Vol.73 Supplement II(4.57 MB)

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昭和30年4月23日第三種郵便物認可 平成21年 4 月20日発行(毎月一回20日発行)第73巻 増刊
Circulation
Journal
Official Journal of the Japanese Circulation Society
Circ J
ISSN-1346-9843
Vol.73 Supplement II
第 116 回 日 本 循 環 器 学 会 北 陸 地 方 会
2008 年 7 月 6 日 金沢大学
会長:山 岸 正 和(金沢大学医薬保健学域臓器機能制御学・循環器内科)
1) Cypher stentの再狭窄発症様式とフォローア
ップ心カテの意義
(富山赤十字病院循環器内科) 山口由明・
山本隆介・勝田省嗣・賀来文治・田口富雄・
新田 裕
【目的】我が国において,DES再狭窄の臨床的発
症様式の特徴を明らかにすること【方法】対象は
2004年8月から2006年6月までに当院でDESを
用いてPCIを行った264例のうち,冠動脈造影に
て再狭窄の有無を評価しえた232例.再狭窄の臨
床的発症様式を無症状(フォローアップ心カテで
発見),安定狭心症,急性冠症候群に分類した.【結
果】14例(6.0%)に再狭窄を認めた.その内訳
は,無症状が10例(4.3%),安定狭心症が2例(0.9
%),急性冠症候群が2例(0.9%)であった.【結
語】ステント留置後のフォローアップ心カテが一
般的に行われている本邦においては,DESの再狭
窄により急性冠症候群を発症することは低頻度で
あった.また再狭窄の約7割が無症状でフォロー
アップ心カテにて発見されており,再狭窄の少な
いDESといえどもフォローアップ心カテは重要
であると考えられた.
2) 当院におけるSES留置3年間の治療成績
(石川県立中央病院循環器内科) 井上 勝・
松原隆夫・安田敏彦・三輪健二・蒲生忠継・
金谷法忍
【背景】欧米でのSES留置5年間のMACE発生率
は25.8%,TLR 10.3%と報告されている.しかし
ながら本邦におけるSESの長期成績については不
明である.
【目的】当院におけるSES留置3年間
の治療成績を検討すること.【対象】2004年6月
から12月までにSESを留置された67名(男性51名,
平均年齢67±10歳),75病変.【結果】平均追跡期
間は34±10ヶ月であった.MACEは15名に生じ
た.MACEの内訳は死亡6名,TLR 9名,CABG
3名であった.ステント血栓症は認めなかった.
透析患者は3名は,いずれも死亡していた.【結
論】当院におけるSES留置3年間のMACE発生
率は22.4%,TLR 13.4%であった.特に透析患者
のSES留置後の予後は不良であることが示唆され
た.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
3) 当院におけるステント選択の現況について
(石川県立中央病院循環器内科) 蒲生忠継・
松原隆夫・安田敏彦・三輪健二・井上 勝・
金谷法忍
近年,本邦でもDESの臨床使用が認可され,そ
の再狭窄率の低さから,BMSに取り代わる勢い
でシェアを伸ばしている.当院でも,DESがス
テント治療の7割以上を占めていたが,最近,ス
テントの選択基準を見直している.特にACSで
は,2006年度でDESの使用が70%を占めていたこ
とに対し,2007年度では48%に著減し,逆にBMS
が12%から46%に増加した.ほぼ全例でIVUSガイ
ド下のステント選択を行っているが,3.0mm径以
下のステントでは68%がDESであり,3.5mm径以
上のDES選択は33%と少なかった.今後は闇雲に
DESを留置するのではなく,病変形態,抗血小板
薬長期服用の認容性や症例背景を十分考慮したス
テント選択や遅発性血栓症の機序解明などが臨床
的に重要な点と考えられた.
5) 2mm径の小血管に薬剤溶出性ステント
(DES)
は留置可能か? −SESおよびPESの小血管留置
に関する実験的研究−
(金沢循環器病院循環器科) 堀田祐紀・
玉 直人・福岡良太・寺井英伸・土谷武嗣・
池田正寿・名村正伸
【背景】長い病変のDES留置では,末梢血管径が
2mmの小血管でDES留置をためらう症例がある.
血管径2mmの豚冠動脈を用いて,SESおよびPES
留置試験から,DES留置の安全性を検討した.
【対
象および方法】Angio.およびIVUSにて血管径2.0
~2.2mmと評価された8箇所の豚の冠動脈に2.5
mm径のSES,PESを留置.最小留置圧で拡張後,
留置バルーンで8,10,12,14気圧の拡張を行い,
拡張圧後のQCA・IVUSを計測.
【結果】SES/PES
の最小拡張留置圧は,5.6/6.4(P<0.01)で,その
際のQCAの血管径は2.17/2.33,IVUSでは1.87/2.21
で有意にSESで低値.IVUS所見は,すべての拡
張圧でSESの血管径と面積はPESに比し有意に小
さくなった.14気圧でのSES/PESの血管面積は
4.50/5.69で,PESで4病変中3病変で末梢解離ま
たは急性閉塞を合併した.【結果】SESはPESよ
り低い拡張圧で留置可能で,最小拡張内径(SES/
PES) は1.9/2.2mmで,SESは 2mm極 小 血 管 に
安全に留置可能と判断された.
4) 当院におけるPaclitaxel溶出ステントの初期
成績
(福井循環器病院循環器科) 三沢克史・
大里和雄・村上達明・守内郁夫・嶋田佳文・
小門宏全・福岡良友・高畠 周・水野清雄
6) 冠動脈インターベンションにおけるクロピド
グレルとチクロピジンの血小板凝集機能の比較検討
(富山県立中央病院循環器内科) 杉田光洋・
永田義毅・花岡里衣・谷口陽子・北野鉄平・
紺谷浩一郎・丸山美知郎・安間圭一・臼田和生
【目的】当院におけるPaclitaxel溶出ステントの初
期成績の検討【方法】2007年5月から12月まで
に使用したPaclitaxel溶出ステント(P群)の成
功率,病変背景,拡張前後の冠動脈径について
Sirolimus溶出ステント(S群)と比較した.【成績】
P群ではS群と比較して症例が若年であり,急性
心筋梗塞(合併病変に対する使用)や不安定狭心
症などの急性冠症候群への使用が多く,高血圧を
背景とした症例が多かった.ステントの通過成功
率および合併症の発生率は差がなかった.病変に
ついては有意差はなかったがP群で対象血管径が
が大きく,病変長および使用ステント長が短めで
あった.ステント留置後の冠動脈径はP群でで有
意に大きかった.
【結論】Paclitxel溶出ステント
は発売時にすでにSirolimus溶出ステントの使用
経験があたっため,急性冠症候群にも積極的に使
用され,対象血管径が大きく短い病変にも選択さ
れていた.
【目的】クロピドグレル75mg+アスピリン100mg
併 用 療 法 と チ ク ロ ピ ジ ン200mg+ ア ス ピ リ ン
100mg併用療法における血小板凝集機能を比較検
討した【対象】PCIを施行した虚血性心疾患18例
(C群:クロピドグレル+アスピリン併用8例,T
群:チクロピジン+アスピリン併用10例)【方法】
血小板凝集機能検査(ADP凝集)を測定して得
られたG-type・PATIを両群間で比較検討した【結
果】G-typeはC群-1.25±0.71,T群-1.20±0.92,
PATIはC群3.78±0.61,T群3.25±1.06と有意差は
認めなかったがC群において血小板凝集抑制作用
が強い傾向がみられた.T群においてIABP刺入
部の血腫を合併した【まとめ】クロピドグレルは
やや強い血小板凝集抑制作用を示したが,PCI術
後合併症は増加しなかった.
金沢大学(2008 年 7 月) 889
7) PCIに伴うLMT損傷症例の検討
(福井循環器病院循環器科) 高畠 周・
大里和雄・村上達明・守内郁夫・嶋田佳文・
三沢克史・小門宏全・福岡良友・水野清雄
PCIに伴う合併症としてLMT損傷は大きなダメー
ジを与えることとなる.今回我々は当院における
PCIに伴うLMT損傷症例の検討をしたので報告す
る.
10) 当科における心カテ,PCI時の被曝線量の
検討 −single planeとbi-planeでの検討−
(金沢大学循環器内科) 内山勝晴・
井野秀一・藤野 陽・川尻剛照・林 研至・
坂田憲治・舛田英一・高田睦子・舟田 晃・
坪川俊成・坂元裕一郎・土田真之・村本明彦・
多田隼人
(金沢大附属病院放射線部) 山岸正和・
飯田泰治
【目的】IVR治療において,被曝線量管理は重要で
ある.
【方法】当院の血管撮像装置を用いて,single
planeとbi-planeでの被曝線量を検討した.撮像装
置はAXIOM ARTIS dBCを使用し2006年10月から
1年間のべCAG 132例,PCI 108例を対象とした.
【結果】総被曝線量の比較では,
(以下single plane
でのCAG線量をR-CAG
(S)の様に略す)
R-CAG
(S)
1.08Gy,R-CAG
(B)1.37Gyであり,またR-PCI
(S)
2.61Gy,R-PCI(B)3.05Gyと,ともに有意差は認
めなかった.一方,撮影画像数はCAG
(S)/CAG
(B)
は12.5/19.2回,PCI(S)/PCI
(B)は29.5/41.1回でと
もにbi-planeで有意に多かった.【結論】bi-plane
では撮影画像数が多くても総被曝線量はsingleと
同等であり,工夫により被曝線量を抑えられる可
能性がある.
8) ダウンサイジング 3Frカテーテルによる心
臓カテーテル検査
(金沢循環器病院循環器科) 寺井英伸・
名村正伸・堀田祐紀・池田正寿・土谷武嗣・
福岡良太・玉 直人
11) VH-IVUSにて評価した粥腫性状と酸化LDL
との関連性に関する検討
(石川県立中央病院循環器内科) 三輪健二・
松原隆夫・安田敏彦・井上 勝・蒲生忠継・
金谷法忍
【目的】心臓カテーテル検査における3Frと4Frの
診断カテーテルサイズによる違いを比較検討する
こと.
【方法】2008年1月より2008年4月までに
当院で心臓カテーテル検査を予定した78例を対
象に3Frと4Frの2群に分け,手技時間や被曝量,
造影性等に関して検討した.【結果】3Frと4Frで
の比較で,手技時間は3Frで長かった(16.7±3.8
vs. 14.5±3.8min,p<0.05). 一 方 使 用 造 影 剤 量
は3Frでより少量であった(80.9±24.9 vs. 96.7±
25.1cc,p<0.01).被曝時間,被曝線量には差を
認めなかった.造影性能は3Frでやや劣るものの
全例で診断可能であった.【総括】心臓カテーテ
ル検査において3Fr診断カテーテルは使用可能で
あると考えれらた.
【背景】酸化LDL濃度は,急性冠症候群(ACS)
の責任冠動脈で上昇することが報告されている
が,酸化LDL濃度と責任プラーク性状との関連に
ついては十分に検討されていない.【目的】全身
および責任冠動脈における酸化LDL濃度とIVUSVHにより評価したACSの責任プラーク性状との
関連について検討すること.【方法】対象はACS
患 者25症 例. 酸 化LDLの 測 定 はHPLCに よ り 分
離 さ れ たLDL-3分 画 を 用 い た.【 結 果 】 全 身 の
LDL-3はいずれのVHプラーク組成とも関連が認
められなかったが,責任冠動脈におけるLDL-3の
比率と責任病変のfibro-fattyの比率に有意な正相
関が認められた.責任冠動脈でLDL-3濃度が上昇
する群(15症例)では有意にremodeling indexが
大きくfibro-fattyの絶対量が多かった.また表在
性のnecrotic coreも有意に多く認められた.
9) ダウンサイジング 5Frガイディングカテー
テルによるPCI
(金沢循環器病院循環器科) 寺井英伸・
名村正伸・堀田祐紀・池田正寿・土谷武嗣・
福岡良太・玉 直人
12) 留置10年後ステント内閉塞による急性心筋
梗塞を発症した糖尿病合併例における血管内超音
波所見の経年変化
(小松市民病院内科) 東方利徳・金田朋也・
加藤大雅・上田幸生
【背景】近年ディバイスのダウンサイジングによ
る,低侵襲のPCIが注目されている.【目的と方
法】当院にて5Frガイディングカテーテル(以下
5Fr GC)でPCIを施行した連続75例を対象にその
初期治療成績を検討すること.【結果】病変に対
する初期手技成功率は100%であった.ただし7
例(9.3%)でPCI中5Frから6Frのガイディング
に変更を要したため5Frのみでの初期手技成功率
は90.7%であった.変更の理由はCTOのPCIでの
バックアップ不良等のためであった.またPCIに
伴う合併症は3例(4.0%)で認め,うち2例は
deep engage後のガイディングカテーテルによる
冠動脈解離であった.【総括】今後5FrGCの特性
を見極め,更なる長所,短所を検討する必要があ
る.
症例は65才男性.2型糖尿病,高脂血症を基礎に
55才時狭心症を発症し冠動脈造影(CAG)施行.
前下行枝(LAD)近位部に高度狭窄を認め,血
管内超音波(IVUS)ガイド下に径3.5mmのベア
メタルステントが留置された.6年後までステン
トの良好な開存が確認されていたが,血糖コント
ール不良が続いていた.無症状で経過中の65才時
急性心筋梗塞を発症,緊急CAG上LADステント
内が完全閉塞を来していた.IVUS所見では,ス
テント内から連続するびまん性増殖性変化と内腔
狭小化,近位部対照箇所では外弾性板断面積およ
び内腔断面積がステント留置前と比較し減少して
いた.糖尿病合併冠動脈疾患のびまん性病変進展
における血管構造の変化を,同一個体で観察し得
た貴重な症例経験と考え報告する.
890 第 116 回北陸地方会
13) Cypher stent留置後にLate Catch upを認め
た一症例
(富山赤十字病院循環器内科) 山本隆介・
山口由明・勝田省嗣・賀来文治・田口富雄・
新田 裕
【症例】71歳,男性【現病歴】2006年6月7日の
心カテでは3枝病変であり,6月から7月にか
けてstaged-PCIを行い3枝全てを拡張した(全部
でCypher stentを 7 ヶ,BMSを 1 ヶ 留 置 し た ).
2007年2月(ステント留置約8ヶ月後)にフォロ
ーアップ心カテを行ったが,いずれの病変も再狭
窄を認めなかった.2008年3月(ステント留置約
1年9ヶ月後),再度心カテを施行したところ,
右冠動脈のCypher stent留置部位(8ヶ月後のフ
ォローアップ心カテでは0%であった部位)に
90%再狭窄を認めた.IVUSではstent fractureや
recoilはなく,stent内に多量の内膜増殖を認めた.
そこで,同部にPOBAを行い再拡張に成功した.
【考察】Cypher stentでは「late catch up」の報告
はまれであり,文献的考察を加えて報告する.
14) Taxus stentにstent fractureを生じた一例
(富山赤十字病院循環器内科) 山本隆介・
山口由明・勝田省嗣・賀来文治・田口富雄・
新田 裕
【症例】73歳,男性.【現病歴】狭心症にて右冠
動 脈seg.1 にTaxus 3.5×24,seg.2 にTaxus 3.5×
20mmを留置.3ヶ月後から労作時胸痛を認め
CAG施 行.Seg.1のTaxus遠 位 端 とseg.2のTaxus
中央部に再狭窄を認めた.Seg.2のTaxus再狭窄部
で,stent strutが断裂しているのをCAGとIVUS
で確認し,ベアメタルステントを留置した.【考
察】stent fractureはCypher留置例で多く報告さ
れている.原因として,冠動脈の運動など血管側
因子と,ステントの構造などステント側因子があ
る.本例の右冠動脈seg.2は,心拍動に伴うhinge
motionを認め,運動の中心部でstent fractuteを
生じていた.【結語】Taxus stentにstent fracture
を生じた一例を経験したので報告した.
15) 左主幹部狭窄にスパスム合併が疑われ,PCI
を施行した1例
(高岡市民病院循環器内科) 平瀬裕章・
中島啓介・原城達夫
【症例】46才の男性.【主訴】徐々に増悪する早朝
安静時の胸部絞扼感.【既往歴,嗜好歴】脂質異
常症,2型糖尿病,喫煙.【臨床経過】心臓カテ
ーテル検査では,右心内圧の軽度上昇,左室の軽
度収縮障害を認めた.冠動脈造影では,左主幹部
(LMT)で完全閉塞であり,ISDNの冠動脈内投
与を繰り返し,再開通を得た.LMTのスパスム
が疑われ,スパスム解除後は75%の器質狭窄を認
めた.大動脈内バルーンパンピング(IABP)を
挿入し,カルシウム拮抗薬,Nicorandilなどの投
与を行い,5日後にIABP挿入下でLMTへのPCI
を施行した.IVUSでは,LMTに偏心性の大量の
プラークを認め,最大50psiにてDCAを行い,ベ
アメタルステントを留置した.その後,胸部症状
は消失し経過良好である.【まとめ】LMT病変に
スパスムの合併が疑われた患者に対してPCIを施
行したので報告した.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
16) コイル塞栓術を試行した冠動脈肺動脈瘻の
2例
(富山大学第二内科) 傍島光男・亀山智樹・
大堀高志・鈴木崇之・福田信之・坂本 有・
藤井 望・能澤 孝・井上 博
(同放射線科) 蔭山昌成・瀬戸 光
【症例1】70歳男性,56歳時に下壁梗塞を疑われ
冠動脈造影が施行された.正常冠動脈であったが
冠動脈肺動脈瘻を指摘された.今回心雑音精査の
ため入院となり,冠動脈造影で左右冠動脈近位部
から肺動脈への冠動脈肺動脈瘻を認めた.運動負
荷Tlシンチで左前下行枝領域に再分布を認めコイ
ル塞栓術を施行し,再分布所見は改善した.【症
例2】60歳女性,強い胸部圧迫感で入院となった.
正常冠動脈であったが左冠動脈肺動脈瘻を認め
た.運動負荷Tlシンチで左前下行枝領域に再分布
を認め,冠血流予備能(CFR)は1.5と低下して
いた.コイル塞栓術を施行し,CFRは3.0と改善
を認めた.冠動脈肺動脈瘻ではsteal減少により
冠血流予備能が減少し心筋虚血を生じることがあ
る.このような例にはコイル塞栓術が有用である.
17) 冠動脈-肺動脈瘻に瘤形成を認めた一例
(福井厚生病院循環器センター) 菅原由夏・
加藤浩司・熊本輝彦
症例は70歳代の女性.30年前から高血圧のため,
近医で降圧剤の内服治療を受けていた.1年前よ
り労作時呼吸困難,動悸,胸部不快を自覚.血液
検査では,血算,一般生化学とも正常であった.
精査目的に入院となり,翌日に施行した冠動脈造
影で,左右冠動脈とも有意狭窄は認めなかったが,
左冠動脈肺動脈瘻に伴い瘤を2ヶ(直径10.1mm
と7.1mm),右冠動脈肺動脈瘻を認めた.また,
coronary CTでも同様の所見を認めた.これらに
よるcoronary steal phenomenonが胸部症状の原
因と診断した.冠動脈-肺動脈瘻に瘤形成を認め
た稀な症例を経験したので報告する.
18) 薬剤溶出性ステント留置後に冠動脈穿孔を
きたし,血管内コイルにより止血した症例
(金沢大学循環器内科) 土田真之・
坂田憲治・内山勝晴・高田睦子・川尻剛照・
藤野 陽・岡島正樹・高村雅之・井野秀一・
山岸正和
冠動脈形成術において,種々の原因による血管穿
孔は今なお留意すべき合併症である.【症例】71
歳男性.高血圧,高脂血症にて近医通院中.2007
年9月の冠動脈造影検査にて左冠動脈主幹部に25
%,左前下行枝#6. 50%,左回旋枝#11. 90%狭
窄を認めた.左回旋枝および左主幹部から左前下
行枝にそれぞれ薬剤溶出性ステントを留置した際
に左回旋枝#14.の側枝穿孔による出血を認めた.
終了時の冠動脈造影で一旦止血を確認した.しか
し,約30分後に胸部圧迫感出現.冠動脈造影にて
回旋枝#14.側枝からの再出血を認めた.バルー
ンを用いて回旋枝中枢側を30分間閉塞したが,止
血は困難であったため,コイル塞栓術を施行し,
止血し得た.血管穿孔においては,一旦止血して
も,再出血に留意する必要がある.かかる際には,
コイルを用いての止血も考慮されよう.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
19) Primary PCI中に血栓形成を認めた再生不
良性貧血の一例
(厚生連高岡病院循環器内科) 渡辺和英・
打越 学・藤田崇志・木山 優・藤本 学・
桶家一恭・山本正和
症例は69歳男性.再生不良性貧血,慢性腎不全,
糖尿病のため治療中に胸痛が出現し,平成19年10
月5日ACSを疑い入院した.入院時症状は消失し
ており,血小板1.6万/μl,Creat 2.4mg/dlであっ
たため姑息的に経過をみたが,10月6日胸部症状
とともにST変化が出現し,緊急心臓カテーテル
検査を実施した.CAG上#1,2:90%,#6:50%,
#13:90%狭窄を認め,心電図・心エコーの所見
などから責任病変はLCXと考え,Primary PCIを
施行した.PCI終了時#6-7に血栓像が出現した
が,症状なく心電図変化も増悪していないためア
スピリン内服とへパリン点滴で経過をみた.その
後発作なく,腎機能の悪化もなかった.本例は
再生不良性貧血の経過中にAMIを合併した稀な
症例であり,血小板の高度の減少にもかかわらず
PCI中血栓形成を認めたことから血小板減少症例
に対するPCIを考慮する上で示唆に富む症例と考
え,報告した.
20) 高カリウム血症を伴う慢性腎不全患者に冠
動脈インターベンションを施行した1例
(富山県立中央病院循環器内科) 丸山裕之・
永田義毅・杉田光洋・花岡里衣・谷口陽子・
北野鉄平・紺谷浩一郎・安間圭一・
丸山美知郎・臼田和生
22) 急性心筋梗塞発症時に非責任冠動脈に血栓
性の有意狭窄が出現しプラーク破綻像を認めた1例
(小松市民病院内科) 金田朋也・東方利徳・
加藤大雅・上田幸生
症例は64歳女性.胸痛で当院を受診し,急性心筋
梗塞が疑われ緊急冠動脈造影を施行した.左回旋
枝seg11で完全閉塞を認め,血栓吸引を施行し再
灌流がえられ90%の狭窄病変を認めたため,BMS
を留置し良好な拡張がえられた.しかし治療中に,
左主幹部遠位部に造影透亮像が出現し血栓吸引に
より消失した.同部位にIVUSでプラーク破綻像
を疑わせる2腔構造を認めた.その後左前下行
枝起始部にも造影上有意狭窄が急速に出現した.
IVUSを施行したところ左前下行枝近位部から左
主幹部に連続するプラーク破綻像と血栓の付着を
認めた.血栓性閉塞の恐れがあったため,左前下
行枝から左主幹部にかけてBMSを留置し良好な
拡張がえられ終了した.急性心筋梗塞の発症時に
非責任冠動脈に血栓性の有意狭窄が出現しプラー
ク破綻像を認めた興味深い症例を経験したので報
告する.
23) 約20分の心肺停止後,救急隊員による心肺
蘇生により救命され社会復帰し得た急性心筋梗塞
の1例
(金沢医科大学病院循環器内科) 青木洋文・
河合康幸・北山道彦・津川博一・浅地孝能・
上西博章・赤尾浩慶・藤岡 央・佐藤良子・
絈野健一・野村祐介・本山敦士・若狭 稔・
斉藤竜平・藤林幸輔・梶波康二
【症例】64歳,男性.糖尿病,慢性腎臓病,右尿
管癌術後状態.閉塞性動脈硬化症に対してバイパ
ス手術を予定するため,冠動脈造影検査を行うこ
とになった.Cr 5.1mg/dl,K 6.7mEq/Lと高カリ
ウム血症を伴う慢性腎臓病を認めた.造影剤腎症
予防プロトコール(検査前日よりハーフサリン補
液,造影検査直前よりメイロン補液と持続血液濾
過)に加えて,検査前に血液透析を行った.検査
では造影剤67mlを使用した.検査後のCrのピー
クは6.4mg/dlであった.3週間後,左前下行枝に
対して冠動脈ステント植え込みを行った.造影
剤腎症予防プロトコールを行い,造影剤は34ml
使用した.Crは4.1から4.7mg/dlまで増加したが,
血液透析導入は回避できた.【結語】高カリウム
血症を伴う末期慢性腎不全患者に,造影剤腎症予
防プロトコールと血液透析を行うことにより,造
影剤使用後の血液透析導入回避に成功した.
【 症 例 】51歳 女 性【 既 往 歴 】 右 乳 癌 術 後(T3N0M0
stage3a 抗癌剤内服中)
【現病歴】2008年2月11日
10:20頃,首から背中への疼痛を訴えた後意識を消失.
意識消失より救急隊到着までの約20分間by-stander
CPRは無く,救急隊到着時には心肺停止であった.直
ちに気管挿管が施行され,VFを確認後AEDで2回除
細動.10:47心拍再開し当院来院時には自発呼吸,対
光反射を認めた.心電図上V3から6でのST上昇を認
めた為,
緊急冠動脈造影施行.LAD#8完全閉塞を認め,
血栓吸引と低圧のバルーン拡張を繰り返し,TIMI3の
血流を得た.第2病日より意識レベルが改善.第3病
日に抜管した.しかしなが構音障害,左上下肢の脱力
をみとめ,頭部CTにて右MCA領域の広範囲な梗塞病
変を認めた.保存的加療を行い,第17病日からはリハ
ビリテーション開始した.左上下肢の麻痺と構音障害
は残ったが,食事,入浴,歩行等は問題なく,第45病
日に独歩退院となった.
21) 多枝同時閉塞によるAMIの1例
(石川県立中央病院循環器内科) 原 怜史・
松原隆夫・安田敏彦・三輪健二・井上 勝・
蒲生忠継・金谷法忍
24) 家族歴以外に危険因子を持たない38歳女性
の粥状硬化によると思われる急性心筋梗塞の1例
(富山県済生会富山病院) 小林隆洋・
中舘照雄・野々村誠・井内和幸
症例は51歳男性.特記すべき既往歴なし.持続す
る胸部圧迫感を主訴に当科初診となった.心電図
上急性心筋梗塞を診断し,緊急冠動脈造影を施行
した.右冠動脈#4PD左前下行枝#8. 9. 10左回
旋枝#12. 14に完全閉塞病変を認めた.IABPを
挿入し,経静脈的に血栓溶解剤を投与して経過観
察とした.最大CPKは10, 255IU/Lであった.翌
日施行した,冠動脈造影では,狭窄は残存してい
たもののいずれの病変も再灌流していた.明らか
な心不全の増悪,致死的不整脈の出現なく比較的
順調に経過した.慢性期冠動脈造影で,エルゴノ
ビン負荷試験を施行したところ,左前下行枝,左
回旋枝ともにスパスムが誘発された.採血上,血
液学的異常所見は認めなかった.本症例は左右,
多枝スパスムを原因とする急性心筋梗塞と考えら
れた.
父親が62歳時に狭心症の既往がある他には喫煙歴
や高脂血症,高血圧症,糖尿病の危険因子を持た
ない38歳女性の急性心筋梗塞を経験した.1週間
前から労作時の胸痛を認めており,早朝就寝中に
突然強い胸痛が出現し持続するため来院し,心電
図で前胸部誘導のST上昇と心エコーで前壁の壁運
動低下を認め急性心筋梗塞を疑い緊急カテーテル
検査を行った.冠動脈は左前下降枝#7の近位部
で完全閉塞しており,吸引カテーテルで赤色血栓
と白色血栓を吸引し閉塞は99%に改善し血流も再
開した.IVUSでは全周性にプラークと石灰化を
認め,冠動脈の粥状硬化による急性心筋梗塞と診
断し,ステントを留置し良好な拡張が得られ術後
経過も良好であった.SLEや血管炎,冠動脈解離,
冠攣縮,川崎病,ピルの服用などとの関連が考え
られる若年女性の心筋梗塞例の報告は少数ある
が,本例の様な危険因子の少ない若年女性の粥状
硬化による心筋梗塞例の報告は少なく報告した.
金沢大学(2008 年 7 月) 891
25) 心筋梗塞亜急性期における非梗塞領域の微小
循環障害に糖代謝異常が与える影響についての検討
(福井大学循環器内科) 下司 徹・
中野 顕・宇隨弘泰・見附保彦・荒川健一郎・
森川玄洋・阪田純司・皿澤克彦・嵯峨 亮・
石田健太郎・佐藤岳彦・森下哲司・李 鍾大
【目的】急性心筋梗塞(MI)患者における非梗塞
領域の心筋微小循環障害が糖尿病の存在により影
響されるか否かを明らかにすること.【方法】発
症12時間以内に再灌流に成功した初回MI患者連続
30例を糖尿病群10例と非糖尿病群20例の2群に分
割した.全例発症約14秒日後にATP負荷心筋アン
モニアPETを施行し,梗塞領域および非梗塞領域
の心筋血流予備能(MFR)を算出した.
【結果】
両群間の背景因子に有意差なし.MI患者全体に
おける非梗塞領域のMFRは対照群に比して有意に
低下していたが(MI群2.33±0.69 vs. 対照群3.03
±0.63,p<0.0292),両群間のMFRには有意差を
認めなかった(糖尿病群2.37±0.79 vs. 非糖尿病
群2.30±0.66,n.s.).糖尿病コントロールの指標
であるHbA1cと非梗塞領域におけるMFRとの間
に相関関係は認めなかった.【結論】急性MIにお
ける非梗塞領域の心筋微小循環障害の程度は糖代
謝異常の存在や程度により影響されなかった.
26) 降圧療法中の高血圧患者の仮面高血圧の頻度
(金沢市立病院内科) 高桑 浩・
油谷伊佐央・関口芳輝・杉本尚樹・安部俊男・
高田重男
【目的】治療中の高血圧患者の家庭血圧を用いて
仮面高血圧の頻度を検討した.【方法】高血圧患
者の外来診療に従事する医師108名のアンケート
を実施した.患者に,来院前日の就寝前家庭血圧
および当日早朝家庭血圧を記載してもらい,外来
血圧と比較した.家庭血圧は,就寝前および早朝
家庭血圧を平均し求めた.外来血圧140/90mmHg
未満,家庭血圧135/85mmHg以上を仮面高血圧
とした.【成績】患者610名が解析対象となった.
血圧コントロール良好35.9%,仮面高血圧15.4
%,白衣高血圧17.1%,コントロール不良31.6%
であった.【結論】高血圧患者のうち,外来血圧
は51.3%がコントロール良好であるが,この中に
は全体の15.4%を占める仮面高血圧が含まれてい
る.家庭血圧測定を加味した降圧療法が必要であ
る.
27) 人間ドック受診者における原発性アルドス
テロン症のスクリーニング
(芳珠記念病院内科) 臼倉幹哉・永田 満・
大江康太郎・米田 隆・森 清男
(同健診科) 上田 博
【目的】近年,原発性アルドステロン症(PA)は
高血圧の5~10%を占める疾患とされているが,
人間ドック受診者におけるPAの頻度は明らかで
はない.我々は高血圧を呈した人間ドック受診者
にPAのスクリーニングを行った.【方法】当院の
人間ドックにて血圧が収縮期140mmHg以上もし
くは拡張期90mmHg以上を認めた335名に同意を
得て血漿レニン活性,血漿アルドステロン濃度を
測定した.【成績】アルドステロン・レニン比>
200でPAが疑われたのは59名で(陽性率17.6%),
そのうち9名に機能的確認試験(カプトリル負荷
試験または立位フロセミド試験)が実施され(受
診率15.3%)
,PAと確定診断されたのは6名(陽
性率66.7%)であった.【結論】高血圧を呈した
人間ドック受診者におけるPAの頻度は1.8%と低
値であったが,精査受診率の低さが影響しており
今後さらなる検討が必要と思われた.
892 第 116 回北陸地方会
28) アルドステロン微小産生腺腫の臨床像
(金沢大学内分泌代謝内科) 唐島成宙・
米田 隆・臼倉幹哉・織田展成・橋本 篤・
出村昌史・武田仁勇
(同循環器内科) 山岸正和
【背景】原発性アルドステロン症(PA)は,心血
管障害など合併症の多い疾患である.CTスキャ
ンでは異常が描出されず,片側副腎からのアル
ドステロン過剰産生を示すPA(CT陰性PA)の
臨床像は明らかではない.【目的・対象】当院お
よび関連病院で腹腔鏡下副腎摘出術を施行した
CT陰 性PAの 臨 床 像 を 検 討 す る.【 結 果 】CT陰
性PAは,101例中6例であり,収縮期血圧179±
15mmHg,拡張期血圧105±12mmHg,PRA 0.3±
0.1ng/ml/hr,血漿アルドステロン(p-Aldo)169
±67pg/ml,p-aldo/PRA(ARR)842±536,血清
カリウム4.1±0.3mEq/Lであり,他のPAと比較
して血圧が高値傾向であったが,低カリウム血症
は認めなかった.病理診断では4例が微小腺腫,
2例が結節性過形成であった.副腎摘出後血圧は
改善し,p-aldoは正常化した.
【結語】今回の少
数例の検討ではアルドステロン微小産生腺腫に特
徴的な臨床所見はなかったが,症例を重ねてさら
に検討する必要がある.
29) 5年間の経過でアキレス腱黄色腫の著明な
増大を認めた若年先天性QT延長症候群合併正脂
血症性黄色腫症の一例
(北陸中央病院内科) 宇野欣秀
(石川県立中央病院循環器内科) 金谷法忍・
松原隆夫・安田敏彦・三輪健二・井上 勝
【症例】症例は25歳女性.主訴は両側アキレス腱
部腫瘤.既往歴として,13歳時に肘部・アキレス
腱部の黄色腫瘤に気付き,近医形成外科にて切除.
その後再発したため18歳時当科受診.黄色腫消退
を期待してプロブコールを投与したところ3ヵ月
後に心室細動発症.蘇生に成功し,後遺症なく退
院.血漿コレスタノール値の上昇を認め,以後近
医にて抗不整脈剤とUDCA 600mg投与を受けてい
たが,左足首の腫瘤が外径5cmまで増大したため
切除を求めて来院.
【経過】来院時血清脂質はT.chol
189mg/dl,TG 103mg/dl.アキレス腱黄色腫切除
術を形成外科にて施行し,38mm×38mm×17mm
の黄色腫瘤を摘出.病理学上びまん性に泡沫組織
球浸潤,巣状の多核巨細胞浸潤,一部繊維化を伴
う通常の黄色腫であった.【結語】今回5年間で
アキレス腱黄色腫の増大を認めた若年性正脂血症
性黄色腫症の一例を経験した.今後,早発性冠動
脈硬化症の予防手段を考慮する必要がある.
30) 常染色体劣性高コレステロール血症
(ARH)
ヘテロ接合体の臨床像に関する検討
(金沢大学循環器内科) 多田隼人・
川尻剛照・中西千明・土田真之・高田睦子・
井野秀一・山岸正和
(金沢大学脂質研究講座) 野原 淳・
小林淳二・馬渕 宏
(金沢大学医薬保健学域病態検査学講座)
稲津明広
31) 新規遺伝子異常を見出されたホモ接合体性
家族性高コレステロール血症の一例
(金沢大学循環器内科) 中西千明・
川尻剛照・多田隼人・土田真之・高田睦子・
野原 淳・稲津明広・山岸正和
(金沢大学脂質研究講座) 野口 徹・
小林淳二・馬渕 宏
【症例】6歳,男児.【現病歴】2003年7月(1歳
2カ月),手関節及び足関節に黄色腫を認めたた
め,近医を受診した.採血上,LDL-C 581mg/dl
(T-Cho 629mg/dl,TG 111mg/dl,HDL-C 26mg/
dl)と著明な高LDL-C血症であった.特に成長発
達障害は認められなかったが,3歳時,精査加療
目的に当科紹介受診,頸動脈エコーにて内膜中膜
複合体の肥厚(0.4mm)が観察された.2005年6
月からpitavastatin内服加療が開始され,4mg内
服にてLDL-C 300mg/dl前後まで改善した.遺伝
子解析によりLDL受容体遺伝子変異とproprotein
convertase subtilisin/kexin type 9 serine protease
(PCSK9)遺伝子変異が認められた.【総括】LDL
受容体とPCSK9遺伝子変異のホモ接合体性家族
性高コレステロール血症の一例を体験した.
32) 長期経過観察し得たホモ接合体性家族性高
コレステロール血症(hoFH)の一例
(金沢大学循環器内科) 高田睦子・
川尻剛照・多田隼人・中西千明・土田真之・
井野秀一・山岸正和
(金沢大学脂質研究講座) 野原 淳・
小林淳二・馬渕 宏
(小松市民病院内科) 東方利徳
(金沢大学医薬保健学域病態検査学講座)
稲津明広
(金沢大学附属病院総合診療部) 小泉順二
(金沢大学心肺総合外科) 富田重之・
大竹裕志・渡邊 剛
【症例】59歳,男性.【現病歴】9歳頃より肘,手
首に黄色種を認め,28歳時家族性高コレステロー
ル血症ホモ接合体(hoFH)と診断された.冠動
脈造影(CAG)上左前下行枝,回旋枝は完全閉
塞し,右冠動脈からの側副血行路を認めた.31歳
時より血漿交換療法が導入されたが徐々に狭心症
状は増悪し,CAG上も狭窄病変の進行を認めた.
38歳よりLDLアフェレーシス(LDL-A)が導入さ
れ,血行再建なしに胸部症状は改善した.48歳に
は腹部大動脈瘤を指摘され,51歳には右内頸動脈
閉塞を認めたが,いずれも保存的に加療された.
59歳時,不安定狭心症にて入院.CAG上の変化
は最小限であったが腹部大動脈瘤が比較的急速に
増大していた.冠動脈血行再建術に引き続き腹
部大動脈瘤に対し人工血管置換術を行った.【結
語】診断時,既に重症冠動脈病変を有していたが,
LDL-Aによる強力なコレステロール低下療法に
て長期生存し得たhoFHを経験した.
【背景】常染色体劣性高コレステロール血症(Autosomal Recessive Hypercholesterolemia:ARH)はLDL受
容体アダプター蛋白(LDLRAP1)の欠損により発症
する極めて稀な遺伝性疾患で,本邦で2家系,世界的
にも50数症例に過ぎず,ARH遺伝子異常を一つ有す
るヘテロ接合体に関する検討は少ない.
【対象と方法】
ARH(Ins C599)家系内11名のヘテロ接合体と6名の
正常者.脂質代謝異常を疑われ遺伝子が採取された別
家系500症例で同異常の有無を検討した.
【結果】発端
者と別家系にARH(Ins C599)ヘテロ接合体を1例同
定した.ARH(Ins C599)ヘテロ接合体12例にアキレ
ス腱を含め腱黄色腫を認めなかった.LDL-C値は家系
内 正 常 者 に 比 し 有 意 に 高 値 で あ っ た(153.8 vs.
108.2mg/dl,p<0.05)が,TG,HDL-C値に有意差は
認めなかった.
【結語】ARH(Ins C599)ヘテロ接合
体は高LDL-C血症を呈し,本邦原発性高LDL-C血症の
一部が説明される可能性が示唆された.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
33) 慢性腎不全を合併した虚血性心疾患による
非代償性心不全に対し腎機能を悪化させる事なく
治療し得た一例
(小松市民病院内科) 加藤大雅・金田朋也・
東方利徳・上田幸生
36) 心 不 全 に 対 す る 非 侵 襲 的 陽 圧 換 気 療 法
(NPPV療法)の経験
(福井県立病院循環器科) 野路善博・
藤野 晋・馬渕智仁・山口正人・青山隆彦
39) 三尖弁閉鎖不全症に伴うvascular ectasia
の症例
(金沢大学循環器内科) 坪川俊成・
井野秀一・藤野 陽・川尻剛照・内山勝晴・
林 研至・坂田憲治・高田睦子・舛田英一・
舟田 晃・坂元裕一郎・村本明彦・岡島正樹・
高村雅之・山岸正和
症例は74歳女性.2008年2月より全身の浮腫が出
現,徐々に呼吸困難,胸部絞扼感が増悪してきた
ため2月28日当科受診.大量胸水も認め心不全の
診断にて同日入院となった.慢性腎不全を合併し
ていたため急性期の利尿剤使用は極力避け,カル
ペリチドを中心とした投薬にて腎保護的に治療を
進めていった.基礎疾患として虚血性心疾患の存
在が疑われたため経過中に心臓カテーテル検査を
施行したところ,右冠動脈と左回旋枝に有意狭窄
を認めた.心不全の長期的コントロールには虚血
の解除が必要と判断し,後日一期的に2枝に対し
冠動脈インターベンションを施行した.術前から
の輸液負荷,CHDF併用,造影剤使用量の制限等
を組み合わせる事で腎機能の悪化を認める事なく
血行再建に成功,心不全も改善し3月28日退院と
なった.
NPPV(non-invasive positive pressure ventilation)
療法は気管内挿管や気管切開を行わずに,マスク
を用いて上気道から陽圧にて換気を行う非侵襲的
な人工呼吸法である.心不全において,NPPV療
法は従来の酸素吸入療法と比較し,症状の改善が
速やかに認められ,気管内挿管の頻度の低下,死
亡率の改善など良い結果が報告されている.当院
での心不全に対するNPPV療法の経験例について
報告する.症例は73歳女性,悪性リンパ腫に対す
る化学療法後のアドリアマイシン心筋症が原因と
考えられる夜間呼吸困難にて受診.胸部レントゲ
ンにて著明な心拡大,肺紋理陰影の増強を認めた.
リザーバーマスク15L/分投与下の血液ガス分析
でpH 7.161,pO2 75.2,pCO2 59.8,HCO3 20.5で
あった.NPPV(CPAPモード,FiO2 0.6)を開始
し1時間後にはpH 7.346,pO2 106,pCO2 45.4,
HCO3 24.2まで改善した.心臓超音波検査では
LVEF 31%,BNPは746pg/mlであった.
34) 当院における循環器疾患に伴う睡眠呼吸障
害に対するAdaptive servo-ventilation(ASV)の
使用経験
(福井循環器病院循環器科) 若林聖伸・
大里和雄・村上達明・守内郁夫・嶋田佳文・
三沢克史・小門宏全・福岡良友・高畠 周・
水野清雄
37) 大量胸水貯留と低血圧が難治性に持続した
拘束性心不全の超高齢者例
(金沢医科大学高齢医学科) 高村敬明・
矢野 浩・渥美三貴子・能村幸司・
石神慶一郎・大黒正志・村井 裕・中橋 毅・
土屋 博・岩井邦充・森本茂人
(同病理病態学) 佐藤勝明
近年,睡眠呼吸障害に伴う無呼吸および低酸素血
症は,循環器疾患をもつ患者にとって心機能の増
悪因子の一つであるといわれている.終夜ポリソ
ムノグラフィー(PSG)において閉塞型と中枢型
の無呼吸が混在する症例では,その治療方法に難
渋することがある.今回,我々は心疾患を有し閉
塞型と中枢型の無呼吸が混在する症例に対して
ASVを使用し良好な経過を得た症例を経験した
ので報告する.
症例は89才女性.2年前から労作時呼吸苦自覚,
心不全と診断され利尿薬を投与されていたが,食
欲不振と全身倦怠感が進行し入院した.低血圧で
両側胸水大量貯留を認めた.心電図は平低T波以
外異常なく,左室収縮能は軽度低下し流入血流の
E/Aは1.0と正常で三尖弁高度逆流も認めた.利
尿薬増量のみでは血圧が50mmHgまで低下したた
め,ドーパミンとアルブミンを併用することで血
行動態維持したまま胸水を少しは減少させ得た.
しかしドーパミンからは離脱できずBNPも300-
800pg/ml を推移した.低栄養状態が持続し気道
感染を繰り返し第132病日に心肺停止した.剖検
で心外膜が全周性に著しく線維性肥厚している希
少な症例であり,強い拘束性障害を来たしたこと
が示唆された.しかし特異的原因は不明であった.
症例は69歳,男性.24歳時に倦怠感,微熱,関節
痛等生じ,約半年間の入院ステロイド治療歴あ
り.26歳頃より手指関節変形みられるようになっ
た.その後,関節痛など症状軽快傾向であったた
め34歳頃より通院を中断していた.61歳時,急性
心筋梗塞を発症し,67歳まで当院で加療・経過観
察されていたが,その間,膠原病の活動性を示唆
するような症状はみられていなかった.平成20年
4月頃より感冒様症状出現し,近医で心拡大・心
房細動を指摘されたため当院紹介受診.心エコー
上,心膜液貯留みられ,血液検査上,抗核抗体・
抗DNA抗体陽性,血清補体価低下を確認された
ため,心膜炎を合併したSLEとの診断でステロイ
ド治療開始となった.SLEと以前の心筋梗塞との
関係は定かではないが,30年以上の経過を経て心
膜炎で再燃し,今回SLEとの診断に至ったまれな
1例であったため報告する.
35) Cheyne-Stoke Respirationを伴うSevere CHF
に対するAdaptive Servo-Ventilation(ASV)の使
用経験
(厚生連高岡病院循環器内科) 藤本 学・
打越 学・藤田崇志・木山 優・桶家一恭・
山本正和
38) 繰り返す右心不全でUhl病が疑われた一例
(金沢大学循環器内科) 町岡一顕・
川尻剛照・吉川智晴・森 三佳・多田隼人・
高田睦子・坂田憲治・岡島正樹・高村雅之・
井野秀一・山岸正和
41) 心内膜心筋線維症を合併した好酸球増多症
の1例
(富山赤十字病院循環器内科) 佐藤梨紗・
山本隆介・山口由明・勝田省嗣・賀来文治・
田口富雄・新田 裕
【症例】50歳,女性【現病歴】27歳時に特発性心
筋症,完全房室ブロックと診断され,ペースメー
カー(VVI)植込み術を施行された.46歳頃より
労作時呼吸困難,全身倦怠感,下腿浮腫等を自覚
し,入退院を繰り返していた.49歳時に三尖弁閉
鎖不全症が原因の心不全が疑われ,精査加療目的
に当科入院された.心臓カテーテル検査にて左室
収縮異常は認めず,肺動脈圧は正常であったが,
右心系の圧は下大静脈に至るまでほぼ一定であっ
た.冠動脈疾患や左心機能異常は認められなかっ
た.CTでは右室壁の菲薄化は認められなかった
が,右心室中隔側の心筋生検では心筋線維の脱
落・減少と心筋線維間の著明な線維化が認められ
たが,脂肪沈着は認められなかった.【結語】右
心不全を繰り返す一例を経験した.組織学的所見
はUhl病を疑わせた.
【症例】75歳女性.心不全にて入院.末梢血中好
酸球数3220/mm3と好酸球増多症を認めた.頻脈
性心房細動,腎不全を認めたが左室駆出率は67%
と正常で,拘束パターンを呈した.左室壁厚の増
加や壁在血栓,心膜の肥厚や石灰化は認めず.左
室圧,右室圧ともにdip and plateau patternを示
し,心筋生検では心内膜の肥厚,心筋線維症を認
めた.以上から本症を好酸球増多症に伴う心内膜
心筋線維症と診断し,プレドニゾロン30mg/日の
内服加療を開始した.【考察】心内膜心筋線維症
は好酸球増多症に合併した心内膜炎の結果生じ
る.症例によっては心内膜炎の結果,心室内に著
明な壁在血栓が形成される場合もあるが,本症例
の如く心内膜炎が潜在的に進行し,左室拡張能の
高度の障害が出現して初めて診断に至る症例もあ
り注意が必要と思われた.
睡眠時無呼吸症候群(SAS)を伴う心不全に対す
る酸素投与(HOT)は,一定の評価が得られてい
る.しかし,重症の心不全例においてHOTのみで
は十分な改善が得られない場合がある.最近,本
邦でも使用可能となったAdaptive Servo-Ventilation
(ASV)は対象患者の換気量を常にモニターし,無
呼吸による呼吸の変動を適切に改善することが出
来る.今回,Cheyne-Stoke Respiration(CSR)を
伴う拡張型心筋症による心不全例に対し,ASVを
導入し,心不全の改善を得られた.症例は46歳男
性.拡張型心筋症の診断にて,外来通院中であっ
たが,BNPは1000以上にて推移.睡眠時無呼吸検
査にてAHI26のCSRを主体とした,中枢性無呼吸
(CSAS)を認めた.HOT導入を行ったが,心不全
の改善は不十分であり,2008年5月16日よりASV
の導入を開始した.ASV開始直後,BNPおよび
CTRの 減 少 を 認 め た.ASVは 患 者 のcompliance
も良く,CSASを伴うCHF例には非常に有効な治
療法と考えられた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
以前より高度三尖弁閉鎖不全症,心房細動(ワー
ファリン内服中),慢性心不全にて内科通院中,
労作時呼吸困難,下腿浮腫が出現し,慢性心不全
の急性増悪にて入院した.経過中に便潜血陽性,
貧血が認められ,消化管内視鏡検査を実施したと
ころ,大腸に多発する毛細血管拡張症及び同部位
からの出血が確認された.心臓超音波検査,スワ
ンガンツカテーテル検査等にて高度右心不全を
認め,それに伴うvascular ectasiaと診断された.
右心不全の対する治療にて出血,貧血も改善し,
退院となった.また,同じような背景があり胃静
脈拡張部位からの出血を認め,アルゴンレーザー
治療が施行された他症例を含め報告する.
40) 約30年の経過を経て心膜炎で再燃した男性
SLE患者の1例
(金沢医療センター循環器科) 朝日向良朗・
佐伯隆広・小島 洋・山本花奈子・
八重樫貴紀・阪上 学・中村由紀夫
金沢大学(2008 年 7 月) 893
42) 急性左心不全の出現に伴い顕在化した交代
性脚ブロックの一例
(金沢医療センター循環器科) 八重樫貴紀・
阪上 学・小島 洋・山本花奈子・佐伯隆広・
中村由紀夫
症例は72歳,女性.大動脈弁閉鎖不全症,心尖部
肥大型心筋症,高血圧,高脂血症にて外来通院
中であった.元来脚ブロックのない方であった
が,2007年11月の心電図より右脚ブロックが出現
していた.2008年3月2日突然の喘鳴,呼吸困難
にて当院へ救急搬送,急性左心不全にて入院とな
った.入院時の心電図にて交代性脚ブロックを認
めた.心不全は速やかに改善したが,入院時の心
エコー所見にて大動脈弁閉鎖不全症の増悪を認め
ており,心不全の増悪因子と考えられた.大動脈
弁置換術に向けて術前精査のため心臓カテーテル
検査を実施した際に心臓電気生理学的検査を行
った.その結果,AH blockの所見を認め,HRA
burst pacingにて交代性脚ブロックは再現可能で
あった.このように急性左心不全の出現に伴い交
代性脚ブロックが顕在化したという点で珍しい臨
床経過をたどった症例と考え,提示した.
43) 自然修復した左鎖骨下動脈解離の一例
(金沢大学循環器内科) 舟田 晃・
井野秀一・藤野 陽・川尻剛照・林 研至・
内山勝晴・坂田憲治・舛田英一・高田睦子・
坪川俊成・坂元裕一郎・土田真之・村本明彦・
多田隼人・中西千明・岡島正樹・高村雅之・
山岸正和
58歳女性,左上肢の冷感と脱力を自覚し近医を受
診したところ,左上肢の脈拍消失を指摘され当院
紹介となった.選択的左鎖骨下動脈造影では左鎖
骨下動脈から上腕動脈近位部にかけてのびまん性
の狭窄と左上腕動脈遠位部の高度狭窄を認めた.
血管超音波検査では左鎖骨下動脈から上腕動脈に
かけての可動性のflapと偽腔の血栓化を認め,動
脈解離による狭窄と診断された.外科手術,内科
的な血管内治療を検討し,アスピリンを投与にて
経過観察したところ,症状は改善し血圧の左右差
も消失した.20日後に再度血管造影を施行したと
ころ,狭窄は消失し,血管内超音波でも偽腔は血
栓閉塞し血管径は保たれていた.自然修復した左
鎖骨下動脈から左上腕動脈にかけての解離の一例
につき文献的考察を含め報告する.
45) 僧帽弁形成術後に溶血性貧血を来たした症例
(金沢大学循環器内科) 宮田隆司・
坪川俊成・井野秀一・藤野 陽・川尻剛照・
内山勝晴・林 研至・坂田憲治・高田睦子・
舛田英一・舟田 晃・坂元裕一郎・村本明彦・
山岸正和
(同心肺総合外科) 富田重之・渡邊 剛
症例は49歳男性.2007年8月前尖の逸脱および中
等度の僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁前尖の弁
形成術および交連部縫縮術が施行され,前医にて
加療されていた.術後2ヶ月後の10月上旬に,心
房頻拍が出現したため,電気的除細動目的に12月
当科再入院となった.洞調律化に成功したが,経
過中に貧血の出現,LDH上昇,血清ハプトグロ
ブリンの低下を認め,溶血性貧血と確認された.
心エコー図及び経食道心エコー図検査にて,術直
後には認められなかった僧帽弁逆流症のjetが人
工腱索に衝突している所見が指摘され,物理的刺
激によるものが誘因として考えられた.除細動後
は貧血の進行はないため,内服薬が処方され,僧
帽弁逆流症も増悪傾向がなく,外来経過観察の方
針となり退院となった.
46) Valsalva洞限局解離を来たしたMarfan症候
群の一例
(福井循環器病院心臓血管外科)
合志桂太郎・堤 泰史・門田 治・高橋洋介・
阪本朋彦・大橋博和
症例は31歳,男性.車のタイヤ交換中に胸痛を自
覚し,その2日後にも胸痛を自覚.近医受診し心
電図異常,大動脈弁逆流及び大動脈弁輪拡大認め
手術目的に同日当院に緊急搬送となった.来院時
特に自覚症状は認めなかったが,胸部CTで上行
大動脈に解離認め緊急手術となった.心膜を切開
すると,血性心嚢水と著明なvalsalva洞の拡大を
認めた.また上行大動脈は腕頭動脈分岐部で瘤状
に拡大していたために,David手術と上行弓部大
動脈人工血管置換術を施行した.人工心肺からの
離脱は問題なし.術後経過も特に問題なく経過.
術後14日目に退院となった.Valsalva洞に限局し
た解離は稀であり,この症例に文献的考察を加え
報告する.
44) 治療法の選択に苦慮した,高血圧を合併し
た僧帽弁逸脱症の1例
(富山赤十字病院循環器内科) 賀来文治・
佐藤梨紗・山本隆介・山口由明・勝田省嗣・
田口富雄・新田 裕
(同心臓血管外科) 池田真浩・木内竜太
47) 大動脈弁位stuck valveに対して,Ross手術
を施行した1手術治験例
(福井循環器病院心臓血管外科) 高橋洋介・
堤 泰史・門田 治・合志桂太郎・阪本朋彦・
大橋博和
68歳女性.高血圧放置.入院3日前よりDOEあり.
排便中に呼吸苦が増悪し搬送.
血圧251/122mmHg.
心尖部にLevine 3/6の収縮期雑音(+).胸部X-P:
肺水腫(+).高血圧が原因の心不全として入院.
心臓超音波:全周性の左室肥大,LAD=34mm,
LVDd/LVDs=37/22mm,%FS=41%,僧帽弁前尖
逸脱(MVP)と僧帽弁逆流(+)
.BNP=8.6pg/ml.
薬剤開始後の安定期での評価:PISA法:MR:
2
ERO=0.34cm ,RV=19ml,心内圧(Control:体
血 圧 124/84mmHg);PA=23/13mmHg,PCWP=
7mmHgと肺高血圧や左房圧の上昇なし.しかし
体血圧が167/94mmHgに上昇後に著明なV波が出
現(V波peak=47mmHg),PA=45/22mmHg,PCWP
=22mmHgと急激な上昇を示し,肺鬱血再燃(+)
.
本例では体血圧(後負荷)の軽度の上昇に対し,
MVPによる僧帽弁逆流が増加し急激に左房圧の上
昇が起こると考えられ,MVPに対する手術を施
行.また本例は心源性の肺水腫を呈したがBNPの
上昇を認めず,注意を要する症例と考えられた.
症例は39歳男性.20年前に大動脈弁狭窄症に対し
て大動脈弁置換術(SJM 23mm)を施行されてい
る.6ヶ月前からワーファリン内服の自己中断を
していた.心臓超音波検査にて,一葉の閉鎖位に
おける固定ともう一葉の開放制限を認めた.CT
で,大動脈基部から弓部にかけて最大55mm大の
拡大を認めた.内服のコンプライアンスの悪い患
者,若年成人であることから,Ross手術と弓部
置換術を選択した.右室流出路再建にはゴアテッ
クス3弁付きsinus形成導管を用いた.術後経過
は良好で,術後1ヶ月目に退院となった.現在ま
でに,stuck valveに対するRoss手術の報告例は
稀である.今回我々は大動脈弁位stuck valveに対
して,Ross手術を施行し,良好な結果を得たの
で報告する.
894 第 116 回北陸地方会
48) 大動脈弁輪部膿瘍に対する外科治療
(金沢大学心肺総合外科) 高木 剛・
西田 聡・富田重之・山口聖次郎・加藤寛城・
新井禎彦・渡邊 剛
症例は18歳女性.出生時よりVSD,大動脈二尖弁
を指摘されておりVSDは学童期に自然閉鎖した.
歯科治療を受けた後1ヶ月間に及ぶ38℃台の発熱
と四肢の有痛性紅斑を認め,感染性心内膜炎が疑
われた.心エコーにて,後方に位置する交連部に
軽度の逆流と3×4mmの可動性のある腫瘤を認
めた.血液培養提出後,感染性心内膜炎として抗
菌薬の投与を開始した.その後経食道心エコーに
て,大動脈弁輪部膿瘍を指摘され早急な外科治療
が必要と判断された.手術は大動脈弁輪部の郭清
を施行した後,aortic-mitral dicontinuityに対し
てグルタルアルデヒド処理をした自己心膜を用い
て再建し,生体弁を移植した.術直後に抜管し,
HCUへ帰室した.術後第2病日に内科へ転科し,
抗菌薬投与を継続している.術後2週間経過した
現在発熱を認めていない.弁輪部膿瘍を呈した感
染性心内膜炎に対して,十分な郭清を行った後,
大動脈弁置換術を施行し良好な結果を得たので報
告した.
49) 左冠動脈主幹部塞栓による急性心筋梗塞を
合併した大動脈弁狭窄症の一例
(金沢大学循環器内科) 鷹合真太郎・
村本明彦・井野秀一・藤野 陽・川尻剛照・
内山勝晴・林 研至・坂田憲治・高田睦子・
舛田英一・坪川俊成・舟田 晃・坂元裕一郎・
岡島正樹・高村雅之・山岸正和
(同心肺総合外科) 富田重之・山口聖次郎・
渡邊 剛
今回,我々は大動脈弁狭窄例で左冠動脈主幹部完
全閉塞による急性心筋梗塞を発症したが,救命し
えた症例を経験したので報告する.症例は69歳男
性.中等度の大動脈弁狭窄症と心房細動で当院外
来通院中であった.2008年3月下旬に,意識消失
にて当院に救急搬送された.来院時,血圧は保た
れており意識清明で胸痛を訴えた.心電図,心エ
コーより急性心筋梗塞と診断した.緊急で心臓カ
テーテル検査を施行したところ,左冠動脈主幹部
の完全閉塞を認めた.PCIを施行したものの,大
量血栓のため血流再開できず心原性ショックとな
った.IABP挿入下に緊急で,外科的に血栓除去,
CABGおよび大動脈弁置換術を施行した.血栓は
器質化しており心房細動に伴う塞栓症と考えられ
た.術後,心不全のコントロールに難渋したもの
の,独歩退院が可能であった.
50) 腹部大動脈瘤閉塞の1手術例
(富山赤十字病院心臓血管呼吸器外科)
木内竜太・池田真浩
症例は73歳の男性で右下肢の痺れ・疼痛を主訴に
来院した.MDCTにて,血栓で完全閉塞した最大
径5cmの腹部大動脈瘤を認めた.血栓閉塞は腎
動脈分岐部の1cm程末梢より始まり外腸骨動脈
まで閉塞し,両側とも総大腿動脈レベルで側副血
行路にて再造影されていた.右側は浅大腿動脈も
閉塞しており膝上膝窩動脈で再造影を認めた.解
剖学的血行再建は上腸間膜動脈より中枢での遮断
や臓器保護なども行わなければならず,また肺気
腫もありリスクや侵襲が大きいと判断し,左鎖骨
下動脈-左右総大腿動脈バイパス術および右大腿
動脈-膝上膝窩動脈バイパス術を施行した.術後
は症状も消失し,無事に独歩退院した.一般的に
腹部大動脈瘤閉塞に対しては解剖学的血行再建が
推奨されているが,今回は手術リスクや侵襲度を
考慮して非解剖学的血行再建術を施行した1例を
経験したため,若干の文献的考察を加え報告した.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
51) 部 分 肺 静 脈 還 流 異 常 を 伴 っ た 三 心 房 心
(Lucas-Schmidt IIIA2)の一例
(富山大学第一外科) 松久弘典・芳村直樹・
北原淳一郎・大高慎吾・三崎拓郎
(同小児科) 廣野恵一・渡辺一洋・市田蕗子
(富山赤十字病院小児科) 津幡眞一
症例は7歳,女児.小学1年の心臓健診で不完
全右脚ブロックを指摘された.近医を受診した
ところ,拡張期ランブルを聴取され,心エコー
にて静脈洞型心房中隔欠損を指摘された.当院
での心エコー,3D-CTにて共通肺静脈-左心房間
に異常隔壁を認め,三心房心と診断された.術中
に部分肺静脈還流異常(右上肺静脈が上大静脈に
還流)を認め,三心房心のLucas-Schmidt IIIA2
型であった.静脈洞型心房中隔欠損から左心房の
distal chamberまで心房中隔壁を切開し,異常隔
壁を切除した後に,自己心膜にて右上肺静脈の
reroutingを行いつつ心房中隔欠損及び切開した
心房中隔を閉鎖することで,共通肺静脈-左心房
間の十分な拡大を行なった.術後経過は良好で,
心エコーでも肺静脈,上大静脈の還流は良好であ
った.上記症例を提示し,三心房心の分類,術式
に関する考察を加えて報告する.
52) 左室形成術が著効を示した虚血性心筋症の
一例
(福井循環器病院心臓血管外科) 門田 治・
堤 泰史・合志桂太郎・高橋洋介・阪本朋彦・
大橋博和
症例は67歳,男性.53歳時に前壁中隔の広範な
心筋梗塞を発症し,経過中徐々に心機能の低下
を認めた.VFおよびVTにより2度の心肺蘇生
を受け,ICD植え込み目的で当院に紹介された.
NYHA class 3で左室収縮末期容量係数(LVESVI)
121ml/m2, 左 室 駆 出 率(LVEF)22%と 著 明 な
心拡大と収縮力低下を認めたため,左室形成術
(Overlapping法)を施行した.術後NYHA class 1,
LVESVI 80ml/m2,LVEF35%と改善を認め,心室
性不整脈の激減を認めた.念のためCRT-Dを植
え込み現在退院準備中である.
53) 両側腸腰筋膿瘍をきたした感染性心内膜炎
の1例
(金沢医科大学循環制御学) 藤岡 央・
若狭 稔・本山敦士・野村祐介・佐藤良子・
絈野健一・赤尾浩慶・上西博章・河合康幸・
浅地孝能・北山道彦・津川博一・梶波康二
症例は71歳,男性.10年前にLAD#7のMIの既往
と圧格差75mmHgのASの合併あり.2007年8月
下旬,左足疼痛にて皮膚科受診.虫刺されの診断
で治療受けるが,症状改善なし.2007年9月8日
悪寒,発熱,胸痛にて入院.左足背に蜂窩織炎を
認め,SBT/CPZ投与にて症状改善し中止とした
が,中止2日目に悪寒が再燃し敗血性ショック
に至った.膿瘍が同時多発的に全身皮下および
両側腸腰筋に出現し,MEPM(後にCPFX)投与
及び経皮的腸腰筋ドレナージにて加療した.血
培及び膿瘍からSerratia marcescens が検出され
た.TEEでは,中等度ASと大動脈弁に付着する
echogenicな結節を認めた.CAGで#7: 95% ISR
もあり,12/17胸部外科でCABG+AVRを行った.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
54) 冠動脈内からの塞栓子吸引にて救命し得た
急性心筋梗塞合併感染性心内膜炎の1例
(福井大学循環器内科) 関 雅也・
石田健太郎・見附保彦・中野 顕・宇隨弘泰・
下司 徹・荒川健一郎・森川玄洋・皿澤克彦・
嵯峨 亮・佐藤岳彦・森下哲司・李 鍾大
(同心臓血管外科) 井隼彰夫・森岡浩一・
山田就久・高森 督・田中哲文
57) 心房,心室 両リード断線に対し,経静脈
的リード抜去に成功した1例
(金沢医療センター循環器科) 小島 洋・
佐伯隆広・山本花奈子・八重樫貴紀・
阪上 学・中村由紀夫
症例は33歳男性.入院約1ヶ月前より39度台の発熱,
全身倦怠感,関節痛が出現したために近医を受診し経
口抗生物質を処方された.症状は一旦改善したが,入
院2週間前より再び39度台の高熱が出現し,当院紹介
受診.収縮期雑音を指摘され,心臓超音波検査にて重
度の僧帽弁逆流と僧帽弁前尖の約15mm径の浮遊性疣
贅を認めたため感染性心内膜炎の診断にて入院となっ
た.入院後突然の強い前胸部痛が出現し,心電図上,
前胸部誘導にて広範囲にST上昇を認めた.急性心筋
梗塞と診断し緊急冠動脈造影を施行したところ,左前
下行枝中間部の完全閉塞を認め,血栓吸引カテーテル
の使用にて,茶褐色調のゼラチン様塞栓子を多量に吸
引した.左前下行枝は良好な順行性血流を回復し,胸
部症状も消失し以後血行動態は安定した.病理所見上,
塞栓子内に球菌の集塊を認めた事から,感染性心内膜
炎に合併した冠動脈内塞栓症による急性心筋梗塞に矛
盾しないものと考えた.
症例61歳男性,洞不全症候群.2001年他院でペー
スメーカー(PM)移植術施行.2003年1月以後
自己判断でチェック受けず.2007年秋PM移植前
に認めていた鼾の悪化を自覚,12月に当院受診.
心房心室両リードとも断線し,心房リード断端は
上大静脈内に存在した.2008年1月リード抜去目
的に入院,PCPSスタンバイ・全身麻酔下にリー
ド抜去術施行.心房リードは被膜を含めた断線の
ため心内側断端を確認できず.心室リードも被膜
を含めて断線していたが,線維状の組織で心内側
と繋がっており,経静脈的に保持可能であった.
市販の抜去システムを利用し心室リード先端まで
癒着を剥離し,心室内リードを牽引したところ,
上大静脈内に浮遊していた心房リードも同時に抜
去された.心房・心室リードは上大静脈内で同じ
線維性被膜に被われていた事が確認できた.経静
脈的に2本の断線リードの抜去に成功した貴重な
症例と考えられた.
55) 急速進行性糸球体腎炎,出血性脳梗塞,感
染性脾動脈瘤破裂を合併した感染性心内膜炎の1
剖検例
(石川県済生会金沢病院) 荒木 勉・
大江康太郎
(高岡市民病院循環器科) 中島啓介
58) 右心耳起源心房頻拍の1例
(石川県立中央病院循環器内科) 津山 翔・
井上 勝・松原隆夫・安田敏彦・三輪健二・
金谷法忍
(同心臓血管外科) 坪田 誠・氏家敏巳
(同循環器内科) 蒲生忠継
48歳男性,心疾患の既往なし.発熱,尿量減少を
主訴に入院.心尖部に収縮期雑音,両下腿に浮
腫を認めた.血清CRP 17.6mg/dl,Cr 7.37mg/dl,
尿蛋白・潜血強陽性,血液培養でα溶血連鎖球菌
を認めた.心エコー図で僧帽弁に逆流と前尖に
海藻様の疣贅を,腹部CTで両側腎腫大を認めた.
腎不全を合併した感染性心内膜炎と診断,抗生剤
治療を開始した.第4病日Cr 9.17mg/dlまで悪化
したためステロイド治療を併用した.次第に症状
は改善し,第16病日CRP 2.92mg/dl,Cr 2.84mg/
dlまで低下した.同日右頭頂葉に出血性脳梗塞を
発症,さらに第24病日突然ショック状態となり死
亡した.剖検で約2Lの血性腹水と約2cmの感染
性脾動脈瘤の破裂,半月体形成性腎炎が認められ
た.感染性脾動脈瘤は感染性心内膜炎の稀な合併
症ではあるが,高率に破裂をきたすため注意を要
する疾患である.
症例は35歳,男性.動悸,脈の乱れを主訴に当科
を紹介受診した.異所性P波を呈する心房頻拍で
絶え間なく出現していた.P波の形態は下壁誘導
で浅い陽性,胸部誘導ではV1は陰性でV6へ向け
て徐々に陽性へと移行していた.多種の抗不整脈
剤に抵抗性でカテーテルアブレーションを行っ
た.最早期興奮部位は右心耳先端であった.右心
耳の造影で再現性をもって洞調律が維持された.
右心耳下面と右冠動脈は近接していた.4mmチ
ップで通電を行ったが出力の上昇は不良で通電中
は激しい胸痛を認めた.右心耳先端よりやや基部
下面での通電で焼灼に成功し,洞調律が維持され
た.右心耳起源の心房頻拍は心房頻拍の0.6-8
%で,近年,その臨床像が報告されている.示唆
に富んだ症例であったため報告した.
56) ペースメーカーリード感染に対し体外循環
下にシステム全抜去術を施行した1例
(福井県立病院心臓血管外科) 吉田周平・
野田征宏・東谷浩一・山本信一郎
(同循環器内科) 馬渕智仁・野路善博・
山口正人・藤野 晋・青山隆彦
59) ICD誤作動を生じた慢性心房細動に対し
て,アブレーションが効果的であった一例
(厚生連高岡病院循環器内科) 藤本 学・
打越 学・藤田崇志・木山 優・桶家一恭・
山本正和
ペースメーカーリード感染による感染性心内膜炎
に対し,体外循環下にシステムの全抜去を必要と
した症例を経験したので報告する.【症例】67歳
女性.【既往歴】5年前に他院にてペースメーカ
ー植込術を施行.【現病歴】2008年1月末日38度
台の持続する発熱を認め,当院救急外来受診.重
症感染症の診断にて抗生剤投与にて加療するも増
悪と寛解を繰り返し,熱原検索に難渋していた.
4月上旬心エコーにてリードに付着する小指頭大
の疣贅を認め,感染性心内膜炎と診断され当科紹
介となった.【入院後経過】体外循環下にリード
及びジェネレータ抜去,三尖弁形成,心筋リード
留置術施行し,第7病日にペースメーカー植込術
施行.静脈血培養にてMSSA陽性であった.抗生
剤投与を4週間継続し,経過中に炎症反応の上昇
や発熱は認めなかった.【結語】ペースメーカー
リード感染に対し体外循環下にシステム全抜去術
を施行し,良好な結果を得た.
【症例】75歳男性【主訴】失神【既往歴】60歳代
より心房細動,DM.71歳 AMI,ASO【現病歴】
2007年5月25日にCPRにて救急来院.DC 2回に
て心拍再開.心拍は心房細動であった.2007年
6月22日にICD植込みを施行.2007年10月16日に
胸部不快および失神にて救急来院.ICDチェック
にて頻脈性心房細動によるICD誤作動であると診
断.βblocker内服中であったが,尿路感染によ
る発熱が頻脈を来たしたと考えられた.心房細動
歴は10年を超えており左房径も50mmと拡大して
いたが,今後も心房細動による誤作動の可能性が
考えられ,また,βblocker増量による右心室心
先部ペーシングの増加も危惧されることより,心
房細動に対するアブレーションを施行した.術後
bepridil 100mgにて現在まで6ヶ月間,洞調律を
維持している.ICDの誤作動の原因として心房細
動は問題となることが多いが,心房細動のアブレ
ーションによる根治も症例によっては考慮すべき
と考えられた.
金沢大学(2008 年 7 月) 895
60) 副交感神経活動の優位時にVTの誘発を認
めた右室流出路起源心室頻拍の一例
(厚生連高岡病院循環器内科) 藤本 学・
打越 学・藤田崇志・木山 優・桶家一恭・
山本正和
57歳の女性.運転中に突然眼前暗黒感を認め,電
柱に衝突し,救急搬送された.ホルター心電図で
は夕方より夜間にかけて心室性期外収縮(PVC)
の頻発および心室頻拍(VT)を認めた.トレッ
ドミルでは負荷によりPVCは減少.心臓電気生
理学検査において,isoproterenolにてPVCおよび
VTは 誘 発 さ れ ず,sedationお よ びpropranololの
投与により,右室流出路起源のPVCおよびVTを
認めた.PVCの最早期部位は肺動脈弁直下後部自
由壁よりであり,同部位のアブレーションにて
PVCは消失し,VTも生じなくなった.アブレー
ション前後のホルター心電図より,心拍変動解析
を行ったが,夜間睡眠時の解析においてアブレー
ション前に比較して,HFの減少およびLF/HFの
増加を認めた.フラクタル次元が2.5より1.1へと
低下し,正常化した.副交感神経活動が優位な際
にPVCおよびVTを認め,PVCの起源である右室
流出路のアブレーションが頻拍変動にも影響を及
ぼしたと考えられた.
61) 後期高齢者心房細動に対するカテーテルア
ブレーション施行症例の検討
(金沢医療センター循環器科) 山本花奈子・
阪上 学・小島 洋・八重樫貴紀・佐伯隆広・
中村由紀夫
63) 心筋再同期療法に対してnon-responderで
あった一症例
(金沢大学循環器内科) 坂元裕一郎・
井野秀一・藤野 陽・川尻剛照・内山勝晴・
林 研至・坂田憲治・高田睦子・舛田英一・
坪川俊成・舟田 晃・村本明彦・岡島正樹・
高村雅之・山岸正和
症例は62歳の男性.NYHA 2-3度の拡張型心
筋症,発作性心房細動,非持続性心室頻拍で近医
総合病院を通院していたが,非薬物療法目的に当
院紹介となった.心電図ではV1でRsr�型でQRS
幅159msecの伝導障害を認め,心エコー図検査で
のEFは20%前後であった.CRT-D植え込みを行
ったが急性期効果はなく,3ヵ月後の胸部X線,
BNP値では心不全悪化の所見を認めた.ペーシ
ングを中止したところ翌月には改善しておりnonresponderと判断した.本症例では植え込み前に
施行した心臓MRI遅延造影法で左室ペーシング部
位である左室側壁全体が濃染しており,広範囲の
瘢痕組織の存在がnon-responderの原因の一つと
考えた.
64) 一過性に特異な左室壁収縮異常を認めた塩
酸ピルジカイニド中毒症の1例
(芳珠記念病院内科) 森 清男・永田 満
(済生会金沢病院内科) 大江康太郎
66) 心室細動で発見された Brugada症候群の
一例
(富山県立中央病院循環器内科) 花岡里衣・
臼田和生・杉田光洋・谷口陽子・北野鉄平・
紺谷浩一郎・丸山美知郎・安間圭一・永田義毅
症例は46歳男性.失神歴なし.突然死の家族歴な
し.飲酒中に突然意識消失し直ちに家人による胸
骨圧迫が開始された.救急隊到着時心室細動を認
め,AEDによる電気的徐細動にて自己心拍再開
した.12誘導心電図で右脚ブロックパターンと
V1-2誘導にsaddle back型ST上昇を認め,ピルジ
カイニド50mg負荷にてV1誘導のSTがcoved型に
変化した.心臓電気生理検査で心室細動は誘発さ
れなかったが,Brugada症候群と診断しICD植え
込み手術を施行した.本症例は1群抗不整脈薬に
より誘発されたType1のBrugada症候群である.
心室細動発症前の精査ではICDの適応とはならな
い可能性が高い.現在提唱されている一次予防指
針について考えさせられた貴重な一例を経験した
ので報告する.
67) 僧帽弁形成+MAZE術後の心房細動に対し,
短期・少量アミオダロンがその後の洞調律維持に
有効であった1例
(金沢大学循環器内科) 黒川佳祐・
古荘浩司・茶谷 洋・池田景子・高島伸一郎・
大辻 浩・加藤武史・村井久純・薄井荘一郎・
岡島正樹・金子周一・高村雅之・山岸正和
現在心房細動(AF)に対するアブレーション(CA)
は若年者に行われることが多いが,AFの一番の
問題点である塞栓症発生リスクは後期高齢者に相
当する75歳以上に多く,本来この年代における
AF回避が予後改善に貢献すると考えられる.今
回当院における後期高齢者AFに対するCAの効果
を検討した.2005年4月~2008年3月にCAを実
施したAF128例中75歳以上は4例(持続性2例・
発作性2例)であった.全例有症候性薬剤抵抗性
であり,うち脳梗塞既往を1例,重症心不全を1
例に認めた.全例1回の施行で合併症の発生なし
にAFの根治もしくは激減が認められた.今回の
少数例かつ短期的な検討では高齢者においても
CAは有効と考えられたが,未だ大規模な検討は
なく,今後塞栓症発症等長期予後を含めて検討し
ていく必要がある.
【患者】65歳,男【主訴】胸痛,動悸,四肢の脱力
【現病歴】近医にて血液透析を受けており,約2
ヶ月前よりピルジカイニド50mg/日の投与を受け
る.3月26日昼頃より左頚部~肩部痛,数分の胸
痛,視覚変化,動悸,手の震え,四肢の脱力が出
現した.低血圧,心電図上変化から急性心筋梗塞
の疑いがあり,午後11時紹介入院した.ECGは
PQ時 間 延 長,QRS幅 延 長,QT時 間 延 長,ST低
下,心室性期外収縮,心室頻拍を認めた.心臓カ
テーテル検査で,冠動脈には左前下降枝中間部に
50%の狭窄がみられた以外異常なく,左室造影に
おいて,心基部,心尖部寄りに低収縮,心室中部
に過収縮(asynchrony)の所見がみられた.後
に判明したピルジカイニド濃度は2.75(0.2~0.9)
μg/mlと高値であった.その後,血液透析が行
われ,自覚症状,ECG変化は改善した.2週間後
に行われた左室造影では壁運動は改善していた.
これまでに本剤中毒症での左室運動に関する記載
はなく報告した.
62) ASD術後慢性心不全の増悪時にelectrical
stormを生じ治療に難渋したペースメーカー患者
の1例
(富山県立中央病院循環器内科) 谷口陽子・
丸山美知郎・小林忠弘・尾嶋紀洋・杉田光洋・
花岡里衣・北野鉄平・紺谷浩一郎・安間圭一・
永田義毅・臼田和生
(同心臓血管外科) 西谷 泰
65) ピルジカイニド中毒により心肺停止を呈し
たと考えられた一例
(金沢大学循環器内科) 松原崇史・
井野秀一・藤野 陽・川尻剛照・内山勝晴・
林 研至・坂田憲治・高田睦子・舛田英一・
坪川俊成・舟田 晃・坂元裕一郎・村本明彦・
岡島正樹・高村雅之・山岸正和
68) 部分肺静脈環流異常症の診断にMDCTが有
効であった1例
(金沢大学循環器内科) 吉川智晴・
高田睦子・坂田憲治・川尻剛照・井野秀一・
山岸正和
(富山赤十字病院循環器内科) 賀来文治・
新田 裕・田口富雄・勝田省嗣
74歳女性.慢性心不全,心房中隔欠損症術後,心房
細動,VVIペースメーカ植え込み術後にて当院通院
中.肺炎,心不全で入院後に突然心室細動を生じショ
ック状態となった.電気的除細動で一旦心房細動へ戻
るも,electrical stormを生じ,ペースメーカから抗頻
拍ペーシングを試みるも閾値が上昇しペーシング不全
を来した.ニフェカラント,リドカイン,アプリジ
ン,βブロッカー,マグネシウム製剤を投与するも
electrical stormは続いた.心不全の治療と心肺蘇生を
継続して行い,ペーシング出力を調整することによ
り抗頻拍ペーシングが可能となり,12時間に渡る心室
細動electrical stormを脱することができた.electrical
stormの原因として,感染に伴う心不全の増悪,QT
延 長 に 伴 うtorsade de pointsが 疑 わ れ た.electrical
stormに対し,抗不整脈薬が無効であり,抗頻拍ペー
シングが有効であった心不全症例を経験したので報告
する.
症例は73歳女性.二弁置換術及びペースメーカー
植え込み術後,心房細動に対して近医で通院加療
を受けていた.平成20年外出時に突然倒れ,通
行人が救急隊を要請,現場到着時心肺停止状態
にあり,心電図モニターでは心室細動を認めた.
AEDによる除細動にて自己心拍を確認後,当院
に搬送となった.来院時140回/分の心室頻拍を
認めたが自然停止し,その後は不整脈の再発を認
めなかった.第22病日に行った冠動脈造影では虚
血を疑う所見はなく,電気生理検査においても持
続性心室頻拍や心室細動は誘発されなかった.ピ
ルジカイニドを内服していたが入院当日の血中濃
度が中毒域内と判明し同剤の催不整脈作用が原因
と考えられた.一般に高齢になるにつれ薬剤代謝
は低下していくため,抗不整脈薬の継続的投与に
は投与量等に注意が必要と考えられた.
【症例】37歳男性.小学生時に心房中隔欠損症の
診断にて閉鎖術を施行.以後,自覚症状なく生
活してきたが平成20年3月に発熱を主訴に来院.
胸部X-pにて肺血管陰影の増強を認めため当科紹
介.経胸壁心エコーにて右心房,右心室の拡大,
肺血体血流比の拡大を認め,経食道エコーにて心
房中壁二次口から,静脈洞部から右心房への著
明なシャント血流を認めた.心臓カテーテル検
査で右房レベルでのO2ステップアップを認めた.
MDCTを施行したところ左肺静脈から上大静脈
へ異常還流する部分肺静脈環流異常症の合併を発
見できた.【結語】心房中隔欠損症合併によるシ
ャント血流のため心エコー,心臓カテーテル検査
で確認できない部分肺静脈環流異常症をMDCT
で確認可能であった.
896 第 116 回北陸地方会
68歳,女性.僧帽弁閉鎖不全と心房細動(AF)
に対し,僧帽弁形成術+MAZE手術を施行.術後
AF再発に対しamiodarone(AMD)200mg内服を
開始.AF持続し,術後20日目電気的除細動施行.
metoprololとAMDで経過を見ていたが,動悸・め
まいあり,70日目に失神で救急搬送.Holter心電
図上,発作性AF停止時に5秒の洞停止あり,徐
脈頻脈に伴う失神と考えられた.AMDを100mg
に減量し,metoprololをbisoprolol 5mgにしてか
らは失神・めまいなし.AMDを徐々に減量,中
止 後 もAFの 再 発 な く 経 過 し て い る.MAZE後
AF再発,徐脈頻脈症候群に対して,短期間少量
AMDで洞調律を維持することにより,その後の
洞調律維持が可能となった症例を経験した.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
69) 64列MDCTにて左主幹部病変が指摘された
無症候性糖尿病患者2例∼無症候症例における心
臓CTの役割∼
(福井県済生会病院内科) 平澤元朗・
近田明男・大倉清孝・竹森一司・前野孝治・
登谷大修・田中延善
【背景】無症候性の多リスク因子保有症例で冠動
脈病変が指摘されることは少なくないが,そのス
クリーニング基準に関してコンセンサスの得られ
たものはない.今回我々は,無症候性患者におけ
る冠動脈疾患スクリーニングとしての64列MDCT
の役割に関し考察した.【症例】2症例はいずれ
も糖尿病に加え,複数の冠動脈疾患危険因子を有
するが無症状であった.スクリーニング目的で両
症例に心臓CTを実施したところ,各々左冠動脈
主幹部に高度狭窄を認めた.さらに症例1ではプ
ラークの性状を,症例2では病変部位が冠動脈入
口部であることを予め把握でき,その後の検査や
治療方針を決める上で役立った.
【考察】提示し
た症例はいずれも無症候性ながら突然死の可能性
があり,その検出に心臓CTが有用であった.今
後スクリーニング目的の心臓CTの重要性は増し
ていくものと予想されるが,どのような患者にど
の段階で施行すべきはさらに検討が必要である.
72) 心不全予後予測における心筋脂肪酸代謝評価
(金沢大学病院核医学診療科) 松尾信郎・
中嶋憲一・滝 淳一・絹谷清剛
【目的】心筋エネルギー産生は脂肪酸代謝の依存
が大きい.脂肪酸代謝シンチ(BMIPP)により
心不全患者の心筋脂肪酸代謝を非疾患者との比
較し評価する.また,予後予測における有用性
について評価する.【方法】32名の心不全患者及
び18名の非疾患者BMIPP(111MBq)静注後15分
(initial)と3時間後(delay)に心筋シンチグラ
フィを施行した.
【成績】心不全患者において心
筋脂肪酸代謝は障害されていた.BMIPPによる
脂肪酸代謝障害の程度は心不全の臨床的重症度と
相関していた.H/Mを中央値の1.94で二群にわけ
たところH/M低値では心不全または不整脈によ
る入院が高かった(p<0.05).BMIPPによる心筋
脂肪酸代謝の評価は予後の指標としても有用であ
った.【結論】心不全患者においてBMIPPによる
心筋脂肪酸代謝の評価は有用な臨床指標となり得
る可能性がある.
75) 心拍依存性左室非同期性収縮−2Dスペッ
クル・トラッキング法を用いた心房細動例におけ
る至適心拍数
(射水市民病院循環器科) 高川順也・
上野博志・管生昌高・石瀬久也・麻野井英次
心房細動例を対象に,先行RR間隔の変動に伴う
局所心筋収縮の同期性の変動を定量的に計測し,
局所の心筋収縮時相のばらつき(非同期性収縮)
が最小となる至適RR間隔を検討した.2Dスペッ
クル・トラッキング法を用いて,左室短軸断面の
6領域の局所壁運動を記録した.1心拍毎に相対
する3方向の壁運動の収縮位相差(ラグ時間)を
相互相関関数により定量評価し,非同期性収縮の
指標とした.ラグ時間は方向により異なり,症例
毎に最大ラグ時間を示す非同期性収縮が最も大き
い方向が存在した.さらに,先行RRとこの最大
ラグ時間との関係から,ラグ時間が最小となる先
行RR間隔を決定できた.以上の方法を用いるこ
とにより,心房細動例において左室の非同期性収
縮が最小となる最適心拍数を決定することが可能
となる.
70) PSL漸減の指標としてMRIを用いた心サル
コイドーシスの一例
(金沢大学循環器内科) 余川順一郎・
井野秀一・藤野 陽・内山勝晴・林 研至・
坂田憲治・舛田英一・坪川俊成・坂元裕一郎・
舟田 晃・村本明彦・高村雅之・岡島正樹・
山岸正和
73) たこつぼ型心筋症様の心機能障害が遷延し
た一症例における核医学検査での検討
(福井大学循環器内科) 嵯峨 亮・
荒川健一郎・森下哲司・冨士栄博昭・
佐藤岳彦・石田健太郎・森川玄洋・下司 徹・
見附保彦・宇隨弘泰・中野 顕・居軒 功・
李 鍾大
症例は46歳,女性.2001年に胃癌に対して幽門側
胃切除術が施行された.2007年2月に癌の再発を
疑い施行したFDG-PETにて両側縦隔リンパ節へ
の集積を認め,当院に紹介入院となった.心エ
コー検査にて冠動脈支配領域に一致しない壁運
動の低下,MRIにて心室中隔基部の菲薄化・広範
なT2高信号と遅延濃染像を認め,心サルコイド
ーシスと診断した.PSL 30mg/日の投与開始し,
Gaスキャンにて心臓への集積の低下を確認した
3月に退院となった.5ヶ月後のMRIでは広範な
遅延濃染像と左室壁の菲薄化は認めたが,T2高
信号はほぼ消失しており,PSL 10mgまで減量し
た.PSLの漸減の指標として心臓MRIを用いた症
例を経験したので報告する.
86歳女性.完全房室ブロックを認めたため2008年
1月22日ペースメーカー植え込み術を施行した.
術後問題なく経過したが,1月28日の胸部レント
ゲン上,左側胸水と心拡大を認めた.術前心エコ
ーでは壁運動良好であったが,左室壁運動がびま
ん性に低下しており,前壁から心尖部にかけては
広範に瘤化を認め3ヶ月経過後も壁運動の改善
は得られなかった.原因検索のため,Tc-MIBI,
BMIPPシンチを施行したところ,前壁-心尖部に
欠損を認めたがFDG-PETでは,心尖部-前壁に集
積を認めた.なお,冠動脈造影検査では有意狭窄
なく,冠攣縮誘発試験も陰性であった.【考察】
たこつぼ型心筋症様の心機能障害を認め,核医学
的検査からはViabilityがあるものと思われたが,
発症後3ヶ月以上経過しているにも関わらず壁運
動の改善は認められなかった症例を経験した.
71) Genshini scoreを用いた冠動脈疾患とCAVI
との相関性
(中村病院) 兼八正憲・正村克彦
74) トロポニンⅠ遺伝子変異肥大型心筋症の臨
床病型の差異と剖検所見の比較
(金沢大学循環器内科) 舛田英一・
井野秀一・藤野 陽・内山勝晴・林 研至・
坂田憲治・坪川俊成・坂元裕一郎・舟田 晃・
村本明彦・高村雅之・岡島正樹・山岸正和
(市立輪島病院) 北 義人
77) 右房内破裂により心不全をきたしたバルサ
ルバ洞動脈瘤の一例
(金沢大学病院検査部) 寺上貴子・
大場教子・林 研至・和田隆志
(金沢大学循環器内科) 井野秀一・
高村雅之・山岸正和
(同心肺総合外科) 富田重之・渡邊 剛
トロポニンⅠ遺伝子Lys183del変異では約30%に
拡張相への移行がみられ,心室中隔の菲薄化と関
係していることを報告してきた.この菲薄化には
同部位の線維化が強く関与していると推測されて
いるが,詳細は明らかではない.今回拡張相への
非移行例と移行例の剖検所見を比較する機会を得
たので報告する.非移行例は92歳男性.88歳頃よ
り拡張不全による心不全で薬物治療をうけてい
た.剖検所見では非対称性心室肥大を認め,心筋
の線維化は肥大部位を中心に斑状に認めたが,線
維化の程度は軽度であった.移行例は74歳女性.
65歳頃に拡張相へ移行し,心不全などにて十数回
の入院歴があった.剖検所見では心室の拡大と心
室中隔の菲薄化を認めた.心筋の線維化は左室全
体に広がり,特に中隔では帯状の線維化を認めた.
【症例】50歳,男性【主訴】呼吸困難【発症と経過】
平成19年8月,呼吸困難を主訴に前医を受診した.
バルサルバ洞動脈瘤破裂の疑いにて精査加療目的
に当科紹介となった.術前の経胸壁心エコーと経
食道心エコーより,バルサルバ洞動脈瘤から右房
内へ向かうシャント血流を認めた.心不全加療
後,9月に大動脈弁置換術+バルサルバ洞動脈瘤
切除パッチ形成術を施行した.大動脈弁は三尖弁
で軽度石灰化を伴い,三尖弁近傍にPauchを形成
しており,その中腹にholeがあり先端は石灰化し
ていた.バルサルバ洞の破裂部はRCCに存在し,
右房に認めるPauch部分と交通していた.
【結語】
術前の経胸壁心エコーにより,瘤の形態と位置お
よびシャント血流を確認し得た.右バルサルバ洞
動脈瘤破裂は非常に稀な症例であり報告する.
【目的】動脈硬化の指標であるCardio Ankle Vascular Index(CAVI)と冠動脈疾患との関係性を
検討すること.【方法】初回冠動脈造影を施行し,
かつ血圧脈波検査を行った275症例(平均年齢73
歳,男性170例)に対して冠動脈病変の総合的評
価を示すGenshini score(GS)を算出し,Ankle
Brachial Index(ABI)及びCAVIとの相関性を検
討した.また年齢による影響を考慮し,GSを低
スコア群(40未満)と高スコア群(40以上)の
2群に分け,CAVIの年齢別基準値との比較検討
も行った.【結果】GSとABIは相関を認めなかっ
たのに対して,GSとCAVIは良好な相関を示した
(P<0.05).またCAVIの年齢別基準値との比較で
は,基準値より高値であった症例は低スコア群で
49%,高スコア群で70%であり,年齢を考慮した
上でのCAVIとGSは相関を示した.【結語】CAVI
は冠動脈疾患の重症度を反映し良好な相関を認
め,心血管リスク指標の一つとして有用と考えら
れた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
76) 心エコーで偶然発見された右室内腫瘍の一例
(金沢大学病院検査部) 大場教子・
寺上貴子・林 研至・和田隆志
(金沢大学循環器内科) 井野秀一・
高村雅之・山岸正和
(同心肺総合外科) 富田重之・渡邊 剛
症例は43歳,男性.平成19年7月に前医で心エコ
ーの被検者になり,偶然右室腫瘍を指摘され,精
査加療目的に当院紹介となった.経胸壁心エコー
にて右室側壁に腫瘍を認めた.腫瘍は心筋内~右
室内へ突出しており,内部性状は均一で,辺縁は
平滑・明瞭,可動性は認めなかった.最大61mm
×30mmの腫瘍で弁との接触はなく,右室流出路
狭窄はなかった.冠動脈造影では右冠動脈右室枝
より腫瘍が造影される栄養血管を認めた.平成20
年1月に右室腫瘍切除+右室パッチ形成術を施行
した.腫瘍は心筋内に迷入した形で,心筋との
境界は明瞭であった.病理検査の結果,cardiac
fibromaと診断された.Cardiac fibromaは,新生
児や小児での発見が多く,成人での発見例は非常
に稀であり報告する.
金沢大学(2008 年 7 月) 897
78) 興味ある経過をたどった右心不全の1例
(金沢大学循環器内科) 茶谷 洋・
高村雅之・黒川佳祐・池田景子・高島伸一郎・
大辻 浩・加藤武史・村井久純・薄井荘一郎・
岡島正樹・古荘浩司・金子周一・山岸正和
81) 巨大左室内血栓を生じた拡張型心筋症の1例
(金沢大学循環器内科) 池田景子・
古荘浩司・茶谷 洋・黒川佳祐・高島伸一郎・
大辻 浩・加藤武史・村井久純・薄井荘一郎・
岡島正樹・金子周一・高村雅之・山岸正和
症例は77歳男性,C型慢性肝炎と陳旧性脳梗塞に
て当科通院しワーファリンを内服中,2008年4月
27日から食欲が低下し体動時の呼吸困難が出現し
5月2日に救急搬送となった.意識は清明であっ
たが,頚静脈怒張,肝腫大,下腿浮腫,胸部レン
トゲンでは心拡大と胸水貯留,心エコーで2004年
には認めなかった右心負荷所見を認め同日緊急入
院となった.入院中shockとなり乳酸アシドーシ
スが出現してきたため昇圧剤,ビタミン剤の投与
とCHDF(持続的血液透析濾過)を施行したとこ
ろアシドーシス,右心負荷所見の消失を認めた.
本例は加療により急激な経過で右心負荷所見の消
失を認めた事から非常に稀な1例と考え文献的考
察を加え報告する.
症例は44歳,男性.中学1年生の頃より心拡大を
指摘されていたが,1987年,動悸発作を主訴に当
院を受診し,拡張型心筋症および心室頻拍と診断.
植込み型除細動器の植込みを行った.植込み後,
複数回の正常作動を生じたが,アミオダロン導入
後は頻拍発作の出現を認めず,状態は安定してい
た.2008年4月,発作性の胸痛を主訴に入院とな
った.軽度の炎症反応及び胸水が認められたこと
から,当初胸膜炎が疑われ,抗生剤の投与にて経
過観察としていた.入院後に施行した心臓超音波
検査にて,左室心尖部に約36×39mmの巨大血栓
を認めた.ただちにヘパリンおよびワーファリン
による抗凝固療法を開始した.
【総括】今回我々は,
拡張型心筋症の経過中に生じた巨大左室内血栓の
1例を経験したので報告する.
79) 下肢疼痛を主訴に発見された左房粘液腫の
1例
(市立砺波総合病院循環器科) 鷹取 治・
小林大祐・齊藤伸介・白石浩一
(金沢大学心肺総合外科) 永峰 洋・
渡邊 剛
82) 各種薬物治療および機械的補助にもかかわ
らず改善が得られなかった劇症型心筋炎の1例
(厚生連高岡病院循環器内科) 木山 優・
桶家一恭・藤田崇志・打越 学・藤本 学・
山本正和
症例は59歳男性,特に検診などで異常を指摘され
たことはなかった.屋外にて雪かきをした後,両
手の脱力感及び両下肢の疼痛が出現したため,当
院を受診した.受診時,両手の脱力感は改善し両
下肢の疼痛も改善傾向であったが,右下肢の色調
蒼白を認め,両側足背動脈は触知微弱であった.
塞栓症状の可能性を疑い心エコーを施行したとこ
ろ,左房内に可動性の腫瘤を認め,左房粘液腫を
疑った.全身造影CTを施行したところ,両腎の
多発梗塞・脾梗塞・心臓内腫瘤を認め,頭部MRI
上は多発脳梗塞像を認めた.全身塞栓症状を合併
した左房粘液腫と診断し,腫瘍摘出術を施行し
た.病理像により左房粘液腫と確定診断した.左
房粘液腫の塞栓症状に対し若干の考察を加え報告
する.
80) 左室体部肥大と心尖部無収縮を伴った心筋
症の1例
(市立敦賀病院循環器科) 奥河原あゆみ・
中野 学・三田村康仁・音羽勘一・池田孝之
症例は58歳,男性.高血圧の診断で外来通院中で
あった.胸部症状の既往なし.平成19年11月4日
頃から,労作時の呼吸困難が出現し,11月6日に
当院受診.心電図,採血,心臓超音波検査などから,
急性冠症候群の可能性もあり入院のうえ心臓カテ
ーテル検査を施行した.冠動脈造影では明らかな
冠動脈狭窄を認めず,左室造影上,左室体部の肥
大および過収縮,心先部の無収縮を認めた.心筋
血流シンチにて,血流低下所見は認めず,虚血性
心疾患は否定的であった.その後,自覚症状が改
善したため,平成19年12月1日に退院し,平成20
年2月28日にCT検査を施行したが,心尖部の壁
運動異常は改善していなかった.当初,たこつぼ
型心筋症も鑑別と思われたが,約3ヶ月間,心尖
部の壁運動異常が遷延しており,たこつぼ型心筋
症としては非典型的であり,貴重な症例と考えた.
898 第 116 回北陸地方会
症例は19歳男性.発熱にて近医受診し抗生剤投与
にても改善せず,第5病日同院再診の際に肝酵素
上昇,炎症反応を認め,胸部違和感,下痢,嘔
吐認めるようになり,第6病日当院紹介.CTで
は肝腫大のみであり,採血にてCPKの上昇認め,
第7病日心エコーにて左室壁運動はびまん性に
低下,EF 54%であり,心電図でもwide QRSを認
め,急性心筋炎と診断.収縮期血圧80mmHg台で
あり,カテコラミンの投与を開始するも,同日急
速に心不全をきたし,ショック状態となりIABP
挿入,人工呼吸管理とした.この時点ではCO
5.0ml/minを維持していたが,6時間後にはVTか
らショック状態となり,PCPS導入,体外式ペー
スメーカー留置し,免疫グロブリン大量投与を行
った.しかし心機能は改善せず,心エコー上も左
室収縮は第8病日から第16病日まで無運動のまま
であり,LVADの適応と考え国立循環器病センタ
ーへ搬送した.予後予測や搬送問題など文献的考
察を加え報告する.
83) 心膜嚢胞を合併した収縮性心膜炎の1例
(金沢医科大学循環制御学) 野村祐介・
赤尾浩慶・上西博章・河合康幸・北山道彦・
浅地孝能・津川博一・梶波康二
(同心血管外科学) 野中利通・秋田利明
(同血液免疫制御学) 田中真生
51歳男性.2006年8月より慢性関節リウマチ(RA)
にて当院血液免疫内科通院中であったが,2007年
8月以降自己判断で通院を中断.2007年12月下
旬から全身関節痛,尿量減少及び下肢浮腫が出
現,改善傾向なく2008年1月7日に血液免疫内科
入院.RAには少量ステロイド及び免疫抑制剤を
開始し炎症反応は沈静化.しかし,夜間の呼吸
苦も出現し両心不全が考えられ,CT及びMRIに
て右室前方の心嚢液貯留及び心膜肥厚を認め,心
不全の精査・加療目的に2月16日に当科へ転科.
TTEでは右心系狭小化及びEFSを認め,TEEで
は右室前方に内部エコー不均一な嚢胞と心膜肥厚
を認めた.腫瘍の可能性も否定できず全身検索し
たが有意所見は認めず.心室圧曲線におけるdip
and plateau及びPCWPの上昇(22mmHg)を認め
た.以上から心膜嚢胞が合併した収縮性心膜炎に
よる両心不全と診断した.3月26日に心膜嚢胞除
去及び心膜切除術を施行し,心膜は7mmに肥厚
し慢性炎症性変化を認めた.
84) 完全房室ブロックを機に発見された心臓内
悪性リンパ腫の1例
(福井県立病院循環器科) 吉田昌平・
馬渕智仁・野路善博・山口正人・藤野 晋・
青山隆彦
(西浦病院) 上谷義尚
症例は80歳代女性.主訴は呼吸困難,既往歴は
2004年より関節リウマチ.現病歴は2008年1月呼
吸苦を訴え,近医受診.頻脈性心房細動を認め,
処方された.2月に心房細動,房室ブロックを認
め,ジゴキシン,β遮断薬を中止.3月にはいり,
呼吸苦,浮腫の増悪を認め,心電図上も完全房室
ブロックの改善を認めないため,当院へ紹介とな
った.入院後ただちに,右室に体外式ペースメー
カを挿入したが,浮腫,呼吸困難の改善は不良で
あった.心エコー上右心房に腫瘤を認め,心房中
隔のいびつな肥厚を認めた.胸部CTでも同様の
所見を認めた.採血上IL2-R 5600と著増しており,
悪性リンパ腫と診断した.今回完全房室ブロック
を機に発見された心臓内悪性リンパ腫の興味深い
1例を経験したので,報告する.
85) 悪性リンパ腫の浸潤により心臓の拡張障
害,急性心筋梗塞を発症した一例
(金沢大学循環器内科) 村本明彦・
井野秀一・山岸正和
(高岡市民病院循環器科) 平瀬裕章・
原城達夫
悪性リンパ腫により種々の心合併症を生じた例を
経験したので報告する.症例は76歳の男性.労作
時の呼吸苦が出現したため受診した.心電図上,
完全房室ブロックおよびエコー上心臓の後面から
下面にかけての巨大な腫瘤を認め,同日入院した.
入院後,不明熱,LDHの上昇,体重減少を認めた.
全身状態の改善後DDDペースメーカーの移植を
行った.腫瘤の確定診断のため胸腔鏡による生検
を施行した.術中に心電図上,下壁誘導のST上
昇を認め,緊急心臓カテーテル検査を行ったとこ
ろ腫瘍の浸潤によると考えられる4PDの狭小化お
よび拡張障害を認めた.生検の結果,びまん性大
細胞型リンパ腫と診断し化学療法を行った.血行
動態の改善を認めたが,肺炎を合併し永眠された.
剖検による確認はできなかったが,多彩な合併症
により治療に苦慮した症例であった.
86) 肺癌の心筋転移の一剖検例
(富山市民病院内科) 千代 満・山下 朗・
寺崎敏郎・清川裕明・余川 茂
(浅ノ川総合病院内科) 渡部秀人
症例は83歳,男性.2003年に右肺S6の扁平上皮
癌と診断されたが保存療法にて経過観察.2006年
4月から6月に発作性心房細動とうっ血性心不全
にて入院.心電図では胸部誘導でのST上昇を認
め,胸部CT検査,心エコー図では左室心尖部か
ら中隔にかけての腫瘍性病変および心嚢水を認め
た.2007年9月より食思不振が出現し11月再入院.
胸部CT検査では右肺門から下葉にかけての肺腫
瘍の増大,多発リンパ節転移,胸膜播種,癌性胸
膜炎・癌性リンパ管症が疑われた.2008年1月に
入り血圧低下,尿量の減少,意識レベルの低下を
認め1月14日12時15分永眠.剖検では肺に混合型
小細胞癌を認め細胞形態的には扁平上皮癌と小細
胞癌の衝突癌であった.心臓では扁平上皮癌の心
室中隔心尖部への転移を認め,また小細胞癌の縦
隔・横隔膜から心嚢や心外膜への浸潤転移が見ら
れた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
87) 乾性咳嗽・完全房室ブロックを呈した心臓
悪性リンパ腫の1例
(金沢大学循環器内科) 徳久英樹・
高村雅之・茶谷 洋・黒川佳祐・池田景子・
高島伸一郎・大辻 浩・加藤武史・村井久純・
薄井荘一郎・岡島正樹・古荘浩司・金子周一・
山岸正和
症例は56歳男性.乾性咳嗽に対し咳喘息や百日咳
を疑われ,約2ヶ月間β遮断薬,抗ロイコトリエ
ン薬やクラリスロマイシンを投薬されたが改善を
認めなかった.胸部違和感を契機に行った心電図
検査にて完全房室ブロックおよび下壁誘導におけ
る陰性T波を認め,心エコー上,後下壁基部に広
範な腫瘤性病変を認めた.CT,MRI検査にて心
臓周囲以外に縦隔リンパ節,脾臓,副腎にも腫
瘤を認め,FDG-PETにて同部位に強い集積を認
めた.縦隔リンパ節生検にてdiffuse large B cell
typeの悪性リンパ腫と診断,血液内科転科の上
CHOP療法を施行した.腫瘍は著明に縮小し,咳
嗽は消失,房室伝導も正常化した.乾性咳嗽およ
び完全房室ブロックという稀な経緯で見つかった
心臓腫瘍の1例を経験したので報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
金沢大学(2008 年 7 月) 899
第 100 回 日 本 循 環 器 学 会 北 海 道 地 方 会
2008 年 9 月 20 日 北翔大学北方圏学術情報センター「ポルト」
会長:島 本 和 明(札幌医科大学内科学第二講座)
1) 心臓カテーテル検査後にコレステロール塞栓
症を発症した1例
(市立札幌病院循環器科) 水島 航・
和田英樹・壇浦 裕・水上和也・岩切直樹・
牧野隆雄・中川雄太・福田洋之・加藤法喜
症例は67歳男性.生来健康であったが,2008年5
月6日の早朝に急性肺水腫にて当院救命センター
へ搬入となった.5月16日に心臓カテーテル検査
を施行したが,腹部大動脈から大腿動脈にかけて
の蛇行が強く,カテーテル操作に非常に難渋した.
CAGでは,AHA分類で#4AVに100%狭窄,#
7に75%狭窄を認めたため,5月26日に#4AV
に対してPCIを施行した.PCI後より徐々に腎機
能が増悪し,右足趾の皮膚の変色を認めた.右足
趾の皮膚生検にてコレステロール塞栓症と確定診
断し,ステロイドの内服を開始したところ,腎機
能の改善を認めた.心臓カテーテル検査後のコレ
ステロール塞栓症は,稀ではあるが重篤な合併症
であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
2) 繰り返す冠動脈ステント内再狭窄に対しエキ
シマレーザを用いて治療した1例
(北海道社会保険病院心臓血管センター心臓内科)
管家鉄平・古谷純吾・田所心仁・木谷俊介・
西村邦治・五十嵐正・四戸力也・石丸伸司・
五十嵐康巳・五十嵐慶一
症例は60代男性.2001年に左冠動脈前下行枝に90
%狭窄病変を認めたためステント治療を行った
が,約半年後に再び胸痛が出現.ステント内に再
狭窄を認めた.ロータブレーターにより再治療を
行ったが半年後再びステント内に狭窄を認めた.
その後もステント内再狭窄を繰り返し,カッティ
ングバルーン,DCA,薬剤溶出性ステントの追
加留置など,さらに計4回の治療を必要とした.
2007年に入り再び胸痛が出現し6度目のステント
内再狭窄が判明.今回はエキシマレーザを用いて
ステント内のプラークを蒸散させた後にステント
治療を行い良好な拡張を得た.新規冠動脈病変に
対する治療と比較し,ステント内再狭窄に対する
治療は従来慢性期再狭窄率が高かったが,エキシ
マレーザを併用することで慢性期再狭窄率の軽減
が期待されている.
900 第 100 回北海道地方会
3) エルゴノビン誘発試験で冠攣縮が誘発され,
右冠動脈解離を起こした1例
(北海道勤医協中央病院循環器内科)
河野龍平・鈴木ひとみ・鈴木隆司・奥山道記・
堀 雄
【症例】64歳女性【現病歴】夜間安静時の精査加
療目的で当科入院となった.【入院後経過】冠動
脈造影では左前下行枝#7 75%狭窄のみの1枝
病変で,右冠動脈は正常であった.左冠動脈のエ
ルゴノビン負荷試験では冠攣縮は誘発されなかっ
た.右冠動脈にエルゴノビン10μgを冠注したと
ころ徐脈が出現し,冠動脈造影で#1に冠動脈解
離を伴う99%狭窄を認めた.NTG冠注後の造影
では,冠動脈解離の所見は残っていた.血圧・心
拍数は改善,症状は消失し,冠動脈血流は良好と
なったため,PCIは行わず終了とした.翌日施行
した冠動脈CTで冠動脈の血流は良好であったた
め退院となった.冠攣縮誘発試験の合併症として
冠動脈解離を起こした症例を経験したので報告す
る.
4) PCI中にLAD no flowを来たしたがその後良
好な治療経過であった1例
(北海道社会保険病院心臓血管センター心臓内科)
田所心仁・五十嵐正・木谷俊介・管家鉄平・
西村邦治・四戸力也・石丸伸司・古谷純吾・
五十嵐康巳・五十嵐慶一
【症例】76歳男性【現病歴】平成20年6月胸痛を
主訴に近医受診.心電図変化,心エコー上前壁の
壁運動低下を認めたため同日当科紹介,入院.緊
急CAG施行,#6−totalであった.引き続きPCI
施行,血栓吸引施行後#6にBMS留置.その後
#7にBMS留置しpostdilatationを施行した際に
no flowとなり,血栓吸引,ニトロール,ニトプ
ロ冠注しIABP留置し手技終了した.LAD近位部
のAMIで手技終了時TIMI2 flowしか得られなか
ったが,peak CK 1587U/Lと比較的軽度であっ
た.心臓リハビリの経過も順調で,第15病日に退
院となった.
5) 心筋梗塞発症を契機に発見された川崎病罹患
歴が明らかではない左右冠動脈瘤の2例
(札幌鉄道病院循環器科) 坂本 淳・
長谷川徹・南場雅章・土田哲人・遠藤利昭・
安藤利昭・飯村 攻
症例1は47歳,症例2は48歳.ともに男性で胸部
圧迫感が出現し来院,II・III・aVFでST上昇を
認め緊急CAGを施行した.症例1では#1の閉
塞と#7の99%狭窄を認め,#1と#7に冠動脈
瘤が存在した.#1・#2と#7にステントを留
置して再灌流に成功した.症例2では#1が閉塞,
左右冠動脈起始部に瘤を認めた.t-PA160万単位
の冠動脈内投与により再灌流し,狭窄部にステン
トを留置した.2例とも冠動脈瘤より川崎病罹患
が示唆された.川崎病は1967年に報告された小児
の炎症性疾患であり,しばしば冠動脈瘤を形成す
る.免疫グロブリン療法により巨大瘤は減少した
が,40歳台以降の患者では小児期に冠動脈瘤を形
成し,その後の経過観察も行われず心筋梗塞を発
症する症例が存在する.川崎病による冠動脈瘤が
原因と考えられる心筋梗塞を2例経験したので報
告する.
6) うつ病治療中に二度の心筋梗塞を発症した一例
(新日鐵室蘭総合病院循環器科) 大畑純一・
松木高雪
(同内科) 山内一暁
(同透析科) 島崎 優
(同循環器科) 岩田至博・高橋 弘・
中村裕一
(同内科) 岡崎雄介
(同リハビリテーション科) 横山豊治
(同内科) 菊入 剛
うつ病は虚血性心疾患のリスクファクターである
ことは多数報告されている.今回われわれはうつ
病に心筋梗塞を合併した症例を経験した.症例は
46歳男性.38歳のころよりうつ病,高血圧,高脂
血症の治療を行っていた.39歳時に急性心筋梗塞
にて左前下降枝#6に経皮的冠動脈形成術(PCI)
を施行された.以後精神科にてうつ病の治療と抗
血小板剤の投与を行われていたが胸痛の自覚はな
かった.平成20年2月14日朝7時ころより胸痛を
自覚し当院受診.心電図上下壁誘導のST上昇が
あり緊急冠動脈造影検査施行.右冠動脈#1の閉
塞を認め同部位にPCIを施行しその後の経過は順
調であった.このようにうつ病の投薬治療中に2
度の心筋梗塞を発症した症例を経験したので若干
の文献的考察を加えてここに報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
7) 多枝冠攣縮により突然死を来した2症例
(JA北海道厚生連帯広厚生病院第二内科)
岩井慎介・茂庭仁人・湯藤 潤・望月敦史・
進士靖幸・永原大五・高橋 亨・林 学・
佐藤直利・鹿野泰邦
【症例1】52才男性.平成19年9月朝,失神し救
急車で当院搬入.来院時は心室細動で,除細動
後のECGでII,III,aVF,V1−4のST低下とI,
aVLのST上昇を認めた.CAGではRCAの攣縮と
LAD,LCXの血栓閉塞を認めた.RCAの攣縮は
亜硝酸剤にて解除されたがLAD,LCXの攣縮は解
除されなかった.IABPなど治療をしたが同日死
亡.【症例2】70才男性.平成19年11月,胸痛を
主訴に当院受診.ECG上II,III,aVFのST上昇
を認めたがCAGでは有意狭窄無し.LVGにて下壁
低収縮を認め冠攣縮による心筋梗塞と診断しCa
拮抗剤を開始.第5病日朝,胸痛が出現.CAG
にてRCAの攣縮とLAD,LCXの血栓閉塞を認め
た.亜硝酸剤によりRCAの攣縮は解除されたが,
LAD,LCXの血栓は消失せずPCPSなど治療をし
たが同日死亡.【まとめ】多枝冠攣縮により突然
死を来した2症例を経験した.
8) 側副血行路に冠動脈瘤を認めた梗塞後狭心症
の一例
(帯広病院) 小村 悟・青木真弓・
牧口展子・上北和実・満岡孝雄・尾畑弘美
(本別町国保病院) 藤澤明徳
83歳,男性.H3年他院にて下壁心筋梗塞に対し
PCI治療歴あり.今年4月より労作時前胸部不快
感出現,精査目的で紹介.冠動脈造影では,右冠
動脈#1で完全閉塞,末梢は左冠動脈回旋枝より
房室間溝をまわりgrade3の側副血行路を認めた
が,その中央部に最大径10×7mmの嚢状冠動脈
瘤を認めた.右冠動脈CTO病変に対してPCI施行,
DES留置となる.最終造影では,右冠動脈からの
造影でも側副血行を介し回旋枝が造影され,また,
冠動脈瘤で造影剤のpoolingを認めた.1週間後,
合併するVTに対してEP検査時,再造影施行,側
副血行は消失し,僅かに瘤の一部が確認できた.
【結論】側副血行路に冠動脈瘤が生じた原因につ
いては,初回PCI時のguidewire操作による可能
性もあり,興味深い症例と思われたので報告した.
9) 当院におけるPCI症例の予後の検討
(八雲総合病院内科) 長島 仁・沼崎 太
八雲総合病院は北部渡島地域でPCIを施行できる
唯一の院所である.当院は心臓血管外科を有さず,
最も近いそれは70km離れた函館市内に存在する.
八雲町のような地方小都市であってもPCIを必要
とする多数の患者が存在する.1995年からこれ
までに当院において400例以上のPCIが施行され,
また2006年に術者2人の新体制となってから2年
間で約200例のPCIを施行した.少数の循環器専
門医しか存在せず,心臓血管外科手術が行えない
地方小都市でも多くの患者がPCIの恩恵を享受し
ている.今回我々は当院のPCI症例の予後につい
て検討を行い,それを通して地方小都市における
PCIの可能性と限界について議論したいと考えて
いる.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
10) 後壁の急性心筋梗塞後慢性期に巨大左室仮
性心室瘤を来たした一例
(心臓血管センター北海道大野病院)
加藤康寛・佐藤俊也
症例は70代男性.平成18年12月に後壁の急性心
筋梗塞を発症し,他院へ入院.緊急CAGでは#
13 100%閉塞.引き続きPCIを施行し,#13に
Driver stentを植え込み,0%に拡張された.側
枝の#14はslow flowで終了した.慢性期のEFは
34%であった.合併症なく退院し,外来通院して
いたが,平成19年4月上旬より労作時の息切れを
自覚,徐々に増悪し呼吸困難が強く外来を受診.
胸部レントゲン上肺うっ血と心拡大を認め,心不
全と判断し精査加療目的に入院.心エコー上,左
室後壁後方に最大径59×63mmの仮性心室瘤と僧
帽弁閉鎖不全を認めた.当院心臓血管外科にて,
左室形成術と僧帽弁形成術が行われた.現在は経
過良好である.急性心筋梗塞後の仮性心室瘤につ
いて,若干の文献的考察を交え報告する.
11) 34年前の鉄道事故が原因となった孤立性三
尖弁閉鎖不全症の1症例
(旭川医科大学循環・呼吸・神経病態内科)
鹿原真樹・田邊康子・太田久宣・小林 基・
中川直樹・赤坂和美
(同心臓血管外科) 赤坂伸之
(同循環・呼吸・神経病態内科) 佐藤伸之・
川村祐一郎
(同救急集中治療部) 郷 一知
(同心臓血管外科) 笹島唯博
(同循環・呼吸・神経病態内科) 長谷部直幸
75歳男性.1974年(41歳時)
,鉄道事故で右足切断.
以後検診にて心雑音を指摘されるようになる.1983年,
心肥大,不整脈を指摘され投薬開始.その後心拡大が
徐々に進行.1990年5月心エコー図で三尖弁逆流を認
め,孤立性三尖弁閉鎖不全症と診断.2007年8月頃よ
り感染を契機に,心不全増悪,汎血球減少を認めた.
内服調節にてもcontrolつかず,2008年4月入院.心エ
コー図で弁輪拡大に伴うmassiveな三尖弁逆流を認め
た.薬剤治療は限界と考え,三尖弁置換術を施行.手
術所見では三尖弁は広範囲に前尖が弁輪部からはずれ
ており,34年前の鉄道事故の際の外傷性三尖弁閉鎖不
全であった事が推測された.孤立性三尖弁閉鎖不全症
は比較的稀であり,文献的考察を加えて報告する.
12) 左房粘液腫の再発を認めたCarney症候群の
1例
(北海道大学循環病態内科学講座)
徳原 教・川嶋 望・佐藤陽子・岡田昌子・
絹川真太郎・岩野弘幸・山田 聡・筒井裕之
症例は57歳,女性.2006年4月,起坐呼吸が出現
し,心エコー図にて僧帽弁に嵌頓する左房腫瘍が
認められたため,緊急で腫瘍摘出術が行われた.
術中所見では,腫瘍は左房内に複数出現してお
り,病理組織学的には粘液腫であった.2007年10
月,労作時息切れにて当科入院.心エコー図にて
僧帽弁後尖に付着した左房腫瘍が認められ,粘液
腫の再発と考えられた.同年11月,腫瘍摘出術を
施行.腫瘍は左房および僧帽弁の広い範囲を占め
ていたため,同時に僧帽弁置換術も行われた.本
症例は他に,顔面の皮膚色素斑,下垂体腺腫の
既往,を有しており,Carney症候群と診断した.
Carney症候群は皮膚色素斑,粘液腫,内分泌腫
瘍などを特徴とする稀な遺伝性疾患である.今回,
Carney症候群の1例を経験したので報告する.
13) Libman-Sacks心内膜炎による大動脈弁閉鎖
不全症が疑われた抗リン脂質抗体症候群合併SLE
の1例
(札幌医科大学第二内科) 伊藤孝仁・
小山雅之・前田卓人・田中希尚・矢野俊之・
下重晋也・湯田 聡・橋本暁佳・島本和明
症例は,35歳女性.28歳時に中脳梗塞を発症し当
院紹介受診,リン脂質抗体症候群,SLEの診断で,
プレドニゾロン内服が開始となった.31歳時,拡
張期雑音の指摘を受け当科紹介となった.心エコ
ーでは,中等度の大動脈弁閉鎖不全症(AR)が
認められた.原因として,形態上,弁尖の肥厚,
輝度の上昇があり,接合不全が認められること,
さらに基礎疾患を考慮して,Libman-Sacks心内
膜炎によるARと診断した.35歳時,心不全症状
が出現,心エコー上,大動脈弁逆流の進行,左室
拡張及び収縮末期径の拡大,左室駆出率の低下が
認められた.利尿剤,アンジオテンシン受容体拮
抗薬の内服を開始し症状は軽快,現在手術待機中
である.Libman-Sacks心内膜炎が原因と思われ
るARについて文献的考察を交えて報告する.
14) 僧帽弁形成術の検討
(北海道大学病院循環器外科) 山川智士・
夷岡徳彦・新宮康栄・松井欣哉・杉木孝司・
若狭 哲・大岡智学・橘 剛・久保田卓・
椎谷紀彦・松居喜郎
1998年から2007年までの10年間に行った同一術
者による僧帽弁形成術78例の臨床成績を報告す
る.対象は退行変性や弁輪拡大および感染性心内
膜炎やリウマチ変性による僧帽弁病変とし,虚
血・心筋症によるtetheringMR症例(Carpentier
分類type3B)は除いた.僧帽弁単独手術は56例で,
大動脈弁置換術や冠動脈バイパス術などとの併施
例が22例であった.年齢は30∼83(平均64±13)歳,
男性38例,女性40例.術前NYHA心機能分類では
1:17例,2:29例,3:27例,4:5例.形成
術式と手術成績および中期・遠隔期の心エコー所
見,心機能評価などについて報告する.
15) 大動脈弁狭窄症に対する大動脈弁置換は2
度以下の僧帽弁逆流を術後本当に減らすのか?
(北海道大学病院循環器外科) 久保田卓・
松居喜郎・夷岡徳彦・新宮康栄・松井欣哉・
杉木孝司・若狭 哲・山川智士・大岡智学・
橘 剛・椎谷紀彦・村下十志文
【目的】当科で経験した大動脈弁狭窄症(AS)に
対する大動脈弁置換(AVR)により,術前2度以
下の僧帽弁逆流の術後早期変化を検討した.【方
法】1997年1月から2008年6月までに当科で経験
したASに対するAVRは102例.このうち僧帽弁に
対する付加手術,感染性心内膜炎,術前AR3度
以上,そして術後急性期に死亡した2例は除いた
65例を対象とした.【成績】男性28名,女性37名,
平均年齢68±9才(40∼85).術前MRがなし1例,
trivial13例,1度32例,2度20例.術後MRの減
少例はそれぞれ0例,0例,7例(22%),10例
(50%)であった.【結論】術前MRを1及び2度
に限定した51例では,術前MRは1.4±0.5度から
術後1.1±0.6度に有意に減少した(p=0.007).
北翔大学北方圏学術情報センター「ポルト」(2008 年 9 月) 901
16) 冠状動脈バイパス術後4年目に僧帽弁形成
術を施行した肺気腫,ASO,慢性腎不全の1例
(札幌中央病院心臓血管外科) 櫻田 卓・
大澤久慶・荒木英司
症例は77歳,男性.主訴は呼吸苦,全身浮腫.70
歳時に他院で両側大腿−膝窩動脈バイパス術の既
往あり.慢性心房細動,肺気腫,うっ血性心不全,
頚動脈狭窄,慢性腎不全もあり,平成16年3月よ
り当院で加療中であった.平成16年9月に#1お
よび#6の不安定狭心症に対してPCI(BMS)施
行.同年12月にステント内狭窄のためOPCAB2
枝(LITA-LAD,SVG−#4PD)を施行.その
後下肢虚血の進行を認め(右腸骨動脈75%,左腸
骨動脈99%)平成19年7月に腹部大動脈̶両側大
腿動脈(グラフト)バイパス術を施行した.その
後は腎機能および心不全の悪化が徐々に進行し,
心不全で入退院を繰り返した.平成20年4月に血
液透析を導入.同年5月20日に胸骨再正中切開で
僧帽弁形成術および三尖弁輪縫縮術を施行した.
術後経過は概ね良好であった.
17) 特発性コレステリン塞栓症の1例
(時計台記念病院循環器センター)
本間之子・浦澤一史・佐藤勝彦
症例は75歳の男性.平成20年1月左第1趾の変
色・疼痛が出現.症状は徐々に増悪し両足趾全て
に変色がおよび,2月下句より3ヶ月間で8kg
の体重減少と慢性腎不全(Cr3点台)が出現し
前医を受診.左総腸骨動脈閉塞,ABIの低下を指
摘され5月上旬に当科紹介受診,入院となる.入
院時のCrは5.2と急速な腎機能の悪化を認めた.
また白血球分画で好酸球30%と著明な上昇を認め
た.以上よりコレステリン塞栓症を疑い,当院形
成外科にて右第4趾尖部の生検を施行.コレステ
リン結晶が認められ,確定診断となった.ステロ
イドパルス,ストロングスタチン投与等により
Crは2.7まで改善,下肢痛消失し軽快退院となっ
た.誘引なく発症する特発性コレステリン塞栓症
は比較的稀であり,若干の文献的考察を交えて報
告する.
18) 下肢皮膚灌流圧の透析中の変動
(新日鐵室蘭総合病院透析科) 島崎 優
(同循環器科) 松木高雪
(同内科) 山内一暁
(同循環器科) 岩田至博・高橋 弘・
坂本賢一・大畑純一・中村裕一
(同内科) 岡崎雄介
(同リハビリテーション科) 横山豊治
皮膚灌流圧(SPP)が非侵襲的下肢虚血評価に施
行されているが,本検査を血液透析患者に応用す
るには,透析中の循環血液量減少等の機転がSPP
に影響を与える可能性がある.血液透析の進行と
共にSPP変動が顕在化するか検討した.糖尿病・
下肢末梢動脈疾患のない血液透析患者6例を対象
に,透析処置中の血圧,脈拍,足部SPPを透析開
始前,2時間・3時間経過後,透析終了後に測定
した.除水(限外濾過)量は透析の時間進行と共
に有意に増大し,脈拍数・血圧値は2時間後に低
値となりそれ以降は再増加した.SPPは各測定間
で有意な変化を認めなかった.末梢動脈疾患のな
い血液透析患者では,SPPは透析前・経過中・終
了時間で有意な変化を示さず,透析中に代償機転
が充分機能していると思われた.
902 第 100 回北海道地方会
19) PTRAが奏功した線維筋異形成(FMD)で
の腎動脈狭窄によるcardiac disturbance syndrome
の一症例
(函館五稜郭病院循環器内科) 西田絢一・
佐藤健司・現田 聡・福真隆行・北 宏之・
老松 寛・高田竹人
(札幌医科大学第二内科) 伊藤孝仁
22) 冠動脈瘤を伴った冠動脈肺動脈瘻の1治療例
(旭川医科大学第一外科) 数野 圭・
赤坂伸之
(同救急部講座) 郷 一知・清川恵子
(同第一外科) 野田雄也・木村文昭・
小久保拓・古屋敦宏・内田 恒・東 信良・
稲葉雅史・笹嶋唯博
症例は25才女性.平成19年4月頃より労作時息
切れを自覚し当科受診.XP上肺うっ血著明,心
エコー上びまん性の左室壁運動低下でEF38%で
あった.血圧高値,レニン活性(PRA)35ng/
ml/時と上昇あり,腎血管性高血圧による心障
害が疑われた.CTにて右腎動脈狭窄(RAS)を
認め,心不全コントロールのため経皮的腎動脈形
成術(PTRA)を行った.造影上右腎動脈起始部
より造影遅延を伴う高度狭窄を認めた.起始部
をバルーン拡張すると遠位部の連珠様狭窄像を
認めFMDと判断した.術後血圧は低下しPRA 35
→1.2ng/ml/時,BNP 458→21.3pg/mlと低下,
心不全は軽快し以後増悪無く経過している.若年
女性のFMDによるRASが原因と考えられた心不
全に対しPTRAが有効であった症例を経験したの
で報告する.
冠動脈瘤合併の冠動脈・肺動脈瘻は稀であり,更
にタンポナーデにて発症する例は少ない.症例は
69歳女性.意識消失状態で発見され前医搬入.心
タンポナーデの診断で,手術目的に当院搬入とな
った.CT上肺動脈前方に径25mm大の瘤を認め,
更にCAGにてD1の閉塞所見あり.冠動脈急性閉
塞によるタンポナーデと考え,緊急手術となった.
肺動脈前面に冠動脈瘤とそれに流入する冠動脈・
肺動脈瘻を確認.周囲に血腫を認め,冠動脈瘤破
裂による心タンポナーデと考えた.人工心肺下に
冠動脈瘤内腔から瘻孔を閉鎖.心筋保護液が染み
出さないことを確認し終了した.術後CAGにて
残存瘻孔があるため,カテーテルにて閉鎖した.
心タンポナーデによって発症した冠動脈瘤を伴う
冠動脈・肺動脈瘻孔をhybrid治療にて救命したの
で報告する.
20) 右心カテーテル検査施行中に脳塞栓症を生
じた1例
(名寄市立総合病院循環器内科) 井川貴行・
畑山真弓・簑輪 郁・島村浩平・武田智子・
酒井博司
(同脳神経外科) 和田 始・白井和歌子・
徳光直樹・相澤 希・佐古和廣
23) ステント挿入後のLAD再狭窄に対し,ステ
ント摘除・on-lay patchを施行したバイパス手術の
1症例
(札幌医科大学第二外科) 宮木靖子・
中村雅則・橋本 誠・橋口仁喜・寺田真也・
山内昭彦・小柳哲也・伊藤寿郎・川原田修義・
樋上哲哉
症例は70歳男性.平成20年4月,労作時呼吸困難
を主訴に当科を受診した.胸部X線写真では心拡
大を認め,経胸壁心エコーではびまん性の左室壁
運動低下を認めた.冠動脈CTAでは明らかな狭
窄を認めず,拡張型心筋症疑いにて,精査目的に
入院となった.心臓カテーテル検査のため右大腿
静脈よりSwan-Ganzカテーテルを肺動脈に上行さ
せている際に,突然発語困難,右半身麻痺が出現
した.直ちに脳MRIを施行したところ左前頭葉に
脳梗塞巣を認め,MRAでは左中大脳動脈の分枝
に閉塞を認めた.当院脳神経外科にて直ちに脳動
脈造影,選択的血栓溶解術が施行され,その後麻
痺や構語障害は改善を認めた.心臓カテーテル検
査の合併症として脳梗塞の頻度は0.1%とされて
いるが,右心カテーテル検査中の脳梗塞出現は報
告が少なく,画像を供覧し報告する.
63歳男性.平成18年3月にLADの急性心筋梗塞,
その後1年間のうちに再狭窄に対し4回のPCIを
施行し,6本のDESがLADに挿入された.今回,
負荷心筋シンチで広範囲の虚血を認め,CAGに
てLADのステント内狭窄を含めた3枝病変で,僧
帽弁閉鎖不全症を合併しており外科治療目的に当
科紹介となった.手術は,僧帽弁のtetheringに
対して弁輪縫縮術を行った後,2枝バイパスを行
った.最後にLADのステントを内膜ごと3つ半
抜去し,内膜形成を行った後に5cmにわたり左
内胸動脈のon lay patchを行った.術後graftは良
好に開存し,EFも23%から50%に改善した.内
膜摘除術の血栓・内膜形成部分の狭窄など長期予
後に不明な点が多いが,今回のような治療はDES
によってつぶれた対角枝・穿通枝を再開通させる
意味で有効であった.
21) PCPS挿入後緊急肺動脈血栓摘除術により
救命した肺塞栓症の一例
(旭川赤十字病院心臓血管外科) 小山基弘・
上山圭史・大滝憲二
24) 維持透析患者に施行した単独CABGに関す
る検討
(北海道社会保険病院心臓血管外科)
内藤祐嗣・吉田俊人
症例は56歳女性.4月6日歩行時に転倒し左膝蓋
骨を骨折し,4月9日に当院整形外科で手術.リ
ハビリもすすみ歩行できるようになった4月30
日未明に胸苦とSpO2の低下あり.午前中にショ
ックになりCTで肺塞栓と深部静脈血栓症を確認.
心臓マッサージをしながらPCPSを挿入しバイタ
ルは安定した.緊急肺動脈血栓摘除術の方針とし
た.完全体外循環下∼心停止下に主肺動脈,両肺
動脈から血栓を取り除き,まず人工心肺,次に
PCPSも離脱し手術を終えた.5月8日ICUを退
室し再び下肢に対する歩行リハビリを行い独歩退
院となった.ショック,PCPS,緊急手術の観点
から肺塞栓症の文献的考察を交え報告する.
当科において維持透析患者に行なった単独CABG
に関して検討した.症例は維持透析患者で,2007
年4月1日から2008年5月31日の間に単独CABG
(2例はペースメーカー移植も施行)を行なった
16例.平均年齢67.6歳,男性87.5%,平均透析歴
8.15年,平均術前LVEF58.2%,平均EuroSCORE
は11.3%であった.手術は全例OPCAB(2例は
MIDCAB)で行ない,吻合数は平均4.375本で,
術後平均22.4日目に行なったグラフト造影(87.5
%)もしくはMDCT(12.5%)での開存率は98.6
%であった.全例術後2日目からHDを施行した.
CHDFは用いなかった.1例に術中の血行動態に
よりIABPを要した.縦隔炎を1例,消化管出血
を2例に認めた.手術死亡,病院死亡は認めてい
ない.維持透析患者に対して冠動脈血行再建を
OPCABにて行ない,良好な成績を得たので報告
する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
25) 術前PCPSを要したAMI血行動態破綻例に
対する外科治療戦略−第3報−
(手稲渓仁会病院心臓血管外科) 山田 陽・
岡本史之・中西克彦・丸山隆史・山下暁立・
上原麻由子・八田英一郎・俣野 順・酒井圭輔
28) 術前四肢虚血を呈したStanford A型急性解
離に対する外科治療
(北海道がんセンター心臓血管外科)
飯島 誠・石橋義光・石井浩二・川崎正和・
長谷川幸生
【目的】AMIによりPCPSを必要とした症例に対
し積極的に外科治療を行い,結果を報告してき
た.その治療方針につき検討した.【方法】1996
年以降AMIにつき緊急手術を行った症例の内,術
前PCPSを要したのは18例であった.症例を低心
機能によるポンプ機能不全症例(PF群)と心破
裂・心室中隔穿孔といったAMI合併症症例(C群)
に分けると,PF群13例,C群5例であった.【成
績】術後PCPSより離脱し得たのは15例(83.3%)
であった.PCPSからの離脱は15例とも術後3日
以内に行えており,その期間内に離脱できない症
例は救命不能であった.【結論】通常の人工心肺
使用に移行し,心筋保護下に完全血行再建を行う
ことで救命率の向上を認めた.術後3日以内に
PCPS離脱のできない症例は早期にVADに移行す
るなどの対策が必要と考えられた.
【背景】四肢虚血はmalperfusionの危険因子であ
り,致死的臓器虚血を合併することで手術成績に
影響を及ぼす.
【対象】2002年1月から2008年5
月まで,急性期に外科治療を要したA型解離45例
中,術前に四肢虚血症状を呈した7例(15.6%).
男女比:4:3,年齢:64±12(20−79)才.
【結果】
虚血部位:右上肢3,左上肢1,右下肢3,左下
肢1.術式:上行置換5,上行弓部置換2.送血
部位:片側FA2,片側FA+片側Ax2,F‐Fバ
イパス1,Ax‐Fバイパス2.術中malperfusion
なし.合併症:HIT1,晩期心タンポナーデ1,
呼吸不全1.入院死亡なし.【考察】虚血肢改善
及び送血部位の工夫が術中malperfusion予防に重
要であり,若干の文献的考察を加え報告する.
26) 当院での末梢動脈疾患(PAD)症例に対す
るPTA治療の現状
(帯広病院循環器内科) 牧口展子・
尾畑弘美・上北和実・小村 悟・青木真弓・
満岡孝雄
2004年9月から2007年10月までに当院でPTAを
施行したPAD患者93例中跛行症状を有する82例,
136病変につき患者,病変背景,治療成績につい
て検討した.【患者,病変背景】男性72名(88%),
平均年齢72±9歳.平均下肢病変数1.9病変,治
療数1.7病変.腸骨動脈領域62病変(52.3%),大
腿動脈領域53病変(39.0%)
,膝下領域8病変.
23病変(16.9%)が慢性完全閉塞(CTO)であった.
【結果】手技成功は97.1%,不成功3例はCTOで
あった.追跡1年後の死亡は6例(7.5%)であ
った.TLR4例(7.1%),うち3例はSFA病変で
あった.下肢切断を1例(1.4%)に認めた.当
院でのPTA治療の現状を若干の考察を加え報告す
る.
27) 当院の下肢PTA症例のまとめ
(八雲総合病院内科) 沼崎 太・長島 仁
八雲総合病院は北部渡島地域でPTAを施行できる
唯一の院所である.当院は心臓血管外科を有さず,
最も近いそれは70km離れた函館市内に存在する.
八雲町のような地方小都市であってもPTAを必要
とする多数の患者が存在する.2001∼2005年に当
院において13例の下肢PTAが施行され,また2006
年に術者2人の新体制となってから2年間で40例
以上の下肢PTAを施行した.少数の循環器専門医
しか存在せず,心臓血管外科手術が行えない地方
小都市でも多くの患者がPTAの恩恵を享受してい
る.今回我々は当院の下肢PTA症例のまとめを行
い,それを通して地方小都市における下肢PTAの
可能性と限界について検討を行いたい.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
29) 腹部大動脈瘤に対する血管内治療
(NTT東日本札幌病院) 松崎賢司・
松浦弘司・瀧上 剛
【はじめに】腹部大動脈瘤に対して施行した企業
性デバイスを用いたステントグラフト留置術の治
療成績を報告する.【対象】腹部大動脈瘤ステン
トグラフト留置19例.男性16,年令は63歳から
87歳まで平均81歳,14例が80歳以上.Cook社製
Zenithが15例,Gore社製Excluder4例.全身麻酔
1例,腰椎麻酔1例,硬膜外麻酔17例.一側の内
腸骨動脈コイル塞栓が7例.【結果】開腹手術へ
の移行なし.術前から寝たきりであった1例が,
転院先で誤嚥性肺炎となり治療後3週目に死亡.
そのほか周術期合併症なし.術中造影/退院時の
CTでtype1のエンドリークは1例にminorなもの
を認めたのみ.
【結語】腹部大動脈瘤のステント
グラフトは超高齢者を中心とする手術ハイリスク
症例であっても安全に施行可能.
30) 電子カルテによる24時間血圧心電図記録検
査の解析結果の表示及び活用法
(ふじた内科循環器クリニック) 藤田克裕
【目的】24時間血圧心電図記録検査の電子カルテ
上での活用法と有用性の検討【方法】24時間血圧
心電図記録をマイクロチップに記録し,インター
ネットからデーターを転送して解析し,集計・編
集解析した結果を電子カルテ上に描出させた.
【成
績】インターネットからのデーターのやり取りを
行うので,転送後2時間程で解析結果が得られ,
迅速な対応が出来る.電子カルテ上に心電図と血
圧の日内変動が分かり易く表とグラフでも表示さ
れ,対話しながら以前の検査結果とも比較し必要
な箇所を何度も繰り返して表示させ,印刷して患
者に渡す事も可能である.現在の病状の理解も深
まる為,積極的に診療に参加する意欲を高める為
にも極めて有用であった.【まとめ】24時間血圧
心電図検査を電子カルテ上での活用は,極めて有
用と思われた.
31) 当院におけるDPC導入前後のBMIPP検査施
行推移の特徴
(旭川赤十字病院循環器科) 土井 敦・
西原昌宏・吉岡拓司・野沢幸永・西宮孝敏
【目的】DPC施行下では高額な心臓核医学検査は
検査数減少が予想される.当院でのBMIPP検査
のDPC導入前後の推移・特徴を検討した.
【対象】
DPC導入の前期群608例,後期群509例の2群に分
類した.【方法】診療録より後ろ向きに調査した.
両群のBMIPP施行数,入院/外来の別,疾患名,
入院期間,他RI検査施行の有無などを比較検討
した.【結果】BMIPP検査は両群とも入院での施
行数が多く,入院/外来の比率,施行数に両群に
有意差を認めなかった.心不全症例は両群で有意
差を認めず,前期群に比し後期群においてIHD精
査目的の比率が多い傾向を認めた.前期群に比
し後期群では入院期間,他RI検査の入院中施行
数は有意に減少していた.【結論】DPC導入後に
入院での施行数減少が予想されたBMIPP検査は,
当院では明らかな減少は認められなかった.
32) 健康診断における内臓脂肪面積と脈波速度
の検討
(札幌南一条病院) 野澤明彦・春原伸行・
青山真也・後藤真彦・工藤靖夫
(札幌医科大学第二内科) 赤坂 憲
【目的】CTによる内臓脂肪面積と脈波速度との関
連を知る.【対象ならびに方法】血管ドックを受
診した症例で,男性73名 平均年齢50.9±1.5歳 女
性95名 平均年齢53.2±1.3歳で,内臓脂肪面積を
CTで測定,コーリン社製formで脈波速度を測定.
【結果】内臓脂肪面積(VFA)と腹囲の関係では,
男性,女性とも有意に正相関し,VFA100cm2に
相当する腹囲は,男性82.3cm 女性91.3cmであっ
た.また,VFA100cm2以上を目的としたROC曲
線から求めた腹囲のcut-offは,男性85.5cm 女性
88.6cmであった.また,VFAおよび腹囲と脈波
速度との関連は見いだせなかった.【結語】メタ
ボリック症候群の腹囲の診断基準と比較すると,
ほぼ同様の数値であった.また,脈波速度と内臓
脂肪との関連はなかったが,今後,前向きの検討
が必要と考えられた.
33) アブレーション中に右房頻拍から,左房頻
拍へ変化し治療に難渋した心アミロイドーシスの
一例
(伊達赤十字病院循環器科) 南部忠詞・
武智 茂・井上直樹
症例は80歳男性 心不全,心アミロイドーシスで
通院中,不整脈から心不全悪化し入院した.心電
図では通常型心房粗動様の鋸歯状波を下壁誘導に
認めた.CARTO mapping施行,上大静脈の瘢痕
と三尖弁輪間に峡部を有するupper loop様の心房
頻拍(AT1)と判明した.峡部に線状焼灼を行
ったところAT1はsequenceの異なるの心房頻拍
(AT2)へと変化した.re-mapで上大静脈後壁か
ら中隔よりに再早期をもつcentrifugalな興奮パタ
ーンがみられ,左房頻拍と推定した.右房での再
早期興奮部位を通電したところAT2は再現性を
もって徐拍化し停止した.同部位は解剖学的には
RSPVの前方にあたり,間接焼灼が偶然有効であ
った.変性疾患のATでは複数回路の存在を常に
念頭におく注意が必要と考えられた.
北翔大学北方圏学術情報センター「ポルト」(2008 年 9 月) 903
34) 複数の房室伝導路を有し頻拍中にSlow/
IntermediateからVery Slow/Fast型AVNRTへの
移行を認めた一例
(帯広病院) 小村 悟・青木真弓・
牧口展子・上北和実・満岡孝雄・尾畑弘美
35歳,女性.165/分のlong RP 型PSVTを認め
入院.室房伝導(VA)は,減衰伝導特性を示し,
Hisが最早期興奮部位でjump-upは認めなかった.
同様に房室伝導も減衰伝導特性を示しjump-upは
認めなかった.頻回刺激にて130/分のshort RP
型が誘発された.最早期心房興奮部位は,Hisで
あること,右室からの単発早期刺激にてresetさ
れなかったことから通常型のS/F型AVNRTと診
断.Mapping中にカテ刺激により165/分のlong
RP 型が出現.頻拍中にAHが徐々に延長するに
従いVAは短縮し,
short RP 型に移行.
この現象は,
S/IからVS/F型AVNRTに自然に乗り換えたと
考えた.通常の解剖学的アプローチにて遅伝導路
部位を焼灼後に頻拍は誘発されなくなった.複数
の房室伝導路の存在が疑われ,頻拍中にそれらを
介して2種類のAVNRTに移行した症例を経験し
た.
35) 部分的心房停止の一例
(王子総合病院循環器科) 石井勝久・
舟山直宏・加藤伸郎・吉田大輔・松本倫明・
大岩 均・畔蒜正義・藤瀬幸保
症例は50歳男性.平成18年より労作時の息切れ,
倦怠感を自覚.平成19年7月の職場健診にて心電
図上徐脈を指摘され精査のため入院.心電図上P
波を認めず心拍数40/分の房室接合部調律,胸部
X線上心拡大を示していた.心臓電気生理検査に
て右心房内では心房収縮波は記録されず,HRA
ペーシングにて高出力ペーシングを行っても心房
は無収縮であったが,右心房内の一部ではペーシ
ング後に心房収縮波が確認された.ホルター心電
図にて終日房室接合部調律であった.以上より部
分的心房停止と診断しDDD型ペースメーカーの
植込みを行った.術後は心電図上ペーシング後に
心房収縮を,心エコー検査では左室流入血にてA
波を認め,自覚症状の改善が得られた.ペースメ
ーカー治療が奏効した部分的心房停止の一例を経
験したので報告する.
36) MAZE手術後に生じた心房性不整脈に対し
ての高周波カテーテルアブレーションの有用性
(手稲渓仁会病院循環器科) 宮本憲次郎・
林健太郎・渡辺大基・武藤晴達・佐々木晴樹・
淺野嘉一・大本泰裕・山口康一・広上 貢・
村上弘則・田中繁道
MAZE手術は心房細動の外科治療法であり,高周
波・冷凍凝固などのデバイスの進歩がある.しか
しながら不完全な伝導ブロックを来たすことが
あり,そのギャップのために生じる心房性不整
脈(AT)を時に経験する.当院心臓血管センタ
ーにてMAZE手術を施行され,急性期を過ぎ電気
的除細動にても繰り返し再発を認めた症例に対し
て,高周波カテーテルアブレーションを施行した.
CARTO mapping,あるいはEnsite mappingを用
いATの回路を同定し,そのギャップを通電する
ことでATの停止が得られた.肺静脈電位を確認
し残存している場合は追加通電を施行した.全例
で合併症はなかった.術後は全例,洞調律を維持
し再発は認めていない.MAZE後に生じる心房性
頻拍に対してカテーテルアブレーションは有効で
安全な治療法であると考えられた.
904 第 100 回北海道地方会
37) 当院で経験したたこつぼ心筋障害の検討
(北海道社会事業協会帯広病院第二内科)
佐藤達也・内藤和幸・縣 潤・青山 徹・
石本 朗・深井隆夫
40) 左室内乳頭状線維弾性線維腫の一例
(札幌医科大学第二内科) 藤戸健史・
丹野雅也・須永大介・山下智久・宮崎義則・
島本和明
【背景】たこつぼ心筋障害の予後は良好との報告
があるが,急性期治療は未確立である.【目的】
2001年4月以降に冠動脈造影を施行し急性冠症候
群が否定され,たこつぼ心筋障害と診断された7
例について検討を行った.【結果】平均年齢71±
7歳で女性(男1,女6)に多い傾向であった.
5例で基礎疾患の増悪や感染症などの身体的スト
レスが発症に関与したが,2例は明らかなストレ
スは認めなかった.1例で左室流出路圧較差を認
めた.β-blocker,ACE/ARB,Ca-blocker,利
尿薬などの急性期治療が行われたが,心尖部壁運
動改善までの時間に有意な差を認めず,心尖部壁
運動改善までは平均14±8日間であり,院内死
亡・再発例は無かった.【結語】急性期治療の内
容にかかわらず予後は良好である.
症例は75歳,女性.平成17年に軽度大動脈弁狭窄
症の診断を受け経過観察されていた.平成20年1
月,心エコーで左室後乳頭筋に付着する5×7
mmの有茎性,可動性の腫瘍を認め,同年4月に
は腫瘍径が7×9mmと増大したため精査,加療
目的に入院.全身検索を行い心臓原発の腫瘍と診
断,またその形態やMRIの所見から粘液種または
乳頭状線維弾性繊維腫を疑った.無症候性ではあ
ったが塞栓症の予防のため外科的摘除を行った.
この際,併存する大動脈弁狭窄症に対しても一期
的に弁置換術を施行した.病理組織所見では硝子
化した芯の周囲に弾性線維を認め,その外側に部
分的に平滑筋への分化を示す細胞が存在し,乳頭
状線維弾性線維腫と診断した.左室腫瘍,中でも
乳頭状線維弾性繊維腫は極めて稀な疾患であり,
文献的考察を加え報告する.
38) 迅速な心筋生検が有用であった急性心筋炎
の一例
(手稲渓仁会病院循環器科) 眞船 華・
佐々木晴樹・渡辺大基・林健太郎・武藤晴達・
淺野嘉一・宮本憲次郎・大本泰裕・山口康一・
村上弘則・田中繁道
41) 難治性の前胸部重苦感に対しスタチンが著
効したヘテロ接合体Fabry病症例
(岩見沢市立総合病院内科) 會澤佳昭・
鈴木章彦・後藤知紗・原 豊道・吉村治彦
症例は45歳女性.入院数日前より肩こり,倦怠感
を認め近医にて感冒薬処方となるも改善せず当院
受診.採血上心筋逸脱酵素の上昇,心電図上胸部
誘導でST上昇,また心エコー上前壁及び側壁に
壁運動低下を認め,急性心筋梗塞を疑い,緊急カ
テーテル検査施行.有意狭窄を認めなかったため,
急性心筋炎を強く疑い,引き続き心筋生検を施行
した.二日後の生検の結果は,リンパ球浸潤が著
明なタイプの急性心筋炎であった.そのため,診
断確定後よりステロイドパルス療法を施行.その
後徐々に炎症反応,心筋逸脱酵素の改善を認め,
順調に経過したため退院となった.迅速な心筋生
検により診断を確定し,早期にステロイドを投与
し,良好な経過をたどった一例を経験したので報
告する.
症例は50歳代女性.兄がFabry病に伴う腎不全で
死亡.学童期から20歳まで四肢末端痛自覚.平成
19年1月,前日の22時から翌朝まで前胸部重苦感
が出現し持続したため当科初診.心電図にて肢誘
導及び胸部誘導でST低下,陰性T波,頻発性上室
性期外収縮を認めた.心筋逸脱酵素の上昇なく,
心エコーでは心室中隔の軽度肥厚を認めたが,壁
運動異常なし.冠動脈造影で狭窄なく,心筋生検
電顕像にて心筋細胞質内に求心状層状封入体を認
めた.特有の角膜混濁もみられ,ヘテロ接合体
Fabry病と診断.その後もST-T変化を伴わない前
胸部重苦感が頻回にみられ,硝酸薬,抗不整脈剤,
β遮断剤,抗不安薬など使用するが改善せず.ス
タチンであるフルバスタチンを使用したところ著
効した.その後酵素補充療法を導入し経過観察中
である.
39) 巨大左房内血栓摘出術を行なった,慢性心
房細動を伴う肥大型心筋症の一症例
(木原循環器科内科医院) 木原 一
(旭川医科大学第一外科) 赤坂伸之
(同救急医学講座) 清川恵子・郷 一知
42) 重症心機能障害を併発した強皮症患者の治
療に難渋した一例
(北海道大学循環病態内科学) 有賀 伸・
榊原 守・野澤篤史・穴田真奈美・納谷昌直・
絹川真太郎・古本智夫・筒井裕之
症例は75歳男性で20年前より心房細動を指摘され
るも放置していた.今回動悸息切れを主訴に初診
来院し同時に行なった経胸壁心エコーで左心耳か
ら左房にかけて突出する巨大なmass様エコーを
認めた.同時にMaronIII型の肥大型心筋症を認
めた.経食道心エコーでは左心耳より発生して発
生し付着しており,肺静脈の隔壁に沿って平行に
発育し左房空内に突出した2cm×8cmの棍棒状
エコー像として観察された.腫瘍との鑑別が必要
とされたが,長期に亘り肥大型心筋症に合併した
心房細動を背景に抗凝固療法が行なわれてこなか
った為の巨大左房内血栓と診断した.致命的血栓
塞栓症の合併を危惧し旭川医科大学第一外科に於
いて血栓摘出術及びMaze手術を行なった.血栓
の性状はフィブリン凝血塊主体で一部基質化し大
きさ,性状共に心エコー所見と一致した.
【症例】51歳男性【主訴】呼吸困難【経過】2007
年3月より手背,前胸部に皮疹及び皮膚硬化を認
めたため近医受診.手指を超える全身性の皮膚硬
化を呈していたため強皮症と診断された.Raynaud症状も認めCa拮抗薬を投与開始.しかし,そ
の後呼吸困難を自覚したため心機能評価施行.心
エコー:EF45%,下壁の局所壁運動低下あり.
そのため,心機能精査目的で循環器科依頼となる.
冠動脈造影:有意狭窄なし.心臓MRI:全周性に
心内膜下領域に遅延造影効果陽性.心筋生検:早
期炎症像及び血管周囲の軽度線維化を認めた.そ
の後さらに心機能増悪しEF30%に低下,3束ブ
ロック及びNSVTを認めるようになった.ステロ
イドパルス療法を施行したが治療に難渋した.
【結
語】強皮症に重症心機能障害を併発し治療に難渋
した症例を経験した.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
第 209 回 日 本 循 環 器 学 会 関 東 甲 信 越 地 方 会
2008 年 9 月 27 日 東京ステーションコンファレンス
会長:清 野 精 彦(日本医科大学千葉北総病院循環器内科)
1) 運動負荷試験中にST上昇を来たした狭心症の
2症例
(西東京中央総合病院循環器科) 小路 裕・
伊藤茂樹・天谷和貴・雨宮 正・内山裕智・
橋本雅史・末定弘行
(東京医科大学循環器内科) 山科 章
3) 冠攣縮により急性心筋梗塞を発症し心肺停止
をきたした若年女性の1例
(昭和大学藤が丘病院循環器内科)
前澤秀之・鈴木 洋・本田雄気・若月大輔・
若林公平・清水信行・下島 桐・浅野冬樹・
佐藤督忠・江波戸美緒・東 祐圭・嶽山陽一
【症例1】63歳,男性.2007年9月頃より前胸部
圧迫感が出現し外来にて運動負荷試験を行ったと
ころBruce Stage 3 1分よりV1∼V4にてST上昇
を認めた.心カテーテル検査施行したが有意狭窄
認めず,アセチルコリン負荷にて陽性と診断した.
【症例2】71歳,男性.2007年1月頃より労作時
に胸部圧迫感を自覚.狭心症が疑われ運動負荷試
験施行したところBruce Stage 3 1分より胸痛お
よびV1∼V4にてST上昇を認め同日入院となる.
心カテーテルにて左冠動脈に有意狭窄を認めPCI
施行される.運動負荷試験中にST上昇を認める
ことは比較的まれとされており,また負荷誘発性
ST上昇の機序は不明である.当院にて負荷中に
ST上昇を認め,異なる治療を選択された2症例
を経験したので若干の考察をまじえて報告する.
36歳女性.3児の母.2008年4月某日午前10時頃,
保育園内で倒れている所を発見.バイスタンダー
によるCPR下で,10時30分に当院救命センターへ
搬送された.来院時心肺停止で,CPR下でPCPS
挿入し,緊急心臓カテーテル検査を行った.# 7
totalを認め,PCI施行しIABP留置して終了.第
2病日にPCPSを,第3病日にIABPを抜去し,全
身状態は良好であった.第12病日に再度冠動脈造
影を施行し,ACh負荷でRCA・LAD stent distal
・LCXにspasmを認めた.今回我々は,若年女性
で冠攣縮により急性心筋梗塞を発症し心肺停止を
きたした症例を経験したので報告する.
