「エコデザインから持続可能社会を考える」 ∼リコーを例にとって∼ 環境班 始めに 1 篠塚真紀 伊藤悠 藤沢和謙 安藤澄絵 持続可能社会とは 持続可能社会とは 「10 年前、リオデジャネイロの『地球サミット』で「各国政府は、このような変革を 誓約し、そのための包括的な行動計画として「アジェンダ 21」を採択しました。しか し、約束だけでは目標を達成できないことが明らかになりました。私たちは未だに、 開発の経済、社会的及び環境的側面を十分に統合できていないばかりか、現在の苦境 をもたらした持続不可能なやり方とも縁を切れないでいます。 」これはヨハネスブルグ サミット前の国際連合事務総長であるコフィー・A・アナンの言葉である。 私たちは、地球環境と引き換えに発展を手にしてきた。産業革命を期に大量生産・ 大量消費を行い、地球に不必要な物質を放出し続けた。このような経済活動は地球資 源を減少させ、自然の浄化能力を超えた環境汚染による影響を顕在化させた。そして 公害という人的影響が発生したことでやっと地球資源が有限であることに気付かされ た。そんな時代に誕生した言葉が sustainable development(持続可能な開発)であ る。 1972 年、初めて国連として環境問題全般について取り組んだ、 『国連人間会議』が スウェーデンのストックホルムにおいて開催された。この頃は、60 年代の産業革命の 影響によって先進国で公害が頻発したため、この公害対策として環境問題への取り組 みが始まり、各国で環境問題を専門に担当する省庁が設立された時期であった。国連 人間環境会議では、環境問題に取り組むための原則を明らかにした「人間環境宣言」 が採択された。その中では明確に環境を人類に対する脅威と据え、国際的に取り組む べきこととして示されている。 そして 1982 年に国連人間環境会議 10 周年を記念して、UNEP(国連環境計画)に より特別理事会が開催され、日本政府の代表として原文兵衛環境庁長官が出席した。彼 の提案で世界の賢人からなる委員会『環境と開発に関する世界委員会』(WCED)が 1984 年に設置された。この委員会は、ノルウェーの首相を務めたブルントラント女史 が委員長となったことから別名「ブルントラント委員会」と呼ばれた。ブルントラン ト委員会は 1987 年の報告書「我ら共有の未来 (Our Common Future)」を国連に提出 し、環境と開発に関する新たなアプローチとして『持続可能な開発』を打ち出した。 この言葉の提唱により、本格的に地球の環境問題に向かっていくこととなった。 この定義は「将来の世代が彼らの必要性を満たす能力を損なうことなく、現在のわ れわれがその必要性を満たせるような開発」であり、これが 1992 年にブラジル・リ オデジャネイロで開かれた『環境と開発に関する国連会議』での中心テーマとなった。 リオ地球サミットは地球環境の保全と持続可能な開発の実現のために具体的な方策を 1 得ることを目的として開催され、国連に加盟する約 180 ヶ国が参加し、100 ヶ国以上の 首相が参加するというハイレベル且つ大規模な会議となった。また、全世界から 100 以上の NGO 団体も参加した。このサミットの最大の成果は、貧困、消費パターン、 保健、生物の多様性など「持続可能な開発」のための行動計画を盛り込んだ「アジェ ンダ 21」という合意文書を採択したことである。 しかしながら冒頭でのアナン国連事務総長の言葉の通り、約束だけでは目標が達成 できないことが明らかになった。そしてさらに 10 年が経った今、アジェンダ 21 のよ り効果的な実施のため、今日のリーダーが具体的な計画を採択し、数値的目標を定め るべく南アフリカ・ヨハネスブルグで地球サミットが開催された。これは『持続可能 な開発に関する世界サミット』 (WSSD)と呼ばれ、“経済成長と公平性” “天然資源と 環境の保全” “社会開発”をキーワードに、191 ヶ国の政府関係者・NGO関係者・プ レス関係者、合わせて 21,000 人以上が参加した。また、104 名の首脳も参加し、もち ろん日本の小泉首相も現地入りし、日本国の代表として壇上に立ち、決意表明を行っ た。 持続可能な開発とは、資源量を減少させず、また環境再生能力を超える廃棄物を出 さずに、人間の必要を公平に満たす持続可能な人間的な機構を作り上げることである。 持続可能社会は、地球上にある全ての環境問題を包括する画期的で、絶対的に必要な 概念である。ホタルをよみがえらせるためは、美しい水と空気が必要であるように、 自然環境は循環しており、それぞれは繋がりを持っている。環境問題は生態系に則り、 本来あった自然の姿に戻すことが一番の解決となる。しかし人間は地球の恩恵なしで は生きられない。だから地球の恵をうまく利用していく事で人類を存続していく術を 見つけていかなければならないのである。 2.環境悪化の現状 持続可能社会が問われるようになったのは、地球環境の悪化が原因である。そこで 現在の地球環境について考えていきたいと思う。ここ数年、地球の環境問題は世界的に 注目されている。私たちが行った、「環境・グリーン購入に関するアンケート」では 90%の人が「環境問題に関心がある」と答えた。この結果から消費者が環境に対して 関心を持っているということは明確となっている。しかし同アンケートの結果から、 関心は持っているが積極的に行動しているという人は少なかったということも分かっ た。 現在の地球環境は大きな危機に直面している。しかし、単に「地球環境問題」とい っても「地球温暖化」 「オゾン層の破壊」 「酸性雨」 「砂漠化」 「熱帯雨林の減少」 「廃棄 物問題」 「海洋汚染」 「自然破壊・生態系破壊」 「南北問題」 「資源の枯渇」「食糧問題」 など私たちが考えなければならない問題は膨大な数である。ここに挙げた以外にもま だ多々存在すると思われるが上記の問題だけを考えてみても、どれも人類の将来にと って深刻な問題だといえる。 一例を挙げると 1999 年度の産業廃棄物の排出量は、年間約 4 億 t、一般廃棄物の排 出量は 5,145 万 t であり、東京ドームに換算すると総量約 1260 杯分にもなる。社会活 動の活性化に比例する形で、1973 年のオイルショック以降、総排出量は増加し、1990 2 年度以降は高い水準のまま、横ばい傾向にある。このようなゴミの排出量の増加に伴 ってゴミの最終処分場の確保が問題となっており、1997 年度でみれば、このまま処分 場を建設しなかった場合、その残余容量は、全国で 3.7 年、首都圏で 1.2 年となってい る。その結果、現在も処理場建設は着々と進められており、最終処分場の土地問題や、 そこからさらに不法投棄などの問題が生じ、このままでは生活環境や産業活動に重大 な支障が生じかねない状況となっている。このため、廃棄物等の発生抑制や循環資源 のリユース・リサイクルを進めるとともに環境に負荷を与えない処理技術の開発や周 辺環境に配慮した最終処分場などの廃棄物処理施設を整備することが急務となってい る。 また、森林問題について述べると、森林は温暖化の原因となる二酸化炭素の吸収源 であるばかりでなく、地球上の生物種の 50∼80%が存在するなど、生物多様性の保全 のためにも極めて重要である。しかし、非伝統的な焼畑、薪炭材の過剰採取、不適切 な商業伐採等により、1990 年に 19.45 億 ha あった熱帯地域の天然林は、2000 年に 18.03 億 ha と、この 10 年で約 7.3%減少している。これを1年あたりの面積で計算す ると、1420 万 ha となり、日本の国土のおよそ 38%が毎年減少していることになる。 これによって、動植物種の減少、土壌・海洋・大気汚染等、さまざまな自然環境悪化 の影響を及ぼしている。このスピードで減少を続けていくと次世紀にはほとんど森林 は存在していないということになる。かなり近い未来の深刻な問題である。 そして「南北問題」というものもある。先進諸国を中心とした資源やエネルギーの 大量消費に伴った地球規模での環境悪化の影響で、守る術のない途上国の人々は、先 進諸国以上の被害を蒙っている。さらに開発途上国では、急激な人口増加に伴い、食 糧難や、そこから起こる森林の減少が問題となっている。さらに今後行われていく開 発の影響で、我々が経験したような公害に侵されていくという危険性も秘めている。 先進諸国は、途上国の資源を蝕んできた。その代償が環境問題として先進国はもちろ ん、被害を受けた途上国にまで多大な被害を与えていった。我々は自らの社会経済活 動を見直し、地球環境への負荷を減らすとともに、これまでの経験や技術力を生かし て地球規模での環境保全に積極的に貢献していくべき時なのである。 3 第1章 1−1 持続可能社会への変遷 地球環境問題への関心の増大と環境規制 我が国の環境問題の歴史は明治初期の公害問題から成る。日本の公害の原点といわ れる足尾銅山の公害事件でも、政府の環境に対する意識は皆無であり特別な法的対策 は取られなかった。逆に田中正三率いる公害被害者による運動は警察・憲兵隊によっ て弾圧され、 「川俣事件」という当時の政府の無策と、警察の横暴を示す流血事件にま で発展した。そして、第二次世界大戦に突入すると資源確保を目的とした森林伐採が 次々と行われ、自然は次々に失われていった。 戦争が終わり、産業の復興に伴い再び公害問題が発生すると、問題は更に拡大した。 しかしそれをきっかけにした住民運動や、裁判で企業側に有罪判決が下されるなど、 行政は地域的な問題としてだが公害に対し「人の健康を保護し生活環境を保全する上 で維持されることが望ましい基準として環境基準を導入する」という基本概念の下に、 公害防止条例などが制定されるようになった。だがそれも充分なものではなく民法上 の不法行為としての意であったため、経済成長主体の考えは依然として変わらなかっ た。自然環境の破壊はますます深刻化していったのである。更に輪をかけるようにし て環境保全の費用の節約、資源浪費型環境破壊、大都市化、大量消費生活様式などに より、日本は公害先進国としての道を着々と歩んでいくこととなった。その背景には 「経済の健全な発展との調和」という経済成長優先の考え方が根強く残っていたこと が挙げられる。 高度成長期後半になって、ようやく住民の本格的な反対運動や世論の影響を受け、 国レベルでの環境整備が行われ、環境に対する療法的な対策から環境を基本から考え る法律へと発展し始めたのである。そしてそれまで、公害問題や健康被害などは厚生 省環境衛生課で、産業政策は通産省で個別に取り扱っていたのだが経済が安定してき てからやっと、日本に環境庁が設立されるようになり、一括して取り扱われるように なった。 その当時から環境問題は国際的な問題として取り上げられるようになり、1972 年に は国連で初めて環境会議が開催され「人は尊厳と、福祉を保つに足る環境で自由平等 及び十分な生活水準を享受する基本的権利を有すると共に現在及び将来の世代のため 環境を保護し、改善する厳粛な責任を負う。」と宣言された(「国連人間環境会議」)。 それにより国民の意識、政府の対応も微かに変化してきた。そして 1985 年に南極上 空にオゾンホールが発見されると問題はいよいよ世界規模なっていった。 