ANN No.16 (真菌による食物アレルギー)

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△ 最近の話題
メールニュース No.16
:-真菌による食物アレルギー - ▽
△ 特異的 IgE 検査 :‐特異的 IgE 検査試薬の感度とは‐▽
ファディア株式会社 発行
(サーモフィッシャーサイエンティフィック グループ)
△ 最近の話題
:-真菌による食物アレルギー - ▽
真菌は、気管支喘息などの気道アレルギーの原因となることは良く知られています。真菌の経口摂取
によるアレルギーは稀ですが、真菌感作患者は重症な場合が多いため真菌が含まれる食品の摂取に
は注意が必要と考えられます。
また、花粉食物アレルギー症候群(PFS)と同様にカビのアレルゲンコンポーネント(以下コンポーネン
ト)と食物中のコンポーネントの交差性によるアレルギーも最近報告されています。
1.食品中の真菌によるアレルギー
サラミソーセージやカビチーズ(カマンベール、ブルーチーズなど)によるアレルギーの原因がそれら食
品中の真菌であった症例が報告されています
スによる症例も国内外で報告されています
1-3)
4,5)
。また、うまみ調味料として使用されている酵母エキ
。さらに、本ニュース No.6 で紹介した Oral Mite
Anaphylaxis(OMA)と同様にパンケーキミックスの保存中に増殖したカビによるアナフィラキシーショッ
6)
ク例が報告されています 。
表 1. 食品中の真菌によるアレルギー症例 (文献 1-6 より)
原因として最も多いドライタイプのサラミソーセージの熟成には Penicillium chrysogenum blanc が、カマ
ンベールチーズの熟成には Penicillium camembertii、ブルーチーズの代表であるロックフォールチーズ
には Penicillium roquefortii が使用されています。いずれもペニシリウム属の菌であり、いずれの例も
ペニシリウム(アオカビ)感作が認められているので、このような例は、サラミソーセージやカビチーズの
摂取には注意が必要と思われます。酵母エキスには、ビールやパンの製造に用いられる
Saccharomyces cerevisiae(ビール酵母、パン酵母)またはアルコール発酵能力が低く生育速度の速い
Candida utilis(トルラ酵母)が用いられます。
その他にパンに含まれている Aspergillus oryzae 由来のαアミラーゼ(Asp o 21)によるパンアレルギー
の例
7,8)
や英国において Fusarium venenatum 由来のタンパクを添加物に使用した食肉の摂取でアレル
ギー症状を呈した真菌感作例
9,10)
などが報告されています。
Luccioli らは、アレルギー外来を受診した気道アレルギーを主訴とした成人患者 34 例を対象に皮膚試
験(SPT、皮内反応)により真菌感作群(20 例)および真菌非感作群(14 例)に分け、これらの患者に一
般的な真菌 10 種のアレルゲンエキス混合物を用いて single-blinded, placebo-controlled food
challenge(SBPCFC)テストを実施しました。真菌アレルゲンエキスの最大負荷量は 1,000 実施以上と
し、症状の発現を認めた場合に試験を中止しました。発現した症状をスコア化して解析しています
11)
。
その結果、真菌感作群では 17 例(85%)が SBPCFC 試験陽性(スコア 5 以上)、一方、非感作群では
7 例(50%)が陽性でした。また、2 群間のスコアの中央値の比較では真菌感作群が有意に高値を示し
ました(p=0.0096)。
以上から、真菌感作アレルギー患者においては、製造過程で真菌が使用される食品であるチーズ、サ
ラミソーセージおよび酵母エキスが使用されている市販の加工麺類、スープ、レトルト製品に対する注
意深い症状の誘発歴などを問診で聴取することが必要である可能性があります。
2.真菌と食品の交差性によるアレルギー -Alternaria-spinach syndrome-
31 歳の喘息(アルテルナリア吸入負荷試験陽性)の女性で、2 回のホウレンソウ摂取後に全身症状を
呈した例が報告されました。2 度目の症状は、アナフィラキシーショックでした。また、本症例は、4 回の
口腔アレルギー症状をマッシュルーム摂取後に起こしています。本症例の血清を用いて、誘発既往の
あるホウレンソウおよびマッシュルームの IgE インヒビションイムノブロッティングを実施した結果、これ
ら 2 種の食物と真菌間に交差性コンポーネントの存在を示唆されました
12)
。さらに、同グループは、真
菌とこれら 2 種の食物の交差性コンポーネントが 30kd タンパク質であると報告しました
13)
。
別のグループが、マッシュルームアレルギー患者血清を用いて 2 次元電気泳動後、IgE イムノブロッテ
ィングを実施したところ、本症例は、マッシュルームの MnSOD(Manganese Superoxide Dismutase)
および NADP(Nicotinamide Adenine Dunucleotide Phosphate)依存マンニトール脱水素酵素の感
作例であることが示されました。イムノキャップ抑制試験では、マッシュルーム粗抽出液が Asp f 6
(MnSOD)に対する本症例血清の反応を抑制したことから、少なくとも MnSOD が、真菌感作患者のマ
ッシュルームアレルギーに関与すると述べられています
14)
。
ファディア社の特異的 IgE マイクロアレイアッセイで同時に多数のコンポーネントに対する特異的 IgE を
測定したところ、アルテルナリアの Alt a 1 とキウイの Act d 2(ソウマチン様タンパク)に相関が認められ
ました。また、アスペルギルスとモモの MnSOD 間(約 50%)やクラドスポリウムとラテックスのエノラー
ゼ間(約 60%)の交差性が報告されています
15)
。
図 1. Alt a 1 と Act d2 の特異的 IgE 相関(ファディア社内資料)
