MOVPE法によるGaNの結晶欠陥と電気的特性に関する研究

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MOVPE法によるGaNの結晶欠陥と電気的特性に関する研
究
伊藤, 統夫
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2009
http://repo.lib.nitech.ac.jp/handle/123456789/586
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MOVPE法によるGaNの結晶欠陥と
電気的特性に関する研究
2009年
伊藤統夫
目 次
第1章
序章
1
1
1.1.はじめに
1.2.Ⅲ族窒化物半導体の物性と応用
2
-・-・-・--・・--------
1.3.Ⅲ族窒化物半導体の開発のあゆみ
6
・-・--・--・------・-
1.3.1
GaNの結晶性向上と実用化-の歴史
6
1.3.2
MOVPE法によるGaN結晶性に対する基板材料と成長条件の影響
・・---・--・----・
8
-
9
1.4.本研究の目的
1.5本論文の構成
参考文献
第2章
●
●
●
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●ノ
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●
MOVPE法によるGaN系-テロエピタキシャル成長
●
●
●
●
●
10
ll
13
2.1.はじめに
13
2.2
13
GaN系エピタキシャル成長用各種基板材料の比較
17
2.3シリコン基板上-のGaN成長技術
layer)
2.3.1中間層(Intermediate
2.4
17
本研究におけるSi基板上GaN成長のバッファ層構造
2.3.2
本研究で使用したMOVPE装置
参考文献
第3章
●
21
-----------・-・----・-----・--・-
X線回折法とこれを用いた結晶中の転位密度評価
3.3Hall効果測定
Van
der
23
・-・-----・---・---・-・
3.1本研究におけるエビタキシヤル層の結晶評価体系
3.3.1
19
・-------・-・---・--
GaNエビタキシヤル層の特性評価
3.2
18
23
-・・・t・-・・・-・・・・
24
-----・---
26
・-・・-・・------・---・・----
Pauw法によるキャリア濃度および移動度の評価
3.4C-V法によるキャリア濃度測定
-・---・------∴-
1
----・
26
29
3・4・1
C-V法の原理
-・-・---------・-・--
29
3・4・2ショットキーダイオードの作製方法
・-----・-・--
3・5DLTS法による深い準位の評価
32
-----------
3・5・1はじめに
32
--・-------・---・
3・5・2DLTS法
------・-------
3・5・3・DLTS測定システム
3・
31
33
38
---------・---
6フォトルミネッセンス(Photoluminescence; PL)法
3・6・1はじめに
------
41
--・---・--・---
3・6・2フォトルミネッセンスの原理について
3・6・3本研究で用いた装置構成
3・7デバイス特性評価
41
41
--・-------
-------・----
43
-・・----------‥
44
参考文献
第4章GaNエビタキシヤル層中の深い準位
4・1・まえがき
----・---------
47
年・2・n-GaNエビ層中の深い準位の使用基板依存性
-・・・・・--・・・
47
4・2・1
MOVPEによるAINテンプレート上n-GaN中の深い準位・・--
47
4・2・2
MOVPE法によりSi(111)基板上に成長したn-GaNの電子トラップ・
58
4・2・3この節のまとめ
4・3
47
----------…
-------------・--
65
MOVPE法におけるGaNエビの各種成長条件による欠陥生成-の影響4・3・1はじめに
4・3・2・実験方法
4・3・3・考察
-----・---・---------
66
・----・---------・---‥
4・4第4章のまとめ
参考文献
66
------・--------・--・-
4・3・4この節のまとめ
66
85
---∴------・-・--・‥.
---・-----・----・---…
90
91
-・----・---・--------・-…‥…
92
ii
第5章GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性の関係
一
97
・-・-------
便用基板材料によるドーピング特性および深い準位などの結晶欠陥の違い
-
5.1序論・-・--・-・----・-・---・---------・---
97
5.2実験方法
98
--------・-・---・-・---------・
5.3結果と考察
99
--・-・-・------・-・------・・---
●
5.3.1ネットドーピング濃度に関する不純物濃度依存性
5.3.2転位密度のHall移動度-与える影響
・--・---・--・-
-・--・-・-
99
103
5.3.3キャリア濃度およびHall移動度の温度依存性
5.3.4移動度とキャリアの補償比
5.3.5DLTSによる深い準位の評価
---・--・--・・-・・---・
5.3.6HEMTデバイス特性の評価
5.
109
・----・-・----・-----・
---・-・-----・・-・・・--
115
116
4第5章のまとめ
参考文献
第6章
総括
121
--・-・-・--・--・-・-・------・--・-・----
謝辞・-.--・--・-・--・-・-----・-----・---------・
123
論文および学会発表
125
--・-・-・-----・-・--・・・--・-・--・-・・-・
111
第1章
序章
第1章
1.1はじめに
20世紀半ば以降、産業の大きな発展の裏側で公害などの「環境問題」が取り上げられ
るようになって久しいが、当初は汚染物質による健康被害や林野河川の汚染による一部
の「自然破壊」に関してであり、どちらかといえば工業先進国、後には新興国の特定の地
域に限られていたものであった。ところが1980年代から、
CO2をはじめとする温室効果ガ
スによる「地球温暖化」が大きくクローズアップされるようになり、地球の隅々にまで広範囲
に広がる平均気温上昇、それによる極地などの氷結融解と海面上昇、異常気象の勃発な
ど、単に人類の経済活動に影響を及ぼすだけでなく、国土の喪失、食糧危機など人類、
ひいては地球生命全体の存在そのものをも脅かすものとして警告されるようになってきた。
これに対して、 1997年に採択され2005年に発効された「京都議定書」を受け、行政はもち
ろん、産業界においても、それまでの大量生産・大量消費といったエネルギー消費のあり
方に対する反省に基づき、
「省エネ」や「エコ」、
「地球にやさしい-・」などを前面に打ち出
し,企業の使命のひとつと大きく位置づけて、製品そのものや製造プロセス、あるいは所
在地域に対する環境奉仕活動など様々な面からこの間題に取り組むところが増えてきて
いる。
一方、半導体産業は、
20世紀半ばに半導体材料を用いたトランジスタが世に出てから
半世紀余りの間にめざましい進歩を遂げ、現在では情報社会を支える基幹産業となって
おり、 Siを中心とした半導体デバイスは、コンピュータ、通信機器や家庭電化製品に至る
まで、日常生活に深く関わっているエレクトロニクス製品に欠かせないものとなっている。ま
た、 1980年頃に登場したGaAsに代表される化合物半導体デバイスは、
-iE
Siに無い物性面
第1章
序章
をもつことから、Siとは異なる領域で進歩を遂げ、
LEDやレーザーダイオードなどの発光素
子や高周波トランジスタなど、新たな分野での発展を見せている。さらにその様な中で
GaNやその混晶である「窒化物ワイドギャップ半導体」は、その物性上の特長を活かして、
可視領域から紫外、深紫外領域に至るオプト系デバイス、高温での動作も兼ね備えた高
周波数、高出力等を活かした電子デバイスなど-の応用が一部実用化、または実用を目
指した開発が進められている[1-4]。
この窒化物半導体の出現で、表示・ディスプレイや照明のLED化や、電力インバーター
などの電源制御-の応用や高周波トランジスタの高効率化により、様々な装置・機械の小
型・省電力化-の道が開けてきている。例えば、携帯電話基地局用に使用される電力堰
幅用素子にGaN系デバイスを使用することで、年間約30万kLの原油を節約できるとも試
算されている[2]。このことからも、この窒化物半導体デバイスの普及による「省エネ」技術
の進歩が、先に述べた「地球規模の環境問題」に対するひとつの解になるものとして期待
が高まっている。
本章では、こうした世の情勢の中で注目されるⅢ族窒化物半導体について、その特徴
的な物性や、これまでの開発の歴史を振り返るとともに、その応用や課題などについて述
べ、本研究の目的、意義を確認する。また、最後に本論文の構成を記す。
1.2
Ⅲ族窒化物半導体の物性と応用
Ⅲ族窒化物半導体を代表するGaNは、室温で3.4
壊電界は3.3×106
eVとバンドギャップが大きく、絶縁破
v/cmとGaAsの約8-10倍も大きい。また、移動度も大きいうえ、図1.1
に示すように飽和電子速度も2.5×107
伝導率もSiCに比べれば劣るものの、
cm/sと大きく、
GaAsの1.2倍以上の値を示す。熱
GaAsに比べれば4倍大きい。これらの物性定数を、
他の主な半導体材料と比較して表1.1に示す。
・2・
序章
第1章
3
EiNi=
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1
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C)
>
0
0
100
50
150
200
Efectrjc Field (kV/cm)
図1.1半導体材料におけるドリフト速度の電界強度依存性
表1.1
Ⅲ族窒化物半導体およびGaAs、
symboI
property
Energy
Bandgap
BreakdownF
Ekctron
kkl
Mobdhy
AN
6.2
4H-SK:
6H-Sk:
GaAs
Si
3.02
2.86
1.43
1.12
3
0.4
0.3
800
8500
1500
(eV)
3.39
EB
(MV/cm)
3.3
3
p
(cm2Ns)
2000
460
(xlO7cnvs)
2.9
2
2
2
2
1
1.5
2.9
4.9
4.9
0.5
1.5
12
9.14
9.7
10
12.8
11.8
Vek)chy
vs
Themnl
conducthky
x
constant
GaN
Eg
Mamltm
Dkkctric
Siとの室温における物性比較表[5,6]
£
(W./cniK)
・3・
第1章
序章
Ⅲ族窒化物半導体の最も大きな特徴は、ウルツ鉱構造を形成したとき、全組成域で直
接遷移型バンド構造となり、二元系(AIN
約0.8-6.2
,
GaN
,
InN)において、バンドギャップが室温で
eVの領域をもち、光の波長域に換算すると可視光ほぼ全域、及び真空紫外
域までをカバーすることであるcさらに、三元系(AIGaN
,
GalnN
,
InAIN)あるいは四元系
(AIInGaN)混晶におけるバンドギャップの湾曲まで考えれば,長波長側は赤外域にまで
およぶD図1.2に一般的な化合物半導体とⅢ族窒化物半導体の格子定数とバンドギャッ
プの関係を示すo一方、
Ⅲ族窒化物半導体は軽元素の窒素をⅤ族構成元素として持つ
ことにより、 Ⅲ-Nの原子間結合が強く、格子定数も従来の半導体に比べて著しく小さい。
このことは,大型のGaNバルク結晶が実質的に得られない現状では、格子整合する基板
がないという技術的な課題に直接結びつく。
>
d}
王
>・、
.=
Sh
ど
4)
`=
4)
⊂=
400
【エ】
倉
QL)
「⊃
500
霊
600
【ヨ
700
2.0
3.0
La砧ce
図1.2
5.0
4.0
constant
6.0
7.0
[A I
各種化合物半導体の格子定数とバンドギャップ
・4・
FFl
i
也
a
第1章
序章
一方で、原子間結合の強さは、熱的にも化学的にも機械的にも堅牢であるという優れ
た特徴にも結びつく。さらに、
GaAsなどよりは強いイオン性をもつことと、結晶構造が六方
晶ウルツ鉱構造でc軸方向の反転対称性を欠くことが原因となって自発分極を示し、結
晶が歪むとさらにピェゾ分極も生じる特徴をもつ。
このようにバルク物性値としてもⅢ族窒化物半導体は、高周波デバイスや、パワーエレ
クトロニクスデバイスとして優れた特性を有しているが、特にSiCと比較してⅢ族窒化物半
導体のもつ優れた特徴は、
AIGaN、
AIInGaNなどとの間に大きなバンド不連続を有する良
好な-テロ構造を形成できることにある。図1.3に示すように,この-テロ構造界面には、
自発分極とピェゾ分極に基づき大きなキャリア密度をもった二次元電子ガス(2DEG:
two-dimentional
electron
gas)を比較的容易に形成することができる。これらの高密度キ
ャリアの存在は、大きな飽和電子速度、比較的大きな電子移動度と相まって、大きな電流
密度の-テロ接合電界効果トランジスタ(HFET:hetero-junction
field effect
transistor)
を得ることを可能としている。
two-dimentional
electron
gas
(2DEG)
tensile stress
in AIGaN
一ayer
MetaI e一ectrode
図1.3
AIGaN/GaN
-テロ接合とそのエネルギーバンド図
また大きな絶縁破壊電界は、印加電界を大きくできることを意味している。このことは同
じゲート長のHFETを考えると、より大きな電界を印加することが可能となることを意味する。
ー5・
第1章
序章
このようにⅢ族窒化物半導体のもつ物性的な特徴から、大きな電流密度と高い印加電圧
l
が可能となり、結果として大きな電力密度を有するHFETの作製が可能となる。また印加
電圧を一定で考えると、より短いゲート長を有する微細なデバイスの作製が可能となること
を意味しており、高い飽和速度と相まって、高周波で動作するデバイスとしての優れた特
徴を有することになる。
以上より、 Ⅲ族窒化物半導体は、その物性的特徴からすでに青色、白色LED、青色レ
ーザーダイオードといった光デバイスぺの実用化がなされているとともに,高出力・高周波
で動作する電子デバイス-の応用に対し、極めて有望な材料であることがわかる。また、
バンドギャップが大きく、化学的にも機械的にも安定で堅牢であるという特徴は、高温、耐
GaAs
環境性、耐放射線性デバイスとしての応用にも適していることになる。さらにGaNは、
のように環境負荷が大きい元素を含んでいない化合物半導体であることからも、先に述べ
たように環境-の関心が高まってきている今日、環境調和型の半導体材料としても、窒化
物半導体-の注目度はますます高くなって来ている。
1.3
1.3.1
Ⅲ族窒化物半導体の開発のあゆみ
GaNの結晶性向上と実用化への歴史
Ⅲ族窒化物半導体は、融点が極めて高く成長温度における窒素の平衡蒸気圧が高い
ため大型バルク単結晶の作製が困難であった[7]。そのため、この材料の単結晶作製はサ
ファイアなど異種基板上-のエピタキシャル成長、つまり-テロエピタキシャル成長をせざ
るを得なかった必然性があった。すなわち,前述したようにⅢ族窒化物半導体と同じ結晶
構造で、格子定数及び熱膨張係数の近い異種基板が存在しないため、
1980年代後半
に、後述するような低温バッファ層の技術が確立するまでの長い間、実用化には至らなか
ったものである。
基板選択に関しては、
GaNの成長温度が約1000℃と高い土とと、結晶構造や格子定数
が近い材料であることを考慮すると、サファイア、
6H-SiC、
Si、 GaAs、
ZnO、
MgA1204、
LiGaO2、石英ガラスなどが基板として検討されたo現在では、この中でもデバイス可能な
基板としてサファイア、 6H-SiC、
Si及びGaNバルク基板などが用いられている。これら4つ
の基板の特徴については次章でまとめる。その中で、結晶構造が同じ六回対称(厳密に
・6・
第1章
序章
は菱面体構造)で、耐熱性に優れ比較的大面積の単結晶が入手しやすいことから、通常
GaNの結晶成長には主にサファイアが用いられてきた.
-イドライド気相成長(hydride
vapor
phase
epitaxy
のGaN単結晶の作製に成功している[8]。しかし、
1969年にはMarsukaらによって、
:
HVPE)法を用いてサファイア基板上
GaNとサファイアとの間の大きな格子定
数差(16.1%)や、熱膨張係数(25%)が存在することから、多数のピットやクラックが発生
するため、結晶品質は劣悪なものしか得られず、
p型伝導の実現は不可能とされた。した
がって、この材料系を用いた発光素子としては1層を発光層として用いた
MIS
(meta卜insulator-semiconductor)型発光ダイオードのみであった[9]。
一方、 Amanoらによって1986年に有機金属気相成長(metal
phase
epitaxy
:
organic
chemical■ vapor
MOVPE)を用いてサファイア基板上に、低温バッファ層と呼ばれる数10
nm程度のAINを低温で堆積後、高温でGaNエビタキシヤル膜を成長させると高品質な
GaN膜が得られることが報告された[10]。その後NakamuraらによってAINのかわりにGaN
を用いた場合においても低温バッファ層の効果が確認されている[11]。この低温バッファ
層技術の導入によりGaNの電気的、光学的特性は飛躍的に改善された。
伝導制御においては、それまでは不純物をドープせずに成長したGaNは高密度の残
留ドナーによってn型伝導を示し、アクセプタ不純物をドープすると高抵抗化するだけでp
型結晶を得ることは困難であったが、この低温バッファ層技術の導入によって実現された
高品質GaNを用いて、
1989年にMgをアクセプタ不純物としてドープしたGaNを成長徳
に低加速電子線照射(low
energy
electron
めてp型GaNが得られた[12,13]。続いて、
beam
irradiation
:
LEEBI)を行うことにより、初
Nakamuraらによって、水素の存在しない雰囲
気中で熱的アニーリング処理を行い低抵抗なp型GaNが得られることも報告された[14]。
その後さらに、高抵抗化の原因はアンモニアが分解してできた原子状水素によるMgアク
セプタの不活性化であることが明らかにされた[15]。また、同時期に、低温バッファ層を用
いたGaNはSiをドープすることによりn型伝導制御が可能であることも報告された[16,17]。
さらに、従来成長が困難であった高品質InGaN膜成長も可能となり[18]、上記p型、
伝導制御技術を組み合わせ、
InGaN活性層として非常に薄い量子井戸を用いた、高光
度の青,緑色LEDが実用化された[19,20]。レーザーダイオード:LDに関しても1995年に
はInGaN
SQW及びInGaN
MQWを発光層とした分離閉じ込め-テロ構造LDの電流注
入誘導放出及び、室温パルス発振が実現され[21]、紫色LDの実現に至っている[22]。
・7・
n型
第1章
1.3.2
序章
MOVPE法によるGaN結晶性に対する基板材料と成長条件の影響
このように半導体の電気的特性はそれらの中の欠陥や不純物密度により大きく左右さ
れ、古くから結晶性を向上させると同時にそれらを低減して高純度の材料を得るとともに、
電気的特性を制御することが進められてきた。しかしⅢ族窒化物系半導体では、
GaNと
GaN以外の基板として使用される材料との物性的な違いから転位などの欠陥が導入され
やすくなったり、高温での成長に伴う成長炉内での分解反応や原料中の微量不純物など
が簡単に結晶成長中に取り込まれることで残留不純物となったりしている。
基板材料の違いにおいては、
GaNエビタキシヤル層を成長させる下地となるバッファ層
の構造・成長条件はGaN層の結晶性を高められるように、低温バッファ層や歪み超格子
緩衝層などのように適正化が成されてきている。しかしながら、その上に成長させたGaN
層の結晶性は、こうしたバッファ層の膜質に由来する転位などの結晶欠陥を多く含み、さ
らにそれらが深い準位を形成することによるGaNの電気的特性-の影響も見られる。一方
で低温バッファ層とは異なるアプローチとして、サファイア基板上に高品質のAIN膜を成
長させた「テンプレート」を用い、その上に結晶性の良好なGaNエビ成長が可能となって
いる[23]。さらにこのテンプレートを用いたGaN/AIGaN系HEMTや受発光デバイスに関し
ても、いくつか報告がなされている[24-26]。
また、 MOVPE法によるGaNエピタキシャル成長において、成長時の温度、圧力といっ
た基本的な成長条件の違いによる、結晶性や表面モフォロジー、不純物の取り込み量の
変化については、
GaN
についての研究初期の頃から調べられてはいるが、近年でも
KoleskeらがGaN成長中におけるCやsiの取り込みについて[27]、
C、
Fichtenbaumらは0、
Hなどの取り込みについて[28]、またChoらはキャリアガス中の窒素ガスの混合割合が
GaNの結晶性に与える影響について報告している[29]。また,各種欠陥が形成する深い
準位については、ドーピング条件による違いなどについての報告[30]はあるが、
MOVPE
法でのエビ成長条件との関連性について系統的に調べられた例はない0
一方で、 Si基板上のGaNおよびその混晶は、サファイア基板に比較して良好な熱伝導
性と大口径ウエハが使用可能であること,そして大きなコストメリットが見込まれることから、
オプトエレクトロニクスや電子デバイス-の応用として大きな関心が持たれてきている
[31,32]。また、これらの電気的特性に関する理解を深めることは材料の品質、デバイス特
・8・
第1章
序章
性の向上の意味で重要である。これまでMOVPE法を用いたGaNエビの成長条件におい
て、 GaN
-の不純物の取り込み、あるいはこれらの不純物の役割,カーボンの電子トラッ
プ-の影響などに関し,いくつかの報告が成されてきている[33]。また、使用した基板材
料の違いとして、サファイア基板上やGaN基板上に成長させたn-GaN中のネットドーピン
グ濃度について、転位密度との関係についても調査されている[34]。しかしながら、
Si基
板上に成長させたGaN中の深い準位の欠陥に関しての報告はMBE法により成長させた
GaNについての例がわずかにあるだけである[35]。
1.4本研究の目的
前節までに、 Ⅲ族窒化物半導体の物性とこれまでの世界的な研究開発の流れ、これを
受けて実用的工業製品-の応用例について触れた。特にAIGaN/GaN
-テロ構造を用
いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)は、近年その優れた材料特性と-テロ界面の輸
送特性を活かして高出力、高効率、高耐圧の高周波デバイス、電力変換パワーデバイス
としての研究が進み、一部では実用化が始まってきている。しかし,実用化し広く普及を
図る上では、多くの課題があり、特にその基板となる材料についても、
なGaNが成長できること,
(1)結晶性の良好
(2)デバイス動作時の発熱を効率よく放出させるため、熱の良
導体であること, (3)価格面のみならず、既存のデバイスプロセスラインを使用できるように
4インチ径以上の大口径であり、加工しやすく、トータル的にコストを低減できること、等の
要求があるoこれに対し、従来はサファイア基板上-の成長がGaN羊ピの主流であったが,
結晶性を向上させるために、
SiCやGaN自立基板,コスト面や大口径化、入手のしやすさ
からSi基板の使用が検討されてきた。同じMOVPE成長法を用いるとしても、使用する基
板材料が異なると、その物性上の違いからそれぞれに適したバッファ層を採用する必要が
あり、エビタキシヤル層自体に存在する転位などの結晶欠陥の状態も異なってくる。また、
これとは別にMOVPEエピタキシャル成長における成長温度や圧力などの成長条件自体
も、エビタキシヤル層中の欠陥の生成に対して大きく影響する。優れたデバイス特性を得r
るためには,これら欠陥の挙動を知ったうえで、その密度などを制御できるようになることが
望まれる。
本研究では、このようなMOVPE法により成長されたGaNエビタキシヤル薄膜について、
「ー
・9・
第1章
序章
サファイア、 AINテンプレート、シリコンといった基板材料の違いや、エピタキシャル成長条
件自体の違いによって、結晶中に導入される欠陥、深いエネルギー準位のエネルギー位
置や密度について評価を行った。特に、
MOVPE法によるSi基板上のGaNについての
DLTS法を用いた深い準位の評価は`、これまで実施例が無く、本研究が初めてとなる。ま
た、結晶性以外にもHall効果測定やデバイス特性について各種評価を行い、使用基板
によってドーピング効率が異なることや、転位密度や深い準位などと結晶の電気特性との
関係を調査した。
1.5本論文の構成
以降、各章別に概要に触れる。
第1章ではここまで述べたように,我々を取り巻く環境下における本研究の背景、意義
並びに目的について述;-<た.
