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お 客 様 の た め の 技 術 情 報 誌
◆特集…信頼性試験
■技術レポート
○プリント配線板の吸着水のはたらきと
イオンマイグレーション発生プロセス 1
■技術解説
○電気・電子分野における環境試験の基礎知識
−Part3:公的な環境試験規格が制定される迄の
経緯に関する基礎知識(前編)− 6
■トピックス1
○弊社製品の2000年問題への対応 11
■トピックス2
○枚葉式クリーンオーブン HSC-Ⅳのご紹介 12
株式会社
技術レポート
プリント配線板の吸着水のはたらきと
イオンマイグレーション発生プロセス
猪木 寛子* 田中 浩和* 青木 雄一* 山本 繁晴*
本報告は環境試験におけるプリント配線板の絶縁抵抗特性とイオンマイグレーション発生に
関する報告である。著者らは、様々な環境試験条件における絶縁抵抗を測定した結果、絶縁
抵抗値の初期的変化が水の吸着* 1 と電気分解に関係することを明らかにした。また、イオン
マイグレーション発生に関して、金属イオンの溶出は、水の電気分解による電極近傍のpH
変化によって起こり、印加電圧およびpH に影響されることを確認した。
1.はじめに
近年、電子機器の小型化、軽量化に伴い、プリント配線板
の絶縁信頼性、特にイオンマイグレーション(以下、IM と
陽極(+)
する)が重要な問題となっている。
環境試験中におけるプリント配線板の絶縁信頼性評価方法
として、高温高湿試験中の絶縁抵抗測定が規格化されている
(表1)1)。これらの規格は、規定の電極にフラックスやはん
陰極(−)
だペーストを塗布し、基材樹脂やフラックスへの水の吸湿拡
散と、印加された電界による金属の溶出還元作用によって生
じる絶縁劣化の進捗を経過時間によって評価するものである。
環境試験中の絶縁抵抗値は、水分の基板表面への付着や吸
写真1 ガラスエポキシ基板上に発生したデンドライト(× 60)
着による結果として生じる電気分解、金属イオンの溶出と拡
散、金属イオン還元によって IM の発生として現れる(写真
陰極(−)
1、2)。
本報告では、水の吸着による絶縁抵抗変化とIM の発生の
陽極(+)
相関に着目し、①環境試験中の水の吸着と絶縁抵抗特性、②
水の電気分解による電流値変化特性、③電極近傍 pH 変化と
金属イオンの溶出、④IM 発生とpH の影響に着目し、実際に
環境試験を行い、絶縁抵抗特性値と IM 発生との関係につい
て検討することによって、IM 発生メカニズムの解析を行っ
たのでその結果を報告する。
写真2 紙フェノール基板、基材中の CAF *の例(× 30)
* CAF = Conductive Anodic Filaments
表1 主な絶縁抵抗評価規格
規 格
試 験 名
試 験 条 件
①SAE - J - STD - 004
フラックス、はんだ、はんだペーストの
表面絶縁抵抗試験
②JIS - Z - 3284
付属書14
ソルダペーストの
マイグレーション試験
40℃ 90∼95%RH, 1000h
③IPC*- TM - 650 - 2.6.3
プリント配線板の
加湿時の絶縁抵抗試験
35℃ 85∼93%RH, 4days(クラス1)
85℃ 85%RH, 168h
85℃ 85∼90%RH, 1000h
50℃ 85∼93%RH, 7days(クラス2)
印加電圧
測定電圧
50VDC
100VDC
45∼50VDC
100VDC
100VDC
当事者協議
*IPC=The institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits
* 環境試験技術センター
1
ESPEC 技術情報 No.18
2.環境試験中の水の吸着と絶縁抵抗特性
1.00E+13
40℃ 87%RH
状態と密接に関係する。本実験では、高温高湿条件下におけ
るプリント配線板の絶縁抵抗値および吸湿量の変化を測定し
た。表2に試験条件を示す。
表2 絶縁抵抗試験条件
項 目
絶縁抵抗値(Ω)
環境試験中のプリント配線板の絶縁抵抗値変化は水の吸着
3条件
40℃ 87%RH, 60℃ 87%RH, 85℃ 85%RH
印 加 電 圧
50VDC
60℃ 87%RH
1.00E+11
85℃ 85%RH
1.00E+10
内 容
試 験 条 件
1.00E+12
1.00E+09
0
100
200
300
400
500
時間(h)
測 定 間 隔
1時間毎(測定電圧=50VDC)
試 料
銅張ガラスエポキシ(FR - 4)
導体間隔:0.318mm(JIS2型)
図1
環境試験中の絶縁抵抗特性
1
図1に高温高湿試験時の絶縁抵抗特性を示す。試料は、基
絶縁抵抗の連続測定装置(写真3)を用いて1 時間毎に記録
した。絶縁抵抗値は試験初期に急激な上昇を示し、一定時間
後に、ほぼ安定な状態となった。安定状態においては、温湿
度条件が厳しいほど絶縁抵抗値が低くなる特性を示した。
吸湿量変化(%)
材がガラスエポキシ、電極が銅のJIS2 型のくし形電極基板で
ある。測定は、24 時間の温湿度安定後に 50VDC を印加し、
40℃ 87%RH
0.1
60℃ 87%RH
85℃ 85%RH
図2に吸湿特性を示す。吸湿測定は、試料を100 ℃で24 時
間放置して絶乾状態とした重量を初期値とし、一定時間毎の
重量測定より、初期値に対する基板の吸湿量の変化を次式に
0.01
0
より求めた。
100
200
300
400
500
時間(h)
(吸湿後の重量)−(初期重量)
吸湿量の変化(%)=
図2 環境試験中の吸湿特性
(初期重量)
プリント配線板の吸湿は初期に急激な増加を示し、徐々に
増加する特性を示した。また、環境試験中のプリント配線板
の吸湿は、温湿度条件に依存することが確認された。
水の吸着は固体内拡散によるもので、固体の分子間間隙に
水分子が拡散することによる 2)。したがって、吸湿率の変化
は、固体内部への水の吸着量、拡散量、拡散時間などの要因
と考えられ、基材の材質と環境条件により決まると推察され
る。
写真3 イオンマイグレーション評価システム
ESPEC 技術情報 No.18
2
3.検証実験
抵抗から高抵抗へと変化する。やがて、水の吸着が飽和状態
になると、金属イオンの溶出と還元が平衡状態となるため、
3-1 水の電気分解による電流特性
安定な絶縁抵抗値を示すと考えられる。
水の電気分解による電流特性を知るために、常温で下記の
ような検証実験を行った。本実験では、基材への水の吸収* 2
と電極の腐食防止のため、金メッキ電極テフロン基板(導体
間隔 0.318mm)を用いた。電極間に、1 μ L のイオン交換水
(導電率= 2.5 μ S/cm、実測値 pH = 6.6)を滴下し(図3)、
3-2 電極近傍のpH 変化と金属イオンの溶出
電流特性は金属イオンの溶出が関係していることから金属
イオン溶出についての実験を同じく常温で行った。
図5に印加電圧と金属イオン溶出量の関係を示す。銅張ガ
電流の経時変化を測定した。図4に電極表面上に水が吸着し
ラスエポキシプリント配線板(導体間隔0.318mm)の電極間
た場合の、水の電気分解による電流特性の変化を示す。
に1 μ L のイオン交換水を滴下し、銅イオン溶出量を、半定
量イオン試験紙* 4 を用いて測定した。結果より、銅イオン溶
0.318mm
出量は印加電圧に依存していた。
イオン交換水
1μL
また、上記に示す試験方法によって電極近傍の pH 変化を
pH 試験紙を用いて測定した。電極近傍のpH は、印加電圧が