この頃から日本でも環境問題に対する意識が微動ながらも変化の兆しが見え始め、 オゾン層保護法、再生資源の利用の促進に関する法、生物種の保存法など様々な法が 制定されたのである。その中心に置かれた環境基本法では「我が国の環境保全施策の 基本的方向を示す環境基本法に基づく環境基本計画は、社会の構成員であるすべての 主体が協力して環境の保全に取り組むための計画です。」と述べ、21 世紀半ばを展望 した環境政策の基本的考え方と長期的な目標を示した上で、これらの目標達成に向け た 21 世紀初頭までの施策の方向を定めている。 更に同法では、環境の保全は国、地 方公共団体、事業者及び国民のそれぞれが果たすべき責務だと記している。そして 4 1987 年に「持続可能な開発」が提案されると企業にも制限が課せられた。 最近では消費者の環境問題への関心が高まる中、積極的に環境保全を行っている企 業は企業全体のイメージアップにも繋がる。またそうでない企業は、顧客はもちろん のこと取り引き会社や株主などの非難の目にされされ、経営に大きなダメージを与え ることとなる。企業と環境との関係は次の章で詳しく述べるが、個々の単位で見ると まだまだ日本人の行動レベルは低いようである。前章でも述べたようにアンケートで 環境問題に関心があると述べたのは 100 人中90人である。しかし、商品購入の際に 環境に配慮された商品をいつも選んで購入すると答えたのは 100 人中たったの3人で あった。このアンケートで地球環境問題やグリーンコンシューマーを拡大していくた めには、という問いに企業側の課題だという回答も見られた。 さらに環境問題にいくらかの関心は持っているが、実際に行動を起こしている人は 少ないということも分かった。最近でスーパーなどでの牛乳パックのリサイクルやレ ジ袋の持参など、ごく身近なところでの環境保全が行われてきている。日本における 環境問題は一人一人の意識の変換や環境に対する価値観の変化が必要である。消費者 が環境問題を無意識に取り組み、また企業の環境への取り組みを厳しい目でチェック し、お互いが成長していけるような、積極的な社会作りをしていかなければならない。 政府が環境問題への姿勢を変遷させようとしていっているように、個々人の意識の改 革が必要であると考える。 1−2 企業の環境責任と環境対応 公害の発生源がそうであるように、企業は様々な環境問題の悪化に関与している。 ここでは、過去における日本の企業による環境負荷について例を挙げ、どれだけの環 境負荷を行い、これからしていくべきことを考察する。 過去に『豊島(てしま)事件』というものがあった。 『豊島事件』とは、香川県豊島 の西側に、1978 年から 13 年間にわたり有害産業廃棄物が不法に投棄され、野焼きにさ れた事件である。それは、深さ 12 メートルのタコツボのように掘り下げられた穴の中 にシュレッダーダストを中心としたゴミを堆積し、それらは有害ガスなどの発生によ り異臭を放っており、産業廃棄物を透過し、ダイオキシンを含んだ有害物質が瀬戸内 海に流れ出し、水質・土壌汚染が発生したというものである。 『豊島事件』が、社会的 に広く知られる契機の一つとして、兵庫県の産業廃棄物の排出業者が兵庫県警に摘発 された事件がある。この業者は京阪神という大消費地を背景としており、私たちの耐 久消費財が、産業廃棄物という形で豊島に不法投棄されたと考えるべきであろう。つ まり 1975 年から 13 年間、豊島に不法投棄された産業廃棄物約 60 万トンの大半は私 たちが生出したものも含む、シュレッダーダストである。これには、鉛やカドミウム といった重金属やダイオキシンを含む有機塩素系化合物等の有害物質が相当含まれ、 これによる影響は地下水にまで及んでいることが判明している。シュレッダーダスト とは、使用済みの自動車や家庭電化製品から、リサイクルできるものを取り除いた後、 破砕機(シュレッダー)で破砕し、風力などで回収される有価物以外の裁断クズ・不 要物である。廃自動車を例にとると、今では次のような工程を経ている。 現車の確認→タイヤ除去(スペヤを含む)→バッテリー除去→燃料抜き処理→ 5 クーラント、ウィンドウォッシャー液の除去→フロン回収→その他不要物の回収 →処理済確認→「処理済をシュレッダー設備に投入」 その後 1)鉄は電気炉製鋼メーカーへ 2)非鉄金属(アルミ、銅、ステンレス等)は非鉄金属メーカーヘ 3)シュレッダーダストは管理型埋め立て処分場へ という流れになっているが、不法投棄が開始された 1975 年という時代は、上記工程 が確立されなかったため、過去に現場では嵩高い廃棄物を埋め立てし易くするため、 連日野焼きが行われていた。自動車の場合、シュレッダー設備に投入する割合は、車 重量の 20∼30%といわれている。年間の廃車台数が 700 万台と見積もれば、シュレッ ダーダストは年間推定 200 万トンとなる。これは豊島に 13 年間にわたって不法投棄 された量、60 万トンの 3 倍以上の処分場を毎年必要としていることになる。産業廃棄 物に限らず、今日、多くの自治体で埋め立て処分地の確保が困難になっている。これ は処分費用の上昇に留まらず、現に捨てる所がないという物理的な壁にぶち当たって いる。 このような事件から見ても、廃棄物処理またゴミ問題とは緊急かつ重要な問題なの である。そこで、企業は製品・サービスの提供者として資源循環の最上流部に位置す るとともに、日々の事業活動では、製品やサービスの消費者でもあり、またリサイク ルや廃棄物の回収、輸送、処理を事業とするなど、資源循環のあらゆる場面で活動し ている最も環境負荷をコントロールしやすい立場にあり、資源循環型社会に向けた具 体策のもと、役割や使命を果たすべきなのである。具体策としては以下のようなもの が挙げられる。 1. 優先順位・目標に従った活動 廃棄物の減量化・資源化の優先順位に基づき、事業活動から発生する廃棄物量の 抑制を優先的に考慮する。また事業活動においてリユース・リサイクルを積極的に 推進し、廃棄物の減量化・資源化に対しては、環境マネジメントシステムを構築す るなどして、組織的にかつ継続的に自主的目標を管理しながら取り組む。 さらに、廃棄物の減量化・資源化の国全体の目標達成をビジネスチャンスとしてと らえ、技術開発をより一層すすめる。 2. 資源循環型事業活動の実践 事業者の購買活動では、意識的に環境負荷の少ない製品やサービスを利用するグ リーン購入やグリーン調達を率先して実施し、減量化の徹底後に発生した廃棄物に ついては、極力他企業・他業種の連携、または、技術を導入するなどして、資源化 を図る。やむを得ず適正処理を行う場合には、「未然防止」の理念を実践すべく、 自らの廃棄物の処理状況を確認する。また、企業内の従業員の教育や訓練、国民に 対する環境学習の場の提供、地域と連携した環境学習のプログラムや機会作り等を 通じて、資源循環型ライフスタイルの確立に貢献する。 3. 明確な役割分担に基づく事業者の使命 製品やサービスが使用・廃棄される過程で生じる環境負荷を低減するには、生産 時点で考慮することが効率的であり、事業者はそれが可能な立場にある。そのため、 6 リユース・リサイクルまでを考慮した製品作りのための設計や環境負荷の少ない素 材・原料の選択、さらには製品の寿命を延ばす等、生産段階における取り組みを重 点的に行う必要がある。その際には、製品の生産から廃棄までの環境負荷を定量的 に評価する手法、例えば、LCA(ライフサイクルアセスメント)のような評価ツ ール等を確立し、利用する。 4. 適正なコスト負担 製品の生産時点において、リユースやリサイクルに配慮したために生じた費用等 は環境コストとして内部化し、市場経済のメカニズムに組み入れる。 また、事業者が廃棄物を排出した場合には、不法投棄されないよう、リサイクルや 処理にかかる費用を適正に支払う。 5. 民間活力の導入に向けた連携の実践 リユース・リサイクル体制や資源の回収・収集体制を社会全体で効率化していく にあたり、民間事業者の有する知恵や技術を結集する必要があり、また民間に移行 する中で「競争」原則のもと効率性が高まる。民間移行にあたっては、「共創と連 携」の理念のもと、住民や行政との協働を視野に入れて密接に連携し、その信頼を 得ると同時に、事業者同士もあらゆる産業の枠を越えて連携していく必要がある。 一方、事業者の排出する廃棄物の発生抑制や資源化には、それぞれの地域内事業者 の業種・規模を超えた密接なネットワークが不可欠である。そのためには、地元の 商工会議所等の経済団体には自治体等と連携してイニシアティブをとり、事業者同 士を結びつける役割が期待される。 6. 情報の発信と透明性の確保 地域住民や行政の信頼を獲得し、「共創と連携」を実践するためには事業活動に ついての透明性を確保することが重要であるが、そのためには、環境の側面からで きるかぎりの情報を発信する。発信手段としては、環境ラベルのような製品・サー ビスそのものを通じての環境情報の発信、ISO14001 の環境方針、環境会計、環境 報告書、等が考えられる。 企業は、これらを積極的に実施し、環境保全に取り組むべきである。その中の一つ の考え方として、LCA などのエコデザインという考え方が有効になってくるのではな いだろうか。 1−3 グリーン化によるリコーの環境対応 周知の通り、今やリコーは世界屈指の環境先進企業である。リコーの活動に対する社 会からの評価は非常に高く、日経経済新聞社による環境経営度調査で 1998 年から 2000 年までの3年間、連続1位の評価を受けた。また、『エネルギースター複写機部 門賞』や『省エネ技術賞』など様々なタイトルを受賞している。 (章末年表参照)そこ で、さらにリコーの環境への取り組み活動について述べていくことにする。 リコーは、1992 年に環境綱領を制定し、以降、オゾン層破壊物質の全廃を達成、リ サイクル事業部の発足、ISO14001 認証を取得(御殿場工場が、日本の認証機関による 第1号となる)、再資源化率 100%を達成するなど、様々な取り組みを行っている。再 資源化 100%とはゴミゼロと称され、リコーグループは、資源の有効活用、生産ライ 7 ンの効率化、廃棄物処理費の削減、社員の意識改革を通じた企業体質の改善など、環 境経営の一環として推進してきた。リコーグループはゴミゼロ(再資源化率 100%・ 埋め立てゴミゼロ)を 3 つのレベルに分類している。 レベル 1 産業廃棄物をゼロにする。 (一般的にゴミゼロと言われる段階) レベル 2 一般廃棄物をゼロにする。 レベル 3 生活系廃棄物(し尿など浄化槽の汚泥)をゼロにする。 出典: 『リコーグループ環境経営報告書 2002』 また、単純焼却処分は廃棄のための手段とみなし、熱エネルギー回収による再資源化 を図るなど資源の完全循環を目指している。ゴミゼロは、日本の生産系事業所だけで はなく、非生産系事業所またはイギリス、中国、台湾においても 2002 年 3 月には達 成していた。2002 年度以降は、ゴミゼロのノウハウを消費者側に提供し、社会全体の 環境負荷削減に貢献すると共に、さらなる環境経営を推進していくとの提言もある。 そして環境保全のための技術開発という面から、技術開発、設備投資、販売、サー ビス、リサイクルの効率化といった視点から「3R」を基本とした物づくりを進めてい る。 