T-frog モータドライバ User’s Manual 渡辺 敦志 (WATANABE Atsushi) 1 rev.1 - March 9th, 2013 1 筑波大学 システム情報工学研究科 知能ロボット研究室 atusi [email protected] T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 改訂履歴 版 改訂日 改訂内容 rev.1 March 9th, 2013 作成 改訂履歴 T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 目次 目次 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 概要 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 1.1 移動ロボット制御系と T-frog モータドライバ . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 1.2 T-frog プロジェクト . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 1.3 主な仕様 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2 取り扱い上の注意 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 2.1 注意 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 2.2 推奨事項 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5 T-frog モータドライバの接続と取り付け . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 3.1 コネクタ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 3.2 電気的特性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 3.3 外形と取り付け穴 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8 YP-Spur を用いたロボット制御 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9 4.1 動作環境 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9 4.2 YP-Spur のインストール . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9 4.3 YP-Spur の動作確認 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9 YP-Spur ロボットパラメータ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11 5.1 ブラシレスモータ用のロボットパラメータ作成 . . . . . . . . . . . . . . . . 11 5.2 パラメータファイル作成例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11 T-frog モータドライバのファームウェア更新方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13 6.1 Linux 環境の場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13 6.2 Windows 環境の場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14 問い合わせ先 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16 T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 1. 1 概要 T-frog モータドライバは、主に図 1 に例を示すような独立二輪躁舵型 (差動駆動型) の移動ロボッ ト駆動・制御のために開発された、モータ駆動・制御モジュールです。移動ロボット走行制御ソフ トウェアプラットフォーム “YP-Spur” と組み合わせて使用することで、容易に移動ロボットシス テムを構築可能です。 図 1: 独立二輪躁舵型 (差動駆動型) 移動ロボットの例 1.1 移動ロボット制御系と T-frog モータドライバ 移動ロボットを駆動・制御するためには、モータドライバ、モータの制御系、ロボットの走行 制御系が必要です。T-frog モータドライバは主に、モータドライバ・モータコントローラ基板をロ ボットに備え付け、ロボットの走行制御系とユーザプログラムをラップトップ PC 上に置く構成の 移動ロボットシステム向けに開発されたモータ駆動・制御モジュールです。 