2) 不安定狭心症の診断にイベントレコーダーが
有用であった1例
(東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理機能検査部)
森絵里香・鈴木 淳・杉山 恵・黒須 巧・
小川剛史
(同循環器センター) 清水一寛・平野圭一・
中村啓二郎・杉山祐公・野池博文・東丸貴信
4) 敗血症に合併し,早期血行再建に成功しなが
らも心破裂の転帰をとった,急性心筋梗塞の1例
(永寿総合病院内科) 佐藤千春・岡田 豊・
小山卓史
【背景】ホルター心電図検査では記録中に症状が
出現しないこともある.症状出現時の心電図を記
録できるイベントレコーダーが不安定狭心症の診
断において有用であった1例を経験したので報告
する.
【症例】57才,女性.胸痛で救急外来に来
院.来院時,症状は消失し心不全所見や不整脈は
認められなかった.心電図ではST変化を認めず,
当日よりイベントレコーダーを施行した.6日目
に胸痛出現.胸痛時のイベントレコーダーを解析
したところ,安静時記録と比較し胸痛発作と一致
してSTの低下を認めた.6ヶ月前のホルター心
電図では,自覚症状無く有意所見を認めなかった.
冠動脈造影検査を施行し,RCAの近位部におい
て90%狭窄を認めた.【結語】本症例では胸痛発
作が不定期におこるタイプであり,イベントレコ
ーダーが診断の一助となった.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
症例は82歳,女性.大腸癌精査のため入院中に悪
寒戦慄を伴う発熱があり,血液培養からは後に
kleb.pneumoniaeが検出された.発熱当日より抗
生剤治療を開始したが,翌朝より持続性の胸痛
が出現した.心電図上前胸部誘導で広範なST上
昇を認め,急性前壁中隔心筋梗塞と診断した.直
ちに行ったPCIは成功し,TIMI IIIの血流を得た
が,心電図上ST上昇の改善が認められなかった.
Peak CK 1086と,CKの上昇は比較的軽度にとど
まったが,高度のST上昇が持続したまま第五病
日に突然の心肺停止となった.心エコー上心破裂
が確認され,救命しえなかった.血行再建後,一
度もSTの回復をみることなく,数日後に心破裂
に至るという特異な経過をとった急性心筋梗塞の
症例であり,敗血症の最中に発症したこととの関
連から,興味深い症例と考え報告する.
5) 冠攣縮性狭心症により心不全を発症した1例
(神奈川県立循環器呼吸器病センター)
伊澤 毅・五島桂子・尾崎弘幸・田中 穣・
大楠泰生・中戸川知頼・中川 毅・福井和樹
症例は52歳女性.入院10日程前より労作時息切れ,
夜間安静時の胸部違和感を自覚し,胸部レントゲ
ン上,うっ血性心不全の診断で入院した.心電図
は心拍90/分の洞調律.カルぺリチドで心不全は
改善した.バゼドウ病を認めた為,チアマゾール
とプロプラノロールを開始.翌日,急な背部痛が
出現,心電図でI II III aVF V4−6で広範なST低
下を認めた為,緊急カテーテル検査を施行.右冠
動脈と左主幹部に90%の冠攣縮,左室造影で彌慢
性の壁運動低下を認めた.ジルチアゼム,ニコラ
ンジル,チアマゾールでその後の経過は良好で,
1ヶ月後のカテーテル検査では左室機能は良好で
あった.
6) 急性肺水腫で発症し救命しえた,右冠動脈起
始異常を伴う左冠動脈主幹部急性心筋梗塞の1例
(JA長野厚生連北信総合病院循環器科)
永澤孝之・林悠紀子・金城恒道・渡辺 徳
(信州大学医学部附属病院循環器内科)
池田宇一
症例は56歳男性.糖尿病,高血圧,高脂血症あ
り.咳漱を主訴に急性肺水腫を呈し救急搬送され
た.当初BP134/85,HR139,SaO2:73%(マスク
5L),起座呼吸,胸部Xp上肺うっ血著明,心電図
心echo上前壁急性心筋梗塞と診断.来院後呼吸
状態が更に悪化し気管内挿管,IABP留置.CAG
で右冠動脈起始異常を認め造影困難だった.また
左冠動脈主幹部遠位部から左前下行枝,回旋枝へ
の分岐にかけ99%狭窄を認めPCI施行.guidewire
通過が困難で途中頻回に徐脈と血圧低下を来たし
Noradrenaline投与で血行動態を維持した.左主
幹部から回旋枝に冠動脈stentを留置,左前下行
枝をstent strutからballoonで拡張し血行再建に成
功.経過は順調であり独歩退院できた.
東京ステーションコンファレンス(2008 年 9 月) 905
7) 硫酸クロピドグレル投与により好中球減少症
を来した1例
(日立製作所水戸総合病院循環器内科)
佐藤陽子・小宅康之・田中喜美夫・常岡秀和・
山内孝義
(筑波大学循環器内科) 青沼和隆
10) 完全房室ブロックが,偶然施行した冠動脈
造影で認めた右冠動脈狭窄を解除することにより
消失した1例
(柏市立柏病院循環器科) 中村和世・
清水雅人・西森健雄
(東京医科歯科大学循環器内科) 磯部光章
13) 64列MDCTにて梗塞部位を診断しえた急性
心筋梗塞の1例
(相模原病院) 大山 剛
(藤沢市民病院) 秋山英一・高見沢徹・
荒川健太郎・矢野英人・漢名雅彦・姫野秀朗・
臼井 孝・柏木政伸
症例は64歳女性.2007年11月29日に急性心筋梗塞
を発症し左前下行枝90%の狭窄に対してDESを留
置した.以後塩酸チクロピジン200mg/日を内服
していたが2008年1月18日に細菌性腸炎に伴う播
種性血管内凝固症候群(DIC)を生じたため内服
中止とした.症状の改善・血液検査上血小板の増
加や凝固系の正常化を確認後,硫酸クロピドグレ
ル75mg/日を内服開始したが5日目に好中球減少
症(無顆粒球症)を認め中止とした.内服中止後
6日目には白血球・好中球数とも正常化してお
り,ステント内血栓閉塞を危惧し塩酸チクロピジ
ン200mg/dayを内服再開とした.以後,好中球減
少症は来していない.この期間中に抗生剤や他の
内服薬の変更はしておらず,硫酸クロピドグレル
による薬剤性好中球減少症が生じた稀少な症例と
考えられるため報告する.
79歳男性.平成20年4月23日朝,家の中を歩行中
に意識消失.家人が発見し,救急車にて当院救急
外来に搬送された.来院時意識は回復しclearで
あり,胸部症状を認めなかった.心電図上心拍
数34/分の完全房室ブロックを認めたが,明らか
なST変化は認めなかった.心エコー上明らかな
asynergyは無く,hFABP(ラピチェック)も陰
性であった.右内頸静脈から一時的ペーシングカ
テーテルを挿入後,虚血性心疾患の除外診断のた
め冠動脈造影を施行した所,右冠動脈#1に99%狭
窄を認めた.そのまま緊急カテーテルインターベ
ンションを施行.stentを挿入し,狭窄は0%に改
善した.翌4月24日朝には心電図は心拍数100/分
の洞調律に回復しており,CK/CKMBの上昇を認
め急性心筋梗塞と診断された.
症例は70歳男性.2005年2月に急性下壁梗塞発症
し右冠動脈#3にベアメタルステント留置.その
後狭心症にて右冠動脈#1,3,左冠動脈#6,7に
サイファーステントを留置.2007年7月に胸背部
痛を訴えて当院に受診.心電図にてV1∼4でST上
昇を認めた.胸腹部CTを施行したが明らかな大
動脈解離の所見なし.来院3時間後のトロポニン
定性が陽性であったため緊急冠動脈造影を施行し
たが,閉塞や造影遅延は認めず前回の造影所見と
著変はなかった.後日施行した99mTcピロリン酸
シンチグラムにて心室中隔に集積を認め,梗塞部
位が診断できたが,胸腹部CTを見直したところ
心室中隔の造影欠損像を認めた.冠動脈造影所見
では破綻した冠動脈を確認できず,梗塞部位を診
断できなかったが,その場合でも64列MDCTが梗
塞部位診断に有用であると考えられ報告する.
8) 冠攣縮性狭心症に冠動脈解離を合併した1例
(済生会横浜市南部病院循環器科)
岡田興造・猿渡 力・齊藤俊彦・野澤直樹・
川口悟史・梅村将就・遠藤光明
11) 皮膚黄色腫を伴わない著明な家族性高コレ
ステロール血症(FH)に合併した狭心症の1例
(江東病院循環器内科) 曽根岐仁・
小泉章子・稲葉秀子・田宮栄治・井上 清
(順天堂大学練馬病院) 岡崎真也・岡井 巌
(順天堂大学循環器内科) 華藤芳輝・
西野顕久・大木勇一・代田浩之
14) 64列マルチスライスCTによる冠動脈造影で
CT値測定が有用であったステント内再狭窄の1例
(東邦大学医療センター大橋病院循環器内科)
徳江政英・原 英彦・諸井雅男・正井博文・
高沢洋介・古橋龍彦・福田 宏・高木拓郎・
原 久男・中村正人・鈴木真事・杉 薫
(東邦大学医療センター放射線科) 甲田英一
症例は40歳男性で主訴は胸痛である.過去に検診
などを受けたことが無かったが平成20年2月より
労作時に胸痛が出現し,左上肢に放散した.3
月上旬,近医を受診し当科に紹介された.既往
歴,家族歴に特記すべきことはなかった.ECGは
HR73の洞調律でV3-V6のT波陰転を認めた.胸部
X線写真はCTR48.6%で肺野に異常は認められな
かった.血液検査ではTC559,LDL485,TG163
で他,甲状腺などに異常は認められなかった.身
体所見として角膜輪は認めたが皮膚黄色腫は認め
られずアキレス腱は16mmと肥厚していた.CAG
でLAD#7に99%狭窄を認めたためDESによるPCI
にて狭窄は消失した.FHに皮膚黄色腫を伴わな
いことは稀であり,TC559はホモ接合体の可能性
があるため報告した.
症例は78歳の男性.10年前に冠動脈内にステント
を留置している.今回労作時胸痛で再受診.来院
時症状は消失していたが,トロポニンT陽性であ
った.他の心筋逸脱酵素の上昇や心電図変化は認
められなかった.64列マルチスライスCTによる
冠動脈造影を施行したところステント内の狭窄の
有無は肉眼的に判定不能であったが,ステント留
置部の内腔のCT値が181HUとその近位部および
遠位部と比較して低CT値を示した部位が認めら
れた.続いて経皮的冠動脈造影を施行したところ
ステント内狭窄を認め冠動脈形成術を施行した.
同部にステントを留置し良好な拡張が得られた.
本症例は64列マルチスライスCTによる冠動脈造
影でステント内のCT値測定がステント内狭窄の
評価に有用であった不安定狭心症の1例であると
考えられた.
12) 冠動脈CTで器質的狭窄が疑われた冠動脈
squeezingの1例
(秀和綜合病院循環器科) 阪口和滋・
後藤 亮・土山高明・萩元宣彦・安達 進
(東京医科歯科大学循環器内科) 磯部光章
15) 脳梗塞を契機に発見された左室内血栓を伴
う虚血性心筋症の1例
(横浜労災病院) 田中真吾・青木 元・
坂巻美穂子・安西 耕・鈴木 淳・
小和瀬晋弥・山崎哲郎・杉安愛子・
荻ノ沢泰司・高田志保・窪田彰一・黒崎健司・
柚本和彦・玉木利幸・野上昭彦・加藤健一・
小西敏雄
49歳女性,H19年12月に急性心筋梗塞の診断で当
科初診.CAGで#7以下90%(造影中に99%へ増
悪,他は有意狭窄なし)を確認.冠攣縮を考え
CCUで薬物治療を開始したが,数時間後に下壁
誘導のST上昇発作が出現.硝酸剤投与でも軽快
せずCAG再検したところ右冠動脈全体に冠動脈
解離を認めた.解離部の狭窄度は50%で内腔は保
持しており,#7以下の血流も前回より改善,症
状・心電図も軽快していたため保存的に経過観察
とした.1週間後の再造影では解離の進展はなく,
さらに4ヵ月後の造影では,右冠動脈解離は血管
内超音波で一部に器質化した偽腔を認めるのみま
で修復され,#7以下の血流も25%狭窄まで改善
していた.一連の経過より冠攣縮による心筋梗塞
と診断,さらに経過中に冠動脈解離を合併した一
例を経験したので若干の考察を加え報告する.
9) 屈曲蛇行した冠動脈に急性心筋梗塞を発症し
再潅流療法に難渋した1例
(済生会横浜市東部病院循環器内科)
滝村英幸・村松俊哉・塚原玲子・伊藤良明・
酒井 毅・石盛 博・笹尾健一郎・平野敬典・
中野雅嗣・茶谷健一・山脇理弘・荒木基晴
症例は70歳男性.平成19年8月19日,胸痛を自覚
し近医受診.心電図にてII,III,aVf誘導のST上
昇を認め急性心筋梗塞(AMI)と診断され当院紹
介された.同日緊急冠動脈造影を施行し左回旋枝
#11の完全閉塞を認め,ひき続き右radial approch
で6F AL 2.0ガイディングカテーテルを用いてPCI
を施行した.責任病変は高度屈曲と病変石灰化を
呈していた.このため前拡張後ベアメタルステン
ト(BMS)の挿入が困難であった.そこでバルー
ンアンカーテクニックを用いて病変部に5Fr Heartrail 2を通過させ,5 in 6 systemとし#13にML Pixel
2.5mmを,次いで#11にML VISON 3.0mmを留置
し得た.最終造影上TIMI IIIを得て終了とした.
今回我々は高度屈曲を伴う石灰化病変を有する
AMI症例に対し5 in 6 systemを用いてステント留
置に成功した症例を経験しこれ報告する.
906 第 209 回関東甲信越地方会
症例は62歳女性.平成19年6月歩行時に胸部不快
感があり当科受診.冠動脈疾患疑い,GE製Light
Speed16にて冠動脈CTを撮影した.左冠動脈は
RR60%で再構成したところ,左前下行枝に狭窄
が疑われた.後日,入院し冠動脈造影を施行し
たところ,冠動脈CTで狭窄が疑われた部位に冠
動脈のsqueezingを認めた.冠動脈CTの再構成を
RRのphaseを替えて行ったところ,20%で最も強
い狭窄が描出され,80%では狭窄を認めなかった.
冠動脈CTは冠動脈疾患の外来スクリーニングに
おいて非常に有用であり,近年その需要は飛躍的
に高まっているが,通常画像の再構成には最も描
出のよいphaseを選択している.今回我々は冠動
脈のsqueezingを器質的狭窄と疑う症例を経験し,
冠動脈CTにおいて画像の再構成に注意を要する
症例と考え報告する.
症例は56歳男性.糖尿病で近医通院中であった.
2008年4月左前腕の脱力感と感覚鈍麻が出現し当
院救急外来を受診.心電図は前壁梗塞及び心房
細動で,頭部CTで右頭頂葉に低吸収域を認めた.
心エコーで左房内血栓と左室内血栓及び前壁中隔
の壁運動低下を認めたため,陳旧性心筋梗塞およ
び心原性脳塞栓症の診断で入院し,抗凝固療法を
開始した.開始6日目の心エコーで血栓の動揺性
著しく,内部が一部崩壊していた.また冠動脈造
影では重症3枝病変であったため内科的治療は困
難と判断し,脳梗塞急性期であったが外科的血栓
除去および冠動脈バイパス術を施行.血栓は白色
で比較的古いものと考えられた.血栓が巨大で動
揺性が著しく,脳梗塞も併発していたことから外
科的血栓除去が必要であった一例を経験した.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
16) 心室中隔穿孔を合併した急性心筋梗塞の経
過に生理的ペーシングが良好に作用した1例
(平塚共済病院循環器内科) 加藤陽子・
加藤信孝・鈴木秀俊・大西隆行・中村浩章・
小林一士・倉崎祐子・井川昌幸・梅澤滋男・
丹羽明博
(東京医科歯科大学循環制御学) 磯部光章
(平塚共済病院心臓血管外科) 畠田和嘉・
石川智啓・高橋政夫
85歳女性.前医にて完全房室ブロックに対して
ペースメーカー植え込み(心室中隔ペーシング,
DDD60)施行.上気道炎症状の1週間後に心不
全症状にて入院し,全胸部にLevine VI/VIの収縮
期駆出性雑音を聴取,心エコー上左室心尖部から
右室へ向かうシャント血流を確認した.心筋逸脱
酵素は有意な上昇を認めず,急性心筋梗塞後に発
症した心室中隔穿孔(以後VSP)であると診断し
た.VSPパッチ閉鎖術を施行,術後回復は非常に
良好であり,独歩にて退院した.経過中の心電図
は全てnarrow QRSのペースメーカー波形であっ
た.本症例では,生理的なペーシング方法と言わ
れる中隔ペーシングがVSP発症後心不全を呈する
までの緩徐な経過に寄与し,また術後の早い回復
にも寄与した可能性がある.
17) 左室壁在血栓による心原性脳梗塞の発症を
契機に確認された心筋梗塞の1例
(長岡中央綜合病院循環器科) 田川 実・
中村裕一・落合幸江
(同脳神経外科) 竹内茂和・梨本岳雄・
谷口禎規・加藤俊一・神宮字伸哉
(新潟大学循環器分野) 池主雅臣・相澤義房
症例は83歳,男性.平成19年1月10日より嘔吐症
状を繰り返し,小脳梗塞∼脳幹と右後頭葉梗塞を
認め,当院脳神経外科に入院した.脳梗塞の治療
を行いながら心合併症の評価目的で行った心臓超
音波検査で前壁∼前壁中隔の壁運動低下と同部に
血栓を認めた.心原性塞栓血栓症が疑われ,ヘパ
リンおよびワーファリンの投与を開始された.ま
た,胸部自覚症状はなかったが,ジピリダモール
負荷心筋シンチグラムで左前下行枝領域に虚血が
疑われ,同年4月6日心臓カテーテル検査を施
行した.冠動脈造影で#1完全閉塞,#6 99%,#7
90%にて#6∼#7に対して経皮的冠動脈形成術を
施行.ステント植え込み後に0%に開大し終了し
た.心筋梗塞後の左室内血栓が原因と考えられる
脳梗塞発症を契機に虚血性心疾患を確認した症例
を経験したので報告する.
19) 周術期にワーファリン中断後 冠動脈内血
栓塞栓による急性心筋梗塞を発症した1例
(河北総合病院循環器内科) 池口亮太郎・
玉村年健・杉村洋一・水村泰祐・柿原備子・
佐藤由里子・新井 悟
【症例】57歳,男性.心房細動にともなう腸管膜
動脈塞栓症,S状結腸穿孔にてハルトマン手術の
既往あり.S状結腸直腸再吻合術目的で入院.術
前5日前よりワーファリン投与を中断しヘパリン
持続点滴に変更,手術10日後よりワーファリン内
服を再開し手術11日後ヘパリン投与は終了した.
手術15日後,急性心筋梗塞を発症,直ちに冠動脈
造影検査を施行,前下行枝近位部,第一対角枝に
血栓性の閉塞を認めた.引き続き血栓吸引カテー
テルによる吸引術を施行した.大量の血栓を吸
引,吸引術後造影では冠動脈内血栓は消失,冠動
脈に有意狭窄を認めず良好な再灌流をえた.臨床
経過,冠動脈造影所見より冠動脈内血栓の成因は,
心房細動による血栓塞栓が強く疑われた.周術期
の抗凝固療法の重要性を示唆する1例と考え報告
する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
20) 血小板増多症を合併し血栓閉塞を繰り返し
た急性冠症候群の1例
(獨協医科大学越谷病院循環器内科)
蟹江禎子・小松孝昭・谷口 勲・新健太郎・
藤掛彰則・由布哲夫・尾崎文武・唐原 悟・
瀧澤 圭・田中数彦・小林さゆき・清水 稔・
酒井良彦・a柳 寛
症例は37歳男性,健康診断にて血小板増多症(60
×104/μl)を指摘されていた.2007年5月胸痛
認め当院受診し急性心筋梗塞と診断し緊急入院
と な っ た. 緊 急 冠 動 脈 造 影 を 施 行 で 右 冠 動 脈
(RCA)に多量な血栓による完全閉塞と左前下行
枝(LAD)に90%狭窄を認めIABP下にPCIを施
行した.術後1時間後にRCAとLADの両方に急
性冠閉塞を認め再度PCI施行した.さらに翌日・
第14病日に血栓形成による再閉塞を繰り返し心原
性ショックとなりPCPS管理下にPCIを繰り返し
施行した.機械的補助装置管理下にも関わらず血
栓閉塞繰り返し血小板増多症が関与したと考えら
れ,貴重な症例を経験したので報告した.
21) 溶血性貧血を生じた僧帽弁位Starr-Edwards
Ball弁(Model 6120)術後遠隔期症例に対し再弁
置換術を要した1例
(日本医科大学武蔵小杉病院心臓血管・呼吸器・乳腺内分泌外科)
遠藤直哉・織井恒安・冨田剛志・保科淑子・
日置正文
(日本医科大学外科) 清水一雄
症例は60歳女性.26年前に僧帽弁狭窄症に対し
Starr-Edwards Ball弁(Model 6120)にて僧帽弁
置換術を施行.1年前より僧帽弁逆流及び大動脈
弁狭窄兼閉鎖不全症による心不全症状が出現し,
また総ビリルビン値9.26mg/dl(直接ビリルビン
1.24mg/dl,間接ビリルビン8.02mg/dl)と機械弁
に関連する高度黄疸を伴った溶血性貧血も認め手
術施行となった.手術は僧帽弁再置換術及び大動
脈弁置換術を施行した.弁輪部へのパンヌスの形
成は認めずperivalvular leakageも認めなかった.
僧帽弁逆流の原因としては左室収縮時の血流ジ
ェットが流出路へ突出したBall弁のcageにあたる
ことでBallのflootingが生じたためと考えられた.
術後は血中総ビリルビン値1.49mg/dlまで低下し
軽快退院となった.
22) 成人修正大血管転位症における三尖弁閉鎖
不全症に対する一手術例
(順天堂大学心臓血管外科) 山岡啓信・
丹原圭一・川崎志保理・山本 平・稲葉博隆・
山崎元成・土肥静之・蒔苗 永・齋藤洋輔・
佐川直彦・嶋田晶江・鶴田 亮・天野 篤
症例は37歳の男性.小児期に心陰影異常を指摘さ
れたが放置されていた.平成19年春頃より労作時
の呼吸苦が出現し,精査したところSLL型修正大
血管転位症,重症三尖弁閉鎖不全症が認められた.
手術は胸骨正中切開で施行.左室ならびに右房は
後方に位置していたため,体外循環を確立した後
に患者の左側に移動して左心耳を横切開して三尖
弁にアプローチしたところ,良好な三尖弁の視野
を得ることができた.逆流は弁の中央からで弁輪
拡大によるものと考えられたが,右室に体循環の
圧負荷が今後ずっとかかり続けることを考慮し,
機械弁(SJM31mm)による弁置換術を選択した.
さらに遠隔期の伝導系障害に備えて右室前面に心
筋リードを装着した.術後経過は良好で術後9病
日独歩退院した.若干の文献的考察を加え,報告
する.
23) 左房内にボール状の巨大血栓形成をワーフ
ァリン中止後短期間に認めた僧帽弁狭窄症の1例
(横須賀共済病院循環器センター)
古浦賢二・廣瀬俊輔・川島朋之・藤井 昭・
柳下敦彦・宮崎晋介・高橋良英・野里寿史・
武居明日美・桑原大志・疋田浩之・高橋 淳・
松倉一郎・丸山俊之
(筑波大学循環器内科) 佐藤 明
(東京医科歯科大学循環制御内科学)
磯部光章
症例は73歳女性.平成10年より僧帽弁狭窄症及び心房
細動を指摘され,脳梗塞既往もあり,ワーファリン治
療中であった.平成20年4月5日に当院消化器内科で
胆嚢炎,総胆管結石に対するERCP,ESTを施行.施
行直前にVit.Kを点滴し,ワーファリンはその後中止
していた.4月8日の造影CTにて,4月5日のCTで
は認められなかった左房内血栓が認められた.経胸壁
心エコーで左房内に浮遊する球状の28×38mmの巨大
血栓を認め,当センターに転科となった.へパリン投
与をしながら胆嚢炎の改善を待ち,4月16日に血栓摘
出・メイズ・僧帽弁置換術・三尖弁形成術を施行し,
術後経過は良好であった.摘出された検体は左房壁に
付着する部位を認めない巨大血栓であった.ワーファ
リン中止後,短期間に血栓が形成された興味深い症例
と考え報告する.
24) Behcet病に重症AR,房室ブロック,麻痺
性イレウスを合併した1例
(東京都老人医療センター) 蔵町里恵・
原田和昌・油井慶晃・石川 妙・齋藤友紀雄・
牧 尚孝・内田 文・田中 旬・坪光雄介・
武田和大・桑島 巌
症例は73歳女性.主訴は嘔吐と胸部不快感.40
歳台に再発性アフタ性潰瘍,外陰部潰瘍,毛嚢
炎様皮疹よりBehcet病と診断.コルヒチン内服
にて症状安定していたが1年前より労作時呼吸
困 難 とARを 指 摘. 呼 吸 困 難 増 悪 に て 近 医 入 院
中に高度房室ブロックを認め当院転院となる.
入 院 時,Forrester3群 で 心 拡 大 を 認 めEF40%,
BNP1706pg/mlであった.房室ブロックは間欠的
で症状なく総心拍97000/日のため経過観察.心不
全改善後に腹痛出現しCTにて麻痺性イレウスを
認めた.コルヒチンの副作用または腸管Bechet
が疑われたが保存的加療にて改善.大動脈造影に
て3度のARと上行大動脈拡張を認めBentall術を
施行予定.活動性の低いBehcet病に重症AR・房
室ブロック・麻痺性イレウスを合併した症例を経
験したので報告する.
25) 重複僧帽弁口にEbstein奇形を合併した1例
(土浦協同病院循環器センター内科)
川口直彦・角田恒和・米津太志・李 哲民・
鈴木麻美・岩本太郎・小松雄樹・垣田 謙・
加藤 克・大友 潔・永田恭敏・谷口宏史・
上原明彦・鵜野起久也・家坂義人・藤原秀臣
(東京医科歯科大学循環制御学) 磯部光章
【症例】54歳男性.21歳時にEbstein奇形と診断さ
れたが,症状はなく不整脈も認めず経過観察され
ていた.2005年1月に高血圧にて当院を初診し内
服加療を開始されたが,外来での経胸壁心エコ
ー検査でEbstein奇形,三尖弁閉鎖不全症を認め
たことに加え,重複僧帽弁口の所見が疑われた.
2008年3月精査目的で入院し,経食道心エコー検
査,及び心臓カテーテル検査等で,右房化右室,
中等度の三尖弁閉鎖不全とともに重複僧帽弁口の
所見を認めた.収縮能,心内圧データは正常範囲
であり,明らかな僧帽弁閉鎖不全症,僧帽弁狭窄
症も認めなかった.無症状であり侵襲的治療の適
応は乏しいと考えられ退院となった.【結語】重
複僧帽弁口は稀な先天性疾患であり,Ebstein奇
形との合併は本邦で数例の報告を認めるのみであ
り,稀な一例のため報告する.
東京ステーションコンファレンス(2008 年 9 月) 907
26) 70歳代で完全内臓逆位及び修正大血管転移
の診断がなされた一症例
(戸田中央総合病院) 佐藤秀明・村田直隆・
永尾 正・小堀裕一・生天目安英・新井富夫・
内山隆史
(千葉市立青葉病院) 高橋長裕
(東京医科大学病院第二内科) 山科 章
73歳女性,労作時呼吸困難を主訴に来院.以前よ
り完全内臓逆位を指摘されていた.胸部レントゲ
ンではCTRが著明に拡大しており,心エコー上,
左心室収縮能低下,体循環房室弁閉鎖不全,左心
房拡大及び心嚢液貯留が認められた.心臓カテー
テル検査で著明な肺高血圧を認め,左室造影で心
筋が粗雑に造影された.心臓MRIでは,体循環房
室弁が肺循環房室弁より心尖部寄りに付着し,弁
下組織も直接心室中隔への腱索が認められた.体
循環房室弁は形態学的三尖弁であり,機能的左心
室は形態学的右心室と考えられ,修正大血管転移
と診断し,心不全の原因は形態的三尖弁逆流→肺
うっ血→肺高血圧→右心不全によるものと推測さ
れた.完全内臓逆位に修正大血管転移が合併し,
73歳まで診断されなかった症例を経験したため報
告する.
27) 側副血行低下で生じたLAD CTO領域の心
筋梗塞に緊急でCTOを開通させ,遠隔期にドナー
血管にPCIを行った2例
(水戸赤十字病院循環器内科) 根本正則
【症例1】68歳女性のNSTEMI.RCAの近位部90%,
中部90%,遠位部75%狭窄,血栓像+:TIMI-3.で
あり,LADへの側副血行路を認めた.LMT75%,
LAD入口部で100%閉塞であった.LADへのPCIを
施行し,ステント留置し,5日後にRCAへPCI施
行した.
【症例2】76歳男性のSTEMI.RCA近位部
から中部に90%狭窄,血栓像+:TIMI-3.LADへ向
かう側副血行路を認めた.LADは近位部で100%閉
塞.LADへPCI施行し,ステント留置.2週間後
に,RCAへPCI施行した.これらのPCIでは,安定
した血行動態を保つことができた.【結語】CTO
のドナー血管の血栓を伴うTIMI-3の心筋梗塞で
は,急性期にCTOの開通を慎重に行うことで,
遠隔期にドナー血管のPCIを先送りすることの可
能性と安全性が期待でき,今後,比較検討してい
く必要がある.
29) Reverse CARTによりPCIに成功した右冠
動脈慢性完全閉塞の1例
(昭和大学横浜市北部病院心臓血管カテーテル室)
山本明和・落合正彦・斎藤重男・星本剛一・
御子柴幸・磯村直栄・芦田和博・荒木 浩・
小原千明
32) Sirolimus-Eluting Stent留置後,慢性期にス
テント離断をきたし再狭窄を呈した1例
(千葉西総合病院) 石田 大・芝山 弘・
清水しほ・荒木康宏・山本真由美・廣瀬 信・
登根健太郎・吉原弘高・板倉靖昌・久保隆史・
飯塚大介・倉持雄彦・三角和雄
労作時胸痛の70代男性.冠動脈造影でRCA起始部
CTOを認め,同部への順行性アプローチによる
PCI不成功の為当院紹介.逆行性アプローチによ
るPCIを施行.中隔枝経由で逆行性ワイヤを閉塞
遠位部へ持ち込むも高度石灰化に阻まれた.円錐
枝アンカーで順行性トルナスによるチャネリング
とreverse CARTで両方向ワイヤが同一チャンネ
ルに到達.順行バルーンでのアンカーで,逆行ワ
イヤとバルーンが大動脈内へ到達.逆行バルーン
でCTO内を拡張,順行ワイヤでtrackingしRCA末
梢まで到達.逆行バルーンで順行ワイヤをトラッ
ピングし順行性バルーンをCTO内で拡張.IVUS
でワイヤ操作難渋部に高度石灰化あり.ワイヤは
all trueでありDES留置し良好な拡張を得た.順
行からのトルナスチャネリングとワイヤトラッピ
ング,reverse CARTが有効であった.
症例は35歳男性.冠危険因子として糖尿病と高
脂血症がある.2006年労作時の胸痛を主訴に当
院受診.冠動脈造影にて左前下行枝seg6が完全
閉 塞 し て い た た め, 同 部 位 に 対 し てPCI施 行.
Sirolimus-Eluting Stentがseg6とseg7に留置され
ていた.その後再狭窄や症状なく経過したが,
2008年春より再度労作時の胸部症状出現.冠動
脈造影を施行したところ,seg7に留置したステン
トが中央で完全に離断しており,同部位で90%
狭窄を呈していた.後日,同部位にPCI試行.血
管内超音波検査にて約2mm程の間隙が認められ
たため,Paclitaxel-Eluting Stentを留置し拡張し
た.近年薬剤溶出製ステントの再狭窄原因として
stent fractureが注目されているが,本症例のよ
うにステントが完全に離断する症例は稀と考えら
れ,ここに報告する.
30) DES留置後ステント遠位部のびまん性狭窄
を責任病変とする急性冠症候群を発症し冠攣縮の
関与が疑われた1例
(東邦大学医療センター大森病院心血管インターベンション室)
鈴木健也・我妻賢司・内田靖人・新居秀郎・
天野英夫・戸田幹人
(同循環器内科) 山崎純一
33) びまん性冠動脈解離にともなう高度狭窄病
変に対し,血管内超音波ガイドにステント留置を
施行した1例
(東京慈恵会医科大学附属柏病院循環器内科)
銭谷 大・上原良樹・富永光敏・松坂 憲・
井上康憲・宮田秀一・中江佐八郎・東 吉志・
蓮田聡雄・清水光行
(東京慈恵会医科大学循環器内科) 吉村道博
【症例】84歳女性.【現病歴】労作性狭心症と診断
され2008年3月5日にLAD#6,#7,LCX#11に
Cypherを留置した.しかし3月14日に胸痛を再度
認めたため,同日当院受診.緊急CAGを施行した
結果,LCX#11のステント植え込み遠位部から#
13にかけてびまん性狭窄を認めた.10日前のCAG
では同部位に全く狭窄は認められなかったため冠
攣縮の関与を疑い,ニトロール,シグマートの冠
動脈内注入を行ったが狭窄が解除不可能であった
ため,PCIを施行した.#13に対し2.0mmバルーン
で低圧拡張を試みるもむしろ狭窄悪化を認めたた
め,PIXEL2.25/23mm及びCypher2.5/18mm留置
したところ,TIMI3の良好な拡張を得た.【結語】
DES留置後亜急性にステント遠位部のびまん性狭
窄を責任病変とした急性冠症候群を発症し,冠れ
ん縮の関与が疑われる症例を経験した.
28) Bare metal stent留置後の亜急性ステント
血栓症発症例に対して血小板機能をモニタリング
した1例
(帝京大学病院) 上野泰也・白鳥宜孝・
石川秀一・興野寛幸・渡邉英憲・宮澤亮義・
山川 健・上妻 謙・一色高明
31) 緊急経皮的冠動脈形成術において偽腔へス
テント留置を行った急性心筋梗塞の1例
(亀田総合病院) 末永祐哉・新井淳司・
岩塚良太・外山堅太郎・大山明子・熊坂礼音・
飯田啓太・長堀 亘・大野正和・鈴木 誠・
松村昭彦・橋本裕二
症例は維持透析中の77歳男性.狭心症(#6高度石
灰化病変)に対しロータブレータを施行後,BMS
を留置した.アスピリン100mg/クロピドグレル
75mgを開始したが,9日目にステント血栓症(ST)
を発症し,血栓吸引後,バルーン拡張術を施行し
た.ST発症より2週間後に血小板凝集能を測定し
ADP(20μM)最大凝集率(MPA)が70%と高値
を示したためクロピドグレルからチクロピジン
200mgに変更した.変更より2週間後のMPAは64
%と基準値(70%)内に改善を示した.しかし
PAC-1は66%と高値を示したため,更にチクロピ
ジン300mgに増量したところMPAは60%,PAC-1
は20%へと改善を示した.本症例はステント血栓
症患者の血小板機能をモニタリングできた症例で
ありここに報告する.
症例は58歳男性.2007年9月17日19時過ぎに胸痛
を自覚し,他院を受診した.心電図所見から下
壁急性心筋梗塞と診断され,緊急搬送となった.
緊急CAGではLAD#6 75%,RCA#1 99%を認め,
RCA#1に対して緊急PCIを施行した.検査中から
NSVT頻回であり,2度Vf出現しDC150Jで停止し
た.sBP70mmHgと低値であり,ショック状態で
あったが,両側ASOのためIABP留置できず,緊
急PCIを施行した.病変はRCA#1-3にかけて連続
しており,GWは病変をcrossし,バルーン拡張を
施行した.IVUSではGWは偽腔を通して末梢で真
腔へcrossされていたが,この部位にステント留
置を行った.Flowは良好でIVUSでも拡張良好と
なっており,手技を終了した.今回,緊急PCIで
偽腔にステントを留置した急性心筋梗塞の1例を
経験し,貴重と考え報告する.
908 第 209 回関東甲信越地方会
71才男性.下壁陳旧性心筋梗塞の既往あり.心筋
血流シンチグラフィにて下壁に再分布を認め,冠
動脈造影施行したところ右冠動脈Seg.1から4にか
けて冠動脈解離とSeg.3に90%狭窄を認めた.後日
PCIを施行した.ソフトワイヤーを右冠動脈末梢
まで通過させIVUSを観察すると,右冠動脈の大
部分において真腔と解離腔の二腔構造を認めた.
Seg.3の狭窄の近位側に一腔構造の部位を認めた
ため,IVUSマーキングにて同部位からSeg.4にか
けてCypher 2.5×23mmを2本留置した.結果,病
変部の十分な拡張と,末梢への良好な血流を得る
ことができた.9ヶ月後の確認造影ではステント
留置部位を含めて,右冠動脈の血流は良好であっ
た.冠動脈解離にともなう狭窄病変に対し,ステ
ントを留置した症例を経験したので報告する.
34) ベアメタルステントと薬剤溶出性ステント
を同時挿入後,薬剤溶出性ステントにのみ亜急性
血栓症を認めた1例
(日本医科大学多摩永山病院内科・循環器内科)
宮地秀樹・小谷英太郎・草間芳樹・新 博次
(静岡医療センター循環器科) 木股仲恒・
富田和憲・小鹿野道雄・椎葉邦人・田邊 潤
症例は90歳男性.急性冠症候群(非ST上昇型心
筋梗塞)で入院.緊急冠動脈造影(CAG)にて
右冠動脈,左前下行枝近位部に90%狭窄,左回旋
枝に完全閉塞を認め,回旋枝に対し経皮的冠動脈
形成術(PCI)を施行,
ベアメタルステント(BMS,
Liberte 2.75/20)を挿入し0%に改善した.第10
病日,他2枝の残存狭窄に対しPCIを施行.右冠
動脈にBMS(Driver 4.0/9,3.5/30)2本を,左
前下行枝に薬剤溶出性ステント(DES,TAXUS
3.0/28,2.5/20)2本を同日に挿入しいずれも良
好な拡張を得た.しかし第15病日,心筋逸脱酵
素の再上昇があり,緊急CAG施行.DESにのみ
亜急性血栓症(SAT)による完全閉塞を認め,再
PCIを施行したが,第25病日に死亡した.亜急性
期におけるBMSとDESの血栓性の違いを示唆す
る興味深い症例と考えられた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
35) 重症起立性低血圧にピリドスチグミンが著
効したびまん性Levy小体認知症の例
(日本医科大学千葉北総病院内科)
白銀一貴・太良修平・山本真功・岡田 薫・
稲見 徹・村上大介・田近研一郎・淀川顕司・
大野則彦・大場崇芳・青木 聡・雪吹周生・
雨宮志門・清野精彦
(日本医科大学内科学(循環器・肝臓・老年・総合病態部門))
水野杏一
80歳,男性.07年11月頃より,血圧低下による起
立時の失神を頻回に認め入院.ホルター心電図で
心拍変動は低周波成分,高周波成分共に低下,心
臓核医学検査<MIBG>ではH/M早期相,遅延相
共に低下,Washout rateは上昇しており,自律神
経機能の低下を認めた.神経学的検査によりびま
ん性Levy小体認知症<DLBD>と診断.生活指導
に加えて様々な薬剤を投与したが症状は改善せ
ず,治療に難渋していた.重症筋無力症の治療薬
であるピリドスチグミンは抗コリンエステラーゼ
作用によりノルエピネフリンの分泌促進作用があ
る.ピリドスチグミンの内服を開始したところ症
状は著明に改善,失神を来たすことなく現在まで
経過している.多剤無効の重症起立性低血圧にピ
リドスチグミンが著効したDLBDの一例であり,
興味ある症例と考え報告する.
38) 非解剖学的バイパス術が有効であった胸部
下行大動脈狭窄症の1例
(埼玉医科大学国際医療センター心臓血管外科)
石川雅透・朝倉利久・田畑美弥子・岡田至弘・
住 瑞木・岡 潤一・石田 徹・上部一彦・
新浪 博
症例は80歳,女性.数年前から高血圧性心不全に
て近医で入退院を繰り返していた.上下肢の血圧
差は80mmHgであったため,CTで横隔膜のレベ
ルの胸部下行大動脈に狭窄を認めたことから,カ
テーテルを行い,引き抜き圧較差は100mmHgあ
り,加療目的に当院へ紹介された.CT上,下行
大動脈は一様に高度な石灰化を呈していたこと,
高齢者であることより解剖学的な再建はリスクが
高いと判断した.両側腋窩動脈と外腸骨動脈のバ
イパスを行うことで上下肢の血圧差は解消し,血
圧のコントロールも良好となった1例を経験した
ので報告する.
41) 生体腎移植時に解離性大動脈瘤を指摘さ
れ,二期的に手術を行い移植腎を保護し得た1例
(東京女子医科大学心臓病センター心臓血管外科)
梅津健太郎・斎藤 聡・西中知博・冨岡秀行・
宮城島正行・山嵜健二・川合明彦・青見茂之・
黒澤博身
(東京女子医科大学泌尿器科) 石田英樹・
田邉一成
症例は53歳男性.44歳時に慢性糸球体腎炎による
慢性腎不全で透析導入.47歳時に生体腎移植を行
った.手術中に解離性大動脈瘤が疑われ,その後
の精査でStanford B型と診断.術後移植腎の機能
は良好.瘤径が拡大し,当院紹介された.胸部下
行大動脈最大径55mm,総腸骨動脈最大径40mmで
あったため,二期的手術を予定し,瘤径の大きか
った腹部大動脈瘤手術を先行させた.手術は腹部
正中アプローチで,大動脈遮断中は移植腎の切離
した動脈断端からリンゲル液,アルブミンを還流
し腎保護を行った.血行再建はY字人工血管を用
い,移植腎も人工血管に吻合し,手術を終了.術
後も腎機能を温存し得た.術後Sepsisとなり,長
期抗生剤治療を必要としたが,軽快し退院.今後
早期に胸部残存瘤に対する手術を予定している.
36) 運動負荷ABI検査およびCT検査が診断およ
び治療に有用であった総骨動脈狭窄による間欠性
跛行の1例
(横浜総合病院ハートセンター循環器科)
梅田 研・大塚雅人・中村光哉・菅原重忠・
東田隆治
39) Campylobacter Fetus感染による感染性心内
膜炎と感染性大動脈瘤を合併した1例
(日本医科大学付属病院循環器内科)
藤本啓志・大野忠明・本間 博・小原俊彦・
宮内靖史・田中古登子・牛島明子・岡崎怜子・
林 寛子・水野杏一
42) 末梢循環不全に対するサルポグレラートに
よる効果の検討−サーモグラフィによる評価−
(日本医科大学多摩永山病院内科・循環器内科)
小谷英太郎・草間芳樹・新 博次
(同中央検査室) 酒井貴史・林 綾子・
佐藤寛之
80歳代男性.主訴は歩行時右下肢疼痛.数ヶ月前
より歩行時右大腿および脹脛部の疼痛が出現.下
肢閉塞性動脈硬化症を疑いABI検査施行するも,
右1.05,左1.11と正常.下肢動脈造影(正面像の
み)施行するも明らかな狭窄病変なし.しかし
症状が典型的なため,運動負荷ABI検査(12%勾
配,2.4km/hr,5分間)施行したところ,開始
3分後より右下肢疼痛が出現.運動直後の右足首
血圧が103mmHg(前153mmHg),ABIが0.61(前
1.05)と低下.下肢動脈超音波検査にて右総腸骨
動脈に狭窄が疑われた.下肢動脈CTにて総腸骨
動脈に潰瘍形成を伴った狭窄病変を認めた.CT
にて最適な造影方向を決定し下肢PTAを施行.少
量の造影剤(45ml)にて良好な拡張が得られ以
後症状は消失.運動負荷ABI検査も正常化した.
症例は61才男性.腹部大動脈瘤の既往がある患者.
牛レバーを食べた後より3日間下痢,腹痛,発熱
があったが軽快し様子を見ていた.しかし,再度
発熱し緊急入院となる.
血液培養でCampylobacter
を認め,治療を開始した.各検査で感染源は不明
であった.血液培養で陰性が続くもCRP高値が持
続.左腸骨動脈の痛みが持続するため炎症性大動
脈瘤と診断,steroidを導入した.症状改善後CT
上切迫破裂大動脈瘤を確認.準緊急大動脈瘤人工
血管置換術を施行した.術後,再度敗血症となり
血液培養より再度Campylobacterを認めた.疣贅
を経食道エコーにて認め感染性心内膜炎(IE)と
診断.経過より感染性大動脈瘤であったと考えら
れた.今回,我々はCampylobacter感染によるIE
と感染性大動脈瘤を合併した1例を経験した.
我々が調べた限り同症例報告はない.
四肢末梢の冷感・しびれ感があるがABI≧0.9で
閉塞性動脈硬化症の診断に至らない例にサーモグ
ラフィを行い,安静時皮膚温低下または冷水負荷
後の皮膚温回復遅延により末梢循環不全と診断し
た5例(男2女3,年齢68±16歳,高血圧4例,
糖尿病なし)に対しサルポグレラート300mg/日
を投与し1∼4月後にサーモグラフィを再検した.
ABIは1.1±0.1で正常.全例投与後の自覚症状は改
善し,安静時に左第1趾の皮膚温低下(30.4℃)
を認めた1例は同部位が32.8℃に改善した.冷水
負荷後の回復遅延を示した4例は,10分後同部位
の皮膚温上昇(平均25.9→32.4℃)と回復時間の
短縮を認めた.他の末梢循環改善薬に追加投与し
た3例でも改善を示し,特にサルポグレラートの
赤血球濾過速度改善作用が影響したと考えられ
た.
37) 開心術前に左上肢よりIABPを挿入した3例
(石心会狭山病院) 入江寿光・木山 宏・
山根正久・長谷川耕太郎・池 信平・
川俣哲也・芝崎太郎
40) 右鎖骨骨折後の右鎖骨下動脈閉塞に対し
PTAが奏効した1例
(信州大学循環器内科) 吉江幸司・
三浦 崇・橋詰直人・矢嶋紀幸・相沢万象・
越川めぐみ・笠井宏樹・伊澤 淳・富田 威・
熊崎節央・筒井 洋・小山 潤・池田宇一
43) lamin遺伝子変異を認めた若年発症の重症冠
動脈疾患の1例
(慶應義塾大学循環器内科) 伊藤博之・
高橋寿由樹・河村朗夫・河野隆志・安斉俊久・
岩永史郎・吉川 勉・小川 聡
Leriche症候群のため大腿動脈からのIABP挿入が
困難な症例に対し,術前に左上肢からIABPを挿
入した3例を経験した.症例は人工心肺補助心拍
動下CABG,CABG+TAP+MVR,心室中隔穿孔
部閉鎖術の3例である.2例はEF30%以下の低
左室機能のために予防的に挿入し,1例はVSPに
よるショックおよび肺高血圧症の改善目的に挿入
した.IABPの挿入部位は大腿動脈が一般的であ
るが,挿入が困難な場合,上腕からの挿入を考慮
する必要がある.しかし,左鎖骨下動脈は解剖学
的な構造から下行大動脈へのIABPの挿入が困難
な例もある.今回経験した3例に対して,IABP
挿入時の工夫,問題点,合併症などについて検討
する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
67歳男性.交通外傷による右鎖骨骨折後,偽関
節 を 呈 し て い た.2007年 末 よ り, 左 右 上 肢 に
40mmHgの 血 圧 差 を 認 め, 造 影CT上, 偽 関 節
の圧排による約6cmの右鎖骨下動脈の完全閉塞
と側副血行路を認めた.初回PTA時に多量の血
栓を認めたため手技を終了し,抗凝固療法施行
後に二期的な血行再建を試みることとした.後
日,GUARDWIREを 用 い たdistal protectionお よ
び上腕動脈より挿入したシースからの脱血操作
に よ り 遠 位 塞 栓 を 予 防 し, 再 度PTA(SMART
8.0/80mm)を施行した.合併症なく手技を終え,
術前50mmHgあった病変前後の圧較差は術後消失
した.右鎖骨骨折後の右鎖骨下動脈閉塞に対し
PTAが奏効した一例を経験したので報告する.
40歳男 性.2003年 6月狭 心症 にて 当院受 診し,
LMT90 % 狭 窄 に 対 し て 計 3 回PCIを 施 行 し た.
2006年1月より下腿浮腫と労作時呼吸困難が出現
し,同年9月他院にてLCX100%,RCA90%と新
たな病変を認め,RCAに対しPCIを施行した.こ
の頃より嚥下困難が増悪したため2007年5月他院
神経内科にて精査され,嗄声,鳥様顔貌,強皮症
様皮膚硬化,筋萎縮などの所見に加えてlamin遺
伝子変異を認め,早老症の亜型が考えられた.同
年10月心不全増悪のため当院入院となり,RCA
ステント近位部99%狭窄の出現に対しPCIを施行
した.心エコー上左心機能低下(EF23%)およ
び中等度MRと重症ASの合併を認め,心不全コン
トロールに難渋した.本症例はlamin遺伝子変異
を伴った早老症の亜型に重症冠動脈疾患と弁膜症
を合併した稀な1例であった.
東京ステーションコンファレンス(2008 年 9 月) 909
44) MDSに対する骨髄幹細胞移植後の慢性GVHD
経過観察中にAMIを発症した1例
(信州大学循環器内科) 三浦 崇・
熊崎節央・筒井 洋・小田切久八・相沢万象・
中村めぐみ・笠井宏樹・伊澤 淳・富田 威・
矢崎善一・小山 潤・池田宇一
47) 肥大型心筋症として経過観察されていた心
サルコイドーシスの1例
(国立国際医療センター戸山病院循環器科)
柴田純子・岡崎 修・山崎智弘・門脇 拓・
上村宗弘・大野邦彦・勝馬 愛・田守唯一・
副島洋行・田中由利子・樫田光夫・廣江道昭
16歳,女性,MDSに対して2005年9月下旬に血
液型不適合の母親から骨髄移植(BMT)を施行.
慢性GVHDを呈していたがCyAによりほぼコント
ロールされていた.2008年3月初旬,AMIを発
症し,同日緊急冠造影を施行.冠動脈は全体的に
ectaticでありRCA#2の完全閉塞に対しPCIを施
行し,術後経過良好にて当科退院した.今回,我々
はMDSに対するBMT後の若年例に発症したAMI
を経験した.BMT後のAMIは稀であり,また本
症例の冠動脈病変は臓器移植後の慢性期動脈硬化
病変とは異なる所見であった.発症要因に関して
若干の考察を加えて報告する.
64才女性,【主訴】息切れ・動悸.【病歴】H10年
より時々胸部不快感を自覚.H16年検診で心拡大
を指摘.同年他院で肥大型心筋症(HCM)と診
断された.H20年2月胸痛・呼吸困難があり,胸
部単純Xp上,肺うっ血像を認め急性心不全の診
断で他院入院したが,心電図で完全左脚ブロック,
心エコー図(UCG)で壁運動異常が悪化し,精
査加療目的に当院紹介.【経過】67Gaシンチ及び
18FDG-PET陽性,冠動脈に有意狭窄を認めず,心
内膜生検にて非乾酪性類上皮細胞を検出した.心
臓MRI検査の造影遅延像でlate enhancementを認
めた.カルベジロールで心機能は改善を認め,II
度房室ブロックはステロイド治療後改善傾向であ
る.本症例はUCGでHCMと診断されていたが,心
内膜心筋生検像から心サルコイドーシスと組織診
断し,ステロイド治療を行えた貴重な症例である.
45) 冠動脈バイパス術におけるラリンジアルマ
スク麻酔105例の経験
(平塚共済病院心臓血管外科) 石川智啓・
高橋政夫・畠田和嘉
(同循環器科) 丹羽明博・梅澤滋男・
井川昌幸・大西祐子・小林一士・中村浩章・
大西隆行・鈴木秀俊・加藤陽子・加藤信孝
(同麻酔科) 清水 巧
48) 5年の経過を経て心不全を発症した心サル
コイドーシス3点ペーシングCRTDが著効した1例
(昭和大学内科学教室循環器内科部門)
菊地美和・浅野 拓・塚本茂人・小貫龍也・
箕浦慶乃・河村光晴・丹野 郁・小林洋一
(総合高津中央病院) 野溝明彦・安達太郎・
斉木裕香
(昭和大学横浜北部病院) 菊嶋修示
我々は単独冠動脈バイパス術のほとんどをOff
Pump CABGにて行い得ている.より低侵襲の手
術を目指しラリンジアルマスク麻酔(以下LMA)
を導入した.2003年より2008年4月までのCABG
総数は231例で,待期164例,緊急67例であった.
228例(98.7%)をOff Pumpにて施行し,105例(45.4
%)にLMAを施行したので,検討報告する.術
中に換気状態が不良となりLMA→気管内挿管へ
の変更をした症例は2例(1.9%).その他の症例
では覚醒は良好で,麻酔関連合併症はなかった.
血行動態の変動の少ないLMAは虚血心には有利
であり,術中の外科医への負担も気管内挿管麻酔
に比べ遜色なく,術後嗄声や誤嚥などの合併症は
全くなかった.バイパス成績にも全く影響は無い
と考えられた.
症例は62歳女性.2003年に完全房室ブロックによ
る意識消失発作が出現し,ペースメーカー植え込
み術を施行,心室リードは中隔に留置した.2005
年に肺サルコイドーシスと診断しステロイド治療
を開始した.2008年1月,急性左心不全を発症,
心サルコイドーシスと診断,左室壁運動の低下と
dyssynchronyがあり,非持続性心室頻拍を認め
たため両室ペーシング機能付き植え込み型除細動
器(CRTD)の植え込みを施行した.左室,中隔,
心尖部からの3点ペーシングを施行,ドプラ波
形からの時間速度積分値とTaskFoceMoniterによ
る心拍出量を指標にA-VおよびV-VDelayを決定し
た.5年の経過を経て心不全を発症した心サルコ
イドーシスに3点ペーシングCRTDが著効した症
例を経験したので報告する.
46) 特異な心筋変性を呈した慢性心不全の1例
(千葉大学循環病態医科学) 近藤祐介・
宮内秀行・大熊麻衣子・堀江佐和子・
李 光浩・長谷川洋・高野博之・中川敬一・
小室一成
49) 高度右室流出路狭窄を示した57才成人例:
右室二腔症?肥大型心筋症?
(自治医科大学心臓血管外科部門)
坂野康人・相澤 啓・三澤吉雄
(同小児外科部門) 馬場勝尚
(同小児心臓血管外科部門) 河田政明
症例は46歳男性.健診で心拡大を指摘され,慢性
心不全の診断で2004年11月より近医で内服加療し
ていたが,2007年9月より下肢の浮腫と労作時
呼吸困難が増悪し,精査加療目的に入院となっ
た.心臓超音波検査にて四腔の拡大と左室壁の全
周性運動低下を認めた.左室側壁では壁の菲薄化
と心外膜側の輝度上昇という特異な所見を呈して
おり,同部位にはPETで集積を認めたが,CT・
MRIでは脂肪の所見であり,心室中隔の右室側に
も脂肪を認めた.左室心筋生検では心筋細胞の軽
度肥大,核の大型化を認めた.白血球中α-ガラ
クトシダーゼA活性の低下を認め遺伝子解析を施
行した.各種画像検査で特異な心筋性状所見を認
めた稀有な症例であり,若干の文献的考察を加え
報告をする.
910 第 209 回関東甲信越地方会
右室二腔症は先天性心疾患の一つとして知られて
いるが,成人期に初めて指摘される事は稀であ
る.今回我々は急速に進行した高度の右室流出路
狭窄による心不全に対し準緊急的に外科治療を要
した56才女性例を報告する.労作時の呼吸困難と
下腿浮腫を契機に心エコー検査にて右室流出路狭
窄,三尖弁閉鎖不全を認めた.心カテーテル検査
では右側大動脈弓の他,右心室−肺動脈圧較差は
120mmHgであった.手術は右室流出路の異常筋
束を切除,右室流出路をe-PTFEパッチにより再
建した.右室流出路周囲への凍結凝固焼灼により,
心室内re-entry形成を予防した.三尖弁および弁
輪形成術を加え逆流を制御した.術後経過は良好
で圧較差は消失した.本症例は高度の左室肥大も
伴っており肥大型心筋症との鑑別も含め今後も経
過観察が必要である.
50) 心臓腫瘍に類似した病変を呈し弾性繊維の
変性疾患が疑われた1例
(心臓血管研究所付属病院循環器科)
榎本典浩・庄司正昭・上嶋徳久・澤田 準・
相澤忠範
(同心臓血管外科) 御厨彰義・山田純也・
田邉大明
症例は47歳男性.下腿浮腫,呼吸苦を認め近医
にてうっ血性心不全と診断された.心エコー上,
EF 30%の低心機能,僧帽弁閉鎖不全症3度,大
動脈弁閉鎖不全症3度,そして心室中隔から大動
脈弁右冠尖に及ぶ,high echoic mass lesionを認
めた.心臓腫瘍を疑われ,外科的手術目的に同年
1月18日,当院転院となった.心臓MRIでは心基
部中隔にφ4×3.5cmの中心部に液状壊死を伴い,
性状,頻度から転移性腫瘍が疑われた.ガリウム
シンチグラフィー,PETでは悪性を疑う所見は認
めなかった.3月11日,腫瘍摘出術を施行.肉眼
的にはValsalva洞動脈瘤が疑われた.病理診断で
はcystic medionecrosis類似病変をみとめ,弾性
線維の変性疾患の可能性が示唆された.
51) Bosentanが奏功したNASHによる門脈肺高
血圧症の1例
(東京女子医科大学循環器内科) 琴野巧裕・
芹澤直紀・佐藤高栄・尾崎友美・鈴木 豪・
大森久子・村崎かがり・志賀 剛・萩原誠久
39歳女性.12歳時,下垂体腫瘍手術の既往あり.
1999年から肝機能障害を指摘されていた.2004年
から労作時息切れを自覚し,2006年,肺高血圧を
認め精査加療目的で入院.全身検索を行うも,二
次性肺高血圧は否定的で,特発性肺高血圧症と診
断.Bosentanを開始し,自覚症状・肺高血圧の
改善(NYHAII→I,RVSP60→30mmHg)を認め,
外来通院加療を継続.2007年12月吐下血で緊急入
院し,出血源精査中に肝硬変(Child−A)
,食道
静脈瘤,脾腫を認めた.肝生検でsteatohepatitis
の所見を認めNASHの診断となり,経過から門脈
肺高血圧症と診断した.現在も外来通院加療中で
あるが肝機能障害の増悪は認めず肺高血圧症も安
定している.門脈肺高血圧症の発症機序は不明で
あり,その予後は不良であるが,Bosentanの有
用性を示唆する貴重な症例と考え報告する.
52) 川崎病における血管炎バイオマーカー PTX
3の変動
(日本医科大学武蔵小杉病院小児科)
浅井牧子・勝部康弘・上砂光裕
(日本医科大学付属病院小児科) 阿部正徳・
小川俊一
(日本医科大学多摩永山病院小児科)
深澤隆治
【背景・目的】ペントラキシン3(PTX3)は炎症
刺激により局所で産生され,血管関連ペントラキ
シンと呼ばれている.川崎病においてPTX3によ
るガンマグロブリン(γ-G)不応例の予測因子
としての可能性を検討した.【方法】川崎病10例
を対象に,γ-G投与前・後,退院時ならびに発
症1か月後にPTX3の測定.
【結果】各測定ポイン
トでのPTX3の平均値はそれぞれ28.9,13.8,6.9,
4.9ng/mlであった.γ-G治療に対する反応別に
分けると,反応例(8例)の平均値は20.5ng/ml
であったのに対し,不応例(2例)は63.0ng/ml
であった.【まとめ】1)川崎病急性期において
PTX3は著しく高値を示していた.2)γ-G治療
不応例は反応例に比べ著しく高値を示していた.
3)γ-G治療によりPTX3値は速やかに低下した
が,発症1か月後でも比較的高値を示していた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
53) 脳梗塞合併DCM症例に対しLVAD装着を行
い心臓移植に到達し社会復帰し得た1例
(東京大学心臓外科) 木村光利・西村 隆・
許 俊鋭・小野 稔・本村 昇・清水 剛・
大野貴之・縄田 寛・高本眞一
56) 双胎の帝王切開後に急性左心不全を呈した
周産期心筋症の1例
(前橋赤十字病院循環器科) 押田裕喜・
丹下正一・宇居吾郎・庭前野菊
59) アミオダロンにより巨大単純性甲状腺腫を
来した拡張型心筋症の1例
(長野県立木曽病院循環器内科) 堀込実岐
(松本協立病院循環器科) 山崎恭平
20歳男性.2005年10月DCMによる重症心不全で
入院し,2006年1月に心臓移植登録が行われた.
2007年1月に感染を契機に心不全の急性増悪を認
め,IABP,PCPSによる補助循環を必要とした.
この際,脳梗塞の合併を認めheparin使用が躊躇
されたが,循環維持不能となったため,長距離ヘ
リ輸送の後体外循環非使用下にLVAD挿入が行わ
れた.LVAD装着後は経過良好で,不全片麻痺は
あるものの高次脳機能は保たれていた.9ヶ月の
LVAD補助後,心臓移植手術施行.術後経過は良
好で,86病日に軽快退院となった.退院時,ADL
はほぼ自立しており,装具を用いて歩行可能な状
態で,現在は復学中である.極めて重症な心不全
症例に対してLVAD装着及び心臓移植により社会
復帰せしめた症例を経験したので報告する.
症例は33歳女性.不妊治療を受け,近医で双胎管
理をされていた.予定日1週前より咳,痰,腹部
膨満感,起座呼吸が出現した.妊娠39週で選択的
帝王切開術を施行されたが,術後5日経過しても
心不全改善なく当科に入院.脈拍129bpmの洞性
頻脈と腎障害(BUN 46mg/dl,Cr 1.6mg/dl)を
認め,左室壁運動は全周性高度に低下しEF 18%,
BNP 2618.8pg/mlと上昇,周産期心筋症(PPCM)
と診断した.カルペリチド,ドブタミン,利尿
剤,ARBで加療を開始したが,治療への反応が
乏しく,利尿剤を徐々に増量しACE阻害薬とジ
ゴキシンを追加した.併発した腎盂腎炎の加療と
ともに心不全症状,頻脈及び腎機能障害改善した
ため,第16病日にカルペリチドを終了,第26病
日にドブタミンを終了した.第29病日にはBNP
326.9pg/ml,EF 31%と改善したため第33病日に
退院.
症例は42歳男性,主訴は全身倦怠感.【既往歴】
38歳拡張型心筋症.
【現病歴】38歳時持続性心室
頻拍を指摘されICD植え込み施行しアミオダロン
内服開始.その後甲状腺機能なし異常.2007年(42
歳)7月9日16時頃より全身倦怠感著明となり救
急外来を受診.甲状腺のびまん性腫大を認め,エ
コーでは内部不均一で両葉腫大を認めた.血液
検査ではTSH 5.518μIU/ml,FT3 3.7pg/ml,FT4
1.03ng/dlと正常でTSHレセプター抗体も正常範
囲内であった.アミオダロン内服中止により甲状
腺腫は徐々に縮小傾向を認めた.これまでアミオ
ダロン誘発性甲状腺中毒症や機能低下症を認める
ことは報告されているが,今回の症例ではアミオ
ダロンによると思われる単純性甲状腺腫を認め,
非常にまれな症例と考えられた.
54) PCPSにて救命しえた甲状腺中毒症・頻脈
誘発性心筋症の1例
(鳥羽市立桃取診療所自治医科大学附属さいたま医療センター総合医学1)
刀根克之
(自治医科大学附属さいたま医療センター総合医学1)
中村智弘・藤原直樹・吉岡 徹・船山 大・
菅原養厚・久保典史・加計正文・石川三衛・
川上正舒・百村伸一
(埼玉協同病院) 清水禮二
57) 生理周期に伴う浮腫により心不全を呈した
1例
(東京慈恵会医科大学附属青戸病院循環器内科)
岩渕秀大・安澤龍宏・今本 諭・山崎弘二・
藤井拓朗・筒井健介・谷川真一・吉野拓哉・
笠井督雄・関 晋吾
(東京慈恵会医科大学附属病院循環器内科)
吉村道博
60) 急性右心不全にて発症し入院時の診断が困
難であった劇症型心筋炎の1例
(防衛医科大学校内科学1) 横井研介・
山口尊則・磯田菊生・佐々木誠・鯨岡武彦・
荒川 宏・楠原正俊・大鈴文孝
40歳女性.躁うつ病の既往あり.2008年1月下旬
より嘔気,下痢と頻脈を自覚.2月6日咳嗽と動
悸を主訴に近医受診.HR 150台の心房細動であ
ったが,同日夕に呼吸不全となり人工呼吸器を装
着.さらに心肺停止となり,心臓マッサージをさ
れながら当院に搬送された.昇圧剤投与を繰り
返したが血圧維持できず,PCPS,IABPを装着し
た.入院時の採血にて甲状腺機能亢進症が指摘さ
れたことから,甲状腺中毒症とこれに合併した頻
脈誘発性心筋症が主病態と考えられた.補助循環
を継続しながら,甲状腺中毒症の薬物治療とrate
controlを行ったところ,心機能が徐々に改善し,
2月9日PCPS離脱,2月14日抜管に至った.経
過中,急性腎不全・肝機能異常・DIC・感染・覚
醒遅延などを合併したがいずれも改善した.神経
学的後遺症なく,3月25日独歩退院した.
37歳女性.以前より排卵から月経までに軽度下腿
浮腫の出現,月経終了と同時に消退,を繰り返し
ていたが胸部症状を伴う事は無かった.2006年8
月,生理期間中に出現した呼吸困難感を主訴に当
院救急外来を受診.来院時両下腿浮腫を認め,胸
部レントゲン写真上胸水貯留,動脈血液ガス分析
上低酸素血症,心エコー図上下大静脈拡張なども
認めておりうっ血性心不全と診断され精査加療目
的に入院となった.利尿剤投与を中心にうっ血は
改善を認めたものの各種検索にても基礎疾患の同
定には至らず,またMeigs症候群も否定的であっ
た.経過より生理周期に伴う浮腫により心不全を
呈したものと考えられたが,通常は心不全に至る
事は極めてまれであり,貴重な症例と考え報告す
る.
55) 大量ガンマグロブリン療法を施行し補助循
環にて救命しえた劇症型心筋炎の1例
(災害医療センター循環器科) 櫻井 馨・
稲葉 理・萬野智子・圓福智子・伊藤順子・
加藤隆一・大下 哲・小川 亨・横山泰廣・
佐藤康弘
(東京医科歯科大学循環器内科) 磯部光章
58) 慢性心不全の経過中に進行する腎不全に対
してCAPDが有効であった1例
(新潟大学医歯学総合病院第一内科)
田中孔明・柳川貴央・伊藤正洋・塙 晴雄・
小玉 誠・相澤義房
(同第二内科) 細島康宏・飯野則昭・
丸山弘樹
症例は60歳の女性.2008年2月14日に発熱のため
近医を受診し,一時解熱するが16日6時頃に失神
発作を認め近医を受診した.3度房室ブロックを
認め急性心筋梗塞を疑われ当院紹介受診となっ
た.冠動脈造影にて有意狭窄を認めず一時的ペー
スメーカーのみで治療を開始したが,エコー上
進行性の駆出率の低下を認めた.2月19日に心
室頻拍となり血圧が低下したため,大動脈バル
ーンポンプ(IABP)および経皮的心肺補助装置
(PCPS)を挿入した.PCPS挿入4日後より大量
ガンマグロブリン療法を1g/kg/日(45g/日)で
2日間施行した.エコー上徐々に駆出率の改善を
認め,PCPS挿入11日後に抜去に成功した.その
後IABP,ペースメーカーからも離脱し,2008年
4月5日独歩退院となった.補助循環を用いて救
命しえた劇症型心筋炎を経験したので報告する.
慢性心不全では徐々に腎不全が進行し,腎不全出
現後の予後は短い.進行性の腎不全に対して早期
に持続腹膜透析(CAPD)を導入し,腎機能の保
持を図れた一例を報告する.症例は40才男性.出
生時に修正大血管転位症,両大血管右室起始症
と診断され,11才時にRastelli手術を受けている.
その後,低心機能ながらも,多量の利尿薬にて外
来管理されていた.しかし,39才頃から徐々に血
清クレアチニン(S-Cre)が上昇し,心不全を繰
り返すようになった.40才,S-Creが3.99mg/dlと
なったところでCAPDを導入した.CAPD導入後,
腎機能は改善(S-Cre 0.99mg/dl)し,心不全を
繰り返すことなく安定している.また,利尿薬の
減量も可能となった.慢性心不全で多量の利尿薬
使用中に腎不全が進行する時は,早めに腎代替療
法の併用を考慮すべきと思われる.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
73歳男性.先行する感冒症状後,突然の呼吸困難
を来たし搬送された.来院時,著しい低酸素血症
と右心不全徴候を認めた.心電図は右脚ブロック
を伴う頻脈性心房細動で,心エコーでは右室拡
大,右室壁運動低下を認めた.左室は求心性壁肥
厚,内腔狭小化を認めたが,左室駆出率は80%と
保たれていた.入院時のトロポニンTは陰性であ
った.その後,輸液負荷にも反応せず,急速にシ
ョック状態が増悪し,心肺停止状態となったため,
IABP,PCPSを併用した.入院12時間後には,心
嚢液貯留,左室壁運動のびまん性低下を認め,経
過より劇症型心筋炎と判断した.第5病日には心
機能が回復し循環補助を離脱した.当初は右室優
位に心筋炎を発症し,かつトロポニンTが陰性で
あったため,入院時の診断が困難であった劇症型
心筋炎の一例を経験した.
61) 著明な腹水・浮腫を伴う心不全を契機に診
断に至った原発性アルドステロン(ALD)症の1例
(JR東京総合病院循環器内科) 村岡洋典・
杉下和郎・川名暁子・杉浦杏奈・小倉理恵・
浅川雅子・碓井伸一・高橋利之
症例は48歳男性.主訴は腹部膨満と下肢浮腫.胸
部X線写真にて心陰影拡大著明.心電図は2:1心房
粗動.心エコー検査にて左室肥大とびまん性壁運
動低下を認めた.K 2.5mEq/Lと高度の低K血症
あり.低レニン高ALD状態から原発性ALD症と
診断するも,腹部CT・副腎シンチでは異常所見
なし.Spironolactone,K補充,ARB,少量のβ
遮断薬を開始したが,腹水貯留が急激に増悪し連
日の排液(合計17L)を要した.血清K値が正常
化してからループ利尿薬を追加,心不全はコント
ロールされ,体重は30kg減少した.心カテにて
冠動脈疾患は否定され,心筋生検では特異的な所
見なし.本症例の病態には,原発性ALD症によ
る高血圧のみならず,ALDの直接作用が関与し
ていた可能性も考えられる.
東京ステーションコンファレンス(2008 年 9 月) 911
62) ICDリードに遠隔期MRSA感染を発症し,
外科治療で軽快した拡張型心筋症の1例
(聖マリアンナ医科大学循環器内科)
出雲昌樹・明石嘉浩・大内英樹・西尾 智・
渡邉義之・龍祥之助・長田圭三・金剛寺謙・
大宮一人・三宅良彦
65) 左肺癌手術中に発症したたこつぼ型心筋障
害の1例
(順天堂東京江東高齢者医療センター循環器内科)
増田洋史・渡邊容子・山上伸一郎
(順天堂大学循環器内科) 河合祥雄・
代田浩之
【症例】67歳,男性.【主訴】呼吸苦.
【現病歴】
2007年9月呼吸苦を主訴に救命受診.拡張型心筋
症に伴ううっ血性心不全の診断で即日入院とし人
工呼吸器管理とした.入院中,肺炎による呼吸不
全も併発し長期間の人工呼吸器管理とステロイド
投与,中心静脈カテーテル留置となった.心不全,
肺炎は改善したがカテーテル感染を契機に植え込
み型除細動器<ICD>リード感染を併発,血液培
養よりメチシリン耐性黄色ブドウ球菌<MRSA>
を検出した.抗MRSA薬投与後,外科的にICDリ
ード抜去術及び三尖弁修復術を施行.術後経過は
良好,CRT-Dへのグレードアップを行い退院とし
た.低心機能患者に発症したMRSAを起因菌とす
る遠隔期ICDリード感染,三尖弁感染性心内膜炎
を経験した.MRSAによるICDリード感染の報告
は本邦になく若干の文献的考察を加えて報告する.
73歳男性.左肺癌の手術目的で平成19年2月入院
した.安静時胸痛の既往があり負荷心電図で疑陽
性所見のため,術前に冠動脈造影を施行したが有
意狭窄はなかった.全麻下で左肺上葉切除術を施
行中,血圧低下と伴に心室頻拍,心室細動を生じ
たため開胸心臓マッサージ及び電気的除細動を施
行し回復した.手術直後に冠動脈造影を施行.冠
動脈は異常認めず,左室造影でたこつぼ型心筋障
害像を認めた.心原性ショックにはIABPを要し
たが,心機能は回復した.これまで当施設で経験
したたこつぼ型心筋障害7例のうち2例は経過中
に重篤な基礎疾患で死亡している.本症例は一般
に予後良好と言われているが,基礎疾患による死
亡例の存在にも留意すべきである.
63) 著名な圧較差が心尖部瘤の原因と思われた
心室中部閉塞性肥大型心筋症の1例
(秦野赤十字病院内科) 澤田玲民・
小西正紹・宮崎咲江・藤井信一郎
66) 心尖部の壁運動が保たれている「midventricular ballooning」の症例
(東海大学内科学系循環器内科) 伊藤大起・
森野禎浩・吉岡公一郎・椎名 豊・伊苅裕二・
田邉晃久
69) 低酸素血症を契機に発症したたこつぼ型心
筋症の1例
(東京警察病院循環器科) 西前伊起子・
野崎みほ・金子光伸・新田宗也・鈴木将敏・
笠尾昌史・白井徹郎
症例は82歳女性で慢性心房細動で近医通院してい
た.2週間前より食思不振あり歩行時息切れも
加わり近医受診し心電図でV1-5でST上昇,トロ
ポニンT陽性にて急性心筋梗塞疑いで当院紹介受
診.心エコーで前壁から心尖部にかけて壁運動異
常認め,急性冠症候群を疑い緊急心臓カテーテル
検査施行.冠動脈は有意狭窄なく左室造影で中部
の狭窄及び心尖部瘤を認め瘤内に血栓を認めた.
心尖部以外の壁運動は良好であり,左室内圧は心
尖部瘤内で250mmHg以上あり圧較差は100mmHg
以上認めた.β遮断薬増量,シベンゾリン,ワ−
ファリン開始とした.2ヶ月前の前医での心電図
はST上昇を認めなかった.心尖部瘤の形成機序
は諸説あり当例は短期間に心電図変化を認めてお
り心尖部内圧上昇による微小循環障害で心尖部瘤
を形成したものと考えた.
88歳女性,2008年2月呼吸困難と胸部不快感あ
り,救急車にて当院ERに搬送.心電図上胸部誘
導にて巨大陰性T波を認め,心臓超音波検査では
左室心尖部側にて壁運動はほぼ無収縮,採血上心
筋逸脱酵素の上昇を認めたため,急性冠症候群を
疑い同日緊急冠動脈造影を施行.冠動脈に責任病
変を指摘できず左室造影を施行したところ,心基
部は壁運動が保たれ,左室全体に無収縮でありい
わゆるたこつぼ型心筋症であったが,心尖部にお
いては壁運動は保たれていた.入院後は典型的な
たこつぼ型心筋症と同様に数日間で超音波上壁運
動の改善をみた.典型的なたこつぼ型心筋症とは
異なり,基部のみならず心尖部の壁運動も保た
れている病態を示す,いわゆる「midventricular
ballooning」を経験したため報告する.
症例は61歳女性.乳癌術後で化学療法(TXL)中
に薬剤性間質性肺炎をきたし12月20日外科入院,
ステロイドパルス療法を行っていた.12月28日
12:00突然呼吸状態が悪化,低酸素血症を呈し当
科依頼.12誘導心電図では下壁誘導でSTが上昇
し,心エコーで下壁に壁運動低下を認めた.緊急
冠動脈造影検査で器質的狭窄は認めず,その後心
電図上全誘導においてSTが上昇,心エコーでた
こつぼ型を呈したことから最終的にたこつぼ型心
筋症と診断した.本例は低酸素血症を契機にたこ
つぼ型心筋症を発症し,その経過を経時的にとら
えた一例であり,ここに報告する.
64) 再発時に異なる部位で一過性の左室壁運動
異常を呈したたこつぼ型心筋障害の1例
(東京慈恵会医科大学循環器内科)
柏木雄介・松尾一可・武本知之・小川和男・
吉田裕志・南井孝介・橋本浩一・小川崇之・
八木秀憲・吉村道博
67) 一過性僧帽弁逆流と左室流出路圧較差を認
めたタコツボ心筋症の1例
(日本医科大学千葉北総病院集中治療室)
白壁章宏・菊池有史・小林宣明・鈴木雄一朗・
金丸勝弘・品田卓郎・圷 宏一・横山真也・
畑 典武
70) 椎骨動脈解離に併発した逆たこつぼ型心筋
症の1例
(東京大学循環器内科) 小島敏弥・
田中悌史・石田純一・齋藤 幹・安東治郎・
森田敏宏・山下尋史・平田恭信・永井良三
【症例】74歳男性【主訴】胸痛【経過】2005年5
月に突然の胸痛を主訴に当院へ入院.急性冠症候
群が疑い緊急冠動脈造影を施行するも有意狭窄を
認めず,左室造影にて心尖部を中心に壁運動異常
を認め,たこつぼ型心筋症と診断された.2008年
2月20日に突然の胸痛にて当院を受診した.心電
図にてII,III,aVF誘導でST上昇を認め,急性
冠症候群を疑い緊急冠動脈造影を施行したところ
有意狭窄を認めなかった.しかし左室造影にて前
側壁,後壁の中部に壁運動異常を認めた.壁運動
異常部位は前回と異なり,たこつぼ型心筋症の亜
型としての再発と考えられた.その後壁運動異常
は改善し,第23病日に退院となった.
【結語】今
回,我々はたこつぼ型心筋症の再発症例を経験し
た.前回と壁運動異常部位が異なる極めて稀な症
例であった.
59歳男性.胸痛を主訴に救急搬送,血圧60mmHg
台.心電図V2-V6のST上昇,心エコーで左室流出
路圧較差・僧帽弁収縮期左室前方運動・重度僧
帽弁逆流を認めたが局在性壁運動異常はなかっ
た.冠動脈は正常で,114mmHgの左室̶大動脈
圧較差を認めた.バルサルバ試験とブロッケンブ
ロー現象陽性,プロプラノロール2mgで圧較差
57mmHgに改善し,閉塞性肥大型心筋症(HOCM)
を 疑 い ビ ソ プ ロ ロ ー ル2.5mg, シ ベ ン ゾ リ ン
300mgを開始.第3病日に圧較差,僧帽弁逆流と
も著明改善しておりHOCM経過としては早すぎ
た.急性期左室造影,心電図推移と臨床経過から
タコツボ心筋症と診断.圧較差を伴うタコツボ心
筋症は稀で,早期β遮断薬投与を支持する報告が
ある.本例は経過中にT波陰転化を認めたが巨大
陰性T波は認めず,早期β遮断薬投与が心筋障害
を抑制した.
912 第 209 回関東甲信越地方会
68) 狭窄所見の変動を認めた閉塞性肥大型心筋
症の1例
(日本大学内科学系循環器内科分野)
深町大介・小船達也・鈴木俊郎・青野抄子・
知久正明・國本 聡・笠巻祐二・平山篤志
(同外科学系心臓血管外科学分野)
木村 玄・古川宣行・依田真隆・南 和友
68歳男性.平成17年近医にて収縮期雑音指摘され
閉塞性肥大型心筋症と診断された.内服薬不使用
のまま経過観察されていたが,平成19年10月より
立ちくらみ,胸部苦悶症状出現したため,同年10
月17日当院循環器内科紹介受診.精査加療目的に
同年11月22日入院となった.入院後,経時的に数
回心エコー施行したが,圧較差の変動,流出路狭
窄所見の変動認めた.左心カテーテル検査上左
室流出路の圧較差は軽度であったが,心エコー,
MRIにて中隔基部の著明肥厚,狭窄所見を呈し,
ドブタミン負荷心エコーにて流出路の圧較差増大
を認めたため,平成20年1月8日肥大心筋切除術
施行.可動性のある偏在性心筋肥厚のため検査所
見の変動を認めたものと考えられた.
症例は38歳女性.頸部痛に続く左半身優位の痺れ
を生じ,当院救急搬送となった.左優位の神経所
見を認め,延髄下部∼頸髄上部病変を疑い,精査
にて左椎骨動脈解離と診断された.また,初診
時,呼吸困難を生じ,著明な高血圧を認めた.心
エコーで全周性壁運動低下を認め,X線にて両肺
うっ血を認めた.病態として何らかの原因による
心機能低下があり,後負荷増大により急性左心不
全を来したものと診断した.その後冠動脈支配に
一致しない不均一な壁運動異常,壁肥厚が出現し,
徐々に壁運動の改善を来した.また,壁運動のパ
ターンは逆たこつぼ型心筋症と言えるものであっ
た.その後心駆出率は20%から60%まで改善した.
本症例では椎骨動脈解離という神経疾患を契機と
し,通常のたこつぼ型心筋症とは逆の形態を辿っ
ている点で特徴的であった.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
71) 心室内血栓から末梢塞栓症を併発した,褐
色細胞腫を原因とすると思われるたこつぼ型心筋
症の1症例
(東京医科歯科大学) 白井聖子・林 達哉・
木村茂樹・稲村幸洋・瀬谷美瑛・高橋健太郎・
宮崎 徹・渡部真吾・上石哲生・樋口晃司・
佐々木毅・原口 剛・稲垣 裕・川端美穂子・
蜂谷 仁・平尾見三・磯部光章
74) 院外発症の心室細動に対し,救急隊による
BLSと8回のAED作動により救命,独歩退院しえ
た1例
(東京医療センター循環器科) 石井 聡・
布施 淳・小野智彦・池上幸憲・前淵大輔・
坂本宗久・中鉢正太郎・久保田芳明・
鈴木優実・樅山幸彦
(同救命救急センター) 菊野隆明
77) 自律神経の影響が顕著に認められた心室頻
拍の1例
(蓬莱かすやクリニック) 粕谷健司・
川良徳弘
(蓬莱中川駅前内科クリニック) 粕谷奈都子
(横浜市立みなと赤十字病院循環器科)
沖重 薫
(東京医科歯科大学付属病院循環器科)
磯部光章
症例は44歳女性.小脳膠細胞腫摘出術後であり,
今回脳浮腫を認め入院した.第3病日,安静中に
胸部絞扼感出現し,心電図上V3-6にてST上昇を
認めた.心エコー上心基部での過収縮,心尖部で
の無収縮を認め,たこつぼ型心筋症が考えられた
が,全身状態を考慮し心カテは行わなかった.第
8病日,心エコー上浮動する1.5cmの左室内球形
血栓を認めた.塞栓症予防のため摘出術予定とし
たが,同日夜に左上肢の冷感,疼痛を認めた.心
エコー上同血栓は消失しており,左上腕動脈の塞
栓症を発症したと判断し緊急手術を施行,血栓を
摘出し症状は改善した.本症例は後日腹部CT検
査,尿中メタネフリン値から褐色細胞腫と診断さ
れた.心室内血栓から末梢塞栓症を併発した,褐
色細胞腫を原因とすると思われるたこつぼ型心筋
症の1例を経験した.
37歳男性.自宅で胸痛の後,心肺停止に陥った.
5分後救急隊到着,CPR開始.VFでAEDにてシ
ョックするが難治性であり結局30分以上にわたる
CPR施行,計8回のショックを行った.8回目の
ショックの後自己心拍再開した.当院救命センタ
ー搬入時意識レベル300/JCS,脈拍148/分,血圧
155/118,自発呼吸あり.心電図にてV1-V5でST
上昇しており,緊急心臓カテーテル検査にて左
冠動脈近位部の完全閉塞所見を認めた.引き続き
PCI施行,早期再灌流療法を行った.低体温療法
を経て回復,独歩退院した.BLSのみで難治性心
室細動に対処しえ,BLSの重要性を感じさせる症
例であった.
症例は63才男性運転手.高血圧にて当院受診.安静
時心電図にて左脚ブロック下方軸型の心室期外収縮
(PVC)の頻発を認めた.24時間心電図では覚醒時に
頻発する27576個/日のPVCの頻発と,同波形で最大7
連発の単形性非持続性心室頻拍(NSVT)を943回/日
認めた.β遮断薬投与下の24時間心電図ではPVC数に
変化は認めず,最大27連発のNSVT(R-R440msec)を
認め,また運動負荷心電図でもNSVTを認めた.PVC,
NSVTはいずれも無症候性であった.VT ablationの適
応をみるために入院したが,入院後数日でVTは消失
し,24時間心電図でもPVCは半減したため経過観察と
した.退院後は運動負荷でもVTは誘発されなかった.
【考察】同VTは右室流出路または大動脈基部起源であ
り,成功率も高いことからablationの良い適応と考え
られている.一方,自律神経の影響を受けやすいこと
も知られており,本例はその顕著な例といえよう.治
療法選択に示唆に富む症例である.
72) 特異的な形態を示した左室瘤に大動脈弁閉
鎖不全症を合併した一治験例
(聖路加国際病院ハートセンター心臓血管外科)
植西倫子・渡邉 直・阿部恒平・山崎 学・
市原有起・小柳 仁
75) 高齢で発症したQT延長症候群の1例
(自治医科大学循環器内科) 甲谷友幸・
三橋武司・橋本 徹・中神理恵子
(下都賀総合病院) 岩田友彦・野村裕太郎・
海老沢勝人
78) 塩酸ベプリジルによる心房粗動の除粗動後
に急激なQT延長からTorsades de pointesをきたし
た1例
(君津中央病院循環器科) 松戸裕治・
亀田義人・田中秀造・芳生旭志・関根 泰・
藤本善英・山本雅史・氷見寿治
症例は68歳女性,2007年末労作性心窩部痛と呼吸
苦増悪し他院受診.severeAR,左室前壁中隔の
瘤化,心尖部小範囲瘤化を認め,左室瘤,大動脈
弁閉鎖不全症の診断で2008年2月当院紹介受診.
ECGでV1-3 poor R progression,V2-5T陰 転 化 を
認め,前壁OMIを疑うも冠動脈造影所見は正常,
Ach負荷でもspasm誘発はされず,瘤以外の心収
縮性は正常であった.以上よりAVR+瘤部閉鎖術
を企画.術中所見で左室瘤部の菲薄化筋層の内膜
性状に線維化など虚血を疑う肉眼異常なく,同部
は肉柱が薄く緻密性が失われていた.病理所見で
左室瘤部は心筋炎を疑う炎症性変化あり,大動脈
弁は石灰化・線維化による肥厚を認めた.以上興
味深い症例を経験したので報告する.
74歳女性.10年前からQT延長を指摘されていた
が精査はされていなかった.2008年2月24日,自
転車で転倒し左肋骨を打撲したために来院した.
問診時に意識消失あり,モニター上Torsade de
pointes(TdP)であった.心室細動に移行したた
め,電気的除細動を計8回施行し洞調律に復帰し
た.3月4日精査加療目的に当院に転院となった.
薬剤性や甲状腺,副甲状腺疾患などの2次性QT
延長症候群をきたす疾患は指摘できなかった.メ
キシチレン負荷で594msから493msと著明なQTc
短縮を認め,エピネフリン負荷ではベースライン
552ms,peak phase551ms,steady phase 537ms
とQTcは延長せず,発症様式と合わせQT延長症
候群Type 3と診断した.症候性のVFがあり,3
月11日植え込み型除細動器の植え込みを行った.
高齢で発症したQT延長症候群を経験したので報
告する.
73) 心室細動が初発症状であった若年者無症候
性WPW症候群の1例
(日本医科大学内科学(循環器・肝臓・老年・総合病態部門))
山本哲平・宮内靖史・松本綾乃・村田広茂・
岡崎怜子・岩崎雄樹・小林義典・加藤貴雄・
水野杏一
76) 心室細動による院外心停止に対し経皮的心
肺補助にて障害なく蘇生された小児肥大型心筋症
の1例
(信州大学高度救命救急センター CCU)
北村真友・関口幸夫・今村 浩・林悠紀子・
神吉雄一・岡元和文
(同循環器内科) 相澤万象・富田 威・
池田宇一
(同心臓血管外科) 和田有子・寺崎貴光・
天野 純
(同小児科) 清水 隆・元木倫子・小池健一
症例は23歳男性.無症候性のWPW症候群を指摘
されていた.発作前日より胸部不快感あり,翌朝
通勤途上の電車内で意識消失,隣駅のAEDで心
室細動に対し2回除細動後当院に搬送.搬送時心
肺停止.集中治療により蘇生後脳症は残存したが
ほぼ回復.器質的心疾患はなかった.心電図で顕
性WPW症候群(C型)を認め,電気生理学的検
査では心房連続刺激(周期220msec)にて後中隔
副伝導路を介する1:1順行伝導を認め,心房細動
時の最小RR間隔が190msecであったためカテー
テルアブレーションを施行し成功した.無症候性
WPW症候群の突然死のリスクは極めて低いとさ
れ,日本循環器学会ガイドラインにおけるEPSの
適応はclass IIbである.数多くの無症候性WPW
症候群の中から本例のような危険な症例をどのよ
うに鑑別してゆくかが今後の課題である.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
【目的】心室細動・無脈性心室頻拍による小児心肺停
止例に対してPCPS・IABPを施行し障害なく生存を得
たので報告する【症例】遺伝性肥大型心筋症の12歳男
児.身長140cm,体重30kg.登校中に卒倒した.20分
後の救急隊到着時心室細動であった.55分後に無脈性
心室頻拍,呼吸停止,E1V1M1,対光反射なしの状態
で来院した.塩酸ニフェカラント,除細動,アドレナ
リン使用するも無脈性VTをincessantに繰り返すため
1時間40分後PCPS開始した.大腿動静脈より21Fr脱
血管を経皮的に,下肢バイパス設置下に10Fr送血管
をカットダウンにて留置した.プロプラノロール持続
静注後incessant VTは消失した.第2病日にIABP開
始.その後徐々に心機能改善し第7,8病日にPCPS,
IABPをそれぞれ離脱した.2ヶ月が経過し神経学的
後遺症なくICD待機中である.
症例は69歳女性で,1996年に僧帽弁閉鎖不全症に
対し僧帽弁置換術を施行,その後,年に2−3回
発作性心房粗動(非通常型)および心房細動を生
じ,薬物は無効にて電気的除細動を必要としてい
た.2007年11月6日より再び動悸が出現.11月22
日に当科受診し,心房粗動を認めた.電気的除細
動以外の治療を希望されたため,同日,ベプリジ
ルを200mg/日で開始した.11月30日心房粗動は
停止しており,QTc0.499と延長のためベプリジ
ルを100mg/日に減量した.12月9日から一過性
の意識消失発作を生じ,torsades de pointesを認
めた.ベラパミルにベプリコールを併用したこと
で,除脈,QT延長によりtorsades de pointesを誘
発したと考えられた.
79) 慢性心房細動に対するカテーテルアブレー
ション後に,洞不全症候群が顕在化した1例
(筑波大学循環器内科) 安達 亨・
有本貴範・関口幸夫・山本昌良・黒木健志・
馬場雅子・町野智子・山崎 浩・夛田 浩・
久賀圭祐・青沼和隆
61歳男性.2年間続く労作時呼吸困難を認め,
2007年4月に慢性心房細動と診断.薬剤抵抗性で
かつ左室機能低下を伴い,カテーテルアブレーシ
ョンによる根治治療の適応と判断された.2008年
3月に広範囲肺静脈隔離術および左房天井への線
状焼灼を行い,洞調律に回復.術後の洞機能評価
ではSRT 4,539msec,SACT 152msecと洞機能低
下が示唆された.術後3日目に心房細動が再発.
ピルジカイニド投与後,約7秒の洞停止を経て洞
調律に回復した.前失神発作を伴い,本人希望も
あり,ペースメーカーを挿入した.その後は心房
細動,徐脈とも認めず経過している.カテーテル
アブレーションにより心房細動の根治かつ心機能
の回復を得た後に,ペースメーカー挿入を要した
一例を経験した.慢性心房細動に洞不全症候群が
併発した興味深い症例と考えられた.
東京ステーションコンファレンス(2008 年 9 月) 913
80) lower loop reentryによる心房粗動に対しカ
テーテルアブレーションが成功した右房瘢痕を有
する1症例
(都立広尾病院) 小松宏貴・深水誠二・
高野 誠・北條林太郎・小田切史徳・
仲井 盛・弓場隆生・小宮山浩大・辰本明子・
水澤有香・田辺康宏・手島 保・櫻田春水
【症例】心疾患既往のない70歳,男性.検診にて
非通常型2:1心房粗動を指摘されカテーテルアブ
レーション(CA)目的にて入院した.【治療経
過】心臓電気生理学的検査にて誘発された周期
270msecの頻拍は,II,III,aVfで終末部に陽性
成分を含まない陰性F波を呈していた.CARTO
マッピングでは右房拡大と側壁のscarを認め,頻
拍はscarと下大静脈(IVC)との間を伝導しIVC
周囲を尾側から見て時計方向に旋回するlower
loop reentry(LLR)と診断した.エントレイン
メントマッピングにて復現周期が頻拍周期に一致
したscar-IVCに対してCAを施行し頻拍の停止に
成功し誘発も不可能となった.【結語】基礎心疾
患なくCA施行歴もないにも関わらずLLRが持続
し,CARTO mappingおよびentrainment pacingが
回路同定に有用であった1症例を経験した.
81) 冠静脈posterior veinへの挿入手技が有用で
あった除細動機能付き両心室再同期療法施行の1例
(社会保険中央総合病院心臓病センター循環器内科)
宮本悠希・野田 誠・山本康人・藤波竜也・
吉川俊治・増田新一郎・田代宏徳・薄井宙男・
市川健一郎
(同心臓血管外科) 恵木康壮・針谷明房・
高澤賢次
(東京医科歯科大学循環制御内科) 磯部光章
症例は66歳女性.主訴は動悸.現病歴は55歳で
AMI(PCI#6,7),57歳でAVR,61歳でHD導入.
低心機能(EF23%)でCLBBBとdys-synchronyを
示しHD中などにVTが増加したため65歳で除細動
機能付き両心室再同期治療(CRT-D)を施行し心
機能改善したが術後28日目に感染を併発しシステ
ムを全部抜去摘出.一年後再度CRT-D(Contak
Renewal 4)施行.antero-lateral veinへLV leadを
再挿入し8Fr GuidingカテをカットしたところLV
リードがpullbackされ最大刺激でもLVを捕捉不
能.そこで慎重にLV lead内のguide wireをCSos
直前までpullbackしposterior veinへの挿入を試み
LV lateral方向への留置が可能となり至適閾値・
至適感度を確保できた.CRT-DにおけるLV lead
挿入トラブルにおいてposterior vein挿入は最後
に試みる価値のある方法と考え報告する.
82) 金属アレルギー関与が疑われゴアテックス
シート併用下にペースメーカー植込を行い遠隔期
感染を起こした1例
(せんぽ東京高輪病院循環器内科)
板谷英毅・荒木 正・山本雅人・出川敏行
(同心臓血管外科) 末石通暁
62歳女性.洞不全症候群で1998.12月ペースメー
カー植込行ったが翌年3月ポケット部腫脹出現し
た.穿刺排液を行ない漿液性,細菌培養陰性であ
った.状態落ち着いていたが7月にポケット部発
赤腫脹が出現した.繰り返すポケット部トラブル
に対して培養陰性もあり金属アレルギー関与疑い
ゴアテックスシート併用しジェネレーター交換
を行った.その後遠隔期の2006.12月再びポケッ
ト部腫脹出現した.ポケット部開放行ったとこ
ろシート内に多量の膿を認め培養はStaph capitis
subspecies capitisであった.創部開放し一時的ペ
ースメーカーで経過追い,培養陰性確認後に後日
創部閉鎖および胸部反対側ペースメーカー植込行
った.経過良好で再感染徴候認めなかった.金属
アレルギーでのゴアテックスシート使用は散見す
るが遠隔期感染報告は無く報告する.
914 第 209 回関東甲信越地方会
83) 造影剤アレルギー患者に対して造影剤を用
いずにCRT-D植え込み術を施行した1例
(国保旭中央病院) 鈴木繁紀
症例は66歳男性.徐脈性心房細動,慢性虚血性心
不全にて経過観察されていた方.平成19年12月に
突然の意識消失発作があり,洞不全症候群疑いに
てHolter心電図施行.最大7連発の200/分を超え
る非持続性心室頻拍,最大Pause4.4秒の徐脈性心
房細動をみとめ,意識消失発作の原因と考えら
れた.その後も意識消失により転倒し骨折する
episodeもあり平成20年2月1日CRT-D植え込み
目的に当院入院.平成19年11月に慢性心不全の精
査目的に冠動脈造影を施行した際に造影剤注入
により顔面紅潮,血圧低下を認めた既往があり,
造影剤を用いたCRT-D植え込み術が危惧された.
造影ができないため手術に先立ちCARTOシステ
ムを利用して右心房全域と右心室中隔側,冠静脈
入口部,冠静脈の走行自体を確認,記録した上で
植え込み術を施行した.今回造影剤を用いずに
CARTOマッピングを応用しCRT−D植え込み術
に成功した一例を経験したため報告する.
86) 持続性心室頻拍に対し植え込み型除細動器
を植え込まれた陳旧性心筋梗塞心の病理解析
(群馬大学臓器病態内科学) 太田昌樹・
金古善明・中島 忠・齋藤章宏・入江忠信・
秋山昌洋・間仁田守・伊藤敏夫・谷口靖広・
倉林正彦
(鳥取大学循環器内科) 井川 修・足立正光
(老年病研究所附属病院) 天野晶夫・
高玉真光
90歳,男性.急性心筋梗塞(前壁・下壁)後の
2001年に持続性心室頻拍(VT)が発症し植え込
み型除細動器を植え込んだ.2007年8月に死亡し
心臓の病理解析を行った.肉眼的には,心室瘤が
左室心尖部を中心に存在し,最小壁厚は1.5mmで
あった.スクリューイン心室リードが右室心尖部
中隔側に留置され,その尖端は左室瘤から3mm
の距離にあった.組織学的には,心室瘤は心尖部
領域の一部で全層が線維性組織にほぼ置換されて
いたが,その周囲では内膜面は線維性組織にほぼ
置換されていたものの壁中層から外膜側には残存
心筋が広く分布していた.心内膜側の残存心筋の
中にPurkinje細胞様の細胞を認めた.心室瘤内に
存在した偽腱索内にも心筋構造が保たれていた.
VTのマッピングは行っていないが,これらの心
筋がVTの基質を形成した可能性が考えられた.
84) 心室内伝導障害から3度房室ブロックへ進
行し永久ペースメーカ植込みと厳格な降圧療法で
腎機能が改善した1例
(相模原病院循環器科) 温田睦善・
森田有紀子・小川英幸・大山 剛・川浦範之・
福岡 拓
87) 塞栓が起因と考えられる急性心筋梗塞を併
発した感染性心内膜炎の1例
(菊名記念病院循環器科) 手塚信吾・
山内靖隆・久原亮二・秋田孝子・福田正浩・
袴田尚弘・悦田浩邦・宮本 明
(同心臓血管外科) 奈良原裕・尾藤 厚・
村田 升
症例は77歳,男性.主訴は徐脈.高血圧にて他科
通院中.9年前の心電図で心室内伝導障害あり,
その後1度房室ブロックを合併.最近8年間で
血清Cr値は1.56mg/dlまで緩徐に上昇していた.
健康診断にて高度徐脈を指摘され精査加療目的
に当科を受診した.受診時,脈拍36/min,血圧
230/60mmHg.心電図では心拍数36/min,8:1の
心房粗動,wide QRSを認め,胸部単純写真では
心陰影の拡大を認めた.血清Cr値は1.76mg/dl.
徐脈性心房粗動の診断で入院した.降圧剤をCa
拮抗剤からARB,ACE-I,αブロッカーに変更,
一時ペーシング下に右心房高頻度刺激施行後,心
房粗動は停止し完全房室ブロックとなった.恒久
的DDDペースメーカ植え込み術を施行し,厳格
な降圧療法で,血圧は徐々に低下し,血清Cr値
は1.18mg/dlまで改善した.
症例は84歳女性.1ヶ月前より発熱あり.H20年
2月14日,突然左前胸部痛訴え,心電図上II III
aVF V1-6にてST上昇,広範前壁中隔梗塞(AMI)
と診断し,緊急CAG実施.LAD末梢にて完全閉
塞認め,バルーン拡張にて再灌流に成功.最大
CK/MBは453/53IU/L.心エコー上,心尖部低収
縮認めるもEFは70%と良好であったが,僧房弁
弁瘤(15×9mm)及び高度閉鎖不全(MR)を
認め,感染性心内膜炎(IE)と診断した.以前胸
痛の既往はなく,AMIの原因として疣贅からの塞
栓が疑われた.高度MR及び塞栓予防のため,第
5病日に僧房弁置換術施行.僧房弁後尖に10mm
径 の 疣 贅 を 認 め, 血 液 培 養 で はStreotococcus
mitisが検出,病理学的には弁への白血球の浸潤
及び菌塊を認めた.本例のAMIは,IEによる塞
栓が起因と考えられるが,IEによる冠動脈塞栓
は極めて稀なため報告した.
85) 植え込み後2ヶ月半でもICDリードが抜去
できなかった1症例
(松本協立病院循環器センター内科)
小池直樹・阿部秀年・横田大介・鈴木 順・
上小澤護・山崎恭平
症例は46歳男性FH.心筋梗塞,狭心症を繰り返
している.2007年12月アミオダロン内服にても,
sustained VTが誘発され,ICDを左鎖骨下に植え
込んだ.術後ポケット感染を起こし,2008年2月
電池摘出とリード抜去を試みた.SVCコイル部が
癒着しているため,大腿静脈からスネアーで把握
し,引き,SVCコイル部は剥離した.しかし,心
室に入ったコイル部が抜けずリード全体が伸びて
しまった.4月人工心肺下,外科的に抜去を試
みたが,コイルの先端部から先が右室乳頭筋に癒
着して抜けないため,リードの先端を切断し,一
部を心筋に残した.使用したリードのコイル部は
coatingされておらず,早期に癒着してしまう可
能性が高い.ICDリード抜去は慎重に行うことが
重要であると示唆した症例であった.
88) mycotic aneurysmを伴わないクモ膜下出血
を繰り返した感染性心内膜炎の一剖検例
(青梅市立総合病院循環器科) 中村知史・
白井康大・高山 啓・大坂友美子・
大西健太郎・栗原 顕・小野裕一・澤田三紀・
清水茂雄・大友建一郎・坂本保己
(同病理科) 伊藤栄作・河合繁夫
(東京医科歯科大学循環制御内科学)
磯部光章
症例は46歳男性.抜歯を契機として大動脈弁の感
染性心内膜炎を発症し当院入院となった.血培に
てStreptococcus intermediusが検出された.加療
後も径約1cmの疣贅と高度の大動脈閉鎖不全が
残存したため第30病日に大動脈弁置換予定とし
た.術前の脳CTAngioでは脳動脈瘤は認めなかっ
た.しかし第27病日にクモ膜下出血を発症した.
直後の脳血管造影でも動脈瘤は見つからなかっ
た.状態改善後改めて大動脈弁置換予定であった
が,第55病日に突然気分不快から呼吸停止となり,
蘇生術に反応せず死亡した.病理解剖ではクモ膜
下出血の再発を認めたが,肉眼的には脳動脈瘤は
認めなかった.感染瘤を伴わずにクモ膜下出血を
繰り返した珍しい一例であり,病理学的検討を含
めて考察する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
89) 血液培養からAbiotrophia 属が検出された
感染性心内膜炎の1例
(さいたま赤十字病院循環器科) 根木 謙・
小西裕二・黒柳享義・村松賢一・佐藤 明・
大和恒博・松村 穣・武居一康・新田順一・
淺川喜裕
(東京医科歯科大学循環器内科) 磯部光章
症例は51歳男性,主訴は発熱・労作時の息切れ.
平成20年1月中旬から発熱が生じ,抗生剤内服に
より一時的な解熱を認めたが,内服中止による再
発熱を繰り返した.4月に施行した経胸壁心エコ
ーで僧帽弁の疣贅と重症僧帽弁逆流症を認めた.
血液培養からAbiotrophia adjacens が検出され,感
染性心内膜炎と診断し,ペニシリンG・ゲンタマ
イシンによる治療を開始した.Abiotrophia 属は従
来Streptococcus 属に分類されていた口腔内や尿路
の常在菌であり,通常の分離培養に使用される血
液寒天培地では発育せず,ビタミンB6あるいは
L-システインの添加によって発育する特徴を有す
るため,グラム染色で菌が確認されても検出・同
定に難渋する場合がある.今回われわれは培養に
特殊な過程を要するAbiotrophia 属による感染性心
内膜炎を経験したため報告する.
90) 感染コントロールがつかず外来で抗生剤点
滴投与を継続した感染性心内膜炎術後の1例
(榊原記念病院) 佐地真育・相川 大
症例は59歳男性.2006年7月からの息切れを主訴
に10月31日に当院受診,感染性心内膜炎による大
動脈弁輪部及び心筋内膿瘍,大動脈弁逆流の診断
で緊急入院した.心不全及び感染管理を行った後,
11月9日にBentall術施行.術後,完全房室ブロ
ックを認め2007年1月11日,ペースメーカーを植
込んだ.またペースメーカーリード,グラフト,
僧帽弁に疣贅を認めたが再手術は危険性が高くバ
ンコマイシン(VCM)の点滴で保存的に対応し
た.入院時には血液培養陰性であったが11月16日
にStaphylococcus capitisが 認 め ら れ,VCMを 中
止すると血液培養が陽性となることが繰り返され
た.抗生剤中止は困難でありVCMの漸減を経て,
外来でバクタ内服とタゴシッド隔日点滴投与する
こととした.退院後7ヶ月経過した時点で状態は
安定している.
91) 抗生剤治療で炎症所見が改善したにもかか
わらず経過中に弁破壊が進行した大動脈弁位感染
性心内膜炎の1例
(日本医科大学外科・心臓血管外科)
白川 真・落 雅美・新田 隆・井村 肇・
大森裕也・坂本俊一郎・栗田二郎・田上素子・
清水一雄
重症大動脈弁狭窄症兼中等度閉鎖不全症に対して
手術予定であったが持続する発熱及び炎症反応の
上昇を認め手術を延期し原因精査した.血液培
養検査で細菌は検出されなかったが大動脈弁に
vegetationを認めたため大動脈弁位感染性心内膜
炎と診断し抗生剤治療を開始し,次第に発熱及び
炎症反応が改善しvegetationは消失した所見であ
った.しかしながら,手術待機中に心不全症状を
発症し拡張期血圧が著明に低下した.心不全はコ
ントロールできたため予定手術で大動脈弁置換術
を施行した.大動脈弁は高度に石灰化し右冠尖は
一部弁輪から離脱し各弁尖は高度に破壊され変
形していた(尚,術中検体の細菌培養にても細
菌は検出されなかった).術後経過は順調であり
POD10に退院となった.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
92) 重症左心不全を呈した感染性心内膜炎に対
して2弁置換術が奏功した1例
(東邦大学医療センター大橋病院心臓血管外科)
石井智貴・尾崎重之・内田 真・大関泰宏・
山下裕正・萩原 壮
症例は57才女性.平成19年2月より微熱の持続を
認めていた.精密検査を施行するも原因不明で,
8ヶ月間にわたり経過観察としていた.10月にな
り,労作時の息切れ症状が出現するようになり近
医受診.心臓超音波検査上,僧帽弁位に疣贅を認
め外科的治療目的に紹介となった.超音波検査上,
僧帽弁,大動脈弁にmobile vegitationを認め緊急
手術となった.手術は,大動脈弁,僧帽弁ともに
機械弁にて弁置換術とした.術後,肺うっ血著明
で,大量の泡沫状痰あり,重症左心不全の遷延を
認めた.長期集中管理を要したが,術後2週間で
抜管.その後も順調に回復し第55病日に独歩退院
となった.
95) 乳頭状繊維弾性腫の1例
(関東中央病院) 藤田大司・皆月 隼・
牧元久樹・小栗 岳・明城正博・杉下靖之・
田部井史子・伊藤敦彦・池ノ内浩・野崎 彰・
杉本恒明・達 和人・田中佐登司・笠原勝彦・
鎌田 聡
症例は,65歳の女性.嘔気,心窩部痛を主訴に当
院受診.身体所見としては特記するべきことな
く,心臓超音波検査において大動脈弁直上に径約
7mmの腫瘤を認めた.経食道心臓超音波検査で
は,有茎性で可動性に富む腫瘤が無冠尖に付着し
ていた.外科的に摘出を行った.切除した標本は,
多数の触手様突起を有する腫瘤で,微小な血栓を
伴っていた.病理診断において,特徴的な膠原繊
維,弾性繊維,ムチン質の3層構造が認められ,
乳頭状繊維弾性腫と診断された.乳頭状繊維弾性
腫は心臓良性腫瘍のうち粘液腫に次いで頻度が高
く,
「イソギンチャク」様の特徴的な外観を呈する.
今回,大動脈弁に付着した乳頭状繊維弾性腫の症
例を経験したのでここに報告した.
93) たこつぼ型心筋症類似の病態を示した褐色
細胞腫の1例
(東京都立墨東病院循環器科) 小林宗則・
金子伸吾・伊元裕樹・高山絵美・廣野喜之・
鈴木 紅・寺井知子・岩間 徹・久保一郎
96) 急性肺塞栓症に対するtPA治療後,多量の
右房内血栓が卵円孔を介し左房へ移動した1例
(公立昭和病院循環器科) 山田朋幸・
田中茂博・佐藤純一・小阪明仁・石原有希子・
吉良有二
【症例】68歳女性.肺うっ血を主訴に来院.血清
トロポニンTも陽性であった.正常冠動脈所見か
つAch負荷も陰性であったがたこつぼ型心筋症
が疑われる左室造影であった.ICU入室後に一
過性に心停止となりPCPSを導入.血圧は170∼
50mmHg(収縮期)で周期的な乱高下を繰り返し
コントロール不良,多臓器不全を来たし第3病日
に死亡.剖検にて右副腎に出血を伴う腫瘍を認め,
血中カテコラミンの著明な上昇を認めたため褐色
細胞腫と診断した.2ヶ月前に施行された左室造
影では全く異常を認めておらず急激な経過で発症
したたこつぼ型心筋障害を伴う褐色細胞腫の一例
を報告する.
症例は44才女性.平成20年3月18日突然呼吸困
難・胸痛が出現し搬送され,急性肺塞栓症と診断
し緊急入院となった.同日血栓溶解療法(tPA)
を行ったが,第3病日より徐々に酸素化が悪化し
た.経胸壁および経食道心臓超音波検査にて卵円
孔を介し両側心房内に巨大血栓を認め,深部静脈
血栓症からの2次血栓症と診断した.再度血栓溶
解療法(UK)・抗凝固療法強化を行い保存的に経
過観察とした.一部の腹腔内臓器に塞栓症をきた
したが,良好な転帰を辿った一例を若干の考察を
加えて報告する.
94) CABG術後早期に発症した収縮性心膜炎を
呈した1例
(諏訪赤十字病院循環器科) 山崎佐枝子・
酒井龍一・茅野千春
97) 卵円孔開存を介して奇異性腎塞栓を合併し
た若年重症肺血栓塞栓症の1例
(東京都済生会中央病院循環器科)
山崎 祐・長谷川祐・中川 晋・庄司容子・
樋口 聡・平田直己・宇井 進・三田村秀雄
74歳男性.
【既往歴】2006年脳梗塞.HT,HL,DM
あり.
【現病歴】呼吸苦あり受診.心臓カテーテル
検査にて多枝病変を認め,10月2日OPCAB(LITALAD)施行.バイパス開存良好で12日退院.24日
受診時に両側胸水あり入院.UCG,胸部CTより,
心嚢水貯留あり,心不全が疑われ,DOA,利尿剤
開始.しかし改善なく心機能評価のため右心カテ
施行.PA24/21,RV25/20,RV dip and plateau
(+).
心筋の拡張障害が疑われ,心嚢ドレナージ施行.
一時的に軽快したが,心不全コントロール不良で,
再度右心カテ施行.右室左室同時圧波形で同期圧
を認めた.収縮性心膜炎と考え,心膜剥離切除術
施 行. 術 後PCWP23/20,PA29/19,RV33/9と や
や改善し,治療反応は良好になった.術後早期に
発現した収縮性心膜炎を経験したので報告する.
37歳男性.1ヶ月前から進行する呼吸困難で来院.
来院時,PaO242.3mmHgと低酸素血症を認めた.
造影CTで両側肺動脈本幹に血栓像を認め肺血栓
塞栓症と診断,人工呼吸器管理のうえ血栓溶解療
法を施行した.その後,肉眼的血尿が出現しCT
で腎梗塞と下肢深部静脈血栓を認めた.心エコー
で右室収縮期圧は54mmHgと上昇,経食道心エコ
ーで卵円孔を介した右左シャントを確認した.下
大静脈フィルターを留置し3週間後に軽快退院.
2ヶ月後に右室圧は正常化し,右左シャントは認
めなかった.肺血栓塞栓症において,卵円孔開存
を有する群は,非開存群と比べ予後不良とされて
いるが,右左シャントによる奇異性塞栓が起こる
ためと推察される.本例は迅速な下大静脈フィル
ター留置が奇異性塞栓の続発予防に有効であった
と考える.
東京ステーションコンファレンス(2008 年 9 月) 915
98) 上大静脈血栓症に肺梗塞症を合併したプロ
テインC欠乏症の1例
(埼玉東部循環器病院) 上村竜太・
宮地秀樹・淀川顕示・並木重隆・李 武志
症例は68歳男性,2∼3年前から心房細動の既往.
平成20年4月12日に胸痛と呼吸困難を認め入院.
心臓超音波では左室機能は良好であるも,著明な
右室拡大による左室の扁平化を認めた.三尖弁
逆流から推測する肺動脈圧は60mmHg以上であっ
た.Chest-CTでは右肺動脈中間枝と左肺動脈下
葉枝に多発性の血栓像,右心房∼上大静脈にも血
栓による造影欠損を認めた.肺血流シンチでは右
中∼下葉,左下葉に陰影欠損を認めた.腹部∼骨
盤CTでは腫瘍性病変なく,明らかな静脈血栓は
認めず.下肢静脈エコーにても明らかな異常は認
めず.血液検査にてプロテインC活性は13%,抗
原量も45%と低下.上記よりプロテインC欠乏症
による上大静脈血栓症が原因の再燃性肺梗塞症と
診断した.上大静脈血栓症による肺梗塞症の発症
はまれでありここに報告する.
99) 肺梗塞で心肺停止後に迅速なPCPS挿入で
救命しえた1例
(千葉西総合病院循環器科) 清水しほ・
荒木康宏・山本真由美・廣瀬 信・
登根健太郎・吉原弘高・板倉靖昌・久保隆史・
飯塚大介・芝山 弘・倉持雄彦・三角和雄
43歳男性.2007年12月13日13時20分ごろ呼吸苦・
胸痛が出現し当院搬送.14時1分病院到着時はシ
ョック状態,徐々に意識レベル低下.14時14分気
管内挿管完了.14時19分心エコー中に心停止.心
エコーでは右心系が左心系を圧排しており,肺梗
塞によるショック状態の診断で蘇生処置,14時37
分救急外来にてPCPS開始.PCPS挿入後の肺動
脈造影CTでは,左肺動脈主幹部付近および右肺
動脈末梢に血栓が認められた.ウロキナーゼ・ヘ
パリン持続投与で経過観察,PCPS挿入13日目に
PCPS抜去.PCPS挿入14日目の肺動脈造影CTで
は左右肺動脈血栓はほぼ消失していた.その後の
下肢静脈エコーで両下肢の深部静脈血栓を検出,
血液検査からプロテインS欠乏症と診断,ワーフ
ァリンコントロールおよび下大静脈フィルター留
置とし,第58病日に退院となった.
101) 開頭術後に発症した右房内血栓を伴う準広
汎型肺血栓塞栓症の1例
(博慈会記念総合病院循環器科) 菊池有史・
幡生洋介・小杉宗範・田中邦夫・小川 剛
(新葛飾病院心臓血管外科) 金村賦之・
西村 崇・岩倉具宏・加藤一平・小山忠明・
吉田成彦
症例は50台男性.2008年1月,左片麻痺が出現し
当院受診.高血圧性脳内出血と診断され脳外科に
入院し第4病日に開頭血腫除去術を施行.尚,入
院時のCTで右肺腫瘍影が発見され,術後は呼吸
器科に転科.第24病日,リハビリより帰室後に突
然の呼吸苦・胸痛出現.血圧114/58mmHg,酸素
6L投 与 下 でPaO2 57.7Torr,PaCO2 29.1Torr.
心エコーで右心系負荷所見と右房内に4cm大の
血栓と思われる可動性の構造物を確認.胸部CT
上,両側肺動脈に血栓塞栓を示唆する造影欠損像
多数を認めた.上記より準広汎型肺血栓塞栓症と
診断し,血栓除去術の適応と判断,緊急手術を施
行し救命し得た.本症例は準広汎型ながら抗凝固
療法が相対禁忌で右房内血栓が認められ,外科的
治療が第一選択と考えられた.
102) Paget-Schroetter症候群の1例
(順天堂大学附属順天堂浦安病院)
一瀬哲夫・横松友紀・山瀬美紀・河野安伸・
小西博応・谷本享生・大井川哲也・加藤洋一・
中里祐二
24歳男性.雑誌編集業.筋肉質で,右利き.学生
時は野球部に所属.左上肢腫脹,疼痛を主訴に受
診した.D-dimer陽性で胸部造影CT,上肢静脈造
影上,左鎖骨下∼腕頭静脈は血栓性閉塞し側幅路
により上大静脈に灌流していた.血栓性素因は認
めず.Paget-Schroetter症候群と診断し抗凝固療
法を施行した.第3病日より症状は軽快,第14病
日の静脈造影で左鎖骨下静脈に狭窄は残存するも
のの,順行性の血流が認められた.本症は若年男
性,運動選手,肉体労働者の利き腕に多いとされ,
上肢の過外転・外旋で肋骨鎖骨腔が狭小化し,鎖
骨下静脈を圧迫することで,静脈の内膜損傷を招
き血栓形成の誘因となる.本例のように利き腕と
対側に発症する場合もあり,若年健常者の特発性
上肢腫脹例では本症を念頭に置く必要がある.
100) 黄体ホルモン剤内服患者に発症した巨大肺
血栓塞栓症の1例
(東京医科大学霞ヶ浦病院循環器内科)
浅野正充・福田昭宏・春日哲也・田辺裕二郎・
星野虎生・高橋聡介・阿部憲弘・大久保豊幸・
大久保信司
(東京医科大学内科学第二講座) 山科 章
103) 両側多発性の膝窩静脈瘤に急性広汎性肺血
栓塞栓症を合併した1例
(日本医科大学集中治療室) 中野博之・
時田祐吉・小原 信・村井綱児・上野 亮・
加藤浩司・岩崎雄樹・山本 剛・佐藤直樹・
田中啓治
(同放射線科) 田島廣之
症例は82歳,男性.これまでには明らかな心血管
イベントの既往は有さない患者である.前立腺肥
大症にてクロルマジノン内服中であった.労作時
の息切れにて近医より紹介受診され,肺CT検査
にて両側肺動脈に巨大血栓が認められ肺梗塞と診
断,直ちにモンテプラーゼの経静脈投与を行った.
その1時間後に肺動脈造影検査を施行したとこ
ろ,左肺動脈のこん棒状巨大血栓に加え,右中区
肺底動脈の閉塞所見が認められた.同時に経皮的
なカテーテルによる血栓吸引および破砕を行い,
その後,持続的なウロキナーゼおよびヘパリン投
与,ワーファリン投与を開始,第9病日のCT検
査にて血栓の縮小傾向が確認され,下大静脈フィ
ルター留置を行った.黄体ホルモン内服中に発症
した巨大肺塞栓症を経験したので若干の考察を加
え報告する.
84歳,女性.肺炎にて入院中,歩行時に突然の呼
吸困難が出現.胸部CTにて両側肺動脈本幹に多
量の血栓を認め,急性肺血栓塞栓症と診断.シ
ョック状態となったため,気管内挿管,IABP及
びPCPSを開始.緊急肺動脈造影,経カテーテル
的血栓溶解療法,血栓破砕・吸引療法を行った.
CTにて右浅大腿静脈から膝窩静脈に連続する血
栓を認めていたため一時的下大静脈フィルターを
留置した.その後血行動態は改善し,第6病日
にPCPS,第8病日にIABPから離脱できた.第12
病日に施行した下肢静脈造影では深部静脈血栓は
消失していたが,両側浅大腿静脈,膝窩静脈に1
cm大の多発する静脈瘤が認められた.肺血栓塞
栓症を合併した膝窩静脈瘤の報告は少なく,さら
に両側多発性の膝窩静脈瘤は非常に稀であり報告
する.
916 第 209 回関東甲信越地方会
104) 肺塞栓に対するワーファリン投与中に卵巣
癌に対してパクリタキセルを投与されPT-INR延長
をきたした1例
(都立大塚病院内科) 近藤麻伊・大渕信久・
柳瀬 治
(同産婦人科) 河村美玲
症例は65歳女性.卵巣癌に対する子宮付属器切除
術の既往がある.呼吸困難感を主訴に救急外来を
受診し肺塞栓と診断された.両下肢に静脈血栓を
認めたため永久下大静脈フィルターを留置し,ワ
ーファリン療法を開始した.経過中に卵巣癌の再
発が確認されたため,パクリタキセルを含む化学
療法を開始した.化学療法第4日に血尿が見られ,
第6日に鼻出血,排尿時に凝血塊がみられるなど
出血傾向が続いた.第8日にPT−INRは8.47と著
明に延長しており,同日ワーファリンを中止し,
その後,出血症状は軽快した.ワーファリン投与
中のパクリタキセル併用によるワーファリンの効
果増強および出血の副作用は本邦において調べた
範囲では報告されておらず,貴重な症例と考える.
105) 脳出血亜急性期に急性肺血栓塞栓症をきた
した1例
(武蔵野赤十字病院) 原 信博・高津妙子・
鈴木雅仁・加茂雄大・杉山知代・高見澤千智・
久佐茂樹・鈴木 篤・岡田寛之・山内康照・
宮本貴庸・尾林 徹
(東京医科歯科大学循環制御学) 磯辺光章
症例は68歳女性.平成20年1月19日歩行困難,け
いれんによる意識障害が出現したため来院.頭部
CTで右前頭葉皮質下出血と診断され,保存的治
療を受け,第2病日よりリハビリテーションを開
始した.経過良好であったが,第7病日リハビリ
テーション中に突然の呼吸困難,血圧低下,意識
障害が出現した.心エコー図で右心負荷,造影
CTで肺動脈,左腸骨静脈内に血栓像を認めたた
め急性肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症と診断し,
二次予防目的で一時留置型下大静脈フィルター挿
入し,リハビリテーションを継続した.線溶療法
施行困難な脳出血亜急性期に発症した右心負荷を
伴う肺血栓塞栓症を経験したので報告する.
106) 先天性アンチトロンビン欠損症が疑われる
肺塞栓症に対してアルガトロバン使用が有効で
あった症例
(聖路加国際病院循環器科) 寺内靖順・
安齋 均・林田憲明・高尾信廣・西裕太郎・
西原崇創・大井邦臣・神野 泰
症例は34歳男性で,2週間前から持続する呼吸苦
を主訴に受診された.D-dimerの上昇,胸部CT
で両側主肺動脈に大量血栓を認め肺塞栓症と診断
した.母親は深部静脈血栓症を繰り返し下大静脈
フィルターが挿入されている.本症例でのアンチ
トロビン活性50%と低下しており先天性アンチト
ロンビン欠損症による肺塞栓症の可能性が疑われ
た.アンチトロンビン製剤とノボヘパリン投与を
開始するもAPTTの延長は不良であり,アルガト
ロバン投与へ変更したところAPTTは速やかに延
長した.その後ワーファリンを導入しPT-INR2.0
となった第5病日に退院となった.先天性アンチ
トロンビン欠損症が疑われる肺塞栓症に対してア
ルガトロバン使用が有効であった症例を経験した
ので,若干の文献的考察を加えて報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
〈演題取り下げ〉
18) 経皮的腸骨動脈形成術後大動脈内バルーン
パンピングを留置し緊急冠動脈バイパス術を施行
した1例
(筑波記念病院心臓血管外科) 平林朋子・
土肥善郎・末松義弘・森住 誠・平崎裕二
107) 食道の偏位が誘因となり,経食道心エコー
による食道穿孔をきたした1例
(日本医科大学内科学講座(循環器部門))
村田広茂・大野忠明・本間 博・藤本啓志・
高橋保裕・水野杏一
(同外科学講座(消化器部門)) 重原健吾・
大川敬一・宮下正夫
(日本医科大学付属病院生理機能センター)
田尾清一・見友優子・関野玲子・松崎つや子
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
東京ステーションコンファレンス(2008 年 9 月) 917
日 本 循 環 器 学 会 第 132 回 東 海 ・ 第 117 回 北 陸 合 同 地 方 会
2008 年 11 月 15 ・ 16 日 名古屋国際会議場
会長:伊 藤 隆 之(愛知医科大学循環器内科)
1) 心房細動に起因する冠動脈塞栓が原因と思わ
れた急性心筋梗塞の1例
(市立島田市民病院) 中村 貴・蔦野陽一・
金森範夫・川人充知・松岡良太・久保田友之・
荒木 信・谷尾仁志・近藤真言・服部隆一・
青山 武
症例は61歳女性.既往歴として右被殻出血があ
り,症候性癲癇で加療中であった.平成20年6月
13日,排便後より突然胸痛が出現し1日持続して
いた,6月17日近医を受診し心電図で心房細動と
前胸部誘導にてST上昇を認めたため急性心筋梗
塞の診断にて当院救急搬送となった.心エコーで
は前壁中隔から心尖部にかけて高度壁運動低下を
認めていた.緊急心臓カテーテル検査では左前下
行枝で完全閉塞を認めた.血栓吸引を施行したと
ころ赤色血栓が吸引された.造影所見上はplaque
ruptureを疑う所見がなくそのまま終了した.心
房細動を来院時に認め,冠動脈造影所見からも心
房細動に起因する冠動脈塞栓が原因と思われる急
性心筋梗塞を経験したので文献的考察を加えて報
告する.
2) 10ワイヤーシステムが高度屈曲病変のPCIに
有用であった1例
(富山赤十字病院循環器内科) 山本隆介・
山口由明・勝田省嗣・賀来文治・田口富雄・
新田 裕
【症例】67歳男性.
【現病歴】胸部不快感を主訴
に救急外来受診.緊急冠動脈造影にて右冠動脈
seg.1に造影遅延を伴う高度狭窄を認めたため,
同部位に対し緊急PCIを施行.最初に0.014インチ
のワイヤーを用いて病変部の通過を試みたが,右
冠動脈は非常に屈曲蛇行した血管であり,ワイヤ
ー通過が困難であった.その後,0.010インチの
ワイヤーへ変更し,病変部を通過させることに成
功,最終的にステント留置し病変部の良好な拡張
が得られた.【考案】従来,0.010インチのワイヤ
ーはそのシャフトの柔らかさ(剛性の低さ)がサ
ポート性能の低下をもたらし,ステント留置に難
渋する症例があるとの報告があった.本症例では
反対に剛性の低さが病変通過の成功に寄与したと
考えられた.
3) ACSを発症したHIV感染者の報告
(名古屋医療センター循環器科) 鈴木昭博・
安藤博彦・富田保志・早川智子・清水康博・
万前智子・山田高彰・鈴木智理・山本春光・
稲垣将文・北野知基
【症例1】60歳男性 HIV感染症にて当院感染症
科通院中.2008/7/17胸痛を主訴に他院救急搬送.
12chECGにてV2-6にてST上昇を認め急性心筋梗
塞と診断されるもHIV感染症のため対応困難と
のことで当院へ転院搬送される.緊急CAG+PCI
(#7:100%)施行し,心臓リハビリテーション施
行後,第15病日に退院となる.【症例2】44歳男
性HIV感染症にて当院感染症科通院中(抗ウイル
ス療法未導入).2008/5/24より安静時の胸痛を認
め,6/6・6/7にも同症状を認めたが安静にて軽快.
6/8朝方に再度胸痛出現を認め当院救急外来受診.
12chECGにてV2-5にて陰性T波を認めACSの診
断にてCAG施行.#6:99%病変を認め同部位に
PCI施行.CKの上昇認めず第3病日に退院とな
る.今回我々はACSを発症したHIV感染者に対す
る治療を経験したので若干の文献的考察をふまえ
て報告する.
5) 両側頚動脈病変を有し,急性左心不全で発症
した三枝病変かつ低心機能の一例
(大垣市民病院循環器科) 小笠原真雄・
坪井英之・武川博昭・森島逸郎・上杉道伯・
佐々木洋美・森本竜太・丹羽 亨・泉 雄介・
山本寿彦・由良義充
【症例】52歳男性.未治療の高血圧あり.急性
心不全による呼吸不全にて来院.経時的なCPK
の上昇を認めず心電図上OMIの所見でエコー上
EF34%と低心機能であり,心不全の軽快を待っ
てからCAG施行.#2:100%,#7:99%,#12:99%,
#13:99%の三枝病変を認めPCIによって完全血行
再建を得た.また経過中右脳梗塞を発症し,右内
頚動脈閉塞と左内頚動脈狭窄(70%)を認めたた
め右内頚動脈閉塞症に対してSTA-MCA吻合術施
行.また左内頚動脈狭窄症に対してもCEAとな
った.それ以後冠動脈,頚動脈ともに良好に経過
している.【考察】高度動脈硬化性病変のある患
者には冠動脈とともに全身の動脈硬化の評価も必
要であり,病変を認めれば合併症を考慮に入れた
最善の治療を選択していく必要がある.
4) Leriche症候群に合併した左冠動脈主幹部病
変不安定狭心症の一例
(永井病院循環器科) 渡辺清孝・橋本宇史・
星野康三・斉藤成達
6) 冠動脈拡張病変に対する治療戦略
(鈴鹿中央総合病院) 山里将一朗・
高橋佳紀・加藤崇明・世古哲哉・北村哲也・
森 拓也・浜田正行
【主訴】胸痛【既往歴】高血圧症にて近医で加療
中【社会歴】たばこ20本/日【現病歴】近医にて
高血圧症で加療中.H19年6月1日頃から毎日の
ように胸痛あり不安定狭心症の診断で当院紹介
となる.
【入院後経過】CAG上LMTを含むLAD,
LCxに有意狭窄を認め,また入院時から両側大腿
動脈触知せず,造影CT上腎動脈以下で腹部大動
脈完全閉塞を認め,Leriche症候群に合併した不
安定狭心症と診断した.リンパ腫疑いなど複雑な
患者背景等を考慮してPCIを施行.11ヵ月後のフ
ォローのCAGで再狭窄を認めなかった.【結語】
Leriche症候群に合併した左冠動脈主幹部病変不
安定狭心症に対してPCIを施行し,良好な成績を
えることができた.
【症例1】70歳女性.2006年に胸痛精査目的にて
入院となり,CAGにてLAD#6に狭窄後拡張病変
を伴う50%病変を認めた.内服加療にて経過観察
とし,2007年のCAGでは狭窄の進行は認めなか
った.しかし2008年のCAGでは病変が90%に進
行しており,タリウム負荷心筋シンチにて前壁に
虚血を認めたことからPCI施行となった.【症例
2】73歳男性.以前から5分ほど持続する胸痛を
認めており,近医にて狭心症と診断され,硝酸薬
を処方されていた.2008年6月に突如胸痛が出現
し,硝酸薬舌下後も胸痛が持続したことから,当
院緊急搬送となり,心電図・心臓超音波からACS
と診断された.CAGでは3枝とも拡張病変を認
め,LCX#13に99% delayの病変を認め,原因病
変と判断し,PCI施行となった.
918 第 132 回東海・第 117 回北陸合同地方会
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
7) 当院でのAHA75%狭窄を有する症例の検討
(静岡市立静岡病院循環器科) 橋口直貴・
滝澤明憲・小野寺知哉・村田耕一郎・
杉山博文・小野寺修一・渡邊祐三・園田桂子・
倉部 崇
【目的】血行再建を施行していないAHA75%狭
窄を有する症例の中期予後を検討する.【方法】
2005年4月から2007年9月までにDESによるPCI
を施行した症例のうち,他血管にAHA75%の残
存狭窄を有する93人96病変(男性74.0%,年齢
67.7±9.8歳)の1年間の予後を後ろ向きに検討し
た.【結果】1年以内のPCI施行は12病変(12.5%)
であった(RIでの新たな虚血:4病変,血管造
影上の進行:4病変,UAP:2病変,その他:
2病変)
.1例(1.0%)でsilent MIを生じ,1例
(1.0%)で他血管の進行を認めCABGを施行した.
死亡,心不全入院は認められなかった.多変量解
析ではPCI施行を予測する因子は認められなかっ
た.【結語】AHA75%狭窄を薬物治療で経過をみ
ることは許容できるが,新たな虚血やイベントを
生じる症例も少なからずあり,十分なフォローア
ップが必要である.
11) 当院におけるSESとPESの短期成績の比較
(石川県立中央病院循環器内科) 蒲生忠継・
井上 勝・三輪健二・安田敏彦・松原隆夫・
金谷法忍
【目的】2007年5月から12月の間に治療された
SES群40名(53病変)
,PES群44名(53病変)を
比較検討する.【結果】背景ではPES群で有意に
年齢が高く,1枝病変の割合が多く,ステント留
置時の最大加圧は低かった.8ヶ月での再狭窄は
SESで3例(5.7%)
,PESで12例(22.6%)であ
った(p=0.02).late lossはSESで0.06mm,PES
で0.5mm(p=0.003),diameter stenosisはSESで
15.9%,PESで29.1%(p=0.01)であった.多変
量解析では再狭窄の予測因子は見出されなかっ
た.【結論】当院において現時点でSESの成績が
勝っているが,留置部位の選択や手技の問題など
を踏まえ,今後薬剤自体の差異についての検討も
必要と考えられた.
8) 冠動脈インターベンションを施行した多枝冠
動脈病変症例における長期予後の検討
(富山県立中央病院内科) 北野鉄平・
永田義毅・杉田光洋・花岡里衣・谷口陽子・
紺谷浩一郎・安間圭一・丸山美知郎・臼田和生
12) 微小血管に対するシロリムス溶出性ステン
ト留置の検討
(鈴鹿中央総合病院) 山里将一朗・
高橋佳紀・加藤崇明・世古哲哉・北村哲也・
森 拓也・浜田正行
【目的】冠動脈インターベンション(PCI)を施
行した多枝冠動脈病変患者の予後を検討した.
【対
象と方法】2005年1月から1年間に,当院でPCI
を施行した多枝冠動脈病変患者52例(平均年齢71
歳)を対象とした.術後約3年間の心血管イベン
トについて検討した.
【結果】急性冠症候群(ACS)
は25例,安定狭心症27例であった.使用ステント
本数は平均2.8本(BMS0.9本,DES1.9本)であっ
た.遠隔期死亡は6例(心不全死2例,非心臓死
4例)
,ACSによる再入院は2例であった.再血
行再建術は14例(再狭窄6例,新規病変8例)に
施行した.【総括】多枝冠動脈病変患者における
PCI術後慢性期の心事故発生は少なかった.冠動
脈病変の再発および新規発症を予防することが重
要であることが示唆された.
【背景】冠小血管に対するSES留置は,BMSや
PESと比較して,再狭窄率が低いとの報告もある.
【目的】当施設での微小血管に対するSES留置症
例の中期成績を明らかにし,また,その主要心血
管イベント(MACE)についても検討した.【方
法】今回我々は当施設にてPCIを施行し,ステン
ト径2.5mmのSESを初期圧12atm以下で留置した
症例の中で,6ヵ月後の確認造影を行った症例(30
例/32病変)を対象に,その結果をQCAにて解
析し中期成績として評価した.【結果】6ヵ月後
のMACEは32病変中2病変(6.3%)で,全例が
TLRによるものであった.またQCA解析の結果,
Acute gainは1.16mmで,late lossは0.24mmであ
った.
9) メタボリック症候群患者の冠動脈プラークに
対するCKD(慢性腎臓病)の影響 IB-IVUSを用
いた検討
(中部労災病院循環器科) 国村彩子・
熊谷宗一郎・横井公宣・吉田朋寛・加藤文一・
植谷忠之・天野哲也
13) 小血管におけるCypherステントの有用性
(犬山中央病院循環器センター) 伊藤一貴・
鶴山幸喜・長尾強志
MetSにCKDを合併する事で冠動脈プラークに与
える影響は不明である.我々はCKD,MetSの有
無により4群に分けた206例,289病変に対しIBIVUSを用いて冠動脈プラークを評価検討した.
CKDを伴うMetS群ではプラーク量と脂質成分比
率が有意に上昇(p=0.0002,0.006)し,線維成
分比率は有意に低下した(p=0.005).GFRとプラ
ーク量の間に有意な相関(r=-0.21,p=0.0003)
を認めたが,脂質,線維成分比率との間には相関
はなかった.多変量解析後,CKDを伴うMetS群
では冠動脈プラーク量,脂質成分比率とも有意に
高値であった(p=0.004).MetSにCKDが合併す
る事で冠動脈プラークに及ぼす影響は,プラーク
性状よりも量によるものと考えられた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
本邦のPCIにおける小血管の閉める割合は30%以
上を占めるが,その成績は必ずしも良好ではなか
った.IVUSで血管径が2.1-2.4mm以下の小血管
の病変において薬剤溶出性ステントCypherの有
用性を検討した.45病変に対してnominal pressureの50-75%に相当する6-8気圧でCypher
を留置し,2.25mmの後拡張用バルーンで後拡張
を行なった.Angiographic success rateは95.5%,
MACEは0%であった.6ヵ月後の再狭窄率は
11.1%であり,TLR-rateは8.9%であった.これ
らの治療成績は従来の報告に比し良好であり,小
血管病変におけるCypherの有用性が示唆された.
14) 当院におけるShirolimus-eluting stent(SES)
とPaclitaxel-eluting stent(PES)の臨床成績の比較
(福井大学循環器内科) 石田健太郎・
中野 顕・森下哲司・宇隨弘泰・見附保彦・
下司 徹・居軒 功・荒川健一郎・森川玄洋・
嵯峨 亮・佐藤岳彦・李 鍾大
【目的】当院におけるSES及びPESの臨床成績に
つき検討した.【対象および方法】当院にてSES
ないしPESを留置し,6ヶ月以降に冠動脈造影を
施行し得たSES群34例及びPES群35例を対象とし
た.QCA所見(% diameter stenosis: %DS,late
lumen loss: LL),再狭窄率(RR),target lesion
revascularization(TLR)およびMACEの有無に
つき比較検討した.【結果】PES群1例でSATが
見られた.%DS,LL,RR,TLRに両群間で差は
なかった.また,同様の検討を糖尿病症例および
3.0mm未満のsmall stent留置例についても行った
が,両群間で差はなかった.【結語】SESとPES
の短期的な臨床成績はほぼ同等であり,糖尿病症
例や小血管においても同様であった.
15) 透析症例におけるパクリタキセル溶出性ス
テントの臨床成績:非透析症例との比較検討
(名古屋記念病院循環器内科) 伊藤 創・
加藤 茂・井上薫里・森 一真・村山真知子
【背景】慢性維持透析症例に対する冠動脈形成術
(PCI)は従来より,ステント内再狭窄のハイリ
スク群であったが,薬剤溶出性ステントを用いた
場合の臨床成績は明確ではない.本研究ではパ
クリタキセル溶出性ステント(PES)の臨床成績
を透析群と非透析群に分けて比較検討した.【方
法】当院でPESを用いてPCIを施行した30例を対
象に,その患者背景と初期及び遠隔期成績を透析
群6例,非透析群24例に分けて比較検討した.
【結
果】患者背景では両群間で糖尿病と高脂血症の頻
度に差は認めなかったが,非透析群で高血圧の頻
度が多く認められた.初期成績では病変成功,手
技成功,MACEで両群間に差は認めなかった.遠
隔期成績においても再狭窄率,TLR,TVRとも両
群間に差は認めなかった.【結論】PESを用いる
ことにより,透析群においても非透析群と同程度
の遠隔期成績が得られる可能性が示唆された.
16) 当院におけるTAXUS STENTの治療成績
(岐阜県総合医療センター) 岩間 眞・
松岡玲子・阿部慎太朗・広瀬智子・加藤 崇・
割田俊一郎・小島 帯・田中新一郎・
廣瀬武司・小野浩司・高橋治樹・瀬川知則・
野田俊之・渡辺佐知郎
【背景】TAXUS stent再狭窄率は低く,良好な成
績の報告が多い.しかし,日本での報告はいまだ
少ない.今回我々は同stentの治療成績について
検討した.【方法】2007年5月から2008年9月ま
でに当院にてTAXUS stentを留置した68症例,80
病変について初期成績を検討した.またそのうち
6~9ヶ月後に慢性期カテーテル検査を行なった
26症例,27病変について遠隔期成績を検討した.
【結果】MACCEは12.3%に認めた.慢性期カテー
テル検査を行なった27病変のうちTLRを行った症
例は4病変で14.8%に認めた.
名古屋国際会議場(2008 年 11 月) 919
17) 当院におけるCTOに対するCypherの成績
(公立陶生病院) 横井健一郎・浅野 博・
青山盛彦・植村祐介・神原貴博・長内宏之・
中島義仁・味岡正純・酒井和好
21) ACSに対しての緊急PCI中に他枝切迫梗塞
をきたした3例
(木沢記念病院循環器科) 田中昭光・
竹谷昌直・村瀬 傑・高橋茂清・荒井正純
CTOに対するCypherの成績はすでにRCT(PRISONⅡ)にてBMS以上の有用性が確認されている
が日本人が対象ではない.当院にて2004年9月1
日から2008年3月31日までにCTO病変へCypher
留置後6ヶ月以上追跡した症例を検討した.34
例が平均約2年間追跡され,閉塞病変はLAD11,
LCX7,RCA14,LMT2,Graft1例,ステント長
45.9±21.8mmステント径2.88±0.28mm最大バル
ン径2.97±0.45mm最高バルン圧17.0±2.8atm病変
あたりステント1.9±0.8本,IVUS使用率85.3%だ
った.MACEは8.7%(総死亡1心臓死0心筋梗
塞0脳梗塞0TLR2TVR0再閉塞1ステント血栓
症0例)と比較的良好な成績だった.
【症例1】77歳男性.胸痛を認め,ECG・UCG
にて後側壁梗塞疑う所見があったため緊急CAG
施行.#12の閉塞を認め,同部位にPCI施行中,
LADが閉塞し,直ちにLADにPCI施行.続いて
#12にPCI施行した.【症例2】68男性.胸苦あり,
下壁誘導でST上昇を認めたため緊急CAG施行.
#1の閉塞に対してPCI施行中,前胸部誘導のST
上昇,血圧低下を認めた.LADの切迫梗塞と判
断し,続いて同枝に対するPCI施行した.
【症例3】
45歳男性.症例2と同様RCAのACSに対するPCI
中に心電図変化があり,続いてLADの切迫梗塞
に対するPCI施行した.今回我々は1枝ACSに対
してのPCI中に他枝切迫梗塞をきたす可能性につ
いて考察すべき3症例を経験したので報告する.
18) 当院におけるCypher stent fractureの検討
(鈴鹿中央総合病院循環器内科) 高橋佳紀・
浜田正行・森 拓也・北村哲也・世古哲哉・
加藤崇明・山里将一朗
22) PCI後に著明な低Na血症を来した一例
(安城更生病院循環器センター循環器科)
伊藤唯宏・川村正太郎・児玉宜子・中川 香・
上山 力・清水優樹・子安正純・堀部秀樹・
竹本憲二・度会正人
stent fractureはdrug eluting stent再狭窄のリスク
のひとつとして注目されている.当院にて2004
年8月から2008年2月までにcypher stentを留置
した758病変に対してstent fractureの頻度,stent
fractureに伴う再狭窄,および留置部位などstent
fractureの背景について検討を行ったので報告す
る.
症例は68歳男性.既往歴は糖尿病,高血圧,狭心
症にてLADへのPCI施行歴あり.胸痛を主訴に近
医受診しCAGにてLMTosに90%閉塞を認め当院
へ転院搬送.当院にてPCIを施行した.心不全合
併あり術後2日間IABPを使用した.第3病日よ
りスピロノラクトン25mg,第4病日よりフロセ
ミド20mg,第7病日よりカンデサルタン2mg内
服を開始.第10病日より著明な低Na血症を認め
た.上記薬剤を中止し点滴静注にてNa補正を施
行し徐々に改善を認めた.本例では低Na血症の
原因としてSIADHの可能性が疑われたが水制限
中に増悪したことや体重増加が認められなかった
ことから非典型的であり否定的と考えられた.以
上よりARB,利尿薬などの副作用による薬剤性
の低Na血症が最も疑われた.AMI急性期に使用
されることの多いこれらの薬剤により著明な低
Na血症を来した可能性があり,低用量であって
も注意が必要であることが示唆された.
19) 当院における急性心筋梗塞に対する薬剤溶
出性ステントの使用成績
(海南病院循環器内科) 福嶋 央・
森 寛暁・菊池祥平・山田崇史・内田恭寛・
酒井慎一
23) 待機的PCI数日後に心破裂を合併した1例
(金沢大学附属病院循環器内科) 黒川佳祐・
高村雅之・茶谷 洋・池田景子・高島伸一郎・
大辻 浩・加藤武史・薄井荘一郎・岡島正樹・
古荘浩司・金子周一・山岸正和
【背景】stable angina pectoris病変(SAP)とAcute
myocardial infarction病変(AMI)では病変の性状
が異なるため,drug-eluting stent(DES)がSAP
病変と同様にAMI病変に有効かつ安全に使用でき
るか議論されている.【方法】2006 8/28以降の当
院におけるAMI患者のDES留置症例を全例(n=
106)調査して,有害事象(Target lesion revascularization,Cardiac death,Non fatal myocardial
infarction,Stent thrombosis)を記録し,DES留
置の有効性・安全性について検討した.【結果】
Cardiac Death 5例,Myocardial infarction 0例,
Target lesion revascularization 4例,Stent thrombosis 2例が記録された.【結語】当院症例におい
て,AMI病変にもDESは有効かつ安全に留置され
ている.
症例は64歳女性.急性下壁心筋梗塞を発症し当院
に救急搬送,緊急CAGを施行.責任病変の右冠
動脈近位部にステントを留置し良好な再灌流を得
た.第8病日に左冠動脈回旋枝近位部の有意狭窄
病変に対し待機的にPCIを施行した.回旋枝近位
部本幹に側枝を跨ぐ形で薬物溶出性ステントを留
置.側枝の明らかな閉塞のないことを確認し終了.
術後経過良好にてPCI施行後4日目に退院.退院
翌日,突然の意識消失を来たし心肺停止状態で当
院に救急搬送.死後病理解剖にて,高位側壁領域
の比較的狭い領域に限局した亜急性期貫壁性心筋
梗塞とその中心部での心破裂を認めた.ステント
内血栓や梗塞部周囲の冠動脈には明らかな血栓性
閉塞は認めなかった.成功裏に終了した待期的
PCI後に心破裂を伴う貫壁性心筋梗塞合併例を経
験したので報告する.
920 第 132 回東海・第 117 回北陸合同地方会
24) 右橈骨動脈穿刺でのPCIで腕頭動脈の蛇行
によりガイディングカテーテルのengageに難渋
した症例
(大垣徳洲会病院循環器科) 穴山 良・
鶴田芳男・角辻 暁
70歳代男性.MDCTでLADに高度狭窄を疑い入
院.右橈骨動脈approachで造影を行ったが,右
腕頭動脈で1回転する高度蛇行のため造影不可能
であり,PCI時のGCのdeliveryも考慮し,Arrow
long sheathを使用し造影.しかし6Fr SPB3.5が
sheathとのfrictionが強くdelivery不能であり,テ
ルモシースに交換してバルサルバ洞まで到ったも
ののLCAosまで約2cm程度不足しengageできず.
sheathlessGCに変更すれば約2cm長あるシース
バルブの長さ分が稼げると考え,semi-engage
に成功.引き続いてLADにwiringしPCIを行い
完遂し得た.腕頭動脈の高度な蛇行を有しGCの
engageに難渋した症例を経験したので報告する.
25)ワイヤー穿孔し止血に難渋した一例
(福井循環器病院) 吉川智晴・大里和雄・
村上達明・守内郁夫・嶋田佳文・三沢克史・
小門宏全・福岡良友・高畠 周
症例は64歳男性.2008年8月に狭心症の診断で冠
動脈造影検査を施行した結果,左前下行枝seg#7
に90%狭窄を認め,PCIを施行した.対角枝に
対して保護目的でガイドワイヤー挿入を行った.
PCI終了後,対角枝の末梢にて造影剤のpoolingが
あり手技中にガイドワイヤーが穿通したものと思
われた.脂肪による塞栓術を試みたが回旋枝から
の出血部への血流を認め止血困難であった.造影
剤のpoolingは徐々に増加し心タンポナーデによ
るショックの状態となった.外科的にドレナージ
を留置しバイタルは安定した.再びカテーテル手
技によって止血を試みるものの完全な止血はでき
ず,開胸下で止血を行った.副側血行路が発達し,
穿孔による出血の止血困難な症例を体験したので
報告する.
26) マウス心筋虚血再潅流障害モデルにおける
酸化ストレス∼T型Ca拮抗薬の効果∼
(金沢大学附属病院恒常性制御学)
大谷啓輔・高村雅之・高島伸一郎・大辻 浩・
加藤武史・薄井荘一郎・岡島正樹・古荘浩司・
金子周一
心筋虚血再潅流障害に酸化ストレスが深く関与す
る.一方,T型Caチャネル拮抗薬(CCB)が虚血
再灌流後の梗塞巣を縮小することが報告されて
いるが詳細な機序は明らかではない.我々はマ
ウス心筋虚血再潅流モデルにおいてT型CCBであ
るBenidipine(3mg/kg,経口投与)が虚血再潅
流後の酸化ストレス,心機能障害を軽減するか
否かにつき尿中8-ヒドロキシデオキシグアノジン
(8-OHdG)
,心エコーを用い検討した.結果は虚
血再灌流後の尿中8-OHdGは上昇,左室内径短縮
率(FS)は低下し,Benidipine投与群では血圧に
影響せずに再灌流後の尿中8-OHdGの上昇,FSの
低下は抑制された.以上,T型CCBが心筋虚血再
灌流後の酸化ストレスを軽減し,心保護作用を有
する可能性が示唆された.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
27) 抗GAD抗体陽性糖尿病を合併した若年急
性心筋梗塞の一例
(高岡市民病院循環器内科) 原城達夫・
平瀬裕章・中島啓介
症例は27才男性.2007年11月1日11時半ごろよ
り突然冷や汗を伴う胸痛認め当院受診,急性心
筋梗塞と診断し入院となった.身長172cm,体重
86kg.喫煙30本/day,HbA1c 7.6%,抗GAD抗体
28.5U/ml,尿中CPR 50.5μg/day.緊急心臓カテ
ーテル検査では右冠動脈seg2の完全閉塞を認め,
右冠動脈,左冠動脈前下降枝はectaticであった.
IVUS所見ではculpritの血管径(EEM)47.1mm2,
Remodeling index1.4とexpansive remodelingであ
った.頻回の血栓吸引にて赤色血栓が多量に採取
され,またtPA(monteplase240万単位)を用い
たpulse infusion thrombolysis(PIT),さらには
nicorandil,nitropruside冠注などにて治療を行っ
たが,TIMI-IIにて終了となった.
28) 右室梗塞様病態を呈し判断に苦慮した,先
天性心疾患合併急性下壁梗塞の1例
(名古屋第一赤十字病院循環器科)
松尾大志・小栗光俊・平松瑞穂・永広尚敬・
山村由美子・片岡義之・三浦 学・柴田義久・
花木芳洋・神谷春雄・大野三良
今回我々は,右室梗塞様病態を呈し判断に苦慮し
た,部分肺静脈還流異常症合併急性下壁梗塞の1
例を経験したので,文献的考察をふまえ報告する.
症例は38歳男性.胸痛を主訴に来院.発症時心電
図ではV1-3誘導でST上昇を認めた.経胸壁心エ
コーにて左室壁運動異常は認めなかったが,右室
腔の拡大と壁運動低下を認めた.冠動脈造影にて
右冠動脈の右室枝より近位の閉塞を認め,引き続
き冠動脈形成術を施行し再灌流を得た.右心カテ
ーテルにて無名静脈での酸素分圧のstep upを認
め,左右シャント疾患の存在が伺えた.亜急性期
に施行したMDCTにて左上大静脈型部分肺静脈
還流異常症と診断した.本症例では,左右シャン
トによる右室拡大のため,急性期所見では右室梗
塞との鑑別が困難であった.また,MDCTが確定
診断に有用であった.
29) 当院におけるクリニカルパスを用いたPCI
後病診連携の取り組みとその中期予後評価
(聖隷三方原病院循環器科) 笠原和之・
成瀬代士久・牧野紀和・佐野 誠・竹内泰代・
長坂士郎・若林 康
【背景】Sirolimus Eluting Stent(SES)留置症例に,
診療所と病診連携を行うことが増加しているが,
その安全性は明らかではない.以前に発表した当
院の結果に更に症例数を加えて,検討する.
【方法】
病診連携クリティカルパスを適応したSES初回留
置症例(497例;2004年9月~2007年8月)にお
いて,1年後の中期予後評価について検討した.
【結果】1年後評価可能であった症例は478例(96.2
%)であった.1年後の心臓死は2例(0.42%),
心筋梗塞は8例(1.67%),TLRは18例(3.77%),
MACEは23例(4.81%)であった.【結語】当院
で行っているSES留置症例へのクリティカルパス
を用いた病診連携は,その安全性,有用性が明ら
かとなった.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
30) 冠動脈バイパス術における低侵襲グラフト
採取手技は,術後心臓リハビリテーションを加速
化させた
(石川県立中央病院心臓血管外科)
氏家敏巳・坪田 誠
33) 上大静脈起源心房細動治療後,慢性期に再
発した心房細動が左側肺静脈起源であった1例
(金沢医療センター循環器科) 木下正樹・
阪上 学・小島 洋・山本花奈子・
八重樫貴紀・佐伯隆広・中村由紀夫
【背景】当科ではCABGの低侵襲化を様々工夫して
来た.とりわけ内視鏡補助下小切開グラフト採取
手技は,極めて有用である.【方法】2006年より
CABGの基本術式をOPCABとし,自家静脈使用の
際,低侵襲グラフト採取手技を導入.これまで同
術式にて自家静脈を採取した40例を対象とした.
