益々失ってきている。
69
特に、再統合コスト(国内総生産の約4%が毎年西側から東側に移転されている)は依然とし
て高く、それが経済の実態と公的予算をカモフラージュしている。約800億ユーロ(約10兆円)に
も上る移転費用がないならば、西ドイツ側の各州の公的予算と社会保険は黒字を計上しているで
あろう。ドイツ経済は、その高い効率性と恒常的な生産性の向上のみによって、この特異な歴史
的任務を達成することができる。
「硬直的な労働市場という伝説」
このような状況の中で、改革が必要であるということについては社会全体のコンセンサスとな
っている。しかしドイツにおける改革論議は、柔軟性(flexibility)と安定性(security)を両立さ
せる必要性が高っているにも関わらず、それと矛盾してリスクを私的なものにし再分配の諸要素
を制限する方向に向かっている。
ドイツ政府は「アジェンダ2010–変化への勇気」というタイトルの下で、経済成長を促進し、長
期に亘って社会保障制度を守り、ドイツをビジネス拠点として強化するための総合的な計画を打
ち出した。
政府の計画は一連の措置を含んでいるが、それらは政府の言い方によれば「市民に対して自決
の拡大を求め、ドイツの創造的かつ経済的潜在能力を動員する」ことを中心的な目的としている。
社会福祉や失業給付は、社会制度の中で大幅に削減され再編成されることになる。失業者に何ら
かの方法で雇用を見出して労働の世界に統合しようとする諸措置が今後加速化されるであろう。
解雇法の改正が目標とされるであろう。
経済社会政策上での改革に関する議論の中には、ドイツ経済の諸問題は労働市場の過剰な規制
と社会保障制度における柔軟性のない構造に起因する、という偏った見解が見られる。
経済団体や政党の強硬論者は、労働者の権利を削減するために「硬直的な労働市場」という伝
説を何年にもわたって使ってきた。これらの人々は、特に解雇からの保護、経営協議会(works
council)、「労働のための職場同盟(shop-floor alliances for work)」といった議論に関して、
労働組合を攻撃することによって、社会的市場経済の土台そのものを組織的に破壊しようとして
きた。
ドイツは労働市場に関する新しい制度的枠組み(constitution)を必要としない。
「硬直的な労働
市場」というアプローチは経験的に否定されてきた。ドイツ経済は雇用を生み出すために、柔軟
化選択肢の多面的な措置(multi-faceted instruments of flexibilization options)を活用する
ことができる。シュレーダー首相が正しくも語ったように、労働市場を開放するために社民党・
緑の党連立政権が既に行った改革の効果が、かつてなく新しい「改革提案」なるものによって中
味が薄められてはならない。解雇からの保護に関する改正についての議論は、端的に言って逆効
果を生み出してきた。このような議論がなければ前面に現れることもないいわゆる「心理的採用
障害」なるものがたとえ取り除かれたとしても、新鮮な雇用への衝動を期待できるものではない。
70
このことは社会的選択に対して計画されている修正に益々よく当てはまる。
ミニ・ジョッブの導入に関する新しいルールや請負労働に関する基本的な改正は、工場および
企業において更に柔軟化を進める機会を与える道を開いた。このような背景の中で、新たな「労
働市場の制度的枠組み(constitution)」を求める要求は、経済特区や官僚的規制の緩和を口実に
した婉曲的な言い方にしか過ぎない。規制緩和に関して連邦政府が計画している改革は成長と雇
用を促進する上で適切な方法である。しかし規制緩和は労働者の物質的な権利に否定的に干渉し、
それを覆い隠すものとして乱用されてはならない。
経済は縛り付けられるものではない。反対に、1998年から2000年の成長局面は、1997年と比べ
て170万人の雇用の増加を伴い、実質2%以上の国内総生産(GDP)の着実な成長が可能である
ことを示している。このようにドイツ経済の悪い状況は構造的な問題に矮小化することはできな
く、主として財とサービスの需要の減少によって説明できる。
ドイツ経済は世界で最も強力な国民経済の一つである。現在の世界の経済的枠組み条件の中で
ドイツの輸出貿易が持つ力は、ドイツ経済の効率性を示している。国際競争力の欠如などとは問
題外である。
Ⅱ.
労働における柔軟化
-
DGBの改革提案
経済社会政策に関するDGBの改革アジェンダは、経済・財政政策の変更を中心にしている。
その考え方は、成長と雇用における危機を被保険者や年金受給者を犠牲にする社会政策により克
服しようとしている連邦政府の対応に対抗しようとするものである。DGBの考え方は、また、
福祉国家を実質的に破壊しようとしている一部経営者の政治的に狂信的な考え方にも対応しよう
とするものである。DGBの経済社会政策アジェンダは、社会的費用の削減競争は成長と雇用の
危機を悪化させるだけである、ということを明確にしている。広範に亘る諸問題を社会福祉の削
減で解決できるものではない。従ってドイツは変化への勇気を必要としている。
それでも、経済と労働市場の動向は、水準維持措置(level saving measures)の不十分さを示し
ている。雇用危機は実質成長率が生産性の向上を上回る時にのみ統御できる。社会民主党・緑の
党連立政権のアジェンダ2010で計画されているような、企業の偏った救済と消費者の財政的負担
を基本とする改革は、ドイツにとり危機から脱出する道とはならない。ドイツは、経済と労働市
場を再び前進させるように明確に設計された改革を必要としている。企業および消費者双方から
失われた信頼を回復できるのは、経済政策が企業と家計の将来設計に向けて信頼できる安定した
枠組み条件を最終的に打ち立てる場合にのみである。基本的に2つの中心的な改革が必要である。
・
ドイツの経済は、現在、経済財政政策の大きな再方向付けを必要としている。成長と雇用
を目的とする政策は、危機の時代には、投資と革新、さらに需要の大幅な増大に強力な刺
激を与えるものでなければならない。このことは経済情勢と危機の両方を扱っているEU
の安定化基準への適応を緊急に必要とする。更に、公正で雇用指向の税配分は、適切で、
71
かつ現在よりも高い水準の将来の投資を確実なものにする余裕を与えるであろう。
・
成長と雇用のための政策は、経済発展を阻害することなく社会保障拠出金を削減すること
にも役立たなければならない。必要なことは、税収入から段々と社会保障制度に資金手当
てを行うことによって、低所得層と平均所得層と同様に、労働集約的企業を徐々に救済す
る方向に再方向付けを行うことである。社会保険は、社会保障拠出金における削減(現在
平均8.5%が意図されている)が、失業、疾病、老齢のような生活の危機の負担を労働者に
負わせないような方法で改められなければならない。より高い効率性、より強い競争力、
より高い公平性へ導く税制の改革は、今日の不安定な経済と労働の世界のために緊急に必
要な信頼を再び打ち立てる。
雇用の拡大と訓練の強化のための改革
社会制度の安定化のために決定的に必要なものは、人口動向、労働市場データ、賃金/俸給水
準のみでなく個人暦の開発と変革である。
戦略として、青年の雇用機会の改善と高齢者と女性の雇用量の拡大を目標にしなければならな
い。この件は現在の予算措置論議で考察されていない今後訂正を要する問題である。現在の年金
受給平均年齢は60.2才である。ドイツでは50%の企業のみが50歳以上の労働者を抱えている。
現在の計画では、連邦政府は高齢者に間違った道しるべを与えている。52歳以上の者に対して
もっと柔軟な時間制限を定めることは雇用を創出しない。解雇に対する保障で意図されている変
更は、高齢者の解雇を容易にし、高齢者の排除を促進する。46歳以上の労働者を対象にした失業
給付金支払期間の短縮、失業救済の公的扶助水準までの削減、また医療介護の一部民営化は、貧
困を引き起こす危険性が高い。移行措置でこれを防ぐことはできない。年金算定方式の修正を通
じての年金水準の削減と組み合わされた連邦政府の計画は、現在の高齢者には直接の影響を与え
ないであろうが、中長期的には社会のほとんどの人々に影響を与えるであろう。こういう提案は
社会的に正当化できるものではなく、それらの経済的帰結は社会保険制度に劇的な影響を与える
ことになろう。
DGBはこのようなコースを拒否する。雇用暦の向上と延長は法定年金保険を効率的に救済す
るための土台とならなければならない。企業に対して、十分な訓練場所を提供するように、また
高齢者を再雇用する機会を増やすように、という厳しい要請だけでは効果がないことが判明して
いる。
DGBは雇用、訓練、資格授与に向けて目標を設定した攻勢を提案する。目標は青年の雇用機
会の改善と高齢者と女性の統合の促進である。
雇用と資格へのイニシアティブ
高齢者の能力をより良く、かつより長く活用するために、かくして人口動向の影響を緩和する
72
ために、DGBは雇用、教育、技能開発のためのイニシアティブを提案している。職場段階の交
渉、かつ年齢を特定した年齢指向の技能開発の再方向付け、労働時間計画、ならびに職場におけ
る安全衛生を、先ず最初に中小企業から育成していくことが必要である。
・
企業が高齢者に対して職場で再訓練計画を提供するときには、企業に資金的な援助が与え
られる。今や企業はこの資金援助を申し出、適切な訓練モデルを提供しなければならない。
労働者の技能向上にもっと投資すると宣言した企業は、適切な行動に移らなければならな
い。高度技能労働者は柔軟な方法で配置でき、そのため高い比率で失業から保護されてい
る。しかし企業側の宣言と行動は、バーデン-ヴュルトテンブルグの金属産業で技能開発に
関する団体協約に置き換えられたときに遭遇した困難に示されているように、しばしばか
け離れたもになってしまう。その協約は、変化への適応性を高めるために訓練への可能性
とそれへの参加を改善することに焦点を当てている。すべての労働者は、育児休暇中の労
働者を含めて、資格取得の必要性を話し合う資格がある。訓練に費やされた時間は所定労
働時間として支払いの対象になる。焦点は高齢労働者に置かれており、また低技能労働者
を対象にした特別訓練計画が経営者および経営協議会メンバーによって設けられることに
なっている。少なくとも5年間企業で働いた労働者は、3年までの定期的な休暇を取り、
その期間を個人の職能関連開発のために活用する権利を持つ。
・
DGBは、高齢労働者を解雇する場合に対して経営者の失業給付金補償義務を促進するよ
う提案する。オーストリアの慣行に従って、企業の動機による解雇が結果として失業とな
る場合には、企業はある種の労働市場拠出金を支払うことができる。この拠出金は、企業
が失業を防ぐために移行措置を実施した場合には打ち切られる。DGBは収入とは無関係
の労働市場拠出金の活用を提案する。この方法は、企業の高齢労働者に対する再訓練と移
行措置に資金を提供するために、また高齢失業者の雇用に対する賃金コスト補助金を賄う
ために利用されるであろう。
・
DGBは、更なる訓練が提供される場合の質の確実性と透明性が大幅に改善されることを
要求する。これには男女間の平等の実施、全国的に居住地域近辺でのコンサルティングの
実施、ならびに公式・非公式の学習への基準およびその証明が含まれる。連邦枠組み法と、
連邦職業訓練法に沿った職業再訓練のための連邦法の制定が必要である。
・ 連邦職業訓練法(BbiG)の改正
良い雇用機会が得られるかどうかは、良い職業訓練が得られるかどうかに依存する。年齢、
人種、障害に関係なく平等な機会の提供を促進することは、将来全産業にまたがる任務と
考えられる。連邦職業訓練法(BbiG)の改正が予定されているが、その中では訓練に関
する法的枠組みが規定されなければならないし、基本的な職業訓練のための現代的な基盤
が打ち立てられ、法的規定の妥当性の範囲が広げられなければならない。
73
・
働く女性の数が増えるようにするために女性の雇用機会のためのより良い枠組み条件が整
備される必要である。これには、家庭生活と有償雇用との両立が達成できるように一日育
児、保育園、学校での終日育児などが全国的に提供されることが含まれる。
連邦労働省の組織的な改革
労働市場政策の予算措置は、責任に関連して行われなければならない。従ってハルツ委員会
(Hartz Commission)の報告を実施する過程で開始された効率性改革を進めるために、税を基礎に
社会における全般的な任務にどう予算措置を行うかを再方向付けなければならない。
失業救済と公的扶助の再設計に当たっては、いかなる場合でも失業者が公的扶助を必要とする
ような結果に陥らせてはならない。改革は、絶対必要なサービスの提供と組み合わせた総合的に
支えとなる措置を提供することに中心を置かなければならない。DGBは給付金の全体的な削減、
失業救済の廃止を断固として拒否する。DGBはまた、既に厳重になっている12ヶ月後の妥当性
基準の実質的な廃止を、それが廃止されると全般的な技能水準を大きく低下させるので、拒否す
る。
DGBは連邦労働省(Federal Labor Office)の再編成を支持する。連邦労働省の組織的機構は、
雇用問題が第一義的な任務であり、かつ需給が直接合致するような方法で最適化されなければな
らない。
・
雇用局(Employment Office)は、失業者が雇用を探す上で目的に適った支援を得られるよう
な現代的な職業センター(job center)に転換されなければならない。職業センターは失業
給付を授与するというよりもむしろ、求職中の個々人に目的にかなった支援を提供するこ
とに中心を置かなければならない。職業センターは雇用のアレンジに加えて、とりわけ麻
薬常習者や負債を抱える者に対するカウンセリングのような支援も提供しなければならな
い。
・
更に、ハルツ委員会は報告の中で、育児中の失業者に対して現在与えられている育児手当
は、雇用もしくは統合スキームのどちらかに入る道への障害を克服するには不十分である
と述べている。育児施設の提供は雇用局の任務というよりも、税金によって資金の提供が
行われるべき民間の責任である。それでも雇用局は家庭生活と有償雇用を両立させる勤労
女性の数を増やすことに貢献できる。
・
このことは育児施設を探す上で、また各所の育児施設の開所時間や利用資格を調整する上
で支援を必要とする。更に雇用局は、雇用創出インフラ開発、育児一括払い(child-care
lump sums)、雇用創出計画資金、さらに自治体の協力で両親からの拠出金のような資金を
得て、育児施設の設立に貢献することができる。
・
子供の育児施設を探している女性が現代的な職業センターで拒否されることがあってはな
74
らない。DGBは、公的扶助を受けている独身家庭が働けるようにするためにこの要件を
実施しようとしている自治体の財政構造委員会の意図を高く評価する。しかし、この点に
関する合意は働く能力のあるすべての失業中の親に対して実施されなければならない。
・
長期失業は、低技能者や特に経済的に開発が遅れている地域の問題の入り組んだ
(problematic)グループが更に支援される場合にのみ、削減することができる。費用対効果
の側面にのみ優先順位を与える純粋に企業指向労働市場政策は構造的な失業の問題を増幅
させるだけである。特に問題の入り組んだ地域における公的な雇用の促進は、問題の入り
組んだグループの雇用能力の維持を目的に安定化されなければならない。
労働市場の柔軟性
経済的に困難な時代には、効率的な雇用戦略は新しい形態の労働時間の柔軟性から出発しなけ
ればならない。将来を見越した人事計画は、一時解雇もなく経済的ボトルネックを克服し、技能
不足を均衡化し、家庭生活と有償雇用を両立させ、かくして生産性を向上させる方向で労働を再
分配することができる。これには適切な枠組み条件が必要である。
労働時間の柔軟性
・ 労働時間勘定(working time accounts)に見合った支払いを保護する法的規定が必要である。
信頼できる労働時間に見合った支払いのみが魅力があり、労働者に柔軟な労働時間形態を
受入れ易くする。雇用の展望からも超過労働時間数を削減していくために、柔軟な労働時
間は今後益々活用されなければならない。
・
法的制限による超過労働時間の削減は緊急な問題である。団体協約当事者はこの意味で大
きな役割りを果たしてきたが、それらの努力はそれに対応する法的規定の中に具体化され
なければならない。
・
DGBが見るところ、現代の柔軟な労働時間形態は、女性のみでなく男性にも適切なパー
トタイム制度を促進することによって、また団体協約に基づいて労働時間モデルを更に発
展させることによって、今後活用するに値する大きな雇用潜在能力を持つ。DGBは、経
済的に困難な時代においてでも雇用を守るために、革新的な労働時間制度に対する優遇税
制を要求する。
革新的な団体交渉政策による成長と雇用
自由な交渉と共同決定を忠実に守ろうとするシュレーダー首相の姿勢は、未来志向の社会的市
場経済モデルのための重要なメッセージである。団体交渉における柔軟性は、時代の要請であり、
当たり前のことと考えられている。団体交渉における柔軟性は現に生きており、労働組合によっ
て更に進められている。100にもおよぶ産業分野において、1,300万人もの労働者と経営者はこの
ような例外的なルールを合意することができるようになった。しかし労働組合は、使用者と交渉
される団体協約に関して特定の条件の下での制御された柔軟化を望む。
75
いわゆる「労働のための企業同盟(corporate alliances for work) 」という考え方が、多くの
使用者代表によって広められ、ほとんどすべての政党で様々な流れとなって漂っているが、この
考えは労働者を使用者に対する請願者の地位に低めてしまう。端的に言って、もし労働組合とそ
の前線部隊としての産業別組織の積極的な関与もなく既存の団体協約から乖離するような取り決
めが行われるならば、そういうケースになるであろう。
正にその理由で、自由な団体交渉が、最低条件と優遇条項を決定するために優先的に確保され
なければならない。団体協約は賃金、労働条件、労使平和を保障するからである。加えて、企業
の競争を製品やサービスの質、ならびに企業の革新力に中心を置くことによって、団体協約は構
造的な機能を果たす。この原則は、企業が低賃金や社会的給付の削減でお互いに競争する必要が
なくなることを保障する。ここにドイツ企業の高い生産性と国際競争力の決定的な理由が存在す
る。
団体協約は、経済停滞局面で賃金・俸給が低水準に押さえ込まれるのを防止することによって、
経済の全体的な需要を安定化させる。回復局面では団体協約を経済の全般的な効率性とインフレ
目標値の方向に方向付けることによって、賃金はインフレ危機の原因にはならない。この理に適
った原則は社会的市場経済の核心として存続させなければならない。
・
危機の時代に雇用を守るために、制御された柔軟化が未だ団体協約の選択肢になっていな
い産業部門での団体交渉のために労働組合は使用者とともに規制を検討する。この規制の
範囲は、必ず団体協約の中で設けられるべきであり、法律など団体協約外で設けられては
ならない。ドイツの機構の中でしっかりと定着している自由な団体交渉は必ず維持されな
ければならない。
・
企業の競争力は労働者の高い技能水準によってのみ保障され、良好な訓練は良好な雇用を
保障する。従って、労働組合は将来の団体交渉において、訓練および再訓練を今後益々団
体協約の交渉事項にしていくことになろう。
・ 例えば2002年の交渉ラウンドで、金属産業労組(IG Metall)はDGBも支持して、賃金設定
で工場レベルをもっと強く考慮に入れるよう提案を行った。そうする上で、労使の団体に
よって合意される交渉額の一部は、賃金引き上げ、再訓練、使用者の取り分、労働時間の
短縮などと同じく、団体協約に基づいてそれらとは別に柔軟化に関して合意された事項に
資金充当を行うことに活用できる。統一サービス産業労組(Verdi)と銀行業との協定は、年
間所得の一部分は企業業績と労働者の年間成果に結びつけることができることを示してい
る。また化学産業で合意されたように、長期失業者であった労働者の復帰レベル高めるこ
とも、団体協約のレパートリーに属する。
・ 高度な時間管理の自律性(time autonomy)は、時間集約プロジェクト労働の拡大と補償面と
早期退職に対する労働者のニーズとの間にバランスを与えている。従って、今後労働組合
76
は長期の労働時間計算について使用者側ともっと交渉することを望む。数ヶ月もしくは数
年にまたがるこのような労働時間信用供与は、企業の支払い能力不足による損失から、特
にこの点での交渉において、法律によって保護されなければならない。
・
最後に、工場と企業における共同決定は、これらの多くの点で強化されなければならない。
労働組合がもし自らの交渉方針を企業の利益にもっと向けていこうとしているならば、も
っと高度の共同決定が益々必要である。
・
経営協議会の協議権は、有期契約、臨時雇用、請負労働の場合には、更にもっと「非典型」
の雇用形態への延長が想定されるゆえに、高められなければならない。
法定限度以下の企業規模のゆえに、多くの企業で意義のある労働者の関与が妨げられてい
る。将来の法律改正で考慮の対象となる企業は、益々規模の小さい企業となっていくであ
ろう。
将来の産業や科学を基盤とする社会では、労働者による経営過程や決定への直接的な関与
もなく安泰でいられる企業は考えられない。企業の成功や資産においても、多面的な形態
の労働者の参加を更に拡大し、このような関与を適切な法規や税制によって容易なものに
していくことが必要である。
Ⅲ.
