信 州 自 治 研 2013.3 月 号 掲 載 南信州自然エネルギー普及協議会会長 NPO 法 人 いいだ自然エネルギーネット山法師事務局長 平澤和人 化石燃料ゼロハウス「風の学舎」からのメッセージ(Ⅰ) ---自然エネルギー社会は家庭から--- 1 風の学舎について 私 の 所 属 す る NPO 法 人 い い だ 自 然 エ ネ ル ギ ー ネ ッ ト 山 法 師 で は 、 足 掛 け 4 年 の 歳 月 を かけ会員の手作りで化石燃料ゼロハウス「風の学舎」を建設し2008年5月にオープン した。会員には、サラリーマンの他設計、建築、大工、土木、給排水などに係わる技術者 が加入していたお陰でこのプロジェクトが実現できた。 会 の 活 動 目 的 は 、資 源・エ ネ ル ギ ー の 地 産 地 消 に よ る「 環 境 保 全 と 地 域 活 性 化 」で あ る 。 風の学舎の建設コンセプトは、 ①地域材と伝統工法による家造り ②温暖化防止、廃棄物の削減 ③化石燃料ゼロ、エネルギーの自給 ④地域景観との調和 ⑤職人の雇用確保や技術の継承 などであり、 施設を拠点とした活動の柱は、 ① 環境体験学習の受け入れ ② 自然エネや地域材による家造り等に 関する視察研修の受け入れ 風の学舎と中央アルプスを望む ③ 都市農村交流事業の推進 (大豆人プロジェクト、南信州フォーラムの取り組みを通じた農ある暮らしの普及や次世 代育成など) ④ 他団体との連携による環境イベントや啓発事業の推進 などである。 ま た 、活 動 に 当 た っ て の 会 員 の 心 構 え や 姿 勢 と し て 大 切 に し て い る こ と は 次 の 点 で あ る 。 ① 可 能 な こ と は で き る 限 り 会 員 自 身 の 手 で 行 う 。「 Do it yourself」 ② 活 動 は ヒ ュ ー マ ン ス ケ ー ル を 大 切 に す る 。「 な る べ く 機 械 に 頼 ら な い 」 必然的に作業等への参加協力が必要で達成感の共有化につながり結果として意思疎通や 連帯が生まれからである。 温 暖 化 防 止 に は CO2 の 削 減 が 不 可 欠 だ と い う 点 に つ い て 社 会 の 関 心 が 少 し ず つ 高 ま っ ているとはいえ、当初計画段階においては灯油やガスを用いず囲炉裏や竈など手間暇のか か る 施 設 の 導 入 に 、果 た し て 人 々 が 訪 れ て く れ る の か 疑 問 視 す る 意 見 が 少 な か ら ず あ っ た 。 4 年 を 費 や し た 建 築 作 業 は 、 こ の 間 に マ ス コ ミ や 訪 れ る 人 な ど を 通 し て 様 々 な PR が で き た こ と も 事 実 で 、オ ー プ ン の 前 か ら 問 い 合 わ せ や 利 用 の 申 し 込 み を 受 け る こ と と な っ た 。 お陰で2008年5月の竣工以来、今日まで年々利用者は増加傾向にある。 社会の流れは相も変わらず、高速化、都市化、コンピュータ化、電化などの傾向にある 一 方 で 、自 然 と の 共 生 や 半 農 半 X な ど ス ロ ー な 生 き 方 を 暮 ら し の 中 心 に 据 え る よ う な 流 れ も確実に広まっており、そんな人々のニーズにもマッチしていたのかもしれない。 そこへ来て、2011年3月に発生した東北大震災と原発事故でまちづくりや暮らしを 見直そうとする社会の潮流が生まれ、電力使用制限令などを切っ掛けに自然エネルギーに 対する国民的関心が特に高まった。その結果、下記グラフのとおり自然エネルギーに関す る視察や学習で風の学舎を訪れる人々が急増することとなった( 。体験学習や交流会などで 訪 れ る 利 用 者 は 含 め て な い が 、そ れ ら も 増 加 傾 向 に あ る 。)2 4 年 度 も 同 様 の 傾 向 が 続 い て いる。関東地区が中心だが、中には福島 県からの視察もあった。 