本モータドライバモジュールは、近年、産業用ロボットなどで広く用いられている、ブラシレ ス DC モータ (AC サーボモータ) の駆動・制御に対応しています。また、モータの特性やロボット のダイナミクスを考慮した、フィードフォワード制御を活用することで、制御性を高めることが できます。 1.2 T-frog プロジェクト 2010 年に、筑波大学知能ロボット研究室の移動ロボット技術の移転と利用の促進のため、筑波 大学と茨城県内の中小企業などをメンバーとして、T-frog (Tsukuba Future Robot Group) プロジェ クトが発足しました。本モータドライバは、T-frog プロジェクトの一環として開発されたモジュー ルです。 T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 2 T-frog モータドライバは、ツジ電子株式会社1 と渡辺敦志2 を中心に開発しています。また、本 モータドライバモジュールには、筑波大学知能ロボット研究室3 の研究成果が用いられています。 1.3 主な仕様 T-frog モータドライバ (図 2) の主な仕様を、図 1 に示します。本モータドライバは 1 台につき、 ブラシレス DC モータまたは DC モータを 2 台駆動・制御できます。通信インタフェースは USB の CDC-ACM クラスに対応しており、Linux、Mac OS X、Windows 環境で使用可能 (Windows 環 境ではドライバが必要) です。通信プロトコルは筑波大学 知能ロボット研究室で開発している移動 ロボット走行制御ソフトウェアプラットフォーム YP-Spur4 に準拠しています。 図 2: T-frog モータドライバ (プレ製品化版) の外観 表 1: T-frog モータドライバの主な仕様 対応モータ モータ数 インタフェース 最大電源電圧 最大連続出力電流 PWM 分解能 エンコーダ入力 寸法 重量 3 相ブラシレス DC モータ (AC サーボモータ) ブラシ付き DC モータ 2台 USB2.0 (CDC-ACM) UART (CMOS レベル) RS-485 12-60V 15A(自然空冷) 20kHz で 1200 2 相インクリメンタルエンコーダ 3 相ホール素子+原点信号 100 x 60 x 30 mm 96 g 1 ツジ電子株式会社 〒 300-0013 茨城県土浦市神立町 3739、[email protected]、029-832-3031 渡辺敦志 筑波大学知能ロボット研究室 (2013 年度現在)、atusi [email protected] 3 知能ロボット研究室 〒 305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1 筑波大学 システム情報工学研究科、029-853-5155 4 Robot Platform Project 2 http://www.roboken.esys.tsukuba.ac.jp/platform/ T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 3 T-frog モータドライバと、YP-Spur を用いた移動ロボット走行制御システムの構成を、図 3 に示 します。本モータドライバは、図 3 中の点線で囲った部分に相当します。モータドライバ上のマイ クロコンピュータでは、ラップトップコンピュータから送信された制御パラメータを用いて、速 度制御の目標値に追従するように、モータの角速度を PI 制御します。PI 制御器には、車輪を駆動 したときに、独立二輪躁舵 (PWS) 型移動ロボットの動特性によって他の車輪に及ぼす影響などを 補償するためのフィードフォワード補償器 [2][3] が内蔵されています。 ȦȸǶȸ ȗȭǰȩȠ ȦȸǶȸ ȗȭǰȩȠ ȦȸǶȸ ȗȭǰȩȠ ȗȭǻǹ᧓ᡫ̮ 5RWTdzȞȳȉ (message queue) ȩᶅȗȈᶅȗdzȳȔᶇᶌǿ 5RWTdzȞȳȉᚐௌ x, y, ᡙࢼƢǂƖ ួ Сࣂԗ20 ms x, y, ឥᘍСࣂ֥ ref ,ref x, y, 5 ms ᡮࡇȷьᡮࡇȪȟȃȈ ᆆѣ˳ǭȍȞȆǣǯǹ ǪȉȡȈȪᚘም ref ,ref 295ǭȍȞȆǣǯǹ 295ᡞǭȍȞȆǣǯǹ r ref , l ref r , l ǨȳdzȸȀ ȇdzȸȀ encoded encoded r , l r ref , l ref 75$7#46 20 ms 5 ms ȇdzȸȀ ǨȳdzȸȀ r ref , l ref r , l ȢᶌǿȉȩǤȐȷdzȳȈȭᶌȩ Сࣂԗ1 ms r , l 295ȕǣȸȉȕǩȯȸȉ ᙀΝ˄Ɩ2+Сࣂ֥ r ref , l ref ઊરᙀΝ r ref , l ref ȕǣȸȉȕǩȯȸȉ ᩓ්Сࣂ 29/ဃ ᡥ̿ǫǦȳǿ ᚌࡇ౨Ј 29/̮ӭ ǤȳǯȪȡȳǿȫȑȫǹ ᬝѣׅែ ཋྸኒ Ȣȸǿ ȭȸǿȪǨȳdzȸȀ ᆆѣ˳ȀǤȊȟǯǹ 図 3: T-frog モータドライバと YP-Spur を用いた移動ロボット走行制御システムの構成 T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 2. 