2VDC 以上のときに陽極で pH=3 以下の酸性、陰極で pH=10
以上のアルカリ性を示した(図6)。以下の反応式4)が推察
される。
電極
陰極 : 4H2O + 4e − → 2H2 + 4OH −(アルカリ性)
陽極 : 2H2O → 4H + + O2 + 4e −(酸性)
図3 実験状況
Ta=25℃
10
Au電極
6
5VDC
4
4VDC
3VDC
2
2VDC
0
5VDC
Cu+/Cu2+溶解量(mg/L)
電流(μA)
8
0
Ta=25℃
30
20
3VDC
2VDC
10
1VDC
20
40
60
時間(s)
1VDCでは測定不可(水の理論分解電圧=1.23V)
0
0
20
40
60
時間(s)
図4 水の電気分解による電流特性
図5 電圧−銅イオン溶出量特性
印加電圧が1VDC 以下では電流測定が不可能であった。こ
れは、水の理論分解電圧が1.23V のため、それ以下の電圧で
は電気分解しなかったと考えられる 3)。
また、電流特性は電圧印加直後に、①数秒間で上昇し、そ
H2O
陰極
陽極
電圧印加
の後、②徐々に低下し、③安定する傾向を示した。
電圧を印加すると、その初期に①電極表面にある、電気二
重層*3 に水の電離イオン(H +、OH −)が急速に集まるため、
アルカリ性
(pH10以上)
酸 性
(pH3以下)
電流が急激に流れる。次に、②水の電気分解により徐々に電
極近傍で金属イオンが溶出し、電極付近のイオン濃度が高ま
OH−
OH−
ることから、電極での金属イオン交換が低下し電流値の低下
がおこる。そして、③金属イオンがある濃度以上に達すると、
金属イオンの溶出と還元が平衡状態となるため、電流値が安
定状態となる 4)。安定状態では、水が電気抵抗となるため電
陰極
H+
H+
陽極
(印加電圧=2VDC以上のとき)
図6 電気近傍の pH 変化
流値は印加電圧に依存すると考えられる。
本実験は、短時間の水の吸着と電気分解に関しての実験で
あるが、図1、
2の実験結果から示されるように、環境試験
中における実験結果においても、初期には徐々に吸湿した水
が電気分解し、金属イオンの溶出が始まり、絶縁抵抗値が低
3
ESPEC 技術情報 No.18
銅の表面は、空気中で酸化物皮膜(Cu2O とCuO の混合物)
に覆われており、耐食性を有している。 しかし、酸やアルカ
5)
リ性の水溶液では、銅イオンが溶出する性質を持つ。図7に
Pourbaix(プルベイ)による銅の電位− pH 平衡図を示す 。
6)
図から、電圧が印加された状態で pH が変動すると酸性側で
IM 発生時間を測定した。発生時間とは、電圧を印加してか
らIM が対極に到達し、短絡するまでの時間とした。
今回の実験では、IM は 2VDC 以上の電圧で発生すること
が確認されたが、それ以下の電圧で発生する報告もある。
図9にpH とIM 発生の関係を示す。銅張ガラス布エポキシ
はCu2 +、アルカリ性側ではCuO22−が溶出することがわかる。
プリント配線板(導体間隔 0.318mm)の電極に、1 μ L の
したがって、水の電気分解により、陽極には水素イオン、陰
pH4 水溶液(フタル酸塩水溶液)、pH9.22 水溶液(ほう酸塩
極には水酸基イオンが生成し 7)、電極近傍のpH 変化がおこる
水溶液)およびイオン交換水(実測値 pH = 6.6)を滴下し、
ため、銅表面の酸化物皮膜が溶解し、銅イオン溶出が加速す
印加電圧毎のIM 発生時間を測定した。
ると考えられる 。
pH4 水溶液では、イオン交換水に比べ、IM 発生時間が短
5)
かった。しかし、2VDC において、イオン交換水で IM が発
生したのに対して(図9)、pH4 水溶液でIM が発生しなかっ
た。これは、イオン交換水で IM が発生していることから、
2.0
電位(vs.SHE)
CuxO
Cu2+
1.0
pH4 水溶液に含まれるフタル酸塩が、銅イオンの拡散を阻害
CuO22 -
したと推定される。
一方、pH9.22 水溶液では陽極上に青白い生成物が観察され
0.0
た。これは、アルカリ溶液中では銅イオン溶出速度が遅く 8)、
Cu
−1.0
拡散時間を要するため、陽極上で還元して水酸化銅になった
と考えられる。
0
5
10
15
環境試験中におけるプリント配線板の IM 発生には、印加
pH
電圧およびpH が大きく影響すると考えられる。
図7 電位− pH 平衡図6)
Ta=25℃
1000
金属銅の標準電極電位は、Cu2 +で+ 0.337V(vs.SHE * 5)、
Cu +で+ 0.520V(vs.SHE)において水溶液中で溶解する。
5VDC
印加時
80
銅イオンは溶出するが、電圧が高いほど、銅イオン溶出量が
増加する。
以上の考察から、環境試験中におけるプリント配線板から
の金属イオンの溶出は、印加電圧や水の吸着が加速要因であ
IM発生時間(s)
このため、水が電気分解する理論電圧以下の1VDC 付近でも
60
40
20
ると考える。
3-3 溶出した金属イオンの拡散と還元
0
溶出した金属イオンが拡散、還元することにより IM が発
生する。そこで、印加電圧および pH を変化させ、金属イオ
0
2
4
6
8
10
pH
図9 pH と IM 発生の関係
ンの拡散、還元過程を考察した。
図8に印加電圧と IM 発生の関係を示す。銅張ガラスエポ
キシプリント配線板(導体間隔 0.318mm)の電極に1 μ L の
イオン交換水(実測値 pH = 6.6)を滴下し、印加電圧毎の
Ta=25℃
IM発生時間(s)
300
イオン交換水
(実測値pH=6.6)
200
100
0
0
1
2
3
4
5
6
印加電圧(V)
図8 印加電圧と IM 発生の関係
ESPEC 技術情報 No.18
4
4.結 論
オンマイグレーションの発生メカニズムを示す。
環境試験中の絶縁抵抗変化およびIM 発生の関係を図 11 に
環境試験中の絶縁抵抗特性は、基板の吸湿特性と電流特性
示す。絶縁抵抗値の変化は、①抵抗値の上昇過程(水の吸着
に関係する。吸湿特性はプリント配線板基材と環境条件で決
と電気分解による金属イオン溶出、図10、反応1 と2)、②抵
定され、電流特性は水の電気分解による金属イオンの溶出が
抗値安定過程(金属イオン溶出と拡散、図 10、反応 3)、③
影響する。
抵抗値の低下と短絡(金属イオンの還元、図 10、反応4)の
一方、IM 発生は金属イオンの溶出、拡散と還元過程から
3 過程からなると考察される。
なり、印加電圧およびpH などの影響を受ける。図 10 に銅イ
カ
ニ
水蒸気
ズ
ム
1.水の吸着・拡散
H+ +
H+
水蒸気
−
H+
OH− −
H+
H+
OH−
OH− OH−
OH−
2+
+ Cu
Cu2+
Cu2+
Cu2+ Cu2+
3.銅の溶出
銅イオン拡散
(拡散)
加速要因
水蒸気
+
2.水の電気分解
pH変化
(酸化)
図
−
濃度勾配
・水蒸気量(水量)
・温 度
・材 質
・電 圧
・水蒸気量(水量)
・温 度
・電 圧
・水蒸気量(水量)
・材 質
・pH、不純物イオン
・酸素溶存量
水の吸着と
金属イオン溶出
金属イオンの
溶出と拡散
金属イオンの
還元
絶縁抵抗値
メ
反 応
IM発生
デンドライト
4.電子授受
IMの発生
(還元)
+
−
Cu
CuO
e+
CAF
図 10
・電 圧
・材 質
・pH、不純物イオン
時間
図 11
銅イオンマイグレーションの発生メカニズム
5.今後の課題
絶縁抵抗特性と IM 発生の関係(模式図)
[用語解説]
* 1.吸着
実際の環境試験中では、吸着した水や基板の汚れ、内部か