研修視察は、基本的に自然エネルギー 施設の見学とその後の学習会を組み合わ せ90分という単位で受け入れている。 施設では9種類の自然エネルギーの利 用設備が具体的に見学できるほか、暮ら 人 1000 800 600 しなどにどのように取り入れるのか、そ のメリット・デメリットなどについての 400 質疑応答の時間も設定している。このほ 200 か、これからのエネルギー利用について 一人一人が考えなければならないことな 0 どについて、先進事例なども交え説明を させていただいている。 2 風の学舎年度別研修視察者数 系列 20年度 21年度 22年度 23年度 風の学舎の自然エネルギー施設 以下に、風の学舎の自然エネルギー施設を順次紹介する。設置からほぼ5年が経過する 中で実際の稼働運用がどうであったのか、トラブルなども含め報告させていただくので、 読者の皆さんの今後の導入に当たっての参考にしていただければと思う。大切なことは自 然エネルギーにも様々な種類と特性がある。また、利用する側も汗をかかなければ持続的 な利用ができない施設もある。それらを踏まえたうえで適材適所に利用することである。 ・設置費・・・おひさま進歩エネ(株)の屋根 貸し事業で設置。売電料20年間払い ・余 剰 売 電 単 価・・・48 円 / kWh( 2009.11~ ) <太陽光発電施設>2008年設置 ・ シ リ コ ン 多 結 晶 型 パ ネ ル 22 枚 ・設置者と屋根所有者間の売電額の配分 ( お ひ さ ま 進 歩 ・ ・ ・ 34 円 、 山 法 師 14 円 ) ・ 年 間 発 電 量 ・ ・ ・( 平 均 ) 約 3,300kWh ・夜間等未発電時の対応・・・中部電力(株) との系統連携による。 ・ 2008.8 月 か ら 2013 年 2 月 ま で の 売 電 ・ 買 電 状 況 「 売 電 14,025kWh 買 電 5,707kWh」 ・特徴・・気温上昇に伴い発電量が低下。 ( 真 南 に 16 枚 南 東 に 6 枚 ) ・屋根の傾斜角約25度 ・ 最 大 発 電 能 力 3 . 3 kW ・メーカー・・・シャープ ・ 運 用 管 理 ・ ・ パワーコンディショナーの 故 障 2 回 ( 製 造 元 の 技 術 者 が 対 応 2-3 日 で 復 旧 ) *発電量は、ほぼ予想通りである。常駐する者 は い な い た め 、不 具 合 は 電 力 会 社 か ら の 伝 票 で ・ 施 設 の 電 力 契 約 容 量 100V30A 始 め て 知 る こ と と な る 。 パワコンの 故 障 で 1 ヶ 月 ・用途・・照明、冷蔵庫、音響機器等 売電できないときが 2 回あり。 ・ 設 置 工 事 費 ・ ・ ・ 約 2,480,000 円 ( 内 環 境 省 補 助 2/3) ・ 年 間 発 電 量 ・ ・ ・ 平 均 250kWh ・無風時の対応・・・中部電力(株) と の 系 統 連 携 に よ る 。商 用 電 源 自 動 切 り 替 え 装置により電力確保。 ・運用管理・・・トラブルはほとんど無し ( 5 年 後 タ ワ ー の 一 部 に 錆 が 出 る 。) * 伊 那 谷 は 元 々 風 の 弱 い 地 域 で あ る が 、そ の 中 < 垂 直 軸 型 風 力 発 電 施 設 > 2007 年 設 置 で当地区一帯は「あらしやま」と呼ばれ、比較 的風が強いところ。しかし、規模も小さく稼働 ・無指向性、無回転音、ハイブリッド式 ・ 最 大 発 電 能 力 1.0kW( 風 速 7-8 ㍍ 時 ) ・ 太 陽 光 発 電 パ ネ ル 240W 率 は 20% 程 度 の た め 太 陽 光 発 電 に 比 較 す る と kW 当 た り 1/ 4 程 度 の 発 電 量 で あ る 。 合併浄化槽のブロア用モーターの出力は ・ ブ レ ー ド の 直 径 1m ・ メ ー カ ー ・ ・ ・ シンフォニアテクノロジー( 神 鋼 電 機 ) 70W ほ ど で 常 に 稼 働 し て い る た め 年 間 600kWh の 電 力 を 要 す る 。 