取り扱い上の注意 2.1 注意 4 けがや、機器の故障を防ぐために、以下の事項にご注意下さい。 電源ケーブル・コネクタは • ピン配置が正しいことを確認する ! • 正しく圧着できていることを確認する • 駆動するモータの合計容量に見合った定格容量を確保する モータ・エンコーダのケーブル・コネクタは ! • ピン配置が正しいことを確認する • モータとエンコーダの組み合わせが正しいことを確認する 本製品への電源供給は ! • モータ駆動電源には、使用する動作範囲を考慮してヒューズまたはブレーカーを 挿入する • 5V 電源には、100mA∼1A 程度のヒューズまたはブレーカーを挿入する 異常を感じたときは • 正しく動作しなくなったら、事故防止のためすぐに電源を切る ! • 基板が発熱していないことを確認する • 電流制限機能付きの電源装置から電源を供給し、動作を確認する • 異常が続くときは、開発者へ問い合わせる 動作中の製品には • 基板に直接手を触れない (人体の寄生容量や静電気による誤動作を防ぐため) • コネクタを着脱しない T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 走行制御プログラムの起動時には ! 5 • パラメータファイルが正しいことを確認する • モータで駆動する部分に手を置かない 2.2 推奨事項 製品の正常な動作のために、以下の事項を推奨致します。 通信インタフェースには • シールド付きの USB ケーブルを使用する 本製品への電源供給は • モータ駆動電源の電圧変動が、5V 電源に伝わりにくいように構成する ソフトウェアについて • T-frog モータドライバのファームウェア更新、YP-Spur のソフトウェア更新を確認 し、バグ修正などがあった際は更新する T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 6 3. T-frog モータドライバの接続と取り付け 3.1 コネクタ T-frog モータドライバ使用時には、モータドライブ用電源、コントローラ用電源、モータ、エン コーダ、USB コネクタを接続します。各コネクタの配置を図 4 に、適合するコネクタシリーズを 表 2 に示します。 RS-485 コントローラ 電源 USB エンコーダ 1 UART エンコーダ 2 89: モータ 1 89: モータ 2 モータドライブ電源 図 4: T-frog モータドライバのコネクタ配置 (プレ製品化版) 表 2: 適合コネクタシリーズ一覧 (プレ製品化版) モータドライブ電源 モータ出力 コントローラ基板電源 エンコーダ USB インタフェース RS-485 FPGA 書き込み デバッグ用シリアル 3.2 JST JST JST JST JST HRS JST VH VH XH PHD mini-B ZH DF11 ZH (2pin) (3pin) (2pin) (8pin) (3pin) (10pin) (3pin) 電気的特性 T-frog モータドライバの、各コネクタの絶対最大定格を表 3 に、電気的特性を表 4 に示します。 モータドライブ用電源およびモータのコネクタ (JST VH シリーズ) の定格連続電流は 10A ですの で、これ以上の電流が必要な場合は、ケーブルを直接半田付けするか、基板に端子台などを取り 付けて配線して下さい。 表 3: 絶対最大定格 (プレ製品化版) コントローラ基板電源 モータドライブ電源 エンコーダ入力 -0.5 ∼ +7V -0.5 ∼ +80V -0.5 ∼ +7V T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 7 表 4: 電気的特性 (プレ製品化版) コントローラ基板電源 モータドライブ電源 エンコーダ入力プルアップ エンコーダ入力 LO レベル閾値 エンコーダ入力 HI レベル閾値 コントローラ基板電流 ドライブ基板スタンバイ電流 (1 4.5 ∼ 5.5V +10 ∼ 76V 1kΩ 0.6V 2.2V typ 140mA(1 typ 20mA エンコーダなどの電流を除く、USB 通信時。 コントローラ基板のエンコーダコネクタ ピン配置を図 5 に示します。+5V ピンからは、コント ローラ基板電源電圧が供給されます。各入力ピンは 1kΩ でプルアップされています。 1: +5V 2: エンコーダA相 3: エンコーダB相 4: エンコーダI相 5: ホール素子U相 6: ホール素子V相 7: ホール素子W相 8: GND 図 5: エンコーダコネクタのピン配置 オプションとして、エンコーダ・モータのコネクタ変換基板 (図 6) も提供しており、Maxon MR エンコーダ、Maxon EC シリーズブラシレス DC モータ、HEWLETT PACKARD HEDS シリーズの エンコーダコネクタが接続できます。 HP HEDS Maxon MR Maxon EC 図 6: エンコーダ・モータコネクタ変換基板 T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 3.3 8 外形と取り付け穴 T-frog モータドライバの外形図と取り付け穴の配置を図 7 に示します。ドライバの裏面に、基板 スペーサ (10mm 高) が取り付けられており、M3.0 のネジで固定できます。 