労働の革新的な発展
近年、
「柔軟性」が労働の将来に関する政治的な議論や学界における議論でキーワードの一つに
なってきた。ドイツ、また他のヨーロッパ諸国においても雇用と労働組織における柔軟化が拡大
する動向が見られた。
労働形態が多様化し不規則になるに従って、労働者にとり労働生活は益々複雑になってきた。
学校から労働への移行を含めて、職能と労働の地位の間、労働と訓練の間、またキャリア中断と
育児期間の間や労働生活と退職の間など、数多くの移行過程がスムーズに管理される必要がある。
全国的に差異化された労働形態が拡大し、非標準的でない労働力の割合が拡大する傾向がある。
すべての先進国と同様に、ドイツは産業社会から情報・サービス社会への移行による経済的社
会的構造の根本的な変化を経験している。
21世紀の動向は生産、サービス、情報のシナジー(synergy)を特徴とする。そこでは、前世紀に
打ち立てられた機構や労働条件とほとんど共通性を持たない新しい形態の人間の労働を必要とす
る。
将来の労働の世界は、これまでよりももっと個人、その技能と知識、創造性と動機、雇用行動
77
が中心になるであろう。人的資源が経済的成功およびビジネス世界と社会の革新の最も重要な源
泉となるであろう。その結果、資格と雇用可能性の維持を要求されるのは労働者だけではない。
労働者は自ら努力する上で企業や労働組合、また適切な枠組み条件や前提を確実なものにする政
策によって支援されなければならない。
ビジネスの成功、人間を向いた労働条件、雇用の開発との間に、ならびに急激に変化する労働
の世界における方向付けや発展の手段を労働者に与える個々の方式や対応戦略との間に新たな均
衡を作り出す必要性がある。
革新について包括的な定義が必要である。物理的/物質的財の生産に強力に結び付けられた革
新に対する、時が証明した慣行、原則および戦略は、これらの変化で想定される挑戦に対応して
いくには不十分である。
人的資源の開発と活用は、企業の成功のための決定的な要素となるであろう。行動し革新する
企業の能力はその労働者の技能と潜在力によって大きく決定される。
個人の技能の向上と開発は、革新を成功させ、新製品、新工程、新技術を成功させる構造的な
前提である。継続性の点では、革新はそれが社会的、経済的、人間的、技術的かつ環境的な側面
を具現化するならば、
「労働生活の人間化」にも良く現れているように、もっとも成功を収めるで
あろう。
労働者の能力、創造性、動機は企業の革新と変革の能力の源泉である。言葉を換えれば、人的
資源が革新のための最も重要な要素である。その結果、個人の雇用可能性と開発の選択肢が、能
力を開発することによって、また学習と健康を促進するような方法で労働と生活状況を形作るこ
とによって、高められなければならない。
最後に、人間の労働と安定性への必要性を損なわずに柔軟性を拡大することが必要である。そ
こでドイツの労働組合は、新しい「柔軟性」の概念について議論している。この概念は、柔軟な
労働市場と労働歴ならびに生活スタイルの複数化に向かう傾向から引き起こされた挑戦を扱おう
とするものである。それはまた全面的な規制緩和の代替的な政策として、柔軟性と安定性の両立
に焦点を当てようとするものである。
以
78
上
NFS報告
労働の柔軟化―労働組合の対応
北欧労組協議会(NFS)
トム・サクセン事務局長
柔軟性、労働市場の構造と失業
労働生活における危険や危害から労働者を保護するための努力が、労働市場の硬直性を引き起
こすとしばしば言われる。同様に、連帯に基づく賃金政策、解雇からの保護、ならびに失業給付、
労働組合への労働者の組織化は労働者の地位を改善することを目的としているにも関わらず、こ
れらも別の結果をもたらすものだという議論がある。労働市場の硬直性は、結果として、持続的
な高い失業に導くともしばしば議論される。事実は失業は人々を2つのグループ、すなわち裕福
な被用者と貧困な失業者とに分断するということである。さらにこの不公平な分断には雇用関係
の「柔軟化」により対処できるとも議論されている。
アメリカは柔軟な労働市場モデルの典型的な例である。それは極めて低い失業率に導いてきた
過去10年間の積極的な雇用の拡大により実証されている。一方で、アメリカモデルでは、雇用の
拡大は実質所得の低下と所得格差の拡大によるものであるという批判もある。これが、賃金があ
まりにも低くて生活に十分な賃金を得ていないという労働者を意味する「ワーキング・プア
(working poor)」として知られる現象を生み出した。所得格差の拡大は犯罪の増大と囚人の数の
増加をもたらした。
さらに、個々の労働者と使用者の間での個別交渉(Local Bargaining)は全国的なレベルで硬
直的な賃金構造に導く可能性があるので、柔軟性全体の概念を疑問視するに十分な根拠がある。
それは、個別交渉だけに基づく制度では、賃金を改定する唯一の方法は一人一人の個別の賃金契
約による改定しかないという事実によるものである。それゆえ、この制度は改定が企業の収益性
の変化や経済変動によって特に必要とされる状況に限ってのみに限定され、それ以外の方法を含
まない。そこで、1企業内での賃金をめぐる恒常的な争いは、長期の契約を締結することによっ
てのみ回避できる。事実そうであるように、労使のどちらかが自の交渉上の立場が強化されたと
認識する場合においても、労使双方とも労働条件の安定に依存することができる点で長期契約は
双方に恩恵を与える。
これは、また、アメリカで締結される契約は欧州で締結される契約よりも平均して長いという
事実を説明している。長期の契約を結ぶことによって、使用者も被用者も一方からの一方的な措
置から自を守ろうとする。欧州では、一般的に言って、契約は全般的な経済状況や産業部門の変
化によってのみ改定されるという労働市場における合意があるので、短い契約が交わされる。個
別での交渉当事者のどちらかの交渉上の立場が変化した場合ではない(Vartiainen 200,p24)。
79
このことは全国レベルの協定は個別の協定よりもはるかに柔軟であることを示している。賃金
や給与は集権的な方法で改定され、個々の賃金契約を再交渉する必要はない。アメリカは賃金構
造の柔軟な改定のためのメカニズムを欠いている。これがアメリカにおける国際的に高い名目賃
金の硬直性を言い表している。一方、長期的な賃金協定は契約当事者のどちらにも起因しない経
済的な変動があったときでも改定を不可能にするので、その点でも注目する必要がある。別の言
い方をすれば、アメリカの労働市場は雇用関係を即刻に打ち切ることで経済的変動に適応させる
傾向があるので、欧州の労働市場よりももっと硬直的である。
次に、労働市場の過度の硬直性が失業を引き起こすと主張する基本的な議論、ならびにこの問
題ですべての経済専門家が合意している議論について検討する。
失業給付
失業給付は求職中の失業者の生計を保障するために設けられた。高い水準の給付は失業者に求
職への意欲を減退させるという人もいる。最も単純化された解釈によると、もし純賃金が失業給
付と他の社会給付の合計を超えないのであれば、失業者は職を見つけようとはしないというもの
である。
しかし、失業者の求職努力に対する給付水準の影響はそれほど単純ではない。先ず第1に、い
くつかの調査研究が示しているように、失業は個人の精神的な健康にマイナスの影響を与える。
労働は個人に社会的名声を与え、また個人が様々な社会契約を維持することを可能にする。
第2に、賃金水準と失業給付水準を単純に比較するだけでは十分ではない。雇用関係が継続し
ているときは、所得は通常、年功と勤続経験一時金により増加する。更に雇用に就けば、キャリ
ア形成とそれによる将来のさらに高い所得と年金への機会が開ける。これが雇用関係が失業給付
で生活することと決定的に違う理由である。新しい雇用関係は常に将来のより高い所得の可能性
を含むが、失業中であり続ける限り将来もまた低い所得であり続けることを意味する。そこで鍵
となる問題は次のことである。すなわち、どれくらいの失業者が周辺的な地位に位置し、長期の
経済的な結果を考慮しなくなる程に失業生活に慣れてしまうか、ということである。
3番目に、長期失業は使用者に求職者に対する否定的なイメージを与えるということに留意し
なければならない。もし恒常的に失業状態でいたくないと思うのであれば、解雇されて出来るだ
け早く新しい職に就くべきである。これが、所得関連給付(earning-related benefit)を受けてい
る者が、平均すると、ベイシックな失業手当てを受けている者よりも迅速に再雇用される理由で
ある。
高失業と労働組合の交渉力との間の関係が、給付が失業を増加させる傾向があるという意見を
正当化するためにしばしば利用される議論である。その議論によると、失業給付は失業者の苦境
を和らげるが、そのために就労者も失業者も失業をもはや深刻な問題と捉えず、失業を防ぐため
に賃金を抑制しなければならない必要性を失わせるのだという。更にこの議論によると、これが
80
労働組合の交渉力が、高い失業率の期間においても高く留まる理由であるという。この議論に対
して、数が減少している労働者で失業と社会的コストの増大をカバーしなければならないときに、
雇用されている者は増税の形で失業の増加のコストの負担を強いられることになると反論するこ
ともできる。
余剰な求職者の活動に対する失業給付の影響は一般的に定かではないので、統計的な調査によ
って失業給付の雇用への影響についてもっと情報を入手する必要がある。この関係で、給付の金
銭的価値(平均有償所得との関連で)と給付期間は不可欠な構造的要素である。給付期間の長さ
は、失業者が新しい雇用機会との関係でいかに選別的になるかについて影響を与える可能性があ
る。
次に、いくつかのOECD諸国の失業給付水準とその期間をそれらの国の失業率と比較する。
給付の水準
図表1は、OECD20カ国の失業率と失業給付補償率(平均失業給付と平均賃金の関係)を示
している。図表は補償率と失業率の間には決まって関連がないことを示している。高い補償率を
有する国でも、高い失業率の国(スペイン)もあれば、反対に、失業率の低い国もある(スウェ
ーデンとスイス)。
図表1
失業給付補償率と失業
本
フ ギー
ィン
ラ
ン
ド
ドイ
ポ
ル ツ
トガ
ノル ル
ウ
ェ
ー
ス
イ
オ ス
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ン
ス ダ
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ス
ウ イン
ェ
ー
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ン
マ
ー
ク
日
ル
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イ
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ジ
ア
ー
オ
ラ
ー
ン
ス
ド
トラ
ア
リ
イ
ア
ル
ラ
ン
イ ド
ギ
リ
ス
ア
メ
オ
リ
ー
カ
ス
トリ
ア
フ
ラ
ン
ス
カ
ナ
ダ
ニ
ュ
率
失業率
失 業
失業給付補償率
デンマーク
0
スウェーデン
0
スペイン
2
オランダ
10
スイス
4
ノルウェー
20
ポルトガル
6
ドイツ
30
フィンランド
8
ベルギー
10
40
日本
50
カナダ
12
フランス
60
オーストリア
14
アメリカ
70
イギリス
16
アイルランド
80
オーストラリア
18
ニュージーランド
90
イタリア
20
失業給付補償率
100
1989-94
失業給付期間の長さ
給付水準の場合と違って、失業給付期間の長さと失業の増大ないしは持続との間には明らかに
正の相関関係が見られる。しかし、ニケル(Nickell, 1997 p.67)が指摘するように、因果関係
81
は逆かもしれない。失業給付の金銭的価値と給付期間は、多くの人々の基本的な生活を守ること
が必要なために、失業の悪化とともに引き上げられるかもしれない。図表2はOECD20カ国の
失業率と失業給付期間を示している。図表は、長期の給付期間と高い失業率との間にはわずかな
相関関係があることを示している。一方で、いくつかの国(オーストリアと(西)ドイツ)では、
失業給付期間が長いにもかかわらず、失業率は低い。
図表2
失業給付期間と失業
4.5
20
4
18
3.5
16
12
2.5
10
2
8
1.5
6
日
本
ア
メ
リ
ポ
ル カ
トガ
ル
カ
ナ
ダ
ス
ス
ウ イス
ェ
ー
デ
ノ
ル ン
ニ
ュ
ウ
ー
ェ
ー
ジ
ー
ラ
ン
フ
ィン ド
ラ
デ ンド
ン
マ
ー
ク
フ
ラ
ン
ス ス
ペ
オ
イ
ー
ン
ス
トラ
リ
ベ ア
ル
ギ
ア
ー
イ
ル
ラ
ン
イ ド
ギ
オ
リ
ス
ー
ス
トリ
ア
ニ
ュ
ー ドイ
ジ
ツ
ー
ラ
ン
ド
タ
リ
ア
失業給付期間
失業率
ニュージーランド
ドイツ
オーストリア
イギリス
アイルランド
ベルギー
オーストラリア
スペイン
フランス
デンマーク
フィンランド
オランダ
ノルウェー
スウェーデン
スイス
0
カナダ
0
ポルトガル
2
アメリカ
0.5
日本
4
イタリア
1
イ
失 業 率
失業給付期間
14
3
1989-94
幾人かの研究者(例えばNickell, 1977)は研究成果として、給付(とくに長期の)と失業には
正の相関関係があると指摘している。しかし、ニケル(Nickell, 1997 p.67)は、少なくともこ
の正の相関関係の一部は、より良い失業保障は労働供給を増加させる傾向がある、すなわち新規
の労働力がより良い失業保障に惹きつけられて労働市場に参入してくるという事実によるもので
あると指摘している。この労働力の増加は、給付の資格を得るためには求職者としての登録が必
要であるので、求職者として直接に登録される。ニケル(Nickell, 1997)は失業給付の水準や期
間は、全労働力人口の中で現に雇用されている労働者の相対的な比率に大きな影響を与えていな
いことを実証した。別の言い方をすれば、良い失業保障は雇用者数を減少させることはないが、
その代わりに労働力の外にいる人々を失業中の求職者として登録させるように惹き付けるかもし
れないということである。
解雇からの労働者の保護
解雇からの厳しい保護は、多分、雇用と失業に正と負の両方の影響を与える。ホルデン(Holden,
1966)は、解雇からの労働者の保護は、使用者に生産性の低い労働者を直ちに取り除く方向に向
かわせるのではなく、訓練その他により労働者の生産性を向上させる方向に向かわせると指摘し
ている。一方で、使用者は間違った選択をすることを恐れ、また質の悪い労働者でも解雇するこ
82
とは困難でコストがかかるので、厳しい保護は新規採用を妨げるかもしれない。
しかし解雇からの保護は、労働者の訓練を促進するのに役に立つ。訓練は投資とみなされ、最
初はコストがかかるかもしれないが、長い目でみれば成果をもたらすものである。もし使用者が
収益性のいかなる変動、しかも短期的な収益性の結果としても労働者に容易に、かつ直ちに解雇
を通告できるとするならば、訓練投資の恩恵は不確実なものとなり、労働者は自発的に教育に向
かおうとはしなくなるであろう。もし、解雇に関する規制が直裁な解雇を防止するのであれば、
使用者は一時的な利益の減少という形で労働者の訓練コストを負担する責任を果たすようになる。
解雇からの保護は、労働者にとっては何らの根拠も持たない解雇から保護される保険の一種であ
る。同時に、解雇からの保護は労働者に更なる訓練を促す。全般的な経済的観点から見れば、解
雇からの保護は訓練と技術の全般的な水準を向上させることになるので、極めて有益である。
企業の投資に関して、解雇からの保護は、もちそん雇用についてマイナスの影響を与えるかも
しれない。たとえば、企業のリスクへの投資を阻害するかもしれない。リスクへの投資がなくな
ると、企業はそのために採用する労働力を必要としなくなり、従って複雑で困難な解雇過程は、
この理由により、事前の投資を妨げるかもしれない。
市場が落ちこんでいるときには、解雇だけでなく労働時間の短縮と一時解雇によって労働力需
要の減少に対応することも可能である。このような調整の利点は、労働者は景気後退が過ぎるま
で雇用を保持でき、企業の場合は後から新規の労働者を採用し訓練を施さなければならない費用
を回避することができることである。エイブラハムとハウスマン(Abraham and Houseman, 1992)
は、ベルギー、フランス、ドイツにおける1973年から1990年までの生産の変化に、従業員数と労
働時間がどのように作用してきたかという調査を行い、そのうえで、それらの数字をアメリカの
対応する数字と比較した。市場が落ち込んでいるときには、ヨーロッパと比較してアメリカは直
裁かつ大規模な解雇に訴える。しかし、労働時間に関しては両者は似たような動向を示した。こ
れが、解雇からの保護が必要な時に労働力の調整を行うのを企業に妨げないで実際上どのように
雇用関係を維持している方法であり、つまり企業は解雇ではなく労働時間を削減することによっ
てのみ調整を行っている。労働時間の調整は、所得分配の観点から見ても、より平等でもある。
失業は(格差が所得移転によって防止されない限り)所得格差を拡大する傾向があるからである。
一方で労働時間数の削減は、全労働者間により均等に調整コストを分割する。
厳しい解雇からの保護の影響に関する理論的な議論はお互いに相容れない場合が多く、そこで
経験的な調査によって問題を明らかにすることが賢明である。図表3は失業と解雇からの保護の
相関関係を表している。2つの関係には明白な相関関係はない。けれども興味深いことに、スペ
インを除けば、解雇規制が極めて厳しい5つの国は極めて緩やかな5つの国よりも平均の失業率
は低くなっている。
83
図表3
解雇からの保護と失業
25
20
日
本
ラ
ン
フ
ィン ダ
ラ
ノル ンド
ウ
ア
ェ
ー
イ
ル
ス ラン
ウ
ェ ド
ー
デ
ン
フ
ラ
ン
ス
ド
オ
イ
ー
ツ
ス
トリ
ベ ア
ル
ポ ギー
ル
トガ
ス ル
ペ
イ
ン
イ
タ
リ
ア
オ
ア
ー メリ
ジ
カ
ー
ラ
ン
ド
カ
オ
ナ
ー
ダ
ス
トラ
リ
デ
ン ア
マ
ー
ク
ス
イ
イ ス
ギ
リ
ス
ニ
ュ
解雇からの保護
失業率
イタリア
スペイン
ポルトガル
ベルギー
オーストリア
ドイツ
フランス
スウェーデン
アイルランド
ノルウェー
フィンランド
オランダ
日本
イギリス
スイス
デンマーク
オーストラリア
カナダ
ニュージーランド
アメリカ
0
率
5
業
10
失
解雇からの保護
15
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
1989-94
図 表 3 が 示 し て い る も の は 、 O E C D 雇 用 概 観 ( O E C D Employment Outlook, 1999,
pp45-132)で発表された解雇からの保護の労働市場に与える影響について包括的に調査した結論
と一致する。調査で使用されたOECD諸国における解雇からの保護に関する規制の現状についての
資料は現在でもすべて有効である。調査の最も本質的な結論は、解雇からの保護に関する規制は
全般的な失業の水準に何らの影響を与えていないということである。
交渉制度
次に、様々な国の賃金設定と賃金交渉制度がお互いに異なっている要素について検討する。更