不 足 分 は 電 力 会 社 か ・用途・・合併浄化槽ブロアモーター専用 ら購入。 ・発 電 量 は 風 速 の 3 乗 、回 転 翼 の 直 径 の 2 乗 に 施設のシンボルと環境学習のため設置した が 、 平 均 風 速 4m 程 度 で な い と ペ イ し な い 。 比例 ・ 設 置 工 事 費 ・ ・ ・ 約 470,000 円 ( 内 環 境 省 補 助 2/3) ・ 年 間 使 用 量 ・ ・ ・ 平 均 9.5m3 ・使 用 制 限・・・12 月 中 旬 か ら 3 月 中 旬 ま で は 凍 結 に よ る 破 損 防 止 の た め 使 用 中 止 。12 月 に 水 を抜く。 ・運用管理・・・トラブルはほとんど無し 不凍液が減少した場合は追加注入要 < 太 陽 熱 温 水 器 > 2007 年 設 置 ・強制循環タイプ、2 回路式 ・太陽光発電小型パネルで不凍液の循環 による熱交換方式 ・パネル集熱面積3㎡ 傾斜角約35度 ・貯湯容量 200㍑ ・ メ ー カ ー ・ ・ ・ NORITZ ・用途・・台所、洗面、風呂の給湯 *一般家庭では、ほぼ毎日給湯が必要である が 、当 施 設 は 土 日 の 利 用 者 が 中 心 の た め 温 水 器 の 利 用 水 量 は 一 般 家 庭 の 1/3 程 度 で あ る 。 ま た 、水 を タ ン ク に 上 げ る タ イ プ の た め 冬 期 は使用できない。 3 月 中 旬 か ら 1 1 月 末 ま で 、 晴 れ る 日 は 4~ 5 人程度なら風呂などに十分利用可能である。 使 用 で き な い と き は 、ウ ッ ド ボ イ ラ ー か ら の 給湯にレバーで切り替え。1 年を通して利用可 ・温水器による一搬家庭の年間給湯量を エ ネ ル ギ ー 換 算 す る と 約 1,400kWh と 3kw 規 模 太 陽 光 発 電 施 設 の 45%程 度 と な る 能 な 不 凍 液 循 環 タ イ プ の モ ノ も あ る 。少 し 高 価 となるが管理の手間は省ける。 メ ー カ ー 試 算 で は 一 般 家 庭 の 場 合 LP ガ ス に 比 較 し て 年 間 で 37,000 円 程 度 の 節 約 と し て い る 。 設 置 工 事 費・・・約 137,000 円 (会員で製作設置) 仕 組 み・・・冬 期 太 陽 の 高 度 が 低 く な る と 壁 の パ ネ ル に 太 陽 光 が 当 た り 、中 の 空 気 が 暖 め ら れ そ れ を フ ァ ン で 10 畳 和 室 内 に 吹 き 込 む 。 室 内 温 度 が 外 気 温 よ り 低 い と き の み フ ァ ン が 自 動 に 回 る 。寒 い 時 期 以 外 は 不 使 用 。フ ァ ン の 電 源 は 太 陽 光 発 電 。こ の 仕 組 み は 、 OM ソーラーハウスの よ う に ソ ー ラ ー シ ス テ ム の 一 環として既に実用化されている。 運用管理・・・特にトラブル無し 暖 房 効 果 ( 例 )・ ・ 25 年 2 月 3 日 a.m.11 屋外温 < ヒ ー ト ウ ォ ー ル > 2011 年 設 置 ・太陽熱温水器中古パネル 2 枚 度 12℃ 、 室 内 温 度 5℃ 、 室 内 吹 き 出 し 口 温 度 33℃ **晴れた日は午後になると室内がほんのり暖か (南向きと西向き) ・室内温度センサー付、冬期使用 い が 、真 冬 は 炬 燵 な ど の 補 助 暖 房 が 必 要 。太 陽 熱 温 水 器 と 同 じ く 仕 組 み が 単 純 な の で 管 理 し や す い 。熱 量的な計測評価は今後。 ・ 燃 焼 室 サ イ ズ ・ ・ ・ 560mm×750mm×1100mm ・用途・・・台所、洗面、風呂給湯 ・ 設 置 工 事 費 ・ ・ ・ 189,000 円 ( 中 古 ) ・使用期間・・・冬期が中心 ・ 運 用 管 理 ・・ ト ラ ブ ル 殆 ど 無 し 。春 、秋 に 煙 突 掃 除を必ず行う。樹種を選ばないので煤の量は多い。 **田舎でスローライフをおくるには最も役立つ 設 備 で あ る 。 燃 焼 室 の 奥 行 き が 1100mm と 比 較 的 長 い 枝 や 材 木 も 燃 や せ る 。ま た 、薪 ス ト ー ブ と 異 な り 自 然 素 材 な ら 全 て 燃 や し て 給 湯 に 利 用 で き る 。当 施設では当初金銭的余裕が無かったため採用しな < ウ ッ ド ボ イ ラ ー > 2006 年 設 置 ・ 貯 湯 容 量 ・ ・ ・ 220 ㍑ かったが、床暖房にも十分利用可能。 自動給水 一 旦 100℃ 前 後 ま で 沸 か せ ば 4-5 人 家 族 で 風 呂 に ・ 熱 源 能 力 ・ ・ 33000-40000kcal/h ・ メ ー カ ー ・ ・ ATO も 十 分 可 能 。当 施 設 の よ う に 一 度 に 大 勢 が 利 用 す る 場合は追い炊きが必要。 ・公共水道自動切替装置取り付け ・濾過方式・・砂礫濾過(写真右側タンク) ・ 年 間 使 用 量 ・ ・ 平 均 7.0m3。 冬 期 は 不 使 用 ・ 機 材 費 ・ ・ ・ 約 200,000 円 ( 会 員 で 設 計 工 事 ) ・用途・・・トイレ便器の排水のみ ・運 用 管 理・・ほ と ん ど ト ラ ブ ル 無 し 。年 に 1 度 集 水器のフィルター掃除と水抜きが必要。 **酒の醸造用タンク中古 2 基を利用し会で製作。 < 雨 水 利 用 施 設 > 2007 年 設 置 ・ ホーロータンク容 量 ・ ・ ・ 2 基 約 1300 ㍑ 砂礫を通す濾過方式をタンクの下から上に雨水が 滲 み 出 す よ う に し た 点 に 特 徴 が あ る 。こ の こ と に よ り貯留水面にゴミなどがほとんど上がってこない。 タンクの水位が一定レベル以下で自動に公水に切 ・ドイツ製雨水集水器取り付け り替わる。 ・ 機 材 費 ・ ・ ・ 約 550,000 円 (本体、煙突、耐火煉瓦含、会員で設計工事) ・用途・・・暖房、調理 ・ 年 間 薪 の 使 用 量 ・ ・ ・ 平 均 約 1m3 (常駐者はいないので施設使用時のみ) ・運 用 管 理・・耐 熱 ガ ラ ス 1 回 交 換 。春 秋 掃 除 * * 冬 期 に は 欠 か せ な い 設 備 。ス ト ー ブ の 上 に 鍋 ・ ヤ カ ン な ど が か け ら れ 、下 部 に は オ ー ブ ン が設置されているためピザや餅なども焼ける。 選ぶならこのように暖房と煮炊きが同時に < 薪 ス ト ー ブ > 2005 年 設 置 で き る モ ノ が 良 い 。い ざ 冬 期 に ラ イ フ ラ イ ン が 停止してもこれ一台で過ごすことが可能。 ・クリーンバーン方式、オーブン付き ・ 出 力 15.0kw( 12,900kcal/h) ・ 暖 房 能 力 ・ ・ 約 60 ㎡ 数年で燃焼室の耐火ガラスが割れることが あるが上下同形なので発注の間取り替えて暖 房 に 利 用 可 能 。落 葉 樹 の み 燃 や せ ば 年 間 に 煤 は ・ メ ー カ ー ・・・ オ ー ス ト ラ リ ア 「 ピ キ ャ ン ・燃料・・・薪類などの落葉樹限定 湯 飲 み 茶 碗 1/2 程 度 で あ る 。薪 ス ト ー ブ の 火 は 人を癒やすという精神的効果も大きい。 ・ 資 材 費 ・ ・ ・ 約 20,000 円 ( 会 員 で 設 計 工 事 ) ・囲炉裏の縁・・・ケヤキのうづくり ・用途・・暖房、煮炊き ・ 炭 の 使 用 量 ・ ・ ・ 約 50kg * * 年 間 通 し て 利 用 頻 度 が 高 い 。利 用 者 が バ ー ベキューなどを行うことが多いため。 炭火で焼く五平餅体験などでの利用もある。 炭は、施設下の炭焼き竈で毎年作っている。 < 囲 炉 裏 2 連 自 在 鉤 > 2005 年 設 置 ・灰受けの部分床下に収納可能 (床面はフローリングに変更) ・燃料・・・炭 700 キ ロ の 薪 か ら お よ そ 150 キ ロ の 炭 が 焼 き 上 が る 。