第2章では、本研究で使用したGaN薄膜の代表的製法の一つであるMOVPE法につ
いて、その概要と使用基板毎の特徴、使用した装置の概要を記した。
第3章では、
GaNエビタキシヤル層の各種特性評価方法として、
度など結晶性評価、
第4章では、
X線回折による転位密
DLTS法による深い準位評価等について触れた。
GaNエビタキシヤル層中の深い準位について、基板の材料の違いによる
差やェピ成長条件による形成状態の違いを評価し、過去の報告例と合わせてこれらの種
類、起源について整理した。
第5章では、
GaNエビタキシヤル層中のキャリア濃度、移動度などの電気的特性と結晶
欠陥の関係を、ドーピング効率、転位密度との観点から調査してみた0
最後に第6章にて全体のまとめについて記述している。
・10-
序章
第1章
第1章
参考文献
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∫.Appl.
Senoh,
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T. Egawa,
Phys.
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T. Jimbo,
・11・
M.
Phys.
EA-21,
Koike
M.
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Koide,
395,
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Boston
T. Tanaka,
J.Appl.
31,●L1457
Pbys.
Appl.
Materials,
Jpn.
J.Appl.
∫.Appl. Pbys.
Kato,
Related
Jpn.
Senoh,
and M.
Shibata,
GaN
Mat.
and M.
T. Mukai
I. Akasaki,
and
and T. Mukai,
senoh
T. Mukai
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M.
Tanaka,
Lett.
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32,
0.
序章
第1章
J. Cryst・
Oda,
M・
[24]
Appl.
S・
M・
T・ Egawa,
Lett. $5,
M・
Y・ Kuraoka,
A・
1710
Sakai,
M・
Phys.
A・E・
Koleske,
T・ Egawa,
H・
T・ Shibata,
Mouri,
H・
T・ Jimbo,
Ishikawa,
and O・ Oda,
T・ Egawa,
44,
M・
K・Asai,
M・
O・
TanaFa,and
(2004).
Tanaka,
Imanishi,
Jpn. J. Appl.
D・D・
6 (2002).
Ishikawa,
Pbys.
Miyoshi,
Oda,
[27]
244,
4rulkumaran,
Sumiya,
[26]
H・
Miyoshi,
Oda,
[25]
Growth
Apll・
Phys・
T.
Lett・ 81,
Shibata,
1131
(2002).
A. Asai, T. Shibata, M.
Ishikawa,
S.
K.Asai,
Tanaka,
M.
and
6490(2005).
R・L・
Wickenden,
Henry,
and
M.E.
S・P・
DenBaars,
J. Cryst.
Twigg,
Growth
242,
55
(2002).
N・
[28]
A・
Growth
[29]
310,
Cho,
Y・S・
Soc.
H・
S・ Keller,
V. Kirilyuk,
595,
R・
Kaluza,
Steins, G・ Heidelberger,
W5.9.3
A.
R. A.
Zauner,
G.J. Bauhuis
A.
Krost,
[33]
0.
Lopatiuk,
U・K・
Mishra,
J. Cryst.
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Luth,
J. Cryst.
Dadgar,
andA.
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Mater.
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1124
307,
Growtb
[30]P. R.
T・ E・
Fichtenbaum,
Stat. sol.
Phys.
Y.
Chernyak,
361
Feldman,
(a) 194,
and
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(2002).
Gartsman,
Thin
Sold
Films
515,
4365
(2007).
【34] S.
Hashimoto,
Y.
Yoshizumi,
T. Tanabe,
and
M.
J. Cryst.
Kiyama,
Growth
298,
871
(2007).
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P. Muret,
Superlatt.
Ch.
UIzh6fer,
Microstract.
J. Pernot,
36,
435
Y. Cordier,
(2004).
-12・
F. Semond,
Ch.
Gcquiere,
and
D.
Theron,
第2章
MOVPE法によるGaN系-テロエピタキシャル成長
第2章
MOVPE法による
GaN系ヘテロエピタキシャル成長
2.1はじめに
第1章でも述べたように、物性上の特徴から、 GaN系材料の持つ優れたパフォーマンスを
活かした実用デバイスを開発しようという取り組みが成されてきている。ところがGaAsなどと
は異なり,基板としては同じ材料であるGaN基板が物性的に作製困難であったため、古く
からこれに代わる基板材料が探し求められてきた。しかし、格子定数、熱膨張係数がGaN
と整合する材料が存在しなかったため、格子定数が比較的近いサファイアがGaNエピタキ
シャル成長用の基板として主に使用されてきた。
この章では、 MOVPE法によるGaNの成長において使用される基板の種類によるエビタ
キシヤル層-の影響や、本研究で使用した装置の概要について述べる。
2.2
GaN系エピタキシャル成長用各種基板材料の比較
表2.1にGaN系エピタキシャル成長用各種基板材料の物性値比較を示す。サファイア
基板上とSi基板上の格子整合性に関しては、図2.1(a)および(b)で示すようにそれぞれの
格子の位置関係から計算される。安定して高品質のエビ成長ができ、かつ安価で入手しや
すい基板材料が求められる中、サファイア基板が広く使用されていたが、
GaNとの格子整
合性が低い上、熱膨張係数も異なっており,古くはGaNの結晶性を向上させることができ
ずにいた。それでも1980年代半ばに低温バッファ層の技術が確立されてからは、成長させ
・13・
第2章
MOVPE法によるGaN系-テロエピタキシャル成長
たG早Nの結晶性も向上し、主に青色や白色系のLED用途向けのデバイス作製技術が飛
躍的な進歩を遂げた。しかし,低転位化をはじめとする更なる結晶性の向上が難しいことや、
サファイア自体は熱伝導率が低く、デバイス化した際の放熱が不十分でデバイス性能が低
下してしまうこともあり、代わりとなる他の基板材料に対する期待は根強い。格子整合性が
高く、高温でも安定なsiCもその候補のひとつであるが、近年向上してきてはいもののマイク
ロパイプなどの結晶自体の品質の問題に加え,高価で大口径化が難しいという問題があ
る。
表2.1
地e
thennal
也ermal
GaN
AN
S耳111)
a
(A)
3.189
3.11
c
(A)
5.185
4.98
1.3
2.85
1・-1.5
5.59
4.2
2.59
5.43
6H-SX:
sapphke
3.08
4.758
15.12
12.991
constard
(W./cmK)
conduct叫
hphne
expaJSk)n
ht血e misrrntch
thermal
GaN系エピタキシャル成長に使用される基板材料の物性一覧
m由rrntch
GaN/s1血strate
GaN/std)s廿ate
(×106収)
(%)
2.4
(%)
33
・14・
116.9
116
3.0・-3.8
0.5
4.2
7.5
3.5
16
33
-25
第2章
MOVPE法によるGaN系-テロエピタキシャル成長
S apphire
4.758 A
l
1
1
1
1
1
1
i O…
=
I
I
S apphi陀
2.747
Si
A
3.糾0
1aGdas叩。血./Jif
=16.1%
Ji
law Jiasi/2I
=17.0%
GaNon
(b)
-
as
-
J屯i/2
a,,hJ
(a)
A
Sapphire
GaNonSi
図2.1サファイア(a)およびSi(b)基板上のGaNの不整合率
また、ホモエビ成長ができるGaNの自立基板も転位密度が106cm
2以下と低転位化が
進んできたが,生産性の低さから小口径で高価なものとなっており、実用化されているとは
言え、デバイス特性の信頼性の観点から、低転位GaNエビ成長が必須の青色系レーザー
ダイオード用途に使用されているに過ぎない。これに対し、
Si基板は十分な大口径化と低
転位化ができていて、しかも安価で安定して入手できる材料である。.しかしGaNのエビ成長
用としては格子整合性、熱膨張係数の違いから、従来の低温AINバッファ層上にGaNを
積んだ場合、図
2.2
に示すようにエビ終了後の室温に戻した状態において,サファイア基
板上ではGaNエビ層には圧縮応力が働くためクラックは入りにくいが、
応力となるためクラックが入りやすい(図2.3(a))。加えて、
Si基板上では引張
GaとSiの反応が関係するメルト
バックエッチング(図2.3(b))などといった問題が数多くあったが、近年多層膜バッファ層な
どの技術開発が進み[1、
2]、十分実用レベルに達してきた。また、これとは別にサファイア
・15・
第2章
MOVPE法によるGaN系-テロエピタキシャル成長
自体にも高温下で結晶性の良いAIN膜を1〟m程度積んだAINテンプレートとして、この
上に高品質のGaN層が直接成長できることが見いだされている[3]。
本研究においては、
MOVPE法によるGaNエピタキシャル成長で使用される各種基板材
料のうち、サファイア、 Si、AINテンプレートについて,それらを使用した際のそれぞれのGaN
中の転位や深い準位などの結晶欠陥や各種電気特性に関して調査を行った。
com
press
tensile
iv3
GaN
on
GaNon
Sapphire
(a)
図2.2
Si
(b)
サファイア基板上(a)およびSi基板上(b)のGaN(従来法)
ConventjonaI
・車,・く-A--
■ち`丁■
F
-巴ヨ
100un
GaNJLT-AIN/Sj
200叩n
Crack
Meltback
(a)
図2.3
etching
(b)
Si基板上GaN成長で低温AINバッファ層を使用した際に生じるクラック(a)と
メルトバックエッチング(b)の発生
・16・
第2章
2.3
MOVPE法によるGaN系-テロエビ■タキシヤル成長
Si基板上へのGaNエピタキシャル成長技術
Si基板上のGaNの成長については、バッファ層としてこれまでさまざまな中間層をはさん
だ構造による検討が行われている[5-7]。これらの報告では、AIGaN/AIN
GaN/AIN多層膜を用いている。しかしながら、
1
中間層、
20ペアのGaN/AIN多層膜においてGaNを
〃m以上厚く成長させることは、反りの増加やクラックの発生につながるため困難であっ
た[8]。その後、中間層の構造の最適化を進め、より厚膜化が可能になって来ている[9]。
以下に本実験セも採用しているAIGaN/AIN中間層とGaN/AIN多層膜の特徴について
まとめた。
2.3.1中間層(Intermediate
2.3.1.1
一ayer)
AIGaN/AIN中間層
Si基板上にはじめに成長するAIGaN/AIN中間層について述べる。この中間層はSi基
板上に直接GaNを成長したときに起こるメルトバックエッチングを避けるためにも必要である
が、成長核の高密度化のための中間層としても重要な役割を果たしている。サファイア基
板上では低温バッファ層を用いることにより成長核の高密度化を促進しているが、
2.2節で
述べたようにSi基板上ではメルトバックエッチングの発生があり、低温中間層を用いることは
できない。このために高温でも安定な材料であるAINやAIGaNが成長核の高密度化に有
効であると考えられる。実際AINを中間層(この場合はSi基板-堆積させる最初の層なの
で「nucleation
layer」と呼ぶこともある)として用いたSi基板上のGaNの成長に関する報告
が多数ある[10-15]。しかしAINの表面の平坦性は悪く、その後の成長層に悪影響を及ぼ
すことが考えられる。こ? Alを170nm程度のGaNで覆うという例[16]もあるもぁの、AIGaN
はAIN組成にもよるが、
Si基板上に比較的被覆性よく成長できるという報告があり[17]、
基板上の成長における中間層として有効であると考えられる。したがって本実験ではこの
AIN及びAIGaNのメリットを両方いかすために二層の中間層を用いた。まず、熱的に安定
な材料であるAINをSi基板上に直接成長することで成長核の高密度化を促進し、その後
平坦性の優れた表面を得るためにAIGaNを成長する。以上を踏まえ、本研究では
AIGaN/AIN中間層を用いている。
・17-
Si
第2章
MOVPE法によるGaN系-テロエピタキシャル成長
2.3.1.2
GaN/AIN多層膜
前節のAIGaN/AIN
中間層の次に成長する多層膜について述べる。近年、
Ⅲ族窒化物
半導体の成長において多層膜や超格子を用いることによりクラックを抑制するという報告が
されていることは前節までに述べたとおりであるo
Si基板上のⅢ族窒化物半導体の成長で
は成長後の降温時に生じる基板の反りやクラックが発生しやすいため,成長層の膜厚を増
やすことは単純にはできず、様々なェピ構造の適正化が必要である。結晶品質の向上には
成長層を厚くすることが求められるため、反りやクラックを抑制しながらGaNの厚膜成長を
可能にするため多層膜バッファ層を用いている。多層膜は基板と成長層の格子不整合に
起因したミスフィット転位を低減する効果もある。これは貫通転位の表面-の伝搬を抑制す
ることを目的とし、歪超格子(Strained
Layer
Superlattice
:
SLS)と呼ばれ、
Si基板上の
GaAsの成長ではいくつかの報告が成されている[16,18,19]。これは、格子定数の異なる二
つの材料を超格子のスケールでコヒ-レントに成長させると、その異なる二つの材料の界面
に格子歪が蓄積され大きな応力が加わる。そして、その界面に達した貫通転位はこの歪に
起因した応力により湾曲し、他の湾曲した転位との相互作用を起こし、閉ループを形成し
て超格子の上部-と伸展しなくなるというメカニズムである。ここで用いた多層膜にはこのよ
うな効果を与える格子歪を持った界面が多数存在すると考えられるため転位を抑制する効
果が期待できる。歪が小さいと貫通転位は十分に湾曲せず多層膜を貫通してしまう。逆に
歪が大きすぎると、この歪により新たなミスフィット転位が生じてしまう。このため、本研究に
おいて多層膜はGaNとAINの周期構造になっており,両者の膜厚は各々20
nm,5
nmと
して最適化されている[9]。
2.3.2
本研究におけるSi基板上GaN成長の/(ッファ層構造
以上を受けて、本研究においてSi基板上にGaNをエピタキシャル成長させる場合は、図
2・5に示すェピ構造、すなわち卜AIN.100nmに卜AIGaN40nmを積んだ後、
20nm
sLS層(i-GaN:
/ i-AIN:5nm)を20ペア堆積させ、その上にGaN層を堆積させることを標準として
行った。図2.5には断面TEM像も掲載してある。多層膜中および多層膜/GaN界面で湾
曲した転位が密集している様子がわかる。
ペア数の増減による結晶性の変化、すなわち転位密度の増減などについての調査も本
研究で実施している(第4章)0
・18・
第2章
MOVPE法によるGaN系-テロエピタキシャル成長
図2.4
2.4
本研究で用いたSi基板上GaN成長用エビ構造および断面TEM像
本研究で使用したMOVPE装置
本研究では、横型高速三層流の方式である大陽日酸製のSR4000型MOVPE装置を
使用したo図2.6に装置の外観写真と、図2.7に装置内構造の模式図を示すo基板はフェ
イスアップのセッティングであり、エビウェハの処理能力(バッチ枚数)は、
2インチ×3枚、ま
たは3インチ×1枚、または4インチ×1枚となっている。制御用熱電対がサセプタの中心直
下に置かれており,以降、ここで言うところの成長温度は、この熱電対の計測値となってい
るoステンレス製のリアクター内におかれた石英製フローチャンネルは、図で示すように3層
に分割され、それぞれウェハ側からⅤ族であるNH3供給口、その上がⅢ族であるMOガス,
最上層はSubflowガス(通常N2のみ)を「押しガス」として供給させる。成長圧力は流量に
依存するものの、常圧から10kpa程度まで制御可能である。
・19・
第2章
MOVPE法によるGaN系-テロエピタキシャル成長
図2.5
MOVPE装置外観写真(大陽日酸製
図2.6
MOVPE炉の炉内構造模式図[4]
・20・
sR-4000)
第2章
MOVPE法によるGaN系-テロエピタキシャル成長
第2章参考文献
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第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
3.1本研究におけるエビタキシヤル層の結晶評価体系
半導体デバイスとして使用されるエビタキシヤル薄膜の様々な特性は、デバイス特性に
直結し、その安定性や信頼性などにも密接に関与してくる。そのためエビタキシヤル薄膜
の成長プロセス開発・製造においては,こうしたデバイス特性の要因となりうるエビタキシヤ
ル特性の評価と、その知見をもとにしたエビタキシヤル薄膜の様々な特性制御が必要に
なってくる。
半導体デバイス特性を決める大きな要因としては、大きく分けるとマクロ的には表面や
界面のモフォロジー、ミクロ的には不純物、転位や各種点欠陥などの結晶欠陥があげら
れる。これらを評価する方法として主に以下の3つのアプローチがあげられる。
①構造的評価方法・-結晶の外観や光学顕微鏡観察をはじめとして、
SEM,TEM
などの電子顕微鏡観察(表面モフォロジー、エビ層の厚み),AFMによる原子レベル
での表面粗さ、X線回折による結晶の完全性評価、等
②不純物・埠成評価方法・・・EPMA、ESCA、SIMS、X線回折,Auger分光法などに
よる不純物分析、等
③電気・光学的評価方法・-Hall測定、c-v測一定、pL測定、DLTS法、等
本章においては、本研究で使用したエビタキシヤル薄膜の主な評価方法であるX線回
折とそれによる結晶中の転位密度評価、
DLTS法およびPL法による深い準位観測、
効果測定によるキャリア濃度、移動度の評価、
C-V法によるキャリア濃度評価、について
その概要をまとめた。
・23・
Hall
第3章
3.2
GaNエビタキシヤル層の特性評価
X繰回折法とこれを用いた結晶中の転位密度評価
碍晶の構造解析に用いられる最も代表的な方法がX線回折法である。これは基本的
に、式3.1で示すBraggの式によるX線回折条件に基づくものである.ここで入はX線の
波長、dは格子面間隔、
2dsin
∂はX線回折角を表す。
(3.1)
0-n^
測定は、X線源、単色化用分光結晶、ゴニオメーター、検出器からなる装置で通常行わ
れ、単結晶の結晶性を評価する場合は、選択したサンプルの結晶面の格子面間隔dに
対応する回折角8をもとに、サンプルのセッティング、ゴニオメーターの角度調整を行い、
得られる最大強度のところを中心として、
wを回転させて回折強度曲線を得るoこれをロ
ッキングカーブと呼ぶ。単結晶であるエビタキシヤル層において、微結晶や転位などによ
る結晶の空間的な乱れ方に応じ,このロッキングカーブに広がりが生じ、この広がりを回折
ピークの半値幅(Full
Width
Half
Maximum:FWHM)として結晶性の指標として用いてい
る。 GaNエビタキシヤル層は、これまでも様々な基板上にエピタキシャル成長されているが、
いかにウエハとエビ層との格子不整合の低減と,それに起因する転位の形成、導入を防
ぐかが当初からの課題となっている。
GaN結晶はモザイク性をもち、図3.1に示すようにカ
ラム状結晶粒界が存在している。この粒界は成長条件によってお互い少しずつずれを生
じており、結晶成長方向の角度のずれ(チルト)と面内における結晶粒の回転(ツイスト)
がある。
(a)カラム状結晶粒界のモデル
図3・1
(b)結晶粒のずれ(チルトおよびツイスト)
GaN結晶のモザイク性を表すモデルと結晶のずれ方位
・24・
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
これらは、対称反射面である(0002)面および非対称反射面(1012)面の
X線ロッキング
カーブ半値幅に反映される[1,2]。さらに、これらの回折ピークがらせん転位密度、刃状転
位密度と密接に関係するという報告もある[3,4]。ここでは、本研究で利用したチルト、ツイ
ストかららせん転位密度、ツイストから刃状転位密度を求める方法について、その概要を
述べる[4]。
WiliamsonとHallは、対称反射面のいくつかに対しロッキングカーブのFWHMβを測
定し、式3.2に従って,横軸sinO/入に対して縦軸β
ッティングした際の、傾きがチルト:
wsinO/入をプロットし直線でフィ
αtilt、切片がLatteral
length:Lを表すと
correlation
している。
pa芋-
sinβ
0.9
-T・-
2エ
αtilt
(3.2)
らせん転位密度はこのチルトの値から
2
α肋
Nscrew
ここで
(3.3)
b。は貫通転位のバーガースペクトルの大きさ
当する。ただし、実際は
Lateral
correlation
b。-[0001]c
length
(
=
0.5185nm)に相
が感度がないほど大きいため、
Wiliamson-Hallプロットから求めたチルトαtiltおよびらせん転位密度Ns。rewと、対称面の
回折ピーク半値幅から求めたチルトαtiltおよびらせん転位密度Ns。rewは,ほぼ同程度の
結果になっている。
同様に、刃状転位の場合も、非対称面の回折ピーク半値幅からツイストαtwistを求め、
刃状転位密度Ne。geは式3.4で表される。
2
atwist
Nedge
(3.4)
=
4・ 3 5be2dge
・25・
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
は刃状転位のバーガースベクトルの大きさ
ここでbedge
[1120]
bedge-1/3
o.3189nm)に相当する。
(0004)面のロッキングカーブ半値幅より式
本研究においては以上の手法を用いて、
3.3を用いてらせん転位密度を、(1000)面のロッキングカーブ半値幅より式3.4を用いて
刃状転位密度を求めた。
3.3
HaJl効果測定
一般に半導体材料の電気特性として基本的なものとしては、抵抗率、キャリア濃度、
移動度があげられる。これらは不純物や結晶欠陥などが左右し、デバイス化した場合にも
応用上、重要な項目である。ここでは、Hall効果によるキャリア濃度と移動度の評価につ
いてその概要を述べる。本研究においては、キャリア濃度および移動度について、その温
度特性も含めてエビタキシヤル層の各種成長条件の違いや基板材料の違いによる影響
の調査を行った。
3.3.I
Van
der
Pauw法によるキャリア濃度および移動度の評価
測定する半導体サンプルに、Ⅹ方向に電流Ⅰを流し、電流と直交するy方向の磁界を
印加した場合、ローレンツ力と電界の力とが平衡して、z方向に電圧VHが生じる。これが
Hall効果である。
この時の電位差VHはHall電圧と呼ばれ、次式で表される。
VH=
RH
IB
(3.5)
d
ここで、qは電荷素量、dは磁場方向の試料厚み
積は、Hall係数と呼ばれ、式3.