【結果】男:女=26:14,平均年齢69.1歳(54~
82歳)手術死亡0例,平均バイパス本数3.28(1
~5枝),無輸血率90.0%,再開胸止血術0例,
OPCAB完遂率100%,術後肺炎0例,縦隔炎0例,
ほとんどの症例で当日抜管し術翌日朝より食事開
始,全例車椅子にてICUを退出,ほとんどの症例
で第2病日より歩行訓練開始し術後5~7日目に
自転車エルゴメータによる心臓リハビリテーショ
ン開始可能であった.
【結語】低侵襲グラフト採
取は,早期心臓リハビリテーション開始を可能に
した.
【症例】63歳男性.主訴動悸.1992年より心房細
動AFあり2004年洞調律下に肺静脈PV電気的隔離
施行.2005年再発時に上大静脈SVC起源AFであ
りSVC隔離施行したが,約5ヶ月後に再発した,
再度カテーテルにてSVC起源の心房細動と診断し
再隔離術を施行した.しかし,その数ヶ月後に
AF再発を認め,2007年末よりAFの頻度増加のた
め2008年1月入院.AF中のマッピングにてSVC
内には異常興奮を認めず,再度左房にカテーテル
挿入しPVのマッピングを行った所,LSPV内にド
ライバーとなり得る不規則高頻度興奮を認めたた
め,LSPVの再隔離を実施したところ,焼灼中に
AFは停止し,以後再発無.時間経過でAFの起源
が変化した例は比較的稀と考え報告する.
31) Maze術後に両肺静脈を含めた左房後壁の
BOX内は心房細動,BOX外ではIrregular ATを呈
した1例
(名古屋大学循環器内科学) 吉田直樹・
因田恭也・神谷裕美・北村倫也・嶋野祐之・
内川智浩・北村和久・山内正樹
(名古屋大学環境医学研究所) 辻 幸臣
(同保健学科) 平井真理
(名古屋大学循環器内科学) 室原豊明
34) 左下肺静脈の電気的隔離により誘発不能と
なった左房起源心房頻拍の一例
(山田赤十字病院循環器科) 坂部茂俊・
笠井篤信・佐藤雄一・大村 崇・山中 崇・
説田守道
症例は68歳の男性.2003年12月に大動脈弁置換術
およびMaze手術を受けた.2008年2月に114/分
のIrregular AT(IAT)が認められアブレーショ
ンを施行.EPS開始時は洞調律.左房側に早期
性を示すIATが自然に誘発され持続した.両肺
静脈を含めた左房後壁のBOX内では細動興奮が
認められたが,BOX外では心房興奮の周期が320
~1050msと大きく変動するIATを呈していた.
EnSite上,BOX内は低電位な細動興奮で,IATは
LIPV底部のBOXライン上のGapからBreakoutし,
BOX外に興奮伝播していた.Gapに対する通電中
にIATは停止し,同時にBOX外は洞調律となっ
たが,BOX内は細動興奮が持続した.本症例は,
BOXライン上のGapがBOX内の細動興奮に対して
フィルターの役割を担い,BOX外ではIATを呈し
た興味深い症例と考えられた.
32) アブレーションに難渋したMaze術後持続
性心房粗動の一例
(静岡済生会総合病院不整脈科)
長谷部秀幸・櫛山泰規・横山恵理子・小坂利幸
(名古屋大学環境医学研究所心血管分野)
神谷香一郎・児玉逸雄
【症例】58歳男性.主訴は動悸.連合弁膜症に合
併した慢性心房細動(AF)に対するMaze術後,
心房粗動(AFL)が持続するため電気生理検査を
施行.左房後壁および僧帽弁輪へのブロックライ
ンは完全に消失し,天蓋部のブロックラインに
は電気的間隙(gap)が存在した.Gapではpost
pacing intervalがAFL周期に一致し,gapを前壁
から後壁に通過するマクロリエントリーと診断
した.Gapへの通電によりAFLは停止した.遠隔
期にF波形の異なる2種類のAFLが出現した.一
つは再伝導したgapを後壁から前壁へと侵入する
リエントリー,他のAFLの回路は同定できなかっ
た.天蓋部のブロックライン再形成と左右肺静脈
の拡大隔離により全てのAFLは消失した.【総括】
Mazeのブロックラインの大半が消失していたに
も関わらずAFは再発せず,AFLのみを繰り返し
生じた興味ある症例と考えられた.
77才F,12年前より動悸発作あり,前医では発作
性心房細動(AF)の診断で抗不整脈薬,ワーフ
ァリンの投与を受けていたが,アブレーションに
よる根治を目的として当科に紹介された.心房
高頻度ペーシング(P)により再現性をもって誘
発された頻拍はRR間隔が不規則なAF様心電図で
あったが,心房(A)波は間隔が230~300msec
とばらつくものの一定のsequenceをもつ心房頻
拍(AT)であった.左房(LA)内でA波をマッ
ピングすると,左下肺静脈(LIPV)‐LA接合部
の後壁側が最早であった.CARTO等時線図の最
早部に広がりがあったのでLIPVの電気的隔離を
EndpointとしてLIPV-LA接合部を円周状に通電
した.13ポイントの通電でPV電位が消失,ATは
誘発されなくなった.ATはPで再現性をもって誘
発されその機序はLIPV,LIPV-LA接合部を舞台
とするmicroreentryと推定した.
35) 心房細動アブレーション後に消化器関連合
併症を生じた2症例
(愛知県立循環器呼吸器病センター)
山下健太郎・村上善正・岡田太郎・原田修治・
梅本紀夫・一宮 仁・伊藤義浩・吉川大治・
石黒久晶・浅井 徹・横家正樹・清水 武
(名古屋大学) 吉田直樹・因田恭也
(名古屋第二赤十字病院) 吉田幸彦
(中京病院) 坪井直哉
症例1は55歳男性.発作性心房細動に対しAblation.8mmtip電極カテーテルを使用,食道内電
極も配置した.同側両肺静脈拡大隔離術を施行し
た.術後胸部灼熱感あり,赤黒色調の吐物があり,
絶飲絶食,オメプラゾール40mg/日使用開始し
た.術後4日目GIF施行したところ門歯より35cm
前壁,左壁にそれぞれ1mm程度の潰瘍性病変を
認めた.術後11日目GIF再検,2か所とも改善し
た.症例2は65歳男性.薬剤抵抗性の持続性AF.
肺静脈隔離術後,CFAEに対しての通電を追加し
sinus rhythmを維持可能となった.術後2日目に
腹部膨満感出現,腹部X-pで胃蠕動障害が考えら
れた.絶飲絶食にて経過観察したところ術後6日
目より飲水可能,術後14日目無事退院.上記症例
につき文献考察も交えて提示する.
名古屋国際会議場(2008 年 11 月) 921
37) 治療に難渋した三尖弁輪起源心室頻拍の一例
(名古屋大学循環器内科学) 神谷裕美・
因田恭也・吉田直樹・内川智浩・北村倫也・
山内正樹・室原豊明
(名古屋大学保健学科) 平井真理
(名古屋大学環境医学研究所) 辻 幸臣
40) EnSite systemを用いた三尖弁輪起源VPC
のアブレーションにて上室性頻拍も同時に治療さ
れた一例
(公立陶生病院循環器科) 長内宏之・
青山盛彦・植村祐介・神原貴博・横井健一郎・
中島義仁・浅野 博・味岡正純・酒井和好
【症例】66歳男性,【既往歴】糖尿病,高コレステ
ロール血症,喫煙【現病歴】動悸症状あり,ホル
ター心電図施行にて20連発の心室頻拍が認められ
たため精査目的に入院.【経過】冠動脈造影検査
で狭窄はなし.右室造影にて右室の拡大はなし.
心室頻拍は三尖弁輪起源と思われカテーテルアブ
レーション施行.退院後再発しほぼ一日中心室頻
拍認められ一ヶ月後再アブレーション施行.前回
と同部位と思われ焼灼.術中は心室頻拍消失.そ
の後再び動悸症状あり10連発の心室頻拍認められ
再々アブレーション施行.心室頻拍は前回の焼灼
部位のlow voltage zoneからの起源と思われ囲む
ように焼灼.心室性期外収縮散発にて終了.
【結語】
今回,治療に難渋した三尖弁輪起源の心室頻拍を
経験した.
症例は41歳女性,主訴は動悸.2008年6月動悸に
て近医受診.頻発する心室性期外収縮を認め,ビ
ソプロロール,メキシレチン投与されるが無効で
あり,当科紹介となった.これとは別に20歳台の
時から突然生じる動悸症状あり,最近は1月に1
回数時間の発作があり,時に深呼吸で停止すると
の訴えもあった.EnSiteにて心室性期外収縮は三
尖弁輪中隔に最早期興奮を認め同部位の通電で消
失した.さらにEnSite挿入時に心室性期外収縮か
ら頻発した上室性頻拍もこの後誘発不能であっ
た.通電中に接合部調律があったこと,EnSiteに
て上室性頻拍の最早期興奮は冠静脈洞前面にあっ
たこと,通電後はVAブロックを認めたことから
非通常型房室結節回帰性頻拍が合わせて治療され
たものと考えられた.
38) 心室性期外収縮により頻拍誘発性心不全を
来たしたと考えられた一例
(県西部浜松医療センター循環器科)
澤崎浩平・高山洋平・太田貴子・小林正和・
武藤真広・杉山 壮・大矢雅宏・高仲知永
41) 形態的異常を認めないが,左室心内膜の低
電位領域が起源と考えられたリエントリー性心室
頻拍の一例
(山田赤十字病院循環器科) 平山淳也・
坂部茂俊・笠井篤信・佐藤雄一・大村 崇・
山中 崇・説田守道・笠井篤信
症例は43歳女性.半年前に検診で心室性期外収
縮(PVC)を指摘.1ヶ月前より心不全症状が
出現し入院となった.右室流出路(RVOT)起源
のPVCの2連,3連が頻発し総数は62830拍(48
%),PVCによる頻拍誘発性心不全と考えられ
た.CARTOシステムを用いてアブレーションを
施行.2種のPVCが存在したが,下壁誘導でノッ
チを有するPVC1の頻度が多くactivation mapping
を行うとRVOT自由壁が最早期であった.焼灼を
行うとPVC2も消失しPVC3からPVC4へと変化し,
remapを行うと最早期興奮部位は後壁(–40ms)
に変化していた.後壁の焼灼によりPVCは消失し
た.アブレーション3日後にはBNPは1294から
86pg/dlまで減少し心不全は著明に改善した.
39) ベラパミルが有効であった空腹時に増悪す
る三尖弁輪部起源心室性期外収縮の1例
(金沢医療センター循環器科) 小島 洋・
阪上 学・山本花奈子・八重樫貴紀・
佐伯隆広・中村由紀夫
66歳男性.2007年頃から動悸あり.近医にて心室
性期外収縮(PVC)と診断.複数の抗不整脈薬が
試されたが無効,2008年5月当院紹介受診.心電
図上,左脚ブロック上方軸の形態で,ホルター心
電図では食前空腹時に増悪する2035拍/日のPVC
を認めた.明らかな器質的心疾患を示唆する所見
は認めなかった.外来にてベラパミルを開始した
ところ365拍/日と著明な減少を認めた.自覚症状
の改善も認めたが,本人が根治療法を希望したた
め,カテーテルアブレーションを施行.右室三尖
弁直下の中隔側でペースマップが一致したため,
同部位で3回高周波通電を行いPVCは消失した.
ベラパミルに感受性を示すPVCが三尖弁輪部起源
であった例は報告が無く,希少な症例と考え報告
する.
症例は56才男性,初診前日の朝から動悸を自覚,
翌日も改善しないため受診,頻脈および血圧低下
があり,心電図は持続性心室頻拍(VT),197/分
であった.直流除細動360Jで洞調律に戻った.心
エコー図,冠動脈造影,左室造影に異常はなかっ
た.平均加算心電図でLP陽性,電気生理学的検
査では左側後壁側のケント束を介する房室回帰頻
拍とclinical VTが誘発された.後日ケント束焼灼
後,VTを誘発したが不能であったため左室心内
膜のSubstrate mappingを試みた.左室前壁の側
壁寄り基部に低電位領域があり,0.2mV以下かつ
幅広いV波の得られた6か所で通電した.ICDの
適応と考えられたが,患者の意向,1日以上血行
動態の維持されたVTであったことから,アミオ
ダロン経口下に外来経過観察とした.11か月経過
したがVTの再発はない.
42) CARTO XP systemの位置情報に影響を与
える因子(シネ装置の位置による検討)
(豊橋ハートセンター) 小澤友哉・
山城荒平・佐藤公洋・鈴木孝彦
当院で現在使用しているCARTO XP systemの使
用中にしばしばその位置情報のずれを経験した.
そこで当systemの磁場にシネ装置(東芝社製)
の位置が与える影響について検討した.検査台に
固定したファントムに電極を固定し,透視装置
の距離や角度を変更しCARTO上の電極アイコン
の基準点からのずれを測定した.シングルプレー
ンの場合4mmチップの電極では最大のずれ幅は
4.3mm,8mmチップで4.3mm,バイプレーンで
は4mmチップで4.4mm,8mmチップで5.2mm
であった.透視装置が電極から28cm以上はなれ
ていれば透視装置の角度を変更しても大きなずれ
は生じなかった.CARTO systemを使用するとき
透視装置の距離がかわらないよう,検査台の移動
や透視装置の角度変更がないよう注意し,もし角
度の変更の可能性のあるときは検査開始時より
28cm以上離しておけばずれは防げると考えられ
た.
922 第 132 回東海・第 117 回北陸合同地方会
43) カテーテル・アブレーション治療に難渋し
た心筋梗塞後心室頻拍の一例
(江南厚生病院循環器内科) 奥村 諭・
水谷吉晶・許 聖服・宮垣義実・高田康信・
真野謙治・斉藤二三夫・石川眞一
8歳男性.AMI(#11閉塞)に対し,緊急PCIを施行.
6日目にVT(140/分,RBBB/上方軸)のstorm
となったため,挿管,アミオダロン投与を行い,
22日目にEPSを施行.冠動脈に再狭窄はなく,
LVGは下壁の低収縮のみであった.clinical VTは
容易に誘発され,VT中に心室のCARTO mapping
を施行.心室内にscarと考えられる低電位部位は
認めず,VT中のsequenceはinferoseptumより周
囲へ広がるパターンを示し,VT周期のcoverは不
可であった.またPPIは最早部にてTCLに一致し
たが,pacemapはVTと一致しなかった.fascicular VTと考え,最早部近傍のPurkinje電位を認め
る部位で計31回通電するも,VTは停止不可であ
り,ICD留置を施行.本症例はAMI後に発症した
にもかかわらず,scarが原因ではない稀な症例と
考えられた.
45) カテーテルアブレーションが著効した心室
頻拍によるtachycardia induced cardiomyopathy
の一例
(大垣市民病院循環器科) 山本寿彦・
曽根孝仁・坪井英之・武川博昭・森島逸郎・
上杉道伯・佐々木洋美・森本竜太・丹羽 亨・
泉 雄介・由良義充・小笠原真雄
症例は61歳男性,VTに伴う浮遊感にて受診.VT
は心拍数130の左脚ブロック・下方軸であり,右
室流出路後壁起源が疑われ,EnSiteを用いてカテ
ーテルアブレーションを施行した.Non-contact
mappingを行うと,右室流出路後壁にEarliest ActivationとBreak Outを認めた.Contact mapping
を行いpace map scoreが11/12で,電位はQRSよ
り26msec先行している部位に通電を開始すると
3秒でVTは停止し,以降も再発を認めなかった.
治療前後のBNP値,胸部レントゲンでの心胸郭
比,心エコーでの壁運動はいずれも改善し,VT
によるtachycardia-induced cardiomyopathyと考
えられた.
47) カテーテルアブレーションからみたslow/
slow型AVNRTの頻拍回路の検討
(富山大学第2内科) 中谷洋介・藤木 明・
坂本 有・阪部優夫・水牧功一・城宝秀司・
亀山智樹・平井忠和・能澤 孝・井上 博
アブレーションを施行したAVNRT連続93例の
うちslow/slow型AVNRTを4例(4.3%)に認め
た.全症例において心房期外刺激によるjump up
現象を認めた.頻拍中の最早期心房興奮部位は
CS入口部が2例,CS入口部前上方1例,CS入口
部下縁が1例であった.このうち3症例におい
て最早期心房興奮部位に対して,1症例でslow
pathway電位記録部位に対して通電を行い,全症
例でslow pathwayによる逆伝導を認めなくなっ
た.アブレーション後slow pathway順伝導はCS
入口部,slow pathway電位記録部位で通電した
症例では消失したが,CS前上方,CS入口部下縁
で通電した症例では残存した.これらの所見から
slow/slow型AVNRTの頻拍回路はCS入口部を含
みslow pathwayの順伝導と逆伝導が解剖学的に異
なることが想定された.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
48) EnSiteを使用してアブレーションに成功し
たATP感受性心房頻拍の一例
(金沢医療センター循環器科) 佐伯隆広・
阪上 学・小島 洋・山本花奈子・
八重樫貴紀・中村由紀夫
51) 頻脈性の上室起源頻拍に対するカテーテル
アブレーション後の心機能回復過程に関する4例
検討
(掛川市立総合病院循環器科) 大口志央・
内山博英・岡崎裕史
54) 心不全で発症した多発性骨髄腫の一例
(安城更生病院循環器科) 伊藤正則・
伊藤唯宏・児玉宜子・川村正太郎・中川 香・
上山 力・清水優樹・子安正純・堀部秀樹・
竹本憲二・度會正人
症例は43歳男性.突然生じる動悸発作を主訴に受
診した.基礎心疾患は否定的であった.心臓電気
生理学的検査では,心房期外刺激にて再現性をも
って,約150bpmの上室性頻拍が誘発された.期
外刺激の連結期と頻拍開始までの時間は逆相関し
ていた.頻拍の最早期興奮部位は高位右房が疑わ
れ,少量のATP(4mg)で房室ブロックを伴わ
ずに停止した.EnSite上,頻拍は高位右房後壁か
ら放射状に興奮伝播していた.その興奮開始部位
を焼灼して,頻拍は停止し,誘発も不能となった.
洞調律時および冠状脈洞からの刺激時のEnSiteの
興奮伝播様式から,焼灼部位は高位分界稜上であ
った.ATPに感受性があり,その発生機序はマイ
クロリエントリーを疑わせる心房頻拍で,不整脈
器質を考察するうえで興味深い一例と思われ報告
した.
【目的】上室起源頻拍ではしばしば頻脈依存性心
筋症を呈し不整脈の治療により心機能が回復す
る.当科で経験した4症例の心機能回復過程につ
いて心エコーで検討した.【症例】症例1は79歳
男性.カテーテルアブレーション(CA)2週間
後には左室(LV)収縮の改善傾向が,3ヶ月後
にはLV径の縮小が認められ,10ヵ月後にはLV収
縮は正常化した.症例2は80歳男性.CA3ヶ月
後でLV収縮が改善した.症例3は71歳男性.CA
2ヵ月後にはLV径とLV収縮が改善した.症例4
は57歳男性.CA前にはLV拡張とLV収縮低下およ
び大動脈弁閉鎖不全症が認められておりCA4ヵ
月後で著明な改善は認められなかった.【結論】
頻脈依存性心筋症が疑われる症例の中でも,大動
脈弁膜症の合併症例では頻脈のコントロールによ
る左心機能への寄与の程度が少ないと考えられ
た.
症例は62歳,男性.2007年夏頃から心不全症状
あ り 他 院 に て 精 査.C A G 等 施 行 し, 非 閉 塞 型
肥大型心筋症による心不全として加療開始.転
居に伴い2008年6月5日当院紹介.来院時血圧
130/74mmHg,HR94bpm,心雑音および浮腫は
見られなかった.徐脈による心不全の増悪にて6
月10日入院.胸部X線上心拡大を認め,心エコー
にてgranular sparkling pattern,心嚢水の貯留を
認た.また腎機能障害(血清Cre 1.33mg/dl)が
あり,胃粘膜生検でアミロイド沈着の組織所見が
得られたため心アミロイドーシスと診断した.採
血上IgA上昇(592mg/dl),尿中BJP陽性,免疫電
気泳動にてM蛋血症を認めた.骨髄生検を施行し
形質細胞の異常な増加を認め,多発性骨髄腫の確
定診断に至った.その後化学療法(MP療法)を
施行したが,心不全の増悪を認める等,治療に難
渋している.
49) 発作性心房頻拍と房室結節リエントリー性
頻拍を合併した1例
(金沢大学付属病院循環器内科) 茶谷 洋・
古荘浩司・加藤武史・黒川佳祐・池田景子・
高島伸一郎・大辻 浩・薄井荘一郎・
岡島正樹・武田裕子・金子周一・高村雅之・
山岸正和
52) PCPSにて救命し得た劇症型心筋炎の一例
(小牧市民病院循環器科) 加納直明・
上村佳大・澤村昭典・向井健太郎・島津修三・
戸田夕紀子・松平京子・今井 元・小川恭弘・
川口克廣・近藤泰三
55) 急性心筋梗塞様の心電図変化を示した,た
こつぼ型心筋症の一例
(山田赤十字病院循環器科) 佐藤雄一・
安冨眞史・大村 崇・山中 崇・大西孝宏・
説田守道・笠井篤信
症例は50歳女性.口渇,嘔気を主訴に受診.心電
図上広範囲でST上昇,UCG上全周性の壁運動低
下を認め急性心筋炎と診断した.冠動脈造影上は
異常なく,IABP挿入して治療を開始した.第二
病日に血行動態,腎機能,アシドーシスの悪化を
認め,IABPのみでの維持が困難と判断し,PCPS
を導入した.第3から第5病日にはUCG上壁運
動は全く無かったが,第6病日には壁運動の改善
がみられ,PCPSを離脱し,翌日にはIABPを抜去
とした.以後順調に経過し,第19病日にはUCG
上壁運動は正常化した.【結語】PCPSにより救命
しえた劇症型心筋炎の一例を経験したので報告す
る.
症例は85才男性.高血圧にて近医内服加療中.
2008年7月頃から労作時胸部不快感を自覚するよ
うになり,安静時にも症状出現するようになり,
当院救急外来を受診.心電図上,V2~V5でST上
昇,V2~V4にて異常Q波,心エコー上,前壁中
隔から心尖部にかけて高度壁運動低下を認め,亜
急性心筋梗塞が疑われ,冠動脈造影検査を施行
した.冠動脈に有意狭窄は無く,左室造影では,
Seg#2~#4の壁運動が低下し,冠動脈に一致し
ない壁運動低下からたこつぼ型心筋症が考えられ
た.入院翌日の心電図にて,巨大陰性T波が出現
し,異常Q波は消失した.第6病日の心エコーに
て左室壁運動は正常化し,心機能は速やかに改善
した.
53) 当院で3年間に経験した劇症型心筋炎6例
の検討
(三重大学循環器内科学) 藤田 聡・
中嶋 寛・仲田智之・澤井俊樹
(三重大学医学部附属病院感染制御部)
田辺正樹
(三重大学循環器内科学) 玉田浩也・
土肥 薫
(三重大学医学部附属病院臨床検査部)
大西勝也
(三重大学循環器内科学) 山田典一・
宮原眞敏・中村真潮・伊藤正明
56) 虫刺症を契機に発症したたこつぼ型心筋症
の2例
(犬山中央病院循環器内科) 鶴山幸喜・
長尾強志・伊藤一貴
症例は16歳男性.約2年前から約20分間持続する
動悸の自覚があり,当院にて心臓電気生理学的検
査を施行した.イソプロテレノール負荷下の右房
期外刺激により房室結節リエントリー性頻拍(136
拍/分)が誘発されたため,房室結節の遅伝導路
を焼灼した.その後,心房頻拍(162拍/分)が誘
発されnoncontact mappingを施行.この頻拍は右
房内の三尖弁輪7時方向が起源であり,同部位に
対して焼灼を行った.その後も心房頻拍が誘発さ
れるため,再マッピングを行ったところ,頻拍起
源は三尖弁輪10時方向に移動していた.引き続い
て同部位に対して焼灼し,以後頻拍は誘発されな
くなった.若年者で2箇所を起源とする発作性心
房頻拍に加えて房室結節リエントリー性頻拍を合
併した貴重な症例と考え報告する.
50) permanent型AVNRTの一例
(名古屋第二赤十字病院循環器センター内科)
滝川正晃・吉田幸彦・森田純生・古澤健司・
金村則良・吉田路加・橋本踏青・山本崇之・
石川清猛・青山 豊・井上夏夫・立松 康・
七里 守・三輪田悟・平山治雄
症例は65歳男性.10年前より突然の発症・停止を
繰り返す動悸発作を認めていた.発作は側臥位
で誘発され,息こらえで停止した.Holter心電図
では,洞調律(50bpm)からAVNRT様(80bpm)
の心電図へ移行する所見を認めた.EPSでは,洞
調律より自然にWenckbach型房室ブロックとな
り上室性頻脈が生じ,pacingで一旦停止するが
直ぐに再発した.CS/RV何れのextra pacingで
もjump upを認め二重伝導路の存在が示唆され
た.刺激位置を右室心尖部より基部に変更する
とVA時間は延長し,副伝導路の存在は否定的で
あった為,AVNRT(common)と診断し,slow
pathwayに対しablationを施行した所頻脈は停止
し,ablation後も頻脈は誘発されなかった.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
当院でこの3年間に6例の劇症型心筋炎を経験し
た.症例は全例ウイルス性であり,急性期にPCPS,
IABP,およびCHDFサポート下で全身管理を施行し
た.2例は完全房室ブロックを併発しており,体外式
ペースメーカーによるバックアップ下で管理を行っ
た.また全例完全型免疫グロブリン製剤2.0g/kgの48
時間持続投与による大量免疫グロブリン療法を施行し
た.結果,6例中5例が救命された.救命された5例
のPCPS離脱までの期間は平均5日,IABP離脱までの
期間は平均6.6日であった.合併症は肺炎が3例,無
気肺が2例,膵炎が2例,黄疸・肝障害が2例,脳出
血が1例,HITが1例で,5例でカテーテル挿入部に
血腫を認め,うち3例に後腹膜血腫を伴った.また1
例で下肢の阻血により足趾の切断術を要した.
【症例1】37歳の女性.蜂に手背を刺され,患部
に疼痛と腫脹が生じ胸部圧迫感も自覚.心電図
では胸部誘導の急性心筋梗塞様のST変化があり.
冠動脈造影を施行されたが狭窄病変は認めず,冠
攣縮誘発試験では攣縮は誘発されなかった.左室
造影では心尖部の風船様無収縮および心基部の過
収縮が認められた.【症例2】75歳の女性.ムカ
デに咬まれた後に胸部圧迫感が出現.心電図胸部
誘導で急性心筋梗塞様のST変化があり冠動脈検
査を施行されたが有意狭窄病変は認めず,左室造
影では前壁および側壁を中心とした風船様無収縮
および心基部の過収縮が認められた.いずれの症
例も発症後数日から数週間で心電図異常,壁運動
以上が回復し,たこつぼ型心筋症と診断された.
虫刺症による疼痛により誘発されたと考えられる
たこつぼ型心筋症の2例を紹介する.
名古屋国際会議場(2008 年 11 月) 923
57) 非典型的な左室造影像を呈したタコつぼ型
心筋症の1例
(藤田保健衛生大学病院) 石川正人・
椎野憲二・佐野 幹・河合朋子・針谷浩人・
奥田健太郎・奥村雅徳・菱田仁士・尾崎行男
60) 尿中カテコラミンを測定したたこつぼ心筋
症の一例
(朝日大学歯学部附属村上記念病院循環器内科)
安部美輝・酢谷保夫・元廣将之・丸山勝也・
加藤周司
症例は64歳男性.8年前に筋緊張性ジストロフィ
ーと診断され,その後リハビリ治療を行ってい
た.リハビリ中に心窩部痛を自覚され訓練中止し
帰宅,その後動悸症状を訴え同日当院救急外来
を受診した.心電図上,V2~V6でのST上昇を認
め,血中Tn-Iも3.40ng/mlと高値であった.心筋
梗塞の診断で緊急カテーテル検査を施行したとこ
ろ,冠動脈に有意狭窄を認めず,左室造影では心
尖部及び心基部に収縮亢進,その他全周性に無収
縮領域を認めた.血中Tn-Iは上昇し第1病日中に
14.44ng/mlと高値となったが,その後の経過で低
下し第7病日には0.39ng/mlまで低下した.心臓
超音波検査所見においても第2病日に29%であっ
た左室駆出率は第5病日には46%まで改善した.
それに伴い血行動態も安定し,臨床経過よりタコ
つぼ型心筋症様の病態が推定された.
71歳,女性.平成20年6月2日午前4時過ぎに
ウオーキングで200mほど歩いたところで胸痛,
動悸を自覚し近医を受診.心電図にてST上昇を
V2-6誘導に認め急性心筋梗塞症を疑われ当科紹
介.ST上昇時の心臓カテーテル検査では冠動脈
に異常なく,左室造影はたこつぼ様左室壁運動異
常を示した.心エコーでは左室流出路流速は増加
していなかった.99mTc-tetrofosmin SPECTでは
心尖部集積低下.心臓MRIはT2強調像,Delayed
enhancement陰性であった.コントラストエコー
では心尖部は濃染された.心筋逸脱酵素の軽度上
昇を認めたが経過は良好で左室壁運動障害はその
後軽快した.尿中カテコラミン3分画の測定を行
ったが正常範囲であった.たこつぼ心筋症の病因
解明には今後も検討を要する.
58) たこつぼ型心筋障害における遅延造影心臓
MRI所見の検討
(聖隷三方原病院循環器科) 成瀬代士久・
笠原和之・牧野紀和・佐野 誠・竹内泰代・
長坂士郎・若林 康
61) 完全房室ブロックを合併し,タコツボ型心
筋障害を2度発症した高齢女性の一例
(北陸中央病院内科) 宇野欣秀
【背景】たこつぼ型心筋障害における心臓MRI所
見は報告により様々であり明らかではない.【方
法】たこつぼ型心筋障害の12症例を対象とし,遅
延造影の有無やその広がり,経時的変化につき検
討した.【結果】亜急性期の遅延造影心臓MRIで
9例において壁運動異常部位に全層性の淡い高信
号を認めた.遅延造影を認める範囲は慢性期に
徐々に縮小し4例において完全に消失した.左室
に対し遅延造影の占める割合は心電図所見と心エ
コー所見の正常化に要した日数と有意な相関を示
した(r=0.70,0.73,P<0.05).【結論】全層性の
淡い高信号とその段階的な縮小は,心筋梗塞や
他の心筋症で得られるMRI所見とは違うものであ
り,その病理学的所見を反映しているものと推測
された.
【目的】今回我々は完全房室ブロックを伴い,タ
コツボ型心筋障害を4年の歳月を経て2度発症し
た一例を経験したので報告する.【症例】症例は
84歳女性.主訴は胸部不快感.既往歴として,80
歳時にタコツボ型心筋障害と診断され,完全房室
ブロックを併発したため,ペースメーカー(DDD)
を挿入された.3ヵ月後の心エコー,心筋シンチ
は改善していた.今回,突然の胸部不快感にて救
急外来に来院.前胸部誘導で巨大陰性T波を呈し
ており,完全房室ブロックを伴う徐脈であった.
電池消耗による徐脈と診断し,準緊急に本体交換
術を施行.冠動脈造影では有意狭窄を認めず,心
エコー,左室造影にて心尖部無収縮を認めた.
【結
語】タコツボ型心筋障害は大部分が一過性で予後
良好とされているが,稀に再発例があり,注意を
要する.
59) 急性期の心電図変化に乏しかった逆たこつ
ぼ型心筋障害の一例
(犬山中央病院循環器センター循環器内科)
長尾強志・伊藤一貴・鶴山幸喜
62) 倒錯型心室頻拍に対する電気的除細動を契
機にたこつぼ型心筋障害を発症した1例
(犬山中央病院循環器センター) 伊藤一貴・
鶴山幸喜・長尾強志
症例は73歳女性で,驚愕の後に胸痛が生じたため
来院した.心電図では軽微なST低下のみで,血
液検査でも異常所見は認められなかった.しかし,
心エコーでは心室中部に無収縮が認められた.冠
動脈造影で狭窄病変は認められなかったが,左室
造影では心尖部および心基部の過収縮,心室中部
の無収縮が認められたため,逆たこつぼ型心筋障
害と診断した.経時的な血液検査でも心筋逸脱酵
素値の上昇はなく,第2病日の心電図では軽度の
T波平低やST低下が認められるのみであった.し
かし,第3病日には広範な誘導で陰性T波が出現
し,Tetrofosmin心筋SPECTでは左心室中部に集
積低下が認められた.心電図および壁運動は第7
病日に正常化した.本症例は急性期の心電図変化
に乏しく,過去に報告例がない稀な病態と考えら
れた.
患者は意識消失を繰り返し生じた80歳の男性で,
血液検査やMRIでは異常はなかった.心電図は
QT延長を伴う心室調律であった.病室で意識消
失を生じたが,モニター心電図では倒錯型心室頻
拍(TdP)が認められたためマグネシウム投与や
一時ペーシングを行った.第2病日にTdPから心
室細動が生じたため電気的除細動を行った.3時
間後のTetrofosmin心筋SPECTでは心尖部に高度
な集積低下が認められたが,冠動脈造影では狭窄
はなくエルゴノビン負荷も陰性であった.左室造
影では心基部過収縮および心尖部無収縮が認めら
れたため,たこつぼ型心筋障害と診断した.第4
病日のMIBG心筋SPECTでは無収縮領域で高度な
集積低下が認められた.両者の合併は稀であるが,
それらの発症に交感神経の関与が示唆された.
924 第 132 回東海・第 117 回北陸合同地方会
63) 発作性心房細動にてショックを呈した左室
流出路狭窄を伴うたこつぼ型心筋症の一例
(名古屋市立大学心臓・腎高血圧内科)
坂本真里・北田修一・若見和明・浅田 馨・
伊藤立也・武田 裕・向井誠時・鈴木章古・
大手信之・木村玄次郎
症例は,63歳女性.胸部違和感を主訴に当院受
診.心電図上ⅡⅢaVF V5-6誘導にてST上昇を認
め,心エコーでは前壁中隔広範囲に壁運動低下と
僧帽弁前尖の収縮期前方運動・僧帽弁逆流を認め
た.緊急カテーテル検査では冠動脈に有意狭窄を
認めず,左室造影はたこつぼ型心筋症に矛盾しな
かった.左室大動脈圧所見上80mmHg程度の圧較
差を認め,左室流出路狭窄を合併したたこつぼ型
心筋症と診断した.本例は検査後,ショックとな
る.頻拍性心房細動を認め,それによる血行動態
の悪化と考え電気的除細動を施行した.経過は順
調で,壁運動および僧帽弁逆流の改善,左室大動
脈圧較差の消失を確認した.たこつぼ型心筋症に
左室流出路狭窄を合併する報告は散見するが,シ
ョックを呈する例はまれであり若干の文献的考察
を含めて報告する.
64) 甲状腺機能亢進症を有し,致死性不整脈を
認めたたこつぼ型心筋症の一例
(山本総合病院内科) 矢田崇純・
増田 純・荻原義人・伊藤吾郎・町田博文・
水野 修・市川毅彦
73歳女性.平成20年3月上旬から胃腸炎症状と食
欲不振が続いていた.4月2日起床後,一過性の
意識消失を来し,当院受診.レントゲン検査中に
突然意識消失,心肺停止状態となる.モニター上
心室細動であり,DCC施行.心拍再開するもH
R40台の完全房室ブロック,V1~V4でST上昇
を認めたため,急性冠症候群疑いで心臓カテーテ
ル検査を施行した.冠動脈に有意狭窄なくLVG所
見よりたこつぼ型心筋症と診断した.入院後1週
間経過しても完全房室ブロック持続するため4月
9日DDDペースメーカーを留置した.たこつぼ
型心筋症に心室細動,完全房室ブロックを合併し
た経過は稀であり,その一例を経験したので,文
献的考察も踏まえ報告する.
65) 輸血後にたこつぼ型心筋症様の病態を示し
た1例
(三重ハートセンター循環器科) 加藤真史・
鈴木啓之・西川英郎
(同心臓血管外科) 松尾辰朗・河瀬 勇
症例は78歳女性,CAGでRCAとLADに病変認め,
PCI予定であったが,胸痛の増悪傾向を認め,不
安定狭心症疑いで緊急入院.入院時Hb6.0g/dlと
貧血認め,PCI前にMAP2単位の輸血を開始した
ところ,3時間後に突然の喘鳴出現,血圧低下し,
心不全急性増悪のため人工呼吸管理となった.心
エコーでは心尖部から前後壁にかけて広範囲の壁
運動低下を認めたが,2週間後に壁運動は改善し,
たこつぼ型心筋障害に類似した病態と考えられ
た.心電図では発症3日後より胸部誘導でT波の
陰転化を認め,10日後には著明な陰性T波となっ
た.たこつぼ型心筋症は高齢女性を中心に,多種
のストレスが関連して発症することが知られてい
るが,輸血との関連はあまり知られていない.輸
血後の心機能低下にたこつぼ型心筋症も鑑別に入
れる必要があると思われたので報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
66) 下垂体腫瘍に伴う高GH血症により高度の
心筋障害を呈した一例
(名古屋大学循環器内科学) 北村倫也・
吉田直樹・鈴木博彦・神谷裕美・内川智浩・
嶋野祐之・北村和久・平敷安希博・山内正樹
(名古屋大学環境医学研究所心・血管分野)
辻 幸臣
(名古屋大学循環器内科学) 因田恭也
(名古屋大学保健学科) 平井真理
(名古屋大学循環器内科学) 室原豊明
症例は50歳.呼吸困難を主訴に近医受診したところ,
著明な心拡大と左室収縮能の低下を認め,精査の結果
拡張型心筋症に伴う慢性心不全と診断された.その
後,多発性・多源性心室頻拍が出現した為,慢性心不
全・心室頻拍のコントロール目的にて当院紹介入院と
なる.入院後,慢性心不全に対する薬物治療が強化さ
れ,心室頻拍に対してカテーテルアブレーションに引
き続きICDの植え込みが行われ,心不全の改善を認め
た.尚,鼻翼拡大・口唇肥大等の所見を認め先端肥大
症を疑い精査したところ,GH産生下垂体腫瘍が確認
され,心不全の原因として高GH血症に伴う心筋障害
が疑われた.先端肥大症のうち約30%に心肥大などの
心合併症が出現するが,高度の心筋障害を呈すること
は稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
67) Becker型筋ジストロフィーに合併した拡張
型心筋症の一例
(名古屋大学循環器内科) 榊原雅樹・
平敷安希博・大島 景・奥村貴裕・舟橋栄人・
海野一雅・山田高資・村瀬洋介・原田 憲・
室原豊明
(県西部浜松医療センター) 小林正和
症例は34歳男性.2008年5月末より咳が出現.6
月初旬より下腿浮腫が見られ,近医受診.心不
全と診断された.心エコーでEF15%,左室拡大,
さらに精神発達遅延,痙攣の既往も認められた
ため,精査目的で当院に転院.CK上昇は認めず,
乳酸の上昇を認めた.明らかな筋力低下はなく,
冠動脈に有意狭窄認めず,拡張型心筋症と診断し
た.上腕二頭筋の針筋電図で筋原性変化が認め
られ,筋生検施行.dystrophin蛋白の発現低下が
確認され,dystrophinopathy(Becker muscular
dystrophy)と診断された.今回は,筋力低下や
CKの上昇が認められなかったにもかかわらず,
心不全が契機になり,筋ジストロフィーが成人に
なって診断された症例を経験したので報告した.
69) 著明な漏斗胸に左室収縮障害を合併した1
兄弟例
(石川県済生会金沢病院循環器内科)
大江康太郎・荒木 勉
症例は56歳男性(兄).高血圧を指摘されていた
が放置.夜間の咳にて来院.著明な漏斗胸と,心
拡大を認めた.心エコー上,左室肥大,左室拡大,
左室収縮障害(EF 21%)を認めた.冠動脈狭窄
なし.高血圧性心臓病と診断された.後日,弟(51
歳男性)が,感冒にて来院.兄と同様の著明な漏
斗胸と心拡大を認めた.心エコーにて左室拡大と
左室収縮障害(EF 41%)を認めた.冠動脈狭窄
なし.拡張型心筋症と診断された.兄は当初,高
血圧性心臓病と診断されていたが,家族歴,左室
拡大,著明なEF低値より,拡張型心筋症の合併
が疑われた.家族歴では父と母は血族結婚で,父
と妹,2番目の弟も漏斗胸であった.父,母には
明らかな心疾患なし.漏斗胸と心筋症の関連は不
明であり,文献的報告も認めなかった.稀な症例
と考え報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
70) 小児科からのHOCM,Severe MRに対して
Septal Myectomyを行った1例
(聖隷浜松病院心臓血管外科) 梅原伸大・
小出昌秋・國井佳文・渡邊一正・渕上 泰
(同小児循環器科) 武田 紹
(すずき医院) 鈴木保孝
症例は16歳女性.小児期からHOCM,MRと診断
されていた.10歳頃から左室流出路圧較差が増
大,16歳時の心エコーにて最大圧較差155mmHg
に達しており,SAMによるSevere MRも認めた.
自覚症状は労作時の軽度息切れのみであったが
BNP780と上昇を認め,手術適応とした.体外循
環心停止下に大動脈弁越しに中隔肥厚筋切除を行
った.通常のMorrowの方法に加え左室中部の狭
窄を拡大切除した.僧帽弁自体には異常を認めず
特に手を加えなかった.術後圧較差は50mmHg程
度まで改善,SAMは消失しMRはMildとなった.
術後1ヶ月時のBNPは440と改善した.
73) 持続性心室頻拍症を契機に発見されたサル
コイドーシスの1例
(名古屋大学医学部附属病院) 森下真梨子・
吉田直樹・石井秀樹・新谷 理・因田恭也・
室原豊明
症例は54歳女性.特記すべき既往歴はなし.2008
年7月に動悸を主訴に救急車にて当院を受診.
189bpmの左脚ブロック型・下方軸の持続性心室
頻拍を認め,リドカインは無効でDC200Jにて停
止.胸部Xpでは心拡大と肺鬱血あり.UCGでは
特徴的な中隔基部の菲薄化と左室拡大および瀰漫
性壁運動低下を認め,サルコイドーシスによる心
筋症が疑われた.心不全加療後,心カテおよびア
ブレーションを施行.冠動脈は正常.心室頻拍は
右室流出路のfocalパターンであったが,完全に
は抑制できなかった.後日ICD植込術を施行した.
心筋生検・皮膚生検で非乾酪性類上皮性肉芽腫は
認めなかったが,肺門リンパ節腫脹と同部のGa
シンチ集積,ツ反陰性,リゾチーム高値よりサル
コイドーシス(臨床診断群)と診断し,心病変合
併のためステロイド加療を開始した.
71) 心臓腫瘍と鑑別を要した閉塞性肥大型心筋
症の一例
(名古屋市立大学心臓・腎高血圧内科)
坂本真里・北田修一・若見和明・浅田 馨・
伊藤立也・武田 裕・向井誠時・鈴木章古・
大手信之・木村玄次郎
74) 1年の経過で心肥大の進展と左心機能低下
を認めたミトコンドリア心筋症の1例
(金沢医科大学循環制御学) 若狭 稔・
野村祐介・本山敦士・佐藤良子・赤尾浩慶・
河合康幸・上西博章・北山道彦・浅地孝能・
津川博一・松井 忍・梶波康二
症例は,失神を主訴に受診した75歳女性.心エコ
ー上心室中隔左室流出路近傍に3cm大の腫瘤を
認め心臓腫瘍が疑われた.腫瘤内部のエコー輝度
は不均一で周囲組織とは性状を異にするものと考
えた.しかし,心臓CT・MRI,心筋シンチグラ
フィでは,腫瘤の性状は周囲心筋組織と非常に類
似していると判断され,心臓腫瘍および肥大型心
筋症との鑑別が困難であった.心室中隔より心筋
生検を施行した.生検所見では,心筋の肥大所見
に加え脂肪組織の散在を認めた.拡張型心筋症な
どでは心筋内に脂肪組織を認めたという報告があ
るが,肥大型心筋症においては比較的まれである
ので,若干の文献的考察を加え報告する.
症例は49歳男性.20歳より難聴,27歳頃に糖尿病
と診断された.30歳よりインスリン治療導入,48
歳時に両側人工内耳手術を施行された.心エコー
では心室中隔および後壁厚が12mmで輝度の上昇
を認めた.病歴と合わせてミトコンドリア心筋症
を疑い,2007年2月,当科入院となった.冠動脈
造影検査では冠動脈がびまん性に狭小化してお
り,右室心筋生検で心筋の軽度肥大を認め,ミト
コンドリア遺伝子3243点変異を確認し,ミトコン
ドリア心筋症と診断した.2008年5月の左室造影
検査では左室壁運動がさらに低下(EF 58→48%)
しており,心室中隔および後壁厚は14mmと肥大
の進展を認めたため,ユビデカレノン(CoQ10),
β-blocker,ARB,スタチンの内服加療を開始し
た.
72) TIAを契機に診断された無症候性左室緻密
化障害の1例
(名古屋大学医学部附属病院検査部)
平敷安希博
(同循環器内科) 奥村貴裕・大島 景・
榊原雅樹・舟橋栄人・海野一雅・山田高資・
村瀬洋介・原田 憲・西澤孝夫・因田恭也・
室原豊明
75) 皮膚筋炎の安定期に急速に進行する心機能
障害を認めた1例
(金沢医科大学循環制御学) 高村敬明・
青木洋文・斎藤竜平・藤林幸輔・若狭 稔・
絈野健一・藤岡 央・赤尾浩慶・河合康幸・
上西博章・北山道彦・浅地孝能・津川博一・
松井 忍・梶波康二
(同心血管外科学) 永吉靖弘・秋田利明
【症例】54歳男性【主訴】無【現病歴】平成20年
4月に一過性に左半身麻痺,左視野狭窄が出現し,
他院にて一過性脳虚血発作と診断され,入院加療
となった.その際,スクリーニングにて心臓超音
波検査を行ったところ,左室駆出率23%と低下し
ており当院に紹介された.【入院時検査】NYHA
1,BNPは71pg/mlであった.心臓超音波検査によ
る左室駆出率は34%で,心尖部に網目状の肉柱形
成と深い間隙を認めた.心臓カテーテル検査にて,
冠動脈に有意狭窄を認めず,左室心筋緻密化障害
に一致する像を認めた.6分間歩行距離は710m,
CPxでのpeakVO2は27.2ml/kg/min,VE/VCO2slope
は21であった.【結語】運動耐容能の極めて良い
無症候性左室心筋緻密化障害を経験した.
症例は54歳女性.38歳で皮膚筋炎と診断され,ス
テロイド,免疫抑制剤の内服加療で病状は安定し
ていた.2008年4月上旬より軽労作で呼吸困難を
認めたため当科受診,急性心不全と診断され入院
となった.心エコーでEFは9%,左室壁運動は
全周性に著明に低下し左室拡張末期径は71mmで
あった.心筋生検では軽度の線維化を認めたが
活動性の炎症や心筋の変性・脱落は認めなかっ
た.利尿剤,β遮断薬の内服加療で心不全は改
善しEFも30%まで改善した.しかしVTの出現,
心エコーで左室壁のdyssynchronyを認めたため
CRT-Dを埋え込んだ.
名古屋国際会議場(2008 年 11 月) 925
76) 当院における心臓再同期療法の現状
(福井大学循環器内科) 佐藤岳彦・
中野 顕・宇隨弘泰・見附保彦・下司 徹・
居軒 功・荒川健一郎・李 鍾大
【目的】当院における心臓再同期療法の現状につ
き検討した.【対象および方法】当院でCRT(-D)
を植え込んだ16例(男性10例,平均67.0歳)を対
象とし,平均10ヶ月(1~46ヶ月)追跡した.基
礎心疾患は虚血4例,非虚血12例で,心室間同期
不全の有無は,大部分の症例でSPWMD(>130ms)
を用い判定した.【結果】術前のNYHA分類は,
2度:6例,3度:7例,4度:3例であった.
平均BNPは術前906pg/mlから術後404pg/mlへ有
意に改善した.13例で心不全症状の改善を認めた
が(A群),3例では改善を認めなかった(B群).
A群の1例が遠隔期に心室細動で,B群の2例が
心不全で,それぞれ死亡した.【まとめ】当院に
おける心臓再同期治療の成績は概ね満足できる結
果であった.
77) 当院における心臓再同期療法の治療成績
(安城更生病院循環器センター循環器科)
清水優樹・伊藤唯宏・川村正太郎・中川 香・
児玉宜子・上山 力・子安正純・堀部秀樹・
竹本憲二・度会正人
【目的】当院での心臓再同期療法(CRT)の治療
成績を検討する.【方法】2004/4-2008/9の間に当
院でCRTの植え込みを行った連続26症例(DCM
22例,ICM4例,平均NYHA3.2±0.75 QRS幅179
±23.4ms EF27.7±6.2%)を対象とし,慢性期の
心機能改善効果および追跡期間中(中央値14Mo)
の心事故(死亡・心不全入院)を評価した.【結果】
慢性期にQRS幅(–27ms)CTR(–3.5%)EF(+6.2
%)LVDd(–4.1mm)NYHA(–1.04°)BNP(–451
pg/ml)は有意な改善を認めた.追跡期間中に死
亡5例(うち心臓死4例),心不全入院3例(う
ち不整脈2例)を認めた.【総括】心臓再同期療
法により心機能の改善および心不全症状の改善を
みとめた.
79) 心臓再同期療法適応外の慢性心不全におけ
る術前電気生理学検査の有用性
(富山県立中央病院内科) 永田義毅・
杉田光洋・花岡里衣・谷口陽子・北野鉄平・
紺谷浩一郎・丸山美知郎・安間圭一・臼田和生
【背景】心臓再同期療法(CRT)の適応基準を満
たさない慢性心不全患者では,術前電気生理検
査(EPS)を評価することが推奨されている.し
かしCRT responderを予測する指標は明らかでは
ない.【対象と方法】CRT術前にEPSを行った慢
性心不全17例を対象とした.CRT適応基準を満
たす9例(A群)と満たさない7例(B群)にお
ける左室機能改善効果を検討した.体外式両心室
ペーシングを行い,心係数または肺動脈喫入圧
改善がみられた場合に急性効果ありと判断した.
【結果】全例,術前EPSによる急性効果を確認し
CRTを施行した.CRT responderはA群で6例(67
%),B群で6例(86%)であった.【総括】CRT
適応基準を満たさない慢性心不全患者において,
術前EPSにより血行動態改善を認めた場合,CRT
responderとなる可能性が高いことが示唆された.
80) 心臓再同期療法を試みた修正大血管転位症
の一例
(山田赤十字病院循環器科) 棚橋俊介・
坂部茂俊・笠井篤信・佐藤雄一・大村 崇・
山中 崇・説田守道・笠井篤信
先天性修正大血管転位症(ccTGA)は,Anatomical
RVが,Systemic circulationの後負荷を常時支え
なければならず,一般的には予後不良だといわれ
ている.ccTGAに対するCRTの有効性については
報告が少なく明らかにされていない.症例は39歳
の女性で,3才時にccTGA+VSDの診断でVSD閉
鎖術を受け,32才時に2度房室ブロックに対して
DDDペースメーカを植込まれた.その後,時に顔
面・足背に軽度の浮腫が出現したが,投薬にて軽
快していた.2008年,既存のDDDペースメーカが
電池寿命に達した.心室ペーシング率は100%で
あったため,
解剖学的右室の壁運動にdyssynchrony
が存在すると判断し,CRT-Pにupgradeすること
にした.posterolateral branchの配置は通常通りに
造影され,ペーシングリードをたやすく挿入する
ことが可能だった.UCGのAnatomical RVの二次
元短軸像およびAnatomical RV流出路のドプラ波
形から,CRTの優位性を示すことができた.
83) MDCTが診断に有用であった先天性心疾患
の症例
(名古屋第一赤十字病院循環器科)
山村由美子・松尾大志・平松瑞穂・永広尚敬・
片岡義之・小栗光俊・三浦 学・柴田義久・
花木芳洋・神谷春雄・大野三良
部分肺静脈環流異常は,全先天性心疾患の1%足
らずの比較的まれな疾患であるとされてきた.肺
高血圧をきたす例はきわめてまれであるが,ASD
と同じ血行動態であり,加齢に伴い心不全症状を
呈することがあるとされている.今回,心電図や
胸部単純レントゲンで異常を指摘され,心臓超音
波検査にて右心負荷所見を認めるも,その原因が
同定できない症例において,MDCTにより,部分
肺静脈環流異常が同定される例が数例あったため
報告する.部分肺静脈環流異常は,合併する先天
性心疾患がなければ発見されにくい疾患であり,
今まで報告されていた以上に頻度の多い疾患では
ないかと推定される.今後,効率的な診断の方法
につき検討していきたい.
81) 右室心尖部ペーシングでタコツボ型心筋症
となり,左室ペーシングで改善した超高齢完全房
室ブロックの一例
(山田赤十字病院循環器科) 坂部茂俊・
笠井篤信・佐藤雄一・大村 崇・山中 崇・
説田守道
84) 3D経食道心エコー図検査にて僧帽弁前尖
の穿孔を確認し得た1例
(金沢大学循環器内科) 中村太地・
舛田英一・井野秀一・藤野 陽・内山勝晴・
林 研至・坂元裕一郎・坪川俊成・舟田 晃・
村本明彦・岡島正樹・高村雅之・山岸正和
症例は80歳台男性.某日労作時呼吸困難を主訴
に当院を受診した.HR40台の完全房室ブロック
があったが左室機能に障害なく冠動脈造影にお
いて有意狭窄を認めなかった.当日dual chamber
pacemakerを移植した.右室リードは心尖部に留
置した.第3病日より肺水腫をきたし,心エコー
で左室にたこつぼ型心筋症様の収縮不全を認め
た.ペーシングが悪影響を及ぼしている可能性を
考え第6病日に一旦中止したところ1時間ほどの
経過で左室機能は徐々に改善した.ペーシング中
止のまま経過をみたが徐脈自体が肺水腫を増悪さ
せており極めて重篤な状態になった.このため第
8病日に左室リードを追加し左室ペーシングとし
た.左室機能はすぐに正常化し,肺水腫も正常化
した.
69歳女性.特に心疾患の既往はなかったが,2008
年6月末より倦怠感と労作時の息切れを自覚する
ようになったため7月14日に近医を受診.その際
に,初めて心房細動と僧帽弁逆流を指摘された.
内服加療が開始されたが,動悸も自覚するように
なったため7月18日に再度近医を受診した.内服
の調整をされたが症状改善しないため,精査目的
に当科に紹介となった.当科で施行した心エコー
図検査にて僧帽弁前尖の弁腹からの逆流を認め,
これに起因する心不全と考えられた.Carperitide
を主体とする心不全治療を行い,僧帽弁の評価目
的に3D経食道心エコー図検査を施行した.今回,
3D経食道心エコー図検査にて僧帽弁前尖の穿孔
を確認し得た1例を経験したので報告する.
82) QRS Duration and Left Ventricular Diastolic Dysfunction
(岐阜県立多治見病院循環器科) 矢島和裕
(名古屋市立大学心臓・腎高血圧内科)
大手信之
(岐阜県立多治見病院循環器科) 田中 覚・
河宮俊樹・藤巻哲夫・加藤公彦・日比野剛・
横井 清
85) 人工弁周囲の僧帽弁逆流の術前診断にリア
ルタイム3次元心エコー検査が有用であった1例
(富山県立中央病院内科) 若山 隆・
永田義毅
(同心臓血管外科) 上田哲之
(同内科) 臼田和生
(同心臓血管外科) 西谷 泰
心電図QRS幅の120msec以上の延長は,左室収縮
不全を有する重症心不全患者の約1/3にみられ予
後不良の指標である.また,QRS幅が大であるほ
ど左室駆出率(LVEF)は低下していると報告さ
れている.QRS幅と左室心機能,特に拡張能との
関係を検討した.胸痛精査にてカテーテルを行っ
た連続352名を対象とした.左室造影からLVEFを
求め,左室収縮末期容積(LVESV)を体表面積で
除して左室収縮末期容積指数(LVESVI)を計算
した.カテ先マノメーターを使用した左室圧曲線
から弛緩時定数(tau)を求め,心エコー図組織
ドプラー法にて僧帽弁輪部拡張早期心筋移動速度
(Ea)を求めた.QRS幅は,LVEFやLVESVIの左
室収縮能の指標と有意な相関を示し,tauやEaの
左室拡張能の指標とも有意な相関を示した.QRS
幅は左室収縮能に加え左室拡張能も反映する.
926 第 132 回東海・第 117 回北陸合同地方会
症例は56歳男性.20年前,僧房弁狭窄症に対して
機械弁置換手術を受けている.H20年4月,溶血
性貧血を発症した.精査の結果,僧房弁逆流を認
め機械弁機能不全と診断した.3次元心エコーの
結果,機械弁の固定および弁の開放運動は良好で
あった.弁周囲の後下壁に逆流している部位を認
めた.
【手術所見】僧房弁後下壁に逆流部位を2
箇所確認した.同部位は縫合糸が脱落していた.
【総括】3次元心エコーにより機械弁周囲の逆流
部位をより正確に特定することができた症例を経
験した.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
86) 未発症の筋dystrophy患者で運動負荷UCG
により誘発された左室壁運動異常
(柿原クリニック) 柿原理一郎
症例は15歳の男性.幼児期に筋dystrophyと診断
されている.未発症で現在もサッカー部に所属.
本年度の心電図検診でT波異常を指摘され当院を
受診.
【検査結果】安静時ECGはV1~3までnegative T.安静時UCGに肉眼的には異常は認めなっ
かた.母親から筋dystrophy患者であることを告
げられ,念のためtredmill exercise ECG,UCGを
施行した.Exercise ECGでは異常は認めなっか
た.ExerciseUCGでは前壁中隔はhypokinesisと
なった.安静時心エコー図のshort axis像をstrain
解析したところ前壁中隔はhypokinesisであった.
【結語】この症例筋dystrophyは臨床的に骨格筋に
発症する以前に心筋に発症していた.筋dystrophy患者のF/Uには心エコー図検査は不可欠と思
われ,安静時心エコー図法のstrain解析が有用と
考える.
89) スルピリドおよびワイパックスの関与が示
唆された肺塞栓症の一例
(犬山中央病院循環器センター循環器内科)
長尾強志・伊藤一貴・鶴山幸喜
症例は49歳の男性で,2年前よりうつ病に対して
向精神病薬(スルピリドおよびワイパックス)が
投与されていた.3日前から金銭トラブルで過度
のストレスがあった.一過性意識消失を生じた
ため当院に救急搬送されたが,来院時の血圧は
86/40,SPo2は90%であった.心電図検査の施行
中に突然心肺停止となった.心肺蘇生術を施行し
ながら撮像した造影胸部CTでは両側肺動脈主幹
部に血栓像が認められた.肺塞栓と診断しPCPS
による補助循環療法を試みたが救命できなかっ
た.剖検では両側肺動脈主幹部に血栓が認められ
たが,血液検査では血栓症の原因となる明らかな
異常所見は認められなかった.薬剤に起因する肺
塞栓症が示唆されたが,スルピリドやワイパック
スに起因すると考えられる肺塞栓症はまれと考え
られた.
87) 間質性肺炎を伴った慢性肺血栓塞栓症の1
治験例
(藤田保健衛生大学心臓血管外科)
近藤弘史・安藤太三・高木 靖・山下 満・
佐藤雅人・星野 竜・渡邉 徹・金子 完・
石田理子・栃井将人・秋田淳年・樋口義郎
(同呼吸器内科) 小橋保夫
90) 左室局所壁運動低下を呈した睡眠時無呼吸
症候群の一例
(福井大学循環器内科) 下司 徹・
中野 顕・宇隨弘泰・見附保彦・荒川健一郎・
居軒 功・森川玄洋・阪田純司・皿澤克彦・
嵯峨 亮・石田健太郎・佐藤岳彦・森下哲司・
李 鍾大
症例は34歳女性.労作時呼吸困難を主訴に当院を
受診し,特発性間質性肺炎および慢性肺血栓塞栓
症と診断された.膠原病は否定的で血栓性素因は
陰性だったが,ピル内服の既往があった.術前所
見は肺動脈圧が76/32(48),PVRが869,jamieson分類でtypeⅢだった.末梢型だが手術適応と
判断し,超低体温間欠的循環停止下で両側肺動脈
血栓内膜摘除術を施行した.第18病日に抜管し,
第31病日に一般病棟へ転棟した.術後検査所見は
肺動脈圧が67/25(41),TPRが712だった.残存
血栓を認めた為aspirin,warfarin,beraprostに
加えsildenafilを投与した.第68病日に軽快退院と
なった.末梢型慢性肺血栓塞栓症に対する外科治
療につき考察を加えて報告する.
症例は32歳男性.会社健診で高血圧と心電図異常
を指摘され初診.心エコー上,左室前壁中隔に局
所壁運動異常と左室駆出率低下を認め,精査目的
に入院.入院時BMI 38.4kg/m2と高度肥満あり.
心臓カテーテル検査では冠動脈狭窄なく,軽度の
肺高血圧所見を認めた.血清学的検査,右室心内
膜下心筋生検,心臓核医学検査では二次性心筋症
を示唆する所見は明らかではなく,左心機能障害
の原因については特発性心筋症を疑い薬物療法を
開始.また,ポリソムノグラフィーにて無呼吸低
呼吸指数74.4と高値を認めたため,持続陽圧呼吸
療法も追加.6か月間で約36kgの減量に成功し,
降圧剤は不要となり,さらに左室壁運動と心電図
変化についても経時的に正常化した.左室局所壁
運動異常の原因として睡眠時無呼吸症候群の関与
が疑われた.
88) 肺動脈性肺高血圧症に対するボセンタンの
使用経験
(名古屋大学医学部附属病院検査部)
平敷安希博
(同循環器内科) 奥村貴裕・大島 景・
榊原雅樹・原田 憲・新谷 理・因田恭也・
室原豊明
92) AVRにて左室収縮力の改善を得た重症心
不全合併大動脈弁狭窄症の一例
(名古屋徳洲会総合病院) 景山聡一郎・
大橋壮樹・吉田 毅・児島昭徳
ボセンタンは,NYHA3度以上の重症肺動脈性肺
高血圧症に対し,運動耐容能,長期予後の改善に
有効であることが確立されている.当院で肺動脈
性肺高血圧症に対しボセンタンを使用した症例に
対し,その効果と忍容性について検討した.使用
症例は,6例.急性期の副作用は,頭痛6例中5
例に認めたが,一過性であり,慢性期に中断した
症例は無かった.6例中,1例死亡,1例転居に
より,フォローアップできたものは4例であった.
BNPは,投与前424±265pg/ml,6ヶ月後127±
206pg/ml,6MDは,投与前259±89m,6ヶ月後
348±98mであった.肺動脈性肺高血圧症に対し
ボセンタンの投与は,心負荷を軽減させ,運動耐
容能を改善させ有用であった.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
症例は83歳の女性で呼吸困難を主訴に入院となっ
た.その後心不全が徐々に悪化し,内科的治療に
ても改善傾向が無く当科紹介となった.その後人
工呼吸管理を行った.心臓超音波検査にて重症大
動脈弁狭窄,左室収縮力(LVEF)0.18であった.
人工呼吸からの離脱が不可能であり,準緊急に大
動脈弁置換術を行った.術後呼吸器からの離脱も
容易で,リハビリ後1ヶ月目に元気に退院となっ
た.術後の心臓超音波検査でLVEFは0.44と左室
収縮力の改善を認めた.大動脈弁狭窄解除により
臨床症状の著明な改善とともに左室収縮力の改善
を得た症例を経験したので考察を加え報告する.
93) 大動脈炎症症候群に合併したSubannular
Ventricular Aneurysmの1例
(岐阜大学医学部附属病院) 川口智則・
吉真 孝・名和隆英・竹山俊昭・石原義之・
横山ちはる・白木 仁・岩佐将充・
久保田知希・川村一太・八巻隆彦・牛越博昭・
小塩信介・川崎雅規・西垣和彦・竹村元三・
湊口信也・青山琢磨・金森寛充・安田真智・
小林浩之
【症例】75歳 女性大動脈炎症候群,大動脈弁閉
鎖不全症(AR3°)にて無症状のため経過観察中
であった.平成19年9月頃より下肢浮腫,呼吸困
難を認め,心不全の増悪と判断し,精査加療目的
にて当科入院.心不全に対して薬物加療するも難
治性であり大動脈弁置換術となった.経食道エコ
ーで,無冠尖,左冠尖の弁輪下にchamberを認め,
これにより,冠尖のCONFORMATIONに変化を
来たし,同弁の接合不全より大動脈弁閉鎖不全を
おこしたと考えられました.術中,chamberにつ
づくholeを確認し自己心膜パッチ閉鎖し,大動脈
弁置換術施行した.その後,心不全も改善し退院
となった.大動脈炎症候群に合併したsubannular
ventricular aneurysmと考えられる1症例を経験
した.
94) 肺動脈瘤合併の肺動脈弁狭窄症の成人例
(岡崎市民病院) 堀内和隆・寺田貴史・
湯浅 毅・保浦賢三
症例は53歳男性.幼少時より心雑音を指摘されて
いた.検診にて心電図異常を指摘されるように
なり,精査目的に受診.心電図は右室肥大所見
を示し,心エコーで肺動脈弁狭窄(最大圧較差
104mmHg)とともに肺動脈の拡張あり.CTでは
肺動脈本幹径57mm,左肺動脈径26mmと拡張を
認めた.肺動脈瘤合併,肺動脈弁狭窄症と診断し,
肺動脈弁交連切開,右室流出路狭窄解除,肺動脈
縫縮術を施行した.
95) 先天性大動脈弁上狭窄に大動脈弁狭窄症を
合併し70代で不安定狭心症を来たした一例
(岐阜県総合医療センター循環器科)
松岡玲子・小島 帯・小野浩司・瀬川知則・
野田俊之・渡辺佐知郎
平成19年10月より胸痛を自覚し精査.冠動脈造影
時,左冠動脈にカテを挿入すると容易にカテ先端
圧の低下を来たし左冠動脈入口部の高度狭窄が疑
われたが入口部以外には動脈硬化は認めなかっ
た.冠動脈入口部狭窄を疑いMDCTを施行したと
ころ左Vasalva洞内にドーナツ状の隔壁による高
度狭窄を認め,左冠動脈入口部及び左主幹部には
狭窄は認めなかった.RIにて広範な心筋虚血を
認め一連の大動脈弁周囲疾患による不安定狭心症
と診断した.治療法として大動脈弁の置換及び,
左Vasalva洞内の隔壁の除去が必要であり外科的
手術を施行した.術後症状は消失した.
名古屋国際会議場(2008 年 11 月) 927
96) 右上大静脈欠損左上大静脈遺残を合併した
僧帽弁狭窄症と心房細動に対する1手術例
(岐阜県立多治見病院心臓血管外科)
宋 敏鎬・中山智尋・服部圭祐
(同循環器内科) 日比野剛
The persistent left superior vena cava is the embryological precursor of the ligament of Marshall,
which has been implicated in the initiation and
maintenance of atrial fibrillation. We recently
cared for a woman who had mitral stenosis, atrial
fibrillation, absent right superior vena cava, and
persistent left superior vena cava. She underwent
mitral valve replacement and surgical ablation
of pulmonary vein and conjunction of coronary
sinus and left superior vena cava. Her atrial fibrillation was cured and successfully restored to
sinus rhythm postoperatively. This experience
prompted us to report the case.
97) 左室壁運動低下に伴うfunctional MRに対し
てpapillary muscle approximation法を施行した2例
(大垣市民病院心臓血管外科) 小坂井基史・
玉木修治・横山幸房・石本直良・杉浦 友・
大河秀行
【はじめに】functional MRは従来の方法のみでは
制御困難であり,弁下病変(tethering)の修復
が必要である.2例にpapillary muscle approximation法を施行した.【症例1】65歳男性.DCM
に伴う重症MRで,tetheringと後尖の逸脱を認め
た.
弁輪形成,
double orifice techniqueを併用した.
【症例2】46歳女性.LCXのAMIを発症後,経過
中にIEを合併して重症MRを残した.P2腱索断裂
が主病変で,前尖のtetheringも認めた.McGoon
法,弁輪形成を併用した.【結果】両者とも残存
逆流はなく,左心の縮小を認めた.NYHAはIII
からIに改善した.【結語】本法はfunctional MR
の制御に有用であると考えられた.
99) 当院におけるcollar補強僧帽弁置換術の検討
(富山県立中央病院心臓血管外科)
上田哲之・西谷 泰・小島 愛・武内克憲・
星野修一
僧帽弁置換術の際に,重度の弁輪石灰化や弁輪破
壊を伴う場合,通常の僧帽弁置換術を行えないこ
とがある.そのような時にウマ心膜collarで外周
を拡大した人工弁を用いて僧帽弁置換術を行って
いる.35歳~69歳の4例を経験した.4例中3例
が人工弁感染に対する再手術症例,1例が僧帽弁
狭窄を有する透析患者の広範な弁輪石灰化症例で
あった.予め輪状のcollar付き人工弁を作成して
おき,可及的に弁輪に人工弁を縫着した後に,さ
らにcollarを左房壁に縫着した.病院死亡なく,
弁も正常に機能していた.
100) 僧帽弁位の血栓弁を繰り返した閉塞性肥大
型心筋症の1例
(三重大学医学部附属病院循環器内科)
谷村宗義・中嶋 寛・宮村有紀子
(同感染制御部) 田辺正樹
(同循環器内科) 土肥 薫・玉田浩也
(同臨床検査部) 大西勝也
(同循環器内科) 山田典一・宮原眞敏・
中村真潮
(同胸部心臓血管外科) 新保秀人
(同循環器内科) 伊藤正明
68歳女性.1999年に閉塞性肥大型心筋症と診断.2003
年に僧帽弁後尖逸脱による僧帽弁逆流症から心不全を
発症し,僧帽弁置換術(CarboMedics 29mm)を施行
された.術後の内服コンプライアンスは不良で,不十
分な抗凝固療法のため,2006年に血栓弁による弁機能
不全を発症し,僧帽弁再置換術が施行された.明らか
な血液凝固異常を示唆する所見はなく,ワルファリン
による十分な抗凝固療法を継続したにもかかわらず,
2008年1月に血栓弁が再発した.血栓溶解療法にて改
善し,さらに抗血小板剤の併用も行ったが,同年7月
に再び血栓弁による重度の弁開放制限から心不全を発
症した.血栓溶解療法中に心室頻拍を発症したが,心
肺蘇生術にて救命され,2日後に準緊急僧帽弁置換術
が施行された.
101) 腎移植患者に対する心臓手術の経験
(名古屋第二赤十字病院心臓血管外科)
岡田典隆・宗像寿祥・日尾野誠・藤井 恵・
寺澤幸枝・高味良行・酒井喜正・田嶋一喜・
井尾昭典
腎移植患者はステロイドに加え,免疫抑制剤の内
服を必要とし,周術期にも移植腎保護のため同
治療の継続を必要とする.当院では腎移植患者
に対し1997年以降4例の心臓大血管手術を経験
したため,その成績を報告する.年齢は平均44.7
歳(38-50歳),緊急1例・準緊急1例・待期2例.
術式はAVR,OPCAB,MVP,上行大動脈置換術
が各1例.初回手術3例・再手術1例.腎移植後
平均17.8年(16.2-21.6年)経過.術前Cr値は平均
2.61mg/dl(0.84-5.95mg/dl)は全例術前よりステ
ロイド(プレドゾロン10mg/dayまたはメチルプ
レドニゾロン8mg/day)及び免疫抑制剤(アザ
チオプリンまたはシクロスポリン及びミコフェノ
ール酸モフェチル)を内服しており,経口摂取可
能となるまでは術直後から経静脈的(プレドニン
10mg/day・シクロスポリン)に継続した.術後
の経口摂取開始後の手術死亡及び感染合併症は認
めなかった.1例が術後透析再導入となった.全
例,術後平均20日(15-32日)軽快退院となった.
102) 低形成の弁尖を自己心膜で形成したpartial
AVSD,severe TRの一手術例
(中京病院心臓血管外科) 加藤紀之・
櫻井 一・水谷真一・野中利通・杉浦純也・
波多野友紀
(同小児循環器科) 大橋直樹・西川 浩・
久保田勤也・吉田修一朗・松島正氣
症例は,1歳,男児,体重:5.4kg.partial AVSD,
sevre TRと診断.術前から心不全のため,ミルリ
ノン,ラシックスの投与を必要とした.手術は,
軽度低体温,心停止下におこなった.術前の逆流
がtrivialだった僧帽弁は,前尖の弁輪までcleftを
認め,これを縫合し形成した.coronary sinusを
左房側へ落とすようにして一次中隔を自己心膜で
閉鎖した.三尖弁は,中隔尖が重度低形成で,交
連部の縫合だけでは十分なcoaptationが得られな
いため,glutaraldehyde処理した自己心膜を三角
形に切開し,先端を前乳頭筋に固定し,他端を中
隔尖に結節縫合し固定した.弁輪は規定の14mm
以上を確保できた.術後の心エコーでは,TRは
mildまで改善し,狭窄も認めなかった.
928 第 132 回東海・第 117 回北陸合同地方会
103) 心房粗動を機に,発見された冠動脈肺動静
脈瘻と部分肺静脈還流異常の合併症例
(岐阜大学循環器内科) 名和隆英・
青山琢磨・金森寛充・牛越博昭・小塩信介・
川崎雅規・竹村元三・西垣和彦・湊口信也
【症例】71歳,男性【経過】2008年5月動悸後に
一過性意識消失し救急搬送された.その際2:1の
心房粗動を指摘,Cardioversionにて洞調律に復
帰した.胸部X-Pにて縦隔の拡大を認め,MDCT
施行したところ9cmの胸部大動脈瘤,冠動脈肺
静脈瘻,部分肺静脈還流異常が疑われ,心臓カテ
ーテル検査にて同症の存在が確認された.本症例
では,心房粗動は認めたが,左右シャントは軽微
であり,血行動態に与える影響は少ないと判断さ
れた.
【結語】冠動脈肺静脈ろうは冠動脈瘻の1
亜型であり,稀な奇形である.一方,部分肺静脈
還流異常は,0.8%前後の発症率の奇形であるが,
本症例のように,冠動脈肺静脈瘻を合併する症例
は非常に珍しいと考えられた.
104) 心筋ギャップ接合阻害がスパイラルリエン
トリーのダイナミクスに及ぼす作用
(名古屋大学環境医学研究所心・血管分野)
竹本芳雄・加藤サラ・高成広起・森島幹雄・
奥野友介・原田将英・丹羽良子・辻 幸臣・
李 鍾国・本荘晴朗・神谷香一郎・児玉逸雄
【背景】病態心におけるギャップ接合(GJ)リモ
デリングが致死性不整脈(VF/VT)のリスクを
増加させることが報告されているが,その機序
は充分解明されていない.【方法】GJ阻害剤carbenoxolone(CBX)が家兎摘出還流心の活動電
位とスパイラルリエントリー(SR)に及ぼす作
用を光学マッピングにて検討した.【結語】CBX
(30μM)は心室筋の伝導速度と空間定数を有意に
低下させた(各々26.4%±9.0% n=11,27.0±8.8
% n=5)が,活動電位は変化しなかった.薬物
添加前のSRは機能的ブロック(FBL)の周囲を
旋回した.CBX作用下のSRではFBLがほとんど
消失し安定した旋回が持続した.【結論】GJ機能
低下は心室筋SRを安定化させ,VF/VTの持続を
促すことが示唆された.
105) 大動脈弁狭窄を合併したsingle coronary
arteryの1例
(富山大学第二内科) 沼 哲之・中谷洋介・
阪部優夫・城宝秀司・水牧功一・亀山智樹・
平井忠和・藤木 明・能澤 孝・井上 博
(同第一外科) 三崎拓郎
症例は78歳女性.今年になり歩行時の易疲労感が
増悪していた.5月下旬,脂質異常症,糖尿病で
通院していた近医前で心肺停止となった.AED
で心室細動が認められ除細動され,近医に入院し
リハビリ後,精査・加療目的に当院へ転院した.
心エコーで著明な左室肥大と大動脈弁および左室
流出路に狭窄を認めた.心臓カテーテル検査では
130mmHgの大動脈弁狭窄と30mmHgの左室流出
路狭窄を認めた.冠動脈造影で,左冠動脈起始部
を認めず前下後枝と回旋枝は右冠動脈から派生し
ていた.心筋生検では肥大型心筋症に特異的な所
見を認めなかった.大動脈弁置換術および冠動脈
バイパス術が行なわれ,術中所見でも左冠動脈起
始部を認めなかった.先天性の単冠動脈に大動脈
狭窄症と肥大による左室流出路狭窄が合併し心室
細動を発症した稀有な症例と考えられた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
106) 左鎖骨下動脈・肺動脈シャント術後46年経
過したFallot四徴症の一例
(名古屋大学心臓外科) 恒川智宏・
大島英揮・碓氷章彦・荒木善盛・上田裕一
症例は72才女性.Fallot四徴症の診断で,26才時に左鎖骨
下動脈・肺動脈シャント術を施行された.本年3月,呼吸
困難を訴え,救急受診された.鬱血性心不全と診断され,
人工呼吸管理,強心剤および利尿剤の投与を要した.第2
病日には人工呼吸器を離脱し,経口利尿薬のみで状態安定
した.心胸郭比84%.非酸素投与時血液酸素飽和度は83%.
心胸郭比84%.造影CT上,シャント最大径16.0mm,吻合
部径7.0mmであった.心エコー上,Qp/Qs 1.41,右室肺動
脈最大圧格差12.6mmHgであった.【考察】左鎖骨下動脈・
肺動脈シャント術(Blalock-Taussig shunt原法)は,1944
年,Fallot四徴症に対し,Blalockらによって初めて施行さ
れた.現在,Fallot四徴症に対する本術式の役割は,限ら
れた症例において,根治術に向けての準備手術と位置づけ
られている.一方,ePTFEを用いる変法が導入され,チア
ノーゼ性複雑心疾患に対する初回準備手術としての需要は
増加している.原法は,シャント路に自家組織を用いてい
るため,成長,抗感染性,抗血栓性などの利点があると考
えられる.本症例においても,シャント路の成長を認め,
また,感染,血栓症などの合併症を生ずることなく,長期
生存を得た.長期生存例としては,Johns-Hopkins大学から,
最長60年の術後生存例を認めている.本症例も含めて,心
臓手術黎明期の先天性心疾患に対する外科治療の遠隔期転
帰の極めて貴重な報告であると考える.
107) 右冠動脈閉塞の心筋梗塞にて心室中隔穿孔
を来した1例
(福井循環器病院心臓血管外科) 阪本朋彦・
堤 泰史・門田 治・合志桂太郎・高橋洋介・
大橋博和
今回我々は右冠動脈領域の心筋梗塞にて心室中隔
穿孔を来した1例に対し緊急手術を施行し,良好
な結果を得た1例を経験したので,若干の文献的
考察を加えて報告する.症例は65歳男性.家族歴・
既往歴に特記事項はなし.現病歴は本年6月20日
胸痛を自覚.前医にて心電図上でST上昇を認め,
心臓カテーテル検査施行し,AMIと診断.RCA#
2にPCIを施行した.その際,LVGにて左右短絡
を認めた.その後,心不全増悪し(Qp/Qs2.8),
VSPに対し手術目的に当院転院となった.6月29
日手術施行.手術はDavid-Komeda法によるVSP
閉鎖術および冠動脈バイパス術を施行した.術後
は若干の短絡の残存認めるも,血行動態は安定し
良好に経過し,術後33日目に退院となった.
108)急性心筋梗塞後Blow out型左室自由壁心破
裂に対し,救命し得た一例
(金沢医療センター循環器科) 八重樫貴紀・
中村由紀夫・小島 洋・山本花奈子・
佐伯隆広・阪上 学
(同心臓血管外科) 松本 康・遠藤將光
症例は61歳,女性.平成9年にVSAを指摘,平成
11年にSSSに対しペースメーカー埋め込み術を受
けた.平成20年6月20日15時頃に胸苦が出現,心
電図上急性側壁心筋梗塞の所見であり,17時より
緊急CAGを実施した.その結果,D1 99%が責任
病変と考えられたが非常に細い枝であり,また重
症3枝病変を認めたため保存的加療の方針となっ
た.6月22日突然心タンポナーデとなり,一時
心停止の状態となった.直ちにCPRを行うととも
にPCPS導入下で心嚢ドレナージを行い,さらに
IABP,自己血返血装置などを導入し緊急左室修
復術+CABGを実施した.術後経過は良好で意識
レベルもクリアであり,現在では自力で座位保持
し食事摂取可能となっている.このようにBlow
out型左室自由壁心破裂に対し,緊急手術後に救
命し得た貴重な一例を経験したので,提示した.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
109) 仮性心室瘤と心室憩室の判別が困難であっ
た下壁心筋梗塞の一例
(富士市立中央病院) 鯨岡大輔・加藤大介・
小菅玄晴・荒瀬聡史・阪本宏志・三川秀文
(東京慈恵会医科大学) 吉村道博
112) 冠攣縮性狭心症による心室細動の救命し得
た1例
(藤枝市立総合病院循環器科) 中村 淳・
高橋宗一郎・阿部 信・内藤昭貴・渡辺明規・
高山眞一
症例は79歳女性.発症から約12時間経過して来院
した急性下壁心筋梗塞.緊急心臓カテーテル検査
の結果,右冠動脈#3が完全閉塞.同部位に対し
経皮的冠動脈形成術施行.術後の左室造影にて下
壁に瘤状変化を認めた.左室とは細い頚状の交通
があり仮性心室瘤と心室憩室の判別が困難であっ
た症例を経験したため報告する.
症例は54歳男性.特記すべき既往歴はなし.心窩
部痛にて近医受診したところ,診察中に心肺停止
となり,電気的除細動(DC)施行し当院へ救急
搬送.来院時にも心室細動認めDC施行したとこ
ろ自己心拍再開.再開後,左室壁運動は心エコー
上保たれていた.ICUにて人工呼吸管理となり,
第5病日に意識レベル改善認めたため人工呼吸器
離脱.一般病棟へ転棟後,心窩部痛再発しV4-V6
でST低下を認め,冠動脈造影を施行.右冠動脈・
左冠動脈回旋枝に高度狭窄認めたが,硝酸イソソ
ルビド冠注にて狭窄改善し,冠攣縮性狭心症と診
断した.
110) 心肺停止後,救急隊員による心肺蘇生によ
り救命され社会復帰し得た急性心筋梗塞の2例
(金沢医科大学病院循環制御学) 青木洋文・
藤林幸輔・斉藤竜平・津川博一・北山道彦・
浅地孝能・上西博章・赤尾浩慶・藤岡 央・
佐藤良子・絈野健一・本山敦士・野村祐介・
若狭 稔・河合康幸・梶波康二
113) 冠動脈解離に伴う急性心筋梗塞にて冠動脈
攣縮が誘発された1例
(安城更生病院循環器内科) 児玉宜子・
伊藤唯宏・中川 香・川村正太郎・上山 力・
清水優樹・子安正純・堀部秀樹・竹本憲二・
度會正人
【症例1】胸痛訴えた後意識消失し,夫が救急車
を要請.救急隊到着時には心肺停止状態であり,
直ちにCPR施行.VF認め,AEDにて除細動2回
施行され心拍再開.救急外来に到着時,ECG上
虚血性心疾患を疑う所見を認め,処置中に自発呼
吸,対光反射を認めたため緊急冠動造影を施行.
LAD #8 100%認めPCI施行し,TIMI3の血流を得
た.脳梗塞合併を認めたが,第45病日に独歩退院
となった.【症例2】駐車場で倒れている所を発
見され,救急車を要請.救急隊到着時,心肺停止
状態でCPR施行され,自発呼吸再開.救急外来到
着時,VF認めDC施行し心拍再開認めた.ECG上,
虚血性心疾患を疑う所見認め,緊急冠動脈造影を
施行.RCA#1 99%,LAD#6 90%,#7 90%認め,
IABP挿入下でPCI施行し,TIMI3の血流を得た.
第31病日に独歩退院となった.
111) 右室梗塞による重症低心拍出量症候群に対
しPCPS,PCIにより救命した一例
(春日井市民病院循環器内科) 石川真司
【症例】77歳男性.【主訴】3日前からの心窩部
痛,嘔気.来院時,AST754IU/L,ALT1200IU/L,
LDH928IU/L,CK414IU/L,BUN102.9mg/dl
Cre6.0mg/dl トロポニンT陽性.心電図は,V4-6
ST低下.V3R-4RでST上昇ないが,心エコーで右
心系拡大と右室壁運動消失を認め,右室梗塞によ
る低心拍出量症候群と診断.内科的治療にても血
圧維持できず.第3病日PCPS開始.右冠動脈 #1
に完全閉塞を認め発症5日後であったがPCIによ
り血行再建した.その後血行動態安定,第30病日
独歩退院.比較的虚血耐性のある右室梗塞に対し
ては発症後時間が経過していてもPCPSによる血
行動態維持とPCIによる血行再建が有用な場合が
あることが示唆された.
症例は51歳女性.既往歴に子宮筋腫で子宮全摘術,
高脂血症.現病歴は2007年11月5日早朝胸痛にて
当院救急外来を受診.心電図にてV2-6までST上
昇を認め,急性前壁心筋梗塞の診断で緊急冠動脈
造影検査を施行.左前下行枝#7で99%狭窄を認
め血栓吸引の後に血管内超音波を施行したところ
#8から外弾性板の概則に壁内血腫を認め,自然
冠動脈解離と考えられた.硝酸イソソルビド冠注
にてTIMI3となったためそのまま終了した.Max
CKは1172IU/l.その後の経過は良好で第10病日
に退院となった.7ヶ月後の冠動脈造影検査では
冠動脈硬化症は認めず,アセチルコリンにて冠動
脈攣縮が誘発された.冠動脈攣縮と冠動脈解離の
関連を当院の他症例,文献的考察も含めて報告す
る.
114) 神経線維腫1型に心電図変化をきたした症例
(浜松労災病院循環器科) 香川芳彦・
河本 章・神田 宏・小野澤陽子・森田泰弘・
高橋正明
【症例】60代女性【現病歴】2008年5月下旬より
左耳の突然の難聴を自覚.突発性難聴が疑われ,
ステロイド療法を行い,漸減されていた.6月
11日左上胸部に違和感を自覚されるもこの時は
ECG変化を認めなかった.6月13日無症状も下
壁・前胸部誘導でT波の陰転化,UCGで心尖部で
の軽度壁運動低下を認めた.【経過】6月13日冠
動脈造影で正常冠動脈であった.6月14日の胸部
違和感時のECGで前胸部・下壁誘導でST上昇を
認めた.NTG舌下で基線に戻り,冠攣縮狭心症
と診断した.ベニジピンなどの内服加療にて以降
は症状を認めなかった.【結語】ECG変化は冠攣
縮の他にたこつぼ心筋症や褐色細胞腫等の可能性
も鑑別に挙げられた.神経線維腫症1型と重度の
冠攣縮の合併の報告はなく貴重な1例と考えられ
た.
名古屋国際会議場(2008 年 11 月) 929
115) たこつぼ型心筋症との鑑別が困難であった
初期診断ACSの1例
(福井大学医学部附属病院循環器内科)
前田千代・中野 顕・石田健太郎・宇隨弘泰・
見附保彦・下司 徹・荒川健一郎・嵯峨 亮・
李 鍾大
症例は72歳女性.突然の左前胸部痛にて救急搬送
された.ECG上V1-5でST上昇を認め,心エコー
ではたこつぼ様の左室壁運動異常を認めた.緊
急冠動脈造影では,LADに高度の狭窄を認めた
ため同部にstent留置をおこなった.しかしなが
ら,左室壁運動異常の範囲はLADの虚血のみで
は説明困難な広範囲に及ぶものであった.さら
に,経時的なCKの上昇は軽度であったにも関わ
らず,左室壁運動は短期的には改善せず,心筋血
流SPECTおよびFDG-PETの所見は通常の気絶心
筋とは大きく異なるものであった.本症例はACS
の初期診断であったが,臨床経過や心臓核医学検
査所見からたこつぼ型心筋症との鑑別が問題とな
る症例と考えられた.
116) 冠動脈CTにおけるニトログリセリンと静
注β遮断薬と併用投与した場合の最適収集開始時
間と実用性
(総合上飯田第一病院循環器内科) 磯部 智
(同放射線部) 佐藤公英
(同循環器内科) 杉浦嘉一郎
(同看護部) 四ツ嶽夕加里・目野千束
(同外科) 加藤万事
(名古屋大学循環器内科) 原田 憲・
室原豊明
ニトログリセリン(NTG)投与が冠動脈CT画像に及
ぼす影響と,投与後の最適な収集開始時間を検討.冠
動脈CT症例60例を静注β遮断薬(ランジオロール)
のみ投与された群30例(B群)とβ遮断薬とNTGの両
者が投与された群30例(N群)に分類.冠動脈の最大
径と評価可能な領域数を計算.NTG投与後1分毎に
血圧と心拍数を記録.評価可能な領域の数はB群より
N群で有意に多く,左前下行枝遠位部,左回旋枝遠位
部,右冠動脈近位部と遠位部で,冠動脈の最大径はB
群よりN群で有意に大であった.NTG投与4分後で,
血圧が有意に低下,心拍数が有意に増加した.NTG
は,特に冠動脈末梢部を拡張し評価可能な領域数を増
やし,心臓カテーテルでは一般に用いられるので,冠
動脈CTでも用いられるべきである.冠動脈CTの最適
な収集開始時間は,NTG投与約3分後である.
117) MDCTによる安静時血流評価 胸痛症例で
の検討
(市立島田市民病院) 太田慎吾・金森範夫・
蔦野陽一・中村 貴・川人充知・松岡良太・
久保田友之・荒木 信・谷尾仁志・近藤真言・
服部隆一・青山 武
【目的】急性胸痛患者においてMDCTを用いて安静時
血流評価を行う.
【方法】32名の胸痛患者に対して来
院時早期(32.9±27.7時間)にMDCTを施行した.CT
にて冠動脈狭窄を認めた15例および冠動脈評価が困難
であった4例,冠動脈狭窄を認めなかった13例の内6
例の計25例に対してCAGを行いQCAによる狭窄度に
応じて3群(no stenosis,mild stenosis;50-74%,sever stenosis;>75%)に分類した.左室を17 segmentsに
分類し収縮期における各segmentの心内膜下50%のCT
値を測定した.17segmentsをLAD,LCX,RCAの3領
域に分割し,各領域のCT値の合計を求め,その値を
各領域に存在するsegmentの数で割った値をCT value
index(CTVI)と定義した.
【結果】CTVIはそれぞれ
no stenosis 108.6±16.8(72 territories)
,mild stenosis
96.5±16.5
(14 territories)
,sever stenosis 82.8±14.9
(10
territories)であり狭窄を認めた群では有意にCTVIは
低下していた(p=0.0148,p=0.0497)
.
【結論】造影
MDCTによる安静時心筋血流評価は可能である.
118) 当院でのGE LightSpeedVCTによる冠動脈
CTの特徴
(豊田厚生病院) 畳 陽祐・湯浅大祐・
窪田龍二・神谷宏樹・金子鎮二・篠田政典・
金山 均
122) 心タンポナーデを契機に発見された冠動脈
瘤破裂の一例
(名古屋徳洲会総合病院ハートセンター循環器内科)
與座功忠・林 隆三・亀谷良介・木村和生・
橘 五月・三井 尚・角辻 暁
近年,冠動脈CTは多施設で普及してきているが,
通常のCTと比較して放射線被爆量が多くなるこ
とが懸念される.当院で平成20年1月から5月,
GE社製64列CT LightSpeedVCTを使用し,Cine
scanとHelical scanの両方の撮影を行った11例に
おいて,それぞれの撮影被爆量を比較検討した.
平均被爆線量はCine scanで7.03mGy,Helical
scanで26.35mGyであり,Cine scanにより撮影被
爆量を27.9%削減できることが明らかになった.
また,RR間隔が不整であるAf,VPC等の不整脈例,
dyssynchronyのある左脚ブロック例,リードが
artifactとなりやすいペースメーカー挿入例では,
(必要に応じてHelical scan撮像を要するが,)最
大管電流値が高いLightSpeedVCTでは,正常例
に引けをとらない精度の画像を得られた.今回実
際の画像を併せて供覧する.
症例は,68歳男性,既往歴は,2004年4月に大動
脈弁置換術があるが,川崎病の既往は認めない.
近医より血性心嚢液による心タンポナーデのコン
トロール不良の精査・加療目的に2008年5月14日
当科緊急搬送となった.当院来院後,直ちに心臓
カテーテル検査施行,左回旋枝末梢の冠動脈瘤
(約2mm)より心膜腔内への造影剤の浸みだし
像を認めた.同部位に対しCoiling止血を施行し
た.術後,血行動態は保たれ,翌日心嚢ドレナー
ジより離脱可能となった.2004年に施行された大
動脈弁置換術術前の冠動脈造影検査では,同部位
に冠動脈瘤の存在は認めなかった.経過中,血管
炎の精査・全身血管精査を行うも異常を認めなか
った.今回,末梢の冠動脈瘤破裂の一症例を経験
した.考察も踏まえ報告する.
119) 320列冠動脈CTにおける放射線被曝線量の
検討
(藤田保健衛生大学病院循環器内科)
針谷浩人・皿井正義・元山貞子・原 智紀・
服部晃左・菱田 仁・尾崎行男
123) 急性心筋梗塞再発時に著明な冠動脈瘤の形
成を認めた一例
(刈谷豊田総合病院循環器科) 大杉直弘・
杢野晋司・原田光徳・梶口雅弘・渡辺洋樹・
山中雄二・斉藤隆之・神谷信次・鈴木克昌・
大林利博
【目的】320列冠動脈CT撮影時の放射線被爆量を
計測した.【方法】320列冠動脈CTを施行した24
例を対象とした.Prospective心電同期撮影を行
った.心拍数が65回/分未満の症例は1心拍のハ
ーフ再構成を施行し,心拍数が65回/分以上の症
例では2心拍もしくは3心拍のセグメント再構成
を施行した.照射線量はCT装置内の検出機にお
いて被爆量を算出した.【結果】1心拍の心電図
同期で拡張期に撮像した症例の照射線量は4.12±
0.93mSv(2.56~5.82mSv)で,2心拍もしくは
3心拍における撮像では10.04±2.42mSv(5.80~
13.20mSv)であった.【結論】320列冠動脈CTは
被爆量の低減が可能と考えられた.
121) 大動脈弁狭窄を合併した単冠動脈症候群の
一例
(富山大学第二内科) 沼 哲之・中谷洋介・
阪部優夫・城宝秀司・水牧功一・亀山智樹・
平井忠和・藤木 明・能澤 孝・井上 博
78歳女性.心肺停止状態で発見され,AEDで心
室細動が認められ除細動された.心エコーで大動
脈弁狭窄,非対称性左室肥大とそれに伴う左室流
出路狭窄を認めた.心内圧測定では大動脈弁圧較
差150mmHg,左室流出路圧較差30mmHgであっ
た.心筋生検では肥大型心筋症に特異的な所見を
認めず,重症大動脈弁狭窄に伴う左室肥大と診断
した.冠動脈造影では左冠動脈起始部を認めず,
右冠動脈から前下後枝と回旋枝に側副血行路を認
め,単冠動脈症候群と診断された.大動脈弁置換
術,冠動脈バイパス術を施行された.弁置換術後
に左室流出路狭窄が増悪する可能性があったため
心筋を一部切除した.術後にSAMが新たに出現
したが,流出路圧較差は生じなかった.本症例は
単冠動脈症候群に大動脈弁狭窄を合併した稀な一
例と考えられた.
930 第 132 回東海・第 117 回北陸合同地方会
症例は66歳男性.平成2年に陳旧性心筋梗塞の診
断で冠動脈造影(CAG)にて左前下行枝近位部
閉塞が確認され,高血圧症・高脂血症を含め二次
予防の通院加療中であった.平成20年8月1日胸
痛で受診,緊急CAGにて左回旋枝中間部の閉塞
を責任病変とする急性側壁心筋梗塞と診断.PCI
を開始したがガイドワイヤー通過後の造影で閉塞
部末梢に直径6mm大の冠動脈瘤が認められ緊急
冠動脈バイパス術を実施した.冠動脈瘤は自覚症
状に乏しくCAGで偶発されることが多く,CAG
施行例のうち0.3-4.9%(平均2.6%)に認められ
るとされる.今回我々は急性心筋梗塞発症を契機
に診断された冠動脈瘤症例を経験した.
125) 冠動脈奇形の2例
(三重県立総合医療センター循環器科)
熊谷直人・加藤慎也・櫻井正人・森木宣行・
牧野克俊
症例1は61歳,男性.労作性狭心症にて冠動脈造
影施行.有意狭窄はないものの左冠動脈起始異常
が疑われた.MDCTにて左冠動脈は右冠動脈洞
から起始し大動脈と主肺動脈間の走行が確認され
た.負荷Tl心筋シンチで左冠動脈領域に広範な虚
血を認め,冠動脈起始異常による狭心症の診断に
冠動脈バイパス術を施行し症状は改善.症例2は
50歳,男性.心電図異常にて運動負荷Tl心筋シン
チ施行.心尖部梗塞,下壁虚血の所見あり冠動脈
造影を施行.右冠動脈造影にて円錐枝を介し左前
下降行枝中間部以下が造影.左室造影で心尖部梗
塞の所見があり,前下降枝の完全閉塞を疑った.
しかしMDCTで左前下降枝は右冠動脈起始部よ
り分岐し大動脈と主肺動脈の間を走行し前室間溝
に入る冠動脈奇形と診断.現在バイパス適応があ
るか検討中である.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
126) Effective Rhythm-Control Therapy with
Bepridil for Refractory Atrial Fibrillation: a case
report
(岐阜県立多治見病院循環器内科)
森 賢人・加藤公彦・矢島和裕・藤巻哲夫・
田中 覚・河宮俊樹・日比野剛・横井 清
We experienced a 59-year-male with AF refractory to cardioversion in whom the therapy of
bepridil was effective. This patient had an admission with a diagnosis of congestive heart failure
due to mitral valve disease, and atrial fibrillation
and started pharmacological cardioversion. Cardioversion with propafenone resulted in unsuccessful restoration and an electrical carioversion
was attempted thereafter. Recurrence of AF
was observed and we tried bepridil. Successful
restoration to sinus rhythm was obtained after
administration of bepridil. Reportedly,bepridil
is as good as amiodarone in converting to sinus
rhythm. Our result may support these reports.
127) AF SuppressionTM搭載pacemakerにより2
年以上に亘り発作性心房細動の出現が抑制された
徐脈頻脈症候群の1例
(富山赤十字病院循環器内科) 賀来文治・
山本隆介・山口由明・勝田省嗣・田口富雄・
新田 裕
症例は70歳女性.躁鬱病の既往あり.失神のため
紹介.発作性心房細動(AF)及び9秒の心停止
ありAF SuppressionTM搭載pacemakerの植え込み
施行.躁鬱病あり薬物非投与下で管理.植え込み
後1週間はDDD modeのみ.この間の心房pacing
率78%,AFの割合9%,AF episode(1日換算)
5.2回/日.1週間以降はAF Suppressionを作動.
3ヶ月の時点で心房pacing率97%,AFの割合2
%,AF episode1.6回/日.20ヶ月の時点で心房
pacing率95%,AFの割合<1%,AF episode0.4回
/日.27ヶ月の時点で心房pacing率94%,AFの割
合<1%,AF episode0.03回/日.本症例は精神疾
患があり薬物非投与下での管理となったが,通常
のDDD modeに比して,AF SuppressionTMがAFの
予防に有効で,2年以上の長期間に亘りその効果
が確認された.
128) 心房内の伝導遅延が著明であるために下位
心房中隔ペーシングを必要とした洞不全症候群の
一例
(厚生連高岡病院循環器内科) 藤本 学・
打越 学・藤田崇志・木山 優・桶家一恭・
山本正和
【症例】73歳 男性【主訴】呼吸困難および下腿
浮腫【既往歴】53歳 僧房弁閉鎖不全症に対し,
僧房弁置換術,57歳 脳梗塞【現病歴】2007年6
月頃より呼吸困難および下腿浮腫を認めるように
なる.7月13日に通院中の医院より心房細動およ
び心不全の診断にて紹介となる.2006年末までは
洞調律が確認されていた.心房細動に対して,カ
テーテルアブレーションを行い,洞調律に復帰し
た.3ヵ月後に心房頻拍を認めたために,心房頻
拍に対するアブレーションを追加施行した.その
後,洞性徐脈を認めたために,ペースメーカー移
植術を施行した.心房内は低電位領域およびScar
領域を広範囲に認め,通常の右心耳ペーシングで
は著明な心房内伝導遅延を認めた.下位心房中隔
ペーシングにより,心房内伝導遅延の問題を解決
し得た.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
129) 自律神経障害が洞停止・房室ブロックに関
与したと考えられII型糖尿病の一例
(市立敦賀病院循環器科) 音羽勘一・
三田村康仁・中野 学・池田孝之
症例は72歳,女性.高血圧,高脂血症,糖尿病で
治療中.平成19年に大腿骨骨折のため入院し,疼
痛コントロールのためNSAIDを使用したところ,
洞停止を認めた.体外式ペースメーカーを留置し
たところ,翌日には洞調律に改善した.平成20年
6月19日に腎盂腎炎のため入院,解熱目的にピリ
ン系解熱鎮痛薬を使用したところ,完全房室ブロ
ックを認めたが約2時間で改善した.平成20年7
月4日に,関節痛のためオピオイドを使用したと
ころ,洞停止を来した.体外式ペースメーカー
を挿入したところ,約5日で洞調律に改善した.
その後,永久ペースメーカー埋込術を施行した.
MIBGシンチでは,心筋への有意な集積はなく,
薬理学的自律神経遮断でも内因性心拍数は低値で
あり,糖尿病に伴う自律神経障害が,刺激伝導異
常に関連している可能性が示唆された.
130) 起立時のめまいを伴った発作性房室ブロッ
クの一例
(市立敦賀病院循環器科) 神近哲郎・
三田村康仁・中野 学・音羽勘一・池田孝之
症例は23歳,男性.10代から起立時のめまいを自
覚.平成20年6月から,頻回に起立時のめまいを
自覚し,同年7月に当院を受診.Holter心電図で,
夜間にWencke-bach型II度房室ブロックと最長8.2
秒の心停止を伴う発作性房室ブロックを認め,精
査目的に入院.血液検査,安静時心電図,心臓超
音波検査では異常なかった.EPS上,特記すべき
異常なく,薬理学的自律神経遮断を行ったが,内
因性心拍数は正常,房室伝導も正常であった.房
室ブロックは夜間のみ認め,めまいとの関連はな
かった.Tilt試験では,起立時に収縮期血圧が約
20mmHg低下し,症状も伴っていた.副交感神経
活動が有意であることが,房室ブロック,起立性
低血圧の誘因と考えた.塩酸ミドドリン,テオフ
ィリンの内服で,自覚症状は改善傾向だが,発作
性房室ブロックは持続している.
131) 偽性アルドステロン症によりTorsade de
Pointesから心肺停止となった一例
(金沢大学附属病院循環器内科) 下島正也・
土田真之・高田睦子・坂田憲治・川尻剛照
(同集中治療部) 小見 亘
(同循環器内科) 岡島正樹・井野秀一・
高村雅之
(同集中治療部) 稲葉英夫
(同循環器内科) 山岸正和
【症例】81歳,男性【現病歴】糖尿病,肝機能障
害に対して近医にてグリチルリチンを含む薬物を
処方されていた.自動車を運転中に意識消失し,
交通事故を起こした.同乗者によりby-stander
CPRが開始されたが,5分後の救急隊到着時にも
心肺停止であった.自己心拍再開後の心電図に
てQT延長およびTorsade de Pointesを認め,血清
K値は2.0mEq/lと著明低値であった.K製剤の補
充にて第3病日には血清K値は3.6mEq/lとなり,
QT時間は正常化し,以後は致死性不整脈を認め
なかった.意識障害などの後遺症を残すことなく,
第43病日には独歩にて退院となった.
【結語】偽
性アルドステロン症によりTdPを発症した症例を
経験した.かかる薬剤を投与する際には定期的な
電解質の評価が望まれる.
132) 通常型心房粗動の根治により心機能に改善
を認めたEbstein奇形の一例
(三重大学循環器内科) 千賀通晴・
藤井英太郎・杉浦伸也・辻 明宏・水谷英夫・
太田覚史・玉田浩也・山田典一・宮原眞敏・
中村真潮・伊藤正明
70歳男性.Ebstein奇形,三尖弁閉鎖不全症の既
往あり.学生時代より労作時息切れを認め根治手
術を勧められていたが無治療で放置していた.69
歳時に意識消失発作を来たしたため近医を受診し
た.Adams-stokes症候群が疑われ入院したとこ
ろ,血圧低下・意識消失を伴うnarrow QRS頻拍
を認め,心臓電気生理学的検査(EPS)目的に当
院へ紹介となった.心エコー上,左室壁運動はび
まん性に低下し左室駆出率(LVEF)は40%であ
った.EPSで通常型心房粗動が誘発されたため,
下大静脈-三尖弁輪間解剖学的峡部線状焼灼術を
施行した.術後,心房粗動の再発なく経過し,半
年後の心エコーではLVEF 58%と心機能の著明な
改善を認め,労作時息切れの自覚症状も消失した.
133) プロプラノロール負荷にて心室細動が誘発
されたBrugada症候群の一例
(三重大学医学部附属病院) 杉浦伸也・
藤井英太郎・千賀通晴・藤田 聡・仲田智之・
太田覚史・玉田浩也・山田典一・宮原眞敏・
中村真潮・伊藤正明
症例は71歳男性.生来健康であったが,起床後歯
磨きをしていたところ失神し,前医に救急搬送と
なった.心電図上前胸部誘導にてSaddle-back 型
のST上昇を指摘され,精査加療目的に紹介入院
となった.心臓超音波検査では器質的心疾患を認
めなかった.冠動脈造影は正常で,エルゴノビン
負荷試験も陰性であった.EPSにて,右室心尖部
と流出路から頻回刺激および3連期外収縮を行っ
たがVTやVFは誘発されなかった.薬理学的自律
神経遮断目的に,プロプラノロール0.2mg/kg点
滴静注を行った後に施行した右室心尖部頻回刺激
にてTdp→VFが誘発された.ピルジカイニド負
荷試験ではV1,2誘導で2mm以上のcoved型ST上
昇を認めた.以上の所見よりBrugada症候群と診
断し,ICD移植術を施行した.
134) 心室細動の原因判別が困難であった一例
(厚生連松阪中央総合病院循環器内科)
栗田泰郎・松岡宏治・星田京子・宮村有紀子・
中森史朗・谷川高士・中村智昭・幸治隆一
【症例】61歳男性【主訴】意識消失,心肺停止【現
病歴】早朝に胸部不快を自覚した後,意識消失,
脈拍不触知となった.救急隊到着後AEDにて2
回除細動を施行したが心拍は再開せず.近医搬送
後,心拍再開したため精査目的に当院搬送となっ
た.AEDに記録された心電図波形は多形性心室
頻拍から心室細動に移行していた.【入院後経過】
当院入院時JCS1-2,心電図では前胸部誘導にて
ST低下,陰性T波,QTc480msec,心エコーでは
前壁に壁運動低下を認めた.緊急CAGでは有意
狭窄は認めなかったが,後日施行したAch負荷試
験にて高位側壁枝の完全閉塞を認めた.エピネ
フリン負荷試験では潜在性QT延長症候群(LQT)
が疑われ,ICDの埋め込みを施行した.【考察】
心室細動の原因として冠攣縮性狭心症とQT延長
症候群の両方の関与が示唆された一例を経験し
た.
名古屋国際会議場(2008 年 11 月) 931
135) 慢性心房細動患者の心房リモデリングの
経時的変化 −12誘導心電図Fourier transform
(FFT)解析を用いた検討−
(名古屋大学循環器内科) 山内正樹・
因田恭也・吉田直樹・北村倫也・神谷裕美・
北村和久・嶋野裕之・内川智浩
(名古屋大学環境医学研究所心・血管分野)
辻 幸臣
(名古屋大学保健学科) 平井真理
(名古屋大学循環器内科) 室原豊明
【背景】心房筋のリモデリングは心房細動の発症と維
持に深く関与する.また,心房細動中の心電図にお
けるDominant frequency(DF)は心房の不応期など
に相関することが報告される.
【目的と方法】慢性
心房細動患者の経年的な心房リモデリングをFourier
transform(FFT)解析を用いて検討した.対象は62
人の慢性心房細動患者.3年以上間隔をあけて記録さ
れた12誘導心電図を用いFFT解析(DF,DF Power,
DF organization index)を行った.
【結果】DFは経
年的に増大し(6.65±1.14Hzより6.98±0.94Hz,p<
0.01)
.DF powerは減少する傾向にあった(1986±
1086μVより1769±1010μV,p=0.1)
.DF organization
indexは変化を認めなかった.
【結語】慢性心房細動の
心房リモデリングは経年的に進行することが示唆さ
れ,FFT解析は慢性心房細動患者の心房リモデリング
評価の一助となることが考えられた.
138) 心房細動除細動による血管内皮機能の改善
(藤田保健衛生大学病院循環器内科)
奥田健太郎・渡辺英一・加藤千雄・
祖父江嘉洋・佐野 幹
【背景】心房細動の発生や持続には酸化ストレス,
炎症などの関連が報告されている.これまで心房
細動と血管内皮機能に関する報告は少ない.上肢
虚血反応性充血後の血管径の変化(flow-mediated
dilatation: FMD)は,血管内皮機能を反映する.
【目的】心房細動除細動前後で血管内皮機能の変
化を評価すること.【方法】対象は心房細動直流
除細動に成功した12例を除細動前と除細動10分後
で以下のようにしてFMDを測定した.FMDは変
化率(%)で表示した.【結果】平均280±80 Jで
除細動を行なった.FMDは除細動後に有意な改
善を認めた.除細動前後のFMDやFMDの改善率
と,心拍数,収縮期血圧,拡張期血圧,再発の関
連はなかった.
【結論】直流除細動によって洞調
律に復することにより血管内皮機能は改善するこ
とが示された.
136) アミオダロン肺障害でステロイド漸減中に
無痛性甲状腺炎を合併した一例
(聖隷浜松病院) 小濱康明・佐藤琢真・
平田哲夫・神島一帆・山田雄一郎・池田宏美・
岡田尚之・杉浦 亮・岡 俊明
139) アミオダロンとドロネダロンの薬理作用の
比較
(名古屋大学環境医学研究所心血管分野)
丹羽良子・森島幹雄・加藤サラ・鈴木智之・
辻 幸臣・本荘晴朗・神谷香一郎
64歳男性.陳旧性心筋梗塞による左室駆出率21%
で,非持続性心室頻拍にアミオダロン200mg内服
していた.1059日目に乾性咳嗽と呼吸困難を自覚
し,胸部CTで間質影を認めたため,アミオダロ
ン内服を中止した.ステロイド投与を開始したと
ころ,呼吸状態,間質影は改善し,アミオダロン
肺障害と診断した.しかし,アミオダロン中止35
日目より微熱,倦怠感,頻脈が出現した.採血で
TSH<0.01μIU/ml,fT3 2.81pg/ml,fT4 3.02ng/dl
と甲状腺機能亢進を認め,マイクロゾームテスト,
各種抗体は陰性であり,甲状腺エコーでは血流の
増加を認めなかった.ステロイド漸減中に無痛性
甲状腺炎を合併したと考えられ,経過観察で甲状
腺機能は正常化した.
アミオダロン(AM)類似抗不整脈薬ドロネダロ
ン(DO)は,臨床試験ATHENA2008にて予後改
善作用が報告されたが,その機序は不明な点が多
い.本研究では,hERG
(IKr)とKCNQ1/KCNE1(IKs)
電流を用い,DOとAMの作用を比較した.DOは
hERG電流(IC50 : 7.8μM)とKCNQ1/KCNE1電
流(61.6μM)をともに抑制したのに対し,AM
はhERG電流(20.1μM)を選択的に抑制した.
hERGチャネルからの解離がDOは迅速だがAMで
はきわめて緩徐だった.hERGチャネルポア領域
残基I647にAMのみが結合すると推定された.以
上の結果より,IKr,IKs 電流への作用の違いから,
ドロネダロンはアミオダロンと異なる抗不整脈薬
作用を示すことが示唆された.
137) 持続性心房細動の心房内細動周期に及ぼす
ベプリジルの効果:除細動有効例と無効例の比較
(静岡済生会総合病院不整脈科・循環器内科)
櫛山泰規・小坂利幸・横山恵理子・
長谷部秀幸・黒田裕介・山田 実
(名古屋大学環境医学研究所心血管分野)
神谷香一郎・児玉逸雄
141) 当科における植込み型除細動器リード不全
に関する検討
(金沢大学附属病院循環器内科) 池田景子・
古荘浩司・茶谷 洋・黒川佳祐・高島伸一郎・
大辻 浩・加藤武史・薄井荘一郎・岡島正樹・
金子周一・高村雅之
【背景】
ベプリジル
(Bep)
は持続性心房細動
(PeAF)
を高率に洞調律化するがその機序は不明である.
【方法と結果】対象は電気生理検査を施行した
PeAF32例(無投薬13例,Bep慢性投与19例).肺
静脈(PV),冠静脈洞(CS),右房(RA)におけ
る細動の主要な周波数成分(DF)は無投薬群(6.9
±1.0,6.1±0.8,6.3±0.8Hz)に比しBep群(5.8
±0.8,4.5±0.5,4.7±0.7Hz)で有意(P<0.05)
に低下していた.Bepにて除細動された10例(発
作性AFが残存)と除細動できなかった9例を比
較すると,CS(4.4±0.5 vs 5.2±0.8Hz)とRA(4.6
±0.6 vs 5.5±0.7Hz)のDFは前者で有意に低下し
ていたが,PVのDFには有意差を認めなかった(5.8
±0.8 vs 6.2±0.9Hz).【結論】BepによるPeAFの
洞調律化には心房興奮頻度の減少が必要条件であ
る.心房興奮頻度の十分な低下が得られる例では,
肺静脈の興奮性の変動が細動の停止やその後の再
発に関与する可能性が示唆された.
【背景】植込み型除細動器(ICD)は致死性不整
脈による突然死予防について確立された治療法で
あるが,近年様々なICDリード不全が報告され,
問題となっている.【方法/結果】当科にて長期経
過観察しえたICD植込み患者50例(平均59.8歳)
中,5例でリード不全が認められた.植込みから
リード処置までの期間は平均51.8(25-91)ヵ月で,
基礎心疾患は虚血性心疾患1例,非虚血性心疾患
4例であった.不全の種類は断線2例,被膜損傷
1例,原因不明の閾値上昇が2例であり,うち2
例で誤作動を生じた.3例で新規リード挿入,1
例でICDの停止を行った.リードの種類に重複は
認められなかった.【総括】リード不全は決して
まれな合併症ではなく,術後は長期にわたり慎重
な経過観察が必要であると考えられた.
932 第 132 回東海・第 117 回北陸合同地方会
142) VVIペースメーカー留置後に生じた鎖骨下
静脈血栓症の1例
(藤枝市立総合病院循環器科) 高橋宗一郎・
中村 淳・阿部 信・内藤昭貴・渡辺明規・
高山真一
症例は88歳,女性.高血圧,慢性腎不全,心不全で当
科通院中で,入退院を繰り返していた.2008年7月25
日にうっ血性心不全と腎不全の増悪のため入院し,点
滴加療を開始した.7月27日に一過性心房細動を伴う
洞不全症候群の所見を認め,28日に左鎖骨下へVVIペ
ースメーカー植え込み術を施行した.術後,創部の炎
症所見はなく,経過は順調であったが,術後第10病日
に創周囲,左上肢の浮腫が見られ,血液検査でのDダ
イマーの上昇と血管エコーで左鎖骨下静脈から腕頭静
脈にかけて血栓像とその末梢側にもやもやエコーを認
めた.ペースメーカーリードに起因した血栓症と考え
られ,ヘパリンの持続点滴とワーファリン内服を開始
した.その後,肺塞栓の所見なく経過し,浮腫は徐々
に軽減し,術後第18病日にヘパリンは中止した.術後
第23病日に行った血管エコーでは左鎖骨下静脈血栓は
器質化しており,浮腫も消失していた.今回,ペース
メーカー術後,亜急性期にリードに起因した左鎖骨下
静脈血栓を生じ,抗凝固療法により大きな合併症なく
血栓が安定化した1例を経験したので,若干の考察を
交えて報告する.
143) CRTD植込み後にICDリードによるLate
perfolationをきたした一例
(豊橋ハートセンター) 佐藤公洋・
山城荒平・小澤友哉・鈴木孝彦
症例は77歳,男性.拡張型心筋症および発作性心
房細動で外来加療中であったが,発作性心房細動
のコントロール不良に伴い,心不全症状の増悪も
認めた.このため発作性心房細動に対し,2007年
10月にカテーテルアブレーション,また11月に
CRT-D移植術施行した.術後経過良好で退院と
なったが,2008年3月,心エコー上多量の心嚢液
貯留を認めた.心膜穿刺すると心嚢液は淡血性で
炎症性変化(リンパ球++)を認めた.心エコー上,
ICDリード穿孔を認め,ICDリードのスクリュー
先端の心膜擦過による慢性炎症で心嚢液が貯留し
たと考えられた.このためスクリューを格納.そ
の後心嚢水は徐々に減少し,消失した.ICDリー
ドによる心膜の炎症が原因のlate perforationは稀
であるため,報告する.
144) 心室再同期療法後左室内巨大血栓を認めた
拡張型心筋症の1例
(岐阜県総合医療センター循環器科)
阿部慎太朗・割田俊一郎・松岡玲子・
広瀬智子・加藤 崇・小島 帯・廣瀬武司・
岩間 眞・田中新一郎・小野浩司・高橋治樹・
瀬川知則・野田俊之・渡辺佐知郎
58歳男性,平成15年DCM,CAVBの診断でペー
スメーカー移植術施行.心不全の増悪のため,
平成18年12月入院.心電図ではQRS=220msec,
NYHAは3度,心エコー上左室内心尖部に壁在血
栓を認めた.Forrester4型,冠動脈に有意狭窄は
認めずEF=8.2%であった.このためCRTDへの
up-gradeを施行.術後心エコーで55×28mmの左
室内巨大血栓認めたもののヘパリン,ワーファリ
ンにて改善しCRTD留置後左室内巨大血栓を認め
た拡張型心筋症の1例を経験したので報告した.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
145) 心室再同期療法術後に右室リードの穿孔を
来たした拡張型心筋症の一例
(刈谷豊田総合病院循環器科) 原田光徳・
大杉直弘・渡辺洋樹・梶口雅弘・杢野晋司・
神谷信次・斉藤隆之・山中雄二・大林利博
症例は82歳女性.主訴は呼吸困難.平成15年より
拡張型心筋症による心不全で入退院を繰り返して
いた.平成20年5月7日心不全の再増悪のため入
院となった.治療抵抗性心不全と判断し心室再同
期療法(CRTP)の適応と判断した.Generator
はMedtronic InSync III,右房,右室リードは
Capsure Fix Novus,左室リードはAttain OTWを
使用した.術後2日目より左側胸部痛を認めた.
血行動態の変動は認めなかったが胸部レントゲン
写真上右室リードの偏位が明らかであった.胸部
CTにて右室リードの穿孔と診断し,開胸下に右
室リードを抜去,右室心外膜に心筋電極を追加し
両室ペーシングを維持した.以後経過は順調で退
院となった.CRTP術後に右室リードの穿孔を来
たした症例を経験した.CRTPを必要とする症例
は高度心機能低下を伴っており迅速な対応が必要
であると考えられた.
146) 心室中隔穿孔を来たした巨大疣贅を有する
三尖弁位感染性心内膜炎の手術例
(大垣徳洲会病院心臓血管外科) 古井雅人
(大垣徳洲会病院心臓血管外科・名古屋徳洲会総合病院)
大橋壮樹
(大垣徳洲会病院心臓血管外科)
田澤希久子・児島昭徳
症例は糖尿病を合併する71歳の男性で,主訴は発
熱,失神で緊急入院された.来院時心臓超音波検
査では異常は認められず,抗生剤にて経過観察し
ていたが,4日目に心雑音を聴取し再度心臓超音
波検査を行ったところ右室内に巨大疣贅と心室中
隔穿孔を認め,緊急手術を行った.体外循環心停
止下に右室切開したところ,右室内に巨大な疣贅
と三尖弁から膜性中隔部において中小の疣贅を
認めた.また,膜性部に1cm径の欠損を認めた.
欠損部をウマ心膜パッチにて閉鎖した後,三尖弁
を切除し経右室的に人工弁置換術(モザイク生体
弁)を行った.術後翌日抜管し,その後の経過は
良好であるが,抗生剤を投与して慎重に経過を見
ている.右心系の巨大疣贅,心室中隔穿孔をきた
した感染性心内膜炎を経験したので報告する.
147) 虫刺され後に発症した感染性心内膜炎の2例
(木沢記念病院) 村瀬 傑・竹谷昌直・
田中昭光・高橋茂清・荒井正純
一過性菌血症は歯みがきの40%,抜歯の30-75%
でみられ,歯科治療が感染性心内膜炎発症の一大
誘因であると想定される.今回我々は,虫刺され
後に遷延する発熱から感染性心内膜炎と診断した
2例を経験したので報告する.61歳男性 草刈り
中に左足を虫に刺され,その後より疼痛,発熱持
続.約3週間,外来にて抗生剤(LVFX,MINO)
の投与を行い疼痛は消失したが解熱せず,経食道
エコーにて僧帽弁前尖に疣贅を認めた.血液培養
ではStreptococcus sp.を検出した.66歳男性 虫
捕りに行き上肢を何かに刺されその直後より発
熱,上肢の腫脹出現.約2週間抗生剤(SBTPC)
の投与を行ったが改善せず,精査にて僧帽弁前尖
に疣贅を認めた.血液培養を4回施行したが菌は
検出することができなかった.両症例ともに僧帽
弁穿孔のため内科的治療が落ち着いた後,弁置換
術となった.また齲蝕はなかったが,基礎疾患に
僧帽弁閉鎖不全症があり未治療であった.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
148) 日本住血吸虫による肝硬変を伴った感染性
心内膜炎の1例
(岡崎市民病院循環器内科) 柳澤 哲・
川瀬治哉・森下佳洋・藤田雅也・田中哲人・
三木 研・鈴木頼快・安田信之・平井稔久・
鈴木徳幸・田中寿和
46歳男性.7年前より日本に定住しているフィリ
ピン人.2008年5月初旬より37~38℃台の熱を自
覚するようになった.同時期より下肢浮腫・咳を
認め,徐々に労作時呼吸苦が増悪したため,5月
27日近医へ受診し当院へ紹介となった.心臓超音
波検査より大動脈弁に疣贅を認め,感染性心内膜
炎の疑いにて入院となった.重症大動脈弁逆流症,
心不全を呈していたが,日本住血吸虫によると思
われる重度の肝硬変を合併しており,手術リスク
は非常に高いと考えられた.入院後抗生剤にて治
療を開始したが,感染菌は特定困難であり,感染
コントロールは不良であった.経過中に脳梗塞,
脾梗塞を合併し,手術を勧めたが希望されなかっ
た.日本住血吸虫による肝硬変は現在日本で遭遇
することは稀であり,若干考察を含めて報告する.
151) CABG遠隔期,PCI後の感染性仮性肺動脈瘤
(岡崎市民病院) 堀内和隆・寺田貴史・
湯浅 毅・保浦賢三
(同循環器科) 平井稔久・田中寿和
症例は46歳男性.既往に慢性糸球体腎炎(維持
透析中)
,陳旧性心筋梗塞あり.2003年他院にて
CABG3枝(LITA-LAD,SVG-4PD,SVG-LCx)
施行.2008年2月 SVG-LCx閉塞に伴うAMIを発
症し,SVGにPCI(stent留置)施行.術後心不全,
心原性ショックとなり,挿管,IABP,CHDFに
よる集中管理を要した.経過中にMRSA敗血症の
発症あり.入院1ヶ月後より,前胸部左第2肋間
に拍動性腫瘤が出現し,感染性仮性肺動脈瘤と診
断,起因菌はMRSAであった.F-F bypass下に感
染性仮性肺動脈瘤切除,洗浄ドレナージを施行し
た.抗生剤+創洗浄にて感染コントロールは良好
で,切除後33日目に独歩退院となった.
149) 市中MRSAによる活動期感染性心内膜炎に
対して僧帽弁形成術を行った1例
(聖隷浜松病院心臓血管外科) 渡邊一正・
小出昌秋・國井佳文・梅原伸大・渕上 泰
(同循環器科) 岡 俊明・山田雄一郎
152) 骨髄異形成症候群(MDS)に合併した心臓
腫瘍の一例
(江南厚生病院循環器内科) 水谷吉晶・
奥村 諭・許 聖服・宮垣義美・高田康信・
真野謙治・斎藤二三夫
症例は29歳女性.既往歴特になし.4日前から発
熱あり他院にて血期培養からMRSAを検出,当院
に紹介された.心エコーにて僧帽弁に疣贅とMR
を認めMRSA肺炎と診断,VCM,ABKにて治療
を開始した.その後も発熱持続し発症から10日
目の心エコーにて疣贅の増大とMRの増悪を認め
た.11日目に準緊急的に僧帽弁形成術を行った.
後交連側の後尖および前尖の破壊を伴う疣贅を認
め同部を切除郭清した後に形成術を行った.術後
MRは消失した.術中よりLinezolidoを投与し感
染の再発はみられなかった.
症例は74歳男性.主訴は呼吸苦.貧血と血小板減
少を認め,骨髄穿刺にてMDSと診断.その経過
中にECG上AV blockの進行を認め,精査依頼とな
った.UCG上は左室壁運動良好であったが,心
房中隔及び左房から左室後壁に心筋と同エコー
輝度の腫瘤影を認めた.CAGは正常であったが,
AV blockの進行もあり,体内式ペースメーカーを
留置.その後CT,MRI,Gaシンチも施行し,同
部位の心筋内に腫瘍の浸潤が確認できた.生検は
合併症や予後を考慮し施行せず,症状改善後に経
過観察となったが,1か月後にCPAとなり,死亡
された.剖検にて,心臓・肺・横隔膜・胃・副腎
に大型の異型リンパ球の浸潤を認め,びまん性大
細胞型B細胞性リンパ腫と診断された.今回我々
は,心臓原発悪性リンパ腫を経験したので報告す
る.
150) ペースメーカーリード感染,三尖弁感染性
心内膜炎に対し体外循環下にリード抜去,三尖弁
形成術を行った一例
(三重大学胸部心臓血管外科) 山本希誉仁・
小野田幸治・平野弘嗣・鈴木仁之・新保秀人
153) 急性大動脈解離で発見された巨大なparaganglioma
(金沢医科大学心血管外科学) 四方裕夫
(同泌尿器生殖器治療学) 田中達朗・
菅 幸大・森田展代
(同内分泌代謝制御学) 中川 淳
(同心血管外科学) 野口康久・小畑貴司・
飛田研二
(同内分泌代謝制御学) 古家大祐
(同泌尿器生殖器治療学)鈴木孝治
(同心血管外科学) 秋田利明
症例は83歳,女性.7年前に洞不全症候群にて,
ペースメーカー(DDD)が左鎖骨下静脈から植
え込まれている.今回,ジェネレーターの露出が
起こり,ポケットを2度作り直した.しかし,発
熱が出現し,ペースメーカーを摘出しようとした
が,リードが抜去できずに途中で切断した.しか
し,その後も発熱が続き,血液培養と創部から
MRSAが検出されたので手術を行った.手術は体
外循環下に強固に癒着したペースメーカーリード
を右心耳と右室壁から剥離摘出した.さらに,三
尖弁後尖と中隔尖にvegetationが付着し,後尖は
穿孔していたので,自己心膜を用いて三尖弁形成
術も行った.後日,心筋電極リードによるペース
メーカーを腹部に移植した.術後は発熱なく,経
過良好であった.
症例は51歳,男性.突然の背部痛,胸部絞扼感,前
胸部痛,呼吸困難が出現.同日救急部を受診,大動
脈弓部から下行大動脈,横隔膜貫通部までの急性動
脈解離と左腎を圧排する後腹膜腫瘤を認めた.急性
大動脈解離に対する保存的加療を開始した.降圧不
良で,I-131 MIBGシンチで腫瘤に一致した異常集積
を認めた.術前(Ad/NrAd/Dopa)血中濃度異常高値
で,MEN2型を除外した.被膜化腫瘍と副腎を切除.
被膜の一部に浸潤,周囲脂肪組織に小範囲で進展し,
Chromogranin A(+)
,MIB-1 index(2%)
,p -53過
剰発現(–)であった.術後12日目にはカテコラミン
が著明に低下.現在血圧は制御できている.偽腔が開
存し,腫瘍の再発を含めた動脈解離の注意深いfollow
upが必要と考える.
名古屋国際会議場(2008 年 11 月) 933
154) 心エコー検査にて偶然発見されたpapillary
fibroelastomaの一例
(浜松医科大学臨床研修センター)
土肥浩太郎
(同第三内科) 佐藤 洋・斉藤岳児・
早乙女雅夫・漆田 毅・加藤秀樹
(同第一外科) 山下克司
(同第三内科) 林 秀晴
症例は60歳男性.高血圧にて近医加療中であった.
平成20年6月に心窩部不快感があり,心エコー検
査にて大動脈弁に付着物があり,精査目的で受診
した.経食道心エコーにて,左冠尖に付着し左室
側に浮遊する腫瘤を認めた.径は約10×9mmで
軽度の大動脈弁逆流を伴った.発熱,炎症反応は
なく,心不全,末梢塞栓の所見を認めなかった.
器質化した古い疣贅,又は心臓原発腫瘍を考え,
腫瘍摘出術及び弁置換術を施行した.腫瘤は大動
脈弁から乳頭状に突出する腫瘍で硝子化を伴う線
維性間質と弾性線維の集積,血管内皮の増生を認
め,papillary fibroelastomaと診断された.心臓
のpapillary fibroelastomaはmixomaに次いで頻度
が高い良性腫瘍であり,弁に付着することが多い.
疣贅との鑑別が困難で塞栓症の危険もあり,摘出
術が必要なため症例報告する.
157) 菌血症から急性心膜炎を発症し収縮性心膜
炎様病態を来した一例
(小牧市民病院循環器科) 上村佳大・
加納直明・澤村昭典・向井健太郎・島津修三・
戸田夕紀子・中野雄介・松平京子・今井 元・
小川恭弘・川口克廣・近藤泰三
症例は27歳男性.2008年3月,発熱,胸痛,呼吸
困難を主訴に来院.急性心膜炎に伴う心不全と診
断し入院.入院時の血液培養で黄色ブドウ球菌が
検出された.心嚢穿刺を施行したが,経過中著し
い心室拡張障害を来し収縮性心膜炎を合併したと
判断,外科的治療も考慮された.しかし,約1ヶ
月後には拡張障害は消失した.心嚢内腔に滲出液
が出現し,フィブリン様物質へ置換され自然消失
するという,一過性の滲出性収縮性心膜炎の経過
をたどったと考えられた.【結語】菌血症から急
性心膜炎を発症し,一過性滲出性収縮性心膜炎と
診断した1例を経験した.本邦での同様の報告例
は少なく若干の文献的考察を加え報告する.
160) 心タンポナーデにて発症したSLEの1例
(浜松労災病院循環器科) 神田 宏・
香川芳彦・河本 章・小野澤陽子・森田泰弘・
高橋正明
症例は37歳,男性.労作時息切れにて受診.既往
歴,家族歴,生活歴に特記すべきものなし.心エ
コー図にて大量の心膜液貯留を認め急性心膜炎と
して入院.翌日には心タンポナーデ徴候が出現し
ドレナージ.心膜液は血性で多量の白血球を認め
大半が好中球.急性化膿性心膜炎としてempiric
にIPM/CS開始.その後,急速に白血球減少,胸
水増量,全身状態悪化.5日後に入院時外注検査
結果判明しANA1280倍以上,抗dsDNA400U以上.
SLEと診断しステロイドパルスに続き高用量プレ
ドニゾロン経口投与.著明な改善が得られ約2週
間で胸水・心膜液ほぼ消失.ステロイド漸減し維
持量にて退院.文献によれば,心タンポナーデを
唯一の初発症状とするSLEは非常に稀とされてい
る.
155) 洞不全症候群発症を契機に発見された縦隔
悪性リンパ腫の一例
(岡崎市民病院循環器科) 川瀬治哉・
森下佳洋・柳澤 哲・田中哲人・藤田雅也・
三木 研・鈴木頼快・安田信之・平井稔久・
鈴木徳幸・田中寿和
158) 遅発性に大量の心嚢水貯留を来たした外傷
性心膜裂傷の一例
(名古屋医療センター循環器科) 清水康博・
安藤博彦・早川智子・鈴木昭博・万前智子・
山田高彰・鈴木智理・山本春光・稲垣将文・
富田保志・北野知基・寺西克仁
71歳女性.既往歴に高血圧症あり.2008年5月16
日胸痛を主訴に来院.来院時収縮期血圧60mmHg
台,脈拍30-40回/分,心電図ではP波を認めず房
室接合部調律であった.洞不全症候群による心原
性ショックと診断し緊急で体外式ペースメーカー
を挿入,その後恒久的ペースメーカー植込み術を
施行.胸部CTで縦隔腫瘍の右房浸潤および右鎖
骨上リンパ節腫大を指摘され,今回の洞不全症候
群発症の原因と考えられた.右鎖骨上リンパ節生
検にてdiffuse large B cell lymphomaと診断され,
6月3日より化学療法を開始.8月現在入院化学
療法中である.悪性リンパ腫による洞不全症候群
は非常に稀であり,今回若干の文献的考察を加え
報告する.
53歳男性.ハンドル外傷のため当院救急搬送とな
る.受診時,少量の心嚢水と肋骨骨折による左血
胸を認めたため,治療目的で入院となる.入院後,
心嚢水および血胸の悪化を認めず,第8病日に退
院となる.しかし,第10病日より労作時の胸部不
快感出現.第13病日に外来受診し,心嚢水貯留の
増悪を認めたため再入院となる.心嚢穿刺にて血
性心嚢水を認め,切迫心破裂を疑い準緊急にて開
胸術を行った.術中所見では明らかな心実質の損
傷はなく,肺動脈左側の心外膜に少量出血を伴う
裂傷を認め,同部位に対し止血術を施行.今回心
外膜損傷による出血が心嚢水貯留の原因と考えら
れた.受傷早期には心外膜裂傷よりの持続性の出
血はほとんど認めなかったものが,遅発性に大量
の心嚢水貯留を来たした症例を経験したので報告
する.
156) 心房中隔に発生したgiant epithelial cystの
一例
(あいち小児保健医療総合センター)
藤井玄洋
(名古屋大学心臓外科) 大島英揮・
碓氷章彦・荒木善盛・上田裕一
159) 原発性乳糜心膜症の一例
(愛知医科大学病院循環器内科) 浅井健次・
高島浩明・水野智文・黒田泰生・脇田嘉登・
高阪 崇・久原康史・栗田章由・前田一之・
渡部篤史・脇田康志・伊藤隆之
162) 腹部大動脈瘤近位部の大動脈周囲に異所性
褐色細胞腫を認めた1例
(聖隷浜松病院) 佐藤琢真・小濱康明・
平田哲夫・神島一帆・山田雄一郎・池田宏美・
岡田尚之・杉浦 亮・岡 俊明
症例は56歳女性.健康診断で胸部X線上,著明な
心拡大(CTR 72%)を指摘され近医受診.心臓
超音波検査で大量の心嚢液の貯留を認めたため精
査加療目的で当院入院となった.心嚢ドレナージ
で採取された心嚢液は外観が乳白色・混濁で,そ
の性状はトリグリセライドが1442mg/dlと血清中
に比し有意に高値であったことより乳糜液と判
明.ドレナージ初日は900ml以上の排液を認めた
が,その後は日毎に排液の減量を認め,ドレナー
ジ7日目にチューブを抜去した.リンパ管造影で
はリンパ管の走行に明らかな異常は見られず,原
発性の乳糜心膜症と判断した.また心嚢内への造
影剤の流入は認めなかったが,リンパ管造影4時
間後に施行した胸部CT像ではわずかながら造影
剤の流入を認めた.退院後は軽度の心嚢液の再貯
留が認められるが全く無症状であり,現在経過観
察中である.今回,原発性乳糜心膜症の一例を経
験したので若干の文献的考察を交えて報告する.
症例は79歳男性.陳旧性心筋梗塞の診断で外来加
療中であった.2008年5月腹部腫瘤の訴えがあ
り,造影CTを施行したところ,腹部大動脈腎動
脈下に径52mmの動脈瘤を認めた.また大動脈前
面,左腎動脈分岐部レベルに早期より濃染される
hypervascularな充実性の腫瘤を認めた.各種画
像検査から診断がつかず,開腹生検を行った.腫
瘍を一部摘出し病理標本としたが,腫瘍と大動脈
の癒着が高度であるとともに大動脈後壁が菲薄化
しており,腫瘍摘出・人工血管置換術は断念した.
後日病理組織からpalagangliomaと診断された.
画像検査上は明らかな転移所見はなく,予後は不
良でないと考えられたため,腹部大動脈瘤に対し
て他施設でステントグラフト挿入となった.腹部
大動脈瘤の精査中に偶発的に発見された異所性褐
色細胞腫の1例を経験した.若干の文献的考察を
加えて報告とする.
65歳,女性.消化器症状で受診.原因不明で全身
CT施行し,心房中隔の巨大腫瘤を診断,切除可
能と判断し開心術を施行した.腫瘤は表面平滑,
弾性軟.周囲を剥離すると三尖弁輪から大動脈基
部レベルに達していた.切開すると泥状の内容物
で満ちており,房室中隔に近接する壁は多房状で
あり,心房中隔を大きく切除し,心房中隔形成を
施行した.膜性心室中隔にはφ1cmの孔を認め,
三尖弁中隔尖弁輪への膜性VSDの閉鎖瘢痕と思
われる膨隆へ達しており,VSD閉鎖に準じパッ
チ閉鎖した.病理所見では心筋内に粘液分泌細胞
を伴う多列扁平上皮に覆われた嚢胞を認め,内容
物のパパニコロウ染色で多数の扁平上皮細胞を認
めた.組織学的にepithelial cystと診断されたが,
起源を決定する根拠は見出せず,極めて稀な一例
であった.
934 第 132 回東海・第 117 回北陸合同地方会
161) 肺動脈幹原発悪性腫瘍による肺動脈狭窄症
に対してステント治療を行った一例
(公立陶生病院循環器科) 横井健一郎・
浅野 博・青山盛彦・植村祐介・神原貴博・
長内宏之・中島義仁・味岡正純・酒井和好
Palliative treatment using stents for severe right
ventricular outflow tract obstruction caused by
intimal sarcoma. A 77-year-old woman complained
dyspnea. CT scan showed tumors occluding the
pulmonary artery and RVOT. Transvenous biopsy
resulted in intimal sarcoma. Complete resection
was impossible for lung metastasis. We chose an
endovascular treatment. Two self-expandable
stents are deployed enough to dilate the obstruction in parallel with each other. Her symptoms
got improved and still at 3 months follow-up.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
163) 当科における遠位弓部大動脈へのステント
グラフト内挿術の成績
(金沢医科大学心血管外科学) 小畑貴司・
野口康久・飛田研二・四方裕夫・秋田利明
遠位弓部大動脈へのステントグラフト(SG)内
挿術を1996年12月から2008年8月までに18例経
験した.性別は男14女4例で,年齢は平均70.2才
であった.疾患の内訳は真性瘤5例,仮性瘤12
例,急性解離(Stanford B)1例だった.SG内
挿術は,腕頭動脈と左総頸動脈分枝部を開窓し左
鎖骨下動脈を閉塞させた6例,左鎖骨下動脈分枝
部まで開窓した6例,遠位弓部に内挿した6例で
あった.治療成績は14例で初期成功,Endoleak
2例,脳梗塞1例,大動脈解離1例を発症した.
Endoleak例の内1例は,追加内挿してEndoleak
は消失.いずれも,動脈瘤拡大や破裂は回避し得
た.SG内挿術は,種々工夫を加える事で適応を
拡大する事が可能である.
164) 全弓部置換術後に施行したBentall手術の
1例
(市立四日市病院) 松村泰基・岡本 浩・
爲西顕則・外山正志
166) 再解離により胸部下行大動脈以下の閉塞を
来たした血栓閉塞型急性大動脈解離の1例
(岐阜大学高度先進外科学分野)
石田成吏洋・島袋勝也・梅田幸生・
小久保健太郎・村上栄司・竹村博文
症例は56歳男性.早期血栓閉塞型急性大動脈解離
(Stanford A,DeBakey IIIbR)で当科紹介となっ
た.造影CTで偽腔は閉塞し,ULPや重要臓器血
流障害も認めず保存的治療を開始した.発症2日
目に胸痛出現し,造影CTで上行弓部大動脈の解
離腔の増大と,下行大動脈より末梢側で解離腔の
圧排による真腔の閉塞を認め,緊急手術を施行し
た.右腋窩,右大腿動脈送血,上・下大静脈脱血
で体外循環を開始し,低体温循環停止とし,逆行
性・選択的順行性脳灌流併用で上行弓部人工血管
置換術を施行した.術後31日目に独歩退院となっ
た.今回我々は再解離による偽腔圧排により真腔
の閉塞を来たした早期血栓閉塞型急性大動脈解離
に対し,早急な対応で救命し得た症例を経験した
ので報告する.
169) 当院で経験した腹腔内動脈瘤3例に対する
手術例の経験
(名古屋徳洲会総合病院) 徳丸剛久・
大橋壮樹・景山聡一郎・児島昭徳
症例は57歳男性.健康診断の腹部エコーでの異常
を指摘された.同年4月に精査目的で施行した腹
部CTで上腸間膜動脈瘤を指摘され当院受診とな
った.既往歴に高血圧と高脂血症,嗜好歴にタバ
コ40本/日×30年があった.来院時診察所見では
腹部に異常所見を認めなかった.手術は瘤切除,
上腸間膜動脈再建を行った.脾動脈瘤は瘤切除に
加え脾摘出を行った.肝動脈瘤は瘤切除血行再建
を行った.3例とも術後合併症なく経過良好であ
った.当院で経験した腹腔内動脈瘤3例に対する
手術例の経験を発表する.
167) 大動脈弁置換術後遠隔期急性大動脈解離破
裂に対するヘリコプター搬送による緊急手術救命例
(名古屋第二赤十字病院心臓血管外科)
高味良行・田嶋一喜・酒井喜正・寺澤幸枝・
岡田典隆・藤井 恵・日尾野誠・宗像寿祥
170) 腹腔動脈解離の一例
(城北病院) 安松比呂志・井沢 朗・
柳沢深志・坂本茂夫・大野健次・三上和久・
斎藤典才・横山 隆
(金沢循環器病院) 上山克史
【症例】69歳女性【既往歴】なし【現病歴】60歳
時に弓部大動脈瘤・急性大動脈解離(II型)に対
し全弓部置換術を施行.退院後,徐々に大動脈基
部の拡大を認め,大動脈弁逆流が出現・増悪.
【入
院後経過】上述病変に対しBentall手術施行.前
回手術時の人工血管第一分枝は大動脈基部に近
く,また癒着も強固であったため人工血管での安
全な遮断及び送血は困難と判断し,両腋窩動脈送
血,右房脱血にて体外循環を確立し,大動脈遮断
は第一分枝近傍の中枢側で施行.23mm CEP弁及
び,Hemashield 26mm graftを用いて大動脈基部
置換術を施行.体外循環263分,大動脈遮断198分
にて手術終了.【考察】全弓部置換術後にBentall
手術を施行するにあたり手術手技に工夫を加え,
良好な結果を得た.多少の文献的考察を加えて報
告する.
症例は78歳女性.ARにて2003年11月AVR(CEP
弁21mm)
.約5年後2008年1月全身浮腫・貧血・
呼吸困難が増悪し他院へ入院.CT検査にて上行
大動脈解離・腎不全を認めたため,当院への転院
を打診されヘリコプターにて転院.上行大動脈解
離が破裂,仮性瘤を形成し,右房を圧排し上大静
脈症候群・心不全を来たしているため,人工心肺
下直腸温25度まで冷却し,選択的脳灌流による脳
保護のもと,緊急手術.無冠尖に相当する右側後
方の大動脈内膜にエントリーを認め,そこに相対
する外膜に裂傷を認め,そこから血栓を含む仮性
動脈瘤に連続していた.癒着剥離に難渋するも上
行大動脈を切除し,28mm人工血管にて置換.術
後腎不全・気管切開・経管栄養など管理に難渋し
ましたが5月10日に独歩退院・現在通院中.
症例は40代男性,主訴は腹痛.30代より高血圧を
指摘されていたが未治療であり,1ヵ月前より降
圧剤の内服を開始していた.2007年10月仕事中に
何の誘因もなく嘔吐,腹痛が出現し当院に救急搬
送となる.来院時は血圧178/108mmHg,腹部所
見は右下腹部に圧痛があり,筋性防御は認めず,
血管雑音も聴取しなかった.腹部CTにて膵尾部
から下大動脈にかけて低吸収域を認めたため,造
影CTを行うと後腹膜への出血を疑う所見と腹腔
動脈の拡張を認めたため腹腔動脈解離と診断し
た.心臓血管外科へ転院とし,手術も考慮された
が降圧治療にて経過観察された.10日後のCTに
て解離は増大し動脈瘤となったが,症状がないた
めにその後も降圧剤のみで経過観察を行ってい
る.腹腔動脈解離は非常に稀であり外科的手術に
なる例も多いが,本症例は約1年間経過観察を行
えているためこれを報告する.
165) 急性心不全にて発症した未破裂バルサルバ
洞動脈瘤の1例
(中京病院循環器科) 墨 卓哉・加田賢治・
上久保陽介・加藤寛之・奥村 聡・三井統子・
村上 央・坪井直哉
168) 両側性解離性腎動脈瘤に対して経皮的腎動
脈形成術を施行した1例
(聖隷浜松病院) 平田哲夫・小濱康明・
佐藤琢真・神島一帆・山田雄一郎・池田宏美・
岡田尚之・杉浦 亮・岡 俊明
171) 当院における下肢急性動脈閉塞に対する血
管内治療の試み
(大垣市民病院循環器科) 由良義充・
曽根孝仁・坪井英之・武川博昭・森島逸郎・
上杉道伯・佐々木洋美・森本竜太・丹羽 亨・
泉 雄介・山本寿彦・小笠原真雄
症例は77歳男性,動悸を主訴に来院した.心電図
は頻脈性心房細動で胸部写真では肺うっ血,胸水
を認めた.経胸壁心エコーでは大動脈基部より左
房内に突出する径42×35mmの腫瘤を認めた.左
室収縮能は良好,PHT法による僧帽弁弁口面積は
1.1cm2,僧帽弁の開閉は良好であった.造影CT
でバルサルバ洞から左房内に突出する占拠性病変
を認め,バルサルバ洞動脈瘤が疑われた.経食道
心エコーでは腫瘤が左冠尖より左房内に突出して
おり,大動脈からの遅い血流を伴っていることが
判明し,バルサルバ洞動脈瘤と診断した.今回の
症例では左房内へ突出したバルサルバ洞動脈瘤が
機能的僧帽弁狭窄を起こし,発作性心房細動,心
不全を起こしたと考えられた.
生来健康の45歳男性.2008年5月,頭痛を主訴に
近医を受診したところ高血圧と軽度腎障害を初め
て指摘された.高レニン高アルドステロン血症
であり二次性高血圧の精査目的に当科紹介受診.
CTで両側性解離性腎動脈瘤があり,右腎動脈狭
窄と右腎梗塞を認めた.腎血管性高血圧と診断し,
降圧と腎機能改善目的に右腎動脈に対して経皮的
腎動脈形成術を施行した.治療後に降圧は得られ
たが腎梗塞もあり腎機能は改善しなかった.病態
として動脈硬化,線維筋性異型性,血管炎等は否
定的であった.Segmental arterial mediolysis(分
節性中膜融解)疑われたが確定診断に至らず特発
性と判断した.病態把握と治療に際し血管内エコ
ーが有用であった.両側性解離性腎動脈瘤に対し
て経皮的腎動脈形成術を施行した1例を経験した
ので報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
【背景】下肢急性動脈閉塞に対する治療としては,
血栓溶解,外科的血栓除去が基本とされることが
多いが,血栓溶解療法は出血性合併症,また外科
的処置には侵襲性などの合併症が残る.下肢急性
動脈閉塞に対し,血栓吸引,ステント留置を基
本としたEVTの有用性につき検討した.【方法】
EVTを施行した急性下肢動脈閉塞20例(22肢)に
て検討した.
【結果】手技成功は18肢,手技不成
功例が4肢であり,1ヶ月時の救肢率は86%だっ
た.また救肢不可能だった症例の内2例は発症後
長時間経過しており,早期に対処していれば救肢
できた可能性が高かった.合併症は出血3例,一
過性の腎機能障害3例だった.【結語】急性動脈
閉塞発症早期であれば,EVTによる治療効果が十
分に期待できる.
名古屋国際会議場(2008 年 11 月) 935
172) 上腸管膜動脈閉塞に対してPTAを行った1例
(公立松任石川中央病院循環器内科)
樫本雅彦・池田達則・織田裕之・久保田幸次
175) Microalbuminuria Has Significant Negative
Relation To HbA1c Weakly
(松阪市民病院循環器内科) 竹内秀和
症例は72歳男性.平成20年6月初旬より下痢を認
めるようになった.6月22日より発熱,腹痛を認
め当院受診.急性腸炎と診断され消化器外科に入
院となった.入院後,腹部CT,上下部消化管内
視鏡精査を行うも腹痛の原因は不明であり,補液,
抗生剤投与を行ったが症状は持続していた.7月
9日腹痛の増悪,嘔吐,下血出現し腹部CTを施行.
上腸管膜動脈閉塞が疑われ当科紹介となった.大
動脈造影では上腸管膜動脈の完全閉塞を認めた.
ワイヤーが通過し再灌流したが,動脈硬化性の高
度狭窄病変を認め,ステントを留置した.術後経
過は良好であり症状も改善した.急性上腸間膜動
脈閉塞症は致死率の高い疾患であり早急な治療が
必要である.上腸管膜動脈閉塞症に対しPTAは有
用な治療法であると考えられた.
It is unclear whether serum glucose levels affects
microalubuminuria. I have already reported a
direct negative correlation between urine ACR
as an index of microalbuminuria and serum BNP
levels, in cardiovascular patients with creatinine
levels <1.5mg/dl. (r=0.50,p<0.001,n=165).
And no significant relation was found between
ACR and HbA1c. [Conference of Japanese Society
of Internal Medicine (11-13. April. 2008,Tokyo)]
After that, I collected more data (n=231). I found
out HbA1c makes significant interaction with
ACR negatively (r=–0.15,p<0.05).
173) 腹部大動脈瘤ステントグラフト手術におけ
る瘤内圧測定の意義
(愛知医科大学血管外科) 石橋宏之・
太田 敬・杉本郁夫・岩田博英・川西 順・
山田哲也・只腰雅夫・肥田典之・折本有貴・
二村泰弘
(同放射線科) 石口恒男
176) 低用量ピオグリタゾンはadiponectinをター
ゲットとした糖尿病治療のkey drugとなる
(福井大学医学部附属病院循環器内科)
皿澤克彦・中野 顕・宇隨弘泰・見附保彦・
下司 徹・荒川健一郎・森川玄洋・嵯峨 亮・
石田健太郎・佐藤岳彦・森下哲司・李 鍾大
179) 体重減少が冠危険因子に及ぼす影響−就労
女性1261名における5年間の観察結果−
(デンソー刈谷診療所) 近藤隆久・
下方敬子・大杉茂樹
(名古屋大学循環器内科) 前田健吾・
坂東泰子・室原豊明
【目的】ピオグリタゾン(PIO)は,血中アディ
ポネクチン(APN)の増加作用を有し,メタボ
リック症候群の治療薬としても期待されるが,体
重増加などの副作用が問題となる.我々は低用量
PIO投与の有用性を検討した.【方法】糖尿病患
者16人にPIOを7.5mg/日で投与し,投与前と投与
6ヶ月後にAPNおよびその高分子量型(H-APN),
高 感 度 C R P な ど を 測 定 し た.
【 結 果 】H b A 1 c,
HOMA指数は有意に低下し,高感度CRPも有
意 に 低 下 し た.A P N(7 . 0±4 . 6→11 . 3±7 . 7,p
=0.0004),HM-APN(3.5±2.8→7.0±5.5,p=
0.0002)は有意に増加したが,H-APNがより顕著
な増加を示した.経過中に問題となる副作用は出
現しなかった.【結論】低用量PIOはH-APNを効
果的に増加させ,抗動脈硬化を目的とした糖尿病
治療薬として極めて有用である.
心血管疾患は日本人女性の死因の1位を占めてい
るが,女性の疫学データは少ない.我々は,2001
年・2006年に健診を受けた就労女性1261名(年齢
30.8歳,BMI 20.4kg/m2)において,体重減少が
冠動脈危険因子に及ぼす影響を検討した.単回帰
分析では,体重減少に伴いHDL-コレステロール
値は正に,総コレステロール値・中性脂肪値・空
腹時血糖値・収縮期血圧は負に,有意に変化した.
血清クレアチニン値は変化を認めなかった.多変
量解析では,総コレステロール値の変化が最大で
あり,続いてHDL-コレステロール値・収縮期血
圧値・中性脂肪値・空腹時血糖値の順であった.
若年非肥満女性においても体重減少は冠動脈の危
険因子をさらに改善させ,生涯における心血管系
イベント減少につながるものと推察された.
177) 虚血性心疾患を有する2型糖尿病患者にお
ける交感神経活性の評価−αグルコシダーゼ阻害
薬投与群での検討
(金沢大学恒常性制御学) 小林大祐・
猪俣純一郎・池田達則・高島伸一郎・
大辻 浩・加藤武史・薄井荘一郎・岡島正樹・
古荘浩司・高村雅之・金子周一
180) CKD患者の左室拡張能における貧血の意義
(浜松医科大学第三内科) 大谷速人・
佐藤 洋・齊藤岳児・早乙女雅夫・漆田 毅・
加藤秀樹・林 秀晴
腹部大動脈瘤ステントグラフト手術(EVAR)に
おける瘤内圧測定の臨床的意義を求めた.これま
で企業製EVARを60例(Zenith 48,Excluder 12)
に行い,29例で術中瘤内圧を測定した.瘤内圧比
(収縮期)はメインボディ留置後0.90±0.07,脚留
置後0.59±0.12(p<0.01),バルーン拡張後0.54
±0.12(p<0.05)であった.タイプ1ELを認め
た4例はステント追加により0.54±0.08から0.46
±0.07に低下した.タイプ2ELの有無で差を認
めなかった.EVAR全体の技術的成功98%,臨床
的成功100%であり,特に瘤径60ミリ未満で良好
な瘤縮小を認めた.EVARにおける瘤内圧測定は,
手技の即時的血行動態評価に有用であった.
174) 難治性高血圧に抗アルドステロン薬が著効
したことで判明し得た原発性アルドステロン症の
一例
(JA愛知厚生連豊田厚生病院循環器内科)
窪田龍二・篠田政典・畳 陽祐・神谷宏樹・
金子鎮二・金山 均
症例は58歳男性.高血圧にて近医通院中に左室
肥大を指摘され2006年9月当院紹介.初診時血
圧175/68mmHg,ニフェジピン・バルサルタンが
投与されていた.精査目的で入院.K 3.3mEq/L
と軽度の低K血症を認めるも腹部超音波では副
腎に異常所見を認めず,CAGにてLADに有意狭
窄認めPCI施行し退院.退院後K 3.5mEq/L前後,
収縮期血圧150mmHg前後であったが12月頃より
200mmHg前後に上昇.降圧剤に反応しないため
スピロノラクトン追加処方したところ2か月後に
は140/78mmHgにまで低下.原発性アルドステロ
ン症が疑われたため副腎静脈サンプリング施行.
