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講演 「子宮頸がんの治療の現状とがん検診について」
子宮頸がんの治療の現状とがん検診について」
講師 広島大学病院副病院長 産科婦人科診療科長 工藤美樹 教授
1.子宮頸がんの背景
本日は,子宮頸がんはどのような病気かということとその治療について,そして,子宮頸
がんの予防ワクチンの効果と子宮頸がん検診のデータについて解説します。
現在,子宮体がんと頸がんは別々に統計をとっています。以前は2つを合わせて子宮がん
として統計を取っていました。広島県の 2005 年の統計では子宮頸がんに 466 名,子宮
体がんに 245 名の方が罹患し,120 人の方が死亡していました。
1976 年頃は,子宮がんの人が 10 人いたら,子宮頸がんが 8 人,子宮体がんが 2 人で
したが,30 年間で比率が変わり,半々くらいになりました。子宮体がんは,ホルモン依存
性に起こってくるといわれているので,
原因としては生活様式が変わり,
出産年齢が上がる,
出産しない人が増えている等の影響が考えられます。子宮頸がんの罹患率・死亡率は先進国
では減少傾向にあるが,世界的には女性のがんで第 2 位であり,日本では残念ながら最も
多い婦人科がんとなっています,日本では年間に約 11,000 人が子宮頸がんと判断され,
3,500 人くらいの方が亡くなっています。
日本における 20~39 歳の女性 10 万人当たりの女性特有に限ったがんの発症率の推移
をみると,以前は乳がんが多かったが,1990 年頃から子宮頸がんが増え,2000 年以降
の増加が著しいです。
若い人に,
「がん検診を受けてください」と言っても,なかなか受けませんが,この発症
率を理解すると,
「検診を受けます」と言われます。20~39 歳の年代では明らかに子宮頸
がんが多い。しかし,子宮頸がんの検診を受けている年齢の方は,30 歳代よりも年齢の高
い 40 歳代以上の方が多く受けています。金光がん対策課長さんのお話にもあったように,
「本当に受けなければならない年代できちんと検診を受けていただく」
という政策が重要に
なってきます。
2.子宮頸がん
①子宮頸がんの進行期分類と症状
子宮頸がんの進行期分類は,0期からⅤ段階に分類されています。上皮内だけに留まっ
ているものを上皮内癌(0期)といい,それを越えて奥に入っていくのを,まとめて浸潤
癌といいます。浸潤癌はⅠ期からⅣ期に分かれています。子宮頸がんは,正常がすぐにが
んになるのではなく,異形成と呼ばれる前がん状態(正常でもがんでもない段階)があっ
てがんになります。すなわち,正常から軽度異形成,中等度異形成,高度異形成になり,
上皮内癌になり,浸潤癌に進行していくので,前がん病変の状態でみつけなければならな
い。
進行期の0期が上皮内癌。これは,表面の上皮だけにがんがあるので,この段階で見つ
かれば,子宮全摘ではなく悪い部分をくりぬく,円錐切除術を行います。Ⅰ期になると,
妊娠する能力(妊孕性)を残すかどうかで手術方法も変わるが,大きく分けて0期だと,
子宮を全部取らなくてすむ。それ以上になると,子宮を摘出します。
ここ 20 年間では0期で早期発見できる割合が増えています。これは子宮頸がんワクチ
ンが話題になったり,子宮頸がんクーポンが始まったことで,20 歳代の方の受診が増え
てきたためと思われます。
や
早期がんと呼ばれる上皮内癌
不 器 血
液 混ざ
と,
正性
が
出
無
周 組織
異形成の間は,
がおこり,病変が子宮の
症状のことが多いです。進行してくる
りの
尿や便
に浸潤することで
血
の中に,
ったりします。
②
子宮頸がんの診断
時 実施
細胞
拡
疑
ろ 組織 査
時
範囲 組織
査
診断の方法は,子宮がん検診の
に
ルポ
大して,
コ スコ プ
具
ー
で子宮の病変部を
しても浸潤の
合がよくわからない
している
診。これで異常が見つかったら,
わしいとこ
は広い
で
を
検
を取って検
組織 査
画像
します。
したり
検
診断も
おこないます。
③
基
子宮頸がんの治療
抜
や
場
範囲
必
リ
パ節 廓清 必
後 排尿障害や リ パ節廓清 下肢浮腫
者
可
放射線 放射線 週 回 週
一般
副作用
外 照射 膣 放射線 線源
腔 照射
や
場
低下
改善
や放射線
本は,手術です。手術は,病変だけを切り
く円錐術切除
もあります。病気の進行度によっては,広い
の
患
も