に、統計的な比較に基づいて、高い失業は、一定の交渉制度に特徴的な諸要素と、更にそこから
制度そのものと、制度的に結び付けられうるという議論を支持する証拠が見出せるかどうかにつ
いて考察する。
様々な交渉制度間のもっともラフな分類は、おそらく交渉制度の集権化であり、言い換えれば、
賃金と労働条件について交渉する単位の数である。2つの極端な交渉制度は、個別交渉(Local
Bargaining : 個 々 の 労 働 者 と 使 用 者 が 賃 金 と 労 働 条 件 を 交 渉 す る ) と 集 権 化 さ れ た 交 渉
(centralized bargaining:労使頂上組織間の交渉で全産業部門を対象とする)である。それらの
中間の形態として産業別交渉の形態があり、産業別あるいは職能別に交渉が実施される。アメリ
カの労働市場は、分権化された交渉制度の典型であり、企業あるいは職場レベルで交渉が行われ
る。北欧諸国とオーストリアは、集権的な交渉制度の典型的な国である。産業別の交渉はドイツ
やフランスのようにいくつかの中央ヨーロッパの国々に共通する制度である。
しかしながら、団体交渉がもし実際上わずかな従業員と使用者しかカバーしないならば、それ
は意味あるものではない。それゆえ労働協約の適用範囲は、協約を分類するもう一つの要素であ
84
る。どのくらいの使用者と労働者が労働協約によってカバーされるか?デンマークとスウェーデ
ンでは、労働協約の適用範囲は主として労使の高い組織率を基盤にしているが、一方他のEU諸国
では労働協約の適用範囲は、協約の全般的な妥当性に関する法律を介して実現されている。イギ
リスでは労働協約は一般的に職場で締結され、一般的な妥当性という概念はそこには存在しない。
雇用その他の経済的影響の文脈のなかで、経済専門家は集権化と適用範囲に加えて(多分その
前に)、使用者間および労働者間双方の交渉の調整という3番目の要素を提起してきた。経済専門
家が交渉の調整という意味で言わんとしていることは、実際の交渉は部門別の労使団体間で分権
化された形で行われるとしても、労使の団体の双方が自分達の間で交渉の目的および具体化に関
して合意する水準についてである。たとえば、使用者団体は使用者団体間で賃金引き上げのため
の共同の上限について合意しておき、労働組合からの要求があっても、それより高い賃金引き上
げにはどの使用者団体も応じないという意味である。包括的で拘束力の強い調整が行なわれれば、
結果的には、集権化された交渉で達成された結果と同じような結果を生み出す。
労働経済学者はとくに雇用効果の観点から、調整がなく部門レベルで締結された労働協約を最
悪の選択肢とみなしている。調整のない産業別の交渉においては、個別交渉と集権化された交渉
の両方の利点を失わせることになる。企業レベルでの交渉では、賃金引き上げは直接に価格に転
嫁される場合があることを考慮しなければならず、それは同じ製品を生産している競争相手に顧
客を奪われるる可能性がでてくる。すべての部門をカバーする集権化された交渉では、高い賃金
引き上げ(もしくは労働コストの上昇)は全体の失業を増加させるリスクをはらんでいる。失業
の増加は増税の形で、ないしは雇用喪失という結果で、すべての人に影響を与えることになる。
しかし産業別の交渉では、節制された賃金交渉に導く要素ははるかに少ない。第1に、賃金引
き上げを理由として価格が上昇しても、各企業の製品に対する需要が同じように減少するとは限
らない。もちろん賃金引き上げによって引き起こされた同じプレッシャーは国内の同じ産業の競
争相手に同じ影響を与える。たとえば、もし自動車産業の労働組合が産業別の労使交渉により高
い賃上げを獲得すると、国内の自動車工場で価格引き上げへの圧力となる。結果として消費者は
外国の自動車を選ぶかもしれないが、国内の競争相手には脅威を与えない。産業別の高い賃金引
き上げは、部門全体の失業を増加させる危険性がある。個々の部門の賃金引き上げは国全体でイ
ンフレを招くことはないが、その部門の国際競争力にダメージを与える。もし労働者が他の部門
で雇用を得ることができると確信していれば、その場合には高い賃金引き上げによる失業のリス
クを受け入れるかもしれない。
要約すると、産業別交渉に関連する基本的な問題は、賃金引き上げの雇用への影響を外部化
(outsources)する方法ということになる。賃金引き上げの全体的な影響は、完全に分権化され
た交渉と、もしくは完全に集権化され調整された交渉の場合と同程度に、特定の部門の労働者に
は直接的にはない。これはもちろん1つの部門だけが賃金引き上げ交渉に成功する場合にのみ適
用される。一方、すべての部門がそうしようとするならば、雇用へのマイナスの影響は大きくな
る。もし交渉における部門間調整がない場合には、個々の労働組合は、他が少ない引き上げで決
85
着し、それによりインフレが抑制されるとしても、自分の所は最も高い引き上げを求めることに
常に魅力を感じるであろう。そこで賃金引き上げ要求を高めにしようとすることは産業別交渉で
はビルトインされた脅威となっている。
カルムフォルス(Calmfors)とドリフィル(Driffill)は、集権化された交渉と失業のコブ型関係
を表した最初であった(1998)。それによれば、最も低い失業率は最も極端な交渉制度で達成され
るという。すなわち完全に企業レベルでの交渉に分権化するか、もしくはすべての部門をカバー
する方法で集権化するかのどちらかである。産業別の調整されない交渉は、雇用の観点からは最
悪の選択である。
労働組合組織率
図表4はOECD20カ国の労働組合の組織率と失業率を表している。組織率の高い国では失業
率が低い。組織率と失業率の明確な相関関係は見出すことはできない。経済専門家は、失業の観
点からは労使間の交渉の調整のレベルを考慮することが重要であるということでは一致している。
図表4
組
ン
ス ス
ペ
イ
ン
ア
メ
リ
カ
日
本
オ
ラ
ン
ダ
ス
イ
ポ
ル ス
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ル
ド
イ
ツ
カ
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イ
ア
ル
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ン
ド
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ル
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ル ー
ウ
デ ェー
ン
マ
ー
フ
ィン ク
ス ラン
ウ
ェ ド
ー
デ
ン
フ
ラ
率
スウェーデン
フィンランド
デンマーク
ノルウェー
ベルギー
アイルランド
オーストリア
ニュージーランド
オーストラリア
イギリス
イタリア
カナダ
ドイツ
ポルトガル
スイス
オランダ
日本
アメリカ
スペイン
フランス
失業率
業
率
組織率
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
失
織
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
労働組合組織率と失業
1989-94
労働協約の範囲
図表5はOECD19カ国を労働協約の適用範囲で順位づけを行ったものである。労働協約の適
用範囲と失業率には何の関係も見られない。フィンランドにおける労働協約の適用範囲に関する
現在行われている議論に関して、この結果は興味深いものがある。
86
図表6
交渉の集権化程度と失業
6
5
2
1
ー
ス
ト
オ ラリ
ー
ア
ス
トリ
ベ ア
ル
フ ギー
ィン
ラ
ン
ド
ド
イ
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ウ
ェ
フ ー
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ン
マ
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ル
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ウ
ェ ル
ー
デ
オ ン
ラ
ン
ス ダ
ペ
イ
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ス
イ
ス
イ
タ
リ
ア
ニ
ュ イギ
ー
リ
ジ
ス
ー
ラ
ン
ド
カ
ナ
ダ
日
本
ア
メ
リ
カ
オ
集権化程度
失業率
アメリカ
日本
カナダ
ニュージーランド
イギリス
イタリア
スイス
スペイン
オランダ
スウェーデン
ポルトガル
デンマーク
フランス
ノルウェー
ドイツ
フィンランド
ベルギー
オーストリア
オーストラリア
0
業 率
3
失
交渉の集権化程度
4
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
1989-94
労使団体内での交渉の調整
図表7は労働組合の交渉の調整を規模によって最も小さい組合から最も大きい組合までランク
付けしたものである。平均失業率は賃金の目標を調整した国のほうが、調整していない国よりも
低い。
図表7
労働組合の賃金交渉調整と失業
3.5
3
1.5
1
0.5
イ
ュ
ニ
ス
ア
イ
ス
メリ
カ
ー ギリ
ジ
ー ス
ラ
ン
ド
カ
ア
ナ
イ
ル ダ
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ポ 日本
ル
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ル
ドイ
オ ツ
ラ
ン
ベ ダ
ル
ギ
ー
オ イタ
ー
ス リア
トラ
リ
フ ア
ラ
フ ンス
ィン
ラ
ン
ス ド
ペ
オ
ー イン
ス
ス
ト
ウ リア
ェ
ー
デ
ノル ン
ウ
デ ェー
ン
マ
ー
ク
賃金交渉調整率
失業率
88
1989-94
デンマーク
ノルウェー
スウェーデン
オーストリア
スペイン
フィンランド
フランス
オーストラリア
イタリア
ベルギー
オランダ
ドイツ
ポルトガル
日本
アイルランド
カナダ
ニュージーランド
イギリス
アメリカ
スイス
0
業 率
整 率
2
失
調
2.5
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
図表8は使用者団体の交渉の目標の調整を比較したものである。雇用についての調整効果につ
いては、労働組合(図表7)の場合と同様である。平均失業率は使用者の調整が効果的に行われ
ているところのほうが低い。失業問題を解決するために交渉のレベルを完全に分権化(企業・事
業所レベル)する必要はないように見える。むしろ、結論としては組織化された社会的対話
(organized social partners)と確立された労働市場制度の力をもっと有効に活用することである。
図表8
使用者の賃金交渉の調整と失業
3.5
20
18
14
2
12
率
2.5
率
16
失 業
調 整
3
10
1.5
8
1
6
4
0.5
ア
メ
リ
カ
ニ
イ
ュ
ギ
ー
ジ リス
オ ーラ
ー
ス ンド
トラ
リ
ア
カ
ア
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ス
ス
オ
イ
ー
ス
ス
ス
トリ
ウ
ェ ア
ー
デ
ン
ド
ノ イツ
ル
ウ
ェ
フ
ィン ー
ラ
デ ンド
ン
マ
ー
ク
失業率
賃金交渉の調整
デンマーク
フィンランド
ノルウェー
ドイツ
スウェーデン
オーストリア
スイス
フランス
イタリア
ベルギー
オランダ
ポルトガル
日本
スペイン
アイルランド
カナダ
オーストラリア
ニュージーランド
イギリス
アメリカ
0
2
0
1989-94
興味深いことに、OECD雇用概観(OECD Employment Outlook)には、個別交渉制度は自
動的に雇用を改善し、あるいは失業を減らすということを裏書する内容を見出せない。実際に、
OECDは交渉の集権化ないしは交渉の調整率と雇用ないし失業率の間に明確な相関関係を見出
していない。それとは反対に、1980年代に分権化した交渉ないしは調整のない交渉制度を拡大し
た国は、集権化し調整のある交渉制度を維持してきた国々よりも雇用・失業動向は深刻であった
(OECD雇用概観、1997、図表3.2)。
賃金政策と賃金分布
労働組合、とくに北欧諸国の労働組合は、無制限な賃金格差の拡大を抑制することを伝統的に
目標として定めてきた。すべての部門の労働者の所得動向を考慮する目的で、すべての部門をカ
バーする全般的な賃金引き上げの労働協約を締結することを目指してきた。集権化した協約は全
般的な賃金引き上げのための手段として役に立ってきた。集権化した労働協約の基本的な賃金政
策の目的の1つは、結局のところ、賃金格差の無制限な拡大を防ぐことにある。
これは、経済的に最も実現可能な部門と企業で賃金引き上げのための全体的な経済的マージン
89
が交渉される賃金引き上げに直接には含まれないようにする方法で、労働組合がお互いに産業別
の賃金引き上げ目標で合意に達することが必要である。
集権化された労働協約を基本とした賃金政策は所得格差の拡大を遅らせる。しかし、しばしば
小さな賃金格差が失業を助長するという議論がある。この議論で述べられているメカニズムは最
低賃金との関係で述べられるメカニズムと同じである。小さな賃金格差の結果として、最も低い
賃金でさえ最も低い生産性を持つ労働力を雇用するには高すぎるというメカニズムである。
この説明に基づいて、1990年代末の西ヨーロッパにおける高い失業率は、低技能しか持たない
訓練度の低い労働者に対する相対的な需要が更に減少したという事実の結果であると言われた。
この議論はアメリカと西欧のお互いに異なる動向を比較することによって再度根拠づけられた。
アメリカでは所得格差が拡大することが許容された。このことが最低賃金層の労働者の実質賃金
の低下を招いた。一般的な議論では、これが生産性の低い雇用を維持し、結果として失業率を低
くしたと言われる。西欧では、コインの裏側であり、賃金格差はそれほど拡大しなかったが、失
業はアメリカよりも高い水準であった。訓練度の低い労働者に対する相対的な需要の変化は、新
しい技術によってもたらされた技能への需要の増加とグローバリゼーションによる開発途上国の
安い労働力の活用の増加によって説明されてきた。
賃金格差の拡大を許容することが雇用への悪影響を防止する手段として提案されてきた。失業
給付と社会福祉の削減も同じ影響に対する提案の中に含まれている。しかしこれらの提案は、労
働力は訓練され得るので、偏った考え方であるとしか言えない。事実は、労働力需要構造におけ
る変化は、全般的な労働力需要が減少するということを必ずしも意味するものではないというこ
とである。最も低い賃金が更に低下することを許容することは、問題への解答にならないことを
考えなければならない。賃金格差の拡大を許容することで、せいぜいいくらかの雇用を維持でき
るだけである。しかし賃金格差の拡大は、その他の全く望みもしない結果をもたらすことになる。
まず第1に、労働力の一部は生活賃金(living wage)を受け取れないようになるし、第2に訓練さ
れた技能労働に対する需要が満たされないようになる。ここから、労働力に対する需要の構造で
起きている変化に遅滞なく対応する多面的な訓練機会を、生活賃金要件と経営のニーズの変化を
考慮しながら開発しなければならない。これが現在のフィンランド社会の大きな挑戦であり、フ
ィンランドの教育制度に対する今後の任務となっている。また積極的な労働政策の役割がこうし
た文脈で強調されなければならない。
集権化された交渉で追求される賃金政策は、雇用構造に変化を引き起こす傾向がある。これは
賃金目標が平均的経済生産性に合わせて設定されるからである。これが、集権化された交渉に基
づく賃金政策が平均よりも高い生産性を有する部門や企業に「報い(rewarding)」、これらの部門
や企業で新たな雇用の拡大と創出のための枠組みを作り出すからである。しかし、すべての部門
が同じ様に生産性を向上させる機会を持つとは限らないので、従って平均的な生産性の向上に基
づく賃金目標の設定は、生産性の低い部門や企業で雇用の喪失を招くこともあり得る。
いくつかのサービス部門がこの好例である。多くの公共部門の雇用は、生産性を計測する観点
90
からは問題がある。これが連帯賃金政策が労働コストに関連してしばしば問題となる理由である。
しかし、賃金格差を抑制する賃金政策は、公共部門の賃金が民間部門の賃金に取り残されないよ
うに保障しているので、公共部門の質を維持するための条件を作り出す。そこで公共部門は技能
があり意欲のある要員を採用することができる(もちろん、その場合は公共部門の予算が確保さ
れていればの話しである)。様々な部門の生産性の格差を考えたとき、良く機能する公共部門が民
間部門の発展と生産性向上の基盤となることに留意することが重要である。言い換えれば、真空
の中で機能する部門はないということである。
国際競争と労働市場規制
最後に、グローバリゼーションについて述べる。
グローバリゼーションあるいは国際的な貿易と経済活動の拡大は労働市場の規制緩和を必要と
するとしばしば主張されてきた(例えば Horst, 1999, p.45)。この主張は、競争力を維持し、そ
れにより雇用を維持するために雇用関係と労働市場構造における柔軟化が必要であるという主張
に具現化されている。しかしスェーデンの研究者ヨナス・アゲル(Jonas, Agell)は、国際化の進
展が必要としているのは、実際には、これまで以上に強い雇用関係条件の規定であると主張して
いる。
アゲルが述べている拡大する国際貿易の諸条件の中で労働市場の規制の必要性に関する最も意
義のある議論は、経験に基づくものである。アゲルは、OECD諸国の経済の開放性と労働市場
の規制を示す指標との間のいくつかの相関関係を示している。アゲルは、国際貿易における成功
のためには労働市場の規制緩和を必要とするという見解を支持していない。事実、結果は正に反
対であった。多くの指標によれば、労働市場が極めて規制されている国は、国際貿易に最も良く
統合されている国であった。
全体として、研究成果はグローバリゼーションによる規制緩和の必要性をいかなる点でも支持
していない。むしろ、OECD諸国間の比較では、少なくとも現在までのところ、外国貿易にお
ける大きな占有率は、平均以上に規制された労働市場と相関関係にあることを示している。言い
換えると、雇用その他を理由として、国際貿易に良く統合された国に労働市場の規制緩和を無理
強いすることは必要ないということである。
91
労働の柔軟化と労働組合の対応
日本労働組合総連合会
総合労働局長
須賀
恭孝
1.日本における労働の柔軟化の現状
(1)日本における非典型労働の種類と定義
日本における非典型労働の種類と定義について以下に記述する。
①パートタイム労働者
日本における「パートタイム雇用者」という概念は、欧米とくらべて必ずしも明確ではない。
これは三つの異なった定義が共存しているためである。第一は、一日の所定内労働時間が正規
の雇用者とくらべて短いか、あるいは週当たりの労働日数が短い「短時間雇用者」である。第
二には、雇用者の意識に注目した概念で、家事や通学のかたわら働く「仕事を従」とする者で
ある。第三に、一年以内の期間を限定した雇用契約の対象となる「臨時雇用者」に近い概念で