自 然 エ ネ の 中 で も 最 も 長 期 に 保 存 で き る 形で有り、必要な時に利用できる。 囲炉裏を囲むと会話が弾むという良さもある。 ・資 材 費・・・約 110,000 円( 会 員 で 設 計 工 事 ) ・可能な釜の大きさ・・5 升釜と 3 升釜 (径の小さな釜輪を順次はめていくことによ り小規模な鍋などに対応可能) ・用途・・調理 ・ 竈 ご 飯 ・ ・ ・ 約 40 分 で 炊 き あ げ ( 写 真 左 は 3 升 釜 で 約 35 人 分 の 炊 飯 が 可 能 ) < 竈 2 連 > 2006 年 設 置 釜 輪 ・ ・ 最 大 左 39 ㎝ 、 右 33 ㎝ ・運用管理・・数年で釜輪の交換を要する * * 竈 体 験 は 当 施 設 の 売 り で あ る 。今 時 家 で 火 を焚くこともないのでマッチもろくに擦れな い 人 が 多 い が 、利 用 者 は 皆 楽 し ん で 挑 戦 し て い る 。竈 ご 飯 は 炊 飯 器 に は な い お い し さ が 味 わ え 材料・・内部耐火煉瓦、表面漆喰仕上げ る。 以上、自然エネルギー施設を順追って紹介してきた。これら施設をエネルギー利用形態や 用途別に整理すると次のようになる。 風 の学 舎 の自 然 エネルギー 利 用 施 設 エネルギー利 用 形態 施 設 ・設 備 名 設 備 等 の内 容 用途 太 陽 光 発 電 パネ ル シリコン多 結 晶 型 3.3kW パネル 22 枚 照 明 、電 化 製 品 、凍 結 防 止帯等 風力発電 無 指 向 性 垂 直 軸 型 1kW 太 陽 光 発 電 パネル 240w ハイブリッド方 式 合 併 浄 化 槽 ブロアのモー ター専 用 太陽熱温水器 水道水強制循環型 風 呂 、洗 面 、台 所 の給 湯 ヒートウォール 太 陽 熱 温 水 器 の中 古 パネル2 枚 利 用 。パネル内 の空 気 を暖 めファンで室 内 に引 き込 む。 部 屋 の暖 房 薪 ストーブ 二 次 燃 焼 付 き調 理 用 ストーブ 最 大 出 力 15kW(12,900kcal) クヌギ・コナラ等 落 葉 樹 専 用 暖 房 、調 理 ウッドボイラー 貯 湯 容 量 220 ㍑ 出 力 33,000-44,000kcal 自 然 素 材 なら全 て焼 却 可 能 風 呂 、洗 面 、台 所 の給 湯 囲炉裏 2 連 自 在 鉤 規 格 140 ㎝×80 ㎝ 灰 受 床 下 収 納 式 、板 間 変 更 可 能 。炭 の利 用 調 理 、暖 房 竈 2連 式 (釜 輪 39cm、 33cm) 薪 の利 用 調理 水供給 雨 水 タンク 650㍑ホーロータンク2基 1基 は濾 過 装 置 として利 用 初 期 雨 水 は排 水 する雨 水 集 水 器 を設 置 トイレ便 器 の排 水 エネルギーストッ ク 炭 焼 き竈 照 明 (電 力 ) 動 作 ・動 力 ( 電 力 ) 熱 供 給 (電 力 ) 熱供給 210 ㍑ 竈 の大 きさ1.4m3 1 回 の焼 上 がる量 約 150kg 囲 炉 裏 で調 理 、暖 房 こ う し て み る と 、住 宅 の エ ネ ル ギ ー 全 て を 電 力 の み で 賄 う オ ー ル 電 化 住 宅 と は 大 き く 異 な り多様性のあるエネルギーの利用形態となっている。中でも家庭のおよそ2/3を占める 熱利用をどう工夫するかが大切で、二酸化炭素の削減やエネルギー効率の向上に大きく関 係するのである。自然エネルギー社会の構築という将来目標に向かって、エネルギー自給 率 を 高 め る に は 、 消 費 量 そ の も の を 減 ら す こ と も 不 可 欠 で あ り 当 施 設 で は 照 明 の LED 化 や家電製品についても省エネ型に転換している。 3住宅に自然エネルギーの熱利用を エネルギーは、家庭、業務、運輸、産業と社会経済活動全ての分野に不可欠でまた転換 後の利用形態も、電力、ガソリン・灯油、ガス、石炭、石油製品など多様であるが、今回 は 、一 般 に 関 心 の 高 い 家 庭 の 電 力 や 熱 利 用 に つ い て 我 々 の 取 り 組 み を 踏 ま え 一 考 し て み る 。 