左副腎静脈Ald 1250pg/mL・Ald/Cor比13.4と高
値であり原発性アルドステロン症と診断された.
【背景】糖尿病は動脈硬化に関連し,交感神経系
を活性化させ,虚血性心疾患発症に寄与してい
る.一方,STOP-NIDDM試験では2型糖尿病患
者において,αグルコシダーゼ阻害薬が心血管疾
患発症リスクを軽減させたことが示されたが,同
剤が交感神経系を抑制しているかどうかは明らか
ではない.【対象と方法】虚血性心疾患を有し,
心不全や神経障害を合併していない2型糖尿病患
者6名(平均年齢68.5歳)を対象に交感神経活性
の評価を行った.インスリンやβ遮断薬が投与さ
れているものは除外し,交感神経の評価には筋交
感神経活動を用いた.
【結果】平均HbA1c6.5%,
BNP25.7pg/mL.安静時のburst frequencyは33±
6.9/分であった.【結論】burst frequencyは予測
値より低く,交感神経系が抑制されている可能性
が示唆された.
936 第 132 回東海・第 117 回北陸合同地方会
178) 心臓リハビリにより左室のリバースリモデ
リングに成功した二例
(大垣市民病院循環器科) 坪井英之・
曽根孝仁・武川博昭・森島逸郎・上杉道伯・
佐々木洋美・森本竜太・丹羽 亨・泉 雄介・
山本寿彦・由良義充・小笠原真雄
心リハでリバースリモデリングを認めた3例を
報告する.症例1は48歳男性.#7のAMI,peak
CK:7825.薬物療法にもかかわらずリモデリン
グが進行し,発症1年後にはEFが19%に低下し
た.AT処方による心リハを週3回5ヶ月間施行
したところ心陰影は縮小し,EFは29%に改善し
た.症例2は56歳男性,#6のAMI,peak CK:
10691,退院時EFは28%だったが,心リハで43%
に改善した.症例3は53歳男性,同じく#6の
AMI,peak CK:10330,EFは31%から49%に改
善した.以上より,将来リモデリングの進行によ
り,難治性の心不全に陥る可能性のある広範な心
筋梗塞患者に対しては,心リハの施行は必須であ
ると考えた.
CKD患者は貧血を高率に合併するが,貧血が心
機能に影響を与えるかは不明である.心臓超音波
検査を施行したCKD患者連続294症例を貧血の有
無に分けて解析した.貧血はHb<12g/dlと定義し
た.貧血群では女性が多かった(非貧血群26%
vs 貧血群45%,p<0.005).心臓超音波検査では,
E�の低下(非貧血群5.92±1.79cm/s vs 貧血群5.34
±2.04cm/s,p<0.05)とE/E�の上昇(非貧血群
13.7±4.4 vs 貧血群16.0±4.6,p<0.001)を認めた.
ロジスティック回帰分析では,女性,年齢に加え
て貧血が,E�<5.5cm/sおよびE/E�>15の独立寄
与因子であった.CKD患者では,貧血の合併に
より左室拡張機能が低下することが示唆された.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
181) C-Reactive Protein(CRP)Interacts With
Microalbuminuria For The Cardiovascular Patients
(松阪市民病院循環器内科) 竹内秀和
CRP, a marker of systemic inflammation, is recognized as a marker of CHF. Although some papers
reports correlation between microalbuminuria
and serum high sensitivity CRP (hsCRP) levels for
the DM patients, few reports have shown it for
the patients with cardiovascular disease. The aim
of this study is to evaluate a direct link between
urine ACR and serum hsCRP levels in cardiovascular patients. Significant correlation was found
between urine ACR and serum hsCRP levels (logarithmically transformed). (y=0.25X+3.8, r=0.46,
p<0.001). CRP might regulate urine ACR.
182) 当院における和温療法の実際
(大垣市民病院循環器科) 山本寿彦・
曽根孝仁・坪井英之・武川博昭・森島逸郎・
上杉道伯・佐々木洋美・森本竜太・丹羽 亨・
泉 雄介・由良義充・小笠原真雄
和温療法とは,乾式低温サウナを用いた心不全に
対する温熱療法のことで,その機序は血行動態や
血管内皮機能の改善であるとされる.当院でも
2008年7月から導入し,これまで12人の患者で
和温療法を行った.主な基礎疾患はDCMが6例,
OMIが4例であり,治療前後でBNPは519.7pg/
mLから196.7pg/mLと有意に低下した(p=0.022).
症例は74歳女性,拡張相肥大型心筋症と連合弁膜
症による心不全の増悪で入院するも,カテコラミ
ンや利尿剤への反応が不良だったため和温療法を
導入した.導入後よりBNPと体重は著明に減少
し,1ヵ月後軽快退院した.和温療法は,運動療
法が困難な難治性慢性心不全患者にも応用可能で
あり,治療の選択肢として期待される.
183) 当院における心臓リハビリの実際
(大垣市民病院循環器科) 坪井英之・
武川博昭・森島逸郎・上杉道伯・森川修司・
佐々木洋美・丹羽 亨・泉 雄介・山本寿彦・
曽根孝仁
当院における心リハの実際について報告する.
AT処方による,週3回,5ヶ月間の心リハを施
行した.TG,HDL,BNP,EFの有意な改善をみ
た.またhs-CRPも有意な改善を認め,心リハは
慢性炎症状態の改善作用があると考えた.PvO2
は,17.4から19.4に有意に改善,NYHAもほとん
ど全症例で改善した.このような効果は,十分な
内服治療中の患者でも上乗せ効果として認めた.
心リハは十分なエビデンスもあり,欧米では積極
的に施行されている.本邦でも,循環器医は心リ
ハの効果を十分認識し,適応症例に対しては迷う
ことなく心リハを導入すべきである.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
184) 未治療家族性高コレステロール血症(FH)
の頸動脈硬化病変に関する検討 ̶家系内正常者
との比較̶
(金沢大学循環器内科) 高田睦子・川尻剛照
(金沢大学脂質研究講座(寄附講座))
野口 徹
(金沢大学循環器内科) 多田隼人・
中西千明・土田真之
(金沢大学脂質研究講座(寄附講座))
野原 淳
(金沢大学循環器内科) 井野秀一
(金沢大学医薬保健学域保健学類検査技術科学専攻)
稲津明広
(金沢大学脂質研究講座(寄附講座))
小林淳二
(金沢大学循環器内科) 山岸正和
(金沢大学脂質研究講座(寄附講座))
馬渕 宏
【背景】家族性高コレステロール血症(FH)は著
明な高LDLコレステロール血症の結果,早発性
動脈硬化症を発症する.【目的】未治療ヘテロ接
合体FHの頸動脈硬化の進展について家系内正常
者と比較すること.【対象と方法】対象はFH患者
の一等親または同胞で,脂質低下療法が開始さ
れていない52人(男性26人,年齢3-48歳).空腹
時脂質検査と総頸動脈の内膜中膜複合体(IMT)
の計測を行った.【結果】FHは32人で,内28人
は遺伝子診断で確定した.LDLコレステロール
値はFH群で 234±55mg/dl,正常群(nFH)は
104±30mg/dl(p<0.0001),IMTは,FHで0.55±
0.16mm,nFHで0.39±0.07mmといずれもFH群で
有意に高値であった(p<0.0001)
.年齢,性別,
冠危険因子に関して両群間で差は認めなかった.
年齢を従属変数とするIMTに関する単回帰分析の
結果,切片および傾きはいずれもFH群はnFH群
よりも大きかった.
【結論】FHのIMTはnFHに比
し生下時より既に肥厚し,進行も速いことが示唆
された.
185) 断裂したポートカテーテルが冠状静脈洞内
に脱落し回収し得た一例
(市立島田市民病院循環器科) 川人充知・
中村 貴・蔦野陽一・金森範夫・松岡良太・
久保田友之・荒木 信・谷尾仁志・服部隆一・
近藤真言・青山 武
症例は72歳女性,直腸癌にて平成18年10月直腸切
断術施行.以後,化学療法のため右鎖骨下静脈よ
り皮下埋込型中心静脈ポートカテーテルを留置
し,約半年間使用していた.平成19年8月にカテ
ーテル閉塞を来たし,外科的ポート除去術を行う
予定であった.術前のX線透視で先端約10cmが断
裂し心内への脱落をみとめ,経皮的心内異物除去
術を施行.右大腿静脈より7Fシースを挿入しス
ネアで回収を試みるも難渋した.冠状静脈洞(CS)
内への脱落を疑い,冠動脈造影を施行.CS内へ
の迷入が確認できた.右内頸静脈アプローチに変
更しJR4ガイドカテーテルとスネアを用いてCS内
で容易に拿捕・回収できた.鎖骨・肋骨ピンチオ
フによる断裂と考えられた.脱落したカテーテル
がCS内に入ったため,容易に回収できた稀な症
例を経験し報告する.
186) 8年経過したPickwikian syndromeの症例
(揖斐厚生病院内科) 大野泰良・渡辺一弘・
鈴木荘太郎・水草貴久・川崎浩伸・右納 隆・
塚本達夫
【症例】53才男性【病歴】平成12年8月,呼吸困
難にて入院,Pickwickian 症候群と診断する.体
重137kgから109kgへ減量,外来通院となる.徐々
に体重は増加し平成19年10月には156kg,平成20
年1月には労作時の呼吸困難,3月には161kgと
なり意識障害を来たし,入院加療となる.【入院
後経過】5日間の絶食の後に,超低カロリーダイ
エット療法にて,3週間後には135kgまで減少し
た.その後10週間で118kgまでの減量に成功した.
睡眠時無呼吸症については,完全房室ブロックが
認められ,ASVを導入,徐脈発作を抑えることが
できた.【結語】8年経過し再発したPickwickian
syndromeの重篤な呼吸不全と心不全を呈し,閉
塞性睡眠時無呼吸症にともなう完全房室ブロック
を合併した症例を経験したので報告した.
187) 冠攣縮性狭心症との鑑別に苦慮した噴門・
幽門スパスムの1症例
(ハートセンター磐田) 岡崎勝男
症例は74歳男性.高血圧にて通院中.安静時の前
胸部痛が頻発するようになり,かかりつけ医受
診.食道・胃内視鏡検査にて異常認めず.冠動脈
造影検査では有意狭窄認めず.エルゴメトリン冠
動脈内負荷試験にて中等度冠攣縮認めるも心電図
変化・胸痛誘発されず.連日夜間に胸痛のため救
急外来受診.心電図変化認めず,速効性ニトログ
リセリンエアゾール製剤口腔内噴霧及び硝酸イソ
ソルビド静注にて症状は消失した.経過観察入院
中に,胸痛出現.胸痛出現時の冠動脈造影検査で
は高度狭窄所見なし.透視にて著明な胃拡張を認
めたため,ブスコパン注射したとこころ症状は消
失した.外来にて鎮攣薬など投与するも胸痛はコ
ントロールできず.クロナゼパム処方したところ,
翌日より胸痛発作は全くなくなった.
188) 急性心筋梗塞後早期の心不全再入院を契機
にCushing症候群が診断できた1例
(JA愛知厚生連豊田厚生病院) 神谷宏樹・
篠田政典・畳 陽祐・窪田龍二・金子鎮二・
金山 均
【症例】50歳男性.2007年12月21日LAD心筋梗塞
発症し,PCI施行.梗塞ダメージは強いが,心不
全は合併しなかった.RCA,LCXにもPCI施行後
に2008年1月13日退院となる.入院中血圧は低か
った.1月19日急性心不全の診断で緊急再入院.
【入院時現症】血圧190mmHg.BX-Pで肺うっ血
像を認めた.入院時心エコーは,退院時と著変な
かった.【入院後経過】高血圧性心不全と診断し,
少量ハンプ投与で軽快.画像で右副腎腫瘍検出,
ACTH値は正常未満であった.右副腎腺腫疑いに
よるCushing症候群と診断し,外科にて摘出術を
行った.【まとめ】急性心筋梗塞後,短期に心不
全入院され,Cushing症候群と診断することがで
きた.初回入院時にはCushing症候群特有の症状
はなく,診断することができなかった.
名古屋国際会議場(2008 年 11 月) 937
189) 急性心筋梗塞を契機に発見された左房内巨
大血栓の一例
(金沢大学循環器内科) 本藤有智・
坪川俊成・井野秀一・藤野 陽・内山勝晴・
林 研至・舛田英一・坂元裕一郎・舟田 晃・
村本明彦・山岸正和
(同心肺総合外科) 西田 聡・加藤寛城・
富田重之・渡邊 剛
症例は74歳男性.55歳時に大動脈弁および僧帽弁
置換術(機械弁)を施行され,66歳時には心房細
動を指摘された.ワルファリンによる抗凝固療法
中であったが,本年6月末のPT-INRは1.6前後で
あった.6月28日,食欲不振を主訴に近医受診.
心電図にて異常Q波およびST上昇,心臓超音波検
査上,下壁の壁運動低下を認め,当院でのCAG
では2枝病変(RCA#2 100%,LCX#14 100%)
を認めた.胸部CT上,左房内に巨大血栓を認め,
心筋梗塞の原因は血栓塞栓と考えられた.頭部
MRIにて多発脳梗塞,胸部~骨盤CTにて脾梗塞,
両腎梗塞を認め,多臓器への塞栓症を合併してい
た.経過中に心室中隔穿孔を生じた.今回,弁置
換術後の心房細動,抗凝固療法中に多発血栓塞栓
症を生じた症例を経験したので報告する.
190) Positive Correlation Between Pulse Wave
Velocity(PWV)and ANP For The Cardiovascular
Patients
(松阪市民病院循環器内科) 竹内秀和
PWVは,動脈壁の解剖学的・機能学的硬化度の
指標である.PWVは,将来の脳・心血管系リス
クの予測に使われ,治療効果の指標ともなりうる.
PWVと,ANPの関係についての報告は多くない.
今回,当院の心血管系患者でPWVと,ANPの関
係について,後ろ向きに調べた.ANPを自然対
数で表現し,PWVとの関係を調べた所,有意な
正の相関関係(r=0.29,p<0.01)のある事が分
かった.この結果は,ANPが,利尿作用だけで
なく,動脈硬化とも関係のある可能性を,示唆し
ている.動脈硬化が進み,PWVが高値をとるよ
うな病態では,何らかの機序で,ANPの産生が
亢進し,ANPが,PWVの高値を是正するように
作用し,PWVの正常化を目指し,homeostasisの
維持に,関与している可能性がある.
〈抄録未提出〉
10) 急性心筋梗塞に対してdistal protectionを併
用したPCI症例の長期予後
(大垣市民病院循環器科) 丹羽 亨・
坪井英之・武川博昭・森島逸郎・上杉道伯・
森川修司・佐々木洋美・泉 雄介・山本寿彦・
曽根孝仁
20) 当院におけるS-stentの初期使用成績
(愛知医科大学病院循環器内科) 渡部篤史・
高島浩明・水野智文・浅井健次・脇田嘉登・
黒田泰生・高阪 崇・久原康史・栗田章由・
前田一之・脇田康志・伊藤隆之
36) 僧帽弁輪部心室期外収縮/心室頻拍症例の
検討
(名古屋大学循環器内科学) 内川智浩・
因田恭也・吉田直樹・神谷裕美・北村倫也・
山内正樹・室原豊明
(名古屋大学環境医学研究所) 辻 幸臣
(名古屋大学保健学科) 平井真理
(名古屋大学循環器内科学) 嶋野祐之
44) 前収縮期の左脚後枝電位が頻拍回路外であ
ることが示唆されたベラパミル感受性左室心室頻
拍の一例
(大垣市民病院循環器科) 森島逸郎・
坪井英之・武川博昭・上杉道伯・森川修司・
佐々木洋美・丹羽 亨・泉 雄介・山本寿彦・
曽根孝仁
46) 当院における非虚血性心筋症に対するICD
の長期成績:Primary prevention目的での植え込み
の妥当性の検討
(大垣市民病院循環器科) 泉 雄介・
森島逸郎・坪井英之・武川博昭・上杉道伯・
森川修司・佐々木洋美・丹羽 亨・山本寿彦・
曽根孝仁
68) 重症心不全の心アミロイドーシスに対して
M-D療法施行した一例
(公立陶生病院循環器科) 青山盛彦・
味岡正純・酒井和好・浅野 博・中島義仁・
長内宏之・横井健一郎・植村祐介・神原貴博・
藤川裕介
78) 当院での心臓再同期療法(CRT)の治療
成績(第四報)
(金沢循環器病院循環器科) 土屋武嗣・
池田正寿・堀田祐紀・寺井英伸・玉 直人・
福岡良太・名村正伸
91) 大動脈弁置換術後の難治性胸水貯留に対し
ウロキナーゼ胸腔内投与が有用であった一例
(愛知県立循環器呼吸器病センター)
大田将也・梅本紀夫・伊藤義浩・一宮 仁・
山下健太郎・吉川大治・石黒久晶・岡田太郎・
浅井 徹・原田修治・横家正樹・村上善正・
清水 武・伊藤英樹・松浦昭雄
98) Porcelain Aortaを伴った大動脈弁狭窄症に
対する大動脈弁置換術の工夫
(金沢医科大学心血管外科) 三上直宣・
長谷川広樹・永吉靖弘・水野史人・秋田利明
120) CTO再開通前後のMRI遅延造影所見の検討
(大垣市民病院循環器科) 泉 雄介・
坪井英之・武川博昭・森島逸郎・上杉道伯・
森川修司・佐々木洋美・丹羽 亨・山本寿彦・
曽根孝仁
124) 冠動脈肺動脈瘻を有した狭心症の一例
(島田市民病院循環器科) 蔦野陽一・
金森範夫・中村 貴・川人充知・松岡良太・
久保田友之・荒木 信・谷尾仁志・青山 武・
近藤真言
140) 蘇生に成功した川崎病による陳旧性心筋梗
塞後の心室細動の一例
(愛知医科大学循環器内科) 伊藤良隆・
鈴木靖司・栗田章由・加藤 勲・岩 亨・
伊藤隆之
(同心臓外科) 綿貫博隆・成宮千浩・
青山貴彦・磯部文隆
191) 脂肪組織由来間葉系幹細胞と骨髄由来間葉
系幹細胞の遺伝子発現,分泌タンパク質の差異の
検討
(金沢大学循環器内科) 中西千明・
坪川俊成・田川庄督・多田隼人・土田真之・
高田睦子・野原 淳・川尻剛照・井野秀一・
山岸正和
938 第 132 回東海・第 117 回北陸合同地方会
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
第 106 回 日 本 循 環 器 学 会 近 畿 地 方 会
2008 年 11 月 29 日 神戸国際会議場
会長:大 柳 光 正(兵庫医科大学内科学冠疾患科)
1) 同日,同一冠動脈の他病変に発症した急性心
筋梗塞の1例
(京都第二赤十字病院循環器科) 西堀祥晴・
蒔田直記・松尾清成・塩野泰紹・立石健人・
松尾あきこ・井上啓司・田中哲也・藤田博・
北村 誠
45歳の男性.急性下壁心筋梗塞の患者.緊急冠動
脈造影の結果,右冠動脈中間部(seg.3)に完全
閉塞病変を認めため,同部にステント留置し,再
灌流に成功した.その際,遠位部(seg.4 PL)に
中等度の残存狭窄病変を認めたが,責任病変では
ないため,この時は経過観察とした.その10時
間後,CCUにおいて胸痛が再燃,ST再上昇も認
めたため,ステント血栓閉塞を疑い,再度緊急
冠動脈造影を施行したところ,seg.3のステント
には異常を認めなかったが,seg.4 PLの中等度狭
窄病変が完全閉塞となっていた.血管内超音波
を用いた研究などから同一冠動脈に複数のplaque
ruptureやvulnerable plaqueが 存 在 す る こ と は よ
く知られているが,同日に急性心筋梗塞を再発症
することは稀有な出来事と思われたため,今回,
若干の文献的考察を加え報告する.
2) アンギオシールSTSによる止血後に仮性動脈
瘤を来たした一例
(JR大阪鉄道病院) 宮本裕之・篠塚知宏・
日浦正仁・成山 仁
69歳男性.狭心症の診断にてCAG施行.LAD Seg
7に99%狭窄を認めた.後日右大腿動脈より7Fr
シースを挿入し,LAD Seg7にDES留置.術後ア
ンギオシールを用いて止血を行った.術後2日目
に軽快退院.しかし,同日階段を登っていると突
然右鼡径部の痛みと腫脹を認めたため1時間後再
来院.同部位の血腫形成を認めた.1時間の用手
圧迫の後ベルト固定とし12時間ベット上安静とし
た.以後血腫は徐々に縮小傾向を認め,1週間後
退院.しかし,2週間後の外来受診時,同部位
に拍動を伴う腫瘤とbruitを認めたため造影CT施
行.穿刺部と一致する場所に径5×30mmの仮性
動脈瘤を認めた.アンギオシールによる止血後に
仮性動脈瘤を来たした一例を経験したので報告す
る.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
3) アンギオテンシン変換酵素阻害薬・硝酸薬併
用療法は急性心筋梗塞後の左室リモデリングを強
力に抑制する
(関西労災病院循環器科) 矢野正道・
両角隆一・南都伸介・上松正朗・渡部徹也・
粟田政樹・大西俊成・飯田 修・川本健治・
世良英子・南口 仁・池岡邦泰・岡本 慎・
田中宣暁・安井治代・石原隆行・土肥智晴・
永田正毅
5) 狭心症の診断に薬剤負荷心臓MRIが有効で
あった1症例
(兵庫医科大学内科学循環器内科)
三木孝次郎・岡 克己・江角 章・川端正明・
辻野 健・増山 理
(同冠疾患科) 舛谷元丸・大柳光正
(西宮渡辺病院心血管センター循環器科)
中尾伸二
【背景】急性心筋梗塞(AMI)後の左室リモデリング
に対する利尿薬,硝酸薬(N)
,アンギオテンシン変
換酵素阻害薬(ACEI)
,アンギオテンシン受容体拮抗
薬(ARB)の併用を含む効果について十分な検討はな
い.
【目的】AMI後に生じる左室リモデリングに対す
るこれらの単独投与及び併用効果を比較検討するこ
と.
【対象・方法】AMI患者228例を対象とし単独投与
群,N+ACEI併用群,N+ARB併用群の5群に分類し
た.心電図同期心筋SPECTにて左室拡張末期容積係
数の変化率が20%以上を左室リモデリング陽性と診断
した.
【結果】N+ACEI併用療法ではp=0.0075と有意
な関連を示したが他の群では有意な関連を認めなかっ
た.
【結論】NとACEIの併用療法は,各単独投与やN
とARBの併用療法に比しより強力にAMI発症後左室
リモデリングを抑制する可能性がある.
症例は57歳女性.関節リウマチにてステロイド長
期内服加療されおり,両膝の関節痛により歩行運
動に障害があった.最近自宅内での軽労作で胸痛
を自覚するようになり,狭心症疑いにて当科に紹
介.安静時心電図,心エコー検査では特記所見無
かった.ATP負荷心筋シンチ(タリウム)では心
筋虚血を示唆する所見はなかったが,ATP負荷心
臓MRIでは前壁領域のPerfusionに差を認め,LAD
の虚血を疑った.冠動脈造影ではLAD中間部から
遠位部が75%の狭窄で,Fractional Flow Reserve
は最大充血時で0.71であったため,同部位にDES
を留置した.薬剤負荷心臓MRIは他のモダリティ
に比べ心内膜下の虚血検索に優れており,今回有
効であったと考えられた症例を報告する.
4) 90歳以上の超高齢急性冠症候群患者に対する
緊急経皮的冠動脈形成術(PCI)の初期成績・1
年予後の検討
(東宝塚さとう病院) 滝内 伸・大辻 悟・
生島雅士・福本 淳・矢吹正典・寺杣晋彦・
長谷川勝之・羽生壮史郎・東野順彦
超高齢化社会に伴い高齢者の急性冠症候群
(ACS)に対する侵襲的治療の決断を迫られる機
会が増加しているが,90歳以上の患者に対する検
討はほとんどない.我々は当院で緊急PCIを施行
した90歳以上のACS患者の臨床像,予後を検討し
た.対象は当院に救急搬送され緊急PCIを施行し
た90歳以上のACS患者29例(平均年齢92±2歳,
男性9例).冠危険因子は,高血圧48%,高脂血
症10%,糖尿病13%,喫煙3%であり,若年層の
患者と比べ高血圧以外は少なかった.急性期死亡
(院内死亡率)は31%であり,PCI後1年生存率
は45%であった.死亡例のうち非心臓死は69%で
あった.急性期死亡に関連する因子は,病変枝数,
高血圧,駆出率であった.90歳以上に対する緊急
PCIは劇的な予後改善には結びつかず,適応を慎
重に検討する必要があると考えられた.
6) TAXUSステント留置後,早期ステント血栓
症を発症しIVUSにて拡張不全を確認し得た1例
(市立福知山市民病院循環器科) 堀田祐馬・
松永晋作・林 宏憲・阪本 貴・西尾 学
症 例 は88歳 男 性.30年 前 にLAD病 変 に 対 し て
CABG施行.今回労作時胸痛,心電図V2−V4の
ST低下を認め不安定狭心症の診断にて入院した.
CAGにてバイパスグラフトの完全閉塞とLAD#
7の90%狭窄を認めPCI施行,2.5mmのTAXUSス
テントを2本挿入し造影上十分な拡張を得たため
終了した.術後4日目急に激しい胸痛とともに心
電図V2−V4のST上昇を認め緊急CAG施行,ステ
ント挿入部位に血栓閉塞を認め,POBAにて再灌
流を得た.初回PCI時は充分な拡張が得られたと
思われた部位にIVUS上拡張不全を認め,バルー
ンにて高圧拡張を追加しIVUSにて再確認後終了
した.DES留置後の早期ステント血栓症は比較的
まれとされているが,ステント拡張不全を生じる
とその危険性は高まると考えられる.ステント血
栓症を防ぐためのIVUSの有用性について若干の
考察を踏まえ報告する.
神戸国際会議場(2008 年 11 月) 939
7) 複数のステント留置後に複数の冠動脈瘤を認
めた一例
(浅香山病院循環器科) 小川景太郎・
和田諭子・織田茂哉・泉谷 悟・田原 旭
症例は71歳女性.急性心筋梗塞にて#9の閉塞
に対し,緊急PCI(micro driverを留置)を施行.
その後,慢性期に左前下行枝に対してPCI(#6
と#7にCypherを留置)を施行した.3ヵ月後
のfollow up CAGでステント再狭窄を認めなかっ
たが,#9に留置したステントに1個,#7に留
置したステントに2個冠動脈瘤を認めた.7ヵ月
後と14ヵ月後にfollow up CAGを施行した.#9
の冠動脈瘤は7ヵ月後には変わらず14ヵ月後には
縮小した.#7の近位部の冠動脈瘤は7ヵ月後に
増大したが,14ヵ月後は7ヵ月後と変化なかった.
遠位部のものは7ヵ月後に縮小し14ヵ月後に消失
した.以上,複数のステント留置後に複数の冠動
脈瘤を認め,異なる経過を観察することができた
症例を経験したので報告する.
8) 狭心症患者のPCI中に,modified T stent留置
後のIVUSにてEagle eyeが抜去困難となった一症例
(赤穂市民病院) 久保川修・藤井 隆・
鈴木 敦・小西明英・小林憲恭・瀬野匡巳・
安部博昭
症例は73歳女性.1ヶ月前から持続する労作時胸
部圧迫感を主訴に当科外来を受診.精査のため施
行したCAGにて#6 90%,#7 90%,#9 75%,
#2 99%の病変を認め,PCIを行うこととなっ
た.#7 90%,#9 75%の病変に対してCypher
stentを用いてmodified T stentを行った際,stent
留 置 後 にIVUS(Eagle eye) をLAD側 に 行 っ た
ところ,stentの遠位端にIVUSが引っかかり抜去
困難となった.IVUSは遠位に押し込むことはで
きたが,stent遠位端より手前に引くことは不可
能であり,もう1本guide wireをLADに入れて,
ballooningを数回施行.それでも抜去不能であっ
たため,#9にもwireを入れてballooningを行っ
た後抜去することができた.IVUSの抜去不能例
はAtlantis SR pro2で数多く報告されているが,
Eagle eyeでは比較的少なく対応方法の検討を含
めてここに報告する.
9) 薬剤溶出ステントを留置した急性冠症候群症
例における運動療法の安全性
(済生会滋賀県病院循環器科) 肌勢光芳・
中村隆志・今井雄太・入江大介・倉田博之・
中原祥文
【背景】薬剤溶出ステント(DES)を留置した急
性冠症候群(ACS)症例における運動療法の安全
性は不明である.【目的】DESを留置したACS症
例における運動療法の安全性を検討する.【対象】
2005年4月より2008年5月までに当院でACSに
てDESを留置し運動療法を施行しえた39例.【方
法】退院前に心肺運動負荷試験を行い,その後外
来心臓リハビリテーションを行った.運動療法中
および退院90日間の心事故の発生率を検討した.
【結果】患者背景は,平均年齢:61.9±8.0歳,男
性:79.5%,糖尿病:46.1%,多枝病変:33.3%,
低左心機能:12.8%であった.運動療法中および
退院90日間の心事故の発生はなかった.【結論】
DESを留置したACS症例における退院90日間の
運動療法は安全に施行できる可能性が示唆され
た.
940 第 106 回近畿地方会
10) BMS留置7ヶ月後に内視鏡で不完全な内
膜被覆を認めた1例
(姫路循環器病センター循環器科)
岩田幸代・林 孝俊・山田慎一郎・熊田全裕・
谷口泰代・水谷和郎・岡嶋克則・嶋根 章・
月城泰栄・松本賢亮・觀田 学・井上琢海・
田頭 達・今村公威・田代雅裕・平石真奈・
柴田浩遵・梶谷定志
症例は67歳男性.2006年12月4日に急性冠症候群
の診断にて緊急入院となった.緊急カテーテル検
査にて#1から#3にかけて石灰化を伴う高度狭
窄病変が認められDriverステントを留置.2007年
7月18日フォローアップ検査でステント内に限局
した再狭窄を認めた.血管内超音波では再狭窄部
のステントは拡張不良であったが,再狭窄部以外
のステントは正円形で圧着も良好であった.内視
鏡所見では狭窄部はGrade3,非狭窄部にGrade0
から1のステントストラットの被覆であった.限
局性の再狭窄であったのでPOBAのみで終了し,
8ヶ月後のCAGでは再狭窄は認めなかった.今
回,通常は数ヶ月でステントストラットの被覆が
みとめられるBMS留置症例で,留置7ヶ月後の
不完全被覆度を認めた症例を経験した.
11) Cypherステント留置後に遅発性ステント
血栓症を起こし,その後同部位に再狭窄を来たし
た一例
(大阪警察病院) 肥後友彰・西尾まゆ・
廣谷信一・小笠原延行・柏瀬一路・平田明生・
根本貴祥・松井万智子・松尾浩志・増村雄喜・
樫山智一・和田 暢・小西正三・中西浩之・
坂本祥吾・上田恭敬・児玉和久
症例は56歳男性.1997年心筋梗塞発症し,右冠
動脈にBMS留置,2005年ステント遠位部に高度
狭窄来たし,Cypherステント留置した.2008年
2月労作時胸痛出現し,来院.不安定狭心症と診
断し,冠動脈造影施行.Cypherステント内に血
栓透亮像を伴う99%狭窄を認めた.血管内視鏡で
は,同部位に大量の血栓を認め,very late stent
thrombosisと考え,バルーン拡張術行った.しか
し,7月に施行したTl負荷心筋シンチで下壁領域
に虚血所見を認めたため,再び冠動脈造影施行.
ステント内75%狭窄を認めた.血管内視鏡では,
ステントは白色の被膜で被覆されており,同部位
に対し,Taxusステント留置行った.Cypherステ
ント留置後に遅発性ステント血栓症,その後同部
位に再狭窄を来たし,共に血管内視鏡でステント
内観察を行った一例を経験したので報告する.
12) 左前下行枝の狭窄病変にPCI中,非罹患枝
の左回旋枝に広範囲冠解離を認めた1例
(京都第二赤十字病院循環器科) 西堀祥晴・
蒔田直記・松尾清成・塩野泰紹・立石健人・
松尾あきこ・井上啓司・田中哲也・藤田 博・
北村 誠
症例は55歳,男性.不安定狭心症の診断にて入院
となった.緊急冠動脈造影の結果,左前下行枝近
位部(seg.6)に高度狭窄病変を認めた.心電図
や心エコー所見などより,seg.6が責任病変と判
断しPCIを施行することとなった.前拡張後,左
冠動脈主幹部にguiding catheterのdeep engageに
よる僅かな冠解離が認めたが,まず責任病変にス
テントを留置し,その後で左冠動脈主幹部を評価
治療することとした.そして病変部にステント
留置し,確認造影を施行した次の瞬間,左冠動
脈主幹部から左回旋枝末梢に及ぶ広範囲な冠解
離を生じた.本症例は,当初,比較的容易と思
われた症例が,非罹患枝の広範囲冠解離という
complicationによりcomplex PCIとなった1例で
あった.冠動脈造影所見およびIVUS所見,その
後の経過を呈示し,若干の考察を加え報告する.
13) 慢性完全閉塞に対する橈骨動脈アプローチ
によるPCIは,大腿動脈アプローチと同等か?:
同一術者による比較
(北野病院心臓センター循環器内科)
永井邦彦・猪子森明・春名徹也・宮本昌一・
中根英策・佐々木健一・安部朋美・福田旭伸・
伊藤秀裕・野原隆司
【方法】演者による慢性完全閉塞(CTO)に対し
ての基本戦略が一定された2004年4月から2008
年6月までの患者を対象とした.2004年4月か
ら2006年 2 月 ま で は 全 例 大 腿 動 脈 ア プ ロ ー チ
(TFI),2006年3月から2008年6月までは全例撓
骨動脈アプローチ(TRI)で施行した.基本戦略
は,1)Over-The-Wireシステムとしてはマイク
ロカテーテル(Finecross)を用い,2)ガイド
ワイヤーは先ずintermediateで開始し通過困難な
場合は直ちにConquest-proに変更する事とした.
【結果】初期成功は,TFIでは38例中28例(73.7
%),TRIではカニュレーションに成功した32例
中28例(87.5%)に得られた.カニュレーション
不成功の1例はTFIにconversionし成功した.院
内MACEはTFI,TRIともに認めなかった.【総括】
CTOに対してもTRIが標準治療になりえる.
14) 急性心筋梗塞に対して血栓吸引療法を施行
し,高度石灰化物を採取し得た一例
(大阪労災病院循環器科) 中村大輔・
西野雅巳・吉村貴裕・李 泰治・中谷晋平・
原 正彦・山上喜由・橋本光人・谷池正行・
加藤弘康・江神康之・習田 龍・山口仁史・
田中健二郎・田内 潤・山田義夫
症例は70歳男性.2008年7月25日朝9時半頃より
胸痛を自覚し,当院救急外来受診.心電図V1−6
にてST上昇を認め,急性心筋梗塞疑いにて緊急
心臓カテーテル検査施行.左冠動脈前下行枝#6
100%閉塞.術中心室細動出現したため,気管内
挿管,IABP挿入.血栓吸引療法のみにて,血管
造影上,狭窄病変を認めずTIMI3の血流を得たた
め術を終了した.その後の血栓吸引物の病理組織
検査では,高度石灰化物に対する異物反応をして
の多核巨細胞よりなる物質であった.心筋梗塞の
機序として,大動脈もしくは弁組織由来の塞栓物
による冠閉塞が考えられ,原因検索の結果ととも
に若干の文献的考察を加え報告する.
15) 右冠動脈のPCI後,洞結節動脈の閉塞によ
りショック状態から多臓器不全をきたした一例
(府中病院循環器内科) 岩田真一・
柳 志郎・大塚憲一郎・西山裕善・紙森公雄・
太田剛弘
症例は83歳女性.労作性狭心症にて入院.右冠動
脈(#1)のステント内再狭窄に対しTaxusステ
ントを留置後,洞結節動脈が閉塞し房室性補充
収縮となった.心拍数50回/分,収縮期血圧80−
90mmHgと比較的保たれていたが術後多臓器不全
となった.カテコラミンのサポート等保存治療を
行なったが,洞停止及び多臓器不全が持続した.
異所性を含めたP波の出現時に一致して血圧上昇
を認めたため,Atrial kickの消失による心拍出量
低下が原因と考えた.心房ペーシングにより心拍
出量及び血圧が上昇するのを確認後,DDDペー
スメーカーを留置した.留置後,カテコラミン依
存状態および多臓器不全より脱し,軽快退院した.
PCI時の洞結節動脈の側枝閉塞による洞停止から
多臓器不全を起こした症例を経験したので報告す
る.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
16) PCI中に進行した左冠動脈主幹部解離の1例
(川崎病院循環器科) 福永匡史・蓮池俊明・
斉藤清子・竹内庸浩・高田昌紀・善積 透・
丸山貴生
(同予防医学科) 竹村 芳
症例は78歳男性.6年前より糖尿病性腎症に対し
て透析導入され当院外来透析中.ASO加療目的に
当科紹介となった.下肢並びに冠動脈評価の為に
CAG,AoG目的で入院.CAG施行したところLCX
#11:99%狭窄により造影遅延認め,同部位に対
する緊急PCI施行.LCXにワイヤークロスし#11
−#13に対してPOBA施行.IVUS試みるも石灰化
強い為に通過困難であった.数回のPOBA後にLMT
に造影剤の残留認めカテ操作に伴う血管損傷によ
る解離が疑われた.そこで初めのCAG確認したと
ころ元々 LMTに解離認めた.LADのflow低下,血
圧低下生じた為にLADにワイヤークロスしLMT入
口部よりLAD#7にかけてstent留置.最終LAD,
LCXにKBT施行しBailout出来た.今回CAGにて
LCXの高度狭窄に目が奪われLMTの病変に気がつ
かずPCI中にガイドカテにより解離腔の拡大を起
こした症例を経験したので報告する.
17) 10年前に留置したWiktorステントの閉塞に
より発症した再発性心筋梗塞の一例
(京都府立医科大学循環器内科) 矢西賢次・
西澤信也・赤壁佳樹・中西直彦・畔柳 彰・
椿本恵則・松井朗裕・中村 猛・松室明義・
沢田尚久・松原弘明
78歳 男 性.10年 前 にLCxの 心 筋 梗 塞 を 発 症 し
Wiktorステントを留置している.3日前に胸痛
で救急受診したが有意な所見なく,数時間の安静
で軽快したため帰宅となった.その後無症状で経
過したが,3日後の外来検査で心電図変化および
心筋逸脱酵素上昇を認め入院となった.CAGで
はWiktor内での完全閉塞を認めた.Tc-PYPシン
チで集積を認め,同部位の再発性心筋梗塞と診断
した.内視鏡ではWiktor内にgradeIIIの黄色プラ
ークが豊富に存在し,一部stent strutの露出を認
めた.IVUSではステント中間部に脂質に富むプ
ラークによる高度内腔狭窄を認めた.10年後に閉
塞を来したBMSの内腔性状を確認できた貴重な
症例であり報告するとともに,ステント閉塞機序
を考察する.
18) 高度の下痢嘔吐後に発症したVery late Stent
Thrombosisの2症例
(赤穂市民病院循環器科) 鈴木 敦・
小西明英・久保川修・小林憲恭・瀬野匡巳・
安部博昭・藤井 隆
症例1は58歳男性.PCIにてSESをLAD#7へ留
置.2年9ヵ月後フォローアップ冠動脈造影検査
にて,75%狭窄を認めた.治療予定であったが,
3日後に高度下痢・嘔吐が出現.就寝中に突如胸
背部痛にて緊急冠動脈造影検査にて左前下行枝分
岐直後より完全閉塞を認めた.症例2は80歳女性.
SESをLCx#13留置.2年2ヶ月後,入院中に高
度の悪心・嘔吐後,2−3時間で胸背部痛が出
現.心電図上ST上昇を認め,冠動脈造影検査に
て左回旋枝分岐直後より完全閉塞を認めた.以上
の,高度下痢・嘔吐後に発症したVery Late Stent
Thrombosisの2症例について,若干の文献的考
察も含め報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
19) 異なる病変に対して用いたベアメタルおよ
び薬剤溶出ステント留置部に遠隔期の拡張性変化
を生じた1例
(北摂総合病院循環器科) 森井 功・
金高 綾・永松 航・矢野雅浩・黄俊貴文・
山口 茂・玄 武司・諏訪道博・木野昌也
22) 薬剤溶出性ステント留置後に遅発性ステン
ト血栓症を発症した2症例
(神鋼加古川病院内科・循環器科)
金子明弘・開發謙次・山名祥太・野中康行・
伴 親徳・工藤順弘・河崎 悟・角谷 誠・
清水宏紀・大西祥男・宇高 功
ベアメタルステント(BMS)では,解離腔残存
部が遠隔期に瘤状となる例が報告されている.ま
た薬剤溶出ステント(DES)においても,遠隔期
にステント圧着不良が生じうることが知られ,遅
発性ステント血栓症発生の一因になるとされてい
る.我々は,単一例でこの異なる機序によりステ
ント部の拡張性変化を生じたと推察される症例を
経験したのでここに報告する.症例は50歳台の初
回広範囲前壁急性心筋梗塞例で,急性期に左前下
行枝#6にBMS,その3週間後に回旋枝#13慢
性完全閉塞病変にDESを留置した.初回治療6ヶ
月後に追跡造影を行ったところ,BMS留置部は
瘤状に拡張し,DES留置部はステント外側が造影
される所見を認めた.本例では,心事故を回避す
る上で,抗血小板薬の継続も含め慎重な観察が必
要と考えている.
【症例1】63歳男性.H19/8/2右冠動脈75%狭窄
に 対 しTAXUS stent(3.5*24mm) を 留 置 し た.
H20/3/24急性心筋梗塞にて緊急カテーテル検査
となった.造影上,TAXUS stent内の血栓閉塞を
認めたため,血栓吸引行いバルーン拡張行ったが,
拡張不十分でありstent留置術を行った.
【症例2】
64歳 男 性.H18/3/9左 回 旋 枝99 % に 対 しcypher
stent(2.5*23mm)留置した.H20/7/20急性心筋
梗塞にて緊急カテーテル検査となった.造影上,
cypher stent内の血栓閉塞であったため,血栓吸
引およびバルーン拡張行い良好なflowが得られ
た.薬剤溶出性ステント(DES)はBMSと比較し,
劇的に再狭窄を減少させたが,遅発性ステント血
栓症が大きな問題となっている.今回我々はDES
留置後の遅発性ステント血栓症の2症例を経験し
たので,文献的考察を加え報告する.
20) 当院におけるパクリタキセル溶出性ステン
ト(TAXUSTMステント)再狭窄症例の検討
(関西労災病院循環器科) 世良英子・
南都伸介・上松正朗・両角隆一・渡部徹也・
粟田政樹・大西俊成・飯田 修・南口 仁・
川本健治・矢野正道・池岡邦泰・岡本 慎・
田中宣暁・安井治代・石原隆行・土肥智晴・
永田正毅
23) 左冠動脈主幹部の慢性完全閉塞.(続報)
3D-CTによる左主幹部閉塞部位の確認
(医仁会武田総合病院) 白澤邦征・
佐々木良雄・大屋秀文・武田真一・竹岡 玲・
土井哲也・橋本哲男・澤田吉英・河合忠一
(黄内科クリニック) 黄 明宇
【目的】パクリタキセル溶出性ステント(TAXUS)
再狭窄症例の背景因子を検討すること.【対象と
方法】対象は,2007年5月から12月までに当院に
て留置されたTAXUS 232本のうち,2008年7月ま
でに冠動脈造影検査にてfollowし得た105本(62症
例).平均follow up期間8ヶ月.造影上50%以上
を再狭窄とし,再狭窄群(n=21),非再狭窄群(n
=84)の2群に分けてステント留置時の背景因子
を検討.【結果】患者背景および手技背景に有意
な違いは認めなかった.病変背景において,分枝
へのステント留置を要する分岐部病変の頻度が,
再狭窄群にて有意に高かった(29% v.s. 5%,P
=0.004)
.
【結語】分岐部における複数のステント
留置は,TAXUSステントの再狭窄の一因と考え
られた.
21) ベアメタルステント留置後Very Late Stent
Thrombosisを発症した症例
(兵庫県立姫路循環器病センター)
熊田全裕・林 孝俊・山田慎一郎・岩田幸代・
谷口泰代・水谷和郎・岡嶋克則・嶋根 章・
月城泰栄・松本賢亮・觀田 学・今村公威・
井上琢海・田頭 達・田代雅裕・平石真奈・
柴田浩遵・梶谷定志
症例は50歳男性.平成13年7月(43歳時)に不安
定狭心症にてPCI施行(#6の99%狭窄に対して
MULTI-LINK 3.5×15mmを留置)
.その後右冠動
脈の残存狭窄にPCI施行(#2の75%狭窄に対し
てMULTI-LINK 4.0×15mmを留置).平成20年2
月から下血出現したため,5月3日からアスピリ
ン内服中止.5月8日に下部消化管内視鏡検査施
行され,潰瘍性大腸炎と診断されたが,5月14日
入浴中に胸痛出現し,当院に救急搬送された.急
性冠症候群を疑い,MDCTを施行したところ右
冠動脈ステント留置部位に血栓性閉塞を認めた.
本症例はベアメタルステント留置後のVery Late
Stent Thrombosisであるが,当院で経験した他の
4症例とともに考察をまじえて報告する.
38歳女性.冠危険因子なく,心電図・エコー・レ
ントゲンも正常.2年前,前医で冠動脈造影をさ
れ,左冠動脈主幹部の慢性閉塞を指摘.以降も通
常通りに仕事をしていたが,狭心症症状の増悪を
認め当院受診.冠動脈CTにて左冠動脈主幹部の
閉塞と判断.冠動脈造影では左冠動脈入口部を認
めず,右冠動脈より左冠動脈への側副血行路を認
めた.患者は冠動脈バイパス術を受け症状は消
失.左冠動脈主幹部の完全閉塞は突然死に至るこ
とが多いため,冠動脈造影の慢性完全閉塞に関し
ての報告は僅かしかない.昨年症例報告をしたが,
CTの解析を行い解剖的に左房の圧迫が左主幹部
閉塞の原因に加味していると判断された.今回,
3D-CTによる左主幹部閉塞部位の確認と周辺部の
病態解明ができたので報告する.
24) 右冠動脈入口部病変へのシロリムス溶出性
ステント留置後にステント断裂及び再狭窄を心臓
CTで評価し得た1例
(野崎徳洲会病院循環器内科) 西山敦子・
岡本允信・宮本正興・北尾 隆・伊藤鹿島・
奥津匡暁・角辻 暁
【症例】70歳代男性.労作性狭心症の疑いで冠動
脈造影を行い,右冠動脈入口部病変を含む3枝病
変を認めた.#1,#2,#5−6,#14にそれ
ぞれシロリムス溶出性ステントを留置した.12ヶ
月後の心臓CTで,右冠動脈入口部で1セル分の
ステントの部分消失と同部位の再狭窄を認め,断
裂したステント断端が右冠動脈入口部から脱落し
たものと考えられた.冠動脈造影でも心臓CTと
同様に右冠動脈入口部の再狭窄を認め,血管内超
音波で入口部のステント欠損を確認した.入口部
再狭窄に対してはパクリタキセル溶出性ステント
を留置し,良好な拡張を得た.【結論】ステント
断裂,部分消失が再狭窄の要因と考えられる1例
を経験した.今回その診断において心臓CTが非
常に有用であったので報告する.
神戸国際会議場(2008 年 11 月) 941
25) 急性心筋梗塞発症直前に64列MDCTを施行
した一例
(兵庫県立姫路循環器病センター)
山田愼一郎・林 孝俊・谷口泰代・水谷和郎・
岩田幸代・嶋根 章・岡嶋克則・熊田全裕・
月城泰栄・松本賢亮・井上琢海・今村公威・
田代雅裕・梶谷定志
64列MDCTは非侵襲的冠動脈診断に有用である
が解析にはある程度の時間を必要としている.
我々はMDCT施行後に急性心筋梗塞を発症した
症例を経験したので報告する.症例は73歳,男性.
平成20年6月に2回,入浴中に冷汗を伴う胸部圧
迫感を自覚したため当院紹介となった.狭心症の
疑いのため7月14日MDCTを施行したのち,帰宅
した.同日夜のMDCTの解析の結果,急性冠症候
群の疑いが強いと判断,翌15日に本人に連絡をし
来院するように求めた.来院時,心電図上T波の
増高を認めていた.直ちに冠動脈造影を施行した
ところ左冠動脈前下行枝が閉塞しており冠動脈形
成術を施行した.MDCTはoff line解析であり,特
に急性冠症候群が疑われる症例には注意が必要で
あると考えられた.
26) DES留置後6ヶ月以上で発症したdefinite
stent thrombosis(ST)の3例 ̶血管内視鏡的
考察をふまえて̶
(大阪労災病院循環器科) 中谷晋平・
西野雅巳・李 泰治・原 正彦・山上喜由・
橋本光人・谷池正行・加藤弘康・江神康之・
習田 龍・山口仁史・田中健二郎・田内 潤
当院では,DES留置半年後以降のdefinite STを3
例経験した.症例1は70歳男性,不安定狭心症
に対しSESを留置.3ヶ月間の抗血小板剤2剤内
服後,単剤内服にて加療し,留置16ヶ月後にvery
late STを発症した.症例2は62歳男性,狭心症
に対しPESを留置.6ヶ月間の抗血小板剤2剤内
服後,単剤内服にて加療し,留置7ヶ月後にlate
STを発症した.症例3は45歳男性,急性心筋梗
塞に対しSESを留置.6ヶ月間の抗血小板剤2剤
内服後,単剤内服にて加療し,留置33ヶ月後に
very late STを発症した.当院では3症例とも留
置半年後及び,ST発症3ヶ月後に血管内視鏡を
施行しており,全症例で被覆度の上昇を認めてい
る.DESの遅発性血栓症は稀ではあるが重篤な合
併症であり,血管内視鏡の所見が抗血小板剤2剤
服用中止の指標になりうるかを考察した.
27) 血管内視鏡を用いた冠動脈内における黄色
プラークの分布の評価
(大阪警察病院) 増村雄喜・廣谷信一・
小笠原延行・柏瀬一路・平田明生・西尾まゆ・
根本貴祥・松尾浩志・肥後友彰・松井万智子・
樫山智一・和田 暢・小西正三・坂本祥吾・
中西浩之・上田恭敬・児玉和久
【目的】冠動脈疾患患者では,冠動脈3枝におい
て冠動脈内黄色プラークが観察される.今回我々
は血管内視鏡を用いて,冠動脈内のプラークの分
布を評価した.【方法】2007年1月−同年9月に
当院にて血管内視鏡検査を施行された患者96例
(LAD43例,LCX31例,RCA44例)を対象.以下
の方法で評価した.1)中枢側から10mm間隔に
区切り,各区域に認めたプラークの個数の分布.
2)中枢側から10mm間隔に区切った区域におい
て認めたプラーク数の平均値の分布.【結果】1)
LCX,RCAでは中枢側に近い区域に多く,LAD
では中枢側より31−40mmの区域,およそ対角枝
の分岐する区域を中心に多く認めた.2)RCA,
LADに関しては,観察範囲全域にわたり,同程
度認めた.
【まとめ】黄色プラークはLCX,RCA
では近位部に多く,LADでは中間部に多かった.
942 第 106 回近畿地方会
28) シロリムス溶出性ステントおよびパクリタ
キセル溶出性ステント留置後の血管内性状の比較
(関西労災病院循環器科)粟田政樹・
南都伸介・上松正朗・両角隆一・渡部徹也・
大西俊成・飯田 修・世良英子・南口 仁・
矢野正道・川本健二・岡本 慎・安井治代・
田中宣暁・池岡邦泰・永田正毅
(大阪大学先進心血管治療学) 小谷順一
【目的】SES(n=35)およびPES(n=29)留置
後8ヶ月時点の血管内性状を比較すること.【方
法】新生内膜被覆度および血栓の有無を内視鏡で
比較した.新生内膜被覆度はgrade 0(被覆なし)
からgrade 3(新生内膜内に埋没しストラットが
観察不可)の4段階に分類した.また同一ステン
ト内でgradeの異なる新生内膜被覆の不均一を比
較した.
【結果】主要な新生内膜被覆度はSES:
1.3±0.7 vs PESは1.8±1.2と2群間で大きく異な
った(p=0.003).また,新生内膜被覆の不均一
性はPES群でより高かった(P=0.005).血栓の
付着はPES群でより高頻度に認めた(SES:17%
vs PES:44 %,P=0.03.【 結 語 】SESに 比 べ て
PESの新生内膜被覆度はステント間でばらつきが
大きく,同一ステント内でも不均一性が高かった.
29) 病院前より脳低温療法を導入し得た院外心
肺停止の一例
(大阪府三島救命救急センター) 八木良樹・
頭司良介・柚木知之・森 敏純・西本昌義・
筈井 寛・大石泰男
症例は56歳男性,勤務中に倒れているところを同
僚に発見され(最終目撃から発見まで15分),心
肺蘇生及び救急要請がなされた.所轄救急隊が心
室細動を確認し,除細動施行後,心拍再開した(覚
知から11分,最大心肺停止時間30分).心拍再開後,
ドクターカーである特別救急隊の同乗医師が脳低
温療法を導入するため,心拍再開から病院到着ま
での7分間に1100mlの冷却輸液を急速投与した
ところ,病院到着時の初回膀胱温は34.1℃であり,
目標体温到達までの時間は,覚知から18分であっ
た.その後24時間の脳低温療法を行い明らかな後
遺症を認めず離床可能となった.目撃のない心室
細動症例ではあるが,病院前より脳低温療法を導
入し,満足のいく神経学的転機を得た症例であり,
文献的考察を加え報告する.
31) 経皮的冠動脈形成術にて救命され,左冠動
脈主幹部病変の急性心筋梗塞の1例
(橘会東住吉森本病院) 武田久輝・
坂上祐司・藤田琢也・八木 匠・齋藤聡男・
石井 英・岡島一恵・広瀬 真・西田幸生・
瓦林孝彦
症例は67歳男性.2008年5月より胸痛自覚してい
たが放置していた.6月1日胸痛持続するため独
歩で当院受診した.各種検査より広範囲前壁中
隔および側壁のAMIに心不全合併していると診
断し緊急冠動脈造影施行した.左冠動脈主幹部
の完全閉塞病変を認め,IABP挿入の上冠動脈形
成術(PCI)を実施した.血栓吸引後のバルーン
拡張でLAD近位部にもびまん性病変が判明した.
Filtrap挿入し左冠動脈主幹部からLADにかけて
BMS留置した.Cx分岐部直後の病変も認めたた
めKBTで拡張加えた.LADの末梢に狭窄残存す
るがほぼ良好な再灌流得られ終了した.第4病日
にIABPを抜去,第21病日軽快退院となった.左
冠動脈主幹部のAMIは通常予後不良だが,PCIで
救命しえた症例を経験したので報告する.
32) 心肺停止を生じた原因に考察を要した1例
(兵庫医科大学内科学冠疾患科) 森 可智・
高橋敬子・藤井健一・奥村隆啓・正井美帆・
舛谷元丸・佐古田剛・大柳光正
(同循環器内科) 弓場雅夫・安藤友孝・
江角 章・増山 理
【症例】49才男性.勤務先で胸部不快を生じ自身
で救急要請.救急隊到着時心肺停止で,同僚によ
りCPRがなされていた.AED shock 2回施行さ
れ救急車内で心拍再開し当院へ搬送.直後の心電
図でII III aVfのST上昇を認めるが,5分後心電
図は前胸部のST低下のみ認める.緊急冠動脈造
影にて左冠動脈前下行枝近位(#7)に99%狭窄
を認め,同部にPCI施行した.右冠動脈(RCA)
に有意狭窄はなかった.しかし第3,4病日に施
行した核医学検査(RI)にて下壁領域の潅流低
下を認める.初回心電図でRCA領域虚血が疑わ
れることとRIの結果より,病態確認のため冠動
脈アセチルコリン負荷検査をおこなったところ
RCAに攣縮が誘発された.【結語】画像診断が虚
血原因判断に有用であった症例を経験したため報
告する.
30) PCPSを用いた低体温療法を施行し社会復
帰を果たした急性心筋梗塞の1例
(公立南丹病院循環器内科) 内藤大督・
計良夏哉・浦壁洋太・榎本聖子・野村哲矢・
西川 享・辰巳哲也
33) 急性心筋梗塞に対するPCI後に肺出血を来
した一例
(康生会武田病院循環器センター)
中村玲雄・山田健志・宮井伸幸・入江秀和・
木下法之・橋本哲男・田巻俊一
【はじめに】AHAガイドライン2005は,初期心リ
ズムがVFまたはpulseless VTで,心拍再開後も昏
睡状態にある患者には,低体温療法を行うべき
(class IIa)と勧告した.
【症例】71歳男性.駅構
内で突然意識消失し,bystander CPRが開始され
た.初期心電図はVFであり,AEDを使用.搬入
時はPEAであったが,アドレナリンの投与後に
自己心拍が再開した.心電図で胸部誘導のST上
昇を認め,AMIの診断で,PCPSとIABPを導入し
CAGを施行した.seg.7 100%を認め,direct PCI
を行い再灌流に成功した.自己心拍再開後も昏睡
状態にあり,PCPSを利用して低体温療法を行っ
た.復温後,徐々に意識状態は回復し,リハビリ
を経て社会復帰することができた.【結論】蘇生
後に遷延した意識障害に対しPCPSを用いた低体
温療法が奏功した症例を経験したので報告する.
症例は55歳女性.胸痛を主訴に当院へ救急搬送と
なった.心電図上,胸部誘導にてSTの上昇を認
めたため,急性心筋梗塞の診断にて緊急冠動脈造
影を実施した.左冠動脈前下行枝近位部にて完全
閉塞病変を認めたため,血栓吸引後にBMSを留
置し,TIMI-3にて終了した.第2病日から呼吸
困難感を自覚するようになり,貧血の進行を認め
たため,胸部CTを実施したところ,両側上肺野
背側優位のびまん性すりガラス陰影を認め,肺出
血が疑われた.肺うっ血を伴った,急性心筋梗塞
におけるPCI後の肺出血は診断及び早期治療が遅
れる可能性があり,注意が必要である.見過ごさ
ない為にも肺出血の特徴や経過を認識する必要が
あり,若干の文献的考察を加えて報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
34) 当センターにおけるPCPS導入症例の検討
(兵庫県災害医療センター救急部)
宮本哲也・小澤修一
(神戸赤十字病院) 谷口 悠・村田武臣・
黒田祐一
37) 大動脈血栓により左冠動脈主幹部閉塞をき
たした1例
(奈良県立医科大学) 添田恒有・上村史朗・
西田 卓・守川義信・石神賢一・竹田征治・
川田啓之・堀井 学・中嶋民夫・斎藤能彦
【目的】当センターでは心原性CPAに対してドク
ターカー(DA)が出動している.DAが出動した
心室細動症例(Vf)で,PCPS導入例を対象とし,
生命予後を左右する因子を推測した.対象DAが
出動したCPA症例700例中,PCPSを導入した20
例を対象とし,1ヶ月生存例(A群10例)と死亡
群(B群10例)の2群に分け,PCPS導入までの
時間,door to balloon time等を比較検討した.結
果A群では42.6±15分に対し死亡例B群では55.7±
15分で有意差を認めた.door to balloon timeに差
は認めず,救急現場滞在時間は38分であった.考
察社会復帰した症例の多くは現場救急隊により
心拍再開しており,DAの寄与する点は少なく,
Vfが持続する例では早急にPCPSを導入する必要
があり,DAが出動することにより現場滞在が伸
びPCPS早期導入の妨げになる可能性も示唆され
た.
症例は,51歳男性.突然の胸痛を自覚し,当院に
救急搬送された.当科到着時,wide-QRS tachycardia(150bpm)で,脈拍は触知不能であった.
心肺蘇生後,エピネフリン投与で,接合部調律と
なった.心エコーでは全周性の壁運動低下を認め
た.急性冠症候群が疑われ,PCPSサポート下に
緊急CAGを施行した.左右冠動脈に明らかな狭
窄や閉塞を認めず,大動脈造影CTを追加した.
左冠動脈主幹部(LMT)近傍の大動脈壁に5mm
大の腫瘤を認めた.同腫瘤によるLMT閉塞と考
え,LMTを保護する形で冠動脈ステントを留置
した.術後第2病日にPCPSから離脱したが,感
染を契機に多臓器不全となり死亡した.病理解剖
所見では,腫瘤は大動脈壁に起始する血栓であっ
た.大動脈血栓による一過性塞栓症が原因と考え
られた急性心筋梗塞を経験したので報告する.
35) 高齢者の急性心筋梗塞に合併した心室中隔
穿孔を外科的修復術で救命しえた一例
(河内総合病院循環器科) 林 隆治・
市川 稔・岩田昭夫・南森秀幸・竹内元康・
川野成夫・林 英宰・三嶋正芳
(同心臓血管外科) 山口高広・松田成人
38) 高度狭窄病変に併発した冠動脈瘤に対し冠
動脈瘤切除術およびCABGを施行した一例
(愛仁会高槻病院循環器内科) 村井直樹・
茂真由美・佐々木義浩・高井栄治・高岡秀幸
症例は80歳女性.2007年7月23日安静時に突然の
胸痛を自覚し救急搬送となった.諸検査から急性
心筋梗塞の診断で緊急冠動脈造影を直ちに施行し
た.造影結果は前下行枝中間部(#7)完全閉塞
であり,閉塞部位へステントを留置して血行再建
に成功した.術後良好に経過していたが,第12病
日全収縮期雑音を聴取したため,心エコー検査
を直ちに施行した.左室から右室への異常シャ
ントを確認し心室中隔穿孔の診断に至った.比
較的血行動態は安定しており,待機的に第18病
日,Komeda-David法を用いて穿孔部位の閉鎖を
行い,9月8日独歩退院に至った.今回我々は高
齢者の急性前壁中隔心筋梗塞に合併した心室中隔
穿孔を経験したが,外科的閉鎖術を施行すること
で,独歩他院にいたることができた症例を経験し
たので若干の文献的考察を加えて報告する.
36) ガイドワイヤーによる冠動脈穿孔に対して
マイクロカテーテルよりクロット注入にて止血し
得た1例
(市立福知山市民病院循環器科) 西尾 学・
堀田祐馬・松永晋作・林 宏憲・阪本 貴
PCI中の冠動脈穿孔は時に重篤な転帰を辿り速や
かな対応が必要な合併症である.症例は78歳男性.
心エコーにて側下壁運動低下,心筋シンチにて虚
血再分布所見を認めCAG施行,三枝病変を認め,
RCAとLCXに対しPCI施行した.RCAのPCI施行
後,LCXは慢性完全閉塞で難渋したがDES挿入に
成功した.しかしガイドワイヤーがLCX#15より
穿孔し末梢側への血管外漏出を認めた.これに対
しステント内バルーン拡張による冠血流停止やマ
イクロカテーテルにて#15末梢より硫酸プロタミ
ン注入を試みたが止血できず,穿刺時の穿刺針内
筒よりクロットを回収しマイクロカテーテル先端
より注入し止血し得た.治療部位の血流も良好で
あった.冠動脈穿孔時の対応について若干の考察
を踏まえ報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
65歳男性.2002年に下壁心筋梗塞(RCA#3 100
%閉塞)に対しPCI施行歴あり,2002年12月CAG
で#6に9.6×5.4mmの冠動脈瘤,#1 99%狭窄
病変を指摘された.2003年6月CAGで#1 100%
CTO認め,PCI試みるもunsuccess.この際#6
冠動脈瘤に変化なく,以後抗凝固療法で冠動脈瘤
をfollow upする方針となった.2004年5月CAG
で#6冠動脈瘤に変化なし.以後運動負荷心電
図検査にてfollowも虚血性変化認めず.2008年4
月26日心臓CTで#6冠動脈瘤23×13mmと拡大
傾向,瘤近位側#6 75%狭窄病変の進行認めた.
2008年5月16日CAGで#6 99%狭窄,遠位側に
23×17mmに拡大した冠動脈瘤を認めた.2008年
6月24日冠動脈瘤切除術,CABG施行.術前冠動
脈瘤は嚢状と考えていたが,実際には紡錘状,瘤
遠位部にLAD#7,diagonal#9を認めた.今回
比較的稀な冠動脈瘤の症例を経験したので報告す
る.
39) 下壁急性心筋梗塞合併した腹部大動脈瘤破
裂の一例
(兵庫医科大学内科学循環器内科)
安藤友孝・増山 理
(同冠疾患科) 藤井健一・奥村隆啓・
森 可智・高橋敬子・舛谷元丸・大柳光正
(兵庫医科大学心臓血管外科) 宮本裕治
症例は74歳,男性.高血圧,糖尿病にて近医へ通
院加療中であった.平成20年5月27日,軽労作後
に強い胸背部痛が出現し当院へ救急搬送.来院
時,収縮期血圧60mmHgとショック状態を呈して
い た. 心 電 図 上II,III,aVFでST上 昇, 心 臓 超
音波検査で下壁に軽度の壁運動異常を認めたため
急性下壁心筋梗塞と診断し緊急冠動脈造影を行っ
た.造影上右冠動脈近位部の完全閉塞と判断し
IABP補助下に同部位へ経皮的冠動脈インターベ
ンションを試みた.しかし,ガイドワイヤーが病
変を通過せず,IABP挿入後STが基線まで低下し
たため再灌流はさせず終了とした.その後,貧血
の進行,急激な血圧低下,腹部膨隆所見を認めた
ため腹部大動脈瘤の破裂と診断し,腹部大動脈瘤
人工血管置換術を行い救命しえた症例を経験した
ので報告する.
40) 造影剤アレルギーによる冠動脈攣縮から心
原性ショックに至ったと考えられた一例
(大阪医科大学附属病院第一内科)
田崎龍之介・村井基修・谷川 淳・柚木孝仁・
武田義弘・新名荘史・岡部太一・中小路隆裕・
星賀正明・石原 正・花房俊昭
65歳女性.これまでに7回心臓カテーテル検査/
治療を受けている.今回追跡造影検査施行時に右
冠動脈造影し有意狭窄は認めなかったが,その直
後から掻痒感が出現し,血圧低下に伴うショック
状態に至り,右冠動脈入口部よりTIMI0となった.
ISDN冠動脈投与するも改善せず,完全房室ブロ
ックを伴うST上昇の為,一時的ペースメーカー
挿入した.造影剤アレルギーに伴った冠攣縮と考
え,リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム500mgを
静脈投与および頻回のニコランジルの冠動脈内注
入にて攣縮が解除された時点で検査終了した.造
影剤アレルギーによる冠攣縮から心原性ショック
に至ったと考えられる症例を経験したので,若干
の文献的考察を加え報告する.
41) CPAより蘇生に成功し,ICD植込みを行っ
た冠攣縮性狭心症の一症例
(神戸大学医学部附属病院循環器内科学)
宗 慎一・井上智裕・山下智也・高見 薫・
石田達郎・吉田明弘・志手淳也・川合宏哉・
平田健一
症例は58歳男性.2008年3月突然の胸痛を訴え
心肺停止状態となりCPRを継続しながら当院へ搬
送.搬送中も心室性不整脈が頻発し,搬送後DC
及び薬物の投与を行うも心室性不整脈が持続し
た た めPCPSを 開 始 し た.ECGにII・III・aVf・
V4−V6でST低 下 を 認 め た た め,ACSを 疑 い 緊
急CAGを施行した所,RCA#1−#2:99%狭
窄が認められた.ISDNの冠注後も狭窄が解除し
ないため,PCIを開始したがガイドカテーテル
engage後のfirst shotでは狭窄は0%に解除を認
め,VSAPと判断した.全身状態改善後,Ca拮抗
薬与下にAch負荷試験を施行したが,LAD・LCx
近位部に冠攣縮が誘発された.薬剤による完全な
コントロールは困難と思われたためICD埋込みを
施行した.薬剤抵抗性のVSAPに対してICD植込
みを行った症例を経験したので,若干の文献的考
察を添えて報告する.
42) 難治性異型狭心症に対し高用量のフルバス
タチン投与が有効であった1例
(兵庫医科大学内科学冠疾患科) 中 聡夫・
舛谷元丸・佐古田剛・大柳光正
(同循環器内科)江角 章・辻野 健・
増山 理
61歳の男性.1年前に急性下壁梗塞に対しPCIを
施行.その後異型狭心症と診断され,β遮断薬を
中止し,カルシウム拮抗剤を追加・増量したが安
静時胸痛が持続していた.慢性期の冠動脈造影で
左冠動脈セグメント7の90%狭窄を認めた為PCI
を施行したが,その後も同様の胸痛が持続したた
めスタチン製剤を今まで服用していたピタバスタ
チン常用量から,高い血管移行性を示すフルバス
タチン高用量に変更したところ胸痛発作は消失し
た.他施設臨床試験SCASTの結果から冠攣縮に
対するスタチン製剤とカルシウム拮抗剤の併用は
有用であることが示された.しかし,冠攣縮を完
全に抑制した訳ではなく,今後スタチン製剤の種
類・用量による差異があるかなど今後検討が必要
であると考えられ,本例は興味深い症例と思われ
た為ここに報告する.
神戸国際会議場(2008 年 11 月) 943
43) 運動負荷によりST上昇を認めアセチルコ
リン負荷にて診断された運動誘発性冠攣縮性狭心
症の1例
(大阪府立急性期・総合医療センター心臓内科)
安居 琢・奥山裕司・山田貴久・森田 孝・
真田昌爾・古川善郎・増田正晴・岩崎祐介・
上田宏達・岡田健志・川崎真佐登・福並正剛
46) 肺炎・気管支炎の加療目的にて入院した高
齢者に偶発的に発見されたBrugada型心電図変化
の一例
(大阪大学老年高血圧内科) 楠 博・
藤澤智巳・石川一彦・高木 崇・大西美幸・
勝谷友宏・大石 充・樂木宏実
(同循環器内科) 水野裕八
症例は40歳男性.労作時の胸痛があり,前医を受
診した.運動負荷心電図を施行したところ,前胸
部誘導でのST上昇を認めたため,当科を紹介さ
れた.冠動脈造影を施行したところ,左前下行枝
#6に75%狭窄を認めた.運動負荷によりST上
昇を来す病変とは考えにくく,アセチルコリン
負荷を施行した.アセチルコリン冠注後に胸痛,
ST上昇があり,冠動脈造影では#6で100%とな
り,左回旋枝はびまん性に90−99%狭窄を認め,
著明な血圧低下を生じた.ニトログリセリン冠注
では冠攣縮は改善しなかったが,ニコランジル冠
注により冠攣縮は改善し,症状や心電図変化も消
失した.アセチルコリン負荷により診断された運
動誘発性冠攣縮性狭心症を経験したため報告す
る.
症例は79歳男性.発作性心房細動に対してワー
ファリン療法と動悸時の塩酸ピルジカイニド
(100mg)頓用で対処していた.平成20年3月13
日38.5℃の発熱を認め肺炎の加療目的にて当科
入院.3月29日,突如モニター上40連発のwide
QRS tachycardiaを 認 め た.VT様 波 形 だ が, 失
神・ショック等は認めず,十二誘導ECGでV1−
V3にcoved型のST上昇を伴うBrugada型心電図波
形が認められた.塩酸ピルジカイニド頓用による
催不整脈作用及びBrugada型波形の顕在化が考え
られた.4月18日循環器内科にて電気生理学検査
(EPS)施行.期外刺激にてVFの誘発が認められ
患者との協議の結果ICD植え込みを行った.無症
状のBrugada型の心電図波形を認めた場合のICD
適応については更なる検討を要するが若干の文献
的考察も含めて報告する.
44) 甲状腺機能亢進症に冠攣縮性狭心症を合併
した1症例
(六甲アイランド病院) 宮本真希・
井上智夫・土井智文・三上修司・大久保英明・
岩井健二・辻 隆之
47) 2か所の起源を持つ特発性心室頻拍のアブ
レーションにおいてnon-contact mappingが有効
であった一症例
(神鋼加古川病院) 野中康行
(神戸大学第一内科) 清水宏紀・山名祥太・
金子明弘・伴 親徳・開發謙次・工藤順弘・
河崎 悟・角谷 誠・大西祥男・宇高 功
症例は68歳女性.2008年5月,安静時胸痛を主訴
に救急受診.頻脈性心房細動を認めた為入院の上
ワーファリンとベラパミルの内服を開始,数時間
後には洞調律に回復した.同日夜,安静時胸痛を
認めたが数分で症状は自然軽快した.心電図は洞
調律でST変化は捉えられなかった.翌朝3者負
荷心電図を施行したところ過換気負荷にて著明な
ST上昇,胸痛を認めた為冠攣縮性狭心症と診断
しニコランジルの内服を開始した.タリウム負荷
シンチでは虚血の所見は認められなかった.心房
細動の原因検索の一環として甲状腺を調べたとこ
ろ機能亢進を認めチアマゾールの内服を開始し機
能改善を認めた.薬物コントロール良好でその後
胸痛は認めていない.甲状腺機能亢進状態と冠攣
縮との関連性が報告されており,ここで文献的考
察を含め報告する.
45) ステント内再狭窄を繰り返す病変にシロリ
ムス溶出ステントを2回留置後,難治性冠攣縮が
明らかになった一例
(国立循環器病センター心臓血管内科)
大村淳一・笠原洋一・中尾一泰・山中 太・
屋宜宣仁・谷口琢也・國分宣明・片岡 有・
阿部 充・大塚頼隆・野々木宏
症例は50歳台男性.2006年に不安定狭心症にて多
院で左冠動脈前下行枝(LAD)にベアメタルス
テント(BMS)を留置.以後,ステント内狭窄
を繰り返し,シロリムス溶出ステント(SES)及
びBMSを留置.2008年3月に不安定狭心症再発
し当院受診.冠動脈造影検査(CAG)にてやは
りステント内狭窄を認め,再度SESを留置した.
6月より再度胸痛の出現を認め,CAGを行いも
有意狭窄病変を認めず.冠攣祝を疑い誘発を行
ったところ,胸痛を伴う心電図変化及び造影上
LADの高度狭窄及び回旋枝の閉塞を認め,冠攣
縮性狭心症と診断した.経口薬による冠攣縮の抑
制を試みたが難渋し,最終的にCa拮抗剤及び硝
酸剤の多剤併用を必要とした.2回目のSESを留
置した後に冠攣縮が明らかになった一例を経験し
たので,文献的考察を加えて報告する.
944 第 106 回近畿地方会
【症例/目的】2か所の起源が推定される右室流
出路起源の特発性心室頻拍に対する根治治療【方
法】第1回カテーテルアブレーションはバスケッ
トカテーテルガイド下で施行しactivation mapping
及びpacemappingにて最早期興奮部位起源と推定
される右室流出路中隔部に計14回の通電を施行し
たが不成功に終わった.第2回カテーテルアブレ
ーションをno-contact mapping(Ensite system)
を用いて施行し心室期外収縮の起源を右室流出路
隔側と右室自由壁に認め,Virtual unipolar電位で
陰性電位の開始部位(early activation:EA)およ
び最大陰性電位の開始部位(breakout:BO)同部
位を計17回通電し心室頻拍の消失を認めた.【結
論】2か所の起源を持つ特発性心室頻拍のアブレ
ーションにおいてno-contact mappingが有効であ
った症例を経験したので報告する.
48) Brugada型心電図を呈したが失神の原因は神
経調節性失神と考えられた一症例
(近畿大学医学部奈良病院) 太居洋平・
横田良司・上森宣嗣・溝部道生・石川千紗都・
清水良栄・羽場一直・胡内一郎・城谷 学
症例は61歳男性.家族歴に突然死はない.既往歴
に前立腺肥大.食事後に失神したことが2回ある
が精査されなかった.【現病歴】農作業後,昼前
に立ち話をしていて失神し救急搬送された.心電
図上右脚ブロック,V1−V3でST上昇が認められ
精査目的で入院した.脳MRI,脳波で異常所見は
なく,冠動脈造影で有意狭窄は認めなかった.電
気生理学的検査で洞機能,房室伝導に異常はな
かった.右室心尖部,流出路からの3連発期外
刺激により心室頻拍や細動は誘発されなかった.
pilsicainide静注でもSTに変化はなかった.Headup tilt試験で徐脈を伴わずに血圧が低下し失神し
た.Brugada型心電図を示したが血管弛緩型の神
経調節性失神と診断された一例を経験したので報
告する.
49) 突然死の家族歴を契機に診断されたBrugada
症候群の1例
(天理よろづ相談所病院循環器内科)
山尾一哉・坂本二郎・花澤康司・吉谷和泰・
三宅 誠・本岡眞琴・貝谷和昭・和泉俊明・
玄 博允・泉 知里・中川義久
症例は52歳男性.2008年3月に前胸部違和感を
自覚し近医受診.心電図はほぼ正常であったが
突然死の家族歴から,1肋間上での胸部誘導を
記録され,saddle back typeのST上昇を認めた.
Brugada症候群を疑い当院紹介受診.精査目的で
入院となった.薬剤負荷試験においてcoved type
へと変化し,心臓電気生理検査では右室心尖部期
外刺激にて心室細動が誘発された.冠動脈造影と
左室造影は正常であった.本人,家族との相談
のうえICD植え込みとした.わが国の多施設共同
研究では,無症候性例においては唯一,突然死や
Brugada症候群の家族歴の有無が心事故の有意な
予後予測因子とされる.突然死の家族歴から1肋
間上での胸部誘導を記録する必要性及びICDの適
応について考察したい.
50) VSDパッチ閉鎖術後の心室頻拍の一例
(兵庫医科大学内科学循環器内科)
中村浩彰・峰 隆直・増山 理
(同冠疾患科) 金森徹三・大柳光正
症例は64歳男性.昭和49年にVSDに対してパッ
チ閉鎖術施行.平成7年よりVTに対して内服加
療されていた.平成19年3月に胸部不快にて当科
受診したところ,wide QRS regular tachycardia
(左脚ブロック+上方軸,HR140bpm)認め緊急
入院となる.キシロカイン投与にて頻拍停止し,
後日アブレーション術施行した.入院時に認めた
波形と同様の頻拍が誘発され,同頻拍はVTと考
え ら れ た.VT中 にelectroanatomical mapping施
行した.右室流入路の,三尖弁輪近傍の中隔側
を最早期とするfocal VTと考えられた.同部位に
てfragmented potentialを認めた.同部位にてVT
中にアブレーション行ったところ,VT停止した.
その後VTの誘発試みるも誘発されず.アブレー
ション終了した.VSDパッチ閉鎖術後の,focal
パターンを示した心室頻拍の一例を経験した.
51) 低カリウム血症に伴う多形性心室頻拍を認
めたBrugada症候群の1例
(大阪警察病院循環器科) 樫山智一・
廣谷信一・小笠原延行・柏瀬一路・平田明生・
西尾まゆ・松尾浩志・肥後友彰・松井万智子・
増村雄喜・和田 暢
【症例】76歳男性,脳梗塞,高血圧にて近医通院
加療中.今までに失神歴,及び突然死の家族歴を
認めなかった.自宅にて倒れているところを家
人が発見し救急要請.救急隊到着時心肺停止状
態であり,モニター上多形性心室頻拍を認めた.
AEDの1回の作動により洞調律に回復し当院救
急外来搬送となった.12誘導心電図上V1−3誘導
でcoved型のST上昇を呈するBrugada型心電図を
認め,また血清カリウム値2.1mEq/lと著明な低
カリウム血症を認めた.適正な血清カリウム濃度
の補正により,その後不整脈,失神は認められな
かった.患者は今まで特に指摘されていなかった
が,過去の心電図で既にBrugada型心電図を認め
ており,Brugada型心電を呈する患者に低カリウ
ム血症により心室頻拍,心肺停止を来たす場合が
あり,注意が必要であると考えられた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
52) 心室細動による心肺停止をきたしたCD36
欠損症(type1)の一例
(大阪市立総合医療センター循環器内科)
勅使川原悟・喜納直人・田渕 勲・植松庄子・
古川敦子・田川慈子・中川英一郎・阿部幸雄・
小松龍士・成子隆彦・伊藤 彰・土師一夫
症例は59歳男性.会社でのデスクワーク中に心肺
停止状態となり,同僚によるCPRが施行された.
救急車内ではVfであり,DCで除細動に成功した.
当院到着時には意識清明でバイタルサインも安
定していた.心電図では有意なST変化はなく,
QTcが519msecであった.虚血性心疾患の可能性
を考え冠動脈造影を施行したが,器質的狭窄はな
く,アセチルコリン負荷で胸痛や心電図変化はな
いもののLAD遠位部が99%となった.Ca拮抗薬,
硝酸薬の投与に加え,ICD植え込みを施行した.
急性期・慢性期に施行したBMIPP心筋シンチグ
ラムでは両時期とも全くの無集積であり,その後
の表面マーカーの検索からCD36欠損症(type1)
であることが明らかとなった.CD36欠損と心室
細動,冠攣縮の関係は不明であり,若干の文献的
検索を加えて報告する.
53) 軟球が左胸部を直撃後,埋め込み型除細動
器が頻回誤作動した一例
(滋賀医科大学呼吸循環器内科) 藤野 晋・
伊藤英樹・中澤優子・八尾武憲・芦原貴司・
城日加里・藤井応理・杉本喜久・伊藤 誠・
堀江 稔
症例は41歳男性.17歳時の健康診断で2度房室ブ
ロックを指摘されたが経過観察されていた.22歳
時に突然意識消失が出現.徐脈依存性特発性心室
細動と診断され,29歳時にペースメーカー植込術
を施行された.心室ペーシングの閾値測定中に心
室細動が出現し,35歳時に除細動器(ICD)植込
術が施行された.今回,少年野球の練習で捕手を
していたところ,ファウルチップが左胸を直撃し,
数日後からICDが頻回に作動するようになり救急
車で当院へ搬送された.モニター上洞調律にもか
かわらずICDが作動しており誤作動と判断し除細
動機能を停止した.心室リード閾値は胸打撲後に
上昇しており,心室リードの断線が誤作動の原因
と判断しICDの再移植術を施行した.ICD植え込
み症例では外的負荷によるリード損傷が誤作動を
引き起こすこともあり注意を要する.
54) 難治性incessant VTに対し統合的アプロー
チが有効であった一症例
(滋賀医科大学呼吸循環器内科) 重森 度・
芦原貴司・大村陽一・宮田 悠・八尾武憲・
中澤優子・伊藤英樹・城日加里・北川貢嗣・
山本 孝・杉本喜久・伊藤 誠・堀江 稔
症例は69歳男性.陳旧性心筋梗塞,慢性心不全を
背景に,incessant VTのため紹介入院.前医では
163bpmの持続性VTのためDC 7回施行.間質性
肺炎の既往があり,アミオダロン(AMD)投与
は行なわれず.転院後,AMD持続点滴開始もVT
頻発.不整脈基質として虚血を疑い,第3病日,
#2−4のdiffuse 90%狭窄に対しPCI施行.同
日,EPSで同定したLV側壁基部のVT起源に対し,
catheter ablation(ABL)で一旦抑制も,第5病
日より再発.第6病日ICD植込み.以降もAMD
下にて非持続性VTとICD作動繰り返すため,第
26病日,LV後側壁でfragmented potentialを有す
る低電位領域に対するABLでVT抑制に成功した.
退院後の経過良好.基礎心疾患を有する難治性
incessant VTに対し,AMD,PCI,ICD,ABLに
よる統合的アプローチが有効であった稀な症例を
経験したので報告した.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
55) 洞調律時心室内伝導障害を伴う心室頻拍に
対しアブレーションを施行した筋強直性ジストロ
フィーの一例
(神戸大学循環器内科学分野) 黒田 優・
吉田明弘・福沢公二・高見 薫・熊谷寛之・
鳥居聡子・高見 充・伊藤光哲・北 智之・
平田健一
62歳,女性.糖尿病,高血圧,発作性心房細動に
て加療中であったが,本年6月外来時に無症候性
持続性心室頻拍(VT;140回/分,右脚ブロック
型・右軸偏位)を認め,Ia薬により停止,再発を
繰り返した.洞調律時は以前から右脚ブロック,
左軸偏位,1度房室ブロックであった.心機能,
冠動脈に異常なく,伝導障害に合併した特発性
VTと考え,除細動器埋込み後Ic薬にて治療を試
みたが,心室内伝導障害が高度となり断念し,カ
テーテルアブレーションを行った.左室造影で前
壁中部から心尖部に軽度壁運動低下を認め,同部
は低電位であった.VTはペーシングにて誘発停
止可能であったが前壁中部を最早とするfocal様
式を示し,同部位の通電にて停止,誘発不能とな
った.その後の精査で筋強直性ジストロフィーが
判明し,一連の心臓障害の原因と考えられた.
56) 早期再分極に関連したと考えられたVFの
一例
(兵庫県災害医療センター循環器科)
谷口 悠・五十嵐宣明・栗林佐智子・
村田武臣・宮本哲也・黒田祐一
【症例】34歳男性【既往歴】特記事項なし【現病歴】
自宅で就寝中,夫の様子がおかしいことに気付き
妻が救急要請,電話中に意識消失,呼吸停止した
ため消防局の口頭指導で妻がCPR施行.救急隊到
着後,除細動し心拍再開(推定心停止時間10分).
当院搬送後の検査にて,頭部胸腹部CT上異常所
見なく,CAG上normal coronary,心エコー上も
心器質的疾患認めず.心電図上II,III,aVf,V4
∼V6でQRSにnotchを認めた.脳保護療法施行し
第4病日に抜管.その後意識はほぼクリアとなり
神経学的後遺症は認めず.亜急性期に大学病院で
塩酸ピルジカイニド負荷試験施行したところV2,
V3のST上昇を認め,早期再分極に関連したVFと
考えられICD埋込みとなった.早期再分極に関連
したVFを発症し完全社会復帰した一例を経験し
たので,若干の文献的考察を踏まえて報告する.
58) 甲状腺クリーゼに合併した心房細動に対
し,アミオダロン点滴が有効であった1例
(兵庫医科大学内科学循環器内科)
三上浩司・中村浩彰・峰 隆直・増山 理
(同冠疾患科) 金森徹三・大柳光正
【症例】28歳女性.【現病歴】平成10年,Basedow
病を発症.近医にて内服加療を開始されたが,同
年,自己判断にて服薬を中止した.H20年1月中
旬より動悸・呼吸困難を自覚.症状改善しないた
め,近医を受診.血圧低下,頻脈性心房細動認め,
電気的除細動200Jを施行され,洞調律となった.
しかし,すぐに心房細動に戻り,低血圧状態が続
いた.甲状腺クリーゼに合併した心房細動・心原
性ショックと診断され,当院に転送された.ジギ
タリス,ベラパミル,プロプラノロール投与を行
うも,心拍数180台が続いた.シベンゾリン,ア
ミサリン投与,電気的除細動で洞調律となるも,
すぐに心房細動に移行し,洞調律を維持できなか
った.そこでアミオダロン点滴注射を行ったとこ
ろ,薬理学的除細動に成功し,洞調律を維持する
ことができた.
59) アミオダロンにて食思不振をきたし心室頻
拍の再発を認めた一例
(関西労災病院循環器科) 石原隆行・
渡部徹也・南都伸介・上松正朗・両角隆一・
粟田政樹・大西俊成・飯田 修・世良英子・
南口 仁・川本健治・矢野正道・池岡邦泰・
岡本 慎・田中宣暁・安井治代・土肥智晴・
永田正毅
症例は59歳男性.平成18年2月より拡張型心筋症
にて外来加療中であった.同年10月に失神の症状
が出現し,電気生理学的検査にて左冠尖由来の心
室頻拍が認められた.同部位に計2回のアブレー
ションを行ったが,いずれも再発を認めた.各種
抗不整脈薬にも抵抗性があり,平成20年4月より
アミオダロンを導入したところ,心室頻拍は消失
したが,それと共に食欲不振の症状も出現した.
アミオダロンを中止し約1ヶ月かけて血中濃度を
539ng/mlから50ng/mlまで低下させたところ,食
欲は回復したが,心室頻拍が再発した.その後,
抗不整脈薬が使用不可でアブレーションも無効で
あったため,植込み型除細動器を導入した.アミ
オダロンにて心室頻拍が著明に抑制されたものの
食思不振のため使用を中止した一例を経験した.
文献的考察を踏まえて報告する.
57) 極端な1度AV blockのため両室ペーシング
率が低下し心不全増悪に陥ったCRT-D植え込み後
の拡張型心筋症の1例
(大阪府立急性期総合医療センター)
岡田健志・奥山裕司・古川善郎・森田 孝・
真田昌爾・増田正晴・岩崎祐介・安居 琢・
上田宏達・川崎真佐登・山田貴久・福並正剛
60) ペースメーカー記録上失神の原因が上室性
頻拍と考えられEPSを施行し心房頻拍アブレー
ションに成功した1例
(大阪労災病院循環器科) 李 泰治・
西野雅巳・原 正彦・中谷晋平・山上喜由・
橋本光人・谷池正行・加藤弘康・江神康之・
習田 龍・山口仁史・田中健二郎・田内 潤・
山田義夫
77歳女性.拡張型心筋症による慢性心不全のため
2005年より外来通院中.2008年2月,相対的徐脈
による心不全増悪のため入院.薬剤投与にて急性
増悪を脱した後にCRT-Dの植え込みを施行.1
度房室ブロックを合併していたためPVARPを短
めに設定し両室ペーシング率を上げる工夫を行い
外来通院とした.しかし5月下旬,再度心不全増
悪にて入院.安静・薬剤投与およびV−V delayの
変更にて一旦心不全は軽快した.しかし両室ペー
シングが入らなくなり再び心不全は増悪した.心
室性期外収縮後,心房波がPVARP内に入り,合
併する高度の1度房室ブロックのためAR−VSの
sequenceとなったためと診断した.CRT-Dの設
定変更では改善されず,房室結節アブレーション
を施行した.これにより両室ペーシング率の著明
な上昇が得られ,心不全は速やかに改善した.
症例は63歳女性.H6年にSSSによる失神発作に
対して,ペースメーカー(PM)植え込み術を施
行されたがH20年2/10自転車走行中に突然の失神
により転倒したため,当院来院となった.失神時
PM記録上心房・心室ともに190bpm前後の頻脈発
作を認めた.またリード不全も疑われたため,新
規PM植え込みおよび症候性頻脈発作に対して精
査加療目的にて入院となり,5/2電気生理学的検
査を施行した.頻拍はHRAからの連続刺激にて
誘発され,12ECG上はlong RP type narrow QRS
tachycardiaを呈し,心内心電図では心房最早期
興奮部位はCS入口部近傍であった.V−A伝導は
認めず,頻拍の原因はCS入口部近傍のATと診断
した.頻拍の最早期興奮部位より20msec先行す
る部位を中心にablationを施行し,頻拍が誘発さ
れないことを確認して終了とした.
神戸国際会議場(2008 年 11 月) 945
61) 心室性期外収縮時の三尖弁逆流による難治
性下腿浮腫に対し,アブレーションが有効であっ
た1例
(兵庫県立姫路循環器病センター循環器科)
觀田 学・岡嶋克則・嶋根 章・水谷和郎・
今村公威・林 孝俊・谷口泰代・山田慎一郎・
岩田幸代・熊田全裕・松本賢亮・月城泰栄・ 井上琢海・田頭 達・田代雅裕・柴田浩遵・
梶谷定志
(朝来和田山医療センター内科) 吉田雅美
症例は58歳女性.2008年4月より出現した両下腿
浮腫を主訴に近医を受診.利尿剤に反応乏しく,
頻回に心室性期外収縮(PVC)を認めるため当院
紹介受診.1日に44288回の左脚ブロック型下方
軸の単源性PVC及び左室駆出率54%と軽度心機能
低下を認めた.同PVCに対して,カテーテルアブ
レーション施行.右室造影でPVCに一致して下大
静脈まで到達する著明な三尖弁逆流があり,PVC
時に約5mmHgの下大静脈圧上昇を認めた.PVC
は右室流出路中隔側起源でCARTO systemを用い
て起源を同定し,焼灼した.アブレーション後
PVCは完全に消失し,下腿浮腫は利尿剤に反応し
改善傾向となった.多発するPVCが下腿浮腫に関
与した興味深い症例と思われ報告する.
62) ペースメーカージェネレーター露出をシス
テム除去せずに対処した一症例
(大阪警察病院) 中西浩之・根本貴祥・
柏瀬一路・樫山智一・増村雄喜・和田 暢・
肥後友彰・松井万智子・松尾浩志・西尾まゆ・
平田明生・小笠原延行・廣谷信一・上田恭敬
(尼崎中央病院) 児玉和久
症例は80歳女性.主訴はペースメーカージェネレ
ーター露出.平成16年2月に完全房室ブロックに
対して近医にてペースメーカー埋め込み術施行.
経過中,ジェネレーターの移動による違和感を認
め,平成17年2月に大胸筋下植え込み術施行.以
後著変なく経過.平成20年になり再度同様の違和
感が出現し,ジェネレーターが一部体外へ露出し
たため当科紹介受診.入院後,壊死皮膚デブリド
マン,ジェネレーター交換施行.ポケット内は肉
眼上明らかな異常は認めず.ポケット内の細菌培
養検査では細菌検出されず.ポケット内周辺をデ
ブリドマンし,ジェネレーター交換の後,大胸筋
下に埋め直して手術終了.術後経過良好にて術後
第17病日に退院.最近,当科では形成外科と協力
し,システム除去せずに管理可能な症例もある.
その成績もあわせて報告する.
63) 僧帽弁輪起源心室頻拍に対し経皮的カテー
テル心筋焼灼術が有効であった一例
(大阪警察病院心臓センター内科)
松井万智子・平田明生・和田 暢・樫山智一・
増村雄喜・小西正三・中西浩之・坂本祥吾・
肥後友彰・松尾浩志・根本貴祥・西尾まゆ・
柏瀬一路・小笠原延行・廣谷信一・上田恭敬・
児玉和久
症例は80歳女性.平成20年5月動悸とふらつきを
認め近医受診したところ,HR150bpmのwide QRS
tachycardiaと収縮期血圧の低下を認めた為,当院
へ救急搬送となった.頻拍は12誘導心電図上,下
方軸で,胸部誘導では全て上向きであり,下壁誘
導にてQRS波の後半部にlate notchingを認めた.
頻拍は,アデノシンでは停止せず,ベラパミル静
注にて停止したが,再発を繰り返した.12誘導心
電図上,頻拍の起源は,僧帽弁輪前側壁が予想さ
れた.入院の上,5月14日EPS・Abalationを施行.
容易に心室頻拍が誘発され,pace mappingにて,
僧帽弁輪近傍やや前側壁側で12/12を呈する部位
を認め,同部位に対し数回通電を施行した.以後,
誘発にても持続する心室頻拍の出現を認めず,セ
ッションを終了とした.以後外来にて同様の頻拍
を認めず経過良好である.
946 第 106 回近畿地方会
64) 右室ペーシング率が血清BNP値に与える
影響について
(大阪警察病院) 和田 暢・柏瀬一路・
松井万智子・松尾浩志・肥後友彰・樫山智一・
増村雄喜・小西正三・坂本祥吾・中西浩之・
根本貴祥・西尾まゆ・平田明生・小笠原延行・
廣谷信一・上田恭敬・児玉和久
右室ペーシングは心機能に悪影響を及ぼすと考え
られている.そこで,血清BNP値に注目して右室
ペーシングが心機能に与える影響について検討し
た.94人のSSS患者,50人のAVブロック患者を対
象として,血清BNP値と測定前3ヶ月間の心室
ペーシング率について検討した.MOST studyに
準じて心室ペーシング率が40%以上を高ペーシン
グ群,40%未満を低ペーシング群とした.高ペー
シング群(n=70)の血清BNP値は,低ペーシン
グ群(n=74)に比べて有意に高値であった(123.7
±151.1 vs. 73.4±104.7pg/ml,p=0.021).右室ペ
ーシングは,SSSとAVブロック患者で,血清BNP
値を上昇させると考えられた.
67) Sinus venosus ASD,PLSVC症例の心房頻
拍に対するカテーテルアブレーションの一例
(枚方公済病院循環器科) 樋口貴文・
北口勝司・尾崎春信・山内亮子・竹中洋幸・
竹中琴重
(枚方市民病院循環器科) 中島 伯
PLSVC,ASD合併患者におけるPSVTに対するカ
テーテルアブレーションの報告は少なくその多く
は副伝導路症候群あるいは心房細動例である.本
症例は74才,男性で動悸発作を繰り返すためアブ
レーション目的に紹介された.ASDによる容量負
荷のため心房は拡大変性しておりPLSVCが環流
するCSは異常拡張していた.そのためCS内の電
極カテーテルは極めて不安定であった.2種類の
頻拍が誘発されたものの詳細なEPSが困難であっ
た.Conservative methodによるアブレーション
が困難で解剖学的にも複雑な症例においてEAM
が有効であったので文献的考察を加え報告する.
65) EnSite CFE map機能を用いた発作性心房細
動に対するカテーテルアブレーション治療の1例
(滋賀県立成人病センター循環器科)
武田晋作・天谷直貴・竹内雄三・西尾壮示・
張田健志・石井 充・岡田正治・羽田龍彦・
小菅邦彦・池口 滋
68) 内臓逆位症に合併した通常型心房粗動に対
してカテーテルアブレーションを施行した一症例
(大阪府済生会泉尾病院循環器科)
塚田 敏・松井由美恵・吉長正博・山本 聖・
石原昭三・石戸隆裕・豊航太郎・中山尋文・
唐川正洋
症例は48歳男性.薬物抵抗性の心房細動で,洞
調律維持のために繰り返し電気的除細動を必要
としたため,アブレーションを施行.心房細動
中にEnSite CFE mapシステムにて左房内をマッ
ピングし,左房天蓋部,左房前壁,左房後壁,
中隔に周期が100msec以下のCFAE(continuous
fractionated atrial electrogram) が 記 録 さ れ た.
肺静脈隔離中に,周期が40msec以下と短縮して
いた部位の通電にて心房細動が停止した.肺静
脈隔離完成後にburst刺激にて心房細動が誘発さ
れたため,CFAE記録部位を標的にして通電した
ところ,左房天蓋部の周期が50msec以下に短縮
した部位の通電にて心房細動が停止した.以後
誘発性は消失した.EnSite CFE mapシステムは,
CFAEを客観的に判断することができ,心房細動
のアブレーション治療に有用であった.
症例は72歳男性.平成20年6月より心房粗動が出
現し,頻脈依存性心筋症による心不全を発症した
ため,アブレーション目的で当科に入院.内臓逆
位症があり,左右大腿静脈は合流して奇静脈とな
り上大静脈を介して右房に流入していた.左右鎖
骨下静脈は上大静脈を介して右房に流入していた
ため,右上腕静脈より20極の電極カテーテルを右
房自由壁に留置し,左鎖骨下静脈よりアブレーシ
ョンカテーテルを挿入した.下大静脈−三尖弁輪
間の解剖学的峡部にてconcealed entrainmentが
得られ通常型心房粗動と診断し,峡部に線状焼灼
を行った.3回目の通電中に心房粗動は停止し,
26回の通電後は心房粗動は誘発不能となった.術
後は心房粗動の再発なく経過している.内臓逆位
症に心房粗動を合併しアブレーションを行った稀
な一症例を経験したので報告する.
66) 三尖弁輪心房側での通電により根治しえた
fast/slow型AVNRTの1例
(大阪府済生会泉尾病院循環器科)
中山尋文・松井由美恵・吉長正博・山本 聖・
石原昭三・石戸隆裕・塚田 敏・豊航太郎・
唐川正洋
69) 心房粗細動に著効したソタロールが原因と
考えられた血小板減少症の一症例
(りんくう総合医療センター市立泉佐野病院循環器科)
三好達也・大谷誠司・武田吉弘・渡邊千秋・
小谷 健・時岡浩二・木下晴之・永井義幸
症例は65歳男性.主訴は動悸.30歳頃から突然始
まる動悸発作を自覚していた.陳旧性前壁中隔心
筋梗塞に伴う心不全にて入院,心臓リハビリ中に
PVCから心拍数180/分のnarrow QRS頻拍への移
行を認め,アブレーションを施行.心房早期刺激
ではAHのjump upは認めず,心室pacingではCS
近位部が早期の減衰伝導を示す逆伝導を認め,心
室pacingにより頻回にfast/slow型AVNRTが誘発
された.逆伝導心房波の最早期部位はLAOで三
尖弁輪6時方向の心房側で,この部位での通電で
逆伝導はHisが最早期のfast pathwayを介するも
ののみとなり,術後はISP投与下にも頻拍は誘発
されずアブレーションに成功した.三尖弁輪心房
側での通電によりslow pathwayの逆伝導が消失し
た1例を経験したので報告する.
【症例】73歳男性.2005年7月CLBBB+LAD,洞
不全症候群にてDDDペースメーカー植え込みを
おこなった.2007年4月動悸を伴う2:1心房粗
動,心房細動に対しフレカイナイド100mgを開始,
AF,AFLを繰り返したためベプリジル100mgに
変更したが洞調律に復さず.2007年11月,心筋
焼灼術,直流除細動を希望されず,ソタロール
80mgを開始し投与後19日目で洞調律に復し動悸
は消失した.2008年2月口腔内出血,四肢の点状
出血で再入院.血小板0.2万,骨髄生検では巨核
球の左方移動のみで,特発性血小板減少性紫斑病
(ITP)と診断された.ソタロールの中止,大量
γグロブリン療法,プレドニゾロン30mgの内服
にて約2ヶ月後PLT8.1万へと回復.当症例では
フロセミドは長期使用していた.ソタロールによ
ると考えられるITPは本邦初である.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
70) 心房細動中に失神発作をきたした2例
(京都府立医科大学附属病院循環器内科)
丸山尚樹・畔柳 彰・白石裕一・白山武司・
松原弘明
【症例1】64歳男性.動悸と意識消失を主訴に当
院を受診した.【症例2】67歳男性.徐脈頻脈症
候群(BTS)の診断でペースメーカーを植え込ま
れたが,その後も意識消失をおこすため紹介され
た.両症例とも非発作時の心電図と心エコー所見
は正常であった.EPSでは洞機能,房室結節機能
は正常で心房細動(paf),心房粗動が誘発され,
心室性不整脈は誘発されなかった.Head-up tilt
testでは,1は立位でpaf誘発とともに血圧の低
下と意識消失が起こり,アトロピン投与で改善し
た.2は立位で頻拍発作中と臥位で心房高頻度刺
激中に,浮遊感と血圧の低下を認めた.意識消失
の原因は頻拍による血行動態の破綻ではなく,頻
拍刺激による迷走神経の過緊張の関与が示唆され
た.pafに伴う失神として,BTSも関与せず,頻
脈に伴う迷走神経性失神は稀であり報告する.
71) 右冠動脈が特異な瘤状形態を示した1例
(和歌山県立医科大学循環器内科)
下角あい子・石橋耕平・谷本貴志・財田滋穂・
北端宏規・中村信男・平田久美子・田中 篤・
水越正人・今西敏雄・赤阪隆史
【症例】62歳,女性.【現病歴】冠動脈CTで右冠
動脈の末梢に冠動脈瘤が疑われたため精査目的に
て当科へ入院.
【現症】特記事項なし.
【入院後検査】
心エコーでは下壁の壁運動がわずかに低下.後壁
筋層内に1.6×1.8cmの瘤状構造を認めた.心MRI
では遅延造影で造影効果なく,梗塞は否定的.冠
動脈造影検査では,左冠動脈は正常.右冠動脈は
全長に亘り拡張,特に#4AV末端は16mm大,#
4PDは10mm大と瘤状であった.
【考察】右冠動脈
が特異な瘤状形態を呈した1例を経験した.瘤状
部より末梢へは血流を確認できず,動静脈瘻は否
定的である.#4AV末端は左室筋層内に存在し,
心筋の収縮に同期し変形する様子が確認された.
明らかな原疾患は同定できていないが,過去に報
告例はなく,稀な症例と考えたため報告する.
72) ステロイドが有効であったBlue Toe Syndrome再発症例
(大阪府立成人病センター循環器内科)
和泉匡洋・橋本崇弘・藤川純子・淡田修久
(同心臓血管外科) 平石泰三・高見 宏
症例は72歳男性.2003年1月,AMI(下壁)を
発症し他院AにてPCI施行.2005年7月,腹部−
下肢にかけて紅班と両足底/足背に疼痛を伴う紫
斑及出現.他院Bに入院し,諸検査(皮膚生検含)
の結果,Blue Toe Syndromeと診断.プレドニン
20mg投与され,症状改善.プレドニンは漸減し
中止となった.2006年7月から当科に通院とな
る.2008年1月−前回と同様の症状が出現し当科
入院.Blue Toe Syndromeの再発と診断.握力は
右4kg /左1kgまで低下.血液検査では,軽度
腎機能悪化(クレアチニン1.3mg/dl),好酸球軽
度増加(462/μl),CRP上昇(10.7mg/dl)を認め
た.補液・プレドニン20mg/日を開始.症状は徐々
に改善し,腎機能改善し,好酸球数・CRP値も正
常となった.リハビリも行い,握力は右15.8kg左
9.2kgまで改善.プレドニンは5mg/日まで漸減
し退院となった.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
73) 心不全治療中に心室細動を発症した大動脈
炎症候群の一例
(大阪掖済会病院) 稲波 整・島田健永・
福田祥大・松本健嗣・能仁信一・實正 哲・
吉田 健・田口晴之・吉川純一
(大阪市立大学循環器病態内科学) 葭山 稔
【症例】77歳,女性.平成4年に心筋梗塞を発症
し,近医で内服加療中であった.平成20年の5月
より労作時呼吸困難感が出現し,うっ血性心不全
の診断で当院に紹介受診となった.胸部レントゲ
ン写真では肺血管陰影が増強し,経胸壁心エコー
図検査では心収縮能の低下と心尖部を中心とした
壁運動異常と認めた.冠動脈造影CT検査では右
冠動脈近位部に90%狭窄を認めた.入院後の加療
で心不全は改善傾向であったが,突然の心室細動
を発症し死亡した.今回,心筋梗塞を合併した大
動脈炎症候群例において突然の心室細動で死亡し
た一例を経験したので報告する.
74) ASDを 合 併 し たportopulmonary hypertensionの一例
(大阪医療センター) 谷口達典・
佐々木典子・宇都宮紫・濱野 剛・中川彰人・
岩破俊博・小出雅雄・石津宜丸・山戸昌樹・
山元博義・廣岡慶治・川口義廣・是恒之宏・
楠岡英雄・安村良男
症例は43歳女性でNYHA II.C型肝硬変に対し,
他院にてPEG-IFN/RBV療法導入したが副作用の
ため中止となった.経過中,心エコーにて心房中
隔欠損(ASD)
,肺高血圧症を指摘され,手術適
応検討のため当科紹介受診となった.心エコー
にて欠損孔の径<1cmかつ右心カテーテルにて,
Qp/Qs=1.4のためASDによる肺高血圧とは考え
られなかった.平均肺動脈圧39(>25)mmHg,
肺 動 脈 楔 入 圧 8( <15)mmHg, 肺 血 管 抵 抗
147( > 120)dyne・sec・cm–5 とportopulmonary
hypertension(PPHTN)の診断基準を満たして
いるためPPHTNと診断した.Sildenafilを試みた
が,副作用のため導入できなかった.PPHTNは
比較的稀な疾患であり,文献的考察を加えて報告
する.
75)血栓コントロールに難渋したヘパリン起因性血
小板減少症と抗リン脂質抗体症候群を合併した1例
(馬場記念病院内科・循環器科) 平山道彦・
坂本常守
74歳の女性.脳梗塞の診断で当院脳神経外科入院.
入院後,ECGモニターにて洞不全症候群(SSS)
と診断された.脳梗塞は軽度であり,オザグレル
からヘパリンの点滴に変更後,SSSの精査目的で
当科転科となった.転科直後から発熱と血小板低
下が出現.抗ヘパリン-PF4複合体抗体陽性より,
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)と診断.上
下肢に表在性の血栓性静脈炎と両下肢深部静脈血
栓症を認め,肺塞栓予防目的に一時的下大静脈フ
ィルター留置を施行.アルガトロバン,ウロキナ
ーゼを点滴した.血栓形成傾向強く,検索した結
果,抗カルジオリピンβ2PI抗体も陽性であった.
血栓コントロールに難渋したHIT,抗リン脂質抗
体症候群の合併例を経験したので報告する.
76) 左室後壁に巨大心室瘤をきたした心サルコ
イドーシスの一例
(兵庫県立姫路循環器病センター循環器科)
田頭 達・梶谷定志・林 孝俊・谷口泰代・
山田慎一郎・水谷和郎・岩田幸代・嶋根 章・
岡嶋克則・熊田全裕・月城泰栄・松本賢亮・
觀田 学・井上琢海・今村公威・田代雅裕・
平石真奈・柴田浩遵・中桐啓太郎
症例は50代女性.主訴は呼吸苦.NYHA 2度の心
不全症状あり前医受診.心エコーにて左室の著名
な拡大と後壁に巨大な心室瘤を認め当院心臓血管
外科紹介受診.左室瘤切除術,僧帽弁形成術を施
行された.切除標本ではリンパ球浸潤と類上皮細
胞を含む非乾酪性肉芽腫を認め心サルコイドーシ
スと診断した.全身検索をしたが肺,皮膚,眼な
どにサルコイドーシス所見は認められなかった.
心機能は低下しており術後ステロイド治療を開始
した.その後も全身状態,心機能に著変はなく現
在に至っている.心筋生検でも心サルコイドーシ
スと診断できる率は低く,生前に病理組織学的に
診断される症例は少ない.サルコイドーシスの診
断,治療について文献的考察を加えて報告する.
77) 経皮的心肺補助装置の使用で救命しえた劇
症型心筋炎の一例
(天理よろづ相談所病院循環器内科)
越川頼光・山尾一哉・坂本二郎・和泉俊明・
三宅 誠・花澤康司・吉谷和泰・貝谷和昭・
本岡眞琴・泉 知里・玄 博允・中川義久
先行する感冒症状,全身倦怠感,失神を契機に受
診した66歳男性.来院時ショック状態,心電図で
広範なST上昇,完全房室ブロックを認め,広範
心筋梗塞を疑い,緊急冠動脈造影を施行するも,
冠動脈狭窄を認めず,劇症型心筋炎と診断した.
一時ペーシング施行,PCPS,IABP等の補助循環
を使用し集中治療室にて全身管理を行った.房室
ブロックが改善し補助循環離脱可能となるまでの
5日間に,PCPS穿刺部より持続的な出血があり,
頻回に輸血を必要としたが,以後の経過は良好で
心機能も正常範囲に回復した.劇症型心筋炎では
心機能が回復するまでの間,補助循環を用いるこ
とにより比較的良好な予後が得られている.しか
し出血や感染等の合併症が問題となる.急性期管
理に難渋するも救命しえた劇症型心筋炎の1例を
経験したので報告する.
78) 房室ブロック,左室収縮不全の急速な進行後
心室頻拍で死亡した心サルコイドーシスの一剖検例
(りんくう総合医療センター市立泉佐野病院循環器科)
小谷 健・大谷誠司・武田吉弘・渡邊千秋・
時岡浩二・木下晴之・三好達也・永井義幸
【症例】60歳女性.突然のふらつき,2:1高
度房室ブロック,完全右脚ブロックにて当院受
診.胸部X線で肺門の拡大,心エコーで左室拡大
(LVDd 56mm,IVSd 13mm,PWd 12mm,EF 67%)
を認めた.永久人工ペースメーカー植え込みのた
め入院.右心不全はフロセミドで軽快するもTnI
は持続高値(1.1−1.3)であり,心サルコイドー
シスを含む心筋炎の可能性を考えた.眼底所見な
く,ACE17.7は正常範囲.第6病日非持続性心室
頻拍が出現,アミオダロンを投与開始するととも
に心臓カテーテル検査を行い,正常冠動脈,左室
収縮能の急激な悪化を認めた.心筋生検,VT誘
発を予定したがその後持続性心室頻拍,心室細動
となり,PCPS装着,効なく死亡.剖検では左右
心室壁,刺激伝導系に広範な非乾酪壊死を認め,
多臓器にも病変あり全身性サルコイドーシスと診
断した.
神戸国際会議場(2008 年 11 月) 947
79) 心筋生検で確定診断し保存治療で改善した
好酸球性心筋炎の一例
(生長会府中病院循環器内科) 大塚憲一郎・
柳 志郎・西山裕善・岩田真一・紙森公雄・
太田剛弘
(同病理部) 花井 淳
(大野記念病院) 寺柿政和
34歳男性.一週間前からの全身倦怠感と心窩部不
快感で近医受診.心電図で前胸部誘導のT波陰転
化,トロポニンT陽性から急性冠症候群疑いで当
院紹介.経胸壁心エコーでは左室壁肥厚(14mm)
と心尖部の壁運動低下,心嚢液貯留を認めた.右
室の虚脱所見あるものの,左室駆出率正常(58
%)で血行動態も安定していた.CK 326,CKMB 17と心筋逸脱酵素の上昇を認めたが,緊急冠
動脈造影は正常冠動脈であった.経過中,白血球
8300mm3,好酸球29%と好酸球の上昇を認め(入
院時白血球10500mm3,好酸球8.0%),臨床経過
より好酸球性心筋炎が疑われた.心筋生検では心
筋組織への好酸球の浸潤と小血管病変を認め,好
酸球性心筋炎と確定診断した.保存治療にて経過
順調で,心エコー所見も改善し退院となった.若
干の文献的考察を加えて報告する.
80) 抗精神病薬治療中に発症した慢性心筋炎の
一剖検例
(神戸大学循環器内科学) 中西智之・
大西哲存・高見 充・杜 隆嗣・石田達郎・
吉田明弘・志手淳也・川合宏哉・平田健一
32歳男性.17歳より非定型精神病,糖尿病のため
加療されていた.25歳時,心不全症状が出現し,
当科入院した.びまん性左室壁運動低下を認め,
左室駆出率は21%であり,数回の心筋生検にて間
質にリンパ球浸潤を認め,慢性心筋炎と診断され
た.抗精神病薬が心筋炎の原因と考えられ,薬物
の減量やACE阻害薬,β遮断薬の使用により心
機能は一時的に改善したが,その後再び悪化し,
心房細動も出現,30歳以降は軽労作にて心不全を
発症するようになった.平成19年11月,心不全増
悪にて入院,経静脈性強心薬を含む薬物療法や心
臓再同期療法を施行したが,病勢を抑えられず平
成20年3月死去した.剖検所見では,広範な心筋
線維化および局所的なリンパ球浸潤を認めた.慢
性心筋炎の剖検例は極めて少なく組織学的検討を
加え報告する.
81) 一時的ペースメーカ不全を呈した心筋炎の
一例
(大阪赤十字病院心臓血管センター不整脈部門)
西内 英・牧田俊則・内山幸司
(同循環器科) 徳永元子・山本貴士・
福地浩平・近藤博和・伊藤晴康・林富士男・
稲田 司・田中 昌
症例は88歳女性で,7年前に洞不全症候群に対し
て永久ペースメーカ植え込みを施行し,その後順
調に経過.今回胃癌に対するEMRで消化器科入
院し,穿孔を起こしてクリッピングを行った.入
院第17病日から発熱および心不全症状出現.第18
病日にペーシング不全とセンシング不全の両方を
呈するペースメーカ不全を来たした.一時ペース
メーカによる最大出力刺激でもペーシングできず
一時的に心停止を来たして心肺蘇生を必要とし
た.エピネフリンとイソプロテレノールにて心拍
は再開した.採血ではCPK 2000,CRP 15.4と心
筋逸脱酵素の上昇と炎症所見を認め,心エコーで
はびまん性に左室壁運動の低下を認めた.自己心
拍出現中のQRS幅,QT時間には明らかな延長を
認めず,2日後には永久ペースメーカのペーシン
グが可能となった.
948 第 106 回近畿地方会
82) 拡張不全を呈した急性心筋炎の一例
(北摂総合病院循環器科) 佐藤 綾
79歳男性.4月9日より発熱,10日心窩部痛出現,
11日受診.腹部単純CTで胆嚢壁肥厚,胸腹水及
び心嚢液貯留あり.血液検査上肝機能障害及び炎
症所見を認め,急性胆嚢炎疑いにて入院.抗生剤
および利尿剤開始されるも次第に低酸素血症,肺
うっ血が顕著となり,心不全と判断.心エコー
上心収縮能正常でかつ軽度壁肥厚をみとめ,拡
張不全が主体と考えられた.心筋逸脱酵素・CRP
の持続的な上昇,心電図で経時的に進行する心筋
伝導障害を認め,急性心筋炎が示唆された.15日
SWGカテーテル挿入.徐脈に対し一時的体外ペ
ーシングを開始.経過中収縮能の明らかな低下は
みられず,血行動態はその後改善に転じた.冠動
脈造影で冠動脈正常,心筋組織所見でリンパ球の
浸潤,心筋細胞の変性をみとめ,急性心筋炎とし
て矛盾しなかった.
83)2度の自宅での心停止をAEDで救命できた拡
張型心筋症の1例
(明石医療センター) 森 健太・河田正仁・
足立和正・松浦 啓・平山恭孝・坂本 丞
症例は55歳女性.H18.6.19意識消失し,救急隊の
AEDで洞調律にもどり,近医病院に入院.急性
心筋梗塞を疑われ50日間入院し,その後2回/
週心臓リハビリを兼ねて通院していた.H19.9.29
AM7:00台所で倒れ,家族による胸骨圧迫施行
後,救急隊のAED 2回(7:09と7:12)でも戻
らず,7:30来院した.心室細動を認め,AED 1
回で戻らず,種々の薬物投与後計3回のAEDで
洞調律となった.CAG,LVGの所見と心筋生検所
見から拡張型心筋症と診断.DCMに対してはβ
ブロッカー療法を施行.2回の心停止からの蘇生
例であり,上室性頻拍のアブレーション後,植え
込み型除細動器植込みを施行した.その後経過良
好であり,意識消失などの症状を認めず社会復帰
となった.2回の心停止からの蘇生例はまれであ
り,若干の考察を加えて報告する.
84) 左房壁にFDGの高集積を認めた拡張型心
筋症の一例
(松下記念病院循環器科) 坂谷知彦・
川崎達也・三木茂行・神谷匡昭・杉原洋樹
症例は60歳男性.1ヵ月前より労作時の息切れ症
状があり,胸部X線写真にて両側胸水と心拡大を
認め当院へ精査加療目的にて入院した.うっ血性
心不全が疑われたが,肺疾患除外目的のため実施
した造影CTにて,肺水腫および右肺門リンパ節
の軽度腫大,癌性リンパ管症疑いとの診断がなさ
れた.悪性疾患除外目的にてFDG-PETを実施し
たところ,肺野,縦隔には異常集積を認めなかっ
たが,左房壁全体に高集積を認めた.本症例は心
エコー図にて左室駆出率が20%台で,びまん性壁
運動低下を認め,冠動脈造影にて有意狭窄を認め
なかったことより拡張型心筋症によるうっ血性心
不全と診断された.過去に心房細動症例において
両心房へのFDGの異常集積が報告されているが,
左心不全による心房負荷にFDGが高集積した症
例の報告は少なく症例提示する.
85) 心エコーでの血行動態指標を用いて急性期
治療に成功した拡張型心筋症の一例
(国立循環器病センター心臓内科)
岡松秀治・渡辺雅貴・橋村一彦・大原貴裕・
天木 誠・長谷川拓也・神崎秀明・北風政史
症例は55歳男性,主訴は呼吸困難.生来健康で
あったが,突然呼吸困難出現し他院入院.NYHA
4度の急性左心不全との診断にて当院緊急搬送と
なった.両肺野に湿性ラ音を聴取し,四肢は冷感
著明,心エコー上拡張期左室径は66mmと拡張し
DCM様であった.Swan-Gantzカテーテル検査に
て肺うっ血と低灌流を確認したためDOB+PDE
−3阻害薬を第一選択とし,次いでACE阻害薬
の投与を行った.急性期は一切の利尿剤投与を必
要とせずβ遮断薬導入に至った.急性期のSwanGanz catheterでの評価と,心エコーでの血行動
態評価を常に並列して行うことで血行動態指標の
正確性を確保することができ,薬剤選択が明瞭と
なることで治療に成功した重症心不全症例を経験
したのでここに報告する.
86) β-blockerが奏功したMarfan症候群合併DCM
の一例
(国立循環器病センター) 永田庸二・
柳生 剛・西平守和・加藤倫子・簗瀬正伸・
中谷武嗣
【症例】32才男性【経過】Marfan症候群にDCM
を合併した症例.労作時呼吸困難を主訴に当院
入院し,心エコーでは上行大動脈の拡張に加え,
左室の著明な拡大(Dd/Ds=91/82)と大動脈弁
逆流症,僧帽弁逆流症を認めた.大動脈弁基部
置換+僧帽弁置換術,Maze手術を施行した.術
後Carvedilolを 導 入 し 最 終 的 に20mg/dayで 維 持
量とした.エコー上LVDd/Ds(術後20日目90/84
→151日目57/48),EF(術後20日目12.8%→151
日目29.0%)の改善し,BNPも低下(術後20日目
1270pg/ml→191日目29pg/ml)した.【考察】β
遮断薬はDCMの心機能を改善するが,本症例で
も術後Carvedilolの導入により心機能の改善を得
る事が出来た.
87) 心不全を繰り返す心尖部肥大型心筋症に
AAIペースメーカー植え込みが著効した一例
(りんくう総合医療センター市立泉佐野病院循環器科)
木下晴之・大谷誠司・武田吉弘・渡邊千秋・
小谷 健・時岡浩二・三好達也・永井義幸
【症例】63歳女性.2003年検診で心肥大を指摘.
2005年2月起坐呼吸で入院し,心臓カテーテル,
超音波検査で心尖部肥大型心筋症と診断された.
LVDd 50mm,FD 40%と収縮能は保たれていた
が,その後心房細動による心不全で再入院後アミ
オダロン,ビソプロロール投薬をうけた.心房
細動は消失したが上記薬剤によりHR40−50台の
徐脈傾向が続き,BNP900−1700台で推移し入退
院を繰り返す.2008年2月ホルター心電図でmax
9.0secのRR延長を認め,房室結節機能障害がな
いことを確認,CO(RHCデータ)が最大になる
back up pacing rate 50でAAIペースメーカーの植
え込みをおこなった.術後4ヶ月でBNP1260か
ら620,胸部レ線でCTR58%から51%と心不全は
著明に改善された.AAI pacingで心不全が著明に
改善したHCM症例を報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
88) 8年の経過で心不全を発症した右室心筋症
の1例
(兵庫医科大学内科学冠疾患科) 土居 隆・
正井美帆・高橋敬子・佐古田剛・大柳光正
(同循環器内科)江角 章・川端正明・
増山 理
【症例】69才女性.62才時に検診で心電図異常の
指摘を受ける,心エコー(UCG)で右室壁低下
と右室右房の拡大を認めるが無症状のため放置.
66才頃より労作時軽度の呼吸困難を生じ,67才時
検診にて心電図異常に加えCTR拡大の指摘を受
けるが精査や治療は受けていない.今回労作時
呼吸困難の増悪と下腿浮腫を生じ当院紹介され
る.心電図にてε波を認め,UCGで右室壁菲薄化,
壁運動低下を認めた.心室由来不整脈はないが遅
延電位は陽性.心臓MRI検査では広範囲な右室遅
延造影を認める.右室心筋生検にて高度の心筋線
維の肥大と配列異常を認め,心筋症と診断した.
【考察】無治療であった8年の経過中に左室機能
低下に至っていたが,右室機能低下から発症し心
室由来不整脈を認めない右室心筋症を経験したた
め報告する.
89) 特異な造影所見を呈した逆たこつぼ型心筋
症合併多発内分泌腫瘍症候群の1例
(近江八幡市立総合医療センター)
加藤 拓・深井邦剛・福山 恵・上林大輔・
全 完・立川弘孝・槇 系
症例は36歳,女性.母親が30歳台に急死(原因不
明)
.めまいと嘔気を主訴に当院を受診しメトク
ロプラミドなどの投与後に急変した.冠動脈造影
は一部に線状の造影剤停滞を認める特異な造影所
見を呈し,左室造影では逆たこつぼ型の左室壁運
動障害が認められた.CTでは両側副腎腫瘍と甲
状腺腫瘍を認め,家族歴からも多発内分泌腫瘍症
候群が疑われた.急性期は経皮的心肺補助循環装
置などを用いた集中治療を要したがその後劇的な
改善を示し,後日両側副腎摘出術および甲状腺摘
出術を施行し社会復帰となった.また,遺伝子診
断にて多発内分泌腫瘍症候群2型の確定診断を得
た.カテコラミン心筋症に伴う逆たこつぼ型心筋
障害の報告は散見されるが,今回,心筋内微小出
血の存在が示唆される興味深い冠動脈造影所見を
示した症例を経験したため報告する.
90) 左室自由壁破裂にて院内突然死したたこつ
ぼ型心筋症の一剖検例
(京都病院内科循環器科) 角田 聖・
小田洋平・土井俊文・北村洋平・小川真木・
田邊進一・山田千尋
症例は74歳女性.他院にて安静時胸痛と心電図の
I,aVL,V3からV6のST上昇を認めたため急性冠
症候群の疑いで紹介,発症105分で当院に緊急搬
入された.トロポニンI等心筋逸脱酵素の上昇を
認め,緊急心臓カテーテル検査を施行したところ
有意な冠動脈狭窄は認めず,左室造影にてたこつ
ぼ型心筋症と診断した.最大CPK 1069(発症19
時間)であった.入院10日目,シャワー中に突然
心肺停止となり,心肺蘇生を施すも同日死亡した.
オートプシーイメージングでは心嚢液貯留と頭部
外傷性皮下血腫を認め,病理解剖では心嚢内出血
と左室自由壁に亀裂を認め,左室自由壁破裂によ
る心タンポナーデと診断した.たこつぼ型心筋症
による心破裂の剖検例はきわめて稀であり,文献
的考察を加えて報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
91) 脳梗塞後症候性てんかんに合併したたこつ
ぼ型心筋障害の亜型の一例
(神戸医療センター循環器科) 門口倫子・
高野貴継・正井博之・清水雅俊
(同内科) 三輪陽一
94) 麻酔導入時にたこつぼ型心筋症を発症した
1例
(近畿大学循環器内科) 中内祥文・
諸岡花子・上野雅史・生田新一郎・谷口 貢・
宮崎俊一
55歳女性.右中大脳動脈脳梗塞後遺症および糖尿
病でフォロー中であった.自宅で強直性間代性け
いれんを発症し救急来院された.翌日の心電図で
I,aVL,V3−6にT波陰転が出現しており,心エ
コー図では左室中部前壁中隔に壁運動低下が認め
られた.トロポニンT陽性であったものの,症状
に乏しく最大CK値396IU/Lであった.第5病日
に施行された心臓カテーテル検査では冠動脈に有
意狭窄なく,左室造影上#2にあたる前壁に限局
した瘤状無収縮が認められた.壁運動異常は第10
病日の心エコー図で消失していた.てんかん重積
発作後にcatecholamine surgeをきたし,たこつ
ぼ型心筋障害を発症することが報告されている.
今回の症例は左室前壁に限局した壁運動異常であ
り,症候性てんかんに合併したたこつぼ型心筋障
害の亜型と考えられた.
症例は50代男性.慢性膵炎で膵切除術前に硬膜外
麻酔併用にて麻酔導入中に高度房室ブロックと血
圧低下を認めた.心電図にて胸部誘導V2−V6で
巨大陰性T波を認め,心エコーで心尖部無収縮,
心基部過収縮の壁運動異常を認めた.昇圧剤の継
続投与で経過観察していたがCPK上昇はなかっ
た.第4病日に高度房室ブロックを再度認め,冠
動脈造影を施行された,左右冠動脈に有意狭窄は
認めず.左室造影は心尖部にballooningを認め,
たこつぼ様であった.エルゴノビン負荷10μgで
左前下行枝と左回旋枝に攣縮が誘発され狭窄が出
現した.I,aVL,V1−V5誘導でST低下と胸痛を
認めニトロ冠注にて速やかに改善した.たこつぼ
型心筋症の発症に麻酔導入中に発生した冠攣縮が
関与したことが推察される症例を経験したので報
告する.
92) 心臓MRIにて特徴的な所見を呈したタコツ
ボ型心筋症の一例
(市立豊中病院心臓病センター循環器科)
中本 敬・中田敦之・植良芙彌・高 陽子・
築山真希・宮岡宏治・松本 悟・野嶋祐兵・
中川 理
95) 診断確定後7年にわたり経過を追えた家族
性アミロイドポリニューロパチーによる心アミロ
イドーシスの一例
(京都府立医科大学循環器科) 佐藤玲南・
中西直彦・沢田尚久・矢西賢次・赤壁佳樹・
西澤信也・畔柳 彰・椿本恵則・松井朗裕・
中村 猛・白石裕一・松室明義・白山武司・
松原弘明
症例は77歳女性.平成20年7月に胸痛が持続する
ため当院受診.心電図・心エコー等にてACSが
疑われ緊急心臓カテーテル検査を施行したが,正
常冠動脈で,左室造影等からタコツボ型心筋症と
診断した.入院4日目に心臓MRIを施行.左室壁
運動は心尖部を中心にdyskinesisで,Black blood
法では壁運動異常の領域に一致して高信号を認め
た.ガドニウム造影では,perfusionに異常なく,
遅延造影も認めず,予後は良好と判断した.2週
間後に単純心臓MRIのみ再検したところ,壁運動
異常は心尖部の一部以外改善していたが,Black
blood法で認めた高信号領域は一回目の検査とほ
ぼ同様であった.【結論】タコツボ型心筋症では,
壁運動異常が回復してきてもしばらくの間,心筋
へのダメージが持続している可能性がある.
69歳女性.平成14年,心筋生検・遺伝子解析にて
家族性アミロイドポリニューロパチー type1によ
る心アミロイドーシスと診断された.平成17年に
心室頻拍に対してAmiodarone導入,平成19年に
は房室ブロックに対して永久ペースメーカーを留
置された.平成20年6月14日ふらつきを主訴に
救急受診.心電図でpacing failureを認め,前日
0.75Vであった閾値が突然2.5Vまで上昇していた.
直ちに出力を上げpacing可能となるも血圧上昇せ
ず永眠された.病理解剖を行ったところ,右室側
壁心外膜下に巨大血腫が存在し,これが死因と考
えられた.今回我々は,心アミロイドーシス診断
確定後7年間の長期にわたり生存し,心外膜血腫
のため突然死した一例を経験したので,文献的考
察を加えて報告する.
93) 敗血症に合併したたこつぼ心筋症の1剖検例
(京都府立医科大学付属病院循環器内科)
階元 聡・畔柳 彰・木下英吾・星野 温・
中村 猛・松室明義・沢田尚久・松原弘明
96) 分娩を契機に診断された左室緻密化障害の
一例
(松下記念病院循環器科) 坂谷知彦・
川崎達也・三木茂行・神谷匡昭・杉原洋樹
症例は86歳女性.他院で尿管結石に伴う腹痛で加
療されていた.新たな胸痛と心電図変化から急性
冠症候群を疑われ当院へ救急搬入された.心エコ
ー図は中部以下心尖部までが全周性に無収縮であ
ったが,冠動脈造影では有意狭窄を認めなかった.
尿管結石の嵌頓から腎盂腎炎,敗血症をきたし死
亡したが,その経過でたこつぼ心筋症を発症した
と考えられた.病理解剖所見は右冠動脈領域に敗
血症性と考えられる微小血栓の存在を認めたが,
壁運動異常を説明できるものではなかった.心筋
細胞には収縮帯壊死や細胞融解像が認められ,孤
発性の単一心筋細胞障害とその小集簇巣がびまん
性に散在していた.またその障害の程度は心基部
に比較して心尖部に高度であった.たこつぼ心筋
症の病態を考察するうえで,貴重な剖検所見と考
え報告する.
症例は30歳女性.中学生時に心室期外収縮を指摘
されるも特に自覚症状なく放置していた.第一子
妊娠時,第20週の心電図では異常を指摘されなか
ったが,第37週より妊娠中毒症を合併し入院管理
となった.第39週の心電図にて心室期外収縮があ
り,心エコー図にて左室にびまん性の壁運動低下
(EF46%)を指摘され,同日帝王切開にて女児を
出産した.一日尿蛋白は最大8.6gに達し,高度の
貧血の合併もあり,分娩後に著明な両側胸水を来
たした.輸血およびアルブミン製剤の投与と中毒
症の改善に伴い胸水は消失した.しかし分娩1ヵ
月を経過してもなお収縮障害は遷延し,心尖部に
肉柱構造の発達を認め,MRI所見とあわせ緻密化
障害と診断した.産褥心筋症合併の可能性もある
が,妊娠・分娩を契機に症状が出現した緻密化障
害の一例を経験したので報告する.
神戸国際会議場(2008 年 11 月) 949
97) 左室緻密化障害が疑われた2症例
(医仁会武田病院) 佐々木良雄・土井哲也・
別府浩毅・白澤邦征・大屋秀文・稲永 桂・
武田真一・竹岡 玲・橋本哲男・河合忠一
【症例1】49歳男性,15年前より心臓の異常を近
医にて指摘されるも自覚症状がなく放置.気胸の
手術を契機に数か月前より全身倦怠感,動悸が出
現し入院.び慢性に壁運動は低下,EF16%,著
明な心拡大および,心尖部肉柱の著明な発達を認
め左室緻密化障害が疑われた.
【症例2】64歳男性,
6年前に労作時息切れで近医より紹介.び慢性に
壁運動は低下,EF23%,著明な心拡大を認めた
が精査希望されず内服加療で経過観察となってい
た.今回軽い倦怠感であったが精査加療目的で入
院.再検にて,前回同様の心エコー所見および心
尖部肉柱の著明な発達に気付き左室緻密化障害を
疑った.今回,これらの左室緻密化障害が疑われ
る2症例につきMRIなどの評価を行い検討したの
で文献による考察を加え報告する.
98) 非発作性心室頻拍と脳梗塞をきたした左室
緻密化障害の1症例
(大阪府済生会野江病院循環器科)
三上有子・武 俊介・小山志保・谷口寛昌・
水野博之・山地雄平・穂積健之
症例は46歳男性.2008年4月から動機,息切れを
自覚し2008年5月20日当院受診した.レントゲン
にて肺うっ血像を認め,心電図で非持続性心室頻
拍を繰り返しており心エコーでEF25%と低下し
ており左室緻密化障害を認めた.心不全に対し利
尿剤とカルペリチド,心室頻拍に対してカルベジ
ロールとアミオダロンを投与開始し改善を認め
た.第1病日から抗凝固療法を開始していたが第7
病日に左半身麻痺出現し脳梗塞を発症した.治療
により麻痺は改善した.左室緻密化障害は比較的
稀な症例であり,今回心室頻拍と脳梗塞を合併し
た症例を経験したので若干の文献的考察を加えて
報告する.
99) 糖尿病の増悪と急性心不全発症を契機に診
断に至ったミトコンドリア心筋症の1例
(三木市立三木市民病院循環器科)
平山園子・片岡俊哉・江尻純哉・高石博史・
大橋佳隆・市川侍靖・粟野孝次郎
症例は64歳女性.低身長で感音性難聴あり.家族
歴に母の突然死と息子の糖尿病がある.平成8年
頃から糖尿病のため内服加療中.平成20年初め頃
よりHbA1cが8.7から10.9に増悪し2月中頃からは
労作時呼吸困難と浮腫を認めたため当科を紹介受
診.急性心不全の診断にて精査加療目的で入院.
心エコーで瀰漫性の左室壁肥厚あり肥大型心筋症
が疑われた.心臓カテーテル検査で冠動脈病変は
認めず.心内膜心筋生検では光顕で核の肥大,電
顕で多数の異常なミトコンドリアが指摘された.
また遺伝子検査でtRNA Leu A3243Gの遺伝子変
異を認め,ミトコンドリア心筋症と診断した.以
上より糖尿病の増悪と急性心不全の発症を契機に
ミトコンドリア心筋症と診断しえた1症例を経験
したので若干の文献的考察を加え報告する.
950 第 106 回近畿地方会
100) 急激に心機能の低下をきたしたミトコンド
リア心筋症の一例
(兵庫医科大学内科学循環器内科)
江口明世・岡 克己・江角 章・川端正明・
辻野 健・増山 理
(同冠疾患科) 大柳光正
(同糖尿病科) 永井悦子・浜口朋也・
難波光義
症例は58歳女性.主訴は呼吸困難.家族歴は,糖
尿病を母方祖母,母,姉,兄に認め,難聴を母
と姉に認めた.現病歴は,1982年に糖尿病と診
断され,1989年5月にインスリンを導入してい
る.2008年2月27日に呼吸困難感が出現し,28日
に当科受診.心エコー上瀰漫性の左室壁運動低下
(EF26%)を認め,緊急入院となった.家族歴,
感音性難聴,糖尿病,やせ,低身長等からミトコ
ンドリア病を疑い,CTで両側大脳基底核石灰化,
大脳深部白質虚血性変化があり,心筋生検でミト
コンドリアの変性を認めた.末梢血の遺伝子診断
で3243変異を認め,ミトコンドリア糖尿病に伴う
拡張型心筋症と確定した.本症例は1年前の心エ
コーでは左室収縮障害はなく(EF64%)比較的
急激に心機能が低下していたため,若干の考察を
加えて報告する.
101) 植込み型LVAS(JARVIK)の一症例
(国立循環器病センター) 大江由紀子・
大村淳一・林田裕美・梁瀬正伸・加藤倫子・
中谷武嗣
【症例】18歳男性.【現病歴】2005年より全身倦怠
感,労作時呼吸苦が出現し心腔拡大と,びまん
性壁運動低下を認め,前医にてDCMと診断.内
科的治療にて心不全は改善し,β-blocker及び,
ARB導入となった.2007年12月再度心不全増悪
し前医入院.左室径,左房径の拡大,及びさらな
る心機能の低下を認めたため,h ANP,カテコラ
ミン,ミルリノンが開始され,心臓移植を含め
た加療目的に2008年4月30日当科へ転院となっ
た.【入院後経過】その後も心不全のコントロー
ルは不良であり,2008年5月30日待機的にLVAS
(JARVIK2000)装着術が施行された.術後の経
過は良好で現在リハビリを継続中である.【考察】
JARVIK2000を使用し救命できた若年重症心不全
の一例を経験した.
102) 心臓移植後患者に対してのエベロリムス投与
(国立循環器病センター心臓血管内科重症心不全・臓器移植部)
岩村世晴・加藤倫子・簗瀬正伸・中谷武嗣
現在まで当院では,心臓移植後患者4人にエベロ
リムス投与を行ってきた.【症例】41歳女性【経過】
アドリアマイシン心筋症を原疾患に2004年7月に
心臓移植を施行された.悪性腫瘍発生のリスクが
高 く(sIL-2レ セ プ タ ー 高 値,Human Papilloma
Virus感染),移植後冠動脈病変の進行も認められ
たため,2008年7月にエベロリムスへの変更を行
った.目標血中濃度5∼8ng/mlと設定し,安全
な変更が可能であった.【考察】移植後冠動脈病
変や悪性腫瘍発生など,わが国でも移植後慢性期
の合併症を見すえた免役抑制剤マネージメントが
必要である.エベロリムスは何れの点からも今後
期待される薬剤である.血中濃度のモニタリング
を行い,腎機能・骨髄機能に配慮しながら導入を
行う限り,エベロリムスは邦人に対しても安全に
使用可能な免役抑制剤と考えられた.
103) 心サルコイドーシスによる低心機能を合併
したASDの一治験例
(和歌山県立医科大学第一外科) 吉田 稔・
打田俊司・久岡崇宏・西村好晴・本田賢太朗・
金子政弘・仲井健朗・山中 学・岡村吉隆
症例は50歳女性.2008年1月より胸部不快感出現
し,ASD(二次孔欠損),TR(mild)の診断とな
った.ぶどう膜炎,皮膚結節の生検にてサルコイ
ドーシスの診断を得た.心エコー上全周性の壁
運動低下およびMRI検査でも中隔・心尖部にhigh
intensityな領域を認めた.これにより心サルコ
イドーシスを疑い手術を行った.心電図上block
等の既往は認めなかった.ASD direct closure,
TAPと同時に心筋生検を行った.術中所見では
MRIに一致する部分に白色変性を,病理組織では
非乾酪壊死を伴う類上皮肉芽腫を認め心サルコイ
ドーシスに一致していた.術後は合併症なく良好
に経過した.心サルコイドーシスは比較的まれな
疾患である.今回我々は低心機能を合併したASD
において手術時の心筋生検の結果心サルコイドー
シスの診断を得た一例を経験したので報告する.
104) Partial AVSD術後15年目に心不全を発症し
再手術を施行した一例
(和歌山県立医科大学付属病院第一外科)
山中 学・打田俊司・西村好晴・久岡崇宏・
本田賢太朗・金子政弘・吉田 稔・仲井健朗・
岡村吉隆
症 例 は73歳 女 性.58歳 時 にPartial AVSDに 対 し
ICR施行した.術後MR trivialであった.術後5
年目に心房細動を指摘され,術後7年ごろから
労作時呼吸困難出現.心エコーでMR moderate,
TR trivialを認めた.本人の希望により内科的治
療で経過を見ていたが,徐々に心不全症状が増強
し,心エコーでMR severe,TR moderate,左房
拡大,胸部X線で心拡大(CTR 80%),肺うっ血
を認めたため,外科的治療の方針となった.術
中所見では,僧帽弁前尖は肥厚し,cleft部と中心
部でcoaptationが悪かった為,僧帽弁形成術を断
念し,僧帽弁置換術(CEPmm)を行った.三尖
弁は弁輪拡大によるcoaptation不良が著しかった
ため,DeVega法による三尖弁輪縫縮術を行った.
また,拡大した左房の縫縮も行った.術後,経過
は良好で現在外来経過観察している.
105) 当院における国内心移植23例の経過
(国立循環器病センター) 進藤一紘・
加藤倫子・簗瀬正伸・中谷武嗣
【目的】国内心移植症例の臨床経過を明らかにす
る【方法】当院で心移植を行った23例(男性17例,
女性6例)について,臨床経過をretorospective
に解析した.【結論】原疾患:DCM21例,DHCM
1例,ARVC 1例.待機期間:29−2748日(1年
以上18例).LVAS補助機関:39−1444日(1年以
上16例).転帰:退院21例,死亡1例(4年2ヶ
月後,感染症),入院中1例(心移植後1ヶ月).
移植後の経過:治療を要する拒絶反応の発生6例,
移植後の冠動脈病変7例.悪性腫瘍なし.【総括】
移植までの待機期間は平均でも2年以上となっ
ており,その殆どがLVAS装着下での待機である.
移植後の死亡例は1例のみ.生存率は95.7%.入
院延長を要する拒絶反応の発生は3.1%.慢性期
合併症では,移植後冠動脈病変を38%に認めてい
るが,悪性腫瘍の発症は認めていない.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
106) 心不全治療に難渋した甲状腺機能亢進症の
一例
(舞鶴医療センター) 中上拓男・濱岡哲郎・
中島規雄・彦坂高徹・原田佳明・平野伸二
【症例】71歳,男性.下腿浮腫,呼吸困難を主訴
に来院.
【現症】全肺野に湿性ラ音聴取,4LSBに
収縮期雑音聴取(II/VI),全身に著明な浮腫あり.
【入院経過】胸部レ線で心拡大,肺うっ血所見あり,
ECGにてAfあり,UCGにて左室拡大および左室
壁運動低下所見(FS15%)を認め,心不全急性
増悪として治療を開始した.入院時検査でTSH
<0.01と異常低値をあるもfree-T4は正常域であ
り,甲状腺精査を進めつつ経過観察した.心不全
治療により全身状態の改善を認めるも頻脈傾向が
持続した.TRAB結果が81.2%と異常高値であり,
freeT4再検にて異常高値を認め,Thiamazoleを投
与開始し,心拍安定化,心機能の改善を認めた.
【結
語】心不全の原因として甲状腺疾患が疑われる場
合には単回ではなく複数回のホルモン検査を行う
ことが望ましい.
107) 難治であった,高血圧・胸痛・浮腫を伴う
低カリウム血症3例
(四天王寺病院内科) 小山 徹
109) 上肢の脱力で発症し著明な求心性心肥大を
認めた原発性アルドステロン症の一例
(東大阪市立総合病院) 石塚周一・
木島祥行・中川雄介・西部 彰・松尾安希子・
国重めぐみ・久米清士・波多 丈
症例は66歳男性.高血圧症にて近医通院中.平成
20年6月頃より上肢の脱力を自覚したため来院.
著明な高血圧と低カリウム血症を認めたため原発
性アルドステロン症を疑い精査入院.カプトリル
負荷テスト陽性,腹部造影CTで左副腎に約15mm
の腫瘍を認めたため副腎静脈サンプリングを施行
し左副腎原発性アルドステロン症と診断.心エコ
ーでは遠心性左室肥大が疑われたが,心臓MRIで
は左室重量(g)/左室拡張末期容積(ml)>2
と著明な求心性心肥大を認めた.近年,原発性ア
ルドステロン症は年齢や高血圧罹患期間に関係な
く心肥大を高率に合併すると報告されている.左
室肥大様式の客観的診断に心臓MRIが有用であっ
た原発性アルドステロン症の一例を経験したので
報告する.
110) 剖検にて診断された難治性呼吸不全の一例
(三木市立三木市民病院循環器科)
大塚郁夫・江尻純哉・片岡俊哉・平山園子・
高石博史・大橋佳隆・市川 忍・粟野孝次郎
112) 高血圧治療における第3世代カルシウム拮
抗薬アゼルニジピンの意義に関する検討
(The CALVLOCK study investigators/
大阪府済生会千里病院循環器内科) 土井泰治
(The CALVLOCK study investigators)
伊藤 浩・石井克尚・岩倉克臣・越路正敏・
後藤尚己・篠田政典・滝内 伸・俵原 敬・
長野俊彦・中村文昭・藤澤 攻・皆川太郎・
向井幹夫
カルシウム拮抗薬は反射性交感神経活性化により心機
能に悪影響を及ぼす可能性が指摘されているが,アゼ
ルニジピンはアムロジピンに比し交感神経系に対する
影響が極めて少ない.本研究では前向き非盲検下オー
プン試験において拡張不全を合併する高血圧治療にお
けるアゼルニジピンの意義を検討した.心エコー図検
査にて僧房弁輪移動速度8cm/s未満と拡張不全を呈
する新規およびアムロジピン服用降圧効果不十分高血
圧患者(収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧
90mmHg以上)を対象にアゼルニジピン16mgを1日
1回朝食後に経口投与(アムロジピン服用患者はアゼ
ルニジピンに変更)した.治療期24週では観察期に比
して血圧・心拍数は有意に低下し,アゼルニジピンは
拡張不全を合併する高血圧患者の治療において有用で
あることが示唆された.
113) 肺動脈に穿破したが,救命し得た胸部大動
脈瘤の一例
(和歌山県立医科大学循環器内科)
桝野富造・石橋耕平・田中 篤・有田 祐・
谷本貴志・今西敏雄・赤阪隆史
(同第一外科) 久岡崇宏・西村好晴・
岡村吉隆
【症例1】88歳,女性.下腿浮腫増強し,前医で
フロセミド処方されるも,軽減せず,胸痛出現し
た為,紹介入院.【症例2】74歳,男性.高カリ
ウム血症等にて前医でポリスチレンスルホン酸カ
ルシウムゼリーの処方を受けていた.胸痛・全身
浮腫が出現した為,紹介入院.
【症例3】88歳,
女性.慢性C型肝炎等にて前医でグリチルリチン
酸アンモニウムの注射による加療を受けていた.
胸痛・両下腿浮腫出現し,持続する為,紹介入院.
いずれも,入院時,心エコーにて明らかな壁運動
異常を認めず,またカリウム値2.0−2.5mEqと低
カリウム血症を認めた.リハビリ,注射薬カンレ
ノ酸カリウム,内服薬ARB・スピロノラクトン・
グルコン酸カリウム・エプレレノンの加療によ
り,カリウム値の改善とともに胸痛消失し,下腿
浮腫の改善みられたが,難治であった.
症例は70歳男性.35年間研磨業(金属粉)に従事
され,喫煙歴がある.1988年より心筋炎後遺症(心
尖部のみ低収縮),2003年より心不全として加療
されていた.2005年3月に労作時呼吸困難増悪認
め,CT上右肺癌疑いとして精査を進めたものの,
悪性所見は認めず,職業歴等から塵肺を疑い,引
き続き加療した.しかし症状改善せず,2007年11
月の心エコーにてEF29%でびまん性の壁運動低
下あり,精査加療目的にて入院.心臓カテーテル
検査等施行したが確定診断はつかず,対症療法と
しての酸素投与にて軽快,在宅酸素療法を開始し
た.ところが2008年2月突然のCPA(VF)にて
死亡され,死因の推定が困難であったため剖検を
依頼し,確定診断がついた.生前に診断に至らな
かった原因等の考察を加えて報告する.
108) 下肢咬創による長期の安静臥床により症状
が悪化した心不全の一例
(京都大学循環器内科) 岸本千晴
(精華町国民健康保険病院) 薮内信代・
井上良美・奥 成顕・桑原洋史
111) Torsades de Pointesを来した原発性アルド
ステロン症の一例
(三田市民病院) 浜田晶子・松田祐一・
吉川糧平・板垣 毅・亀村幸平・佐野博志・
大末剛史
114) 高齢で鎖骨下大動脈の狭窄しか認めないが
大動脈炎症候群が疑われた一症例
(市立岸和田市民病院循環器科) 本田耕介・
塩路圭介・出原正康・門田 真・馬場 理・
三岡仁和・上垣内敬・松田光雄
症例は,82歳男性.心房細動にて不定期に当院通
院中であった.平成19年8月15日,犬に左足関節
を咬まれ,本院入院.創が軽快しつつあった9月
25日に,転倒して右下肢に擦過傷をうけた.この
間,ベッド上臥床を余儀なくされた.このころよ
り動悸,胸部不快・圧迫感が出現した.胸部レン
トゲン上左右胸水の貯留を認めた.心電図は心房
細動で,心エコーでは,LVDd=46mm,EF=43%,
LA=46mm,また左室のrestrictionの拡張期病態
が考えられた.以後,積極的に歩行などのリハビ
リをすることにより心不全は消失した.翌年(平
成20年),2月には椎間板ヘルニアが悪化し,再
び安静臥床を余儀なくされると再び心不全症状が
出現し,胸水が増加した.左室拡張能におよぼす
安静臥床の悪影響から心不全にいたったと思われ
る一例を報告する.
症例は65歳男性.脈不整にて近医受診し,心電図
施行中にVF来し意識消失.CPR施行後当院救急
搬送となる.当院来院後もTdPからVFを繰り返
し,緊急心臓カテーテル施行.冠動脈造影は正
常.体外一時ペーシング留置となる.来院時血
圧174/66mmHg, 血 清K1.5mEq/l. 腹 部CT施 行
したところ右副腎に楕円形腫瘤認めた.またPAC
227ng/dlと上昇し,PRA 0.2ng/dl/hと抑制されて
おり,アドステロールシンチでも同部位に異常集
積が確認されたため,右副腎腫瘍による原発性ア
ルドステロン症と診断.入院後はKの補正および
抗アルドステロン薬の投与にて心電図は正常化,
血圧コントロールも良好となった.本例のように
原発性アルドステロン症による著しい低K血症か
ら,QT延長更にTdPに至る症例は報告が少なく,
貴重な一例を経験した.
症例は83歳女性.主訴は血圧測定の不能.入院歴,
通院歴なし.今年度の市の健康診断で昨年までと
異なり血圧が測定できず,他施設においても測定
不能であったため当科受診となった.受診時,橈
骨動脈拍動が両側とも微弱で左鎖骨下に血管雑音
を聴取した.採血所見ではCRP 2.10mg/dl,ESR
36/52mm(1hr/2hr), 抗 核 抗 体 陽 性,FDP定 量
9.3μg/ml,Dダイマー5.4μg/ml.左鎖骨下動脈か
ら腋窩動脈にかけ90%狭窄を認めたが,肺動脈主
幹部及び胸腹部大動脈自体とその分岐直後の血管
には狭窄を認めず.肺血流シンチでは右肺のS4
及びS6領域に斑点状の集積低下を認めた.プレ
ド ニ ン 投 与(0.5mg/kg) に よ り,ESRやCRPの
正常化と自覚症状の改善を認められた.高齢者で
狭窄部位が鎖骨下動脈のみという比較的稀な大動
脈炎症候群の症例を経験したため報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
症例は80歳男性.高血圧の既往があり,以前より
胸部大動脈瘤を指摘されていた.腹部圧迫感を
主訴に近医を受診,胸腹部CTにて瘤の拡大(7
cm)を指摘された.当院を紹介され受診,手術
予定となり入院した.第7病日嗄声が突然出現,
超音波検査で瘤から肺動脈へ向かう血流シグナル
を認めた.収縮期血圧は110から90mmHgへ低下
したが,以降状態の増悪は認めなかった.瘤の破
裂と判断し,同日大動脈弓全置換術及び肺動脈再
建術を施行した.術後経過は良好であった.胸部
大動脈瘤の肺動脈穿破は,大量のシャント血流に
より急性心不全を呈し,救命は難しいとされてい
る.今回我々は,特異的な血行動態によって急性
心不全に陥らず,救命し得た胸部大動脈瘤の一例
を経験したため報告する.
神戸国際会議場(2008 年 11 月) 951
115) 下肢蜂窩織炎および敗血症の治療中に感染
性大動脈瘤を生じた一例
(大阪医科大学第一内科) 頼經英倫那・
弘田祐己・藤阪智弘・新名荘史・谷川 淳・
岡部太一・中小路隆裕・星賀正明・石原 正・
花房俊昭
(同心臓血管外科) 禹 英喜・羽森 貫・
大門雅広・三重野繁敏・小澤英樹・勝間田敬弘
66歳男性.両下肢の発赤,腫脹,圧痛が出現し,
一週間後には右前胸部に皮下腫瘤,前胸部および
背部に疼痛を認め,その後症状が増悪し入院と
なった.胸部CTにてStanford Bの胸部下行大動
脈瘤(最大径3.4cm),右胸肋鎖関節炎を認めた.
体温38度,白血球25680/μl,CRP 29.7mg/dl,血
液培養にて肺炎球菌を検出し,下肢蜂窩織炎によ
る敗血症と診断した.抗生剤投与および胸肋鎖関
節部のデブリードマンにより,下肢及び前胸部腫
瘤は改善した.しかし,CRP持続高値,大動脈瘤
の偽腔は拡大し,内部はモザイク様を呈し,感染
性大動脈瘤の発症および増悪と判断した.その後,
感染のコントロール努めたが難渋し,最終的にリ
ネゾリドの投与によりCRPは陰性化,大動脈置換
術を施行し得た.文献的考察を加え報告する.
116) プロテインC欠乏症による大動脈血栓症の
1例
(野崎徳洲会病院心臓血管外科) 岡藤 博・
坂倉玲欧
(松原徳洲会病院心臓血管外科) 吉田 毅
(名古屋徳洲会総合病院心臓血管外科)
大橋壮樹
症例は56歳男性.2008年4月突然の左前腕の疼痛
とチアノーゼを認め近医受診し,急性左上肢動脈
塞栓症と診断され,当院転院となる.CTにて腕
頭動脈起始部から上腸間膜動脈起始部までの大動
脈と腕頭動脈,左総頚動脈,左鎖骨下動脈に大量
の血栓を認め,左上腕動脈以下は閉塞していた.