6で表される。
式3.7で表される。
・26・
d(cm)を表す.RHと導電率oの
RHと導電率の積はHall移動度と呼ばれ、
(
-
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
1
(3.6)
RH=nq
(3.7)
FLH =RHJ
a
図3.2
van
der
direction
ofa
magnetic
neld
Hall効果測定用サンプルの試料形状
Pauw法においては、図3.2のような正方形状に切り出したサンプルを測定
に供した。抵抗率測定では、一辺の電極間に極性を変えて電流を流し、残りの電極間に
発生する電圧を測定し、仮の抵抗pを求める。この操作を4辺について行う。算出方法
は、以下のようになる[5]。例えばAB間に極性が+の電流値Ⅰを流した際のCD間の電
圧をVCD(+)とし、電流の極性が-の場合はVCD(-)とする。_その場合、実用単位の抵
抗率(E2cm)は、式3.8、および式3.9で与えられる。
VcD(I)
+
VDA(I)
-
-'VcD(-)
・27・
VDA(-)
(3.8)
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
VAB(+)
VBC(+)
+
VAB(-)
-
VBC(-)
-
ここで、t:試料の厚み、f:補正係数である。
βは式
(3.9)
3.10のように、平均値を取って算
出した。なお、導電率oは抵抗率の逆数を取った.
β=
PA
+PB
(3.10)
(実用単位系)
つぎに、以下の手順でHall係数REを求める。
RHC
RHD
2.5×107
VDB(_,.)
[vDB(.,.)
I
=
2.5×107
-
・VAC(_,.)
[vAC(.,.)
-
VDB(_,_)
-VAC(_,_)
-
(cm3c-1
)
VDB(.,_)]
(cm3c-1)
-VAC(.,_)]
ここで括弧内の符号はそれぞれ電流並びに磁場の極性を表す。
(3.ll)
(3. 12)
Hall係数RHは両者の
平均から算出し,キャリア濃度nは式3.14より算出した。
RHC
RH=
+
RHD
(3.13)
2
(3.14)
また、 Hall移動度FLHは、先に求めた導電率と上記のRHから式3.15によって、算出したo
FLH
=
RHg
(3.15)
実際に測定に供した試料は、標準的には
7×7mmの正方形に切り出し、Ti/Al
(25nm/100nm)の電極を試料の4つの角に蒸着し、窒素雰囲気中800℃、
30秒の合金
化アニールを経てオーミックコンタクトを作製した。電極を作製する際の注意事項としては、
基板が絶縁体のサファイア基板を使用している場合は問題とならないが、本研究のように
・28-
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
Si基板を使用している際は、基板が導電性であるため、電極が側面側にはみ出して基板
を介して測定電流が流れないよう、やや試料の内側に電極を作製する必要がある。
磁場強度は4kGaussとし,測定は通常の場合は、室温と液体窒素中で行い、温度特
性を評価する際にはクライオスタットを用いて10-300Kの範囲で10deg毎に測定を行っ
た。
3.4
C-V法によるキャリア漉鹿測定
キャリア濃度測定は、前節で述べたHall効果による方法で求まるが、本研究では、後
C-V法によるキャリ
.述する容量DLTS測定用にショットキー接合を施した試料を作製し,
ア濃度も求まることから,この方法でもキャリア濃度を求めている。
3.4.1
C-∨法の原理
n型半導体表面に金やアル,<などの金属を接合させると,熱平衡状態では両者のフェ
ルミレベルが一致するように、バンドの曲がりが生じる。このような接合をショットキー障壁と
呼び、オーミック電極を対局に設けることでショットキーダイオードを形成することができる。
C-V法は、このショットキーダイオードの空乏層の静電容量のバイアス電圧依存性を測定
し、キャリア濃度を求める方法である。
まず、図3.3において、
¢Bnは金属とn型半導体間のバリアハイト、Vbiは内蔵電位である
が,フェルミ準位と伝導帯Ecのエネルギー差Vn分だけバリア-イトよりも小さく,
Vbi
-4Bn
(3.16)
-Vn
となる。図3.3はショットキーダイオードのメタル側にマイナス、すなわち逆バイアスVRをか
けた場合のバンド図であり、空乏層幅は電圧により次式のように変化する。
語(vIV)
(3.17)
・29・
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
ここで、
E
sは誘電率、
qは単位電荷素量、
Ndはドナー濃度を表す。
また、空乏層の静電容量Cは、次式(3.18)で与えられ,
qcs Nds
C=
2(VbiVR)
-
ss
(3.18)
w
空乏層幅Wは、静電容量Cから直ちに求まる。
w=fi
(3.19)
C
従って,バイアス電圧VRを変えることで、空乏層幅wを変えることができるので、静電
容量cの逆数の2乗とバイアス電圧Vの微分値、すなわちプロットの傾きから空乏層W
の位置でのドナー濃度Ndを求めることができる。
1
c2
・d
2(Vbi-VR)
(3.20)
qcsNd
-孟[講師]
ー30・
(3.21)
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
(a)
図
3.3
ショットキー接合のバンドダイアグラム
(a)熱平衡状態(vR-0)
3.4.2
(b)逆バイアスVR印加時
ショットキーダイオードの作製方法
c-v法によるキャリア濃度の測定は、3.5節で後述するDLTS測定装置内でDLTS測
定の一環として行った。そのため、DLTS測定用サンプルの作製が、この場合、
c-v法測
定用のサンプルも兼用することになる。
サンプルは、エビ済みのウエハから7-10mm程度の大きさに切り出し、電極を蒸着す
るプロセスを施した。図
3.4
にサンプルの構造断面図を示す。ショットキー電極には
・31・
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
Pd/Ti/Au、オーミック電極にはTi/Alを用い、電極サイズと形状は、ショットキー電極:
め
400〟m、オーミック電極は内径500〃mのリング形状とした。なお,オーミック電極のコンタ
クトアニールは,800℃で30秒とした。また、サンプルの保護膜としてEB蒸着によりSiO2
膜を堆積させた。
図3.4
3.5
ショットキーダイオードの断面模式図
DLTS法による深い準位の評価
3.5.1はじめに
半導体デバイス、とりわけ電子デバイスにおいて、各種デバイス特性を向上させデバイ
スの安定性や信頼性を高めるためには、より完全性の高い結晶成長やプロセス技術の精
度向上が求められる。その中で、ドナーやアクセプターとなる不純物元素のみならず、キャ
リアのトラップとして作用するような結晶中の欠陥についての評価と精度良い制御が必要
となっている。
Deep
Level
Transient
Spectroscopy(DLTS)法は,
1974年、
Be11研の
D・V・Langが提案した方法であり、基本的には欠陥(トラップ)からの電子あるいはホール
放出による荷電状態の時間的変化すなわち過渡応答を,
pn接合またはショットキー接合
中の空乏層容量変化として検出するものである[5]。空乏層の厚みはキャリア濃度に依存
するものの、_数〃m程度までの評価領域を持つことになり、エビ膜など薄膜やバルク表面
の評価に適している。今日、このDLTS法は重要な評価技術として定着し、半導体の深
・32・
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
い準位のみならず材料評価、プロセス開発に数多くの研究者らにより様々な現象の解明
に用いられ、有用な役割を果たしている。
DLTS法の主な特長を以下に示す。
①スペクトロスコピックな性質
異なったトラップの存在をピーク温度の違いとして識別可能。
② 高感度
重み関数を接合容量の過渡応答にかけ、その後フィルタリングにより高い
S/N
が達成されている。トラップ濃度がド-パント濃度に比べて十分小さい場合にその
特徴を発拝。
③ 多数・少数キャリアトラップの区別
多数キャリアと少数キャリアトラップに対する接合容量の過渡応答は、信号の符号
の違いとして現れる。
3.5.2
DLTS法
3.5.2.1空乏層容量
3.5.2.卜1.定常状態
p+n接合、またはn型半導体の仕事関数より大きな仕事関数を持つ金属を接合し
たn-ショットキー接合のn側のエネルギーバンド図と空間電荷分布の状態を図に示
す。n側に伸びた空乏層では、電子放出過程のみとなり、定常状態では電子放出
過程が支配的な場合,
nt
=
Nt
(3.22)
exp(-ent)
より、 nt=0となる。
nt:トラップでの電子濃度
N.:トラップ濃度
en:熱的電子放出割合
中性領域では電子放出と電子捕獲の両過程が進行し、nt-Ntとなる。空乏層内で
も、フェルミ準位とトラップ準位が公差する位置Ⅹf。と空乏層端Ⅹfの間では、トラップは
電子を捕獲したままである.この間隔入はバイアス電圧によらず、深さ方向に均一で
あり、
・33・
比
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
2s(Ef -Et)
1=
(3.23)
qNd
E
:誘電率、Ef:フェルミ準位
となる。
微小交流電流を印加すると、交流電圧変化に対応する空間電荷の変化分が空
乏層端とⅩrとⅩrに現れる。空乏層端における空間電荷の変化は、電子の移動による
が、Ⅹfでの変化はトラップからの電子放出・挿獲による。
Ⅹfでの電子の放出・捕獲が
追随できないほど周波数が高いとすると、空間電荷の変化は空乏層のみに現れる。
その時の空乏層容量は、
(3.24)
c=坐Xr
で与えられ、空乏層幅Ⅹrをもつ平行板コンデンサ容量と等価である0
A:接合面積Ⅹrは空間電荷分布によってきまり、逆方向バイアス電圧Vの増加ととも
に空乏層幅は増加する。
Nt≪N。のときは、
C-V特性から次式からド-パント濃度Ns
の深さプロファイルを求めることができる。
Ns(xr)=
c3
d
I
qd
3.5.2.卜2
AV
-
AC
xr=c
過渡応答
p+n接合、n-ショットキー接合を、空乏層、九領域および中性領域に分けて示し
たモデルを、図3.5に示す。
逆バイアスVrを印加し、到達した定常状態(a)
・34・
(3.25)
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
逆バイアスで定常状態に達した後、浅い逆バイアスV。を印可後の定常状態(b)
再度、深い逆バイアスを印加した状態(c)
空乏層が伸びるため、Ⅹr。-Ⅹrrの間でトラップからの電子放出が起き、空乏層は減
少し、接合容量が増加する。このとき、
C
-C∝,
exp
-△C
となり、時定数Tで指数応答を表す。
Nt≪N。-Naの場合、
(-チ) T-吉
(3.26)
、
c∞は定常状態の容量である。
過渡応答変化幅△cはトラップ濃度ともに大きくなり、
△C=
(x) dk
Jr7fyNt
(x,め)J
x
Ns
(3.27)
xfp
\
で与えられる。 Xr∞は、Vr印加後定常状態での空乏層幅であるo
Nt(x)が一定の時、
式(3.21)は積分できて
Nt
△C=
喜(xfr2
Ns(xr∞) 2
3
-xfp2)藷
また、九領域を考慮に入れない(入<<Ⅹr)とき、
Ⅹfr-Ⅹr
(3・28,
かつⅩf。-Ⅹ。-0
ると、 (3.22)式は
(3.29)
・c-c-慕
・35・
とす
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
a) at
bias in
reverse
equiJibrium
Xfr
X
Xr
c) after
vo
x&
図3.5
Ⅹf(t)
Ⅹ,
Ⅹ,(t)
tum
off pulse
ltag e
A
ショットキーダイオードのバンドダイアグラム
このように逆バイアス印加後の容量の過渡応答を測定する事で,過渡応答からトラップ
からの電子放出時定数が求まり、過渡応答の全変化幅からトラップ濃度が得られる。温
度挿引により温度を変えて容量過渡応答過程を測定すると、時定数の温度依存性が得
られ、トラップ準位と描獲断面積が求まる。
これらの観測領域は、空乏層の広がりできまり、ド-パント濃度、ダイオードの耐圧に関
係し、表面より数〃m程度までとなる。対象となる材料の厚みが薄い場合、空乏層の厚み
と材料の厚み、多層膜エビの場合はその構造とを考慮しながら,サンプルの準備や測定
を実施していく必要がある。
・36・
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
3.5.2.2
DLTS法の概念
以上に示したように温度を一定にした状態で、単一のバイアスパルスによる接合容量
の過渡応答測定を行っていたものを、いくつかの温度で測定することによりトラップ準位が
求まる。これとは別に繰り返しバイアスパルスを加えながらトラップによるキャリアの捕獲・放
出を繰り返しつつ温度掃引を行う。温度を上げながら繰り返しバイアスパルスを印加した
ときの接合容量の過渡応答の時定数変化を示す。低温ではキャリアの放出割合は低く、
過渡応答の時定数は長い。温度上昇と共に時定数は短くなる。
DLTS法の基本としては、
容量過渡応答の時定数変化を時刻tlとt2の容量差s(T)-C(tl)-C(t2)として測定す
る。低温側と高温側でS(T)-0
となるが、その間の温度である値を持つ。
聖
=l
■■J
壁
4)
a.
P=
B
め
コ
L_
.9
(ロ
4)
I_
>
コ
局
■■■
巴
a)
¢
【1
■●■■■■
⊂
∈
.壁
め
4)
ト
⊂
(ロ
ー_
■■■■■
d)
O
⊂
B
O
a
(1
Q
U
c¢1)-C¢2)
J2
TtME
図3.6
s(T,
DLTSの基本的な考え方(rate
windowを使用する従来法)
-
-AC〈exp(一三)
-exp(-チ))
これをTで微分してゼロとおくと、
S(T)の最大条件がひとつあり、
・37・
(3.30)
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
t;n-Z2
I-
(3.31)
J2
その時の最大値は
S(Tmax)
-
(3.32)
-AC
となり、tl, t2を与えてTmaxを設定しS(T)を測定すると、過渡応答の時定数がTmaxとな
る温度TmaxでS(Tr)はピークとなる。異なるてmaxを設定すると、対応して異なるピーク温
度 Tm8Ⅹが得られ、トラップのエネルギー準位と捕獲断面積を求めることができる。また
s(T)のピーク値から式(17)を用いて-△Cが計算でき、これからトラップ濃度を算出する。
トラップ準位は放出時定数Tの温度依存性から、またトラップ濃度は過渡応答の変化
幅△cと定常値C∞から評価される。
このようにDLTS法の基本としてはトラップからの電子(正孔)放出による容量過渡応答
である。微小容量過準応答の検出感度を上げるため、検出に対してこれまで様々な重
み関数を用いる手法が取り入れられている。
3.5.3
3.5.3.1
DLTS測定システム
DL8000の特徴
本研究で使用したDL8000は、原理的には従来の装置と同じであるが、各温度での
放出時定数とトランジェントの強度は、容量のトランジェント信号のフーリエ級数-の展
開と重み関数を用いた解析により決定されている。初期の頃のDLTS装置では以下の
ような様々な問題に接していたが、現在ではコンピュータとデジタルデータ処琴の進歩
により解決されてきでいる。
通常、DLTSではトラップからのキャリア放出に基づく容量変化が指数関数の時、初め
てそのトラップ濃度などを正しく評価できるが、以下のような場合に指数関数性は悪化
・38・
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
する。
・隣接した二つ以上のトラップがある場合・-ダブルピーク、ダブルトランジェント
・表面準位などのブロードなバックグランド上にバルクトラップがある場合
・トラップ濃度が非常に多い場合-・NtとNsが同程度存在
N/Sが悪い場合
・
従来型のDLTS法では図3.6に示すように、
t2-tlという時間(ratewindow)を定義し、
その間の容量変化△C-C(t2トC(tl)を計測し、解析に供していた。しかし,ある二つの
時刻
tl,t2の容量変化を測定するのみで、その指数関数性評価までは行っておらず、
ピーク濃度が算出されても、その信頼性まで評価できなかった。
DL8000
では2点間の容量変化だけでなく、容量変化曲線をフーリエ級数に展開し
て温度掃引しながら各温度で記録し、その容量変化曲線中の周波数成分をいくつか
Tmax-enの組合せを重み関数の数の分だけ得
の重み関数を用いて取り出すことにより、
ることができ、これらのア-レニウスプロットから深い準位の深さと捕獲断面積を求めて
いる。従って,従来型のように何度も温度掃引をする必要が無く、一度の温度掃引で
エネルギートラップを決定することができる。
DLTS
法に限ったことではないが、このようにコンピュータの発達に伴い、DLTS
法が
提案された初期の頃(この場合は1970年代前半)に比較すると、データ.の収集、計算、
解析が格段に精度良く簡単に実施できるようになっている。
3.5.3.2重み関数について
従来塾のDLTS装置は、重み関数を用いた解析を使うため、重み関数を発生させる
ための装置上の機構が組み込まれるなどハードウエア上での解析が行われていたが、
本DL8000などのコンピュータを解析に用いている装置(図3.7にブロック図を示す)で
は、ソフトウエア上で重み関数を使用することができる。そのため、従来では限定された
種類のみの重み関数しか対応できなかったIbミ、今日では数十種類(本装置DL8000で
は28種)の重み関数を用
い、一度の温度掃引で28種の温度・時定数の組合せを求
め、ア-レニウスプロットに使用することができる。そのため、分解能、s/N
もに、測定の簡便性向上に多いに役立っている。
・39・
比の向上とと
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
舛
Capacitance
図3.7
以上、DLTS
Compensation
DL8000のブロックダイアグラム[7]
法の概要および本研究で用いた装置の特徴について述べた。
法で検出される信号と欠陥との対応には、過去の報告例も含めた膨大な実験データ
の集積が必要であり、深い準位、トラップが何に起因するかを検討することが、各種材
料で進められてきている。
・40・
DLTS
第3章
3.6
GaNエビタキシヤル層の特性評価
フォトルミネッセンス(Photo山minescence;
PL)法
3.6.1はじめに
半導体結晶の不純物や結晶欠陥は、伝導帯と価電子帯間の禁制帯中にエネルギ
ー準位を形成し、これらの準位と伝導帯または価電子帯間、さらには欠陥の形成する
準位同士間で、光吸収や再結合発光などの光学的な遷移を生じる。従って、これらを
観察・評価することで欠陥などの種類や定量的な評価を可能にしている。フォトルミネッ
センス法は、再結合発光の遷移プロセスを利用するものであり、また原理的には試料に
対して電極作製や研磨などを必要としない、非破壊検査法でもある。
本研究においては後述するイエロールミネッセンス(YL)に代表される深い準位を介
した発光の評価により、試料間のそれらの濃度についての評価を実施した。
3.6.2フォトルミネッセンスの原理について
半導体結晶に光を照射すると、結晶から光が放出される現象が見られる。これをフォト
ルミネッセンスと呼び、結晶の様々な性質が反映される。このPL光の解析から結晶の評
価を行う手法がPL法である。
半導体結晶に禁制帯幅より大きいエネルギーの光を照射すると、伝導帯および価電
子帯に過剰な電子・正孔が生成され、これらは再結合によって元の熱的平衡状態にも
光が放
どるが、その際の電子遷移の過程が様々な発光再結合過程を取った場合、pL
(b)自
出される。その発光再結合過程としては、図3.8に示すように、(a)バンド間発光、
由励起子発光、
発光、
(c)束縛励起子発光、
(d)ドナー一価電子帯発光,(e)伝導帯-ドナー
(f)DAペア発光がある。
バンド間発光はバンド間の遷移で、伝導帯の自由電子と価電子帯の自由正孔間の
再結合過程である。
(f)のドナーアクセプタペア(DA)発光と呼ばれる遷移で、ドナーに
捕獲された電子とアクセプターに捕獲された正孔との再結合過程で、この場合,発光エ
ネルギーhγは、次式で表されるo
hv-Eg-(Ea・Ed).土-8sr
e2b
(3.33)
gsr6
・41・
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
ここでEg、EいE。はそれぞれ禁制帯幅、アクセプター・ドナーの活性化エネルギーで、
は誘電率、
rはドナー・アクセプター間距離、
bは定数である。ドナーとアクセプターは結晶格
子中で占める位置が決まっているとすると、rはとびとびの値となるため、これに対応して一
般に発光スペクトルは多くの細線状のスペクトルから構成される。しかし、通常のペア発光で
はrがおおきいため、広い半値幅を持つ発光バントして観測される。
本研究で主に解析のために取り上げたGaNのYellow
luminescence(YL)発光は、後述
するようにGaN中の深い準位を介したドナー・アクセプター間発光として考えられており、ここ
ではバンド端発光強度IBEとYL発光強度Ⅰ,Lとの比に関して種々の条件下での変化を観
測し、深い準位の挙動について調査した。
Photo
excitation
図3.8
半導体結晶における様々な発光再結合過程の模式図
(a)バンド間発光、
(b)自由励起子発光、
(c)束縛励起子発光、
(d)ドナー一価電子帯発光、(e)伝導帯-ドナー発光、
・42-
(f)D-Aペア発光
Es
第3章
3.6.3
GaNエビタキシヤル層の特性評価
本研究で用いた装置構成
図3.9に本研究で用いたPLスペクトル測定装置の構成を示す。装置構成は、励起
光源部、試料を装着するクライオスタット、分光器、検出部、信号処理部、システム制
御・データ処理部から成っている。
励起光源としては、
Nd:YAGパルスレーザーの波長変換による4次高調波で波長は
266nmを用い、PL光はレンズにより集光し,光学フィルターを通して分光器に導入し、
検出器としては液体窒素で冷却したCCDを使用した。
Cryostat
Schematic
Diagram
図3.9
of Photofuminescence
Measurement
本研究で用いたPL測定装置の構成図
・43-
第3章
3.7
GaNエビタキシヤル層の特性評価
デバイス特性評価
MOVPE法により作製したGaN薄膜の評価として、実際に電子デバイスのひとつであ
るHigh
Electron
Mobility
特性の比較を行った。
Transistor
HEMTは、
:
HEMTの構造を作製し、基板種別のデバイス
AIGaN/GaNのような-テロ接合を作製すると、
晶の内部ではc軸方向の自発分極が、AIGaN結晶中では-テロ接合による歪みでピエ
ゾ分極が発生し,界面に発生した固定電荷によって、
ガス(two-dimensional
い移動度を示すことが、
electron
gas;
GaN内部に高濃度の2次元電子
2DEG)が誘発される。この2DEGが、高濃度で高
GaN系HEMTの特徴にもなっている。
本研究に置いては、このHEMTのチャンネル層近傍の構造,エビ条件をそろえて、基
板やバッファ層の構造、エビ条件を引き継いだ状態のノンドープのGaN層にHEMT構
造と同じAIGaN層の-テロ接合を作製し、各種特性に加えデバイス特性についても比
較を行ってみた。
-44・
GaN結
第3章
GaNエビタキシヤル層の特性評価
第3章
参考文献
【1] 「Ⅲ族窒化物半導体」、赤崎勇編著、培風館(1999)
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【10】「半導体評価技術」、河東田
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[11] 「X線結晶解析の手引き」、横井敏雄、裳華房(1983).