100.0 92.0 s0.5mm 4.0 4.0 50.0 s0.5mm 58.25 ࢫ࣮࣌ࢧ㸦ᇶᯈ㠃ࡼࡾ 10mm 突出㸧 M3.0 ࢥࢿࢡࢱ✺ฟ㒊(最大 10mm) Top-View 図 7: T-frog モータドライバの外形図 T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 9 4. YP-Spur を用いたロボット制御 T-frog モータドライバは、移動ロボット走行制御ソフトウェアプラットフォーム “YP-Spur” の通 信仕様に対応しています。T-frog モータドライバと YP-Spur を組み合わせて用いることで、容易 に移動ロボットの走行制御系を構築できます。 4.1 動作環境 YP-Spur は、Unix 互換のシステム (Linux、Mac OS X など)、および Windows で動作します。以 下の手順は、Linux を想定したものです。Mac OS X では、アタッチされるデバイスのパスなどが 異なります。バージョン管理ツール git、および gcc+glibc または、それらに相当する開発環境がイ ンストールされている必要があります。 Windows 環境でのインストールは、MinGW 環境で行います。基本的に Windows 環境での動作 確認は行われていません。 4.2 YP-Spur のインストール YP-Spur および、リポジトリに登録されているロボットのパラメータファイルは、以下の手順で インストールできます。 $ git clone http://www.roboken.esys.tsukuba.ac.jp/platform/repos/yp-spur .git $ cd yp-spur $ ./configure $ make $ sudo make install $ sudo ldconfig $ cd .. $ git clone http://www.roboken.esys.tsukuba.ac.jp/platform/repos/yprobot-params.git $ cd yp-robot-params $ ./configure $ sudo make install $ cd .. 4.3 YP-Spur の動作確認 動作確認には、ロボットのパラメータファイルが必要となります。新規に作成したロボットの パラメータは、5.1 章に従って作成して下さい。 YP-Spur を用いたロボットの走行制御は、ラップトップ PC 上で走行制御を行う “ypspur-coordinator” プロセスと、ユーザプログラムのプロセスを動作させることで行います。例えば、1.0x0.1 メート ルの四角形を描くように走行するサンプルプログラムを実行するには、ターミナルを 2 つ開き、そ れぞれで以下のコマンドを実行します。 YP-Spur サンプルプログラムの起動時には ! • パラメータファイルが正しいことを確認する • ロボットの正面 1.5 メートル、左右 1 メートル程度の空間を確保して実行する T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 10 $ ypspur-coordinator -p PARAMETER_FILE.param -d DEVICE_PATH $ cd yp-spur/samples/ $ ./run-test PARAMETER FILE.param は、ロボットのパラメータファイルのフルパス、もしくは/usr/local/share/yprobot-params 以下にインストールされたパラメータファイルのファイル名を指定します。DEVICE PATH は、/dev/ttyACM0 のように Linux 上にアタッチされるデバイスのフルパスを指定します。 T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 11 5. YP-Spur ロボットパラメータ T-frog モータドライバは、DC モータ・ブラシレスモータに対応しており、モータの種類などの 情報を YP-Spur のロボットパラメータファイルで指定する必要があります。詳細なパラメータ決 定方法・調整方法は移動ロボット走行制御プラットフォーム Wiki5 を参照して下さい。 5.1 ブラシレスモータ用のロボットパラメータ作成 モータ種別の指定は MOTOR PHASE 項で行い、DC モータの場合は 0 を、3 相ブラシレスモータ の場合は 3 を指定します。ブラシレスモータを使用する場合は、内部抵抗・逆起電力係数・トルク 係数は、DC モータに換算した値を指定します。 • MOTOR R: モータ内部抵抗 [Ω] モータの端子間抵抗 R から、 34 · R で与える • MOTOR VC: 逆起電力係数 [rpm/V] 定格電圧 V でのモータ無負荷最大回転数 rmax から、rmax /V で与える • MOTOR TC: トルク係数 [Nm/A] 60 で与える6 逆起電力係数 KE = rmax /V から単位を変換し、 2πK E また、ブラシレスモータが、n 極 (モータ軸を 1 回転すると逆起電力波形やホール素子波形が n 周 期現れる) 場合は、ギア比 (GEAR 項) を n 倍し、エンコーダ分解能 (COUNT REV 項) を 1/n とする 必要があります。