らの物質、粉塵などの付着、試験中の結露など様々な加速要
因がある。そのため、プリント配線板の絶縁信頼性評価は、
気体または蒸気分子が固体または液体の表面にとどま
っている現象。
* 2.吸収
これらの要因についても考慮し、対策を検討することが必要
気体または蒸気分子が固体または液体の内部に取り込
である。
まれる現象。
今後は、IM 発生メカニズムの解明を継続して研究し、合
わせて対策法の検討も行っていきたい。
* 3.電気二重層
電極表面にきわめて近い部分には、非常に大きな電位
勾配があり、電子移行反応を引き起こしやすい状態で
あることが知られている。この部分は電気二重層と呼
ばれ、数 Å の厚さである。
* 4.半定量イオン試験紙
イオン濃度を変色度に置き換え、カラースケールと比
較して、ある程度の量的判定を加味した定性分析に使
用される試験紙。
* 5.vs.SHE
標準水素電極(Standard Hydrogen Electrode)の電
位に対する電位差であることを示す表わし方。
[参考文献]
1)MIL-F-14256F, Solder Paste General Specification(1994.5)
2)日本規格協会、JIS-C-0033 耐湿性試験指針(1993)
3)電気化学会、「新しい電気化学」、培風館、p.81-90
4)渡辺正、中林誠一郎:「電子移動の化学」、朝倉書店、p.6-7, p.162-166
5)H.H.Uhlig R.W.Revie :「腐食反応とその制御」、産業図書、p.334-338
6)津久井勤他:「プリント板のイオンマイグレーションとその評価法」
、プリント回路学会 絶縁信頼性研究部、第 1 回公開研究会報文集、p.20-29
7)鶴田加一他:「プリント回路基板表面のマイグレーションに対する検討」
、表面技術 第 48 巻、p.84-89
8)靄 義之他:「銅マイグレーションの検討」
、プリント回路学会 絶縁信頼性研究部、第 1 回公開研究会報文集、p.14-19
5
ESPEC 技術情報 No.18
技 術 解 説
電気・ 電子分野における環境試験の基礎知識
− Part3 :公的な環境試験規格が制定される迄の経緯に関する知識(前編)−
山本 敏男*
今回は、公的な環境試験規格に関する諸事項について解説しよう。ここでは、IEC を例題と
して、その組織や試験規格の制定までの過程、規格の特質、活用、そして環境の分類の概略
を取り上げる。個々の規格の内容には触れないが、試験規格がどのようにして作成されるか
の過程を知ることで、試験規格をどのように活用すれば有効であるかを考えるための一助に
なれば幸いである。
1.試験規格の位置付け
の認証の取得に躍起となっている現状にある。
このような状況の中で、電気・電子工業製品に関しては、
今日、工業製品が市場で遭遇する環境は極めて広範囲でし
その対象製品である民生品の国内標準化について、各国とも
かも複雑化しており、全ての工業製品に統一した既存の試験
にIEC 規格に準拠しつつあり、特にヨーロッパ諸国において
規格を適用することや共通の試験方法を定めることは不可能
は、早くからIEC 規格を国家規格として組み入れ、ヨーロッ
である。とはいっても、基本的な環境要因はそう多くはなく、
パ電気標準化委員会(CENELEC:European Committee for
それぞれの要因を組み合わせ、その厳しさの選択や組み合わ
Electrotechnical Standardization)およびヨーロッパ通信標
せを換えることにより独自の試験条件を創出し、個別の規格
準化機構(ETSI:European Telecommunication Standards
として活用することは可能である。しかし、このような状況
Institute)でも1994 年からIEC 規格をそのまま利用すること
の中にあっても、公的かつ標準的な試験条件を存在させ、そ
となった。
の結果を定量的に表現し、誰がどこで実施しても同じ基準の
一方、アメリカにおいても「ベルリンの壁」の崩壊後、
もとで相互に評価や結果の認証ができるようにすることが必
MIL 規格の新規開発が停止されたこともあって、最近、IEC
要である。このような理由から試験方法の標準化や規格化活
の諸活動に大変力を入れてきたことがうかがわれるようにな
動が世界的規模で進行している。
ってきている。
歴史的に見ると、1980 年に発効した GATT(General
日本の場合には、当初環境試験に関する規格は、アメリカ
Agreement on Tariffs and Trade Standard Code)「貿易に
のMIL 規格を手本に作られたものが多かったが、近年の世界
対する技術障害壁に関するGATT 合意」は、加盟国のそれぞ
情勢の変遷に合わせ、国際規格とJIS 規格との整合化事業が
れの標準化機関によって設定されている技術上の規制法、規
通産省の指導のもとで進められており、1993 年度から既存の
格または証明制度が相互の貿易に対して不要な障害を生み出
規格を含め、新規の規格はIEC 規格をほとんどそのまま翻訳
さない状況を作ることが目的であって、これにより、国際的
した国際一致 JIS 規格に置き換える作業が進行中である。
な自由貿易を促進させる観点から国際規格の制定が促進され
るようになった。
そこでPart 3 では、電気・電子工業分野の代表的な国際規
格であるIEC 規格に関わる組織や、環境試験分野の規格作成
1990 年からは、WTO(World Trade Organization)に受
活動がいかに行われているかを中心に解説しよう。ここでは
け継がれ、国際規格はいっそう重視されるに至っている。そ
個別の規格には直接触れないが、読者諸氏の関わりある試験
こで扱う対象も急速に広がり、単に用語、基本規格、製品規
規格については、ぜひ自ら原文で確認してもらいたい。
格などの基本的なものにとどまらず、信頼性管理、安全性問
題や環境問題にまで及んでいる。
2.試験規格制定のための組織
これらの国際規格化のうち、特に1987 年に発効された工業
製品の品質保証体制に関するISO9000 シリーズの工業分野へ
試験規格はどのように制定、公布されるのであろうか。ま
の影響度は、わが国においては顕著なものがある。この規格
ず、その組織と規格制定の過程を見ることにする。その他の
は、現在世界の70 カ国以上の国々で採用されるに至っており、
公的規格や業界・団体規格などについては、これから解説する
日本においても工業製品メーカを初めとして、銀行・証券な
組織や順序通りではないかも知れないが、大なり小なりここで
どのソフトを扱う分野、さらには行政機関までがこぞってそ
述べる流れに似た過程のもとで制定されるものと推察される。
* 技術企画室
ESPEC 技術情報 No.18
6
ところで、IEC(International Electrotechnical Commis-
内の状況が許す限りにおいて、それらを国家規格作成に際し
sion)の任務については、General information の中で次のよ
て使用することが求められている。なお、IEC は法的には政
うに述べられている。原文のまま転記すると、
府機構としての地位はなく、いわゆる社団法人の地位にある。
「The mission of the International Electrotechnical
IEC 事務局は、最初 IEC 発足の提唱国であるイギリスのロ
Commission (IEC) is to promote, through its members,