下 記 グ ラ フ の 通 り 2011 エ ネ ル ギ ー 白 書 に よ れ ば 、 電 力 消 費 の 内 約 3 割 が 家 庭 に お け る ものであり、電力自給率向上のために住宅の省エネ推進や自然エネ導入は不可欠である。 2011.3.11 以 降発電量のおよ そ 9 割を火力発 2009分野別電力消費量と割合 電に依存せざる を得ない状況だ が 、 当 然 CO2 産業, 1,047, 31% 電力排出源単位 が悪化し従前と 家庭, 1,030, 31% 同じ電力使用量 で も CO2 は 増 加する。円安に なればコストも 嵩む。しかし、 運輸旅客, 69, 2% 業務, 1,213, 36% 2011エネルギー白書より作成 (消費量単位pj) 原発の安全性の 確保に加え将来の使用済み燃料の処分に係る放射性物質の隔離やコストのリスクの大きさ に比較すれば、当面はやむを得ない。だからこそ、他方で温暖化の影響や価格リスクを低 減するためにエネルギー効率の向上とともに自然エネルギーの開発利用や省エネに迅速に 取り組まなければならない。 ご 存 じ の よ う に 火 力 発 電 所 の 発 電 効 率 は ま だ 4 0 % 程 度 で あ り 、 加 え て 送 電 ロ ス も 5% 程 あ る 。火 力 発 電 所 で 100 エ ネ ル ギ ー を 投 入 し て も 家 庭 な ど 末 端 に 電 力 と し て 届 く の は そ の内の35程度で有り、残りは熱として放散してしまう。大きなエネルギーロスのうえに 成り立つオール電化住宅である。仮に背景を知らずしてそのような住宅にしてしまった方 は、少なくとも自然エネルギー機器の導入や市民共同発電のためのグリーンファンドに投 資するなどしてエネルギー自給率の向上に努めてもらいたいと思うところである。一見便 利で快適に思えても、地震ばかりで無く台風や竜巻などでも停電はしばしば起こる。以前 に新潟県山古志村の地震被災現場を訪れる機会があり、その折に、住民から最も困った点 の 一 つ と し て オ ー ル 電 化 住 宅 が 話 題 に 上 っ た 。今 回 は 秋 だ っ た が 真 冬 に 送 電 が 3 日 も 停 止 したら生死に関わるとのことだった。ハイテクで便利な暮らしほど災害時には脆い。いざ となれば廃材等で煮炊きと暖が確保できる、ローテクであるが簡易竈やマッチなどの備え は 必 須 で あ る 。風 の 学 舎 は 、化 石 燃 料 を 使 用 し な い ラ イ フ ス タ イ ル を 追 求 し た 施 設 な の で 、 現実的には直ちに全てを一般家庭の暮らしに取り入れる事は困難あるが、十分取り入れら れる設備もある。市街地でも可能でコスト、自然熱利用、設置面積などからして最も推奨 できるものは太陽熱温水器である。当施設には設置していないが、給湯用のボイラーにし ても灯油と薪の兼用の製品も出回っているし、薪に比べて扱いやすいペレットストーブの 開発導入も進みつつある。生産工場のある地域では自宅にペレット燃料を配達してくれる 仕組みもある。このような設備から導入し少しずつ自然エネルギーの利用に移行していく 方法もある。自然エネルギーというと発電利用ということが直ぐ頭に浮かぶ、それも大切 だが、そのことと同じく自然の熱を如何に暮らしに取り込むかが重要である。 4森林資源の活用は外せない 熱利用といえば最も適した資源はやはり森林資源である。国内に豊富に存在し、伝統的 利用技術も確立している。炭という形で長期に保存も可能であり、なんといっても適正に 管理すれば永続的に再生産可能である。今日針葉樹でも燃焼効率の高いストーブなどが開 発され余り樹種を問わず利用可能となってきているが、これら木質資源のエネルギー利用 の前にやるべき最も重要な取り組みがある。地域材による住宅造りである。