モータ軸の慣性モーメントを指定する MOTOR M INERTIA 項 はギア比が n 倍 だった場合に換算して指定する必要があるので、モータ軸の慣性モーメント M に対して、M/n2 を与えます。 T-frog モータドライバと YP-Spur を用いて、パラメータを適切に設定すれば、フィードフォワー ド制御によりロボット走行制御の特性を向上できます。 5.2 パラメータファイル作成例 最小構成の移動ロボットは、T-frog モータドライバの他に、モータ・タイヤ・電源・ラップトッ プ PC があれば構築できます。図 8 に、T-frog モータドライバの動作テスト用に構築した簡易な移 動ロボットを示します。オリエンタルモータのブラシレス DC モータ (BX230A-15FR にパルスエ ンコーダを取り付けたバージョン) を搭載し、ダイレクトドライブでタイヤを駆動する構成となっ ています。 このときの、パラメータファイルの主要な部分を以下に示します。このモータは 3 相 5 極なの で、ギア比は 5 倍となっています。 5 Robot Platform Project Wiki http://www.roboken.esys.tsukuba.ac.jp/platform/wiki/ モータのエネルギー損失が無視できる場合、モータに注入した電力 P = E · I = KE · ω · I と、モータが発する動 力 P = τ · ω = Kτ · I · ω が釣り合うため、KE = Kτ が成り立つ (単位系に注意) 6 T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 12 図 8: オリエンタルモータのブラシレス DC モータを用いた移動ロボットの例 MOTOR_PHASE 3.00000000 # PWM_MAX 1200.00000000 # COUNT_REV 400.00000000 #[cnt/rev] VOLT 24.00000000 #[V] CYCLE 0.00100000 #[s] GEAR 5.00000000 #[in/out] MOTOR_R 0.80000000 #[ohm] MOTOR_TC 0.01527887 #[Nm/A] MOTOR_VC 600.00000000 #[rpm/V] RADIUS[0] RADIUS[1] TREAD CONTROL_CYCLE GAIN_KP GAIN_KI TORQUE_MAX TORQUE_LIMIT TORQUE_NEWTON TORQUE_VISCOS -0.05600000 0.05600000 0.39000000 0.02000000 35.00000000 45.00000000 0.40000000 0.50000000 0.00200000 0.00000000 #[m] #[m] #[m] #[s] #P gain #I gain #[Nm] #[Nm] #[Nm] #[Nm/rad/s] MAX_VEL MAX_W MAX_ACC_V MAX_ACC_W MAX_CENTRI_ACC 3.00000000 6.28000000 2.00000000 12.50000000 2.45000000 #[m/s] #[rad/s] #[m/ss] #[rad/ss] #0.25G INTEGRAL_MAX MASS MOMENT_INERTIA MOTOR_M_INERTIA TIRE_M_INERTIA 0.20000000 5.00000000 0.10000000 0.00000093 0.00300000 #[rev] #[kg] #[kgmˆ2] #[kgmˆ2] #[kgmˆ2] このハードウェアおよびパラメータを用いて、YP-Spur で走行制御を行い、動作を確認した結 果、ジョイスティックで操作しながら、0.1m/s から 5m/s 程度の速度域で、安定に走行可能なこと が確かめられました。また、ピークの電源電流 20A 程度の動作領域でも、問題なく駆動・制御が 行えることを確認しています。 T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 13 6. T-frog モータドライバのファームウェア更新方法 T-frog モータドライバのファームウェア更新は、USB インタフェースで行います。はじめに、以 下の手順に従って、FLASH ROM を消去します。 ファームウェアの更新時 • 作業中は、モータ駆動電源を供給しない • 作業を中断しない 1. T-frog モータドライバ基板上のスライドスイッチ “SW1” を、1 ピン表示側にスライド 消去 図 9: T-frog モータドライバ FLASH ROM の消去 2. コントローラ基板電源 (5V) を投入 (1 秒以内に消去が完了) 3. コントローラ基板電源を切断 4. スライドスイッチ “SW1” を、初期状態 (3 ピン表示側) にスライド 基板のバージョンと一致するコンパイル済みのファームウェアを以下の URL からダウンロードし ます。ソースコードをダウンロードしてコンパイルすることでも生成できます。 