今後は、これら真菌コンポーネントの特異的 IgE 測定試薬の開発により、真菌と食物アレルゲンの関
連についてより多くのことが明らかになってくるかもしれません
16)
。
参考文献
1)
Morisset M, Parisot L, Kanny G, Monerret-Vautrin DA. Food allergy to moulds: two cases
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3)
Gonzalez-de-Olano D, Gandolfo-Cano M, Gonzalez-Mancebo E, Melendez-Baltanas A,
Juarez-Guerrero R, Bartolome B. Different patterns of sensitization in allergy to dry
fermented sausage. J Investig Allergol Clin Immunol 2012; 22: 152-3.
4)
黒坂文武、西尾久英.うまみ成分として添加されている Candida utilis(別名:トルラ酵母)を含む
学校給食を喫食後に呼吸困難を呈し、血中 Candida utilis IgE 抗体を証明した 2 症例-prick to
prick test の有用性-.日小ア誌 2014;28:777-86.
5)
Airola K, Petman L, Makinen-Kiljunen S. Clustered sensitivity to fungi: anaphylactic
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Bennett AT, Collins KA. An usual case of anaphylaxis Mold in pancake mix. Am J Forensic
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9)
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mould allergic patient. J Clin Pathol 2002; 55: 876-9.
10) Hoff M, Trueb M, Ballmer-Weber BK, Vieths S, Wuethrich B. Immediate-type
hypersensitivity reaction to ingestion of mycoprotein (Quorn) in a patient allergic to molds
caused by acidic ribosomal protein P2. J Allergy Clin Immunol 2003; 111: 1106-10.
11) Luccioli S, Malka-Rais J, Nsouli TM, Bellanti JA. Clinical reactivity to ingestion challenge
with mixed mold extract may be enhanced in subjects sensitized to molds. Allergy Asthma
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12) Herrera I, Moneo I, Caballero ML, de Paz S, Perez-Pimiento A, Rebollo S. Food allergy to
spinach and mushroom. Allergy 2002; 57: 261-2.
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14) Gabriel MF, Gonzalez-Delgado P, Postigo I, Fernandez J, Soriano V, Cueva B, Martinez J.
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Allergy 2001; 56: 478-90.
16) Popescu FD. Cross-reactivity between aeroallergens and food allergens. World J Methodol
2015; 5: 31-50.
監修)福冨 友馬 先生
国立病院機構相模原病院 臨床研究センター
△ 特異的 IgE 検査 :‐特異的 IgE 検査試薬の感度とは‐▽
検体検査の本質は分析で、分析には定性分析と定量分析があります。それぞれの分析で重要にな
る感度の意味は少しずつ違っていますが、定性分析は目的物質が試料中にあるかないかの判別を目
的とするため、「最小検出感度(または単に検出感度)」が重要です。これに対して、定量分析では目的
物質が試料中にどれだけあるか、を測定(定量)することが目的のため、「実効感度」が特に重要です。
......
「最小検出感度」は、その測定法が測定試料中に目的物質を見つけ出せる最小量のことで、測定法
が違えば(測定原理や同じ測定原理でも使用する試薬が異なる場合も含む)、目的物質があるかない
か、の判断が変わってしまう可能性があるということになります。
特異的 IgE 検査の場合では、測定する対象物質についても理解しておく必要があります。この検査
の測定対象は「アレルゲン特異的 IgE」ですが、例えばダニアレルゲンと言ってもダニに由来するアレ
ルゲン(IgE 結合性のある分子:以下、コンポーネント)は多様で、それら分子上には多様なエピトープ
が存在します。つまり、測定対象はマクロにはアレルゲン特異的 IgE という単一のもののように見えま
...
すが、実際には多様なエピトープに結合する IgE の混合物ということになります。またこの検査では、基
.................
本的にはどのキットでも、測定試薬として用意されたアレルゲンに結合する特異的 IgE を測定します。
.......