要になります。
術
で子宮を摘出する
の
, ン
さんにとって,思わしくないことが起こる
また,
療法は
を
と,
5
を 5
す。あて方も
部
の中に
でみると0期
,
異形成の段階で見つかる
ます。
化学
わりに
ろ
間あてるのが
従来
療法です。
場
をいれる
内
もありま
があります。全体
してきているが,
治療の限界があり
後 放射線
放射線
化学
ろ
化学 同時併用放射線
は,手術
無
な方法がとられています。手術が
ン
がでる等,
的だが,
合も多いので,
死亡率も
療法を行います,または,手術前に
治療する
による
は見られていない。
手術
化学
ここに現れたのが
要があります。
合
能性があります。
が出る
進行した子宮頸がんでは死亡率の
子宮を全部取り除く
に
をあてていたが,
の代
療法をしてから手術をする等,い
理な高齢の方には,
療法
い
療法で
合もあります。
3 ヒトパピロ マウイ ス HPV
ヒトパピロ マウイ ス
ドイツ ハラ
ト ツア ハウゼ
疫学 調査 証
開
ノ ベ 学 医学賞 賞
ヒトパピロ マウイ ス
サブ イプ
イプ
関連
疫学 調査
ヒトパピロ
マウイ ス
肛門 外陰 膣 陰茎 咽頭 喉頭
食道 関係
関連
ヒトパピロ マウイ ス
型
型 占
メイ イプ
地域 偏
欧米 ほ
イプ
33 型
.
ー
ル
ー
・
・
ル
ー
が子宮頸がんに
癌にも
ー
ル
り
的な
ル生理
・
タ
は,子宮頸がんだけでなく,
の
ル
明されて,子宮頸がん予防ワクチンの
を受
しているということが
的な
癌,
発
されました。
がありますが,そのうち 13 のタ
で解明されています。
癌,
癌,
癌,
ー
癌,
癌,
しています。
する発がん性
めており,子宮頸がんを起こす
は,
で
は,約 130 の
日本人の子宮頸がんに
が
)と子宮頸がんについて
が子宮頸がんの原因であることを発見したのは,
ン先生です。
がされ,2008 年の
ル
(
とんどこのタ
ンのタ
ー
ル
の約 6 割を 16
と言われている。
だが,日本は 52,58,
,31
により
,18
りがあ
などもあります。
健康
ヒトパピロ マウイ ス
% 感染
結婚
な女性からの
40 歳代では 10
ー
しか
ル
していません。
%
ス 感染
に
後
型
する前
が原因と思われます。子宮頸がんの人からの 16,18
んになった 20~29 歳の 90
パ
で,性生活の
が
える
性の
問
形性
2 中等度異形成
1
で,
的に
なわち,
ー
ル
を
は
生
ル
です。
発がん性
,
に
に
し,それが
.%
には
に
する
ず . %
三
) CIN (
実際
%
ず 感
二 柱
か 0 15
1 軽度異形成 ,
。世界で
2 中等度異
に上皮内癌になる人は
ぐらいなので,ま
は,子宮がん検診で早期発見するという
%
本
は
で子宮頸
%
だが,日本では現在 40
ぐらいで,先進
が国の子宮頸がん検診の年代別受診率をみると,20~24 歳が
.%
,25~29 歳が 16 3
.%
,30~34 歳が 24 9
ます。
妊孕性のことがあるので 20
際
必
.%
,35~39 歳が 28 7
げ
代の検診受診率を上
きる前がん状態での早期発見が
4 HPV
HPV
えてもまた
するのはわ
に
先進国の子宮頸がん検診の受診率は 60~80
我
1 軽度異
ウイ
次 感染
消
して
してもがん
がんを防ぐことができます。
い,
ル
年かかるとされています。す
に子宮頸がんになる人は 45 万人の 0 15
低
に
ががんになるわけではありません。しかし,この
ー
しないようにすること。そして
国の中では特に
は
部の人が
高度異形成 になる人は 3,000 万人ぐらいで,
1,000 万人で,
56
年~10
をもっており,
ル
ル
% 自然 ウイ ス
一
CIN (
)
実際
しても 90
し,その中の
させない特
ー
ー
高度異形性と上皮内癌 の状態になる。
しても全
人が発がん性の
形成
は
してがんになるまでが
に
ど
題になっています。
ががんになるのではなくて,
です。残りの 10
ターンが変わるの
ほ ヒトパピロ マウイ
感染
員
感染
消 一過 感染
% 持続感染
)や CIN (
)や CIN3(
%未満 持続 感染
数
数
パピロ マ 感染
員
ス 終 免疫 獲得
徴
一回感染
ウイ ス
ヒトパピロ マウイ ス 感染
化
億
パピロ マ 感染
実際 CIN (
)や CIN3(
)
実際
.