同日緊急血栓除去術を施行し,左上肢の血流は改
善した.プロテインC活性は41%と低下していた.
術翌日よりワーファリン投与を開始した.術後第
7病日に構音障害を認め,MRIにて右小脳梗塞と
診断した.リハビリにて症状は改善し,第28病日
退院となった.CT上,大動脈と左鎖骨下動脈の
血栓は著明に減少し,腕頭動脈,左総頚動脈の血
栓は消失していた.プロテインC欠乏症による大
動脈血栓症の1例を経験したので報告する.
117) IABP抜去困難となった心原性ショックの
一例
(赤穂市民病院) 小西明英・鈴木 敦・
久保川修・瀬野匡巳・小林憲恭・安部博昭・
藤井 隆
(同心臓血管外科) 山本芳夫
症例は85歳女性.胸部圧迫感と徐脈で当院緊急搬
送された.緊急CAGの結果,#1,99%,#5,
50%を認め,心原性ショックとなり,両部位に対
してPCI施行した.IABP留置後,ICU入室となっ
た.第3日病日午前2時にIABPリークアラーム
が一時的に作動したが,停止し,その後の作動
も問題ないため経過観察となった.翌朝IABPカ
テーテル内に逆血を認め,バルーン破裂を疑い,
IABP抜去を行った.しかし,数センチ抜けた所
で抵抗を感じ,CT撮影行った.バルーン内にair
を認めた.IABPバルーン内にワイヤー挿入して,
血栓を破砕し,トラップされたairを逃がしたが,
バルーンの約1/3抜去した所で抵抗を感じ,血栓
がバルーン内に貯留していると考え,緊急手術と
なった.IABP抜去困難に対して,低侵襲手術に
て抜去しえたので報告する.
952 第 106 回近畿地方会
118) 診断に難渋したA型急性大動脈解離の一例
(東住吉森本病院) 藤田琢也・斎藤聡男・
坂上祐司・八木 匠・武田久輝・石井 英・
岡島一恵・広瀬 真・西田幸生・瓦林孝彦
症例は68歳の女性.咽頭部疼痛を主訴に2008年6
月2日に当院救急外来を受診した.疼痛は10分程
度で消失し,当院受診時には無症状であった.そ
の後突然の脈拍低下(洞性徐脈)・血圧低下とと
もに意識レベルの低下があり,一分弱程でいずれ
も改善し再び無症状となった.心エコーでは壁運
動異常を認めず,上行大動脈内に明らかな解離は
認めなかった.迷走神経反射やAdams-Stokes症
候群,不安定狭心症を疑い,経静脈的一時ペーシ
ング挿入を行い入院となった.翌日の冠動脈造影
では有意狭窄は認めず冠動脈形成術は行わなかっ
た.第3病日に頸動脈エコーを施行したところ,
両側総頸動脈・腕頭動脈の解離を認め,経胸壁心
エコーでも明らかに上行大動脈内に解離を認め
た.非典型的症状の大動脈解離を経験したので報
告する.
119) 高 度 石 灰 化 病 変 に 対 す るPTAに お い て
TornusTMが有用であった維持透析患者の2症例
(近江八幡市立総合医療センター)
加藤 拓・深井邦剛・福山 恵・上林大輔・
全 完・立川弘孝・槇 系
【症例1】56歳男性,左重症虚血趾にてPTA.左
CIAおよびCFAに石灰化を伴う高度狭窄があり,
SFAはCTO.山越えアプローチによりまずCIAを
拡張したが,CFAの狭窄はマイクロカテーテルお
よびバルーンが通過しなかった.冠動脈狭窄部貫
通用カテーテルTornusTMを用いたところ病変を通
過し,サポートワイヤに置換することでバルーン
が通過した.【症例2】50歳女性,左間欠性跛行
にてPTA.SFAの高度石灰化病変に対しワイヤー
をクロスしたが,症例1と同様にデバイスが通過
せず,TornusTMを用いて病変の通過に成功した.
その後バルーン拡張とステント留置を行い良好
な血流を得た.
【結語】高度石灰化病変のためデ
バイスの通過が困難な維持透析患者のPTAにおい
TM
て,Tornus の使用が有用であった2症例を報告
する.
120) SLE・慢性腎不全に合併した腹部大動脈高
度石灰化病変に対しカテーテル治療にて血行再建
に成功した一例
(関西労災病院循環器科) 池岡邦泰・
飯田 修・南都伸介・上松正朗・両角隆一・
渡部徹也・粟田政樹・大西俊成・川本健治・
世良英子・南口 仁・矢野正道・岡本 慎・
田中宣暁・安井治代・石原隆行・土肥智晴・
永田正毅
【症例】60歳女性【主訴】両側間歇性跛行(Rutherford 3)【既往歴】SLE,Lupus腎炎による慢性
腎不全(透析)
【現病歴】2年前より間歇性跛行
あり,平成20年4月当科紹介受診,4月28日精
査加療目的入院となった.【検査】ABI:右0.45
左0.48【経過】血管造影にて腎動脈下腹部大動脈
および両側総腸骨動脈に高度石灰化を伴う狭窄病
変(TASC D)を認めた.腹部大動脈病変に対し
右上腕動脈より順行性アプローチにて血管内治
療を施行した.CTOワイヤーにてクロス成功し
Express LD 10×57mmを留置しIVUSにて良好な
拡張を確認した.術後下肢症状軽快し退院となっ
た.【まとめ】SLE・慢性腎不全に合併した腹部
大動脈高度石灰化病変に対し血管内治療にて血行
再建に成功した一例を経験した.
121) 下肢閉塞性動脈硬化症に対するPTA後4日
目に出血性ショックを認めた症例
(滋賀県立成人病センター) 西尾壮示・
張田健志・石井 充・天谷直貴・武田晋作・
竹内雄三・岡田正治・羽田龍彦・小菅邦彦・
池口 滋
67歳男性.主訴は間歇性跛行.既往歴は高血圧と
腹部大動脈瘤.下肢CT血管造影にて,右外腸骨
動脈の慢性完全閉塞と左外腸骨動脈の高度狭窄を
認め,閉塞性動脈硬化症と診断.2008年3月,左
外腸骨動脈に対しPTA施行.4月に右外腸骨動脈
の完全閉塞病変に対しPTA施行.術後問題なく経
過し退院となった.退院後4日目の朝,トイレで
排便した後より下腹部痛を自覚し救急要請.来院
時ショック状態であり,腹部造影CTにて右後腹
膜腔に血腫を認めたため,緊急カテーテル造影検
査施行.右外腸骨動脈のステント留置部に偽性動
脈瘤と思われる病変を認め,covered stentにて止
血した.一般的にPTAによる出血は留置時に起こ
る事が多いが,本症例では4日後に出血を認め,
まれな症例であり報告する.
122) 外科的バイパス術が困難であった重症虚血
肢症例に対し血管内治療が奏功した1症例
(関西労災病院循環器科) 川本健治・
飯田 修・南都伸介・上松正朗・両角隆一・
渡部徹也・粟田政樹・大西俊成・世良英子・
南口 仁・矢野正道・岡本 慎・池岡邦泰・
安井治代・田中宣暁・石原隆行・土肥智晴・
永田正毅
【症例】80歳男性【主訴】左第1,2趾潰瘍【既往
歴】塵肺,多発褥創【危険因子】高血圧,喫煙
【現病歴】平成20年5月より足趾潰瘍に対し保存
的に加療するも増悪を認め,今回血行再建目的に
て当院へ転院となった【入院時検査所見】ABI:
0/0【入院時経過】下肢動脈造影検査施行し,右
下肢は総腸骨動脈から外腸骨動脈閉塞(TASC D)
と浅大腿動脈閉塞病変(TASC D),左下肢は外
腸骨動脈から浅大腿動脈遠位部(TASCD)の完
全閉塞病変であった.バイパス術は全身状態から
ハイリスクと考え血管内治療を選択した.右上腕
動脈からアプローチしTreasure wireで病変通過
後,外腸骨動脈から浅大腿動脈にかけてSMART
8*100mmステントを4本留置し0%に開大,術
後左ABIは0.87まで改善し救肢した.
123) 大腿膝窩動脈領域におけるTASC2 A,B病
変に対するナイチノールステント治療成績
(関西労災病院) 飯田 修・南都伸介・
上松正朗・両角隆一・渡部徹也・粟田政樹・
大西俊成・世良英子・南口 仁・川本健治・
矢野正道・池岡邦泰・岡本 慎・田中宣暁・
安井治代・石原隆行・土肥智晴・永田正毅
【目的】大腿膝窩動脈(FPA:femoropopliteal artery)領域におけるTASC2 A,B病変に対するナ
イチノールステント治療成績を評価すること.
【方
法】対象は2004年4月本邦でナイチノールステン
ト使用可能となったから2007年12月迄で,FPA領
域に対してナイチノールステントを新規病変に留
置した連続症例333病変のうち,TASC2 A,B症
例126症例,191病変とした.評価項目は,一次開
存率,破損率とした.【結果】一次開存率は1年
で85%,2年で83%,3年で79%であった.また
ステント破損率6%(12/191)であった.【結語】
TASC2A,B大腿膝窩動脈病変に対するナイチノ
ールステント成績は,破損率は低く開存率は良好
である.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
124) 右大腿深部動脈瘤の1手術例
(神戸労災病院心臓血管外科) 田中陽介・
石川浩之・山田章貴・井上享三・尾崎喜就
【症例】65歳,男性.右大腿部の腫脹および疼痛
を自覚し近医受診.エコーにて深大腿動脈瘤を指
摘され当院紹介受診となった.当院にてCT再検
したところ右深大腿動脈に5cm大の動脈瘤,深
大腿動脈の閉塞を認めた.術中動脈瘤を露出し内
腔を確認.感染の所見を認めなかったため人工血
管(INTERING 6mm)にて置換術を行った.術
後リンパ漏を認め廃液を行った.以後経過は順調
にて軽快退院となった.
125) 血管内超音波にて診断し得た両側浅大腿動
脈低形成の一例
(三田市民病院循環器科) 亀村幸平・
吉川糧平・浜田晶子・大末剛史・新井堅一・
板垣 毅・松田祐一・佐野博志
症例は53歳女性,主婦.下肢静脈瘤の手術の際
に両側ABIの低下を指摘され近医より紹介受診,
精査加療目的にて入院となった.ABI:右0.8左
0.76.下肢CTA及び下肢動脈造影にて左浅大腿動
脈(SFA)の閉塞および右SFAの高度狭窄と考え
られた.間欠性跛行は認めないが,下肢冷感が
あるため,PTAを試みた.血管内超音波(IVUS)
にて,左SFAの閉塞部分には血管構造物がなく,
盲端になっていると考えられた.また造影上狭窄
と思われた部位には動脈硬化をほとんど認めず,
血管は低形成であると考えられた.右SFAも同様
に低形成であったため,PTAの適応はないと考え
治療を中止した.下肢CTA,下肢動脈造影では
診断が困難であり,IVUSにて診断し得た両側浅
大腿動脈低形成の一例を経験したため,報告する.
127) 体表エコー,CTA及びIVUSガイド下PPIに
て治療した腸骨動脈CTOの1例
(大阪労災病院循環器科) 吉村貴裕・
西野雅巳・中村大輔・李 泰治・原 正彦・
中谷晋平・橋本光人・山上喜由・谷池正行・
加藤弘康・江神康之・習田 龍・山口仁史・
田中健二郎・田内 潤・山田義夫
症例は76歳女性.両側間欠性跛行を主訴に当院を
受診.API:rt0.65 lt0.34と両側ともに低下して
おり,CT angiography・血管造影にて左腸骨動
脈の高度石灰化を伴った完全閉塞を認めた.同病
変に対してPPIを施行.左膝窩動脈より6Frシー
スを挿入したが,体表エコーを使用することによ
り安全に動脈穿刺することが可能であった.病変
部は石灰化のためワイヤーの通過は困難であった
が,CT angiographyにおける血管の走行を参考
にすることでワイヤーの通過が可能となった.そ
の後IVUSにて病変を確認し,バルーンでの拡張・
ステント留置術を施行.同部において良好な血流
再開が得られた.この結果APIは改善,症状も著
明な改善を認めている.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
128) common iliac arteryの慢性完全閉塞の一例
(京都第一赤十字病院循環器科) 岡田 隆・
木村雅喜・鳥居さゆ希・宮川浩太郎・
竹田光男・白石 淳・兵庫匡幸・島 孝友・
河野義雄
(同救急部) 有原正泰
今回ワイヤー通過に難渋した総腸骨動脈の完全閉
塞の一例を経験した.【患者】62歳男性【主訴】
間歇性跛行【現病歴】3ヶ月前に,ABIの低下が
指摘された.血管造影で左総腸骨動脈の完全閉塞
が認められた.患者の希望により当院へと紹介.
【治療】石灰化を伴う慢性完全閉塞病変であった
が,カテーテル治療を強く希望された.左大腿動
脈に7Frシースを挿入.逆行性にアプローチした.
ワイヤーとしてTreasure,Astatを用いたが通過
せず,閉塞部に解離を生じた.固いプラークが存
在すると考えられた.Radifocusのtailを使用して
病変部を穿通させた.マイクロカテにて中枢側が
true lumenにあることを確認した.Smart Stent
を留置し,血行再建終了した.【考案】Radifocus
のtailの先端負荷重は正確に発表されていない.
妥当性について検討中である.
129) 当院における透析患者のCLIの予後
(関西労災病院循環器内科) 岡本 慎・
飯田 修・南都伸介・上松正朗・両角隆一・
渡部徹也・粟田政樹・大西俊成・世良英子・
南口 仁・川本健治・矢野正道・池岡邦泰・
田中宣暁・安井治代・石原隆行・土肥智晴・
永田正毅
131) 上大静脈に留置したFilterが留置後1週間で
furactureした1例
(景岳会南大阪病院) 津久田享三・
徳岡孝仁・中島大成・宇津典明・宮越一穂
症例は58歳男性.主訴は左上肢疼痛.平成19年10
月直腸癌にて当院消化器外科にて全摘術施行し,
術後化学療法のため左鎖骨下静脈にポートを留置
した.平成20年6月頃より上記主訴認め,消化器
外科受診.造影CTにて左鎖骨下静脈の完全閉塞
を認めたため当科紹介となった.閉塞側の静脈ポ
ート抜去時に肺血栓塞栓症の予防のため上大静脈
にOptEaseを留置しポートを抜去した.症状出現
時より約3週間経過していたが症状残存するた
め,左正中静脈よりt-PAを順行性に投与した.4
日間投与後Filter抜去試みるも,Filterのfructure
認め,抜去不可となった.現在ワーファリン投与
にて経過観察中である.Filterの短期間留置中の
Fructureは非常に稀であるため,若干の文献的考
察をふまえ報告する.
132) 深部静脈血栓症との鑑別を要した下腿血腫
の3例
(大阪医療センター循環器科) 中川彰人・
佐々木典子・濱野 剛・谷口達典・宇都宮紫・
岩破俊博・小出雅雄・石津宜丸・山戸昌樹・
山元博義・廣岡慶治・川口義廣・楠岡英雄・
安村良男
(同臨床研究部) 是恒之宏
【背景】CLIは予後不良の疾患である.HDも他の
疾患で予後不良因子として知られている.しかし,
HD患者におけるCLIの予後規定因子は明らかで
はない.今回HD患者におけるCLIの予後因子を
調査した.【方法】対象は2003年6月から2007年
10月までにEVT(Endovascular Therapy)を受け
たHD患者のCLI連続80症例とした.【結果】死亡
率は,38.8%(31/80)であった.予後因子とし
ては,冠動脈疾患の有無(p=0.0086)
,EF(p=
0.0071),CRP(p=0.019)であった.【結論】予
後因子は,心疾患,炎症反応高値はHD患者にお
けるCLIの予後不良因子であった.
【症例1】82歳女性.弁置換術後でヘパリン持続
投与下にペースメーカ植込み術を施行したが,植
込み部の進行性の皮下血腫のため再開創を要し
た.術後のリハビリ歩行後に右下腿腫脹,疼痛が
出現し,下肢エコーにて多房性cyst様エコー像を
認めCTで血腫と診断した.【症例2】70歳男性.
左膝周囲の疼痛のため数回穿刺を行っていた.そ
の後左下腿腫脹を自覚,当科受診時発赤,腫脹,
圧痛認め,下腿全体に浮腫を認めた.下肢エコー
にて多房性cyst様エコー像認め,合併した骨腫瘍
の手術時に血腫と判明した.【症例3】49歳女性.
特に誘因なく右下腿に限局性疼痛が出現,深部静
脈血栓症疑いで当科紹介.下肢エコーにて紡錘
状のlow density領域を認めCTで血腫と診断した.
下肢静脈血栓症との鑑別を要した3例の下腿血腫
を経験したので文献的考察を加え報告する.
130) 高輝度エコー Flapを認めたアンギオシー
ル止血後の1症例
(康生会武田病院循環器センター)
入江秀和・山田健志・宮井伸幸・中村玲雄・
木下法之・橋本哲男・田巻俊一
133) 消化器症状を契機に見つかった下大静脈血
栓症の一例
(亀岡市立病院循環器科) 松尾龍平・
栗山卓弥
症例は72歳男性で平成13年よりMPGNにてHD導
入,平成19年12月にASOにて左外腸骨動脈にPTA
施行されている.平成20年5月より左間歇性跛行
を認め,6月19日に左外腸骨動脈に対し右大腿動
脈よりPTAを施行し穿刺部位は6Frアンギオシー
ルで止血し6月20日に退院した.退院翌日より穿
刺部の腫脹,疼痛,発熱が出現し当院受診された.
血管エコーにて穿刺部付近に可動性のある高輝度
エコー病変が認められたために左大腿動脈から下
肢動脈造影を施行した.造影上明らかなFlapは認
められなかったが,末梢塞栓の可能性もあり穿刺
部付近をステント留置した.以後抗生剤投与にて
発熱・疼痛は軽減し退院した.血液培養は陰性で
今回の高輝度エコー病変が血栓か疣贅かは不明だ
がアンギオシールが関与している可能性もあり注
意が必要と考えられた.
症例は78歳女性.平成8年から慢性関節リウマチ
で治療中であった.本年7月,水様性下痢,嘔吐,
腹痛のため急性腸炎と診断され入院した.臍部
に圧痛を認め,造影CT検査を施行し,下大静脈
に5cm×1.4cmの血栓を指摘され当科に紹介され
た.下肢および腸骨静脈には血栓を認めなかった.
右鎖骨下静脈から一時フィルター「東レニューハ
ウスプロテクト」を留置し,TPAを左足静脈より
静注したところ,血栓は遊離しフィルターのバス
ケットに捕捉された.フィルター内に,50ml/h
の輸液,ノボヘパリン12,000単位,ウロキナーゼ
120,000単位/日の投与を行い,血栓の縮小をMR,
造影CTなどで観察した.8日後にフィルターを
残った血栓と共に抜去した.下大静脈血栓症が膠
原病に合併することは知られているが,本症例で
は消化器症状が診断の契機となった.
神戸国際会議場(2008 年 11 月) 953
134) 左腸骨静脈狭窄症に対してシャントコイリ
ング術,ステント治療を行った1例
(京都府立与謝の海病院内科(循環器))
坂根慶弥・木村晋三・五十殿弘二・田川雅梓・
本庄尚謙
(京丹後市立久美浜病院内科) 瀬尾泰正
(京都府立与謝の海病院外科) 佐々木裕二
(京都府立医科大学心臓血管外科) 岡 克彦
137) 原因不明の心嚢液・左胸水貯留で発症し,
診断に難渋した心臓血管肉腫の一例
(大阪大学医学部附属病院循環器内科)
赤澤康裕・松岡 研・玉井敬人・坂田泰史・
山口 修・水野裕八・小谷順一・坂田泰彦・
平野賢一・角辻 暁・大津欣也・南都伸介・
山下静也
(大阪警察病院内科) 横山恵信
症例は78歳女性.2006年右人工股関節置換術施行
直後より左大腿部腫脹出現.近医にて経過観察さ
れていたが2008年6月症状改善を認めないため精
査治療目的にて入院となった.左下肢静脈造影で
左腸骨静脈狭窄を認め,動脈造影では内腸骨動脈
からの動静脈シャントを認めた.左大腿静脈圧は
58/45mmHgと上昇しておりシャント血流減少目
的のためコイリングを実施,さらに左腸骨静脈狭
窄に対しバルーンにて拡張術を行いステント留置
を行った.これにより左大腿静脈圧が低下し,左
大腿部腫脹軽減を認めた.左腸骨静脈狭窄症例に
対し,シャントコイリング術並びにステント治療
が著効した症例を経験したので報告する.
64歳男性.生来健康であったが,2007年10月に運
動時の呼吸苦を自覚し近医を受診した.胸部CT
で大量の心嚢液・左胸水貯留と炎症所見高値を認
め,ウイルス性心膜炎が疑われた.心嚢ドレナー
ジを施行後,心嚢液・胸水の精査を行うも原因不
明であった.徐々に心不全症状出現し,心嚢ドレ
ナージ後の収縮性心膜炎と判断され,2008年1月
10日に当院紹介受診した.CTで全周性の心外膜
肥厚,PETで右心耳周囲に集積を認め,胸腔鏡下
で心外膜,左胸膜の生検を行ったが原因特定でき
なかった.以後,外来通院していたが,3月13日
のCTで右心耳心外膜の肥厚増大を認め,右心耳
原発の血管肉腫の可能性が高いと判断し,放射線
療法を開始した.原因不明の心嚢液・左胸水貯留
で発症し,診断に難渋した心臓血管肉腫の一例を
経験したので報告する.
135) プロテインS欠乏により下肢深部静脈血栓
(DVT)を発症した親子の例
(市立枚方市民病院循環器科) 糸原久美子・
中島 伯・後藤拓也・竹原康介・田中宏治・
北野勝也
138) 左室内粘液腫が疑われたが入院中に消失し
た一例
(東住吉森本病院) 斎藤聡男・坂上祐司・
藤田琢也・武田久輝・八木 匠・石井 英・
岡島一恵・広瀬 真・西田幸生・瓦林孝彦
症例は22歳,男性.平成20年6月中旬より右下腿
疼痛があり徐々に増悪して歩行困難となったため
当院受診.下肢緊満は軽度であったが,Dダイマ
ー10.9とFDP 16.7(μg/ml)の上昇があり,静脈
エコーで右浅大腿静脈の鼠径部より10cm遠位か
ら下腿まで血栓性閉塞を認めた.造影CTも併せ
DVTと診断し,下大静脈フィルターを留置,血
栓溶解療法と抗凝固療法を開始した.母親がプロ
テインS欠乏(24%)による左下肢DVTで加療中
であり,本例もプロテインS欠乏(26%)が確認
された.プロテインS欠乏は遺伝子異常に基づく
ことが知られている.DVT患者でプロテインS欠
乏が確認された場合,前もって血縁者も調査し,
比較的若年であっても生活指導や予防的抗凝固療
法を検討すべきかと痛感させられた.
症例は76歳の女性.主訴は呼吸困難・下腿浮腫.
1ヶ月前から両下肢の浮腫が出現し当院受診し
た.心エコーでびまん性壁運動低下を認め,特に
心尖部はakinesisであった.左室心尖部に最大径
2cm超の高輝度の構造物があり,他に左室内の
壁運動が比較的保たれた部位にも小径の同様構造
物を認めた.左室内腫瘍,特に粘液腫を疑い入院
となった.心不全を呈しており利尿薬を中心とし
た加療を行うとともに,左室内血栓も否定できな
かったため抗凝固療法を開始した.2週後に心エ
コーを再検したところ,左室内構造物は完全に消
失していた.また塞栓による症状は経過中認めな
かった.心エコーで粘液腫を疑い,IL-6も高値で
同診断に矛盾しなかったが,その後短期間で消失
した症例を経験したので,若干の文献的考察を加
えて報告する.
136) 全身倦怠感にて来院し,エコーにて心臓腫
瘍が疑われた1例
(大阪労災病院循環器科) 原 正彦・
西野雅巳・中村大輔・吉村貴裕・李 泰治・
中谷晋平・橋本光人・山上喜由・加藤弘康・
江神康之・習田 龍・山口仁史・田中健二郎・
田内 潤・山田義夫
139) 両心房内血栓の一例
(大阪掖済会病院) 能仁信一・島田健永・
福田祥大・松本健嗣・稲波 整・實正 哲・
吉田 健・田口晴之・吉川純一
(大阪市立大学循環器病態内科学) 葭山 稔
症例は75歳女性.抗生物質の投与にて改善を認め
ない全身倦怠感,炎症反応高値にて近医より紹介
受診.来院後施行した経胸壁及び経食道心エコー
にて心室中隔から大動脈弁右冠尖にかけて正常心
筋と比べほぼisoechogenicな腫瘤性病変を認め,
心臓腫瘍の疑いにて当日入院となった.入院後原
発性及び転移性心臓腫瘍の可能性を考え各種腫瘍
マーカー,種々の非観血的画像検査,及び心臓生
検を含めた心臓カテーテル検査にて精査を行うも
原因の特定ができず,第45病日に完全房室ブロッ
クから心停止に至った.その後施行した剖検の結
果,全身の小血管に壊死性血管炎の所見を認め,
死亡時の血液検体にてP-ANCA陽性の結果が得ら
れた.今回我々は心臓に炎症性の腫瘤を形成した
ANCA関連血管炎の極めて稀な1例を経験したの
で症例報告する.
954 第 106 回近畿地方会
【症例】45歳,男性.労作時呼吸困難感で当院を
受診し,経胸壁心エコー図検査で著明な心機能低
下を認めたため,うっ血性心不全の診断で入院と
なった.胸部CT検査で右房内にlow densityで表
面整な占拠病変を認めた.経食道心エコー図検査
では右房内に内部エコー輝度が均一で右房内腔へ
可動性を有する2つの腫瘍像(径3cm,1cm)
を認め,また左房内に壁在性の腫瘍像を認めた.
右房内腫瘍の組織診断のため経食道心エコー図検
査ガイド下のもと経皮的腫瘍生検術を施行した.
組織診断の結果,右房内の腫瘍は血栓であった.
今回,経食道心エコー図検査ガイド下のもと右房
腫瘍に対する経皮的腫瘍生検術が合併症なく施行
でき,両心房内血栓を診断しえた一例を経験した
ので報告する.
140) 治療方針決定に生検が重要であった右室内
腫瘍の1例
(三木市立三木市民病院循環器科)
佐藤雅信・片岡俊哉・平山園子・江尻純哉・
高石博史・大橋佳隆・市川 忍・粟野孝次郎
症例は81歳,男性.76歳時に胃癌・肝細胞癌によ
り幽門側胃切除および肝S6切除術を受けた.そ
の後,残胃癌により胃全摘術を受けた.また肝細
胞癌再発に対しては経カテーテル肝動脈塞栓術,
経皮的エタノール局注療法による治療を繰り返し
ていた.2008年3月(81歳)より呼吸困難,下肢
浮腫,全身倦怠感を訴えるようになったため同年
6月に心エコー図検査を行ったところ,右室自由
壁に浸潤し,右心室と右室流出路を充満し肺動脈
弁に達する腫瘍塊を認めたが,右房内,下大静脈
には全く認められなかった.2008年7月に冠動脈
造影,心筋生検を施行した.その結果,腫瘍は血
管に富み,右冠動脈右室枝で栄養されていた.ま
た腫瘍の病理組織診断により非常に稀な心臓腫瘍
であることが明らかとなった.当該腫瘍の治療に
つき若干の考察を加えて報告する.
141) 右室内巨大脂肪腫の一例
(兵庫医科大学内科学循環器内科)
濱めぐ美・岡 克己・江角 章・川端正明・
辻野 健・増山 理
(同冠疾患科) 大柳光正
(兵庫医科大学病院循環器外科学)
西 宏之・宮本裕治
症例は71歳女性.川崎病を示唆する既往歴はなか
った.約10年前から狭心症症状を認めていたが放
置しており,H20年3月に症状が増悪したため近
医受診.心エコーで心室中隔右室側に30×55mm
大のmassを認め,精査目的で当科紹介となった.
胸部単純CT,心臓MRI(T1強調,T2強調)等で
腫瘍は脂肪腫が疑われた.Coronary MRA,CAG
では冠動脈3枝に瘤形成を認め,LADは近位部の
瘤内が血栓形成のために高度血流障害を呈し,狭
心症の責任病変と考えられた.PETにて心腔内以
外に原発,転移巣がないことを確認し,外科的に
右室腫瘍切除術,CABG1枝,三尖弁置換術を行
った.腫瘍は組織標本から脂肪腫と確定診断され
た.心臓原発性の巨大脂肪腫は稀な症例であり,
冠動脈瘤も伴っていたため文献的考察を加えて報
告する.
142) 強い前胸部痛を主訴に救急受診したpericardial fat necrosisの1例
(京都第一赤十字病院循環器科) 木村雅喜・
白石 淳・鳥居さゆ希・宮川浩太郎・
竹田光男・兵庫匡幸・島 孝友・岡田 隆・
河野義雄
(同救急部) 有原正泰
(同胸部外科) 上島康生
(同病理検査部) 加藤元一
症例は56歳男性.2008年3月21日起床時より左前
胸部痛を自覚し,緩解増悪を繰り返していた.22
日23時ごろより強い前胸部痛が出現し当院へ救
急搬送.心エコー図にて心尖部を軽度圧排する
前縦隔腫瘤を認め,胸部造影CTにて周囲に炎症
を伴う脂肪濃度が主体の腫瘤を認めた.典型的
な画像によりPericardial fat necrosisと考えられ
た.Liposarcoma等の鑑別も考慮し,PET-CTを
施行しSUV値より悪性疾患は否定的であった.経
時変化も加え,Pericardial fat necrosisの可能性
を強く疑うも悪性疾患が完全に否定しきれず,胸
腔鏡補助下摘出手術を施行した.強い胸痛を惹
起しうる,報告数も極めて少ないPericardial fat
necrosisの1例を経験したため,手術所見,若干
の文献的考察ともに報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
143) 確定診断に難渋したSLE心外膜炎の一例
(関西医科大学第二内科) 諏訪恵信・
朴 幸男・岩坂潤二・上山敬直・佐藤大祐・
岡崎 徹・山下浩司・大石千尋・山本克浩・
大谷 肇・岩坂壽二
症例は62歳,男性.今年6月初旬より体動などに
て胸痛自覚していた.6月9日当院膠原病内科受
診し,心電図,心エコーにて心外膜炎疑われたが
症状軽微にて一旦帰宅するも6月16日症状増悪あ
り当科紹介入院となった.入院時採血にて炎症反
応の上昇を認め,また心エコー全周性に心嚢液
貯留を認めた.入院前の採血で抗核抗体,ds抗
DNA抗体は陽性であったが,SLEの診断基準を
満たさなかったため,NSAIDなどで経過をみた
が,改善無いため,第9病日よりステロイドパル
スを開始,第12病日よりプレドニンを開始した.
解熱,心嚢液の消失見られ,精査のため膠原病内
科に転科,其の後の検査でSLEと確定診断となっ
た.SLE疑われたが,確定診断にいたらず,その
治療に難渋した症例を経験した.
144) 開心術後収縮性心膜炎の一例
(愛仁会高槻病院循環器内科) 佐々木義浩・
笈田雅世・徳永俊太郎・茂真由美・村井直樹・
高井栄治・高岡秀幸
症例は79歳男性,主訴は労作時の呼吸困難,2006
年3月心エコーにて重症大動脈弁狭窄症(peak
PG 108mmHg)を指摘され,術前冠動脈造影検査
にて#1 90%の狭窄を認め2006年4月25日AVR
+CABG施行された.2007年10月に2:1のAF
を発症し,抗凝固,レートコントロール開始した
が,胸水貯留・肺うっ血所見が出現.11月に入院
のうえ電気的除細動を行い,肺うっ血は改善した
が,うっ血肝,胸水貯留は改善しなかった.右
心カテーテル検査では右室圧のDip & Plateauを
認め,胸部CTでは心膜の肥厚を,心エコー図検
査では右室自由壁の滑らかな動きの消失とEarly
Diastolic Septal Motionを認め,収縮性心膜炎に
合致する所見を得た.複雑な病態ながら開心術後
の収縮性心膜炎と診断した症例を経験したので考
察を加えて報告する.
145) 胸腺摘出術後にみられた収縮性心膜炎の一
症例
(近畿大学医学部附属病院循環器内科)
更谷紀思・山治憲司・平野 豊・木村彰男・
宮崎俊一
症例は60歳代の男性.2006年9月に胸腺腫摘出術
施行し,術後合併症なく終了した.2007年5月頃
より労作時呼吸困難,下肢浮腫が出現し近医を受
診した,両側胸水貯留を指摘され利尿剤投与され
ていたが改善ないため,2008年5月に当院へ紹介
され入院精査となった.心エコーでは推定右室圧
37mmHgで,心室中隔にのbounceを認めた.胸
部CTでは石灰化を伴わない5mmの心膜肥厚を
認めた.心臓カテーテル検査では,右室収縮期圧
40mmHgであり,dip and plateauを認め,平均右
房圧25mmHgでW型,右室拡張末期圧25mmHgと
上昇しており収縮性心膜炎と合致する所見であっ
た.今回我々は胸腺腫術後にみられた収縮性心膜
炎を経験したので報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
146) 心嚢液貯留により発見された脚気心の一例
(大阪警察病院心臓センター) 小西正三・
柏瀬一路・平田明生・西尾まゆ・根本貴祥・
松井万智子・松尾浩志・肥後友彰・増村雄喜・
樫山智一・和田 暢・中西浩之・坂本祥吾・
小笠原延行・廣谷信一・上田恭敬
149) 漏斗部心室中隔欠損症に併発した大動脈
弁・肺動脈弁位感染性心内膜炎の一例
(大阪市立総合医療センター心臓血管外科)
小谷真介・柴田利彦・服部浩治・加藤泰之・
元木 学・瀬尾浩之
(同小児心臓血管外科) 西垣恭一
【症例】34歳男性【主訴】全身倦怠感【現病歴】
2005年頃より失業,離婚を契機に自宅で一人こ
もるようになり,アルコール多飲状態となった.
2008年春より全身倦怠感,歩行時のふらつきを認
め,次第に増悪したため8月に近医を受診.レン
トゲンにて著明な心拡大,心臓超音波検査にて心
嚢液貯留を認め,心タンポナーデの精査加療目的
にて当院紹介となった.【入院経過】来院時,軽
度意識障害があり,眼振,小脳症状を認めた.レ
ントゲンでは軽度の肺うっ血,心臓超音波検査で
は著明な心嚢液貯留,左室壁運動の亢進を認めた.
脚気心およびウェルニッケ脳症と診断し,ビタミ
ンB1の投与を行ったところ,心嚢液の減少,小
脳症状の改善を認めた.失業,独居という社会背
景のもとに発症した脚気心の一例であり,若干の
文献的考察を交えて報告する
36歳女性.出生時より心室中隔欠損症(VSD)を
指摘されていたが無治療で経過観察されていた.
数ヶ月続く発熱と両側の胸痛を主訴に近医を受診
した.抗生剤を投与されるも改善なく,胸部CT
にて敗血症性肺塞栓症が疑われ入院となった.経
食道心臓超音波検査では肺動脈弁と右室流出路に
疣贅を認めたため感染性心内膜炎(IE)と診断
した.塞栓症を繰り返していたため当院に転院と
なり,手術を施行した.VSDからのジェットがあ
たる右室流出路と肺動脈弁に疣贅を認め,これを
除去した.またVSDは右冠尖(RCC)の逸脱を
伴っており,RCCには疣贅が付着していた.機
械弁で大動脈弁置換術を行いVSDはパッチ閉鎖
した.漏斗部VSDに併発したIEでは大動脈弁と
肺動脈弁の両方に感染を認める可能性があり,そ
れぞれの症例に応じた術式選択が必要である.
147) 関節リウマチの経過中収縮性心外膜炎様の
病態を呈したが心内膜心筋生検で心アミロイドー
シスと診断した1例
(大阪赤十字病院心臓血管センター循環器科)
山本貴士・稲田 司・徳永元子・西内 英・
近藤博和・内山幸司・林富士男・伊藤晴康・
牧田俊則・田中 昌
150) Streptococcus anginosusを 起 因 菌 と す る
感染性心内膜炎を発症した心室中隔欠損症の一例
(大阪医科大学第一内科) 宮崎宏一・
村井基修・岡部太一・新名 荘・中小路隆裕・
星賀正明・石原 正・花房俊昭
症例は68歳女性,関節リウマチ(RA)にて8年
間加療中であった.2年前に透析開始,また当
時の心エコー図検査で心嚢液貯留を指摘されて
いる.今回呼吸困難感と胸水貯留を主訴に当科
紹介となった.心エコー図検査で左室は縮小傾
向で明らかなsparkling patternは示していなかっ
た.ドプラエコーで著明な拡張障害を認めたが心
房拡大はなく,心外膜は軽度の肥厚と限局性に
輝度上昇を認めた.右心カテーテル検査ではdip
& plateau patternと両心室の拡張期同圧化を認め
た.RA患者は4−33%に心膜炎が合併すると言わ
れ,本症例も収縮性心膜炎(CP)として矛盾し
ない臨床所見であったが,心筋生検にてアミロイ
ド繊維の心筋内沈着を認め,心アミロイドーシス
(CA)と診断した.CPとCAの鑑別に苦慮した症
例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
148) 対照的な経過をたどった感染性心内膜炎の
2症例
(医仁会武田総合病院循環器科) 大屋秀文・
別府浩毅・白澤邦征・佐々木良雄・武田真一・
竹岡 玲・土井哲也・橋本哲男・河合忠一
(同心臓血管外科) 澤田吉英・野村幸哉
【症例1】58歳男性.2008年6月初旬から不明熱
出現,僧帽弁前尖に10mm大の疣贅と重度MRを
認めた.入院後も全身塞栓症を認め早期手術考
慮も,MRI上脳塞栓症(無症候性)を認め心不全
も安定していたため弁形成術を念頭に内科的治
療を優先,8月上旬手術予定.【症例2】55歳男
性.2008年6月15日から不明熱出現,大動脈弁に
18mm大の疣贅と重度ARを認めた.入院翌日意
識レベル低下,MRI上多発性脳塞栓を認めたが,
敗血症性ショックと急性左心不全が急速に進行し
たため緊急手術を行った.大動脈弁置換術後直後
より全身状態安定,出血性脳梗塞の合併無く経過
良好.脳塞栓症を合併した感染性心内膜炎の手術
時期に関しては苦慮するが,同時期対照的な経過
をたどった2症例を経験したので報告する.
症例48歳,男性.高校生時にVSDを指摘されるも
根治術は受けず無症状で経過.2007年11月,発熱,
咽頭痛を認め,抗生剤内服行うも改善せず,某院
入院.血液培養にてStreptococcus anginosusを検
出し,感染性心内膜炎疑いにて当科転院.心エコ
ー上Qp/Qs=1.39の短絡に加え,三尖弁下に異常
エコーを認め,PCG2000万単位+GM120mg/日投
与開始した.診断カテーテルにてQp/Qs=1.76の
2型VSDを確認,根治術施行された.尚,経過中
一過性に肺換気血流シンチ上右中葉の血流低下を
認め,疣贅塞栓疑われた.Streptococcus anginosus
は口腔内常在菌であり,歯周病の主たる原因菌で
あるが,感染性心内膜炎の起因菌としては稀であ
り,文献的考察を加え報告する.
151) 感染性心内膜炎に心筋梗塞を合併し経皮的
冠動脈形成術で疣贅を回収し再疎通に成功した1例
(多根総合病院内科) 長倉俊樹・奥村啓之・
谷和孝昭・日浦義和・浜 典男・大谷眞一郎
(同生理検査部) 山本律子・村上珠美
(大阪市立大学付属病院循環器病態内科学)
室生 卓・葭山 稔
症例は76歳の男性.微熱と右上肢の一過性の脱
力発作にて近医から紹介受診となった.頭部MRI
検査で左前頭部−頭頂部に皮質下梗塞巣が認め
られ,心原性塞栓症が疑われた.経胸壁心エコ
ー検査で僧帽弁に13mmの疣贅と,血液培養から
streptococcus bovisが検出された事で感染性心内
膜炎の診断となった.入院加療中に胸痛を自覚し,
心電図でV1−5でST上昇を認めた.前壁中隔の急
性心筋梗塞の診断で緊急カテーテル検査を施行し
た.左前下行枝近位部で完全閉塞を認め,血栓吸
引カテーテルにて吸引を施行した.約2*5mm
大の有疣が回収できた.今回,感染性心内膜炎に
急性心筋梗塞を併発した症例で,冠動脈から有疣
が回収できた極めて珍しい症例を経験したので,
文献的考察を加え報告する.
神戸国際会議場(2008 年 11 月) 955
152) SLEの急性増悪に感染性心内膜炎を合併し
た症例
(国家公務員共済組合連合会枚方公済病院)
竹中洋幸・北口勝司・尾崎春信・春名克純・
竹中琴重・山内亮子・多田英司・樋口貴文・
石井賢二
【症例】66才女性【既往歴】42才でSLE.メドロ
ール12mg内服中.【主訴】全身倦怠・食欲不振
【現病歴】上記主訴に救急搬入され,脱水(Cre/
BUN=0.53/39.9)
, 高 度 炎 症(CRP=31.59), 血
小板減少(1.4万)からSLE急性増悪,重症感染,
DICを疑い緊急入院.ステロイドパルス,抗生剤,
AT・血小板輸血投与を開始.エコーで僧帽弁前
尖に12mm・後尖に17mmの可動性高い疣贅が確
認されたが開心術はSLEの病状,全身状態から断
念.イベントなく1ヶ月でCRP陰性化,血小板
5万台に回復,疣贅消失.入院時血培MSSA陽性
であったが29日目の3検体はすべて陰性化.【結
語】SLEに塞栓症リスクの高い感染性心内膜炎を
合併し外科治療は断念したが合併症無く軽快でき
た.
153) 左上腕の急性重症虚血肢により発見された
人工弁感染症の1例
(近江八幡市立総合医療センター循環器内科)
福山 恵・深井邦剛・加藤 拓・上林大輔・
全 完・立川弘孝・槇 系
(滋賀医科大学医学部付属病院心臓血管外科)
浅井 徹
155) 大動脈炎症候群の確定診断に難渋した重症
大動脈弁閉鎖不全症の1例
(京都府立医科大学循環器内科) 丸山尚樹・
中村 猛・星野 温・沢田尚久・松原弘明
症例は49歳女性.下腿浮腫と労作時呼吸苦,拡張
期雑音を主訴に精査紹介,重症大動脈弁閉鎖不全
症と診断した.炎症持続高値を呈したが間欠性跛
行や血圧左右差・血管雑音を認めず,全身検索の
結果,慢性炎症の主因は胸骨と両鎖骨近位端の骨
髄炎と判断した.胸骨骨髄炎の増悪を避けるため
右第4肋間開胸で大動脈弁置換術を施行したとこ
ろ,上行大動脈は炎症性壁肥厚を認め,病理所見
や術後画像検査より大動脈炎症候群と診断した.
周術期よりステロイド治療を開始したところ炎症
所見は改善,術後合併症もなく心機能も改善した.
本例は典型的兆候のない大動脈炎症候群であり持
続炎症所見が診断の手掛かりであったが,骨髄炎
の合併により診断に難渋した.大動脈炎症候群に
骨髄炎が合併することは稀であり,文献的考察を
加え報告する.
156) 精神的緊張とドブタミンにより誘発された
可逆性僧帽弁逆流の1例
(明石医療センター循環器科) 河田正仁・
松浦 啓・中西智之・森 健太・平山恭孝・
足立和正・坂本 丞
症例は69歳男性.2007年12月,ASに対しAVRを
施行された.2008年4月中旬に突然の左上肢の疼
痛と冷感が生じ,当院へ救急搬送.左上腕は蒼
白,脈拍触知できず,急性動脈閉塞が疑われ緊急
血管造影を行った.上腕動脈は完全閉塞であり,
経皮的に血栓吸引を試みたところフィブリン様の
異物が吸引された.バルーン拡張術を併用し血流
再開した.経食道心エコーで大動脈弁に疣贅を認
め,人工弁感染が疑われ大動脈弁再置換術が行わ
れた.その際,弁周囲の組織に上腕から吸引され
たフィブリン塊と酷似した肉芽組織を認めた.し
かし,上腕動脈からの吸引物,大動脈弁,弁付近
の肉芽組織のいずれからも細菌は検出されなかっ
た.臨床経過は人工弁感染症に矛盾せず,上腕動
脈の急性閉塞により発見された稀有な症例を経験
したので若干の考察を加えて報告する.
症例は47歳男性.平成18年3月より労作時の呼吸
困難と胸痛があり,10−15分で治まっていた.心
筋シンチで虚血が疑われ6月26日近医から紹介入
院となった.同日かなり緊張されていたが,心
エコー図で流出路圧格差を伴うsystolic anterior
movement(SAM)と僧帽弁逆流(MR)III−IV
度を認めた.6月27日冠動脈造影で左前下行枝#
7に90%狭窄を認めた.左室造影ではMRを認め
なかった.6月28日心エコー図でSAMは消失し,
MRI−II度であった.6月29日冠動脈ステント
を留置した.6月30日心エコー図でSAMを伴う
MRII−III度を認めた.7月14日ドブタミン負荷
心エコー図でSAM+MRが可逆的に誘発された.
βブロッカーの内服で良好にコントロールした.
以上より,精神的緊張によると考えられる左室過
収縮により可逆的なSAM+MRを来した稀な1例
を報告する.
154) 感染性心内膜炎を契機に発見された右室二
腔症を合併した成人心室中隔欠損症の1例
(京都府立医科大学循環器腎臓内科)
石井理紗・松井朗裕・佐藤玲南・矢西賢次・
赤壁佳樹・中西直彦・畔柳 彰・西澤信也・
椿本恵則・中村 猛・白石裕一・松室明義・
沢田尚久・白山武司・松原弘明
157) 潰瘍性大腸炎を合併した大動脈四尖弁の一例
(大阪医療センター循環器科) 石津宜丸・
廣岡慶治・谷口達典・宇都宮紫・濱野 剛・
中川彰人・岩破俊博・小出雅雄・山戸昌樹・
佐々木典子・山元博義・川口義廣・是恒之宏・
楠岡英雄・安村良男
(同心臓血管外科) 吉岡大輔・高橋俊樹
27歳,女性.幼少時より心室中隔欠損(VSD)を
指摘されていたが,無症状のため放置していた.
熱発,全身倦怠感を主訴に当院受診.心エコー図
検査(UCG)にて膜様部中隔瘤を伴ったVSDの
右室側に疣贅を認め,感染性心内膜炎(IE)と
診断した.血液培養で検出された腸球菌に対する
抗生剤治療にて,合併症なくIEは改善した.続
いてVSDに対する手術適応について心臓カテー
テル検査を行った.Qp/Qsは2.62であったが,ほ
か右室内に約30mmHgの圧格差の存在を認めた.
UCG再検やMRI,CT検査にて右室二腔症(DCRV)
を確定診断した.DCRVと診断された多くの症例
は小児期に外科的根治術となるため,成人例の報
告は稀である.昨今,先天性心疾患の成人例は増
加しており,興味深い症例と考えられ報告する.
59才・男性.主訴は心雑音精査で明らかな心不全
症状はない.既往歴に潰瘍性大腸炎があり当院消
化器科でメサラジンを内服中である.中学生の頃
から心雑音を指摘.5−6年前に某総合病院を受
診し軽い弁膜症といわれるが精査不要ということ
で放置していた.本年度の健診で再度心雑音を指
摘され精査目的で当科を紹介された.心電図は左
室肥大を呈し,胸部レントゲンでは左第4弓の拡
大を認める.心臓超音波検査で左室内腔拡大・収
縮能低下を伴う重度の大動脈弁逆流を認め,その
原因として大動脈四尖弁が疑われた.本症例は大
動脈弁置換術を行い,摘出大動脈弁は術前診断通
り四尖弁であった.大動脈四尖弁は二尖弁に比較
して稀な先天性心奇形であるが,その発生および
機能異常につき,若干の考察を加えて報告する.
956 第 106 回近畿地方会
158) 保存的加療に反応は認めたが感染心内膜炎
の持続した三尖弁置換術後の一例
(大阪警察病院心臓センター内科)
山下公子・根本貴祥・廣谷信一・小笠原延行・
柏瀬一路・平田明生・西尾まゆ・松井万智子・
松尾浩志・肥後友彰・和田 暢・増村雄喜・
樫山智一・小西正三・中西浩之・坂本祥吾・
上田恭敬・児玉和久
(同心臓血管外科) 大竹重彰
症例は73歳男性.2000年三尖弁逆流に対し三尖弁
置換術施行.2008年2月下旬より38度台の発熱を
間歇的に認めた.5月2日近医受診し採血検査で
WBC 32300/μl,CRP 15mg/dlと高値,心エコー
上三尖弁に10mmの疣贅を認め感染性心内膜炎精
査加療目的で当院紹介となった.同日より抗生
剤(PCG,GM,REF)で加療開始した.心エコ
ー上疣贅は消失し,WBC 5000/μl,CRP 0.3−1
mg/dlと改善を認めたが,時節37度前後の微熱の
出現を認めたため,抗生剤治療のみでは加療は不
完全と判断し,7月16日三尖弁再置換術施行した.
術中,三尖弁には茶褐色の菌塊が広範囲に認めら
れた.三尖弁再置換術後経過は良好であった.今
回,保存的加療に反応は認めたが,間歇的な軽度
発熱のみ残存し,感染心内膜炎の持続した三尖弁
置換術後の一例を経験したので報告する.
159) 約5ヶ月の経過で手術に至った化膿性脊椎
炎を合併した感染性心内膜炎の一例
(大阪府済生会中津病院循環器内科)
淀井景子・高谷具史・畑 勝也・里田雅彦・
木島洋一・福田 亨・中島英人・西川裕二・
瀬尾俊彦・小林克也
(同総合診療内科) 川嶋成乃亮・戸田常紀
(竹内医院) 竹内陽史郎
64歳男性.不明熱と腰痛を主訴に当院受診(抜歯
歴あり).心エコーにて中等度大動脈弁閉鎖不全
(AR)
,MRIにて傍椎体膿瘍を認め化膿性脊椎炎と
感染性心内膜炎(IE)の合併を疑った.この時点
でARの手術適応はなく抗生剤を投与し症状は軽
快し退院となった.2ヶ月後労作時呼吸困難と
AR増悪のため入院.炎症所見は認めなかったが,
心エコー上可動性の疣贅を認め,弁破壊は著明に
て大動脈弁置換術を施行した.化膿性脊椎炎を合
併したIEは比較的稀であるが,本症例のように感
染消退後のIEとして化膿性脊椎炎の治療後長期間
経過してから心不全症状を呈する場合も報告され
ている.我々は化膿性脊椎炎を合併したIEに対し
て内科的治療で炎症所見は完全に沈静化できたも
のの,ARの進行を認め手術に至った1例を経験
したので若干の文献的考察を加えて報告する.
160) 高度大動脈石灰化を伴う大動脈弁狭窄症に
対するapico-aortic bypassの経験
(大阪市立総合医療センター心臓血管外科)
瀬尾浩之・柴田利彦・服部浩治・加藤泰之・
元木 学・小谷真介
大動脈弁狭窄症(AS)に対する手術は,大動脈
弁置換術(AVR)が一般的であるが,近年,高齢
者の増加に伴い,高度大動脈石灰化病変を伴った
AS患者が増えており,治療方針に苦渋すること
がある.今回,我々は高度大動脈石灰化を伴う
ASに対して,
apico-aortic bypass(AAB)を行い,
良好な結果を得たので報告する.症例は79歳,女
性.胸部圧迫感を主訴に来院し,重症AS(peakPG
=146mmHg,AVA0.41cm2) と 診 断 さ れ た.CT
にて上行大動脈基部−弓部に高度石灰化を認め,
通常のAVRは困難と判断し,AACを施行.手術
は右側臥位,第5肋間開胸にて行った.術後経過
は良好で,翌日には抜管,術2日目にICUを退室,
術24日目に退院となった.AABは古くから報告
されている手術法であるが,最近AABの有用性
が少数ながら散見され,若干の文献的考察を加え
報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
161) 同時期に3弁に閉鎖不全をきたし緊急手術
となった1例
(近畿大学医学部奈良病院循環器内科)
羽場一直・城谷 学・横田良司・胡内一郎・
上森宣嗣・溝部道生・清水良栄・石川千紗都・
太居洋平
(同心臓血管外科)西脇 登
症例は35歳,女性.患者は2008年4月頃より下半
身の浮腫,心窩部不快感を自覚した.当院消化器
内科を受診した.上部消化管内視鏡を施行された
が,特に異常を認めなかった.浮腫の精査のため
にCTを施行されたところ,心拡大,両側胸水貯
留を認め,心不全の疑いにて当科に紹介となった.
心エコーにて高度の僧帽弁逆流,大動脈弁逆流,
三尖弁逆流を認めた.3弁いずれも逸脱所見を認
めた.精査目的のためにCAG等を施行後に心不
全の急性増悪をきたし,緊急に僧帽弁置換術,大
動脈弁置換術,三尖弁輪縫縮術を施行した.
162) 狭小大動脈弁輪症例に対する18mm以下
ATS AP弁を用いた大動脈弁置換術の中期遠隔成績
(大阪市立総合医療センター心臓血管外科)
加藤泰之・柴田利彦・服部浩治・元木 学・
瀬尾浩之・小谷真介
【目的】18mm以下ATS AP弁使用大動脈弁置換
術(AVR)の手術成績を検討した.
【対象と方法】
2003年4月以後に施行したATS AP16mm(18例),
18mm(31例)を用いたAVRを対象とした.平均
年齢71歳,平均体表面積は1.37m2であった.
【結果】
早期死亡を1例認め(MOF),経過観察中2例の
遠隔死を認めた.術後人工弁最大圧較差は16mm
群36.8mmHg,18mm群27.8mmHgで16mm群で有
意に高く,僧帽弁同時手術例を除く20例での左室
心筋重量係数は18mm使用群で有意な退縮を認め
た.【結語】ATS AP弁使用AVRの手術成績は概
ね良好だが遠隔期心筋重量の増大する症例があり
更なる経過観察を要する.また左室流出路狭窄合
併例に対する流出路心筋切除の併用は有用であっ
た.
163) 左バルサルバ洞瘤左室破裂の一例
(兵庫医科大学内科学冠疾患科) 赤神隆文・
正井美帆・佐古田剛・大柳光正
(同循環器内科) 江角 章・増山 理
(兵庫医科大学心臓血管外科) 辻家紀子・
良本政章・宮本裕治
症例46才男性.主訴呼吸困難.平成20年1月7日
突然動悸,呼吸困難感,乏尿が出現し,近医受診.
胸部レントゲンで心拡大,心エコーにて高度の大
動脈弁閉鎖不全を認め,入院加療を行うも呼吸状
態悪化,心室頻拍を認め当院に転送となる.ハン
プ,利尿剤投与で心不全は改善した.心エコーで
中等度から高度の大動脈弁閉鎖不全症と左バルサ
ルバ洞動脈洞瘤を認めた.大動脈弁閉鎖不全症に
よる心不全と診断し,平成20年3月19日当院心臓
血管外科で手術を施行した.術中経食道エコーに
て左バルサルバ洞動脈瘤が左室に破裂しているこ
とを確認し,大動脈弁置換術とバルサルバ瘤動脈
瘤瘤口閉鎖術を施行した.左バルサルバ洞瘤は頻
度が少ない疾患であり,左バルサルバ洞瘤が左室
へ破裂したまれな症例を経験したため報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
164) 後尖僧帽弁逸脱症に対する人工腱索 ルー
プ法 の取り組み
(大阪市立総合医療センター心臓血管外科)
元木 学・服部浩治・加藤泰之・瀬尾浩之・
小谷真介・柴田利彦
167) 原発不明癌から腫瘍性血栓性肺微小血管症
による肺高血圧症を呈し急性の経過で死亡した1例
(りんくう総合医療センター市立泉佐野病院循環器科)
時岡浩二・木下晴之・三好達也・小谷 健・
渡邊千秋・大谷誠司・武田吉弘・永井義幸
後尖僧帽弁逸脱症に対する僧帽弁形成術は,resection and suture法と人工弁輪による僧帽弁輪
形成を組み合わせる方法が一般的である.問題点
として後尖の可動性がなくなり,小さな人工弁輪
を選択せざるをえないことがあげられる.その為
術後僧帽弁狭窄傾向となりうる,または遠隔期の
再発症例で人工弁置換が技術的に難しくなる.当
科では現在後尖僧帽弁逸脱症に対してePTFE人
工腱索を用いたloop techniqueによる僧帽弁形成
術を本年4月より施行している.後尖の可動性が
温存可能であり,人工弁輪もresection and suture
法と比較して大きなサイズを選択可能であり,よ
り生理的な僧帽弁形成術が可能である.現在まで
早期成績は良好である.心臓超音波,手術ビデオ
を供覧する.
46歳,男性.前日からの呼吸困難,肝酵素上昇,
shockにて当院へ搬送.心エコーで,右室拡大,
左室圧排像認め肺塞栓症を疑い肺動脈造影検査,
造影CTを施行するも塞栓像は認めなかった.CT
で全身リンパ節腫脹,肝梗塞,両側副腎壊死所
見を認め,腫瘍マーカー CA19-9,CEAの異常高
値を認めたため微小腫瘍塞栓による肺高血圧症
が考えられた.原発巣は特定できないままNO吸
入,Nicardipine,Epoprostenol(PGI2)を導入し,
一過性に肺動脈圧の下降を認めるも,第9病日に
肺高血圧の進行により死亡.剖検所見で全身リン
パ節腫大,両側副腎腫瘍増生,肝浸潤をはじめ,
全身に腫瘍浸潤していたが,原発巣は特定できな
かった.肺病変については腫瘍性血栓性肺微小血
管症(PTTM)による肺高血圧症と診断された.
165) CRT施行に際し外科的左室リード留置を
要した大動脈弁置換術後の一例
(大阪市立総合医療センター循環器内科)
植松庄子・中川英一郎・田渕 勲・古川敦子・
田川慈子・喜納直人・阿部幸雄・小松龍士・
成子隆彦・伊藤 彰
168) 若年性肺気腫に合併した高度肺高血圧症の
一例
(神戸医療センター循環器科) 今西純一・
正井博之・高野貴継・清水雅俊
症例は86歳男性.心不全のため入院し,重症大動
脈弁狭窄に対して大動脈弁置換術が施行された.
しかし,退院後約1カ月でうっ血性心不全のため
再入院し,入院後も心不全の薬物コントロールが
困難であった.そこで,心電図が完全左脚ブロッ
クで心エコー所見からも左室非協調運動が明らか
であったためCRTを施行する方針とした.通常通
り経静脈的に左室リードの挿入を試みたが冠静脈
左室側壁枝の屈曲のためリードが挿入できず,ま
た他の冠静脈枝ではCRTの効果が十分でなかっ
た.そのため1週間後に肋間小開胸で至適心外膜
部位に左室リードを留置した.その結果,CRTの
効果が十分に得られ,心不全がコントロール可能
となった.経皮的に至適部位に左室リードが留置
困難な場合は外科的に心外膜から留置することも
考慮すべきと思われる.
166) HITを合併した重症連合弁膜症の1手術治
験例
(市立長浜病院心臓血管外科) 藤原靖恵・
河野 智・洞井和彦
(彦根市立病院) 山田美保・日村好宏
通常人工心肺を用いた開心術にはヘパリンが使用
されるが,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)
症例には,ヘパリンが使用できず,抗凝固管理が
難しい.今回我々は術前HIT typeIIと診断された
連合弁膜症の手術を経験したので報告する.症例
は84歳の男性で,以前から連合弁膜症による心不
全があり,近医で加療を受けていたが,手術適応
にて当科入院となった.前医でHIT typeIIとの診
断で,手術は抗凝固にアルガトロバンを用いて大
動脈弁置換術,僧帽弁・三尖弁形成術を行った.
術中ACTを指標としたが,ACTの過度の延長に
より止血に苦慮した.しかし後出血や血栓症など
の合併症なく術後急性期を経て,第41日目に退院
となった.今回HIT typeIIを合併した連合弁膜症
の1手術を行い,術後良好な結果を得られた.
41歳男性.20歳より1日20本喫煙,25歳頃より
再発性気胸をきたし32歳時に若年性肺気腫およ
び65mmHgの肺高血圧を指摘されていた.以後
は 禁 煙 し て い た が, 次 第 に 呼 吸 困 難 が 増 悪 し
NYHA IV度となった.1秒量1.1 l(31%),BNP
361pg/ml,肺動脈100/61mmHg,全肺血管抵抗
1242dynes/sec/cm5/m2 と重症肺高血圧が認めら
れ た. 酸 素 2 l/分 投 与 を 併 用 し てepoprostenol
を開始,19日目に14ng/ml,6ヶ月後に19ng/ml
ま で 増 量 さ れ た と こ ろ,BNP 18.9, 肺 動 脈 圧
54/44,全肺血管抵抗891と改善が得られ,6分
間歩行も100mから420mに延長した.現在,さら
にsildenafilを 追 加 し て 観 察 中 で あ る.COPDで
はまれに気道病変では説明困難な高度肺高血圧
をきたすことが知られ,予後不良とされている.
Epoprostenolやsildenafilによる治療の可能性が示
唆された.
169) ネフローゼ症候群の治療中に急性肺血栓塞
栓症を発症した1例
(大阪掖済会病院) 松本健嗣・島田健永・
田口晴之・福田祥大・能仁信一・稲波 整・
實正 哲・吉田 健・吉川純一
(大阪市立大学循環器病態内科学) 葭山 稔
症例は78歳女性.1年前よりネフローゼ症候群で
内服加療中であったが,突然の呼吸困難感を自覚
し,近医を受診した.心エコー図検査で右心系の
著明な拡大と,肺高血圧(推定右室圧70mmHg)
を認め,当科へ紹介となった.入院時,血清生化
学検査にてD-dimerの上昇,下肢血管エコーでヒ
ラメ筋の血栓像を認め,急性肺血栓塞栓症と診断
した.IVCフィルターの挿入と血栓溶解療法によ
って,臨床症状と肺高血圧の改善を認めた.今回,
ネフローゼ症候群の治療中に急性肺血栓塞栓症を
発症した1例を経験したので報告する.
神戸国際会議場(2008 年 11 月) 957
170) 原因不明の肺高血圧で発症した原発不明癌
の一例
(松下記念病院循環器科) 金山拓誉・
三木茂行・坂谷知彦・川崎達也・神谷匡昭・
杉原洋樹
労作時呼吸困難が主訴の57歳女性.心エコー上著
明な右心負荷と肺高血圧あり.低酸素血症と右鼠
径部リンパ節腫大触知.肺塞栓疑い胸腹部CT施
行も,肺塞栓所見なく多発骨転移と腹部から鼠径
部の多発リンパ節腫大と両側卵巣の低濃度腫瘤を
認めた.PET-CT上も原発巣特定できず消化管内
視鏡検査でも悪性腫瘍認めず.鼠径部リンパ節
生検にて腺癌確定.pulmonary tumor thrombotic
microangiopathy(PTTM)による肺高血圧と右
心不全が原因の呼吸不全と診断しhANPとベロプ
ラストの投与などを行ったが呼吸不全進行し死
亡.病理解剖にても原発巣が特定困難であった.
今回労作時呼吸困難を主訴に循環器科受診し原因
不明の肺高血圧を発症した原発不明癌の一例を経
験したので報告する.
173) MDCTと心エコーにより非侵襲的に診断で
きた冠動脈−肺動脈瘻の一例
(大阪南医療センター循環器科) 松寺 亮・
野田善樹・荒木 亮・今仲崇裕・森澤大祐・
北田博一・足達英悟・服部 進・安部晴彦・
入野宏昭・安岡良典・佐々木達哉・宮武邦夫
症例は58歳女性.2008年4月より安静時に約20分
持続する胸痛を自覚.心エコーでは壁運動異常は
指摘できなかったが,肺動脈本幹に流入する異常
血流を認めた.MDCTではLADと右冠動脈洞の
2箇所から肺動脈基部に流入する異常血管を明瞭
に認め,冠動脈−肺動脈瘻と診断した.右心カテ
ーテル検査(Fick法)ではO2のstep upは認めず,
Qp/Qs1.05.CAGでは有意狭窄を認めなかったが,
LADと右冠動脈洞の2箇所から肺動脈本幹に流
入する異常血流を認めた.薬剤負荷心筋シンチで
は明らかな虚血所見を認めず.現時点では手術の
適応はないと判断し,経過観察の方針とした.今
回我々はLADと右冠動脈洞の2箇所から肺動脈
本幹の同部位に流入する冠動脈−肺動脈瘻の稀な
一例を経験したので文献的考察を含めて報告す
る.
171) 急性前壁中隔心筋梗塞後,入院中に急速に
進行する肺障害に対しPCPSが有用であった一症例
(大阪警察病院心臓センター循環器科)
松尾浩志・柏瀬一路・廣谷信一・小笠原延行・
平田明生・西尾まゆ・根本貴祥・松井万智子・
肥後友彰・樫山智一・増村雄喜・和田 暢・
小西正三・坂本祥吾・中西浩之・上田恭敬・
児玉和久
174) 経胸壁心エコーを応用して開口部を確認で
きた冠動脈瘻の2症例
(大阪南医療センター第一循環器科)
荒木 亮・佐々木達哉・今仲崇裕・松寺 亮・
森澤大祐・北田博一・足達英悟・野田善樹・
服部 進・安部晴彦・入野宏昭・安岡良典・
宮武邦夫
症例は52歳男性.08年2月20日発症の急性心筋梗
塞に対し経皮的冠動脈形成術施行した.5日後よ
り咳嗽出現.レントゲンにて両側肺野にびまん性
の浸潤影を認めた.胸部CTにて両肺上中肺野優
位に網状影とスリガラス状陰影が重積した陰影を
認め肺炎,薬剤性肺障害を疑い抗生剤投与,及び
入院時より内服していたclopidgrel,lansoprazole
を中止とした.改善乏しく,翌日呼吸状態増悪を
認め気管内挿管施行.挿管後も酸素化は改善せず
血行動態破綻も認めたためPCPS,IABP挿入とな
った.急速に進行したこと,薬剤リンパ球刺激試
験にてプラビックスが陽性となったことから薬剤
性の可能性を疑いステロイドパルス療法を3日間
施行した.酸素化は徐々に改善を認め,3日後に
PCPS,4日後にIABP抜去,7日後に抜管とした.
病日約2ヶ月後に軽快退院となった.
【症例1】70歳女性.胸骨右縁第4肋間中心の連
続性心雑音精査にて心エコーを施行.右冠動脈起
始部が著明に拡大し瘤を形成していたが,左側臥
位の心エコーでは瘤開口部を確認できなかった.
そこで心エコー右側臥位胸骨右縁アプローチとし
たところ瘤より右房へ流入するflowを認め,右冠
動脈右房瘻と診断した.
【症例2】82歳男性.胸
部圧迫感にて冠動脈造影を施行するも有意狭窄な
し.右冠動脈瘻を認めたが,通常の造影では開口
部を確認できなかった.そのため心エコー下で右
冠動脈へmicrobubbleを注入したところ,左室へ
のmicrobubble流入を確認し,右冠動脈左室瘻と
診断した.いずれの症例も手術適応はないと判断
し経過観察とした.経胸壁心エコーを応用するこ
とで開口部を確認できた冠動脈瘻の2症例を経験
したので報告する.
172) 繰り返す心不全に対して,夜間の陽圧換気
が有効であったPrader-Willi症候群(PWS)の1例
(橋本市民病院循環器内科) 山口智由・
小林克暢・星屋博信・山本勝広
(同心臓血管外科) 湯崎 充・山本修司
(同呼吸器内科) 大森 隆・原口龍太
PWSは過食による病的肥満を伴うことが多く,肺
胞低換気症候群による肺高血圧症,さらには心不
全をきたしやすい.今回我々は心不全を繰り返し
ていたPWSに対し,夜間の陽圧換気が有効であっ
た1例を経験したので報告する.症例は25歳男性,
BMI 41.小児期より肺高血圧症(推定肺動脈収縮
期圧60−70mmHg)を指摘され,心不全による入
退院を繰り返していた.2007年7月5日浮腫が増
強し,入院.心不全のコントロールに難渋し,7
月15日より気管内挿管下での人工呼吸管理を行っ
た.抜管困難のため,8月7日気管切開術施行.
その後の心不全治療,減量および呼吸リハビリに
より,昼間は呼吸器から離脱することができた.
独歩退院.
現在も在宅で夜間のみ陽圧換気(TPPV)
を継続しているが,経過は順調で,furosemideの
減量(240mg/日→120mg/日)もできた.
958 第 106 回近畿地方会
175) 胸痛を契機に右室憩室を発見し得た1例
(市立伊丹病院循環器科) 南坂朋子・
福田修久・中川大輔・下山 寿
(東宝塚さとう病院) 佐藤尚司
症例は66歳女性.高血圧,高脂血症が既往にあり,
労作時の胸部違和感,動悸を主訴に近医を受診し
た.安静時心電図でV4−6に平低T波を認めたた
めMDCTを施行,冠動脈に病変は認めなかった
が,右室心尖部に瘤状造影を認めたため当科に紹
介となった.当院でMDCTを再検したところ,右
室の先端に1cm×8mmの嚢状の憩室を認め,か
つ右室と交通を認め冠状静脈洞に流入していたた
め精査目的で心臓カテーテル検査を施行した.結
果,右心圧は正常で,冠動脈に有意狭窄は認めず,
右室造影にて右室心尖部に憩室を認めたが冠状静
脈洞への交通は認めなかった.縫縮術の適応に関
して心臓血管外科と協議し,定期的に心臓CTで
フォローすることとした.本邦における右室憩室
の報告は稀であり,若干の文献的考察を含めて報
告する.
176) 右室二腔症の一例
(神戸労災病院内科) 近藤健介・小田明彦・
大西一男・増田 茂・小澤 徹・伊阪大二・
堂本康治・稲本真也
症例は60歳,日本在住のフィリピン人女性.主訴
は労作時の息切れ.35歳頃より軽度の労作時の息
切れを自覚し,心雑音を指摘されるも放置してい
た.肝機能障害を近医で指摘され当院を紹介受
診.心エコーにて著明な右心負荷所見と右室流出
路狭窄を認め,心臓カテーテル検査では右室圧は
112mmHgと上昇,右室造影検査で右室内の異常
な肉注発達を認め,右室二腔症と診断した(肺動
脈圧は正常範囲内).内科的治療は困難と考え,
手術により右室内の異常筋束を可及的に切除し
た.経過は良好で,術後に施行した心臓カテーテ
ル検査では右室圧はほぼ正常化していた.手術治
療により軽快した右室二腔症の一例を経験したの
で,若干の文献的考察を加えて報告する.
177) 肺動脈弁の逸脱に伴う高度の肺動脈弁逆流
を認めた心室中隔欠損症の一例
(近江八幡市立総合医療センター循環器内科)
深井邦剛・槇 系・立川弘孝・全 完・
上林大輔・加藤 拓・福山 恵
症例は66歳女性.右膝蓋骨骨折に対する手術前に
行われた胸部レントゲンでは心拡大があり,心電
図で左室肥大の所見が認められたため心臓超音波
を行ったところI型心室中隔欠損症と診断され
た.また,高度の肺動脈弁逆流と可動性を有する
異常構造物が肺動脈弁周囲に認められた.右室造
影では肺動脈弁部位に一致して可動性のある円形
の透亮像が認められたが,これは心臓CTと心臓
MRIにより肺動脈弁の逸脱に伴う所見と考えられ
た.I型心室中隔欠損症において肺動脈弁逸脱に
伴う高度の肺動脈弁逆流を合併した症例の報告は
稀有であり報告する.
178) 狭心症で発症した先天性左冠尖低形成の一例
(草津総合病院) 林田恭子・川瀬鉄典・
奥村 悟・川副浩平
症例は74歳女性.大動脈弁狭窄症(AS)の診断
で経過観察中,労作時胸痛が出現した.心エコー
では,AS所見(AVA:1.04cm2)
,PG:60mmHg)
に加え,左冠尖は低形成で,左冠動脈入口部に隔
壁様構造物を認めた.MDCTでも同様の構造物を
認めた.負荷心筋シンチにて左冠動脈全域に高度
虚血,冠動脈造影にて左冠動脈入口部に袋状の造
影剤貯留を認めた.術中所見では,左冠尖は先天
的低形成によりドーナツ状の隆起を呈していた.
隆起を切除すると,左冠動脈入口部が現れた.手
術はNicks法により大動脈弁輪を拡大し,弁置換
した.今回の症例は,低形成の左冠尖が左冠動脈
入口部を塞ぎ,冠虚血を招いたと考察するが,こ
のような報告は世界でも十数例にすぎず,しかも
高年齢での発症は例がない.文献的考察を加え報
告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
179) 急性心不全患者における予後予測因子の検討
(兵庫県立淡路病院内科) 高橋裕子・
宝田 明・金 秀植・松尾洋介・岡本 浩・
上田亮介・岩崎正道・望月康秀・横山光宏
【目的】我々は以前に,心不全患者において拡張
不全症例の割合が高いことを報告した.今回,急
性心不全患者においてE/E と心事故との関連を検
討した.【方法】対象は2007年3から翌年6月ま
でに,急性心不全の診断で緊急入院しE/E が測
定された81例(平均76±11才,NYHA3/4,17/64,
EF<40% n=41).年齢,入院時のNYHA分類,
BNP値,心機能指標について予後との関連を検討
した.
【結果】観察期間中に16例に心事故が発生し,
多変量解析ではE/E のみが相関していた.E/E
≧15の群で心事故の発生が多くイベントフリー期
間も短縮していた.(p<0.05).【結論】E/E は急
性心不全患者の予後予測因子として有用である.
180) 運動負荷に対する心拍応答不全と自律神経
活動の関係
(松下記念病院循環器科) 川崎達也・
坂谷知彦・三木茂行・神谷匡昭・杉原洋樹
【背景】運動負荷に対する心拍応答不全(chronotropic incompetence,CI)は予後不良の指標で
あるが,その成因は明らかではない.
【方法】器
質的心疾患を認めない172例に自転車エルゴメー
タを用いた運動負荷検査を行いCIの有無で二分
した.負荷前後5分間におけるRR間隔の心拍変
動解析から迷走神経活動の指標HFと交感神経活
動の指標LF/HFの変化率を算出した.【結果】72
例がCIありと判定された.CIを認めた症例でLF/
HFの変化率が高値であった(84±18% vs 41±16
%,p<0.05).一方HFの変化率は両群間に有意
差を認めなかった(−23±8% vs −32±12%).
【結
語】器質的心疾患を認めない症例では,交感神経
活動の亢進に反応できない病態がCIの原因であ
ると推察された.
181) 寝たきり高齢者の心機能
(介護老人保健施設マムクオーレ)
尾内善四郎
(特別養護老人ホームビハーラ十条)
友久久雄
(京都九条病院) 山木垂水・松井淳棋・
羽田哲也・甲原一郎・嶋津孝幸・野田哲平・
松井道宣
【目的】寝たきり高齢者の心機能を検討した.【方
法】介護老人保健施設の要介護度(介)2(A
群)8例,介5(B群)5例,特別養護老人ホー
ムの介3,4(C群)5例について,心エコー図
からSV,SI,CO,CI,左室重量(LVM),LVMI
を求めた.【結果】心拍出量,LVMはABCの順で
低下した.その内,平均でCIはA群3.9L/m2,B群
2.4L/m2,C群1.8L/m2 でAC間 にp<0.01の 有 意 差
を 認 め た.LVMIはA群83.2g/m2,B群61.5g/m2,
C群47.6g/m2であり,BC間のp<0.06,他群間でp
<0.01の有意差を認めた.【結語】寝たきり高齢
者はCI低下により二次的にLVMIが減少するが可
逆的である.LVMIの減少は高齢者における心不
全易罹患性の原因の1つと考える.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
182) 非挿管循環器疾患患者における低侵襲モニタ
リングツールの有用性:肺動脈カテーテルとの比較
(関西労災病院循環器科) 安井治代・
渡部徹也・南都伸介・上松正朗・両角隆一・
粟田政樹・大西俊成・飯田 修・川本健治・
世良英子・南口 仁・矢野正道・池岡邦泰・
岡本 慎・田中宣暁・石原隆行・土肥智晴
【目的】非挿管患者における低侵襲モニタリング
ツール(FloTracTM/VigileoTM Edwards Lifesciences,Irvine,CA,USA)の有用性を検討する.
【方法】
平成19年7月より12月までの6ヶ月に当院で両心
カテーテル検査を施行した30症例(男性18例(60
%),年齢65±13歳)を対象とし,FloTracシステ
ムによるAPCI(arterial pressure cardiac index)
および肺動脈カテーテルによるPACI(pulmonary
artery catheter cardiac index)を比較検討した.
【 結 果 】APCIは2.74±0.58L/min,PACIは3.01±
0.84L/minとなり相関係数r=0.42,P=0.02の相関
を認めた.【結語】非挿管患者において,FloTrac
システムは従来の肺動脈カテーテルと同様に心機
能を反映することができ,循環器疾患患者の血行
動態把握に有用である.
183) マウスの動脈硬化に対するガラス玉覆い隠
し行動と運動の影響
(京都大学循環器内科学) 島田佳奈・
岸本千晴・三神 優・村山敏典・横出正之・
北 徹
【目的】アポリポプロテインE(−)マウスでス
トレスを与える方法としてガラス玉覆い隠し行動
を行い,ストレス改善作用等を有する運動も行う
事で,動脈硬化に対する影響を検討した.【方法】
ガラス玉覆い隠し行動と水泳は一回につき30分,
週3回,8週間にわたって行った.
【成績】コン
トロール群とガラス玉覆い隠し行動を行った群
(ガラス玉群)で動脈硬化の病変に差が見られな
かったが,ガラス玉と水泳を同時に行った群で病
変が減少していた.ガラス玉を覆い隠した数は,
運動により有意に減少した.ICAM-1の発現は,
ガラス玉群で増加した.【結論】ガラス玉覆い隠
し行動は,動脈硬化の病変に変化を与えなかった
が,ある程度のストレスを与えるものではないか
と考えられた.
184) 流出路圧較差の増悪を認め,心内膜切除術
を行ったHOCMの1例
(市立加西病院) 張木洋寿・松本竜童・
河合恵介・國吉達也・高橋明広・山邊 裕
症例は40歳代の女性.2006年に肺線維性腫瘍摘出
時に心電図異常を指摘され,心臓超音波検査上,
HOCMと診断された.左室流出路圧較差は80∼
93 mmHgと高値を認めていたが,βブロッカー
内服開始後,圧較差20∼27 mmHgと改善を認め,
経過観察されていた.2007年11月にはいり,労作
時の失神を自覚するようになり,流出路圧較差
140.7 mmHgと著明な上昇を認めた.シベンゾリ
ンの内服を開始したが改善が見られず,心内膜切
除術を施行した.薬物抵抗性のHOCMに対して
心内膜切除術を行った症例を経験したので,文献
的考察を加えて報告する.
185) 梅毒抗体陽性反応を示し,左右冠動脈入口
部狭窄を来した1症例
(京都大学医学部付属病院循環器内科)
中尾哲史・早野 護・静田 聡・塩井哲雄・
尾野 亘・木村 剛・北 徹
【症例】71歳男性.20年前後壁心筋梗塞で経皮的
冠動脈形成術(PCI)を施行.平成18年持続性心
室頻拍に対し,植え込み型除細動器(ICD)を植
え込んだ.術後3日目に胸痛発作あり,緊急冠動
脈造影(CAG)の結果左回旋枝に90%の狭搾認
めたため緊急PCIを施行した.その後症状なく経
過していたが,平成20年4月,ICDに記録された
心内心電図より房室結節回帰性頻拍が疑われ,カ
テーテルアブレーションにて根治した.その際,
フォローアップのため冠動脈造影を同時に施行す
ると,左右冠動脈入口部の狭窄を認めた.入院時
の血液検査では,梅毒抗体陽性,梅毒脂質抗体陰
性と梅毒既感染型の血清パターンを示しており,
脂質抗体の偽陰性の晩期梅毒による冠動脈入口部
狭窄を疑った.PCIを施行すると同時に,ペニシ
リンGによる梅毒の根治療法を施行した.
【結語】
梅毒抗体陽性を呈し,冠動脈入口部狭窄を来した
1症例を経験したので,文献的考察を加えて報告
する.
186) PCI施行後に気腫性胆嚢炎をきたした1例
(京都大学医学部付属病院循環器内科)
多田朋弥・青木一成・静田 聡・塩井哲雄・
尾野 亘・木村 剛・北 徹
【症例】82歳男性.高血圧,糖尿病,高脂血,喫
煙の冠危険因子を持つ.昨年夏頃から労作時に呼
吸困難感を自覚.胸痛はなし.CTにて冠動脈の
高度石灰化をみとめ,運動負荷心筋シンチにて前
壁中隔壁の虚血が疑われたため,当科入院となっ
た.PCI 2日後より38度台の熱発.同時に吸気時
増強する右側胸部痛を自覚した.胸腹部造影CT
にて胆嚢壁内および胆管内にガスを認め,気腫性
胆嚢炎の診断のもと,抗血小板剤は中止せずに胆
嚢摘出術施行した.右肋弓下切開にて開腹し,淡
黄色やや混濁した腹水を少量認めた.胆嚢は緊満,
発赤あり,底部の一部に壊死性変化を認めた.【結
語】気腫性胆嚢炎の病因は虚血であると考えられ
ている.冠動脈3枝病変のPCI後に気腫性胆嚢炎
を発症した1症例を経験したので,文献的考察を
加えて報告する.
187) 夫婦でたこつぼ型心筋症を生じた2例
(京都大学医学部付属病院循環器内科)
高橋宏輔・寺田行範・早野 護・当麻正直・
塩井哲雄・尾野 亘・木村 剛・北 徹
【症例1】89歳男性.孫と激しい言い争いをした
のちに胸の圧迫感を自覚し,近医受診.心電図上
V3−6にT波の陰転化を認め,トロポニンテスト
陽性のため,ACS疑いで当科へ緊急搬送された.
CAGにて#6に90%狭窄を認めるものの,冠動
脈病変では説明不可能な心尖部中心の壁運動異常
を認め,たこつぼ型心筋症と診断した.壁運動の
改善した第11病日にLADにPCIを施行した.【症
例2】84歳女性.症例1の妻.夫と孫の口論後に
脈の異常を自覚し,夫ともに近医受診した.心
電図上V3−6にST上昇を認め,夫と共に搬送とな
った.CAGにて冠動脈に有意狭窄を指摘できず,
LVGにて心尖部を中心とする左室壁運動異常を認
めたため,たこつぼ型心筋症と診断した.同時期
に精神的ストレス(口論)を誘引として,たこつ
ぼ型心筋症を発症した夫婦の症例を経験した.
神戸国際会議場(2008 年 11 月) 959
188) 全身性エリテマトーデスおよび心房中隔欠
損症を合併し,深部静脈血栓症から肺塞栓および
奇異性脳塞栓を起こした一例
(京都大学医学部付属病院循環器内科)
田崎淳一・田村俊寛・当麻正直・塩井哲雄・
尾野 亘・木村 剛・北 徹
症例は48歳男性.2007年8月に脳梗塞にて他院入
院.2008年2月より左下肢の疼痛,腫脹を認め,
下肢静脈エコーにて深部静脈血栓症を認め当科入
院.入院前に胸部不快あり,胸部CTにて肺塞栓
を認めた.下大静脈フィルター留置および抗凝固
療法開始し,血栓消退傾向にあったため13日目に
フィルター抜去した.経食道エコーにて右→左シ
ャントを伴うASDを認め,脳梗塞は奇異性塞栓
であった.貧血および血小板減少を認め,抗核抗
体,抗DNA抗体および抗血小板抗体陽性であり
骨髄生検にて47XXYであった.プレドニン内服開
始したが,血小板数は増加不良であり,ASDに
対して経皮的閉鎖術を施行した.SLEにASDを合
併し,深部静脈血栓症から肺塞栓および奇異性脳
塞栓をおこした症例を経験したので報告する.
〈演題取り下げ〉
126) 閉塞性動脈硬化症に対しPTA施行の際使用
したシース挿入が起因と思われる上腕動脈血栓性
狭窄を来たした1例
(大阪警察病院) 坂本祥吾・上田恭敬・
小笠原延行・柏瀬一路・平田明生・西尾まゆ・
根本貴祥・松尾浩志・松井万智子・肥後友彰・
樫山智一・増村雄喜・小西正三・中西浩之
960 第 106 回近畿地方会
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
第 93 回 日 本 循 環 器 学 会 中 国 地 方 会
2008 年 11 月 29 日 呉阪急ホテル
会長:松 浦 秀 夫(済生会呉病院院長)
1) Ischemic preconditioningによる心筋保護効果
への骨髄幹細胞の関与
(山口大学心臓外科) 鴨田隆弘・李 桃生・
濱野公一
3) 感染性腹部大動脈瘤の2治験例
(心臓病センター榊原病院心臓血管外科)
西川幸作・都津川敏範・吉鷹秀範・
杭ノ瀬昌彦・津島義正・畝 大・滝内宏樹
【背景】Ischemic preconditioning(IPC)の虚血
再灌流障害に対する心筋保護効果は証明されてい
るが,その機序は十分に解明されてはいない.【目
的】Late phaseにおける心筋保護効果への骨髄幹
細胞の関与を証明すること.
【方法と結果】IPC
後(early, late phase)に心筋虚血再灌流障害を
起こしたマウスモデルを用いて骨髄幹細胞の関与
を検討した.Early, late phase共に心筋保護効果
(心機能の改善,アポトーシスの減少)を示した.
Late phaseに障害を起こした群で優位に障害心
筋部位に骨髄幹細胞を多く認めた.【結語】Late
phase IPCの心筋保護効果に骨髄幹細胞が寄与し
ていることが強く示唆された.
【緒言】術後経過良好であった感染性腹部大動脈
瘤(IAAA)の2例について報告する.【症例】症
例1は80歳男性.足の脱力を主訴に受診,腹部大
動脈の異常を指摘され紹介.瘤の増大を認め手術
施行.術前に狭窄予防のため尿管ステントを留置
した.症例2は62歳男性.髄膜炎の治療中に腹部
大動脈に嚢状瘤を指摘され紹介,疼痛が持続し準
緊急手術を施行.【手術】2例ともin-situ血行再
建を選択.瘤切除,リファンピシン浸漬人工血管
置換,大網充填を施行.術後はCRP陰性化まで抗
生剤点滴を行った後,内服に切り替え術後半年ま
で継続.2例とも感染の再燃を認めず.【結語】
IAAAに対し,in-situ血行再建を施行し,良好な
術後成績を得た.強力な感染コントロールに加え
前述の治療を組み合わせることで,in-situ再建で
も十分に感染制御は可能と考えられた.
2) DCMの分類は現在のままでよいのか?∼治療
反応性に収縮能が改善するDCM様病態∼
(広島市立安佐市民病院循環器科)
渡辺義和・横山晴子・梶川正人・長沼 亨・
河野康之・上田健太郎・佐々木正太・
加藤雅也・土手慶五
4) Dual Source CTでの高心拍数患者における冠
動脈診断能について
(山口大学器官病態内科学) 藤村達大・
三浦俊郎・岡村誉之・山田寿太郎・那須 学・
廣 高史・木原千景・和田靖明・村田和也・
松h益‡
(同放射線医学分野) 中島好晃・岡田宗正・
鷲田康雄・松永尚文
近年ESCにより心筋症の新しい分類が提唱され
た.この分類ではまず心筋症をエコー上の形態で
分類し,それぞれを家族性・非家族性に下位分
類しているのが特徴である.DCMの項では家族
性として各種遺伝子異常によるDCMが分類され,
非家族性として心筋炎・好酸球性・薬剤性・アル
コール性・頻脈性などが分類されている.しか
しこの分類ではDCMの収縮能低下を固定したも
のと考え,その後の心機能の経過を考慮に入れて
いない.一方,日常診療では心不全にて来院しエ
コー所見・冠動脈所見よりDCMと考えていたが
治療に反応し,収縮能が改善する症例をよく経験
する.今回,我々は治療反応性に収縮能が著明に
改善するDCM様の病態を頻脈性心筋症・メタボ
リック心筋症・刺激伝導障害による心筋症に分類
し,それぞれ例を挙げて提示する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
【背景】DSCTは,時間分解能を向上させ高心拍数
患者での撮像を可能にした.しかし,その診断精
度と解析を詳細に検討した研究は少ない.【目的】
高心拍数患者におけるDSCTと心拍数を安定させ
たMSCTとの診断精度を比較すると共に,Dual
Doppler Echo法を用いその撮像時相について解析
を行うこと.【方法】冠動脈狭窄に対し心拍数65/
分以上のDSCT(19例)と心拍数65/分以下のMSCT
(27例)の診断精度について比較検討し,また32
例を対象としてDual Doppler Echo法を用い,そ
の最適撮像時相の解析を行った.【結果】共に高
い 診 断 能 を 示 し 有 意 差 は 認 め な か っ た.Dual
Doppler Echo法にてもDSCTの時間分解能が高心
拍患者の撮像に適していることがわかった.【結
語】DSCTは高心拍数患者においても高い診断能
を示すことを証明し,その機序を明らかにした.
5) 頚動脈病変を合併した冠動脈重症3枝病変の
一例
(岩国医療センター) 鈴木秀行・河野晋久・
吉田雅言・大澤和宏・竹内一文・高橋夏来・
岩崎 淳・片山祐介・田中屋真智子・
白木照夫・斎藤大治
症例は73歳,男性.2007年10月心電図異常を指摘
され,他院にて冠動脈造影検査を施行.右冠動脈
#1:90%,#4PD:100%, 左 前 下 行 枝#6:99%,
#7:100%,左回旋枝#12:90%,#15:99%の重
症3枝病変を認め,当院心臓血管外科へ紹介受診
となる.頭部MRAで両側内頚動脈の高度狭窄と
左鎖骨下動脈の閉塞を認め,脳神経外科治療に先
行し,PCIにて完全血行再建を行う方針となる.
腎機能低下も認め,3期的にPCIを行った.DES
による完全血行再建後,2008年2月に右頚動脈内
膜剥離術を施行し,4月に左頚動脈に対して当院
初の頚動脈ステント留置術を施行した.
6) 心臓再同期療法(CRT)により著明に機能
的MRが改善した1例
(広島大学病院循環器内科) 小田 登・
中野由紀子・梶原賢太・槙田祐子・末成和義・
尾木 浩・平位有恒・寺川宏樹・木原康樹
症例は64歳女性.拡張型心筋症による心不全のた
め,心臓再同期療法(CRT)の適応評価目的で
当院へ転院となった.心電図,心エコーからは
CRTの効果は低いと予想されたが,経過中に完全
房室ブロックを生じたためCRTを施行した.術
後,心不全は著明に改善した.術後1か月の心エ
コーでは,術前と比較して左室収縮能および左室
収縮末期径には有意差を認めなかったが,MRが
著明に減少しており左房径の縮小も認めた.CRT
前後で長軸方向および中心方向への乳頭筋間の
peak sysytolic strainの差を比較すると,それぞ
れ209msか ら91ms,354msか ら75msに 短 縮 し て
いた.CRTによる機能的MRに対する効果判定に
おいて,乳頭筋間のdyssynchroyの評価は有用で
ある可能性がある.
呉阪急ホテル(2008 年 11 月) 961
7) 肺高血圧を呈した成人心房中隔欠損症に対す
る経皮的カテーテル閉鎖術後の短期∼中期予後
(岡山大学循環器内科) 中川晃志・
木島康文・谷口 学・草野研吾
(同心臓血管外科) 赤木禎治・佐野俊二
心房中隔欠損症(ASD)は未だ成人先天性心疾
患の中でも高い割合を占め,二次性に肺高血圧
症(PAH)を呈するに至った患者では,経年的
に心不全リスクが増大する.ASDの外科的閉鎖
術によりこれら患者の予後を改善が可能であるこ
とは周知であるが,経皮的カテーテル閉鎖術の
有用性については本邦では示されていない.当
院 で は2005年 よ りASDに 対 し,Amplazer septal
occluder&reg;を用いたカテーテル閉鎖術を施行
しているが,2008年7月までに当院で施行した
PAH合併の成人ASD患者6名(男女各3名,平
均年齢67.6±2.1才)について短期∼中期経過を検
討したので報告する.
8) 特発性左室心室頻拍(ILVT)の心筋焼灼術に
おいてdiastolic potentialが有用であった1例
(広島大学病院循環器内科) 小田 望・
小田 登・中野由紀子・梶原賢太・末成和義・
日高貴之・尾木 浩・平位有恒・寺川宏樹
症例は36歳男性.通勤中に動悸発作を自覚し近
医を受診.心電図にてHR218bpm,右脚ブロック
型,上方軸のwide QRS頻拍を認めた.リドカイ
ン50mgの静注にて発作は停止.カテーテル心筋
焼灼術目的で当院へ転院した.持続性頻拍発作は
各種プログラム刺激で誘発されなかったが,数
拍のPVCが生じた.PVCが連続する際に,左室
基部中隔後壁側の電極カテからdiastolic potential
(DP)およびPurkinje potential(PP)を捉えるこ
とができ,この部位に洞調律中に通電した.通電
開始直後よりPVCは消失した.DPはQRS後に捉
えることができ,焼灼成功と判断した.DPを捉
えることで,数発のPVCにより焼灼部位を判断で
き,かつ焼灼成功の判断も可能であった.
9) 大腿深動脈バイパス術の検討
(広島大学病態制御医科学講座外科学)
水田真司・岡田健志・森藤清彦・高橋信也・
高崎泰一・黒崎達也・今井克彦・渡橋和政・
末田泰二郎
【はじめに】我々は大腿深動脈の血行再建として,
大腿深動脈を直接露出して,人工血管を用いてバ
イパス術を行なっている.今回この術式について
検討したので報告する.【対象】2004年9月から
2008年7月までの大腿深動脈へバイパスした9例
10肢(77.6才)を対象とした.症状は,間歇性跛
行1例,安静時疼痛7例,潰瘍3例,その他(感
染)1例であった.麻酔方法は,全身麻酔7例,
局所麻酔2例であった.【結果】APIは概ね変化
なかったが,SPPは改善した.全例で,症状の改
善を認めた.【まとめ】大腿深動脈バイパス術で,
潰瘍が治る可能性が示された.術野をソケイ部に
限局できる局所麻酔下大腿深動脈バイパスが有効
である可能性が示された.
962 第 93 回中国地方会
10) シロリムス溶出性ステント(SES)留置後
に超遅発性ステント内血栓症(VLST)をきたし
た2症例
(笠岡第一病院循環器内科) 川合晴朗・
阿曽沼裕彦・原田和博
(倉敷中央病院循環器内科) 光藤和明
【症例1】60台男性.H18年8月,狭心症にて左
前下行枝にSESを2本留置.確認造影で再狭窄
なく,以後もクロピドグレル,アスピリン継続.
H20年1月食欲不振となり内服薬を自己中断.中
止3日後,胸痛にて受診.左前下行枝のステン
ト内血栓を認めた.【症例2】60台男性.H16年
8月狭心症にて左前下行枝にBMS留置.H17年3
月,BMS内再狭窄に対しSES留置.確認造影で
再狭窄なく,H20年4月よりチクロピジンのみ中
止したが,その1ヵ月後,胸痛にて受診.左前下
行枝のステント内血栓を認めた.【考察】一例目
はSES留置1年5ヵ月後,二例目は3年2ヵ月後
に発症したVLSTである.明確な原因は特定でき
なかったが,いずれも抗血小板薬の中止,減量
がVLSTの発症に関与している可能性が示唆され
た.
11) IVUSによる診断とSTENT留置が有効で
あった冠動脈解離の3症例
(津山中央病院循環器科) 小松原一正・
西田 剛・佐伯 一・梶谷昌史・吉川昌樹
PCIの急速な普及により,インターベンション施
行時の合併症として冠動脈解離が増加傾向にあ
る.今回我々は血流障害・完全閉塞状態を呈す
る冠動脈解離に対し,IVUSによる診断とSTENT
留置術が有効であった3症例を経験したので文
献的考察を加えて報告する.症例1は右冠動脈
seg3 99%狭窄にstent留置後seg1が完全閉塞とな
る.症例2は前下行枝seg6にstent留置を行って
いる途中でseg7に90%狭窄が出現.症例3は前下
行枝seg6 90%狭窄に対しROTA施行後完全閉塞
となる.
12) ステント留置に伴うトラブル症例
(山口県済生会山口総合病院) 福本剛之・
渋谷正樹・河原慎司・國近英樹・塩見浩太郎・
小野史朗
PCIは虚血性心疾患の治療法として確立されてお
り,なかでもステントは急性冠閉塞の発症を改善
し,再狭窄率も低下させる事よりPCIの中心的役
割を果たしている.今回当院にてステント留置に
伴う合併症を来たした興味深い症例を経験したの
で報告する.【症例1】フィルトラップを回収す
る際にステントのedgeに引っかかり回収手技に
伴いステントの伸縮をきたした.【症例2】IVUS
の回収の際にステントのedgeに引っかかりステ
ントが短縮した.【症例3】RCAの入口部にステ
ントを留置したが,慢性期にステントが断裂し断
端がAortaに突出していた.このようにステント
留置に伴う幾つかの合併症が報告されているのは
事実であり,常にそれらを念頭に入れ細心の注意
を払い,より安全な手技を心がける必要があると
考えられた.
13) 当院におけるTAXUSステントの使用経験
(福山市民病院循環器内科) 戸田洋伸・
山中俊明・杉山弘恭・河合勇介・渡辺敦之・
橋本克史・寺坂律子・中濱 一・山田信行
【目的】当院におけるTAXUSステントの初期,中
期成績を検討し,Cypherステントの成績と比較し
た.【対象と方法】対象は2007年5月から2008年
2月の間に当院でTAXUSステントを留置した症
例のうち8∼12ヵ月後に追跡造影を施行した67症
例98病変.患者背景は年齢68.6歳,男性76%,ACS
患者28.3%,DM患者43.3%,CKD患者46.2%(透
析患者は4.5%)であった.病変背景はLMT1%,
LAD51%,LCX16%,RCA33%で,Ostial lesion
20.4%,Bifurcation lesion54%,In stent restenosis
6.1%であった.これらの病変の再狭窄率,TLR等
を検討した.【結論】再狭窄率9.2%,TLR8.1%で
あり,Cypherステントと同程度の有効性があると
考えられた.今後症例数を増やして検討する予定
である.
14) IVUSとOCTで観察しえたCypher stentのス
テント内再狭窄に対しアンギオスカルプトを用い
た一例
(心臓病センター榊原病院内科)
山田亮太郎・廣畑 敦・佐藤慎二・大河啓介・
石澤 真・大原美奈子・外山裕子・広瀬英軌・
川村比呂志・山地博介・村上正明・村上 充・
山本桂三・日名一誠・喜多利正
症例はアスベスト関連の職歴がある70歳男性.
H19年6月に狭心症に対しLADへ薬剤溶出性ステ
ントを留置(Cypher 3.0×33,#7:75→0%).H20
年6月に右胸水の増加を認め他院で抗血小板剤を
2剤とも中断し生検の結果,胸膜中皮腫が疑われ
確定診断の為VATS予定となっていた.7月上旬
より労作時の胸痛が出現しCAG施行.ステント内
に90%再狭窄を認めたが造影上新生内膜か血栓に
よる狭窄かの鑑別は困難であった.VATS前で長
期の抗血小板剤内服が不可能な為再度のステント
留置術を避け,アンギオスカルプト(3.0×10)を
用いて病変を拡張し25%以下の良好な結果が得ら
れた.今回我々は術中にIVUS及びOCTを用いて
新生内膜の観察を行い,アンギオスカルプトのス
コアリングエレメントによる内膜のindentation及
びステント径の拡張を観察し得たので報告する.
15) 当院における,左主幹部病変に対するシロ
リムス溶出性ステント留置の成績
(松江赤十字病院循環器科) 加藤康子・
塩出宣雄・城田欣也・福田幸弘・角田郁代・
藤原 舞・三村麻郎
【目的】左主幹部病変(LMT)に対するシロリム
ス溶出性ステント(SES)留置の臨床成績を検
討すること.【方法】2004年7月から2008年5月
において,LMTの新規病変にSESを留置した78
例(80病変)を検討した.【結果】LMTに対する
SES留置の初期成功率は100%だった.2例(2.6%)
が心不全のため入院中に死亡したが,ステント留
置自体による合併症,死亡は認めなかった.冠動
脈造影による1年フォローを45病変(78.9%)に
施行した.再狭窄は3病変(6.7%)であり,そ
の全てにTLRを施行した.最大3年間のフォロー
中に,急性,亜急性,遅発性を含め,血栓閉塞症
は認めていない.しかしSES留置1年8ヶ月後に
労作時胸部症状の自覚あり,SESの再狭窄を認め
た症例を1例認めた.【結論】LMTに対するSES
留置は有効であったが,1年経過後も厳重なフォ
ローが必要と考えられた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
16) 右冠動脈医原性解離へのステント留置にお
ける慢性期造影所見の相違:金属ステント・薬剤
溶出ステント間比較
(倉敷中央病院循環器内科) 長谷川大爾・
門田一繁・光藤和明・井上勝美・後藤 剛・
藤井理樹・山本浩之・加藤晴美・岡 直樹・
福 康志・細木信吾・廣野明寿・川上 徹・
丸尾 健・田中裕之・羽原誠二・田坂浩嗣・
今井逸雄・山田千夏・岡本陽地・大鶴 優
【背景】経皮的冠動脈形成術(PCI)に際し,治療
手技に伴い冠動脈損傷から医原性解離を生じる事
がある.Bail out目的に解離入口部にステント留置
を行うが,金属ステント(BMS)
・薬剤溶出性ス
テント(DES)の使用に伴う慢性期の冠動脈造影
検査(CAG)所見における相違についての報告は
ない.
【症例・方法】当院にてDESを使用し始めた
2004年から右冠動脈入口部・近位部解離に対しス
テント留置した11(BMS/DES 6/5)症例.慢性期
(3-8ヵ月後)にCAGにて評価した.BMSでは全症
例でステント内膜増殖所見を,DESでは3症例で
ステント外の造影流出所見を認めた.【結語】医
原性血管解離にDES留置例では,慢性期造影所見
にてステント外の造影流出を認める場合がある.
このことから医原性解離におけるDES留置では,
血管の自然治癒阻害が生じる可能性が示唆される.
17) 当院におけるパクリタキセル溶出性ステン
ト使用経験
(心臓病センター榊原病院) 外山裕子・
山本桂三・今井斎博・妹尾恵太郎・
山田亮太郎・大河啓介・石澤 真・佐藤慎二・
大原美奈子・広瀬英軌・廣畑 敦・
川村比呂志・山地博介・村上正明・村上 充・
日名一誠・喜多利正
【目的】薬剤溶出ステント(DES)の使用が多いが
昨年よりパクリタキセル溶出ステント(PES)が
発売され選択肢が増えており当院でのPES症例に
ついて検討した.【方法】平成19年5月∼平成20年
6月PES留置した265症例442病変で,背景と経過,
合併症について調査.
【結果】男性71%,女性29%,
年齢36歳∼90歳,臨床診断AMI 15%,UAP 8%,
AP 55%,OMI 17%,recentMI 5%,基礎疾患は高
血圧75%,糖尿病53%,高脂血症58%,腎不全13%,
病変はRCA47%,LAD36%,LCX16%,ISR病変で
のPES留置が17%,follow upは2007年12月までの
留置例で58%,ISR10%認めた.SAT2例,死亡6例
(cardiac death 4例)認めた.
【結語】背景は糖尿
病,透析患者が多い.ISRに対する使用も多く,
繰り返すISRでの留置で経過良好な症例もあり今
後有用性が示される可能性があると思われる.
18) シロリムス溶出ステント(SES)留置後,
剖検を行った超遅発性ステント血栓症の一例
(岡山医療センター循環器科) 大西由佳里・
小倉可奈子・重歳正尚・森あい子・溝口博喜・
木村英夫・宮地晃平・宗政 充・宮地克維・
藤本良久・松原広己・三河内弘・青木 健・
山鳥一郎
症 例69歳 男 性.2007年 2 月, 右 冠 動 脈(RCA)
に対しSES留置.2007年3月,左冠動脈前下行枝
(LAD)に対しSES3個留置.以後,アスピリン
100mg/日,チクロピジン200mg/日を内服してい
た.半年後確認造影にてステント内再狭窄認めず.
2008年8月,急性前壁心筋梗塞を発症し緊急冠動
脈造影施行.LAD(#6)のステント内血栓閉塞
であり,ただちに血栓吸引を行った後,SESを留
置した.IABP挿入し,心不全の管理を行ってい
たが,electrical stormにて発症6日後に死亡した.
病理解剖にて2007年RCA,LAD近位部に留置し
たSESに内膜被膜は全く認められなかった.今回,
ステント内に内膜被膜が生じなかった事が原因と
考えられた超遅発性ステント血栓症の一例を経験
した.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
19) 薬剤溶出性ステント留置後の超遅発性ステ
ント血栓症の2症例
(中国労災病院循環器科) 木阪智彦・
榎野 新・本藤達也・松田圭司・西楽顕典・
長神康雄・寺岡尚子
薬剤溶出性ステント(DES)留置後の遅発性ステ
ント血栓症が問題視されている.【症例1】74歳
女性,狭心症にて右冠動脈にDESを留置し,3年
の間隔をおいてVLSTを発症し冠動脈形成術を要
した.【症例2】77歳女性,狭心症にて右冠動脈
にDESを留置し3年後にVLSTによるAMIを発症
した.2症例共に,バイアスピリン(162mg/日)
とチクロピジン(200mg/日)の内服投与を継続
していたがVLSTを発症した.発症後の検索で,
症例1ではループスアンチコアグラント78.4秒,
症例2ではループスアンチコアグラント8.7秒で
あった.今後,より強い抗血小板療法が望ましい
のか,課題があり症例を呈示した.
20) 当院におけるシロリムス溶出性ステント留
置症例における超遅発性ステント血栓症症例の検討
(倉敷中央病院循環器内科) 今井逸雄・
門田一繁・柴山謙太郎・齋藤直樹・宮本真和・
大鶴 優・岡本陽地・山田千夏・田坂浩嗣・
長谷川大爾・羽原誠二・丸尾 健・川上 徹・
田中裕之・廣野明寿・細木信吾・福 康志・
岡 直樹・加藤晴美・山本浩之・藤井理樹・
後藤 剛・井上勝美・光藤和明
(愛媛労災病院循環器科) 見上俊輔
2002年11月から2007年8月までに当院にて施行された
シロリムス溶出性ステント(Sirolimus Eluting Stent:
SES)留置症例における超遅発性ステント血栓症(Very
Late Stent Thrombosis: VLST)に関して検討した.計
2883症例に対してSESを留置し,6例にARC definite
のVLSTを認めた.年齢は63±10歳,発症までの期間
は,860±257日だった.抗血小板薬の内服は3例がア
スピリンのみ,1例がアスピリンに加えてチクロピ
ジン100mg,1例がアスピリンに加えてチクロピジン
200mg,1例は手術のために2剤を中止にし発症2日
前にアスピリンの内服をしていた.2例にステント
フラクチャーを認め,5例でVLST発症以前にCAGを
施行し,3例にステント周囲の拡張性病変を認めた.
VLSTの要因として,ステント周囲の拡張性病変も関
係している可能性もあると考えられた.
21) 分岐部病変に対するDESを用いたtwo-stent
strategy
(倉敷中央病院循環器内科) 羽原誠二・
門田一繁・光藤和明・井上勝美・後藤 剛・
藤井理樹・山本浩之・加藤晴美・岡 直樹・
福 康志・細木信吾・廣野明寿・川上 徹・
丸尾 健・田中裕之・長谷川大爾・田坂浩嗣・
今井逸雄・山田千夏・岡本陽地・大鶴 優・
宮本真和・齋藤直樹・柴山謙太郎・辻本由紀
薬物溶出性ステントの使用により分岐部病変の本
幹の再狭窄率は低下することが報告されている
が,two-stentの成績は十分とは言えず,解決すべ
き課題も多い.当院において,薬物溶出性ステン
トを用いY stenting(39病変)又はT stenting(108
病変)を施行した147病変(LMT/LAD/LCX/RCA
=45/59/25/18病変)における慢性期成績について
報告する.8ヶ月後のフォローアップ時において
41病変(28%)に再狭窄を認め,その内26病変(63
%)は側枝入口部に再狭窄を認めた.病変部位別
の再狭窄率はLMT/LAD/LCX/RCA=48/12/39/7
%とLMT,LCX病変では高く,LAD,RCA病変で
は低かった.【結語】分岐部病変に対する治療に
おいては病変部位を考慮に入れる必要がある.
22) 心臓3DCTの外科領域での有効性ー症例検討
(広島大学病院心臓血管外科) 高橋信也・
岡田健志・森藤清彦・高崎泰一・黒崎達也・
今井克彦・渡橋和政・末田泰二郎
近年3DCTは多くの臓器に使用されるようにな
り,心臓においても活用が期待される.一方で画
像処理に時間を要し,必要な情報を十分に引き出
せていないと考えられる.我々は以前より,冠
動脈バイパス術前評価として,CTO病変,心外
膜脂肪,心筋内走行などについて検討を行って
いる.今回われわれは3DCTを用いて,手術時の
視野を検討したことが有効であった症例(virtual
surgeon s view),冠動脈の走行は通常とやや異
なるために迷いを生じる可能性のある症例を経験
したので報告する.いずれも術前に十分な情報を
得ていたために,予定通りの吻合部位にて手術を
施行し,良好な結果を得た.3DCTは吻合部位を
詳細に決定するのに非常に有効であり,より質の
高いバイパス術を行うことができると考えた.
23) 創傷治癒外来受診者の心臓疾患の検討
(心臓病センター榊原病院心臓血管外科)
杭ノ瀬昌彦・石田敦久・吉鷹秀範・津島義正・
都津川敏範
2007年12月に創傷治癒センターを開設し2008年5
月までに外来受診した患者48例の心疾患について
検討した.下肢の動脈性潰瘍は36例,静脈性潰瘍
が4例,熱傷による潰瘍が2例,褥創によるもの
が2例,その他のものが4例あった.経過中動脈
性と褥創による患者のそれぞれ4例(6.7%),2
例(50%)が死亡している.48例中30例に糖尿病
を合併しており,また16例(重複あり)に慢性腎
不全を合併していた.48例中16例が入院精査を必
要とし新たな冠動脈疾患が発見され治療に至った
症例は12例(全体の25%,入院の75%)であった.
12例中9例にPCIを,3例にCABGが施行された.
下肢潰瘍に至る疾患をもつ患者の高率に心疾患を
合併していることがわかった.
24) 冠動脈バイパス術における内視鏡下大伏在
静脈採取法;VirtuoSaphの使用経験
(鳥取大学器官再生外科学) 原田真吾・
佐伯宗弘・中村嘉伸
(鳥取県立中央病院心臓血管・呼吸器外科)
西村謙吾
(鳥取大学器官再生外科学) 岡田泰司・
内田尚孝・丸本明彬・金岡 保・西村元延
【目的】2007年10月より当科ではCABGの際に内
視鏡下大伏在静脈グラフト採取法を導入した.そ
の効果に関して検討する.【対象・結果】2007年
10月から2008年7月までの大伏在静脈を用いた定
期CABG(併施も含む)は25例(内視鏡下採取12
例,通常の採取13例).内視鏡下採取はすべて大
腿部で行った.採取に要した時間は,内視鏡下採
取51.8±14.9分, 通 常 の 採 取68.1±11.9分 で, 内
視鏡下採取において有意(p<0.01)に採取時間
が短かった.また,内視鏡下採取の5例目までは
66.0±3.8分,6例目以降は41.6±10.3分と,症例
を重ねるごとに有意(p<0.01)に採取時間が短
縮された.内視鏡下採取では創部の離開等は認め
なかった.
【まとめ】内視鏡下採取法は,通常の
採取法に比して採取時間が短縮され,整容性の面
からも有用であると考えられる.
呉阪急ホテル(2008 年 11 月) 963
25) 無収縮領域を伴う心筋梗塞後低左心機能症
例に対する左室形成術
(岩国医療センター心臓血管外科)
大谷 悟・村上貴志・山本 剛・錦みちる
28) MDCTによる冠攣縮性狭心症のplaque評価
(JA広島総合病院循環器内科) 三玉敦子・
藤井 隆・辻山修司・前田幸治・卜部洋司・
対馬 浩・関口善孝
31) アナフィラキシー症状発現中に心筋梗塞を
発症した一例
(済生会広島病院循環器内科) 松本公治・
唐川真二・渡辺光章・斎藤靖浩
【目的】近年,無収縮領域を有する低左心機能患
者に対し遠隔予後改善を目的とした積極的手術介
入が試みられている.当科における経験を報告す
る.【症例】2008年に左室形成術を施行した2例.
(58歳男性,67歳女性)【手術】症例1:SAVE手
術及び冠動脈バイパス術(CABG),乳頭筋近接術,
僧帽弁輪縫縮術.症例2:SAVE,左室後側壁の
Batista型手術及びCABG【結果】症例1:EF28→
42%,LVDd70→64mm,ESVI 101→65ml/m2.症
例2:EF23→41%,LVDd71→57mm,ESVI 165
→69ml/m2と術後約7日目の心エコー検査にて著
明な心機能の改善を認めた【まとめ】左室形成術
は無収縮領域を有する低左心機能患者に対する有
効な手段になりうると思われた.ただ手術適応は
未だ混沌としており,今後の検討が必要である.
術前画像診断が一つのキーワードと思われた.
冠痙攣性狭心症と診断された6例に64列MDCTを
施行,動脈硬化の有無,性状について観察した.
cMPR像において両側冠動脈に動脈硬化病変を認
めなかったNP群:3例と,責任冠動脈において
狭窄率(50%以下)の動脈硬化病変を認めたAS群:
3例(計4病変).AS群において,CAG上の局所
性冠痙攣部位におけるplaque性状は,soft:2病
変,fibrous:1病変,mixed:1病変で,positive
remodelingは0病変であった.冠攣縮は内皮機能
障害を伴った初期動脈硬化病変に生じることが多
いとされ,今後CTによる非侵襲的な動脈硬化病
変性状評価が治療方針選択等において一助となる
可能性も考えられる.
アナフィラキシー症状発現中に急性心筋梗塞を発
症した症例を経験したので報告する.症例は40台
後半の肥満男性.深夜に魚のハンバーガーを食し
た後,全身に蕁麻疹が出現し,さらに呼吸困難を
生じたため当院受診した.ステロイド,酸素吸入
などにより症状は徐々に軽快した.入院当日の夜
間,一時的血圧低下を来たし,心電図にて下壁領
域のST上昇,一過性完全房室ブロックを認めた.
胸痛はなかった.翌朝トロポニンT陽性,心筋逸
脱酵素の上昇を認め,冠動脈造影を実施した.冠
動脈には有意狭窄,血栓は認めなかった.冠攣縮
が虚血に関与したものと思われるが,アナフィラ
キシーと心筋梗塞の合併は比較的まれであるた
め,文献的考察を含め報告する.
26) メタノール中毒が誘因となった異型狭心症
の一例
(広島市立安佐市民病院) 長沼 亨・
土手慶五・加藤雅也・佐々木正太・
上田健太郎・河野康之・渡邉義和・梶川正人・
横山晴子
29) 器質的冠動脈狭窄と多枝スパズムを合併し
治療に難渋した1症例
(呉医療センター循環器科) 山下泰史・
西本織絵・西山浩彦・松田守弘・田村 律・
川本俊治
32) SES留置後の慢性期血管内視鏡所見:ST上
昇型急性心筋梗塞と狭心症の比較検討
(広島市立広島市民病院) 臺 和興・
石原正治・井上一郎・河越卓司・嶋谷祐二・
栗栖 智・中間泰晴・丸橋達也・香川英介・
松下純一・池永寛樹
66歳,男性.喫煙20本/日.胸痛,意識消失で来院し,
心電図で下壁誘導のST上昇と心エコーで下壁無
収縮所見を認め,冠動脈造影で右冠動脈の異型狭
心症と診断した.著明な代謝性アシドーシスと代
償性過換気所見(pH: 7.1,pCO2: 17mmHg,pO2:
141mmHg,BE: -22mmol/L)を認めた.重炭酸
で補正し,ニフェジピン,硝酸イソソルビドで発
作は消失し,第7病日に退院した.しかし退院3
日後に意識障害,胸痛,視力障害にて再び来院し,
乳酸アシドーシスを認めた.頭部MRIで両側後頭
葉や視神経等の信号強度異常を認め,ミトコンド
リア脳筋症の疑いで加療したが,後日尿中メタノ
ール濃度が高値と判明した.同中毒による代謝性
アシドーシス,代償性過換気により冠スパズムが
誘発され,診断に難渋した一例であった.
症例は高血圧,糖尿病,喫煙歴のある49歳女性.
階段歩行時と夜間入眠中の胸部圧迫感を認め,当
院紹介受診.冠動脈造影を行い#6 50% #7 90%,
IVUSでは#7に全周性のプラークを認めCypherを
留置,#6は偏在性のプラークを認めるも内腔は
保たれており経過観察とした.その後も安静時の
症状が継続したため,2ヶ月後冠動脈造影を行っ
た.ステント内再狭窄は認めなかったが,LAD,
LCXの近位部に90%の狭窄を認め,ニトログリセ
リンの冠注で改善した.冠攣縮の合併と考えられ,
Ca拮抗剤とニコランジルを追加した.安静時の
症状は消失したが,5ヶ月後に労作時の症状が再
増悪したため,心臓CTを行い#6は90%に進行し
ていた.Cypherを留置し,症状は完全に消失した.
器質的冠動脈狭窄と多枝スパズムを合併し治療に
難渋した症例を経験したので報告する.
27) PCI中に発生した強力なspasmを偽腔内血
腫と診断した1例
(広島市立安佐市民病院循環器内科)
横山晴子・土手慶五・加藤雅也・佐々木正太・
上田健太郎・河野康之・長沼 亨・渡邉義和・
梶川正人
30) 標準治療に抵抗性の冠攣縮性狭心症発作に
ステロイドが有効と思われた一例
(津山中央病院循環器科) 佐伯 一・
小松原一正・吉川昌樹・梶谷昌史・西田 剛
(香川労災病院循環器科) 水尾浩三・
渡邉 謙・松浦 靖・植木 敦
59歳男性.6年前に急性心筋梗塞を発症した.RCA
#1 100%に対して血栓溶解療法を行い,再開通
に成功した.11ヶ月後に安静時胸痛が出現し心カ
テ施行.#1 99%と再狭窄を認めたため同部位に
4×15mm Multi Linkを留置した.4年後の造影
にて,#1 stentの中枢側で完全閉塞していた.ガ
イドワイヤーを通過させ,stent末梢に3×18mm
Cypherを留置したが,直後よりstent末梢が閉塞
した.ISDNを冠注したが末梢の血流は改善せず,
偽腔内血腫によるCTO failureと考えて終了した.
6ヶ月後RCAは再開通していたが,突如Cypher
末梢に高度狭窄が出現し,ISDN冠注にて解除さ
れた.Cypher留置後の閉塞は,偽腔内血腫と間
違える程の頑固なspasmであった.病歴上spasm
の関与が疑われる場合は,PCI時にも十分な配慮
が必要である.
58歳女性.2007年4月,冠攣縮性狭心症による心
室細動で緊急入院.アムロジピン,ジルチアゼム,
スタチン,塩酸イソソルビドを内服し退院.入院
中,以前より咳嗽が続いていることから呼吸器内
科を受診.抗酸球増加からアレルギー性気管支炎
を指摘され抗アレルギー薬(ベタメサゾン配合薬)
を内服開始となる.同年12月に冠攣縮性狭心症発
作の再発および房室ブロックを合併し近医に緊急
入院.発作のコントロール困難にて当院に紹介と
なる.すでに冠攣縮性狭心症に対する標準的な治
療は行われていること,低血圧からカルシウム拮
抗薬の増量は困難であった.発作再発前に抗アレ
ルギー薬が中止されていること,アレルギー性素
因があることからステロイドの内服を開始したと
ころ,冠攣縮発作は速やかに消失した.その後6
ヶ月間,発作なく経過した.
964 第 93 回中国地方会
【目的】ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)と狭
心症(SAP)に対するCypher stent(SES)留置
後の慢性期における内膜の被覆状態と血栓の有無
について比較検討した.【方法】SESを留置した
STEMIのうち慢性期(平均239日)に血管内視鏡
検査(CAS)を施行した23症例とSESを留置した
SAPのうち慢性期(平均249日)にCASを施行し
た18症例を対象とした.SESの新生内膜の被覆状
態をGrade 0から3に分類し評価した.血栓の付
着を検討した.【結果】内膜の被覆状態は両群と
も不均一な分布を示した.血栓はSTEMIのうち
8例に,SAPのうち4例に認めた(35% vs 22%,
p=0.38).【結論】SES留置後の内膜の被覆は不均
一かつ不十分であった.全ての血栓が内膜に被覆
されていないステントストラットに付着してい
た.STEMIとSAPでは内膜被覆度と血栓形成に
有意差はなかった.
33) 当院におけるTaxus stentの初期,中間成績
:Cypher stentとの比較
(松江赤十字病院循環器科) 藤原 舞・
塩出宣雄・城田欣也・福田幸弘・角田郁代・
加藤康子・三村麻郎
【目的と方法】2007年5月より2008年6月までに,
当院にてTAXUSステント留置をこころみた143例
240病変を当院でのこれまでのCypherステントの
成績と比較すること.【結果】初期成績は1例ス
テント挿入できなかったが,239病変(99.6%)に
てステント挿入に成功した(手技成功99.6%)
.急
性期に1例,急性血栓性閉塞を認めた.2008年7
月までに6ヶ月フォロー CAGを133病変に施行し
た.
(フォローアップ55.4%)
.QCAでのLate Loss
(0.49±0.68mm) で あ り, 当 科 で の こ れ ま で の
Cypherステントの6ヶ月でのLate Loss(0.17±
0.62mm)と比較して有意に大きかった.TAXUS
とCypherの 再 狭 窄 率 は9.8 %,6.2 % でTLRは6.8
%,4.5%であった.【結語】DES留置後の新生内
膜増殖抑制効果はSESの方が強いがSESとPESで
臨床的な効果には差がなかった.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
34) 当院におけるTAXUS stentの初期中期成績
−Cypher stentとの比較検討−
(岡山赤十字病院循環器科) 藤原泰和・
佐藤哲也・更科俊洋・池田哲也・齋藤博則・
飛岡 徹
37) 当院における冠動脈ステントの脱落経験と
その解決法について
(倉敷中央病院循環器内科) 加藤晴美・
門田一繁・福 康志・光藤和明・井上勝美・
後藤 剛・藤井理樹・山本浩之・岡 直樹・
細木信吾・廣野明寿・川上 徹・丸尾 健・
田中裕之・羽原誠二・長谷川大爾・田坂浩嗣・
今井逸雄・山田千夏・岡本陽地・大鶴 優・
宮本真和・齋藤直樹・柴山謙太郎・辻本由紀
40) 亜急性心筋梗塞に合併した左室自由壁破裂に
伴う仮性心室瘤に対して救命しえた高齢女性の一例
(倉敷中央病院循環器内科) 辻本由紀・
山本浩之・加藤晴美・柴山謙太郎・齋藤直樹・
宮本真和・大鶴 優・岡本陽地・山田千夏・
今井逸雄・田坂浩嗣・長谷川大爾・羽原誠二・
田中裕之・丸尾 健・川上 徹・廣野明寿・
細木信吾・福 康志・岡 直樹・藤井理樹・
後藤 剛・井上勝美・門田一繁・光藤和明
近年ステントの脱落は稀ではあるが,なお存在し
うる合併症の一つである.今回我々は,当院での
経験例を報告し検討する.対象は,1991年4月か
ら2008年8月までにステント留置を試みた13999
症例で,そのうち62例にステント脱落を経験した.
年齢66±11歳,病変はLAD/RCA/LCX/LMT/Graft
:23/21/11/5/2枝,2000年以降は年間1−2例,
DES使用例は6例と少数であった.対処法として
は,7例が留置(冠動脈内・外),残りは回収(外
科的1例,他Gooseneck snare,生検鉗子やバル
ーンなどによる回収),4例で紛失した.全例に
おいてMACE等は見られなかった.
【総括】ステ
ント脱落時の対処法として速やかな留置・回収等
の判断および手技が必要と考えられ報告した.
84歳女性.慢性心房細動の既往あり.心窩部痛,
胸痛が出現.3時間後に脱力,失禁,いびき様呼
吸を認め,心肺蘇生し救急搬送.意識障害を認め
たが,心臓マッサージにて心拍再開した.心エコ
ーにて心尖部の瘤化,壁運動異常,左室からflow
を伴う仮性心室瘤と心嚢水を認めた.冠動脈造影
で,左前下行枝#8 100%であり,心房細動から
の塞栓症で急性心筋梗塞を発症,左室自由壁破裂
に伴う心嚢水貯留,仮性心室瘤形成し,その後自
然止血したと考えた.バイタル安定し,意識レベ
ル改善も認めたが,仮性心室瘤は増大傾向にあり,
発症16日後に心臓血管外科にて左室形成術を施行
し,軽快退院.本症例は左室自由壁破裂後に仮性
心室瘤を形成し待期的手術を行い救命しえた貴重
な症例であり,文献的考察を併せて報告する.
38) 院内で乳頭筋断裂,急性循環不全となり救
命し得た急性心筋梗塞の1例
(山口県済生会下関総合病院循環器内科)
平野能文・濱田芳夫・百名英二・立野博也・
大村昌人
(同心臓血管外科) 小林百合雄・阪田健介・
伊東博史・藏澄宏之
41) 奇異性塞栓による急性心筋梗塞が疑われた
1例
(あかね会土谷総合病院循環器内科)
徳山丈仁・林 康彦・元田親章・川瀬共治・
竹田 亮・三戸森児・為清博道・大塚雅也・
沖本智和・豊福 守・平尾秀和・村岡裕司・
作間忠道・上田浩徳・正岡佳子
82歳男性.2008年8月4日朝重篤な胸苦出現.5
日夜間診療所受診,微熱,白血球上昇,CRP陽性
を指摘.総合病院紹介,CT上両側胸水貯留を認
めた.7日当院呼吸器内科紹介,受診中呼吸苦増
悪.心エコー上左室後側壁収縮低下,左室乳頭筋
断裂,重症僧帽弁閉鎖不全症を認めた.CCU緊
急入院直後ショックとなり気管内挿管,DOA投
与しIABP,PCPS挿入.緊急冠動脈造影上左冠動
脈回旋枝#12:90%狭窄を認めた.急性心筋梗塞
(後側壁)に乳頭筋不全,急性僧帽弁閉鎖不全症
を併発しうっ血性心不全となり,第4病日当院院
内で偶発的に乳頭筋断裂を生じたと判断,緊急僧
帽弁置換術,冠動脈バイパス術施行し救命に成功
した.乳頭筋断裂は急性心筋梗塞の希な合併症で
あるが致命率は高い.迅速な対処,外科との連携
が奏功したので文献的考察を含め報告する.
73歳 女 性. 目 立 っ た 既 往 歴 は 無 く, 左 回 旋 枝
seg12末梢の閉塞による急性心筋梗塞にて当院へ
入院.ガイドワイヤーを留置し,ニトロプルシッ
ド冠注を行うも,再潅流はできなかった.末梢の
分枝でもあったためPCIを終了した.止血デバイ
スにて右大腿動脈のシースを抜去したが穿刺部に
血腫形成を認め圧迫を行った.翌日一般病棟に転
床,その3日後に穿刺部の再腫脹を認めた.再圧
迫を行い,長時間臥床が必要な状態となった.安
静解除後,トイレへ歩行した直後より胸痛自覚.
心電図,心エコー検査より再梗塞が考えられた.
緊急CAGの結果,左主幹部の血栓性閉塞を認め
た.ショック状態となったが人工心肺補助装置も
使用し一命を取り留めた.発症状況およびその後
の検査により奇異性塞栓が心筋梗塞の原因と考え
られた.症例を提示する.
36) ACS patients have less extracoronary
atherosclerosis than stable angina patients
(中国労災病院内科) 西楽顕典・榎野 新・
本藤達也・松田圭司・木阪智彦
(同検査部) 日浦志朗・鵜久森淳一
39) 血栓塞栓症によると思われる心筋梗塞を来
たした拡張型心筋症の20歳男性の1症例
(広島赤十字・原爆病院循環器科)
糸谷友里・栗林祥子・門田欣也・塩見哲也・
川村奈津美・吉田知己・加世田俊一
42) 急性心筋梗塞における梗塞前狭心症が梗塞
進展に与える影響
(広島市立広島市民病院) 丸橋達也・
石原正治・井上一郎・河越卓司・嶋谷祐二・
栗栖 智・中間泰晴・香川英介・臺 和興・
松下純一・青景聡之・池永寛樹
【Aims】The aim of our study was to determine
whether there is a significant difference of
degree of extracoronary atherosclerosis between
patients with ACS and those of stable angina.
【Methods and Results】We studied total 101
subjects who underwent PCI, 38 with ACS, 63
with stable angina. The degree of carotid and
peripheral atherosclerosis were compared in
both patients groups. IMT of carotid artery was
smaller, and ABI was greater in ACS patients
than in stable angina patients (IMT 1.0±0.7mm
v.s. 2.2±0.8mm P<0.01, ABI 1.11±0.44 v.s. 0.78
±0.39 P<0.01).【Conclusions】ACS patients have
less extracoronary atherosclerosis than stable
angina patients.
症例は20歳男性.来院1ヶ月前頃より起坐呼吸,
労作時息切れ,食欲不振出現し,当科入院.心エ
コー上左房・左室の拡大と壁運動のびまん性低下
(駆出率16%)を認め拡張型心筋症による心不全
と気道感染と診断し,抗生剤・利尿剤等にて加療
を行っていた.入院8日目の夜に胸痛が出現し,
V3-4でST上昇を認め翌日に心筋酵素の上昇,心
エコーにて心尖部の壁運動の低下を認めた.緊急
CAGにてseg8末梢の完全閉塞を認め,血栓が吸
引された.経食道エコーではLA・LV内に著明な
もやもやエコーを認め,Dダイマーは2.4と軽度高
値であり,心臓由来の血栓塞栓症により心筋梗塞
を来たしたと考えられた.拡張型心筋症に合併し
た若年での心筋梗塞の一症例を経験したので報告
する.
TAXUS stent(PES)の臨床成績をCypher stent
(SES)と比較検討した.対象は平成16年8月から
平成20年7月までにそれぞれを留置した95病変と
144病変.初期成績,中期のQCA解析などを比較
した.
【結果】1.患者,病変背景に両群間で有意
差を認めなかった.2.初期成績:成功率(%);
95.8,99.3,postMLD(mm); 2.36±0.47,2.14
±0.43,%DS; 1.58±6.11,0.17±2.08(p=0.033)
と%DSはPES群で有意に大であった.3.中期成
績:8ヵ月後の心カテは43例99例に施行され,late
loss(mm) はPES群: 0.60±0.57,SES群: 0.26±
0.42(p=0.008)とPES群で有意に大きかったもの
の,再狭窄率(%)は14.6,11.1,TLR(%)は14.6,
9.1と有意差を認めなかった.【結語】TAXUSは
Cypherと比較して,late lossが大きかったものの
臨床的には問題となっておらず,同等の有用性を
認めた.
35) 抗血小板剤をどのくらい効かすか?
(中国労災病院内科) 西楽顕典・榎野 新・
本藤達也・松田圭司・木阪智彦
(同検査部) 木村 充
【目的】PCI施行患者にどの程度抗血小板剤を効
かせるのがよいのか検討すること.【方法と結果】
2剤の抗血小板剤投与下に待機的PCIを行った
120例に血小板凝集能測定を行い,出血性イベン
トと血栓塞栓症の発生について検討を行った.ア
クセス部出血は,ADP 8μM添加後血小板凝集
率が10%より低値になると増加した.ステント内
血栓症の発生は血小板凝集能の程度によらず極め
て低率であった.【結論】2剤の抗血小板剤内服
中はADP 8μM添加後血小板凝集率を10%以上
に保つことが患者利得に繋がる.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
梗塞前狭心症によるpre-conditioningが梗塞進展
に与える影響について検討した.初回前壁ST上
昇型AMI154例を対象とした.梗塞前狭心症の有
無により,発症から来院までの経過時間と来院時
心筋障害の程度との関係について検討した.梗塞
前狭心症(−)群では,来院時までの経過時間
が長い群(ET≧4時間)では短い群(ET<4時
間)と比較して高度心筋障害例を有意に多く認め,
入院時QRS scoreも有意に高かったが,梗塞前狭
心症(+)群は,高度心筋障害例の割合と入院時
QRS scoreに有意差は認められなかった.
呉阪急ホテル(2008 年 11 月) 965
43) 左主幹部病変を合併した急性大動脈解離に
PCI後に手術を施行し救命し得た一例
(福山市民病院循環器内科) 渡辺敦之・
中濱 一・山中俊明・戸田洋伸・杉山弘恭・
河合勇介・橋本克史・寺坂律子・山田信行
症例は生来健康な64歳女性.突然の胸背部痛に
て当院緊急搬送となる.来院時はショック状態
であり,心電図ではI,aVLにてST上昇,II,III,
aVF,V2-5でST低下を認めた.心臓超音波では,
後壁から側壁の壁運動低下,大動脈弁閉鎖不全症
を認めた.冠動脈造影では右冠動脈入口部50%,
左主幹部90%狭搾,左前下行枝TIMI 1,左回旋枝
入口部完全閉塞を認めた.冠動脈造影中に大動脈
解離が疑われたが,血行動態が不安定であり引き
続きPCIを施行.PCI後は血行動態が安定し,緊
急上行大動脈−弓部置換手術を施行した.経過は
良好で,現在は通常の社会生活をおこなっている.
血行動態の破綻をきたす冠動脈病変を合併した大
動脈解離に対して,PCIを先に施行し,血行動態
を安定させた後に手術を施行する事で救命し得た
症例を経験したので報告する.
44) メタボリック症候群を合併する虚血性心臓
病の冠動脈病変は重症か?
(山陰労災病院) 笠原 尚・遠藤 哲・
石田勝則・尾崎就一・太田原顕
【目的】メタボリック症候群(Met)と冠動脈罹患
病変枝数(CADNo)との関連についての検討する
こと.【対象/方法】冠動脈造影上狭窄病変を認め
た482例.Metの 診 断 基 準;A.BMI≧25kg/m2,
B-1.高血圧症の合併,B-2.TG≧150mg/dlかつ
/またはHDL-C<40mg/dl,B-3.FBS≧110mg/dl
かつ/または糖尿病症例.AおよびBの項目の2つ
以上を満たす症例をMS群,AおよびBの項目のす
べてを満たさない症例を非MS群,その他を中間
群に分類しCADNoを比較した.【結果】3群間で
CADNoに差を認めなかった.高Lp
(a)
血症合併群
でCADNoは高値で,
また非MS群において高Lp
(a)
血症の合併を高率に認めた.Metと高Lp(a)血症
はCADNoに対する交互作用が認められた.
【総括】
Metの合併の有無と冠動脈病変の重症度とは関連
がなく,その関連を検討する場合高Lp
(a)血症の
影響を考慮する必要性が示された.
45) 大気環境と急性冠症候群発症の検討
(松江赤十字病院循環器科) 福田幸弘・
塩出宣雄・城田欣也・角田郁代・加藤康子・
藤原 舞・三村麻郎 【はじめに】大気中の窒素酸化物や微少粒子の高
濃度暴露が死亡率を高め,冠動脈疾患発症リスク
も増加させることが報告されている.【方法】対
象期間は2000年4月から2004年3月の5年間,対
象地域は島根県松江市およびその周辺地域とし
た.対象者は上記5年間に当院に搬送されACS
と診断された症例のうち,大気測定局の存在する
地域の症例とした.大気環境指標は,窒素酸化物
(NOX)
,光化学オキシダント(OX),浮遊粒子
状物質(SPM)とした.上記指標の月別大気中
濃度とACS発症数を比較検討した.【結果】ACS
発症数 とNOX濃 度 およ びOX濃度に 関連 は 認め
なかった.ACS発症数とSPM濃度に相関傾向を
認めた.特にSPM 1時間の最高値と比較的強い
相関を認めた(相関係数0.312).【結論】大気中
SPM濃度上昇はACS発症リスクと関連する可能
性が示唆された.
966 第 93 回中国地方会
46) DSCTにより左冠動脈主幹部病変を正確に
診断できた高心拍数の一例
(山口大学器官病態内科学) 小田隆将・
三浦俊郎・藤村達大・岡村誉之・山田寿太郎・
那須 学・廣 高史・木原千景・和田靖明・
村田和也
(同放射線医学) 中島好晃・岡田宗正・
鷲田康弘・松永尚史
症例は65歳,女性.1ヶ月前より続く労作時の胸
部不快感が増悪してきたため精査目的で入院とな
った.入院後,DSCTを施行し左冠動脈主幹部に
90%の狭窄を認めた.心拍数が90/分と高心拍数
であるにもかかわらずCT短軸像ではプラークま
で確認できる良好な画像を得ることができた.翌
日,安静時にも胸痛が生じたため不安定狭心症と
診断し,緊急冠動脈造影検査を施行した.結果,
左冠動脈主幹部に90%狭窄を認め,同時に施行し
た血管内超音波像でもCT短軸画像とほぼ同様の
結果を認めた.今回,私たちは高心拍数患者に
対しDSCTを行い,血管壁を含めた正確な画像が
得られることを経験した.またこの症例でDual
Doppler Echo法を用いてDSCTの時間分解能が高
心拍数症例に適していることを証明した.
47) 急性心筋梗塞における入院時白血球とpeak
CKが左室リモデリングに与える影響
(広島市立広島市民病院) 中間泰晴・
石原正治・井上一郎・河越卓司・嶋谷祐二・
栗栖 智・丸橋達也・香川英介・台 和興・
池永宏樹・松下純一
急性心筋梗塞における入院時白血球とpeak CKが
左室リモデリングに与える影響について発表しま
す.
48) 64列MDCTで冠動脈評価を行った患者背景
の検討
(鳥取大学病態情報内科学) 水田栄之助・
嘉悦泰博・古瀬祥之・井上義明・矢野暁生・
浜田紀宏・井川 修・重政千秋
(鳥取大学再生医療学) 久留一郎
【背景・目的】64列MDCTによる冠動脈評価はそ
の陰性的中率の高さから現在虚血性心疾患のスク
リーニング検査として多くの施設で活用されてい
る.【対象・方法】当院循環器内科通院中で64列
MDCTによる冠動脈評価を受けた患者115名を対
象に,その患者背景,特に高血圧,糖尿病など各
生活習慣病とその冠動脈所見との関係について検
討した.さらに単純CTで肝臓/脾臓のCT値の比
を求めることで脂肪肝を定量化し,脂肪肝とCT
冠動脈所見との関係について検討を行った.【結
果・考察】胸痛を訴えた患者では女性に比べて男
性にCT上冠動脈に有意狭窄を認めた.また男性
の高血圧,女性の肥満患者に有意に冠動脈有意狭
窄を認めた.脂肪肝の定量化は冠動脈CTと同時
に簡便に測定可能であり,虚血性心疾患診療にお
いて非常に有意義であると考えられた.
49) OCTにてmultiple dissection(swiss cheese
appearance,or Renkon )を観察しえた1例
(広島市立広島市民病院) 池永寛樹・
井上一郎・河越卓司・石原正治・嶋谷祐二・
栗栖 智・中間泰晴・丸橋達也・香川英介・
臺 和興・松下純一
【症例】62歳男性【現病歴】平成20年2月下旬よ
り頻繁に自然軽快する安静時胸痛を自覚してい
た.3月21日より持続する胸痛が出現したため3
月25日近医を受診.Recent MIにて当院紹介,緊
急入院となった.【入院後経過】入院後心臓カテ
ーテル検査施行.#6にdiffuseにdissectionを伴う
90%狭 窄 を 認 め た.OCTに てmultiple dissection
が認められた.その後病変にRotablator1.5mmに
てablation後Cypher2.5×28+2.5×23 を 留 置 し 終
了した.昨今OCT(Optical Coherence Tomography)
は近赤外線を使用しIVUSに比べ詳細な画像が得ら
れるとして注目を集めている.今回我々はACS患
者にOCTを行い,繰り返し生じたplaque rapture
の 結 果 で あ る と 考 え ら れ るmultiple dissection
(swiss cheese appearance, or Renkon )を観察
しえた症例を経験したので報告する.
50) Ensiteシステムガイドでのカテーテルアブ
レーションの検討
(厚生連尾道総合病院循環器科) 三浦史晴・
松本武史・中野良規・森島信行
当院では,Ensiteシステムが臨床利用できるよう
になって,20症例にEnsiteシステムガイドでのカ
テーテルアブレーションを施行した.Ensiteシス
テムは,Unipolar電位を画像解析に使用するため,
電位の解釈や画像の解釈に難がある.そのため,
このシステムは,慣れが必要であり,時には画像
を誤認識することがあるため,有効に利用するに
は,より多くの症例での臨床使用が必要であると
思われる.心房粗動に始まり,focalタイプの心
房頻拍から,ASD術後の心房頻拍のカテーテル
アブレーション時にEnsiteシステムを利用して,
最近では,発作性心房細動,持続性心房細動のカ
テーテルアブレーション時のガイドにも利用して
いる.当院でのEnsiteシステムの使用経験を通し
て,Ensiteシステムの臨床応用の可能性について
検討したので,報告する.
51) ブルガダ症候群患者の発作性心房細動に対
し,カテーテルアブレーションが有効であった一例
(広島大学循環器内科) 槙田祐子・
梶原賢太・光波直也・小田 登・末成和義・
尾木 浩・平位有恒・中野由紀子・木原康樹
症例は50歳,男性.46歳時発作性心房細動(Paf)
を指摘されピルジカイニド屯用開始となったが,
その後ブルガダ様心電図を指摘されたため内服中
止していた.Pafの頻度が増加し,抗不整脈が使
用しにくいため,カテーテルアブレーション目的
で紹介入院した.失神歴なし.家族歴として,父
が72歳時突然死.両側拡大肺静脈隔離術と三尖弁
輪下大静脈間線状焼灼術を施行し,同日ブルガダ
症候群の心室細動(Vf)誘発試験施行.右室心尖
部からの期外刺激にてVf誘発され,電気的除細動
にて停止した.埋込み型除細動器を植え込み,経
過良好にて退院.現在外来フォロー中であるが,
PafもVfイベントもなく経過している.ブルガダ
症候群はPafを伴うことが多いが,抗不整脈薬が
使用しにくく,アブレーションのよい適応と考え
る.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
52) 広島大学病院における心房細動の拡大肺静
脈隔離アブレーションの治療成績について
(広島大学病院) 梶原賢太・ 中野由紀子・
平井有恒・尾木 浩・末成和義・小田 登・
槙田祐子・木原康樹
【はじめに】心房細動に対する拡大肺静脈隔離術
が近年開発され,当院においても平成18年11月よ
りこれを施行し,現在まで良好な成績を得ており
報告させていただく.【方法】CARTOシステムよ
り構築した左房,肺静脈マップに基づき左房後壁
心筋を含めた同側上下肺静脈開口部の拡大肺静脈
隔離を施行した.術後は抗不整脈薬,抗凝固薬の
内服を続行した.【結果】有症候性の心房細動46
例(発作性39例,慢性7例)に施行し,46例のう
ち40例(87%)はフォローにおいて洞調律を維持
していた.【結語】心房細動に対する拡大肺静脈
隔離術は高い洞調律維持効果を認めていた.長期
観察データの集積が必要であるが,今後のリズム
コントロールの進展が期待される.
53) 心房細動を合併した心不全患者に対する肺
静脈隔離術の長期成績についての検討
(倉敷中央病院循環器内科) 田坂浩嗣・
藤井理樹・岡本陽地・川上 徹・門田一繁・
光藤和明・辻本由紀・柴山謙太郎・齋藤直樹・
宮本真和・大鶴 優・山田千夏・今井逸雄・
長谷川大爾・羽原誠二・田中裕之・丸尾 健・
廣野明寿・細木信吾・福 康志・岡 直樹・
加藤晴美・山本浩之・後藤 剛・井上勝美
【背景】心房細動を合併した心不全患者に対する
肺静脈隔離術の長期予後について検討した.【対
象】心房細動を合併した心不全患者6名(平均年
齢61±12歳,拡張型心筋症3名,頻脈誘発性心筋
症3名).【方法】心房細動に対して肺静脈隔離術
を行い,術前,術後1ヶ月,12ヶ月における心エ
コー,CTR(%)
,BNP(pg/dl)
,NYHAを比較し
た.【結果】術前,LVEF 49±6%,CTR 56±8%,
BNP 103±55pg/dl,NYHA 2.5±0.5であった.術
後1ヶ月では,LVEF 55±6%,CTR 53±4%,BNP
65±50pg/dl,NYHA 1.7±0.5であり,術後12ヶ月
で は,LVEF 60±3%,CTR 52±5%,BNP 20±6
pg/dl,NYHA 1.5±0.5であった.
【結語】心房細
動を合併した心不全患者に対する肺静脈隔離術
は,心機能を改善し心不全の予後を改善すること
が期待できる.
54) 高周波アブレーションにより加算平均心電
図の心室遅延電位が改善した心筋梗塞後心室頻拍
の1例
(岡山大学循環器内科) 高谷陽一・
永瀬 聡・平松茂樹・多田 毅・村上正人・
西井伸洋・中村一文・幡 芳樹・草野研吾
症例は78歳男性.68歳時,急性側壁心筋梗塞にて
冠動脈バイパス術を施行.今回,持続する動悸に
て近医受診したところ心室頻拍(160/分,右脚ブ
ロック+下方軸)を認め精査加療目的で当院紹介
となった.心臓電気生理検査では,左室基部から
中部の後側壁において低電位領域を認め,この領
域と僧帽弁輪との境界部で洞調律中に心室遅延電
位を認めた.心室頻拍中にペーシングを行った結
果,この境界部が必須緩徐伝導路である所見が得
られた.同部の通電で頻拍は速やかに停止し以後
全く誘発されず.加算平均心電図では高周波アブ
レーション施行前後で心室遅延電位の改善を認め
た.今回,アブレーションにより加算平均心電図
での遅延電位が改善する所見が得られた心筋梗塞
後心室頻拍の1例を経験したので報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
55) 洞機能不全とQT延長を呈したリチウム中毒
患者でCHDFが奏功した1例
(マツダ株式会社マツダ病院循環器科)
折田裕一・五明幸彦・住居晃太郎・清水嘉人
症例は65歳女性.躁鬱病で数年前から炭酸リチウ
ム等の加療中.7月下旬から落ち着きが悪く投薬
の調整を受けていた.7月31日食欲が著しく低下
し,飲水も不可能となり,8月2日家人の通報で
救急搬送された.来院時,意識混濁と高度徐脈と
QT延長を認め,血中リチウム濃度は3.35mEq/lと
重度中毒域を示した.直ちに心腔内ペーシングと
気管内挿管を行いCCU管理とした.ミオグロビ
ンの上昇と無尿があり,血漿交換とCHDFを行っ
た.入院2日後,心電図では洞調律に復し自尿
もあるため透析を終了していたが,終了後1時
間で紡錘型VTが出現した.硫酸マグネシウムの
静注にて速やかにVTは消失したが,その時の血
中リチウム濃度は1.01mEq/lと正常域であった.
CHDFを再開したところ循環動態は安定した.リ
チウム中毒に対してCHDFが奏功した症例を報告
する.
56) 静注アミオダロン投与による血中濃度およ
び心電図の経時的変化の検討
(徳山中央病院循環器内科) 木村征靖・
小川 宏・分山隆敏・岩見孝景・波多野靖幸・
望月 守・白石宏造・内田耕資
(山口大学保健学科) 清水昭彦
静注アミオダロン(AMD)投与による血中濃度
および心電図の経時的変化を検討した.対象は当
院にてAMDを投与した21例.方法はAMD投与1
日後,投与終了前,投与終了後1日目のAMD血
中濃度および心電図のRR間隔,QTcを測定した.
AMD血 中 濃 度 は 投 与 1 日 後 で389±159ng/ml,
平均8日間投与後には1205±303ng/mlと有意に上
昇し,投与終了1日後には440±180ng/mlと有意
に低下した.RR間隔は投与1日後には投与前に
比べ有意に延長(687±179vs816±145)し,平均
8日間投与後には投与1日後に比べ更に有意に延
長(816±145vs1078±222)し,投与終了1日後
は投与終了前と変化を認めなかった.QTcは投与
前に比し投与1日後では延長傾向にあった(439
±54vs470±46)が,投与終了前や投与終了後に
有意な変化はみられなかった.
58) ス ル ピ リ ド の 副 作 用 に よ るtorsades de
pointesの1例
(徳山中央病院循環器内科) 波多野靖幸・
小川 宏・分山隆敏・岩見孝景・木村征靖・
望月 守・内田耕資・白石宏造
症例は80歳女性.2008年7月25日より全身倦怠感
出現.7月28日,当科入院となった.心電図にて
心拍数40∼50/分の徐脈性心房細動を認め,QTc
584msとQT延長を認めた.血液検査にて血清カ
リウム2.45mEq/lであった.モニター心電図にて
torsades de pointes(TdP)が認められ,自然停
止した.近医にて投与されていたスルピリドを中
止し,塩化カリウムの持続点滴静注を行った.そ
の 後,QTc 360msとQT間 隔 は 正 常 化 し,TdPは
みられなくなった.8月6日,恒久的ペースメー
カ植え込み術を施行した.術後経過は良好である.
スルピリドの副作用,低カリウム血症,徐脈性心
房細動が原因でQT延長を来たし,TdPを生じた
1例を経験したので報告する.
59) Ensiteのcontact mappingに て 起 源 同 定 が
容易になった右室流入路起源期外収縮の一例
(鳥取県立中央病院循環器科) 菅 敏光・
吉田泰之・那須博司・遠藤昭博
症例は72歳,男性.主訴は動悸.動悸精査で近医
受診.心電図上心房粗動と心室期外収縮を認め,
アブレーション目的で当科紹介入院となる.心房
粗動は通常型粗動であり,三尖弁-下大静脈間狭
部に対する線状焼灼にて頻拍は停止した.心室期
外収縮に対してnon contact mapping systemを挿
入.Unipolarでは右室流入路からの出現を認めた.
同部位でのmappingでは起源が中隔心筋内と判断
され,その近傍までしかカテが移動できなかった.
His近傍でもあり,その出現部位を詳細にみるた
めcontact mappingへ切り替えた.最早期部位を
同定し,同部位で通電を施行,期外収縮は消失し
た.Bipolarはその心内膜出現部位の同定に有用
で,Unipolarはその起源部位方向を瞬時に見つけ
ることが可能であり両方を多用することでensite
使用は非常に有用であった.
57) 冠動脈造影で左心耳血栓を確認した一例
(広島市立安佐市民病院循環器科)
長沼 亨・土手慶五・加藤雅也・佐々木正太・
上田健太郎・河野康之・渡邉義和・梶川正人・
横山晴子
60) 異なる心拍数のAVNRTに房室結節三重伝
導路が関与していた症例
(県立広島病院循環器内科) 新谷由美子・
岡本光師・末田 隆・橋本正樹・岩本明倫・
岩崎年高・木下弘喜
77歳,男性.前立腺癌に対する放射線療法後腸炎
のため下血があり,内服で止血剤を投与されてい
た.冷汗を伴う心窩部痛が一度あり,GIFを施行
されたが異常なし.その後,かかりつけ医より狭
心症の疑いで当科紹介.心房細動を認め,経食道
エコーで左心耳内に櫛状筋に付着する17×11mm
大の血栓と左上肺静脈下に壁在血栓を認め,腹部
分枝への塞栓が疑われた.CAGでは有意狭窄や
塞栓所見はなかったが,左回旋枝から左心耳への
血流を認め,透視でもエコーと同様に左心耳血栓
を確認できた.抗凝固療法開始12日後にCAGを
再検すると,血栓は縮小していた.左心耳血栓
の標準的診断法は経食道エコーであるが,CAG
で確認できる例もある.心房細動症例に対する
CAG施行時には,左心耳への血流や血栓をも見
逃してはならない.
47歳,女性.20歳より頻脈発作があり,最近,発
作が頻回となり持続時間も長くなり,精査のため
入院.BCL600msec,550msecの房室伝導曲線で,
AH110→220msec,150→230msecおよび,AH310
→390msec,350→400msecの2段階のジャンプ
ア ッ プ を 認 め た.(1)AA230msec,AH195msec
(2:1AHブロック),(2)AA270msec,AH200msec
(1:1伝導),(3)AA360msec,AH290msec(1:1
AVnode伝導)の3種類の頻拍が誘発され,
(1)
(2)
がintermediate pathway,(3)がSlow pathwayを
伝導するAVNRTと考えた.slow pathwayに対す
るアブレーションで,いずれの頻拍も誘発されな
くなった.
呉阪急ホテル(2008 年 11 月) 967
61) 左房内に広範なscarを認めた心房粗細動の
一例
(心臓病センター榊原病院内科) 山地博介・
山田亮太郎・川村比呂志・佐藤慎二・
外山裕子・廣畑 敦・広瀬英軌・今井斎博・
大原美奈子・大河啓介・村上正明・村上 充・
山本桂三・妹尾恵太郎・石澤 真・日名一誠・
喜多利正・大江 透
症例は58歳男性.発作性心房細動の加療目的で入
院.心エコーでは左房拡大や器質的異常は認めず.
左房内mappingでは後壁に広範なscar を認めた.
Isoproterenol負 荷 下 でregular atrial tachycardia
が誘発された.CARTO mappingではLSPV-LAA
間のridgeをisthmusとするATと思われた.同部
でfractionated potentialを認めたため通電を行い
ATの停止を認めた.その後通常型心房粗動が誘
発され右isthmus ablationを行い心房粗動が停止.
最後にPVIを追加し心房粗細動が誘発されないこ
とを確認しsessionを終了した.術後6ヶ月間抗
不整脈剤なしで洞調律が維持されている.既往症
はなく左房内に広範なscarが存在していた稀有な
例であり興味ある一例と思われたため報告した.
62) 心サルコイドーシスの完全房室ブロックに
対してステロイド剤が著効した1症例
(広島大学循環器内科学) 門前まや・
岡田武規・宇都宮裕人・平位有恒・山本秀也・
西岡健司・荘川知己・蓼原 太・中野由紀子・
寺川宏樹・石田隆史・木原康樹
(村上記念病院) 山辺高司
症例は59歳,女性.2006年1月に皮疹が出現,胸
部X線で肺門リンパ節の腫大が認められた.皮膚
生検からサルコイドーシスと診断され経過観察中
であった.安静時心電図では1度房室ブロック
(AVB)のみであったが3月頃から労作時に眼前
暗黒感出現するようになり,ホルター心電図で一
過性の高度AVBを認め当院に紹介入院した.入院
後は安静時にも高度房室ブロックが出現するよう
になり,ペースメーカーの植込みを行った.次い
で,プレドニゾロン30mg/日の経口投与を開始し
たところ,3日後にはモニター心電図でAVBは消
失し,さらにトレッドミル運動負荷試験でもAVB
の出現を認めなかった.心サルコイドーシスに合
併したAVBに対するステロイド治療の有効性につ
いての一定の見解は得られていないものの,同治
療が著効した症例を経験したので報告する.
63) 進行性完全房室ブロックを認めた若年者の
一例
(岡山大学循環器内科) 川田哲史・
福家聡一郎・西井伸洋・永瀬 聡・幡 芳樹・
中村一文・森田 宏・草野研吾
【症例】21歳女性.生来健康であったが平成19年
2月机に座っていた時に失神し後ろ向けに転倒.