【12】パナリテイカル,private
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(2007)・
・45-
R・
Stommer,
Philosophical
M.
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
、第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
4.1まえがき
MOVPE法によるGaNエビタキシヤル層成長において,使用基板の違いによる転
位密度-の影響と深い準位の形成について調査を行った。使用基板の種類として
は、サファイア、
「AINテンプレート」、そしてSiについて実施した。ここで「AINテンプレ
ート」とは、サファイア基板上にAINエビタキシヤル膜を0.5FLmから2FLmほど堆積さ
せ、その上に結晶性の優れたGaNエビタキシヤル層を成長させるためのものを呼ぶ。
そしてさらにはGaNの膜厚や、成長温度、成長圧力、キャリアガス中のN2混合割合
といったMOVPE法における主な成長条件の中でいくつかの条件水準において、不
純物の取り込みの差やDLTS法による深い準位の形成状況について行った調査を
まとめた。
4.2
4.2.1
n-GaNエビ層中の深い準位の使用基板依存性
MOVPEによるAINテンプレート上n-GaN中の深い準位
4.2.1.1はじめに
図4.1に示すように、サファイア基板上に高品質のAIN膜を成長させたものをGaN
エビ層成長用基板として用い、その上に結晶性の良好なGaNエビ成長が可能であ
ることが示されている[1]。これを「AINテンプレート」と呼び、AINは通常1〃m程度の
膜厚となっており、 GaNエビ層を積むための通常使用されている低温バッファ層を積
-47・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
むことなく高品質の
GaN
層を直接その上に堆積させることができることを特徴として
いる。さらにこのAINテンプレートを用いたGaN/AIGaN系HEMTや受発光デバイス
に関しても、いくつか報告がなされている[2-4]。
一方、デバイスに用いられている材料について、結晶欠陥に′関する知見を得るこ
とはデバイス特性の本質的な向上に繋げる事ができる。その中で、
ェピタキシヤルGaN成長膜中の深い準位については、
法による
MOVPE
DLTS(Deep
Level
Transient
Spectroscopy)法などにより調べられてきた[5-9]。
ここでは、AINテンプレート上およびサファイア上に
MOVPE法にて成長させたn
型GaN薄膜において、その結晶性、電気的特性、そしてDLTSによって観測された
深い準位について調べ、比較を行った。
4.2.1.2実験方法
4.2.1.2-(1)サンプル作製
2インチのAINテンプレートは、c面サファイア基板上に水平型MOVPE装置にて
減圧下、
1000℃以上の成長温度にて作製した。AIN
となって
の厚さはおよそ1〃m
いる。さらにこのAINテンプレート上に低温バッファ層なしで直接2.3〃m厚のSiドー
プのh型GaN膜を、.AINテンプレート作製に使用したものとは異なる水平型MOVPE
装置にて大気圧下で成長させた。比較用試料として、同じく2インチのc面サファイア
基板上に低温GaNバッファ層を積んだ上に,テンプレート上n-GaNの成長に使用し
たものと同じMOVPE装置にて大気圧下でGaNを成長させた。低温バッファ層の厚
みは25nm、成長温度は500℃とし、低温バッファの成長終了直後、そのままn-GaN
の成長温度まで引き上げた後にテンプレート上のn-GaNと同一条件下でn-GaNを
成長させた。
Siのドーピング用原料ガスは水素ベースで10ppmに希釈したガスを用
いた。図4.1に示すように、テンプレート上のn-GaNサンプルをAl、低温バッファ上
のn-GaNサンプルをBlとそれぞれ呼ぶことにする。
DLTSの測定用に、
30
Ti/Al(25nm/100nm)の電極を蒸着し、窒素雰囲気中800℃、
秒のアニールを経てオーミックコンタクトを作製した。ショットキーコンタクトは
Pd/Ti/Au(40nm/20nm/60nm)、
400〃mの直径のものを作製した(第3章
・48・
図3.4)。
第4章
AIN
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
template
(a) AINテンプレート上(Al)
(b) c-サファイア基板上(Bl)
図4.1基板の種類とn-GaNエビ構造の模式図
4.2.I.2-(2).測定
Van
derPauw法によるHall効果測定、x線回折法による結晶性評価、AFMによ
る表面モフォロジーの評価をそれぞれ行ったo
DLTS測定は,
で、連続逆バイアス電圧(Vr)、フィリングパルス(filling
-3、
90-600Kの温度範囲
pulse)電圧(Vp)は、それぞれ
OVとしたcフィリングパルスタイム(t。)0.1-100ms、放出時間(period
width:
tw)
は200msとして測定を実施した。
4,2.1.3
結果
AINテンプレート上およびサファイア上に堆積したn-GaNの,室温におけるHall
移動度とキャリア濃度、
x線ロッキングカーブにおける半値幅(FWHM)を表4.1に示
す。 (0004)および(2024)の半値幅はそれぞれおよそ140arcsec,
285arcsecとサファ
イア上のものに比べて優れたものになっているo図4.2に、AFMで観察したテンプレ
ート上(a)および低温バッファ/サファイア基板上(b)のn-GaNの表面モフォロジーをそ
れぞれ示すo非常にスムーズな表面と明確な原子ステップが見られるa
Ra
合両者とも0.2nm程度とな・3ているoまた、転位線の終端とみられるピット密度はテン
プレート上のn-GaNが5×107cm-2に対し低温バッファ/サファイア基板上のn-GaN
では3×108cm-2と、テンプレート上のn-GaNが一桁近く少ないものとなっていたQ
・49・
はこの場
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
表4.1
n-GaNのX繰回折口ツキングカープ半値幅および電気的特性
Sample
Epi
Electrical
structure
nrcm'31
AI
GaN/AIN
B I
template
hire
GaN/LTBL/sa
XRC
characterization
llrCm2rvsl
(a)
図4.2
=
ANN
-5×107
[arcsec]
(OOO4)
(2024)
7・1xlO16
628
141
285
9.6×10チ6
565
231
502
Rms=2.4Å
pitdensity
FWHM
Rms=2.3A
cm・2
pitdensity=
template
(b)
on
3×108
LTGaN/sapphire
AINテンプレート上および低温バッファ/サファイア基板上のn-GaNのAFM
像
・50・
cm・2
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
次に,図4.3に二つのn-GaNサンプルのDLTSスペクトルを示す。それぞれにいく
付近のピーク、ならびに
130K
つかの異なる準位によるピークが観測されている。
300K付近のピークがある。これらを過去の報告にならい,El、E2と呼ぶことにする。
さらに500K付近にブロードなピークが存在しており、少なくとも2つのピークに分けら
れ、それぞれをE4およびE5と呼ぶことにする。これまでn-GaNのDLTS測定におい
て、400-600K
Hasse
の温度範囲ではあまり行われていない。
ら[10]が観測した
0.67V付近のピークE3は、我々の測定では観測されなかった。これらについてアレニウスプロット(図4.4)を行って求めたエネルギー準位、捕獲断面積、トラップ濃度
を表4.2に示す。
E4については、ア-レニウスプロットにて直線的なプロットにならな
かった。これらはE5を除いてこれまでに報告されているものに近い。
on
on
AJN
an
a
template
LTIBL/sapphire
E5
′
E4
′■ヽ
u_
l●ヽ
I
-q
E2/I
L\
l
f
㌔
⊂
/
\
′′、′
ヽ■■′1
\
h !iJ
a)
.S?
.」
\
も
)
【⊃
\
ll
/
・/Jv、P\ヽ
/′ノ
3
J
./
′
へ
\\、
∽
ト
\
l
l
/v
/
\
^Jj
\ ノ∨
1 00
200
300
Temperature
図4.3
400
500
(K)
AINテンプレート上およびサファイア基板上n-GaNのDLTSスペクトル
・51・
600
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
1.0
5.0
3.0
1000q
図4.4
表4.2
7.0
(K'1)
図4.3における深い準位のア-レニクスプロット
AINテンプレート上およびサファイア基板上n-GaNのDLTSにより観測され
た深い準位
Detected
deep
EI
Ea[eV]
-AI
GaN/
E2
o[cm2]
Nt[cm'3]
Ea[eV]
E5
o[cm2]
Nt[cm-3]
Ea[eV]
cr[cm2]
Nt[cm13]
AIN
template
BI
level
0.21
2.11×10'17
4.52×1018
0.57
8.96×10-161.98×1014
1.19
6.29×10・14
2.40×1014
0.20
8.25×10
4.96×1013
0.55
5.90×10
1.10
9.38×10・14
2.44×1014
GaN/LTBL/
18
sappbire
・52・
161.83×1014
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
図4.5に、(2024)面のX線回折ロッキングカーブの半値幅とElの欠陥密度Nt
について、サファイア上GaN、AINテンプレート上GaN、さらにChoら(サファイア上GaN)
[6]との比較を示す.
Choらの結果では、ロッキングカーブ半値幅とDLTSスペクトルにお
けるEl密度は正の相関関係があるとなっているが、本研究ではX線回折半値幅より
推定される転位密度がAINテンプレート上n-GaNの方がサファイア上のものより1桁
近く少なかったにもかかわらず、
Elの密度はほぼ同等であった。
El
trap
Cho
√
et aI.
1・0
_一
≡
o
1
1
1
一
o.8
′
This work
I
'b
言
ヽ
′′「0
J
..ノ′
′′`
0.6
ヽ一1■′
。
ト
≡
./\.LTBL/Sapphire.′′
o.4
′′′′′′ノ
′′′ノ..′′′
′
′
on
AJN
template
on
′
′
′′
′
ノ′′
′
′
J
ノnot detededノノ
200
400t:、
こ一
--
(2024)XRD
図4.5
⊥
FWHM
800
,606
(arcsec)
(2024)面のX線回折半値幅とElトラップの密度との関係
-53・
1000
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
一方,Elの起源については、おもにSiやoの不純物あるいはその複合欠陥によ
る(ONまたはSiGa)が転位線上に沿うように存在していると言われている[6,7,12]。こ
のタイプの欠陥について、
Choらは、DLTS測定で、いくつかの別ing
pulse
time(t。)
に関して測定を行い、トラップの掃獲に関する解析で、トラップが転位の周辺に存在
するのか孤立欠陥サイトにあるのかを考察した[6,7]。これは、点欠陥の場合、t。が比
較的短い時間(例えば10
4s程度)でDLTS信号は飽和するのに対し、線状欠陥の
場合は深い準位が局在しているためにイオン化した深い準位によって伝導帯を持ち
上げられ、線状欠陥付近の電子濃度が減少するため、t。に対してDLTS信号の時
定数ては長くなる[13]。これをWosinskiらが導いた式4・1に基づいて横軸にt。を
対数で取って図示した場合、DLTS信号は線形に増加するというものである[8]。図
4.6に、転位線に欠陥が線状に配列している状態をモデルで示す。
nt(tp)
・T)/T]
JnUTnrnNtln[(tp
-
concentration
n,
tp
filling-pulse
:
Jn
:
capture
un
:
meanthermal
T
:
time
:
concentration
n
Nt
:
of electron
trap
cross
at
durationtime
section
velocity
constant
of free electron
concentration
・54-
the traps
(4.1)
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
dislocation
図4.6
転位線に沿って配列して分布している欠陥のモデル図
また、図4.7にt。に対する各トラップの充填密度(nt)、すなわちDLTS信号強度の
変化について、
(a)AINテンプレート上のn-GaNと(b)サファイア上のn-GaNについ
ての結果を示す(通常ntは各t。でのスペクトルから算出しているが,
E4,E5などピーク
分離が困難な場合があったため、ここでは単純にスペクトルから強度を読み取る形を
取った)oこれによると、El、E2は、変化が少ないのに対し、E4、E5
は増加傾向にあ
る。 Choらも同様に各準位について解析を行っている[6,7]が、これによると、Elは実際、
転位芯にあるダングリングボンドに直線状に配列した欠陥に関係しているとし、
E2
アンチサイトの窒素(NGa)による点欠陥に関係したものと述べられている。しかし、本
研究においては、図4.7に示すようにEl、E2ともt。との相関関係が薄いことからも、
線欠陥上の配列という事ではなく、点欠陥状の挙動を示しているといえる。このように
Choらの報告と異なる結果となったが,その理由についてはMOVPE法での成長条
件の違いによるものと推定される。これに関しては、本第4章第
条件の違いによる欠陥形成状態を調査した結果を踏まえて述べる。
・55-
3節において、成長
は
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
こii!
生20
1q)
⊂
諾15
∽
≧lo
5
0.01
0.1
1
10
100
1000
100
1000
㌔(ms)
(a)AINテンプレート上のn-GaN
25
′
■ヽ
生20
-∼
⊂
15
the?
∽
≧lo
5
0.01
0.1
1
10
㌔(ms)
(b)サファイア上のn-GaN
図4・7
フィリングパルスタイムt。に対する各トラップ充填密度(DLTS信号強度)
・56・
第4章
E4、
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
E5については、t。に対し線形に増加していることから、転位線に沿って直線
上の配列をした欠陥であるといえる。
Johnstoneらは500K付近のこのブロードなピー
クを測定し、活性化エネルギーは0.87eVとしている。また彼らはGa空孔(VG8)と水索
の複合欠陥(v。8-H)がこの欠陥に関連するとし、さらに温度的安定性について注意
が必要であると述べている[14]。
これらの深い準位についてその起源を明らかにするためには、さらなる究明が必
要であり,また、結晶成長条件,サンプル評価する際のプロセスも含めた熱履歴など
の影響についても調査を進めていくことが、各種デバイス特性の挙動に関する理解
やそのパフォーマンスの向上に繋がると考えられる。
4.2.I.4
まとめ
本節においては、
ロッキングカーブ、
x線
MOVPE法により成長させたn-GaNにおいてHall移動度、
AFM像観察などの評価を行い、AINテンプレート上に成長させた
n-GaNの方がサファイア上に従来の低温GaNバッファを介して成長させたものより、
結晶性が優れている事を確認した。さらにDLTSによる電子トラップの解析により、各
El:Ec-0.21eV、
トラップ準位が、両方のn-GaNにおいて、
びE5:Ec-1.2eVであることが求められた。
E2:Ec-0.57eV、
E4およ
Elのトラップ濃度は、結晶性が異なるにも
かかわらず両者ともほぼ同等であった。これは、これまでに報告されている結果とは
異なるものである。本研究での結果'tして,
E2は点欠陥、
E4、
Elは転位ではなく、他の点欠陥に関連し、
E5は転位に関連しているものであると考えられる。
-57・
第4章
4.2.2
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
MOVPE法によりSi(111)基板上に成長したn-GaNの電子トラップ
4.2.2.1.はじめに
第2章で述べたように、
GaN
系エピタキシャル成長用の基板として、熱の良導体、
低コストで大口径といった非常に大きなメリットがあることでSiに対して注目が集まっ
てきている[15-17]。しかしながら、
Si基板上-のGaNのエビ成長は、特に熱膨張係
数の違いに起因するクラックの発生など、いくつかの困難さを抱えている。近年、いく
2-3〃mに及ぶ厚いGaNエビ層がク
つかの種類のバッファ層に関する改善が進み、
ラック無しでSi基板上に成長できるようになってきている[18]。その一方で,これらの
材料中の欠陥に関する理解は、材料の品質やデバイス特性を向上させるために重
要と考えられる。 GaN中のトラップに関する調査で、
DLTS法は多くの研究者により用
いられてきているが、MOVPE法によりSi基板上に成長させたGaNに関する報告は
これまでされていない。
について、その′結晶性や電気
この節では、Si(111)基板上に成長させたn-GaN
的特性と共にDLTS法を用いた電子トラップに関する調査を行った0
4.2.2.2実験方法
第2章で述べた水平型のMOVPE炉により、4インチのSi(111)基板上および2イ
ンチのc面サファイア基板上に
n-GaN
Lattice
Siドープの
は、クラックの発生を抑えるため,
buffer
layers
n-GaN
i-GaN/i-AIN
膜を成長させた。Si基板上の
の超格子バッファ層(Super
system:SLs、以下、SLs層)を使用し、約1FLmのn-GaNを
得た。ここでは、SLs層のペア数を(i)10
ペア、(五)40
ペアと変えた2種類の試料を
作製した。比較のためにサファイア基板上に作製したn-GaNは厚さが約2.3〃mで、
30nm厚の500℃で成長した低温GaNバッファ層上に成長させた。両方の基板上の
n-GaNとも、原料にはTMG、TMAl、NH3、ド-パントにはH2ベースで希釈のSiH4
(10ppm)用いて、大気圧下において1130℃で成長させたo図4.8にサファイア基板
上のエビと合わせて、その構造図を示す。
・58・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
(a)
(b)
図4.8(a)Si上および(b)サファイア上のn-GaNのエビ構造
n-GaN中のキャリア濃度はC-V測定にて6-9×1017cm
3となっている。
DLTS法
による測定は、第2章で詳細を述べてあるように、ショットキー接合電極とオーミック接
合電極を形成し、逆バイアス電圧Vrを-2V、フィリングパルス電圧V。をOVで、掃引
温度範囲は90から600Kにて測定を行った。放出時間幅(tw)は50ms、フィリングパ
ルス時間(t。)は0.01から10msの範囲の条件下で実施してトラップの挙動に関する
調査も行った。なお、得られたキャリア濃度より、DLTS
法での逆バイアス電圧では、
空乏層の広がりは図4.9に示すように0.1〃m程度の深さと見積もられるため、得ら
れる深さ方向の情報としてはn-GaNのみであり、SLs等の下層の情報はほとんど無
視できると考える。さらに、X線回折による結晶性の評価やHall効果の測定による電
気的特性についても比較を行ったo
・59・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
J■■ヽ
120
F=
⊂
ヽ■l■■′
⊂
.9
野
L_
100
80
4)
P
(可
60
.1=
O
d)
O
40
監
め
20
0
6
図4.9
4.2.2.3
ー5
-4
-3
bias ∼)
-2
-
1
0
バイアス電圧に対する空間電荷領域
結果と考察
4.2.2.3.1
Hall効果、C-∨、X繰回折,各測定結果
Hall移動度やキャリア濃度,
x線ロッキングカーブ(XRC)の半値幅など、試料の電
気的特性や結晶性について表4.3にまとめた。転位密度については,第2章で述べ
たように、 XRCの半値幅から評価する方法(Williamson-Hall
plot法)[19]を用いた。
SLs層の多層膜構造において、そのペア数を増やすとその上に成長させたn-GaN
中の転位密度を減少させることができることが確認されている[18]。ここでも、表
に示すように、 GaN/AINのペア数が10から40に増えることで、ホール移動度は増加
し、 XRC
の半値幅は減少、すなわち刃状およびらせん転位の密度も減少しているこ
とが確認された。しかしながら、これらSi基板上のn-GaNの転位密度は、サファイア
基板上のものと比較すると、一桁以上高い値となっている。
・60・
4.3
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
表4.3.各試料の電気的特性と結晶性評価結果一覧
C-V
HanⅡモaSlmI班血(RT・)
#
Epi SbutLqe
Mobdiy
n
(×1017cm-3)
SIO
S40
Sap
onSLs(10p血s)/Si
on
on
Sb(40pa由)/Si
LTBIJSapph.e
4.2,2.3-(2)
ⅩRC
(RT.)