あり、長期雇用保障の対象である正規社員と区別して「パート労働者」と称されている。この
「パート労働者」は、2002年時点で約1000万人に達している。
②派遣労働者
日本における労働者派遣も、欧米と同様、派遣元が自己の雇用する労働者を、その雇用関係
の下に、かつ、派遣先の指揮命令を受けて、この派遣先のために労働に従事させる雇用形態の
ことをいうが、欧米とは異なり、日本では、常用型派遣や紹介予定型派遣とともに、派遣先が
見つかって、派遣就労することになったときに、派遣元と労働契約を締結する登録型派遣があ
り、欧米の「呼び出し労働者」に性質が似ている。
(ただし、呼び出し労働者は3者関係ではな
いので、厳密には異なる。)
③契約労働
日本では、欧米の契約労働という概念に直接あてはまるものはない。契約社員という名称も
あるが、それは、期間の定めのある労働契約によって雇用する労働者のことを指し、欧米の概
念でいう契約労働は、日本でいう、請負労働に近いものといえる。
④有期雇用
有期雇用は、文字通り契約期間が定められている雇用であるが、日本での有期雇用について
類型化すると、①定年後の再雇用の場合の嘱託型契約社員、②高度専門職型契約社員、③準社
員型契約社員、④パート・アルバイト型契約社員などが挙げられる。
日本は、アメリカと同様、非典型雇用に関する雇用形態・労働条件についての法規制がほと
92
によると、派遣労働者数は約175万人(対前年度比26.1%増)となっており、常用派遣労働者は
157、450人(対前年度比14.6%増)、登録型派遣労働者は1,449,352人(同30.2%増)となって
いる。また、一般労働者派遣事業の平均料金は16,321円と、前年の16,755円より2.6%減であっ
た。
③有期契約労働者
有期契約労働者については、「労働力調査」によると、臨時雇は、510万人(平成11年)であ
り、雇用者全体の11.9%を占めている。この比率は10年前(平成元年:10.6%)に比べ1.3%ポ
イント上昇している。また、有期契約労働者を雇用している企業は全体の69.0%と、約7割の
企業で有期契約労働者を雇用している。
[雇用者数の変化]
[98年-03年増減]
300
69.8%
03年
22.0%
8.2%
3.8%
76.3%
98年
0
0
1000
2000
正規従業員
パート
16.9%
3000
4000
正規従業員
パート
-100
3.9%
93年
93
100
19.9%
79.2%
213
200
派遣・嘱託・その他
-200
5000(万人)
-300
-400
派遣・嘱託・その他
▲376
-500
■注 :棒グラフ中の比率は各年の雇用者数全体に占める雇用形態別の比率
■出所:総務省「労働力調査」(2003年1月∼3月)、「労働力調査特別調査」(93年、98年2月)
(3)法制面における規制緩和の動向
①「労働基準法」における解雇規制の動向
昨年、労働基準法が改正され、解雇ルールの法文化、有期労働契約の期間の上限延長、裁量
労働制の緩和が行われた。主な改正点は以下のとおり。
ア.解雇ルール
○判例で確立している「解雇権濫用法理」を労働基準法で明示。
○就業規則に「解雇の事由」の記載を義務化。
イ.有期契約
○有期労働契約の上限は1年から原則3年までに、専門的な知識・技術者等は3年から5
年に。
○契約日から1年を経過した場合、労働者の「退職の自由」を保障。
ウ.裁量労働
○企画業務型裁量労働制の対象事業場の拡大。
○労使委員会決議の有効期間は1年から3年以内に。
94
②「労働者派遣法」における要件緩和の動向
昨年、労働者派遣法が改正され、派遣期間の延長、物の製造業務への対象業務の拡大が行わ
れた。
ア.派遣期間の延長
○一般業務の期間制限を現行1年から3年までに延長
○専門型26業務に関する、派遣期間制限3年ルール(通達)の廃止
イ.対象業務の拡大
○物の製造業務への派遣が解禁
(4)組織率の推移
平成15年6月30日現在における単位労働組合の労働組合数は63,955組合で、前年に比べ1,687
組合減(-2.6%)となった。
単一労働組合の労働組合員数は1,053万1千人で、前年に比べ26万9千人減(-2.5%)、9年連続
の減少となった。
推定組織率は、低下傾向が続き、19.6%と前年の20.2%に比べ0.6ポイントの低下となり、初め
て2割を下回った。
労働組合数
労働組合員数
推定組織率%
1950
29,144
5,773,908
46.2
60
41,561
7,516,316
32.2
70
60,954
11,481,206
35.4
80
72,693
12,240,652
30.8
90
72,202
12,193,396
25.2
00
68,737
11,425,804
21.5
03
63,955
10,437,123
19.6
また、労働組合員数(単位労働組合)のうちパートタイム労働者についてみると、33万1千人
と前年に比べて13.1%増加し、全労働組合員数に占める割合は3.2%、推定組織率は3.0%となっ
ている。
パートタイム労働者の
推定組織率
労働組合員数(千人)
%
1999
244
2.5
2000
260
2.6
2001
280
2.7
2002
292
2.7
2003
331
3.0
95
(3)高齢労働力・女性労働力の有効活用
少子・高齢化のなかで、我が国経済社会の活力を維持していくためには、高齢者と女性労働力
の活用が日本経済の発展に不可欠である。高齢者については、その豊かな知識・経験を活かして、
少なくとも65歳に達するまで働けるようにすることが極めて重要な課題であるとの認識から、企
業における65歳に達するまでの雇用機会の確保を図るとともに、希望者全員が多様な形態で働く
ことができるようにするために、必要な法改正を行う必要がある。また、これについては年金の
支給開始年齢の引き上げへの対応という意味合いも一方ではある。
また、現在のような日本的雇用慣行、特に年功賃金体系の下では、出産・育児等により就業を
中断することは多大な金銭的損失をもたらす。今後、女性の労働力を量的に確保し、かつ質的に
も向上させていくためには、育児休業制度や介護休業制度について実効性のある見直しを行う必
要がある。
2.柔軟化進行の背景と課題
(1)柔軟化進行の背景
①失業率は高止まりしたまま、不安定雇用の比率が上昇している
昨年から「景気回復の兆し」との見方が強まっているが、雇用についてはほとんど改善が見
られない。5年間で70万人近くの雇用が失われ、現在、その減少にやっと歯止めがかかりつつ
あるにすぎない。完全失業率は、5%台に高止まりしており、今年卒業予定の高卒就職率は30%
台(9月現在)と深刻な状況にある。失業期間の長期化が再就職を一層困難にするなど、失業
の質の悪化は深刻さを増している。
雇用形態の多様化も深刻な問題である。この5年間で長期雇用を前提とする雇用から不安
定・低賃金雇用へのシフトが加速している。典型雇用が380万人減少する一方、パートや派遣等
が300万人増加し、いわゆる正社員比率は7割をきった。その理由をみると、「人件費節約のた
め」とする企業は、パートで6割、と派遣で3割に達する。
「景気変動に応じて雇用量を調整す
るため」とする企業は、ともにパート派遣とも3割に達する。
②短期利益最大化の経営姿勢がある。
わが国の企業経営が「投資をせず、不採算部門を切り捨て、現在の利益を最大化する経営姿
勢」へとシフトしつつあることは、連合としても繰り返し指摘している。この数年間で、人件
費などの切り下げで無理やり利益を計上するか、さもなくば不採算部門として分離・売却する
か、目先の利益を追求する姿勢が強まったことは間違いない。
こうした経営の短期化は、わが国の雇用システムを「企業内で育成し長期雇用のもとで仕事
と賃金を均衡させるグループ」を圧縮するという方向に向かわせている。旧日経連が提起した
「雇用ポートフォリオ」になぞらえて言うならば、「長期蓄積能力活用型」を切り捨て、「専門
能力活用型」
「雇用柔軟型」に置き換える動きである。中高年を中心に大量の希望退職を募集し、
新規採用は抑制。代わりに、パートや派遣等を低賃金・使い捨て雇用として組み込む動きが急
速に拡大している。
96
(2)どのような課題が惹起しているのか。
こうした経営側の姿勢等からどのような課題が惹起しているのか。
①職場では雇用リストラの負の連鎖が起こっている。
職場においても、様々な問題が顕在化してきている。
多くの産業・企業で希望退職の募集や退職者不補充など雇用リストラが行われた結果、人員
削減された職場の多くでは、残された人への仕事の負荷の高まりがみられる。労働者側だけで
なく、人事担当者も一人あたりの仕事の量、範囲、責任が高まったと答えている。
人員削減に比例して、週60時間以上働いている労働者の比率も急上昇している。特に大企業
では、5人に1人に達するなど10年以上前の状況に逆戻りしている。仕事量が増えた一方、残
業規制等を口実に人件費抑制が強化されている職場も少なくないと推測される。こうしたなか
で不払い残業問題もが社会問題化している。
さらに、この1、2年、大きな事故が連続して発生している。単なる偶然ではなく、一人作
業の増加やベテラン作業員の退職、疲れによるうっかりミス、さらには設備の老朽化など財務
改善偏重のツケなど複合的な要因が重なり合った結果と考えられる。
②フリーターが急増している。
長期勤続を前提する雇用が狭き門となるなかで、いわゆるフリーターが急増している(厚生
労働省の推計によると、92年101万人→97年151万人→2002年209万人)。フリーターは、職務経
験を積み重ねる中でスキルアップをしていくことを期待しない・期待されないことが多く、30
歳台になって雇用と収入の安定した仕事につきたいと思っても希望どおりにならないケースも
少なくない。わが国においても、低スキル・低賃金層が固定化し、滞留していく恐れがある。
企業内においても、人材育成の力が落ちている。能力開発の実施率、受講率は、10年前の半
分まで低下している。能力開発をしない理由として「能力開発や育成する時間的余裕がない」
「指導できる人材がいない」「育成しても辞めてしまう」などがあげられている。
③就業形態の多様化
有期やパートについては、当初、期間限定の仕事か臨時の雇用であると明白にせず、長期雇
用の必要があっても短期有期雇用にしていることが多い。2ヶ月雇用を10年とか5年繰り返し、
必要がなくなれば期間満了による退職とされ、解雇とならない点で使い勝手がよい。また、パ
ートタイムは地域ごとの市場での需給関係で決まるため、年功による典型労働者との賃金格差
は大きい。
派遣労働者については、登録型の場合、その雇用契約期間がおわったら、つぎの派遣先を必
ず要求できるわけではないので、雇用の保障がないという問題がある。
請負については、雇用契約で労働者を雇い入れる場合は労働基準法により規制がかかるが、
請負の場合には、被用者保険としての健康保険、厚生年金保険はなく、国民健康保険、国民年
金になり、事業主負担はない。また、労災保険については特別加入しなければ労災補償はない。
97
④年金、社会保障への影響
リストラで失業者が増えれば、雇用保険財政が逼迫し、結局は、雇用保険料を引き上げねば
ならず、生活保護給付のための税金も増加するというかたちで返ってくる。
連合は、フルタイムで働いている人の労働時間を短縮して、失業している人や新たに就労し
たい人に雇用機会をつくるワークシェアリングについて提起している。
仕事の分かち合いによって失業者を減らし、雇用労働者を創出することで、失業保険等の社
会的負担を減らし、税金や社会保険の支え手を増やすことになり、国民経済的にも積極的意義
があると考えている。
3.労働組合の対応
(1)柔軟化に対する「連合の基本的な考え方」
①均等処遇原則の実現、不利益取り扱いの禁止
経営側が「成果や業績に応じた賃金決定」の動きを強め、パート労働者等が基幹化するなか
で、公正、透明、納得的な賃金決定のための社会的なものさしづくりが重要性を増している。
当面の課題は、次の通り。①産業労使による能力評価基準づくりと合わせ、個別賃金の銘柄設
定の共通化や賃金データの公開、最低規制の取り組みなど社会的な賃率形成を目指す取り組み
を強化する必要がある。②典型・非典型間の人事・賃金制度上の差別をとりはらい、時間あたり
賃金の概念を明確化し、共通の基準で賃金決定をおこなうことが必要である。
②パート・有期契約労働法、労働契約法の制定
連合は、雇用と労働にかかわる環境変化への的確な対応のため、新しいワークルールについ
て2001年の連合第7回定期大会で確認した。
新しいワークルールの策定は、働くものの立場から、雇用と労働に関するグランドデザイン
を積極的に提起しようとするものである。
雇用と労働に関するルールづくりについて、これまでの労働組合の取り組みは、労働法制に
ついては、個別の課題における受身の対策になることがあり、労働協約に関しては、産業別組
織や単位組合に委ねがちであった。しかし、今日の厳しい情勢を克服し21世紀の新しいワーク
ルールを確立するためには、労働者の視点からの総合的な構想を用意し、自ら「打って出る」
活動をすすめることが必要である。このためには、総合的かつ中期的な視野を持ちながら、法
制度の改革と労働協約の整備・拡充を中心に、
「21世紀のワークルール」を実現するための強力
な取組みが不可欠である。
との観点から策定したものである。
ア.パート・有期契約労働法
雇用差別としては、雇用・就労形態による差別禁止、募集・採用にかかわる年齢差別禁止、
雇用全般における性差別禁止、障害者差別の禁止などがあるが、パートタイム労働、有期契
約労働、派遣労働、委託契約、請負など多様な雇用・就労形態が拡大しているなかで、就労
形態による差別的取り扱いをおこなうことを禁止するものである。
98
イ.労働契約法
企業組織の再編や労働者の労働条件変更などにより、雇用環境が悪化しており、また、人
事労務管理が変化し、賃金などの処遇が個別化するに伴って民事上の個別紛争が増加してい
るなかで、労働契約上のトラブルに対応するため、労働契約についての民事上のルールを明
文化するものである。
③企業内における協定の整備
ア.企業内最低賃金協定の締結を通じた最低賃金の引き上げと労働協約の拡張適用要件の見
直し
企業内のパートタイム労働者の賃金水準引き上げとともに、パートタイム労働者の賃金水
準引き上げに向けて、最低賃金の引き上げに取り組むとともに、労働協約の拡張適用を活用
して、同一事業場内に働く労働者の労働諸条件の向上および地域における労働諸条件の社会
的相場形成をめざす。
具体的には、すべての従業員が対象となる企業内最低賃金協定の締結に取り組む。その到
達目標は、第一歩として、高卒初任給水準に置き、産別最低賃金の新設・金額改定につなげ、
未組織労働者の賃金水準を底上げをはかる。
さらに、労働組合法第17条および第18条で定めている労働協約の拡張適用要件「4分の3
以上」を「2分の1以上」に改正する。
イ.社会保険・雇用保険制度の改革、税制・手当制度の見直し、社会的な「仕事と家庭の両
立支援施策」の充実
パートタイム労働者が社会保険、雇用保険に入らないことは、社会保険制度の空洞化や就
労調整により時給が引き上がらない要因となる点からも問題であり、すべての労働者をカバ
ーする制度に改善をはかる。
また、育児・介護休業法の充実や低年齢児を中心とした保育所の定員増など、子どもを育
てつつ、安心して働き続けられるための社会政策を拡充していく。
具体的には、社会保険適用の範囲を拡大し、一定以上の労働時間・年収のある雇用労働者
は、すべて社会保険に加入することとし、労働日数・時間に関する適用基準を、通常の労働
者の「4分の3以上」、当面「2分の1以上」に引き下げる。
さらに、健康保険・厚生年金における被扶養認定の収入要件を、現行の「130万円未満」を
当面「65万円未満」とする。
ウ.税制、賃金の手当制度を広く見直す
配偶者も扶養親族の一人とし、配偶者控除を扶養控除に一本化する。
さらに、生活関連手当の支給要件における「世帯主」要件をなくす。
エ.あらゆる分野でのパートタイム労働者の組織化を進める
1)構成組織は、組合員の範囲にかかわる規約の見直し、労働協約の改訂に取り組み、企
業間・関連会社・グループ企業でのパートタイム労働者の組織化の促進をはかる。
99
2)既存組織への加入による組織化が困難な場合、パートタイムのみの組合結成や地域ユ
ニオンへの加盟に取り組む。
3)パートタイム労働者の組織化を促進するため、賃金・労働条件・均等待遇などの改善
に向けた広範なパートタイム労働者との語り合い、行動の場をつくる。
(2)労働者ニーズを反映した対応
柔軟化の進行の原因は、労働者の供給側と企業の需要側との双方の要因に基づくものであると
も言える。
例えば、労働者が派遣労働として就業形態を選択する理由は、正規社員としての雇用機会が得
られなかったためという非自発的なものと、労働時間や職種・働き場所の柔軟性、残業のないこ
と、会社の人間関係に煩わされない等、自発的なものとに分かれる。
連合はこれまで、典型労働者を中心にした対応を進めてきており、この路線に変更はないが、
雇用者の3割弱を占め、基幹労働力化している非典型労働者について典型労働者に準じた処遇や
労働法における扱いについて私見ではあるが、検討していく時期にきているのではないかと考え
る。
短時間正社員について言えば、
「多様な就業形態のあり方に関する調査(21世紀職業財団・2001
年)」によると、「短時間正社員制度があれば利用したい」が19.2%「将来利用する可能性がある」
と回答した正社員が35.6%と半数以上の人がその可能性に期待しており、主な理由として6割近
くの人が仕事と生活バランスの回復や拘束時間の長い「今の働き方」を変えるなどを挙げている。
連合では、
「短時間正社員」を将来的に女性や高齢者などの労働力率の上昇が期待される中で働
く側の選択肢を増やす有効な手法の一つと考えている。
以
100
上
Action Policy and Activities of ETUC
Mr. Joel Decaillon
Confederal Secretary
I
Our objectives
Seek a European Union built upon peace, freedom, democracy, fundamental rights, equal
opportunities and gender equality, sustainable development, solidarity and social justice, full
employment and quality jobs, economic, social and territorial cohesion, a high level of physical
and mental health, education, training and life-long learning, well-being and prosperity, and
the principles of the European social model, protection of minorities, universal and equal
access to services of general interest of a high quality and organised on the basis of solidarity,
and a social market economy.
a.