近医にて異常指摘されず経過観察となった.その
後も立ちくらみなど認め,平成20年4月職場検診
にて完全房室ブロックを指摘され精査目的にて当
院紹介となった.140cmと低身長であったがその
他特記すべき身体異常は認められ無かった.また,
心機能は良好であり,MRI,Gaシンチ,心筋生
検などでも器質的な異常は認められなかった.電
気生理検査ではHV blockが疑われペースメーカー
埋め込み術を施行した.若年者の進行性房室ブロ
ックの鑑別,治療などについて若干の考察を加え
報告する.
968 第 93 回中国地方会
64) 肺塞栓症を契機にtorsades de pointesを呈
した二次性QT延長症候群の一例
(福山市民病院) 山中俊明・渡辺敦之・
戸田洋伸・杉山弘恭・河合勇介・橋本克史・
寺坂律子・中濱 一・山田信行
症例は70歳男性.2週間前の旅行後より呼吸困難
が出現.近医での肺動脈CTにて肺血栓塞栓症を
認め当院紹介.低酸素血症,心臓超音波にて右
心負荷所見と肺高血圧所見を認めた.また,前
胸部誘導で陰性T波を伴う著明なQT延長(QTc
552ms)と心室性期外収縮を呈していた.血栓溶
解療法を開始したが,洞性徐脈と頻回なtorsade
de pointesを認めた.緊急一時ペーシング,血栓
溶解療法を継続施行し肺血栓と右心負荷所見は軽
度改善を認めたが,QT延長,洞性徐脈は残存し
たため植え込み型除細動器挿入術を施行した.現
在は呼吸状態も改善し,心房ペーシングで経過良
好である.今回,肺塞栓発症を契機にtorsade de
pointesを呈した一例を経験した.肺塞栓症によ
る突然死の原因の一つとして興味ある所見を呈し
た症例と考え,若干の文献を含めて報告する.
65) 当科でのペースメーカー手術におけるPTFE
シートの使用経験
(県立広島病院胸部心臓血管外科)
松浦陽介・濱中喜晴・三井法真・平井伸司・
佐藤克敏
ペースメーカー植込み術における植込み部のトラ
ブルに対し,PTFEシートが使用されることがあ
る.当科でも,過去3例にPTFEシートを使用し,
ペースメーカー植込み術を施行した.2例は,ペ
ースメーカー感染が疑われ,様々な対処を行った
後,最終的にPTFEシートを使用し改善が認めら
れた.1例は,金属アレルギーの既往があり,予
防的にPTFEシートを使用した.PTFEシートは
ペースメーカーアレルギー発症時に有用であると
されている.今回,自験例を元に,PTFEシート
の使用について,若干の文献的考察を加え報告す
る.
67) Heat shock protein(Hsp)70による心房筋
型Kv1.5チャネル増加作用と不整脈との関連
(鳥取大学再生医療学) 廣田 裕・越田俊也
(鳥取大学医学部附属病院循環器内科)
井川 修
(鳥取大学再生医療学) 久留一郎
心房筋は電位依存性Kチャネル(Kv1.5)が発現
し,抗不整脈薬の標的分子となる.我々はHsp
によるKv1.5蛋白の調節機構を明らかにするた
めに Kv1.5とHspを細胞に発現させ分子生物学的
および生理学的手法を用いて検討した.Hsp70,
HSF1はKv1.5蛋白発現を増加させ,これはKv1.5
蛋白の半減期の延長を伴う.Hsp70はKv1.5と細
胞内で結合し,小胞体,ゴルジ装置,細胞膜での
Kv1.5蛋白の量を増加させ,Kv1.5電流を増加させ
た.この現象は細胞膜への輸送阻害薬で消失した.
Hsp誘導薬であるGGAは心房筋Kv1.5を増加させ
た.ことから,Hsp70はKv1.5蛋白を安定化させる
ことが判明した.
68) 不整脈発生基質としての細胞間接着構成タ
ンパク異常̶モデル動物での検討
(山口大学器官病態内科学) 吉田雅昭・
大草知子
(岐阜大学循環病態学) 竹村元三
(山口大学器官病態内科学) 松h益‡
心筋細胞の介在板はadhesion junction(接着斑,
デスモゾーム)とgap junction(GJ)で構成され,
細胞間の機械的/電気的結合を維持する.これら
の構成蛋白異常と致死性不整脈の発生につき,心
筋症ハムスター(CMH)を用いて検討した.電
顕下では,CMHは6週齢より介在板は高度に回
旋状で,接着斑の部分的消失やデスモゾームの過
剰発現がみられた.肥大期(H)では接着斑を構
成するカテニンやZO-1の発現量減少がみられた.
GP構成蛋白のCx43はHで不変であったが,心不
全期(HF)に著明に減少した.致死性不整脈誘
発率は,H,HFで30%および100%であった.以
上より,adhesion junctionの変化はGJリモデリン
グに先行し,不整脈発生基盤となる可能性が示さ
れた.
66) 発熱時にBrugada型心電図を合併したWPW
症候群の1例
(岡山大学循環器内科) 池田悦子・
武田賢治・西井伸洋・永瀬 聡・幡 芳樹・
中村一文・森田 宏・草野研吾
(香川県済生会病院) 寒川睦子
69) 急性腹症で来院し,動脈造影,IVUSにて
孤立性上腸間膜動脈解離を観察し得た1例
(広島市立安佐市民病院循環器科)
渡辺義和・横山晴子・梶川正人・長沼 亨・
河野康之・上田健太郎・佐々木正太・
加藤雅也・土手慶五
症 例 は27歳, 男 性. 検 診 で 間 欠 性WPW症 候 群
(typeA)を指摘.気管支炎で発熱時に動悸発作
出現し発作性上室性頻拍H(R170bpm)を認めた.
洞調律復帰時(デルタ波なし)の12誘導心電図
はBrugada型心電図Type1であり精査加療目的に
当院紹介となった.平熱時の心電図ではBrugada
波形は認めなかったが,pilsicainide負荷では陽
性であった.電気生理学検査では僧帽弁輪前側壁
に副伝導路を認め,これを介した房室リエントリ
ー性頻拍が誘発されカテーテルアブレーションで
副伝導路を離断した.また右室心尖部からの早期
刺激にて心室細動が誘発された.アブレーショ
ン後pilsicainide負荷も陽性であった.発熱時に
Brugada型心電図を合併したWPW症候群の1例を
経験したので報告する.
【症例】51歳男性.突然発症の腹痛を主訴に救急
受診した.造影CT検査を施行したところ上腸間
膜動脈の限局性解離が疑われ,加療目的で入院し
た.直ちに降圧療法を開始し確定診断のため動脈
造影を施行した.上腸管膜動脈造影では起始部付
近より右肝動脈が分岐しており,その直後に潰瘍
を認めた.造影に引き続いてIVUSを施行したと
ころ解離腔は一部血流を認めるものの,ほぼ血栓
化しており血管径も保たれていたため引き続き降
圧療法のみで経過観察の方針とした.第14病日に
再度施行した動脈造影でも変化を認めなかったた
め,第17病日に独歩退院となった.急性腹症を引
き起こす循環器系疾患として動脈瘤切迫破裂や上
腸間膜動脈血栓症・解離などが挙げられる.特に
上腸間膜動脈解離は見落としやすく,詳細な病歴
聴取と造影CTの読影が必要である.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
70) 腹部大動脈狭窄と両側総腸骨病変合併例に
対して血管内治療を行った一例
(心臓病センター榊原病院循環器内科)
大河啓介・山本桂三・今井斎博・妹尾恵太郎・
山田亮太郎・石澤 真・大原美奈子・佐藤慎二
73) 当院における急性動脈閉塞症の治療成績
(倉敷中央病院心臓血管外科) 境 次郎・
小宮達彦・田村暢成・坂口元一・小林 平・
砂川玄悟・村下貴志・渡谷啓介・菅野勝義・
林 祥子・渡邊 隼・伊藤丈二
限局性の腹部大動脈狭窄(AS)はTSAC 2では
type Bに分類されている.今回両側の総腸骨動
脈(CIA)病変を合併した腹部ASに対して血管
内治療(EVT)を行った症例を経験したので報
告する.症例は59歳男性.急性心筋梗塞にて入
院.以前より左下肢の跛行あり,ABIでは左0.53,
右0.86と低下していた.CTにて限局性の腹部AS
と左CIAの慢性閉塞(CTO),右CIAの狭窄を認
め,EVTを行った.右大腿動脈より大動脈病変
にLUMINEXを留置した.病変部の圧較差は約
20mmHgであり,治療後に圧較差は消失した.続
いて左CIAのCTOおよび右CIAへのステント留置
を行った.以後症状は消失し,ABIも正常化した.
限局性の腹部ASへのEVTは,手術と比較して低
侵襲であり,本症例のようにCIA病変合併例でも
安全に施行できるため,治療の選択肢のひとつと
して示されるべきである.
【目的・対象】当院での2001年2月∼2008年7月
における急性動脈閉塞症62例について患者背景や
治療術式と早期成績を検討した.【結果】心房細
動合併は31例,ASO合併は28例であった.血栓除
去のみを施行した症例は52例,血行再建を追加し
た症例は6例であった.再灌流障害予防のために
術中瀉血を行った症例は14例,術後CHDFを施行
した症例は8例であった.コンパートメント症候
群を合併した症例は3例,下肢切断は3例,死亡
は1例であった.救肢症例ではCK 平均216IU/L,
最高23530IU/L,ミオグロビン平均376ng/mL 最
高36498ng/mLであった.【結語】発症後長時間
経過しても瀉血や血液浄化療法を施行することで
再灌流障害を回避し早期治療成績を向上させるこ
とが可能となる.
71) 大動脈炎症候群に合併した左鎖骨下動脈狭
窄に対して経皮的血管形成術を施行した1例
(福山市民病院循環器内科) 木原久文・
戸田洋伸・中濱 一・山中俊明・杉山弘恭・
河合勇介・渡辺敦之・橋本克史・寺坂律子・
山田信行
74) 人工血管感染の至適マネージメントを目指
して;下肢動脈バイパス術の9症例
(倉敷中央病院心臓血管外科) 伊藤丈二・
小宮達彦・田村暢成・坂口元一・小林 平・
砂川玄悟・村下貴志・渡谷啓介・菅野勝義・
渡邊 隼・林 祥子・境 次郎
【症例】66歳女性【主訴】左上肢倦怠感・疼痛【現
病歴】2002年頃より左上肢倦怠感,疼痛および胸
部症状を生じたため当院受診.左鎖骨下動脈狭窄
を伴う大動脈炎症候群と診断されステロイド内服
にて加療されていた.その後,症状の悪化および
MRA画像上,狭窄の進行を認めたため2008年8
月同部位に対する経皮的血管形成術を施行した.
右大腿動脈および左上腕動脈を穿刺し,順行性に
造影をしたところ左鎖骨下動脈に高度狭窄を認め
た.IVUSおよび病変前後の圧較差をモニターし
ながら,病変に対してステント留置術を施行した.
留置前後で圧較差80mmHg→0mmHgとなり,左
上肢の症状も改善した.大動脈炎症候群に合併し
た左鎖骨下動脈狭窄に対する経皮的血管形成術の
1例を報告する.
【目的】人工血管感染の管理には議論の余地があ
る.【方法】2000年から2007年で経験した9症例
を検討.【成績】平均年齢72.4歳,男性7例.原
疾 患 はASO 7 例, 他 2 例.Samson分 類( 人 工
血管感染の分類Grade1∼5)ではGrade3が5例,
Grade4が1例,Grade5が3例.起炎菌はMRSA
が最も多く6例.治療は全例で抗菌薬治療,人工
血管除去術が施行された.転帰は救肢6例,下肢
切断2例,死亡1例であった.感染の程度が重度
(血管吻合部に感染が及ぶ,敗血症),MRSAが起
炎菌の症例は予後不良の傾向があった.【結論】
感染の程度と微生物学的検査に基づいた迅速な診
断が重要で,人工血管感染に対する標準化された
治療指針が求められる.
72) 腸骨動脈閉塞症例に対する外科治療:両側
大腿動脈バイパス術vs大動脈−大腿動脈バイパス術
(倉敷中央病院心臓血管外科) 渡谷啓介・
小宮達彦・田村暢成・坂口元一・小林 平・
砂川玄悟・村下貴志・菅野勝義・林 祥子・
渡邊 隼・伊藤丈二・境 次郎
75) TcPO2とTcPCO2を用いた重症虚血肢の評価
(川崎医科大学胸部心臓血管外科)
久保裕司・正木久男・浜中荘平・南 一司・
稲垣英一郎・手島英一・種本和雄
目的腸骨動脈閉塞症例に対するF-F crossとAo-F
について遠隔成績をKaplan−Meier法にて比較検
討する.対象と方法1997年10月∼2008年2月まで
のF-F cross 112例,Ao-F 145例についてグラフト
開存率,生存率を比較検討した.結果術後の開存
率はAo-F症例で有意に良好であった(5年開存率
F-F cross 87.2%,Ao-F 96.0%)
.生存率はAo-Fで
有意に良好な結果を得た(5年生存率 F-F cross
63.4%,Ao-F 90.1%)
.考察F-F crossの症例はAo-F
に比べ高齢でDM,HDの合併症例が多く,生存
率における有意差の一因と考えられる.遠隔開存
率でも有意差があり,長期生存が期待できる症例
ではAo-Fが望ましいが,high risk症例などで低
侵 襲 手 術 が 望 ま し い 症 例 に お い て はF-F cross
bypassも有用であると思われる.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
重症虚血肢の客観的評価方法として,経皮的酸素
お分圧(TcPO2)がある.最近TcPO2と経皮的二
酸化炭素分圧(TcPCO2)が同時に測定する機器
を使用する機会があり,重症虚血肢の評価が可能
かを検討したので報告する.対象は閉塞性動脈硬
化症9例12肢,年齢平均76歳,全て男性.急性動
脈閉塞2例2肢,年齢83と81歳,全て男性.方法
は安静臥位10分,足背部でまずSPPを測定.その
後同部位でTcPO2,およびTcPCO2を測定した.
結果は虚血肢のTcPO2とSPPの関係においてr
=0.842と有意な相関を認め,虚血肢のTcPO2と
TcPCO2においてr=0.572と逆相関を認めた.T
cPO2とTcPCO2の同時時測定は,重症虚血肢の
評価に有用と考えられた.
76) SFA完全閉塞に対しての当科での治療成績
(松江赤十字病院循環器科) 角田郁代・
塩出宣雄・城田欣也・福田幸弘・加藤康子・
藤原 舞・三村麻郎
対象は2005年5月∼2008年6月に当科において浅
大腿動脈(SFA)に対し経皮的末梢血管インター
ベンション治療を受けた患者を対象とした.SFA
完全閉塞は18例21病変で,逆行性アプローチを試
みる以前患者初期成功率は87.5%であったが,逆
行性アプローチを施行開始した後患者初期成功率
は92.3%と増加していた.最近完全閉塞に対し逆
行性アプローチを試みた症例は5例であるが,成
功率80%であった.当科ではSFAに対し2005年12
月から逆行性アプローチを試みており,長い病変
長に対しても従来では穿通できなかった病変も通
過できるようになってきているため,以前に比し
成功率が増加していると考えられた.
77) Nitroglycerinによる頸動脈特性impedance
と起立性循環動態変化
(島本内科循環器科・皮フ科) 島本順子・
島本博幸
【目的】起立性循環動態を頸動脈圧と血流から解
析する.
【対象方法】虚血性心疾患10例を対象
とし,臥位から坐位への体位変換を行い,更に
nitroglycerin 0.15mg舌下後に体位変換した.1
心拍毎に同時記録した頸動脈血圧と頸動脈血流
のLissajous-hysteresis曲線を作製し,収縮期開始
4-10msecにおけるΔP/ΔQを特性impedance(Zc)
とした.平均血圧/血流から頸動脈抵抗(R)を
求めた.【結果】(1)体位変換にてZc,Rは共に
変化しなかった.(2)臥位にてnitroglycerinはZc
を低下した.引き続く体位変換ではZcとRは共に
増加した.体位変換においてZcとRは正相関し
た.【結語】Nitroglycerin後の体位変換によりZc
は増加し,収縮期血流が低下したことによりRが
増加したと考えられる.頭蓋内bridging veinの
collapsible tubeの関与が考えられる.
78) SFA病変に対するSMARTステントの使用
経験
(福山市民病院循環器内科) 河合勇介・
中濱 一・戸田洋伸・山中俊明・杉山弘恭・
渡辺敦之・橋本克史・寺坂律子・山田信行
【目的】当院におけるSMARTステントの治療成績
を検討した.【対象と方法】対象は2007年5月か
ら2008年7月の間に当院でSFA病変に血管内治療
を行った28症例のうちSMARTステントを留置し
た23症例,33病変.跛行症例が21例,重症下肢虚
血症例が2例で,TASC分類はA/B/C=9/14/10
であった.初期および中期の治療成績を検討した.
【結果】手技成功率は94%で,不成功に終わった
2病変は慢性完全閉塞で,ワイヤー不通過であっ
た.初期成績は,跛行症例は全例下肢症状,ABI
値の改善を認め,重症下肢虚血症例は2例とも救
肢できた.合併症は左上腕穿刺部に仮性動脈瘤を
生じ,外科手術を必要とした症例が1例あった.
【結論】適切な病変選択を行えば,SMARTステ
ントは浅大腿動脈病変に対して有効と思われた.
呉阪急ホテル(2008 年 11 月) 969
79) 健診を契機に発見されたミトコンドリア心
筋症の1例
(松江市立病院循環器内科) 岡田清治・
太田哲郎・村上林児・伊藤早希・清水弘治
(島根大学第4内科) 田邊一明
【症例】36歳,女性.【主訴】健診での心電図異常.
【既往歴】特記所見なし.【家族歴】母親 糖尿病,
狭心症.【現病歴】H19年1月の健診で心電図異
常を指摘されたため当院循環器内科を受診.最近
胸部不快感の自覚があり,5年前より健診にて聴
力障害を指摘されていた.【現症】血圧114/82
mmHg,脈拍64/分 整,胸腹部:異常所見無し.
神経学的異常所見無し.心電図:洞調律,II III
aVF V4-6 ST低下,陰性T波.胸部X線:CTR=45
%.心エコー:左室肥大,壁運動異常なし.心臓
カテーテル検査:冠動脈 有意狭窄なし.心筋生
検:空胞変性,異常ミトコンドリア(+)
.ミト
コンドリア遺伝子 3243変異 24%.上腕二等筋生
検:ragged red fiber.運動負荷時のピルビン酸の
異常上昇も認めた.以上よりミトコンドリア心筋
症と診断した症例を報告する.
80) Thr60Ala変異トランスサイレチン(TTR)
アミロイドーシスを姉妹で認めた症例
(島根大学内科学講座第四) 小谷暢啓・
安達和子・國澤良嗣・高橋伸幸・北村 順・
佐藤秀俊・石橋 豊
(島根大学医学部附属病院検査部) 吉冨裕之
(同病理部) 丸山理留敬
(信州大学脳神経内科,リウマチ・膠原病内科)
東城加奈・関島良樹・池田修一
(島根大学内科学講座第四) 田邊一明
症例は61歳の女性.59歳の時に胸部圧迫感と体重減少
を認めた.心電図でV1-3のQSパターンを認め,虚血
性心疾患が疑われた.しかし,MDCTでは冠動脈の有
意狭窄は認められなかった.また,心エコーで軽度の
左室肥大と拡張障害を,テクネシウムピロリン酸心筋
シンチで心臓への高度集積を認め,これらの所見から
心アミロイドーシスが疑われた.姉がThr60Ala変異
TTRアミロイドーシスで,TTR質量分析と皮下脂肪組
織免疫染色を施行した.その結果,同疾患であること
が判明した.本変異は左室の拘束性障害と房室ブロッ
クを起こしやすいとされている.また,アイルランド
北部とアメリカ東部などで発見されているが本邦では
近年,島根県や広島県など中国地方を中心に相次いで
発見されている.本変異の姉妹例について報告する.
81) 心内膜心筋生検において著明な脂肪浸潤を
認めたBrugada症候群の1例
(岡山大学循環器内科) 田中正道・
多田 毅・村上正人・平松茂樹・西井伸洋・
永瀬 聡・幡 芳樹・中村一文・森田 宏・
草野研吾
(岡山理科大学臨床生命科) 由谷親夫
【症例】50歳男性 失神の既往や突然死の家族歴
はなく,生来健康であった.平成20年1月に眼
前暗黒感を認め近医を受診し,心室性期外収縮
(PVC) と 第 3 肋 間 に てcoved型ST上 昇 を 認 め,
Brugada症候群疑いにて当院に紹介となった.心
臓MRI検査,心臓超音波検査で器質的な異常は認
めなかった.Pilsicainide負荷にて著明なST上昇
とPVCの増加を認め,電気生理学試験で心室細動
が誘発され,植え込み型徐細動器挿入術施行し退
院とした.心内膜心筋生検において,心筋に著明
な脂肪組織の浸潤を認めた.間質の線維化は軽度
であった.心内膜心筋生検において著明な脂肪浸
潤を認めたBrugada症候群の1例を経験したので
報告する.
970 第 93 回中国地方会
82) 超音波組織トラッキング法を用いた左室心
基部−心尖部の伸展開始時相と左室拡張機能の検討
(山口大学器官病態内科学) 田中健雄・
(山口大学医学部附属病院臨床検査部)
村田和也
(山口大学器官病態内科学) 原田耕志・
木原千景・吉野敬子・野瀬善夫・深川靖浩・
須佐建央
(山口大学医学部附属病院臨床検査部)
岸田由香里
(山口大学器官病態内科学) 奥田真一・
和田靖明・松h益‡
85) 心臓再同期療法により心機能が劇的に改善
した二次性心筋症の1例
(広島市立安佐市民病院) 梶川正人・
土手慶五・加藤雅也・佐々木正太・
上田健太郎・河野康之・長沼 亨・渡邉義和・
横山晴子
【方法】肥大型心筋症(HCM)25例,健常者(N)25
例を対象とし,心基部と心尖部の左室短軸断層像を一
心周期記録した.2D組織トラッキング法により,心
内膜面上に等間隔に指定した8点を自動追尾し,心基
部と心尖部での時間−内径短縮率曲線を得た.収縮末
期から左室内径が拡張末期径の40%に伸展するまでの
時間(T40)を心基部と心尖部で測定した.
【結果】N
群では心基部と心尖部でT40に差はなく,HCM群では
心尖部のT40 が延長し(p<0.0001)
,心尖部の拡張早
期時相の遅延がみられた.心基部と心尖部でのT40の
差と等容性弛緩時間が相関した(p<0.0001)
.
【結語】
肥大型心筋症では心尖部における拡張早期の伸展運動
が遅延しており,心尖部の左室伸展動態が,左室弛緩
能を規定していると考えられた.
症例は75歳女性.60歳頃より僧帽弁閉鎖不全のた
め近医で加療されていたが,NYHA IIIの呼吸困
難が出現したため当院に紹介された.入院時心電
図は完全左脚ブロックでQRS幅は180msecであっ
た.心エコー図で高度の僧帽弁閉鎖不全が認めら
れたが,腱索断裂や疣贅はなく左室拡張末期径は
72mm,左房径は42mmあり,左室はびまん性に
壁運動が低下し左室駆出率は23%であった.僧帽
弁閉鎖不全は心筋症による接合不全が原因と考え
られた.左室は著明な同期不全が認められ,薬物
療法に抵抗性のため心臓再同期療法の適応と判断
した.心臓再同期療法後,2年間の経過で僧帽弁
閉鎖不全が消失し,左房,左室径,左室駆出率は
正常化した.心臓再同期療法により心機能が劇的
に改善した心室内伝導障害による二次性心筋症の
1例を経験したので報告する.
83) ミトコンドリア心筋症にWPW症候群を合
併した1例
(岡山大学循環器内科) 木島康文・
西井伸洋・永瀬 聡・幡 芳樹・中村一文・
森田 宏・草野研吾
86) 心室頻拍(TdP)で発見された産褥心筋症
の一例
(呉医療センター循環器科) 西本織絵・
山下泰史・西山浩彦・松田守弘・田村 律・
川本俊治
症例は29歳男性.23歳時に糖尿病精査でミトコン
ドリア遺伝子3243変異を認め,ミトコンドリア糖
尿病と診断された.臨床病型はMIDD(maternally
inherited diabtes and deafness) を 呈 し て い た.
平成20年春に動悸発作を認め循環器内科受診な
り,心電図上WPW症候群と診断され入院となっ
た.入院後,電気生理学的検査及びカテーテルア
ブレーションを施行された.右側前中隔と側壁及
び束枝−心室間に計3本の副伝導路を認め,右側
前中隔と側壁の副伝導路の焼灼に成功した.終了
時,心電図上1度房室ブロック及びV4V5で小さ
なデルタ様の波型が残存していた.また,心筋生
検ではミトコンドリア心筋症に一致する所見が得
られた.今回,ミトコンドリア心筋症にWPW症
候群を合併しカテーテルアブレーションを施行し
得た1例を経験したので報告する.
1ヶ月前に分娩歴がある33歳女性.頻回の失神
を主訴に来院し,VT(TdP)を認めた.来院時,
徐脈および著明なQT延長,TdPを認めたが,一
時ペーシングでTdPは軽快した.左室壁運動は,
ごく軽度低下を認めるのみで,血栓症は認めなか
った.心筋生検にて産褥心筋症と診断した.第23
病日に退院となったが,その後もVTの再発はな
く経過は良好である.産褥心筋症は心不全や血栓
塞栓症で発見されることが多いが,VTで発見さ
れた稀な一例を経験したので報告する.
84) CRT後の遠隔期に心機能が著明に改善し
た拡張相肥大型心筋症の一例
(山口大学分子脈管病態学講座) 宮崎要介・
池田安宏
(山口大学器官病態内科学) 松h益‡
87) 発作性心房細動合併の拡張型心筋症に対
し,電気的肺静脈隔離術およびCRTD埋め込みを
行った症例
(倉敷中央病院循環器内科) 岡本陽地・
藤井理樹・辻本由紀・柴山謙太郎・齋藤直樹・
宮本真和・大鶴 優・山田千夏・今井逸雄・
田坂浩嗣・長谷川大爾・羽原誠二・田中裕之・
丸尾 健・川上 徹・廣野明寿・細木信吾・
福 康志・岡 直樹・加藤晴美・山本浩之・
後藤 剛・井上勝美・門田一繁・光藤和明
症例は59歳男性.1996年にHCMを指摘されたこ
とがある.2007年6月に呼吸困難で来院,LVDd
79mm,EF 10%, 壁 厚 は 全 周 性 に14mmと 肥 厚
し拡張相肥大型心筋症に伴う心不全と診断した.
ForresterIVの重症心不全状態で薬物療法に難渋
した.軽度のDyssynchronyに加え徐脈・NSVTを
合併しており,薬物療法を安全に行うためCRTD
植え込みを行った.植え込み直後はTMFが拘束
パターンから偽正常パターンに改善したが,その
他大きな変化はなく急性期のCRTによる効果は
乏しかった.さらにCRT開始3ヶ月後までは左室
径に変化なく心機能改善効果は限定的だった.し
かし,11ヵ月後にはLVDd 60mm,EF 55%と心機
能は著明に改善しBNPも正常化した.収縮期血
圧は70から110mmHgまで上昇した.CRT後の遠
隔期に左室がリバースリモデリングを呈した一例
を経験した.
【現病歴】1988年拡張型心筋症(DCM)と診断さ
れ,著明な低心機能(EF 10-20%)で心不全を繰
り返してきた58歳男性.今回心室頻拍(VT)
,心
不全にて入院.アミオダロン内服を開始したが,
発作性心房細動(PAF)を認めた.さらなる抗
不整脈薬では心機能低下が避けられないと判断
し,PAFに対し電気的肺静脈隔離術(PVI)を施
行.洞調律を維持することが出来,今後の心不全
の予防・予後改善のため,両心室ペーシング機能
付き埋め込み型除細動器(CRTD)を植え込み,
心機能の改善を認めた.
【結語】PAFを合併した
CRTDの適応のあるDCM患者において1st PVI,
2nd CRTD埋め込みの治療方針で,リード損傷な
どの合併症を起こすことなく治療を行うことが出
来,心機能改善を認めた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
88) 冠攣縮の関与が考えられた心室内血栓症の
1例
(広島大学病院循環器内科) 美濃達治・
三上慎祐・岡田武規・宇都宮裕人・山里 亮・
國田英司・北川知郎・平位有恒・西岡健司・
寺川宏樹・梶原賢太・小田 登・荘川知己・
中野由紀子・蓼原 太・山本秀也・石田隆史・
木原康樹
症例は50歳代女性で高血圧,糖尿病,高脂血症で
近医通院.200X年5月中旬,上司と言い争い後
胸痛を自覚し数時間持続.翌日から度々胸痛を自
覚し,6日後に当科を受診.心電図上1,aVL,
V3-V6でT波の陰転化を認め同日入院.心エコー
検査で心尖部の壁運動低下と同部位に20mm大の
壁在血栓を2個認めた.血液検査では心筋逸脱酵
素の上昇を認めず,心臓CT検査では冠動脈に有
意狭窄はなかった.入院後も胸痛発作を認め,冠
拡張薬にて軽快.心室内血栓症に対して抗凝固療
法を開始.13病日に施行の冠動脈造影で有意な狭
窄を認めず,冠攣縮誘発試験で左前下行枝に90%
のスパズムを誘発した.心エコー検査で心室内血
栓の消失を確認し第24病日に退院.本症の左室壁
運動低下には,経過よりたこつぼ型心筋症による
可能性も否定できないものの冠攣縮の関与も強く
考えられた.
89) 術中にSAMを認めたAS+HOCMの1治験例
(広島大学病態制御医科学講座外科学)
森藤清彦・岡田健志・高橋信也・高崎泰一・
黒崎達也・今井克彦・渡橋和政・末田泰二郎
HOCMの外科手術としてseptal myectomy
(Morrow
手術)などが行なわれている.我々はASとHOCM
合併例の術中にSAMを認めた1例を経験したの
で報告する.症例は76歳女性.術前心エコーでは,
大動脈弁圧較差約110mmHg,左室流出路圧較差
24か ら48mmHgで あ っ た. 大 動 脈 弁 置 換 術 と
Morrow手術を施行した直後にSAM(収縮期前方
運動)による重度僧房弁逆流を認めた.体外循環
からの離脱が難しいと判断して僧房弁置換術を追
加した.術後経過は良好であった.
90) 急性心膜炎に心タンポナーデを合併し心機
能低下をきたした1症例
(倉敷中央病院循環器内科) 齋藤直樹・
羽原誠二・丸尾 健・福 康志・山本浩之・
門田一繁・光藤和明
(同心臓血管外科) 渡邊 隼・小林 平・
小宮達彦
【症例】26歳女性.入院3日前から徐々に増悪す
る胸背部痛を認め,体位変換や深呼吸で増悪する
ため救急を受診.血行動態は安定していたが,心
電図で低電位,ST上昇,心臓超音波検査にて全
周性に浮腫様の壁肥厚,心嚢液貯溜を認め,心筋
心膜炎疑いにて入院とした.経過中心筋逸脱酵素
の上昇認めなかったが,壁運動は全体に低下(EF
28%)
,さらに外頚静脈怒張,尿量低下,中心静脈
圧上昇(18mmHg),収縮期血圧低下(60mmHg)
を認めた.以上からタンポナーデと診断し,剣状
突起下ドレナージにて心嚢水を排除(漿液性:150
ml).治療後から急速に心機能改善を認め,術後
5病日には心機能,形態ともにほぼ正常化した.
心タンポナーデを解除後に急速に心機能改善を示
した急性心膜炎の症例を経験したので報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
91) 脾梗塞で発症し無症候性脳梗塞を合併した
感染性心内膜炎の一治験例
(広島大学病院心臓血管外科) 中島一記・
渡橋和政・黒崎達也・今井克彦・末田泰二郎
【目的】急性腹症として紹介され,無症候性脳梗
塞が手術時期に影響した1症例を報告する.【症
例】24歳女性.1,2か月前より38度台の弛張熱
を認めていたが,原因不明であった.突然腹痛
が出現し,近医より急性腹症として紹介された.
CTで脾梗塞を認め,塞栓源検索の心エコーで僧
帽弁に疣贅,高度逆流を認め,感染性心内膜炎と
診断した.PC-Gを開始し,CRP陰性となった時
点で僧帽弁手術を予定したが,手術前日の頭部
MRIで亜急性期の無症候性小脳梗塞を認め,手術
を1週間延期した.僧帽弁形成術を行い,良好な
術後経過であった.【考察,結語】塞栓源として
診断された感染性心内膜炎の1例を報告した.体
外循環による脳出血を回避するため,手術直前の
頭部MRIは重要であると考える.
92) 診断・治療に苦慮した感染性心内膜炎の一
症例
(岩国医療センター) 福永 寛・大澤和宏・
河野晋久・鈴木秀行・吉田雅言・
田中屋真智子・竹内一文・高橋夏来・
岩崎 淳・片山祐介・白木照夫
症例は63歳女性.平成20年1月より体調不良を自
覚.3月中旬近医にて心不全と診断され入院する
も3日後失禁・痙攣発作あり,脳血管障害疑われ
当院紹介となった.頭部精査では異常所見認めず
脳血管障害は否定された.入院当初よりCRPは4
~ 7mg/dlで推移し各種検査行うも原因は不明で
あった.第33病日心エコーで初めて僧帽弁前尖に
vegitationを認め,経食道エコーでも確認できた.
血液培養からStreptococcus sanguisが検出され感
染性心内膜炎と診断し得た.頭部MRIにて多発性
脳塞栓症・一部小出血巣を認め,脳血管撮影にて
感染性脳動脈瘤が確認された.抗生剤にて長期保
存的加療後第110病日動脈瘤切除術を施行し,状
態安定後第149病日僧帽弁置換術を施行した.感
染性脳動脈瘤を併発した感染性心内膜炎症例につ
いて若干の文献的考察を交えて報告する.
93) Bentall術後感染性心内膜炎の一例
(川崎医科大学附属病院) 鎌田康彦・
根石陽二・大倉宏之・川元隆弘・林田晃寛・
林 秀行・古山輝將・土谷哲生・和田希美・
吉田 清
【症例】73歳男性【現病歴】2007年10月9日AAE,
ARに 対 し て 当 院 でBentall術(carrel patch CEP
21mm)施行.2008年4月28日頃から発熱が出現
し近医を受診.CRPは10mg/dlであったが5月1
日の経胸壁心エコー図では明らかな異常は認め
ず.5月17日の血液培養から表皮ブドウ球菌が検
出,5月22日の経胸壁心エコー図で弁座の動揺,
弁周囲膿瘍を認め同日当院に搬送となった.【入
院後経過】当院入院時の心エコー図では大動脈弁
周辺に最大1.7cmの膿瘍を認め,心周期に一致し
て弁座の動揺を認めた.短軸像では6時から12時
方向に弁輪と人工弁との間に幅広い離開を認め異
常血流が確認された.感染性心内膜炎と診断し,
感受性のあるVCMの投与を続けるが炎症反応の
改善なく発熱も持続.Bentall術後の人工弁感染
のためhomograft AVR予定となり6月5日転院と
なった.
94) 当院における最近5年間の感染性心内膜炎
の検討
(岩国医療センター循環器内科)
田中屋真智子・河野晋久・斎藤大治・
白木照夫・片山祐介・岩崎 淳・高橋夏来・
竹内一文・大澤和宏・吉田雅言・鈴木秀行
(同心臓血管外科) 村上貴志・大谷 悟・
山本 剛・錦みちる
当院における最近5年間の感染性心内膜炎(IE)
につき検討した.対象は2004年4月∼2008年8月
の17例.男女比12:5,年齢29歳∼82歳.罹患部
位は自己弁9例(大動脈弁5例,僧帽弁4例),
人工弁5例(大動脈弁4例,大動脈弁僧帽弁1例),
その他2例,不明1例.起炎菌は不明2例,Staphylococcus 6例,うちMRSA 1例,Streptococcus
5例,Enterococcus faecalis 1例,その他3例.
感染経路は歯科治療3例,化膿性関節炎1例,消
化器疾患1例,不明12例.IEに対する外科治療
施行例は10例でいずれも軽快退院.死亡3例は全
例保存的加療例で,全身状態不良のため手術不可
能な症例であった.臨床所見として塞栓症を9例
に認め,うち7例は脳梗塞であった.
95) 急性髄膜脳炎と細菌性眼内炎を来たした大
動脈弁位感染性心内膜炎の1症例
(中国労災病院) 石井 修・季白雅文・
田村健太郎
髄膜炎・出血性脳梗塞・内因性眼内炎を合併した
大動脈弁位心内膜炎の一例を経験した.症例は46
才男性,発熱と見当識低下にて髄膜脳炎疑われ入
院.血液培養陽性,頭部MRIで脳皮質の炎症,梗
塞所見を認めた.意識清明となるも軽度の右麻痺,
構語障害が残存.経過中の心エコーで,大動脈弁
に疣贅を認め,感染性心内膜炎と診断.脳梗塞急
性期の為手術待機としたが,急な肺鬱血出現,左
冠尖の弁腹逸脱を認め逆流高度となった為,緊急
に大動脈弁人工弁置換術施行した.術後,視野の
ぼやけを訴え軽度の内因性細菌性眼内炎と診断さ
れた.脳梗塞急性期の心内膜炎手術の時期には未
だ論議があるが,迅速に対応する準備が最も重要
と思われた.内因性眼内炎は稀な合併症だが,重
症では眼球摘出が必要となり,考慮すべき合併症
と思われた.
96) Neisseria mucosaによる亜急性感染性心内
膜炎の1例
(鳥取県立中央病院) 那須博司・吉田泰之・
菅 敏光・遠藤昭博
【症例】54歳;女性【既往歴】僧帽弁逸脱症(後
尖)と診断されてた.【現病歴】平成20年5月初
旬より発熱が続き,当院循環器科に心内膜炎疑
いで紹介.
【経過】心エコー上,僧帽弁逸脱逆流
部 に3-7mm径 のvegetationを 認 め た た め, 同 日
入院とした.起炎菌はNeisseiria mucosaであっ
た.PenicillinGで治療を開始したが,CRPの陰性
化が得られなかった.CTX+GMに変更してよう
やく緩やかなCRPの低下を認めた.心エコー上は
vegetationの縮小傾向はなかった.治療効果不十
分で,約40日後に準緊急手術とした.【考察】同
菌は報告によると,予後不良,化学療法の反応も
不十分な症例が半分以上に認められる.【総括】
同菌は緑色連鎖球菌によるものより難治性の印象
を受けた.
呉阪急ホテル(2008 年 11 月) 971
97) 脳梗塞を契機に発見された転移性心臓腫瘍
の一例
(徳山中央病院循環器内科) 望月 守・
小川 宏・分山隆敏・岩見孝景・木村征靖・
波多野靖幸・白石宏造・内田耕資
症例は50歳女性.平成20年5月9日に左上肢・顔
面のしびれを認め,翌日近医のMRIにて両側大脳
半球・右小脳に梗塞像を認め,精査加療目的にて
当院紹介入院となった.既往歴として2年前に食
道癌の手術を施行されている.入院後,脳梗塞に
対して加療を行い,原因精査目的にて施行した
TTEおよびTEEにて左房内にmassを認めた.脳
梗塞の原因は左房内血栓が原因と考え抗凝固療法
を開始したが,食道癌の再発による左房内浸潤も
疑い,胸部造影CT検査を施行.縦隔の再発部と
考えられる軟部影の左房内浸潤を認めたが,Ga
シンチグラフィでは腫瘍陰影は否定的であったた
め,GIFおよびPETを施行し,再発食道癌の心臓
転移と診断した.脳梗塞を契機に発見された転移
性心臓腫瘍の一例であり,若干の考察を加え報告
する.
98) 右室流出路に狭窄をきたした右室腫瘍の1例
(広島市立広島市民病院心臓血管外科)
加藤秀之・吉田英生・久持邦和・柚木継二・
毛利 亮・鈴木登士彦・小林純子・大庭 治
【症例】57歳女性.検診で心雑音と心電図上不完
全右脚ブロックを指摘され,近医受診した.心エ
コーにて右室腫瘍と診断され,当院を紹介受診し
た.腫瘍は40mm大で右室流出路前壁に存在し,
右室流出路狭窄をきたしていた.
【手術】人工心
肺下に手術を行った.右室流出路前壁に軟で表面
平滑な40×30mm大の腫瘍を認めた.腫瘍を切除
し,欠損部に自己心膜を2重にして縫合し右室流
出路を形成した.迅速病理検査でhemangiomaの
診断であった.
【経過】術後経過は良好で,翌日
ICUを退室した.病理検査の最終診断はCavernous
hemangiomaであった.心エコーで右室流出路狭
窄は消失し,PRもtrivialのみであった.術後14日
目に退院となった.
【結語】稀な右室のhemangioma
に対して腫瘍摘除及び自己心膜を使った流出路再
建を行い良好な経過を得た.
99) 当科における開心術後,late tamponade症
例の検討:術後,抗凝固療法の再考
(島根県立中央病院心臓血管外科)
山内正信・南野安正・北野忠志・中山健吾
1999年の新病院移転から現在まで行った冠動脈バ
イパス術と心臓弁膜症手術355例中,9例(2.5%)
にlate tamponadeが発症した.男4例,女5例で,
年 令 は 15-80 才,on-pump CABG3 例,off-pump
CABG2例,弁置換3例,LMCAパッチ拡大1例
で,ドレナージ時期は,術後4-57日(中央値7日)
であった.術後の最低血小板数は1.1-5.8万/m3,
APTT時間延長を認めたものが4例であった.ま
た,ドレナージ時にヘパリン点滴6例,ワーファ
リン内服3例,抗血小板剤内服6例であった.9
例中6例が,術後,抗凝固療法を厳しく行うよう
になってからの症例であり,術後の抗凝固療法に
関し再検討が必要と思われた.
972 第 93 回中国地方会
100) 肺線維症と肺静脈閉塞症との鑑別診断が困
難で,治療に難渋した肺高血圧症の一剖検例
(広島大学循環器内科学) 岡 俊治・
岡田武規・宇都宮裕人・山本秀也・西岡健司・
荘川知己・蓼原 太・中野由紀子・寺川広樹・
石田隆史・木原康樹
(土谷総合病院心臓血管センター) 林 康彦
症例は67歳の男性.1999年頃から労作時呼吸困難
が出現し,近医呼吸器内科にて通院加療されてい
たが症状は次第に増悪した.2004年原発性肺高血
圧症を疑われ他院循環器内科に転院しベラプロス
ト内服や在宅酸素療法などの加療を継続したが,
呼吸困難は次第に増悪し(NYHA3),ボセンタン
内服,エポプロステノールの持続静注療法が導
入された.しかし,症状はNYH4に増悪し,胸部
CTで肺野の限局性スリガラス状陰影を認め肺静
脈閉塞症(PVOD)も疑われたため,2007年7月
に当院へ転院した.入院後エポプロステノールの
積極的な増量,シルデナフィルの導入を行ったが
改善無く2007年8月25日死亡した.臨床経過から
PVODによる肺高血圧症が考えられたものの,剖
検では肺線維症に続発する肺高血圧症を示す所見
であった.
103) ベラプロストにボセンタンとシルデナフィ
ルを併用し,短期的に著効した重症特発性肺動脈
性肺高血圧の2例
(岡山大学循環器内科) 福家聡一郎・
川田哲史
(岡山医療センター) 森あい子
(岡山大学循環器内科) 西井伸洋・
永瀬 聡・幡 芳樹・中村一文・森田 宏
(愛媛県立中央病院) 垣下幹夫
(岩国医療センター) 河野晋久
(岡山大学循環器内科) 草野研吾
【症例1】33歳女性,2007年1月発症.WHO 2度,BNP
423.9pg/ml, 肺 動 脈 圧86/32/55mmHg, 心 係 数1.6l/
min/m2.ベラプロスト180μgに加え,ボセンタン125
mg,シルデナフィル75mg導入し,1ヶ月後には平均肺
動脈圧43mmHgに改善した.しかし,2007年11月に肺
高血圧の増悪によりエポプロステノールの導入が必要
となった.
【症例2】33歳女性,2007年12月発症.WHO
2度,BNP 306.8pg/ml,肺動脈圧111/45/69mmHg,心
係数1.5l/min/m2.ベラプロスト60μgに加え,ボセン
タン125mg,シルデナフィル75mg導入し,4ヶ月後に
は平均肺動脈圧37mmHgに改善した.
【まとめ】2例と
も初診時よりエポプロステノールの適応であり積極的
に勧めたものの同意が得られず,経口薬での加療とな
った.短期的に著効した重症特発性肺動脈性肺高血圧
の2例を経験したので報告する.
101) 日常の生活様式が発症の誘因となった肺血
栓塞栓症の一例
(広島市立安佐市民病院循環器科)
東 昭史・土手慶五・加藤雅也・佐々木正太・
上田健太郎・河野康之・長沼 亨・渡邉義和・
梶川正人・横山晴子
104) 難治性肺静脈閉塞性肺高血圧症(PVOD)
に対しイマチニブが著効した1例
(岡山医療センター) 小倉可奈子・
大西由佳里・重歳正尚・森あい子・溝口博喜・
木村英夫・宮地晃平・宗政 充・宮地克維・
藤本良久・松原広己・三河内弘
肺血栓塞栓症は本邦でも増加傾向にあり,「旅行
者血栓症」が注目されているが,日常生活の中に
もリスクは存在する.今回,日常の生活様式が発
症の誘因となった肺塞栓症の一例を経験したので
当院の近年の肺塞栓症の動向とともに報告する.
【症例】67歳男性.起床時に呼吸困難感が出現し
軽快ないため来院した.頻呼吸,頻脈,下肢の腫
脹を認め,検査では低酸素血症,D-dimer高値で
あった.造影CT検査で肺血栓塞栓症と診断した.
抗凝固療法,血栓溶解療法により肺動脈圧は正常
化し症状は改善した.再発リスクがあるため下大
静脈フィルターを留置し,抗凝固療法を継続して
退院した.本症例のように特殊な状況下でなく,
肥満,不規則な生活,長時間の座位での仕事とい
った日常の生活習慣に発症の誘因が存在する肺塞
栓症が近年増加している.
PVODの予後は非常に不良であり肺高血圧の一般
的治療では改善が困難である.我々はイマチニブ
により肺高血圧の著明な改善を認めたPVODを経
験したので報告する.症例は54歳男性.2004年頃
より労作時呼吸困難を自覚.2005年に症状増悪,
前医精査にて原発性肺高血圧症と診断.在宅酸
素,ボセンタン・シルデナフィル等内服にて加療
継続するも病状悪化,2008年6月に当科紹介入院.
98/29(58)mmHgと 著 明 な 肺 高 血 圧,DLCOの
低値,HRCT上小葉間隔壁の肥厚を認めたこと等
よりPVODと診断した.エポプロステノールを導
入するも2ng/kg/minの投与で著明な肺うっ血を
来し投与継続困難となり漸減中止.イマチニブ
100mg/日開始にて投与3日で全身状態の著明な
改善を認め,約1ヵ月後の右心カテーテル検査に
て肺動脈圧は70/30(45)mmHgまで低下しBNP
も正常化した.
102) 肺静脈性肺高血圧症と診断し得た1症例
(岩国医療センター循環器内科) 岩崎 淳・
河野晋久・鈴木秀行・吉田雅言・大澤和宏・
竹内一文・高橋夏来・田中屋真智子・
片山祐介・白木照夫・斎藤大治
105) ヘパリン投与が困難であった子宮筋腫に合
併した肺塞栓症の2症例
(中国労災病院内科) 寺岡尚子・榎野 新・
本藤達也・松田圭司・西楽顕典・木阪智彦
症例は45歳女性.主訴は呼吸困難.1977年より統
合失調症と診断され近医精神科にて定期加療中で
あった.2000年労作性呼吸困難を主訴に近医を受
診.原発性肺高血圧症(PPH)と診断され,カル
シウム拮抗剤,Epoprostenol,在宅酸素療法を導
入された.2006年に右心負荷増悪のため当院へ紹
介入院.Pimobendan,Bosentanの導入にて経過
は良好であったが,同年12月よりBNPの上昇を
伴う呼吸苦が再燃し,2008年2月に永眠された.
剖検にて肺血管の動脈性変化は少なく静脈の閉塞
像を認めたため,病理学上肺静脈性肺高血圧症
(PVOD)と診断し得た.PVOD診断症例はPPHと
診断された患者中10%と報告されており診断に至
ることは稀である.PVOD剖検像を文献を含めて
報告する.
【症例】2例ともに45歳女性.どちらの症例にも
多発性肺塞栓症に対して,下大静脈フィルター留
置と,ヘパリン投与を行った.症例1はHITを合
併したが,ヘパリンの中止とアルガトロバンの投
与で改善した.原因となった巨大子宮筋腫に対し
て子宮動脈塞塞栓術を施行した.症例2は多発性
子宮筋腫による性器出血のためヘパリン投与が困
難となり,子宮摘出術を施行した.
【まとめ】ど
ちらの症例も子宮筋腫を原因とした肺塞栓症であ
った.本来治療に不可欠なヘパリンの投与で困難
な状況に陥ったが,適切な対応により軽快退院し
得た.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
106) 当院における深部静脈血栓症・肺血栓塞栓
症の臨床的特徴
(広島大学病院循環器内科) 三上慎祐・
寺川宏樹・西岡健司・光波直也・岡田武規・
宇都宮裕人・岡 俊治・山里 亮・國田英司・
北川知郎・藤村憲崇・藤井雄一・荘川知己・
中野由紀子・蓼原 太・山本秀也・石田隆史・
木原康樹
【目的】当院における深部静脈血栓症(DVT)お
よび肺血栓塞栓症(PTE)の臨床的特徴について
まとめること.【方法】当院で2007年8月からの
1年間で経験したDVT10例,PTE16例の計26例
(男性13例,平均年齢61歳)について臨床的背景
についてまとめた.【結果】基礎疾患は悪性疾患
16例,整形外科疾患2例,産婦人科2例,精神科
1例,その他5例であった.悪性疾患群(A群)
16例 と 非 悪 性 疾 患 群(B群 )10例 に お い てPTE
の合併頻度は同等であったが,IVC filterの使用
頻度がA群において高い傾向にあった(75% vs.
50%)
.【結論】当院で最近経験したDVT・PTE症
例では基礎疾患として悪性疾患の合併が多く,か
かる症例においてIVC filterの使用頻度が高い傾
向にあった.
107) IIIa型急性大動脈解離を合併した高齢者腎
動脈下腹部大動脈瘤に対する一手術例
(岡山中央病院循環器センター心臓血管外科)
古川博史
(同循環器内科) 青野 準・長町恵磨・
寒川昌信・岩崎孝一朗
症例は82歳女性.約1週間前より続く背部痛を主
訴に来院.造影CT上,偽腔開存型IIIa型大動脈
解離と中枢側高度蛇行を伴った最大径約6cmの
腎動脈下腹部大動脈瘤(AAA)を認めた.降圧
療法にて解離発症急性期を回避し,発症後40日目
にAAAに対してY字型人工血管置換術を行った.
IIIa解離は術前後で最大径約4.5cmと著変なく拡
大傾向を認めなかった.AAAの動脈壁は病理組
織学検査にて動脈硬化性を示唆するものであっ
た.IIIa型急性大動脈解離発症により発見された
AAAに対して,降圧療法にて解離発症急性期を
回避し,安全に手術を行うことができた.また動
脈硬化性AAAの中枢側高度蛇行によりIIIa解離の
進展が抑えられたと推測され,若干の文献的考察
を加え報告する.
108) Bentall原法術後に再解離をおこし手術を
施行した一例
(倉敷中央病院循環器内科) 山田千夏・
丸尾 健・福 康志・山本浩之・辻本由紀・
柴山謙太郎・齋藤直樹・宮本真和・大鶴 優・
岡本陽地・今井逸雄・田坂浩嗣・長谷川大爾・
羽原誠二・田中裕之・川上 徹・廣野明寿・
細木信吾・岡 直樹・加藤晴美・藤井理樹・
後藤 剛・井上勝美・門田一繁・光藤和明・
小宮達彦
72歳男性.19年前にDeBakeyΙ型大動脈解離に対
してBentall原法を施行した.その後経過観察中
に徐々に上行大動脈が拡張し,CTで大動脈解離
再発を認めたため当院紹介となった.経胸壁心エ
コーで左冠動脈入口部の瘤化および解離腔との穿
通を認めた.グラフト末梢側がリングを用いて吻
合されていたが,固定不全となり逆行性解離をき
たしていたため,再手術を行った.人工血管を切
断したところ,血管内膜に2ヶ所交通孔があり左
冠動脈の尾側にトンネル形成し,一部冠動脈口に
穿孔をきたしていた.左冠動脈口は人工血管の穴
が大きく瘤化していた.Bentall原法の遠隔期の
合併症として,稀ではあるが縫合不全に伴う出血
や偽性動脈瘤が起こりうるため,長期間経過した
後でも,経過観察が必要である.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
109) 感染性総腸骨動脈瘤破裂の一例
(済生会山口総合病院外科) 伊勢川健吾・
斎藤 聰・池田宜孝・郷良秀典・古川昭一・
小田達郎
75歳男性.以前より,関節リウマチに対してステ
ロイドとレミケードによる加療がなされていた.
2008年2月初旬より39度の発熱,左股関節痛が出
現し,改善しないため2月7日に当院内科入院と
なった.造影CTで左感染性総腸骨動脈瘤破裂と
腸腰筋膿瘍と診断され外科転科,緊急手術となっ
た.femoro-femoral crossover bypassの後,開腹
にて瘤切除と膿瘍ドレナージが施行された.術後
は人工呼吸管理下に集中治療を行い,感染症対策
として一ヶ月間の抗菌薬の経静脈的投与の後,経
口投与に切り替えた.術前の血液培養と術中標本
の瘤壁と血腫からサルモネラ菌が検出された.術
後は経過良好で3月11日に退院となり,現在まで
感染の再燃は認めていない.
110) A型急性大動脈解離手術における中枢側吻
合の工夫(prosthesis insertion technique)
(津山中央病院心臓血管外科) 松本三明・
末廣晃太郎・久保陽司
われわれは,A型急性大動脈解離手術時の中枢
側吻合にprosthesis insertion techniqueを行って
いる.ST junction直上約2cmで大動脈を離断し,
中枢側解離腔をGRFで閉鎖した後,大動脈内径と
同サイズの人工血管を挿入する.そのedgeを大
動脈弁交連部に覆い被せるように各3カ所を4-0
proleneを用い,大動脈外側にフェルトをおいて
固定する.その後各交連間を水平マットレスにて
縫合する.末梢側人工血管吻合を行い末梢側潅流
が開始された後に,中枢側人工血管と,先に断端
形成を行った人工血管の水平マットレス直上で連
続吻合を行う.2006年6月から2008年5月までの
A型急性大動脈解離手術14例に対して検討を行っ
た.
111) 早期血栓閉塞型Stanford A型大動脈解離2
例の治療経験
(川崎医科大学胸部心臓血管外科)
湯川拓郎・浜中荘平・南 一司・田淵 篤・
柚木靖弘・稲垣英一郎・久保裕司・正木久男・
種本和雄
早期血栓閉塞型大動脈解離に対する治療方針は未
だ議論の余地がある.今回我々は異なる経過を示
した血栓閉塞型大動脈解離の2例を経験したので
報告する.症例1は63歳女性.胸部不快感にて発
症し,A型大動脈解離早期血栓閉塞型と診断され
当院へ救急搬送された.来院時心タンポナーデ,
shock vitalであったため緊急に上行半弓部置換術
を施行した.症例2は53歳男性.胸背部痛にて発
症しCTにてA型大動脈解離早期血栓閉塞型と診
断された.最大短径42mm,偽腔径5mm,大動
脈弁逆流なく心嚢液貯留もないため保存的治療を
開始した.発症10日目のCTにて偽腔の拡大を認
めたため,準緊急に上行半弓部置換術を施行した.
術後経過はいずれも良好であった.早期血栓閉塞
型大動脈解離の当院での治療方針について検討を
加え報告する.
112) transforming growth factor-β receptor
(TGFBR)遺伝子の変異を認めた非Marfan症候群
の家族性大動脈解離
(山口大学心臓外科) 鈴木 亮・美甘章仁・
佐藤正史・村上雅憲・小林俊郎・白澤文吾・
濱野公一
大動脈解離が家族内に多発する疾患としてMarfan
症候群が知られている.しかし,非Marfan症候
群の家系においても家族性大動脈解離を認めるこ
とがある.その原因の一つとしてtransforming
growth factor-βreceptor(TGFBR)遺伝子の変異
が報告されている.我々は,非Marfan症候群の
家族性大動脈解離の父子を経験し,子にTGFBR1
遺伝子の変異を認めた.父は55歳,子は38歳時,
急性大動脈解離に対して緊急でBentall型手術を
施行した.今後,結合組織疾患を示唆する身体的
特徴を有さない非Marfan症候群の解離症例に対
するTGFBR遺伝子の解析が,家族性大動脈疾患
の予測,診断の一助となることを期待する.
113) 胸腹部大動脈解離に上腸間膜動脈解離を合
併した1例
(岡山医療センター循環器科) 青木 健・
溝口博喜・松原広己・藤本良久・宗政 充・
宮地克維
(同心臓血管外科) 岡田正比呂・中井幹三・
加藤源太郎
80歳男性.突然の胸背部痛が出現したため近医に
救急搬送された.大動脈解離及び腹部大動脈瘤と
診断され,当院に緊急転院となった.解離は大動
脈弓三分枝直後から腎動脈直上に及び,腹腔動脈
は偽腔より出ていたが分枝の閉塞は認められず,
入院後血圧コントロールにて保存的治療を行っ
た.入院2日目,新たに腹痛が出現したため,造
影CTを施行したところ,上腸間膜動脈にも解離
が及んでいることが確認された.血便も認め,腸
管虚血が危惧されたため,緊急的手術を行った.
術中,小腸及び大腸に壊死性変化は認められず,
右外腸骨動脈−上腸管膜動脈バイパス術を施行し
た.術後,バイパスの血流は良好であり,また腸
管壊死も認めず,順調に経過したため,入院17日
目に退院となった.
114) 当科におけるEVARの現況
(広島市民病院) 柚木 継・小林純子・
加藤秀之・鈴木登士彦・毛利 亮・久持邦和・
吉田英生・大庭 治
【はじめに】腹部大動脈瘤の新しい治療としてス
テントグラフト製品が認可され,当院でも昨年12
月より導入した.以前は年間60人前後の開腹手術
をしてきたが,平成19年12月から平成20年8月現
在までの期間では,開腹術41例・EVAR19例とな
っている.EVAR開始当初は全身麻酔で施行して
きたが,現在では硬膜外麻酔で施行し,当日夕よ
りの食事開始・翌日よりの歩行・術後7日目退院
のクリニカルパスを用いている.【結果】手術時
間・出血量・造影剤は平均112分,139ml,102ml
であり,術中追加処置を2名(コイル・PTRA)
に施行した.また現在慢性期Type2を1例に認め,
コイル予定である.術後も経過観察が必要である
が今後も必要な治療と考え施行して行く予定であ
る.
呉阪急ホテル(2008 年 11 月) 973
115) 非リウマチ性心房細動におけるC-reactive
Proteinと大動脈弓部動脈硬化性プラークとの関連
(川崎医科大学) 前濱智子・大倉宏之・
今井孝一郎・山田亮太郎・齋藤 顕・
宮本欣倫・尾長谷喜久子・和田希望・
林田晃寛・根石陽二・川元隆弘・吉田 清
【背景】大動脈弓部の動脈硬化性プラーク(AoP)
は炎症と関連していることが報告されている.
【目
的】非リウマチ性心房細動例(NVAF)における
大動脈弓部AoPと炎症マーカーであるCRPの関連
を検討すること.【方法】対象は2004年10月から
2007年12月の間に経食道心エコー図を施行され
たNVAF 92例.経食道心エコー図にて大動脈弓部
AoPのプラーク厚を計測し,CRPとの関連につい
て検討した.【結果】4mm厚以上のAoPを有した
症例では,4mm未満の症例と比し有意にCRPが
高 値(0.48±0.54 vs. 0.29±0.41mg/dl,p= 0.03)
であった.【結語】NVAFにおいて,大動脈弓部
AoPと炎症が関連している可能性が示唆された.
116) 高血圧患者の塩味嗜好と塩分摂取量に関す
る検討
(鳥取大学病体情報内科学) 水田栄之助・
浜田紀宏・井川 修・重政千秋
(鳥取大学再生医療学) 久留一郎
【背景】塩分摂取は高血圧と深い関係にあるが,
塩分摂取に影響すると考えられる塩味嗜好と高血
圧とについて検討したスタディは現在ほとんど存
在しない.【対象・方法】住民健診受診者50名な
らびに生活習慣病患者47名に対し,塩味嗜好に関
するアンケートならびに血圧測定,血液検査,尿
検査を同日中に行った.また早朝スポット尿およ
び24時間思いだし法を用いて検査前24時間の塩分
摂取量を概算し,そこで求められた1日塩分摂取
量と塩味嗜好・血圧をはじめとする各生活習慣病
との関係についても検討を行った.【結果・考察】
塩分嗜好と高血圧との間に有意な関係は認めなか
った.その原因として塩分嗜好のより客観的な評
価法を検討する必要があると考えられた.また1
日塩分摂取量の評価は高血圧日常診療にとって非
常に有意義であると考えられた.
117) 副腎静脈サンプリングの成功率を100%と
するために何をすべきか?
(広島大学循環器内科学) 西岡健司・
寺川宏樹・藤井雄一・三上慎祐・光波直也・
藤村憲崇・梶原賢太・岡田武規・荘川知己・
中野由紀子・蓼原 太・山本秀也・石田隆文・
(同心臓血管生理医学) 東 幸仁
(同臨床検査医学) 大島哲也
(同循環器内科学) 木原康樹
【背景】原発性アルドステロン症は高血圧患者の
5%以上を占めるとされ,その局在診断のための
副腎静脈サンプリングは極めて重要な手技であ
る.【目的】副腎静脈サンプリングにおけるマル
チスライスCTの有用性を明らかにすること.【対
象】対象は,2004年4月から2008年8月までに原
発性アルドステロン症疑いにて副腎静脈サンプリ
ングを施行された連続24例.副腎静脈の起始部を
同定する目的でマルチスライスCTを全例施行す
るようになった2008年1月以降を後期とし,前期
(15例),後期(9例)の二群間でその手技成功
率について検討した.
【結果・考察】前期の患者
成功率は37%,後期の患者成功率は100%(p<
0.05),であった.副腎静脈サンプリング前にマ
ルチスライスCTで副腎静脈を同定することは手
技成功率を上げるために有用である.
974 第 93 回中国地方会
118) 右バルサルバ洞-右室瘻と右冠尖の穿孔によ
る大動脈弁逆流によりうっ血性心不全を生じた1例
(あかね会土谷総合病院循環器内科)
竹田 亮・正岡佳子・元田親章・川瀬共治・
徳山丈仁・三戸森児・為清博道・大塚雅也・
沖本智和・豊福 守・平尾秀和・村岡裕司・
作間忠道・上田浩徳・林 康彦
【症例】58歳男性.10歳時に肺動脈弁狭窄症に対
しBrock手術.2008年4月より呼吸困難,浮腫が
出現し救急外来を受診,全身浮腫とLevine4/6度
のto and fro雑音,高度の肺うっ血を認めた.TTE
では右バルサルバ洞から右室へのシャント血流,
大動脈弁逆流,肺高血圧症を認めた.TEEでは大
動脈弁逆流は右冠尖の弁腹から生じ右冠尖の穿孔
を疑う所見を認めた.ライブ3Dエコーでは右バ
ルサルバ洞穿孔部に瘤形成は認めなかった.心臓
カテーテル検査ではQp/Qs=2.68,左→右シャン
ト率62.7%であった.手術所見で右冠尖の穿孔と
右バルサルバ洞から右室への瘻孔を認めたがバル
サルバ洞瘤の形成は認めず,瘻孔の縫合閉鎖術と
大動脈弁置換術を行った.【結語】右バルサルバ
洞-右室瘻と右冠尖の穿孔により重症心不全をき
たした稀な症例を経験したので報告する.
119) 左房内血栓の再発を認めた一症例
(川崎医科大学附属病院循環器内科)
土谷哲生・和田希美・林田晃寛・根石陽二・
川元隆弘
(同胸部心臓血管外科) 濱中荘平・種本和雄
(同循環器内科) 吉田 清
症例は68歳女性.慢性心房細動があり,近医にて
ワーファリンが処方されていた.2008年3月10日,
呼吸困難を主訴に当科入院.胸部X-P所見で肺う
っ血を認め,経胸壁心エコ−図検査にて重症僧帽
弁狭窄,中等症大動脈弁狭窄及び左房内血栓を認
めた.その後,意識障害が出現し左小脳梗塞を認
めたため,脳梗塞急性期を脱した後にDVR及び
左房内血栓除去術を施行した.左房内血栓は重さ
74g,径65×50×30mmであった.術3日後,ヘ
パリン投与下でも血栓の再発を認めたため,ウロ
キナーゼを24万単位/日投与したが血栓は縮小せ
ず,治療に難渋した症例を文献的考察を含め報告
する.
120) Port-access AVR12例の検討
(心臓病センター榊原病院心臓血管外科)
片山桂次郎・杭ノ瀬昌彦・津島義正・
吉鷹秀範・都津川敏範・石田敦久・玉木孝彦・
畝 大・西川幸作・平岡有努・衛藤弘城・
滝内宏樹・福原慎二・飯田淳義
【はじめに】当院では2007年5月よりPort-access
(PA)法による大動脈弁置換術(AVR)を導入し
ている.【対象と方法】2007年5月から2008年7
月まで当院で施行したPA法によるAVR12例を対
象とした.年齢33-73(52.0±14.6)歳,男性9例,
女性3例.AR:7例,AsR:5例(先天性二尖
弁:3例)であった.胸骨切開は行わず,右第3
もしくは第4肋間で5-7cmの皮膚切開でアプロー
チ.体外循環は右大腿動脈送血,右大腿静脈脱血
にて陰圧吸引補助脱血を併用した.【結果】皮膚
切開は5-7cm(6.2±0.7)手術時間は225-320(257
±23.1)分であった.胸骨正中切開への移行,再
開胸を要したものはなかった.術後在院日数は
6-18(10.6±3.4)日であった.
121) 僧帽弁形成術後に一過性の溶血を生じた1例
(山口県済生会下関総合病院心臓血管外科)
藏澄宏之・伊東博史・阪田健介・小林百合雄
55歳女性.H18/4/19,僧帽弁閉鎖不全症に対して
僧帽弁形成術を施行した.術中所見ではmiddle
scallopのstrut chordaが1本,medial scallopのchorda
が2本延長していた.McGoon法で僧帽弁を形成
し,Cosgrove-Ring(28mm)で弁輪縫縮を行った.
術 後 経 過 良 好 で5/9に 退 院 と な っ た. し か し,
5/22の外来受診時に溶血性貧血が認められた.心
エコーでは,残存するtrivial MRのjetが弁輪縫縮
のringに向かって衝突しており,溶血の原因と考
えられた.β-blocker内服による保存的治療を行
い,溶血は徐々に改善し術後6カ月目以降には認
められなくなった.術後の内膜形成に伴い溶血が
改善したと考えられた.僧帽弁形成術後の溶血性
貧血は稀な合併症であるが,本症例の様に残存
MRの逆流量は僅かでもjetの方向がringに向かう
ことで溶血を来すことがあり注意が必要と考えら
れた.
122) 成人左房性三心房心の一例
(福山医療センター) 池田昌絵・梶川 隆・
竹本俊二
三心房心は,先天性心疾患中,0.1∼0.3%を占め,
比較的稀な心奇形とされている.今回我々は,成
人で無症状の古典的三心房心を指摘された症例を
経験したので報告する.症例は67歳男性,昭和61
年より拡張型心筋症として当院にて加療を受けて
いる.年1∼2回の心エコーにてfollowを行って
いたところ,平成20年5月の心エコー時,左房内
に異常隔壁を指摘され,経食道心エコー,経胸
壁3D心エコー,MRIにて精査をおこなった.心
房中隔欠損・肺静脈還流異常は指摘されず,中心
に大きな交通孔を持つ古典的三心房心と診断され
た.3D心エコーでは,異常隔壁には中心に大き
な交通孔があるほかに小さな交通孔がある事が指
摘され,異常隔壁の形態と,左房内の血流を立体
的に観察することができた.
123) MDCTが 診 断 に 有 効 で あ っ たpartially
unroofed coronary sinusの一例
(広島赤十字・原爆病院循環器科)
橋本和憲・栗林祥子・門田欣也・塩見哲也・
川村奈津美・吉田知己・加世田俊一
症例は47才女性,主訴は労作時の呼吸困難.心電
図は不完全右脚ブロックを認めず正常範囲.胸写
でも心陰影各弓の突出や肺血管陰影の増強を認め
なかった.経胸壁心エコーでは心房での左右シャ
ントを認めた.心房中隔欠損を疑い実施した心カ
テでの酸素飽和度は混合静脈血が67%,肺動脈が
71%であり,計算上のQp/Qsは1.17であった.2
次孔欠損を想定した操作ではカテを右房から左房
へ通過させられず,肺動脈造影でも肺動脈の再造
影を認めなかった.経食道心エコーでは冠静脈
洞の拡大と血流増加を認めたが,心房中隔の欠
損孔を認めなかった.MDCTでは左房と冠静脈
洞の間に径約8mmの隔壁欠損があり,partially
unroofed coronary sinusと診断された.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
124) 肺動脈の圧排により左冠動脈主幹部に高度
の狭窄を認めた心房中隔欠損症,肺高血圧症の1例
(岡山大学病院循環器内科) 尾上 豪・
柚木 佳・福家聡一郎・西井伸洋・永瀬 聡・
幡 芳樹・中村一文・森田 宏・草野研吾
(同心臓血管外科) 赤木禎治
(山口県済生会下関総合病院循環器科)
立野博也
症例は37歳女性,緑内障が疑われ近医眼科にて
心電図検査施行し,心電図にて異常所見認めた.
心エコー検査施行したところ,心房中隔欠損症
(約12×11mmの2次孔欠損),肺高血圧(TRPG
100mmHg)の所見を認め当院へ紹介となった.
入院後心臓カテーテル検査では,左冠動脈主幹部
に高度の狭窄,重度の肺高血圧(113/53/73mmHg)
の所見,MDCTでは,肺動脈の拡大,肺動脈に
より左冠動脈主幹部が高度に圧排されている所見
を認めた.肺動脈の拡大により,左冠動脈が高度
に圧排され,高度の狭窄を呈した報告例はまれで
あると考える.今回我々は肺動脈の圧排により左
冠動脈主幹部に高度の狭窄を認めた心房中隔欠損
症,肺高血圧症の1例を経験したので報告する.
125) 成人期に診断された三心房心の1例
(川崎医科大学附属病院循環器内科)
林 秀行・川元隆弘・土谷哲生・和田希美・
渡邉 望・尾長谷喜久子・久米輝善・
根石陽二
(同胸部心臓血管外科) 濱中荘平
(同循環器内科) 大倉宏之・吉田 清
症例は48才女性.呼吸困難で近医入院.心不全を
認めたため,精査・加療目的にて当院へ転院とな
った.心エコ−図,心臓CTにてASDおよび左房
内に異常隔壁を認めたため,心房中隔欠損症を合
併した三心房心(Lucas-Schmidt分類1B-1型)と
診断し,ASDパッチ閉鎖術および異常隔壁切除
術を施行した.今回,我々はASDを合併した三心
房心の症例を経験したので,若干の文献的考察を
含め報告する.
126) 心房中隔欠損を伴う三心房心に対しportaccess法による低侵襲根治術を施行した1例
(心臓病センター榊原病院) 平岡有努・
杭ノ瀬昌彦・津島義正・吉鷹秀範・
都津川敏範・畝 大・滝内宏樹・
片山桂次郎・衛藤弘城・西川幸作
三心房心は先天性心疾患の0.1%未満とまれな疾
患であり,心房内の異常隔壁によって心房が二分
される心疾患である.今回,心房中隔欠損を伴う
三心房心に対し,port-access法にて低侵襲根治
術を施行し,良好な治療成績を得た症例を経験し
たため,若干の文献的考察を加え報告する.症例
は40歳,女性.22歳時に心房中隔欠損と診断され
たが,経過観察されていた.39歳時,肝機能異常
を認め,経食道心エコー検査にて三心房心の合併
を認め,Amplatzerでの治療は困難として当院紹
介となった.手術はport-access法での低侵襲治
療を行い,右房から中隔欠損孔を通して,左房へ
アプローチ.肺静脈流入口,隔壁を確認し,隔壁
を中隔欠損孔に逢着させることで隔壁除去,なら
びに欠損孔閉鎖を行った.術後経過は良好で,術
後第12病日に退院となった.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
127) 心室瘤と脳動脈瘤を合併した成人単純型大
動脈縮窄症の一例
(市立三次中央病院(循環器)内科)
渡雄一郎・山本佳征・小林賢悟・田中幸一
【症例】32歳女性【現病歴】20歳頃より高血圧を
認めたため,二次性高血圧の精査目的で入院とな
った.【入院後経過】血圧は左右差なく155/95
mmHg程度であった.心エコーでは心室中隔に心
室瘤を認めた.造影CTでは大動脈弓部-下行移行
部に狭小化が認められ,大動脈造影にて大動脈縮
窄症と確定診断した.冠動脈には有意狭窄を認め
なかったが,左室造影でも心室中隔に心室瘤を認
めた.また,頭部MRIでは右内頚動脈に脳動脈瘤
を認めた.【結語】心室瘤と脳動脈瘤を合併した
大動脈縮窄症の一例を報告した.本症例は成人単
純型大動脈縮窄症と考えられた.心室瘤を合併し
た大動脈縮窄症の成人例はこれまでに報告がな
く,若干の文献的考察を加えて報告する.
128) 左回旋枝右バルサルバ洞起始が心筋梗塞の
原因と思われた1例
(広島赤十字・原爆病院循環器科)
塩見哲也・栗林祥子・門田欣也・川村奈津美・
吉田知己・加世田俊一
左回旋枝が右バルサルバ洞あるいは右冠動脈から
分岐する冠動脈起始異常は比較的よく見られ,一
般に良性と考えられている.本起始異常が心筋梗
塞の発症に関連していたと考えられた1例を経験
したので,冠動脈起始異常と心筋虚血との関連も
含めて,文献的考察を加えて報告する.症例は73
歳男性,C型肝硬変で加療中.脱力発作の精査の
ため入院中に,経胸壁心エコーにて左室後側壁の
菲薄化と無収縮,Tl心筋SPECTでの後側壁の還
流欠損を認め,陳旧性心筋梗塞が疑われた.冠動
脈造影および冠動脈CTでは動脈硬化性の冠動脈
狭窄は認めなかったが,左回旋枝は右冠動脈入口
部から急峻に分岐,無冠尖直下から大動脈後面を
走行し,ほぼ壁運動の低下した領域を還流してお
り,左回旋枝右バルサルバ洞起始と心筋梗塞との
関連が示唆された.
129) VVIからAAIへup gradeする事で心不全のコ
ントロールができた動脈管開存症の一例
(川崎医科大学付属病院循環器内科)
福原健三・和田希美・鎌田康彦・林 秀行・
飯野 譲・古山輝將・土谷哲生・久米輝善・
林田晃寛・根石陽二・川元隆弘・大倉宏之・
吉田 清
【症例】80歳女性.2008年5月に労作時呼吸困難
と全身倦怠感を主訴に来院.動脈管開存症
(PDA)
と脳梗塞,洞機能不全症候群があり,1998年に
ペースメーカー植込み術(VVI)を施行されて,
心 室 ペ ー シ ン グ60%/年 で 推 移 し て い た. 来 院
時の心エコ−図検査でびまん性の壁運動低下と
TRPG(三尖弁逆流圧較差)の上昇が認められ,
dyssynchronyを認めた.【経過】慢性心不全のコ
ントロールが困難であったが,心房-心室の非同
期と左心内同期不全(dyssynchrony)があった
ため心房リードを追加して心不全は改善した.原
因がPDAか又は心房-心室非同期・左心内同期不
全にあるのか,心エコ−図検査を中心に考察した
ので報告する.
130) 左冠動脈主幹部瘤を合併した左冠動脈右房
瘻の1例
(山陰労災病院循環器科) 乗本志考・
遠藤 哲・笠原 尚・尾崎就一・太田原顕
(安来市立病院内科) 乗本業文
症例は45歳男性,近医にて心雑音を指摘され精査
目的に当院入院.経胸壁・経食道心エコー検査で
は左冠動脈主幹部瘤と石灰化を伴った左房内の球
状構造物,拡張期に右房へ流入するJetと右心系
の拡大を認めた.カテーテル検査では,RAmid
でO2stepupを認め,Qp/Qs=1.5であった.左冠動
脈主幹部瘤を合併した左冠動脈右房瘻と診断し瘤
破裂の危険を考え手術施行予定とした.手術にあ
たり病変部の立体構造の把握のため,3DCTを施
行し右房・左房近傍の詳細な情報が得られた.開
心術にて冠動脈瘤切除の後冠動脈再建術を行っ
た.病理所見では瘤壁部分の壁は薄く弾性繊維は
断裂していた.今回我々は術前診断に3DCTが大
変有用であった左冠動脈主幹部瘤と左冠動脈右心
房瘻の合併症例を経験した.
131) 左室収縮能の保たれている慢性心不全患者
の院内死亡を予測する因子の検討
(鳥取大学循環器内科) 平井雅之・
衣笠良治・杉原志伸・加藤洋介・柳原清孝
(同健康政策医学) 小谷和彦
(同循環器内科) 加藤雅彦・井川 修
(鳥取大学再生医療学) 久留一郎
(鳥取大学循環器内科) 重政千秋
【背景】心不全患者の約40%は左室収縮能が保た
れているが,左室収縮能が保たれた慢性心不全
患者の院内死亡に関する予測因子について詳細
な検討は少ない.
【方法】当院に2004年1月から
2008年3月までLVEFが40%以上に保たれている
心不全入院患者233例(年齢75±11歳,男/女:
127/106例)について,院内死亡を予測する因子
を検討した.
【結果】慢性心不全患者は虚血性心
疾患33例(14.2%),弁膜症96例(41.2%),心筋
症24例(10.3%),その他80例(34.3%).院内死
亡を予測する因子として多変量解析を行い,入院
時 の 血 漿BNP値[OR 1.001,p=0.007], 血 中Na
値[OR 0.901,p=0.042]が院内死亡の有意な予
測因子であった.【結語】左室収縮能が保たれて
いる心不全患者の院内死亡では,血漿BNP値に
加えて低Na血症も重要であることが示唆された.
132) 鳥取県の高血圧患者における治療現状調査
−肥満者及び非肥満者での比較検討
(鳥取大学病態情報内科学) 松原剛一・
嘉悦泰博
(鳥取大学遺伝子再生医療学講座) 山本康孝
(鳥取大学病態情報内科学) 井川 修
(鳥取大学遺伝子再生医療学講座) 久留一郎
(鳥取大学病態情報内科学) 重政千秋
鳥取県の高血圧患者799名(平均年齢70.9±10.3歳)
の治療現状調査を実施した.平均血圧は138.0±
12.8mmHgであり,降圧目標達成率は39.4%であっ
た.肥満者での達成率は32.8%と非肥満者での43.3
%と比較し有意に低率であった.calcium拮抗薬
(CCB)が76.1%の患者に投与されており,RA系抑
制薬が59.1%の患者に投与されていた.非肥満者
においては各種薬剤の単独投与の割合が高い傾向
にあったが,肥満者においてはCCB+RA系抑制
薬併用の割合が44.7%と非肥満者に比較して有意
に高率であった.しかしながら心血管疾患合併率
は非肥満者でやや高い傾向にあり,肥満者のみな
らず非肥満者においても降圧を含めた動脈硬化危
険因子への積極的な治療介入が必要と考えられた.
呉阪急ホテル(2008 年 11 月) 975
133) 2007年度に当院に搬送された院外心肺停止
患者と予後因子
(広島市立広島市民病院循環器科)
香川英介・井上一郎・河越卓司・石原正治・
嶋谷祐二・栗栖 智・中間泰晴・丸橋達也・
臺 和興・松下純一・池永寛樹
【目的】院外心肺停止患者の予後規定因子につい
て検討した.【方法】2007年度に当院に搬送され
た院外心肺停止患者296名を対象とした.生存退
院についてstepwise logistic regressionを用いて
検討した.【結果】296名のうち96%に蘇生が試み
られ,平均年齢71±17歳,男性62%,心原性心停
止58%,目撃のある心停止37%,by-stander CPR
の施行40%,初期心電図がVF 10%,病院前の心
拍再開8%,自己心拍再開36%であった.生存退
院が7%,社会復帰が6%であった.年齢,病院
前の心拍再開,心原性心停止,心停止から心拍再
開までの時間,再灌流療法が生存退院の独立した
予後因子であった.【結語】心肺停止患者の予後
は不良である.病院前の心拍再開,心停止から心
拍再開までを急ぐこと,再灌流療法により予後の
改善が期待できる可能性がある.
134) 良好な社会復帰に許容される心停止時間と
低体温療法の有無についての検討
(広島市立広島市民病院循環器科)
香川英介・井上一郎・河越卓司・石原正治・
嶋谷祐二・栗栖 智・中間泰晴・丸橋達也・
臺 和興・松下純一・池永寛樹
【目的】心原性心停止後,社会復帰可能な心停
止時間がどの程度であるかを検討した.【方法】
2003年9月から2008年5月まで当院循環器科で
低体温療法を行った連続76人(HT-group)と,
2007年4月から2008年5月まで当院に搬送された
院外心肺停止患者で低体温療法を行わなかった
322人(NT-group)を対象とした.【結果】良好
な社会復帰を得た患者はHT-groupが28人,NTgroupが10人であった.良好な社会復帰を得た患
者における心停止から心拍再開もしくは体外循環
の開始までの時間は低体温療法を行ったもので有
意 に 短 か っ た(25&plusmn;15 vs 13&plusmn; 7
分,P&lt;0.01).【結語】低体温療法により心拍
再開までの許容時間は増加する.
135) The sooner, the better.(広島ウツタインの
データから)
(広島大学循環器内科学) 荘川知己
(広島大学病院高度救命救急センター)
谷川攻一
(広島大学循環器内科学) 岡田武規・
北川知郎・西岡健司・中野由紀子・寺川宏樹・
蓼原 太・山本秀也・石田隆史・木原康樹
【背景および目的】広島市では病院外心肺停止例
を対象として1998年からウツタイン様式に基づき
データを集積しており,そのデータを基に院外
心肺停止患者の概要について検討した.【対象お
よび方法】2003年から2006年の間に広島市(圏
域)におけるウツタイン様式によって登録され
た心原性院外心肺停止患者1103症例.
【結果】平
均年齢72.2歳,初期心電図はAsys:673,PEA:242,
VF:185,その他:3,覚知から患者接触までの時
間は全体で7.95分,初期心電図別ではVF:7.1分,
PEA:7.6分,Asys:8.3分であった.初期心電図別
生 存 退 院 率 はVF:17.8%,PEA:3.7%,Asys:0%で
あった.
【結論】初期心電図がVFであることが生
存退院の可能性が高かった.また覚知から患者接
触までの時間が短いほど初期心電図がVFである
可能性が高かった.
976 第 93 回中国地方会
136) 周術期管理におけるカルペリチド(ハンプ)
の有効性
(中国労災病院心臓血管外科) 季白雅文・
石井 修・田村健太郎
139) 静脈内平滑筋腫症の1例
(山口大学器官病態外科学心臓外科)
村上雅憲・鈴木 亮・小林俊郎・白澤文吾・
美甘章仁・濱野公一
体外循環手術の術中・術後管理の苦労する点とし
て亡尿に対する処置・電解質バランスの補正・
不整脈管理・腎保護がある.体外循環の欠点は
RAA系,カテコラミンなどの生体内ホルモンの
上昇や尿量の減少・Third spaceへの水分の貯留
で,これらを補う薬剤としてRAA系,カテコラ
ミンなどの生体内ホルモン分泌抑制,交感神経系
の抑制,強力な利尿作用,Na利尿作用,心筋酸
素消費量を低下,冠状動脈拡張作用,心筋保護作
用の利点を持つカルペリチド(ハンプ)がある.
今回,待機的冠動脈バイパス術(CABG)を施行
した症例例に体外循環開始時からカルペリチド
(ハンプ)を投与し,術中・術後の尿量・利尿剤
使用量・eGFR(推算糸球体濾過量)を非投与群
と比較検討し報告する.
静脈内平滑筋腫症は静脈に発育する平滑筋腫を特
徴とした稀な良性疾患である.今回我々は骨盤静
脈内から右心房に達した静脈内平滑筋腫症を経験
したので報告する.症例は35歳女性.2回経妊2
回経産.3年前に子宮筋腫と近医で診断を受けた
が,症状がないために様子を見ていた.本年より
下腹部痛が出現したため近医を受診した.エコー
および造影CT検査で子宮内に約6cmの腫瘍と,
そこから連続する右卵巣静脈から下大静脈内を経
由して右房に達する腫瘍陰影を認め,当科紹介と
なった.造影CT検査上,腫瘍は下大静脈に浸潤
しておらず,一期的に子宮全摘術,両側付属器摘
出術と,人工心肺下に右房および下大静脈内の腫
瘍摘出術と右卵巣静脈切除術を施行した.病理組
織診断は静脈内平滑筋腫であった.本症例を若干
の文献的考察と共に報告する.
137) 心臓・大血管手術における経食道心エコー
の有用性:連続1016例での検討
(山口大学器官病態内科学) 木原千景
(山口大学医学部附属病院検査部) 村田和也
(山口大学器官病態内科学) 和田靖明・
奥田真一・田中健雄・野瀬善夫・深川靖浩・
吉野敬子・須佐建央
(同器官病態外科学) 美甘章仁・
濱野公一
(同器官病態内科学) 松h益‡
140) 心室細動を契機に診断された甲状腺クリー
ゼの一例
(山口県立総合医療センター循環器内科)
福田昌和・田中伸明・福田聖子・小田哲郎・
中尾文昭・藤井章久・山縣俊彦・藤井崇史
(萩市立見島診療所) 中嶋 裕
【目的】経食道心エコー法(TEE)の心臓・大血
管手術における有用性について検討する.【方法】
1998年1月から2007年12月の10年間に当院にて実
施した心臓・大血管手術中にTEEを施行した連
続1016例を対象とした.術中にTEEにて検出さ
れ,経過観察や修正手術を要した異常所見(Ev)
の出現率を算出した.【結果】Ev出現総数は146
件(14%)であり,その内,新たな局所壁運動異
常の出現(65件:44%)が最も多く,約半数を占
め,63件(43%)で修正手術が行われた.【結論】
TEEにより術中に異常が検出され,修正手術や薬
物投与または注意深い経過観察を促すことで,よ
り確実にしかも安全に心臓・大血管手術が施行で
きることが示された.
138) M.E.C.C.(Minimal Extra Corporeal
Circulation)の使用経験
(中国労災病院) 田村健太郎
近年,低侵襲体外循環により全身性炎症変化を
最 小 限 に と ど め, 速 や か な 術 後 回 復 を 図 る 試
み が 多 く 試 行 さ れ て い る.2000年 に 登 場 し た
M.E.C.C.(Minimal Extra Corporeal Circulation)
は遠心ポンプを用い,通常の体外循環に使用して
いる静脈リザーバーを取り除いた閉鎖回路を基本
としている.ボルドー第2大学オー・レベック心
臓病院では2002年にこのM.E.C.C.に改良を加えた
低侵襲体外循環システムを導入した.最初の1年
間で1840例,2007年12月31日まで約8000例に対し,
あらゆる術式(冠動脈バイパス術,弁置換術,右
心系手術,心移植など)において安全に使用して
きた.今回我々の用いている回路の紹介ならびに,
従来用いてきた体外循環と比較検討し報告する.
生来健康であった.昨年4月上旬から感冒様症状
があり,中旬から倦怠感が強くなり点滴を受けて
いた.家族から痩せが目立ってきたと指摘されて
いた.昨年5月7日運動中に背部痛が出現し,心
肺停止となった.心肺蘇生術およびAEDを2回
施行するも心拍は再開せず,約40分後に当院に救
急搬送された.意識レベルはJCS300,血圧測定
不能,モニター心電図では50bpmであった.エピ
ネフリン・硫酸アトロピンを静注したところ心室
細動となったため除細動(360J)を施行し,洞調
律となり心拍が再開した.甲状腺の腫大があり,
甲状腺機能検査ではFree T3>30.00pg/ml,Free
T4 5.03ng/dl,TSH<0.005μIU/mlであり,甲状
腺クリーゼと診断された.
141) 肺塞栓を合併した右房内血栓で血栓摘出術
が奏功した一例
(心臓病センター榊原病院内科)
山田亮太郎・廣畑 敦・山本桂三・広瀬英軌・
大河啓介・石澤 真・佐藤慎二・外山裕子・
川村比呂志・山地博介・村上正明・村上 充・
日名一誠・大原美奈子・喜多利正
症例は人工骨頭置換術後の72歳男性.術後歩行リ
ハビリ開始したが,呼吸苦の出現を認め他院紹介
となった.心エコー図検査で右房内に有茎性の異
常構造物を指摘され当院紹介となり,胸腹部造影
CTで大腿静脈∼膝窩静脈の深部静脈血栓と両側
肺動脈内の血栓を認めた.経胸壁心エコー図検査
で可動性を有する右房内の血栓を認め,経食道心
エコー図検査では右房内にヒモ様構造を伴う可動
性の血栓を認め流出による肺塞栓の可能性がある
ため緊急手術となり術後に下大静脈内永久フィル
ターを留置して終了となった.約1週間後に一般
病棟へ転棟となり,以後順調に経過している.肺
塞栓を合併した可動性を有する右房内血栓で血栓
摘除術が奏功した一例を経験したので当院におけ
る同様の症例で過去に救命し得なかった一例と比
較検討し報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
142) 睡眠中の酸素吸入により心機能が改善した
CSR-CSAを伴う慢性心不全の一例
(市立三次中央病院循環器科) 田中幸一・
小林賢悟・渡雄一郎・山本佳征
夜間の酸素吸入により心機能の改善をみた中枢型
睡眠時無呼吸(CSR-CSA)を伴う心不全症例を
経験した.症例は60歳,男性.2003年7月から高
血圧,慢性心房細動で当院通院中.2003年12月
心エコーをうけ左室収縮能の低下を指摘された.
ARBとカルベジロールを投与していたが次第に
心不全症状が出現増悪し入院した.左室造影では
びまん性の壁運動低下を認めEFは33%であった.
簡易睡眠計で無呼吸指数40.4/h(CSA 31.9/h),
最大無呼吸時間54秒,最低SpO2 62%のCSA-CSR
を認めた.このため夜間睡眠中の酸素吸入を開始
したところ,心不全症状は軽快しさらに左室収縮
能も改善していった.心不全患者で薬物療法に対
する効果が不十分な患者ではCSA-CSRを考慮し
積極的に診断,治療を行っていく必要があると考
えられる.
145) 動脈硬化の成因としてのゲノム損傷・修復
(広島大学心臓血管生理医学) 石田万里
(広島大学循環器内科学) 石田隆史
(広島大学心臓血管生理医学)
スーヌエヌエ・澤野真理子
(広島大学循環器内科学) 山本秀也・
蓼原 太・荘川知己・岡田武規・寺川宏樹・
中野由紀子・西岡健司・木原康樹
(広島大学心臓血管生理医学) 吉栖正雄
動脈硬化の発症,進展のメカニズムに酸化ストレ
スが深く関わっていることが注目されている.酸
化ストレスはゲノムに損傷を与えるが,ゲノムの
損傷,修復の異常が動脈硬化の発症に関与してい
るか否かは不明である.本研究ではヒト動脈硬化
巣にゲノムの損傷が存在するか否かを検討した.
ヒト動脈硬化巣においてリン酸化ヒストンH2AX
抗体を用いた免疫組織染色により陽性に染まる細
胞が確認され(非動脈硬化部は陰性),動脈硬化
巣にDNA損傷のうち二重鎖切断が増加している
ことが明らかとなった.この二重鎖切断は動脈硬
化巣のマクロファージの集簇部に認められた.ま
た,DNA損傷修復酵素であるDNA-PKの発現増
加も認められた.以上よりゲノムの損傷・修復機
転は動脈硬化の発症,進展に何らかの関わりがあ
ることが示唆された.
143) 3D−局所心筋壁運動解析で両心室ペーシ
ングの効果を確認できた難治性心不全の1例 (県立広島病院循環器内科) 岩崎年高・
木下弘喜・新谷由美子・岩本明倫・橋本正樹・
末田 隆・岡本光師
146) 血液透析導入後の血清心筋トロポニンTと
左室肥大の経過に関する検討
(おおつかクリニック) 公受伸之
(島根大学第4内科) 小谷暢啓・田邊一明
(おおつかクリニック) 鈴木恵子
75歳男性.心不全に腎機能低下も伴っていた.
肺うっ血で,酸素投与するもSpO2 80%台とな
り,人工呼吸器管理も必要とした.人工呼吸離脱
度,利尿剤,βブロッカー,ARBなど投与する
も,軽度の労作で呼吸困難を認め,容易に肺水腫
を繰り返していた.心電図は洞調律,完全左脚ブ
ロックで,QRS 173msecであった.心エコーで
LVDd 70.7mm,EF 24%,心室中隔の奇異性運
動を認めた.両心室ペーシングを施行後,臨床症
状は著明に改善した.3D心エコー局所解析の結
果,16segmentのminimum systolic volumeになる
時相の標準偏差は13.4%からペーシング後0.62%
に縮小し,Bull s eyeでanterolateralの時層の遅れ
が消失し,EF23.8%から45%に改善した.
【目的】透析患者の血清心筋トロポニンT(TnT)
の推移と規定因子について検討した.【方法】対
象は透析患者86名中,導入時よりTnTを測定しえ
た37名.導入時陰性N群と陽性P群とし,左室心
筋重量係数(LVMI)
,糖尿病(16例),冠動脈疾
患(6例)の有無を検討.
【成績】N群16,P群21名.
N群のTnT陰性率は経年的に低下(5年目43%).
P群中3例は導入後に陰性化し,N群中7例は陽
転化.LVMIは導入時に比し1年後に有意に低下
し,4年後に有意差は消失(139→116→111→113
→115g/m2).多変量解析では導入時TnT上昇に
DMが関与した.N群中陰性持続例は導入後LVMI
低下が継続した.【結論】透析導入時TnT上昇に
は糖尿病が関与し,導入後の陽性化には肥大の進
行が関与した.肥大退縮の維持と心筋障害を改善
する透析療法と糖尿病治療戦略が必要である.
144) AngIIはTLR4を介した心筋内酸化ストレス
増加により心筋内血管リモデリングと線維化を惹
起する
(山口大学器官病態内科学) 松田 晋
(山口大学医学部附属病院臨床試験支援センター)
梅本誠治
(山口大学器官病態内科学) 吉野敬子
(同分子脈管病態学講座) 青木浩樹・
吉村耕一
(山口大学総合科学実験センター) 村田智昭
(山口大学器官病態内科学) 松h益‡
147) 冠動脈疾患患者における長期コーヒー摂取
の血管内皮機能に及ぼす影響
(広島大学病院循環器内科) 光波直也・
寺川宏樹・西岡健司・三上慎祐・藤村憲崇・
藤井雄一・曽我潤子・岡田武規・荘川知己・
蓼原 太・山本秀也・石田隆史
(広島大学心臓血管生理医学) 東 幸仁
(広島大学病院循環器内科) 木原康樹
【目的】アンジオテンシンII(AngII)とノルエピ
ネフリン(NE)負荷高血圧において,心筋内酸
化ストレスと心筋内血管リモデリングと線維化に
対するTall-like receptor 4(TLR4)の役割を比較
検討した.【方法・結果】wild-typeマウス(WT)
とTLR4欠損マウス(TLR4-/-)において,AngII
負荷は,TLR4-/ではWTと比較して心筋内細動脈
の壁厚内腔比と血管周囲線維化率の増加ならびに
superoxide含量を有意に抑制した.一方,NE負
荷ではWTあるいはTLR4-/-ともにこれらの指標
に有意差はなかった.【結論】AngII負荷高血圧
において,TLR4は心筋内酸化ストレスを亢進さ
せ,心筋内血管リモデリングと心筋線維化を惹起
する重要な規定因子である可能性がある.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
【目的】冠動脈疾患(CAD)患者における長期コ
ーヒー摂取の血管内皮機能に及ぼす影響を調べた.
【方法】CADと診断された676症例を対象とし一日
のコーヒー摂取量から,Group I(なし),Group
II(時々),Group III(1-2カップ/日),Group IV
(3-4カップ/日),Group V(5カップ/日以上)に
分類.上腕動脈エコー検査法にて血管内皮機能を
評価した.
【結果】Group Iに187例,Group IIに47
例,Group IIIに268例,Group IVに122例,Group
Vに52例認めた.FMDは,それぞれ3.5±3.5%,3.6
±3.7%,3.6±3.8%,4.7±4.0%,4.5±4.2%であっ
た(p=0.06)
.多変量解析においては,コーヒー
摂 取 はFMDに 影 響 を 及 ぼ さ な か っ た.【 結 論 】
CAD患者において長期コーヒー摂取は血管内皮
機能に影響を及ぼさない可能性が示唆された.
呉阪急ホテル(2008 年 11 月) 977
第 210 回 日 本 循 環 器 学 会 関 東 甲 信 越 地 方 会
2008 年 12 月 6 日 ベルサール神保町
会長:池 田 宇 一(信州大学循環器内科)
1) 止血デバイスを使用した大腿動脈カテーテル
穿刺部に感染性動脈瘤を生じた一例
(東京都立府中病院循環器科) 大滝陽一・
田中博之・磯貝俊明・杉浦美緒・鈴木ゆき・
金子雅史・小金井博士・久保良一・上田哲郎
(同外科) 保坂晃弘・大島 哲
3) EVTによる血行再建に成功した外傷性腋窩動
脈閉塞の一例
(昭和大学横浜市北部病院心臓血管カテーテル室)
荒木 浩・山本明和・斎藤重男・星本剛一・
御子柴幸・磯村直栄・芦田和博・小原千明・
落合正彦
64歳男性.2008年2月に心不全で当科入院.右大
腿動脈からのアプローチで施行した冠動脈造影で
3枝病変を認めたため,冠動脈形成術を施行.術
後,PercloseATで止血し,3月中旬退院.退院後,
穿刺部の腫脹・疼痛を自覚し,また多量の排膿を
認めたため再入院.血液培養からもMRSAを検出
し,カテーテル穿刺部MRSA感染と,それに伴う
敗血症と診断して抗生剤投与開始.5月下旬軽快
退院となった.しかし退院後,右鼠径部の感染治
療部から出血を認めたため再度入院.拍動性ある
腫瘤と皮膚潰瘍・壊疽を右鼠径部に認めたため,
大腿動脈の感染性動脈瘤破裂と診断し,翌日右大
腿動脈バイパス術を施行した.止血デバイス使用
部に感染を合併し,感染性動脈瘤を発症した稀な
症例であり,その原因等に関する考察を加え発表
する.
症例は70代女性.路上で盗難に会って転倒し,右
肩関節を骨折した.同部人工骨置換術を施行した
が,術後から右腕のしびれが出現し,末梢動脈が
触知不能であったため,緊急血管造影を施行した.
肩関節付近での右腋窩動脈閉塞を認め,引き続き
血管内治療(EVT)を行った.順行性からのワイ
ヤリングで偽腔を形成し不通過だった.そこで,
右橈骨動脈から逆行性ワイヤリングを行い,ワイ
ヤの病変通過に成功した.血管内超音波(IVUS)
でワイヤは一部偽腔を経由するも血管内に存在し
た.balloon拡張後,血管径にあった冠動脈用ス
テントを留置し,順行性の血流再開を得た.この
治療が奏功し,その後も追加の外科手術は必要と
することなく救肢に成功した.
2) 間歇性跛行を呈した若年男性の膝窩動脈捕捉
症候群の1例
(菊名記念病院心臓血管センター循環器科)
東谷卓美・山内靖隆・宮本 明・悦田浩邦・
袴田尚弘・福田正浩・秋田孝子・久原亮二・
手塚信吾
(同心臓血管外科) 村田 升・尾頭 厚・
奈良原裕
4) 血栓吸引が著効した急性総腸骨動脈分岐部血
栓塞栓症の1例
(春日部市立病院内科) 野口尚子・
有馬 健・館田 豊
症例は31歳男性.動脈硬化危険因子,凝固系異常
は認めない.平成17年3月頃から約2分の歩行で
右下腿に間歇性跛行出現し,当院受診.右膝窩動
脈以下の拍動は減弱し,ABIは右0.83/左1.18と
低値であった.エコー上は右膝窩動脈が約4cm
閉塞.閉塞部の末梢は側副血行による血流が保た
れていた.CT,MRI,MRA上,両側の腓腹筋内
側頭は外側に偏位し,その内側を走行する膝窩動
脈を圧排していた.閉塞部の膝窩動脈は拡張し,
慢性機械的圧迫による動脈瘤の形成と瘤内血栓に
よる閉塞が示唆された.画像所見から膝窩動脈捕
捉症候群Delaney2型と診断し,左大伏在静脈を
用いた右膝窩動脈閉塞部のバイパス術を施行.術
後1年間の経過は良好である.頻度約0.16%とま
れな症例を経験したので報告した.本疾患は若年
の間歇性跛行では考慮すべき疾患である.
978 第 210 回関東甲信越地方会
71才女性,徐脈性心房細動に恒久型ペースメーカ
ー植込術を施行.術後3日目突然両下肢の疼痛・
色調不良が出現し,両大腿動脈以下が触知不能と
なった.造影CTで左総腸骨動脈閉塞,右膝窩動
脈閉塞を認めた.カテ室にて,左上腕動脈アプロ
ーチで,6F右冠動脈用ガイディングカテーテル
を用いて左総腸骨動脈血栓の吸引を繰り返し,大
量の血栓が吸引され,同部の血栓は消失した.遊
離した血栓により左膝窩動脈の閉塞を認め,左鼡
径部よりのアプローチで血栓吸引を行い,大量の
血栓が吸引され同部の血栓は消失した.続いて右
鼡径部より右膝窩動脈の血栓吸引を行い,同様に
血栓は消失した.自覚症状は消失し,両足背動脈
の触知良好となった.CPKは翌日に1233mIU/lま
で上昇したが,何ら機能障害を残さず退院した.
5) 経皮的冠動脈形成術穿刺部位に感染性仮性動
脈瘤を形成した一例
(船橋市立医療センター) 内山貴史・
福澤 茂・稲垣雅行・杉岡充爾・沖野晋一・
池田篤史・前川潤平・市川壮一郎・小澤 俊・
高原善治・茂木健司・桜井 学・青木哉志・
杉本晃一
症例は54歳,女性.急性心筋梗塞にて他院で経皮
的冠動脈形成術を施行され,その際左鼠径部穿刺
部位をコラーゲン止血デバイスにて止血された.
その後経過良好にて退院となったが,穿刺部位の
腫脹・疼痛強く,感染徴候認め,再入院の上切開
排膿施行され,症状は消失した.しかし退院後に
再び疼痛出現したため,当センター形成外科受
診.左鼠径部に拍動を伴う腫瘤を触知し,仮性動
脈瘤の疑いにて心臓血管外科紹介となった.血管
エコーにて左浅大腿動脈分岐部直下に動脈瘤を確
認し,左大腿動脈感染性仮性動脈瘤と診断,パッ
チ形成術施行の上入院となった.その後は経過良
好で,第25病日に退院となった.今回我々は,コ
ラーゲン止血デバイスにて止血された経皮的冠動
脈形成術穿刺部位に,感染性仮性動脈瘤を形成し
た一例を経験したので報告する.
6) 慢性完全閉塞に対するRetrograde approach
による冠動脈形成術後に広範なコレステロール塞
栓症を生じた一例
(昭和大学循環器内科部門) 細川 哲・
濱嵜裕司・七海美和・塚本茂人・武藤光範・
横田裕哉・西村英樹・近藤武志・丹野 郁・
小林洋一
68歳男性.2008年2月に労作性狭心症で冠動脈
造影を施行した.右冠動脈#2に完全閉塞を認め,
冠動脈形成術を施行した.Retrograde approach
によりガイドワイヤー通過に成功し,薬剤溶出性
ステント留置を施行した.手技終了直後より腹壁
から両下肢末端に及ぶ斑状のチアノ−ゼを認め
た.CT上腹部大動脈内に突出するプラーク像と
肝および腎梗塞所見を認め,カテーテル手技に伴
う広範なコレステロール塞栓症と診断した.多臓
器不全を生じたが,持続的血液濾過透析,LDL吸
着療法およびステロイドパルス療法にて症状は改
善し,1週間後に退院可能となった.Retrograde
approachの導入により手技成功率の向上は期待
できるが,侵襲度は大きいために合併症の発生に
対してより注意が必要と考えられた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
7) 超高齢者のCLIに対してPPIを施行した3例の
検討
(横浜中央病院循環器科) 小堀容史・
大岩功治・藤江俊雄・尾花正裕・八木秀樹
【はじめに】昨今高齢者PADは増加傾向であるが,
今回90歳以上の超高齢者のFontaineIV CLIに対し
て積極的にPPIを施行し,良好な結果を得たので
報告する.
【症例1】90歳女性.左第5趾外側潰瘍,
ABI0.47/0.44, 左EIA, 左SFA75%, 右EIA90%,
左POPA閉 塞. 両 側EIAに ス テ ン ト 留 置 し, 左
SFAにPOBA施行.【症例2】91歳女性.両下肢
チアノーゼ,左足外側面にφ3mmの潰瘍,ABI
測定不能,右SFA90%,左SFA閉塞.両側SFAに
ステント留置.【症例3】97歳女性.左下腿チア
ノーゼと疼痛,両側SFA完全閉塞.左SFAにステ
ント留置,左ATAにPOBA施行.【まとめ】3症
例とも重大な合併症なく退院し,症状も軽快した.
【結語】超高齢者CLIにPPIを施行し,救肢に成功
した3例を経験した.積極的PPIで,保存的治療
では得られない速やかな症状の改善や短期予後改
善が見込めると考えた.
8) Lipo PGE1併用ヘパリン運動療法にトラフェ
ルミンを使用し改善したblue toe syndromeの1例
(横須賀市立うわまち病院循環器科)
葉山順代・岩澤孝昌・橋口正隆・藤崎雅実・
泊口哲也・杉浦 徹・黒木 茂・水政 豊・
辻 武志・沼田裕一
症例は74歳男性で,左総腸骨動脈狭窄による閉塞
性動脈硬化症(Fontaine III)に対し,stent植え
込みによる経皮的血管形成術を施行された.そ
の後blue toe syndromeによる左足指の壊死をき
たし,治療により改善しない為当院紹介.Lipo
PGE1併用ヘパリン運動療法を施行し,創部はト
ラフェルミンを投与した.4週間後には安静時疼
痛および足指の皮膚潰瘍の改善を認めた.HGF
およびFGFによる血管新生因子の関与が推測され
た.
9) 心室中隔穿孔閉鎖術後,左室自由壁破裂の1
救命例
(中央総合病院心臓病センター心臓血管外科)
針谷明房・高澤賢次・恵木康壮
(同循環器内科) 野田 誠・市川健一郎・
薄井宙男・山本康人・田代宏典・吉川俊治・
藤波竜也
(自治医科大学心臓血管外科) 三澤吉雄
(東京医科歯科大学循環器制御内科学)
磯部光章
75歳,男性.LAD#7p total RCA#1d totalのDVD.
Qp/Qs=2.9 L→R shunt=65%のAnterior AMI
VSPと診断.緊急VSP(Infarction exclusion)閉
鎖,CABG×1(SVG to 4PD) を 行 っ た.ICU帰
室後,BPが変動し,ドレーンより大量出血を認
めた.ICUで緊急再開創した所,左室後側壁に動
脈性出血を認めた.左室自由壁破裂と判断し,用
指圧迫止血を行い,循環動態は安定した.本症
例ではVSP閉鎖術後に致命的な合併症を併発した
が,救命し得たので報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
10) 急性心筋梗塞を契機に顕在化したcapillary
leak syndromeの一例
(東京大学医学部附属病院循環器内科)
小島敏弥・武藤浩司・岩田 洋・都島健介・
山下尋史・平田恭信・永井良三
(同腎臓内分泌内科) 槙田紀子
(同心臓外科) 縄田 寛・本村 昇
症例は63歳男性.2006年に急性心筋梗塞にて他
院入院し,#6 100%に対してPCIを施行.入院時,
Hb 23,Cre 5.15と著明な脱水を認めた.その後,
反復性ショックにてしばしば入院を繰り返したが
各種検査でその原因疾患が特定できず,精査目的
にて当院転院となった.ショック前には多尿に続
く体重減少,尿量減少,無尿を経て前兆として
腰痛を生じる.その後,血圧低下を来し,Hbの
上昇,Albの低下,Creの上昇を来す.経過より,
capillary leak syndromeという原因不明の血管透
過性亢進を来す病態が考えられた.また,心精査
にて右心カテーテル検査,冠動脈造影を施行し,
多枝病変をを認めた.薬剤アレルギーもあること
から冠動脈バイパス手術を施行した.ショックの
病態と共に虚血性心疾患の影響,血行再建につい
て熟考を要する症例であった.
13) AMIに対する緊急PCI後の塩酸ランジオロ
ールの使用経験
(獨協医科大学心血管肺内科) 米田秀一・
田口 功・阿部七郎・金谷智明・那須野尚久・
西野 節・松田隆子・金子 昇
【背景】β遮断薬の急性心筋梗塞に対する発症早
期投与は,虚血心筋を保護し梗塞巣を縮小させる
と の 報 告 は 多 い.【 目 的 】 緊 急PCIを 施 行 し た
AMI症例に対する超短時間作用型塩酸ランジオ
ロールの有効性の検討.【対象】緊急PCI施行後
のKillip: I-IIであったAMI12例【結果】平均年齢
61.3±9.9歳.緊急PCI施行後,塩酸ランジオロー
ルを3-5γ投与し,12時間後に経口投与に移行し
た.それぞれの投与前を基準としたパラメーター
の6および12時間後の経時的変化率はSVR: -15.0
±37.8%,-23.0±22.9%.PVR:-8.5±47.5%,-15.2
±41.2 %.C.I:6.4±20.9 %,15.5±21.2 %.mean
BP:-20.3±9.1%,-15.4±14.0%.HR:-4.0±15.2%,
-6.4±14.9%であった.【まとめ】塩酸ランジオロ
ール3-5γ投与は安全に使用でき心筋酸素消費量
の軽減をもたらすことが示唆された.
11) クロピドグレル耐性を疑う亜急性血栓性閉
塞症の1例
(小田原循環器病院) 山崎健司・根本尚彦・
鯉淵清人・村瀬俊文・熊谷賢太・森木直哉・
田村 進・小原武博・二宮健次・海老根東雄
14) BMS distal edgeに進行性の冠動脈拡張を認
めた1例
(長野赤十字病院循環器病センター循環器内科)
三浦 崇・吉岡二郎・赤羽邦夫・戸塚信之・
宮澤 泉・臼井達也・浦澤延幸・荻原史明
【症例】69歳男性【主訴】胸痛【既往歴】18歳:
肺結核.68歳:脳梗塞(後遺症なし).高血圧で
近医通院中【現病歴】急性心筋梗塞の診断で,緊
急CAGを施行したところLAD#7の完全閉塞病変
であった.クロピドグレル300mgを内服しインタ
ーベンションを施行,#8と#7にBMS(#8:Micro
Driver 2.75/18mm,#7:Driver 3.5/15mm)を植
え込み終了した.抗血小板剤としてアスピリン
100mgとクロピドグレル50mgを併用していたが,
術後5日目に胸痛と胸部誘導でのST上昇を認め
た.SATと診断し緊急でCAGを施行,LAD#7の
ス テ ン ト 内 で 完 全 閉 塞 を 認 め た. 血 栓 吸 引 と
POBAを施行し再灌流に成功した.術後に抗血小
板剤はクロピドグレルからチクロピジンに変更し
以後問題なく経過した.今回クロピドグレルを服
用していたがSATを起こした症例を経験したので
報告する.
75歳 女性,1979年よりMCTDで他院外来通院中.
2007年7月,急性心筋梗塞(下壁)で緊急CAGを
施行.#1 90%,#4AV 100%,#6 90%,#9 90%狭
窄を認め,#1,#4AVそれぞれにBMSを留置.#1
stent留置遠位部はややectaticであったが,2週
間後のCAGでは同部位に拡張は認められなかっ
た.2008年3月のfollow up CAGでは同部位はQCA
上4mmと再びectaticとなっていた.同年6月上
旬にatypicalな胸部症状を訴え7月,CAG施行.
新規狭窄病変はなく,#1 stent留置遠位部はQCA
上8mmと急速に拡張していた.BMS留置後慢性
期にstent留置遠位部に急速拡大する冠動脈瘤を
形成した症例を経験ので,若干の文献的考察をふ
まえて報告する.
12) PES留置後に冠動脈瘤を形成した2症例
(深谷赤十字病院内科・循環器科)
佐野宏和・飯島貴史・樋口京介・高野弘康・
佐川尚規・関口 誠・宮嶋玲人・長谷川修一・
山崎雅夫
(群馬大学臓器病態内科学) 倉林正彦
15) 発症の発端となった右心不全症状が自然軽
快した急性下壁梗塞に伴う心室中隔穿孔の一例
(群馬大学循環器内科) 土屋寛子・
中島正博・入江忠信・後藤耕作・八木宏明・
斉藤章宏・根岸一明・福田延昭・奥村 渉・
富田智之・中島 忠・金古善明・中野明彦・
新井昌史・倉林正彦
(同循環器外科) 茂原 淳・高橋 徹
待機的PCIを施行しPES留置後に冠動脈瘤を形成
した2症例を経験したので報告する.【症例1】
72歳女性.腹部大動脈瘤の術前CAGにて3枝病
変を認めた.3枝それぞれにPCI施行し,IVUSガ
イド下にPESを留置した.10ヵ月後のCAGでは3
枝すべてのPES留置部に冠動脈瘤を認め,IVUS
ではステント自体に変化を認めず,血管径の瘤状
拡大とステントの圧着不良を認めた.【症例2】
49歳男性.労作性狭心症.CAGではLAD#6-7:
tandem 90%,RCA#2:CTOであった.まずRCA
にPCIを行いPESを留置した.後日LADにPCIを
行いSESを留置した.6ヵ月後のCAGでは再狭窄
は認めないが,RCA#2のPES留置部に冠動脈瘤
を形成していた.SES留置部には冠動脈瘤は認め
なかった.
80歳男性.2年前から労作性狭心症あり.胸痛発
作が頻回となってから1週間後,食欲不振,浮
腫,体重増加(10kg/10日間)が出現したが,4
週間程で自然軽快した.心電図と心臓超音波検
査で心室中隔穿孔(VSP)を合併した下壁梗塞
と診断.MRIで右室壁にも遅延造影が認められ
た.心臓カテーテル検査は3枝病変でRCAが右
室枝分岐前で亜完全閉塞,LVEF 43%,肺動脈圧
34/13mmHg,CI 5.5L/min/m2,Qp/Qs 2.2であっ
た.発症約10週間後にパッチ閉鎖術及び冠動脈バ
イパス術を施行,下部心室中隔基部側に約1.5cm
の穿孔を認めた.右室梗塞の合併で右心不全が顕
在化し右室機能の回復により自然軽快したと推察
される.重症化しやすいVSPではまれな臨床経過
と考え報告する.
ベルサール神保町(2008 年 12 月) 979
16) 特発性冠動脈穿孔による心タンポナーデに
対して経皮的冠動脈塞栓術,心嚢ドレナージにて
救命し得た一例
(済生会横浜市東部病院) 滝村英幸・
村松俊哉・塚原玲子・伊藤良明・酒井 毅・
石盛 博・笹尾健一郎・平野敬典・中野雅嗣・
茶谷健一・山脇理弘・荒木基晴・阪本泰成
症例は88歳男性.平成20年4月血液透析中に低血
圧が続き,4月18日ショック状態となり当院搬送.
来院時心エコー所見にて全周性にエコーフリース
ペースを認め,心タンポナーデによる心外閉塞性
ショックと診断.心嚢穿刺にて血性心嚢液(穿刺
液中Hb12.1g/dl)が排出されショック状態を離脱
した.しかしその後も心嚢液増加を認めたため,
原因検索のため冠動脈造影施行したところ右冠動
脈#4-AV末梢より造影剤の心嚢腔への漏出が認め
られ冠動脈穿孔と診断.同日経皮的冠動脈塞栓術
を施行した.その後コアグラタンポナーデとなっ
たため外科的心嚢腔ドレナージにより病態が改善
し退院となった.今回我々は,特発性冠動脈穿孔
による心タンポナーデに対して冠動脈塞栓術並び
に外科的ドレナージにより救命し得た症例を経験
したので報告する.
19) 無症候性Bland-White-Garland症候群の一例
(安曇野赤十字病院循環器内科) 村山秀喜・
内川慎一郎・木下 修
症例は66歳女性.数年前より心電図異常を指摘さ
れ先天性心疾患疑いで経過観察されていた.2008
年5月上旬より胸部不快感が持続し発作性心房細
動によるうっ血性心不全にて入院となりBNP1690
であった.心エコー検査ではLV NCを呈し,巨大
な蛇行するRCA,中隔内を流れるLCAを確認し
た.心不全治療後,シネMRIではLVNCと巨大な
RCAが主にLCxへと連続し,カテーテル検査では
RCAからの血流がLCAを逆流し肺動脈起始部に
流入していた.酸素飽和度step-upは認めず無症
候性に経過した成人のBland-White-Garland症候
群と,LVNCと診断した.
17) シロリムス溶出ステント留置11ヵ月後の血
管内超音波で内膜肥厚を認めず,20ヵ月後に狭窄
を来たした一例
(順天堂大学循環器内科) 塩澤知之・
小島貴彦・宮内克己・土肥智貴・宮崎忠史・
中嶋直久・西野顕久・横山貴之・田村 浩・
横山 健・大村寛敏・蔵田 健・代田浩之
20) 術後に左室肥大所見が消失した右室二腔症
の一例
(自治医科大学附属病院循環器内科)
富澤英紀・山本啓二・星出 聡・新保昌久・
村田光延・北條行弘・三橋武司・島田和幸
(上那賀病院) 渡部智紀
(佐野厚生総合病院) 西村芳興
79歳女性.2006年4月労作性狭心症の診断で冠動
脈造影(CAG)を施行,左前下行枝近位部に90%
及び75%狭窄病変を認めた.6月,同病変に方向
性粥腫切除術に引き続きシロリムス溶出ステン
ト(SES)2本を一部重ねて留置し0%に改善.
2007年5月のCAGでは再狭窄は認めず,血管内
超音波(IVUS)でも明らかな新生内膜の肥厚は
なかった.2008年1月,運動負荷心電図で前胸部
誘導の著明なST低下を呈した.2月CAGを施行,
ステント近位端に90%,ステント重複部位に50%
の狭窄,IVUSでは両病変ともに高・低エコーの
混在する狭窄像を認めた.治療後約1年IVUSで
も明らかな新生内膜肥厚を認めていなかったにも
かかわらず,1年半以上経過して狭窄をきたした
SES留置患者を経験したので報告する.
症例は56歳,女性.2003年より健診の心電図で右
室肥大を指摘され,その後心電図上,左室肥大を
合併した.2007年7月より労作時呼吸困難,下腿
浮腫がみられたため,2008年2月に入院となった.
心臓超音波検査にて高度の右室流出路狭窄に伴う
右室の拡大と著明な肥大,左室の圧排,左室肥大
を認め,心臓カテーテル検査では右室流出路の圧
較差は140mmHgであった.術前診断は右室二腔
症,左室肥大と考え,右室流出路形成術,三尖弁
輪形成術を施行した結果,右室流出路の圧較差は
消失し,左室内腔は拡大し,左室壁厚は減少傾向
を示した.また,病理学的に,左室心筋に肥大や
disarrayの所見を認めなかった.以上の結果より,
術前にみられた左室肥大所見は著明な右室肥大を
反映している可能性が考えられた.
18) 薬剤溶出性ステント内に繰り返す完全閉塞
を認めた全身性エリテマトーデス合併の1例
(平塚市民病院循環器科) 柳澤亮爾・
栗田康生・熊谷麻子・矢田崇浩・柴田 勝・
松原 隆
(同心臓血管外科) 井上慎也・長 泰則・
鈴木 暁
21) 大動脈弁置換術後25年経過し,弁機能不全
による急性心不全を発症した1例
(横浜労災病院循環器内科) 井上 明・
杉安愛子・田中真吾・坂巻美穂子・安西 耕・
鈴木 淳・小和瀬晋弥・青木 元・
荻ノ沢泰司・高田志保・窪田彰一・黒崎健司・
柚本和彦・玉木利幸・野上昭彦・加藤健一・
小西敏雄
症例は63歳,男性.全身性エリテマトーデス(以
下SLE)でステロイド長期内服中であった.平成
17年不安定狭心症を発症し重症3枝病変に対して
薬剤溶出性ステント(以下DES)を計6本留置し
た.平成20年3月不安定狭心症となり冠動脈造影
ではSeg.3ステント内の完全閉塞を認めた.同部
位に対してバルーン形成術を施行し25%狭窄とな
った.同年6月再度不安定狭心症が出現し冠動脈
造影では同部位のステント内完全閉塞を認めた.
ワルファリンを導入し病変部位に通常型ステント
留置術を施行した.SLEの血栓性素因のために血
栓性閉塞を繰り返す治療抵抗性冠動脈疾患の報告
は散見するが,アスピリン・チクロピジンの2剤
併用下においても短期間にDES内完全閉塞を繰
り返した症例は稀であり,追跡冠動脈造影ととも
に報告する.
症例,60歳女性.15歳時の高熱後から,心雑音を
指摘.1983年,ASr,MSrに対してHall-Kaster弁
による大動脈弁,僧帽弁の2弁置換術を施行され
た.1992年,脳梗塞を発症し僧帽弁再置換術を施
行されたが,warfarin内服で経過良好であった.
2008年6月,突然の呼吸困難にて救急搬送.来院
時,胸部X線で肺うっ血と心電図で著明なST低下
あり,心エコーで左室壁運動は保たれていたが,
重症大動脈弁逆流を認めた.弁透視で大動脈弁の
可動性低下を認め,人工弁機能不全と診断し,緊
急大動脈弁再置換術を施行.手術では,右冠尖相
当の弁下部にパンヌスを認め,弁の閉鎖が阻害さ
れていた.パンヌスは,病理学的にフィブリン塊
からなり,Fibrinogenesisと診断された.大動脈
弁置換術後25年経過し,弁機能不全による急性心
不全の1例を経験したので報告する.
980 第 210 回関東甲信越地方会
22) Unroofed Coronary Sinusと右室流出路狭
窄を合併した心室中隔欠損症の1例
(帝京大学循環器科) 初野健人・宮澤亮義・
上妻 謙・横山直之・山川 健・渡邉英憲・
興野寛幸・白鳥宜孝・石川秀一・紺野久美子・
山本裕貞・古川泰司・一色高明
(同心臓血管外科) 禰屋和雄・石川 進
(同放射線科) 鈴木 滋
【症例】労作時呼吸苦を主訴とした55歳女性.経
胸壁心エコー上心室中隔欠損症(VSD)type2を
診断した.右心内圧上右室流出路に46mmHgの圧
較差があり,右心造影で右室流出路に狭窄が認め
られた.造影CTで冠静脈と左房に交通を認め,
Unroofed Coronary Sinusと考えられた.VSDに右
室流出路狭窄
(Double Chambered Right Ventricle)
とUnroofed Coronary Sinusを合併した症例と診断
した.自覚症状を伴いQp/Qsは2.24であったため
手術適応と判断し,VSD閉鎖と肺動脈流出路形成
を施行した.術中に右室流出路に中隔心筋肥厚が
みられ,自由壁側に太い筋束が錯綜している所見
が得られた.【結語】VSDにUnroofed Coronary
Sinusと右室流出路狭窄を合併した稀な症例を経
験し,ここに報告する.
23) 乳頭筋断裂による急性左心不全にて僧帽弁
形成術施行した1例
(飯田市立病院循環器内科) 南澤匡俊・
山本一也・源田朋夫・片桐有一・唐沢光治
(小牧市民病院心臓血管外科) 澤崎 優
症例は61歳,男性.8月より労作時息切れを自
覚.10月に起座呼吸となり,近医受診し,心不全
の診断にて紹介入院となった.入院時の胸部X線
写真で肺うっ血を認め,BNPは820pg/mlであっ
た.心エコーでは僧帽弁前尖の逸脱を認め,左心
系の内腔拡大は顕著ではないため急性僧帽弁閉鎖
不全症と診断.心エコー所見は乳頭筋断裂を疑わ
せるものであったが,断裂の原因となる梗塞所見
などを伴わず発症原因は不明であった.内科的治
療では心不全をコントロールできず,外科的処置
のため転院し,僧帽弁形成術施行した.手術所見
は,乳頭筋の壊死性の断裂であった.術後の冠動
脈造影検査にて,鈍縁枝#12の100%狭窄を認め,
乳頭筋梗塞が原因と推察した.乳頭筋断裂を発症
し急性心不全を来した症例を経験したので,若干
の文献的考察を加えて報告する.
24) クレアチンキナーゼ(CK)上昇を伴わない
急性心筋梗塞の一例
(東邦大学医療センター大橋病院循環器内科)
高亀則博・福田 宏・佐藤香織・原 久男・
諸井雅男・中村正人・杉 薫
35歳男性.主訴は胸痛.過去に冠攣縮性狭心症の
診断を受けているが内服は自己中断していた.突
然の胸痛で来院し,心電図上V1-4でST上昇を認
め急性心筋梗塞と診断した.緊急冠動脈造影で左
前下行枝に血栓による完全閉塞を認めた.血栓吸
引デバイスにより血栓を吸引した.閉塞部位より
末梢側はspasmを起こしていたため塩酸イソソル
ビドを冠動脈内注入したところ拡張した.血管内
超音波上plaqueはほとんど認めずballoon拡張や
stent植え込みを必要としなかった.Spasmと血
栓性閉塞による急性心筋梗塞と診断した.術後
AST・LDH・トロポニンT・ミオシン軽鎖は有意
に上昇していたがCKは基準値内であり明らかな
CK上昇を伴わない急性心筋梗塞の一例と思われ
た.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
25) CPAの原因として多枝冠攣縮の関与が考え
られた急性前壁梗塞の1例
(東邦大学医療センター大森病院心血管インターベンション室)
新居秀郎・我妻賢司・鈴木健也・内田靖人・
天野英夫・戸田幹人
(同循環器内科) 山崎純一
症例は60歳男性.平成20年6月に社内でCPAとな
り,バイスタンダー CPR下に当院搬送.自己心
拍再開し,ECG上V1-4にST上昇を認めたため緊
急CAG施行.LAD seg.7及びLCx seg.13に完全閉
塞を認めた.梗塞責任病変はseg.7と考えIABP挿
入後にPCI開始した.しかしLCAにISDN 1mgを
投与したところ,それぞれ50-75%狭窄が残存す
るもののseg7,seg13ともTIMI 3の再還流を認め
た.seg.7はhaziness所見を認め,心電図変化と臨
床経過を考慮し当初の予定通りPCIを行いLiberte
3.0/24mmを留置した.今回我々はCPAの原因と
して多枝spasmの関与が考えられた急性前壁梗塞
の1例を経験したので報告する.
26) PCPS使用にて救命可能であった気絶心筋
の1例
(諏訪赤十字病院) 山崎佐枝子・神吉雄一・
酒井龍一・茅野千春・田村泰夫・大和眞史
81歳女性.
【既往歴】
高血圧.
【現病歴】H19年11月,
胸部不快感あり近医受診.心電図より心筋梗塞疑
われ当院紹介.搬送中,VfありAED使用した.来
院後緊急カテーテル施行.カテ室にてVfありDC
施行.心停止に到りPCPS挿入.CAGでは#1total
(CTO),#5 50%,#6just 99%(責任病変)
,#7-8
90%,#13 90%の3VDであった.LMTから#6と#
13にステント挿入後ICU入室.自己圧はほとんど
認めず,心エコー上,後壁の壁運動を認めるのみ
であった.第6病日PCPS抜去,第7病日IABP抜
去した.Peak CK3853.その後は合併症なし.ゆ
っくりリハビリし,第28病日にCAG施行.#13に
閉塞あり.#1PCI施行.第44病日に独歩退院した.
心筋梗塞直後はエコーでは前下壁の壁運動は認め
られなかったが,その後改善あり,気絶心筋と考
えられた.
27) 左室を潅流しない右冠動脈の閉塞により発
症した純粋な急性右室梗塞の1例
(済生会宇都宮病院) 横田裕之・太田賢一
高血圧症,糖尿病,喫煙歴を有する74歳の男性.
2007年5月15日,数十秒間の意識消失があり,救
急搬送された.搬送時は心原性ショックを呈し,
心電図上,洞停止に伴う房室接合部調律,V1∼
V3でST上昇,右側胸部誘導でST上昇を認めた.
心臓超音波検査では,右室の壁運動異常・拡大,
下大静脈の拡大,呼吸変動の消失を認め,右室梗
塞と診断した.緊急心臓カテ−テル検査を施行
した.右冠動脈(RCA)はsmallであるが,#1に
造影遅延を伴う99%狭窄を認めたため,血行動態
改善目的に同部位に対してインターベンション
(PCI) を 施 行 し た.Peak CKは1842IU/Lで, 術
後は9日間で軽快退院となった.左室を潅流しな
い右冠動脈であっても,PCIを行う意義を示す症
例であったので報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
28) Wegener肉芽腫症に合併した急性心筋梗塞
の1例
(帝京大学溝口病院第四内科) 浜田善隆・
速水紀幸・筒井健太・五島 啓・山岸 登・
山岸聖史・國島友之・村川裕二
症例は58歳女性.左聴力低下,鼻閉,鼻汁を主
訴に当院耳鼻咽喉科に入院した.鼻粘膜生検で
Wegener肉芽腫症と診断され,プレドニン30mg
の内服を開始した.数日後,夜間に胸痛を発症
し,心電図でV1・V2 にST上昇を認め,心エコー
では心尖部前壁中隔の壁運動低下を認めた.急性
心筋梗塞と診断され,緊急カテーテル検査を行っ
たところ,冠動脈本幹には狭窄を認めず,心尖部
の複数の中隔枝に閉塞を認めた.冠動脈インター
ベンションの適応はなく,保存的治療を行った.
Wegener肉芽腫症は血管炎としての虚血性心疾患
が合併しうることが知られるが,冠動脈造影所見
を報告した事例はまれであり,特徴ある所見を呈
していたため報告する.
31) 発症前後に器質的病変が否定され,冠動脈
塞栓症によると思われた急性心筋梗塞の一例
(東京慈恵会医科大学青戸病院循環器内科)
吉野拓哉・安澤龍宏・今本 諭・山崎弘二・
藤井拓朗・筒井健介・岩淵秀大・谷川真一・
笠井督雄・関 晋吾
(東京慈恵会医科大学循環器内科)
吉村道博
83歳男性.平成11年より慢性心不全,慢性心房細
動,心室頻拍,高血圧症に対し当科外来にて抗凝
固療法を含め加療中の平成20年2月28日慢性心不
全の増悪にて入院.心不全は改善傾向にあったが
3月7日急性心筋梗塞(CPK最大4551 IU/L)
,心
室細動を発症.緊急心臓カテーテルにて左前下行
枝#7の完全閉塞を認め同部に血栓吸引療法を施
行したところ0%に改善,続いての血管内超音波
では冠動脈に器質的病変を認めなかった.また心
不全の原因精査の為に同日急性心筋梗塞発症前に
施行されていた薬物負荷心筋シンチグラムではス
トレス誘発性心筋虚血を認めなかった.冠動脈
塞栓症の原因として心房細動,低心機能(左房
径41mm,EF 38%)に伴う血栓が考えられたが,
その発症前後にかけて冠動脈に器質的病変の無い
事を観察し得た貴重な一例と考え報告する.
29) 発症後2日以上経過した高度ST上昇型急
性心筋梗塞にPCIを行い著明改善が得られた1例
(江東病院循環器内科) 土肥善郎・
曽根岐仁・小泉章子・田宮栄治・井上 清
(順天堂大学循環器内科) 西野顕久・
土屋洋人・代田浩之
32) 大動脈基部置換術(Cabrol法)後に急性心
筋梗塞を発症した1例
(獨協医科大学越谷病院) 千田瑞穂・
新健太郎・小松孝昭・蟹江禎子・尾崎文武・
藤掛彰則・由布哲夫・瀧澤 圭・谷口 勲・
酒井良彦・a柳 寛
症例は65歳の男性で主訴は胸痛.現病歴は高脂血
症を指摘されるも放置.平成20年3月3日に5
時間の持続的胸痛を自覚し,一旦やや治まるも
3月5日朝より持続したため夕方来院.ECGは
STV1-4上 昇(max 1mV) とQV2-3,WBC13000,
CK208,GOT57,TropT(+)で心エコーは前壁
中隔心尖部の中等度hypoであった.心カテにて
LAD#7が閉塞し側副血行路は認められなかった.
PCI(血栓吸引とステント留置)を行ったとこ
ろslow flowや狭窄なく再還流が得られた.術後
の経過は良好でECGは3月14日QV2-4,TV1-4陰
転(max 1mV)であったが4月17日よりT陰転が
改善し始め,5月29日よりQSV2以外はR波高や
T波全てが正常化し,心エコーも前壁中隔の軽度
hypo(EF72%)に改善した.発症後2日以上経
過した高度ST上昇型急性心筋梗塞にPCIを行い著
明改善が得られたのは稀と思われ報告した.
66歳男性.意識消失にて入院.完全房室ブロック
を認め,心室細動へ移行した.除細動後ST上昇
を認め,心原性ショックを伴った急性下壁心筋梗
塞と診断.PCPS,IABP,体外式ペースメーカー
を挿入し,緊急冠動脈造影を行った.大動脈弁閉
鎖不全症,大動脈基部の解離にて大動脈基部置換
術(Cabrol法)後のため,冠動脈造影に難渋した.
責任病変である右冠動脈は人工血管に端々吻合さ
れ,人工血管より右冠動脈にかけて多量の血栓を
認め,血栓吸引後バルーンで血栓破砕を行った.
末梢まで造影されたが,残存血栓は多量であり,
t-PA冠注し経過観察とした.第2病日にPCPSは
抜去し,第3病日に確認冠動脈造影施行.人工血
管内には残存血栓を認めたが,右冠動脈内の血栓
は完全に消失していた.Cabrol法では術後の管理,
加療が重要と考えられた.
30) 冠動脈造影検査中に急性冠閉塞をきたした
労作性狭心症患者の1例
(公立昭和病院循環器科) 佐藤純一・
田中茂博・山田朋幸・小阪明仁・石原有希子・
吉良有二
33) 約1時間のLong CPRから社会復帰し得た
急性心筋梗塞の一例
(さいたま赤十字病院循環器科) 梅松 瞳・
松村 穣・根木 謙・小西裕二・黒柳亨義・
村松賢一・佐藤 明・大和恒博・新田順一・
武居一康・淺川喜裕
79歳男性 1997年に前壁中隔の心筋梗塞,2001年
に下壁梗塞を発症している.2008年1月に不安定
狭心症で入院.LADに病変を認めPCIを実施.退
院後の同年5月より労作時の胸痛が出現.心筋負
荷シンチで前壁および下壁の虚血を疑い同年7月
8日にCAGを実施.左冠動脈造影の際,LAD近
位部に高度狭窄病変を認めた.右冠動脈を右前斜
位で造影し#1に狭窄を認めた.次に左前斜位頭
側の造影を行ったところ同部位が完全閉塞となっ
ていた.一過性にショックに陥ったが直ちにPCI
を実施,ステント留置にてBail outに成功.IVUS
ではステント前後に解離所見は認めず,造影剤注
入時にプラーク破裂をきたしたと考えられた.急
性冠閉塞はCAGにおける頻度の少ない合併症の
一つであるが,起った際には緊急的な処置が求め
られる.
53才男性.2008年1月21日午前10時頃,駅構内で
卒倒した.駅員がAEDを装着し,2度作動した
が心拍再開せず,CPRを施行し当院に搬送された.
ERでのCPRでも心拍再開を得られず,発症より
約1時間後にPCPSを開始した.開始後に心拍が
再開し,急性前壁梗塞と診断した.LAD近位部完
全閉塞を再灌流し血行動態が改善したため,同日
PCPSを離脱,第3病日にはIABPからも離脱し得
た.急性期には脳保護のため低体温療法を施行し,
第3病日に意識が改善した.CPR後frail chestを
合併したが呼吸器からも容易に離脱し得た.CPK
の最高値は7520(MB590)IU/Lで,左室収縮能
は軽度の低下にとどまり,その後は急性期合併症
なく14病日に軽快退院した.約1時間のCPRにも
関わらず,ほぼ後遺症なく社会復帰し得た急性心
筋梗塞の一例を経験した.
ベルサール神保町(2008 年 12 月) 981
34) 正常洞調律の明らかな基礎心疾患を有さな
い若年発症の急性心筋梗塞の1例
(都立豊島病院循環器科) 川守田剛・
松原清二・佐伯 仁・猪又兵衛・渋井敬志
(東京医科歯科大学循環制御学) 磯部光章
37) 心筋MRIで経過観察した好酸球性心筋炎の
一例
(杏林大学循環器内科) 谷合誠一・
永井 亘・坂田好美・吉野秀朗
(同放射線科) 横山健一
40) 経過中左室内血栓から脳梗塞を併発した急
性心筋炎の1例
(東京警察病院循環器内科) 西前伊紀子・
白井徹郎・笠尾昌史・鈴木将敏・野崎みほ・
新田宗也・金子光伸
症例は34歳男性,平成20年5月23日安静時胸痛
出現,当院救急外来受診,12誘導心電図にて1,
AVLにてST上昇を認め,急性心筋梗塞(側壁)
と診断, 同 日 緊 急冠 動脈 造影 術(CAG)施 行,
左前下行枝(#6)に造影欠損像,第1対角枝(#
9)の完全閉塞の所見を認め,今回の責任病変は
#9と診断,同部位に対し経皮的冠動脈インター
ベンションを施行した.血栓吸引術にて棍棒状の
巨大血栓を認め,再開通後残存狭窄は認めなかっ
た.今回の急性心筋梗塞は冠動脈塞栓症によるも
のと診断,経食道心エコーにて左心耳内血栓を認
めるも,各種検査(ホルター心電図,経胸壁心エ
コー,抗カルジオリピン抗体など)にて原因は特
定出来なかった.今回われわれは,明らかな基礎
心疾患を認めない若年発症の急性心筋梗塞の1例
を経験したので報告する.
症例は木村氏病で皮膚科通院中の77歳女性.入院
1ヶ月前の血液検査上WBC7200/μL,Eo51%と
好酸球増加を認めた.脊柱管狭窄症の疼痛に対し
て座薬を使用したところ呼吸苦を訴え,当院を受
診した.胸部レントゲンとCTより肺うっ血と有
意な心嚢液貯溜を認めた.呼吸不全を呈しており
急性心不全の診断で入院した.プレドニゾロン
80mgによる治療を開始し,翌日にはWBC12900/
μL,Eo0.7%と好酸球数は著減した.利尿薬,ス
テロイドによる治療は漸減したが,2週目頃から
心嚢液,胸水は徐々に改善していった.1ヵ月後
造影MRIを行い,遅延造影で側壁中心に心筋内部
に不均一な染影所見を認めた.軽快後に行った造
影MRIで,心筋炎の所見は改善傾向を認めた.治
療とともに造影MRIなどで経過観察ができた好酸
球性心筋炎を経験したので報告する.
【症例】49歳男性.2008年5月発熱および関節痛
を主訴に入院.第2病日より急激に心不全が進行
し,各種臨床所見よりコクサッキーA群9型ウイ
ルスによる急性心筋炎と診断,抗心不全治療を開
始した.第6病日の心エコーにて左室内に多発す
る血栓が出現したため抗凝固療法を強化したが,
第11病日に左小脳から脳幹にかけて広範囲な梗塞
を発症し,またこれによる急性水頭症を併発した
ため同日緊急減圧開頭術を施行した.術後抗凝固
療法を再開したところ第13病日に脳室内出血を来
し水頭症の再増悪を認めたため穿頭ドレナージ術
を施行した.術後,高次機能障害は残存するもの
の経過は順調で心機能も正常化し退院となった.
心室内血栓から脳梗塞を併発した急性心筋炎の報
告は稀であり,急性心筋炎における血栓形成機序
の考察と共に報告する.
35) Adams-Stokes発作を伴う徐脈性心房細動
を初期症状とし,心筋虚血の関与の判断に難渋し
た急性心筋梗塞の一例
(伊那中央病院循環器科) 北林 浩・
関村紀行・小口泰尚・竹松勇人
38) 滲出性収縮性心膜炎で再発し,ドレナージ
により軽快した特発性心外膜炎の1例
(立川綜合病院循環器内科) 杉浦広隆・
布施公一・勝見亮太・永田拓也・木村 揚・
斎藤淳志・藤田 聡・池田佳生・北澤 仁・
高橋 稔・佐藤政仁・岡部正明
41) 右室,右房に壁肥厚と遅延造影が生じ,ステ
ロイドで劇的に改善した慢性活動性心筋炎の一例
(千葉大学循環器内科) 早川直樹・
上田希彦・浜 義之・桜井 玲・金枝朋宣・
上原雅恵・村山太一・三上陽子・李 光浩・
高岡浩之・高野博之・船橋伸禎・小室一成
64歳男性.胸痛で発症.入院時にST上昇と炎症
反応(CRP 5.7mg/dl)を認めたが,心膜肥厚や
心嚢液貯留は認めなかった.急性心外膜炎と診
断し,安静のみで軽快した.2年後に全身倦怠
感で受診.ST変化は認められなかったが,炎症
反 応(CRP 7.9mg/dl)
, 心 膜 肥 厚, 心 嚢 液 貯 留
を認めた.心膜炎再発と診断,開窓ドレナージ
とABPC/SBT投与を行った.心嚢液中ADAは高
値(61IU/L)であったが,培養,病理,PCR法,
QuntiFERONでは結核を示唆する所見なく,その
他の所見とあわせ特発性と診断した.カテーテル
検査では四腔の拡張期等圧を認め,収縮性心膜炎
の状態であった.経過観察としたところ,炎症の
再燃なく,CTでは心膜肥厚の消退を認めた.し
かしカテーテル検査では引き続き四腔の拡張期等
圧を認めており,経過観察中である.文献的考察
を加え報告する.
症例は生来健康の65歳男性,健診で一過性高度房
室ブロックと前胸部誘導での陰性T波で近医受
診,経胸壁心エコーで右室壁肥厚が観察された.
他院での冠動脈造影は正常も,持続性心室性頻拍
が出現し,当院来院.造影CT,MRIでは右房,右室,
左室心尖部に壁肥厚と遅延造影が観察された.電
気生理学検査で二種類の持続性心室性頻拍が誘発
され,右室中部中隔に起源を同定し,両部位にア
ブレーションを行った.右室心内膜生検では間質
性浮腫,線維化と心筋細胞の破壊がリンパ球の浸
潤とともに観察され,慢性活動性心筋炎が示唆さ
れた.CT,MRIの右房,右室壁肥厚と遅延造影
はリンパ球浸潤と浮腫を示唆すると考えられた.
埋込型除細動器が植え込まれた後,プレドニゾロ
ン40mgから投与された.3か月後のCTでは右室,
右房壁肥厚が劇的に改善した.
39) 急性心筋炎と無顆粒球症を合併し,死後病
理解剖にて胸腺腫が見つかった1例
(東京慈恵会医科大学循環器内科)
伊藤敬一・徳田道史・佐藤伸孝・八木秀憲・
青山尚文・本郷賢一・吉村道博
(同病院病理部) 濱田智美
42) 長期に及ぶ右心不全の原因がCABG術で使
用したシート状止血剤による心外圧迫・収縮性心
膜炎であった一例
(日本医科大学集中治療室) 榎戸 馨・
加藤浩司・宗像 亮・鶴見昌史・鈴木大悟・
上野 亮・時田祐吉・村井綱児・川中秀和・
山本 剛・佐藤直樹・田中啓治
(日本医科大学循環器・肝臓・老年・総合病態部門)
中野博之・水野杏一
(日本医科大学多摩永山病院内科)
細川雄亮・草間芳樹
(日本医科大学内分泌・心臓血管・呼吸期部門)
落 雅美
症例は76歳男性.脱力感,眼前暗黒感を自覚し遷
延するため,発症2日後近医を受診,徐脈を指摘
され当科入院となった.入院時,脈拍42/分.心
電図上,徐脈性心房細動を認めたが,明らかな
ST-T変化を認めなかった.CK 759IU/L,CK-MB
38IU/L.心エコー上,左室壁運動異常を認めな
かった.恒久的ペースメーカを考慮しつつ,第5
病日に心臓カテーテル検査を施行したところ,右
冠動脈の亜閉塞を認めたためPCIによる血行再建
を行った.その後徐脈は消失した.軽度の心筋逸
脱酵素系の上昇を認めたものの,明らかな胸部症
状,心電図変化,心エコー上の左室壁運動異常を
認めず,初期段階で徐脈性心房細動に対する虚血
の関与の判断に難渋した一症例を経験したので報
告する.
36) 食道走行の偏位が誘因となり,経食道心エ
コーによる食道穿孔をきたした1例
(日本医科大学内科学講座循環器部門)
村田広茂・大野忠明・本間 博・藤本啓志・
高橋保裕・宮内靖史・小林義典・水野杏一
(同外科学講座消化器部門) 重原健吾・
大川敬一・宮下正夫
(同生理機能センター) 田尾清一・
見友優子・関野玲子・松崎つや子
症例は76歳の女性.心房細動,心嚢液貯留を伴う
心不全の加療中に血栓評価の目的で経食道心エコ
ーを施行した.プローブ挿入・操作中に抵抗は感
じなかったが,帰室後胸背部痛出現,胸部CTで
頚部皮下気腫と縱隔気腫を認め,食道穿孔と診断
した.食道造影では気管分岐部レベルで造影剤漏
出がみられた.縱隔炎による発熱と炎症反応の高
値は第5病日まで持続したが,縱隔ドレナージと
経鼻胃管による食道内減圧療法等により第23病日
には食事摂取が可能となった.誘因としては左房
拡大と心嚢液貯留による食道の圧排,食道の偏位
が推測された.経食道心エコーによる食道穿孔は
当院では3040例中初めてで,稀ではあるが致死的
となる場合もあり,著明な心拡大や心嚢液貯留を
認める症例では事前に食道造影等を考慮すべきと
考えられた.
982 第 210 回関東甲信越地方会
症例は52歳男性.今まで心疾患の既往はなし.平
成20年3月咽頭痛を自覚し近医を受診.急性咽頭
炎の診断にて,感冒薬を処方された.その後も症
状改善しないため,4月1日当院受診.血液検査
の結果,無顆粒球症の診断にて血液腫瘍内科緊急
入院となった.第1病日に完全房室ブロック・急
激な左室収縮能低下から心原性ショックを呈し,
急性心筋炎の診断にて循環器内科転科となり,γ
グロブリンを併用した心不全管理を行った.心筋
炎は改善傾向を示したものの無顆粒球症は改善せ
ず,第10病日に重症肺炎から肺出血を併発し急性
呼吸不全にて永眠された.死後病理解剖にて胸腺
腫が確認された.胸腺腫を伴った無顆粒球症と急
性心筋炎の合併例の報告は今までなく,稀少な症
例と考え報告とした.
【症例】65歳 男性【現病歴】15年前に他院にて冠動脈バイ
パス術施行.術後収縮性心膜炎と診断され,近医で加療さ
れていた.1年前から右心不全症状増悪,加療目的に当院
入院.胸部CTでは心外膜の軽度石灰化と心臓後下壁に腫
瘤を認め,右心カテーテルではdip and plateau波形を認め
た.このため腫瘤による心外からの圧迫および収縮性心膜
炎による右心不全と診断し手術療法を行った.心外腫瘤は
止血目的に使用された酸化セルロース製剤であり,可能な
限り摘出した.その後右心不全症状は著明に改善した.
【考
察】生体吸収性素材とされる酸化セルロース製剤だが,大
量に使用した場合残存すると報告もあり,本症例も残存し
た酸化セルロース製剤による心外圧迫,収縮性心膜炎によ
り右心不全が出現したと考えられた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
43) たこつぼ心筋症との鑑別が困難であった急
性心筋炎の一例
(聖マリアンナ医科大学循環器内科)
足利光平・明石嘉浩・小山幸平・鈴木健吾・
長田圭三・大宮一人・三宅良彦
【症例】47歳,男性.急性腎盂腎炎の第2病日に
急性循環不全を呈し,心電図にて肢誘導(2,3,
aVF),全胸部のST上昇を認めたことから,心臓
カテーテル検査を施行.冠動脈に有意狭窄を認め
ず,左室造影での駆出率は13%.心尖部は無収縮
であったが心基部の壁運動が保たれていたことか
ら,たこつぼ心筋症を疑い,mechanical support
下での内科的加療開始.胸部誘導のST上昇は間
もなく改善したものの,左室壁運動改善の兆しが
なく,第8病日までForrester 4度にて経過.第11
病日に施行した心筋生検にて,単核球と形質細胞
主体の細胞浸潤を認めたことから,急性心筋炎と
診断した.心電図変化が非典型的で,第28病日の
左室駆出率は33%と壁運動回復が遅く,MIBG心
筋シンチグラフィー所見がたこつぼ心筋症と一致
しない,診断に苦慮した本症例を報告する.
46) 心原性ショック状態に陥ったトキソプラズ
マ心筋炎の1症例
(昭和大学藤が丘病院循環器内科)
長谷部義幸・前澤秀之・本田雄気・河内恵介・
若月大輔・若林公平・清水信行・下島 桐・
浅野冬樹・佐藤督忠・江波戸美緒・東 祐圭・
橋本 通・鈴木 洋・嶽山陽一
(同病院病理科) 増永敦子
症例は81歳男性.大腿骨頚部骨折で入院中に胸痛
出現し,心電図で異常Q波をII,III,aVf,V1-V3,
ST上昇をV1-3で認め,AMIを強く疑った.患者の
ADLや腎機能障害もあったことから緊急心カテ
ーテル検査は施行せず.CCU転室時より血圧50
台で,昇圧剤最大量投与するが血圧70前後のショ
ック状態であった.UCG上EF20%台起始部以外
はakinesis,CKmax253/21でAMIではなく,たこ
つぼ心筋症を疑った.第4病日よりSpO2が86%
に低下,胸部X-P上肺水腫認め,DIC合併.第12
病日に呼吸状態改善なく,心停止となった.後日,
病理解剖を行ったところ,心筋内にトキソプラズ
マの偽嚢胞を認め,トキソプラズマ心筋炎と診断.
肺にも偽嚢胞が多数見られ,直接死因はトキソプ
ラズマ症による広範囲な気管支肺炎と思われた.
44) 四次元マルチスライスCTによる心膜疾患の
新しい評価法
(千葉大学循環病態医科学) 近藤祐介・
船橋伸禎・上原雅恵・高岡浩之・小林欣夫・
小室一成
47) 三心房心を合併した心房細動に対し高周波
ホットバルーンカテーテルを用いてアブレーショ
ンに成功した一症例
(葉山ハートセンター不整脈センター)
武田 寛・曽原 寛・上野秀樹・佐竹修太郎
【目的と方法】心電同期マルチスライスCTで心膜
の性状診断とともに心臓,心膜,心膜周囲の肺の
心拍動による動きの評価が可能である.今回収縮
性心外膜炎と診断された5名および他疾患5名の
心電図同期CT画像より四次元画像を作成し,心
臓,心膜及びその周囲の肺を含む他臓器の動態評
価を,再現性を含めて行い,心エコー及びカテ−
テル検査所見と比較した.【結果と結論】心電図
同期CTは心膜の石灰化,肥厚,血腫等の性状評
価とともに心臓,心膜及び心膜周囲の肺の動きに
より拡張能評価が可能であった.再現性は二検者
間で一致率(左心縦隔条件70%,同肺野条件80%,
右心縦隔条件80%,同肺野条件83%)
,カッパ係
数(左心縦隔条件0.546,同肺野条件0.688,右心
縦隔条件0.656,同肺野条件0.600)とも良好であ
った.
【背景】三心房心を合併した心房細動症例に対し,
高周波ホットバルーンカテーテルを用いてアブレ
ーションを行ったので,ここに報告する.【経過】
心エコーと心臓MSCTで,左心房内に隔壁が証明
された.2008年3月,高周波ホットバルーンカテ
ーテルを用いて肺静脈と左房後壁の隔離術を行っ
た.左心房内の隔壁が手技の障害となることはな
かった.現在,心房細動の再発はない.【考察】
心房細動アブレーションの標的となるのは肺静脈
が左心房に接続する後壁が主となる.隔壁は左心
房前壁寄りにあるので,後壁に通じる開口部があ
る程度大きければアブレーションの障害になると
は考えにくい.このような症例において,心房細
動のコントロールが困難であり,患者が根治を希
望するような場合は,積極的なアブレーションの
適用になると思われる.
45) うっ血性心不全を来たし心室細動となり死
亡した成人スティル病の1例
(長野松代総合病院循環器科) 相澤克之・
百瀬智康・西村仁志・三澤卓夫
48) Electrical stormとなった心室細動(VF)へ
のステロイドパルス著効例
(公立藤岡総合病院) 梅元あずさ・
高松寛人・金子 敦・遠藤路子・植田哲也・
長岡秀樹・井上雅浩・飯島 徹・鈴木 忠
症例は69歳男性.高血圧症,糖尿病,脂質異常症
で内服中.発熱と両上腕痛のため紹介入院.身
体所見は特記事項なく,胸部レントゲンと心電
図は正常範囲.血液検査では炎症反応が高値だ
が肝・腎機能は正常で抗核抗体,RAPAは陰性.
38℃台の高熱が続き全身に移動性の疼痛があり,
NSAIDで改善せず.第21病日に心房細動となり
心不全症状が出現した.経過より成人スティル病
と診断し第33病日よりプレドニゾロンの投与を開
始,炎症所見と心不全症状は軽快傾向となった.
第56病日より血圧が下降し胸痛・動悸などの胸部
症状が出現.第70病日に心臓カテーテル検査を行
い冠動脈の狭窄に対しPCIを予定したが,第74病
日に心室細動となり蘇生術に反応せず死亡.心臓
カテーテル検査所見と,剖検所見を中心に報告す
る.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
症例は69歳男性.会話中に突然倒れ意識消失・
全身痙攣が出現.救急隊到着時VFであり,AED
により除細動されるもVT/VFを繰り返した.当
院到着後もVT/VFを繰り返し,リドカイン,ニ
フェカラント,プロプラノロール等の投与を行
ったが,VT/VFのコントロールはつかなかった.
PCPSを検討したが,メチルプレドニゾロン1gを
点滴静注したところ,洞調律を維持できるように
なり,VT/VFの再発は認めなかった.低体温療
法施行後day9には意識清明となり,明らかな神
経学的後遺症なく回復した.後日冠動脈3枝病変,
局所の左室壁運動低下を認めたため,虚血性心疾
患に伴うVT/VFであったと考えた.薬剤抵抗性
のelectrical stormに対しステロイドパルス療法が
奏効し,救命しえた症例につき報告する.