ンドンに置かれ、1947 年にスイスのジュネーブに移転して現
international co-operation on all questions of standardiza-
在に至っている。また 1967 年 11 月には ISO(International
tion and related matters, such the assessment of conformi-
Organization for Standardization )とIEC が合同専門委員会
ty to standards, in the filed of electricity, electronics and
を設立し、両者が緊密な協力を行うことになって今日に至っ
related technologies. It therefor provides a forum for
ている。
preparation and implementation of consensus-based volun-
現在、世界の工業製品の標準のうち電気・電子の分野の標
tary international standards, facilitating international trade
準化は IEC が受け持っている。また、認証制度としては
in its field and helping to meet expectations for an
IECQ(IEC Quality Assessment System for Electric
improved quality of life.」
Component) が 1982 年 に、 IECEE( IEC System for
そしてこの任務は、刊行物(国際規格書、国際規格の形式
による勧告を含む。
)の発効によって達成される。各国は、国
未来技術会長諮問委員会
(PACT)
Conformity Testing to Standards for Safety of Electrical
Equipment)が1985 年に運用を開始している。
IEC総会(Council)
(加盟国 50、準加盟国 5、予備準加盟国 4)
運営諮問委員会
評議会 15ヶ国 (Council Board)
財務委員会(FC)7カ国
実行委員会
(Executive Committee)
マーケティング委員会(MC)
販売政策委員会(SPC)
技術管理委員会15ヶ国
(Committee of Action)
中央事務局(Central Office)
適合性評価評議会12ヶ国
(Conformity Assessment Board)
ISO
電子部品品質認証制度(IECQ)
合同専門委員会(JTC)1
電気機器安全規格適合試験制度(IECEE)
分科委員会(SC)17
防爆電気機器規格適合試験制度(IECEx)
作業グループ(WG)57
電 子 通 信 諮 問 委 員 会(ACET)
編集委員会
セクターボード
技術諮問委員会
セクターボード1
高圧変電所機器
安 全 諮 問 委 員 会(ACOS)
電磁気両立性諮問委員会(ACEC)
環 境 諮 問 委 員 会(ACEA)
セクターボード3
産業オートメーションシステム
専門委員会(TC)87
分科委員会(SC)95
作業グループ(WG)764
編集委員会
注:委員会の数は1998年3月現在
出典:「IEC事業概要」、財団法人 日本規格協会(1998.3)
図1
7
国際電気標準会議: International Electrotechnical Commission(IEC)
ESPEC 技術情報 No.18
IEC に加盟する国は、国内委員会を組織し、その委員会は、
で規格案が作成されていくのであるが、これらのプロジェク
自国の電気・電子関係者(製造業者、使用者、政府官庁、学
トは、表1に示すような段階および図3(次ページ)に記載
協会、工業会)を代表していることが要件とされている。そ
するような順序で行われる。
して各国の1 機関だけが会員資格を認められており、日本の
表1 プロジェクトの各段階とその関連文書
場合には、日本工業調査会* 1(JISC)が会員として参加し、
その事務局を通産省工業技術院標準部が受け持っている。
IEC の財政は、会員各国の年次分担金、刊行物の売り上げ
および総会が承認したその他の財源で賄うことになっている。
IEC の活動に際しての公用語は、英語、フランス語とロシ
ア語であるが、実際には英語が多用されており、規格書や技
関 連 文 書
名 称
予備業務項目
新業務項目提案
作業原案
委員会原案
照会原案
国際規格案(ISO)
投票用委員会原案(IEC)
最終国際規格案
国際規格
プロジェクトの段階
0 予備段階
1 提案段階
2 作成段階
3 委員会段階
4 照会段階
術報告書などは最近では英語で作成し、その後フランス語に
翻訳されて発行される。ロシアでは、独自にロシア語版を発
5 承認段階
6 発行段階
行している。
略 号
PWI
NP
WD
CD
DIS
CDV
FDIS
ISO/IEC
出典:「IEC事業概要」、財団法人 日本規格協会(1998.3)
IEC の組織は、ほぼ図1のように構成されており、現在の
会長国はスイスである。なお、日本国内においては、図2に
では、この流れに沿って規格成立までの概要を説明しよう。
示すような国際標準化事業機構となっている。
0 予備段階
3.IEC 規格の作成過程
現存するTC またはSC の業務範囲に属さない、かつ斬新的
な技術を扱う段階であるが、いますぐ規格化の必要がないと
IEC の組織の中で試験規格の作成と直接関係するのは、技
きに準備される段階である。
術的課題を扱う TC(Technical Committee)である。各専
門分野に応じて設置されており、約80 ∼90 のTC がある。ま
1 提案段階
た必要な場合には、その下にさらに細分化した専門委員会と
現存する TC または SC の業務範囲における新規業務項目
して SC(Sub-Committee)が設けられる。さらに、既存規
(規格作成の提案を含め)の提案は、この提案段階から始ま
格の見直しや新しい規格案の作成時には、必要に応じてWG
(Working Group)が設けられる。また、限定された問題に
ることになる。提案は、次のいずれかによってなされる。
−ある国の代表団体
対して、時限特設グループであるAD(Ad hoc Group)を設
−そのTC またはSC の幹事国
けることがある。
−その他のTC またはSC
このような各委員会、すなわちTC,SC,WG のグループの中
−連携関係にある機構
IEC
ISO
国際電気標準会議 加盟国:55カ国
国際標準化機構 加盟国:128カ国
1953年加入
1952年加入
日本工業標準調査会(JISC)
電気・電子関連
工業会・学会 等
総 会
IEC/TC・SC関連国内審議団体、
標準会議
幹事引受、国際会議への参加 等
部会(26)
I
E
C
部
会
協
力
・
支
援
(財)日本規格協会
IEC 活動推進会議
I
S
O
部
会
国
際
部
会
そ
の
他
23
部
会
提 案
専門委員会
協 力
(事務局)工業技術院標準部
出典:「IEC事業概要」、財団法人 日本規格協会(1998.3)
図2 日本の電気・電子分野の国際標準化対応組織
ESPEC 技術情報 No.18
8
①
提 案 者 予備業務項目
①提案者は次による
・国内委員会
・幹事
・連係機関
新業務項目
提案NP
・事務総長
否決
3ヶ月
投票
累積時間
(最大)
(月)
承認
承認
②
素案 WD
OK?