Nd-Na
(cm2Ns)
(×1017cm13)
FⅥけM
dkk)c血n
(0004)
(20亘4)
( 1000)
(arcsec)
(arcsec)
(arcsec)
screw
delXSb(
edgp
(×108cm-2) (×108cm-2)
7.0
186
5.7
865
2134
3067
15
500
1 1.0
247
6.3
769
1563
2197
12
256
8,5
358
9.2
253
606
879
1.3
41
DLTS法による評価
図4.10にDLTSスペクトルとして、Si基板上のn-GaNでSLsが(a)10ペア、40ペ
アのものと、
(b)サファイア基板のものを示す。
Si基板上のn-GaNのDLTSスペクトル
では,主ピークと二つ以上のピ→クを含んでいるものと、サファイア基板上のものでは
主に2つのピークからなっている。
Si基板上の3つのピークについては、そのエネルギ
ーからこれまでの例にならいE2、E4、E5と、サファイア基板上の2つのピークはE2、
E4とそれぞれ名付けることにする。図4.11に図4.10のDLTSスペクトルにおける各
準位に対するア-レニクスプロットを示す。表4.4に各準位のエネルギー位置(Ea)、
捕獲断面積(o)、トラップ密度(Nt)をまとめた.ここでの結果で深い準位のエネルギ
ーレベルについては
Si
E5を除き、従来の報告例とほぼ同一のものが得られている。
基板上では400K付近に見られるピーク、
E4がメインピークとなっており、
Haaseらが
示した0.67eV付近のE3の存在については、他のピークに埋もれていてはっきりしな
い。また,サファイア基板上のスペクトルではこのE3は現れていない。
E4については、
si基板上のSLs40ペアの試料における濃度は10ペアのものの60%程度に減少して
おり、さらにサファイア基板上のものは同じく10ペアの濃度の14%程度になっている。
これらの違いは、単純にはトラップE4、E5が転位密度との相関を持っていることが考
えられる。
・61・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
35
35
30
■
30
■
邑
∴
阜25
一石 25
a
⊂
20
.S?
く乃
∽
ト
J
(⊃
20
.5
215
u)
15
芦[
凸10
10
5
0
50
150
250
350
450
550
T【K】
650
50
1 50
250
350
T【K】
(a)
(b)
図4.10Si基板上(a)およびサファイア上(b)
n・GaNのDLTSスペクトル
・62・
450
550
650
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
o
n-GaN/SLS
IOpair/Si
●
∩-GaN/SLS
40pai〟Si
E5
E4
+ ∩-GaN/Sapphire
1
2
3
4
5
1000汀(1/K)
図4.11
表4.4
(Ea:
図4.9のDLTS
スペクトル各ピークのア-レニウスプロット
Si基板上およびサファイア上のn-GaNで観測された電子トラップ
activation
energy,
Nt:
trap
Detected
E2
Ea[eV】
o[cm2]
:
o
concentration,
capture
deep
cross
section).
level
E5
E4
Nt[cm
3]
Ea[eV】
o[cm2]
Nt[cm-3]
Ea[eV]
o[cm2]
Nf[cm-3]
SIO
on
SLs(10pair)/Si
o.72
3.8×10-171.3×1015
1.08
1.5×10-154.7×1014
S40
on
SLs(40pair)/Si
o.83
1.0×10・157.8×1014
1.01
1.4×10-153.9×1014
o.92
2.2×101141.8×1014
sap
onLTBL/Sapphire
O・49
4・0×10-165・8xlO14
-63・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
4.2.2.3-(3)電子の捕獲に関する考察
図4・12にE4トラップの充填密度(nT)のフィリングパルスタイム(t。)に対する依存性
について、各試料の測定結果を示す。これを見ると、非線形かつt。が長時間になる
ほど、 Si基板上n-GaNでは飽和し、サファイア上ではわずかに減少している。このこ
とはそれぞれの試料中のE4トラップは転位線のような線状の配列はしておらず、むし
ろ点欠陥状の挙動を示している。このうち、サファイア基板上のE4、E5の結果は前
節で述べた図4.6との結果とは異なっており、評価に用いた試料のSi濃度が両者で
異なることに起因する可能性があるが、更なる調査が必要である。
これまでこのE4あるいはE5に近いレベルのトラップについて、様々な製法および
基板種を使用して作った試料に関して測定・評価された報告がなされている
[11,20-26,34]。これについては次の第4.3節にて詳しく述べる。
(表4.8参照)。これ
ら深い準位については、成長方法や条件、基板種類などにより大きく異なっており、
各種デバイスの信頼性などの知見を得るためにも、デバイス特性との関連に関する
調査が必要である。
0.001
0.01
0.1
1
10
100
tp(ms)
図4・12フィリングパルスタイムt。に対する各サンプルのE4トラップ充填密度変化
・64・
第4章
4.2.3
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
この節のまとめ
Si(111)基板上とc面サファイア基板上にMOVPE法により作製したn-GaNエビ膜
(n:7-11×1017cm
3)について、その結晶性、電気特性、DLTS
関する比較調査を行った。
Si基板上のエビについては、
による深い準位に
SLsバッファ層のGaN/AIN
ペア数が40ペアの方が10ペアのものに比較し、結晶性で優ることを確認した。また、
E4-Ec-(0・7210・92)
深い電子トラップについてDLTS法を用いて評価したとこう、
の準位がSi基板上およびサファイア基板上に、またE5=Ec-(1.01-1.08)
板上、そしてE2=Ec-0.49
E4
eVがSi基
eVがサファイア基板上のn-GaNでそれぞれ観測された。
については、ここで用いた試料では転位のような直線的な配列をしておらず、点
欠陥の挙動を示す欠陥に関与することが見いだされた。
ァイア基板上のn-GaNでキャリア濃度が1016cm
E4の挙動については、サフ
3台の場合と異なる結果となった。ま
た、各深い準位の濃度は概ね1×1015cm-3以下となっていることがわかったo
165・
eV
第4.章
4.3
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
MOVPE法におけるGaNエビの各種成長条件による欠陥生成
への影響
4.3.1はじめに
MOVPE法によるGaNエピタキシャル成長において,成長時の温度、圧力といった
基本的な成長条件の違いによる、結晶性や表面モフォロジー、不純物の取り込み量
の変化については、GaNについての研究初期の頃から調べられてはいるが、近年でも
KoleskeらがGaN成長中におけるCやsiの取り込みについて[27]、
0、C、H
Fichtenbaumらは
などの取り込みについて[28]、またChoらはキャリアガス中の窒素ガスの混合
割合がGaNの結晶性に与える影響について報告している[29]。また,各種欠陥が形
成する深い準位については、ドーピング条件による違いなどについての報告[30]はあ
るが、 MOVPE法でのエビ成長条件との関連について系統的に調べられた例はない。
この節においては、こうしたMOVPE法での各種成長条件と、得られたn-GaNエビ
層中の不純物密度、転位密度などの結晶性、そして、DLTS法やpL法により観測さ
れる深い準位との相関関係について調査を行った結果を述べる。
4.3.2実験方法
MOVPE法により2インチのc面サファイア基板上にn-GaNを成長させたoその際、
まず1180℃まで昇温しH2気流中の還元雰囲気に処した後、低温バッファ層の成長
温度である500℃まで温度を下げ、原料ガスとなるトリメチルガリウム9.4mol/min、アン
モニア(NH3)7.5
1/minの流量下でH2キャリアガスとともに炉内に導入し、30nmのバ
ッファ層を体積させた。その後,再度昇温して所定の条件下でn-GaN薄膜の成長を
行った。成長条件としては,成長温度、成長圧力、キャリアガス中の窒素ガス混合割
合、GaNの膜厚についていくつかの水準で試料を作製した。X線ロッキングカーブの
半値幅(FWHM)による結晶性および転位密度,sIMS
量DLTS法による深い準位の密度,そしてPL法によるYellow
による不純物密度、そして容
Luminescence発光
強度とGaNバンド端発光強度比について、成長条件水準毎の評価を行い、相関関
係について調査した。以降、各成長条件毎の結果についてまとめた。
・66・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
4.3.2-1成長温度
2インチのc面サファイア基板上に前述のように低温バッファ層を積んだ後、所定の
TMGの
n-GaN成長温度まで昇温し、およそ2.3JJmの厚さのn-GaNを成長させたo
供給量は1.9×10-4
mol/min、NH3流量10b/min、成長時の圧力は100kPaでおよ
そ大気圧となっている。この際のGaN薄膜の成長時間は、60分である。DLTS測定に
使用するため、わずかに
n
o.4cm3/min流してn-GlaN
型になるように
H2希釈ベースの
とした。成長時間は60
SiH4(10ppm)を
分で、成長温度は1080℃から
1180℃までの間で4水準の実験を行った。なおこの場合、成長温度はリアクター内の
サセプタ直下に設置してある制御用熱電対の温度を示している。
図4.13に各温度におけるX線回折のロッキングカーブでの半値幅の変化を示す。
1080℃から1130℃に至っては、成長温度の増加に伴い測定した反射面全てでX線
ロッキングカーブの半値幅が減少し,チルトおよびツイスト成分について結晶性の向上
が見られる。
1130℃以上になると、一転して半値幅の増加が起こり、結晶性は悪化傾
向になる。 (1000)反射の半値幅から求めた刃状転位成分については、この,lO80℃か
ら1180℃に至るまで、その密度が温度増加とともに減少している。ただし、
上では、図4.12に重ねて示しているように成長速度の低下によるn-GaN厚みの減少
が見られるため、成長温度の影響のみを正確に比較するためには深さ方向の転位密
度を把握する必要がある。
sIMSによる不純物分析により求めたC、0、HおよびSiの濃度について図4.14に
示す。これらは概ね従来の報告例と同.様の結果になっている[27]。温度の増加に伴
い、取り込まれるSiは5-20×1016cm
1017cm
3と単調に増加するのに対し、Hはほぼ1-2×
3で同程度、oはバラツキの大きな結果となった。Cについては、一般的にはあ
る温度以下になると温度と逆相関になることが知られており、Koleskeらの報告[27]で
も1020℃付近であったものが950℃において3×1018cm
3まで増加している。本研究
に於ける実験では1080℃でのカーボン濃度は依然低い値になっており、温度の低下
に伴うCの増加はさらに低温域にあたると見られる。
このCの起源としては、有機金属材料中の炭化水素、TMGの場合はメチル基と考
えられるが、それ以外にもⅤ族原料であるNH3ガス中のCOやco2といったNH3の合
成工程での微量な副産物の含有、さらには炉内のカーボン製サセプタをコーティング
-67・
1155℃以
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
しているSiCからの分解が起源になり得るとも考えられている[27コ。
1 000
′■ヽ
≡
コ.
亡=i.i:コ
O
ヽ_■′
800
2.0
塁
旦
≡
可
O
l
妻
600
1.5
⊂
U
∝
〉く
ち
声
1060
1080
1100
1120
Growth
4.13
t=
t>o
(〟
tの
4)
u_
図
Z
1140
Temperature
1160
1180
1200
(oC)
サファイア基板上n-GaN薄膜の成長温度とX線ロッキングカーブ半値幅と
の関係
一-ヽ
(り
-≡
0
ヽ■_l′
⊂
.g
7;
1017
L_
l-
⊂
¢
O
⊂
0
U
1060
1080
1100
1120
Growth
1140
Temperature
1160
1180
1200
(℃)
図4.14サファイア基板上n-GaN薄膜の成長温度と各不純物濃度の関係
・68・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
次にDLTS法による深い準位の評価を行った。図4.15に各温度でのDLTSスペクト
ルを示す。また、温度に対する各準位の挙動を図4.16にまとめた。主に4つの深い準
位に対応するピークが観察され、これらに対してこれまでの解析と同様に、それぞれ
El,E2、E4、E5と名付ける。
′■■ヽ
u_
皇
7石
島
20
め
∽
ト
」
10
⊂】
0
1 00
300
200
400
500
600
Temperatu帽(K)
図4.15
n-GaNのDLTSスペクトルの各成長温度による比較
7
6
E2/
E A
i]
■∈ 5
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■
U
寸
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芝
ノ
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3
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′
`、-.・・・・/I・■:・て・:,I_i.--・・・・・▲E5
2
El
●一-__.
1060
1080
■--●トー・-●
1100
1120
Growth
図4.16
1140
Tempe托ure
1160
1180
1200
(℃)
各成長温度でのn-GaN中のトラップ濃度の変化
・69・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
この温度範囲においては、Elはほとんど変化が無く一定でE5もわずかに温度上昇に
伴い増加傾向にはあるが、E2
については1130℃以上で温度上昇に伴い顕著な増
大が見られた。
さらに・室温でのPL測定にて観察されたスペクトルと、その中の
近にあるブロードなピーク、すなわち
Yellow
2.27eV(550nm)付
Luminescence(YL)発光強度(Ⅰ,L)と、
GaNのバンド端(3.4eV)発光強度(IBE)の強度比IyL/IBEについて、図4.17、4.18に
示す。成長温度の増加に従い、IyL
/IBEは単調に減少しており、深い準位の密度の
減少が見られた。
1
?
§o.8
i
.盟
0.6
:!f>
y)
⊂
○
◆■
占o.4
.J
ll
0.2
1.6
2.1
2.6
Energy
図4.
17
3.1
3.6
(eV)
n-GaNの室温PLスペクトルの成長温度による比較
.q
⊂
⊃
モ
且
●
o.3
-●
LU
IZ)
0.2
ー
芦」
>・
1060
1080
1100
1120
Growth
図4.18
1140
Temperature
1160
1180
1200
(oC)
GaN成長温度とⅠ,L/IBE強度比の関係
170-
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
4.3.2-2成長圧力
成長時の圧力を30-100kPaの間で水準試験を行い、成長圧力と深い準位を含
めた各種エビ特性に関しての調査を行った。n-GaN成長温度については1130℃とし
た。X線回折による結晶性の変化を図4.19に示す。これより、どの反射面に対しても
圧力の減少に伴い結晶性の悪化する傾向にはあるが、
(ooo4)面のロッキングカーブ
(2024)、
の半値幅は10%程度しか変化が無い反面、
(1000)面については倍以上ま
で増加し、結晶性の悪化が見られる。図4.20に示す不純物濃度についても、C、■0、
Hとも、圧力の減少に伴い、各不純物濃度は増加する。
1600
1400
Iu
O
4)
1200
め
2
盟.
1000
≡
妻
u_
800
800
U
【亡
〉く
400
0
20
40
60
Pressure
図4.19
80
100
120
(kPa)
成長圧力によるⅩ線ロッキングカーブ半値幅変化
E=
盲
⊂
.⊇
i
1017
・l・・・J
⊂
芦
0
O
30
図4.20
gO
60
pressure
120
(kPa)
成長圧力による不純物濃度の変化
・71・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
また、図4.21に示すDLTSスペクトルで観測される深い準位については、各準位の
変化を図
で見ても明らかなように、どの準位も低圧ほど増加する傾向にある。こ
4.22
れは、結晶性が悪化する方向に対応して、各欠陥密度が増加しているものと思われ
る。特にここではE4の密度の増加が著しい。さらに室温PLスペクトルにおけるIyL/IBE
の、成長圧力による変化を、図
4.20に示す。これについても成長圧力の上昇に伴い、
単調に減少することが見受けられた。
u::15
-a
⊂
.⊆〉
q)
210
■r
⊂】
5
100
200
300
400
Temperature
500
600
(K)
図4.21成長圧力の異なるサンプルのDLTSスペクトル
5
4
す、
5
3
⊂i
Te
X
ニ■ 2
≡
0
20
40
60
P「essure
図4.22
80
100
120
(kPa)
成長圧力による各トラップ濃度の変化
・72・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
I----\
妄、
⊂
コ
◆・・・・
_._._.
蔦
o・3
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ヽ■.■′
lJ」
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こ
0.2
」
>・
0
20
40
60
80
1 00
120
Press∪帽(kPa)
図
4.3.2-3
4.23成長圧力によるPLでのIyL/IBE比の変化
N2/H2混合比
本研究で使用した
MOCVD
装置は、第2章でその構造を示したように、リアクター
内のフローチャンネル部分が3層構造を取っており,それぞれ独立でH2およびN2の
流量を制御できるようになっている。ここでは、最下層のⅤ族供給口ではNH-3を10
/minにH2とN2の混合ガスで合計流量が10b/minと、合わせて20Q/min、中間層の
Ⅲ族供給口も同様にMO材供給量を制御するバブリングH2およびそれらをキャリアラ
インまで運び出す押しガスH2を合わせて0.5b/minと、H2とN2の混合ガスを合わせて
合計で20b/minを、さらに最上層の供給口からは下の2層から供給される原料ガスを
熱対流で上層部-の拡散するのを「Sub
割を果たさせている。この中でSub
Flow」を20b/minのN2ガスで押さえ込む役
FlowはN2で流量も固定したが、Ⅲ族およびⅤ族
ガスラインについては、それぞれの合計流量を固定したもののN2およびH2の流量を
変化させた。この実験における各ガスの流量を表4.5まとめた。
・73・
b
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
4.5
表
n-GaN成長中の各ガス供給口のH2、N2、NH3ガス流量条件内訳
Ⅲ族およびⅤ族ガスキャリア中のN2比
0.00
総流量
H2
N2
MO材供給口
20
20
0
NH3供給口
20
10
0
N2/(N2+H2)
0.05
NH3
10
H2
N2
19
1
9
1
0.125
NH3
H2
N2
17
3
8
2
10
NH3
10
単位:b/min
※sub
flow
gas流量は,すべて20b/min
以上の条件下でn-GaNの試料作製、各種評価を行った。これを図4.24-4.27に
示す。X
線回折半値幅については,N2の割合が増大すると各反射面の半値幅も増
大していく。
(0001)面回折で評価される刃状転位成分の増加は特に顕著で、サブフ
ローを除くキャリアガス中のN2/H2比が0.05から0.13
-増加するにつれて転位密度
の減少が伺われる。これについてはChoらも同様の結果を報告しており、刃状転位密
度は核発生のサイズに関係するため、N2ガス比の増加が結晶成長の核生成の際の
高密度の核発生を助長するため、この刃状転位がより高密度になるとしている。
[29]
不純物濃度については、0、HはN2/H2比の増加に伴い増加傾向、Cはほぼ変わ
らずという結果となった。また、DLTS法により測定される深い準位については、El,
が減少傾向にあるのに対し、E4はN2/H2比が0.05以上で大きく増加傾向を示して
いる。
・74・
E2
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
300
℡
4)
望250
ヽ■■l
≡
善200
150
u
α:
〉く
0.05
N2
図4.24
flow
rate
0.1
in carriergas
Ⅹ線ロッキングカーブ半値幅のN2流量比依存一性
盲
O
⊂
.9
届
0.15
( N2/(N2+H2))
1017
2Fl!