49) 僧帽弁狭窄症に対する僧帽弁形成術 弁置
換術の回避の工夫
(順天堂大学心臓血管外科) 蒔苗 永・
丹原圭一・稲葉博隆・山本 平・山崎元成・
川崎志保理・土肥静之・齋藤洋輔・佐川直彦・
嶋田晶江・天野 篤
【背景】僧帽弁狭窄症に対する手術は人工弁を用
いた弁置換術が選択されることが多い.しかし術
中の肉眼所見に応じて組織の可動性を得るべく工
夫することで弁形成術が可能となり,弁置換術を
回避できる症例も散見される.【対象と方法】対
象は僧帽弁狭窄症に対して僧帽弁形成術を行った
4例であった.直視下に僧帽弁を観察しつつ,弁
葉の石灰化や肥厚組織を超音波破砕装置やメスを
用いて除去した.さらに変性した腱索を一部切除
したり,前後の乳頭筋を切開したりすることで弁
葉の可動性を改善させた.弁輪部に全周性のリン
グを縫着した.形成後は水試験で逆流の有無や弁
尖の接合を評価した.慢性心房細動は3例に認め
られ,全例にMaze手術を施行し,術後は洞調律
が維持された.【結果】病院死亡0例,遠隔期の
逆流発生0例であった.
50) Rhythm control vs. Rate control:洞調律化
により心機能が正常化した心房細動合併拡張型心
筋症の一例
(筑波大学循環器内科) 町野 毅・
関口幸夫・黒木健志・山崎 浩・吉田健太郎・
五十嵐都・有本貴範・村越伸行・夛田 浩・
久賀圭祐・青沼和隆
症例は36歳男性.主訴は呼吸困難.心臓カテーテ
ル検査を行い拡張型心筋症と診断された.持続性
心房細動(AF)を合併していたが,レートコント
ロールは極めて良好であった.利尿薬,ACE阻害
薬,β遮断薬およびアミオダロンを含む薬物治療
を行ったが,AFは持続し左室機能は改善を認めな
かった.本人の強い希望があり経皮的肺静脈隔離
術(PVI)を行ったところ,抗不整脈薬なしで2
年間洞調律が維持されており,左室駆出率は17→
66%と改善し,BNPも230→11pg/mlと低下した.
AFによる左室機能低下の原因として頻脈依存性
心筋症がよく知られているが,拡張型心筋症に合
併するAFには,本症例のように良好にレートコン
トロールされていても左室機能が低下する症例が
存在し,PVIによる積極的なリズムコントロール
が著効する症例が存在すると考えられた.
51) 経皮的腎動脈形成術(PTRA)により腎機
能と薬剤抵抗性高血圧の著明な改善を得た両側腎
動脈狭窄症(RAS)の2例
(東京大学循環器内科) 藤田英子・
杉山裕章・佐原 真・槇野陽介・齋藤 幹・
森田敏宏・石坂信和・平田恭信・永井良三
(長崎大学循環病態制御内科) 前村浩二
【症例1】72歳女性.僧帽弁置換術後,慢性心不
全,高血圧(HT),慢性腎臓病例.心不全増悪入
院後,腎機能障害が進行し透析導入となり,その
後両側RASと判明した.両腎とも8.5cm大と軽度
萎縮していたが,腎機能改善を目指し両側腎動脈
へPTRAを施行した.術後腎機能の著明な改善
(Cre 4.0→1.5mg/dl)が得られ,透析離脱に成功
した.【症例2】63歳女性.冠動脈バイパス術施
行直前に,両側RASによる難治性HTが明らかと
なり循内転科.まず右腎動脈へPTRAを施行し,
ACEI/ARBを含む多剤併用療法を施すも血圧改善
は不十分だった.左腎動脈へもPTRA追加を後は,
血圧は著明に改善した.以上は今後増加が予想さ
れる一方,発見が遅れがちなRAS治療を考える上
で示唆に富む2症例と考え,当院の治療戦略・成
績も交えて報告する.
ベルサール神保町(2008 年 12 月) 983
52) 先端巨大症に合併した左室拡大を伴う心機
能低下が軽快した一例
(長野市民病院) 小林 聡
(信州大学循環器内科) 矢嶋紀幸・
相沢万象・笠井宏樹・伊澤 淳・富田 威・
熊崎節央・筒井 洋・小山 潤・池田宇一
症例は32歳男性.浮腫と夜間呼吸困難を主訴に近
医を受診し,心不全と診断され入院となった.左
室駆出率(EF)20%,左室拡張末期径(LVDd)
73mm,BNP 1720pg/mLであり,拡張型心筋症を
疑い心不全加療した.身体所見から先端巨大症に
ついて精査し,成長ホルモンとインスリン様成長
因子の高値と脳MRIで下垂体腺腫を認めた.カル
ベジロールとエナラプリルでEF 45%,LVDd 62
mmまで軽快し,経蝶形骨洞的下垂体腺腫摘出術
を施行した.術後EF 76%,LVDd 57mmと心機能
は改善したが,IVS 19mm,LVPW 13mmと対称
性中隔肥厚を呈する左室肥大を認めた.本症例は,
成長ホルモン異常症に伴う所見として一般的とさ
れる左室肥大や拡張障害と比べて,文献上の報告
が散見されるものの非典型的な経過であったと考
えられ,また治療が奏功したため報告する.
53) CTで両心室,心房壁肥厚により心アミロイ
ドーシスを疑った3例と左室壁肥厚のみを示した
10症例との比較検討
(千葉大学循環病態医科学) 岸 幹夫・
宮山友明・桜井 玲・上田希彦・上原雅恵・
高岡浩之・三上陽子・村山太一・山崎道子・
小林欣夫・高野博之・舘野 馨・船橋伸禎・
小室一成
左 室 壁 肥 厚 を き た す 疾 患 に は 肥 大 型 心 筋 症,
Fabry病,心アミロイドーシス,大動脈弁狭窄症,
高血圧性心肥大等があり,一方,右室壁肥厚には
肺動脈弁狭窄,慢性肺血栓塞栓,Fallot四徴症な
どで認められる.うち心アミロイドーシス等の沈
着病は,左室のみならず,右室,右房等に壁肥厚
をきたす可能性がある.MSCTはMRIと同様,心
筋評価に優れており,左心筋壁の肥厚,局所壁運
動異常,線維化,血栓の存在の正確な診断が可能
であるが,上記左室壁肥厚をきたす疾患の鑑別に
特異性が乏しい.今回我々は,CTで左室,右室,
右房壁肥厚を合併した3症例につき,左室壁肥厚
のみの10症例と,心電図,右房壁近傍の洞結節機
能,心室拡張能や一部生検,血液所見を比較し,
右室,右房壁肥厚合併所見が洞不全症候群合併の
沈着病の鑑別に有用であると考えた.
54) 完全房室ブロックにて発症し,胃生検によ
り確定診断に至った心サルコイドーシスの1例
(日本医科大学千葉北総病院循環器内科)
淀川顕司・山本真功・稲見 徹・岡田 薫・
村上大介・田近研一郎・林 明聡・大場崇芳・
大野則彦・青木 聡・雪吹周生・清野精彦
(日本医科大学循環器・肝臓・老年・総合病態部門)
水野杏一
67歳,女性.平成19年11月25日めまいを主訴に近
医受診.心電図で完全房室ブロックを認めた.4
日後自然に洞調律へ復帰したが,心エコー上左室
前壁中隔から側壁に壁運動異常を認め,EFは35
%と低下していた.冠動脈造影では有意狭窄を
認めなかったもののTl心筋シンチで冠動脈支配に
一致しない欠損像を認め,原因として心サルコ
イドーシスが疑われたが他臓器病変なく確定診
断には至らなかった.アミロイドーシス等の全
身性疾患の鑑別のため胃生検を施行したところ
Langerhance typeのmultinucleated cellを 認 め サ
ルコイドーシスの診断を得た.肺病変なく,胃生
検を契機に確定診断に至った心サルコイドーシス
はきわめてまれと思われ電気生理学的指標・心筋
マーカー等による評価とあわせ報告する.
984 第 210 回関東甲信越地方会
55) 左室補助人工心臓装着下における右心不全
と大動脈弁逆流のコントロールに難渋しながら心
臓移植に至った1例
(東京大学循環器内科) 志賀太郎・
絹川弘一郎・波多野将・八尾厚史・平田恭信・
永井良三
(同心臓外科) 小野 稔・高本眞一
症例は44歳の男性.著明な右室右房拡大を伴う拡
張型心筋症で,両室ペーシングのnon-responder
であり,カテコラミン依存状態であった.移植登
録後,2006年11月に当院心臓外科にて左室補助人
工心臓(LVAD)装着術を施行した.術後,一旦
カテコラミンからの離脱に成功したが,徐々に右
心不全が増悪したため,カテコラミンを再開した.
2007年8月頃より以前には見られなかった大動脈
弁逆流が出現し,LVADの陽圧増加で対応したが,
かえって大動脈弁逆流は増大した.カテコラミン
の増量で心不全管理につとめたが治療は極めて難
渋した.2008年5月に移植ドナーが出現.心移植
待機日数804日,LVAD装着日数541日で当院にて
心臓移植に成功した.摘出心の大動脈弁は正常で
あった.
56) 心臓MRIが診断と病態把握に有用であった
急性心筋炎の一例
(東京女子医科大学) 東谷迪昭・長嶋道貴・
中島崇智・井上敬美・山田典弘・南雄一郎・
鈴木和仁・森 文章・高木 厚・萩原誠久
患者は29歳男性.遷延する高熱と感冒様症状を主
訴に来院.インフルエンザBウイルス抗体の検出
とともに,胸部X線写真で肺うっ血が認められ,
インフルエンザに合併した急性心不全の診断で緊
急入院となった.血清CRPおよびトロポニンTは
高値を示した.従来の薬物治療が奏功し,インフ
ルエンザおよび心不全は速やかに軽快した.連続
的に行われた心臓MRIは,急性期のシネモードに
よる左室壁運動低下とT2強調画像での左室前壁
心外膜側の信号強度増加,ガドリニウム造影によ
る同部位のlate enhancementを明らかにし,それ
らの経時的改善を克明に示した.本患者は急性心
筋炎と診断された.心臓MRIが診断と病態の把握
に有用であった急性心筋炎の一例を,若干の文献
的考察を加えて報告する.
57) 痙攣重積発作を契機として発症した逆たこ
つぼ型心筋障害の1例
(慶応義塾大学循環器内科) 永井利幸・
真鍋知宏・唐澤隆明・影山智己・香坂 俊・
河村朗夫・岩永史郎・安斉俊久・吉川 勉・
小川 聡
症例は脳動静脈奇形で痙攣発作を繰り返していた
70歳男性.2008年6月某日,痙攣重積発作で当
院に緊急搬送された.ジアゼパムの投与で発作
は沈静化し,頭部CTで出血所見は認めなかった
が,心電図でI,aVL,V1-5にST上昇が認められ
た.急性心筋梗塞の診断で緊急冠動脈造影を施行
した.冠動脈に有意狭窄を認めず,左室造影で心
室中部の無収縮および基部,心尖部の過収縮を認
め,逆たこつぼ型心筋障害と診断した.心筋逸脱
酵素の上昇は軽度であった.心不全および不整脈
など合併症を認めず,第10病日に軽快退院した.
各種ストレスを契機として発症するたこつぼ型心
筋障害に関する報告は多数あるが,逆たこつぼ型
心筋障害で特に痙攣を契機として発症した報告は
少なく,文献的考察を加えて報告する.
58) 心房中隔欠損症に左室中部閉塞型肥大型心
筋症を合併した1例
(まつもと医療センター松本病院)
堀込充章・矢崎善一
【症例】57歳の女性【主訴】呼吸困難【現病歴】
2008年1月下旬より下腿浮腫が出現.2月21日突
然,呼吸困難感が出現し当院に救急搬送された.
来院時,頻脈性心房細動と高度な肺うっ血を認め
た.心エコー検査で心房中隔欠損(ASD)およ
び左室中部閉塞型肥大型心筋症(MVO)が疑われ,
心臓カテ−テル検査にて,右房中部でO2ステップ
アップを,左室造影でMVOを確認した.Qp/Qs
2.58,シャント率は59.2%であった.利尿剤,カ
ルペリチド等で治療開始し,肺うっ血は改善後
に,少量からビソプロロールを開始し洞調律に復
した.
【総括】心尖部肥大型心筋症とASDの合併
は今までに報告が見られるが,ASDとMVOとの
合併の報告はなく,興味ある症例と考え報告する.
59) MRIによる心尖部の評価が診断に有用で
あった心室中部閉塞性肥大型心筋症に合併した心
室頻拍症の1例
(松本協立病院循環器センター) 小池直樹・
横田大介・阿部秀年・鈴木 順・上小澤護・
山崎恭平
(やざき診療所) 矢崎吉純
症例は53歳の男性.主訴は動悸.2007年12月3日
近医受診し,心電図にて心室頻拍を認め,当院へ
紹介となった.来院時は心拍数212/分,右脚ブロ
ック型,II,III,aVfで下向きの心室頻拍で,ア
ミオダロンの静注で洞調律に復した.MRI検査に
おいて心筋の肥大,心尖部心室瘤の存在が明瞭に
描出され,遅延造影では菲薄化部位に一致して高
信号領域が認められた.冠動脈造影では有意な狭
窄は認められなかった.電気生理学検査では心室
頻拍が再現性をもって誘発された.心尖部心室瘤
を合併した心室中部閉塞性肥大型心筋症と診断,
植え込み型除細動器の挿入を行い,アンカロンの
内服を継続した.心尖部心室瘤の描出と心室頻拍
のfocusと考えられる心筋のscarの同定にはMRI
が極めて有用であった.
60) 肢帯型筋ジストロフィーの経過中に心不全
を発症した高齢女性の一例
(東京都老人医療センター循環器科)
六反啓文・原田和昌・蔵町里恵・油井慶晃・
石川 妙・齋藤友紀雄・牧 尚孝・内田 文・
田中 旬・坪光雄介・井上将至・武田和大・
桑島 巌
(同剖検病理部) 沢辺元司
症例は71歳女性.64歳より下肢筋力低下を自覚し
神経内科受診,CK 1142 IU/Lと高値のためミオ
パチーが疑われ,70歳時に筋生検にて肢帯型筋ジ
ストロフィー(分類不能型)と診断される.2008
年1月頃より下肢浮腫,労作時息切れを自覚,2
月胸部X線上心拡大と両側胸水,BNP値841pg/
mlと上昇を認めたため当科受診.心電図は頻脈
性心房細動,CLBBB,心エコー図上全周性の左
室壁運動低下(EF 34%)を認め,入院となる.
カルペリチド,ドブタミンにて心不全改善.CAG
で冠動脈に有意狭窄を認めず,左室心筋生検では
筋ジストロフィーに認める脂肪浸潤や硝子体変性
はなく,DCM様であった.退院後は心不全増悪
なく外来通院中である.肢帯型筋ジストロフィー
の経過中に心不全を発症した高齢女性の一例を経
験したので若干の文献的考察を含めて報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
61) 房室ブロックを契機に発症したDuchenne
型筋ジストロフィーの顕性心不全に対するCRT
(戸田中央総合病院心臓血管外科)
平野智康・大内 浩・谷津尚吾・石丸 新
(同循環器内科) 内山隆史
(東埼玉病院神経内科) 田村拓久
本邦で初めてDuchenne型筋ジストロフィー
(DMD)
に対しCRTを行ったので報告する.
【症例】33歳
男性【主訴】ふらつき,眼前暗黒感,体交時の呼
吸苦【現病歴】10歳のとき歩行異常でDMDを発症.
18歳で心機能低下を認め,25歳で心不全症状出現.
30歳で慢性呼吸不全のため夜間のみNIPPV開始.
最近の生活は,電動車いすで移動,食堂にて自分
で食事摂取.ただし体交,排泄,入浴は全介助.
平成20年5月22日のECGは1度房室ブロック,HR
83,QRS幅195msであった.5月28日シーツ交換
時の体位変換で,主訴が出現.ECGは2:1房室
ブロック,HR43,QRS幅166msであった.6月2
日PMI目的で当院に転院.
【入院後経過】術前UCG
はEF12%,Dd/Ds=70/66mm.6月6日にCRTD
植え込み術施行.術後UCGはEF20%,Dd/Ds=69
/62mm,術後ECGはHR79,QRS幅118msであった.
術後自覚症状は改善し,6月13日に転院.
62) タコツボ型心筋症から心破裂に至った1例
(聖路加国際病院循環器内科) 猪原 拓・
寺内靖順・西裕太郎・林田憲明・高尾信廣・
安斉 均・西原崇創・大井邦臣・神野 泰
症例は89歳男性で,細菌性肺炎の診断にて入院.
入 院 翌 日 の 心 電 図 に てII,III,aVf,V2∼V6で
ST上昇を認めたため,冠動脈造影を施行したが
有意狭窄は認めなかった.左室造影では,心基部
以外はほぼ無収縮であり,タコツボ型心筋症と
診断した.経過中,Vitalは安定しており,心不
全,致死的不整脈を認めることはなかったものの,
peak CK2200という高値であり,ST上昇が遷延し
ていた.そのため安静度をベッド上のみと制限し
ていたが,入院4日目に突然PEAとなり,CPRを
施行したが,救命できなかった.心エコーにて心
嚢液の貯留,心嚢穿刺にて血性心嚢液を認めてお
り,心破裂に至ったと診断した.今回我々は,タ
コツボ型心筋症から心破裂に至っ1例を経験した
ので,若干の文献的考察を加えて報告する.
63) 血液透析後に心室細動を生じたたこつぼ型
心筋症が疑われる腎不全患者の1例
(新潟県厚生連上越総合病院循環器科)
阿部直之・籠島 充・三枝達也
(信州大学循環器内科) 池田宇一
症例は慢性腎不全を有する56歳男性.平成20年7
月5日急性肺水腫で入院.ECGで胸部誘導の陰性
T波とQT延長,UCGで左室のびまん性の壁運動
低下を認めた.血液透析で改善傾向にあった.第
5病日,透析後にVFを発症.除細動,CPRで蘇
生.その際の血清カリウム値は3.5mEq/l.カル
ベジロール投与を開始しその後VFは消失.CAG
では有意狭窄や冠攣縮はなく,123I-BMIPP,201Tlchloride心筋シンチは正常であったが 123I-MIBG
心筋シンチで心尖部の集積低下を認めた.late
potentialは陰性であった.壁運動異常の範囲が典
型的ではないが,腎不全による溢水を契機にたこ
つぼ型心筋症類似の病態を生じたと考えた.発症
後数日でもVFを生じうること,透析に伴う急な
カリウムの低下が契機となった可能性があること
と,興味深い一例と考え報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
65) 出血性肺炎様の初期症状で発症した肺塞栓
の1例
(水戸赤十字病院循環器内科) 根本正則
【症例】76歳女性.当初,血痰と右下肺野の出血
性肺炎像にて当院呼吸器内科へ入院.気管支鏡で
も有意な所見を認めず,自然軽快し退院.退院翌
日朝,呼吸困難にて覚醒.呼吸苦の急激な増悪と
ともに意識消失し,救急要請にて当院へ搬送.血
圧70台,酸素飽和度70%,心臓超音波での著しい
左室中隔の圧排所見を認め,血行動態の破綻した
状態の肺塞栓と診断された,肺動脈造影にて右肺
動脈は近位部で完全閉塞.左肺動脈には,血栓あ
るも末梢部での閉塞.このため,右肺動脈に対し
てのみカテーテルインターベンション施行し,血
栓吸引と溶解を繰り返し施行し,右肺動脈の再開
通を得た.その後体外式フィルターを留置した状
態で薬物コントロールを行い,慢性期での良好な
再開通を確認した.【結語】出血性肺炎像が初発
の肺塞栓例は報告が少なく報告する.
66) CT上DVT(‒)ながら心内飛来血栓と症状
悪化を生じた慢性血栓塞栓性肺高血圧(CTEPH)
の一例
(佐野厚生総合病院循環器内科) 小室哲也・
西村芳興・渡辺慎太郎
【症例】77歳男性.【既往歴】喫煙20本50年.【現病
歴 】COPDと し てH17年HOT導 入.H19年11~12
月に呼吸困難増悪,肺うっ血,SpO2:69%(O2:1L)
にて入院.呼吸機能VC:93%,FEV1.0:75%,UCG
にてEF80%,右心負荷著明.肺血流シンチにて
多発欠損ありCTEPHと診断.造影CT上下肢静脈
に血栓(–),フィルター使用せず.ワーファリン
導入後SpO2:92%(O2:1.5L)となり退院.H20年
2月より徐々に酸素必要量上昇,5/17 SpO2:64%
(O2:2L)にて5/19再紹介入院.【入院後経過】肺
血流シンチにて左右に取り込み低下ありで肺塞栓
悪化と判断.UCGにて右室心尖部に3×5mm程
度の血栓疑いあり.永久フィルター留置しウロ
キナーゼ等で治療するも,気管支炎から発熱し
不穏・呼吸困難が著明となり6/16永眠.【結語】
CTEPHは小血栓飛来でも重篤化し得ると思われ
た.
67) 先天性静脈拡張症に伴う亜広範型肺血栓塞
栓症の1例
(前橋赤十字病院循環器科) 押田裕喜・
丹下正一・宇居吾郎・庭前野菊
症例は60歳男性.生下時より右大腿に静脈瘤あ
り.5ヶ月前より次第に増悪する労作時呼吸苦あ
り,数歩の歩行でも呼吸苦が出現するため当院を
受診した.身体所見では頸静脈圧 7.5cmに怒脹し,
右大腿全体に及ぶ広範な静脈瘤と右膝に手掌大の
紫斑を認めた.心エコーでは右室拡大による中隔
の拡張障害ありEF 40%,TRPG 78.9mmHgと高度
の右心負荷所見を認めた.CTで右肺動脈の多発
造影欠損像,右下肢皮下に拡張蛇行した静脈を認
めた.先天性の静脈拡張症に伴う亜広範型肺血栓
塞栓症と診断,血栓溶解療法,抗凝固療法で加療
した.第17病日に酸素を中止,第19病日のエコー
ではEF 59%と心機能は改善したものの,TRPG
76.90mmHgと右心負荷は改善なかった.第20病
日に軽快退院,その後は経過良好.肺血栓塞栓症
の基礎疾患として比較的稀と考え報告する.
68) 右肩甲軟部組織原発MFHによる肺腫瘍塞栓
症の一例
(平塚共済病院) 大西隆行・加藤信孝・
加藤陽子・中村浩章・小林一士・大西祐子・
梅澤滋男・丹羽明博
(防衛医科大学校病態病理学講座) 松原 修
【 症 例 】83歳 男 性.【 主 訴 】 呼 吸 困 難.【 病 歴 】
2002年右肩のしこりを訴え脂肪腫を疑われた.
2007年9月同腫瘤の小児頭大への増大あり,MRI
で脂肪肉腫やMFH疑い.同年11月呼吸困難にて
来院,右心負荷所見を伴う広範な肺塞栓症にて入
院.抗凝固線溶療法にて改善.D-Dimerも10.46
から1.54まで低下.しかし2008年1月4日低酸素
血症増悪にて再入院.前回同様広範な肺塞栓所見
あるも,ワーファリンは有効域,D-Dimer1.58と
著増無し.まず血栓溶解抗凝固療法を開始するも
呼吸困難の改善無し.腫瘤による右上肢痛に対す
るモルヒネ投与にて除痛や呼吸苦の改善得られる
も,全身状態増悪し4月8日ご永眠された.病理
診断では右肩甲上部軟部組織原発のpleomorphic
MFH,広範な肺動脈腫瘍塞栓症であった.MFH
による肺動脈塞栓症の一剖検例を経験したので報
告する.
69) 卵巣嚢腫茎捻転術後に深部静脈血栓症を発
症した静脈性血管瘤合併先端巨大症の1例
(藤沢市民病院循環器科) 外山高朗・
荒川健太郎・高見澤徹・秋山英一・矢野英人・
漢那雅彦・姫野秀朗・臼井 孝・柏木政伸
(同内分泌代謝内科) 高野達朗
【症例】49歳女性.3年前から左下腿腫脹を自覚.
2008年6月右卵巣嚢腫茎捻転に対して緊急右附属
器摘出術施行.手術翌日より左大腿部腫脹および
疼痛が出現.CTで巨大左膝窩静脈性血管瘤から
左総腸骨静脈まで連続する深部静脈血栓を認め
た.一時的下大静脈フィルター留置後,ヘパリン・
ウロキナーゼを投与開始したが,1週間後のCT
で血栓増大傾向を呈した.ヘパリン誘発性血小板
減少症に伴う血栓症と診断し,アルガトロバン投
与開始後,血栓は退縮した.顔貌と手足の容積の
増大から先端巨大症を疑い精査したところ,ブド
ウ糖負荷試験で逆説的なGHの増加反応および頭
部MRIで下垂体腺種を認め確定診断に至った.婦
人科疾患,静脈性血管瘤,先端巨大症など,複数
事象が誘因と考えられた深部静脈血栓症であり,
文献的考察も含めて報告する.
70) 6年間のワーファリン内服継続後,中止2
ヶ月で急性肺血栓塞栓症を再発した一例
(武蔵野赤十字病院循環器科) 原 信博・
尾林 徹・鈴木雅仁・高津妙子・高村千智・
鈴木 篤・岡田寛之・服部英二郎・山内康照・
宮本貴庸
(東京医科歯科大学) 磯部光章
症例は69歳女性.2002年6月急性肺血栓塞栓症,
深部静脈血栓症を発症し,以後ワーファリンにて
加療していた.外来での経過は良好で再発を認
めなかった.2008年2月,血液検査でDダイマー
0.7μg/ml,胸部・下肢造影CT検査で肺動脈およ
び下肢静脈に血栓を認めなかったためワーファリ
ン内服を中止した.同年4月から左下肢の倦怠感
が出現し,徐々に症状が増悪してきたため,5月
胸部・下肢造影CT検査施行したところ左腸骨静
脈,右上肺動脈に血栓を認めたため肺血栓塞栓症,
深部静脈血栓症の再発と診断し,入院加療した.
今回血液凝固異常のない患者のワーファリン中止
に伴う急性肺血栓塞栓症,深部静脈血栓症の再発
を経験したので,ワーファリン内服期間,中止の
方法の検討を含め考察を加え報告する.
ベルサール神保町(2008 年 12 月) 985
71) 感染性心内膜炎に合併した感染性動脈瘤
(昭和大学胸部心臓血管外科) 尾本 正・
飯塚弘文・福隅正臣・大井正也・宮内忠雅
感染性心内膜炎(IE)において感染性動脈瘤を
合併した2例につき報告する.一例目は65歳男性,
僧帽弁位IEに右上腕動脈瘤を合併した.感染瘤
切除後,大伏在静脈にて血行再建し,二例目は37
歳男性,僧帽弁位IEに右尺骨動脈瘤を合併した.
74) 感染性心内膜炎に出血性脳梗塞,腎不全,
DIC,ARDSを合併し重症化するも,救命し社会
復帰し得た若年男性の一例
(横浜市立大学循環器内科) 細田順也・
小野文明・松本克己・藤田孝之・松下浩平・
高村 武・山川陽平・菅野晃靖・石上友章・
石川利之・内野和顕・梅村 敏
症例は生来健康の30歳男性.2008年4月4日より
40度の発熱,歩行困難となり,無断欠勤を不審に
思い自宅訪問した同僚に発見され4月10日当院救
急搬送.僧帽弁前尖に疣贅,血液培養でMSSAを
検出し,感染性心内膜炎と診断.頭部CT上,多発
性出血性脳梗塞を認め,creatinine7.8mg/dlと急
性腎不全を合併,敗血症,DICの状態であった.
第2病日,ARDSを合併し気管挿管施行.第8病
日には新たに左側頭葉に広範の出血性梗塞が出
現.重症化するもCEZ 2g,CTRX 4g/日投与,
血液透析等加療を行い軽快に至った.その後僧帽
弁閉鎖不全が進行し,第40病日に僧帽弁置換術を
施行.麻痺や高次機能障害等の後遺症無く,7月
1日独歩退院となった.感染性心内膜炎に,出血
性脳梗塞,腎不全,DIC,ARDSを合併し重症化
するも,救命し社会復帰し得た若年男性の一例を
報告する.
77) 先天性拘縮性くも指趾症(Beals症候群)
に僧帽弁逸脱症・感染性心内膜炎を合併した一例
(相澤病院心臓病大動脈センター循環器内科)
千田啓介・麻生真一・馬渡栄一郎・鈴木智裕・
櫻井俊平
(同心臓血管外科) 高井文恵・鈴木博之・
橋本昌紀・大澤 肇・藤松利浩
(信州大学医学部附属病院循環器内科)
池田宇一
症例は57歳男性.約1ヶ月間の微熱遷延あり平成
19年9月11日受診し入院.CRP上昇,心尖部収縮
期逆流性雑音,心エコーにて僧帽弁逸脱と疣贅付
着,高度僧帽弁逆流を認め感染性心内膜炎と診断.
血液培養でStreptococcus sanguis を認めた.SBT/
ABPC+GM投与にて炎症反応の低下,疣贅縮小を
認めたが,高度MRが残存し10月22日にMVR+TAP
施行.本例の両手指は長く屈曲拘縮のある特徴的
なくも状指だった.濃厚な家族歴を有し,母と叔
父,同胞にも同様の指を認めた.Marfan症候群類
縁の遺伝性結合織疾患である『先天性拘縮性くも
指趾症(Beals症候群)』と考えられた.本症候群
は約30%にMVPなど心血管系病変合併の報告があ
り,本例のMVP,IE発症への影響が疑われた.本
症候群はMarfan症候群と同様,循環器疾患への注
意が必要な病態と考えられた.
72) く も 膜 下 出 血 を 初 発 症 状 と す るArcanobacterium haemolyticumによる感染性心内膜炎の
一例
(横浜栄共済病院循環器内科) 佐々木理恵・
水口一郎・小堀健一・岩城 卓・野末 剛・
三浦元宏・道下一朗
(同胸部心臓血管外科) 安田 保・
永峯 洋・鈴木光隆・原 祐郁
75) 肺塞栓が疑われたが感染性心内膜炎後の三
尖弁閉鎖不全症と考えられた一例
(湘南鎌倉総合病院心臓センター循環器科)
宍戸晃基・齋藤 滋・竹下 聡・田中慎司・
宮下裕介・塩野方明・竹谷善雄・高橋佐枝子・
松実純也・堂前 洋・水野真吾・岡村暢大・
南 尚賢・杉立和也
(同心臓血管外科) 安達晃一・野口権一郎
78) 外科的治療に至った右心系感染性心内膜炎
の1例
(関東中央病院循環器内科) 小栗 岳・
皆月 隼・牧元久樹・藤田大司・杉下靖之・
田部井史子・伊藤敦彦・池ノ内浩・野崎 彰・
杉本恒明
(同心臓血管外科) 達 和人・田中佐登司・
笠原勝彦・鎌田 聡
症例は34歳女性.頭痛,嘔気を主訴に近医受診し,
くも膜下出血の診断にて当院脳神経外科に紹介入
院となった.入院中,CRPの上昇及び発熱を認め,
血液培養にてグラム陽性桿菌を検出し,心臓超音
波検査にて僧帽弁に径約2cmの疣贅を認めたた
め,感染性心内膜炎と診断した.また脳血管造影
上,動脈瘤は認められず,くも膜下出血の原因とし
て脳静脈洞血栓症が考えられた.
原因菌はArcanobacterium haemolyticumと同定され,ABPC,GM
を投与したが,疣贅は縮小せず,第20病日に僧帽
弁置換術を施行した.その後,GM,PCG,EM
による治療を継続し,第60病日,軽快退院した.
A.haemolyticumによる感染性心内膜炎は過去数
例の報告があるが,検索しえた範囲では,本邦で
の感染性心内膜炎の報告はなかった.
症例は43歳男性.2008年4月23日,数日前からの
息切れにて近医受診し心不全の診断で当院紹介受
診.心エコーにて右心系拡大,TR3度あり,肺塞
栓疑いにて肺動脈造影CT・肺血流シンチ施行し
たところ両下肺野の欠損あり肺塞栓と診断しワー
ファリン内服開始した.しかし,4月25日採血の
D-ダイマー陰性.5/15心臓カテーテル検査にて
冠動脈正常,右房・右室圧・肺動脈圧正常TR3度
認め,CI:2.1と低下していた.TRに対して6/3
手術施行.手術所見にて三尖弁後尖に欠損認めた.
組織では炎症後の変化あり感染性心内膜炎後の変
化否定できず.肺塞栓が疑われたものの感染性心
内膜炎後の三尖弁閉鎖不全症と思われる貴重な症
例であったため報告する.
症例は33歳男性,継続する39℃台の発熱,関節痛
を主訴に近医より紹介入院,入院後の血液培養
から2度MSSAを検出.11月1日からCTRX 2g,
CEZ 4g,MEPM 1.5gを投与するも発熱改善せず
11月8日経胸壁心エコーにて,三尖弁および右心
室に尤腫,高度三尖弁閉鎖不全を認め感染性心内
膜炎と診断.11月8日からCEZ 8g,GM 160mg
投与開始.1週間後には解熱,疣腫は縮小.その
後CEZ計6週間投与も炎症反応持続陽性,再度発
熱.12月21日からVCM 1.25g投与開始.症状,炎
症反応は改善も12月29日三尖弁疣腫増大,弁穿
孔を認めた.VCMは副作用出現のため投与中止.
内科的治療の限界と判断,2008年1月28日三尖弁
形成,弁輪縫縮術を施行し,軽快退院.右心系感
染性心内膜炎で内科的治療に反応不良のため外科
的治療に至った症例を経験した.
73) 三尖弁に付着した巨大可動性疣贅の1例
(大田病院循環器内科) 渡辺心翼・
谷口 泰・平松まき・川尻克彦・千田宏司
(大崎病院東京ハートセンター) 野村文一
76) 非動脈瘤性クモ膜下出血を合併した感染性
心内膜炎の1治験例
(千葉大学循環器内科) 廣瀬雅教・
住田智一・上田希彦・川久保幸紀・李 光浩・
小室一成
【症例】70歳,男性.2007年8月頃から食欲低下,
11月12日,歩行困難を呈し来院.10日に鼻出血.
入院時,下腿に傷あり.体温37.4℃,白血球23,010,
CRP11.98,血小板1.2万と高度減少.12月9日,左
胸痛を訴え,左下肺の陰影増強,肺炎+胸膜炎と
考えPIPC 8g/日開始,2008年1月4日まで継続
し症状改善,白血球正常化.1月11日,症状,発
熱はないが,白血球再上昇.PIPC再開時,アナフ
ィラキシーショックをおこし,抗生剤をCPFX,
AZMに変更.その後,発熱,胸痛はなかったが,
白血球16,320,CRP4.74と改善せず.この間,血
液培養は陰性.経胸壁心エコー,経食道心エコー
にて三尖弁に付着する巨大可動性腫瘤を認め,手
術目的で転院.2月12日,三尖弁前尖と中隔尖に
付着する約40mmの疣贅を摘出した.三尖弁の破
壊が著しく人工弁置換を施行.
986 第 210 回関東甲信越地方会
【背景】細菌性脳動脈瘤形成を伴わないクモ膜
下出血を合併する感染性心内膜炎は稀有とされ
る.【症例】52歳男性.若年より心雑音指摘され,
2008年5月に僧帽弁逸脱症の診断.6月30日発熱,
嘔吐,意識障害を主訴に前医受診,頭部CTにて
クモ膜下出血を認め当院へ転院.来院時意識レベ
ルはJCS-1,クモ膜下出血のグレードはWFSN分
類1,Fisher分類3であった.脳血管撮影にて明
らかな動脈瘤を認めず,非動脈瘤性クモ膜下出血
の診断にて保存的治療を行い,攣縮期に一時的な
意識障害を認めたがその後合併症なく軽快.また,
経胸壁心エコー検査にて僧帽弁後尖の逸脱と疣贅
の付着及び血液培養でStreptococcus viridans陽
性を示し,感染性心内膜炎の診断となった.ペニ
シリンG1800万単位/日,ゲンタマイシン240mg/
日投与により解熱,炎症所見は消退した.
79) 脳梗塞を契機にTrousseau syndromeによ
る非細菌性血栓性心内膜炎と診断された1例
(東京慈恵会医科大学柏病院循環器内科)
富永光敏・蓮田聡雄・白崎圭輔・銭谷 大・
松坂 憲・井上康憲・宮田秀一・中江佐八郎・
東 吉志・上原良樹・清水光行
(東京慈恵会医科大学循環器内科) 吉村道博
症例は41歳,女性,卵巣癌のため手術予定であっ
たが,突然の左上下肢不全麻痺,構音障害を認め
外来受診.頭部MRIにて多発性脳梗塞と診断.頚
動脈エコーやMRAにて器質的狭窄は認められず,
塞栓源検索のため施行したTTE,TEEにて僧帽
弁前尖に5mm大の腫瘤を認めた.発熱症状はな
く,血液培養も陰性.凝固能亢進,担癌患者であ
ることからTrousseau syndromeにより生じた非
細菌性血栓性心内膜炎(non bacterial thrombotic
endcarditis)と診断した.その後,腹水細胞診に
てclass Vの所見を認め,卵巣癌に対し化学療法
を選択した.悪性腫瘍を合併する脳梗塞患者にお
いては,本症を考慮すべきであり,経過と合わせ
て報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
80) 化膿性関節炎を合併した感染性心内膜炎
(IE)の一例
(JR東京総合病院) 川名暁子・浅川雅子・
杉浦杏奈・小倉理恵・碓井伸一・杉下和郎・
高橋利之
83) 心筋梗塞急性期の薬剤抵抗性心室細動に対
し電気的除細動を頻回に行わざるを得なかった1例
(君津中央病院循環器科) 中野正博・
氷見寿治・山本雅史・藤本善英・松戸裕治・
関根 泰・芳生旭志・外池範正
86) SVC欠損型PLSVCの慢性心房細動合併完全
房室ブロックに対し両室ペーシングを行った1例
(荻窪病院心臓血管センター循環器科)
遠田賢治・辻 晋也・井上康二・山田綾子・
石井康宏
(同心臓血管外科) 藤井 奨・沢 重治
58歳男性.基礎疾患は僧帽弁逸脱・閉鎖不全症.
歯科治療後に発熱,関節痛を訴え受診.TTE,
TEEで僧帽弁前尖に疣贅を認め,血液培養より黄
色ブドウ球菌陽性でIEと診断,抗生剤治療開始.
起因菌の抗生剤感受性は高かったが,発熱と炎症
反応が持続.入院時より移動性関節痛を認め,次
第に右膝関節痛が著明となり,Gaシンチで右膝
に集積を認めた.関節穿刺で関節液は混濁してい
たが培養は陰性であった.しかし臨床経過より化
膿性膝関節炎合併が疑わしく,関節清掃術施行,
速やかに炎症反応は陰性化した.経過中,弁逆流
に変化なく,炎症持続は合併する関節炎が原因と
判断した.【考察】抗生剤投与により発熱や炎症
反応が改善せず,治療抵抗性IEが疑われる症例
では,心臓弁以外の組織の感染巣について検討す
べきであると考えられた.
70歳男性.胸痛・呼吸苦で発症し,その後呼吸苦
が続くため5日後に近医受診,採血上心筋梗塞が
疑われ第6病日に当院を受診.翌日CAGを施行し
#3 100%,#6 100%,#12 99%,#13 99%と3枝病
変を認めCABG予定となった.心臓リハビリ中の
第16病日,夜間にVfとなりDC・心肺蘇生を行い,
緊急PCIを施行した(#3 99%→0%,#13 99%→
0%,#6 100%不通過).PCI後もelectrical storm
状態で,リドカイン・ニフェカラント持続静注し
たが停止できず,第19病日よりアミオダロン内服
を開始したところ徐々にVfの頻度が減少し,第23
病日よりVfは認めず第60病日に一旦退院.この間
計1094回DCを施行.待機的にCABGを施行し,そ
の後2年間Vfは発症していない.
81) 多発性筋炎に徐脈頻脈症候群を合併し15年
の経過を観察しえた1例
(草加市立病院循環器科) 池宮城秀和・
伊藤祐輔・大野篤行・古林正比古・
土信田伸夫・高元俊彦
(東京医科歯科大学循環制御内科学)
磯部光章
84) 大動脈二尖弁に合併した感染性心内膜炎で
Bentall手術を施行し術後7ヶ月で完全房室ブロッ
クを発症した一症例
(JA長野厚生連北信総合病院循環器科)
金城恒道・林悠紀子・永澤孝之・渡辺 徳
(信州大学循環器内科) 池田宇一
87) 心室細動に対し半自動除細動器が作動しな
かった症例
(筑波メディカルセンター病院) 渡部浩明・
戸田 直・渡辺裕子・森田純一郎・春成智彦・
掛札雄基・橘 賢廣・星 智也・文藏優子・
仁科秀崇・平沼ゆり・野口祐一
症例は49歳男性.咳を主訴として外来受診した.
心雑音を聴取し心エコー検査を施行され,上行
大動脈拡張,大動脈二尖弁,Valsalva洞に接する
2つの瘤用構造物を認めた.8ヶ月後に上行大
動脈基部の拡大がみられ,心エコーやCTで精査
し,瘤用構造物が心筋膿瘍であることが判明し
た.Bentall手術を施行,大動脈弁の破壊や2つ
の仮性瘤をみとめ,切除して弁つきgraftを縫着
した.4ヶ月後CTでgraft周囲に瘤形成をみとめ,
再Bentall手術を施行,弁輪組織を充分に切除し
右̶無冠尖交連部にも針をかけて縫合した.術後
はI度房室ブロックおよび完全左脚ブロックを合
併したが良好な経過であった.7ヶ月後に完全房
室ブロックを発症し,恒久型ペースメーカー植え
込み術を要した.人工弁置換術後慢性期での完全
房室ブロック合併はまれな症例と考え,報告する.
50代男性.胸部絞扼感を主訴に救急要請した.救
急車内で心肺停止状態となり,救急隊による心肺
蘇生が開始された.半自動除細動器のモニター画
面では心室細動波形であったが除細動適用外と判
定され除細動が行われなかった.計3回解析を行
ったがいずれも除細動適用外と判定された.心肺
停止から14分後に当院へ到着した時には,心電図
は心室細動であり電気的除細動で洞調律に復し
た.心電図上急性心筋梗塞が疑われたため,緊急
冠動脈造影を行い左前下行枝の完全閉塞に対して
経皮的冠動脈形成術を行った.低体温療法を行い
神経学的後遺症を残さず回復した.後日メーカー
が行った半自動除細動器の心電図解析では,心電
図波形のピーク数が1分間に600回を越えてしま
い除細動適用条件を満たさなかったために作動し
なかったことが明らかになった.
85) 慢性心房細動に対し左房線状焼灼付加拡大
肺静脈隔離後に出現した心房頻拍をCARTOを用
いて根治し得た一症例
(土浦協同病院循環器センター内科)
小松雄樹・鵜野起久也・永田恭敏・大友 潔・
谷口宏史・加藤 克・垣田 謙・川口直彦・
岩本太郎・鈴木麻美・李 哲民・米津太志・
角田恒和・藤原秀臣・家坂義人
88) 冠攣縮性狭心症に対して薬剤内服下で心肺
停止をきたし,植込み型除細動器を植え込んだ1例
(都立広尾病院循環器科) 高野 誠・
深水誠二・小松宏貴・北條林太郎・
小田切史徳・仲井 盛・弓場隆生・
小宮山浩大・辰本明子・水澤有香・
大塚信一郎・手島 保・櫻田春水
症例は70歳男性.5年以上持続する慢性心房細動
に対し平成20年4月左房線状焼灼付加拡大肺静脈
隔離を行なったが,アブレーションによる心房細
動の停止は得られず抗不整脈薬(アンカロン,タ
ンボコール)内服下に経過観察としていた.術後
1カ月後から断続的に心房頻拍が出現したため再
セッションを行なった.右肺静脈に再伝導あり再
隔離を行なったが,頻拍は持続したためCARTO
マッピングを施行した.頻拍は左肺静脈および前
中隔周囲を旋回するマクロリエントリー性頻拍で
あり,左前中隔部に拡張期電位を認め,同部位よ
り僧帽弁に線状焼灼を行い頻拍は停止した.術後
は洞調律を維持しており,慢性心房細動に対する
アブレーション後に心房頻拍化,さらに心房頻拍
に対するアブレーションにて慢性心房細動を根治
し得た症例を経験した.
症例は71歳男性.2005年にアセチルコリン(ACh)
負荷試験にて冠攣縮性狭心症と診断され,内服(徐
放性ニフェジピン20mg,ジルチアゼム200mg)
処方されていた.2008年1月深夜に頻回の胸痛発
作が出現し救急要請,救急隊到着時に心肺停止,
AEDが1回作動し心拍再開となり緊急入院となっ
た.入院後当日ST低下を伴う胸痛発作が出現し
たため緊急冠動脈造影を施行し,多枝攣縮を認め
た.硝酸剤を冠動脈内注入し,正常冠動脈を認め
た.後日内服強化の上でACh負荷試験を施行,薬
剤内服下で多枝攣縮が誘発された.心肺停止例で
もあり,
突然死予防目的に植込み型除細動器
(ICD)
植込み術を施行した.冠攣縮に伴う心肺停止例患
者に薬剤内服下にても冠攣縮が誘発され,ICDを
植え込んだ症例を経験したので報告する.
症例は65歳男性.平成5年に発作性通常型心房粗
動に対し高周波心筋焼灼術を施行した.平成8年
に再発を認め再度峡部焼灼術を施行し両方向性ブ
ロックラインを作成した.平成5年より恒常的に
CPKの上昇を認め,平成11年には近位筋優位の筋
力低下を自覚するため,筋生検を施行したところ
多発性筋炎の病理診断を得たためステロイド投与
を開始した.平成14年めまい感を自覚するためホ
ルター心電図検査を施行したところ3秒以上の洞
停止を繰り返し認めたためDDDペースメーカー
植え込み術を施行した.平成19年には頻脈性心房
細動の発作を繰り返すため房室ブロック作成術を
施行した.多発性筋炎に徐脈頻脈症候群を合併し
た症例は稀であり文献的考察を加えて報告する.
82) CRT-D術中に左室心外膜刺激により重症
心室性不整脈が誘発された症例
(NTT東日本関東病院循環器科) 生冨公康
【症例】82歳女性.完全房室ブロックにてDDDPM植込み後.2008年4月にTdP型VTによる失神
発作を繰り返し,緊急入院.electrical storm急性
期はRV overdrive-pacingにて催不整脈状態を安
定化.心疾患背景として,右室ペーシングによる
左室運動障害と,long QT syndrome(QTc:496
sec)による催不整脈状態が確認,CRT-Dによる
左室機能障害の改善と致死的不整脈予防効果を考
え,CRT-D導入手術施行.術中より左室心外膜
刺激により顕著なQT延長・QT dispersionさらに
VT,Vf発作が誘発された.術後ICDバックアッ
プのもと,CRT開始したところ急激な左室機能の
改善とQT時間・QT dispersionの改善をみとめた.
以後急性期にみとめていた左室心外膜刺激による
VT発作は完全に消失した.【結語】CRTよる抗不
整脈効果が得られた一例と推測される.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
77歳男性.平成7年完全房室ブロックとなり,平
成8年より慢性心房細動を合併,心不全に対し利
尿剤投与されていた.平成20年心不全悪化し当院
入院となった.心エコーにて心機能は正常であっ
たが,冠静脈洞の拡大を認め,PLSVCが疑われた.
ペースメーカー植え込みは右側より行ったが,ガ
イドワイヤーが左上大静脈へしかいかず,造影を
行うと右上大静脈欠損型であった.そのため,左
側からのアプローチへ変更した.左側より左上大
静脈 冠静脈洞経由で左室へリードを挿入した.
ガイドワイヤーが冠静脈洞内で冠静脈側壁の枝に
入るため,リードの挿入を試みたところ,冠静脈
側壁の枝にリードが留置できた.そのため,通常
のペースメーカーの心室,心房ポートを使用し両
室ペーシングを行った.術後は利尿剤なしで心不
全コントロール可能となった.
ベルサール神保町(2008 年 12 月) 987
89) 著明なI度房室ブロックに対しDDDペー
スメーカーを植え込み心不全の改善を認めた1例
(東京医科歯科大学循環器内科) 稲村幸洋・
樋口晃司・平尾見三・蜂谷 仁・川端美穂子・
古川俊行・佐々木毅・林 達哉・古木裕康・
高橋健太郎・瀬谷美瑛・宮崎 徹・渡部真吾・
大東寛和・上石哲生・木村茂樹・稲垣 裕・
磯部光章
症例は76歳男性.原因不明の胸水とBNP高値に対
する精査のために入院した.心エコーでは左心機
能は保たれており明らかな弁膜症も認められなか
ったが,心電図で著明なPR間隔の延長(約600ms)
を認めた.胸水は利尿剤にて改善し,心不全によ
るものと考えられた.心不全改善後に電気生理学
的 検 査 を 施 行 し た と こ ろAH間 隔 はbaselineで
554msであったがISP負荷にて弱いfast pathway
を認め,baselineではslow pathwayを伝導してい
ると考えられた.AV間隔140msでのDDDペーシ
ン グ で 血 圧 の 上 昇 を 認 め, 心 機 能 改 善 目 的 に
DDDペースメーカーを植え込んだ.本症例はAH
間隔が著明に延長し心房-心室の収縮の生理的同
期が失われ心不全を生じた症例であり報告する.
90) 突然死の家族歴を伴う若年性洞不全症候群
の一例
(東京医療センター循環器科) 長島聖良・
池上幸憲・前淵大輔・小野智彦・石井 聡・
布施 淳・坂本宗久・樅山幸彦
症例は19歳,男性.生来健康であったが,2007年
11月3日21時頃テレビゲーム中に失神し当科入院
となった.入院後2日目早朝座位時に再度失神
し,心電図モニター上で20秒の洞停止を認めたた
め,洞機能不全が疑われた.二次性の洞機能不全
の鑑別を行ったがいずれも有意な所見を認めなか
った.突然死の家族歴があり,遺伝性不整脈の可
能性が示唆されたため,家族性の洞不全症候群を
疑った.明らかな原因は不明であったため,若年
性洞不全症候群と診断して11月30日ペースメーカ
ー植え込み術を施行した.その後は特に失神は認
めていない.これまでに,家族性の洞不全症候群
は,SCN-5Aチャネル異常との関係が報告されて
いるが,本例の遺伝子解析の結果はまだ出ていな
い.若年性洞不全症候群の一例を経験したので報
告する.
91) 著しい高CA125血症を呈した心アミロイ
ドーシスの一例
(長岡中央綜合病院循環器科) 広瀬由和・
中村裕一・田川 実・落合幸江
(同病理部) 五十嵐俊彦
【症例】68歳女性【病歴】6ヶ月前から体重減少
が進行し,食思不振・下腿浮腫が増悪し入院した.
【 検 査 】ECG: 肢 誘 導 で 低 電 位 差 とV1-4のQS
pattern UCG:心房拡大・求心性肥大・心嚢液貯
留あり,
E/E =21.2と拡張能低下.
BNP 593.5pg/ml,
CA125 564.1U/ml【経過】利尿剤への反応が不良
でDOAの併用を要した.経過中脳梗塞を併発し,
多臓器不全で第36病日に死亡した.【剖検】心嚢
液と胸腹水を認めたが悪性新生物は存在しなかっ
た.全身性にアミロイド沈着あり原発性アミロイ
ドーシスと診断された.【考案】CA125は卵巣由
来の腫瘍マーカーだが,悪性疾患がなくとも腔水
症で上昇する.本例では右心不全による胸腹水貯
留により上昇したと考えられた.心不全では高
CA125血症がみられた際の原因として念頭におく
必要がある.
988 第 210 回関東甲信越地方会
92) ムコ多糖症1型Scheie症候群に左室瘤と
連合弁膜症を合併した一症例
(東京女子医科大学循環器内科)
春木伸太郎・鈴木 豪・松山優子・芹澤直紀・
尾崎友美・内田吉枝・佐藤高栄・大森久子・
小川洋司・萩原誠久
症例は45歳女性.9歳時にムコ多糖症(MPS)が
疑われ経過観察されていた.34歳頃から心エコー
上中等度の大動脈弁狭窄(AS)および僧帽弁狭
窄(MS)が確認されている.36歳からNYHA 2
度となり徐々に症状が増悪したため平成20年3月
精査目的で入院した.心エコー上ASとMSの進行
を認め,左室造影および心臓MRI検査で心尖部と
後側壁に心室瘤を認めた.また遺伝子解析の結果,
MPSの 病 型 はScheie症 候 群 と 確 定 診 断 さ れ た.
MPSは諸臓器にムコ多糖が沈着する疾患であり,
循環器合併症としては約7割の症例で房室弁への
ムコ多糖沈着による弁膜症があるとされている.
また心筋肥大をきたすもことが多いが,MPS I型
において左室瘤の合併の報告はなく,貴重な症例
を経験したのでここに報告する.
94) 巨大右房骨肉腫の一例
(順天堂大学循環器科) 小西宏和・
土肥智貴・木下良子・川田貴之・大村寛敏・
代田浩之
(同心臓外科) 蒔苗 永・丹原圭一・
山本 平・天野 篤
症例は20歳男性.一か月前から下肢の浮腫と倦怠
感を自覚していた.徐々に症状は悪化し,呼吸
困難感も出現してきたため,近医受診した.心
臓超音波検査にて右心房内に巨大腫瘤を認めた.
同日当院に紹介受診したが,右心不全状態であ
り緊急入院となった.MRI検査にて右心房内に
heterogeneous signalの巨大腫瘤を認め,右心室
および下大静脈に浸潤していた.心臓カテーテル
検査では冠状動脈への浸潤は認めなかった.入院
三日後にはプレショック状態となり緊急手術と
なった.右心房より55×50×38mmの腫瘤を摘出
した.組織学的検査の結果,骨肉腫と判明した.
CTにて多臓器に原発巣は見つからず,心臓原発
と考えられた.術後症状は消失し,独歩退院した.
巨大右房骨肉腫の一例を経験したので文献的考察
を含め報告する.
95) 心 不 全 を 合 併 し たneutral lipid storage
disease with myopathyの一例
(埼玉医科大学総合医療センター心臓内科)
一色亜美・佐々木修・井上芳郎・西岡利彦・
伊藤博之・丸山義明・吉本信雄
(埼玉医科大学神経内科) 大熊 彩
(埼玉医科大学総合医療センター神経内科)
野村恭一
症例は30歳男性.平成18年筋力低下を主訴に神経
内科に精査入院した.筋生検等施行し,neutral
lipid storage disease with myopathyと 診 断 さ れ
た.経過中の心臓超音波検査で拡張型心筋症様の
心機能低下と,心電図にて完全左脚ブロックを認
めた.外来経過観察されていたが労作時の呼吸苦
が出現し,改善傾向に乏しく,心不全加療のため
当科に入院した.βブロッカー等の薬物調整を
行い,退院前に心臓カテーテル検査を施行した.
neutral lipid storage disease with myopathyは 遺
伝子異常による脂質蓄積症であり,心筋症を合併
することがあるといわれている.本疾患は2006年
に発表されたまだ新しい疾患概念であり,報告例
が少ない.今回われわれは貴重な症例を経験をし
たので報告したい.
96) 心房中隔から両心房へ進展した心臓腫瘍の
一例
(榊原記念病院循環器内科) 原田順哉・
関 敦・井上完起・高見澤格・相川 大・
谷崎剛平・桃原哲也・井口信雄・渡辺弘之・
長山雅俊・浅野竜太・高山守正・梅村 純・
住吉徹哉
症例は61歳女性.2008年3月に他院で心不全・心
房粗細動を指摘され,当院紹介となった.経胸壁
心エコーおよび経食道心エコーで心房中隔より右
房・左房双方へ進展する3.8×2.7cmの辺縁不整の
充実性腫瘤像を認めた.心臓カテーテル検査では
右冠動脈,左回旋枝より発達した栄養血管を認め
た.心臓原発の良性腫瘍としては非典型的であり
画像検索を進めた.ガリウムシンチグラフィでは
心房および左肩関節に強い集積を認めた.以前よ
り左肩関節痛を訴えており,同部位のMRIでは左
肩関節滑膜肉腫を疑う所見を認め,原発巣と考え
た.遠隔転移を伴う悪性腫瘍であり保存的治療を
選択したが,腫瘍は拡大傾向で右心不全・心嚢液
貯留を生じ第65病日に永眠した.心臓の転移性悪
性腫瘍は比較的まれであり,文献的考察を加えて
報告する.
97) 心 臓MRIのGd造 影 に て 広 汎 な 強 いLate
enhancementを認めた心アミロイドーシスの一例
(国立国際医療センター戸山病院循環器科)
近藤 崇・門脇 拓・柴田純子・山崎智弘・
上村宗弘・渡邊梨里・大野邦彦・田守唯一・
副島洋行・田中由利子・岡崎 修・樫田光夫・
廣江道昭
【症例】54歳男.【主訴】下半身の痺れ,感覚異常.
【既往歴】40歳胃潰瘍,HBV(+).【家族歴】母:
HBV,父:脳梗塞.
【現病歴】H19年12月腰痛,両
下肢痺れ,異常知覚を自覚,下腿浮腫出現.近医
で蛋白尿3+,BJPλ型で当センター内科紹介受
診.感覚は遠位で増強する臀部と両下肢の温痛覚
が低下.骨髄穿刺生検で多発性骨髄腫は否定的.
蛋白尿2.08g/日.腎生検で腎アミロイド沈着(+)
の原発性AL型アミロイドーシスと診断.本例は
ECGでLAH,UCGでLVHを認め,心内膜心筋生検
でCongo Red染色陽性及び緑色偏光顕微鏡で線維
蛋白沈着を認める心アミロイドーシスと診断.心
臓MRIのGd造影で広汎な強いLate enhancement
を認めた.従来対症療法が主体で進行性臓器障害
の予後は13ヶ月と不良で心病変合併が規定因子と
なるため大量化学療法+auto PBSCT(メルファ
ラン大量療法)を計画した症例である.
98) 若年発症の老人性アミロイドーシスの一例
(自治医科大学循環器内科) 島村知子・
村田光延・廣瀬雅裕・山本啓二・三橋武司・
苅尾七臣・島田和幸
症例は51歳男性.顔面浮腫にて来院し,うっ血性
心不全の診断で入院となった.心電図上,心房細
動・左室肥大所見,心エコー検査ではびまん性壁
運動低下を認めた.心筋MRI検査所見では心サル
コイドーシスを疑い,心筋生検を行った.結果
Congo Red染色陽性であり,心アミロイドーシス
と診断された.しかし免疫染色ではAL typeは否
定的であり,直腸生検ではアミロイド蛋白は検出
されなかった.そこで,老人性および家族性心ア
ミロイドーシスの鑑別を行った.抗トランスサイ
レチン(TTR)抗体検査とTTR遺伝子検査を施
行したところ,TTR抗体は陽性だが遺伝子異常
は検出されず,老人性心アミロイドーシスと診断
した.今回,TTR抗体検査にて診断しえた若年
発症の老人性心アミロイドーシスの1例を経験し
たので報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
99) 産褥期Valsalva洞動脈瘤破裂の1例
(日本赤十字社医療センター) 夏山文恵・
瀧澤雅隆・相馬 桂・川崎まり子・中山幸輝・
大谷恵隆・魚住博記・小早川直・福島和之・
竹内弘明・青柳昭彦
102) 急性冠症候群と診断し大動脈解離
(Stanford
A型)の発見が遅れた一例
(神奈川県立循環器呼吸器病センター循環器科)
五島桂子・福井和樹・中川 毅・中戸川知頼・
大楠泰生・田中 穣・尾崎弘幸・伊澤 毅
33歳の生来健康な女性.0産0妊,妊娠後期に切
迫早産と妊娠中毒症のため入院加療されており,
38週2日に2544gの男児を経腟分娩にて出産.産
後17日目より動悸,下半身の浮腫,体重増加を認
め,当院を受診した.胸骨左縁から心尖部にかけ
Levine V/VIの連続性雑音を聴取し,心電図で洞
性頻脈,胸部レントゲンで肺うっ血と両側胸水貯
留,心陰影拡大,心エコーで右心系の拡大及び大
動脈弁右冠尖の変形とそこから右心房に向かう短
絡血流を認めた.以上の所見よりValsalva洞動脈
瘤破裂に伴う非代償性心不全と診断した.入院の
上,内科的に心不全の治療を開始し,翌日緊急で
破裂部パッチ閉鎖術を施行した.術中所見で心室
中隔欠損,感染性心内膜炎の所見は認めなかった.
産褥期Valsalva洞動脈瘤破裂の症例は稀であり,
若干の文献的考察と共に報告する.
症例は76歳男性.約4時間持続する胸痛にて救急
搬送.トロポニンT陰性,心電図で下壁・前胸部
誘導のST低下+陰性T波,心エコーで前壁の壁運
動低下を認めた.急性冠症候群と診断し,冠動脈
造影施行.左前下行枝#7:90% TIMI 2であり,
ステント留置した.PCI後も心窩部違和感持続し
たが徐々に消失.入院3日目に発熱.尿路感染症
の診断で抗生剤投与.解熱したがCRP高値遷延し
た.入院16日目に無症候性に再度発熱し,不明熱
精査目的に胸腹部CT施行.右冠動脈直上∼腹腔
動脈分岐部の大動脈解離(偽腔血栓閉塞)を認め
た.患者のADLも低く,保存的治療の方針とした.
来院時の胸痛は大動脈解離が原因であった可能性
は高い.冠動脈高度狭窄病変を有し,ACS所見が
揃っていたため,急性大動脈解離の診断に難渋し
た一例を経験したので報告する.
100) 感染性上腸間膜動脈瘤による虚血性腸炎で
腸閉塞を発症し右胃大網動脈で血行再建し救命し
えた1例
(長野中央病院循環器科) 板本智恵子・
三浦英男・河野恒輔・山本博昭・甲田 隆・
内藤貴之
(同心臓血管外科) 八巻文貴
103) 腹腔動脈病変に伴う腹部アンギーナの2例
(長野県立木曽病院循環器内科) 堀込実岐・
山崎恭平
症例は59歳の男性.平成19年9月に脳神経外科で
左椎骨動脈解離の手術を受けその後髄膜炎を発症
し内服治療中であった.平成20年1月腹痛のため
当院を受診,CTでは12mmの上腸間膜動脈瘤によ
る圧迫が原因と考えられる腸閉塞所見があり,ま
た僧帽弁に疣贅を認めたことから抗生剤投与を開
始した.第16病日に施行したCTでは瘤が25mm
に拡大しており,翌日準緊急的に手術を施行した.
上腸間膜動脈の末梢の病変で腸管虚血の恐れがあ
り大伏在静脈では長期開存が期待しにくいと判断
し,右胃大網動脈をもちいて血行再建した.その
後経過は良好であった.感染性上腸間膜動脈瘤は
まれな疾患であり,また動脈グラフトを使用し救
命に成功した症例を経験したので報告する.
64) 僧帽弁接合不全に対し僧帽弁形成術および
左室減容術を施行した肢帯型筋ジストロフィー心
筋症の一例
(北里大学循環器内科学) 佐藤 陽・
猪又孝元・小板橋俊美・西井基継・前川恵美・
桐生典郎・青山直善・和泉 徹
(葉山ハートセンター) 磯村 正
93) 腫瘍縮小時に心室細動を起こした心筋浸潤
型悪性リンパ腫の一例
(新潟大学医歯学総合病院) 鈴木友康・
北沢 勝・前田一樹・矢野敏夫・小澤拓也・
伊藤正洋・瀧澤 淳・塙 晴雄・小玉 誠・
相澤義房
105) アミオダロンによる薬剤性肺障害を来たし
た心室頻拍合併重症心筋梗塞症の一例
(川崎市立多摩病院循環器科) 高井 学・
佐々木俊雄・中野恵美・藤田禎規・松田央郎・
水野幸一・原田智雄
(聖マリアンナ医科大学循環器内科)
三宅良彦
【症例1】70歳男性,食後の心窩部痛のため3ヶ
月間で8kgの体重減少を認め精査加療目的に入
院.既往歴には高血圧,高脂血症.喫煙歴は15
本/日(50年間).腹部CTでは腹腔動脈と上腸間
膜動脈は起始異常により同一起始となっており,
その起始部に狭窄を認めたため虚血症状を呈し
たものと考えられた.経皮的血管形成術施行し,
Stent留置後症状は消失した.【症例2】70歳女性,
食後の心窩部痛を主訴に来院.既往歴には特記事
項なし.腹部CTにて腹腔動脈起始部での完全閉
塞と上腸間膜静脈動脈2分枝のうち1本が完全閉
塞している所見を認め症状が持続するため精査の
ため入院.経皮的血管形成術施行したが不成功で
あり,人工血管によるバイパスグラフトを留置し
症状が改善した.腹腔動脈病変による腹部アンギ
ーナを呈した希な症例を2例経験したため報告し
た.
101) 大動脈解離盲端のflap圧排による再発性の
左下肢虚血に対し,カテーテル治療に成功した一例
(心臓血管研究所付属病院循環器科)
稲葉俊郎・矢嶋純二・及川裕二・小笠原憲・
桐ケ谷肇・永島和幸・船田竜一・松野俊介・
中川裕也・中村通也・澤田 準・相澤忠範
104) 大動脈解離の発症により診断に至った血管
型ベーチェット病の一例
(信州大学循環器内科) 加藤太門・
小池康志・相澤万象・越川めぐみ・笠井宏樹・
伊澤 淳・富田 威・熊崎節央・筒井 洋・
小山 潤・池田宇一
症例は72歳女性.大動脈解離の上行大動脈置換術
後,左総腸骨動脈(CIA)の残存flap圧排により
左下肢痛の増悪・寛解を繰り返していた.術後
10ヶ月目,左下肢痛持続するためカテーテル治
療依頼で転科となった.右大腿動脈穿刺で真腔
から偽腔にwireを通過させ,8mmのballoonにて
fenestration施行したが左CIA閉塞は解除されず,
大動脈分枝部直上の真腔にstent留置したがstent
が容易に右CIAへ移動するため,左大腿動脈より
穿刺追加しhugging balloonで後拡張するもstent
位置不安定であり,大動脈分岐部に近位部が突出
する形で左CIAにstent追加留置し治療終了とし
た.その後は四肢血圧も改善し左下肢虚血症状も
なく良好に経過している.大動脈解離後の左下肢
虚血に対しカテーテル治療に成功した症例を経験
したため報告する.
症例は44歳の女性.1998年より結節性紅斑と虹彩
炎,潰瘍性大腸炎が出現し近医でSWEET症候群
と診断された.ステロイドの内服により最近数年
は皮膚症状,消化器症状はほぼコントロールされ
ていた.2008年4月頃より時折背部痛が断続的に
出現していた.6月初旬に持続性の背部痛となり
前医を受診した.造影CTで横隔膜直上に最大短
径5.5cmの大動脈瘤を認め,瘤の近位部から逆行
性に左鎖骨下動脈分枝部直後まで偽腔開存型の大
動脈解離を認めたため当院へ搬送となった.以上
の臨床所見から大動脈病変を呈した血管型ベーチ
ェット病と診断した.Stanford B型解離は保存的
に降圧療法とし,大動脈瘤に大動脈ステントグラ
フト内挿術を予定した.血管型ベーチェット病で
は大血管病変に注意が必要であり,大動脈解離の
合併は稀であるため報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
〈演題取り下げ〉
ベルサール神保町(2008 年 12 月) 989
第 93 回 日 本 循 環 器 学 会 四 国 地 方 会
2008 年 12 月 6 日 松山市総合コミュニティセンター
会長:芦 原 俊 昭(松山赤十字病院循環器科)
1) 重症心不全コントロールにPCIが有効であっ
た1症例
(市立宇和島病院循環器内科) 大島清孝・
山根健一・泉 直樹・大島弘世・石橋 堅・
池田俊太郎・濱田希臣
3) 再疎通にX-tremeが有効であった慢性完全閉
塞の1例
(市立宇和島病院循環器科) 池田俊太郎・
泉 直樹・山根健一・大島弘世・石橋 堅・
大島清孝・濱田希臣
症例は68歳男性.【既往歴】H15年に糖尿病と診
断され同年脳梗塞のため右不全肩麻痺となって
いる.【現病歴】H20年2月24日21時ごろより胸
部不快感を自覚.軽快しないため25日近医受診
し,急性心不全と診断され当院に緊急搬送された.
ECG,血液検査より心筋梗塞による心不全と診
断したが,心筋逸脱酵素が下行脚であったためま
ず薬物療法から開始した.しかし,胸痛,心不全
コントロールが不良な為28日冠動脈造影を施行.
#6,11近位部より彌慢性に狭窄を認め 枯れ枝
状 であった.IABP挿入後,近位部のみPCIを
施行し終了した.EFは16.7%であった.一時的な
CHDF,2度のVF等を経て5月にはM–simpson
法にてEF45.6%まで改善し6月11日軽快退院さ
れた.
症例は75歳男性.労作時の息切れの精査加療目的
で入院した.冠動脈造影では右冠動脈は有意狭窄
を認めなかったが,左冠動脈は左前下行枝入口部
より完全閉塞していた.左前下行枝末梢は右冠動
脈のseptal channelより側副血行を認めた.冠イ
ンターベンションを施行した.慢性完全閉塞部は
内部にrecanalized channelを認めたためfinecross
のバックアップ下にfielder FCの挿入を試みたが
穿通は不能であった.そこでX-tremeにワイヤを
変更したところワイヤーはchannel内を進み左前
下行枝の捕捉成功した.Finecrossが,慢性完全
閉塞内を進まないためトルナスに変更,ワイヤを
通常のfloppy wireに変更,前拡張の後サイファを
留置した.慢性完全閉塞内の小径のrecanalized
channelの捕捉にX-tremeが有効であった.
2) メカニカルサポート下のPCIで救命した左冠
動脈主幹部急性冠症候群の1例
(高松医療センター) 村上和司・陸 新・
辻 哲平・近藤 功・友廣敦文・和田佳宏・
水重克文
4) Complex lesionにおけるSheethlessガイディ
ングカテーテルの可能性
(よつば循環器科クリニック循環器科)
大谷敬之・阿部充伯・藤枝裕之
症例は73歳女性.労作時胸痛を主訴に当院外来を
受診したが外来心電図室内で心肺停止となった.
ただちに心肺蘇生をおこないPCPS,IABPによる
メカニカルサポートを開始した.急変時の心電図
変化よりACSを疑ってCAGをおこなったところ
左冠動脈主幹部(LMT)に血栓性の高度狭窄病
変を認めたため,血栓吸引後BMS 3.5×12mmを
留置した.以後血行動態は徐々に安定しPCI当日
にメカニカルサポートから離脱した.PCI翌日の
CPKは2117であった.本症例はLMT以外に前下
行枝近位部にも高度狭窄病変を認めており,後日
追加のPCIをおこない軽快退院した.発症時の心
機能が良好であり初回造影時TIMI grade 3であっ
たことが経過良好であった要因と考えられた.
990 第 93 回四国地方会
Complex lesionにおける冠動脈インターベンショ
ン(PCI)は,病変の複雑性などによりバックア
ップの確保や十分なカテーテルの内腔が必要等の
理由で,主に7-8Fの大腿動脈アプローチが用い
られている.ただ最近ではガイドカテ,バルーン,
ステント等様々な器具の改良により橈骨動脈アプ
ローチでも手技が可能な症例も増えてきており,
さらには冠動脈造影所見に加え冠動脈CTにて病
変の性状もある程度予測可能となり,それらを組
み合わせる事で患者さんにとってより負担の少な
い橈骨動脈アプローチからのComplex lesionへの
インターベンションが可能となってきている.今
回我々は,Complex lesionに対し,Sheethlessガ
イディングカテーテルを用い経橈骨動脈アプロー
チで施行したPCI症例を提示しその有用性,可能
性を検討したい.
5) PCI時SLRガイディングカテーテルが有効で
あった2症例
(愛媛県立中央病院循環器内科)
佐々木康浩・藤田慎平・三好章仁・清水秀晃・
高木弥栄美・佐藤澄子・羽原宏和・垣下幹夫・
中村陽一・鈴木 誠
【 症 例 1】89歳 男 性ACS疑 い で 来 院 し 緊 急 カ テ
ーテル検査を施行したところ,右冠動脈seg1が
閉塞しており,回旋枝seg13がAHA分類で90%狭
窄を認めた.引き続き緊急PCIとなったがJR4.0,
SAL0.75,エンゲイジできずSLRガイディングカ
テーテルを使用によりPCI成功した.【症例2】
72歳男性ACSで来院,ACS疑いで来院し緊急カ
テーテル検査を施行したところ右冠動脈seg4に
AHA分類で99%狭窄を認めまた左冠動脈seg12に
AHA分類で99%狭窄を認めた.両冠動脈とも有意
狭窄しており,責任病変の判断がつかずSLRガイ
ディングカテーテルを使用し左右2病変のPCIに
成功した.今回SLRガイディングカテーテルを用
いてPCIを施行した2症例を経験したため特徴を
踏まえて報告する.
6) インターベンション後出血性疾患発症例に関
する検討
(三豊総合病院内科) 高石篤志・上枝正幸・
中野由加里・鵜川聡子・旦 一宏・大西伸彦・
今井正信
冠動脈インターベンション(PCI)後の出血性疾
患発症例につき調査した.【対象・方法】2004年
9月から2008年1月にステントを留置した417症
例(平均年齢70.0±10.0歳)で,術後出血性疾患
発症例の出血状況,臨床経過,抗血小板薬の扱い
につき調査した.【結果】出血性疾患を発症した
のは12例(2.9%)であった.部位別では消化管
が4例,脳が7例であった.出血後は2例を除い
て保存的な管理を行ったが,死亡例が2例あった.
また全例で出血後1ヶ月以内に抗血小板薬内服を
再開していた.
【考察】今回PCI後の出血では脳
出血が最多であること,状況から保存的な対応し
かできていないことが判明した.高齢患者の多い
当院では,ステント選択,抗血小板療法につき再
検討し出血性疾患の予防に努めることが重要と考
えられた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
7) Debulking strategyにおけるDrug Eluting Stent
留置の急性期及び慢性期予後
(市立宇和島病院循環器科) 池田俊太郎・
泉 直樹・山根健一・大島弘世・石橋 堅・
大島清孝・濱田希臣
【目的】複雑病変に対するstrategyとして,ステ
ント植え込みに先行するDCAあるいはRotablator
が 有 効 で あ る が,Drug-Eluting Stentsの 留 置 に
より更なる慢性期再狭窄率の軽減が期待され
る.Debulking-DESの 有 効 性 をBaremetal Stent
留置群と比較した.【方法】DCAかつ,または
Rotablatorを 施 行 しDESの 植 え 込 み を 施 行 し た
連続124例を対象とした.Debulking後BMSを留
置した42名を対照とした.【成績】患者および手
技背景は両群間で有意差を認めなかった.院内
MACE発生率は両群間で差はな6ヶ月後のlate
loss及び再狭窄率はDebulking-DES群で有意に低
値 で あ っ た.Kaplan-meier分 析 で はMACEフ リ
ー率はDES留置群で有意に低率であった【結論】
Debulking-DESは主要心事故を抑制し有効なスト
ラテジーであることが示唆された.
10) 冠動脈ステント3種(CYPHER,TAXUS,
DRIVER)の慢性期病理組織所見の比較と局所凝
固反応の関連性
(徳島大学病院循環器内科) 山口浩司・
若槻哲三・仁木敏之・楠瀬賢也・小柴邦彦・
冨田紀子・八木秀介・岩瀬 俊・山田博胤・
添木 武・赤池雅史・佐田政隆
我々はこれまでに,同一患者の剖検病理所見から
薬剤溶出ステント(DES)2種とベアメタルステ
ント(BMS)ではstrut周囲の内膜肥厚や炎症細胞
浸潤およびフィブリン析出などに差があることを
報告してきた.本研究においては,各種ステント
留置術を受け6カ月後の慢性期に再狭窄を認めな
かった症例に対して,冠動脈局所における各種凝
固系マーカーを測定した.冠動脈入口部および冠
静脈洞開口部から採血を行い凝固系マーカーの冠
循環血中濃度変化(Δ)を算出した.DESとBMS
間ではΔprothrombin fragment F1+2(ΔF1+2)
に差を認め,DESで有意に大であった(23±21 vs
5±13pmol/l,p<0.01).またPES・SES間でも有
意差を認めた(32±24 vs 18±19pmol/l,p<0.05)
.
DES留置後は遠隔期においても局所の凝固亢進
状態が持続している可能性が示唆された.
8) Stent fractureが一因と考えられた超遅発性ス
テント血栓症の2例
(愛媛労災病院循環器内科) 見上俊輔・
佐藤 晃・沢 映良・橋本弦太
(同心臓血管外科) 岡崎嘉一・友澤尚文
(倉敷中央病院循環器内科) 門田一繁・
光藤和明
11) CPAで来院した心破裂による心タンポナー
デの一救命例
(近森病院循環器科) 葉梨喬芳・川井和哉・
關 秀一・古谷敏昭・中岡洋子・西田幸司・
要 致嘉・窪川渉一・深谷眞彦・浜重直久
(同心臓血管外科) 樽井 俊・藤田康文・
池淵正彦・入江博之
【症例1】44歳男性.2004年7月31日急性心筋梗
塞(下壁):保存的治療.2004年10月26日CAG:
#1 CTO.PCI不 成 功.2005年 3 月26日Re-PCI.
#1 CTO-0%(#1-#4;SESx6).2005年 7 月12日
CAG:再狭窄なし.2006年7月6日(DES留置468
日目)ACS.#1完全閉塞のため緊急PCI.
【症例2】
69歳男性.2004年10月25日狭心症のため当院受診.
CAG;#1 CTO.PCI不成功.2004年12月2日RePCI #1CTO-0%(#1-#4;SESx5+BMSx1)2005
年3月17日,11月17日CAG:再狭窄なし.2007
年 8 月20日 肺 炎 の た め 入 院 中, 胸 痛 後 心 停 止
(DES留置962日後).緊急CAGにて#1完全閉塞の
ため緊急PCI.
【結語】今回我々は薬剤溶出性ス
テント留置後,超遅発性ステント血栓症を2例を
経験した.超遅発性ステント血栓症発症の原因の
一つにStent fractureが関与した可能性が考えら
れたので報告する.
症例は高血圧・高脂血症のある81歳女性.2008年
5月4日胸部不快感のため近医を受診したが,心
電図異常なく帰宅.症状改善せず5月8日再診,
待合室で心肺停止となり当院へ救急搬送された.
搬入時はPEAで,心エコーで心嚢液貯留を認め心
タンポナーデと診断した.心嚢穿刺にて約20ml
の血性心嚢液を排液後,血圧は108/80へ回復し,
心電図で下壁誘導のST上昇・心エコーで下壁の
壁運動低下を認め,急性心筋梗塞に伴う心破裂と
推定した.しかし緊急冠動脈造影では冠動脈に有
意狭窄は認めなかった.その後外科的心嚢ドレナ
ージを施行し,血行動態は安定した.以後,発作
性心房細動・脳塞栓症,重症肺炎を併発したが,
約2ヶ月の経過で軽快退院した.冠攣縮による急
性心筋梗塞の心破裂で心タンポナーデに陥った稀
な症例を経験したので報告する.
9) 血管内視鏡でシロリムス溶出ステント植込み
後3年間の経過を観察し得た1例
(愛媛県立今治病院循環器科) 重見 晋・
松岡 宏・川上秀生・大下 晃・河野珠美
症例は75歳,女性.主訴は胸痛.平成16年10月に
狭心症の診断で,冠動脈造影を施行された.#6
に90%狭窄を認めたため,同部位にシロリムス溶
出ステント(3mm×28mm)が留置された.ス
テント留置直後の血管内視鏡では最狭窄部に軽度
の黄色プラークを認めるのみであった.1,6,
13ヶ月後に確認造影を施行,再狭窄は認めなかっ
た.13ヶ月後の血管内視鏡ではステントストラッ
トはその大部分が黄色の新生内膜で被覆されてい
た.平成20年4月,再度胸痛を認めたために精査
目的で入院.確認造影ではステント留置部位に再
狭窄を認めなかった.同部位を血管内視鏡で観察,
ステントストラットは白色調の新生内膜で覆われ
ていた.血管内視鏡でシロリムス溶出ステント植
込み後3年間の経過を観察し得たので報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
12) 重症冠攣縮により心停止を来した睡眠時無
呼吸症候群の1症例
(市立宇和島病院) 石橋 堅・池田俊太郎・
山根健一・泉 直樹・大島弘世・大島清孝・
濱田希臣
症例は67歳の男性.高血圧症にて外来通院中であ
った.以前よりいびきが大きく,睡眠時の呼吸停
止が認められていた.平成20年5月11日夜睡眠中
に心停止を発見され,家族によるCPR,救急隊に
よるAED作動により心室細動より復帰し,当院
に救急搬送された.前壁の壁運動異常を認め,急
性冠症候群疑いにて冠動脈造影を施行したが,有
意狭窄無し.後日冠拡張薬休薬にて再度冠動脈造
影を行い,アセチルコリン負荷にて血圧低下を伴
う著明な冠攣縮が誘発された.睡眠検査にて低呼
吸優位の睡眠時無呼吸症候群と診断,肥満と寝酒
を誘因とし,冠攣縮による心室細動をきたしたも
のと考えられた.
13) アナフィラキシーショックに合併した冠攣
縮性狭心症の2例
(松山市民病院) 寺谷禎史・越智耕平・
西山明子・佐藤博彦・吉野智亮
アナフィラキシーショックの際には心電図上様々
なST変化が見られる事が知られているが,今回
我々はアナフィラキシーショックの際にST上昇
や完全房室ブロックを認め,緊急冠動脈造影にて
冠攣縮性狭心症と診断した2例を経験したので報
告する.
14) Ca拮抗薬処方減少が臨床現場に与えたも
の?
(愛媛県立新居浜病院) 坂上智城・
末田章三・三根生和明・松中 豪
【背景】ARB万能時代である現代では,Ca 拮抗薬
の処方が減少している.【目的】冠攣縮性狭心症
(CSA)と診断した症例における入院精査前に服
用していた薬を調査し,Va発症頻度について検
討した.
【方法】対象は,1991-2005年末までに診
断したCSA連続456例である.15年間を3年毎に
分 類 し, そ れ ぞ れ I 期,II期,III期,IV期,V期
とし,2003-2005年までのデータを,過去の成績
と対比した.
【結果】Vaは2002年まで減少してい
たが,2003-2005年に微増した.Caは2002年まで
は徐々に増加し,約半数の症例が服用していたが,
2003-2005年は減少した.硝酸薬処方に変化はな
く,スタチン処方とACEI/ARB処方は有意に増
加した.【結論】ARB旋風によりCa拮抗薬処方が
減少し,Va再燃に関与している可能性がある.
15) 典型的安静時胸痛例は全て冠攣縮性狭心症
例か?
(愛媛県立新居浜病院) 末田章三・
坂上智城・松中 豪・三根生和明
【背景】発作時に硝酸薬が著効を示す安静時胸痛
例は,冠攣縮性狭心症疑いと定義される.【目的】
臨床現場で,安静時胸痛を訴え,心臓カテーテル
検査を施行した症例における誘発冠スパスム頻度
を検討した.【方法】安静時胸痛例の精査目的で,
心臓カテーテル検査に引き続き,アセチルコリン
負荷試験→エルゴノビン負荷試験→アセチルコリ
ン負荷試験施行が可能であった101症例が対象で
ある.
【結果】アセチルコリン負荷試験にて81例
が陽性,エルゴノビン負荷試験にて4例が陽性,
引き続き施行したアセチルコリン負荷試験にて9
例が陽性所見を認めた.誘発冠スパスム陰性例は
7例(7%)であった.【総括】安静時胸痛例の
90%以上の症例で冠スパスム陽性所見を認めた.
松山市総合コミュニティセンター(2008 年 12 月) 991
16) 人工呼吸器離脱時にランジオロールが有効
であった重症虚血性心不全の1例
(市立宇和島病院) 大島弘世・池田俊太郎・
山根健一・泉 直樹・石橋 堅・大島清孝・
濱田希臣
19) Ectatic coronaryよりのdistal embolismが疑
われた急性心筋梗塞の一例
(高知大学医学部附属病院老年病科)
上田素子・北岡裕章・野口達哉・田村親史郎・
谷岡克敏・山崎直仁・土居義典
22) 64MSCT(SOMATOM DEFINITION)によ
る心機能の判定
(済生会松山病院循環器科) 八木 専・
渡邊浩毅・佐伯秀幸・三木 理
(愛媛大学生態画像応用医学分野) 城戸輝仁
症例は67歳,男性.緊急冠動脈造影検査で3枝病
変に合併した左前下行枝の急性心筋梗塞と診断
し,挿管およびIABP補助下にPTCAを施行した.
術後も心不全が改善せず,第11病日に残存病変に
対してPTCAを施行した.その後徐々に心不全は
改善傾向であったが,心エコー上はEF20%,僧
房弁流入波形は偽正常化波形であった.第20病日
に抜管を試みたが,心拍数は100/分前後から抜管
後120/分台へと上昇し,同日に呼吸状態悪化した
ため再挿管となった.第24病日に再度抜管を試み
たが,その際頻拍予防のため,ランジオロール
0.25γ∼1γの併用を行った.抜管後は血圧低下
もなく,また心拍数も100/分台と抜管前と著変な
く人工呼吸器の離脱が可能となった.今回人工呼
吸離脱時にランジオロールが有効であった重症虚
血性心不全の1例を経験したので報告する.
症例は,気管支喘息にて長期間のステロイド使用
歴のある,75歳男性.2008年5月19日急性心筋梗
塞(下壁)を発症し,当院へ救急搬送された.緊
急冠動脈造影にて,4AV100%の病変を認め,急
性心筋梗塞の責任病変と判断した.また,冠動脈
は全体に拡張しており,特にRCA#1∼#3の血管
径は約8∼10mmと高度であった.4AV100%の病
変は血栓性閉塞を疑う所見であり,血栓吸引とバ
ルーンによる拡張を何度も繰り返したが,TIMI
3 flowを得られず終了した.冠動脈の拡張性病変
からのdistal embolismにより発症したと思われた
AMIの一例を経験したので,若干の文献的考察を
加え,報告する.
【 目 的 】 当 院 で は 本 年 2 月 よ り64列 M S C T
(SOMATOM DEFINITION)の稼動を開始した.
同CTは検出器が2基搭載されており,世界最速
の回転速度を持ち画像解像度の高さが特徴であ
る.そこで,同CTを用いて冠動脈病変の評価と
心機能の評価を各々冠動脈造影と心エコーと比
較した.【方法】当院で冠動脈CTを施行した症例
で,ほぼ同時期に冠動脈造影を行った45例72病
変と,心エコーを行った76例を対象に各々狭窄
病変の一致度と心機能の一致度を判定した.【成
績】75%以上を有意とし冠動脈造影と比較した
結果,感度は85.7%であった.左心機能との相関
はR=0.676でp<0.0001でmeanEFCT=68.8±12.2
%,meanEFUCG=64.1±10.7%であった.【結論】
冠動脈病変の判定のみでなく心機能の判定も高い
信頼度が得られ,有効な診断ツールであることが
判明した. 17) 正常冠動脈にもかかわらず虚血性左室瘤と
考えられた1例
(徳島赤十字病院循環器科) 村上尚嗣・
日浅芳一・宮崎晋一郎・當別當洋平・
中川貴文・陳 博敏・馬原啓太郎・小倉理代・
宮島 等・弓場健一郎・高橋健文・細川 忍・
岸 宏一・大谷龍治
20) 当院における過去5年間の左冠動脈主幹部病
変に対する治療ならびに危険因子についての検討
(三豊総合病院) 旦 一宏・上枝正幸・
中野由加里・鵜川聡子・大西伸彦・高石篤志
23) 拡張早期僧帽弁輪運動速度の心エコー器機
による差異に関する検討
(喜多医師会病院循環器科) 齋藤 実・
吉井豊史・日浅 豪・山田忠克・住元 巧
(愛媛大学病態情報内科学) 西村和久・
井上勝次・岡山英樹・檜垣實男
今回我々は正常冠動脈にも関わらず下壁心尖部に
虚血性の心室瘤を認め外科的切除術を要した1例
を経験したので報告する.症例は75歳男性.労作
時呼吸困難感を主訴に近医を受診し,精査加療の
ため当院紹介となった.なお,胸痛などの虚血を
示唆する自覚症状は今まで認めていなかった.心
エコー検査上,心尖部から下壁にかけて真性瘤を
認めたが,後日施行した冠動脈造影検査では冠動
脈に狭窄病変は認められなかった.Tl+BMIPP2
核種同時心筋シンチを施行したところ,両者とも
早期,晩期相において下壁から心尖部よりの集積
欠損を認め,viabilityのない陳旧性心筋梗塞の可
能性が高いと考えられた.心エコー検査では筋層
はあるため真性瘤と考えられるが,塞栓症のリス
クは高く,外科的瘤切除を要した.文献的考察を
加え報告する.
当院では2003年1月から2008年7月までの間に計
118例に対して左冠動脈主幹部病変への治療を施
行した.カテーテル治療が23例(19%)で冠動脈
バイパス術が95例(81%)であった.カテーテル
治療群における基礎疾患では高血圧(73%),糖
尿病(50%)の合併率が高かった.使用したステ
ントの内訳はbare metal stent 48%,sirolimus
eluting stent 48 %,paclitaxel eluting stent 4 %
であった.結果は手技成功率100%,再狭窄率13%,
ステント血栓症0%,主要心血管イベント4%で
あった.また,我々は以前より冠動脈疾患の危険
因子としての血清脂肪酸の関与について報告して
きた.今回,左冠動脈主幹部病変への治療を要し
た症例における危険因子の検討を行ったので併せ
て報告する.
18) 冠動脈バイパス術後に遅発性心タンポナー
デを繰り返し治療に難渋した一例
(松山赤十字病院循環器科) 田中孝明・
堀本拡伸・古賀純一郎・松坂英徳・堺 浩二・
高橋 優・松本健吾・久保俊彦・芦原俊昭
(同心臓血管外科) 溝部圭輔・松元 崇・
梅末正芳・松井完治
(同呼吸器外科) 横山秀樹
21) MDCTが発見の契機となった血栓閉鎖した
仮性冠動脈瘤の1例
(徳島県立中央病院循環器内科) 蔭山徳人・
藤永裕之・奥村宇信・斎藤彰浩・原田顕治・
山本 隆
(同心臓血管外科) 藤本鋭貴・筑後文雄
(同検査診断科) 佐竹宣法
症例は75歳男性.Jeopardized collateralを伴う2
枝病変に対してOPCABを施行した症例.術後心
筋虚血は消失していた.術後23日目に遅発性心タ
ンポナーデを来たし心停止となったが蘇生でき
た.心嚢穿刺ドレナージにて一旦安定したが術後
46日目に心タンポナーデが再発.同日心膜切開術
を施行したが,64,67日目に心タンポナーデが再
発.術後69日目に2回目の心膜切開術を施行.右
胸腔に心嚢水がドレナージされており縱隔の心陰
影は拡大傾向にあった.定期followの外来受診時,
再び心停止となった.心エコーを施行し,心タン
ポナーデの再発であると診断.心嚢ドレナージ後,
胸腔−腹腔ドレナージ施行し,現在は再発なく症
状は安定している.今回我々は,OPCAB後に心
タンポナーデ・心停止を繰り返し治療に難渋した
1例を経験したので報告する.
症例は66歳男性.主訴は労作時の胸苦.2007年5
月頃から同症状を自覚する事があった.同年9月
の検診で心電図異常を指摘され,2008年1月に精
査目的で近医より当科紹介された.心エコーでは
後壁に軽度の壁運動異常を認めるも心機能は正常
範囲であった.心臓MDCTではLCX#13中間部に
約1cmのLow density massを認め冠動脈の途絶
を認めた.心臓カテーテル検査でも同様の所見
で,MDCTでは瘤の血管構造が不明瞭など仮性冠
動脈瘤が疑われた.薬剤負荷心筋シンチでは#13
末梢のViabilityを認め,冠血行再建術を選択した.
冠動脈瘤があり冠動脈バイパス術と冠動脈瘤切除
を施行し,病理学的にも仮性冠動脈瘤と診断した.
仮性冠動脈瘤は稀な疾患で,MDCTがその発見契
機となった症例を経験したので,若干の文献的考
察も含めて報告する.
992 第 93 回四国地方会
【目的】拡張早期僧帽弁輪速度(e )の心エコー
器機による差異を検討すること.【方法】心エコ
ー 機 はVivid 7 Dimension(GE) とSequoia 512
(Siemens)を使用した.各種心疾患患者10名(平
均年齢64歳)において,同一検者でほぼ同時に2
種の心エコー機で検査を施行した.左室流入及び
流出路波形からの指標と組織ドプラで心室中隔,
左室側壁,右室側壁のe を測定し比較検討を行っ
た.【結果】左室流入,流出路波形の指標は2つ
の機器間で差を認めなかったが,e は全ての部位
においてVivid 7で有意に低値を示した.E/e は
有意にVivid 7で高値であったが,Vivid 7ではそ
のうち4名で15を超え,Sequoiaはそのうちの2
名のみであった.【結語】e は使用する心エコー
器機により差があり,左室拡張末期充満圧を類推
する上で十分に考慮する必要があると考えられた.
24) 心血管危険因子を有する患者において推算
糸球体濾過量と相関する心エコー指標は何か?
(香川大学総合診療部) 舛形 尚・
千田彰一・合田文則・山上あゆむ・奥山浩之・
河野武章
(同循環器・腎臓・脳卒中内科) 雪入一志・
野間貴久・細見直永
(かがわ総合リハビリテーションセンター)
今井正信
(香川大学循環器・腎臓・脳卒中内科)
河野雅和
心血管病の危険因子として慢性腎臓病が注目され
ているが推算糸球体濾過量(eGFR)と心エコー
指標の関係については十分には明らかにされて
いない.本研究では心血管危険因子を有するが
心臓病は発症していない患者309例において,心
エコー指標と日本腎臓学会が提唱する式で求め
たeGFRの関係について検討した.eGFRは左室流
入 血 流E/A(r=0.224,p<0.001) や 僧 帽 弁 輪 拡
張早期移動速度E (r=0.276,p<0.001)よりも,
左室心筋重量係数(r=–0.333,p<0.001)とより
良い相関を示した.心エコーでは左室拡張能指標
よりも左室肥大指標が腎機能低下を反映する可能
性が示唆された.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
25) 造影上正常と思われるold SVGはOCTでど
のように観察されるか? −血管内視鏡所見との
比較−
(愛媛県立今治病院) 河野珠美・松岡 宏・
川上秀生・大下 晃・重見 晋
28) C型慢性肝炎インターフェロン治療中に著
明な右室拡大を来した1症例
(市立宇和島病院循環器内科) 石橋 堅・
池田俊太郎・山根健一・泉 直樹・大島弘世・
大島清孝・濱田希臣
【目的】造影上狭窄のない,old SVGのOCT所見を
検討し,CAS所見と比較すること.【対象と方法】
男性4例,年齢70.5±6.5(64–77)歳.術後20.3
±5.4(13–26)年のいわゆるold SVG(4枝)を,
他枝(3例)および同枝(1例)に対するPCI時,
もしくはPCI慢性期確認造影時にOCTとCASで観
察した.【結果】造影上,狭窄のないSVGでも,
CASでは黄色プラーク破綻とそれに伴う血栓像
を認める部分があり,OCTでは同部位に内膜の
破綻と血栓,いわゆる急性冠症候群(ACS)様所
見を認めた.【結論】いわゆるold SVGでは,造
影上狭窄がなくても,ACS様の内膜破綻が生じて
いると症例もあると思われ,グラフト劣化が示唆
された.OCTはCAS同様にold SVGの観察に有用
であると思われた.
症例は60歳女性.平成5年C型慢性肝炎に対しイ
ンターフェロン治療中に胸痛と全身浮腫を来し,
以後労作時息切れを繰り返していた.平成18年右
心不全のため入院,心臓カテーテル検査にて重症
の冠動脈攣縮と著明な右室拡大を認めた.肺高血
圧症は認めず.以後も喫煙を継続し,当院外来受
診を自己中止していたが,平成20年7月再度右心
不全にて入院した.右室拡大の進行と容量負荷所
見を認めたが,右室圧負荷所見を認めず.汎血球
減少,自己抗体陽性,心膜炎よりSLEと診断し,
ステロイド治療を始めたが,右心不全症状は改善
せず.心電図上イプシロン波を認め,左脚ブロッ
ク,下方軸の心室性期外収縮等より不整脈源性右
室心筋症と考えられた.成因としてインターフェ
ロンによる心毒性,SLEによる微小血流障害など
多因子が考えられた1例であった.
26) 心タンポナーデを合併した急性心膜心筋炎
の1例
(高知大学医学部) 今村春一・川北友梨・
田村親史郎・山崎直仁・北岡裕章・矢部敏和・
土居義典
29) メシル酸イマチニブによる薬剤性心筋障害
が疑われた1例
(愛媛県立今治病院) 大下 晃・松岡 宏・
川上秀生・河野珠美・重見 晋
32) 完全房室ブロックを合併したたこつぼ型心
筋症の1例
(高松市民病院循環器科) 多田真理枝・
加藤みどり・藤村光則・岸久美子・小島章裕
症例は81歳,男性.平成19年8月に消化管間質腫
瘍(GIST)と診断され,イマチニブの投与を開
始された.平成20年5月に全身浮腫と胸腹水が出
現したが,イマチニブを休止し利尿剤の投与で一
時軽快.その後,イマチニブの投与で再度浮腫が
増悪するため8月8日から休薬した.8月20日頃
より呼吸困難を伴うようになり,心エコー検査で
心不全と診断された.心不全の原因精査および加
療目的で当院に紹介され8月26日入院した.心エ
コーでは著明な壁運動低下を認め,薬剤による治
療を開始した.カルベジロールやARBの投与に
より徐々に心機能は改善し,9月17日心臓カテー
テル検査を施行した.冠動脈には異常なく,治療
経過などよりイマチニブによる心筋障害が最も疑
われたため報告する.
症例は77歳の女性.平成20年8月22日,日中にか
つてないような不愉快な思いをして自宅で臥床し
ていたが,気晴らしのため同日夕方散歩にでか
けたところ数10mで意識消失発作を来たし,当
院に救急搬送された.心電図で完全房室ブロッ
ク,HR44/分,II,III,aVFのT波の増高を認め,
UCGで壁運動異常を認めた.急性心筋梗塞を疑
い緊急CAGを施行したところ,両側冠動脈に有
意狭窄は認めず,左室造影で心基部以外の広範囲
な壁運動低下を認め,たこつぼ型心筋症と診断
した.数日でUCGでの壁運動異常は軽減したが,
完全房室ブロックは遷延した.第7病日に心臓電
気生理学検査を施行しHVブロックを認め,第11
病日にDDDペースメーカー植え込み術を行った.
完全房室ブロックを合併したたこつぼ型心筋症の
一例を経験したため報告する.
30) アントラサイクリン系薬剤による薬剤性心筋
症治療に際してPETによる評価が有用であった一例
(愛媛県立中央病院) 藤田慎平・三好章仁・
清水秀晃・佐々木康浩・高木弥栄美・
佐藤澄子・羽原宏和・垣下幹夫・中村陽一・
鈴木 誠
(愛媛県立新居浜病院) 松中 豪
33) 房室ブロックで発症し,高度の右室機能障
害を呈するようになった心サルコイドーシスの一例
(高知大学老年病科・循環器科) 弘田隆省・
北岡裕章・谷岡克敏・今村春一・上田素子・
川北友梨・坂本知代・濱川公祐・川田泰正・
野口達哉・羽屋戸佳世・田村親史郎・
大川真理・久保 亨・山崎直仁・松村敬久・
矢部敏和・土居義典
33歳男性.3−4日前からの感冒様症状の後,胸
痛・呼吸困難を主訴に救急搬送された.収縮期血
圧85mmHgとショック状態であった.胸部レント
ゲンで心拡大を認め,心エコーにて肥厚した心筋
と左室収縮能の低下および心嚢液貯留を認めたた
め,急性心膜心筋炎と診断した.カテコラミン・
利尿剤に対する反応は悪く,IABPを挿入したが
血行動態は改善を認めなかったため,心嚢液に対
し外科的ドレナージ術を施行し血行動態は改善し
た.その後の経過は良好であった.心筋肥厚およ
び収縮能低下は徐々に改善した.回復期に一過性
に末梢血好酸球の上昇を認めた.心膜心筋炎はウ
イルス感染により発症することが多く,大部分は
軽症で経過する.今回IABPに加え心嚢ドレナー
ジ術を必要とした心膜心筋炎を経験したため報告
する.
27) 重症心膜炎を初発症状とした多発性筋炎/
皮膚筋炎(PM/DM)の1例
(近森病院循環器科) 古谷敏昭・中岡洋子・
川井和哉・葉梨喬芳・西田幸司・要 致嘉・
關 秀一・窪川渉一・深谷眞彦・浜重直久
症例は43歳女性.1ヶ月前からの発熱,浮腫のた
め,近医より転院となった.入院時,血圧98/60,
脈拍 102整,体温37.5℃,全身浮腫著明で,血液
検査上,Hb 9.6,WBC 12200,CRP 5.9,CPK 790,
Alb 2.1などの異常を認めた.胸部X-PでCTR 62%
と拡大し,CT上大量の心嚢液を認め,pre-shock
状態のため,第3病日心嚢ドレナージ術を施行し
た.四肢筋力低下,CPK上昇,皮疹を認めること
から皮膚筋炎と診断し,第6病日よりステロイド
パルス療法を開始,反応不良のため,第13病日よ
りエンドキサンパルス療法を開始した.その後,
心嚢液はほぼ消失し,浮腫も改善し,約8週間後
に軽快退院した.重症心膜炎を初発症状とする
PM/DMは非常に稀であり,若干の文献的考察を
加え報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
【症例】46歳女性【既往歴】H9年左乳癌乳房切除
術施行.Epirubicin(H9∼H20年1月総量1114mg/
m2)投与歴あり.
【現病歴】H20年3月呼吸困難感
主訴に外来受診したところ心機能低下認めため薬
剤性心筋症と判断し当科入院となった.【経過】
Anthracycline系薬剤の心筋障害に対するACE-I
の有効性の報告に基づきEnalaprilを開始した.し
かし,乾咳顕著となりEplerenoneとValsartanに変
更した.βブロッカー導入目的に心機能とviability
評価を行った.CI 2.57 l/min/m2 と維持されてお
り,PETにて心筋血流・viability保たれていると
判断しCarvediolを開始した.治療効果判定目的の
MIBGシンチにおいてWR改善とPETにおける安静
時血流値とEFの改善が得られた.【結語】薬剤性
心筋症治療にPETが有用であった一例を経験した.
31) 外眼角部からの皮膚生検で診断し得たAL
アミロイドーシスの1例
(徳島赤十字病院循環器科) 笹 弥生・
日浅芳一・細川 忍・當別當洋平・村上尚嗣・
中川貴文・陳 博敏・宮崎晋一郎・
馬原啓太郎・小倉理代・宮島 等・
弓場健一郎・高橋健文・岸 宏一・大谷龍治
症例は50歳男性.労作時呼吸苦や下腿浮腫などの
心不全症状を来して当院を受診した.心電図で
は四肢誘導での低電位とV1-4でのQSパターンや
poor R progressionを呈していた.心エコーでは
EF=40%台でびまん性の壁運動低下,左心室壁の
肥厚,granular sparkling signを認めた.身体診
察にて巨舌,口腔粘膜や左外眼角部での紫斑を確
認し,外眼角部からの皮膚生検でアミロイド沈着
を認めた.また血清/尿中免疫電気泳動でBenceJones蛋白陽性であり,これらの所見からALアミ
ロイドーシスと診断した.近年,自家造血幹細胞
移植併用でのメルファラン大量療法が治療成績を
向上させているとの報告も散見される.今回,急
性心不全にて発症し,外眼角部からの皮膚生検で
診断し得たALアミロイドーシスの1例を経験し
たので,若干の文献的考察を加え報告する.
76歳女性.近医にて2000年に完全房室ブロックと
診断され心臓ペースメーカー植え込み術を施行さ
れた.その後,右心不全を呈するようになり心臓
超音波検査で右室の拡大,右室の収縮不全,高度
の三尖弁閉鎖不全を認め当院紹介された.当初明
らかな原因は特定できなかったが,2008年になり
下腿に皮疹が出現し生検よりサルコイドーシスが
疑われ心サルコイドーシスの診断に至った.今回
我々は,房室ブロックで発症し8年間の経過で高
度の右室機能障害を呈するようになった心サルコ
イドーシスの一例を経験したので報告する.
松山市総合コミュニティセンター(2008 年 12 月) 993
34) Uhl病の1例
(高松赤十字病院循環器科) 津島 翔・
末澤知聡・田原達哉・多田典弘・畠添敏光・
松原一志・十河泰司
症例は67歳女性で1月ほどの間に下腿浮腫と労作
時呼吸困難の増悪を認め入院.心電図にてHR110
の2:1伝導のAFL,胸部写真にてCTR80%の著
明な心拡大を認めた.心エコー上では両心の拡大
と右心系圧の亢進,収縮能の著明な低下が見られ
た.CAGでは有意狭窄を認めなかったが,RVG
にて右室の壁運動低下と壁が薄くなっているのが
認められた.血液検査より膠原病,代謝疾患の関
連は否定的であり,右心系の圧データや造影CT,
UCGからPHT,肺塞栓症,先天性心疾患も否定
的であり右室心筋症が疑われた.UCGやMRIな
どの所見より右室壁の非常に薄いことが確認さ
れ,それよりUhl病が考えられた.今回,我々は
Uhl病の一例を経験したために報告する.
37) 左室リモデリングに伴う高度機能性僧帽弁
逆流に対し,外科的治療が奏効した非虚血性拡張
型心筋症の一例
(愛媛大学医学部附属病院脳卒中・循環器病センター)
清家史靖・大塚知明・佐々木香織・青野 潤・
稲葉慎二・永井啓行・西村和久・井上勝次・
鈴木 純・大木元明義・岡山英樹・檜垣實男
症例は57歳,男性.平成18年3月に軽労作での呼
吸困難が出現するようになり,同年4月に急性心
不全を発症し当科入院し,非虚血性拡張型心筋症
と診断した.カルベジロールを導入し,退院後外
来加療を続けていたが,左室リモデリングの進行
とそれに伴う機能性僧帽弁逆流の増悪を認めた.
NYHA3度で薬物治療抵抗性の難治性心不全と判
断し,tetheringに伴う機能性僧帽弁逆流に対し
僧帽弁形成術及び乳頭筋間縫縮術を施行したとこ
ろ,僧帽弁逆流量及び左室容量の減少を認め,そ
の後の経過は良好であった.左室リモデリングに
伴う高度僧帽弁逆流に対し外科的治療が奏効した
一例を経験したので報告する.
40) 心臓再同期療法が有効であったnarrow QRS
の拡張型心筋症の一例
(高知大学老年病科・循環器科) 濱川公祐・
大川真理・松村敬久・弘田隆省・羽屋戸佳世・
久保 亨・山崎直仁・北岡裕章・矢部敏和・
土居義典
(高知医療センター循環器科) 伴場主一・
山本克人・古野貴志
比較的QRS幅の狭い(130msec未満)慢性心不全症
例に対する心臓再同期療法(CRT)の有効性に関し
ては議論があるが,今回我々はCRTが有効であった
と思われる一例を経験した.症例は73歳女性.1996
年1月拡張型心筋症と診断され内服治療を受けてい
たが,2006年2月心不全増悪で入院.その後近医で
carvedilolを導入されたが,NYHA III-IV度の心不全症
状が続き,2007年12月当科へ入院となった.心エコ
ー 図 で,LVDd/Ds 73/67mm,LVEF 22%,BNP値 は
2306pg/mL,心電図のQRS幅は120msec弱であったが,
内服治療下に心不全症状が持続し,カラー組織トラッ
キング法(Hitachi EUB-7500)で左室同期不全を認め
たため,CRT-D植え込みを施行された.心不全症状は
NYHA II度に改善し,BNP値も100まで低下,6ヶ月
後にLVDd/Ds 66/56mm,LVEF 33.5%と改善を認めた.
35) 心尖部肥大型心筋症に合併した左室内血栓
症の1例
(徳島大学循環器内科) 仁木敏之・
山田博胤・楠瀬賢也・山口浩司・小柴邦彦・
八木秀介・岩瀬 俊・添木 武・若槻哲三・
赤池雅史・佐田政孝
38) 心房細動を合併した閉塞性肥大型心筋症に
対してヒス離断及び右室2点ペーシングが有効性
であった1例
(高松医療センター) 近藤 功・陸 新・
辻 哲平・村上和司・友廣敦文・和田佳宏・
水重克文
41) 心アミロイドーシスの1剖検例における病
理組織所見と局所心機能の関連の検討
(愛媛大学医学部附属病院脳卒中・循環器病センター)
清家史靖・井上勝次・西村和久・佐々木香織・
青野 潤・稲葉慎二・永井啓行・鈴木 純・
大木元明義・大塚知明・岡山英樹・檜垣實男
症例は79歳男性.2006年右中大脳動脈狭窄からの
脳梗塞発症時心電図異常を指摘され心尖部肥大型
心筋症と診断.2008年8月中旬より下腿に浮腫を
認め,心不全増悪のため入院.心エコーにて心部
は左室,右室と著明な肥大と壁運動低下を認め,
左室心尖部内に1.2×2.2cmの巨大血栓を認めた.
心不全はhANP投与にて改善し,心尖部血栓はヘ
パリン,ワーファリン投与にて縮小した.心尖部
肥大型心筋症に血栓を合併することは稀であり文
献的考察を加え報告する.
症例は71歳女性.平成9年よりHOCMの診断の
もと薬物療法中で左室流出路圧較差(LPVG)は
40-50mmHgであった.平成19年3/15に心房細動
および心房粗動を合併したためhybrid療法とし
てアミオダロン(200mg/日)の処方を受けてい
た.平成20年になり,アミオダロン中毒,甲状腺
機能低下の副作用の出現と,Brady-tachycardia
syndromeの合併により薬物療法困難となってき
たため,ヒス束離断およびDDDペースメーカー
挿入を選択することとなった.ヒス束離断および
心房リードを心耳に留置後,右室心尖部と流出路
の2カ所での右室2点ペーシングにより左室流出
路圧較差は53→15mmHgと低下した.術後6ヶ月
でLVPG15-20mmHgで経過良好である.
症例は51歳,女性.平成20年1月胸痛及び起座呼
吸を認め,当院を受診した.胸部レントゲン写真
にて肺うっ血及び両側胸水貯留を認め,心エコー
図検査においてびまん性に壁運動低下を認めたた
め,急性心不全に対する治療目的で当院に入院し
た.経皮的冠動脈造影術では冠動脈に狭窄を認め
ず,血中及び尿中よりBence-Jones蛋白-κ型が検
出されALアミロイドーシス及びそれに伴う心ア
ミロイドーシスの診断に至った.その後,薬物治
療を続けていたが次第に新機能が悪化し死亡し
た.本症例において剖検心の病理組織所見とスペ
ックルトラッキング法による局所心機能を比較し
えたので報告する.
36) 夜間のAdaptive-Servo Ventilationが有効で
あった難治性拡張型心筋症の1例
(喜多医師会病院循環器内科) 日浅 豪・
齋藤 実・吉井豊史・山田忠克・住元 巧
(愛媛大学病態情報内科学) 井上勝次・
岡山英樹・西村和久・檜垣實男
39) 心臓再同期療法が有効であった大動脈弁閉
鎖不全合併拡張型心筋症の1例
(喜多医師会病院循環器科) 齋藤 実・
吉井豊史・日浅 豪・山田忠克・住元 巧
(愛媛大学病態情報内科学) 西村和久・
井上勝次・岡山英樹・檜垣實男
56歳,男性.平成9年に拡張型心筋症と診断され
内服治療を受けていた.平成19年5月9日,慢性
心不全の増悪のため入院した.心エコーでは左室
拡大(LVDd/s=76/69mm)と低左心機能(LVEF
=21.9%)および高度の機能性僧帽弁逆流(MR)
を認めた.5月17日起坐呼吸となり,利尿薬の静
注,塩酸オルプリノン,カルペリチドの点滴静注
を開始したが,5月21日著明な血圧低下と無尿を
来したため,カテコラミンの投与とIABPを開始
したところ,血圧上昇と利尿が得られ,5月28日
IABPから離脱できた.以後もNYHA IVの心不全
状態が続き,ドブタミン,カルペリチドの持続点
滴を要する急性増悪を繰り返した.高度のCheyneStokes呼吸を認めたため平成20年1月より夜間の
Adaptive-Servo Ventilationを開始したところ,MR
が軽減し心不全の増悪は認められなくなった.
症例は37歳男性.平成13年に拡張型心筋症と重度
の大動脈弁閉鎖不全症(AR)と診断され,当科
外来で経過観察されていた.経食道心エコーでは
大動脈弁二尖弁に伴う重度のARと診断し,高度
の左室拡大を認めたため,平成18年に大動脈弁置
換術(AVR)を施行した.しかしながら術後左室
拡大は改善せず,完全左脚ブロックに伴う左室内
同期不全も認めたため,平成19年4月に心臓再同
期療法(CRT)を施行した.CRT施行より半年後
に徐々に左室逆リモデリングを認め,responder
と判定した.今回我々はAVR術後に左室逆リモデ
リングを認めなかったがCRTにより左室逆リモ
デリングをきたした拡張型心筋症の1例を経験し
たので報告する.
42) 肥 大 型 心 筋 症 患 者 に お け る 心 室 中 隔 の
catenoid shapeと心筋strainとの関係
(愛媛大学付属病院脳卒中・循環器病センター)
西村和久・井上勝次
(喜多医師会病院循環器内科) 齋藤 実・
吉井豊史
(愛媛大学付属病院脳卒中・循環器病センター)
鈴木 純・大木元明義
(喜多医師会病院循環器内科) 日浅 豪
(愛媛大学付属病院脳卒中・循環器病センター)
大塚知明
(喜多医師会病院循環器内科) 住元 巧
(愛媛大学付属病院脳卒中・循環器病センター)
岡山英樹・檜垣實男
994 第 93 回四国地方会
【背景】心室中隔のcatenoid shapeは肥大型心筋症(HCM)
に特徴的所見であるが,心筋strainとの関係については不
明である.本研究の目的は,HCMのcatenoid shapeと心筋
strainとの関係について検討することである.【方法】22名
のHCM患者と年齢,性別をマッチさせた15名の高血圧(HT)
患者を対象とした.拡張末期心尖部四腔像にて中隔の内側に
マッチする円の半径の逆数を心室中隔の曲率とし,catenoid
shapeの指標とした.【結果】曲率はHT群に比較しHCM群
で有意に高値であり(P<0.01),中隔側のlongitudinal strain
(εlong)は有意に低値であった(P<0.05).曲率とεlong
(r=0.60,P<0.01)には有意な相関が認められた.【結論】
肥大型心筋症の中隔のcatenoid shapeの曲率が高度であると
局所収縮能が低下する可能性が示唆された.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
43) スペックルトラッキング法を用いて心筋変
性部位の診断を行った催不整脈性右室心筋症の一例
(愛媛大学医学部附属病院臨床研修センター)
横山らみ
(同脳卒中・循環器病センター) 井上勝次・
西村和久・清家史靖・佐々木香織・青野 潤・
稲葉慎二・永井啓行・鈴木 純・大木元明義・
大塚知明・岡山英樹・檜垣實男
(喜多医師会病院循環器内科) 齋藤 実・
日浅 豪・吉井豊史・山田忠克・住元 巧
催不整脈性右室心筋症(ARVC)は右室を主体とした
心筋脂肪変性をきたし致死性不整脈を惹起するため
その早期診断が非常に重要である.我々はスペック
ルトラッキング法を用いて心筋脂肪変性の局在診断
を行ったARVCの一例を経験したので報告する.症例
は23歳,男性.無症状であるが家族歴を有するため
(弟:ARVC,心室細動にてCRT-D植え込みを当院で
施行)心精査を施行した.心エコー図検査(Vivid 7
Dimension,GE)の結果,右室の拡大および右室肉柱
の粗造化を認めた.スペックルトラッキング法を用い
た左室局所strain rate解析の結果,心尖部側壁領域に
double peak signを認め,同部位は造影心臓CT検査に
て脂肪変性の存在が示唆された.スペックルトラッキ
ング法を用いた局所strain rateの解析は心筋変性疾患
の局在診断に有用と思われた.
44) 拡張型心筋症におけるスペックルトラッキ
ング法を用いた等容拡張期Global Strain Rateの
臨床的意義について
(愛媛大学医学部附属病院脳卒中・循環器病センター)
井上勝次・岡山英樹・西村和久・清家史靖・
佐々木香織・青野 潤・稲葉慎二・永井啓行・
鈴木 純・大木元明義・大塚知明・檜垣實男
(喜多医師会病院循環器内科) 齋藤 実・
日浅 豪・吉井豊史・山田忠克・住元 巧
46) 胸痛を主訴に急性心筋梗塞様心電図を呈し
た心臓腫瘍の一例
(愛媛県立中央病院) 高木弥栄美・
藤田慎平・佐々木康浩・三好章仁・清水秀晃・
佐藤澄子・羽原宏和・垣下幹夫・中村陽一・
鈴木 誠
症例70歳男性.主訴胸痛.12誘導心電図は胸部
誘導ならび下壁誘導に広範囲なST上昇を認めた.
来院時血液検査にてTnT定量検査は陽性であった
が心筋逸脱酵素の上昇はなく精査加療目的にて当
科へ入院した.入院時心エコー所見は前壁中隔か
ら心尖部に壁運動の低下を示した.心臓カテー
テル検査は正常冠動脈所見ならび左室造影にて
心尖部の著明な肥大を認めた.心筋シンチ検査
(201Tl&BMIPP)は心尖部周囲から中隔にかけ広
範囲な欠損像を示し,心臓MRI検査では心筋内腫
瘍を疑わせる所見であった.PET-CT検査による
精査では一部心膜播種ならび心筋内壊死を含む心
尖部腫瘍へのFDGの高度集積像を認めた.今回
私たちは胸痛を主訴に劇的な心筋梗塞様心電図変
化をきたした心臓腫瘍の一例を経験したので報告
する.
47) 14年の経過を経て再発した巨大左房内腫瘤
の1例
(松山赤十字病院循環器科) 吉田泰成・
堀本拡伸・古賀純一郎・松坂英徳・堺 浩二・
高橋 優・松本健吾・久保俊彦・芦原俊昭
(同心臓血管外科) 梅末正芳
49) 心嚢液貯留を契機に診断されたB細胞性リ
ンパ腫Primary effusion lymphoma(PEL)の1例
(徳島赤十字病院循環器科) 邉見宗一郎・
日浅芳一・高橋健文・當別當洋平・村上尚嗣・
中川貴文・陳 博敏・宮崎晋一郎・
馬原啓太郎・小倉理代・宮島 等・
弓場健一郎・細川 忍・岸 宏一・大谷龍治
76歳男性.労作時の呼吸困難を主訴に当院を受診
した.来院時の心電図で四肢誘導のlow voltageを
認め,心エコーで多量の心嚢液貯留を認めた.心
タンポナーデや右心不全の症状,理学所見は認め
なかった.肺癌,甲状腺機能低下症や膠原病等の
心嚢液貯留を来たす基礎疾患がなかったため,診
断目的で心嚢穿刺を施行し,心嚢液の細胞診でB
細胞性悪性リンパ腫と診断した.CT,Gaシンチ,
骨髄生検などの全身検索では心嚢液貯留以外には
リンパ節や他の臓器に病変を認めず,血液検査で
HIV,HHV-8は陰性であり,広義の心嚢原発B細
胞性リンパ腫Primary effusion lymphoma(PEL)
と診断した.診断後,化学療法R-THP-COPを開始.
1クール目は有害事象なく経過し,退院となった.
今後も化学療法継続予定である.
50) 右心房内に進展充満した浸潤型胸腺腫に対
する救命摘出手術の1例
(香川県立中央病院心臓血管外科)
森本 徹・青木 淳・末澤孝徳・多胡 護
症例は70歳男性.昭和59年より心房細動を指摘さ
れていた.平成6年に僧帽弁閉鎖不全症の術前エ
コーで左房内腫瘤を認めたが,僧帽弁形成術中に
左房内腫瘤は認められなかった.その後,脳血管
障害を含めた末梢塞栓症状なく経過していた.平
成20年6月,心房細動が持続しているためにワー
ファリン導入目的で当科紹介.心エコーで左房
後壁右肺静脈開口部に径50mm,左房前壁中隔側
の大動脈Valsalva移行部に5mmの腫瘤を認めた.
巨大左房内腫瘤であり,左房粘液腫を疑い同摘出
術施行.摘出腫瘤はいずれも器質化した血栓であ
った.今回,約14年の経過で左房内腫瘤が再発し,
心エコー上,血栓と粘液腫の鑑別が困難であった
症例を経験したので報告する.
症例は72歳男性,平成20年5月初めに顔面浮腫を
自覚し近医受診したところ上大静脈から右心房へ
進展した胸腺腫瘍と診断された.数日後に呼吸困
難が増悪し当院へ緊急搬送,右心房内に充満した
腫瘍が三尖弁に嵌頓したことによる急性心不全と
診断し同日緊急手術を行った.胸骨正中切開,右
大腿静脈と下大静脈より脱血,右大腿動脈送血で
体外循環を開始,右心房を切開し三尖弁に嵌頓し
た腫瘍を摘出,次に心房切開を上大静脈全長に伸
ばし内部の腫瘍を摘出した.右腕頭静脈を合流部
で離断後,右心房・上大静脈切開部を閉鎖し体外
循環を終了,その後右肺の一部を含めて腫瘍を摘
出した.病理診断はB3型胸腺腫,術後13日目に
前医へ軽快転院した.経静脈的に心臓内に進展し
た胸腺腫に対する外科治療について文献的考察を
含めて報告する.
45) スペックルトラッキング法を用いて左室の
捻れおよび回旋運動の定量評価を行った多量心嚢
液貯留例
(愛媛大学医学部附属病院脳卒中・循環器病センター)
佐々木香織・井上勝次・西村和久・清家史靖・
青野 潤・稲葉慎二・永井啓行・鈴木 純・
大木元明義・大塚知明・岡山英樹・檜垣實男
48) 両心房粘液腫の治療経験,Carney complex
について
(香川大学心臓血管外科) 河野由美子・
山下洋一・浅野栄介
(同循環器・腎臓・脳卒中内科) 吉田潤史・
四宮かおり・野間貴久・雪入一志・大森浩二
(同心臓血管外科) 河野雅和・堀井泰浩
51) 胸腺癌による心嚢液貯留,心膜転移を認め
た1例
(高知大学医学部附属病院老年病・循環器・神経内科学教室)
川田泰正・北岡裕章・羽屋戸佳世・谷岡克敏・
大川真理・山崎直仁・松村敬久・矢部敏和・
土居義典
(須崎くろしお病院内科) 山田英介
症例は68歳,女性.平成19年4月に動悸が出現し
たため精査加療目的で入院加療を行った.入院時
の心エコー検査(GE Vivid 7 Dimension)では多
量の心嚢液貯留を認め,左室短軸像で左室心尖
部は反時計方向に回旋していた.多量心嚢液貯
留時にスペックルトラッキング法(GE EchoPac
Software)を用いて左室の捻れおよび回旋運動を
評価した.心嚢液貯留に伴い心膜による左室の支
持が解放され左室の捻れ低下をきたしていた.左
室心尖部の回旋運動はradial displacement法によ
り反時計方向の回旋を評価し得た.本症例は心嚢
ドレナージを施行し軽快した.治療直後は左室心
尖部の回旋運動は軽減し左室基部の時計方向への
回転が増加したが捻れの増加は認められなかっ
た.心嚢液貯留例における左室回旋運動,捻れに
ついて文献的考察を含め報告する.
心臓粘液腫は日々遭遇する心臓腫瘍であるが,両
心房に同時に発生した粘液腫の報告は極めて稀で
ある.今回われわれは特異な病態を示した症例を
経験したので,その治療とあわせて報告する.20
歳女性で,2・7・19歳時に,それぞれ外耳道・外
陰部・子宮に発生した腫瘍摘出術を受けており,
今回両側乳頭部に発生した乳腺粘液腫を契機に
Carney complexを指摘され,精査目的で当院へ
紹介となった.心エコー検査で両心房に陥頓する
ような腫瘤を指摘され,外科治療を施行した.術
後の経過は順調であったが,同時に内分泌疾患を
指摘され精査加療を要した.稀な両心房粘液腫を
経験したが,Carney complexであり,病態上特
筆すべきものであったため報告する.
症例は78歳男性.ラクナ梗塞,高血圧症などで近
医通院中であった.2008年4月より息切れ,全身
倦怠感を自覚し,心エコー上大量の心嚢液貯留を
認めた.心嚢穿刺し,細胞診では明らかな異常を
認めなかった.血性であったため精査加療目的に
5/19当科紹介入院となる.入院後2回の心嚢穿刺
を施行し,血性心嚢液を認めたが細胞診はいずれ
も特異的所見はなかった.原因検索目的にCTを
施行したところ,前縦隔腫瘍及び心膜播種巣を疑
う所見を認め,胸腔鏡下生検にて胸腺癌,心膜転
移と診断された.胸腺癌による心嚢液貯留,心膜
転移を認めた1例を経験したので,若干の文献的
考察を加えて報告する.
今回我々は拡張型心筋症(DCM)においてスペ
ックルトラッキング法を用いて等容拡張期Global
Strain Rateを算出し,その臨床的有用性につい
て 検 討 し た. 対 象 はDCM 52症 例( 平 均 年 齢57
歳)である.超音波心エコー装置はGE社製Vivid
7 Dimensionを用いた.通常の心エコー指標,組
織ドプラ指標を評価した後に左室心尖部三断面像
から等容拡張期長軸方向ストレインレートの平
均値(global SRIVR)を算出した.結果,global
SRIVRはBNP値,左室ディスシンクロニー,左
室容量および左室駆出分画と有意な相関を認め
た.さらにglobal SRIVRは心事故を発症した15例
中8例でnegative valueを示した.DCMにおいて
等容拡張期Global Strain Rateは重症度を層別化
する有用な心エコー指標と思われた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
松山市総合コミュニティセンター(2008 年 12 月) 995
52) MRSA菌 血 症 後 に 滲 出 性 収 縮 性 心 膜 炎
(effusive-CP)を発症した症例
(香川大学医学部附属病院循環器・腎臓・脳卒中内科)
岡本尚子・野間貴久・石原靖大・北泉顕二・
瀧波裕之・吉田潤史・四宮かおり・岩藤泰慶・
雪入一志・大森浩二・河野雅和
症例は70歳男性.狭心症に対するPCI目的で当院
入院.大腿穿刺部のMRSA感染から菌血症となり,
タゴシット投与にて感染は一時軽快したが,7月
中旬から全周性に10mm程度の心嚢液貯留を認め
た.利尿剤にて軽快するも8月初旬に再度,炎症
反応増悪し,心エコーにて心室中隔の奇異性運動,
心嚢内右室前面にechogenic massを認めた.経過
中にショックとなり,心嚢ドレナージを行うも心
嚢液は少量で血行動態は改善せず,当院心臓血管
外科にて心膜開窓術を施行した.術中所見では,
echogenic massは130gの凝血塊でeffusive-CPと考
えられた.術後,循環動態は改善し,経過良好で
ある.effusive-CPは,心タンポナーデと類似し
た病態であるが,心嚢ドレナージでは改善せず早
期診断が重要な疾患であるため,文献的な考察を
加えて報告したい.
53) 収縮性心膜炎と高度肺動脈弁逆流に対し心
膜剥離術と肺動脈弁置換術を施行し,良好な経過
がえられた一例
(善通寺病院循環器科・臨床研究部)
福田大和・福田信夫・篠原尚典・森下智文・
酒部宏一・田村禎通
(同心臓血管外科) 金香充範・下江安司・
安田 理
55) 瘤内解離で発症した大動脈基部拡張症,切
迫破裂の1例
(近森病院心臓血管外科) 池淵正彦・
藤田康文・樽井 俊・入江博之
(同循環器内科) 浜重直久・深谷眞彦・
川井和哉・窪川渉一・關 秀一・要 致嘉・
中岡洋子・西田幸司・葉梨喬芳・古谷敏昭
症例は34歳男性.マルファン症候群の家族歴なし.
日頃より労作時息切れを自覚していた.突然胸痛
を発症し近医の心エコーで大動脈基部拡大とflap
様構造,高度ARを認め,急性大動脈解離を疑わ
れて搬送された.意識清明で血圧は141/52mmHg.
CTでは大動脈基部が7cmに拡大し,バルサルバ
洞内に限局した解離が確認された.解離はLMT
直上に及んでいた.上行大動脈自体は拡大なく解
離もなかった.緊急手術では大動脈基部の外膜下
に新鮮な出血斑が認められた.大動脈弁は3尖あ
ったが,変性が強く,温存は困難と考え,ベント
ール手術を行った.病理では中膜の破壊とムコ多
糖の沈着が見られたが,嚢胞状中膜壊死はなかっ
た. 弁 はmyxomatous lesionに 置 換 さ れ て い た.
稀な経過で発症し,術前診断に心拍同期CTと心
エコーが有用であったので報告した.
58) 超高齢者に対する弓部全置換術の手術成績
(高知医療センター心臓血管外科)
大上賢祐・岡部 学・三宅陽一郎・宮川弘之・
金光真治・鈴木友彰・田邊佐和香
超高齢者では各臓器の予備力が低下し脳梗塞をは
じめ合併症の発生は手術死亡につながると考えら
れる.当科では,【a良好な視野の確保】1.襟状
皮膚切開,2.左胸壁を挙上する開胸器の使用,
【b塞栓症の回避】右腋窩動脈送血を中心とした
順行性送血,原則腕頭動脈1カ所のみへの脳分離
送血カテーテルの挿入,【c出血しない吻合】自
己心膜を介在したグラフト折り返し吻合を技術的
戦略とし,積極的に弓部全置換術を行っておりそ
の手術成績について検討した.対象は2000年3月
から2008年8月までに施行した弓部全置換術97例
中,80才以上の超高齢者に対する待機手術症例7
例(7.2%)とした.平均年齢は81.3才,術前診断
は真性瘤5例,慢性解離2例.全例に弓部全置換
術を行い,術後脳梗塞の発症,病院死亡は認めず
良好な手術成績が得られた.
56) 右房に破裂したvalsalva動脈瘤の1例
(愛媛県立中央病院心臓血管外科)
米沢数馬・竹林孝晃・一色真吾・加納正志・
富永崇司・石戸谷浩・平谷勝彦・堀 隆樹
59) 当院での透析患者における心臓大血管手術
成績について
(高松赤十字病院心臓血管外科) 黒川俊嗣・
西村和修・大仲玄明
症例は66歳男性,平成20年2月初めより呼吸困難,
下腿浮腫出現し近医受診,心不全の診断にて緊急
入院.精査の結果,無冠尖から右房へシャント血
流(シャント率 26.8%)を認めたためValasalva
動脈瘤の破裂と診断され当科手術目的に入院とな
る.手術は無冠尖はパッチにて閉鎖,右房側は直
接閉鎖とした.術後経過は良好であり独歩退院と
なった.本症例はVSD,ASDの合併はなく無冠
尖から右房への破裂という比較的まれである.若
干の文献的考察を加え報告する.
2007年1月から2008年8月までの当科における透
析患者(HD 8例+CAPD 2例)に施行した心臓
大血管手術連続10例について検討を行った.術前
診断としては虚血性心疾患6例,大動脈狭窄症3
例,慢性解離性大動脈瘤1例であり,弁膜症のう
ち1例はIEを合併していた.手術はCABG 6例,
AVR 2例,DVR+弁下膿瘍郭清1例,大動脈瘤人
工血管置換術1例であった.周術期死亡は1例(IE
症例)
,その他合併症は創部感染2例であった.
ICU入室時の血清K値はOPCAB症例(5例)では
平均3.4mEq/L,人工心肺症例(4例)では平均
4.4mEq/Lであり,術翌日にはそれぞれ4.1mEq/L,
4.9mEq/Lへと上昇した.HDは術翌日に施行し,
CAPDは術直後再開が1例,翌日再開が1例であ
った.透析患者でも術前術中の管理に注意すれば
術翌日からの透析再開で問題なく,また術後成績
の点でも妥当な結果を得た.
54) 全弓部置換術後急性期に下行大動脈解離を
発症し緊急手術を要した一例
(松山赤十字病院心臓血管外科) 溝部圭輔・
松元 崇・梅末正芳・松井完治
57) 重症大動脈弁閉鎖不全症と動脈解離を合併
した若年大動脈弁輪拡張症の2例
(喜多医師会病院循環器内科) 吉井豊史・
日浅 豪・齋藤 実・山田忠克・住元 巧
60) 慢性腎不全を合併した虚血性心疾患症例に
対する外科手術の検討
(愛媛大学臓器再生外科学) 谷川和史・
今川 弘・鹿田文昭・流郷昌裕・長嶋光樹・
石田直樹・河内寛治
67歳男性.平成12年より胸部大動脈瘤を指摘され
ていた.平成20年6月,上行36mm,弓部65mm,
下行50mmと瘤の拡大傾向あり,待機的に全弓部
置換術を施行した.胸骨正中切開にてアプローチ
し,超低体温循環停止,選択的脳灌流を併用,遠
位側はopen distalにてelephant trunk法で吻合し
た.術後11日目に施行した造影CTにて吻合部直
後の遠位弓部に大動脈解離が生じていたが,保存
的加療にて血栓閉塞傾向がみられていた.しかし
術後41日目に突然の背部痛あり,造影CTにて下
行大動脈に新たに解離を発症しており,内科的治
療の限界と判断し,緊急下行大動脈置換術を施行
した.解離は横隔膜直上まで及んでいた.中枢側
はelephant trunkの人工血管に吻合した.若干の
文献的考察を加え報告する.
症例1は36歳,男性.平成18年6月,拡張期心雑
音の精査目的で当科を受診した.心臓超音波検査
(UCG)にて重症大動脈弁閉鎖不全症(AR)を伴
う大動脈弁輪拡張(AAE)を認め,CTにて上行
大動脈に解離所見があり手術目的で転院した.合
併する脳動脈瘤に対してコイル塞栓術を施行後,
Bentall手術を施行された.症例2は32歳,男性.
平成17年12月,胸痛,動悸が出現し当科を受診し
た.UCGにて重症ARを伴うAAEを認め精査加療
目的で入院した.経食道心エコー検査,造影CT
検査にて動脈解離は認めなかったが,経過より急
性,進行性のARを伴うAAEと考え準緊急手術の
適応と判断し翌日転院した.転院先のCTでは上
行大動脈に解離所見を認め同日手術を施行され
た.重症ARと動脈解離を合併し早期の手術を必
要とした若年大動脈弁輪拡張症の2例を経験した
ので報告する.
症例は74歳女性.1988年に他院で肺動脈弁狭窄の
解除手術,2000年に当院で収縮性心膜炎に対し心
膜剥離術を施行され,以後は当科に中等度の肺動
脈弁逆流症にて通院していた.2004年より心不
全症状が増悪し,利尿薬増量で対処していたが,
2007年には心不全症状が安静時にも出現するよう
になり,2007年7月に入院となった.入院後,心
エコーにて高度の肺動脈弁逆流と中等度の三尖弁
逆流を認め,心臓カテーテル検査にて心室圧の
dip and plateauパターンがみられたため,肺動脈
弁置換術,三尖弁縫縮術,心膜再剥離術を施行し
た.術後,心エコーで心室流入血流の減衰時間の
延長と下大静脈径の呼吸性変動の出現を認め,ま
た右心不全症状も改善し現在も経過良好である.
心膜剥離術の再施行と肺動脈弁置換術を併せて施
行した症例は稀であり報告する.
996 第 93 回四国地方会
虚血性心疾患患者に対し,部分体外循環を併用
し,心拍動下に手術を行うことで術後の腎機能低
下を免れた症例を経験した.症例は70歳台女性
で,CAGで#7に100%の狭窄および左室瘤を認
めた.PCIの適応であったが,慢性腎不全,高K
血症があり断念した.部分体外循環は心停止下手
術に比べ,へパリン使用量および出血が少ないた
め循環にかかる負担が少ない.本症例では左心室
瘤に対する術式を,Dor手術から左室plicationに
変更することで部分体外循環を併用して心拍動下
に手術を行った.術後は透析導入を必要とせず,
腎機能低下も認めなかった.左室plicationは中隔
梗塞や広範囲の梗塞には適応出来ず,また遠隔期
の成績が今のところ明確でないことが今後の課題
であるが,本症例のようなhigh risk症例に対して
は良い適応であると思われた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
61) 冠動脈バイパス術における脳合併症を回避
すべく治療戦略
(高知医療センター心臓血管外科)
大上賢祐・岡部 学・三宅陽一郎・宮川弘之・
金光真治・鈴木友彰・田邊佐和香
【目的】OPCAB術後の脳神経合併症について検討
を行った.
【対象と方法】2001年12月から2007年
12月まで当科で施行した単独待機CABG371例中
OPCAB症例363例(97.8%)を対象とした.脳合
併症を避けるべく治療戦略として当科では原則
として,1.抗凝血薬療法:術前の抗血小板製剤
の内服継続.術後12時間後からのヘパリンの持
続点滴開始.2.上行大動脈の評価:術前造影C
T,術中大動脈エコーによる部分遮断部位及び可
否の決定.3.内頸動脈エコーによる頸動脈病変
の確認を行い,グラフトデザインの選択を行って
いる.【結果】症状を有する高度頸動脈病変患者
1例(0.28%)に対し術前STA-MCA吻合術施行.
術後脳梗塞,手術死亡は各1例(0.28%)であった.
【結語】我々の治療戦略により良好な脳合併症回
避が可能であった.
62) 大動脈瘤に対する経カテーテル的ステント
グラフト移植術36例の成績
(善通寺病院心臓血管外科) 下江安司・
金香充範・安田 理
2005年4月より2008年8月までに当院で施行した
経カテーテル的ステントグラフト移植術は36例
で,TEVARが21例,EVARが15例であった.【成績】
TEVAR群(平均71.8歳)は,入院死亡0,対麻
痺 0,primary succes18 例(85.7%),secondary
succes19例(90.5%) で あ っ た.EVAR群( 平 均
78.1歳)は,Zenith11例,Excluder 4例で,入院
死亡0,合併症は2例(創部血腫,創部リンパ管
腫),観察期間4ヶ月∼18ヶ月でエンドリーク発
生無し,術後入院期間は平均8日で同時期,開腹
人工血管置換81例の術後入院期間平均12.3日に比
べ短かった.【結語】ステントグラフト移植術の
成績は良好で,今後の大動脈瘤治療の中心になっ
てくるものと思われた.
64) 右心不全を契機に診断された肺動脈狭窄症
の一例
(徳島大学病院循環器内科) 楠瀬賢也・
山田博胤
(同超音波センター) 西尾 進
(同循環器内科) 仁木敏之・冨田紀子・
山口浩司・小柴邦彦・八木秀介・岩瀬 俊
(麻植協同病院循環器科) 添木 武
(徳島大学病院循環器内科) 若槻哲三・
(麻植協同病院循環器科) 赤池雅史
(徳島大学病院循環器内科) 河野智彦・
佐田政隆
【症例】54歳女性【主訴】呼吸困難【現病歴】2∼3
年より労作時呼吸困難があったが,平成20年4月頃か
らは10mの歩行でも息切れが強くなり,6月22日に安
静でも呼吸苦が続くため,近医を受診した.心エコー
検査で右室負荷所見,心カテーテル検査および造影
CTで左肺動脈閉塞・右肺動脈狭窄が認められ,肺動
脈血栓症が疑われたため精査加療目的で当院紹介とな
った.
【経過】肺血流シンチでは,肺塞栓症を疑う所
見を認めなかった.リアルタイム3次元経食道心エコ
ー検査を施行したところ,
右肺動脈近位部に全周性(や
や偏心性)の壁肥厚を認めた.心臓MRIおよびPETCTでも同部位の狭窄および炎症性変化が確認された.
以上より肺動脈炎による肺動脈狭窄症と診断した.稀
な症例と考え,文献的考察を加えて報告する.
65) 孤立性僧帽弁cleftの1手術例
(松山西病院内科) 内藤武夫・河野恒文
(同泌尿器科) 多嘉良稔・山本義明
(よつば循環器クリニック心臓血管外科)
佐藤晴瑞・横山雄一郎
症例は心臓超音波法により高度の僧帽弁逸脱を伴
3/4度の逆流を認め,左室造影上セラーズ4度
の僧帽弁逆流を確認したため僧帽弁形成術を施行
した1例.術中に僧帽弁後尖にcleftを認めたため
同部の直接縫合に加え弁輪形成術を施行した.合
併奇形は認められていない.孤立性僧帽弁後尖
cleftは稀であるため報告する.
63) ステントグラフト(EVAR)の導入により
腹部大動脈瘤(AAA)の治療はどう変わったか?
(香川県立中央病院心臓血管外科) 青木 淳
(松山市民病院心臓血管外科) 寒川顕治
(香川県立中央病院心臓血管外科)
末澤孝徳・森本 徹・多胡 護
66) 僧帽弁前尖にcleftを伴った孤立性の重症僧
帽弁閉鎖不全症の一例
(徳島赤十字病院循環器科) 坂東左知子・
日浅芳一・當別當洋平・村上尚嗣・中川貴文・
陳 博敏・宮崎晋一郎・馬原啓太郎・
小倉理代・宮島 等・弓場健一郎・高橋健文・
細川 忍・岸 宏一・大谷龍治
【目的】EVARによりAAAの治療がどの様に変
わったか検討した.【対象・方法】1999.6月から
2008.8月に施行したAAA症例中,緊急手術,自作
ステントグラフト症例を除外した102例を対象と
し,手術症例をEVAR導入前(Pre群)59例,導
入後(Post群)17例,EVAR 群26例として検討した.
【 結 果 】 年 齢 は,Pre 75.9±6.3,Post 69.3±9.2,
EVAR77.9±8.4とPostでPre EVARより有意に若年
であった.術後入院日数は,Pre 18±8,Post 16
±6,EVAR 9±2とEVARがPre Postより有意に短
く,PreとPost間には有意差を認めなかった.し
かし,主要合併症を生じた6例を除外して検討す
ると,術後入院日数は,Pre 16.1±4.3,Post 12.6
±3.1日とPostで有意に短かった.【結語】EVAR
導入により,待機手術症例の平均年齢は有意に低
下し,更に術後入院日数も短縮した.
症例は57歳女性.骨髄異形成症候群(MDS)の
ため当院血液科にて加療中.2008年9月に動悸や
呼吸苦を訴え当科を紹介受診.身体所見では心尖
部でLevine 3/6の汎収縮期雑音を聴取した.心電
図ではHR130台/分のrapid Afで,心エコーでは
EF=70%でDd/Ds=58/34mm,LA=49mmと 拡 大
を認めた.また僧帽弁前尖にprolapseとcleftを確
認し,MR 4度であり軽度の肺高血圧を認めた.
心内膜床欠損症とは異なり,左右短絡や房室弁
が同一平面上にあるなどの異常は認めなかった.
MDSのため汎血球減少があり手術のリスクも高
く,MRに対してはまずは薬物療法にて経過観察
することとし,MDSについて改めて精査を行う
方針とした.僧帽弁前尖のcleftによる成人の僧帽
弁閉鎖不全症は極めて稀であり,骨髄異形成症候
群を合併した報告はなく,ここに文献的考察を加
え報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
67) 大動脈弁逸脱に僧帽弁逸脱を合併した興味
ある1例
(東徳島病院循環器内科) 井内 新
(同内科) 水口幸生
(同循環器内科) 大石佳史
(同内科) 三好宏和・長瀬教夫
(同循環器内科) 大木 崇
症例は55歳男性,本年6月下旬頃より労作時呼吸
困難感が出現したため当院受診した.初診時,聴
診にて5Lを最強点とするLevine 3度の拡張期
雑音と心尖部を最強点とする同3度の汎収縮期雑
音を聴取した.心エコーでは大動脈弁右冠尖の拡
張期離開を伴う著明な逸脱と中等度以上の大動脈
弁逆流,僧帽弁後尖後交連側の逸脱と僧帽弁逆流
がを認め,左室収縮力の軽度低下と左室・左房の
拡大がみられた.利尿薬と血管拡張薬にて症状は
軽快し,経過中,拡張期雑音は増強,汎収縮期雑
音は軽減した.心カテではEF 50%,左室拡張末
期圧20mmHg,3°/4の大動脈弁逆流と2°/4の僧帽
弁逆流が確認された.本例は僧帽弁形成術に関し
て手術議論となったが,僧帽弁逆流量が軽減して
おり,大動脈弁置換術のみが施行された.術後経
過は良好である.
68) 当院における大動脈弁狭窄症の検討
(三豊総合病院) 鵜川聡子・上枝正幸・
大西伸彦・旦 一宏・中野由加理・香川健三・
高石篤志
人口の高齢化とともに,心不全の原因として弁膜
症を再認識する機会が増えている.そこで,最近
2年間の当院循環器外来受診者より,電子カルテ
で大動脈弁狭窄症の病名がある患者を抽出.当院
での大動脈弁狭窄症の現状を検討した.通院中あ
るいは最近まで通院していた大動脈弁狭窄症は78
症例あり,男女比は37:41,年齢は55−95歳であ
り5群に分け比較・検討した.心エコーでの圧較
差からの重傷度,NYHA分類等における検討から,
高齢者の大動脈弁狭窄症は入院が必要となる重症
心不全を合併しやすいと考えられた.
69) 上肢急性動脈閉塞を合併した松葉杖による
腋窩動脈瘤の一例
(高知県立幡多けんみん病院循環器科)
青井二郎・近藤史明・野並有紗・宮川和也・
斧田尚樹
症例は66歳男性【既往歴】小児麻痺(松葉杖歩行),
高血圧.左手の痺れ・痛みを主訴に受診.左手冷
感及び上腕動脈以下の脈拍触知せず.造影CTで
血栓を伴う左腋窩動脈瘤(径2.3cm)あり,血栓
塞栓により上腕動脈以下の造影は不良であった.
外科的に血栓除去術を行い再還流に成功し,後遺
症無く軽快した.腋窩動脈瘤に対し他院にて大伏
在静脈を用いて血管置換術を行った.病理所見で
は,粥腫性動脈瘤の診断であった.動脈瘤の成因
としては,長年の松葉杖の使用による反復刺によ
り生じたと考えられた.上肢に発生する動脈瘤は
外傷性の仮性動脈瘤が多いが,長期間の松葉杖使
用や繰り返す外傷などの既往がある上肢急性動脈
閉塞症例では,上肢動脈瘤の存在を疑った注意深
い診断・治療が必要と考えられた.
松山市総合コミュニティセンター(2008 年 12 月) 997
70) 左上肢急性動脈塞栓症に対するカテーテル
による血栓吸引術の有用性と限界
(高知県立幡多けんみん病院循環器科)
野並有紗・斧田尚樹・宮川和也・近藤史明
上肢急性動脈塞栓症に対して一般的にはFogarty
カテーテルによる血栓除去術が第一選択である
が,当院ではカテーテルによる血栓吸引術を行っ
ており有用性と限界について報告する.2006年8
月から2008年8月までに5例の左上肢急性動脈
閉塞症を経験した.原因は心房細動4例,腋窩
動脈瘤1例であった.腋窩動脈瘤例以外は全例血
管造影を施行し,引き続きカテーテルによる血栓
吸引術を行った.2例はFogartyカテーテルによ
る血栓除去術を追加した.全例重大な合併症や
肢機能障害はなかった.本治療法の限界として,
Fogartyカテーテルによる血栓除去術の追加を必
要とした症例が半数あったこと,カテーテル尖端
に血栓が嵌頓し吸引困難となった場合,カテーテ
ル回収過程で血栓を他部位に落下させる可能性が
懸念された.
71) 低左心機能と腎機能障害を伴う患者に対し
エコーガイド下に下肢動脈PTAを施行した一症例
(愛媛県立中央病院循環器科) 藤田慎平・
中村陽一・佐々木康浩・三好章仁・清水秀晃・
高木弥栄美・羽原宏和・佐藤澄子・垣下幹夫・
鈴木 誠
【症例】83歳 女性【既往歴】DCMにてCRT施行
(BNP 884.5pg/ml,EF 31%),CRF(BUN 31.2
mg/dl,Crea 1.62mg/dl)【現病歴】歩行時右下腿
痛を主訴に外来受診したところ各種検査上,右
SFA狭窄指摘されPPI目的に入院となった.
【入院
時 検 査 】ABI: 右0.66 左1.06, 動 脈 エ コ ー: 右
SFAに約22cmのCTO病変認める【治療/経過】造
影 に て 病 変 部 と 末 梢 情 報 を 確 認 後subintimal
angioplastyにてガイドワイヤーを通過させ,エ
コーガイド下にワイヤーの真腔通過を確認した.
PPI後に末梢塞栓の有無確認に造影を行った.総
造影剤量40ml.治療後右ABIは1.00に改善した.
【まとめ】低左心機能+腎機能低下の為にエコー
ガイド下PPIとなった.
72) 総腸骨動脈分岐部病変に対して行った下肢
動脈形成術の2症例
(高松医療センター) 辻 哲平・陸 新・
村上和司・近藤 功・友廣敦文・和田佳宏・
水重克文
【症例1】86歳男性.間歇性跛行(Fontaine IIb)
増悪,ABIの低下(rt 0.69 lt 0.75)にて末梢動脈
疾患を疑われた.下肢動脈造影にて総腸骨動脈分
岐部に狭窄病変を認めた.【症例2】76歳男性.
透析歴9年.間歇性跛行(Fontaine IIb)のため
紹介となった.下肢動脈造影にて総腸骨動脈分岐
部に石灰の強い狭窄病変を認めた.症例1,2と
もに左右総腸骨動脈に正確な位置決めが可能で
拡張力の強いballoon expandable stent(Express
LD 8.0×57mm)を留置した.分岐部plaque shift
による対側の血流低下を予防することができ,良
好な結果が得られたので考察を加え報告する.
998 第 93 回四国地方会
73) 両方向性アプローチにて下肢動脈形成術を
行った浅大腿動脈完全閉塞の2症例
(高松医療センター) 辻 哲平・陸 新・
村上和司・近藤 功・友廣敦文・和田佳宏・
水重克文
【症例1】86歳男性.肺結核症にて当院呼吸器科
通院中であった.両下肢の疼痛(rt>lt)
(Fontaine
III),ABIの 低 下(rt 0.69 lt 1.05) に て 当 科 紹
介となった.下肢動脈造影にて右浅大腿動脈に
CTO病変を認めた.【症例2】71歳男性.間歇性
跛行にて受診,ABIの(lt 0.65)低下を認めた.
下肢動脈造影にて左浅大腿動脈22cmにおよぶ完
全閉塞であった.いずれの症例も順行性は上腕動
脈(7Fr),逆行性は膝窩動脈(6Fr)より両方向
性アプローチをすることで解離を生じることなく
病変部のワイアークロスが容易に行え,ステント
留置を施行し得た.
74) 上腸間膜動脈閉塞症に対し大伏在静脈グラ
フトで血行再建術を行った1例
(徳島赤十字病院心臓血管外科) 大住真敬・
松枝 崇・来島敦史・大谷享史・福村好晃
症例は腹痛を主訴とする75歳の女性.1年前に早
期胃癌に対して内視鏡的手術の既往を有する.腹
部血管造影検査で上腸間膜動脈の中枢側の閉塞が
存在し,腹痛時に小腸内と門脈内ガスを認め壊死
性腸炎と診断し,血行再建の必要があると判断し
た.CTで大動脈全長の石灰化及び粥状硬化病変
が高度であったため,大伏在静脈を用いて右外腸
骨動脈−上腸間膜動脈バイパス術を施行した.本
症例は高血圧・脳梗塞・狭心症・右鎖骨下動脈狭
窄と全身の動脈硬化性病変があり,術前に胸腹部
3D-CTにて腹部大動脈,上腸間膜動脈の走行と石
灰化の評価を行い,有用であった.本症に対する
静脈グラフトを用いた血行再建術が有用であった
と考え,文献的考察を加えて報告する.
75) ガイドカテーテル(GC)による血栓吸引
療法が奏功した急性膝窩動脈閉塞症の1例
(喜多医師会病院循環器内科) 吉井豊史・
山田忠克・齋藤 実・日浅 豪・住元 巧
症例は79歳,女性.平成20年8月22日頃より動悸
が出現し抗不整脈薬にて軽快していたが,8月27
日昼より突然,左下肢の間欠性破行が生じたため
8月29日に近医を受診した.左ABIの低下を認め
たため末梢動脈疾患を疑われ同日当科を受診し
た.下肢動脈エコー検査・造影CTにて左膝窩動
脈の閉塞を認め加療目的で入院した.緊急下肢動
脈造影検査にて左膝窩動脈の血栓性閉塞を確認し
インターベンションを施行した.血栓吸引カテー
テルにて血栓吸引術を行い末梢への血流は再開し
たが巨大血栓が残存した.血栓溶解療法を行うも
不変であったため7F GCによる血栓吸引術を行い
血栓吸引に成功した.術後,ABIは正常化し間欠
性破行も消失した.ガイドカテーテルによる血栓
吸引療法が奏功した急性膝窩動脈閉塞症の1例を
経験したので報告する.
76) SFA病変の治療成績−複数個ステント留置
は有効か?
(愛媛県立新居浜病院) 坂上智城・
末田章三・松中 豪・三根生和明
【目的】SFA病変へのインターベンション治療成
績を後ろ向きにまとめた.【方法】過去に当院に
て施行した末梢血管インターベンション治療の
内,SFA病変に治療を行った41病変が対象であ
る(23症例,平均年齢:74±8才).閉塞病変は
7病変に認め,閉塞長が15cm以上が5病変であ
った.ステント挿入を12病変,POBA単独が26病
変であった.重症虚血下肢症例は5例であった.
ステント例とPOBA例で慢性期の閉塞所見を比較
した.
【結果】複数個のステント留置を行った病
変では,60%(3/5)で閉塞所見を認めた.単個
ステント留置では,閉塞所見に至る症例はなかっ
た.POBA単独治療群では,閉塞所見は認められ
なかった.
【総括】術前の血管病変の性状によるが,
SFAには,なるべく複数個のステント留置は避け
た方がよい.
77) 強皮症に伴う難治性末梢循環不全に対する
エンドセリン受容体拮抗薬の有用性
(徳島大学ヘルスバイオサイエンス研究部循環器内科学)
八木秀介・岩瀬 俊・楠瀬賢也・仁木敏之・
山口浩司・小柴邦彦・冨田紀子・山田博胤・
添木 武・若槻哲三・赤池雅史・佐田政隆
強皮症による末梢循環不全は,従来の抗血小板薬
や血管拡張薬による治療に対し抵抗性で,QOL
の多大な低下を来たす.本病態にはエンドセリン
の関与が考えられており,末梢循環不全の改善に
エンドセリン受容体拮抗薬であるボセンタン投与
を試みた症例を報告する.症例1は78歳・女性で
左踵部の疼痛と色調不良,症例2は58歳・女性で
レイノー症状,症例3は62歳・女性でレイノー症
状と右示指指尖部潰瘍を呈していた.いずれも従
来薬では難治性であったが,ボセンタンを開始後,
症例1,症例2は自覚症状と肉眼的色調の改善な
らびにサーモグラフィでの皮膚温の上昇が認めら
れ,症例3は右示指切断は不可避であったが残存
指の症状は改善した.強皮症による難治性の末梢
循環不全に対してボセンタンが有効である可能性
がある.