「3R」とは、 1.Reduce 2.Reuse 製品の長寿命化、小型・軽量化により環境負荷を削減する リサイクル対応設計などの高度化により世代間を越えたリユースの拡大 をする 3.Recycle 価値の高い材料としてもう一度できる限りリコーグループ内で使用す る 出典: 『リコーグループ環境経営報告書 2002』 これらの取り組みを具体的な数値で、温暖化防止への対応を例に挙げてみると、リ コーは 2010 年度までに 1990 年度比で CO2 の総排出量 13%削減する目標を立ててい たが、既に 2001 年度に総排出量の 13.8%の削減を達成した。今後は生産が増大して も CO2 の総排出量を増やさないために、売上高単位の CO2 排出量 62%削減という目 標に取り組んでいる。 さらにリコーは、社会貢献活動や社員教育にも力を注いでいる。社会貢献活動にお いては、森林生態系保全プロジェクトを発足し、森林の保全活動を行い、地球温暖化 防止へのリーダーシップをとるなどして、率先して取り組んでいる。社員教育におい 8 ては、「環境ボランティアリーダー」と呼ばれる社員を自然教室などで研修を行い、育 成し、その地域において環境ボランティア活動を行っていくというものもある。現在 までに社員、退職者、役員を含む 140 人を超えるリーダーを養成した。今後の活動に も期待が向けられる。 リコーグループの環境保全活動の歩み(1976 年∼2001 年 3 月) リコーグループの活動 1976 年 活動に対する社会からの評価 環境推進室設立 1990 年 12 月 環境対策室設立 1992 年 2 月 リコー環境綱領を制定 3月 複写機「FT5570」がブルーエンジェルマーク (初版)を取得 1993 年 3 月 リコー、オゾン層破壊物質(特定フロン、特定 5月 ハロン、四塩化炭素など)の全廃を達成 ドラムリサイクル技術が「英国女王賞」 リサイクル製品設計基本方針を発表、リサイ 受賞 クル対応設計レベル1施行 5月 12 月 1993 年 5 月 リコーUK プロダクツの複写機観光体 9 月 リコーUK プロダクツの消費電力削減 プラスチック部品への材料名表示を開始 活動が「Business Energy Award リコーグループ、オゾン層破壊物質(特定フロン、 最優秀賞』受賞 特定ハロン、四塩化炭素など)の全廃を達成 1994 年 8 月 コメットサークルの概念が完成 11 月 1994 年 5 月 リコーUK プロダクツの複写機感光体 プラスチック部品に材料名およびグレード ドラムサイクル技術が、「ヨーロッ 表示を開始 パ産業環境賞」受賞 1995 年 2 月 第 1 回リコー全社環境大会を開催 10 月 エネルギースター対応製品を発表 12 月 リコー御殿場工場が ISO14001 認定を取得 (日本の認定機関による第一号の認証) 1996 年 7 月 リコーUK プロダクツが BS7750/ISO14001 の 認証を取得 1997 年 3 月 79 種類の管理化学物質を設定 1997 年 3 月 米国リコーコーポレーションが「エネル 1998 年 4 月 リコーリサイクル事業部が発足 5月 10 月 ギースター複写機部門賞」受賞 リコーグループグリーン調達ガイドラインを発行 リコー福井事業所が再資源率100%(ごみ リコーを電機・電子産業部門の ゼロ)を達成 トップに格付け 1999 年 1 月 1998 年版リコーグループ環境報告書を発行 6月 1998 年 11 月 ドイツの環境専門調査会社エコム社が、 リコーが「環境ボランティアリーダー養成シス 9 12 月 日本経済新聞社「第 2 回企業の環境 経営度調査」で、リコーが第 1 位 テム」の運営を開始 9月 12 月 1999 年 11 月 リコーが、国際エネルギー機関主催の リコー、初めての環境会計を発表 DMS プログラム第 1 回未来複写機 リコー、日本初の環境の総合展示会「エコプ 部門で「省エネ技術省」受賞 ロダクツ1999」に出展 2000 年 1 月 リコー、複写機 28 機種でエコマークを取得 2月 5月 9月 2000 年 3 月 米国リコーコーポレーションが、エネ リコーのデジタル複合機「imagio MF6550」 ルギー、スタープログラムで「総合大賞」 が、タイプⅢ環境宣言の認証を取得 を含む 3 賞を同時受賞 リコー、海外の原生林復元活動プロジェクト 5 月 ドイツの環境調査会社エコム社から 開始 IT/Electronics Industry 部門全世界 リコー青山本社事業所が、非生産系事業所 39 社の格付けが発表されてリコーが NO,1 として初めての再資源率100%(ごみゼロ) を達成 6 月 米国リコーコーポレーションが CEP から 日系企業初「環境スチュワード賞」受賞 2001 年 1 月 リコーロジスティックス、循環型エコ包装の運用 を開始 12 月 リコー日本経済新聞社「第 4 回環境経営 度調査」で 3 年連続 NO.1 の評価 1月 リコー沼津事業所を、河口順子環境相が視察 3月 桜井社長が、第 1 回『21 世紀「環の国」づくり』 会議に出席 出典:『環境経営報告書 2002』 10 第2章 2−1 持続可能社会に向けたエコデザイン エコデザインとは これまでに述べられてきたように、地球の自然環境は危機的状態に陥ってしまった。 今の状態で資源を使い捨てていってしまったのでは、あと 50 年位までで亜鉛、クロム、 ニッケル、銅、鉛など 40 数種の金属(ペシミスティック・ミネラル)を使い切ってしま うという。このような深刻な事態を回避するために、我々は自然資源をなるべく使わ ずに、生産性・環境効率の飛躍的な向上を図りつつ、文明社会の反映を持続していく システムを考える必要がある。そこで有効となってくる考え方の一つに「エコデザイ ン」がある。 エコデザインとは、人類が創り出すあらゆる製品を規格、設計、生産、再利用、廃 棄などの全工程について、地球環境・エコロジカルな視点から再構築することを意味 する。「エコデザイン」という概念はオランダの公共機関と UNEP(国連環境計画: International Environmental Technology Center)によって開発された。日本で最初 に掲げた「エコデザイン宣言」は、1999 年に開催された環境調和製品に関する国際会 議「エコデザイン‘99」で採択されたものである。エコデザインは資源エネルギーが絶 対的に乏しい日本にとって製造存続のキーポイントであり、資源の対外依存度を下げ ることにおいて、安全保障の要になる。エコデザインの対象はエブリシングであり、 全 て が エ コ デ ザ イ ン の 対 象 と な る 。 エ コ デ ザ イ ン は 他 に Design For Environment(DEF)、Life Cycle Design(LCD)とも呼ばれ、建築関係ではエコロジカ ルデザインという考え方もあり、ライフサイクルエンジニアリング(LCE)と言われ たりしている。 このエコデザインを進めるにあたって、以下に示したような基本事項がある。 1. 資源の豊富な材料を使用する。再生可能資源を有効利用する。 2.資源には隠れたマテリアルフローがあることを認識し、集約密度(MI)のより小さな ものを使用する。 3.原材料の環境影響値(エコインジケーター)のより低いものを選択する。 4.再生材のほうがバージン材よりも一般的にエコインジケーターは小さい。 5.部品リユースしたほうが、部品マテリアルリサイクルして部品を製造するよりも全体 として環境影響が小さい(再製造) 。 6.リサイクルにはエネルギーが必要だし、環境負荷物質も放出される。したがって、長寿 命設定が必要である。 7.エコロジカルナ観点からの適切な製品寿命設定が必要である。 8. 製品使用状態での環境負荷の大きな製品については徹底的な負荷低減(省エネ、省資 源)をはかる(特に家電、自動車、建物など)。 9.毒性物質は可能な限り使用しない、あるいは代替化する。やむを得ず使用する場合は完 全にリサイクルする。疑いのかけられた人工化学物質の使用は、科学的に解明されて 疑いが晴れるまで使用しない(予防の原則を徹底する)。 10.脱物質化を進める。製品をサービスで置き換える(パフォーマンスの販売)。脱物質 化のニュービジネスを強力に推進する。 11 出典:『エコデザイン』山本良一 これには主に材料調達、製品寿命、省エネ設計、毒性物質不使用、脱物質化などが 組み込まれており、エコデザイン標準化の基礎となっている。特に、材料調達は資源 が豊富で再生可能であり、集約密度が低くてバージン材よりエコインジケーターの低 い再生材を使用する、というように環境負荷の小さく、再生可能な材料を調達し、資 源を有効活用することを重んじて書かれている。 エコデザインは、今さまざまな方法が開発されている。一つは LCA(ライフサイク ルアセスメント:Life Cycle Assessment)である。またドイツが開発した MIPS で Minimization Method という単位サービスあたりの資源投入量を最小化するという方 法やスウェーデンを拠点としている NGO 団体である The Natural step の開発した将 来の持続可能な社会が満たすべき条件を設定して、その条件に照らして現在のマネー ジメントや製品を振り返り、その欠点を修正していくという方法もある。 また次のようにエコデザインを発展させていくためのモデルとして、オランダのデ ルフト工科大学のプレーゼット教授が提唱している 4 段階モデルがある。 STEP1 Product improvement 汚染物質や環境配慮の観点からの改善 タイヤの回収システムの組織化、原材料の変更,冷却剤の変更など STEP2 Product redesign 部品の変更、無毒性物質の使用、リサイクル率を高め、分解性を改善す る、部品の再利用、ライフサイクルでのエネルギー使用量の最小化など STEP3 Product concept innovation (or Function innovation) 製品機能の発現のさせ方の変更,紙による情報交換から E−mailへ の変更、車の私用から“call a car”システムへの変更など STEP4 System innovation インフラ、組織の変更、農業の工場ベースの食糧生産への変更、情報技 術に基づいた組織、輸送、労働における変更など 出典:『エコデザイン』山本良一 これは第 1 段階で 2 倍、第 2 段階で 5 倍、第 3 段階で 10 倍、第 4 段階で 20 倍の資 源生産性の向上をはかっていくためのステップである。資源生産性とは、サービスを 物質集約度で割ったものであるが、サービス(性能、付加価値)を環境影響で割った環境 効率に置き換えても同じになる。これは「ファクターX」という考え方と一緒である。 ファクターXは、ほとんどの場合 1990 年を比較年度とし、90 年における製品の環境 効率を基準に、その年の環境効率を割って環境効率が何倍になったかで進歩の度合い を計るものである。