■-■
⊂
4)
O
⊂
O
U
N2 flow rate of earner
gas
(N2/ (N2+H2))
ーノ
図4.25
各不純物濃度のN2流量比依存性
・75-
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
8
7
6
;i
∈
5
U
勺■
こ■i
e
4
×
ヽ一′
芝
3
2
0.05
N2 flow rate
図4.26
0.1
of carrier gas
(N2/ (N2+H2))
各トラップ濃度のN2流量比依存性
0.05
N2
図4.27
0.15
flow
0.1
rate jn carriergas
( N2/(N2+H2))
PLでのIyL/IBEのN2流量比依存性
・76・
0.15
第4章
4.3.2-4
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
n-GaN層厚み
サファイア基板上において、n-GaNの厚さが約1〃m、2.3〃m、3.5〃m,AINテンプ
レート上で同様にn-GaNの厚みが約2.3J↓m,3.5〃mとしたエビ層をそれぞれ成長さ
せた。TMGの供給量は全て一定で、厚み自体は成長時間で制御した。X線回折結
果(図
4.28)を見ると、一般的に言われているようにエビ厚が厚くなるほど転位密度は
減少している[31]。さらにDLTSでの各トラップの濃度を見ると、厚みの増加に伴い、
El、E2、E4
が減少している。ただし、これらの準位間の強度比には、厚み変化による
大きな差は見られていない。AINテンプレート上のn-GaNの場合も同様の傾向を示し
ているが、ここで注目したいのは、第
4.1節でも述べているように転位密度そのものは
AINテンプレート上のn-GaNの方が低いにもかかわらず欠陥密度はサファイア基板上
のもの七大きく変わっていない点である。図4.29、4.30に示すように、転位密度に対し
て各トラップ濃度を取ってみると明らかであり、むしろ図
4.31で膜厚に対するトラップ
濃度をとってみると、サファイア上n-GaNのE4トラップを除き、ほぼ膜厚自体に依存
するようにも見受けられる。
I
こ:iiコ
U
琶
500
o∩
亙
≡
400
Sapphi「e
●
=
ー\-t
・
≡
u
α:
〉く
(2024)
iZ5
300
\\)メこ±
ー∼--1コ
ーー
、
0
1
2
Thickness
図4.28
of n-GaN
3
(リm)
n-GaNの厚みに対するX線半値幅の変化
・77・
●
4
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
-I--ll
一一一一一一l
E2''-
2.0
E2一一
i
o
○
●
●
●
′■ヽ
む]
ノ■■ヽ
5
15
篭1・5
●
⊂)
A
pe
○
t
▲ El
●
⊂i
=
●
::L1
こ1.0
X
-------._-__-..---
O
ご1・O
■lll■
Z
__-一一-●一■●-----
≡
E2(m sapphire)
E2(on AIN)
El
,_・'El
:.
(on sapphire)
El(on AJN)
▲
▲
△
▲
△
▲
A
:=L-
107
108
Dislocation
density
109
108
109
1010
Dislocation density (Edge) (cm12)
(screw) (cm-2)
(a)
図4.29
転位密度と各トラップ密度の相関
3.0
2.5
㌻、
2・0
$
∈
l■
⊂∃
To
I
1.5
e
Y-
ヽll■.■■
≡
1.5
ヽ■■′
1.0
z-
1.0
0.5
0
107
108
Dislocation
density
109
108
109
Di$1ocabon
(screw)(Cm-2)
(b)
図4.30
転位密度と各トラップ密度の相関
・78-
E4(on sapphire)
ロE4(on Afro
×
×
・●・■■
210
O
O
density
1010
(Edge) (cm-2)
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
2・0
?-
㌔
e
1.5
×
ヽ一′′
・・■一
≡
0
1
2
Thickness
図4.31
of n-GaN
3
(LJm)
n-GaN厚みに対する各トラップ密度の変化
・79・
4
第4章
4.3.2-5
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
Si濃度
n-GaN中のSi濃度と、転位やDLTSによる深い準位についてまとめる。本章におい
てはSiのドーピング濃度の異なるn-GaNをサファイア基板上に数水準作製し、その
転位密度やDLTSによる深い準位について評価を行ってきている。その結果をSi濃
度別に表4.6にまとめる。Si濃度については、H2希釈したSiH.(10ppm)の流量0.5
-8cm3/minの範囲で制御しており、SIMSによる分析結果から0.7-9×1017cm
3とな
った。
X
1017cm
線ロッキングカーブについては図
4.32
に示すように、Siのドープ量が
3を超えるあたりから(2024)と(1000)面の半値幅が増加し出しており,結晶性
の悪化が見られる。これに対し、(0004)面の半値幅はこのドーピング濃度範囲では、
ほぼ一定の結果となった。
Hageman
らは、 1017-1019cm-3の範囲で結晶性を観測し
ているが、(0002)および(1015)面の半値幅についてはこの範囲でも増加傾向にある
[33]。成長条件(1045℃、
Low
pressure寄)の違いが関係するものと思われる。また、
DLTSによる各深い準位のSi濃度依存性を図4.33に示す。これによると、Elについ
ては、ドーピング濃度が
1017cm
3×1017cm
3になるとほぼ消滅している。
濃度でこれを超えると増加傾向を示す。
3までは増加傾向を示しているのに対し、9×
E2については3×1017cm
3まではほぼ同程度の
E4およびE5は、お互い重なり合っていて分
離が難しいが、Siのドーピング濃度が増加とともに一度増加したあと減少し、9×
1017cm
3では2×1014cm
3程度まで戻っている。さらに表4.6中で比較してあるがSi
基板上のn-GaNについても、第5章で述べるように低濃度側はSiのドーピング濃度
に対してキャリア濃度が非常に少なく、C-V測定およびHall測定とも不能であった。
これは1016cm
3台のSiドーピング量に対して1015cm
3以下のキャリア濃度になってい
るためである。従って、Si基板上n-GaNについては2×1017-9×1017cm
3の範囲で
の議論となる。この範囲においてSiドーピング濃度が高くなると、Elはサファイア基板
上と同様にほぼ消滅し、E2はE4、E5等のピークに隠れているが増加傾向にある。
-80-
3×
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
表4.6
基板種類別のSiドーピング濃度に対するn-GaNのDLTSスペクトルの変化
使用基板
SiH。流量
(cm3/min)
c-sapphire
8
100
200
300
400
100
500
200
300
TcnpcrahJre
TemperttJre【Ⅹ】
400
500
600
Pq
40
毎
a:
'a
30
「ヨ
亀
f=
■宗
・Ei
め
2呈
ト
J
(⊃
20
ト・
J
(〕
10
0
0
I00
200
300
400
500
600
l00
200
300
400
1empemttq<K)
Tczverah吋K)
蛋
キャリア漉度不足のため
一言
.昼20
t^
Eq
測定不能
二=
貞
(<1×1015cm
100
200
300
Temperaturc
400
500
Pq
・81・
600
3)
500
60)
iO
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
on
sapphire
(1000)
登6。。
≡
妻...
■
_
-■
一△_
(2024)
A-瑠////
U
α
〉く
r+(....
1017
si
図4.32
)
1018
concentration
(cm13)
n-GaN中のSi濃度とX線回折半値幅の関係
1017
1018
si concentraぬn
図4.33
(cm-3)
各トラップ密度に対するSi濃度の影響
・82・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
図4.34にPLスペクトルにおけるⅠ,L
加に伴い、IyL
/IBE比のSi濃度依存性を示す。Si濃度の増
/IBE比の減少している。これは、YLの強度変化より、バンド端発光強
度IBEがSi濃度上昇に伴い増加している事,すなわちキャリア濃度の増加によるバン
ド端発光強度増加が支配的になっているものと考えられる。
1016
1017
s;
図4.34
concentration
1018
(cm-3)
Si濃度に対するIyL/IBE比の変化
ー83・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
さらに図象35に、他の研究報告との比較として、Wa。gら[35]の報告と本研究での
果を、キャリア濃度と移動度に対するⅠ,L/IBEについて示す。キャリア濃度、移動度との
相関関係が、本研究とWangらのものとが逆になっている。Wangらの実験では、Si濃
度やx線回折などのデータが明記されていないが、移動度が800cm2/vsとなっている
ことから推測すると、結晶性が良好なサンプルとを比較していると見られる。そのため
結晶性を反映するYL強度が低くなっていることにより、相対的にIyL/IBEが減少して
いると考えられる。
Wang.
et al
Wang,
et
\
■-ヽ
⊆-
■l・・・J
⊂
⊃
o.3
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コ
I
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This
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work
/
\t
■
●
1017
carrier
1018
concentration
1019
o
(cm-3)
200
400
Hal( m)bi"Iy
(a)
図
4.35
600
(cm2 / vs)
(b)
IyL/IBE比の(a)キャリア濃度、(b)移動度依存性
本研究と文献値[3)1の比較
・84・
800
1000
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
4.3.3.考察
以上までに、MOVPE法での成長諸条件に対して、作製されたn-GaNエビタキシヤ
ル層中の結晶性、不純物密度、深い電子トラップのエネルギー準位と密度について
述べてきた。表4.7にこれらをまとめた.
表
4.7
\
n-GaNのMOVPE成長条件と転位密度、不純物密度、深い準位との関係
転位密度
PL
深いトラップ準位
不純物密度
E2
EI
E4
E5
範囲
Screw
Edge
C
0
H
Si
l.le
0.2eV
0.5eV
(yL/ZBE
0.8eV
V
1080-1180℃
-._メ
30-100kPa
N2/H2比
0-0・125*)
厚み
1-3.5〃m
Si濃度
\し→\→→
\しぅ
//オー→
\
\\>-\与--ヽ
/
・}
*)
3
\
--I--∼
\ぅ、\
-ぅ-せ\ぅ
-ノア
へ-]
0.7-9
×1017cm
-㌔
/カ→ノ
/ク
\
→
\
N2/(N2+H2)
これによると、転位密度は成長温度,成長圧力と概ね逆相関,窒素ガス比とは正
相関の関係にある。また、不純物の取り込みは,化学反応も絡んでくるため挙動はそ
の種類によりまちまちだが、C、0は似たような挙動を示していて、温度、圧力とは逆相
関になっている。またSiは温度に対しては正相関であり、それ以外の要素については、
ほとんど変化を見せない。
DLTSで観測される深いトラップについては、Elは温度ではほとんど変化が無く、転
位密度に対してもほとんど相関が無かったこと、また前節で述べたように、DLTS測定
時のフィリングパルスタイムt。依存性もほとんど無いことから、転位のように直線上に配
列した欠陥ではなく、点欠陥に近い形態のものであると考えられる。同様にして、E2に
っいては、その密度が温度変化に対して最も増減幅の大きな挙動を見せており、t。に
・85-
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
対しても点欠陥の挙動を示している。欠陥の起源としても
する例が多い。E4、E5
N。8といった点欠陥を示唆
については、概ね結晶性の悪化とともに密度が増加する傾向
があるが、転位密度そのものとは直接相関が無く、AINテンプレート上のn-GaNの様
に転位密度が少なくとも、サファイア基板上のn-GaN
のように転位密度が多いものと
同程度の欠陥密度を示している。また、キャリア濃度により挙動が異なる。
表 4.8にDLTSで観測された各準位の、成長条件各要素に対する挙動と,フィリ
ングパルスタイムt。に対する挙動から推定される欠陥の形態など、これらをこれまでの
研究報告例で述べられている欠陥やその起源とともにまとめた。なお、本第
4
章の
4.2.1節で述べた過去の報告例(cho[6,7])との比較において、Elの結晶内の分布
が転位芯上に直線的配列しているという結果に対し、本研究ではその癖な兆候が見
られなかったことを述べた。これは、成長条件の違いによるものと考えられる。本研究
4.2.1節におけるn-GaN成長条件が、1130℃、100kPaであるのに対し、Choらの条
件は1080℃、
26.6kPa(200Torr)となっている。また成長速度についても、本研究で
は2.3FLm/hrに対し、
1.Opm/hrと半分以下で,かつ膜厚が5FLmとなっている試料も
あり、成長時間に置き換えると,5倍異なることになる。成長条件の違いに依存するバ
ックグランドのSi濃度が不明であるが,膜厚,すなわち成長時間の違いなどが欠陥の
形成に影響し、Elのトラップ密度や電子の捕獲挙動の違いといった結果に表れた可
能性が考えられる。
・86・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
表4.8
0.1-1.1eVにあるGaN中の主な電子トラップ準位の報告例
Energy
Energ(yev)sition(cNmt-3)OriglnMethodSubstrateLabelReference
range
(eV)
・L--X、、-、.■.ー#Y-:営モ'/-リ′[/OTfi'■1'、ー=ー、塗、.璽≡、一′-=:.壱=.-1j'貞一訂'や''-=::-=、■'r二≡";蜜ざ=¥CX、.、、w''>'lr
・-..ーL雪、.....仝-.】-I.}t.-.ノ¥..A-.、、-∼.、漂ト、社-.、、、、...㌔-.せ..亡ヒ一ー盆J-.-一X.写〉.I-,祇一′.∼.-、ホース..虫..,モ醤護J、>、".㌔..,-竪琴郡=リ.-ど.ー、蓄...u.聖ゼ′.≡-.
->.等一..巧:U.::、、く:≠、ゴ.布<
∼:I
::k1戊.I:'v1...>>:◆\.り、■-W-^ー.、.、.、l-L.W-、、-◆
I--氏:ノ>顎<ミ-I-<宝¥/-{1二:.:,.>小.香.I.∧...:三色:一:七V_、さ〉、ナ:.
Ec-0.141.72×1013relatedwithC,HMOCVDsapphireEILee,1995
0.ト0.3
Ec-(0.2-0.24)8.8xlOl3oN,SiG&MOCVDsapphireA2Soh,2004
Ec-(0.l9-0.23)5-9.5×lOl31ine.:r"r,angedMOCVDsapphireElcho,200.
Ec-(0.1-0.l4)MOCVDsapphireJohnstone,2004
Ec-(0.21-0.28)MOCVDsapphireBXie,2007
--】=.:.尭.=≠:.J上:-=悪-."、.,-"心....≡;,-.蛋.岩一、1=ー.ミミJV-,.しヒ=欠W.-㌔-=:一=璽--実話柑、,=Si:近藁■違…n'11ミ宅iヨ塾:≧塁=七;塁整∃毒義旗盲法主慧,i"}き、繁≒喜怒.墨>過ミ..)登畳違.量聾蕪.I::
#
Ec-0.492.48×1014relaledwithC,HMOCVDsapphireE2Lee,l995
Ec-(0.5-0.6)l.4-3.2×lO14,.inTGdagfec.MOCVDsapphireE2cho,2001
0.4-0.7
Ec-0.55?I?MOCVDsapphireJohnstone,2004
Ec-0.612.9×lO14?MBEsapphireArmitage,2005
Ec-(0.5-0.62)pointdefectMOVPEsapphireEIEmiroglu,2007
Ec-0.59$lXlOl5NG8MOVPEsapphireD2Haase,1996
Ec-(0.58-0.62)2.7×1014MOCVDsapphireE2Hierro,2000
Ec-(0.55-0.58)MOCVDsapphireAXie,2007
藁葺葦-曇整≡藁葺--、lこ、;ミ㌧..1.i,..意=:‥なモー,".,.rl^:I:
I.ーヽ一一ノ■"Vヽl
・>.写、:ち
Ec-0.9eV2.1xlO"pointdefectHVPEsapphirePolyakov,2002
0.7-0.9
Ec-0.88eV<1013?MOCVDsapphireE4Hacke,1998
Ec-0.96eV8.3×lO15?MBEsapphireE4Wang,1998
(peaktemp:420K)linedefectMBEsapphireAIFang,2001
選書悪霊慧蓋葦墨墓慧J.上.--,:,.-.と.石:-室嚢嚢…藁崇さi.:1=:l≦::m.】.w^....-A.1..,.,V..==l:I,農票一三=:浮雲嚢霊r.:.'ft要素呈塁悪書
蓋≡雲≡雲≡さミ聖望ト"WI、ー
'..-.w藁lm.㌔.:.,.:-1i-...漂妻藁葺葦誓萱霊L<
.∼.∫_∧_、:\とさ】.ノ、>て.I
==.蓋蓋≡慧、.、、.."-vL.i.1..,_Yr、、.鼓、空整雷雲萱盲蓋茎葉童墨毒竃喜一..r81..I:=u=.,重量:∼-..
Ec-I.443.34xlO15?MOCVDsapphireE3Lee,1995
0.9-1.1
Ec-I.04eVNGaHVPEIGaNDPolenta,2007
Ec-..02eV2.lX1014dl!Shlr.ecaad.iin.gnsMOCVDAIGasTtGa"/AIFang,200.
・87・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
さらに図4.36にX線半値幅に対するPL測定でのIyL/IBE比の変化を各面方位毎
にまとめてみた。各面方位とも半値幅に対して、すなわち転位密度に対して、緩い正
の相関があるといえる。これについては、Zhaoら[36]がYL強度と刃状転位密度との
強相関を示唆しているが、本実験ではそれほど強い相関は見受けられなかった。YL
については、その発光メカニズムについて、以前から-深いアクセプター準位(Ev+
0.86eV)と、ドナー準位(Ec-0.025eV)間の
D-Aペア発光と言われ[37]、それらの起
源についても、転位やそれに関連する複合欠陥などと多くの報告がなされてきている
[38-49]。最近の報告例では深いアクセプターとして、転位に関連したV。いV。a-CN、
ドナーとしては、ON、Si。‥SiGa-ONなどがその起源と考えられてきている(例えば
Soh[12])0
Sohらによる.YL発光のメカニズムに関するモデルを図4.37に示す。本研
究においてもElとして観測されている準位が、エネルギーレベルから考えてもD-A間
遷移におけるドナー準位を担い、YL
発光に関与していると考えられる。また近年、特
にHEMT等の電子デバイスにおいて、
「電流コラプス」と呼ばれる電流出力の異常低
下現象が見られる事が問題となっており、深い準位が関与した充放電現象と言われ
ている。この深い準位としてはAIGaN/GaN
HEMTのAIGaN表面、またはバッファ層
として使用されているi-GaN層中に存在するものが関与しているとされ、この現象が見
られる場合、pL測定でのYL発光に違いが見られるという事で注目されている(例えば
Klein[49])。
Kleinらはこの深いアクセプター準位(Ev+0.86eV)をI
VGa-CN複合欠陥
と見ている。今後、デバイス特性との関連やデバイス特性の最適化を図るためにも、
深い準位について、その起源や制御に関し更なる調査が必要である。
-88・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
巨当
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虐
0.6
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XRC
1500
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25∞
(arcsec)
(b)
(1000)
筈
A
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垂
S
LU
0.6
0.4
息
=En
」
>・・
A
A
A
A
也
㌔AA
1 000
XRC
2000
FWHM
3000
4000
(arcsec)
(c)
図4.36
Ⅹ線半値幅に対するIyL/IBE比の変化
(a)(ooo4)面、
(b)(2024)面、
・89・
(c)(1000)面
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
I Ec-(0.210.24)
ONヽSiG..Sic.-ON、・・・
2.27oV
YL
Ev+0・87
Band
eV
VGa.
VGa-CN、-A
M'tJl dr's/ocatJ'on
assoc血te
図4.37
YL発光の機構を示したバンド内モデル図
Shoら[12]のモデルを参考
4.3.4
この節のまとめ
MOVPE法での各種成長条件のうち、成長温度、圧力、N2/H2比、厚み,そしてSi
ドーピング濃度について、いくつかの水準実験を行い、作製されたn-GaNエビタキシ
ヤル膜の結晶性、不純物密度、および深い電子トラップ準位について調査した。
成長温度や成長圧力に対して、転位密度として代表される結晶性は、正相関にあ
り、不純物密度はSiを除いて逆相関になっていた。さらにDLTS法による深い準位の
調査では、観測された4つの準位として、El、E2、E4、E5があり、Si濃度によって挙動
が異なり、El,
E2
は低濃度域では転位密度とほとんど相関無く、フィリングパルスタイ
ムt。依存性を見ても、転位との相関は弱く分布していることがわかった。
不純物密度の成長条件依存性については、従来の報告例とほぼ同一の結果とな
ったが、深い準位については、Elは成長条件依存性が薄く、E2は成長温度に対し、
大きく変化したo
E4,E5についてもN2/H2比が大きく影響を与えることを確認した。
また、pLスペクトルによって観察されるYL強度は、転位密度との相関関係は認め
・90・
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
られるが、従来の報告ほどの強い相関はなかった。
第4章のまとめ
4.4
MOVPE法により作製したn-GaN薄膜において、使用される基板材料、ならびに成
長諸条件の違いによる結晶性、不純物密度、そしてDLTS法による深い準位につい
て、系統的に調査を行った。
si(111)基板上とc面サファイア基板上にMOCVD法により作製したn-GaNエビ膜
でしらべたところ、
Si(111)基板上のn-GaNについては、SLsバッファ層のGaN/AIN
ペア数が40ペアの方が10ペアのものに比較し、結晶性で優ることを確認した。また,
深い電子トラップについてDLTS法を用いて評価したところ、E4=Ec-(0.72-0.92)
の準位がSi基板上およびサファイア基板上に、またE5=
板上、そしてE2=Ec-0.49
1,
Ec-(1.01-1.08)
eVがサファイア基板上のn-GaNでそれぞれ観測された。
E4については、ここで用いた試料では転位のような直線的な配列をしておらず、点
欠陥の挙動を示す欠陥に関与することが見いだされた。
全体としてみても、DLTS法にて観測される深いトラップ準位の濃度は、本研究で行
った条件範囲においては概ね1×1015cm
3以下となっていることがわかった。
191-
eV
eVがSi基
E
第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
参考文献
第4章
【1]
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Sakai,
0.