成木 1 本から 柱 な ど の 建 築 材 を 取 り 出 す 場 合 お よ そ 50% は 利 用 で き な い 端 材 や お が 屑 な ど が 出 る 。地 域 材による住宅造りが拡がれば山元や製材工場から自ずと未利用資源が排出され、これらを ペレットなどエネルギー資源としてカスケード利用できるのである。そのためにだけ樹木 を裁断・粉砕しペレットなどを製造すれば大きなエネルギーを別途要する。 問題は、山からの切り出しである。化石燃料を使用した大型機械では、投入資金の回収 のために大規模集中型の皆伐になりやすく山の環境保全という点で課題も残す。持続でき ないしどの地域でも利用できるというモノで無い。そこで土佐の森方式などに倣い、地域 住 民 や NPO の 参 加 協 力 に よ る 小 規 模 だ け れ ど 効 率 的 な 搬 出 方 法 を 地 域 毎 に 工 夫 し 拡 げ て い く こ と が 肝 心 で 有 り 、そ の よ う な 取 り 組 み こ そ 行 政 や 森 林 組 合 な と が 支 援 す べ き で あ る 。 5終わりに 海外で産する化石資源やウランへの依存度を減らしエネルギー自給率を高めるためには、 身近な地域単位で資源循環が成り立つ方向に生活様式や地域社会の仕組みを変えてく事が 必要である。そのような小さな循環の輪が網の目のように拡がるその先に持続可能な資源 循環型社会が開けるのである。資源循環型社会とは分かりやすく言えば、食料・資源・エ ネ ル ギ ー が 持 続 的 に 再 生 産 可 能 な 社 会 だ と い う こ と で あ る 。太 陽 光 だ け で な く 、身 近 に 土 、 緑、水のある暮らしがあってはじめて成り立つのであり、原点は住まう環境にある。これ からは外材とプラスチックから脱却し一人一人が地域材を基本に本来の意味のマイホーム (家庭)を建てることである。ホームとは家と庭(緑や土)があって初めてそう呼べる。 コンクリートマンション住まいでは家(ハウス)はあってもホームレスなのである。そう すれば、都市部ではとても使用できそうもない薪ストーブなど、森林資源を活用した多様 なエネルギー施設が利用可能となり、地域活性化にも貢献する。さらに一歩進んでキュー バのように大多数の国民が半農半 X の暮らしを楽しめるようになればさらに循環型社会に 近づける。エネルギー自給率の向上は、まさに一人一人のライフスタイルと近隣のコミュ ニティーの如何に負っているのである。 突き詰めれば、太陽光発電や風力発電はもとより、原子力発電といえども部品組み立て や建設のための資材の確保は採掘、精錬、運搬、転換などの段階で化石燃料を大量に使用 しているのであり、石油依存技術である。そういう意味では過渡期の技術でもある。 国 か ら 地 方 ま で 将 来 計 画 に 於 い て 2050 年 の 社 会 の 姿 を ハ イ テ ク 機 器 を 応 用 し た ス マ ー トな地域社会としてバラ色に描いている。しかし、森の恵から縁を切った暮らしの先に見 える世界は果たしてバラ色なのだろうか。 日本は、世界で最も省エネ技術が進んだ国であると認められてきた。オイルショック以 降 今 日 ま で 家 電 製 品 や 車 等 の 省 エ ネ 性 能 は 大 き く 進 ん だ 。 し か し 、 1990 年 以 降 を 見 て も CO2 の 排 出 量 ( ≑エ ネ ル ギ ー 消 費 量 ) は 増 加 の 一 途 を た ど っ て 来 た 。 都 市 化 、 核 家 族 化 、 車の増加、情報化、電化などが、その効果を相殺どころか大きく上回って来た。ライフス タイルや社会構造の変化の要因が大きいのである。将来像を相も変わらず石油に依存した 技術偏重で描いても達成持続できるのだろうか。暮らし、産業、まちづくり全てにおいて 地域単位で森林資源を中心とした自然の恵みを取り入れる方向に舵を切らなければ、持続 可能な自然エネルギー社会は見えようも無いのである。
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