6
廃棄
X回目
否決
②WPまたはPLの何れか
新素案
が作成した案
③
X回目
的合意に達しているこ
とを意味する
意見を求めるた
承認
18
③完成度とは、案が技術
否決
委員会原案 CD
完成度?
めの委員会原案
④
④会議または書面審議に
意見の審議
よる
投票用委員会
原案 CDV
新委員会原案
5ヶ月
投票
否決
承認
意見の解決策
④
幹事による最終
国際規格案原稿
の作成
⑤
⑤・機械が読み取るこ
とのできる最終国
際規格案文
36
中央事務局によ
る最終国際規格
案の作成 FDIS
中央事務局の責任
⑥・最終チェック
⑥
・構成及び配置
・校正及び訂正
TCへ差し戻し
国際
最終
2ヶ月
投 票
・発 送
規格
否決
承認
IEC規格
出典:「IEC事業概要」、財団法人 日本規格協会(1998.3)
図3 予備業務項目の段階から発行に至るまでの草案の進め方
9
ESPEC 技術情報 No.18
−専門運営委員会または諮問委員会
ここで原案は規格書のフォームにあわせた最終原案である
−事務総長
FDIS(Final DIS)として作成される。
通常は、ある国の提案によることがほとんどである。実際
には、規格作成の提案国は事前にベースになる趣旨内容を作
5 承認段階
成し、内容にふさわしいTC あるいはSC に提案することにな
FDIS となった原案は、2 ヶ月間の投票期間をもって最終の
る。この提案に対し、TC あるいはSC の参加国に対し、採用
承認を受けるため各国へ回付される。この段階では、よほどの
するか否かが文書の回付をもって問われる。この投票用紙は
ことがない限り各国は原案の内容に関わる意見を提示すること
3 ヶ月以内に回収され、賛同国が多くかつ規格案の作成作業
は許されなくなる。編集上の問題点の指摘のみに限定される。
に参加する国が 5 カ国になると承認されたものとされて、正
承認されるための賛否の基準は照会段階の場合と同様である。
式に採用される。必要な場合には、WG が設置され、完了の
ターゲット期日が決められる。一方、WG のメンバーについ
ては、提案内容にふさわしいエキスパートがTC あるいはSC
6 発行段階
このようにFDIS に対する賛成が多いと正式に国際規格と
して発行することが承認されたことになる。発行までの事務
参加国から募集される。
作業は中央事務局の受け持ちとなり、通常 2 ヶ月以内に国際
2 作成段階
規格としての体裁が整えられる。
応募に応じた各国のエキスパートは、年2回程度の会議
(WG meeting)を行いながら具体的かつ詳細な規格原案を練
発行された規格は、担当のTC またはSC が少なくとも5年
り上げていく。この間、WG では技術的調査、データの持ち
毎に見直しを行い、改正するかまたは廃棄するかを決めるこ
寄り検討、各種の審議が行われる。最終的にWG としての規
とになる。改正する場合は、新しいプロジェクトとなり、新
格原案(WD)がまとまると所属の上位委員会に提出される。
規の規格作成と同じ手順で行われる。廃棄の場合には別途詳
細規定がある。
3 委員会段階
[用語解説]
委員会が受領した WD は委員会原案(CD)として回付され
る。TC またはSC に参加する各国は、回付された原案に対し
自国の意見を添付して賛否を回答することになる。しかし、
* 1.JISC (Japanese Industrial Standards Committee):
この時点で各国の国内事情に関わる事項、また原案に不明瞭
日本工業調査会
な部分があったり、さらに考え方に相違があると内容全体や
日本工業調査会は、通産省工業技術院に設置されてお
個別項目に対し反対や修正の意見が噴出することになる。
り、JIS の制定、改正、廃止、JIS マーク表示対象品の
結局これらの意見は委員会を通じて原案を作成したWG に
指定等に関する事項を調査審議するほか、工業標準化
差し戻され、さらなる審議が求められる。再度、WG による
の促進に関し主務大臣の諮問に応じて答申、建議する
審議結果に基づいた改訂原案が再提出され、再び各国へ回付
ことができる。本調査会は 29 の部会と約 1000 の専門
される。このようなサイクルが数回にわたり繰り返されて規
家を有しており、学識経験者等の委員 240 名および臨
格原案が作成される。
時委員・専門委員約 8000 名より構成されている。
* 2.P-member :
4 照会段階
委員会作業に直接参加し、国際規格案投票の義務を負
承認段階に進む前にTC およびSC に参加のP-member 国
*2
い、可能な限り委員会に出席する。
に対し、この原案はCDV(the Committee Draft for Vote)
(O-member:オブザーバーとして委員会業務に参加し
として回付される。5 ヶ月間投票のために費やされる。その
て、委員会文書の配布を受け、意見提出と会議出席の
結果 2/3 の賛成と1/4 を越える反対がないと承認される。こ
権利を有する。国際規格案への投票の権利はない。)
の段階では投票国は意見を述べることはできるが、規格の本
編集室より
質に関わる意見は入れられなくなる可能性が高くなる。承認
が得られると改訂原案は4 ヶ月以内に中央事務局に回される。
著者の参考文献については、次号でまとめて掲載します。
No.16 の記事訂正のお知らせ
No.17 の記事訂正のお知らせ
「技術レポート」の 4 ページ、用語解説中の JIS Z 0053 は JIS C 0053
の誤りです。訂正するとともに、お詫び申し上げます。
「技術解説」の 9 ページ図 6 において、絶対温度の目盛表示が 1 桁間違
っていました。下記のとおり訂正するとともに、お詫び申し上げます。
(誤)
1,000
100
10
1
ESPEC 技術情報 No.18
→
→
→
→
(正)
10,000
1,000
100
10
(誤)
0.1
0.01
0.001
0.0001
→
→
→
→
(正)
1
0.1
0.01
0.001
10
対象製品としては、以下のとおりです。
製 品 名
用途別集中管理システム
本製品に接続されている機器も含めた
システム全体が対象
弾性率測定評価システム
バーンインチャンバー
弊社製品の西暦2000年問題への対応
自動化機器
複合環境信頼性試験装置・大型成層圏環境試験装置
低圧低温環境シミュレータ・高気圧酸素治療装置
衣川 雅史*
1.西暦2000年問題とは?