http://www.roboken.esys.tsukuba.ac.jp/platform/ 6.1 Linux 環境の場合 以下の URL から、“BSD SAM-BA” をダウンロードし、インストールします。 http://sourceforge.net/projects/bsd-samba/ T-frog モータドライバを USB インタフェースでコンピュータに接続、コントローラ基板電源 (5V) を投入し、以下のコマンドを実行します。 T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 14 $ samba -i DEVICE_PATH > flash 0x00100000 FIRMWARE.bin > nvm 4 DEVICE PATH は、/dev/ttyACM0 のように Linux 上にアタッチされるデバイスのフルパスを指定 し、FIRMWARE.bin はコンパイル済みのファームウェアのパスを指定します。 コマンドが完了したら、コントローラ基板電源を切断し、再度、投入します。 ファームウェア更新成功の確認 6.2 ! • 電源投入時に、緑の LED が短時間点灯した後、消灯することを確認する Windows 環境の場合 以下の URL から、“SAM-BA for Windows” をダウンロードし、インストールします。 http://www.atmel.com/tools/ATMELSAM-BAIN-SYSTEMPROGRAMMER.aspx T-frog モータドライバを USB インタフェースでコンピュータに接続、コントローラ基板電源 (5V) を投入し、以下の手順に従ってファームウェアを書き込みます。なお、初回接続時には、デバイス ドライバのインストールウィザードが開きますので、画面の指示に従ってデバイスドライバをイ ンストールして下さい。 1. インストールした “SAM-BA for Windows” を実行 2. “Select the connection” 欄で、T-frog モータドライバのポートを選択 3. “Select your board” 欄で、基板のバージョンに対応する型番を選択 rev.4(プレ製品化版) rev.5(製品版) at91sam7se512-ek at91sam7se256-ek 4. “Connect” を選択 図 10: “SAM-BA for Windows” 接続画面 5. “External RAM initialization failed.” の警告が現れるので、“はい (Y)” を選択 T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 15 6. “Download / Upload File” の “Send File Name” 欄で、コンパイル済みのファームウェアを開く 7. “Send File” ボタンを選択 図 11: “SAM-BA for Windows” ファームウェア書き込み画面 8. “Lock region(s)” ウインドウが現れるので “いいえ (N)” を選択 9. “Scripts” 欄で “Boot from Flash (GPNVM2)” を選択して “Execute” 作業が完了したら、コントローラ基板電源を切断し、再度、投入します。 ファームウェア更新成功の確認 ! • 電源投入時に、緑の LED が短時間点灯した後、消灯することを確認する T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 7. 問い合わせ先 ご購入方法などについて ツジ電子株式会社 〒 300-0013 茨城県土浦市神立町 3739 [email protected] 029-832-3031 ハードウェア・ソフトウェアのトラブルについて 16 渡辺敦志 〒 305-8573 茨城県つくば市天王台 1-1-1 筑波大学 システム情報工学研究科 知能ロボット研究室 (2013 年度現在) atusi [email protected] 029-853-5155 T-frog モータドライバ User’s Manual (rev.1 - March 9th, 2013) 参考文献 参考文献 [1] 飯田重喜, 油田信一, DC モータのソフトウェアサーボ系におけるフィードフォワード電流制御. 電学論 D Vol.109-D, No.4, pp.289-296, 1989. [2] S. Iida, S. Yuta, Control of Vehicle with Power Wheeled Steerings Using Feed-forward Dynamics Compensation, in Proc. of Annual Conference on the IEEE Industrial Electronics Society, pp. 2264-2269, 1991 [3] 坪内孝司, 車輪移動体の制御, in Proc. of 日本ロボット学会主催 第 43 回講習会 ロボット工学入門シリー ズ<移動技術編>『移動ロボットのやさしい解説』, pp. 58-68, 1995
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