1990 年代前半にドイツのエルンスト・ワイツゼッカー博士が 2 分 の 1 の資源消費で生活水準を 2 倍にする「ファクター4」の概念を発表したことがきっ かとなった。 一般に「環境効率」は、環境負荷の改善度及び製品向上の度合いから算出し、 「製品 性能÷環境負荷」という式に導かれる。しかし仮に製品性能が革新的に向上した場合、 環境負荷低減程度が低くとも、見かけ上の環境効率値が大きくなり、環境負荷因子の 12 寄与度が不鮮明となってしまう。そこで「MET」を使うことにより新旧製品環境効率 のみから「ファクター」を算出することができる。 「MET」に基づく評価項目とは、1. 製品質量、2.消費電力量、3.環境リスク物質使用量であり、これらの割合から、評 価製品及び基準製品(原則として 1990 年製)各々のベクトルの長さを統合した環境 負荷を算出し、 「評価製品の環境効率÷基準製品の環境効率」という式からファクター の値を算出するという方法がある。ファクターX の結論から言うと、2050 年までに少 なくとも社会全体でファクター10 が求められている。しかし 1990 年と比較して産業 経済活動の地球に与える影響を半減するためにはファクター20 ぐらいの巨大なスー パーエコイノベーションが必要とされる。 しかし、リコーの代表取締役社長、桜井正光氏の「継続的な環境保全を行うために、 環境保全と利益創出を同時に実現すること」という言葉が語るように、環境保全を継 続的なものにしていくためには、環境保全によって得る利益がなければならない。し たがって、エコデザインには 3 つの要素があるといえる。Performance、Impact、Cost である。Performance とは製品価値、顧客満足度、付加価値であり、Impact は環境価 値、Cost は経済価値とされる。これを Impact×Cost/Performance という式で製品 の総合価値指標が表せる。 これによって企業が長期的な環境保全に取り組むことができる。日本にもエコデザ インに積極的に取り組んでいる姿はたくさんある。現に、ISO14001 取得件数は日本 がダントツの世界第一位となっている。企業はそれとともにエコデザイン設計の製品 開発をしようと努力している。エコデザインは循環型社会形成を進めるにあたって、 有効的な考え方であり、循環型社会は持続可能社会に直結するのである。 2−2 リコーにおけるエコデザイン エコデザインの基本事項は前述した通り、製品やサービスの提供・生産プロセスの 設計など環境的配慮を取り入れることを言い、エコデザインの実践(製造プロセスの 改善・製品の最適化社会システムの段階)を通じ、持続可能社会の実現を目指すもの である。アメリカにおいても「企業は製造した製品のライフサイクル全体について環 境への影響を考え最後まで責任を持つ」というファンクションユースの考え方が重要 であると言われている。そして私たちは、エコデザインの最終的目的はモノの販売か ら機能の提供への移行だと考える。モノの販売からサービスの販売になるということ は、製品の再利用率を最大にすることが可能であり、そしてそれが重要となる。その ために再利用する部品を新製品に使用できるようにあらかじめデザインしておくこと が必要になる。 そこで再びリコーを例にとってエコデザインを見ていきたいと思う。リコーは「私 たちは、経営理念に基づき、環境保全は我々地球市民に課せられた使命と認識し、こ れを事業活動の重要な柱のひとつと捉え、自ら責任を持ち、全社をあげて取り組む。 」 という基本方針を打ち立て、法規制やニーズに合わせた「環境対応」という取り組み 形態から、環境保全活動の経済価値を増大させることを目指す「環境経営」という取 り組み形態へと変化していった。エコデザインについても「モノは売らず、機能性や 13 利用価値を売る『サービス消費』へと経済の重点を移す、経済の構造的転換が必要で す。そして、先進国には、資源消費量を減らしても成り立つ『技術開発』 『社会システ ムの変革』 『使い捨てでないタイムレスデザイン(飽きのこないデザイン)の開発』な どが強く求められています。地球資源の限界をエコデザインで乗り越えるのです。」と 述べ、エコデザインを実践している。 例えば、容器包装リサイクル法の施行の以前からリコーは環境負荷削減のために「循 環型エコ包装」を開発し、納品時や回収時の環境負荷削減に貢献している。他にも環 境に配慮された商品が次々と開発されている。1997 年には「スピリオ 1310」という環 境調和型の複写機を発売した。この商品の特徴は従来の「スピリオ 1300」と比べ、コ ンパクト設計で、コピーに要する時間とウォームアップの時間が短縮されているなど の省エネ設計になっている。また、トナー消費量節約型であり、外装カバーもリサイ クルを容易化する造りになっている。国際エネルギースター計画基準にも適合し、自 動的に電源が切れる機能を採用している。 続いて「スピリオ 5000RM」という「スピリオ 1310」よりさらに高機能商品を発売し た。 この商品は質量比の約 60%のリサイクルパーツを使用した複写機である。 これは、 市場から 1993 年に発売し、使用されたものを回収し、リコー独自のリサイクル技術で 分解、洗浄、検査などの再生処理を行い、新品と同一の保証をする、リサイクルパー ツで製品をつくる「再製造(リマニュファクチャリング)」という方法を使用している ということが特徴的である。これに利用する再生部品はどれもリコー製品に使われる 新品のものと同等である。さらにリサイクル処理を容易にするために使用するプラス チックのグレードを統一し、廃棄物の低減にも力を入れている。また、回収した製品 の製造番号を入力するだけで設計変更や各パーツの再生工法の情報を入手でき、パー ツの再生処理などを行う設計変更履歴検索システムを導入することにより、再製造の 効率化を実現している。そして過去との技術的なギャップを埋めるために充実した新 しい複写機能などを搭載し、再び市場へ送り出している。 このようにリコーは環境を強く意識した商品開発や、回収システムの構築を行って いる。これにより、企業や消費者、地方自治体や非営利団体が作成した「グリーン購 入のガイドブック」の高水準にも対応することが可能となった。しかし、この「スピ リオ」はこれだけではない。リコーは解体処理業者などの協力を経て、その解体容易 性を工夫した商品である。これにより解体時間は以前発売された同社製品よりも半分 に削減された。リコーは解体現場の声も反映させ環境対策に取り組んでいるのだ。 2002 年現在においてもリコーはリライタブルペーパープリントシステム、リユース 部品 87%搭載の複写機、鉛フリーはんだを使用した電源装置、塩化ビニルを使用しな 14 い電源コード、コピー機の使用済みプラスチックの再利用、環境情報の積極的開示等々、 様々な環境対策を行っているのである。 2−3 循環型社会の中のエコデザイン 現在の経済社会システムは資源とエネルギーをほとんど無制限に利用でき、環境負 荷を低コストで処理することが可能であるという条件のもとで発展してきた。 しかし今日、資源の有限性が指摘され、環境問題も様々な形態で地球規模の広がり をみせ、また最終処分場の逼迫など、わが国をはじめ先進諸国において従来の社会シ ステムを続けていく条件が崩壊し始めている。 21 世紀に向けて、良好な環境の維持と持続的な経済成長の両立する経済社会を実現 していくためには、従来の社会システムを転換し、有限な資源を効率良く利用し、環 境面の制約に適切に対処できるようなシステムを、産業活動や経済構造のあらゆる面 に導入し、環境と経済の融合が図られる新たな「資源循環型社会」を構築する必要が 急務となっている。これらの問題を放置した場合は、資源・エネルギー制約、廃棄物 処理不能、地球環境の悪化により、経済停滞を余儀なくされる可能性もある。 そこで今までのような「大量生産、大量消費、大量廃棄」の一方通行型社会から「適 正生産、適正消費、ゼロエミッション」を基調とする資源循環型社会へ一刻も早く切 り換えることが必要である。ゼロエミッションという言葉は、1994 年に国連大学内部 でそのコンセプトが確立され、翌年 4 月に開かれた国連大学主催の「ゼロエミッショ ン世界会議」で世界へ向けて発進された用語である。 「ゼロエミッション」とは文字通 りに訳せば、 「廃棄物ゼロ」という意味であるが、最近では、廃棄物を出さない経済社 会、地域社会、企業活動などを表す、より広い意味を持つキーワードとして使用され ている。だから単に廃棄物をゼロにするということだけではなく、モノを大切に使う、 製品を作る場合は長持ちする製品を作る、使い終わった製品はリサイクルさせて何度 も使うなど、有限な地球を前提にした新しい時代の文明創造を目指すための用語とし て使用するようにもなってきているのだ。そして、持続可能な社会を築くためにも、 これまでの環境負荷の大きいエネルギー、資源多消費型社会とは決別しなくてはなら ない。前に述べたエコデザインの考え方から、自然資源をなるべく使わず、循環型社 会へ向かい、さらに文明社会の繁栄を持続させるためには、エコデザインが有効にな ってくると考えられる。 次に、リコーの循環型社会への取り組みにおける仕組みを検証していくことにする。 リコーは 1994 年にコメットサークルという概念を完成させた。それは、将来に向け て持続可能な社会を創造していくためには、最小の資源やエネルギーで最大の効果を 生み出すことのできる「循環型社会」の実現が求められる。コメットサークルは循環 型社会を表現したもので、リコーグループが取り組むべき環境活動・社会活動・経済 活動についての考え方が盛り込まれている。リコーグループでは、仕入先、顧客、リ サイクルをともに進める事業者とのパートナーシップのもとに、コメットサークルに 球体で示されたすべてのステージにおいて、より環境負荷が少なく、より効率的な活 動が行えるよう取り組むとともに、資源循環のループがより小さく、コメットサーク 15 ルの内側に向かうよう努力している。 コメットサークルが示しているのは、環境保全のためのコンセプトだけではない。 現在の世界市場においては、その製品がどういった物かだけでなく、どのような過程 でつくられているのかが、購買や企業価値を決定する要因になってきている。リコー グループは、世界の生産拠点で、ものづくりだけでなく「人づくり」を行ってきた。 また、仕入先やリサイクル事業者に対しても、業務改善・品質改善・環境保全といっ た視点での支援を行ってきた。コメットサークルの構成員は、リコーグループと仕入 先、お客様、リサイクル事業者だけではなく、より豊な循環型社会を実現するために、 環境負荷の少ない買物をし、きちんとゴミを分別し、社会を支えている人や、環境保 全や社会的責任の視点で投資を行っている人たちもコメットサークルの構成員なので ある。そしてコメットサークルを支えている最も偉大でかげがえのない構成員、それ が地球なのである。同じコメットサークルの中にあって、地球にダメージを与え続け たまま、私たちだけが繁栄し続けることは不可能であると考える。リコーは今後も、 豊かな社会づくりのために、コメットサークルの視点で、物の流れと各ステージでの 活動を把握・改善し、社会的責任の視点に立った積極的な活動を進めて行くであろう。 