振動試験装置(複合仕様)
3.弊社の取り組み
西暦2000年問題とは、かつてコンピュータのプログラムに
弊社では、お客様に納入させていただきました製品につき
おいてメモリやディスク容量を節約し、また入力作業の無駄
まして、西暦2000年問題に関する情報提供を行い、また支援
を省くために、年号データの4桁を下2桁で表現(例:1999は
態勢を整え、お客様の対応を可能な限りご支援させていただ
99)し、処理をしているために、西暦2000年になると00とな
きます。
り、それが1900年なのか2000年なのかが判別できなくなり、
なお、西暦2000年問題の対応には、下記の方法があります。
その処理によっては、1900年と判断し日付処理が正しくでき
①お客様からのご要望により、調査・対策のご依頼があっ
なくなり、エラーを生じたりシステムの停止を引き起こした
たものは、弊社ならびにお客様とで協議を行い、対応さ
りすることを言います。
せていただきます。
また、西暦2000年は閏年ですが、その処理が正常に行われ
②閏年の日付の修正だけや、2000年になった時点において
ないことがあります。閏年は西暦を4で割り切れる年を言い
日付の再入力で修正できるものに対しては、お客様でご
ますが、4で割り切れる年の内、100で割り切れて400で割り
対応いただきますようご了承をお願いいたします。
切れない年は平年となっており、1900年は閏年ではありませ
③GP-IB、RS-232Cなどを介しパソコンなどを接続された
ん。したがって、1900年の00と判断したときは閏年ではない
製品において、そのパソコン自身や使用しているOSが持
と判断してしまいます。
つ問題により障害を生じることがあります。こちらにつ
以上のことなどが「西暦2000年問題」と言われるものです。
なお、最近では直接「西暦2000年」とは関わらないカレンダ
いては、それぞれのメーカーまたは販売店にお問い合わ
せください。
ー処理上の不具合(例えば1999年9月9日に発生する可能性が
ある問題など)を総称して「西暦2000年問題」として扱われ
4.おわりに
るようになってきています。
弊社製品の大部分については、前記のとおり、問題の発生
2.弊社製品の対応状況
しないことを確認させていただいています。各製品ごとの対
応状況などにつきましては、弊社ホームページに詳細を掲載
弊社の主力製品であるプラチナスシリーズのほか、大部分
の製品につきましては問題の無いことを確認しております。
させていただいておりますのでご参照ください。
(http://www.espec.co.jp/jp/products/2000/2000.htm)
これらの確認には、カレンダー機能を搭載した製品におい
また、弊社ではこれらお客様が行われる対応に対し、製品
ては、SEMATECH2000(Semiconductor Manufacturing
情報の提供と修正作業など、出来る限りのご支援を行ってま
Technologyの略。米国の半導体企業、政府、学会の協定に
いります。ご不明な点が有りましたら、下記までご連絡いた
よる団体が制定した西暦2000年問題のテスト方法。)に基づ
だきますようお願いします。
くテストを実施しています。また、カレンダー機能の無いも
のについても、ハードの面から調査を行い、問題の無いこと
を確認しています。
しかし、一部製品においては障害が発生する、または発生
する恐れのあるものがあります。それらはそれぞれ個別受注
仕様や付加仕様等で作られた製品で多種多様のシステムをも
っており、一概に判断できないため、個別の確認が必要とな
ります。
●お問い合わせ先
タバイエスペック株式会社 品質保証部
TEL:0773-27-3136 FAX:0773-27-7131
E-mail:[email protected]
* 品質保証部
11
ESPEC技術情報 No.18
TFTアレイ基板製造工程
カラーフィルタ基板製造工程
ガラス基板上にTFTを作る工
程です。
ガラス基板上に、R(赤)、G
(緑)、B(青)の3原色のフ
ィルタを形成する工程です。
枚葉式クリーンオーブンHSC -$のご紹介
パネル組立工程
金森 郁夫*
TFTアレイ基板とカラーフィ
ルタ基板とを接着し、液晶
の注入・封止や偏光板の貼
り付けをする工程です。
1.はじめに
透明電極
偏光板
コンピュータと人間をつなぐヒューマン・マシン・インタ
ガラス基板
R
ーフェイスとして、表示用デバイスの役割は重要です。表示
G
B
R
G
B
カラーフィルタ
基板
R
用デバイスの主なものとしては、CRT(ブラウン管)、LCD
(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネ
TFTアレイ
基板
ガラス基板
ル)、EL(エレクトロ・ルミネッセンス)などがあげられま
す。表1に示すように、LCDは画像品質が良いだけでなく、
液晶材
配向膜
スペーサ
TFT電極
偏光板
CRTと比較して、コストは高いがサイズが小さいことによる
携帯性・省スペース性の良いこと、省エネルギーであること
モジュール組立工程
などにより需要がますます高まってきています。
部品実装、バックライト装
着などLCDモジュールの最
終組立工程です。
表1 表示用デバイスの比較
フラットパネル・ディスプレイ
CRT
解 像 度
コントラスト
消費電力
スペース
コ ス ト
◎
◎
×
×
◎
LCD(TFT)
PDP
EL
◎
◎
◎
◎
×
○
◎
×
◎
×
○
◎
○
◎
○
◎ :すぐれている ○ :よい × :劣る
図1 TFT - LCDの製造工程
3.HSC-$の用途および動作説明
LCDの需要は、市場経済の低迷により一時停滞気味でした
HSC-4 は、LCD製造工程の中で、前工程から一定時間
が、パソコンの需要が伸びていることやモニタがCRTから
(タクトタイム)ごとに流れてくるガラス基板を、1枚ずつ連
LCDへの切り替えが進んでいることにより、供給不足になっ
続的に熱処理するのに用いられます。主に、次のような用途
てきています。供給不足は、日本国内のメーカーのフル生産
で使用されています。
や韓国メーカーの増産、そして99年後半に生産が立ち上がる
・TFTアレイ基板のTFTのアニール処理*3
台湾メーカーの台頭でやや解消されますが、需要の急激な伸
・カラーフィルタ基板の3原色着色後の焼成
びやパネルの大型化により、当分品不足状態が継続します。
・カラーフィルタ基板の保護膜塗布後の焼成
ま い よ う
弊社では、LCDの製造工程で使用される枚葉式クリーンオー
・配向膜の焼成*4
ブン*1HSC-4(以下HSC-4と呼ぶ)を製造しています。こ
・パネル組立でのシール材の硬化
こでは、HSC-4の特長やLCD製造工程での用途についてご
図2は、液晶の製造工程に組み込まれた、弊社の枚葉式ク
紹介します。
リーンオーブンHSC-4の例を示します。
2.LCDの製造工程
序で熱処理されます。
まず、前工程から流れてきたガラス基板は、次のような順
①オーブンへのガラス基板の投入はオーブンの側面に設け
ここでは、LCDの一つであるTFT *2 -LCDの製造工程につ
いて説明します。TFT-LCDは、TFTを形成したガラス基板
られた上下2ヵ所の入口スリットからロボットを利用し