染
次
すると全
ですが,30~
の検出率を見てみると,子宮頸が
に検出されています。若い世代
して子宮頸がんになることが大きな
しかし,
%
の検出率は 20 歳代では 20
となってい
温
て,
子宮を
存できる状態で治療で
要です。
開 臨床試験
ウイ スDNA 含 非感染
使用
会社
グラ ソ スミス ライ
型
メ 一
型
型
提供
回接種
抗
普通 感染
時
倍
強 免疫 得
非
待
試験 実際
打
.
経過
照群 一時感染
持続感染
CIN (
)
CIN (
)
結
打 群 一時 感染
排
持
続感染
確認
副作用
痛 持続
打
関係 不
.
ワクチンの
ワクチンは
ンは,2 つの
で,
「
ルク
発と
ル
を
があり,
「
ク
・
万有」は 16 と 18
くらいの
では
い
が
にワクチンを
70 人,半年の
ク
ン」は 16 と 18
られるので,
った
的な
に
した
されています。
をみています。対
1 軽度異形成 15 人,
は,
に対するワクチン
体が増える。
常に効果が期
って,6 4 年間
できるワクチ
に対しても効果があるワクチンを
すると半年ぐらいで
が 34 人,
果が出ました。ワクチンを
性のワクチンです。
に加えて 6 と 11
しています。ワクチンは 3
の 300
まない
では
が
2 中等度異形成 9 人の
は,あったとしても
除されて,
もないし,異形成になった人も全くないということで,明らかに効果があったことが
されました。
しかし,
があり,
みが
して日常生活ができなくなる人が 100 万人
人ぐらいに出ました。そのためワクチンとの因果
は
って1
明ですが,現在日本においては
府勧奨 辞
副作用
政
は
止 自由接種
時 応 システム 作
めて(中
ように,
され)
が起きた
段階にきています。
に対
する
を
ワクチン
を
.子宮頸がん検診
問 点
①子宮頸がんの日本の現状と
題
共通
違
分類と
HPV
進
月
接種 遅
予防ワクチンの
という
がおこなってきた,
とめたものを「子宮頸がん
に
度
老 保健
人
平
引 下げ
動
き
地域保健医
集団 結
た
られた
成 21 年で
な人は(
されたり,
成 21 年に
があります。受診
成 16 年で
)少ないので,
がん・異形成発見率の変
果をま
クーポンが始まりました。この
が多かった
的に要
受診
としては,
成 16 年には検
61 年は,43,000
度です。
に増えており,クーポンは
受診
検診の
一般財源化
平
無料
者
昭和
程
象 引 下げ 平
一時 精 者
平
急激
非 意味
初回 者
初回 者 や 必
化
老 保健事業
導
象
引 下げ
き
療推
しました。1,256,000 人の方が検診
平
られ,
策により受診率に変
年齢が
分類に変
します。現在の
成 10 年に
人が受診しましたが,現在は 13,000 人
対
ー
れていることです。
を
」で
分類が全
検になって,がんの人が 1,200 人発見され,異形成の方
法で始まり,
年齢が 20 歳に
ように,
タン
成 24 年までの 46 年間の
理
が 1,900 人いました。
象
施
が
った
42 年~
を受け,9,400 人の方が要
診の対
診の判
態
の広島
がん検診は
細胞 定
ス ダ ド
いこと。また,日本の
実 報告
医学 雑誌 載 論文 紹介
昭和
平
精 管 委員会 協議
精
子宮頸がん検診の
年の 8
た
要がなくなる」と言われていました。
っていたという課題があったが,
日本も世界の
わりました。そして,
今
機構
来
低
現状としては子宮頸がん検診の受診率が
②
するような
しなければならないと考えています。
5
世界的
い
できる
でした。このワクチンが出
必
は産婦人科では「子宮がんの手術をする
が
番目
されたのも全世界で 109
時 今後
接種 ぜひ再開
で
るようにして,
承認
日本でこのワクチンが
は,
公費 接種 勧奨
近 将来再開
になっています。それを
検
常に
を増
人
導
が増え,
クーポンが
入され
新