コメットサークルの基本コンセプトは、次の5点に集約される。 1.全ステージでの環境負荷の把握と削減 2.内側ループのリサイクル優先 3.重層的リサイクルの推進 4.経済効果の高いリサイクルへ 5すべてのステージとのパートナーシップ 出典:「リコーホームページ」 2−4 エコデザインの中のグリーン購入 一般の消費者や企業が、生活や事業活動に必要な消耗品・備品、あるいは原材料な どについて、製造や使用、廃棄に伴う環境負荷の低い製品、原材料、サービスなどを 選択して購入・調達する取り組みを「グリーン購入」と呼ぶ。特に政府や企業等にお 16 ける物品・サービスの調達のなかでも調達の際の数量が多く市場を動かす力をも持っ ているものを「グリーン調達」と呼ぶ。 1996 年に日本では、グリーン購入に率先して取り組む企業、行政機関、民間団体な どにより、 「グリーン購入ネットワーク」が設立された。2002 年6月の時点で企業 2038 社、行政機関 362 団体、民間団体 268 団体の計 2,668 団体が加盟している。グリーン 購入ネットワークでは、①製品ライフサイクルの考慮、②事業者の環境問題への取り 組みの配慮、③環境情報の入手・活用を基本原則として、グリーン購入ガイドライン や商品選択のための環境データベース作成を行っており、国内におけるグリーン調 達・購入の指標となっている。また、2000 年 5 月には消費者側から循環型社会の形成 を促進することを目的に「グリーン購入法」が成立した。法律に基づく政府機関のグリ ーン調達制度としては、国際的にも初めて開始されたものである。 企業におけるグリーン調達は、現在大手企業を中心に進められている。環境への取 り組みがその取引先へと広がるという効果があり、今後、環境意識の高まりや社会的 要請などを背景に、グリーン調達がさらに普及してゆくと考えられる。現在各企業で 行われているグリーン調達の傾向としては、部材自体の環境負荷低減と、調達先にお ける企業体質向上の2点に大きく分けられる。 ①部材における環境負荷の低減 循環型社会の構築のための最優先事項として事業者が果たす役割としては、製品自 体の環境負荷をライフサイクル全体で減らすことがあげられる。製品の環境負荷を低 減するためには、自社で行う環境活動のみならず、様々な企業から調達する資材(部 品や材料など)の環境負荷を適切に把握し、低減していく必要がある。 低環境負荷の製品を製造するためには、調達元における製品設計の際の環境配慮が 軸となる。設計の際には、資源採取から製造・販売・使用・廃棄に至るまでの工程間 で、製品が環境へ与える要因を定量化し、総合評価する手法 LCA(ライフサイクルア セスメント)の概念を取り入れている。 ②調達先における企業体質の改善 グリーン調達においては、調達している部材そのものだけでなく、調達先企業の環 境管理の徹底や企業体質の改善を求める動きも見られる。調達先の環境に対する認識 を高めるため、環境問題に関連する説明会の開催、ガイドラインの配布、ISO14001 取 得の支援などを行う企業が増えている。 大手企業では、自社の環境保全の考え方を購入先と共有し、ともに環境保全に取り 組もうとしている。従来、資材調達では主に品質、コスト、納期のバランスを総合的 に評価して採用してきた。グリーン調達では、製品の環境性能の向上にあたり、環境 性能に優れた部品調達が必須となる。そこで、大手メーカーでは、部品・部材メーカ ーなど資材購入先に、その考え方を示すツールとして、グリーン調達ガイドラインを 発行している。今後この方向性が主流になると、環境への取り組み状況の悪い企業は 切り捨てられるということにもつながる可能性が考えられる。 リコーは 1998 年に「グリーン調達ガイドライン」を発行し、ISO14001 の認証取得、 またはリコーグループのガイドラインをクリアすることを取引条件として、仕入先に 協力を呼びかけてきた。そして 2001 年度中に、すべての仕入先において ISO14001 17 またはリコーグループのガイドラインに基づく EMS の構築が完了した。(下図参照) また、社内で使用する OA 機器、備品、文具、販促品、贈答品などに関する「グリー ン購入品リスト」を作成すると共に、自動発注システムを構築し、効率的なグリーン 購入を推進している。現在このシステムは、リコーの非生産系 8 事業所および生産系 7 事業所に展開されており、リコーで購入される金額全体の約 80%の事務用品がグリ ーン商品となっている。 出典:『リコーグループ環境経営報告書 2002』 2−5 エコデザインと環境ラベル 2−5-1 環境ラベルの必要性 1980 年代に入り、地球環境問題や都市環境問題が激化するとともに、市場には「地 球にやさしい」 「エコロジカルな商品」という宣伝が溢れあがった。しかし、そのよう な宣伝とは裏腹に、実際には地球環境や都市環境はより悪化していった。このような 状況に対する反省から、商品の環境面の質の向上を環境ラベル制度が世界各国で導入 されはじめた。環境ラベルは、消費者には環境負荷の少ない商品購入を促し、企業に は環境配慮型の製品製造や流通を実施させていくことを目的とし、また、市場の力を 活用することによって製品やサービスの環境への影響を改善することも目的としてい る。製品やサービスの環境情報を含んだ環境ラベルは、環境改善のための総合的な目 標を表している。環境情報が与えられることによって消費者は環境に配慮した製品や サービスを適切に選択することが可能になる。そして、このような仕組みが市場にで きるということは、継続的な製品やサービスの環境改善策へとつながる。 ブルーエンジェル-Blue Angel-(正式名“Das Umweltzeichen”「環境保護表示」 )は、 1978 年にドイツで誕生した世界初のエコラベル制度(第三者認証型環境ラベル)で、 ブルーエンジェルマークに具体的な環境情報(何が環境にやさしいのか)を記述して おり、この具体的な環境情報を提供することによって、消費者に対して適切な環境情 報を与え、消費活動のなかにも環境意識を高めること(ブルーエンジェルの効果表示) につながる。 現在、ドイツ国内外を問わず 86 商品類型、4,000 以上の環境配慮型製品・商品がド イツ連邦庁(UBA/FEA)とドイツ品質保証・ラベル協会(RAL)によって認定され ている。また、GDP(国内総生産)の 15%相当額を公共調達で占めているドイツでは、 官公庁に対して積極的なブルーエンジェル製品・商品の購入が制度化されており、政 18 府がイニシアティブをとって市場メカニズムを通し、企業に対して環境保全製品の開 発・生産を促している。ブルーエンジェルは以下の目的のために用いられる。 (1)消費者が環境負荷の小さな製品を買うためのガイドを提供する。 (2) 生産者が環境にやさしい製品を開発・提供することを奨励する。 (3) エコラベルを環境政策の市場志向手段として利用する。 日本のエコマークにはないBAの詳細表示には二つの大きな特徴がある。一つ目は 使用していない危険物質名を具体的に表示することであり、場合によっては危険物を 使用していない場所や製品機能を特定することである。たとえば「カドミウムを含ま ないはんだ」「水銀及びカドミウムを使用しないリチウム電池」(マーク)といった表 示をあげることがでる。もうひとつは環境負荷が少ない機能を特定していることであ る。たとえば「節水型洗車装置」 「低公害でばいじんの少ない公共用自動車」などであ る。 日本では、1986 年 12 月に環境庁(現環境省)は、 「環境保全長期構想 21 世紀を目指 して環境保全はいかにあるべきか」を策定し、新しい環境政策の 1 つとして「環境保全 に望ましい製造方法や環境負荷が小さい製品、リサイクルしやすい製品の推奨方針を 検討し、これらの方法・製品の普及を図る」ことを提案した。 1987∼89 年、環境庁の委託により(財)日本環境協会が「環境保全型商品推進事業に 関する調査」を行い、この中で、ドイツのブルーエンジェルなどの考え方を参考にし た「エコマーク」の基本的考え方が示された。これらを受け、1989 年から、(財)日本環 境協会がエコマーク事業を開始することになった。1989 年に「特定フロンを使用しな いスプレー製品」など 7 種類の品目を対象としてスタートしたエコマーク事業は、その 後、対象品目及び認定商品が毎年拡大され、2002 年 9 月 30 日現在では 64 種類の商 品類型、5,308 ブランドの商品(1,826 社)をカバーして、現在日本ではポピュラーな 環境ラベルとなった。 環境ラベルは、消費者の商品選択時においての一つの項目として位置づけられ、他 製品との差別化を計るために有効であると共に、企業において製品の環境基準の標準 化に役立てられている。環境ラベルを取得することで企業のイメージアップにもつな がり、また海外市場でも優位性を保てるという利点もあるのだ。 2−4-2 リコーの環境ラベル リコーにおいても各国の環境ラベルの基準制定にも積極的に参画し、環境情報を積 極的に開示している。リコーは ISO の 3 段階での環境評価を行っており、3 つのタイ プに分類して環境ラベルを制定している。 タイプⅠ環境ラベルでは、ISO14024 の基準に基づいて国や地域で制定している環 境ラベルで、環境負荷の少ない製品であることを公示している。エコマーク、ドイツ のブルーエンジェル、カナダの Environmental Choice Program、タイの The Green Label Scheme がこれに相当する。 エコマークは前章で述べたように、日本で唯一の環境ラベルであり、日本人には馴 染みの深いマークである。リコーはそれを現在複写機 72 機種、プリンタ 20 機種で取 得しており、販売する全ての商品にエコマーク認定を行っていく方針をとっている。ド 19 イツの Blue Angel は世界最古の環境ラベルであり、世界的にも認知度が高い。それを リコーはドイツで販売するほとんどの機種で取得している。また、タイの The Green Label Scheme は 1994 年 8 月に施行されたばかりのアジアでの新しい環境ラベルで、 それはまた複写機限定のグリーンラベルであり、リコーは 2002 年 9 月に Aficio1022 で業界初の認証を受けた。 このようにリコーではいくつもの国の環境ラベル認証を受けており、世界のタイプ Ⅰ環境ラベルを取得することで高度な環境基準にも対応出来るような製品を開発し、 またグローバルでグリーンな販売を効率的に進めている。特に環境意識の高い欧州で の販売戦略には、世界トップ水準の環境ラベル取得が絶対的に必要となっているので ある。 環境ラベルタイプⅡは“環境ラベルへ(自己宣言)の取り組み”で、各社が自主的 に基準を定め、それをクリアした製品に付けるマークであり、リコーでは「リコーリ サイクルラベル制度」を 1998 年に日本市場でスタートさせ、現在 8 機種が認定基準 を満たす製品として認証された。その基準は以下のように 5 つに大別される。 1.