A constitutional treaty for an enlarged EU
・ Press for a constitutional treaty based on our objectives;
・ Campaign for the full integration of the Charter of Fundamental Rights into the
constitutional treaty with legally binding effects and guarantee of justiciability,
as the first stage in the recognition of fundamental rights at European level;
・ Work to ensure that the next phase of EU enlargement is completed successfully based
on the full implementation of the social acquis, recognising fully the opportunities and
challenges for trade unions and the EU alike;
・ Fight for a process of European integration combining economic and social dimensions
which goes beyond the single market and single currency to move towards social and
political union, governed by efficient, transparent and democratic institutions;
・ Promote the realisation of a genuine area of freedom, security and justice.
b.
Full employment and the quality of work
・ Continue to fight for full employment as a fundamental macroeconomic policy goal;
・ Develop a modern conception of full employment based, in particular, on gender
equality, high-quality jobs, the right to life-long learning, and a right to choose in a
labour market open to all in order to increase the labour force participation rate,
introduce minimum social standards to increase the quality of work and the protection
of workers, while rejecting the growing precariousness of employment conditions.
c.
Social inclusion and cohesion
Fight against social exclusion, poverty and inequality, taking into account the needs
of specific groups, across all policies areas by strengthening economic, social and
territorial cohesion in an enlarged European Union, based on social justice, the
101
redistribution of wealth and upward harmonisation;
Recognise the diversity of the European workforce, and build solidarity between the
generations, the employed and the unemployed, active and retired workers and
workers across borders, sectors and occupations.
d.
Public sector and services of general interest (SGI)
・ Promote high-quality services of general interest and public services with equal and
universal access as vital instruments for the full implementation of fundamental
citizen rights for the European social model, and by strengthening public services and
services of general interest at all levels based on highly qualified workforces and
adequate funding.
e.
Social protection
・ Reaffirm the priority of and strengthen statutory and collectively agreed social
protection systems, make their financing sustainable and more employment-friendly,
ensure that changing family structures, atypical contracts and an ageing population
are taken into account by strengthening direct rights, and that all workers and citizens
are covered by statutory social protection schemes;
・ Reverse the neoliberal approach of business and governments who take enlargement
and competitiveness as a pretext to weaken social safety nets, and downgrade workers’
rights.
f.
Collective bargaining and social dialogue
Strengthen trade union rights and collective labour relations in all member states,
applicant countries and other European countries and campaign for full transnational
trade union rights to build up a real European negotiating space for the social partners
in which collective agreements are always recognised as a means of implementing EU
law.
g.
Gender equality
Demand the inclusion of gender equality among the fundamental values of the EU
and its inclusion in the shared competencies of the EU;
Ensure the acquis communautaire regarding equal pay and gender mainstreaming is
maintained across all policies and encourage women’s representation in all
decision-making bodies.
h.
Combating discrimination, racism and xenophobia
Fight discrimination in all its forms with respect to gender, nationality, race,
ethnicity, disability, sexual orientation and gender identity, age, religion and social
102
origin in the European Union.
・ Reflect and act on prejudices that may be inherent in trade unions’ own structures.
i.
Sustainable development as a guiding principle
Supports the mainstreaming of sustainable development in its ecological, economic
and social dimensions.
j.
Globalisation
Fight neo-liberal conceptions of globalisation and campaign for a process of
globalisation regulated by democratic institutions to ensure that it respects and
responds to people’s needs and workers’ fundamental rights, and ensures a fairer
distribution of wealth globally.
k.
Strengthening the ETUC and European trade union identity
・ Raise the visibility and autonomy of the ETUC, strengthen the resources
available
and make the most effective use of these resources;
・ Reach out to and motivate younger generations to take active parts in trade union work
and to influence the development of society, considering their ways of working,
ambitions, perceptions and priorities.
II THE TRADE UNION MOVEMENT FOR THE FULL EMPLOYMENT
1.
Work for the implementation of the Lisbon strategy, particularly the commitment to
‘more and better jobs’, full employment and the creation of a knowledge-based society,
with a policy mix allowing for a sustainable annual growth rate of 3% underpinning the
strategy;
2.
Ensure that the Luxembourg process remains the main vehicle for coordinating labour
market policy, while stressing that the Broad Economic Policy Guidelines must also
contribute to full employment, and call for the consistency between the two processes;
・ Improve the participation and consultation of the social partners at all levels, and
particularly at national, regional and local levels in the National Action Plans for
employment and social inclusion, encourage affiliates to engage in the implementation
and evaluation of the EES at national level and help to raise awareness of the
employment strategy;
・ Ensure that activation policies focus on positive incentives in terms of training, support
and career guidance, rather than forcing people to accept any job;
・ Promote high quality and stable jobs through EU legislative and collectively agreed
provisions, in terms of issues such as working time, pay and conditions, health and
103
safety, and access to training, thus contributing to a sustainable working life and a
more competitive European Union;
・ Ensure that all temporary employment contracts are concluded for a specific purpose,
thereby preventing the spread of insecure contracts in the labour market;
・ Work to improve working conditions and health and safety at the workplace, notably
through the implementation of the Community Strategy on health and safety
2002-2006;
・ Fight for binding provisions, whether collectively agreed or statutory, to protect
workers from discrimination and instability in their job: sub-contracting, temporary
work agencies, etc. as well as effective monitoring of implementation of the Posted
Workers Directive;
・ Anticipate measures to forestall the risk of creating new groups of socially excluded,
given the difficulties of access to new information technologies for workers in a
precarious situation
・ Combat gender discrimination through employment policies which promote women’s
economic independence, including publicly financed high-quality care for dependents,
improve the quality of women’s employment with a right to full-time employment and
part-time as a possibility, and eliminate gender gaps, in particular the gender pay gap,
and press for improved female career promotion and opportunities, to brake the
barriers between traditional male and female jobs.
・ Stress that it is important for gender equality as well as for labour market
participation to have individual instead of joint family taxation;
・ Call for the right to paid parental leave and the maintenance of pensions and social
security rights during career breaks, and campaign for an adequate income during
parental leave;
・ Encourage the full involvement of trade unions in activities aimed at the eradication all
forms of discrimination, especially in workplace projects, in order to enact the
principles of Article 13;
・ Fight discrimination against immigrant, black, ethnic, religious minority workers or on
the basis of sexual orientation in Europe, especially in the labour market;
・ Act to eliminate and prevent discrimination against both young workers and older
workers, who both suffer higher levels of exclusion from the labour market;
・ Press for action and European standards aimed to favour an upward convergence of the
living and working conditions and for the social inclusion of disabled people and be
more responsive to their needs and opinions;
・ Strive for the eradication of illegal work by penalizing traffickers and unscrupulous
employers and apply the principle of fair treatment and standing up for the interests of
all employees
・ Continue to campaign for the 35-hour week and innovative working time reduction
104
measures via collective agreements, combined, where necessary, with legislation,
including a revision of the Working Time Directive to ensure that it covers all workers,
in order to achieve better reconciliation of working and family life, catering to the need
for quality jobs and training while also taking account of employment and
environmental aspects.
・ documents, and itself to ensure the right of these migrants to trade union membership
and freedom of association, in accordance with ILO Convention 87.
III Develop the European social model
High and sustainable growth implies policies that improve the growth potential. But in
reaching the Lisbon objectives of high, growth, the ‘high’ and not the ‘low’ road has to be taken.
All workers and not just a minority of workers have to take part in and support the innovative
and competitive economy. The ETUC rejects the calls for systematic and unfettered
deregulation of markets and in particular the labour market. The ETUC does not believe that
a return to the ‘free labour markets’ of the nineteenth century is the way to move the
European economy into the twenty-first century. Left to itself, ‘the market’, with its numerous
imperfections, will not boost productivity or innovation. Nor will the outcomes be acceptable
in social terms.
Instead, the ETUC calls upon policy makers and employers in Europe to use the
instruments of social dialogue and collective negotiations in order to accelerate the process of
innovation and productivity increases in the European economy, resulting in high sustainable
growth and the creation of productive, good-quality jobs. The most successful European
economies clearly show the positive role played by strong labour market and social
institutions, and social dialogue with an inclusive and constructive labour movement. The
ETUC reaffirms its support for the European Employment Strategy as a means of reforming,
with the close involvement of trade unions, European labour markets to promote the
objectives of ‘more and better jobs’ and an effective and sustainable welfare state.
The ETUC agrees that competitiveness is indeed necessary in a globalising world and
important to strengthen the European social model. However in defending and improving
competitiveness, the high road building upon “high productivity, high quality of goods and
services and high wages” has to be taken, and not the low road. In this context serious
arguments and facts have to be addressed:
・ The World Economic Forum, in their latest report, ranks EU countries in the major
league of the most competitive economies!
・ High export figures confirm the quality, productivity and competitiveness of the
European Industrial base!
105
・ Despite its high level of social protection, the euro area runs a surplus on its current
account of 1% of GDP while the US is running a massive deficit!
The ETUC stresses again the need for the strengthening of an innovative European
industrial policy. Industrial policies have an important role to play in achieving the goals of
the Lisbon Strategy. Under circumstances of weak growth in Europe, the goal of a return to
full employment and the goal to strengthen the European Social model can be achieved only
on the basis of a wide-ranging policy mix, in particular, it needs to coordinate macro-economic
and structural policy frameworks and to encompass industrial policy.
IV Lifelong learning for social cohesion and competitiveness
・ Implement the social partner Framework of actions for the lifelong development of
competencies and qualifications with a regular follow-up by the Social Dialogue Committee
over a five-year period, as an integrated part of the Lisbon strategy, ensuring the right of
access to life long learning for all;
・ Ensure that lifelong learning strategies are supported and pursued in the sectoral social
dialogue and through collective agreements;
・ Promote the inclusion of older workers, low-income earners, early school leavers and those
with low levels of qualifications atypical workers and women in lifelong learning measures;
・ Call for objective, progressive and national goals to diminish the enormous numbers of
employed and unemployed workers without minimum educational qualifications in every
member state of the EU;
・ Press for national targets to reduce the number of people leaving school without basic
education qualifications;
・ Call for genuine recognition of prior learning formal qualifications and diplomas and
informal competences;
・ Ensure that access to qualified education and training, at universities and colleges,
responds to the demands of both young people and
・ Achieve gender equality within the trade unions, by implementing the ETUC equality plan.
This requires balanced participation of women – at least proportional to their membership
figures – at all levels, including the leadership, and in all other European trade union
structures (committees, EWCs).
106
An introduction to the European discussion on Flexibility
Dr. Maria Jepsen
ETUI
1. Introduction
During the past 20 years Flexibility has increasingly become the notion used to describe the
cluster of controversial and multivariate practices that relate to new forms of work
organisation as well as contractual forms guiding the relationship between employer and
employees.
These very diverting practices have a minimum in common, namely the fact that
they are all a part of the process in the move away from the typical models of employment and
work that characterised the thirty glorious years: an open-ended contract of full-time
employment, in the service of a single employer, characterised by a high degree of
subordination (Vielle and Walthery 2003).
Numerous economists and politicians put forward flexible labour markets as a necessity in
order, not only to solve the persistent unemployment problem, but also to permit the
employers in Europe to face the competition arising in the face of globalisation and the
advances in technology (OECD 1990). On the other side of the debate, many authors oppose
the strong deregulation and flexibilisation of the labour markets, arguing that it contributes
to the deterioration of working and living standards (de Nanteuil 2003).
There is still a very
lively ongoing debate on just how flexible labour markets are in Europe, in Auer and Cazes
(2002) the main conclusion is that the traditional employment model mentioned above is still
the prevailing one, while Salverda (2003) clearly demonstrates that EU labour markets are
far more flexible than assumed. This paper will give an introduction to the research results
and policy discussions on the European level. It will aim at giving an understanding of how
the concept is understood in Section two. Section three will depict the importance of some of
the different forms of flexibility in the EU member states and demonstrate that it is certain
groups of the population that are concerned. Section four will focus on the European level of
dealing with the issue and put forward the concept flexicurity. Conclusions can be found in
Section six.
2. Defining the notion of flexibility
The notion flexibility regroups a vast and diverging cluster of practices. There is a large
strand of literature dealing with the definition of flexibility and the various practices that it
covers, however it is out of scope for this paper to summarize all these different definitions as
they may include issues as participative management, time credits, annualisation of working
time, performance-related pay etc.
107
Boyer (1986) made one of the first distinctions with regard to the different forms of
flexibility by differentiating between offensive and defensive strategies, where the first
implies that the firm invests in skilled personnel and aims at securing a loyal workforce as
opposed to the second strategy where the firm hires low skilled workforce and uses labour
costs variation (level of wages or number of employees) to adjust to demand variations.
Many new definitions have popped up recently; they have many features in common and
usually differ in the margin.
There is the distinction between qualitative and quantitative
flexibility where the former relates to the practise of subcontracting to agencies and hiring
specialised staff, while the later describes the strategies used to affect the volume of work or
employment (working time and temporary contracts). This can be linked to the division of
flexibility into external and internal flexibility. External flexibility encompasses the practices
used to vary the volume of employment. It refers to the nature of the employment relationship
as defined in the employees’ employment contracts and hence the status of the employee, e.g.
temporary employment, freelance labour, hiring and firing etc. The internal flexibility
assumes a stability in the employment relationship but fluctuations in capacity utilisation,
this adjustment of the volume of work is performed via internal mobility between facilities of
the same undertaking, annualisation of working hours, multitasking, etc.
Confronting these
two ways of distinguishing flexibility provides us with currently commonly used way of
defining flexibility (Vielle and Walthery 2003).
Table 1 : Forms of Flexibility
External flexibility
Internal flexibility
Quantitative flexibility
Qualitative flexibility
Types of contract:
Production system:
external-numerical flexibility
external-functional flexibility
Working hours:
Work organisation :
Internal-numerical flexibility
Internal-functional flexibility
Source : slightly modified version of table presented in de Nanteuil (2003)
– External-numerical flexibility strategies are designed to modulate the employment
volume within establishments, hence a numerical adjustment and encompass practices
such as lay-offs and recruitment, fixed-term contracts and temporary work.
– External-functional flexibility practices relate to the production systems and include
strategies such as decentralising of production, subcontracting, and freelance labour.
– Internal-numerical flexibility refers to the practices of temporal adjustment of the
volume of work and involves variations in working hours, atypical working hours,
hours determined at short notice and working-time account schemes.
– Internal-functional flexibility relates to organisational flexibility and includes practices
such as multi-tasking, and implies a move away from conventional patterns of
subordination.
108
These categories are not exclusive and varies types of flexibility may overlap., e.g. part-time
employee may share the working-time between several facilities of the same undertaking.
Internal and external flexibility can supplement each other, but they can also substitute one
another, e.g. German strategy as to Danish strategy. Flexibility may be considered as negative
by workers in some cases and positive and desired in other cases, this pertains to a certain
extent to the origin of the flexibility initiative. The origins of flexibility practices can be
grouped into three main types (Vielle and Walthery 2003),namely the ones driven by policies
of employers to adapt to a more competitive environment by reducing or eliminating labour
costs (temporary employment, part-time, fixed-term contracts); the ones initiated by the
government to reduce employment or increase employment (part-time employment, special
fixed-term subsidies contracts). The final initiator for flexible work forms is the individual
him/herself and is synchronised with the development of more autonomous work form and the
presence of women on the labour market. Flexible working hours is considered positive by
young parents as it permits them to reconcile professional and private life, however often the
flexibility blurs the limit between these exact two spheres and thereby creates a negative
impact as it has been demonstrated that very often flexibility is considered negative if it is not
extremely well managed and well defined.
Part-time work is also considered as being a
positive flexibility for some workers at certain points in their life-cycle, however part-time
work has many disadvantages to it in the long run and even in the short run (Jepsen 2001).
3. Figures on various flexibility forms
Presenting figures to demonstrate the importance of the various flexibility strategies is
beyond the scope of this introductory paper. We will concentrate on the numerical aspect of
flexibility, such as temporary,
and part-time employment and tenure within the
establishment.
Observing Figure 1 gives some explanation on why academics do not agree on whether
Europe is flexible or not. Not only is the importance of temporary employment very different
between countries, the trend also diverges. In a country like Spain where the
external-numerical flexibility is very high, the trend is downwards, in France it is just the
opposite, here there has been a dramatic increase in these types of contracts.
Nevertheless, there is a common feature across Europe with regards to temporary
employment, as the population concerned with this type of work tends to be the same.
Younger females are by far over-represented among the temporary employees and
prime-age men are under-represented. However, when considering all men and women in
employment the differences tend to less extreme, although women still have a higher
incidence than men. The difference is only 1 percentage point in Germany and but 6
percentage points in the Netherlands.
109
Figure 1 : Temporary employment
1990
2000
30
25
20
15
10
5
0
IE LU UK AT GR IT BE DK DE NL SE FR FI PT ES EU RO EE LT SK PL LV HU CZ CY SI
15
Source : ETUC/ETUI(2003)
Figure 2 : Temporary employees
Males 25-49 years
Females 15-24 years
All employees
80
70
60
50
40
30
20
10
0
LU
IE
UK
AT
BE
IT
DK
DE
GR
NL
SE
FR
FI
PT
ES
EU
15
It is often argued that temporary employment is a way of getting into the labour market
and acquiring experience, thereby being a stepping-stone into the labour market, and that
employers use temporary employees as a part of their recruitment strategy. However in
countries like Spain, the majority of new jobs are connected to fixed-term contracts and 70 per
cent of younger women in employment are concerned.
However the impact of having a
temporary contract depends in part on the nature of the specific contract (duration, training
110
possibilities) and partly on the nature of the permanent contract it may be compared to.
Account should therefore be taken of the national settings, like regulatory regimes,
institutions and evolution over time.
However, the quality and risk associated with these
types of jobs can be evaluated in terms of career development. A study (Employment in
Europe 2002) shows that between 1995 and 1998, 31 per cent of women went from a
fixed-term contract to inactivity or unemployment; this percentage was only 19 per cent for
men. Half of younger people go into a permanent job, however only 31 per cent of older
workers get this opportunity. These figures shed doubt on the theory that temporary
employment is a stepping-stone towards a better and higher quality employment.
Part-time reveals another aspect of the numerical-flexibility by representing one of the
internal-numerical flexibility strategies.
Figure 3 : Part-time employment
1990
45
2000
40
35
30
25
20
15
10
5
0
GR IT ES LU PT FI IE AT FR BE DE DK SE UK NL EU SK HU CZ SI EE CY LT PL LV RO
15
Once again the differences in the part-time rate across the European countries are sticking.
However in most member states the incidence of part-time employment has grown
considerably.
Part-time employment is particularly found in sectors where women work
(health care and personal care sector, enterprise services, retailing). In retailing and
enterprise services (cleaning) this is to adjust to the demand flow, and very few full-time jobs
are available. In the health care sector it is to some extent the employees who demand the
working-time reduction as the working conditions are difficult (variable working hours, heavy
work load etc.). Nevertheless, part-time employment is often work that is low paid and
without career prospects and a lower probability of getting training. Part-time employees also
bare a higher risk of becoming unemployed or inactive.