て一定時間ごとに投入されます。
に3原色のフィルタを接着し、液晶を注入したあと、周辺部
②投入されたガラス基板は、ゴンドラと呼ばれる上下可動
品を組み付けて作られます。製造工程は、図1に示すように
式の棚に収納されます。ゴンドラは、ガラス基板が1枚
大きく分けて4工程からなります。
収納されるごとに1段上昇するようになっています。
* DD装置技術部
ESPEC技術情報 No.18
12
③ガラス基板は、ゴンドラ内で所定の時間をかけて熱処理
4.枚葉式クリーンオーブンHSC-$の特長
されます。所定の時間は、(タクトタイム×ゴンドラの
主な特長は、次のとおりです。
段数)で決定されます。
④ゴンドラが20段移動(出口スリットは2ヵ所あるので、
合計40枚のガラス基板の収納が完了)すると、次のガラ
(1)高精度の温度分布
ス基板が投入されてきたとき、最初に投入されたガラス
熱処理工程で重要なのは、ガラス基板の温度分布です。ガ
基板が排出されます。
ラス基板単体での温度分布が均一であるだけでなく、HSC-
⑤排出されたガラス基板は、ロボットを利用して空気冷却
4内に収納されている、すべてのガラス基板の温度分布が
ステージに移動され冷やされたあと、コンベアで次の工
均一であることが求められます。そのために、HSC-4は
程に送られます。
以下の構造を備えています。
ロボット
フィルタ
ゴンドラ
払い出し
コンベア
オーブン
ロボット
風の流れ
空気冷却ステージ
(10∼20枚投入)
タクトタイム
最短 30秒/枚
ガラス基板のサイズ
W600×L720mm
ガラス基板の最大収納枚数
40枚
温度範囲
+90℃∼+230℃
ゴンドラリフト
メカニズム
投入コンベア
ガラス
図2 HSC-$を組み込んだシステム例
・高循環風量が確保できるフィルタの採用
クリーン度を確保するためにはフィルタを介して風を
LCDの製造工程で使用されるオーブンには、高いクリーン
循環する必要がありますが、フィルタを装備すること
度が要求されます。工程によっても異なりますが、焼成工
により風の抵抗となり循環量は低下します。温度分布
程やアニール処理工程において使用される場合は、0.3μm
を確保するためには循環風量を増やす必要がありま
粒子でクラス100、場合によってはクラス10が要求されま
す。
す。
そのために、耐熱性があり高風量が得られる特殊フィ
通常、クリーン度を確保するためには、オーブン内の空気
ルタを採用しています。
・断熱性の高い空調回路
13
(2)クリーン度
の循環経路の途中にHEPAフィルタ(0.3μm粒子の補集効
率が99.97%)を用います。しかし、オーブン内で温度が
フィルタを通して吹き出された風はガラスが収納され
変化した場合や、循環空気がフィルタの一次側で乱流をお
たゴンドラを通過した後に、オーブンの両側面に設け
こした場合には、フィルタの炉材が擦れあったり振動する
られたダクトを通過し空調器に戻ります。ダクトが二
ことで自らゴミを出すことにより、オーブン内のクリーン
重構造になっており断熱性が高いので、高精度の温度
度を維持することができなくなります。
分布を確保することができます。
そのため、HSC-4では、弊社独自の耐熱型の特殊フィル
ESPEC技術情報 No.18
タを用いています。これにより、従来型HEPAフィルタと
・ガラス基板を搬送するロボットなどの搬送システムにつ
比較して、温度変化中のゴミの発生を大幅に低減していま
いては、タクトタイムの維持(スピード化)、可搬重量
す。(図3)
のアップなどの対応が必要となります。
温度
様により満足していただける製品作りを行ってまいります。
14
200
12
発塵量
(0.3μm以上の粒子)
10
150
8
100
6
50
0
時間
発塵量(個)
温度(℃)
LCD製造関連機器など各種FA機器において、今後もお客
16
250
[用語解説]
*1.枚葉式クリーンオーブン
4
ガラス基板を1枚ずつ搬入・搬出する方式(枚葉式)
2
を採用しているクリーンオーブン。
0
温度
0.3μm以上
0.5μm以上
*2.TFT
薄膜トランジスタ。
*3.TFTアレイ基板のTFTのアニール処理
図3 特殊フィルタにおける温度変化と発塵
(3)多用途のニーズにも対応可能
LCD製造工程で使われるオーブンには、ガラス基板を1枚
TFTに一定の熱をかけることによって、特性を均一化
させるための処理です。
*4.配向膜の焼成
ずつ処理していく「枚葉式」とガラスが複数枚入るカセット
配向膜とは、液晶を整然と一方向に並べるための膜で
を使用する「カセット式」があります。これらは、各工程で
す。製造工程では、パネル組立工程でTFTアレイ基板
の用途により使い分けられています。HSC-4は、枚葉式を主
およびカラーフィルタ基板の表面に配向膜材料を全面
な対象としていますが、カセット式にも対応は可能です。
に塗布してから、加熱処理(これを焼成と呼ぶ)しま
また、HSC-4で使用できるガラス基板のサイズは、600×
す。次に、配向膜の表面を特殊な布で一方向に凹凸を
720mmの大きさ(第3.5期と呼ばれています。)まで対応して
つけます。この凹凸によって、このあと注入する液晶
います。
が分子レベルで一方向に並ぶようになっています。
熱処理時間をより短くしたい場合には使用段数を減らした
り、より長くしたい場合にはHSC-4を複数台用いたシステ
ムを用いるなどして、広範囲に対応することができます。
5.おわりに
ガラス基板の大型化に対し、各LCD製造メーカーでは
600×720mm前後の大きさには対応ができるようになってき
ました。現在では、もう一回り大きな650×850mm前後のガ
ラスサイズの採用が本格化しようとしています。また、1m角
サイズ(第4期と呼ばれている。)への移行も、次に示すよう
な製造設備の技術課題が解決すれば、生産性を上げるうえで
今後急速に進むものと思われます。
・オーブンでは、現行のものより大型のガラス基板に対し
て、より高精度な温度分布性能が求められます。ガラス
基板が大きくなることから、温度上昇時に風上と風下に
おいて、今まで以上に温度差が生じることによって、温
度の収束に時間がかかり、熱処理時間を長くしなければ
ならなくなります。これを改善するためには、風上と風
下の温度差ができるだけ小さくなるような空調システム
の開発が必要となります。
●お問い合わせ先
タバイエスペック株式会社 SE部
東京 TEL:(045)336-6412 FAX:(045)336-6421
大阪 TEL:(06)6358-4745 FAX:(06)6358-5176
ESPEC技術情報 No.18
14
・発行日……1999年7月1日発行(年4回発行)
・発 行……タバイエスペック株式会社
大阪市北区天神橋3-5-6 〒530-8550
●本誌に関するお問い合わせは
タバイエスペック株式会社「ESPEC技術情報」編集室までお申し付けください。 TEL.06-6358-4511
FAX.06-6358-5505
TABAI ESPEC Home Page
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C 1999 TABAI ESPEC CORP.