リサイクル設計 マテリアルリサイクル ●大物樹脂部品の材料 :大物樹脂部品の材料が規準に準拠して選定されていこと ●トナー容器用樹脂材料 :トナー容器用樹脂材料へ材料名表示がされていること ●大物樹脂部品等の取り外し性 :大物樹脂部品への異種材料部品の接着禁止 :大物樹脂部品への剥離が必要な塗装の禁止製品、部品、ユ ニットの再使用 ●交換部品の交換作業性 :交換項目数、及び交換作業時間は前身機での数、及び作業時間を 超えないこと。 ●交換部品の交換作業工具 :標準工具で交換作業ができること。 2.部品ユニットの再使用 ●再使用部品の使用率が本製品の質量比で最大40%以上であること。 (「最大」とは、本製品の生産台数よりも使用済み製品の回収台数の方が少ない場合に、 再使用部品を 1 台に集中して入れた場合の使用率を意味しています。) ●カートリッジを採用している製品の場合は、カートリッジに再使用リサイクルが実施されて いること 3.回収リサイクルシステム ●使用済み製品の回収/リサイクルのシステムを保有すること。また、使用済みカートリッジ, 容器の回収/リサイクルシステムを保有すること。 4.再資源化 ●リコーが構築するリサイクルシステムにおいて本製品の90%以上(質量比)を再資源化可 能なこと。 5.製品の環境安全性 ●有害7物質を含む部品の使用禁止(アスベスト、カドミウム、6価クロム、水銀、オゾン層 破壊物質、多臭素化ジフェニルエーテルまたは多臭素化ビフェニル、ポリ塩化ビフェニル) ※一部用途除外の規定があります。 20 ●ポリ塩化ビニル(PVC)を含む樹脂の使用禁止(電線被覆、ハーネス用電気絶縁テープは除 く) 出典:「リコーホームページ」 「再生使用部品の使用率が本製品の質量比で最大 40%以上であること」、 「リコーが 構築するリサイクルシステムにおいて本製品の 90%以上(質量比)を再資源可能なこ と」等、タイプⅠの各国の環境ラベルよりも格段に厳しい条件にクリアすることが必 要となっている。リコーでは自主的な環境保全活動を促進していくためにタイプⅠの 環境ラベルよりも、さらに厳しい基準を設定している。特にリサイクルに力を入れて おり、2章−2「循環型社会の中のエコデザイン」で説明された通り、リコーでは「コ メットサークル」というリサイクルシステムが確立されており、数値的にも大きな実 績をあげている。それもリコーのリサイクルしやすい製品設計の甲斐あってのことで あり、エコデザインが有効的に活用された成果といえる。リコーは、自社基準を作る ことによって、複写機という特性を生かした環境保全活動に取り組んでいるといえる。 タイプⅢはⅠ、Ⅱとは異なり、企業側が表示した定量的データを消費者が判断する というもので、他社の製品との比較を目的としているものではない。したがって、現 時点では不確実な点も多いという問題もあり、リコーでは開示される定量的データの 透明性・信頼性を向上させるために日本のエコリーフ環境ラベル、スウェーデンの製 品環境宣言等の第 3 者認定機関による認証を取得している。エコリーフは(社)産業 環境管理協会が経済産業省の支援を受け開発し、2002 年 6 月から運用を開始したタイ プⅢ環境宣言プログラムある。エコリーフには、第 3 者機関が「定量的データを適切 に開示するために企業が構築したシステム」を認定する『システム認定制度』があり、 リコーはこのシステム認定を取得した。 以上のようにリコーは環境ラベル取得を視野に入れてエコデザイン設計をしている ことがうかがえる。しかし、年表を見れば分かるようにリコーは 1876 年の時点で環 境推進室を設立している。したがって、リコーでは環境ラベル取得のための環境保全 ではなくあくまで地球市民とした環境保全を行っているのである。環境ラベルは社内 での環境保全をさらに推進していく目安として使われ、またそうすることで世界・日 本を持続可能な開発の足がかりとしていくことができるのである。 2−5-3 世界の環境ラベルの現状と未来 第三者認証マークの制度が始まったのは、ドイツのブルーエンジェルが開始された 1978 年でだった。日本のエコマーク、北欧 5 カ国スウェーデン・ノルウェー・フィン ランド・デンマーク・アイスランドのノルディッックスワンが 1989 年、それからア メリカのグリーンシールが 1993 年から開始され、第三者認証マークは現在では、世 界の多くの国々で制定されている。 実施においては、ドイツやカナダでは環境担当大臣の決定に基づいて行われている。 日本の場合には、環境省の指導のもとに(財)日本環境協会が規格を出し、認証している。 日本の実施主体は、完全な民間でないにしても、政府が少しのサポートをするような 半官半民団体ということになる。一方、アメリカの場合は、純粋に民間団体で、非営 利法人によって行われている。第三者認証といっても、政府レベル、完全な民間レベ 21 ル、その中間レベルで認証を行っているというケースがあるのだ。 今日の経済社会は大量生産・大量消費・大量廃棄から循環型に移行しなければなら ない状況に迫られている。こうした流れの中で、製品・サービスの環境調和性を製品 のライフサイクルにわたって反映させていくことが重要視されるようになってきてい る。生産者側においては製品の設計、資材調達、製造プロセス、輸送などの各段階で の環境負荷改善がより一層求められ、またこれら製品・サービスを購入・使用する消 費者においては製品選択、使用段階での環境配慮が重要視されてきている。このため 生産者と購買者をつなぐコミュニケーションが重要であり、適切な環境情報の提供す なわちそのツールとなるべく環境ラベルが必要とされている。 特に、1997 年 12 月に京都で開催された第 3 回締約国会議(COP3)において、温 室効果ガスの総排出量の削減目標が定められ、これを受けて「地球温暖化対策推進大 綱」が決定され、地球温暖化対策への取り組みが一層強化されることになった。大綱の 中で、地球温暖化対策を実効あるものとするための 1 つとして製品などに関する環境 情報提供の推進が唱われた。 さらに近年、製品などについての環境配慮が多方面から求められるケースが多くな ってきている。政府・地方自治体などが率先して行う環境負荷の少ない物品などの調 達行動、グリーン購入ネットワークをはじめとするグリーン購入の動きなど、また企 業にあってはこれら消費者の動向に加え、環境に特に敏感な欧米諸国などへの製品の 輸出を考慮し、環境調和性をより高めるために部材などの選択により環境への視点を おいたグリーン調達が広く行われてきている。このような企業・消費者の行動をサポ ートする手段として、積極的な環境情報開示は必要不可欠であり、製品などのライフ サイクル全般にわたる環境負荷を定量的に表示する環境ラベルの導入に向けた取り組 みが期待されている。 地球環境問題の激化という情報は、近年テレビや新聞のニュースメディアで数多く 取り上げられている。はじめに述べたようにそのわれわれ消費者は「地球や地域の環 境問題の現状」についての認識度は高い。しかし、そのことが環境保護のために結び ついていないという特徴がある。われわれ消費者どういう基準で購買活動を行ってい るのであろうか。まず 1 つに価格、もうひとつに機能性という観点が挙げられる。私 たちの行ったアンケートからもそれは証明される。 “環境にやさしい製品が、一般製品 より何%高であれば購入するか”という質問に、 “割高ならば購入しない”という意見 が 4 分の 1 を占めており、他 4 割が“5%高程度まで”と答えている。さらに自由回 答形式の“グリーンコンシューマー拡大のためにはどうしたら良いか”という問いに “一般製品と同じ、もしくは安い”という意見が多く書かれていた。つまり、価格も 同じで、利便性の高さも同じであれば、環境にやさしいものを買おうというグリーン コンシュマリズムがわれわれ消費者の間に少しずつ植え付いていくのである。このよ うな消費者が増えてくると、当然消費者が商品の品質や環境負荷について知る権利、 知らされる権利の重要性が問題となる。それを助けるのが環境ラベルだと言える。環 境ラベルには商品の成分や品質に関する情報を開示するという役割だけでなく、環境 負荷の小さいもの、すなわちエコデザイン商品を消費者が買うように促すという政策 的側面も持っている。 22 環境ラベル、日本においてはエコマークをより広く消費者に普及させていくには、 マーク自体の信頼性を高く保つということが不可欠である。エコマークがいくら信頼 性のある正確な情報を提供する、優れた環境ラベルであっても、消費者がそのラベル について知らなければ意味がない。 “現在家庭で使用しているプリンタが環境に配慮さ れているかについて知っているか”という質問に 7 割の人が“知らない”と答えた。 そこで、消費者のための学習の場が必要となる。また、より多くのエコマーク商品が 生み出される必要性をつくるというのも重要なポイントである。そのためには、環境 にやさしい商品、いわゆる「グリーンプロダクツ」を生産者が安心して生産できるサポ ートシステムが必要であり、そのような状況をつくるにはグリーンプロダクツの需要 を生み出す必要がある。しかし、最も求められていることは、安価で品質のいい商品 を作っていくということである。 このようなことから、今後必要なのは生産者と消費者のコミュニケーションを促す システムの確立だということがいえる。そして、消費者の意識を「自分ひとりではど うしようもない」ということから「自分ひとりでも行動する」という認識に変革して いかなければならない。 23 第3章 3−1 持続可能社会に向けて 持続可能社会とは 持続可能性とは 1992 年にリオデジャネイロで開催された環境サミットで大きく取 り上げられ、20 世紀における大量生産・大量消費・大量廃棄の社会を見直すという概 念である。今までの産業活動では無限にあると考えられていた自然資源を大量消費し、 大量廃棄することで「資源の減少→廃棄物の増加」といういわゆる持続不可能な社会 の構図ができていた。しかし、21 世紀になり無限であると考えられていた自然資源が 有限であることや自然の中への廃棄物を大量に排出することにより水質・土壌・大気 が汚染され結果的に人間の健康に悪影響を及ぼすことになることが明らかになり、環 境問題を深刻に考える必要性が出てきたのである。 そこで打ち出されたものが有限な資源から風力・水力や太陽光エネルギーのような 無限にあるエネルギーに変え、廃棄物の量も自然の浄化作用に対応できる程度に抑え ようという持続可能な開発という考え方である。それにより、持続不可能な社会から 持続可能な社会への転換が可能になるのである。 この提言により、世界の意識は少しずつではあるが経済主体の考えから環境保全の考え へ変化していった。しかしこれまで述べたように環境悪化の現状は未だ改善されていない。 一部の欧州諸国は構築されつつあるが、ほとんどの国で政府・企業・消費者の実質的行動 には移されていない。我が国も環境先進国のドイツやスウェーデンに比べ、消費者の意識 が低く環境問題に対し活発な活動が行われてはいない。NGO などの団体は日本にも存在 するが、これは団体というよりも一人一人の問題なのである。 私たちが今後も地球上で暮らしていくためには、社会経済システムが環境保全へと 変わっていかなければならない。現在抱えている環境問題も様々なものがある。