111
The unequal incidence of part-time work by gender and age group is even more prominent
than for temporary employment. Young women are by far over-represented as compared to
the core male workforce. However it should be noted that countries with a high incidence of
part-time also have a high incidence of part-time among women in all age groups. Part-time is
often promoted as a means to reconcile family and professional life, however often part-time
employees work during hours that are not family friendly (evening and early morning for
cleaners, week-ends for care services etc.), furthermore low paid part-time work is a cause of
poverty among women in France as many of the women working part-time are sole
breadwinners.
However, the impact of part-time on the situation of the employee depends
very much on the national regulatory framework as well as the type of jobs that are part-time.
A part-time employment as a cleaning lady does not have the same implications as the
employee in the financial sector that takes off Wednesday afternoon.
Figure 4 : Part-time employees
Males 25-49 years
Females 15-24 years
All Males and Females aged 15-59
80
70
60
50
40
30
20
10
0
GR
ES
IT
PT
LU
FI
IE
FR
AT
DE
BE
DK
SE
UK
NL
EU
source : ETUC/ETUI (2003)
Another indicator as to how numerical-flexible labour markets are is the evolution in the
job tenure. Job tenure is an indicator for job stability and the development can tell us
something about the changes that the labour market is undergoing.
112
Figure 5 : Job tenure
16
14
12
10
Average tenure 1992
8
Average tenure 2000
6
4
2
0
BE DK SF
F
DE GR IRE I
J
L NL PT ES
S UK US EU14
Source : Auer and Cazes (2002)
Once again one observe a discrepancy between the countries. The UK, US, Denmark and
the Netherlands have the lowest tenure, while Greece, Italy, Japan, Sweden and Portugal
have the highest tenure rates. However, the real differences between countries appear when
we examine the tenure classes.
Figure 6 : Percentage change of labour force by tenure class
100
80
% change in tenure under
1 year between 1992-2000
60
40
% change in tenure 10
yearsand above year
between 1992-2000
20
0
BE DK SF
F DE GR IRE I
J
L NL PT ES
-20
S UK US EU14
-40
Source : Auer and Cazes (2002)
There seems to be a clear trend as to an increase in the percentage of labour force that have
stayed with the same employer for less than one year. This is not true for Japan, Luxembourg,
113
Portugal and Spain.
However countries like Denmark, Ireland, the Netherlands and Italy
have had a dramatic increase in people working for the employer for one year. These figures
can be interpreted in tow manners, either the decrease is because less people are hired
because of economic downturn or the decrease is due to a change in the labour market
functioning. The increase in the percentage of the workforce with tenure under 1 year could
then be due to either a sudden hiring spree or due to a switch in labour market functioning by
favouring of a high turnover rate of employees. The change in the percentage of the labour
force that has 10 years of more tenure is less dramatic and does not always go in the opposite
direction as of the change in the population in low tenure positions, henceit does not imply a
switch from high to low tenure positions.
Auer and Casez (2002) control for effects of age
and business cycle on employment tenure and finds that several countries have experienced a
decline in average tenure and that it is mostly the younger people that are concerned by this
change. They point to the fact that “the change in the labour market is a segmented one, in
which the core labour force still accounts for the dominant form of employment, while the
periphery (which has grown) constitutes a marginal form of employment” (Auer and Cazes
2002:55). This segmentation between the core workers and the flexible periphery workers
seem to more pronounced in countries with a high temporary workers ratio and a high level of
tenure, such as Spain.
Hence the flexibilisation of the labour market seems to be growing on the margins rather
than affecting the entire labour market. This challenges the way researchers as well as trade
unionists should think and react. The aim should be to find an optimal solution for all
workers, implying an optimal combination of stability and flexibility. To search for optimal
flexibility alone would destabilise the systems that are currently at hand. On the other hand
indicating that flexibility on the margin is not a major problem as part-timers (women)
usually are the second earners and that temporary employees (younger people) can gain a foot
in the labour market this way is short sited and can have devastating wide-reaching
side-affects such as female and child poverty in France and a decrease in fertility rates etc.
Hence, it is important to consider what type of security one needs to assure in order for the
flexible side of the labour market to become acceptable for all parties.
4. Defining the European way of flexibility : Flexicurity
Companies, sectors, national governments and, last but not least, the European Union as a
whole are currently facing a twofold expectation.
On the one hand there is strong demand
for further flexibilisation of labour markets, employment and the work organisation, while at
same time an equally strong demand exists for providing security to employees, especially
vulnerable groups of employees.
The pursuit of such a new balance between flexibility and security has become a key
strategy in European policy-making. It is clearly documented in the EU policy discourse since
114
1993, starting with the 1993 White Paper on Growth, Competitiveness and the "Green Paper Partnership for a New Organisation of Work" in 1997, states that "the key issue for employees,
management, the social partners and policy makers alike is to strike the right balance
between flexibility and security". The same topic has been reinforced within the European
employment policy (pillar on adaptability) and several other papers of the European
Commission, as in the Council Decision on the revision of the Employment Guidelines
where it is stated that
‘Providing the right balance between flexibility and security will help support the
competitiveness of firms, increase quality and productivity at work and facilitate
the adaptation of firms and workers to economic change.’
Flexibility seems not only to be the monopoly of employers since employees and their
representatives also show a need for a more flexible organisation of work in order to meet
employees’ individual preferences and circumstances, e.g. in combining work and private
duties and responsibilities on a life-long basis. Moreover, employers realise that they have an
interest in stable employment relations and in securing employees’ commitment to their
companies. In the European Commission’s overview of industrial relations in Europe for the
year 2000, it is contended that ‘all member states have tried to improve flexibility in the
labour market by launching active employment and vocational training policies. Modernising
the way in which the labour market operates means finding a new balance between flexibility
and security. This is reflected at community level in the framework agreement on part-time
work, concluded by the social partners’ (European Commission, 2000:83).
This notwithstanding, some recent studies are fairly pessimistic regarding new trade-offs
regarding flexibility bargaining. In de de Nanteuil (2003), it is clearly demonstrated that the
flexibilisation of the labour market has led to a significant erosion of workers’ rights in
fundamentally important areas such as employment and income security.
Furthermore,
even recent social security reforms seem to more focused on cost reduction than on easing
flexibility. The issue is complex as on the one hand the question is how social security systems
and labour law can minimise the undesired and problematic outcomes of flexibilisation, on
the other hand it has to be asked what social security and labour law regulations could
actively support the flexibility needed.
There is still an ongoing debate on how Flexicurity should be defined. Wilthagen
(forthcoming) gives an answer to how it could be formulated:
“Flexicurity is (1)a degree of job, employment, income and combination security that
facilitates the labour market careers and biographies of workers with a relatively week
position and allows for enduring and high quality labour market participation and social
115
inclusion, while at the same time providing (2) a degree of numerical (both external and
internal) functional and wage flexibility that allows for labour markets’ (and individual
companies’) timely and adequate adjustment to changing conditions in order to maintain and
enhance competitiveness and productivity.” Wilthagen (forhtcoming)
Flexicurity has surely not become a mainstream policy strategy and it does not imply a
convergence in the regulation of non-standard work. Moreover attention should be drawn
towards the ideological use of the concept. One could very well imagine that the security part
of the flexicurity strategy is merely used to sell the flexibility part of it.
Flexicurity policies
can be analysed as types of trade-offs. These trade-offs can be between individuals, companies,
groups of workers or entire workforces, sectors etc. Flexicurity strategies or policies are
strongly connected to the numerical flexibility concept as defined above, they often
incorporate elements of transitions. A matrix illustrating the trade-offs at hand can be
established as follows:
Table 2 : Flexibility versus security trade-offs
Flexibility/security
Job security
Employment
Income security
security
Combination
security
Numerical-external
Numerical-internal
Functional
Source : Wilthagen (forthcoming)
Two countries are often put forward as representatives of flexicurity policies, namely the
Netherlands and their ‘Polder Model’ and Denmark with their high level of social security
level combined with a low labour market protection degree.
In the Netherlands fixed-term contracts and part-time employment was promoted via
policies and efforts where made to add security to these types of jobs. The trade union
movement was deeply involved in this process and assured a consensual transition. In
Denmark the strategy is quite different as the flexible labour market regulations allow for
easy hiring and firing already, however effort has been deployed to guarantee fluent labour
market transitions via active labour market transitions.
The strategies have been quite successful in fulfilling their aims, however these types of
strategies come with a high price tag (both countries have the highest rate of employment
policy related spending to GDP) and there are backlogs as well. There is proof that the weaker
individuals are being marginalised in the Danish labour market and sick days seem to be the
way of taking a break from the very productive work form.
116
5. Conclusions
Several questions need to be raised and clarified within the flexicurity paradigm.
Given
the new nexus policy makers, legislators, trade unions and employers’ organisations not only
have a strong need for new theory-inspired policy models and concepts that promise to
reconcile these allegedly incompatible goals of enhancing both flexibility and security, they
also need a valuation of labour market and employment strategies, and policies such as
flexicurity strategies is - at the end of the day - an empirical matter and should be subject to
empirical, preferably multidisciplinary research.
A detailed analysis is required of the political economy of the flexibility-security nexus and
its implications for industrial relations theory. Such a study should include a critical
assessment of the origins, developments, key actors and their interests with respect to EU
and national discourses on the interrelationship and compatibility of labour market flexibility
and security. The main argument behind this is that flexicurity should not be considered a
substitute for traditional social or employment policy, but can make up for the growing flaws
of the established social protection systems. The main thrust of the argument is that more
flexibility needs more not less security
A key-issue is the translation of the political discourse into practical policy making.
Although, we are observing a convergence of the political discourse on flexicurity, at least at
the European level, the actual implementation of the concept into national policies might be
very diverging. Flexibility can be obtained in various manners (internal, external, etc.) and so
can security (job security, employment security, income security). Hence, although the
political discourse tends to be similar across Europe the actual national policy making can
take different forms, hence it is important to investigate the functional equivalence.
This implies that empirical and particularly comparative studies of new trade-offs between
flexibility and security are required. These studies should not only have a special focus on the
(current and changing) roles and playing fields of the social partners, as they are assumed to
play a key role, they should also pin-point the exact effects of the trade-offs. Who benefits
and who loses? In these questions it is vital to incorporate the gender-dimension.
Longitudinal research and datasets on actual labour market mobility and transitions can be
used to map out the consequences for individual workers and employers.
Research is needed to investigate the origins, developments, key actors and their interests
with respect to EU and national discourses on the interrelationship and compatibility of
labour market flexibility and security, with a special emphasis on the EU discourse. It is also
vital to identify the impact of the trade-off between flexibility and security on individuals as
well as focus on the role of the social partners. The question is what are the conditions, if they
exist, to reach the right balance?
117
Berlin 15.12.03
JILAF Invitation Programm for Trade Union Leaders, FY 2003
Flexibilisation at work – the response of the trade unions: Discussion
paper for a new policy for promoting fexibilitiy and social security in
Germany
Carola Parniske-Kunz
DGB – Ecexcutiv Board
I. Current situation
In Germany 2003 has been a year dominated by a very controversal debate about our way
to create more growth and employment and about reforms to prepare our economic and social
system in light of globalization, demographic and social changes for the future.
Economy and labour market are in a deep crisis. Germany’s social market economy ist
facing difficult challenges. High unemployment rates, sluggish growth, a growing budget
deficit and a social security system under distress have made reforms in the areas of economic
an social policy inevitable.
Germany is still rich in ressources it takes for a country to stand the test of time. Millions
well trained men and women live and work in Germany. On the other hand millions of people
were prevented from participating on the working world. Last year the unemployment rate
again exceeded the four million mark. The unemployment rate at the end of this year ist
registering the high level of 11 %.
The crisis of economy and labour market is caused by a “silp ecomic situation“. While the
rationalized, capital-intensive export industrie still experiences growth rates, domestic
demand in goods and services has been declining since the end of 2000. For more than two
years, companies concentrated on the domestic market have always seen a slump in sales and
private consumption stagnated. Business investments declined even further and consumers
reacted with spending reluctance to the economic crisis manifesting itself.
Permanent stagnation, not least triggered by remarkable sudden price falls in the financial
markets, is more and more becoming
a structural problem for the companies. The slow,
permanently declining domestic demand diminishes profit expectations of enterprises, and
cutbacks in capacity are on the forth. Declining profits and piling- up losses together with
crisis related hesitance of banks in the lending business weaken investment and thus
innovation abilities of enterprises.
118
A passive financial policy of government and states has contributed to the aggravated
economic situation. As a result of stagnation and structural mistakes of tax reform, tax
resources of the public sector have dried up. Since costs of the crisis exploded through the rise
in unemployment, the public budget deficit has sharply increased. However, this form of
expansive financial policy can only be explained by a rise in social transfers; by contrast,
public investments whose increase would stabilize the economy are diminishing. Especially
the budget deficits of municipalities are so high that they are missing more and more as
import demand creators of regional business.
The still high reunification costs - about four percent of gross domestic product is annually
transferred from West to East Germany -
in particular, camouflage the real situation of
economy and public budgets. Without this transfer of about EUR 80 billion, public budgets of
West German states and social insurance would already make profits. The German economy
can accomplish this unique historical task only because of its enormous efficiency and
permanently increasing productivity.
The “legend of rigid labour market”
In this situtation there is consensus in the whole societey on the need for reforms. But the
reform debate in Germany strongly contradict the rising needs for a reconciliation of flexiblity
and security by privatising risks and restricting elements of restribution.
Under the title „Agenda 2010 – courage to change“ the German government has launched
an extensive programme to boost economic grothw, safeguard the social security system for
the long term and strengthen Germany as a business location.
The program of the government inculdes a series of measures, which, as the government
puts it, have the central ojective of „greater self-determination for citizenz and mobilisation of
German’s creative and economic potential“. Social wellfare and unenpoyment benefits will be
reorganised with deep cuts in the social system. Instruments of integration in the world of
work on finding work for the unemployment will be speeded up. It is aimed to reform the
dismissal law.
The discussion on a reform agenda in economic and social policies suffers from a one-sided
perspective, suggesting that Germany’s economic problems are caused by overregulation of
labour market and inflexible structures in our social security systems.
Employer’s associations and hardliners of political parties have tried for years to use the
legend of the “rigid labour market“ to cut down worker’s rights. They systematically attempt
to destroy the very foundations of the social market economy by attacking unions, specifically
119
regarding protection from dismissal, works constitution and the debate about the “shop floor
alliances for work“.
Germany does not need a new labour market constitution. The “rigid labour market”
approach has been empirically refused. The German economy can use multi-faceted
instruments of flexibilization options to generate employment. As the Chancellor said quite
rightly, the effect of reforms already adopted by the red-green Government to open labour
market, must not be diluted by ever new so-called “reform proposals”. The discussion about
amendments regarding protection from dismissal has produced precisely the opposite effect.
Thus, impulses for fresh employment are not to be expected even if so-called “psychological
hiring obstacles“ which would not stand in the way without such discussions, were removed.
This is all the more true for planned amendments for social selection.
New rules regarding the introduction of mini-jobs and basic revision of sub-contracted
labour have paved the way for additional flexibilization opportunities in plants and
companies. Against this backdrop, the demand for a new “labour market constitution” reveals
itself as euphemism in the disguise of special economic zones and less bureaucracy. The
changes planned by the Federal Government regarding deregulation are appropriate means
to foster growth and employment. Deregulation, however, must not be abused as a cloak for
negative interference in material rights of workers.
The economy is anything but tied up. On the contrary, the growth phase from 1998 to 2000
proves that steady growth of gross domestic product with real growth rates of two per cent
and more, together with an increase in employment of 1.7 million employees compared to
1997, is possible. Thus, the bad condition of our economy cannot be reduced to structural
problems but mainly be explained by decreasing demand in goods and services.
Germany is one of the strongest national economies in the world. The strength of German
export trade within the current world wide economic framework conditions illustrates the
country’s economic efficiency. Lack of international competitivness ist out of question.
II. Felixibilisation at work - DGB reform-proposals
The reform agenda of DGB on economic and social policy is focused on changes in economic
and financial policies. The concept is a reaction on Federal Government’s attempts to
overcome the crisis in growth and employment through social measures at the expense of
insured employees and pensioners. It is also a response to the political fanatism of several
employers’ officials aiming at substantial destruction of the welfare state. The DGB agenda of
economic and social policies elucidates that a race for the extent of social cuts can only
120
aggravate the crisis in growth and employment. The far-reaching problems cannot be solved
by cuts in the social welfare system. Therefore, Germany needs the courage for change.
Yet, the development of economy and labour market indicates the insufficiency of level
saving measures; the employment crisis can only be managed when real growth rates
overtake productivity development. Reforms based on one-sided relief of enterprises and
financial burdening of consumers – as planned in the Agenda 2010 of the red-green coalition –
do not pave the way out of the crisis for Germany. Our country needs reforms clearly designed
to push economy and labour market forward again. The lost confidence of both enterprises
and consumers can only be regained, if economic policy finally establishes reliable and stable
framework conditions for the future planning of enterprises and private households. Basically,
two central reforms are needed:
· Our country’s economy needs a profound redirection of economic and financial policies,
now. In times of crisis, a policy aiming at growth and employment must give strong
impetus for investment, innovation, and considerable strengthening of demand.
This
urgently requires adaptation of the EU stability criteria dealing with both the economic
situation and crisis. Furthermore, a fair, employment oriented tax distribution would
give leeway for consolidated future investments on appropriate, higher than today’s,
level.
· A policy for growth and employment must also help to reduce social security
contributions without impeding economic development. What is needed is reorientation
to gradually relieve labour-intensive companies, just like low and average income
brackets, by funding social security systems from tax revenues to a growing degree.
Social insurances must be renewed in such a manner, that – the intended 8.5 per cent
average - cuts in social security contributions will not increasingly put the burden of
life risks like unemployment, sickness, and age on employees’ shoulders. A modified
taxation leading to more efficiency, competition, and fairness, re-establishes the trust
urgently needed in today’s insecure economic and labour world.
Reforms for more employment and training
Decisive for stabilization of the social systems are not only demographic development,
labour market data, and wage- and salary level, but also development and changes of
individual biographies.
A successful strategy must target at improving employment opportunities of the youth and
increasing employment quota of older people and women. This takes corrections not yet being
121
considered in the present financing debate. The current average age at pension entry is 60.2
years. Only 50 per cent of companies in Germany have employees above the age of 50.
With the present programme, Federal Government blazes the wrong trail for older people:
more flexible time limits settled for people older than 52 years do not create employment.
Intended changes in security against dismissal make dismissals of older people easier and
thus promote their exclusion. Reduction of the unemployment benefit payment period for
people older than 46, reduction of unemployment relief to public assistance level, and partial
privatization of health care bear a high risk of causing poverty. Transitional arrangements
will not prevent this. The Federal Government programme combined with a reduction of
pension level through modification of the pension formula will not directly affect today’s
elderly people but, in the medium to long term, the majority of our society. These proposals
are not socially justifiable and their economic consequences will have a dramatic effect on our
social insurance systems.