があることがわかります。
す
た
要があります。
サイトブラシ
で受診率が増えて,
の
入で異形成の発見率が増えたことがよかった。
また,対
年齢が20歳に
き
られたので前がん状態での異形成発見率が増え,ク
処 プレ
ーポンを発行すると受診率も増え,異形性発見率も増えました。また,検体の
パラ ト
級
ー
液
精
でなく,
年齢階
処
状検体
別の要
精
理法にすると要
検率が増えました。
9 下
検率(24 年度データ)をみると,2
歳以
異形成発見率も高い。若い年齢の人に検診を受けてもらいたい。
回数
また,受診
ず
い
初
初回 者
とがん発見率で,
れの年代においても
受診
数回
めて検診を受けた人と
理を
精
での要
検率が高く,
較
受けた人を比
すると,
にがんの発見率が高い。また,30~39 歳の人の中
に子宮頸がん発見されることが多いことがわかります。
③精密 査結
平
精密 査
件
件ず
%
検
果
精 査
精密 査
外
%
成 24 年度は 13,432 人が検診を受けて要
人が
検
確認
したことが
できています。
件
,子宮頸がんが2
たのが1
つ見つかった。異形性の中は 60
,子宮頸がん以
ー
とは
%
に
検
の
検
明
上皮のことですが,
しているかどうかを検
が出た人が
人が,
ー
性で12人が
異形成が
するか,または,
か
に
検
の検
⑤細胞
パピロ
施
細胞
場
月後
の検
している。
は
ー
にもう
ます。これが
の検
受けた2
受けた
性の1
人いて,その
6
人のうちの1
人の中から軽度
が
性だったら,異形成は出てこなかった。
による子宮頸がん検診
度が高いので,
年
診率が 1 5
が
ー
方あるとか,
診が
本当に
は 3 年間
100
れが
が
性,
県が
になります。
性の
性で,
性ならば
年から
合の対
ー
ですが,
だけが
性の
明が出ると,12か
検
方
性
は,1
に受け
をします。
検診を始めてすぐに上皮内がんの発見率が上
2以上の発見率が増えて,浸潤がんが減少しています。若年
に増えています。
0
する検診を 2007 年から島
に検診を受ければよい。
度受ける。
しています。
つを
度は
検診で,それ
県のデータでは,
200
経過
陰
の検
56
8
6
を受けた人が
があることが分かります。
検
合(9 割の人)は,
費用
ー
ー
ー
検診をすると,
診と
成
検
を受けた。
性でした。
この
をする
ー
ー
昇
に,
を行うというこ
パピロ マ 査併用
マ 査 感
二 併用
根 実
併用
感 ほぼ %
パピロ マ併用
ぞ 陽 陰 場 応
両 陰
3 後
パピロ マ 陽 時
一
パピロ マ 陰 意義不
月後
両
細胞 陽
精密 査
7 併用
CIN
者
. 倍
9
3 一回
市町 助
3 %削
3 回 良
裏付
パピロ マ 陰
経過 CIN
.%
パピロ マ 陽
% CIN
パピロ マ陰 細胞
3 一回
診と
根
の検
であったが
ー
島
人いて,
ー
人と,中等度異形成が1人見つかっています。
だが,
2か
移し
が中等度異形性
が出たら,
ASC-US
67
実際 精密 査
8 パピロ マ 査
パピロ マ 査
陽
陰
パピロ マ 査 陽
7
ASC-US
パピロ マ 陰
パピロ マ 査 意義
の
転
がんが
ASC-US
パピロ マウ
6 月後 再 査
とになっています。
人が
肺
のがん,子宮体がんと
が軽度異形性で,19
,上皮内
が高度異形性でした。
の
うち2
件
をしたら,異形成が 66
④ASC-US パピロ マ 査後 精密 査
ASC-US 意義不 扁平
イ ス 感染
査
ル
が 170 人いて,そのうちの 136
検
がんが 13
で,13
検
割の人が
年に
の検診でいいので,
の受
の検診
減されています。
年に1
で
して,
間
して 16
診も
性ならば
が
年に
いのかということには
2に 0 2
けがあります。
がなっただけで,
ー
ー
が
2以上になっています。これにより,
のがん検診でよいということになります。
が
性の人
性の人は,3 年
ー
性で,