それ らは互いに関係している。例えば、オゾン層が破壊されるにつれ、地球温暖化は進行 し、それにより砂漠化や森林の減少も進む。そしてそれは生物種の減少に繋がり、ま た二酸化炭素の吸収率低下による温暖化にも繋がるのである。このように一つの問題 から、様々な影響を及ぼすのである。日本は、資源調達のあらゆる面において輸入に 頼っているため、世界中の資源を大量に消費している。日本が変わっていくためには、 私たち個々の環境に対する意識と理解を高めていかなくてはならない。環境先進国の 政策や環境教育などを見習い、環境保全のための社会システム作りに取り組んでいか なければならないのではないだろうか。 私たちは持続可能性とは現在の地球環境問題を改善し、未来のこの地球に人間と美 しい自然が共存できる社会を残していくことだと考える。 3−2 持続可能社会に向けてのリコーの今後 リコーグループの環境への取り組みは、最初に法規制や消費者からのニーズに答え るための「環境対応」にすぎなかった。次に、地球市民として自らが高い目標を設定 して、環境負荷削減に取り組む「環境保全」となった。そして現在、リコーグループ は環境と経済を同軸のものとして捉え、環境保全と利益創出を同時に実現する「環境 経営」を目指している。そして、環境保全を永劫の取り組みとして考え、経済活動全 24 体の環境負荷を自然の回復力の範囲内に止めることを目標に、継続性を重視した活動 に取り組んできた。企業として存続し、継続的な環境保全を進めていくには、活動を 通じて利益を創出していくことが重要である。さらに、経営のあらゆる側面に環境の 視点を取り入れ、継続的な事業の改善を図ると共に 2002 年度から 2004 年度までの新 たな計画として、 「環境保全と利益創出の同時実現により、世界一の環境経営が実現さ れていること」また「環境技術の開発により、リコーの製品、ビジネスプロセスが際 立っていること」をトップデザイアとした。 すべての経済活動を自然の回復力の範囲内に留めるという視点でみると、今の経済 を考えた時、大きな前提条件ができる。それは、①自然環境の再生能力の範囲内で資 源を使う。②自然環境の再生能力の範囲内に廃棄物を抑える。③自然環境の再生能力 の範囲内に温暖化ガスを抑える。という三つである。これらを前提とし、リコーグル ープは「省資源・リサイクル」「省エネルギー」「汚染予防」を環境保全活動の大きな 領域とし、製品および事業所、それぞれの分野で取り組みを進めている。今まで述べ たように、あらゆる工程で独自の活動を施している。 リコーグループは日本の企業だけではなく、世界の企業にまでも影響を与えるであろう。 その一歩として、米国イノベスト・ストラテジック・バリュー・アドバイザーズ社が実施 した環境格付けにおいて、写真・事務機器部門での最高スコア「AAA」と評価され、評 価対象 11 社のなかで第 1 位となった。イノベスト社は、企業の環境効率性と持続可能性 という側面から評価を行い、その結果に基づき環境格付けを行う投資リサーチ会社である。 各企業から提供される環境報告書や各種公開資料をもとに、1) 環境戦略・体制、2) 産業 別環境リスク、3) 環境ビジネス・利潤機会の 3 つの視点で約 60 項目にわたる情報収集を 行っている。公開資料から得られないデータは、直接インタビューなどにより収集してい る。こうして集められた情報をもとに、全 60 項目につき、それぞれ同一業界内における 企業間比較による相対的評価を行っている。 リコーは、特に以下の点が高く評価されたのである。 1. 自らを「地球市民」と位置づけ、リコーグループ全体で、利益の追求と環境保全 を融合させる「環境経営」を実践している点。 2. 革新的な省エネ技術を開発し、それをリコー製品のなかでも最も出荷台数が期待 される普及層のデジタル複合機に採用することにより、社会における環境負荷の 低減を目指している企業姿勢。 3. 環境会計の質の高さ、また、それを「環境経営」のツールとして使用することを 目標に改良し続けている点。 以上のようにリコーグループは、世界でトップの環境意識レベルの高い企業である。リコーは これからも他の企業をリードし、さらに環境への取り組みを率先して行っていくことが求められ ていると考えられる。今後さらに高度な技術開発や環境保全活動、リサイクル、省エネ活動、 グリーン購入など進めていき、環境保全と利益創出を両立できる見本となり、日本国内の他 の企業または海外の企業に影響を与え、共に持続可能社会を支えていくことが望まれる。ま た、格付けでトップになることだけが全てではないが、結果としてそれを維持し続けることなど 25 も、他企業または消費者に信用などの多大な影響を与えるであろう。 3−3 エコデザインから持続可能社会を考える 企業は、環境への影響を低減する製品・サービスを市場に提供できる立場にあり、 また廃棄物処理・リサイクル技術、製品の環境情報を消費者に提供できる立場にあり、 持続可能社会構築に果たす役割は大きい。そんのため、可能な限りの環境保全を行う ことが求められ、また、環境保全としてどのような取り組みを行っているかを環境報 告書、環境会計などを通じて情報提供をし、消費者から正当な評価を受けるべきであ る。 企業とともに市場を構成する消費者の役割も重要である。消費者がどのようなニー ズを持つかによって企業の生産・販売活動は変わってくるものであり、消費者が率先 して環境負荷の少ない製品を購入することにより、企業が提供する製品・サービスをた だ黙って消費するのではなく、環境に配慮した製品にはコストがかかるということを 正しく理解し、企業や製品を積極的に評価していくべきである。 行政においては企業の廃棄物処理・リサイクル対策を進める上での環境整備を図る ことを基盤とし、進むべき方向性の提示、市場の整備への支援を図ることが必要であ る。特に地方自治体は、廃棄物の回収・処理といった持続可能社会の構築のための直 接的な事業と、住民と最も近い存在となって住民の環境意識を高めるような対策を打 ち出していくべきである。 このように、持続可能社会の構築には社会の構成主体である消費者、企業、行政が 強調しあいながら取り組んでいくことが必要である。 結論として私たちはこのような構図を完成させました。企業が製品を設計、販売す る。消費者はその商品を購入し、廃棄する。それを企業が回収し、リサイクルして再 製造する。これが循環型社会ある。しかし、現在の日本では、この輪の中に回ってい る物質は 1 割程度である。それをもっと多くの物質をリサイクルして、循環させてい くためのキーワードがエコデザインである。企業がグリーン購入し、エコデザイン製品 を作って市場に送り出す。商品とともに商品に対する適切な情報提供をして、それを 見て消費者が購入し、寿命まで使い切ったら廃棄する。それを回収し、リサイクルし、 再製造する、ということを繰り返していく事が出来るようになる。 さらにこの流れを円滑化させるためには、行政の力が必要となってくる。行政は企業 にエコデザインを推進し、支援する。消費者にその商品の購入を促し、学習させると いう大きな役割を担っている。だが現在、行政のその役割は果たし切れていない。企業 は大手企業を中心としてエコデザインが波及されていっている。その部分は自ら解決 されているが、消費者はエコデザイン商品をそれが環境によいという概念のもとに購 入していない。それは購入する消費者が、エコデザイン商品を購入することの意義と、 企業から提供された情報を理解しかねていることが原因である。この循環型社会を構 築するためにはまず消費者の学習が必要となっている。大きな意味でとらえて、だれ もが必ず消費者になるという事を考えれば全体的な環境教育が必須となる。そうする ことによって、グリーンコンシューマーが拡大され、市場のニーズにより、企業はエコ デザインをさらに推奨し、研究していく。 26 循環型社会は、持続可能社会形成の大きな柱の一つとなっている。循環型社会を円滑 にするためにはエコデザインが必要となる。したがって、エコデザインは循環型社会 の大きな役割を果たし、循環型社会は持続可能社会形成に直結するのである。 持続可能社会を形成するためには、一人一人の環境への意識改革をし、企業・行政・ 消費者が一体となって、さまざまな形で取り組んでいかなければならない。エコデザイ ンはその形の一つとなって、持続可能社会構築に貢献しているのである。 27 環境・グリーン購入に関するアンケート 性別 □男性(34) □女性(63) 環境意識に関する質問 □無回答(3) 計100名 (1)環境問題に関心がありますか? □非常にある(17) □まあまあある(73) □あまりない(9) □全くない(1) あると答えた方は環境問題に対して何か行動を起こしていますか?また、それはどんな行動です か? □ はい(59) □いいえ(18) □無回答(13) (複数回答) □ゴミの分別(48) □省エネ(18) □廃品回収への協力(5) □環境に配慮した商品の購入(5) □無駄なものを購入しない(13) □使い終わった油をそのまま流さない(21) □レジ袋の持参(8) □使い捨て商品は購入しない(4) □なるべく公共の交通機関を利用する(19) 【考察】関心はあるが、実際の行動は積極的行動ではない。 (2)あなたが住んでいる地域は何種類のゴミの分別規定がされていますか? □4種類以下(35) □7種類以下(37) □8種類以上(13) □無回答(15) また、あなたはその分別規定に従ってゴミを分別してリサイクルに協力していますか? □はい(70) □いいえ(21) □無回答(9) 【考察】大まかなリサイクルがされている地域が多いが、消費者側は協力しようという意識はあるよう だ。 (3)地球環境について危機感を持っていますか? □大変感じている(26) □それなりに感じている(71) □全く感じていない(3) 感じていると答えた方は主にどういった問題についてですか? (複数回答) □オゾン層の破壊(42) □温暖化(67) □大気汚染(39) □水質汚染(31) □土壌汚染(9) □森林伐採(39) □有害物質による人体への影響(32) □ゴミ問題(46) □途上国問題(7) □その他(2)[異常気象・動物の絶滅] 【考察】環境問題についての知識は、多かれ少なかれ持っていることが分かる。 (4)持続可能社会とはどのような社会のことであるか知っていますか? □知っているし、それについて考えたことがある(18) □聞いたことはある(16) □知っているが考えたことはない(29) □知らない(37) 【考察】持続可能社会の内容は知らない人がほとんどである。 (5) 地球環境問題についてどのようにお考えですか?(自由回答) ・一人一人が取り組む必要がある(13) ・重要・難しい問題(8) ・将来が心配(5) ・みんなが考えていくべき問題(9) ・まだまだ認識が低い(4) ・環境を大切にしていくべきだ(3)・行動に移していくべき(3) 28 ・危機感を持つ(4) ・改善点がたくさんある(3) ・ もっと法律の整備をしていくべき(2) ・真剣に取り組まなければいけない問題(2) ・更なる悪化への不安(2) ・企業の課題(2) ・真剣に考えていない(2) ・日本の対策は遅れていると思う(1) ・環境悪化の実感がある(1) ・行政の課題(1) ・国境を越えて考えるべき(1) ・対策を考えるべき(1) ・人体への不安(1) ・いつか考えなければならない問題(1) 【考察】重要視している人が多いが、中には軽視していたり他人任せな意見も見られる。 