・本誌からの無断転載、複製はご遠慮ください。 ⃝
株式会社
本 社
株式会社
大阪市北区天神橋3-5-6 〒530-8550
本 社
TEL.06-6358-4741代表 FAX.06-6358-5500
首都圏本部
寝屋川市太間東町23-12 〒572-0072
TEL.0720-34-1191代表 FAX.0720-34-7755
横浜市保土ヶ谷区神戸町134 〒240-0005
仙 台
TEL.022-218-1891
FAX.022-218-1894
横浜ビジネスパーク・ウエストタワー9F
宇
宮
TEL.028-667-8734
FAX.028-667-8733
TEL.045-336-6400代表 FAX.045-336-6401
大 宮
TEL.048-643-1918
FAX.048-645-1597
つ
ば
TEL.0298-54-7805
FAX.0298-54-7785
FAX.027-320-8574
都
く
首都圏本部
東京都千代田区神田須田町2-7 〒101-0041
高 崎
TEL.027-320-8571
東京オフィス
タームスビル2F
千 葉
TEL.043-286-6020
FAX.043-286-6022
日 野
TEL.0425-84-2175
FAX.0425-84-2124
TEL.03-3256-0881
FAX.03-3256-0882
東 京
TEL.03-3752-8601代表 FAX.03-3752-8625
仙 台
TEL.022-218-1891
FAX.022-218-1894
厚 木
TEL.0463-94-9433
FAX.0463-94-6542
大 宮
TEL.048-643-1918
FAX.048-645-1597
松 本
TEL.0263-48-0401
FAX.0263-48-0410
つ
ば
TEL.0298-54-7805
FAX.0298-54-7785
静 岡
TEL.054-237-8000
FAX.054-238-3441
日 野
TEL.0425-84-2175
FAX.0425-84-2124
名
TEL.052-777-2551代表 FAX.052-777-2575
横 浜
TEL.045-336-6410
FAX.045-336-6411
津
TEL.059-246-7100
FAX.059-221-0679
松 本
TEL.0263-48-0401
FAX.0263-48-0410
金 沢
TEL.0762-60-8030
FAX.0762-60-8033
静 岡
TEL.054-237-8000
FAX.054-238-3441
大 阪
TEL.0720-34-1191代表 FAX.0720-34-7755
名
く
古
屋
古
屋
TEL.052-777-2551代表 FAX.052-777-2575
京 都
TEL.075-311-8081代表 FAX.075-311-6305
金 沢
TEL.0762-60-8030
FAX.0762-60-8033
滋 賀
TEL.0748-72-8077
FAX.0748-72-5070
大 阪
TEL.06-6358-4746
FAX.06-6358-5500
兵 庫
TEL.078-841-4085
FAX.078-822-4689
広 島
TEL.082-830-5211
FAX.082-876-5050
姫 路
TEL.0792-22-8461
FAX.0792-22-8490
新
浜
TEL.0897-41-3163
FAX.0897-43-1139
広 島
TEL.082-830-5211
FAX.082-876-5050
福 岡
TEL.092-471-0932
FAX.092-474-3500
新
浜
TEL.0897-41-3163
FAX.0897-43-1139
神 戸
TEL.078-822-4645
FAX.078-822-4689
福 岡
TEL.092-471-0932
FAX.092-474-3500
京 都
TEL.075-315-1232代表 FAX.075-311-6305
BANGKOK
TEL.66-2-433-8331
FAX.66-2-433-1679
滋 賀
TEL.0748-72-5077
FAX.0748-72-5070
(中国 北京)
TEL.86-10-65915691∼2
FAX.86-10-65915693
(中国 廣州)
TEL.86-20-83815001
FAX.86-20-83862102
居
居
海外駐在員事務所
海外関連会社
ESPEC CORP.(U.S.A.)
塔巴依 斯佩克環境儀器(上海)有限公司(中華人民共和国)
上海 斯佩克環境儀器有限公司(中華人民共和国)
廣州 斯佩克環境儀器有限公司(中華人民共和国)
廣州賽 環境保護技術開発有限公司(中華人民共和国)
ESPEC (MALAYSIA)SDN.BHD.
JIS Z9901-1994
登録番号 JSAQ-004
JAB 認定登録番号
R001
ISO 9001(JIS Z9901)審査登録取得
ISO 14001(JIS Q 14001)審査登録取得
タバイエスペックは(財)日本規格協会(JSA)より
国際規格ISO 9001:1994(JIS Z9901-1994)に基づ
く品質システムの審査登録を取得しています。
タバイエスペック福知山工場、宇都宮テクノコンプレッ
クス、タバイエスペックサービス本社事業所、タバイ環境
設備大東事業所は(株)日本環境認証機構(JACO)より国
際規格ISO 14001:1996(JIS Q 14001-1996)に基づく環
境マネジメントシステムの審査登録を取得しています。
タバイエスペックのISO 9001審査登録取得対象製品(業務内容)
環境試験機器,環境試験装置,生産用環境装置,半導体試験装置の開発・設計・製造・
据え付け並びに付帯サービス
登録範囲に含まれる関連事業所
・タバイエスペックサービス株式会社
アフターサービス業務、環境試験装置の据え付け
・株式会社 タバイ環境設備
環境試験装置の設計、製造、据え付け
JIS Q 14001-1996
タバイエスペックグループのISO 14001審査登録取得範囲
組 織 名
登録番号
登 録 範 囲
タバイエスペック福知山工場 EC96J1046 同組織全域における環境試験機器および半導体試験装置の設計、製造
タ バ イ エ ス ペ ッ ク
EC96J1081 同組織全域におけるバーンイン装置および計測システム製品の開発、設計、
宇都宮テクノコンプレックス
製造
タバイエスペックサービス
EC97J1050 同組織全域における環境試験機器、半導体試験装置等の設置と点検および
本
社
事
業
所
保守作業
タバイ環境設備大東事業所 EC98J1033 同組織全域における環境試験装置の製造、据え付け
本誌は再生紙を使用しています。
ETRJ018
ESPEC技術情報 No.18