アレルゲン試薬の原料は様々な生物のため、原料選択や調整方法によって、アレルゲン試薬 の質に
は差が生じます。極端な例を挙げると、キット A のアレルゲン試薬に含まれているコンポーネントが、キ
ット B のアレルゲン試薬には含まれず、キット A で検出された IgE がキット B では検出されない、という
ことが起こり得ます。このような、検体中の特異的 IgE をもれなく検出できるかどうかの性能は先に説
明した「最小検出感度」とは少し意味が違うので、ここでは特異的 IgE の「検出力」とします。ただ、もち
ろん優れた最小検出感度を備えていなければ、いくら質の良いアレルゲン試薬を利用しても優れた「検
出力」を発揮できないことは当然のことです。
Y
△
●
●
●
図
*
★ *
*
□
Y
Y
□
◆
□ ◆ ★
* ◆
★
たとえ「検出感度」が優れていても、固相さ
れていないいコンポーネントに対する抗体
1.は検出することができず、「検出力」は劣っ
検体中の特異的 IgE と固相化アレルゲンの対応イメージ(ファディア社内資料)
てしまう。
たとえ「検出感度」が優れていても、試薬に固相されていないコンポーネントに対する抗体は検
出することが出来ず、「検出力」は劣ってしまう。
定量分析では「最小検出感度」「検出力」とならんで、「実効感度」も重要です。「実効感度」は信頼で
きる最小の測定値を示したもので、たとえ「最小検出感度」が 0.1μg/mL でも、期待値 0.1μg/mL の試
料を繰り返し測定した時のバラツキが大きく、測定機会ごとに全く異なる値になってしまう場合は、0.1
μg/mL を実効感度とは言えません。繰り返し測定時のバラツキ程度は変動係数(CV)で示されますが、
..
通常はこの CV を指標に、「最小検出感度」以上の値を実効感度としています。
検
出
感
度
実
効
感
度
図 2.検出感度≠実効感度(ファディア社内資料)
検出感度=X であっても、測定値 X での再現性が良くなければ実効感度=X とは言えない
イムノキャップでは、「最小検出感度」、「実効感度」はそれぞれ 0.1UA/mL 未満と 0.1UA/mL で、こう
1)
した評価結果に基づいて ISO15189 認定も取得しています 。
図 3 は実効感度を自社検討した結果ですが、0.1UA/mL での CV が 10%未満と、十分に CLSI(米国
2)
臨床検査標準委員会)ガイドライン による実効感度基準を満たしています。
0.10
図 3.イムノキャップによる実効感度の自社検討結果
10 検体のサンプルを 10 種類のアレルゲンで 5 日間の期間において 2 重測定し、CV 値を求めた
所、CV10%となる濃度は 0.0589UA/mL であった。
「検出力」の評価方法は一定したものが無いので、他キットとの比較結果を示します
2)3)
。図 4 は、イムノ
キャップと他法(いずれも実効感度が 0.1 U/ml)で同一検体を測定した際の相関図から、低濃度域の
みを切り出したものですが、イムノキャップ陽性かつキット A 陰性となる結果が吸入および食物アレル
ゲンで認められることから、イムノキャップが優れた「検出力」を備えたキットであることがお分かりいた
だけると思います。
図 4. イムノキャップとキット A の特異的 IgE 検出力の比較 文献 2,3 より引用一部改変
キット A では陰性だがイムノキャップでは陽性として検出される検体は少なくない。
以上のように特異的 IgE 検査では、キット測定系の技術的な感度が優れていても、主要なアレルゲン
コンポーネントの含有量など、使用するアレルゲン試薬の品質管理が適切でなければ、優れた「検出
力」を両立することはできません。アレルゲンをはじめキットに使用している標識抗体(抗ヒト IgE マウス
モノクローナル抗体)や標準品の適切な品質管理は、いずれも正確で安定した特異的 IgE 測定値を得
るための重要な要素で、その実現にはイムノアッセイ、中でも特異抗体検査の深い理解に基づいたノ
ウハウこそが必要です。
参考文献
1)
Lambert C, Sarrat A, Bienvenu F, et al;The importance of EN ISO 15189 accreditation of
allergen-specific IgE determination for reliable in vitro allergy diagnosis., Allergy 2014, 70,
180-186
2)
Analytical performance characteristics and clinical utility of immunological assays for human
immunoglobulin E(IgE) antibodies and defined allergen specificities; approved guideline –
second edition. 2009 CLSI I/LA-20A2.
3)
米谷昌志;特異的 IgE 検査試薬の比較検討 第1報(吸入アレルゲン).医学と薬学 2014, 71,
1235-1243
4)
米谷昌志;特異的 IgE 検査試薬の比較検討 第 2 報(食物アレルゲン).医学と薬学 2014, 71,
1245-1252
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