DGB rejects such a course. Promotion and prolongation of employment biographies must
form the foundations for efficient relief of the statutory pension insurance. Sheer appeals to
companies for offering a sufficient number of places to train and employing more of the older
people again, have proven to be ineffective.
DGB proposes a targeted offensive for employment, training and qualification. The goal is
improvement of young peoples’ employment opportunities and promotion of integration of
older people and women.
Initiative for employment and qualification
In order to make better and longer use of older peoples’ competence and thus cushion the
effects of demographic development, DGB suggests an initiative for employment, education,
and skill improvement: It is necessary to foster shop floor, bargaining, and re-orientation of
age-specific and age-oriented still development, working time schemes, as well as health and
safety at the workplace, first of all in SMEs.
・Companies are granted financial assistance
when offering shop floor further training
schemes for older employees. Now, they have to claim this assistance and offer
appropriate models.
・Announcements of companies saying they want to invest more in skill improvement of
employees must be followed by pertinent action, finally.
Highly skilled employees can be placed in a flexible manner, thus being protected from
unemployment to a high degree. Statements voiced and actions undertaken by
122
employers, however, quite often drift far apart as indicated in the difficulties
encountered when transposing the collective agreement on skill development in
Baden-Württemberg’s metal industry. The aggrement focuses on improving the
availability of and participation in training to improve adaptability to change. All
employees, including those on parental leave, are entitled to discuss qualification needs.
Time spent on training is paid as regular working time. Focus is placed on older
workers and special training programmes for low-skilled workers are to be designed by
the employer and the members of works councils. Employees who have worked for the
company for at least five years have the right to take a sabbatical of up to three years
and to use this time for their personal job-related development.
・DGB suggests to further employers’ unemployment-benefit-compensation obligation for
the case of dismissing older employees. Following the Austrian practice, companies
could pay a labour market contribution, if company-motivated dismissals results in
unemployment. This contribution is to be dropped if the company has executed transfer
measures to prevent unemployment. DGB suggests revenue-independent utilization of
the labour market contribution. The means will be used to finance corporate further
training and transfer measures for older employees and to raise wage cost subsidies for
employment of older unemployed persons.
・DGB demands significant improvement in quality assurance and transparency of
further training offers. This includes implementation of Gender-Mainstreaming,
country-wide consultancy in the proximity of living quarters, as well as standards for
and certification of formal, unsettled, and informal learning. There is a need for a
Federal Framework Law and a Federal Law for vocational further training in line with
the Federal Vocational Training Law.
・Amendment of Federal Vocational Training Law (BBiG)
Good employment opportunities depend on good vocational training. Promoting equal
opportunities independent of age, gender, ethnic belonging or disablement, is
considered a cross-sectional task for the future. Anchored down in to be-amended BBIG,
legal claim on training must be provided, a modern foundation for basic vocational
training must be laid, and the scope of validity of legal provisions must be increased.
・Better framework conditions for employment opportunities of women enabling increase
of the number of women in work are required: This includes nationwide provision of
day-cares such as day nurseries, kindergardens, and all-day care at school to establish
compatibility of family life and gainful employment.
123
Organizational reform of the Federal Labour Office
The financing of labour market policy must be designed responsibility-related. Efficiency
reforms, initiated in the course of implementing the Hartz Commission, must therefore be
assisted by reorientation towards tax-based funding of general tasks in society.
The re-design of unemployment relief and public assistance shall in no case result in public
assistance neediness of unemployed persons. The reform must focus on the provision of
extensive supportive measures combined with an integral offer of services. DGB strictly
rejects collective cuts of benefits and abolition of unemployment relief. DGB also refuses real
abolition of the already tightened reasonableness criteria after 12 months, since it would lead
to a serious drop of general skill level.
DGB supports the re-structuring of the Federal Labour Office The organizational structure
of the Federal Labour Office must be optimized in such manner that employment
arrangement is the primary task and that demand and supply meet directly.
・Employment Offices must be transformed to modern job centres where unemployed
persons find tailor-made support in finding a job. Job centres are focused on providing
individual, purposeful assistance in job seeking rather than on granting unemployment
benefits. In addition to employment arrangement, the job centres offer supportive
measures like addiction and debt counselling among other things.
・Furthermore, the Hartz report outlines, that the presently granted child-care allowance
for unemployed raising children is insufficient for overcoming the obstacles on the way
to enter either employment or integration schemes. Provision of child-care facilities is
rather a civil responsibility which should be financed by taxes than it is a task of the
Employment Offices. Yet, Employment Offices can contribute to an increase of women
in work establishing compatibility of family life and gainful employment.
・This demands support in finding child-care facilities and co-ordinating qualification
schemes with the opening hours of local child-care facilities. Furthermore, Employment
Offices can contribute to the establishment of further child-care facilities with their
funds and instruments, like employment generating infrastructural development ,
child-care lump sums, job creation scheme funds, and, in cooperation with
municipalities, parents’ contributions.
・Women still seeking a care facility for their children shall not generally be refused in a
modern job centre. DGB appreciates the intention of municipal finance structural
commission, to put this requirement in practice for able to work single-parent
124
recipients of public assistance. However, this part of the agreements must be put in
practice for all the jobless parents able to work.
・Long-term unemployment can only be reduced if low-skilled persons and problematic
groups especially in economically underdeveloped regions are still supported. A purely
business-oriented labour market policy giving priority to cost-benefit aspects would
only increase problems of structural unemployment. Public employment promotion
especially in problematic regions, must be stabilized to maintain employment
capability of problematic groups.
Flexibility on the labour market
In difficult economic times, efficient employment strategies must start from a new type of
working time flexibility. Anticipatory personnel planning may overcome economic bottlenecks
without laying off people, balance out skill deficits, establish compatibility of family life and
gainful employment, and thus redistribute work in a productivity enhancing manner. This
requires appropriate framework conditions.
Working time flexibility
・Legal provisions are required to protect working time accounts from insolvency. Only
reliable accounts are attractive, increasing the readiness of employees to accept flexible
working time patterns. From an employment perspective, flexible working hours must
be used, to an increasing degree, to reduce the high number of extra working hours.
・Reduction of extra working hours by legal limitations is urgent; parties to collective
agreements have rendered contributions in this sense, now, their efforts must be
substantiated by the corresponding legal provisions.
・ In the eyes of DGB, modern and flexible working time patterns offer enormous
employment potential which needs to be exploited more by promoting appropriate
part-time schemes not only for women but also for men and by developing more
working time models based on collective agreements. DGB demands preferential
taxation on innovative working time schemes to safeguard employment even in
difficult economic times.
Growth and employment through innovative collective bargaining policy
The Chancellor’s profession of loyalty to free bargaining and co-determination is an
important message for a future-oriented model of social market economy. Flexibility in
collective bargaining, the demand of the day, underlines what is taken for granted. It is alive
125
and further developed by the trade unions. In as much as 100 branches of industry, a
workforce of 13 million people and employers can apply such exceptional rules. The unions,
however, want a controlled flexibilization under specific conditions regarding the collective
agreements negotiated with the employers.
Ideas of so-called “corporate alliances for work“, spread by many representatives of the
employers’ camp but also afloat in the most various currents in almost all political parties,
would reduce employees to petitioners vis-à-vis their employers. Precisely this would be the
case if arrangements deviating from existing collective agreements were made without
actively involving trade unions and their associations in the forefield, with wage and social
dumping in its wake.
For this very reason, free collective bargaining must be assured, just like its priority to rule
minimum conditions and the preferential clause. For, collective agreements safeguard income,
working conditions and social peace. In addition, by focusing competition of companies on the
quality of goods and services, as well as on the innovative strength of firms, they assume a
structural function. This principle shall guarantee that companies need not to compete for
lower wages and worse social benefits. There resides a decisive reason for the high level of
productivity and international competitiveness of German companies.
By buffering wages and salaries to lower levels in phases of decline, collective agreements
also stabilize general demand in economy. By orienting agreements on general economic
efficiency and the target inflation rate (of ECB) in phases of recovery, remuneration does not
represent an inflationary hazard. This reasonable principle must survive as core of social
market economy.
・In order to safeguard employment in times of crisis, the unions examine regulations
with employers for collective bargaining in branches of industry where controlled
flexibilization is not yet an option for collective agreements. This scope of action, by any
means, must be created within, and never outside, collective agreements, like e.g. in
law. Free collective bargaining, anchored down in our Constitution, must be
maintained.
・Competitiveness of companies is only ensured by high skill levels of the workforce, and
good training is the best guarantee for a job. Therefore. In future collective bargaining,
the unions will see to it, all the more, that training and further training are considered
in collective agreement.
・In the bargaining round 2002 for example the metal workers union (IG Metall) made
126
suggestions supported by DGB to more strongly consider the plant level in designing
wages. In doing so, part of the bargaining volume to be agreed upon by unions and
employers associations can be used to finance deviating agreements on flexibilization
based on collective agreement – like wage increases, further training, employee shares,
or reduction of working hours. The Verdi agreement for the banking business indicates
that parts of the annual income can be coupled to company success and employee
annual performance. Lower entry levels for former long-term unemployed people, as
agreed in the chemical industry, belong to repertoire by which collective agreements
may be enhanced.
・A higher degree of time autonomy offers a balance between increasing time-intensive
project work and the need of the workforce for phases of compensation or earlier
retirement. Therefore, in the years to come, the unions want to negotiate more with
employers about long-term working time accounts. Such credits comprising several
months or years must be protected by law from loss due to insolvency of a company,
especially in this bargaining field.
・Finally, co-determination in plants and companies must be strengthened in many of
theses projects. If unions are prepared to more strongly orientate their bargaining
policy to company interests, a higher degree of co-determination is required, all the
more.
・Consultation rights of works councils must be enhanced in case of limited contracts,
temporary and sub-contracted work, due to presumable extension to even more
“atypical” forms of employment.
Due to company sizes falling below legal thresholds, meaningful employee involvement
is prevented in many companies. Presumably, companies will grow smaller and smaller
which need to be considered in future amendments of laws.
It is not conceivable for future industry and science-based societies, to have safe
companies without direct involvement of people in business processes and decisions. It
is necessary to further expand multifaceted forms of worker participation, even in
success and assets of a company, and to ease such involvement by appropriate legal and
taxation rules.
127
III. Innovative developement of work
In recent years „fexibilty“ has become one of the keywords of political as well as scientific
debate on the future of work. There has been indeed an developement towards the increasing
flexibilisation at employment and work organisations also in Germany as well as in other
European countries.
For workers, working life is becoming more complex as working patterns become more
diverse and irregular. A number of transitions need to be managed succsessfully, including the
transition from school to work, between jobs and working statuses, between work and
training, between career breaks and care periods, between working life and retrement.
There is a trend towards increasingling differentiated working patterns cross country as
well as an increase in the proportion of the workforce that is non standard.
Just like all developed states Germany is experiencing a fundamental change in its
economic and social structure that is primarily due to the transition from an industrial society
to an information and service society.
Development in the 21st century is characterised by the synergy of production, services and
information. It will require new forms of human work that have very little in common with
the structures and working conditions established in the previous century.
More than ever before, the working world of the future will focus on the individual, his
skills and knowledge, his creativity and motivation, and his employment behaviour. Human
resources will become the most important source of economic success, and also of innovation
in the business world and society.
Consequently, it is not just employees who are called upon to maintain their qualifications
and employability. They must be supported in their efforts by companies, unions and policies
that ensure suitable framework conditions and prerequisites.
There is need for a new balance between business success, human-oriented working
conditions and employment development, as well as individual methods and coping strategies
that give working people a means for orientation and development in a rapidly changing
working world.
There is also need for a comprehensive definition of innovation. Time-proven practices,
principiples and strategies for innovation, which were strongly geared to the production of
physical/material goods, are no longer sufficient for coping with the challenges associated
with these changes.
128
The development and use of human resources will become a decisive factor for corporate
success. The capacity of companies to act and change is largely determined by the skills and
potentials of their employees.
The promotion and development of personal skills is the structural prerequisite for
successful
innovations,
new
products,rocesses
and
technologies.
In
terms
of
sustainability,innovations are most successful if they incorporate social, organisational,
economic, human, technical and ecological aspects –as also revealed in the "Humanisation of
Working Life".
The competence, creativity and motivation of the staff are the source of the capacity for
innovation and transformation in companies. In other words, human resources are the most
important factor for innovation. Consequently, the employability and development options of
the individual must be enhanced by developing competence and shaping the working and
living situation in a manner that promotes learning and good health.
Finaly: It is nessary to increase flexibitity without underminding the need for human work
and security. Therefore German trade unions are discussing a new concept of “flexicurity“.
The concept deals with the challenges arising from the trends toward flixible labour markets
and working biographies as well the pluralisation of life styles. It focuses on an reconsiliation
of flexibilty und security as an alternative a policy of sheer deregulation.
129
Flexibilisation of Work: The Responses of Trade Unions
Mr. Tom Saxén
General Secretary
Council of Nordic Trade Unions NFS
Flexibility, labour market structures and unemployment
It is often said that efforts to protect workers from risks and hazards of working life
generate labour market rigidity. A common argument is that even though solidarity-based
wage policy, protection against dismissal, as well as unemployment benefits and organization
of workers into unions aim at improving the position of workers, they may, also, yield other
results. It is often argued that labour market rigidity, as a result, leads to permanently higher
unemployment. The fact is that unemployment splits people into two groups: the well off
employed and the badly off unemployed. It is further argued that this unfair division can be
dealt with by “flexibilisation” of employment relationships.
USA is typically presented as an example of a flexible labour market model. This is
substantiated by the positive development of employment in the last decade, which has led to
a very low unemployment rate. On the other hand, the US model has been criticized by that
the positive development of employment is based on low real income and growing disparity of
income. This has created a phenomenon known as the “working poor ”, meaning that the
lowest wages are so low that the workers do not receive a living wage. The growing disparity
of income has also resulted in the growth of crime and a great increase in the number of
prisoners.
Moreover, there are good grounds for questioning the entire notion of flexibility, as local
bargaining between individual employees and employers may lead to a rigid pay structure at
national level. This is due to the fact that in a system based only on local bargaining, the only
way to revise wages is to revise, one by one, every individual pay contract. Hence, the system
contains no means to limit revisions exclusively to situations, in which this is particularly
required by economic fluctuations and/or the changes in the profitability of the business. So
constant wrangle about wages within a company can only be avoided by concluding long-term
agreements. As it is, long-term agreements benefit both sides in that both employees and
employers are able to rely on the stability of working conditions also in the case that one of
them realizes that his bargaining position has strengthened.
This also explains the fact that the agreements concluded in the USA are on average longer
than those concluded in Europe. With long-term agreements, both businesses and employees
try to protect themselves from unilateral measures of the other side. In Europe, shorter
130
agreements do well, as there is a consensus in the labour market on that the agreements, as a
rule, are only altered when changes occur in the overall economic circumstances or in the
sector. Not when the bargaining position of one of the negotiating parties at the local level
changes. (Vartiainen 2000, p. 24).
This shows that national agreements are much more flexible than local agreements. Wages
and salaries can been revised in a centralised manner, with no need to renegotiate every
individual wage contract. The USA lacks the mechanism for flexible revision of the pay
structure. This explains the internationally high nominal wage rigidity there. Long-term
wage agreements, on the other hand, add to giving notices, as they make it impossible to
revise wages when there are economic disturbances, which do not depend on either of the
contracting parties. In other words, the US labour market is more rigid than the European, as
the labour market there tends to adapt to economic disturbances more by cancelling
employment relationships prematurely.
Next, I will examine the basic argument claiming that the excessive rigidity of the labour
market causes unemployment, as well as the argument that all economists agree upon this.
Unemployment benefits
Unemployment benefits have been created to guarantee a livelihood for the unemployed
looking for a job. Some say that good benefits may lead to a situation reducing the intensity of
job-seeking among the unemployed. According to the most simplified interpretation, an
unemployed person is not willing to accept a job, if the net wages do not exceed the total net
sum of the unemployment benefit and other social benefits received by a person without a job.
It is, however, apparent that the effects of benefit level on the efforts of the unemployed to
find a job are not this simple. First of all, several studies show that unemployment has a
negative effect on a person’s mental well-being. Working adds to his/her social prestige and
makes it possible for him/her to maintain more varied social contacts.
Secondly, it is not enough to simply compare the level of the initial wage and the
unemployment benefit. When the employment relationship continues, the income usually
increases, if only by seniority and work experience bonuses. Besides, entering an employment
also, usually, opens up opportunities for career development and, thereby, for better income
and pension in the future. This is why an employment relationship is essentially different
from living on employment benefits: a new employment relationship always contains a
possibility of better income in the future, while remaining unemployed always indicates a low
income also in the future. So it seems that the key issue here is this: how many of the
unemployed are marginalized and accustomed to living without a job to an extent that they no
longer take into account the long-term economic consequences of living without a job.
131
Thirdly, it should be noted that long-term unemployment usually puts a negative brand on
a jobseeker among the employers. This is why, if a person is not willing to remain unemployed
permanently, he/she should get a new job as soon as possible after becoming redundant. This
may partly explain why the persons receiving earnings-related benefits are, on the average,
re-employed more quickly than those receiving basic unemployment allowance.
The relationship between high unemployment and the bargaining strength of the unions is
another argument often used to justify the contention that benefits tend to increase
unemployment. The argument goes that unemployment benefits ease the plight of the jobless,
and because of this, workers (both those who have a job and those who haven’t) no longer find
unemployment a problem so serious that it would be necessary to show wage restraint to
avoid it. This is why, the argument continues, the union bargaining strength remains high
even during high unemployment. This argument can be countered by saying that also those
who are employed are forced to shoulder the cost of increased unemployment in the form of
higher taxation, when a decreasing number of employees has to cover the growing
unemployment and social costs.
As the effects of the unemployment benefits on the activity of the redundant jobseekers in
general are unclear, it is necessary to acquire more information about the employment effects
of the benefits by statistical study. In this context, the money value of the benefit (in relation
to average earned income) and the duration of the benefit are the essential structural factors.
The duration of the benefit period may have an effect on how selective a jobless person is in
relation to new job opportunities.
Next, I shall compare the level and duration of the unemployment benefits of some OECD
countries to the unemployment rate of these countries.
The level of benefits
Figure one shows the unemployment rates of twenty OECD countries and the compensation
relations of unemployment benefits (the relationship between average unemployment
benefits and average wages). The figure shows that there is no regular connection between
compensation relation and unemployment rate: among the countries with high compensation
relation there are countries with high unemployment rate (Spain) and, on the other hand,
countries with low unemployment rate (Sweden and Switzerland).
