飛行機事故について - So-net

飛行機事故について
<レポート課題>
技術(製品)が生命または生活に及ぼす(及ぼした)影響の観点から、技術の
不完全さが生命の危機にまで及ぼした(及ぼすかもしれない)事例を挙げ、そ
の防止方法について提言(アイデア)をまとめよ。
私が挙げるテーマは「飛行機事故」についてです。なお、飛行機事故でも、
昨年のニューヨークワールドトレードセンター激突事件のようなテロやハイジ
ャックによる墜落・管制などが原因になるニアミスは除きます。
最近の飛行機事故といえば、昨年の11月13日のニューヨークでのアメリ
カン航空墜落事故が挙げられるように、飛行機事故は現在でも年に数回は世界
中で起きています。そこで、昭和41年以降の日本国内における主要な飛行機
事故について示すと以下の表のようになります。
年・月
所属
事故概要
死傷者数
昭和41年2月
全日空
東京湾に墜落
死者133名
昭和41年3月
カナダ太平洋航空
滑走路激突
死者 64名
昭和41年3月
英国太平洋航空
富士山に墜落
死者124名
昭和41年11月 全日空
伊予灘に墜落
死者 50名
昭和44年10月 全日空
オーバーラン
重傷 23名
昭和46年7月
日本エアシステム
横津岳に激突
死者 68名
昭和46年7月
全日空
戦闘機に接触
死者162名
昭和57年2月
日本航空
東京湾に墜落
死者 24名
昭和57年8月
南西航空
オーバーラン
重傷 3名
昭和58年3月
日本近距離航空
雑木林に墜落
重傷 18名
昭和60年8月
日本航空
群馬県御巣鷹山に墜落 死者520名
平成3年9月
ノースウエスト航空
エンジン火災
重傷 8名
平成5年4月
日本エアシステム
ハードランディング
重傷 3名
平成5年5月
全日空
エンジントラブル
重傷 9名
平成6年4月
中華航空
名古屋空港で墜落
死者264名
平成8年6月
ガルーダ・インドネシア航空 オーバーラン
死者 3名
( 数字で見る航空 2000 より )
この表から言えることは、全体的な飛行機事故件数は、飛行機の進化に伴い
年々減少しているものの、飛行機の大型化に伴い、事故当たりの死傷者が急増
1
しているということです。また、事故の大半は離陸3分着陸8分の「魔の11
分」と言われる時間帯に集中しており、現在でもその傾向は変わっていません。
次に、事故の原因について考えてみたいと思います。最も多い原因は昭和6
0年の日本航空機墜落事故に代表される整備不良やミスなどからによるエンジ
ンや翼のトラブルです。この場合の防止方法は厳密なチェックや頻繁な点検を
行うことが最善の対策であり、現在では多くの航空会社で実施されており、事
故件数が大幅に減少しています。その反面、機械トラブルによる事故は、10
0%なくなるとは言えないわけで、その危険性をつねに持っています。
そして、近年新たに表れてきた事故として、飛行機のハイテク化による事故
が挙げられます。この事故は、ハイテク機に搭載されたコンピューターを機長
などの乗員が十分に使い切れていないなどのことが原因で事故につながってい
ます。その代表的な例が平成6年の中華航空の墜落事故であり、この事故につ
いて詳しく書きたいと思います。
この事故は、名古屋空港への着陸の際なんらかの原因で最終進入時に着陸を
やり直そうにしたものの機械がそれに対応できずに失速して、滑走路脇に墜落
炎上した事故です。機械の部分について詳細に言えば、空港進入時に操縦士が
誤って自動操縦装置が自動着陸モードであったにもかかわらず、自動操縦装置
に反発する機首下げの操縦を行った結果、自動操縦装置は反発して急激な機首
上げ方向に動き、回復不能な失速状態となり墜落したものでありました。
すなわち、操縦士は機首下げをしたかったにもかかわらず、自動操縦装置は
その指示に反発して機首上げを行ったわけで、機械が人間に反発したと言えま
す。
この事故に対する原因は2つあります。
まず、機械の操縦が人間の操作を無効にしていることです。墜落した飛行機
はエアバス A300 型機という最新のハイテク機で、ほとんど全てが自動化され
ています。ところが、機械の操縦と人間の操縦とでは、機械の操縦が重視され
ていました。そのため、人間の操縦に機械が反発するという結果を招きました。
次の原因は、ハイテク機を操縦士が使いこなせていないという問題がありま
す。この飛行機の説明書には、自動操縦の注意事項が書かれていたにもかかわ
らず操縦士は理解しきれていないわけで、操縦士が理解できないくらい機械が
複雑化しているという問題が背景にあります。
この種の事故は同型機でも3度は発生しており、今後さらに飛行機がハイテ
ク化していくにつれて起こるのではないかと予想されています。
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それでは、このハイテク化の原因による事故に対し、どのように防止方法を
取ればよいのでしょうか?
なぜ飛行機がハイテク化されるのかといえば、それは奇しくも事故をなくす
ためであります。ハイテク機は、離陸から着陸までほとんどの操作がボタンだ
けで出来るため、経験が無い者でもハイテク機を操縦できるようになっていま
す。一方で、経験豊富な操縦士が、経験に基づいて機械と反対の操縦を行おう
としても、システムから外れる操縦になるため、ハイテク機は受け入れないよ
うに設計されています。問題点は、この機械が人間を100%支配する設計な
のではないかと思います。ハイテク化自体は操縦士の負担や事故を軽減すると
いう点で賛成です。いざという時にも人間が操縦できないというシステムは、
プログラムを外れた行動を飛行機は出来ないということを意味するので、大変
危険だと感じます。そこで、基本は機械だが、人間が変化を加えても機械はそ
れに従うようなシステムを作っておくことが重要なのではないかと感じます。
また、このハイテク化の背景で重要なのが、操縦士の機械への依存です。上
記の中華航空の事故の際、もし途中で操縦士が自動操縦のシステムを切れば、
事故は起こらなかったかもしれません。しかし、実際は自動操縦のままでした。
ここから言えることは、ハイテク機では機械は人間を完全に支配していて、人
間は完全に機械に依存しているということです。
よって事故をなくすためには、この機械と人間との両者の関係を見直すこと
が必要なのではないでしょうか?
以前のように人間中心のフライトでもなく、ハイテク機のように機械に頼り
切ったフライトでもなく、両者がある程度の緊張関係を持った相互依存の関係
を作り上げることが最もベストな状態であると思います。そのために、システ
ム的には人間が機械の操縦に介入できるようにプログラムを組みなおし、心理
的には「人間のフライトの方が正確である。」という機械に対するプライドを
操縦士には持ち合わせてもらう、またそう思わせるような設計にすることによ
り、人間と機械との問題は克服できると思います。
* 注釈
エアバス社の飛行機は、霧が多く視界の悪い欧米の空でも飛べるようにと考え
ており、完全なオートメーション化がなされています。一方で、ボーイング社
の場合は、オートメーション化されていても最終的には人間が操縦できるよう
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に設計されています。そのため全てのハイテク機が中華航空機のような仕組み
になっているというわけではありません。
参考文献
「墜落 ハイテク飛行機がなぜ落ちるのか」
加藤寛一郎著 講談社α文庫
「ハイテク機はなぜ落ちるか」遠藤浩著 講談社ブルーバックス
「数字で見る航空 2000」運輸省航空局監修
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