グリーン購入に関する質問 (1)環境に配慮した商品を店頭で見かけることがありますか? □ほとんどの店で見かける(26) □店によっては見かける(61) □ほとんど見かけない(13) 見かけると答えた方はどういった商品ですか? □ 文房具(28) □家電(34) □OA機器(11) □衣料品(20) □日用雑貨(31) □自動車(26) □食品(23) □その他 [本・雑誌・トイレットペーパー] 【考察】ほとんどの店に環境に配慮した製品が置かれているという現状から見れば、“ほとんどの店で 見かける”と答えた人以外は、そういった製品を意識して見ていないと言える。 (2)製品購入する際に、その製品の素材に再生(リサイクル)された原料が用いられていたり、不要に なった後リサイクルがしやすいかなど、環境にやさしい製品を買うように心がけていますか。 □いつも心がけている(3) □出来るだけ心がけている(19) □たまに心がけている(59) □全く心がけていない(19) 【考察】意見は分かれているが、消極的ではあるが心がけようとしている意識は伺える。 (3)あなたがもし家電製品を購入するとしたらその際の購入優先順位を記入してください。 ( )デザイン ( )メーカー・ブランド ( ( )価格 ( ( )機能 ( )使いやすさ )省エネ設計 ( )低騒音 )リサイクル可能・リサイクル済製品 《以下参照》 (4)商品購入時に環境についての品質表示を見ますか? □必ず見る(3) □たまに見る(57) 見ると答えた方はどんな表示ですか? □全く見ない(39) □無回答(1) 例:再生紙、PET 等 [再生紙(8) リサイクル方法(2) エコマーク(2) “環境にやさしい”という言葉(1) PET(1)] 【考察】品質表示は、ほとんど意識して見られていないように思われる。 (5)環境にやさしい製品が一般の製品と比べて割高な場合、一般の製品より何%高程度であれば購 入すると思いますか? □5%高程度(40) □20%高程度(0) □10%高程度(22) □30%程度(3) □15%高程度(6) □割高ならば購入しない(25) □無回答(4) 【考察】少しぐらい割高でも購入するという意見もあるが、全体の傾向を見ると一般の製品と同じぐらい 29 の価格ではないと購入されにくいということが分かる。 (6)環境にやさしい商品が日常的に普及していると思いますか? □はい(44) □いいえ(56) いいえと答えた方はなぜだと思いますか?(複数回答) □環境教育が不十分で関心が低いから(25) □『環境にやさしい商品』の値段が高いから(15) □『環境にやさしい商品』の広告・宣伝などのPRが不足しているから(15) □『環境にやさしい商品』が売っている店が限られているから(5) □環境にやさしい商品の開発に向けた行政の企業に対する支援や指導が不十分だから(3) 【考察】環境にやさしい製品が普及していると、していないという回答はほぼ半数に割れているが普及 していない原因として環境教育不十分と、割高な価格が大きい。これらが改善されればグリー ンコンシューマーは拡大するはずである。 (7)環境問題に積極的に取り組んでいると思われる商品群は何だと思いますか?(複数回答) □文房具(20) □家電(26) □OA機器(8) □衣料品(5) □日用雑貨(20)□自動車(35) □食品(14) □その他[分からない(1) また、積極的に取り組んでいると思われる企業を1つ挙げてください。 トヨタ(22) ソニー(7) AC(1) コクヨ(1) リコー(1) 無印良品(7) 花王(2) ワタミフーズ(1) 日産(1) NTT ドコモ(1) 日立(1) IBM(1) マツモトキヨシ(1) サントリー(1) 三菱(1) ホンダ(1) 無回答(5) ユニクロ(1) イオン(1) 自動車メーカー全般(1) 【考察】CMで環境への取り組み等が紹介されている企業・業界は、認知度が高い。広告活動は消費 者への呼びかけに有効である。 (8)現在家庭で使用しているプリンターがどこのメーカーの商品か知っていますか? □知っている(40) ・エプソン(16) □知らない(48) □無回答(2) ・キャノン(14) 知っていると答えた方は、そのプリンターが環境に配慮されているものかどうか知っています か? □知っているし、どんな配慮がされているかも知っている(5) □知っているがそれがどんなものかは知らない(17) □知っているが特に環境に配慮されたプリンターではない(5) □知らない(13) 【考察】どのような配慮がされているかまで知っている人も僅かにいたが、企業の取り組み内容は消費 者にほとんど伝わっていないのが現状である。 (9)量販店などでプリンターのインクトナーカートリッジを回収していることを知っていますか?また、 そのリサイクルに協力したことがありますか? □知っているし必ずリサイクルに協力している(9) □知っているが、したことはない(29) □知っているし、したことがある(13) □知らないししたこともない(46) □無回答(3) 30 【考察】知っていると知らないが半々だが、したことがない人が大半であり、ちょっとした労力のいるリ サイクルへは協力が薄い。 (10)日本環境協会が制定しているエコマーク以外の環境ラベルを知っていますか? □知っている(62) □知らない(36) □無回答(2) 【考察】知っているが6割を占めている。環境ラベルへの知識はあるようだ。 (11)今後、グリーンコンシューマー(環境に配慮した商品を選んで購入する消費者)を拡大していくた めにはどうしたら良いと思いますか? (自由回答) ・普通の製品と同じ、もしくは安くする(8) ・みんなが認識を高める(5) ・広く呼びかける(2) ・CM・広告・POPなどでもっと広めていくべき(8) ・環境の大切さを伝える(4) ・特典(メリット)をつける(3) ・企業が環境によい製品をもっと開発する(2) ・環境教育をする(2) ・企業に対してリサイクルのための法律を作る(1) ・店に環境へ配慮のされている製品を置く(1) ・わからない(1) ・政府が対応するべき(1) 【考察】日本の現状が反映されている的確な意見であるが、自発的意見は聞かれない。 【総合考察】消費者の環境への関心は高く、意識はされているものの、日本には消費者の自主的な 行動が起こされるほどのインフラが整っていないということが分かる。全ての人が自然 に環境保全を行えるようになるまで遙遠い。消費者側のアプローチの一つとしては、積 極的グリーンコンシューマーを増やしていくことだと思う。消費者が産業を引っ張ってい くことが出来れば、循環型社会形成は急速にスピードアップしていくだろう。それには最 終的に、環境教育が問題となっているといえる。 31 《参考文献リスト》 『リコーグループ 環境報告書2002』 株式会社リコー 社会環境部 『機械企業の環境保全の取り組みと課題』 機械振興協会経済研究所, 1999.5 『地球環境をひもとく:環境思考の原点から学ぶこれからの社会』 化学工業日報社, 1997.9 小林純子,湯川英明/共著 『エコデザイン:戦略環境経営 山本良一著 ベストプラクティス100』 益田文和,DMN エコデザイン研究会編 ダイヤモンド社, 1999.12 ヨハネスブルグサミット2002年 http://eco.goo.ne.jp/wssd/basic/UN_J_Summit.html 国連HP http://www.unic.or.jp/johannes/joha1-3.htm 地球憲章委員会 http://www.st.rim.or.jp/~hironaka/data/3polact/2environ/1earthcharter/ecc_j.html 環境省 http://www.env.go.jp/ 外務省 http://www.mofa.go.jp/mofaj/ エコデザイン研究所 http://www.openhouse.co.jp/EDI/index.html エコデザイン学会連合 http://www.zzz.pe.u-tokyo.ac.jp/ML/ae-info/200110/msg00060.html 横河電器 http://www.yokogawa.co.jp/Measurement/TI/hitech/eco/eco1.htm サラヤ株式会社 http://www.saraya.com/50th/50tokyo/edchap6.html エコデザインネットワーク http://www.eco-design.net/ecoqa.html APEC環境技術バーチャルセンター http://www.apec-vc.or.jp/apec_j/index.asp 日本環境協会 エコマーク事務局 http://www.jeas.or.jp/ecomark/ 株式会社エンヴァイロテック http://www.envirotech.co.jp/what/2001new.htm 株式会社リコー 社会環境部 http://www.ricoh.co.jp/ecology/ キャノン株式会社 http://canon.jp/ecology/index.html 32 テュフ ラインランド ジャパン http://www.jpn.tuv.com/jp/services-j/low_voltage_equipment-j/blue_angel-j.shtml 日本商工会議所 http://www.jcci.or.jp/ 環境 goo http://eco.goo.ne.jp/ 廃棄物対策豊島住民会議 http://www.teshima.ne.jp/What_about_teshima.htm 香川県 小豆島/豊島/直島 巡検報告書目次 http://soc1.h.kobe-u.ac.jp/gakusei/imai/teshima.html 東京商工会議所 http://www.tokyo-cci.or.jp/kaito/teigen/110708_3.html#sigen 三浦さんちのホームページ「廃棄物、リサイクル問題」 http://www.fsinet.or.jp/~miura/kankyo.htm みんなの自然環境問題 http://www.geocities.co.jp/NatureLand/1199/ 地球関連環境史 http://www.gld.mmtr.or.jp/~toriih/kankyou.htm 高知エコデザイン協議会 http://hb5.seikyou.ne.jp/home/Tetsulow.Tomita/9-6.htm JDN 桑沢塾 http://www.japandesign.ne.jp/KUWASAWAJYUKU/KOUZA/10/21c/2/ 日経メカニズム http://nmc.nikkeibp.co.jp/kiji2/t506.html 33
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