132
Chart1
Unemployment benefit compensation rate and unemployment
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Compensation rate
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30
20
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Compensation rate
Unemployment rate 1989-94
The duration of the benefit period
Unlike in the case of the level of benefits, there is more evidence for that there is more
positive correlation between the duration of the benefit period and the growth and/or
persistence of unemployment. However, as Nickell (1997, p. 67) points out, cause-effect
relationship may also be the opposite: the money value of benefits and the duration of benefits
may rise along with the aggravation of unemployment, because it will become necessary to
safeguard the basic livelihood of a large part of the population. Figure two shows the
unemployment rate and the duration of thebenefit period in years (4=duration undefined) in
twenty wealthy OECD countries. The figure shows a slight correlation between long-term
payment period and high unemployment rate. On the other hand, in some countries (Austria
and (western) Germany) unemployment was low in spite of the fact that benefits were paid
long-term.
133
Chart2
Unemployment benefit duration and unemployment
4.5
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
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Unemployment rate
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Unemployment benefit duration
Unemployment rate 1989-94
Some researchers (see e.g. Nickell, 1977) have presented research results, which support
the positive correlation between benefits (esp. long-term) and unemployment. Nickell (1997, p.
67), however, points out that at least part of this positive correlation is due to the fact that a
better unemployment security tends to increase the supply of labour power, i.e. new people
come to the labour market attracted by better unemployment security. This increase in labour
force is directly registered as unemployed jobseekers, because, in order to be entitled to the
benefit, a person must be registered as an unemployed jobseeker. Nickell substantiates his
argument by saying that the level or the duration of the benefit does not seem to have a
significant influence on the relative proportion of the employed workforce in the entire
working age population.
In other words, good unemployment security does not decrease the
number of the employed workforce but may, instead, attract people from outside the
workforce to register themselves as unemployed jobseekers.
Employees' protection against dismissal
Strict protection against dismissal presumably has both positive and negative influences on
employment and unemployment. Holden (1966, p.33) points out that employees’ protection
against dismissal encourages employers to increase the productivity of employees by training
and other methods instead of getting immediately rid of the less productive employees. On the
other hand, it may prevent new recruitment, as employers fear that they will make wrong
choices, and getting rid of a bad employee will be difficult and costly.
Protection against dismissal may, however, be useful in that it will encourage employees to
134
training. Training can be considered an investment, which, at first, will bring about costs but
which, in the long run, will yield results. If the employer can, as a result of any, even
short-term disturbance in profitability, give easily and quickly notice to employees, the
benefits of the training investments may be so uncertain that employees are not willing to
educate themselves. If regulations concerning dismissal impede quick dismissals, the
employer, in a way, takes responsibility of the employees training cost in the form of
temporary decline of profitability. Protection against dismissal is a kind of insurance for the
employees against dismissal on grounds upon which he/she has no influence. At the same
time it encourages the employee to acquire more training. From e general economic point of
view, this may be very beneficial as it improves the general level of training and skills.
As regards to company investments, protection against dismissal may, of course, also have
negative effects on employment. It may, for example, hamper company risk investment. As it
is, when a risk investment fails, the company will not need the workforce recruited for it, and
a complicated and difficult dismissal process may for this reason prevent the investment
process in advance.
When the market is falling, it is also possible to respond to the decline in the demand of
workforce by reducing working hours or laying people off, not only by dismissals. The
advantage of these arrangements is that employees are able to keep their jobs past the
recession and companies are able to avoid the costs ensuing from recruiting and training new
workforce afterwards. Abraham and Houseman (1992) investigated how the number of the
employed and the number of working hours reacted to the changes in production in 1973-1990
in Belgium, France and Germany, and compared these figures to the corresponding US
figures. When the market was falling, dismissals were resorted to sooner and to a larger
extent in the USA than in Western Europe. The developments, however, were much more
similar in both sides of the Atlantic as regards to working hours. This is how protection
against dismissal may, in fact, maintain employment relationships while not preventing
companies from adapting their workforce when necessary: this adaptation is only done by
reducing working hours, not by dismissals. Adaptation of working hours is also, from the
point of view of income distribution, more equitable, as unemployment tends to increase
disparity of income (unless this is prevented by income transfers). Decreasing the number of
working hours, on the other hand, divides the adaptation costs more evenly among all
employees.
As theoretical arguments on the effects of strict dismissal protection are conflicting, it is
advisable to try and clarify the matter by empiric examination. Figure 3 shows the correlation
of unemployment and dismissal protection. It seems that there is no unambiguous correlation
between the two. It is, however, interesting that Spain excluded, the average unemployment
135
rate is lower in the five countries with the strictest dismissal protection than in the five
countries with the loosest dismissal protection.
Chart3
Protection against dismissal and unemployment
20
18
16
14
12
10
8
6
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2
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20
15
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Unemployment rate
Protection against dismissal
25
Protection against dismissal
Unemployment rate 1989-94
The message of the figure is consistent with the conclusions of the comprehensive study on
the labour market effects of dismissal protection published in the OECD Employment
Outlook (1999, p. 45-132). The material concerning the present state of the regulations on
protection against dismissal in the OECD countries used in the study was all as current as
possible. The most essential conclusion of the study is that regulations concerning protection
against dismissal do not seem to have any effect on the level of overall unemployment.
Bargaining System
Next, I will review the factors by which wage setting and wage bargaining systems in
various countries differ from each other.
Furthermore, I will consider whether, on the basis
of statistical comparison, there is evidence to be found to support the argument that high
unemployment can be systematically connected with factors characteristic to certain
bargaining systems and hence with the systems themselves.
The roughest division between various bargaining systems is perhaps the centralisation of
the bargaining system, in other words, the number of the units negotiating over wages and
conditions of work. The two extremes are local bargaining (individual employees and
employers bargaining over wages and other conditions of work) and centralised bargaining
136
(involving labour market confederations and covering all sectors). Between the two extremes
fall the various forms of industry-wide bargaining, carried out by sectors or by the trade. The
US labour market exemplifies bargaining systems decentralised to company or place of
business level, while the Nordic countries and Austria are typical examples of centralised
bargaining. Industry-wide bargaining at union level is most common in several Central
European countries, e.g. Germany and France.
Collective bargaining, however, remains insignificant, if it, in practice, only covers a small
part of employees and employers. Collective agreement coverage is, therefore, another factor
by which agreements can be classified. How great a part of all employers and employees are
covered by collective agreements? In Denmark and Sweden, collective agreement coverage is
mainly based on the high organisation rate of employers and employees, while in most other
EU countries collective agreement coverage is materialized via legislation concerning general
validity of agreements. In Great Britain, agreements are, as a rule, concluded locally, and
general validity is in practice non-existent there.
In the context of employment and other economic effects, economists have raised a third
factor beside (maybe even ahead of) centralisation and coverage: the coordination of
bargaining both among the employers and employees. By coordination of bargaining they
refer to the level at which both unions and employer organisations agree, amongst themselves,
upon their bargaining objectives and their materialization, although the actual bargaining is
carried out in a decentralised manner between sectoral employee and employer organisations.
For example employer organisations can, among themselves, agree upon a joint ceiling for pay
rise, meaning that no employer organisation will agree to a higher pay rise in spite of the
demands of the employee organisations in the sector. An extensive and strictly followed
coordination therefore does, in the end, yield results resembling the results achieved in
centralised bargaining.
Labour economists, in particular, regard, from the point of view of employment effects,
uncoordinated collective agreements concluded at sectoral level as the worst option of all. In
uncoordinated industry-wide bargaining, both the advantages of local bargaining and
centralised bargaining are lost. At company level bargaining, both sides must take into
account the fact that in case the pay rise is directly carried forward to prices, this may result
in loosing customers to competitors manufacturing the same products. In centralised
bargaining covering all sectors, it is always clear that high pay rise (or rise of labour costs on
the whole) will increase the risk of the growth of total unemployment rate. And growing
unemployment affects everybody, either in the form of rising taxation or directly as a result of
job loss.
In industry-wide bargaining, the elements laying a foundation for wage moderation are,
137
however, weaker. First all, a similar decrease in demand for company products does not
necessarily occur, in spite of the fact that prices will go up because of a wage rise. Then, of
course, the same pressure caused by the wage rise will affect all the domestic competitors in
the same line of business. If, for example, the employees organised in the same industry-wide
union in automotive industry, will get a high pay rise due to industry-wide bargaining, this
will bring pressure towards price rise in all the auto factories in the country. Possible loss of
customers will occur if customers, as a result, choose foreign cars, but domestic competitors do
not pose a threat.
High industry-wide wage rise also increases the risk of growing
unemployment entirely in the sector. Pay rises in an individual sector may not be inflationary
in a national scale, and will, therefore, damage international competitiveness in that sector
only. If the employees in the sector are convinced that they will be able to get a job in other
sectors, in case they would loose their jobs in this one, they may be willing to accept the risk of
unemployment caused by high pay rises.
To summarize: the basic problem with industry-wide bargaining is the way it “outsources”
the employment effects of the wage rise. The total effects of the rise do not directly affect the
employees in the particular sector to the same extent as in completely decentralised or fully
centralised/well coordinated bargaining. This, of course, only applies, if only one sector
succeeds in bargaining for a high pay rise. If, on the other hand, all sectors manage to do this,
negative effects on employment may turn out to be huge. If there is no inter-sectoral
coordination in bargaining, it will always be attractive to individual unions to reach for the
highest pay rise while the others settle for less and thereby guarantee that inflation will be
curbed. So towering pay rise demands are a built-in threat in industry-wide bargaining.
Calmfors and Driffill were the first to present the hump-shaped relationship between
centralised bargaining and unemployment (1988). According to them, the lowest rate of
unemployment is achievable in the two extreme ends of the bargaining system: either by
decentralising bargaining entirely to company level or by centralising it in a way that covers
all sectors. Industry-wide, uncoordinated bargaining was the worst option from the
employment point of view.
Employee organisation rate
Figure 4 shows the organisation and unemployment rates in twenty OECD countries. It
shows that unemployment can also be low in countries with high rate of organisation. No
distinct correlation between organisation rate and unemployment can be found. Economists
are fairly unanimous of the fact that, from the point of view of the unemployment effects, it is
crucial to take into account the level of coordination in bargaining both among employee and
employer organisations.
138
Chart4
Trade Union density and unemployment
80
Trade union density
70
60
50
40
30
20
10
Sp
Fr
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ce
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0
Unemployment rate
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18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
90
Trade union density rate
Unemployment rate
Coverage of labour market agreements
In figure 5, nineteen OECD countries are ranked according to the coverage of agreements.
The figure shows no connection between the coverage of agreements and unemployment. The
result is very interesting as regards to the current debate on collective agreement coverage in
Finland.
Chart5
Collective bargaining coverage rates and unemployment
100
80
60
40
20
US
A
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Un
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Collective bargaining coverage rates 1990
139
Unemployment rate 1989-94
Unemployment rate
Collective bargaining coverage rate
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
120
Centralisation of labour market bargaining
As to the level of labour market bargaining, there is a fairly extensive consensus on that
from
the
point
of
view
of
the
growth
and/or
persistency
of
unemployment,
union/industry-wide bargaining is most problematic. It seems that either fully centralised or
fully decentralised (place of business level) bargaining systems generate the lowest level of
unemployment. This consensus was, however, undermined by the growth of unemployment in
Finland and Sweden in the 1990’s. This was, however, at least in part an illusion. In Sweden,
centralised bargaining had, on the employers’ initiative, already been abandoned in early
1980s. In Finland, on the other hand, mass employment was due to several simultaneous
negative disturbances of demand (decrease in domestic demand, banking crisis, collapse of
Soviet trade and recession in the West).
Figure 6 shows the statistical comparison of the relationship between unemployment and
centralisation of labour market bargaining in 19 wealthy OECD countries. The Calmfors and
Drifill (1988) hump-shaped relationship of centralisation rate and unemployment rate (figure
5 cf.) does not occur here. On the other hand, positive employment effects may also
materialize in industry-wide bargaining, if the sectoral organisations on both the employer
and employee side coordinate their bargaining objectives. In other words, centralisation of
bargaining is not a necessity, if the wage spiral caused by mutual competition on wages by the
unions can be avoided by coordinating the bargaining objectives in some other way. (Another
thing, of course, is how easy this will be in practice.)
Chart6
Degree of concentration of collective bargaining and unemployment
6
20
16
14
4
12
10
3
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2
6
4
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Ca nd
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pa
n
US
A
0
Degree of concentration 1990
140
Unemployment rate
Unemployment rate
Degree of concentration
18
5
Coordination of bargaining in unions and employer organisations
Figure 7 shows bargaining coordination of unions ranked by size, from smallest to largest:
average unemployment is lower in the countries where wage goals are more coordinated than
in countries with lesser coordination.
Chart7
Trade Unions’ coordination of wage bargaining and unemployment
Coordination rate
3
2.5
2
1.5
1
0.5
Sw
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Un
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Unemployment rate
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
3.5
Coordination of wage bargaining
unemployment rate 1989-94
Figure 8 shows a comparison of the coordination of bargaining objectives in employer
organisations. As to the effect of the coordination on employment, it is parallel to that of the
unions (figure 7). Average unemployment is lowest in the countries, where the employers
coordinate the bargaining objectives more effectively among themselves. It seems that it is
not necessary to change over to a fully decentralised bargaining system (company and place of
business level) in order to settle the unemployment problem. Rather, the conclusion might be
a more effective exploitation of the strengths of the organised social partners and the
established labour market systems.
141
Chart8
Employers’ coordination of wage bargaining and
unemployment
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
Un
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Unemployment rate
Coordination rate
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
Coordination of wage bargaining
Unemployment rate 1989-94
Interesting enough, there is no backing to be found in the OECD Employment Outlook
either for the argument that local bargaining system would automatically improve
employment or reduce unemployment. In fact, the OECD found no distinct correlation
between the centralisation or the coordination rate of labour market bargaining and the
employment or unemployment rate. On the contrary, the development of employment and
unemployment has been poorer in the countries, which chose a more decentralised and
uncoordinated bargaining systems in the 1980s’ than in the countries, which maintained the
centralised and coordinated bargaining systems (OECD Employment Outlook, 1997, Chart
3.2)
Wage policy and wage dispersion
The unions have, particularly in the Nordic countries, traditionally set it as their target to
restrain the uncontrolled growth of wage differentials. The aim of taking into account the
income development of employees in all sectors has led to concluding agreements with general
wage increase covering all sectors. Centralised labour market agreements have served as an
instrument for general wage rises.
One of the basic wage policy aims of the centralised
labour market agreements is, after all, the prevention of continuous and unlimited growth of
wage differentials. This requires that the unions agree with each other upon industry-wide
wage rise goals in such a way that the entire economic margin for wage increase in the
economically most viable sectors and enterprises will not be directly included in the wage
rises bargained for.
142
The wage policy based on centralised collective agreements slows down the growth of
income disparity. It is, however, often argued that small wage differentials encourage
unemployment. The mechanism referred to here is the same as the one referred to in the
context of minimum wages: as a result of small wage differentials even the lowest wages are
too high for the labour force with the lowest productivity to be employed. Based on this
explanation, the high unemployment in Western Europe at the end of the 1990s’ was said to
be a result of the fact that the relative demand for weakly trained workers with poor skills
had further decreased. The argument was grounded – once again – by comparing the
divergent developments in the USA and Western Europe. In the USA, income disparity was
allowed to grow. This led to dropping of the real wages of the lowest paid workers. According
to a general argument, this saved the low productivity jobs and thereby kept the
unemployment rate low. Western Europe is, according to this explanation, the other side of
the coin: wage differentials have not grown at the same extent, but unemployment is at a
higher level than in the USA. The change in the relative demand of weakly trained work force
has, again, been explained by the increasing demand of skills brought about by new
technology and by the growing use of cheap labour in the developing countries due to
globalisation.
Allowing for the wage differentials to grow has been proposed as a means to prevent
harmful employment effects. Cutting unemployment benefits and social welfare are also
included among proposals for the same effect. These recommendations are, however, biased,
as labour force can also be trained. The fact is, that a change in the structure of labour force
demand does not necessarily mean that the total demand for labour is on the decrease. It
should be taken into account that allowing for the lowest wages to drop further is not an
answer to the underlying issue: requirements for training and skills of the workforce have
changed. By allowing for wage differentials to grow we can only – at the most – preserve some
of the jobs, which would otherwise disappear. Growing wage differentials may, however, have
other, totally uncalled-for consequences. First of all, part of the work force will not receive a
living wage, and secondly, the demand for more trained and skilled labour force will not be
satisfied. Hence, versatile development of training opportunities to meet the changes taking
place in the structure of demand for labour without delay will take into account both the
living wage requirements and the changing needs of businesses. This a major challenge for
the Finnish society and a future task for the country’s education system. Also the role of
active labour policy must be emphasized in this context.
The wage policy pursued in centralised bargaining tends to cause changes in job structure.
This is due to the fact that wage goals are set in proportion to the average economic
productivity. This is why the wage policy based on centralised bargaining is “rewarding” to
the sectors and business with a higher than average growth of productivity, creating a
143
framework for their growth and creation of new jobs in these sectors and businesses. All
sectors do not, however, have opportunities to raise productivity in a similar fashion, and
therefore setting wage goals on the basis of average productivity growth may contribute to a
loss of jobs in less productive undertakings and sectors. Some service sectors are a good
example of this. Many public sector jobs are a problematic from the point of view of measuring
productivity. This is why solidarity-based wage policy is sometimes problematic as regards to
labour costs. Wage policy holding down wage differentials does, however, create conditions for
maintaining a qualitative public sector, as it guarantees that public sector wages will not be
left behind the private sector wages. The public sector is then able to recruit skilled and
motivated personnel (required, of course, that public sector financing is secured).
When
considering the differences of productivity in various sectors, it is important to keep in mind
that a well-functioning public sector forms a foundation for private sector development and
productivity growth. In other words: no sector works in a vacuum.
International competition and labour market regulation
To conclude, a few words on globalisation.
It has often been claimed that globalisation or the growth of international trade and
economic activity require deregulation of labour markets. (e.g. Horst, 1999, p. 45). This is
substantiated with a claim that maintaining competitiveness and thereby keeping the jobs
require more flexible employment relationships and labour market structures. Jonas Agell, a
Swedish researcher, has however claimed that growing internationalisation may, in fact,
require that conditions of employment relationship should be regulated more than before.
The most significant arguments on the need of regulation of the labour market in the
conditions of growing international trade in Agell’s study are empiric. Agell shows several
correlations between the openness of the economies of OECD countries and the indicators
describing labour market regulation. His observations do not support the argument that
success in international trade would require deregulation of labour markets. In fact, the
results are quite the opposite: according to various indicators, the countries where labour
markets are most regulated are the same countries, which are best integrated in
international trade.
On the whole, studies do not in any way support the repeated demands on deregulation of
labour markets because of globalisation. Rather on the contrary. The comparison made among
the OECD countries shows that at least until now, a great share in foreign trade correlated
with a labour market regulated above the average. In other words, employment or other
reasons did not force the countries well integrated in the international trade to deregulate the
labour market.
144