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Kuraoka,
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第4章
GaNエビタキシヤル層中の深い準位
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Koleske,
and
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と
電気的特性への影響
一
便用基板材料によるドーピング特性
および深い準位などの結晶欠陥の違い
-
5.1はじめに
si基板上のGaNおよびその混晶は、サファイア基板に比較して良好な熱伝導性
と大口径ウエハが使用可能であること、そして大きなコストメリットが見込まれることか
ら,オプトエレクトロニクスや電子デバイス-の応用として大きな関心が持たれてきて
いる[1,2]。一方、これらの電気的特性に関する理解を深めることは材料の品質、デ
バイス特性の向上の意味で重要である。これまでMOVPE法を用いたGaNエビの成
長条件において、GaN
-の不純物の取り込み、あるいはこれらの不純物の役割、カ
「ボンの電子トラップ-の影響などに関し、いくつかの報告が成されてきている[3-5]。
また,使用した基板材料の違いとして,サファイア基板上やGaN・独立基板上に成長
させたn-GaN
中のネットドーピング濃度について、転位密度との関係についても調
査されている[6]。しかしながら、
Si基板上に成長させたGaN中の深い準位などの欠
陥に関しての報告はわずかしかない[7,8]。
この章では、
Si(111)基板上およびサファイア上に成長させたn-GaNでのネットド
ーピング特性をはじめとする電気的特性について、結晶性、不純物濃度および
DLTS法により測定した深い準位密度の観点から考察し、両者の比較を試みた。特
に半導体としての基本特性であるキャリア濃度や移動度、そしてそれらの温度依存
性を評価し、転位をはじめとする結晶欠陥との関係を考察した。さらに、代表的な電
子デバイスのひとつであるHEMTとしての基本性能を調べるため、
AIGaN/G去N
HEMT構造エビをSi上およびサファイア上に成長させ、それらを実際にプロセス加工
・97-
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
してデバイスを形成した上で、それぞれのHEMT特性を比較した。
5.2実験方法
4インチ(111)面のSi基板上、および2インチc面サファイア基板上に第2章で述べ
たように水平フロー型のMOVPE装置にてn-GaNを成長させた。これらのエビ構造を
図5.1に示す。
図
5.1シリコン基板上(a)およびサファイア基板上(b)の
n-GaNエビタキシヤル層
構造
Si基板上に1〃m厚の
n-GaNを成長させるため、本研究では第2章で述べた
i-GaN/i-AIN系20ペアの超格子構造のバッファ層を使用した。比較のためn-GaN
を、 30nm厚の通常使用される低温成長GaNバッファ層を成長させたc面サファイア
上に、2.3〃mの厚さで成長させた.これら両方のn-GaNは、成長温度、圧力、n一型
のド-パントガスである水素希釈ベースのSiH。の流量などの各種成長条件を同一に
してある。ネットドーピング濃度N。INaは、C-V法により測定した。ここで、N。はドナー
濃度、Naはアクセプター濃度を表す。不純物濃度はSIMS分析により求めた。さらに
X線回折によるn-GaNの結晶性の評価、Hall効果測定によるキャリア移動度の評
・98・
第5章
Ga
Nエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
価を合わせて行った.
法の測定は、ナノメトリクス社製
DLTS
により、90-
DL8000
600Kの範囲で静逆バイアス電圧、充填電圧は、それぞれ-2V、
OVで測定を行った。
この逆バイアス電圧の場合、エビのキャリア濃度から空乏層の厚さは、およそ100nm
と見積もられる。充填パルス時間(mlingpulsetime:
で満たした後、放出時間幅(emission
AIGaN/GaN
time:
とした。さらに
50ms
tw)を
HEMT構造エビをSi基板およびサファイア基板上に作製し,デバイス
プロセスを経た後、
5.3
period
t。)は0.1msとし、トラップを電子
HEMTとしての各種電気的特性評価を行った。
結果と考察
5.3.1ネットドーピング濃度に関する不純物濃度依存性
n-GaNに対するSiのドーピング量の制御は、
MOVPEでのエピタキシャル成長中
のSiH。の流量を変化させて行う。この場合、SiH4の流量とGaNエビ層中に取り込ま
れるSiの濃度は、比例関係にある。しかし、取り込まれたSiがn-GaN中のキャリアと
なるわけではなく、各種条件でそのドーピング効率が異なって来ることがわかったo
siH4の流量を変化させドーピング濃度をいくつか変えた場合のN。-Nいすなわちネッ
トドーピング濃度を図5.2に示す。
サファイア上のn-GaNは、
1016cm
3台半ばから1×1018cm
3までにわたり、ほぼsi
濃度と比例関係にあるのに対し,Si上のn-GaNの場合、si濃度が3×1017cm-3以
Si濃度が1×
・下になると比例関係のラインからのずれが大きくなっていき、特に
1017cm-3を下回る濃度では、
N。-Naは激減し1×1015cm13以下となる。
n-GaN成長
中に取り込まれるSi濃度は、両方のサンプルにおいて同一であり、SiH4の流量に比
例している。それにもかかわらず、
si基板上のn-GaNでこのような低Si濃度側での
ネットキャリア濃度の大幅な低下を示す事は、強い補償が生じていると予想される。
si以外の不純物濃度について、SIMS分析を行った結果について、刃状転位密度
に対してプロットしたのが図5.3である。刃状転位密度に関しては第2章で述べたよう
に,
(1000)面のX線ロッキングカーブの半値幅から求めた。
の試料に対し、この転位密度の範囲では大きな差は見られない。
C濃度については両方
CはGaN中ではア
Si基板上
クセプターとして作用することが知られているが、本実験結果を見ると・
199・
第5章
Ga
Nエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
n-GaNのC濃度が2.7-4.6×1016cm-3であるのに対し、サファイア上のn-GaNでは
8.5-10×1016cm
3となっており、むしろSi基板上のC濃度の方が低くなっている。
従って、ドナーを補償するアクセプターはC以外のものも存在すると考えられる。
こi■iコ
㌔
蔦
≡
も
≡
1017
1018
si concentration
図5.2
n-GaN中のSi濃度とキャリア濃度(Nd-Na)の関係
109
Edge
図5.3
(cm-3)
Dislocation
1010
density(cm-2)
n-GaN中の刃状転位密度と各不純物の密度の関係
・100-
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
このアクセプターとして考えられるのは、上記の結果からしても不純物ではなく、結
晶欠陥に起因するものと推定される。その中では、
01ilaらが陽電子消滅を用いて調
査したGaサイトの空孔(V。a)[9]や、刃状転位が主だったものとされている。
n-GaN中
の刃状転位については、負の電荷を持っていること[10,11]や、電子トラップとして働
くことが計算や実験などから求められている。また、刃状転位は電子の移動度やキ
ャリア濃度に大きく影響を及ぼすが、らせん転位はそれほどではない事も示されてい
る[12]。 Weimann[13]や、
EIsner[14]らは、刃状転位の転位芯を
Gaサイトの空孔
(v。a)と考えた場合、v。aおよびON,そしてそれらの関与する複合欠陥V。a-ONなど
が深いアクセプター準位を形成するとしている。刃状転位周りのダングリングボンドの
様子やその分子モデル[13,14]をそれぞれ図5.4(a),(b)に示す。これに電子が捕獲さ
れるとV。8の周りのNのダングリングボンドにおいて持ち上げられた価電子帯のギャッ
プを生み,すなわち、転位芯の周りで
GaN
が空乏化していると.推定している(図
5.5).
∼
(a)
rdti>"
(b)
図5.4転位芯とダングリングボンドの様子(a)[13]と
・101・
VG8-0複合欠陥のモデル(b)[14]
第5章
Ga
Nエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
n-GaN
o
_
.._
o
_
o
._
o
_
_.
o
_.
_.
o
_
.._
Acceptor
・-
Edge
1
electron
Ec
/
Ef
一evel
Dislcation
担岳∃
∩-GaN
0
_
_._
0
o
._
__
_.
O
._
o /
e一ectron
Ec
Ef
__
O
」__二二二二こ
Acceptor
⊥
図5.5
Edge
leve一
DisJcation
n-GaN中の刃状転位周辺のモデル図
またWeimannは、イオン化された不純物密度がトラップ密度より小さければ、すべ
てのキャリアはトラップされ、絶縁性を示すようになるため、転位密度はドーピングされ
た不純物とフリーキャリア密度との関係に影響を及ぼし、転位密度が高くなるほど、
低濃度のドーピング領域でのフリーキャリア密度の低下を引き起こすと述べている
[13]。さらにこれをイオン化されたドナーの数からトラップされた電子の数を差し引い
て得られたフリーキャリア密度とトラップ充填率の関係を考慮したモデルから導出した
結果を本実験結果のグラフ上に示したのが図5.1中の曲線である。それぞれの曲線
は、 107-1010cm
2の転位密度1桁毎に引いてあるが、本実験におけるn-GaN成長
に用いた基板種毎の転位密度、AINテンプレート上:108cm
109cm
2、si基板上:-1010cm
2、サファイア基板上:
3と良い一致が見られる。同様にYouらは、刃状転位
・102-
第5章
Ga
Nエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
を単独トラップが直線上に配列したものと見なした「Readポテンシャル」と呼ばれるモ
デルで同様の解析を行っている[15]o
5.3.2転位密度のHall移動度へ与える影響
また、図5.5に各サンプルのHall効果測定から求めた室温に於けるキャリア濃度
とHall移動度の関係についてのデータを示す。サファイア基板上またはAINテンプ
1018から1016cm
レート上のn-GaNは、
3の範囲ではキャリア濃度が減少するに従い、
Hall移動度は300から600cm2/vsと増加するのに対し、
Si基板上のn-GaNについ
ては、同程度のキャリア濃度範囲でキャリア濃度が減少するにつれて、
は200から70
Hall移動度
cm2/vs程度に減少している。これは、サンプル間の転位密度の違い
によると考えられる。転位が移動度に影響を与えるモデルとしていくつか示されており、
電子がトラップされると転位芯が負にチャージした状態となり[16],これがクーロン散
乱を引き起こし、キャリアの移動度に影響を与えるようになるとしている。
Youらは、遮
蔽された転位と無限半径のポテンシャルから得られるポアソン方程式を解いた「BG
(Bonch-Bruevich
and
Glasko)モデル」を用いて、転位密度を考慮したキャリア濃度
と移動度の関係を求めた[15]。これを図5.6に示す。本研究での実験結果とモデル
から求めた曲線とは多少帝離が見られるが,モデルの転位密度から計算される曲線
と実際の基板種が異なる3種類のサンプルのデータと概ね合致しており、
の転位密度のSi基板上n-GaNは低キャリア濃度側でHall移動度の著しい減少が
見られる。
・103-
1010cm-2台
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
言
の
≡
O
=S
石
0
∈
葛
=
1015
1016
1017
carrier
図5.6
concentration
1018
1019
1020
(cm`3)
成長基板の異なるn-GaNにおけるキャリア濃度と移動度の関係
図中の曲線は、転位密度毎のシミュレーションによる結果[15]
・104・
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
5.3.3キャリア濃度およぴHall移動度の温度依存性
5.3.3.1.
∩-GaNのキャリア濃度、Hall移動度の温度依存性
サファイア上およびSi基板のn-GaNについて、Hall効果測定によりHall移動度
ならびにキャリア濃度の温度特性を、
10-300Kの温度範囲にて測定した。図5.7に、
キャリア濃度、図5.8に移動度について、それぞれ温度依存性を示す。
キャリア濃度については、基板種に関わらずキャリア濃度が同程度であれば同様
の温度挙動を示し、室温付近で約1×1017cm
3のものは、温度の低下とともに減少
していく。また、同じく室温付近で約1×1018cm
3のものは、一旦減少するものの90K
前後で極小となった後、再び上昇に転じ、
30K付近で飽和している。Molnarらは、
ECR-MBE(electron
beam
cyclotron
resonance
microwave
plasma-assisted
molecular
epitaxy)により作製したGaN(室温におけるネットキャリア濃度:5.8×1017cm
3)
のHall効果測定結果を、ドナー不純物帯内およびそれと同様に伝導帯内での電子
の輸送で説明される「two-band」モデルを用いてこれらを解析している。ドナー濃度
(N。)が高くなると(一般的にはN。〉1019cm
3)、ドナーの波動関数の重なりが大きくな
り不純物帯を構成する[17]。ある温度で伝導帯に励起されたキャリアの濃度
n。、移
動度〟。とし、励起されずに欠陥に残されたキャリアの濃度n。と移動度〃。とし、nいn。、
〃。、
〃。をそれぞれ計算した値とを比較すると高温側ではn。が、低温側ではn。が支
配的になっている。この結果は図
5.5の室温でのキャリア濃度がおよそ1×1018cm
のサファイア上およびSi基板のn-GaN試料、両者における挙動を説明できる。
・105・
3
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
一■■ヽ
[iニ
ー∈
O
ヽ-1′
⊂
.⊆
局
」
-■
⊂
4)
0
⊂
0
O
L_
.聖
L
-I
(可
O
10
100
Tempe「atu「e
図5.7
1 000
(K)
キャリア濃度の測定温度依存性
1 0000
′=!
=ヽ
∽
毒
1 000
く)
ヽ■一′
=>
二石
○
≡
⊂
O
」
■-J
O
_4)
lJ」
100
Tem
peratu 「e(K)
図5.8移動度の測定温度依存性
-106-
1 000
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
EshighiらもMOVPEにてサファイア基板上に作製したn-GaN(室温でのネットキャ
リア濃度:8×1016cm
3)について測定を行い,同様に「two-band」モデルを用いてこ
れらを解析している[18]。それによると、低温域で見られるキャリア濃度の上昇は、浅
い不純物帯内でのキャリアの移動と輸送(transfer
transport)に関係し、深い準
and
位は低温での輸送(transport)の役割は担わないとしている。キャリア濃度が高い(1
×1018cm-3)試料とキャリア濃度が低い(1×1017cm-3)試料の間で、温度の低下に伴
うキャリア濃度の減少から増加に転じる温度域が異なるのは、上記の「two-band」モ
デルから考えると、伝導帯内のキャリア濃度n。が支配的だったものが不純物帯内の
キャリア濃度n。が優勢に転じる状態(図5.9)とすると,不純物濃度が高い方がより高
い温度域で増大に転じるためと説明できる。
1018
盲
O
⊂
料:nm;a:子羊三
▲
▲
.⊇
局
L■
▲
、●●■
⊂
o4)
⊂
▲
・1017
▲
O
▲nc
O
▲
T▼
.壁
▲
T■
-■▼
何
U
▲
▲
100
Temperature
図5.9
(K)
伝導帯内のキャリア濃度n。、不純物帯内のキャリア濃度nd
および実測値nmeasの温度依存性[18,20]
・107・
第5章
Ga
Nエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
5.3.3.2.ドナーの活性化エネルギー
図
5.10
に温度の逆数に対してプロットした各サンプルのキャリア濃度を示す。式
(5.1)に示すように、各試料におけるSiドナーの活性化エネルギー(凸ED)を求めた。
n(T,
=
no
(5・1,
6xp(普)
キャリア濃度が低い(1×1017cm
ら[19]ともほぼ同等(13-15meV)の値となった。キャリア濃度が高い(1×1018cm
料は、サファイア基板上のものが10meV、
Noh
Ng
3)試料は、基板種にかかわらず16meVであり、
3)読
Si基板上のものが24meVとなった。これを
らが解析しているように[20],キャリア濃度に対して活性化エネルギーをプロット
する(図5.ll)と、サファイア基板上のものはGoetzらのデータとほぼ一致するが、Si
基板上のものはむしろMolnarら[21]のECRニMBEでのデータに似て増加の挙動を
示している。彼らの仮説としてはNサイトの空孔(VN)が起因しているとしているが、こ
の試料の結晶性が
X
線ロッキングカーブ半値幅で10-20min
すなわち
600-
1200arcsecであることからすると、転位密度の大きさ、または転位に関係する欠陥密
度が関与しているものとも考えられる。
Goetzらは、この起源をn型のバJクグランドに
もなっているNサイトの酸素(ON)であろうとしている[22]。
-108・
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
′-ヽ
0
'E
O
ヽ■′′
⊂
.9
局
=
・■■
=]
⊂
0
(J
⊂
0
0
L_
.壁
L
l■■
q
O
10
20
30
40
1000汀(1/K)
図5.10
温度の逆数に対するキャリア濃度と活性化エネルギー
.■■■ヽ
>
q)
≡
ヽ■一′
>ヽ
P
C)
⊂
l.∪
⊂
.⊇
i5
.≧
O
・-
<
0
1016
1017
Donor
1018
concentration
1019
(cm
図5.11ドナー濃度に対する活性化エネルギー変化
-log-
3)
1020
第5章
Ga
Nエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
5.3.4移動度とキャリアの補償比
5.3.4.1移動度
図5.6で示したように、室温付近でのキャリア濃度が高い(1×1018cm
3)試料の移
動度は、基板種に因らず220-350cm2/vsで温度に対しほぼ似たような挙動を示し
ているが、室温でおよそ約1×1017cm
3のものは、基板種、すなわちこの場合転位密
度に大きく影響を受け、転位密度が高いと移動度は減少し、低ければ移動度は増
大する。図5.2でも示したように、転位密度差が増大するほどそれらの移動度は大き
くかけ離れたものになっている。
移動度は一般的に次の散乱機構の総和によって決まるc
J光学フォノン散乱:
lL.。.、中性不純物散乱:
Jlni、音響フォノン散乱:
散乱:FL。is、イオン化不純物散乱:FLii、ピェゾ散乱:
1
1
1
1
1
FL。e
1
(5.2)
-=-+-+-+-+-+
FLpo
FIT
FLac、転位による
Pni
FLdis
Vac
Pii
FLpe
イオン化不純物による散乱
P,・,・
=
64J&c2 (2kT)3/2
Nie3
f
(5.3)
J訂
:半導体誘電率、k:ボルツマン定数,m*:GaNにおける電子の有効質量、e:
電子の電荷
このうち、 Niはイオン化された不純物密度で以下の式で表す。
(5.4)
Ni-n+f
ただし、n:電子密度、
f:充満されたトラップの割合,
-110-
Ns:単位面積あたりの転位密度、
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
d:六方晶GaNのc軸長
転位による散乱
FLdisZ
=
30Ji=c2d2(kTア′2
(5.5)
e3Nsf21dふ㌻
入dはデバイスク.リーニング長で次式で表される。
Id
(5.6)
-(6kT/e2n)0.5
音響フォノン散乱
Pac
(kT)115
(m')215
3(Eゐ)2
Eds:膨張した単位格子あたりの端部の移動
cll:半導体の平均長軸長弾性定数、
距離(acoustic
(5.7)
deformation
potential)
光学フォノン散乱については、
pop
-
-1,G(z,
va)(10-13oo)[exp(千,
o・199(志)o'5(吉)2(#'5(1022M)(
(5.8)
ここでe。は、
Callen
e恥ctive
chargeで、次式で表される。
・111・
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
(5.9)
以上[18,22]を考慮すると、図5.8でわかるように移動度の温度依存性としては、サ
ファイア基板上の低凍度(1×1017占m13)n-GaN試料を除き、低温側は不純物散乱
が支配的でT3/2に比例する形になっている。対して高温側ではT-3/2に比例するフォ
ノン散乱が支配的になっている。Eshghiらは、図5.12に示すように、緩和時間近似
(relaxation
time
approximation
密度を考慮したドリフト移動度〟
:
RTA)を使った解析で、導電帯と不純物バンドの
。riftM。bi.ityと見かけ上のHallキャリア濃度を求めたが、
全温度範囲で明らかに実験データと良く一致している[18]。本研究におけるサファイ
ア基板上の低濃度n-GaN試料について、低温側の移動度の温度依存性が他のも
のに比較しても
T3/2の関係が薄いことは,このキャリア濃度域、転位密度域では
Eshghiらのモデルで説明されるような別の機構が移動度を決める要因として支配的
であるといえる。
1 0000
′-ヽ
∽
∼
i;
1000
O
ヽ-1′
>ヽ
■■■
云
○
≡
毒
=
100
Temperature
図5.12
(K)
移動度の各成分因子と実際のデータとの比較[18]
・112・
第5章
Ga
Nエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
5.3.4.2移動度に対する補俳比の関係
第5.3.1節で述べたように、基板種の違いによるn-GaN中の転位密度の差が、ネ
ットドーピング特性に影響を及ぼしていることが確認されたoこの節では,移動度と補
償比の関係やそれに関連する補償機構について考察する。
第5.3.1節、図5.2で示したように、転位密度が他の使用基板のものに比べて高い
si基板上のn-GaNは、
Siのドーピング濃度が5×1017cm-3以下になると、キャリアと
して測定される濃度がドーピング濃度を下回りだし、さらにドーピング濃度が低下し、
1×1017cm-3以下になるとキャリア濃度は1桁以上低下するようになるoつまり、ドーピ
ングしたSi濃度に対して、キャリアとして観測される濃度が1桁以上も小さくなってい
る。これは先にも述べたように強い補償が働いている事を示唆しており、刃状転位が
関与する結晶欠陥がアクセプターとして作用していると考えられる。
Si以外のドナー
については、そのキャリアの起源として窒素サイトの空孔(VN)や酸素が考えられてき
た。浅いドナーとして、酸素の活性化エネルギーが29meVと求められたとの報告もあ
る[23]o
ここで、全ドナーと全アクセプターの補償比(β
度について検討した。
用いて、 GaNをはじめ、
:
Chinらは変分原理(variational
8
-Na/N。)からアクセプターの濃
principle)と呼ばれる手法を
InN,AINを含めて、キャリア濃度と移動度の関係を補償比で
解析した[10]。この結果に本研究の実験で得られたデータを合わせると、図5.13の
ようになる。これを見ると,サファイア基板上、
キャリア濃度が7×1016-8×1017cm
AINテンプレート上のn-GaNについては、
3の範囲においてβ
-0.3-0.6のラインにほぼ
乗った形になっている。ここで実際、補償比0からN。、nからNaを求めてみると、
Na=∂Nd
かつ
(5.10)
Na-Nd-n
これより、
β
Na
(5.ll)
=仁盲n
-113・
第5章
Ga
Nエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
となり、仮にn=8×1016cm
3、
♂ 〒o.4とすると、Naは5.3×1016cm
Si基板上のn-GaNは、キャリア濃度が7-8×1017cm
3付近ではβ
3となる。これに対し
-0.6程度である
が、低濃度側になるに従って0が高い方向にずれてしまうo例えばキャリア濃度nが3
×1017cm
3の試料中の補償比がグラフより0.9だと仮定すると、
N。が3×1018cm
n=Nd-Naより,Naが2.7×1018cm-3あることになり、ドーピングsi濃度が2×1017cm
3
であることから考えても、それ以外のドナー濃度をもたらす起源や兆候が見あたらず、
矛盾を生じてしまう。従って、このような高転位密度の材料に対しては、転位による散
乱が大きく寄与しており、このモデルで補償比を見積もるのには適さないと言える。ま
た、アクセプター濃度については別の手法で直接評価することも必要になってくる。
1 0000
一′■ヽ
の
>
i=ヨI
1 000
N
≡
O
書
○
≡
葛
=
1017
1018
carrier concentration
図
(cm-3)
5.13キャリア濃度と移動度の関係と補償比
・114・
3で
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
5.3.5
DJTS測定による深い準位の評価
図 5.11にSi基板上に成長させたn-GaN(a)、およびサファイア基板上のもの(b)
についてそれぞれ測定したDLTSスペクトルを示す。ここで使用したサンプル中のキ
ャリア濃度は、 Si基板上のものが1.8×1017cm
101.7cm
3でサファイア基板上のものが2.4×
3となっている。これらのスペクトルからSi上のサンプルでは主に2つ以上のピ
ークが、サファイア基板上では3つのサンプルが観測された。それぞれをSi上ではEl、
[24]が見いだしている、
に相当するピークは、
ら
と名付けることにする。ここでもHasse
E2、E4、E5、サファイア上ではEl、E2、E5
MOVPEによるn-GaN中の,エネルギー準位が0.67eVのE3
Si上ではブロードなピークの中でその存在が明確ではなく、サ
ファイア基板上のものでは観測されなかった.これらのエネルギー準位(Ea)、捕獲断
面積(o),トラップ濃度を表1に示す。
この結果より、この範囲で観測される深いドナー準位の濃度Ntは、両者ともに最も
多い準位のものでも1×1015cm
3以下であり、従って1×1016cm
3以上存在する全ド
ナー濃度に対して与える影響は小さいと言える。
on
Nl^l=
′■ヽ
SI
l・8X
/′\
30
■■■ヽ
l▲_
こ=
ヽ-′
-冨
25
【垂】
ト一
EIi
20
15
ヽ■.′
13
\
.旨
く/)
」=
\
10
EI
20
15
i
I
、\
E2
25
t○
l
i
30
Ll_
l■■■■■
\
t=
.望
(○
5
nE
IO17cm-3
\
′/
\
5
0
1 00
200
300
400
500
600
1 00
Temperature(K)
(a) si基板上
300
400
Temperature(K)
(b)
(a)
図5.14
200
および(b)サファイア基板上n-GaNのDLTSスペクトル
・115・
500
600
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
表5.1
(Ea:
SLS/Si上およびサファイア上のn-GaNのDLTS測定結果
activation
Nt:
energy,
trap
Detected
o[cm2]
:
capture
cross
section).
