マグネシウム欠乏が鉄代謝調節機構に及ぼす影響

マグネシウム欠乏
マグネシウム欠乏が
欠乏が鉄代謝調節機構に
代謝調節機構に及ぼす影響
ぼす影響
石崎なつみ・動物栄養科学分野
【目的】鉄は全ての生命に必須の微量元素である。一方、その過剰は体に悪影響を及ぼす
ため、動物ではその恒常性が Hepcidin と呼ばれる肝臓で合成される鉄吸収抑制タンパク質
によって制御されている。すなわち、肝臓において鉄過剰で増加する BMP が Hepcidin 発現
を促進し、小腸における鉄吸収を抑制する。マグネシウムが欠乏すると肝臓で鉄が過剰に
蓄積し、その結果として酸化ストレスが誘発されることが示唆されている。マグネシウム
欠乏は先進国においても高頻度で発生しているため、マグネシウム欠乏が鉄の過剰蓄積を
引き起こすしくみの解明が求められるものの、未だ明らかになってはいない。そこで本研
究では、マグネシウム欠乏ラットにおける Hepcidin の発現を検討し、マグネシウム欠乏が
鉄過剰蓄積を引き起こすメカニズムの解明を試みた。
【方法】4 週齢の SD 系雄ラット 36 匹を、18 匹ずつ対照区(飼料中マグネシウム濃度:497
mg/kg)とマグネシウム欠乏区(飼料中マグネシウム濃度:50 mg/kg)に分け、5 日間の馴
致を行った後、1 区 6 匹として 7 日間・14 日間・28 日間飼育した。試験終了後に肝臓を採
取し、原子吸光光度計を用いて肝臓中鉄濃度を、リアルタイム RT-PCR 法を用いて鉄代謝関
連タンパク質(Hepcidin、Bmp6、BMP レセプター)の mRNA 発現を測定した。
【結果と考察】試験開始 28 日目に肝臓中鉄濃度および Bmp6 mRNA 発現は、C 区と比べて MD
区で有意に高値となった。一方、C 区と MD 区における肝臓中 Hepcidin mRNA 発現に差は見
られなかった。さらに、BMPⅠ型レセプター(Alk2・Alk3・Alk6)とⅡ型レセプター(Actr2a・
Actr2b・Bmpr2)の mRNA 発現を測定したところ、Alk3 と Alk6 を除く BMP レセプターの mRNA
発現は MD 区の方が有意に低かった。以上の結果から、マグネシウム欠乏時には肝臓中鉄蓄
積増加によって BMP 発現は増加するが、BMP レセプターなどその下流のシグナル伝達が抑制
されるため Hepcidin 発現が促進されず、その結果、鉄代謝恒常性が乱されることが示唆さ
れた。