deモ
EI
Ea[eV]
o
concentration,
E2
Nt[cm-3]
Ea[eV]
E5
o[cm2]
Nt[cm13]
Ea[eV]
Nt[cm-3]
o[cm2]
onsLs(20pair)/Si
0.21
5.0×10-16
9.2×1013
o.43
1.2×10115
1.0×1014
o.93
9.4×10-15
6.4×1014
onLTBL/Sapphire
O・22
3.2×10117
1.3×1014
o.51
1.8×10-16
1.9×1014
l.02
1.3×10114
5.9×1014
5.3.6
HEMTデバイス特性の評価
これまで述べてきたGaNエビタキシヤル層中の電気的特性について、
AIGaN/GaN
HEMT構造を,Si(111)基板上およびc-サファイア基板上に作製し、その
HEMT
素子としての特性を比較した。
ち
HEMT
のエビタキシヤル層構造は、図
n-GaNの各試料での成長条件を、
5.1告に示すように、それぞれ先に述べた
HEMT構造エビの卜GaN層に適応させて、
板上、サファイア基板上にそれぞれ作製した。バッファ層構造もそれぞれn-GaN
試験と同様に成長させ、その上にundopeの卜GaNを、Si基板上の場合は1〟m、
サファイア基板上の場合は3〃mの厚みで成長させ、最上層はどちらもAl組成が
0.26、厚みが25nmのAIGaN層とした。次にHEMTデバイスのプロセスを施し、表面
のAIGaN上にTi/Al/Ni/Au製のソース、ドレイン、
Pd/Ti/Auのゲートの各電極を、
ゲート幅(wg)が15〃m、ゲート長(Lg)が2.0〃m、ソースーゲート間隔が8.0〃m、ソー
HEMT素子の各特性についての測
スーゲート周隔が3・0〃mとなるように作製した。
定は、半導体パラメーターアナライザーを用いて行った。この結果を表5.2に示す。
これによると、これらのDC特性については、
Si基板上、サファイア基板上ともほぼ
同程度の性能を示す事が確認された。これは、卜GaNの結晶性が両者の基板種類
により異なったとしても、少なくとも
HEMT構造下で形成される2次元電子ガス(2
DEG)の特性としては、ほぼ同等となっていることも示されている。このことからもSi基
・116・
Si基
の
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
板上でのGaN系電子デバイスの実用化の可能性が示されたが、さらにデバイスとし一
ての動的特性とエビ中の欠陥の種類や密度との対応について調査し、デバイス特
性を向上させる上でも結晶欠陥の挙動や適正化について調査を進める必要があ
る。
Tl/AVNi/Au
pdmIAu
Ti/AVNi/Au
Ti/AVNi/Au
PdITiIAu
Ti/AVNi/Au
Wg-15〟m
Lg=2.OIL
図5.15
表5.2
Si
m
Lsd=8.OIL
m
Lsg=3.OIL
m
HEMT特性評価用エビの構造
(111)基棒上ならびにサファイア基板上に作製したAIGaN/GaN
HEMTs構造の特性比較
2DEG
Mobility
ns
Si
on
c-sapphire
(111)
300K
ND_2DEG
Rs
(cm2/vs)
(1020cm-3)
l・3
1095
1160
l・49
l・2
1050
1・66
2・80
(1013cm-2)
on
at
・117・
(nmm)
Vth
ID
(v)
(mA/mm)
12・2
-2・5
max
gm
(mS/mm)
VB
(V)
480
188
260
528
143
300
第5章
5.4
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
第5章のまとめ
本章では、
MOVPE法によりサファイア基板、AINテンプレート,そしてSi基板上に
作製成長させたn-GaNのエビタキシヤル層の結晶欠陥と、キャリア濃度、移動度な
どの電気特性との関係を調べた。そして電子デバイスのひとつであるAIGaN/GaN
HEMT構造エビをSi基板上ならびにサファイア上に上記n-GaNと同様のバッファ層
構造を用いて作製し、デバイス特性との関連についても調査を行った。
まず、使用基板の種類に応じてその上に成長させたGaNの転位密度に応じてドー
ピング特性が異なることが確認された。これは、
位密度の高いSi基板上のn-GaNにおいては1017cm
Siをド-パント不純物とした場合、転
3以下のドーピング量では他
の基板上のGaNと比較し、大幅なネットキャリア濃度の低下が見られた。これは主に
刃状転位が関与するアクセプター準位による補償によるものと推定される。
次に、移動度のキャリア濃度依存性について、上記と同様に使用基板毎の特性を
調べたところ、サファイア基板上のn-GaNではキャリア濃度低下に伴い不純物散乱
が減少するため、移動度が増加するのに対し、転位密度が高いSi基板上のn-GaN
はキャリア濃度低下とともに移動度も低下していくことが確認された。これは、アクセ
プターとして作用する転位芯による電子の散乱が、キャリア濃度低下に伴い支配的
になってくるためと考えられ,通常の補償比を検討したモデルにも合わなくなることが
わかった。
さらに,
n-GaNでの成長条件をHEMT構造エビのi-GaNバッファ層に適応させて、
si基板上、サファイア基板上にそれぞれ作製し、両者のデバイス特性を比較したとこ
ろ、転位密度が一桁以上異なるにもかかわらず、静特性としてはほぼ同一となること
を確認した。
・118-
第5章
GaNエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
第5章
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$3,
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Jones,
M
3656
・I・
S・
D・
Jiang,
89,
Z・
112106
S・
Liu,
Zhang,
S・ M・
Y・
T・
Wang,
(2006)・
H・
D叩palapudi,
M・
Ng,
and
T・ D・
Moustakas,
(1998)・
Heggie,
P・
K・
・119・
Sitch,
M・
Haugk,
and
T・
Frauenheim,
S・
第5章
Ga
Nエビタキシヤル層の結晶欠陥と電気的特性-の影響
P・ R・
oberg,
H.
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Briddon,
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C.G.Jiao,
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field,
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Ng,
Eastman,
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Molnar,
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22
73,
821
S.
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Park,
T・ Lei,
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Chen,
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Moustakas,
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Weimann,
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Scbweizer,
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・120・
2525
V.
Harle,
(1996).
F.
Scholz,
M.
Burkard,
第6章
総
括
第6章
総 括
本研究では、
MOVPE法により成長されたGaNエビタキシヤル薄膜について,サファイア、
AINテンプレート、シリコンといった基板材料の違いや、エピタキシャル成長条件自体の違
いによって,結晶中に導入される欠陥,深いエネルギー準位のエネルギー位置や密度に
っいて評価を行った.特に、
MOVPE法によるSi基板上のGaNについてのDLTS法を用
いた深い準位の評価は、これまで実施例が無く,本研究が初めてとなる。また、結晶性以
外にもHall効果測定やデバイス特性について各種評価を行い、使用基板によってドーピ
ング効率が異なることや、転位密度や深い準位などと結晶の電気特性との関係を考察し
た。
以降、各章別に結論をまとめる。
第2章では、本研究で使用したGaN薄膜の代表的製法の一つであるMOVPE法につ
いて,その概要と使用基板毎の特徴、使用した装置の概要を記した。第3章では、本研究
におけるGaNエビタキシヤル層の各種特性評価方法として、
ど結晶性評価、
第4章では、
DLTS法、
X線回折による転位密度な
PL法等について概要を述べた。
n-GaNエビタキシヤル層中の深い準位について、基板の材料の違いによ
る欠陥形成状態の差やェピ成長中の成長温度、圧力などの成長条件による差を評価し、
それぞれの条件変化が各準位に対してどのような変化をもたらすかを調査したoここでは,
従来報告されている深い準位とほぼ同じエネルギー位置に、
El、
E2、
E4、
E5がそれぞれ
観測された。しかしながら、フィリングパルスタイムt。に対する挙動を解析すると、転位密度
と相関があり、転位線上に分布しているとする従来報告と異なる部分もあった。エビの成
長条件との相関としては,概ね結晶性を悪くする方向-成長条件を変更すると,深い準
位の密度も増加する傾向にはあった。
・121・
第6章
総
括
そして第5章で、
GaNエビタキシヤル層中の電気的特性と結晶欠陥の関係を、ドーピング
効率、移動度、転位密度との観点から調査してみたところ、
Si基板上のn-GaNは転位密
度がサファイア上のものより一桁高いためにこれらがアクセプターとしてドナーを補償する
ため, 1017cm
3以下の不純物をドーピングしてもドーピング効率が大幅に低下してしまうこ
とがわかった。加えて、この場合、移動度も大きく低下することがわかり、従来の転位密度
との相関を示したモデルとほぼ一致したoこれは、アクセプターとして作用する転位芯によ
る電子の散乱が、キャリア濃度低下に伴い支配的になってくるためと考えられ、通常の補
償比を検討したモデルにも合わなくなることも確認された。
以上、本研究の結果として、
MOVPE法により成長したGaNエビタキシヤル層について、
使用した基板材料の違いにより、ドーピング特性が異なるうえ、深い準位の種類と密度、
キャリア濃度や移動度の温度依存性が異なること、そしてエビ成長温度や圧力など成長
条件自体の違いが、いくつかの異なる深い準位の密度の差として現れることを見いだした。
今後、得られた知見が活かされ、更なる調査の上、各種デバイス特性を向上させるための
一助になることを期待したい。
・122・
辞
謝
謝 辞
本研究遂行ならびに本論文の作成にあたって、名古屋工業大学大学院工学研究科
機能工学専攻
極微デバイス機能システム研究センター長、江川孝志教授には懇切なる
御指導、ご教示を頂きました。ここに深く感謝し心よりお礼申し上げます。また,本論文を
御査読頂きました本学大学院工学研究科機能工学専攻、極微デバイス機能システム研
究センター
市村正也
神保孝志教授、ならびに本学大学院工学研究科機能工学専攻
教授には、有益なご示唆をいただき,深く感謝致します。本研究遂行にあたり、それまで
の豊富なご経験を踏まえ、エビ成長実験について様々な御助言を頂いた本学機能工学
専攻
石川博康准教授に深く感謝致します。
本研究遂行にあたり、特に英文論文作成に際してはご査読とご助言をいただきました
研究員,
名古屋工業大学極微デバイス機能システム研究センター
Dr.
S. Lawrence
selvaraj氏に深く感謝いたしますo本学大学院工学研究科機能工学専攻博士前期課程
山本幸太郎氏(平成17年度修了)、岩崎天彦氏(平成18年度修了)、寺田豊氏(平成1
9年度修了)、野村幸康氏(前期課程2年)の皆様には、
MOVPE装置での実験の際、多く
のご協力、ご支援を頂きました。また本学極微デバイス機能システム研究センター
技術
浦佐員、渡辺新氏には、特性評価用サンプル作製プロセスならびにDLTS測定について、
多大なご協力を頂きました。さらに,
PL測定については本学極微デバイス機能システム研
究センター研究員、工学博士、酒井祐輔氏に全面的にご協力を頂きました。サンプルの
各種評価測定に際しては、鈴江隆晃氏(本学大学院博士前期課程1年)、鈴木暢倫氏
(同1年)に、大変お世話になりました。そして本研究活動において様々な場面、で手助け
をして頂いた江川研究室の皆様に深く感謝致します。
本研究は、所属するDOWAエレクトロニクス株式会社より機会を与えた頂いたものであ
ります。このような研究機会を与えて頂いた、
International Corporation長尾純一社長、
長、ならびにDOWA
株式会社CTO
DOWAエレクトロニクス株式会社大塚晃社
DOWAホールディングス
杉山文利取締役には、あらためまして深くお礼申し上げます。また、本
研究遂行にあたって、
DOWAセミコンダクター秋田(樵)-
・123・
加賀谷進社長、
DOWAメタニク
謝
辞
ス(樵)木原茂文副社長、
DOWAエレクトロニクス(樵)半導体事業部
小林秀明事業部
長には、一方ならぬご理解とご指導、全面的なご支援を頂き、深く感謝いたしますoさらに、
私の現在の職場であるDOWAセミコンダクター秋田(樵)窒化物プロジェクトの皆様、
DOWAエレクトロニクス(樵)半導体事業部
窒化物担当の皆様には、日頃の業務の中で,
ご理解と数々のサポートをいただきました。加えてDOWAエレクトロニクス(樵)主幹研究
員
鳥羽隆一氏には、何度かデータに関するディスカッション、ご示唆をいただきました。
多くの皆様に対し、ここに深くお礼申し上げます。
最後になりますが、我が家族である、妻恵美、大嘩、清楓、美桜には、この間数多くの
心配、負担をかけました。その中でやはり家族の理解や励ましなど,精神的、物理的サポ
ートがあったからこそ、本研究が成し得たものと考える次第であり、あらためて心から感謝
します。そしてまた、遠くからいろいろとご心配をいただいた私の両親、義夫、光にもこの
場を借りて感謝の意を表します。
平成21年3月
・124・
論文および学会発表
論文発表
(1) "AIN仏1GaN/GaN
high-electron-mobility
metal-insulatoトSemiconductor
tr皿Sistor
on
4
in・
silicon substrate for highbreak downcharacteristics"
SelvarajThneo
S.Lawrence
Appl・
Ito, Yutaka
,
Pbys・ Lett・ 90, pp・ 173506-1-173506-3,
Tbneo
Selvaraj,
S.Lawrence
lto, Yutaka
(4)
"Trap
L_b,
M.
Phys.
Stat. Sol.
Mater・
(c) 5,
Soc・
"Comparison
Grown
Terada,and
Symp・
Proc・
template
onAIN/sapphire
2008・
on
(111) Substrates by MOWE・''
Si
Takashi
1068,
by MOVPE"
T. Egawa
pp.299813000,
in n-GaN
Ito, Yutaka
Res・
grown
Takashi Egawa
Terada,and
A. Watanabe,and
Yoshikawa,
"Electron Tr叩S
Tsuneo
(5)
in n-GaN
states
contact
2008・
Phys. Stat. Sol. (c) 5, pp.298812990,
(3)
2007
with recessed source/drain Ohmic
MIS-HEMTs
(2) "AIN/AIGaN/GaN
Thkashi Egawa
Terada,and
Egawa
CO6-09,
of electrical properties
2008・
in GaN
grown
on
Si(111)and
MOWE''
恥tmeo
lto, Ydkiyasu
J. Crys. Growth
Nomura,
S.Lawrence
310, pp. 4896-4899,
SelvaraJ
2008.
・125・
,and
Takashi
Egawa
c-sapphire
substrate by
国際学会発表
(1) "AIN/AIGaN/GaN
Selvaraj,Tbneo
S.Lawrence
The
15-18,
"Trap
瀧ImeO
2007,
Ito, M.
15-1 8, 2007,
(3) "Electron
Tsuneo
Traps
Ito, Yutaka
Materials Research
(4)
Compound
(ISCS2007),
Arata
Kyoto,
by MOVPE"
template
Takashi Egawa
Watanabe,and
Compound
Semiconductors
(ISCS2007),
Japan
Si (1ll) Substrates by MOVPE."
Grownon
Takashi Egawa
Terada,and
Society, 2008 Spring Meeting,
of electrical properties in GaN
"Comparison
Takashi Egawa
Semiconductors
0nAIN/sapphire
Symposiumon
in n-GaN
Terada,and
contact
Japan
growr1
Yoshikawa,
The 34thInlernalional
October
Ito, Yutaka
Kyoto,
in n-GaN
states
with recessed source/drain Ohmic
Symposiumon
34thInlemalional
October
(2)
MIS-HEMT§
24-28,
March
on
grown
2008, Sam Francisco, CA,
Si(111) and c-sapphire
USA
substrate by
MOWE''
恥tmeo
lto, Ydkiyasu
The
14thInlernalional
June
1-6, 2008,
Metz,
Nomhra,
S.Lawrence
conference
SelvaraJ
Metal
on
,and
Organic
Takashi
Vapor
Egawa
Phase
Epitaxy
(ICMOVPE
XIV),
France.
国内学会発表
(1) "4インチSi基板上AIGaN/GaN
HEMT構造の検討''
写006年秋季第67回応用物理学会学術講演会(立命館大学),講演予稿集29p-RD-8/ⅠⅠⅠ
寺田豊、伊藤統夫、石川博康、江川孝志
(2) "4インチSi(111)基板上AIGaN/GaN
2008年春季
HEMT構造の多層膜構造検討による厚膜化"
第55回応用物理学会関係連合講演会(日本大学)、
鈴江隆晃、寺田豊、伊藤統夫、石川博康、江川孝志
1126-
29p-D-9/Ⅲ