78) ファロー四徴症術後の心室中隔欠損症を基
礎疾患とした感染性心内膜炎に肺塞栓症を合併し
た一例
(松山赤十字病院循環器科) 中間崇仁・
堀本拡伸・古賀純一郎・松坂英徳・堺 浩二・
高橋 優・松本健吾・久保俊彦・芦原俊昭
症例は34歳男性.昭和51年にTOF根治術施行.平
成14年にAR,MR,TRから心不全を来し,完全
房室ブロックも合併.ペースメーカー埋込術,大
動脈置換術,三尖弁縫縮術を施行.平成20年3月
より全身倦怠感,発熱認め血液培養で表皮ブドウ
球菌検出され感染性心内膜炎疑いにて入院.心エ
コーにてTOF術後残存VSDを基礎疾患とし,三
尖弁付着部に疣贅の存在が疑われ,造影CTにて
右下肺動脈に塞栓を認め,右心系の感染性心内膜
炎から右肺動脈に疣贅が塞栓したものと考えられ
た.約4ヵ月間と長期にわたって抗生剤治療を行
い炎症反応低下し退院とすることができた.幸い
人工弁とペースメーカーには異常なく長期の抗生
剤治療により心不全を生じることなく病態改善す
ることができた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
79) 心房中隔欠損症術後,部分肺静脈灌流異常
残存,僧帽弁逸脱症の術前に感染性心内膜炎を発
症した一例
(高知医療センター循環器科) 武 寛・
楠瀬真奈・佐原伸二・尾原義和・堀崎孝松・
伴場主一・西本美香・杉本和彦・山本克人
(同心臓血管外科)
田邉佐和香・大上賢祐・鈴木友影・金光真治・
宮川弘之・三宅陽一郎・岡部 学
82) 副腎偶発腫瘍として発見された褐色細胞腫
の1例
(愛媛大学医学部附属病院総合臨床研修センター)
平岡恵里
(同病態情報内科学) 三好賢一・長尾知明・
城徳昌典・榎本大次郎・入田 純・倉田美恵・
大藏隆文・檜垣實男
85年に心房中隔欠損症(ASD),右部分肺静脈還
流異常(PAPVR)に対してパッチによる心内血
流転換術施行.07年より下腿浮腫出現し08年5
月に僧帽弁逆流が高度のため当院紹介.僧帽弁
後尖逸脱による重度の逆流,著明な肺高血圧を
認めた.造影CTでは右上肺静脈が上大静脈に還
流,右下肺静脈は同定できず,左肺静脈は上下
とも左房内の三心房心に還流していた.ASDは
修復もPAPVR残存によりQp/Qs 2.1とL→R shunt
を認め,手術予定であったが08年7月に感染性心
内膜炎による敗血症性ショックで入院.僧帽弁後
尖に15mmの疣贅を認めた.連鎖球菌に対しアン
ピシリンを投与し,重度の心不全を改善後,08年
9月に僧帽弁置換術,右肺静脈再建術を行った.
PAPVRに感染性心内膜炎を合併し,全身管理に
難渋した1例を経験したので報告いたします.
症例は74歳,女性.平成19年9月に腹痛を自覚
し,近医を受診した.この時,腹部CTで,に55
×46×50mmの副腎腫瘍を指摘され,当院を紹介
され入院した.高血圧はなく,発作性の血圧上昇
や頻脈,動悸,発汗などの褐色細胞腫を示唆する
臨床所見は認めなかった.血中,尿中のカテコラ
ミンも正常であったが,尿中メタネフリン,ノル
メタネフリンは増加していた.131I-MIBGシンチ,
MRIを施行した.副腎腫瘍に一致した部位に異常
集積を認め,MRIでも腫瘍内部はT1強調画像で
低信号,T2強調画像で高信号を呈し不均一であ
り褐色細胞腫に一致する所見であった.このため
当院泌尿器科で副腎腫瘍摘出術を行った.病理診
断で褐色細胞腫と最終診断した.本例では,尿中
メタネフリン,ノルメタネフリンの測定が診断に
極めて有用であった.
80) 右房壁内浸潤により心嚢内出血をきたした
感染性心内膜炎の一例
(愛媛県立中央病院心臓血管外科)
富永崇司・堀 隆樹・竹林孝晃・米沢数馬・
一色真吾・加納正志・石戸谷浩・平谷勝彦
83) 心臓カテーテル検査時の造影剤が原因と考
えられるARDSの一例
(市立宇和島病院) 山根健一・泉 直樹・
大島弘世・石橋 堅・大島清孝・池田俊太郎・
濱田希臣
43才,男性.治療抵抗性の不明熱と全身倦怠感で
当院に紹介された.心エコーで右房内に疣腫を認
め,血液培養ではStreptococcus contrellatesを検
出し感染性心内膜炎と診断された.PCGとGMが
投与されたが炎症反応,心不全症状ともに改善し
ないため手術となった.手術所見では心嚢の肥厚
と全周性の著しい癒着,心外膜の強い炎症性変化
が認められ,血性心嚢液が貯留していた.右心耳
は周辺組織と強固に癒着し,心房切開口から内腔
の疣腫を確認したが,心房壁内に浸潤して塊状と
なっていた.このため右心耳の一部も含めて疣腫
を除去し,周辺の感染巣と思われる組織を可及的
に切除した.術後PCGとGMを28日間投与し治癒
が得られた.
症例は69歳,男性.平成20年3月28日より繰り返
す労作時胸痛を自覚したため,3月31日近医を受
診し,狭心症が疑われ当院紹介となった.4月1
日冠動脈造影を施行した.冠動脈に軽度動脈硬化
を認めたが,心内圧や左室造影に異常はなかった.
検査終了後,呼吸困難が出現し,末梢にチアノー
ゼを認めた.動脈血ガス分析でPO2の低下を認め,
胸部X線上,両肺野透過性低下を認めた.中心静
脈圧の上昇はなく,造影剤のアレルギーによる
ARDSと考えられた.O2 10Lリザーバーマスクで
も酸素化不良が続いたため,持続的陽圧換気を開
始し,ステロイドパルス療法,その後維持療法を
行った.加療により徐々に症状,動脈血ガス,胸
部X線は改善した.心臓カテーテル検査時の造影
剤が原因と考えられるARDSの一例を経験したの
で,若干の文献的考察を加えて報告する.
81) 治療戦略に苦慮した小児感染性心内膜炎
84) 当院における熱中症で入院した患者の心電
(徳島大学ヘルスバイオサイエンス研究部心臓血管外科学) 図波形変化の検討
元木達夫・吉田 誉・神原 保・黒部裕嗣・
(三豊総合病院内科) 中野由加理・
北市 隆・浦田将久
上枝正幸・大西伸彦・旦 一宏・鵜川聡子・
(同小児医学) 阪田美穂・井上美紀・
氏家はる代・高石篤志
早渕康信
(同心臓血管外科学) 北川哲也
【背景・目的】近年の温暖化の影響で熱中症の患
者は増えているが,その心電図変化に関しての報
11歳,女児.感染性心内膜炎にて紹介.心エコー
告は稀である.そこで本年夏期期間中,当院に
検査にて僧帽弁前尖の疣贅と前尖逸脱に伴うSe熱中症の診断で入院となった患者の心電図に関
vere MRを認めた.大動脈弁は二尖弁であったが,
して検討した.【方法】熱中症入院患者21名のう
疣贅の付着や弁破壊は認めず.弁輪部膿瘍を思わ
ち,入院時心電図の記録されていた17名について
せる異常腔像は認めなかったが,弁間繊維三角部
検討.男14名女3名,平均年齢82±21歳,入院時
の肥厚像を認めた.血液培養にてStaphyolcoccus
体温38.4度±2.1度であった.【結果】心電図変化
haemoliticusが検出された.小児女児のため感染
はQT延長12名,ST低下7名,洞頻脈3名.1名
制御後の弁形成をめざし,感染,心不全コントロ
は,42度の体温から0.5度の変化毎に心電図を記
ールに努めたが,いずれも抵抗性であり,入院後
録でき,体温の低下とともにST低下,QT延長,
9日目に緊急手術となった.感染は,僧帽弁前尖
洞頻脈が改善した.【結語】可逆性のST低下およ
全体及び弁下部,さらに繊維骨格を経て大動脈弁
びQT間隔延長,洞頻脈が熱中症の心電図所見と
まで及び,術前心エコーにおける繊維三角の肥厚
してよく認められる所見であった.若干の文献的
部は膿瘍が形成されていた.弁形成を断念し大動
考察を加えて報告する.
脈弁,僧帽弁を機械弁に置換した.手術時期など
治療戦略に苦慮した症例であり,反省点を含め報
告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
85) 脳卒中患者における心エコー検査の現状:
当院脳卒中センター救急搬送患者における検討
(徳島大学ヘルスバイオサイエンス研究部循環器内科学)
山中森晶・山田博胤・楠瀬賢也
(徳島大学病院超音波センター) 西尾 進
(徳島大学ヘルスバイオサイエンス研究部循環器内科学)
冨田紀子・仁木敏之・山口浩司・小柴邦彦・
八木秀介・岩瀬 俊・添木 武・若槻哲三・
赤池雅史・佐田政隆
【背景】脳卒中は循環器疾患と密接に関連しており,
病因や心疾患の合併の検索に心エコー検査が有用であ
る.
【方法】2006年11月から2008年5月までに脳卒中
センターに緊急搬送された連続493例の心エコー検査
について検討した.
【結果】脳卒中の内訳は,脳梗塞
232例(ラクナ梗塞58例,アテローム塞栓45例,心原
性塞栓104例,その他25例)
,脳出血115例,クモ膜下
出血49例,その他97例であった.入院中の経胸壁心エ
コーの施行率は,脳梗塞60%(ラクナ梗塞36%,アテ
ローム塞栓69%,心原性塞栓77%)
,脳出血14%,く
も膜下出血15%であった.経食道心エコー検査の施行
率は,脳梗塞15%(ラクナ梗塞0%,アテローム塞栓
22%,心原性塞栓31%)
,脳出血2%であった.
【結語】
当院における脳卒中患者の心エコー検査施行率は未だ
低値と思われた.
86) 各種脈波指標(Augmentation Index,PWV,
CAVI)に及ぼす食事負荷の影響
(愛媛病院循環器科) 森岡紀勝・舩田淳一・
橋田英俊・岩田 猛
【背景】動脈硬化の指標としてAI,PWV,CAVI
が用いられている.今回,各種脈波の食事によ
る影響とその規定因子について検討した.【方
法】対象は糖尿病患者17例.AI,baPWV,CAVI
を食前後経時的に測定した.【結果】各種脈波指
標は食後,有意に低下した.ΔPWVは空腹時の
PWV値,Δ収縮期血圧およびΔ脈圧と相関を認
め,ΔAIは年齢,空腹時のAI値,Δ収縮期血圧,
Δ拡張期血圧,Δ脈圧,Δ心拍数と相関を認めた
が,ΔCAVIはどの指標とも相関を認めなかった.
【結語】いずれの脈波指標も食事の影響を認めた.
PWV,AIに関しては食後血行動態の変化が関連
していた.
87) 冠動脈疾患二次予防におけるLDL /HDL
cholesterol比管理の重要性
(KKR高松病院心臓血管病センター)
松元一郎・水川瑞紀・高木雄一郎
【目的】近年,動脈硬化疾患の予防や治療におい
て,LDL-C/HDL-C比が注目されている.今回,
LDL-C/HDL-C比が経皮的冠動脈インターベンシ
ョン(PCI)術後の経過に影響を与えるかどうか
調査を行った.
【方法】対象はPCIにて完全血行
再建に成功し,術後6カ月以上経過観察し得た患
者516名.LDL-C/HDL-C比が1.5未満と1.5以上の
群に分類し,術後5年間における心血管イベント
(MACE)発生率を比較した.【結果】MACE発生
例は非発生例に比較して,有意にLDL-C/HDL-C
比が高値であった.またKaplan-Meyer法での検
討 に お い て も,1.5未 満 の 群 は 有 意 にMACE発
生率が低率であった.さらに多変量解析では,
LDL-C/HDL-C比がMACE発生と最も強い相関を
示した.【総括】冠動脈疾患二次予防において,
脂質の厳格な管理,特にLDL-C/HDL-C比の管理
が重要と考えられた.
松山市総合コミュニティセンター(2008 年 12 月) 999
88) 特発性慢性肺血栓塞栓症の一例
(松山赤十字病院循環器科) 田中孝明・
堀本拡伸・古賀純一郎・松坂英徳・堺 浩二・
高橋 優・松本健吾・久保俊彦・芦原俊昭
症例は49歳女性.平成7年10月より労作時呼吸困
難出現.原発性肺高血圧症と診断されHOT導入.
その後同様の症状にて入退院を繰り返している.
胸部造影CTの結果,両側肺動脈分枝の内腔に血
栓を多数認めた.換気血流シンチグラムでは両側
下肺野にV/Qミスマッチを認めた.平成20年4月,
診断確定のため心臓カテーテル検査および肺動脈
造影施行.両側区域枝動脈の多発性閉塞を伴う肺
高血圧症を認めた.特発性慢性肺血栓塞栓症と診
断し内服治療を開始し心不全に対しては利尿剤に
て治療を開始した.内膜摘除術の適応の有無につ
いて国立循環器病センター受診.手術適応であり
現在,国立循環器病センターに入院中である.今
回我々は,慢性肺血栓塞栓症の1例を経験した.
慢性肺血栓塞栓症は比較的稀な症例であり,文献
的考察を加えて報告する.
89) 脳出血後の重症肺塞栓症に対してカテーテ
ル治療を行ない救命できた一例
(高知赤十字病院) 高橋純一・竹中奈苗・
濱田知幸・森本啓介・西野 潔・古野貴志・
木村 勝
今回,我々は脳出血後に肺塞栓を発症するも経皮
的カテーテル血栓吸引・破砕術を施行し,救命に
成功した症例を経験したため報告する.症例は49
歳,男性.平成20年5月10日に右被殻出血を発症
し,当院脳神経外科に入院となっていた.6月
1日の夜間に胸痛が出現し,胸部造影CTにて両
側の肺動脈に血栓像を認め,肺塞栓症と診断し
た.脳出血後ではあったが脳神経外科医と相談の
上でヘパリン1万単位/日の持続投与を開始した.
しかし6月3日に体位変換後に心肺停止となり,
PCPSを挿入し,肺動脈造影検査を行なったとこ
ろ,両側の肺動脈に血栓による閉塞を認め,カテ
ーテル的血栓吸引・破砕術を施行した.循環動態
は改善し,その後恒久的下大静脈フィルターを留
置.心肺停止による脳虚血の後遺症なく,抗凝固
療法を継続し,軽快転院となる.
91) 急性骨髄性白血病に肺塞栓症を合併し化学
療法後軽快した一例
(徳島赤十字病院循環器科) 米田浩平・
日浅芳一・當別當洋平・村上尚嗣・中川貴文・
陳 博敏・宮崎晋一郎・小倉理代・
馬原啓太郎・宮島 等・弓場健一郎・
高橋健文・細川 忍・岸 宏一・大谷龍治
94) 慢性心房細動における難治性左心耳血栓に
対してBatroxobinにより血栓溶解が得られた1例
(高松医療センター) 陸 新・近藤 功・
辻 哲平・村上和司・友廣敦文・和田佳宏・
水重克文
(香川大学附属病院循環器・腎臓・脳卒中内科)
雪入一志
症例は16歳男性.発熱,倦怠感と労作時呼吸苦を
訴え近医を受診.白血球減少を指摘され当院血液
科へ紹介入院した.入院後,呼吸苦の増悪を認め
たため造影CTを施行し両側肺動脈を中心に広範
囲に血栓を認めた.心エコーでは右心径の拡大と
中等度の肺高血圧を認めこれら所見から肺塞栓症
と診断した.血小板数が54.5万と増加しており腫
瘍性の血小板増加が肺塞栓症の原因と考えられ
た.肺塞栓症に対して直ちにヘパリン投与を開
始した.白血球減少については骨髄検査を行い
AMLと診断した.入院7日目よりIDA+Ara-Cに
よる寛解導入療法を開始したところ,呼吸苦症状
は軽快し,エコー上も右心系負荷の改善を認めた.
その後,同種骨髄移植を行い現在は当院外来通院
中である.今回肺塞栓症を合併し,化学療法が奏
功したAMLの一例を経験したので報告する.
症例は62歳男性,心房細動歴2年.ワーファリゼ
ーション施行されるも左心耳血栓が消失しないた
め,平成20年5/27血栓溶解目的にて入院となっ
た.入院後ワーファリン(3.5mg/日)とヘパリ
ン(20,000単位/日)を併用したが,左心耳内血
栓(6/12)は残存し高度なモヤモヤエコーを伴っ
ていた.この時点でPT-INR 4.78,ACT 330であ
ったため,ワーファリンを中止した.Batroxobin
(0.2BU/kg)を6/24までに計4回投与,フィブリ
ノーゲン値は388から78mg/dlまで低下し,モヤ
モヤエコーと左心耳血栓の消失が認められた.同
年7/1両側肺静脈隔離,左房線状アブレーション
および左房内連続性分裂電位を指標としたアブレ
ーションを施行し,洞調律化が得られた.
92) 深部静脈血栓症に対してモンテプラーゼ少
量投与が有効であった1例
(愛媛県立中央病院循環器科) 佐藤澄子・
中村陽一・藤田慎平・清水秀晃・三好章仁・
佐々木康浩・高木弥栄美・羽原宏和・
垣下幹夫・鈴木 誠
95) 甘草湯が含まれる漢方薬による低カリウム
血症により心室頻拍が誘発された1例
(徳島赤十字病院循環器科) 中川貴文・
日浅芳一・村上尚嗣・當別當洋平・陳 博敏・
宮崎晋一郎・馬原啓太郎・小倉理代・
宮島 等・弓場健一郎・高橋健文・細川 忍・
岸 宏一・大谷龍治
症例は,腎外傷3型(腎断裂)の72歳,女性.生
来片腎であったため,腎動脈塞栓術後保存的に経
過観察されていたが,第37病日の造影CT上,左
腎静脈合流部から尾側にかけての下大静脈に血栓
が認められた.左腎皮膜下血腫が残存する状態で
あったため,右内頚静脈からのアプローチで血栓
より中枢側にあたる腎静脈上下大静脈に下大静脈
フィルターを留置し,下大静脈用マルチカーブカ
テーテルを用いて血栓部位にモンテプラーゼ40万
単位の局所投与を行った.処置後,すみやかに下
大静脈の血栓の消退が得られたが,下肢深部静脈
血栓症の増悪のため,第52病日目に下大静脈フィ
ルターを腎静脈下に留置しなおした.モンテプラ
ーゼ局所少量投与は血栓溶解に有効であると同時
に出血の合併リスクも減らすことができる可能性
があり報告する.
71歳男性.既往に高血圧,心筋梗塞,慢性咳嗽が
ある.一年前から慢性咳嗽に対して漢方薬の麦門
冬湯が近医で処方されている.2008年8月胸部不
快感を自覚し近医を受診.心電図所見で持続性心
室頻拍を認めており,当院に救急搬送.血液検査
では血清カリウム低値(2.1mEq/L)
,アルドステ
ロン低値を認め,偽性アルドステロン症と診断し,
麦門冬湯中止,カリウム補充とエプレレノンを開
始することで,徐々にカリウム値が回復していっ
た.グリチルリチン製剤の内服により約20%に低
カリウム血症を生じるが,低カリウム血症は持続
性心室頻拍を始めとする致死性不整脈の原因とな
りうるため定期的な電解質チェックが必要である
と考えられる.また本症例では,エプレレノンの
使用が効果的であった.
90) 両側肺血栓症と多発性体循環系塞栓症を合
併した1例
(徳島大学病院循環器内科) 小柴邦彦・
添木 武・仁木敏之・楠瀬賢也・山口浩司・
冨田紀子・八木秀介・岩瀬 俊・山田博胤・
若槻哲三・赤池雅史・佐田政隆
93) アリセプト投与後に生じた心電図変化によ
り,新規冠動脈病変の発見された虚血性心不全の
1例
(三豊総合病院) 香川健三・上枝正幸・
大西伸彦・旦 一宏・鵜川聡子・中野由加理・
高石篤志
96) 失神にて搬送されたペースメーカー植込み
後患者の2例
(愛媛県立中央病院循環器内科) 三好章仁・
垣下幹夫・藤田慎平・清水秀晃・佐々木康浩・
高木弥栄美・羽原宏和・佐藤澄子・中村陽一・
鈴木 誠
症例は46歳男性.主訴は呼吸困難と腹痛,発熱,
左下肢疼痛.30歳台より下肢静脈瘤を指摘されて
いた.平成20年2月下旬頃より呼吸困難が出現し,
3月には腹痛と発熱も出現したため近医を受診.
単純胸腹部CTにて肝膿瘍が疑われ抗生剤が投与
された.後日の胸腹部造影CTにて両側肺塞栓症
と腎梗塞も疑われ救急車で当院に搬送された.全
身検索の結果,両側下肢静脈血栓症に伴う両側慢
性肺血栓塞栓症と,卵円孔開存を介した左腎梗塞,
多発性肝梗塞,小脳梗塞および腹腔動脈血栓症,
上腸間膜動脈血栓症,両側大腿動脈血栓症,下肢
動脈血栓症と診断され,治療を行い良好な転帰を
得た.重篤な両側肺血栓症および多発性体循環系
塞栓症を合併した1例を経験したので,若干の文
献的考察を加え報告する.
アルツハイマー型痴呆症の治療薬としてアリセプ
トの使用頻度が増加している.アリセプトはコリ
ンエステラーゼ阻害作用により,刺激伝導系への
作用や心不全の悪化を助長することがあり,循環
器疾患合併患者への使用には注意を喚起されてい
る.今回我々は,陳旧性心筋梗塞治療中に,自覚
症状の変化はないものの,アリセプト投与数日
後にQRS波形の変化(心室内伝導障害)とBNP
上昇を生じ,精査を進めると冠動脈造影でRCA,
LCXの新規病変を生じていた1例を経験した.若
干の文献的考察とあわせ,報告する.
徐脈性不整脈に対するペースメーカー(PM)植
込み後の患者が,意識消失発作を起こし救急搬送
された.当院到着時には意識清明であり,頭部CT
等では器質的疾患を認めず,2症例ともにPMメ
モリー機能で心室頻拍(VT)が記録されていた.
症例1は63歳男性,平成14年に洞不全症候群で
PM植込み術施行.メモリー機能で約5分間のVT
(200bpm)を認めた.誘発試験でVTを認めICD
植込み術を施行した.症例2は80歳女性,平成20
年に洞不全症候群でPM植込み術施行.メモリー
機能で約2分間のVT(240bpm)を認めた.誘発
試験でVT誘発はできなかったがICD植込み術を
施行した.術後にVTでICD作動を認めた.PM植
込み後の患者で意識障害を伴うVTを起こしICD
を植込んだ2症例を報告する.
1000 第 93 回四国地方会
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
97) 左上大静脈遺残に合併した房室結節リエン
トリー性頻拍の1例
(徳島県立中央病院循環器内科) 木下 肇・
山本 隆・奥村宇信・蔭山徳人・斎藤彰浩・
原田顕治・藤永裕之
(麻植協同病院循環器科) 角谷昭佳
症例は69歳,女性,主訴は動悸.19年9月26日に
くも膜下出血で麻植協同病院に入院した際に,発
作性上室性頻拍と左上大静脈遺残を指摘され,根
治的治療目的に当科外来に紹介された.5月16日
に心臓電気生理検査を施行し,房室結節リエント
リー性頻拍と診断し,遅伝導路に対する高周波通
電を試みた.拡張した冠静脈洞内の底部での通電
により接合部調律が得られ,治療成功と判断した
が,頻拍の再発をきたし,6月6日に心臓電気生
理検査を再検した.房室結節リエントリー性頻拍
の再発であったため,再び高周波通電を試みた.
冠静脈洞入口部上縁での通電により接合部調律が
得られ,頻拍は誘発不能となり,以後頻拍の再発
は認められていない.左上大静脈遺残に合併した
房室結節リエントリー性頻拍の症例を経験したの
で文献的考察を加え報告する. 98) 右室流出路起源および左室中隔起源性心室
頻拍症が交互に誘発された失神発作の1例
(高松医療センター) 近藤 功・陸 新・
辻 哲平・村上和司・友廣敦文・和田佳宏・
水重克文
(香川大学附属病院循環器・腎臓・脳卒中内科)
雪入一志
症例は33歳男性,運転中意識消失あり近医搬送さ
れ心電図にてwide QRS tachycardiaを指摘され,
当院に緊急入院となった.来院時心拍数154/分
の 上 方 軸 右 脚 ブ ロ ッ ク 型 の 心 室 頻 拍(clinical
ILVT) で あ り, ベ ラ パ ミ ル の 静 脈 投 与 に て 洞
調律となった.イソプロテレノール負荷中右室
心尖部からの高頻度ペーシング(240bpm)で,
clinical ILVTと右室流出路起源心室頻拍(RVOTVT)の2種類が誘発され,互いにincessant型から
心室細動へ移行した.ILVTに対しては洞調律下
での拡張期電位を指標とし,RVOT-VTに対して
は,R波の先行度とpace mapを指標としていず
れのVTもアブレーションに成功した.現在ビソ
プロロール2.5mg内服下で失神は認めていない.
99) 肺静脈および上大静脈隔離術により根治し
えた発作性心房細動の2症例
(高松医療センター) 近藤 功・陸 新・
辻 哲平・村上和司・友廣敦文・和田佳宏・
水重克文
(香川大学附属病院循環器・腎臓・脳卒中内科)
雪入一志
症例1は64歳男性.薬剤抵抗性の発作性心房細動
(PAF)に対しての初回カテーテルアブレーショ
ンで,ATPにより左肺静脈起源のAFが誘発され,
左肺静脈隔離術を施行した.隔離後もAFが持続
するため電気的除細動を施行したところ,上大静
脈を起源とするPAFが誘発されたため,続いて上
大静脈隔離を施行し根治した.症例2は59歳女性.
PAFに対する初回カテーテルアブレーションで,
ATPにより左上肺静脈起源のAFが誘発された.
両側肺静脈隔離術後,心房高頻度ペーシングによ
り上大静脈を起源とするPAFが誘発されたため,
AF中に上大静脈隔離を施行しdirect termination
の後,誘発不能となった.肺静脈以外の起源であ
る上大静脈起源性心房細動の2症例を経験したの
で報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
100) 左心耳からの通電が有効であった持続性心
房細動の1例
(高松医療センター) 近藤 功・陸 新・
辻 哲平・村上和司・友廣敦文・和田佳宏・
水重克文
(香川大学附属病院循環器・腎臓・脳卒中内科)
雪入一志
症例は65歳男性.持続性心房細動に対して,両側
肺静脈隔離(PV isolation)を施行した.術後2ヶ
月で再発のため再セッションとなった.左肺静脈
の伝導再開が認められ,再度PV isolation施行し
たが,左肺静脈ridge部位の隔離に難渋したため,
左心耳内をアブレーションカテーテルでマッピン
グを施行した.左心耳内で肺静脈電位が明瞭に記
録された部位にて通電(30W,50度)したところ,
計3回の通電にて隔離に成功した.左房天蓋部お
よびmitral isthmusに線状アブレーションを加え
た後,電気的除細動にて洞調律となった.再度
誘発のためイソプロテレノール/ATP負荷および
心房高頻度ペーシング(340bpm)にても心房細
動が誘発されなくなったためセッションを終了し
た.2nd session後3ヶ月で再発は認めていない.
101) 左房線状アブレーションによるブロックラ
イン作成時のGap同定にEnsiteが有用であった2
症例
(高松医療センター) 近藤 功・陸 新・
辻 哲平・村上和司・友廣敦文・和田佳宏・
水重克文
(香川大学附属病院循環器・腎臓・脳卒中内科)
雪入一志
症例1は69歳男性.持続性心房細動に対して,肺
静脈隔離およびmitral isthmusの線状アブレーショ
ンの後Ensiteによるnon-contact mapping(NCM)
を施行した.CS distalペーシングにより,ブロッ
クライン上の弁輪側にGapを同定し,再通電にて
complete blocklineとなった.症例2は62歳男性.
持続性心房細動に対して,肺静脈隔離,左房天蓋
部およびmitral isthmusの線状アブレーション後
Ensiteを使用した.Gapは左房天蓋部中央に認め
られたため,再通電後complete blocklineとなっ
た.NCMは1心拍のみでも伝搬様式の解析が可
能であり,本症例のような線状アブレーションの
ブロックライン作成に有用と考えられる.
102) 心房内連続性分裂電位を指標にしたカテー
テルアブレーションにより誘発不能となった発作
性心房細動の1例
(高松医療センター) 近藤 功・陸 新・
辻 哲平・村上和司・友廣敦文・和田佳宏・
水重克文
(香川大学附属病院循環器・腎臓・脳卒中内科)
雪入一志
症例は62歳男性.薬剤抵抗性AFのため初回カテ
ーテルアブレーションとなった.Brockenbrough
にてスパイラルカテーテルを肺静脈に留置してい
る最中にAFが誘発された.AF中に心房内をマッ
ピングしたところ,左房天蓋部,下壁心房中隔か
ら冠状静脈洞入口部付近,左房前壁に連続性分裂
電位が認められたため,これらに対してアブレー
ションを施行(30W,50度)したところ,20回目
の通電にてAFが停止した.以後イソプロテレノ
ールおよびATP負荷および心房高頻度ペーシング
(400bpm)にても誘発不能となった.それぞれの
肺静脈内に留置したスパイラルカテーテルでは,
肺静脈電位は消失しておらず,肺静脈隔離が未施
行ながらAFの根治が得られた症例であった.術
後8ヶ月無投薬下で再発は認めていない.
103) 多彩な心房性頻脈性不整脈に対しカテーテ
ルアブレーションが有効であった慢性血栓塞栓性
肺高血圧症の1例
(愛媛大学医学部附属病院脳卒中・循環器病センター)
永井啓行・清家史靖・佐々木香織・濱田淳也・
西村和久・井上勝次・鈴木 純・大木元明義・
大塚知明・岡山英樹・檜垣實男
(喜多医師会病院循環器内科) 山田忠克・
住元 巧
症例は68歳男性.慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対
し内服加療中であった.平成20年5月より動悸を
自覚し12誘導心電図より132bpmの心房頻拍(AT)
と診断された.頻拍は持続性かつ薬剤抵抗性であ
ったため6月23日に心臓電気生理検査及びカテー
テルアブレーションを施行,CARTOマッピング
にて頻拍は三尖弁輪を反時計方向に回旋する1:
1房室伝導を呈する周期の遅い心房粗動であるこ
とが判明した.その他3種類の右房起源ATが誘
発されたが非持続性であり治療は行わなかった.
TA−IVC isthmusにてブロックライン作成後は洞
調律で経過したが,心房粗動が再発し8月4日に
2nd sessionを施行,その翌日に異なるATが出現
したため8月18日にEnSiteを用い3rd sessionを行
い残存していたcrista terminalis,上大静脈,Cs
入口部起源の3種類のATの根治に成功した.
104) ペースメーカー植込時におけるエコーガイ
ド下静脈穿刺法の経験
(済生会今治病院循環器内科) 高垣健二・
井田 潤・美馬 敦
従来の鎖骨下静脈穿刺法でペースメーカーリード
を植込むと,リード断線を起こす危険性がある.
そこで透視下で胸郭外鎖骨下静脈穿刺法を行って
いたが,血管の蛇行や走行の異常があると穿刺で
きないことがある.エコーガイド下静脈穿刺法は,
術中にエコーでリアルタイムに観察しながら腋窩
静脈を穿刺する方法であり,簡単かつ確実に行え
る.当院ではその方法を取り入れてから1年にな
るので,その経験を報告する.対象は,2007年8
月から2008年8月までに新規にペースメーカーを
植込んだ22例.原因不整脈は洞不全症候群7例,
房室ブロック12例,徐脈性心房細動3例.リード
本数は2本が16例,1本が6例.エコーガイド下
に腋窩静脈の穿刺に成功したのは22例中21例であ
った.不成功の1例は鎖骨下静脈穿刺に変更し静
脈穿刺できた.
105) ペースメーカー埋め込みの適応判断にCPX
が有用であった洞不全症候群,房室ブロックの一
症例
(高知医療センター循環器科) 楠瀬真奈・
伴場主一・武 寛・佐原伸二・尾原義和・
堀崎孝松・西本美香・山本克人
症例は44歳女性.19歳頃より徐脈を指摘され,31
歳時に他院にて洞不全症候群を指摘されたが,ペ
ースメーカー埋め込みの適応とはならなかった.
今回安静時の胸部圧迫感を主訴に受診され,精査
目的で入院となった.入院後施行したEPSでは,
洞機能の障害は軽度であったが,80ppmの心房
刺激で容易にAV blockを認めた.AV blockはAH
blockであり,atropineの投与にてAH伝導能の改
善を認めた.現在の症状が徐脈によるものかを判
断する目的でCPXを施行した.CPXにて著明な運
動耐容能の低下を認め,徐脈以外に原因が考えら
れなかったため,ペースメーカーの適応と判断し,
埋め込み術を行った.術後,本人の自覚症状は改
善を認め,CPXでも運動耐容能の改善が認められ
た.ペースメーカーの適応判断にCPXが有用であ
った症例を経験したので報告する.
松山市総合コミュニティセンター(2008 年 12 月) 1001
106) もやもや病を合併した心肺停止蘇生後症例
に対しICDを植え込んだ一例
(市立宇和島病院) 泉 直樹・山根健一・
大島弘世・石橋 堅・大島清孝・池田俊太郎・
濱田希臣
(内海診療所) 松本健吾
症例は,モヤモヤ病と冠動脈バイパス術の既往を
有する49歳の男性.平成20年8月7日仕事中,突
然意識消失発作が出現した.bystander-CPRはな
く,15分後近医の医師がかけつけた時には心肺停
止状態でAEDの作動により自己心拍再開し当院
へ搬送された.緊急冠動脈造影を施行したが左冠
動脈主幹部の高度狭窄とび慢性壁肥厚を認めるも
ののバイパスグラフトは開存していた.低体温療
法を施行により高次脳機能を含む神経学的レベル
は入院前と同程度にまで回復した.頭部MRI検査
でモヤモヤ血管からの出血や新規梗塞巣も認めず
心疾患による心肺停止と診断し,二次予防目的で
のICD植込み術を施行した.本症例では,もやも
や病合併のため血管攣縮誘発や心室頻拍誘発試験
は施行しなかった.心肺停止の原因診断が難しく
ICD植込み術の適応に苦慮した.
〈抄録未提出〉
107) 心室中隔ペーシング術後に心筋断裂による
リード移動を生じた1例
(徳島県立三好病院内科) 尾形竜郎・
山本浩史・林 真也
108) 慢性期に皮膚解離し,新たにポケットを作
り直したペースメーカー植え込み後の1症例
(済生会松山病院循環器科) 渡邊浩毅・
佐伯秀幸・三木 理
(同皮膚科) 緑川和重
1002 第 93 回四国地方会
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
第 105 回 日 本 循 環 器 学 会 九 州 地 方 会
2008 年 12 月 6 日 くまもと県民交流館パレア
会長:川 筋 道 雄(熊本大学心臓血管外科学教授)
1) 慢性心不全患者における和温療法の酸化スト
レスに及ぼす効果
(鹿児島大学循環器・呼吸器・代謝内科学)
藤田祥次・宮田昌明・木原貴士・福留 剛・
池田義之・新里拓郎・桑波田聡・窪薗琢郎
(鹿児島市医師会病院循環器科) 山口剛司・
鳥居博行
(鹿児島大学循環器・呼吸器・代謝内科学)
濱崎秀一・鄭 忠和
3) 血管内皮細胞選択的ナノDDSによる低侵襲治
療的血管新生療法の開発
(九州大学循環器内科学) 久保満樹・
江頭健輔
(同循環器外科学) 小田晋一郎
(同循環器内科学) 砂川賢二
慢性心不全患者における和温療法の酸化ストレ
ス に 及 ぼ す 効 果 を 検 討 し た.
【 方 法 】 対 象 は,
NYHA分類II及びIII度の慢性心不全患者40例(平
均年齢:70±14歳,男性29人)で,コントロール
群(n=20)と和温療法群(n=20)の二群に分類
した.血漿中ヒドロペルオキシド濃度,硝酸イオ
ン,BNP,心胸郭比(CTR),左室駆出率(EF)
をそれぞれ治療前と4週間後に測定した.【結果】
4週間の和温療法により,CTRとEFが有意に改
善した.また,酸化ストレス及びBNPも有意に
改善した.さらに,硝酸イオンは有意に増加した.
一方,コントロール群ではこれらの指標に有意な
変化を認めなかった.【結論】和温療法は慢性心
不全患者において酸化ストレスを低下,かつNO
を増加させ,心機能を改善させる.
スタチンは血管新生作用を有することが知られて
いるが,高用量のスタチンでは副作用が危惧され
る.ナノDDSによって,安全量のスタチンを血管
内皮細胞選択的に送達させることにより,統合的
な低侵襲治療的血管新生療法になる可能性があ
る.そこで,ピタバスタチン(0.4mg/kg)を封入
した粒径200nmの生体吸収性ナノ粒子を作製し,
マウス下肢虚血モデルの虚血肢へ1回筋注したと
ころ,局所でのナノ粒子からのスタチンの徐放に
より,無治療群に比べ虚血肢の血流の有意な改善
を認め,組織学的にも新生血管の増加を認めた.
さらに,筋組織中のAktおよびeNOSのリン酸化の
亢進のみでなく,VEGF,FGF-2,MCP-1といっ
た内因性血管新生因子の産生増加も観察された.
内皮細胞選択的ナノDDSは臨床的に有用な治療的
血管新生療法になりうることが示唆された.
2) 境界型糖尿病患者にける前高血圧の規定因子
について
(大分赤十字病院循環器科) 阿南 太・
衛藤健志・岩尾 哲
(大分大学循環器内科) 高橋尚彦・
原 政英・犀川哲典
4) 急性大動脈解離の慢性期予後へ心拍数が与え
る影響についての観察研究
(済生会熊本病院心臓血管センター循環器内科)
兒玉和久・西上和宏・澤村匡史・坂本知浩
(同心臓血管外科) 平山統一・三隅寛恭
(同循環器内科) 本田 喬・中尾浩一
【目的】境界型糖尿病患者において,前高血圧患
者における規定因子について代謝機能の観点から
検討を行った.
【対象】境界型糖尿病患者102名
【方法】前高血圧群(PHT群;52名)
,
正常血圧(NT
群;47名)の2群間で比較検討を行った.【結果】
(1)
.PTH群はNT群に比し,収縮期血圧,拡張期
血圧は有意に高値を示した.(2).PTH群はNT群
に比し,中性脂肪インスリン値,HOMA指数,糖
負荷2時間後血糖値が有意に高値を示し,HDL-C
値は有意に低値を示した.(3).PTH群はNT群に
比し,左室心筋重量係数は有意に高値を示した.
(4).ロジスティック回帰分析では,前高血圧であ
ることの独立した因子として,空腹時インスリン
値が抽出された.【考察】境界型糖尿病患者にお
いて高インスリン血症が前高血圧であることの独
立した因子として抽出された.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
【背景】B型急性大動脈解離(AD)は内科的に加
療され比較的予後が良い疾患である.一方で慢性
期の病変進行のため手術適応となる症例も散見さ
れる.我々はADの慢性期予後に急性期心拍数が
与える影響を検討した.【方法】97年から05年ま
でに当院に入院した連続224例のB型AD患者で除
外基準を満たした171症例を平均心拍数60未満の
群と60以上の群に分け慢性期予後を検討した.
【結
果】平均27ヶ月の観察期間で60未満の群では60以
上の群に比べ有意に大動脈イベント(破裂,再
解離,径拡大)は少なく(12.5% vs 36.0%,OR
0.25,P<0.01)
,手術を要する症例も少なかった(0
% vs 18.7%,P<0.01).
【結語】B型ADにおいて
心拍数は慢性期予後の予測因子となりうる.
5) 血管内皮機能マーカーとしての血漿VEカド
へリン陽性血管内皮細胞 由来微小粒子レベル測
定の臨床有用性
(熊本大学循環器病態学) 野h俊光・
杉山正悟・古賀英信・菅村公一・小川久雄
【目的】血管内皮細胞由来微小粒子(EMPs)は血
管内皮細胞の活性化/傷害により内皮細胞表面か
ら放出される微小粒子であり,内皮機能の新しい
血漿マーカーである.今回,我々は血漿CD144(VE
カドヘリン)-EMP値が冠動脈高リスク患者の心
血管イベントを予測できるか検討した.【方法】
種々の冠動脈リスクファクターを有する488人の
連続患者の血漿CD114-EMP値をフローサイトメ
トリーで測定した.そのうち,387人の冠動脈高
リスク患者を対象として心血管イベント発生の有
無を追跡調査した.【結果】血漿CD144-EMP値は
冠動脈リスクファクター(RF)の重積により有
意に上昇していた.低リスク患者(RF≦1,n=
51,中央値[四分位値],0.303[0.142−0.367]),
複合リスク患者(RF≧2,n=167,0.508[0.387−
0.681]),安定冠動脈疾患患者(n=220,0.604[0.449
−0.795]),急性冠症候群(n=50,0.983[0.718
−1.150]×106/ml)
,
(p<0.001)
. 平 均36ヵ 月 の
追跡期間中に計55の心血管イベントを認めた.単
変量解析の有意な因子で補正した多変量Cox比例
ハザード解析では,陳旧性心筋梗塞と高EMP群
(中央値以上)が心血管イベントの有意な予測因
子であった(陳旧性心筋梗塞:HR 2.14,95% CI
1.11−4.09,p=0.02; 高EMP群:HR 2.09,95 %
CI 1.11−3.94,p=0.02).多変量解析のハザード
比より計算したスコアーでは,CD144-EMPは古
典的リスクファクターが有する心血管イベント発
生の予測価値を高めうることがROC解析で判明
した.
【考察】血管内皮機能マーカーとしての血
漿CD144-EMP値は,冠動脈高リスク患者におい
て心血管イベント発生の予測価値も有する定量可
能な血漿マーカーである.
くまもと県民交流館パレア(2008 年 12 月) 1003
6) DESの拡張不良による亜急性ステント血栓症
(SAT)に対し,BMSを追加留置してbail-outに成
功した一例
(北九州市立八幡病院循環器科) 岡畠祥憲・
剱 卓夫・岩瀧麻衣・樫山国宣・大江学治・
原田 敬・太崎博美
突然の胸痛で来院した70歳男性.来院時は症状軽
快,心電図はV4-6 ST低下,心エコーは後下壁運
動 低 下. 緊 急CAGは #1)99%,#6-7)75%,
#11)75%で,LADからRCAヘ側副血行を認め,
責 任 病 変 の#1) に 対 しBMS留 置. 後 日#6-7),
#11)へDESを留置したが,#6)の一部は石灰化
が強く,Stent拡張はやや不良であった.DES留
置9日 目 に 悪 心 嘔 吐,V4-6 ST低 下 出 現. 緊 急
CAG施行し#6)DES内の完全閉塞を認めた.吸
引後再開通に成功,IVUSで観察すると #6)DES
近位部は内腔が狭小化していた.拡張不良病変部
のradial forceを強化するためBMSを追加留置し
高圧で拡張,十分な内腔を確保することができた.
なお,RCAからの側副血行のためか,血行動態
は終始安定していた.今回のSATはDESのrecoil
が原因と思われ,その対策等につき考察した.
7) Late Restenosis;シロリムス溶出ステント留
置後1−3年後の冠動脈造影検査での評価
(宮崎市郡医師会病院心臓病センター循環器科)
栗山根廣・柴田剛徳・仲間達也・三根大悟・
西平賢作・下村光洋・野村勝政・石川哲憲・
松山明彦
【背景】薬剤溶出ステントの有用性が明らかにな
って久しいが,Very late stent thrombosisとLate
Restenosisという問題が残されている.今回Late
Restenosis について冠動脈造影検査での評価を
行った.【方法と結果】シロリムス溶出ステント
を留置しフォローアップを行った1554病変につ
いて,8ケ月の時点で120病変(7.7%)に再狭窄
を認めた.留置後2年に2回目の冠動脈造影検
査を行った931病変のうち70病変に新たに再狭窄
を認めた.少なく見積もって3.5%の病変にLate
restenosisを認めた.【考察】ほとんどの施設では
フォローアップ冠動脈造影検査を留置後8ケ月頃
に行っているが,われわれの施設では2年で新た
に3.5%の 病 変 にLate Restenosisを 認 め た.Late
RestenosisはVery late stent thrombosisと 同 様 に
無視できない問題である.
8) 急性ステント血栓症にクロピドグレルによる
抗血小板作用が不十分であったと考えられる一例
(熊本大学医学部附属病院循環器内科)
星山 k・井崎幹子・森久健二・小野敬道・
永吉靖央・角田 等・海北幸一・掃本誠治・
杉山正悟・中村 淳・小川久雄
症例は80代男性.近医にて間質性肺炎にてフォローさ
れていた.平成○年7月末より安静時狭心症を発症し,
8月5日に当院に紹介入院.同日よりアスピリン
100mgに加えクロピドグレル75mg,プラバスタチン
10mgの内服を追加した.8月8日の冠動脈造影では
右冠動脈#1:75%,#2:99%,左回旋枝#14:90%の
狭窄を認めた.責任病変は#2と判断し,#1,#2にそ
れ ぞ れbare metal stent(Driver 3.5×24mm,Driver
3.5×30mm)を留置した.8月15日に左回旋枝に対し,
drug eluting stent(Cypher 2.5×23mm)を留置した.
この際の右冠動脈造影で#2のステント内に90%狭窄
を認め,IVUSでは同部位に血栓もしくはプラークを
疑わせる可動性構造物を認めた.ヘパリンの追加で同
部位の狭窄は解除された.ADP血小板凝集能測定にて
十分な抑制効果を認めなかったため(20uM ADP凝集
能:58%)
,クロピドグレル効果不十分例と判断し,
チクロピジンへ変更.血小板抑制効果が認められた.
クロピドグレル耐性が急性ステント血栓症に関与して
いると考えられる症例を経験したので報告する.
1004 第 105 回九州地方会
9) 薬剤溶出性ステントを留置した左冠動脈主幹
部分岐部に再狭窄を来たした症例の検討
(新行橋病院循環器内科) 野口貴代・
村里嘉信・堀内正孝・手島 進
(同心臓血管外科) 在國寺健太・片岡浩海・
小迫幸男
(同循環器内科) 末松保憲
【目的】薬剤溶出性ステント(DES)を留置した
左冠動脈主幹部(LMT)分岐部に再狭窄を来た
した症例の検討を行った.【対象】症例1:#5-11
DES留置,#6:100%残存.症例2:crush stenting.
症例3:bare metal stent再狭窄に対し,#6 DES
留置.症例4:#5-6 crossover stenting+ Kissing
balloon【結果】急性冠症候群3例,ショック3例
を呈し,3例に更にステント留置,1例にPOBA
を行った.うち3例に再々狭窄を来たし,CABG
を行った.【結論】LMT分岐部におけるDES留置
後の再狭窄部位にステントを追加留置した場合に
は内径の狭小化とともに血栓症のリスクが高ま
る.再狭窄を繰り返す場合には,CABGを考慮す
べきと考える.
10) 薬剤溶出性ステント留置後2年目に,ステ
ント内完全閉塞による急性心筋梗塞を発症した1例
(北松中央病院) 二宮暁代・福井 純
(長崎大学循環病態制御内科) 池田聡司・
前村浩二
症例は59才,女性.H18年3月AMI発症し,近医
でLAD Seg.7 99%にCypher stentφ 3.0×18mm留
置.慢性期CAGでは再狭窄なく,退院後,当院
外 来 通 院.Follow up CAGやMD-CTは 経 済 的 理
由から希望されず.H19年8月に8週分処方後,
外来drpo out.H20年4/2 AMI発症し救急車来院.
Seg7 stentのproximalでtotalと な っ て お りPCI施
行した.慢性期CAGではSeg.7 stent内は0%も,
stent外へlate stent incomplete appoition様の突出
を多数認めた.4ヶ月後にstent proximal 90%再
狭窄来たし,IVUSおよびPCI施行した.DES留
置後,1年以上経過後の急性閉塞の症例を経験し
たので報告する.
11) 側枝アプローチ下のIVUS所見によりCTO
のentry pointを同定しwire通過に成功した一例
(長崎県離島医療圏組合対馬いづはら病院内科)
守崎勝悟・橋本朋也
症例は60歳男性.定期健診の心電図異常を契機に
2008年2月21日CAG施行.RCA#3および対角枝
に90%狭窄.対角枝と分岐するはずのLADは閉塞
断端のない状態で完全閉塞しており,逆行性の
側副血行を伴っていた.2月28日RCAに対しPCI
施行の後,3月6日LAD CTOに対してPCI施行.
LADは閉塞断端もなくwireのentry pointが不明な
状態であったが,対角枝側からのIVUS情報によ
りLADの閉塞腔を確認することが可能であった
ため,IVUSのマーカーを指標にwire crossに成功
した.末梢がwireにより解離したため同日のPCI
では近位部にDES留置し,後日2期的に末梢に
DES留置施行し完全血行再建に成功した.今回通
常のアプローチでは困難と思われた閉塞断端のな
いCTOに対してIVUSガイド下のワイヤー操作が
有効であった症例を経験したので報告する.
12) SES留置後39ヵ月後に64列MDCTによって
発見しえた再狭窄症例および対馬におけるMDCT
の実績
(長崎県離島医療圏組合対馬いづはら病院内科)
守崎勝悟・橋本朋也
症例は79歳女性.2004年11月13日LAD#7にSES
留置.最終2005年11月30日のCAGにて再狭窄の
所見なし.2008年1月25日慢性期の評価目的に冠
動脈CT(64列MDCT)を試行した結果SES近位
部に偏心性の高度狭窄病変が疑われ,後日CAG
にて確定診断となる.今回SES留置後約39ヵ月後
に64列MDCTにより発見しえたDES再狭窄症例
を経験した.当院では2007年12月より64列MDCT
が稼動し,7月31までに269件の冠動脈CTが施
行されている.内訳としては有症状精査が多く,
PCIにいたる症例は20件(7.4%)で,その中でも
通常指摘することの困難な無症候性心筋虚血症例
が7件ある.当院は対馬の基幹病院であるととも
に,地域の慢性期病院でもあり,患者の長期管理
を行う施設として64列MDCTは有用と考えられ
た.
13) 当院での光干渉断層映像(Optical coherence
tomography;OCT)の初期使用経験
(宮崎市郡医師会病院心臓病センター循環器科)
栗山根廣・柴田剛徳・仲間達也・三根大悟・
西平賢作・下村光洋・野村勝政・石川哲憲・
松山明彦
【背景】冠動脈病変の観察に空間分解能の高いOCT
を用いると,IVUSと比べ詳細に微細構造を観察で
きる.今回われわれはOCTにて冠動脈病変を観察
したので報告する.【症例1】70歳男性.左前下
行枝#7 90%狭窄を認めサイファーステントを留
置して良好な拡張が得られた.その際にIVUSと
OCTを行い狭窄病変およびステント留置後の病変
について観察した.【症例2】65歳男性.左前下
行枝#7 90%狭窄を認めサイファーステントを留置
しており,8ヶ月後にステント内再狭窄を認めた.
再治療(バルーン拡張)を行った際にIVUSとOCT
を行いステント内新生内膜を観察した.【結語】
OCTを用いることによりIVUSではわからなかっ
た冠動脈内の微細構造をとらえることができた.
症例1ではステント留置後の組織逸脱を観察で
き,症例2ではステント内新生内膜を観察できた.
14) 負荷心筋シンチによる左冠動脈主幹部
(LMT)
病変の冠動脈造影(CAG)前診断精度の検討
(九州医療センター循環器科臨床研究部)
清水知彦・佐藤真司・西元弥生・井上寛子・
池田次郎
(同救急部) 森井誠士
(同循環器科臨床研究部) 塚川絵理・
工藤桂子
(同救急部) 田中信英
(同循環器科臨床研究部) 麻生明見・
森 隆宏・相良洋治・竹中克彦・森 超夫・
中村俊博・冷牟田浩司
【目的】多枝病変,左主幹部(LMT)病変における心筋
シンチの診断率は低いといわれている.我々はLMT病変
における負荷心筋シンチの診断精度を検討した.【方法】
LMT病変(AHA≧50%)に対する待期的PCIのうちCAG
前の負荷心筋シンチ施行例の診断精度を後ろ向きに解析
した.OMI,3枝病変(主要枝≧75%),CABG後は除外.
LADま た はLCX領 域 の 一 過 性 灌 流 低 下transient defect
[TD](+)かつwashout ratio [WR] 低下:陽性群,TD(-)
だがWR低下:陽性疑い群,その他:陰性群とした.【結果】
対象は15例.陽性群6例,陽性疑い6例,陰性3例であ
った.陽性群のみだと診断精度は40%と低いが陽性疑い
群を含めると80%と従来の診断精度と同等であった.
【結
論】LMT病変では典型的なシンチ虚血所見を示す例は少
ない.WR低下のみも重要な虚血所見と考えられる.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
15) 慢性腎臓病(CKD)と冠動脈狭窄,冠動
脈石灰化の関連性
(福岡大学心臓・血管内科) 志賀悠平・
三浦伸一郎・光武良晃・河村 彰・朔啓二郎
18) 冠動脈瘤を合併した活動性多発血管炎類似
疾患の一例
(九州大学病院循環器内科) 由布威雄・
西坂麻里・砂川賢二
MDCTに よ る 冠 動 脈 石 灰 化 ス コ ア(CAC) は,
冠動脈疾患(CAD)の予測因子として知られて
い る. 又, 慢 性 腎 臓 病(CKD) も 同 様 で あ る.
しかしながら,CKDとMDCTによる冠動脈狭窄
の重症度もしくは冠動脈石灰化の関係については
明らかにされていない.MDCTを行った313人を
対 象 にeGFRを 計 測 し,GFR<60ml/min/1.73m2
をCKDと 定 義 し た. 冠 動 脈 3 枝 病 変 群 のeGFR
は,病変のない群よりも有意に低下していた.ま
た,冠動脈石灰化スコアを高値群,低値群の2群
に分類したところ,高値群では,年齢,病変数,
CKDにおいて有意に関連しており,多変量解析
でもまた独立した因子であった.以上のことより,
CKDの有無は冠動脈狭窄の重症度,冠動脈石灰
化に影響を与えることが証明された.
症例は30代の女性.労作時の下顎部違和感を主訴
に当科受診.三枝冠動脈瘤を伴う狭窄病変を認め
たため,冠動脈バイパス術を施行.術中採取した
内胸動脈の病理所見上,フィブリノイド壊死を伴
う活動性血管炎の所見を認めた.術後,全身活動
性血管炎の再精査を行うも,特異的な所見を得ら
れなかった.術後3ヵ月の冠動脈造影にて左前下
行枝に狭窄病変の進行を認めたため,ガンマグロ
ブリン大量療法を施行.その後,一旦消失した労
作時狭心症の症状あり,冠動脈CTにてバイパス
グラフトおよび冠動脈の更なる狭窄の進行を認め
たため,ステロイドパルス療法を施行.その後,
経口ステロイド漸減にて経過観察中である.今回,
診断・治療に難渋する冠動脈瘤を合併した多発血
管炎類似疾患の一例を経験した.文献的考察を交
えて,報告する.
16) 負荷Tl心筋シンチによる維持透析患者のリ
スク評価−長期予後の検討−
(産業医科大学第2内科学) 福中康志・
岡崎昌博・尾辻 豊
19) 急性心筋梗塞を発症した真性多血症の一例
(済生会福岡総合病院循環器科) 守谷知香・
中村 亮・野副純世・大坂薫平・仲野泰啓・
山崎あゆむ・夏秋政浩・光武ちはる・
柳大三郎・瀬戸 拓・沼口宏太郎・岡部眞典・
山本雄祐
【目的】透析導入期に負荷Tl心筋シンチによる慢
性腎不全患者のリスク評価を行い,長期予後を検
討した.【方法】対象は当科にて透析導入された
連続73症例.導入期に負荷Tl心筋シンチを施行,
陽性例(虚血または梗塞あり)では必要な血行再
建を施行した.予後調査を施行し,死亡や心血管
イベント数をシンチ陽性群と陰性群で比較した.
【結果】シンチ陽性群14例,陰性群は59例であり,
平均フォローアップ期間はそれぞれ37ヶ月と46ヶ
月であった.その間の心臓死(21% vs. 0%,p<
0.05)や主要心血管イベント(36% vs. 10%,p<
0.05)は陽性群で多く認められた.全死亡中心臓
死は17%(3/18)であった.【結論】透析導入期
の負荷Tl心筋シンチは維持透析患者のリスク層別
化に有用であり,早期に血行再建を施行すること
により予後が改善する可能性がある.
17) モバイル・テレメディシンによる病院前診
断が有用であった不安定狭心症の1例
(熊本医療センター救命救急部) 原田正公・
櫻井聖大・清水千華子・北田真己・橋本 聡・
児玉章子・高橋 毅
(同循環器科) 金澤尚徳・原田恵実・
古賀英信・宮尾雄治・藤本和輝
モバイル・テレメディシンとは,救急車内の傷病
者の情報を,車載カメラと12誘導心電図を始めと
する生態モニタリング情報をリアルタイムに病院
に伝送するシステムである.平成20年6月より,
厚生労働省循環器病研究委託事業として,国立病
院機構熊本医療センターと熊本市消防局との間で
運用を開始した.このシステムは,心筋梗塞や脳
卒中また多発外傷など傷病者の状態把握,救急隊
員への適切な指示,受入体制の準備などの面で有
用である.今回,胸痛を主訴に救急車を要請した
71歳男性が,救急車内の12誘導心電図でのみII,
III,aVF,V1-5で著名なST上昇を認め,緊急冠
動脈造影にて左冠動脈前下行枝と回旋枝の2枝狭
窄に対し,冠動脈カテーテル治療を要した症例を
経験した.車載12誘導心電図が,緊急カテーテル
検査の決行の判断に大変有用であった.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
症例は44歳女性.真性多血症と診断され,ヒドロ
キシカルバミドを内服していたが,妊娠を契機に
ヒドロキシカルバミドの内服を妊娠6週頃に自己
中断し,2週間後に自然流産した.3週間後,胸
痛後に心肺停止となり,緊急心臓カテーテル検査
にてSeg6の完全閉塞を認めた.真性多血症に対
するヒドロキシカルバミド内服を妊娠を契機に自
己中断したことと流産による凝固能亢進が誘因と
考えられる急性心筋梗塞の1症例を経験したので
報告する.
20) 広範囲のST上昇とMyocardial Stanningを呈
した急性冠症候群の1例
(宮崎市郡医師会病院心臓病センター循環器科)
仲間達也・三根大悟・西平賢作・下村光洋・
栗山根廣・野村勝政・松山明彦・石川哲憲・
柴田剛徳
症例は88歳女性,自宅で倒れている状態で家族が
発見,当院搬送.ECGにてV1-5のST上昇,UCG
にて前壁中隔に広範な無収縮を認めた.CAGに
てLAD #7:90%を認めたがflowは維持されていた.
転倒の際の外傷著しく,まずは保存的加療.また,
Spasmの関与も考えCa拮抗薬も併用.CPK max:
2500でその後漸減.しかし経過中HR:120台のVT
出現.洞調律回復後のECGでST再上昇あり,再び
CAG施行.前回と同様LAD#7:90%.この虚血の
関与を疑い同病変に対してPCI施行(Liberte 3.0
×12mm)
.その後STは徐々に改善.心エコーで
の無収縮も改善,ほぼ正常となった.結果的には,
入院時の広範な無収縮はmyocardial stanningによ
るものと考えられた.
21) 高度石灰化を認めたステント内再狭窄
(佐賀県立病院好生館循環器科) 吉富有哉・
貞松研二・田中玄紀・江頭泰博・吉田敬規
67歳男性.99年に急性冠症候群のためSeg7に対
してPOBAを施行され,三ヶ月後のフォローで再
狭窄を来していたため,Multi-linkステントを留
置された.半年後のフォローで再狭窄なく,以後
は自覚症状なく経過していたが,08年6月の心
電図にてV3∼5誘導に一過性のT波陰転化がみら
れ,冠動脈造影を施行した.ステント内閉塞を認
め,PCIを施行することとした.Maverick OTW
1.5×9mmで拡張後にIVUSを施行したところ,ス
テント内新生内膜に高度石灰化を認め,Powered
Lacrosse 3.0×15mmで拡張したところ,同部で
バルーンが破裂した.引き続きCypherステント
を留置し,良好な開大が得られた.一般的にはス
テント内再狭窄で新生内膜に高度石灰化を認める
ことはないが,九年間が経過することにより,通
常の病変と同様に石灰化を来したものと思われ
る.
22) 深部静脈血栓症罹患後の約1年後に急性冠
症候群を発症した一例
(藤元早鈴病院循環器科) 楠元啓介・
剣田昌伸・有川 亮・木原浩一
症例は73歳女性.平成18年12月左下肢深部静脈血
栓症にて当科入院.基礎疾患の検索を行うも不明.
抗凝固療法で軽快し退院.退院後も抗凝固療法が
行われていたが,平成20年3月頃より増悪する
胸痛あり再入院.冠動脈造影上 左前下行枝#6)
99%,右冠動脈#2)90%と高度狭窄あり.まず左
前下行枝にPCIを施行したが,バルーンで拡張し
た際に左回旋枝が一時slow flowとなった.原因
として不安定プラークと血栓の関与が疑われた.
これまで静脈血栓塞栓症と動脈血栓塞栓症は成立
機序が異なるため独立して発症すると考えられて
きたが,最近sorensenらにより静脈血栓症を有す
る患者ではその後の動脈性心血管イベントが大幅
に上昇すると報告されている(Lancet 2007)
.今
回我々は深部静脈血栓症発症1年後に急性冠症候
群を発症した一例を経験したので報告する.
23) 妊娠時心筋梗塞の一例
(福岡大学病院心臓・血管内科) 有村忠聴・
柳大三郎・河村 彰・朔啓二郎
今回,妊娠中に急性心筋梗塞を発症し母児ともに
救命し得た症例を経験したので報告する.症例は
43歳自然妊娠の初産婦.当院産科に通院中であっ
た.妊娠21週6日,突然胸痛が出現し当院救急外
来受診.心電図でV1∼V6のST上昇,心エコーで
左室前壁の壁運動低下を認め,血液検査で白血球
上昇を認め急性心筋梗塞と判断した.緊急冠動脈
造影を行ったところ,左前下行枝に完全閉塞を認
めたため同部位に対しステント留置術を施行し
た.術後,抗血小板薬内服のみで経過観察を行い
合併症無く経過し,妊娠32週4日に帝王切開で体
重1967gの健康な男児を娩出.分娩後にも合併症
無く退院となった.妊娠中の急性心筋梗塞は極め
てまれで,我が国では少数が報告されているのみ
である.今回,我々が経験した症例について考察
を加え報告する.
くまもと県民交流館パレア(2008 年 12 月) 1005
24) 肺癌術後1日目に,ST上昇ついでVTを生
じたTaxusステント留置8ヶ月後の1例
(北九州市立医療センター循環器内科)
関屋正俊・池内雅樹・古財敏之・浦部由利
60代 男性 平成19年4月に,下壁の心筋梗塞
を発症し,右冠動脈Seg3にステント(BMS 3.5×
12mm)を留置された.10月の冠動脈造影(CAG)
で,ステント内再狭窄を認め,薬剤溶出性ステン
トDES(Taxus 3.5×28mm)を留置された.平成
20年7月に,当院にて肺癌の診断で左肺上葉切
除術を施行され,術後1日目の夕食後,気分不
良を訴え,血圧の低下を認めた.心電図モニタ
ー上,STが徐々に上昇しVTを生じた.意識は清
明,脈拍も触知しており,約2分後に洞調律に復
し,STも正常化した.すぐにヘパリン等を開始し,
その後症状や心電図変化を認めなかった.4日後
のCAGでは,ステント部に有意な狭窄病変を認
めず,ステント部の血栓閉塞や,右冠動脈スパス
ムが疑われた.DES留置8ヶ月後に,手術に伴い
抗血小板剤を中止し,心症状を生じた貴重な1例
と考えられた.
25) 慢性GVHD急性増悪時に多枝冠攣縮による
急性心筋梗塞を発症した症例
(原三信病院循環器科) 馬場裕子・
眞柴順子・林 靖生・増田征剛・赤塚 裕・
平 祐二
症例は55歳男性.2000年にAMLに対し同種骨髄
移植行い,以来全身型の慢性GVHDの状態であっ
た.プレドニン内服中であり,易感染性あったが,
虚血性心疾患の既往はなかった.2008年4月29日
呼吸困難を主訴に来院肺炎の診断にて入院となっ
た.入院22時間後,慢性GVHDの急性増悪を認め
るようになり,その後左前胸部不快感,心電図に
てI,II,III,aVf,V3∼V6のST上昇,心筋逸脱
酵素上昇を認めたが硝酸薬,リドカインにより症
状安定し,12時間後には心電図正常化した.その
後心エコー,心臓CT行ったが,有意冠動脈狭窄
認められなかった.よって,多枝冠攣縮による急
性心筋梗塞を発症したと思われ,その発症機転
として慢性GVHDの急性増悪との関係が示唆され
た.
26) 薬剤負荷心筋シンチ上,POBA後にニコラ
ンジルを投与したことで虚血が改善したDM性心
筋症が疑われる一例
(新別府病院循環器科) 奥山英策・片山哲治
(熊本大学循環器病態学) 松原純一
(新別府病院循環器科) 渡辺圭祐・
菊田浩一・中村夏樹
65歳,女性,smoker,DM,HT,HL.07.4.6,CAG
を施行し,重症二枝病変であった.07.4.23から7.30
までに,#6 cypher 3.0/28・#7 cypher 2.5/28・#8
multilink pixcel 2.25/18・#11 cypher 3.0/18・#13
proximal Taxus 3.0/20・distalツナミ2.5/15を留置.
08.6.18,薬剤負荷心筋シンチ上,ST低下を伴う
前壁の不完全再分布を認めたため,翌日施行した
CAG及びIVUS上ISR(-)であったが,僅かにhazy
に見えた#7 stent内にPOBAを施行.この後再度
心筋シンチを施行したが殆ど改善は認められなか
った.そこで,ニコランジルを投与し再度心筋シ
ンチを施行した結果,ST低下の消失,不完全再
分布領域の縮小,QGS上拡張能の改善を認めた.
以上から,high risk患者では,epicardの冠動脈だ
けではなく微小血管まで視野に入れた包括的治療
が必要である.
1006 第 105 回九州地方会
27) 急性心不全を発症し,多枝に責任病変を有
した急性冠症候群の一例
(福岡和白病院) 池田尚子・津田泰任・
仲村圭太・石橋史行・野口博生・比嘉 徹・
斉藤太郎
30) 偶然観察された全身性エリテマトーデスに
伴うLibman-Sacks心内膜炎の一例
(九州労災病院門司メディカルセンター循環器内科)
鈴木義之・平川乃理子・小住清志・長井善孝・
荒木 優・中島康秀
症例は58歳男性.突然の呼吸困難を自覚し救急外
来へ搬入.来院時心電図上明らかな変化はないが
心エコー上左室壁運動はびまん性に低下,胸部レ
ントゲンでは肺うっ血著明,急性心不全,急性呼
吸不全と診断し加療.入院20時間後,心筋逸脱酵
素値の上昇と心電図上II,III,aVFでST上昇を
認めた.その後,心不全の経過良好となり精査目
的に冠動脈造影検査施行,右冠動脈Seg3に99%
狭窄を認めた.その造影直後から胸痛を訴え,心
電図上,前胸部誘導でST上昇.左冠動脈造影を
行ったところ,左前下行枝がSeg7が100%であり,
引き続き緊急経皮的冠動脈形成術施行した.不安
定プラークは局在するのではなく多数存在すると
いわれている.局所のみの治療にとどまらず全身
的に加療することが重要である事を示唆する症例
であった.
72歳 女 性.57歳 時 に 全 身 性 エ リ テ マ ト ー デ ス
(SLE)と診断.プレドニゾロン30mgで治療を開
始され,SLEに伴う心膜炎は速やかに改善.以後
5-7.5mg内服でコントロールは良好であった.
しかし,抗ds-DNA抗体の急上昇と精神症状があ
り,2008年6月他院で入院精査を受けたが,MRI
上中枢神経ループスは否定的で活動性なしと判断
された.6月25日経胸壁心エコー上僧帽弁後尖基
部の左房側に可動性の高い高輝度の疣贅を認め,
経食道心エコー上も同所見であった.塞栓症リス
クが高いと判断し,緊急手術を検討していたが,
7月1日疣贅は消失していた.明らかな塞栓症状
はなかった.SLEに伴う非感染性疣贅(LibmanSacks心内膜炎)と考えられ,若干の文献的考察
を加え報告する.
28) 冠攣縮が関与した可能性のある興味ある2
症例
(済生会熊本病院心臓血管センター循環器内科)
田口英詞・鈴山寛人・六反田拓・貫 敏章・
堀尾英治・高潮征爾・兒玉和久・三木竜介・
寺嶋 豊・福永 崇・澤村匡史・古山准二郎・
田山信至・坂本知浩・西上和宏・堀内賢二・
本田俊弘・松田宏史・本田 喬・中尾浩一
31) primary chylopericardiumの2症例
(沖縄県立八重山病院循環器内科) 服部英敏
(沖縄県立中部病院循環器内科) 和気 稔・
梶原光嗣・平田一仁
(同外科) 嵩下英次郎・安元 浩・
天願俊穂・本竹秀光
【症例1】24歳男性.発熱・吸気時胸痛を主訴に
受診された.持続性ST上昇を認めており急性心
膜炎の疑いにて入院となった.入院後胸痛発作の
出現と共に著明なST上昇を一過性に認めたため
心臓カテーテル検査を施行した.冠動脈病変は認
めず,心膜炎に冠攣縮が併発したものと思われた.
【症例2】65歳男性.総胆管結石の治療目的にて
入院中早朝に急変したため,直ちに心肺蘇生法を
行った.幸い胸骨圧迫のみで心拍再開し意識も回
復したためCAGを準緊急に施行した.入室後突
然VF stormとなり数回のDCにても反応せず人工
心肺装置を留置した.自己心拍再開後CAGを施
行するも冠動脈病変は認めなかった.特発性心室
細動の可能性も示唆された.【結語】冠攣縮の関
与が示唆された興味ある2症例を経験したので文
献的考察を含め報告する.
primary chylopericardiumは原因不明の心嚢内の
乳糜貯留で100例程の報告例がある.原因として
胸管と心嚢の先天的な異常交通枝の存在などが指
摘されている.リンパ管造影やシンチグラフィー
を行い,胸管と心嚢の異常な交通を証明するこ
とで診断するが保存的治療のみでは再発すると
され外科手術を行うことが一般的である.今回
我々はprimary chylopericardiumの2症例を経験
した.症例は15歳女性,30歳女性でいずれも健
診で胸部レントゲン上心拡大指摘され当院受診
した.心エコー上心嚢液貯留認め,心嚢ドレナ
ージ,リンパ管シンチグラフィーを行いprimary
chylopericardiumと診断した.治療は1例は開胸
下,もう1例はVATS下で胸管結紮術と心膜開窓
術を行い,その後いずれも再発なく経過している.
本2症例について文献的考察を加えて報告する.
29) 外科的手術を施行した巨大冠動脈瘤の一例
(九州厚生年金病院内科) 中野正紹・
宮田健二・坂本一郎・林谷俊児・菊池 幹・
山本雲平
(同医療情報部) 野間 充
(同内科) 折口秀樹・毛利正博・山本英雄
(同心臓外科) 坂本真人・瀬瀬 顯
(新小倉病院循環器内科) 吉田 芽
32) 好気性菌,嫌気性菌の混合感染による化膿
性心膜炎の1例
(佐世保市総合病院循環器科) 二宮登志子・
(長崎大学循環器内科) 池田聡司
(佐世保市総合病院循環器科) 山佐稔彦
(長崎大学循環器内科) 古賀聖士
(佐世保市総合病院循環器科) 江藤 幸・
室屋隆浩・新北浩樹
(長崎大学循環器内科) 前村浩二
症例は45歳男性.5歳頃に川崎病を疑われていた.
2008年1月に施行した運動負荷試験で胸部症状な
らびにST低下を認め,心臓カテーテル検査を施
行した.冠動脈造影にて左主幹部に2.5cmの巨大
冠動脈瘤,右冠動脈#1ならびに左回旋枝#11は
完全閉塞病変であり,左前下行枝から右冠動脈に
かけて側副血行路を認めた.冠動脈CTでは左主
幹部から左前下行枝まで及ぶ最大径7cmの巨大
冠動脈瘤を認め,内部が血栓化していた.運動負
荷心筋シンチにて前壁に虚血を認めたため,同年
6月に冠動脈バイパス術,冠動脈瘤末梢側閉鎖術
を施行した.巨大冠動脈瘤による労作性狭心症に
対して冠動脈バイパス術を施行した一例につい
て,若干の文献的考察を加え報告する.
症例は,76歳,男性.不整脈を主訴に,平成20年
5月29日に当科を初診.6月5日の再診時に発熱
と白血球増多,CRP上昇,および心エコー検査で
少量の心嚢水が認められ,心膜炎の疑いで入院と
なりました.消炎剤と抗生物質の投与で解熱した
が,CRPの改善が不十分でした.プレドニゾロン
30mgを3日間使用後に,発熱とCRP再上昇,心
嚢水の増加,心不全症状を呈したため,心嚢穿刺
を施行.悪臭を伴う膿性の心嚢水が認められ,化
膿性心膜炎と診断しました.培養で好気性菌,嫌
気性菌の両者が検出され,抗生物質は2剤併用で
加療し,炎症は改善しました.心膜肥厚が残存し,
収縮性心膜炎の病態を呈しましたが,保存的な加
療で改善.健康成人に発症した化膿性心膜炎の1
例を経験したので報告します.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
33) 前縦隔腫瘍から心タンポナーデをきたした
一例
(宮崎生協病院循環器内科) 遠藤 豊・
高田慎吾
【症例】85歳,女性.【主訴】労作時息切れ,むく
み.【現病歴】2ヶ月前から労作時の息切れ,顔
面の浮腫あり精査加療目的で200X年8月○日当
院紹介入院となる.【既往歴】7年前より前縦隔
腫瘍あり経過観察.【現症】血圧:146/86mmHg,
脈拍:99/分,整,頚静脈:怒張あり,呼吸音,
心音:異常なし,心雑音なし 下腿:浮腫 入院
時検査:胸部XP:右上縦隔に腫瘤影,心電図:
洞性リズム,低電位 胸部CT:心臓超音波検査:
供覧.【経過】エコーガイド下に心嚢ドレナージ
施行しミノサイクリン塩酸塩100mgを注入した.
微熱,軽度の胸部不快あったが排液は減少し3日
後ドレン抜去した.その後,再貯留はなく経過し
ている.【結語】(1)前縦隔腫瘍(悪性奇形腫)か
ら心タンポナーデをきたした一例を経験した.
(2)
心嚢ドレナージとミノサイクリン塩酸塩注入が副
作用も少なく著効した.
36) Bepridilによる薬剤性間質性肺炎を発症し
た,発作性心房細動の1女性例
(福岡和白病院) 野口博生・仲村圭太・
比嘉 徹・池田尚子・津田泰任・石橋史行・
斉藤太郎
症例は76歳女性.本年1月発作性心房細動(Paf)
の停止時に5.2秒の心停止があり,ペースメーカ
ーが植え込まれサンリズムが開始された.Pafが
再燃し2月よりベプリコールに変更され洞調律は
維持されていたが,4月より全身倦怠感が出現し
外来を受診.胸部レントゲンとCTで両肺野にび
まん性のスリガラス陰影,血液ガス所見でAaDO2
の開大(41.8)を認め,間質性肺炎(IP)で入院
となった.自己免疫疾患や感染症は否定され,
KL-6 766U/ml(500>)
,
SP-D 176.3ng/ml(110>)
の上昇を認め薬剤性IPと診断し,薬剤の中止とス
テロイドパルス療法を開始.IPは速やかに改善.
自覚症状も消失し,KL-6とSP-Dも正常化した.
DLSTは陰性であったが,経過からベプリコール
による薬剤性IPが最も考えられた.今までに9例
の報告しかなく珍しい症例を経験したので報告す
る.
34) 副腎皮質ステロイドが奏効した開心術後収
縮性心膜炎の1例
(北九州市立医療センター循環器内科)
池内雅樹・関屋正俊・古財敏之・浦部由利
37) 血行動態の破綻した持続性心室頻拍にアミ
オダロン注射薬が有効であった1例
(別府医療センター循環器内科) 前田拓哉・
一瀬正志・重松作治
症例は50代男性.2007年10月に初発の心不全を契
機として僧帽弁逸脱症と診断され,同年11月28日
に当院で僧帽弁形成術を受けた.しかし,退院後
まもなくして顔面・下腿の浮腫や体重増加が進行
してきた事から翌年1月10日に当科に再入院し
た.心臓超音波検査では残存僧帽弁逆流量は僅か
であったが,左室流入波形が拘束型パターンを呈
していた.胸部CTでは心膜の肥厚を疑った.心
臓カテーテル検査では右房圧がM字型を呈してお
りKussmaul signが陽性で,左室・右室の同時圧
測定で拡張末期圧が一致して上昇していた.以上
の所見から開心術後収縮性心膜炎と診断した.治
療法としてステロイド投与を選択したところ,こ
れが著効して心不全症状は消失した.貴重な経験
と考え,若干の文献的考察を加えて報告する.
症例は84歳女性.数年前から徐脈頻脈症候群に
対してVVIペースメーカ植え込みとカルベジロー
ル,アプリンジンの内服治療を行っていた.2008
年2月倦怠感を自覚して近医受診した際にwide
QRS tachycardiaを認め,当院搬送となった.来
院時心拍数160/分の右脚ブロック型の持続性心室
頻拍を認めショック状態であった.キシロカイン
静注は効果なく,200Jの電気的除細動で一時的に
は洞調律に復帰するも心室頻拍を繰り返し,その
都度電気的除細動を必要とした.アミオダロンの
点滴投与を開始すると心室頻拍の出現は完全に抑
制され,10病日目より内服薬に変更した後も心室
頻拍は認めず軽快退院となった.血行動態の破綻
した持続性心室性頻拍にアミオダロン注射薬が奏
効した症例を経験したので報告する.
35) 右心不全症状を呈したが,心膜の肥厚・石
灰化を伴わず収縮性心膜炎として加療するまでに
時間を要した一例
(長崎大学医学部・歯学部附属病院心臓血管外科)
佐藤大輔・江石清行・橋詰浩二・押富 隆・
谷口真一郎・三浦 崇・橋本 亘・尾立朋大・
松隈誠司・久冨一輝
38) 自動体外除細動器(AED)にて心臓突然死
を回避できた3症例
(九州医療センター救急部) 塚川絵理・
清水知彦・森井誠士・田中信英・小林良三
(同循環器臨床研究部) 麻生明見・
西元弥生・井上寛子・池田次郎・安田桂子・
相良洋治・森 隆宏・竹中克彦・森 超夫・
佐藤真司・中村俊博・冷牟田浩司
症例は64歳男性.3年前にLMT+三枝病変に対
してCABGを施行.術後2ヵ月から腹水・下腿浮
腫を認めた.利尿剤で加療したが,症状は寛解
増悪を繰り返した.聴診では心膜叩打音を聴取.
TTEで はEF60 %,LVDd44mmで, 吸 気 時 にIVS
の左室側への偏位あり.胸部CT上,心膜の肥厚・
石灰化なし.右心カテではPAWm19mmHg,RA
m16mmHgとほぼ同等で,右室拡張期波形はdip
and plateau型だった.以上から,心膜肥厚・石
灰化のない収縮性心膜炎と考え,心膜切除術を施
行した.心膜は右室全面から左室前面,横隔膜面
で硬化していた.術後,症状は改善し,CVPは術
前15mmHgから術後4mmHgと減少した.今回,
心膜の肥厚・石灰化を伴わず,手術まで約3年を
要した収縮性心膜炎の一例を経験した.
【症例1】61歳男性.2007年12月13日仕事中に意
識消失し,救急隊が心室細動(VF)を確認後AED
で回復した.冠動脈造影検査(CAG)で狭窄病変
はなく強い攣縮を認め,一方電気生理検査(EPS)
でVFは誘発不能であったため,冠攣縮狭心症に対
する薬物治療で経過観察中である.
【症例2】25
歳男性.2008年1月26日パチンコ中に意識消失し,
救急隊がVFを確認後AEDで回復した.基礎心疾
患はなくEPSでVFが誘発されたため,特発性心室
細動の診断で植込み型除細動器植込み術を施行し
た.【症例3】41歳男性.2008年2月28日車の助
手席で意識消失し,救急隊がVFを確認後AEDで
回復した.CAGで左主幹部を含む3枝病変を認め
経皮的冠動脈形成術を施行した.いずれもAEDで
心臓突然死を回避でき,其々の基礎疾患に対し異
なる二次予防を行った3症例を経験した.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
39) 濃厚な突然死の家族歴を有するBrugada症
候群の1例
(九州医療センター循環器科臨床研究部)
池田次郎・麻生明見・西元弥生・清水知彦・
井上寛子・塚川絵理・工藤桂子・森井誠士・
相良洋治・森 隆宏・竹中克彦・森 超夫・
佐藤真司・中村俊博・冷牟田浩司
59歳男性.健診で心電図異常を指摘され当院受診.
無症候性であったが,濃厚な突然死の家族歴(父,
叔父が就寝中,弟が仕事中に急死)を有し,心電
図上右脚ブロックパターン,V1-3にてcoved type
のST上昇を認めBrugada症候群と診断した.心
エコー上器質的心疾患は否定的であったが,加算
平均心電図検査は陽性で,電気生理検査において
心室細動が誘発された.遺伝子検査ではSCN5A
変異は認めなかった.植込み型除細動器(ICD)
植込み術を行い外来経過観察中であるが,現在の
ところ失神や除細動器の作動は認めていない.突
然死の家族歴が予後予測因子となるか否かは議論
が分かれるところだが,本例の家族(子供,弟,
甥)にもBrugada型心電図変化を持つものがおり,
遺伝的要素の強いBrugada症候群と考え,積極的
にICD植込みを行った.
40) 下 大 静 脈 入 口 部 にAPCs/afのfocusを 認 め
た一症例
(小倉記念病院循環器科) 安田潮人・
合屋雅彦・廣島謙一・曽我芳光・安藤献児・
岩淵成志・横井宏佳・野坂秀行・延吉正清
H13年の検診で初めて不整脈を指摘.近医にて通
常型心房粗動と診断され内服加療開始.H16年の
心電図では正常洞調律であったが,H17年8月よ
り脈の乱れを自覚するようになり,近医にて心房
細動と診断.複数回の電気的除細動後に抗不整脈
薬を投与されたがコントロール困難の為,精査加
療目的で当院へ紹介.入院時からPP間隔が不整
で数分間持続する心房頻拍様の心房細動が終日
incessantに出現.電気生理検査では型のごとく
肺静脈にカテーテルを留置し起源の検索を行った
がAPCの最早期部位は下大静脈入口部付近であ
った.同部位でカテーテルアブレーションを施行
しAPCは完全に認めなくなり,以来現在まで経過
観察中だが,内服中止のままAPCや頻拍発作は認
められていない.下大静脈に起源を有する心房細
動は極めて稀であり示唆に富むと考え報告する.
41) 複数のslow pathwayを有するfast-slow型房
室結節リエントリー性頻拍を合併した房室リエン
トリー性頻拍の1例
(熊本大学医学部附属病院循環器内科)
榎本耕治・小澄敬祐
(同不整脈先端医療寄付講座) 田中靖章・
山部浩茂
(同循環器内科) 森久健二・上村孝史・
永吉靖央・杉山正悟・小川久雄
症例は56歳の男性.上室性頻拍の加療目的で当科
へ入院となった.電気生理学的検査の結果,僧房
弁側壁側の副伝導路を介する房室リエントリー性
頻拍が誘発され,副伝導路をブロックした後,再
度,頻拍の誘発を試みたところ,別の上室性頻拍
が誘発された.検査の結果,頻拍はfast-slow型房
室結節リエントリー性頻拍(FS-AVNRT)と診断
した.最早期心房興奮部位(EAAS)は左房の中
隔側に認められ,同部へ通電を行ったところ頻
拍は停止した.その後も3種のFS-AVNRTが誘発
され,EAASはそれぞれ右房の冠状静脈洞入口部
(CSOS)の下方,その上方,CSOSであった.今回,
我々は複数のslow pathwayを有するFS-AVNRTを
合併した房室リエントリー性頻拍の一例を経験し
たので報告する.
くまもと県民交流館パレア(2008 年 12 月) 1007
43) 大動脈弓部置換術後心不全を呈したVPC
頻 発 に 対 しBrockenbrough法 で カ テ ー テ ル ア ブ
レーションを実施した一例
(宗像水光会総合病院循環器科) 岩岡千絵・
檜田 悟・吉武清伸
46) 低位心房中隔ペーシングの初期植込み手術
成績と心電図学的特徴
(産業医科大学循環器・腎臓内科)
河野律子・安部治彦・近藤承一・長友敏寿・
尾辻 豊
症例は71歳女性.平成16年大動脈弓部置換術,
CABG,僧帽弁形成術を施行され,当院心臓血
管外科に通院していた.平成20年5月頃より心
不全出現し,当科で精査加療を行った.入院時
VPC二段脈を認め,ホルター心電図にてVPCを
30000/day程 度 認 め た. 利 尿 剤 投 与 で 心 不 全 改
善後もVPCは頻発した.心機能モニタリングを
行い,VPC頻発時での心拍出量の低下を確認し
た.心不全根治療法としてVPCに対するアブレー
ションを行った.全大動脈弓部置換術後のため,
Brockenbrough法を用いて左心室にアプローチ
し,CARTOを用いてmappingを行った.側壁に
起源を同定後,焼灼し成功した.その後アブレー
ション前と同じfocusのVPCは消失し,心不全は
再発なく良好に経過している.
【背景】発作性心房細動の予防や停止効果の有効
性に,低位心房中隔(LAS)ペーシングが注目さ
れている.
【目的】LASリード留置における心電図
学的特徴(P波の極性)と当科における初期植込
み手術成績について検討することを目的とした.
【対象・方法】2007年6月から新規ペースメーカ
植込み患者70名の内,LASペーシングを施行した
28名(洞不全症候群21名,房室ブロック7名;男
性9名)を対象とした.術後12誘導心電図と胸部
X-p撮影(正面,側面)で心房リード留置部位とP
波の極性を検討した.【結果】術後早期のdislodge
を2例に認める以外に合併症は認めなかった.
LASペーシング時のP波の極性は,II・III・aVf・
V6で非陽性であった.【結論】LASリード留置は,
比較的簡便に行えるが,リードdislodgeは決して
稀な合併症ではないことが判明した.
44) DorおよびMaze手術後も上室性不整脈を
契機に心不全を繰り返した症例
(九州大学病院ハートセンター循環器内科)
藤野剛雄・的場哲哉・向井 靖・多田英生・
竹本真生・江島健一・肥後太基・西坂麻里・
井上修二朗・井手友美・戸高浩司
(福岡赤十字病院循環器科) 山本光孝・
稲生哲治
(九州大学病院ハートセンター循環器内科)
樗木晶子・砂川賢二
47) 非弁膜性心房細動患者の脳梗塞発症前の抗
凝固療法の現状
(嶋田病院循環器科) 富田英春
症例は71歳女性.2004年の広範前壁心筋梗塞後の
慢性心不全,虚血性僧帽弁閉鎖不全症,慢性心房
細動に対し,2006年にDorおよびMaze手術,2007
年にMVRを施行.また慢性腎不全,腎性貧血を
合併していた.2008年4月,発作性心房粗動に伴
い心不全が増悪し,前医でカテコラミンから離脱
出来ずに当院に転院搬送された.薬物療法で心不
全コントロールに成功し6月に一時退院したが,
退院後に上室性不整脈および心室頻拍に伴い心不
全が増悪し緊急再入院となった.IABP,CHDF,
一時ペーシングで心不全治療後,徐脈頻脈症候群
に対し,上室性不整脈に対するカテーテルアブレ
ーションとCRT-D植え込み術を施行した.その
後,心房ペーシング下にβ遮断薬とアミオダロン
を導入し,安定した状態で退院することが出来た.
45) 縦隔腫瘍の左房圧迫により心房細動が頻発
した一症例
(済生会熊本病院心臓血管センター循環器内科)
鈴山寛人・古山准二郎・本田俊弘・田山信至・
中尾浩一
後縦隔腫瘍による左房,肺静脈圧迫が心房細動増
悪を来たした症例を経験した.【症例】57歳男性.
心 房 細 動 発 作 を 繰 り 返 す た め,Disopiramide,
Cibenzoline,Propafenone,Pilsicainideなど複数
のIa,Ic群抗不整脈薬の投与を受けたが,全てに
抵抗性であった.高周波カテーテルアブレーショ
ンを考慮し,術前心臓3D-CTを行ったところ,偶
然に左房天井から上肺静脈を圧排する食道粘膜下
起源後縦隔腫瘍が認められたため,縦隔鏡補助下
腫瘍摘出術を施行した.術後心房細動発作は著減
し,さらにカテーテルアブレーションを行い(肺
静脈隔離),心房細動は消失した.腫瘍による左
右上肺静脈,および左房への圧迫による直接刺激
が心房細動増悪に関与していたと思われた.
1008 第 105 回九州地方会
【目的】非弁膜性心房細動(NVAF)患者に対す
る心原性脳塞栓の発症予防へのワルファリン
(WF)の有効性は確立されているが,臨床での
使用は限られている.脳梗塞を発症したNVAF症
例の発症前の抗凝固療法の実態を調査した.【方
法】平成18年1月から2年間に当院に入院した脳
梗塞患者136例中NVAF38例について,発症前の
抗凝固療法の実態を調査した.【結果】38例中入
院前に心房細動と診断されていた症例(既知例)
は23例(60%)で,うちWF服用が11例(既知例
の48%),うち入院時のPT-INRが治療域であった
のはわずか4例(全体の10%)であった.対象例
の平均CHADS2スコアは2.2で0点は1例のみで
あった.【総括】NVAFからの心原性脳塞栓の発
症予防には,抗凝固療法の更なる啓蒙と患者のス
クリーニングが重要である.
48) 当院におけるたこつぼ型心筋症患者の検討
(白十字会佐世保中央病院循環器科)
武藤成紀・内田雄三・木崎嘉久
(長崎国際大学) 矢野捷介
当院に2002年7月∼2008年1月に入院し,たこつ
ぼ型心筋症と診断されたのべ16例(男性3例,女
性11例)について検討を行った.発症平均年齢は
70.9歳,明らかな誘因があったものは16例中8例
(うち家族の死亡など精神的ストレスによるもの
が7例,手術を契機に発症したものが1例),再
発は2例であった.また,既往として高血圧は14
人中5例,高脂血症既往は14人中8例であった.
左室造影での壁運動箇所はseg.3が最も多く15例,
seg.4が10例,seg.2が9例,seg.4が1例で,平均
EFは60%であった.心エコー図検査では入院時
LVEFは55%,1年以内に壁運動異常改善が1例,
一部壁運動低下残存が6例,改善不良が1例で,
平均EFは61%であった.平均22か月の経過観察
を行ったが,死亡例は認めなかった.以上の所見
を基に,文献的考察を加えて検討する.
49) たこつぼ型心筋症の発症にアミノフィリン
投与が関与したと考えられる2例
(済生会福岡総合病院循環器科)
山崎あゆむ・中村 亮・仲野泰啓・大坂薫平・
守谷知香・夏秋政浩・光武ちはる・柳大三郎・
野副純世・瀬戸 拓・沼口宏太郎・岡部眞典・
山本雄祐
【症例1】76歳男性.発熱と軽度呼吸苦があり,
抗生剤とアミノフィリン250mgの連日点滴投与で
一時改善したが,4日目に急激な呼吸苦の増悪を
認めた.心電図上V1∼V4でST上昇を認め,心エ
コー上心尖部の無収縮を認めた.冠動脈に有意狭
窄はなかった.【症例2】78歳女性.微熱・夜間
喘鳴のためアミノフィリン500mgの連日点滴投与
をされていたが,3日目に心室頻拍が出現した.
心エコー上心尖部の無収縮と心基部の過収縮を認
めた.2例ともに2週間後の心エコーで著明な壁
運動の改善を認めた.Tl/BMIPP心筋シンチグラ
フィでは心尖部に限局したミスマッチを認め,た
こつぼ型心筋症と診断した.また,アミノフィリ
ン血中濃度はともに高値であった.たこつぼ型心
筋症の発症にアミノフィリン過剰投与による交感
神経活性化が関与したと考えられた.
50) 褐色細胞腫術後に逆たこつぼ型心筋症が遷
延した1例
(九州中央病院循環器内科) 梶原正貴・
鬼木秀幸・冨永光裕・古賀智子・河野 修・
大森 将
褐色細胞腫は内因性カテコラミンの増加により心
筋障害が生じ,カテコラミン心筋症を併発するこ
とがあることは知られている.今回,褐色細胞腫
術後に逆たこつぼ型心筋症が遷延している1例を
経験したので報告する.症例は62歳女性.平成16
年に後腹膜腫瘍を指摘され,その際にびまん性の
壁運動低下,左室機能低下を認めた.心臓カテー
テル検査では冠動脈に有意狭窄なかった.平成17
年に後腹膜腫瘍摘出術行い,病理組織から褐色細
胞腫と診断された.その後褐色細胞腫の再発を認
めないが,心拡大改善せず,平成20年3月に心臓
カテーテル検査施行し,冠動脈に有意狭窄はな
いが,逆たこつぼ型心筋症の壁運動異常を認め,
ForresterIIIであった.
51) βブロッカーの効果が認められた多発性心
室性期外収縮を合併した孤立性左室心筋緻密化障
害(INVM)の一例
(友愛会豊見城中央病院循環器内科)
玉城正弘・新城哲治・新崎 修・嘉数真教・
嘉数 朗・真栄平直也・大庭景介・嘉数 敦
【症例】35歳,女性【はじめに】INVMは予後不
良の先天性心筋疾患とされてきた.多発性心室性
期外収縮を合併したINVMにβブロッカーが著効
し7年間臨床経過観察できている症例を報告す
る.【経過】小学生の頃に不整脈を指摘されたこ
とがあったが,胸部症状はこれまでなかった.29
歳に尿路感染症で入院時に心室性期外収縮を認
め,心エコーで心機能低下,心尖部の菲薄化と肉
柱形成の発達,ホルター心電図で総心拍の20%を
占める心室性期外収縮を認めた.心臓カテーテル
検査では冠動脈には有意な所見はなかったが,軽
度の左室の全体的な壁運動能低下(EF47%)を
認め,INVMと診断した.βブロッカーのビソプ
ロロールを処方し,心室性期外収縮は著減(1日
に25拍以下)し,7年間を経た現在も同様な状態
を保っている.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
52) 意識消失発作を契機に診断された心アミロ
イドーシスの一例
(福岡大学心臓・血管内科学) 齊藤尚子・
小川正浩・小吉里枝・高嶋英夫・山口善央・
藤見幹太・森戸夏美・松本直通・朔啓二郎
(白十字病院循環器科) 中山 秀・白井和之
症例は71歳男性.持続性心室頻拍による意識消失
発作のため近医で心肺蘇生を施行され,精査加療
目的で当科に入院した.冠動脈造影では有意狭窄
を認めなかったが,心エコーでは左室流出路圧較
差(PG39mmHg),拡張能障害を伴うびまん性左
室肥大とgranular sparkling signを認めた.また
消化管生検からALアミロイドーシスが,骨髄生
検から多発性骨髄腫が診断され,心アミロイドー
シスを診断した.心室頻拍に対してアミオダロン
の内服を開始し始めると共に植え込み型除細動器
(ICD)を移植した.ICDにより,左室流出路障
害に対しては房室順次ペーシングを施行し圧較差
の低下と心不全の自覚症状の改善が認められ,時
に発生する心室頻拍に対しても有効に作動した.
53) 少量のサイアザイド系利尿薬併用によりボ
リュームコントロールが可能となった重症心不全
の一例
(琉球大学循環系総合内科学) 當間裕一郎・
奥村耕一郎・大城克彦・新里朋子・
仲本みのり・伊敷哲也・神山朝政・大屋祐輔・
瀧下修一
症例は68歳男性.平成4年拡張型心筋症と診断さ
れ,平成19年5月には両室ペーシング埋め込みを
施行.退院後体重は1ヶ月間で51.2kgから57.1kg
と6kg増加し心不全の増悪のため,6月下旬再
度入院となった.入院時心エコーでLVEFは25%,
BNP1349pg/ml.利尿薬はすでにフロセミド,ス
ピロノラクトン,トラセミドを内服しており,フ
ロセミドを静注に切り替え,7月上旬には53∼
54kg台となったがそれ以上の減量は困難であり,
9月下旬にインダパミド1mgを併用した.10月
上旬には体重は50kg台まで低下し胸水も改善さ
れ,BNPは400pg/ml台まで改善した.低Na血症
のためインダパミドを0.5mgに減量したが,同量
で症状は安定している.本症例より,ボリューム
コントロール困難な重症心不全においてインダパ
ミドの併用が少量でも有効な場合があることを示
唆する.
54) 帝王切開直後に急性心不全を発症した産褥
期心筋症の一例
(産業医科大学循環器・腎臓内科)
松尾美希・春木伸彦・田中正哉・竹内正明・
中井博美・大谷恭子・加来京子・芳谷英俊・
尾辻 豊
症例は30歳女性.過去に心疾患の既往は無かっ
た.今回は双胎妊娠経過中であったが,妊娠33週
目より,蛋白尿,下腿浮腫,体重増加を認め,妊
娠中毒症と診断されていた.妊娠37週目に予定帝
王切開分娩にて2児を娩出した.出産3時間後よ
り,突然呼吸困難が出現し,胸部X線写真にて肺
うっ血を認めたため急性心不全の疑いにて当院救
急搬送となった.搬送時,著明な低酸素血症を認
め,心エコー図検査では,軽度の心拡大とびまん
性の左室壁運動低下(LVEF28%)および全周性
の心嚢液貯留を認めた.心不全は薬物治療により
改善し,経過とともに心機能は若干の改善を認め
た.一連の経過から産褥期心筋症による急性心不
全と考えられた.今回,心エコー図検査にて経時
的な心機能の改善を観察し得た一例を経験したの
で,文献的考察を加えて報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
55) 当院にて過去5年間に経験した劇症型心筋
炎の検討
(北九州市立八幡病院循環器科) 大江学治・
剱 卓夫・岩瀧麻衣・樫山国宣・原田 敬・
太崎博美
急性心筋炎は,時に劇症化して血行動態の破綻を
きたし,不幸な転帰をとる.今回,当院にて過去
5年で経験した激症型心筋炎6例を検討した.平
成15年より現在まで,心不全や不整脈症状を呈し,
心エコーや臨床経過および生検から激症型心筋炎
と診断しえた症例は6例(男3例,女3例)であ
った.受診動機は消化器症状や胸部症状が主であ
ったが,心肺停止で来院した症例もあった.一部
の症例は診断されるまで複数の医療機関を受診し
ていた.血行動態が不安定でPCPSを導入したも
のは5例で,2例は死亡したが,その他は後遺症
を残すことなく回復した.各症例の臨床経過の検
討とともに,特に診断やPCPS導入時期決定に関
し若干の文献的考察を加え報告する.
56) ドキソルビシン+トラスツズマブ併用化学
療法中に完全房室ブロックを発症した薬剤性心筋
障害の一例
(大分県済生会日田病院心臓血管内科)
横井加奈子・原口 剛・嶋田寿文・大坪 仁
症例は44歳女性.H19/11月に右乳癌T1N2M0に
対し乳房温存術+腋窩リンパ節郭清術施行した.
術後に化学療法(AC療法)を4クール(ドキソ
ルビシン累積投与量234mg/m2)+トラスツズマ
ブ併用療法を2クール(累積投与量491mg/m2)
施行した.化学療法前の心精査では異常は認め
なかったがその直後より倦怠感出現あり当院受
診.心電図にてHR36/min完全房室ブロックを認
めた.原因検索を行ったが最終的に化学療法によ
る完全房室ブロックと診断し永久ペースメーカー
植え込み術施行した.化学療法の慢性早期に完全
房室ブロックを初発症状として発症した薬剤性心
筋障害の報告は稀であり,この症例は心機能障害
の発症リスクが低いドキソルビシン累積投与量
400mg/m2未満でトラスツズマブ併用にて惹起さ
れた完全房室ブロックと考えられ文献的考察を含
めて報告する.
57) CT評価が有効であった不整脈原性右室心
筋症の2例
(熊本大学附属病院循環器内科) 花谷信介・
黒川博文・上村孝史・大庭圭介・坂本憲治・
永吉靖央
(熊本大学医学部附属病院心血管治療先端医療寄付講座)
掃本誠治・角田 等・中村 淳
(熊本大学附属病院循環器内科) 杉山正悟
(熊本大学医学部附属病院不整脈先端医療寄付講座)
山部浩茂
(熊本大学附属病院循環器内科) 小川久雄
心筋脂肪変性は不整脈原性右室心筋症に特徴的な所見
である.我々は心筋症の診断にCTでの心筋脂肪変性
評価が非常に有効であった症例を経験したので報告す
る.
【症例1】75歳男性.冠攣縮性狭心症の診断で当
科外来フォロー中の患者.持続性心室頻拍のため当科
緊急搬送となった.当初冠攣縮発作を契機とした心室
頻拍と考えていたが,以前から認められていた心室瘤
の精査を進めたところCTにて心室筋の広範な脂肪変
性が認められ,不整脈原性右室心筋症との診断に至っ
た.
【 症 例 2】57歳 男 性.CABG後,LMTへ のPCI後
にて当科外来フォロー中の患者.特発性心室頻拍の診
断にてICD植え込みを行われていたが,慢性期にペー
スメーカー不全にて緊急入院となり,その際に行っ
た心臓造影CTにて右室前面に著明な脂肪変性を認め,
不整脈原性右室心筋症の診断に至った.
58) ANCA陽性で多数の感染性動脈瘤を合併し
た感染性心内膜炎一例
(鹿児島大学消化器疾患生活習慣病学)
中島千鶴・東福勝徳・網屋 俊・早川 裕・
佐多直幸・河野智紀・浜田直和・福岡嘉弘・
田上和幸・塗木徳人・坪内博仁
30歳女性.2008年1月より遷延する発熱と皮疹を
主訴に2月21日当院受診し,尿蛋白陽性,尿潜血
陽性,CRP6.11,ANCA陽性を認め,血管炎症候
群疑いで3月3日入院となった.心エコーで僧帽
弁にゆう贅,血液培養でstreptcoccus oralis認め,
感染性心内膜炎と診断した.抗生剤開始した10日
後に左側腹部痛が出現したため,CT施行したと
ころ左腎梗塞,左腎動脈瘤(径7mm)の所見認
めた.その10日後に再び左腰部痛認め,CTにて
腎動脈瘤の増大(径17mm)を認めたため,同日
コイル塞栓術施行.同時に左深大腿動脈瘤(径
20mm),右下殿動脈瘤(径6mm)を認めた.抗
生剤治療にて感染症コントロール後,僧帽弁形
成術施行.炎症の改善と共にMPO-ANCA,PR3ANCAも陰性化した.ANCA陽性で多数の感染性
動脈瘤を合併した稀な感染性心内膜炎の一例を経
験したので報告する.
59) 急性心筋梗塞を合併した感染性心内膜炎の
2症例
(久留米大学心臓・血管内科部門)
徳永泰行・香月与志夫・上田集宣・
佐々木健一郎・横山晋二・金谷誠司・
甲斐久史・上野高史
(同高度救命救急センター) 新山修平
(同心臓・血管内科部門) 今泉 勉
【症例1】慢性関節リウマチ,骨髄異形成症候群
の診断で加療中の61歳男性が敗血症性ショックを
発症し当院救命センター搬入.経過中にMRSA感
染性心内膜炎(IE)を合併し,その後に急性心筋
梗塞(AMI)を発症.緊急冠動脈造影(CAG)に
て左冠動脈に閉塞を認め吸引を行った.吸引物の
病理組織はvegetationであった.
【症例2】糖尿病
性腎症による腎不全で維持透析中の78歳女性が
MRSA敗血症を発症し当院救命センター搬入.透
析中にAMIによる心原性ショックを来たし緊急
CAGを施行.右冠動脈の閉塞とvalsalva洞付近の
感染性動脈瘤の破裂を認めた.いずれも冠血流の
再開後,加療継続されたが多臓器不全で他界され
た.感染性心内膜炎による急性心筋梗塞を発症し
たまれな2症例であり,文献的考察も含め報告す
る.
60) 大腸癌に合併したStreptcoccus bovisによ
る感染性心内膜炎の一例
(宮崎大学第一内科) 橋場弥生・
戸井田玲子・川本理一朗・名越康子・
井手口武史・川越純志・鬼塚久充・鶴田敏博・
伊達晴彦・今村卓郎
(同第二内科) 矢野光洋・関屋 亮・
鬼塚敏男
(同第一内科) 北村和雄
症例は60歳男性.高熱が持続するため近医で抗生
剤投与を受けたが改善せず,不明熱の精査目的で
当科に紹介入院.心臓超音波検査にて大動脈弁に
疣贅を伴う中等度の閉鎖不全を認めた.血液培養
にてStreptococcus bovis(S.bovis)が検出され,
感染性心内膜炎と診断した.S.bovisによる感染
性心内膜炎には消化管病変を合併する症例あるこ
とより,消化管の検索を行った.大腸内視鏡にて
出血を伴うS状結腸癌を認めたため,同病変に対
して内視鏡的粘膜切除術を施行した.病理検査に
て追加切除が必要な状態であったが,大動脈弁閉
鎖不全が進行したため大動脈弁置換術を施行した
後にS状結腸切除術を追加した.S状結腸癌を感
染源としたS.bovisによる感染性心内膜炎の一例
を経験したので報告する.
くまもと県民交流館パレア(2008 年 12 月) 1009
61) 感染性心内膜炎に合併したValsalva洞仮性
動脈瘤の一例
(九州大学病院病態修復内科学) 仲村尚崇・
藤原昌彦・辛島詠士・平松伸一・小田代敬太・
丸山 徹・赤司浩一
(九州大学循環器外科) 富永隆治・
田ノ上禎久
症例は62歳男性.主訴は繰り返す発熱.血液培養
にてstreptococcus oralisを検出.心エコーで大動
脈弁に径13mmのvegetationと大動脈弁逆流を認
め,感染性心内膜炎と診断した.経食道エコーで
は右冠尖と左冠尖の癒合と,同部位にvegetation
の 付 着 を 認 め た. ま た 冠 動 脈CTに て 左 冠 尖 の
Valsalva洞に径12mmの仮性動脈瘤を認め,エコ
ーでも確認し得た.感染性心内膜炎に脳動脈瘤を
合併する報告は多いが,Valsalva洞仮性動脈瘤を
合併する報告は少ないため,若干の文献的考察を
加え報告する.
62) 中咽頭癌により失神を繰り返しShy‒Drager
症候群との鑑別に苦慮した1例
(長崎大学循環病態制御内科学)
酒井亜輝子・芦澤直人・小出優史・瀬戸信二・
前村浩二
失神発作の原因として,悪性腫瘍によるものは循
環器領域においては極めてまれであるが,今回そ
の一例を経験したので報告する.症例は76歳男性,
平成20年3月より失神発作を繰り返すようにな
り,精査目的で当科紹介となる.当初,著明な自
律神経症状(発汗)・小腦症状より多系統萎縮症
(Shy-Drager症候群)が疑われた.しかし,入院
経過中に頸部・舌の急激な腫脹と気道狭窄の進行
を認め,中咽頭癌と診断された.頻回の失神発作
は,食後や排尿後に多く,洞性徐脈と低血圧を伴
っていた.気管切開後,耳鼻咽喉科・放射線科に
て化学・放射線療法を開始.StageIVであり根治
は困難であったが,失神発作の頻度は著明に減少
した.経過より,悪性腫瘍の浸潤または圧排によ
るCarotid sinus syncopeま た はGlossopharyngeal
neuralgiaと考えられた.
63) 著明な低体温により心電図上急性心筋梗塞
に類似した所見を呈した一例
(新日鐵八幡記念病院循環器科) 村上 昇・
矢成亮介・石原嗣郎・加世田繁・藤島慎一郎・
古賀徳之
(同内科) 川副信行・佐渡島省三
61歳男性.大酒家であり,2型糖尿病あるが,未
治療であった.11月昏睡状態で発見され,当院救
急搬送された.心電図にて胸部誘導のST上昇が
あったが,心エコーでは左室壁運動の低下はなく,
急性心筋梗塞は否定的であった.洞性徐脈,筋電
図の混入,J点上昇およびQT時間0.64secと延長し
ており,深部体温27℃と高度低体温であったこと
から,低体温に伴う心電図変化と考えた.1時間
に1℃のペースで復温を行い,心室細動の出現な
く,35℃まで復温した際の心電図ではJ点は低下,
QT時間も0.40secまで改善した.その後,全身管
理を行い,43病日に自宅退院となった.一般に28
℃以下では,心室細動を起こしやすく,死亡率は
50∼80%にも及ぶといわれるが,本症例は高度低
体温でも救命しえた症例である.
1010 第 105 回九州地方会
64) 左心補助装置(LVAS)装着下での心臓移
植待機期間4年1ヶ月,本院3例目の心臓移植の
一症例
(九州大学病院心臓血管外科) 牛島智基・
徳永滋彦・富田幸裕・田ノ上禎久・坂本和生・
神尾明君・前田武俊・馬場啓徳・恩塚龍士・
小田晋一郎・清水一郎・大石恭久・中島淳博・
塩川祐一
(同病態修復内科) 下野信行
(佐賀大学胸部心臓血管外科) 森田茂樹
(九州大学病院心臓血管外科) 富永隆治
症例は57歳男性.心臓原疾患は虚血性心疾患.他院
で冠動脈バイパス術・Dor手術施行後,コントロール
不良の低心拍出量症候群と難治性心室頻拍となった.
IABP挿入下で当院へ緊急搬送され,2004年4月(53
歳時)にLVASを装着した.待機中に装置内血栓形成
を繰り返し,計7回の装置交換を行った.2007年9
月,MRSA敗血症を併発し,以後,感染コントロール
のために移植まで抗MRSA薬の継続投与を余儀なくさ
れた.LVAS装着より4年1ヶ月後に心臓移植を施行
した.感染巣を掻爬・洗浄し,
一期的に閉鎖した.術後,
感染の再燃なく経過し,術後61日で退院した.LVAS
装着下での感染症合併はほぼ必発であり,予後を左右
する最大の因子である.今回,積極的な感染コントロ
ールを行ったことで心臓移植を成功し得た,本院3例
目の心臓移植について報告する.
65) インターフェロン治療後に発症した肺血管
性肺高血圧症に対しシルデナフィルが著効した1例
(聖マリア病院循環器内科) 大江健介・
山脇 徹・田代英樹
症例は48歳女性で慢性C型肝炎にてインターフ
ェロン(IFN)治療中であった.半年前より労作
時の息切れが出現し,増悪したため当科受診し
た.心エコーで著明な肺高血圧を認め当科入院と
なった.入院後の右心カテにて平均肺動脈圧は
40mmHg,肺血管抵抗は976dynes・sec・cm−5であ
った.肺血管性肺高血圧症と診断し,シルデナフ
ィルの内服を開始した.投与2週間で平均肺動脈
圧は22mmHgに低下し,6分間歩行試験は225m
から470mと著明な改善を認めた.本症例は肝硬
変や門脈圧亢進症は合併しておらずIFN治療の副
作用による肺血管性肺高血圧症である可能性が
考えられた.これは比較的稀な副作用でありIFN
中止後も不可逆とされているが,本症例では圧所
見・自覚症状の改善にシルデナフィルが非常に有
効であった.
66) AIと血圧変動の検討:早朝AIおよび経口ブ
ドウ糖負荷に対する反応について
(日本赤十字社長崎原爆病院) 品川達夫
(長崎市立市民病院) 鈴木 伸
(日本赤十字社長崎原爆病院) 神田宗徳
ASCOT試験より,中心動脈圧の降圧が注目され
る.早朝ならびに糖負荷後のAIの評価を行った.
【対象と方法】測定は朝食ならびに服薬なしで受
診した対象に,早朝空腹時および75gブドウ糖経
口負荷2時間後の安静座位の血圧,脈拍および
AIを測定した.【結果】早朝空腹時のAIは,男性,
高血圧91.4±15.7,正常血圧85.8±12.0,女性,高
血圧94.2±11.3,正常血圧89.6±11.4であり,とも
に高血圧群で高値であった.女性が男性より高か
った.ブドウ糖負荷前後のAIの比較では,ブド
ウ糖負荷後2時間で各群とも有意に早朝空腹時よ
り低下した.ブドウ糖負荷2時間後のAIは,女
性が男性より高かった.【考察】早朝高血圧にお
いてAIの高値を認めたことは,今後早朝空腹時
AI値が早朝血圧とともに心臓および血管負荷の
評価の指標として有用である可能性が示唆され
る.
67) Cyclophosphamide誘導性免疫寛容系の敗
血症モデルにおける寛容誘導阻害効果の検討
(九州大学循環器外科) 恩塚龍士・
富田幸裕・神尾明君・前田武俊・馬場啓徳・
清水一郎・富永隆治
心臓移植医療の問題点である免疫抑制剤の使用と
慢性拒絶反応を克服するため,教室ではCyclophosphamide(CP)免疫寛容系を考案研究してき
た.マウスに同種脾細胞(SC)投与後,200mg/kg
のCP投与の処置により,移植片に対する免疫寛
容とキメリズムが誘導される.ウイルス感染や敗
血症等の病態は,移植臓器の拒絶を促進する可能
性がある.今回,CP誘導性免疫寛容系において,
寛容誘導初期または寛容誘導後にLPSを投与して
敗血症モデルを作成し移植片生着を検討した.
LPS投与時期に関わらず約40-60%の皮膚移植片が
慢性拒絶された.慢性拒絶が観察されたレシピエ
ントではキメリズムの低下が確認された.キメリ
ズムを阻害する免疫調節機序に,LPS受容体を介
する経路が関与することが示唆された.
68) もやもや病 合併の左主幹部及び2枝病
変のAMIに対しハイブリッド治療を施行し,良好
な結果を得た1症例
(済生会熊本病院心臓血管外科) 久米悠太・
三隅寛恭・萩原正一郎・上杉英之・出田一郎・
佐々利明・森元博信・平山統一
症例は60歳男性.20代から意識消失発作の既往が
あり,もやもや病と診断された.42歳時には脳梗
塞による視野狭窄を発症.平成17年5月RCA病変
さらに,平成19年12月にはLAD病変によるACSに
対し,Cypher stentを留置.H20年5月にAMI発
症. 緊 急CAG施 行 し,LMT:90%,LAD#6:90%,
LCX#11:90%が 確 認 さ れ,CABG方 針 と な っ た.
しかし,両側内頸動脈閉塞と もやもや病 が確
認され,術中のわずかな血圧低下でも脳合併症は
必至とされた.このため,LADのみにOPCABを
施行し,LCXにPCIを施行するハイブリッド治療
を選択した.手術経過良好で,周術期の脳合併症
を起こすことなく順調に経過し,術後14日目に転
院となった.若干の文献的考察を加え,報告する.
69) クロピドグレル投与下でのOff Pump CABG
(小倉記念病院心臓血管外科) 曽我欣治・
羽生道弥・野本卓也・新井善雄・中野穣太・
松尾武彦・瀧本真也・川東正英・桑内慎太郎
心臓手術では出血のリスク軽減のために抗血小板
剤は術前に中止する.DES留置例ではステント血
栓症予防目的にチクロピジンやクロピドグレルが
投与されており,当科では術2週間前から中止し
ヘパリン静注に切り替えて手術に臨んでいるが,
最近休薬せず投与下でのOPCABを2例経験した
ので報告する.【症例1】57歳,女性.TAXUS留
置後ヘパリン起因性血小板減少症を疑われヘパリ
ンに切り替えられず手術となる.BITA,SVGに
て6箇所吻合.内視鏡的SVG採取部からの出血が
多く術中出血840g,心嚢内の止血に難渋せず終
了.術後24時間ドレーン排液量160ml.【症例2】
59歳,女性.Cypher留置後再狭窄に対しLITAを
用い1箇所吻合.術中出血10g.止血に難渋せず
終了.術後ドレーン排液量160ml.クロピドグレ
ル投与下でもOPCABで止血に難渋しなかった.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
70) 頚動脈病変を有する症例に対する心拍動下
冠動脈バイパス術(OPCAB)
(佐賀大学胸部・心臓血管外科) 野口 亮・
古川浩二郎・吉武秀一郎・佐藤 久・
片山雄二・岡崎幸生
73) OMI・LV dysfunctionに冠動脈バイパス術・
左室形成術が著効した1例
(久留米大学外科) 植田知宏・森 龍祐・
手嶋英樹・赤須晃治・友枝 博・千原新吾・
有永康一・福永周司・青柳成明
76) 著明な左室拡大(LVDd93mm)を呈した連
合弁膜症に対し二弁置換術,CRT-Dを施行後劇的
に左室が縮小した1例
(熊本赤十字病院心臓血管外科) 大幸俊司・
鈴木龍介・渡邉俊明・佐多荘司郎・小柳俊哉
近年頚動脈病変を有する患者の冠動脈バイパス術
は増加傾向であるが,その治療戦略は未だ議論の
残る分野である.当院では開心術症例全例に頚動
脈病変の検索を行い必要に応じ脳血流シンチを追
加して脳血管障害のリスク評価と治療方針決定を
行なっている.頚動脈病変を有する症例に対して
冠動脈血行再建を頚動脈病変の治療より原則的に
先行させOPCABを施行している.当院では2006
年1月から79例のOPCAB症例を経験し,頚動脈
病変への先行または同時手術を行なった症例はな
いが,周術期にOPCAB手術関連及び頚動脈関連
の脳梗塞発症症例はない.頚動脈病変を有する症
例への冠動脈血行再建について当院の短期成績等
につき文献的考察を加えて御報告する.
症例は49歳男性.糖尿病内服加療中に心不全を
発 症 し た. 心 不 全 加 療 後 の 心 精 査 でLMT+ 3
VD,LV aneurysm,LV dysfunctionを認めた.こ
の症例に対してCABG×4,乳頭筋接合術,LV
overlappingを行った.術後は心不全を発症する
ことなく経過良好である.特に左室径は術後6ヶ
月で著明に縮小し(67/54mm→51/34mm),左室
容積(LVEDV/ESV)は231/141→67/33と術後6
ヶ月で著しい改善を認めた.【考察】本症例は血
行再建およびscar部分の心筋をexcludeしたこと
で,心機能が改善したと考えられる.当院で行っ
た同様の手術後経過と比較しても左室径は著明に
改善している.本症例は術前の心筋viability評価
を行っていなかったが,今後は左室形成を行う症
例に対しては不可欠になると考えられた.
症例は32歳,男性.7歳時にARを指摘され通院
していたが,17歳時より放置.平成19年7月に突
然心停止を来し,救急車で搬送中VFを認めAED
施行され前医へ入院した.重度のAR,MRと診断,
心エコー上EFは41%,LVDdは93mmと著明な左
室拡大を認めた.手術は機械弁による二弁置換
術を施行した.術後LVDd70mmと縮小するもEF
は33%と低下しており,エコー上dyssynchrony,
心電図で左脚ブロック認め,またVfの既往もある
ため術後2週間目にCRT-Dを挿入した.術後経
過は良好で術後3週間で退院した.以後外来で
経過観察し術後,1年後とLVDdは69.2,51mm.
EFは34,63%と劇的に左室は縮小し,心機能も
改善した.貴重な症例を経験したので報告する.
71) SPY imaging systemを用いたCABG術中の
グラフト評価の有用性
(宮崎市郡医師会病院心臓血管外科)
小林 豊・福島靖典・早瀬崇洋・児嶋一司・
遠藤穣治
74) 大動脈弁狭窄症による心原性ショックに経
皮的大動脈弁形成術が有効であった1例
(仁愛会浦添総合病院循環器センター)
田村謙次・小村泰雄・大城康一・梅原英太郎・
大塚敏之・相澤直輝・木村朋生
77) 僧帽弁形成術施行症例の検討
(琉球大学機能制御外科学) 新垣勝也・
前田達也・喜瀬勇也・兼城達也・稲福 斉・
盛島裕次・山城 聡・國吉幸男
冠動脈バイパス術中のグラフトの確認は有用であ
るが,方法論を含め未解決な問題が多い.当科で
はSPY imaging systemを用いて術中のグラフト造
影を行い,その有用性について検討した.対象は
2007年11月から2008年7月までに当科で施行した
冠動脈バイパス術25例である.術中造影は内胸動
脈,橈骨動脈,大伏在静脈のすべてのグラフトで
可能であった.術中にリアルタイムにバイパスグ
ラフトの開存およびその吻合形状を確認すること
が可能であり,また,術後のインフォームドコン
セントにも有用であった.今後応用が広がる装置
と思われた.
症例は80歳男性で大動脈弁狭窄症によるうっ血性
心不全にて入院となった.経胸壁心エコーでの
圧較差は80mmHgであった.入院後,徐々に血圧
低下しショックとなり,IABP挿入するも改善せ
ず,外科的治療は難しい状況であった.家族の同
意あり,経皮的大動脈弁形成術を施行すること
となった.逆行性に大動脈弁をワイヤーで越え,
4,6,8mmのバルーンで徐々に拡張した.圧較
差が30mmHgまで改善し,ショック,心不全から
回復できた.高齢者における大動脈弁狭窄症の外
科的治療は全身状態,周術期のリスクもあり選択
できないことも多い.限られた状況では経皮的大
動脈弁拡張術が有効性を示す報告もある.今回,
高齢,ショックのため外科的手術に高リスクであ
った症例において経皮的大動脈弁拡張術が有効で
あった症例を経験したので報告する.
72) 当科における冠動脈バイパス術の現況と今
後の方針
(宗像水光会総合病院心臓血管外科)
榎本直史・田山慶一郎・河野通孝・小須賀健一
75) 感染性心内膜炎を疑われた交連部離解によ
る急性大動脈弁閉鎖不全症の手術経験
(宮崎県立延岡病院心臓血管外科)
中村栄作・中村都英・石井廣人・児嶋一司・
新名克彦
(同臨床検査科) 石原 明
2005年5月より2008年8月までに当科で施行した
120例のCABGについて検討.平均年齢70.7±9.4
歳,病変枝数2.2±0.7枝,バイパス本数2.1±0.9
本,on pump/arrest 68例,on pump/beating 3例,
off pump 49例.術後挿管時間5.1±5.7時間,ICU
滞在時間23.6±8.7時間.バイパス開存率はLITA,
RITA,RGEAいずれも100%でSVGは88.1%であっ
た.主な術後合併症は脳梗塞1.7%,縦隔炎3.3%,
Paf 22.5%,死亡1例/0.8%で緊急例であった.on
pump/arrest(ON群)とoff pump(OFF群)を比
較した結果,術後挿管時間はOFF群で有意に短か
ったがICU滞在時間に有意差はなく,術後在院日
数はOFF群で有意に短かった.術後合併症はOFF
群では脳梗塞,縦隔炎発生なく,Paf発生に関し
てはOFF群で有意に低かった.手術成績は満足で
きるものであった.現在OPCABを第一選択とし
ている.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
症例は,62歳男性で7月上旬に咳,呼吸苦を主訴
に近医を受診した.胸部レントゲン写真で肺うっ
血があり,心臓超音波にて重症大動脈弁閉鎖不全
症(AR)を認めためARによる心不全と診断され,
外来にて加療された.症状の改善なく7月中旬に
入院となった.入院中,発熱はなかったが血液デ
ータで炎症所見を認め,また急性発症のARであ
ることから感染性心内膜炎(IE)を疑われ7月
下旬に当科紹介入院となった.心臓超音波検査に
て右冠尖,左冠尖間に贅疣様の所見と重度のAR
を認めたため,IE,ARと診断し準緊急的に大動
脈弁置換術を施行した.術中所見では,贅疣等の
感染所見はなく,右冠尖と左冠尖の交連部の離解
を認め,そのための弁機能不全から急性発症した
ARと診断した.稀な交連部離解による急性ARを
経験したので文献的考察を加え報告する.
僧帽弁形成術は標準的な術式のひとつであるが,
その術式についてはまだ多くの議論がある.我々
は最近,弁葉切除を行わない僧帽弁形成術を11例
に行ったので早期成績を含めて報告する.【対象】
2006年4月より弁葉切除を行わない僧帽弁形成術
を施行した症例11例を対象とした.年齢は58±13
歳,男女比は7:4,MRの程度はSellers II°1例,
III°2例,IV°8例であった.MRの原因はAML
prolapseが6例で,PML prolapseが5例であった.
【結果】上記に対し腱索再建を9例に,AML,PML
形成をそれぞれ1例ずつに行った.全例にRingに
よるMAPを行った.全例軽快退院し,退院時のMR
は9例で認めず,2例にI∼II°のMR残存を認め
た.
78) 三尖弁逆流症を伴う重症心不全症例に対す
るエドワーズMC3人工弁輪の有用性
(九州大学心臓血管外科) 坂本和生・
田ノ上禎久・中島淳博・牛島智基・大石恭久・
徳永滋彦・塩川祐一・富田幸裕・富永隆治
心不全患者では左心不全のみではなく右心不全
も患者のQOLを妨げる大きな原因となる.特に,
NYHA3∼4の重症心不全症例では右心不全症状が
顕在化してくる症例も多い.ただし,従来のKay
法やDeVega法等の三尖弁形成術では逆流が残存
もしくは再発する症例も見られる.今回,当科で
はNYHA3∼4の重症心不全5症例において,エド
ワーズMC3人工弁輪を用いて三尖弁形成術を行う
ことにより良好な術後成績を得ることができた.
症例の内訳は拡張型心筋症2例,先天性心疾患2
例,僧帽弁逆流症1例で,いずれの症例も三尖弁
逆流はsevereからtrivialへ改善した.エドワーズ
MC3人工弁輪の有用性について若干の文献的考察
を加えて報告する.
くまもと県民交流館パレア(2008 年 12 月) 1011
79) 僧帽弁形成術後の感染性心内膜炎の1例
(長崎大学医学部歯学部附属病院心臓血管外科)
三浦 崇・江石清行
(春回会井上病院) 山近史郎
(長崎大学医学部歯学部附属病院心臓血管外科)
橋詰浩二・押富 隆・谷口真一郎・橋本 亘・
尾立朋大・松隈誠司・久富一輝
症例は22歳,男性.20歳時に後尖逸脱MRに対し
て,形成術(Resection and sutures in P2,Physio
ring 30mm)を施行.術後1年1ヶ月目に誘因な
く発熱.近医入院時の血液培養でS.epidermidisを
検出した.TTEで前尖基部に7×9mmの疣贅を
認め,IEと診断した.Mrは1度.抗生剤治療開
始も解熱なく,炎症所見は遷延し,疣贅は27×8
mmまで増大した.抗生剤治療開始後27日目に当
科転科,31日目に手術(疣贅切除,Physio ring除
去,弁輪形成)を行った.術直前のWBCは10,100
/μl,CRP1.57mg/dlであった.術後19日目にCRP
は0.50mg/dlとなり,術後6週間の抗生剤治療後
に退院した.術後1年2ヶ月でIE再燃なくMrは
1度である.
80) 術後遠隔期の金属弁機能不全に対し,血栓
溶解療法を施行した1例
(大隅鹿屋病院心臓血管外科) 田中秀弥・
中山義博・大西裕幸・柚木純二
症例は65歳男性.2007年6月にARに対してAVR
(SJM Regent 19mm)を施行.2008年3月から経
胸壁心臓超音波検査で,大動脈−左室圧較差の増
大を認めたため,弁単純X線検査を施行.金属弁
の開放制限を認め,6月に施行した同検査で開放
制限が増悪.ワーファリンコントロール不良であ
ったため,血栓弁を疑い,t-PAによる血栓溶解療
法を施行した.溶解療法施行の約1時間30分後に,
急性心筋梗塞を発症.Seg7,Seg14は完全閉塞し
ており,血栓吸引療法で再灌流した.金属弁の可
動性は改善しており,弁に付着していた血栓が溶
解し,冠動脈に塞栓したと推測された.血栓弁に
対する血栓溶解療法で急性心筋梗塞を合併した報
告は少なく,文献的考察を加えて報告する.
81) 急性循環不全を呈した僧帽弁stuck valveに
対し緊急手術を行った1例
(熊本市立熊本市民病院心臓血管外科)
今坂堅一・小江雅弘
(同小児心臓外科) 藤田 智・帯刀英樹・
深江宏治
66歳,女性.38歳時にAVR+MVR(いずれもBjorkShiley弁,以後B-S弁)施行.54歳と65歳に心原
性脳梗塞を発症している.数日前から全身倦怠感
が出現し,呼吸困難も増強してきたため,近医受
診.透視/心エコーより僧帽弁のstuck valveが診
断され,当院へ緊急搬送された.来院時意識はあ
ったが,ショック状態を呈していたため,挿管お
よびPCPS装着し緊急手術を施行.僧帽弁下にほ
ぼ全周性にpannusが張り出しており,これがB-S
弁の開放を制限していた.PannusおよびB-S弁を
摘出・除去し,SJM 25mmを置換.また三尖弁輪
も拡大していたため,Cosgrove ring 30mmで弁
輪縫縮を行った.人工心肺からの離脱は容易であ
り,PCPSも除去できた.経過良好のため退院し,
現在は当院外来フォロー中である.この疾患に対
して,文献的考察も含めて提示する.
1012 第 105 回九州地方会
82) 僧帽弁位機械弁PVLの診断に難渋した一症例
(久留米大学外科学) 森 龍祐・植田知宏・
手嶋英樹・赤須晃治・友枝 博・千原新吾・
有永康一・福永周司・青柳成明
症例は62歳男性で,1976年にRHD:MSに対して
OMC,1999年 にASR・reMS・TRに 対 し てATS
弁を用いてDVR+TAPを施行した.2004年に発熱
を認め,PVEを疑われたが保存的加療にて軽快し
経過観察されていた.2006年にも発熱で入院歴が
あるがPVEの確定診断はえられなかった.またこ
の頃より貧血,LDHの上昇がありPVLが強く疑わ
れたが,TTEでは人工弁のartifactのためPVLの
局在診断は困難であった.2008年7月の外来受診
時に貧血,TRの増悪を認め入院となった.今回
はLIVE 3D TEEを行い,僧帽弁位機械弁のPVL
の局在診断をしえたため,re-MVRを行った.本
症例ではPVLの確定診断に難渋したが,LIVE 3D
TEEがPVLの局在診断に有用であったので報告す
る.
85) 血栓化した偽腔にintramural hematomaを生
じた慢性解離性大動脈瘤の1例
(大分大学心臓血管外科) 斎藤聖多郎・
濱本浩嗣・穴井博文・和田朋之・岩田英理子・
嶋岡 徹・首藤敬史・廣重恵子・宮本伸二
IMH;intramural hematomaは病理学的にはtear
のない大動脈解離と捉えられ,壁内血管の破綻に
よるといわれているが,臨床的には血栓閉塞型解
離との鑑別が困難なことが多い.今回,慢性解離
性大動脈瘤の血栓化していた偽腔の最外側の壁内
に,真腔とは交通を持たない新たな解離腔が出
現し,IMHが引き起こされたと考える症例を経
験したので呈示する.症例は64歳男性,5年前
にDeBakey3b解離を発症.4年後に遠位弓部が拡
大してきたために,全弓部置換+Frozen elephant
trunkによるエントリー閉鎖を行い,下行大動脈
の偽腔は血栓化した.8か月後,突然の背部痛が
生じ,CTで血栓化していた偽腔の外膜に新たに
出現した解離腔と胸水貯留を認めた.真腔とは全
く離れているため瘤破裂ではなくIMHと診断し
降圧保存療法を行ったところ徐々に新解離腔は縮
小消失していった.
83) ペースメーカ心室リードによる遅発性右室
心尖部穿孔の1例
(飯塚病院心臓血管外科) 安恒 亨・
内田孝之・安藤廣美・長嵜悦子・福村文雄・
田中二郎
86) 急性B型大動脈解離の治療中に肺塞栓症を
合併した一例
(九州厚生年金病院) 進 悟史・坂本一郎・
林谷俊児・山本雲平・菊池 幹・宮田健二・
折口秀樹・毛利正博・山本英雄
66歳女性.前医でアダムストークス発作を伴う房
室ブロックに対して,永久ペースメーカ植込み
(VVI)を施行された.植込み2ヶ月時にペース
メーカ不全(ペーシング閾値上昇,心内R波高低
下)を来たし,当科に紹介となった.心エコー検
査で少量の心嚢液貯留とリード先端の心嚢内逸脱
を認め,右室穿孔と診断した.心タンポナーデ徴
候は認めなかった.全身麻酔下に胸骨正中切開を
行い,直視下に穿孔リードを切断,全抜去し,新
たに心室リード挿入(経静脈的に中隔へ留置)を
施行した.
症例は73歳男性.突然の胸背部痛のため当院に緊
急搬送となり,造影CTにてスタンフォードB型
急性大動脈解離の診断で入院となった.臓器虚血
の合併はなくβ遮断薬などで血圧コントロールは
良好でリハビリも順調であったが,第6病日夜間
入院時と同様の背部痛を認めた.造影CTでは大
動脈解離の進行を認めず,右肺動脈に肺塞栓症を
認めた.下大静脈フィルター留置の上慎重に抗凝
固療法を行い,肺塞栓症は改善し大動脈解離の進
行も認めず第22病日退院となった.大動脈解離に
合併する肺塞栓症は比較的稀であり文献的考察を
含めて報告する.
84) 心尖部送血が有効であったDeBakey IIIb,
A型大動脈解離の一例
(宮崎市郡医師会病院心臓血管外科)
遠藤穣治・児嶋一司・小林 豊・早瀬崇洋・
福島靖典
症例は69歳男性.胸背部痛を主訴に来院した.胸
部CT検査の結果,A型大動脈解離と診断された
が,内膜亀裂部位は同定できなかった.緊急手術
にあたり,患者は高度肥満であり,腋窩動脈,大
腿動脈の剥離が困難と思われ,また内膜亀裂部位
が不明であるため,心尖部送血を用いた体外循環
を選択した.術中所見ではDeBakeyIII型A型大動
脈解離であった.大腿動脈送血が選択された場合,
術中解離の進展,malperfusionの発生などの可能
性が高かったと思われた.大動脈解離の手術にお
いて,特に内膜亀裂部位が同定されていない場合
は心尖部送血が有用であるとおもわれた.
87) 大動脈弓部の可動性血栓を伴った急性大動
脈解離の一例
(九州大学循環器内科) 上原晶子・
江島健一・肥後太基・砂川賢二
(同心臓外科) 坂本和生・中島淳博・
富永隆治
症例は75歳女性.突然の左胸背部痛にて発症し,
発症直後の体部造影CTでは上行大動脈起始部か
ら左腎動脈分岐部まで血栓閉塞した解離腔と脾梗
塞所見を認めた.StanfordA偽腔閉塞型急性大動
脈解離の診断で外科治療は選択せず安静臥床,降
圧治療にて経過観察を行った.特に大きな合併症
無く経過していたが,第15病日より血小板増多と
Dダイマー値の上昇を認めた.第16病日にフォロ
ーアップの体部造影CTを行ったところ大動脈弓
部内の血栓を認め,エコー上可動性があったため,
同日緊急に上行弓部大動脈人工血管置換術を施行
した.術中所見ではエントリーである大動脈弓部
小弯側に約3cmの血栓を認めた.今回生じた血
栓形成のトリガーとして血小板増多症の合併があ
げられるが,急性大動脈解離の際に伴った脾梗塞
が原因として考えられた.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
88) Gore TAGを用いたTEVAR症例の経験
(小倉記念病院心臓血管外科) 新井善雄・
羽生道弥・曽我欣治・野本卓也・中野穣太・
松尾武彦・瀧本真也・川東正英・桑内慎太郎・
長田裕明
(大阪大学心臓血管外科学講座) 倉谷 徹・
白川幸俊・島村和男・竹内麦穂・金 啓和・
澤 芳樹
胸部大動脈瘤に対しステントグラフト治療への期
待が高まり企業作成ステントGore TAGが保険収
載されたものの,現時点では使用に際し制約が多
い.その中でGore TAGを使用したTEVARを経験
したので報告する.経験症例は胸部下行大動脈瘤
(嚢状瘤)もしくは慢性解離性大動脈瘤(Stanford
B)であった.大腿動脈アプローチ困難な症例は
後腹膜経路で総腸骨動脈もしくは腹部大動脈より
アプローチした.Gore TAGのみでは対応困難な形
態に対しては自作ステントを併用した.いずれも
手術直後に速やかに覚醒し術場抜管され,脊髄虚
血症状も認めず術後の経過は良好であった.Gore
TAGはいくつかの限界を有するものの,有用な胸
部大動脈ステントグラフトであると考えられた.
91) 無痛性・非感染性の炎症性腹部大動脈瘤の
一症例
(麻生飯塚病院) 長嵜悦子・安藤廣美・
内田孝之・安恒 亨・福村文雄・田中二郎
【症例】81歳,男性【主訴】発熱【現病歴】1ヶ
月前から発熱,関節痛.精査のため近医に入院.
CTで感染性動脈瘤が疑われ当科紹介,入院.【身
体所見】腹部に拍動性腫瘤あり,自発痛・圧痛な
し【経過】CT上は腹部大動脈瘤周囲脂肪組織に
炎症が示唆され感染性腹部大動脈瘤が疑われた
が,血液培養検査で細菌は検出されず.Gaシン
チで異常集積を認めず.症状は入院後も持続し,
WBC増多,CRP高値が遷延したがNSAIDs内服の
みにて軽快.感染症の証拠が得られず,炎症性
動脈瘤が最も疑わしいと判断した.【手術】リフ
ァンピシン浸漬Yグラフトにて人工血管置換術.
【術後経過】術直後よりVCM注を投与開始.提出
検体より細菌は検出されず感染なしとして,ド
レーンを抜去.その後VCM投与を中止.術後は
WBC,CRPともに順調に正常化し,軽快退院と
なった.
89) 急性B型解離性大動脈瘤破裂に対しステン
トグラフト内挿術を施行した一例
(済生会熊本病院心臓血管センター外科)
出田一郎・平山統一・三隅寛恭・萩原正一郎・
上杉英之・森元博信・佐々利明・久米悠太
92) Valsalva洞シャント閉鎖術後に心拍動下
Bentall手術を施行した1例
(済生会熊本病院心臓血管外科) 佐々利明・
平山統一・三隅寛恭・萩原正一郎・上杉英之・
出田一郎・森元博信・久米悠太
【症例】81歳,男性.
【主訴】胸焼け,呼吸困難.
【現病歴】H20年4月25日胸焼けを主訴に前医入
院.経過中呼吸困難出現,低酸素血症となり,
CT施行したところB型解離性動脈瘤破裂を認め
たため,当科緊急入院となった.【経過】造影CT
にて遠位弓部にentryを認め,胸部下行レベルで
偽腔から縦隔内への破裂所見を認めた.Entryを
閉鎖するように緊急ステントグラフト内挿術を施
行した.術後経過良好で,術後13日目に紹介医へ
転院となった【まとめ】急性B型解離性大動脈瘤
破裂に対し緊急ステントグラフト内挿術を施行し
た.解離腔は血栓化し瘤は縮小した.急性解離性
大動脈瘤に対してもステントグラフト内挿術は有
用であった.
症 例 は51歳 女 性.34才 時 に 心 雑 音 を 指 摘 さ れ
Valsalva洞-右房シャントに対して他医でValsalva
洞結紮術+RITA-RCA bypass術を施行.以後,症
状なく経過していたが,2008年12月労作時息切れ
を自覚し受診.ARとValsalva洞拡大(67mm)を
認め手術の方針となった.体外循環使用心拍動下
にBentall手術+上行半弓部大動脈置換術施行.
RITA-RCAへのbypassを利用しRCAには脳分離灌
流から,LCAにはカニューレを用いwarm blood
を灌流し心拍動を維持した.冠動脈再建は,RCA
はRITAからのbypassを利用,LCAはCarrelパッチ
法で再建.術後経過良好で術後18日目に退院.本
術式は癒着剥離を最少にとどめることが可能で心
筋保護の観点からも有効な術式であると考える.
90) B型急性大動脈解離に合併したmalperfusin
syndromeに対し,MKステントグラフト内挿術が
有用であった1症例
(天神会新古賀病院心臓血管センター)
田中秀憲・川崎友裕・玉井秀一・新谷嘉章・
後藤義崇・三戸隆裕・池田真介・折田義也・
芹川 威・古賀久士・大坪義彦・福山尚哉・
古賀伸彦
(大分大学心臓血管外科) 和田朋之・
宮本伸二
(同放射線科) 本郷哲央・森 宣
93) 脊髄栄養動脈の同定にAngio CTが有用で
あった胸腹部大動脈瘤の1例
(高邦会高木病院循環器センタ−心臓血管外科)
土井一義
(同循環器内科) 吉廣 剛・松本徳昭・
山本格士・佐藤恭一
(佐賀大学医学部付属病院胸部外科)
佐藤 久・野口 亮・片山雄二・古川浩二郎・
岡崎幸生
【はじめに】Malperfusion syndrome(MS)を合併し
たB型急性大動脈解離(B-AAD)は,手術死亡率も高
く治療選択において悩むことも少なくない.
【症例】
67歳男性.左前胸部痛のため当院受診し,B-AADと
診断.鎖骨下動脈から右外腸骨動脈までの解離が認
め ら れIMA,Rt-RAは 偽 腔 か ら,CA,SMA,Lt-RA
は真腔から分枝していた.入院後,人工呼吸器装着
となりMSの増悪を来たしたためentry閉鎖目的にて緊
急ステントグラフト(SG)内挿術を行なった(大分
大学へ転院)
.術中造影でentryは胸部下行大動脈に,
reentryはBifurcation直上に認められたため,MK-SG
を鎖骨下動脈直下からCA近位部まで留置した.術後
第3病日に人工呼吸器から離脱し22日後,合併症なく
退院となった.
【まとめ】MSを合併したB-AADに対
し,SG内挿術は考慮すべき治療法と思われる.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
85才女性.7.0cmの胸腹部大動脈瘤(Crawford
Type I)にて当院紹介.64列大動脈CTにて脊髄
栄養動脈は同定できなかったが,カテ−テルを用
いたAngio CTにて,L1左側より起始する脊髄栄
養動脈を同定できた.術中は,開存を認めた肋間
動脈の全てを閉鎖したが,人工血管の遠位側吻合
をTh12の高さで行うことで,同定したL1の脊髄
栄養動脈は温存するように胸腹部大動脈置換術を
行った.術後,対麻痺は認めず,その他合併症も
なく経過順調であった.術前の脊髄栄養動脈の同
定が,Angio CTで可能であり,術後対麻痺予防
のための手術戦略決定に有用であった.
94) ワーファリン投与により一過性に増悪した
下肢深部静脈血栓症の一例
(久留米大学医療センター循環器科)
中村実生・加藤宏司・大野聡子・森田博彦・
原田晴仁・池田久雄
SLEに対しステロイド内服加療されている36歳女
性.下腿疼痛,腫脹出現し深部静脈血栓症と診断
した.ヘパリン,ワーファリンにて治療を開始し
症状消失,血栓も軽減した.ワーファリン投与開
始後7日目,PT-INR 1.86を確認後へパリンを中
止した.ワーファリン投与開始後11日目に症状再
出現,静脈血栓増悪を来した.採血検査ではプロ
テインC(PC)活性47%と低下,PT-INRは1.84で
あった.ワーファリン中止しへパリン再開したと
ころ静脈血栓も軽減した.PC活性138%と正常化,
PT-INRは1.13であった.PCはビタミンK依存性
の抗凝固物質であるが,ワーファリン投与初期に
は半減期の短いPCの選択的低下をきたし凝固能
亢進状態が起こりうる.ワーファリン治療に際し
て考慮しておくべきことと考えられ,若干の文献
的考察を加え報告する.
95) 下大静脈フィルター留置後に後腹膜血腫を
来した肺血栓塞栓症の1症例
(大分医療センター循環器科) 近藤秀和・
吉良哲也・有川雅也・谷口弥生・大家辰彦
症例は66歳,男性.運動時の息切れを自覚し血液
検査にてD-dimer高値,肺換気血流シンチで換気
血流ミスマッチを認め当科に紹介された.心エコ
ー検査では重度のTRを認め,胸部造影CTにて両
側肺動脈内に血栓像を認めた.肺血栓塞栓症と診
断しカテーテル的血栓吸引術及び下大静脈フィル
ター留置を施行し,引き続き血栓溶解療法と抗凝
固療法を行った.自覚症状は徐々に改善し,1週
間後の確認CT及び心エコー検査でも改善傾向で
あった為,ワーファリン内服継続とし退院となっ
た.しかし退院後27日目に重労働後の腹痛を主訴
に再受診し,腹部造影CTにて後腹膜血腫を認め
た.ワーファリンの中和と安静のみで経過観察し
たところ10日後の確認CTでは後腹膜血腫は縮小
していた.過度の運動に起因する下大静脈フィル
ターによる静脈損傷が原因かと考えられた.
96) 重複下大静脈に合併した深部静脈血栓症の
一例
(熊本市立熊本市民病院) 今村悠哉・
森上靖洋・伊藤彰彦・倉岡将平・木村義博・
外村洋一
関節リウマチにてステロイドを内服していた.平
成20年3月に呼吸困難にて本院入院となった.治
療経過中,左下肢腫脹が現れ静脈エコーで左大腿
静脈に大量血栓を認め造影CTを施行した.その
結果深部静脈血栓症,重複下大静脈と診断され,
一時的下大静脈フィルターを左下大静脈に留置し
た.ウロキナーゼを1週間投与し,その後ワーフ
ァリン内服に切り替えたが,血栓はむしろ増大傾
向にあったため永久型下大静脈フィルター留置を
検討した.本症例は重複下大静脈であり,通常の
腎静脈合流部直下留置では肺塞栓を防げ得ないと
考えられた.さらに左大腿静脈から右大腿静脈へ
の側副血行も認められた.検討の結果,腎静脈合
流部直上に留置した.その後合併症なく退院とな
った.本症例は希な病態であり,文献的考察を含
め報告する.
くまもと県民交流館パレア(2008 年 12 月) 1013
97) 亜急性期の肺動脈血栓塞栓症に対してt‒PA
製剤投与が有効であった一例
(宗像水光会総合病院循環器科) 檜田 悟・
岩岡千絵・吉武清伸
【症例】72歳女性.
【主訴】呼吸困難.
【現病歴】
以前より更年期障害にて女性ホルモン剤を使用し
ていた.H.20 4月ごろより下腿の浮腫と労作時
の息切れを自覚していた.次第に外出が困難にな
り6月より臥床状態となっていた.6/30に当科受
診.UCGにて著名な右心系の圧負荷の所見と胸
部造影CTにて肺動脈内に多発する血栓像を認め
たため肺塞栓症の診断で当科緊急入院となった.
発症から時間が経過していたこともありヘパリン
の持続投与(20000単位/day)にて48時間経過を
みたが,呼吸状態改善せず右心不全症状著名とな
った.全身状態も悪化傾向にあったため7/3にt–
PA(クリアクター)160万単位を使用したところ
呼吸状態著名に改善し血行動態も安定した.その
後のCT像で血栓の著名な縮小を認めた.
100) 胸痛を呈する冠動脈−肺動脈瘻コイル塞栓
後の再発に再度コイル閉塞を行った症例
(浦添総合病院循環器センター) 柿本忠俊・
梅原英太郎・小村泰雄・大城康一・大塚敏之・
田村謙次・相澤直輝・木村朋生
胸痛を呈する冠動脈−肺動脈瘻に対するコイル塞
栓術後6か月に再発,再コイル塞栓を要した症例
を報告する.76歳男性.2006年4月より労作時呼
吸困難・胸部不快感を自覚.CAGにてLAD-PA短
絡を認めた.開心術拒否のため,MDCTにて形態
評価・動脈瘤確認の後8月14日にコイル塞栓術を
施行した.その後2007年2月27日のCAGにて短
絡路に再還流を認めた.自覚症状なく経過観察と
なった.2008年5月頃より胸部症状が出現.6月
9日に再コイル塞栓術を施行した.症状軽快し退
院となった.今後も定期的なフォロー,外科との
十分な検討が必要である症例と思われた.現在ま
で冠動脈−肺動脈短絡へのコイル塞栓に対しては
主に外科治療の報告が多くなされている.冠動脈
−肺動脈瘻に対する内科・外科的治療に関し,文
献的考察を踏まえ検討したので報告する.
98) 当院における深部静脈血栓症・肺血栓塞栓
症症例の検討
(諫早総合病院) 深江貴芸・山口研児
(長崎大学医学部附属病院循環器内科)
古賀聖士・池田聡司・前村浩二
101) 成人期に2度心肺停止となりICD移植術を
行ったALCAPAの一例
(小倉記念病院循環器科) 徳田裕輔・
永山晋也・安藤献児・岩淵成志・横井宏佳・
野坂秀行・延吉正清
近年,肺血栓塞栓症は,高齢化,食生活の欧米化,
診断率の向上といった要因から我国において増加
傾向にある.今回,平成18年11月から20年6月の
20か月間の当院における深部静脈血栓症・肺血栓
塞栓症,連続17例について検討した.17例中14例
において造影CTで深部静脈血栓を確認.そのほ
とんどが膝窩より上部に血栓を有する「中枢型」
であった.12例においてIVCフィルター挿入後に
血栓溶解療法を施行し良好な結果を得た.3例は
回収型を使用した.循環虚脱を呈した広範型肺血
栓塞栓3症例は緊急カテーテル血栓粉砕術を行っ
たが救命出来なかった.肺血栓塞栓症の発症予防
として,深部静脈血栓症の早期診断,治療が重要
である.診療科毎にリスクの階層化をおこない,
推奨される予防法を講じることが重要である.
【症例】30歳女性.【現病歴】平成16年2月2日勤
務中に卒倒.心室細動(Vf)に対し除細動施行.
蘇生後,高次機能障害を認めたためICD移植術は
行わず.平成20年8月13日歩行中に心肺停止とな
り近医に搬送.Vfに対し除細動を行い心拍再開後
当院に紹介.【臨床経過】今回2度目のVfであり,
ICD移植術施行.その後冠動脈CTにて左冠動脈が
肺動脈より起始していることが判明しALCAPA
(anomalous origin of left coronary artery from the
pulmonary artery)と診断.バイパス術は希望さ
れなかった.なおエコー上心機能は正常.【結語】
成人期に2度心肺停止となりICD移植術を行った
ALCAPAの一例を経験したので報告する.
99) A case with large R to L shunt through patent foramen ovale without pulmonary hypertension
(九州医療センター循環器科,同臨床研究部)
江島恵美子・森 超夫・西元弥生・井上寛子・
清水知彦・池田次郎・塚川絵理・安田桂子・
森井誠士・田中信英・麻生明見・相良洋治・
森 隆宏・竹中克彦・中村俊博・佐藤真司・
冷牟田浩司
102) 成人における動脈管開存症コイル塞栓術の
検討
(久留米大学循環器病研究所) 須田憲治
(久留米大学小児科) 寺町陽三・工藤嘉公・
西野 裕・伊藤晋一・家村素史
(岡山大学心臓血管外科) 赤木禎治
(久留米大学小児科) 松石豊次郎
A 40 years old female had been cyanotic and
having clubbed fingers since her youth. She
currently presented progressive cardiomegaly
and peripheral edema. Expansion of the right
side heart and patent foramen ovale (PFO) was
also noted in echocardiography. In cardiac
catheterization, large amounts of R to L shunt
through PFO were detected. The occlusion test of
PFO made rapid improvement of cyanosis. Atrial
reversal shunt through PFO might be due to right
ventricular dysfunction. The closure of PFO is
considered to be useful for improving systemic
hypoxemia but might exaggerate right ventricular
dysfunction.
1014 第 105 回九州地方会
【目的】成人PDAコイル塞栓術の有効性,安全性
について検討する.【方法】経皮的PDAコイル塞
栓術を行った20歳以上の18人.年齢,NYHA分類,
動脈管最小径,Qp/Qs,肺動脈平均圧,合併症に
ついて検討した.【結果】年齢は平均50±17歳(最
大77),カテ前のNYHA分類は1:13人,2:5
人,動脈管最小径は3.3±1.1(最大5.6)mm,肺
動脈平均圧は17±5mmHg,Qp/Qsは1.7±0.6(最
大3.6)であった.合併症は4例(22%)で認め,
内服薬による治療を必要とする高血圧を3例,溶
血性貧血を1例に認めた.この期間にカテーテル
治療を試行し,塞栓できず手術を行った例は無か
った.【考察】成人のPDAに対して経皮的コイル
塞栓術は,対象を選べば安全で有効な治療法の一
つと考えた.今後は開胸手術との比較を行い,適
応の検討を行なう必要がある.
103) 透析中の64歳動脈管開存症,心房中隔欠損
症患者の一手術例
(熊本大学心臓血管外科学) 村田英隆・
川筋道雄・國友隆二・森山周二・高志賢太郎・
松川 舞・岡本 健
(同循環器病態学分野) 小川久雄・三浦光年
(同心臓血管外科学) 田爪宏和
症例は64歳女性.生来健康平成20年に下肢および
顔面の浮腫,腹部膨満認め,心不全と診断.心エ
コーでPDA,ASDを指摘された.精査中偶発的に
腎細胞癌発見され,先に右腎摘出術施行.術後よ
り維持透析導入となった.TEEにて径5.7×長さ4.4
mmのPDAと左−右短絡,肺動脈の拡大,5×7
mmのASDを指摘.心カテ上,肺動脈レベルで有
意なO2 step upを認め,Qp/Qs=2.95と手術適応で
あった.on-pump beating下の肺動脈および右房切
開にてPDA,ASD閉鎖術施行した.術後特に合併
症等を認めず維持透析へ移行し,経過良好にて術
後20日目に転院した.若干の文献的考察を加え報
告する.
104) Williams症候群に合併した大動脈弁上狭窄
症に対する一手術例
(聖マリア病院心臓血管外科) 尾田 毅・
庄嶋賢弘・坂下英樹・川良武美
(同小児循環器科) 伊藤晋一・棚成嘉文
(同心臓血管外科) 安永 弘・藤堂景茂
症例は12歳女児.40週6日2808gにて出生.新生
児期に口蓋裂にて入院した際,心雑音を指摘さ
れ,心エコーにて大動脈弁上狭窄症と診断,経
過観察されていた.11歳時に施行した大動脈造
影,3D-CTにて大動脈弁上部にびまん性の狭窄
を認め,心エコーでは大動脈弁上部で最大圧較
差98mmHgであったため今回手術を行った.手
術はDoty法(two sinus reconstruction)を施行.
術後心エコーでは大動脈弁上部の最大圧較差は
17mmHgであった.若干の文献的考察を含め報告
する.
105) 完全房室ブロック,右室への流入障害,右
室流出路狭窄を呈した心臓原発悪性リンパ腫の1
手術例
(新古賀病院心臓血管外科) 陣内宏紀・
吉戒 勝・池田和幸・伊藤 学
66歳,女性.5ヶ月前に労作時の胸痛あり,冠攣
縮性狭心症の診断を受けた.2週間前より労作時
の呼吸困難感,動悸,食思不振,顔面浮腫が出現
した.その後,上記症状が増悪し,右心不全症状
を強く認めて,本院に救急搬送された.来院時心
電図でHR40∼50程度の完全房室ブロックを認め,
心エコーでは右房,右室内腫瘤による右室への流
入障害,右室流出路狭窄を認めた.腫瘍嵌頓によ
る突然死の危険性が高いと判断し体外循環を用い
て心停止下に緊急腫瘍摘出術・ペースメーカー埋
込み術を施行した.摘出標本の病理組織学検査で
malignant lymphoma, diffuse large B cell typeと
診断した.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
106) 左房内血栓と考えられたが転移性肺癌で
あった一例
(小倉記念病院心臓血管外科) 桑内慎太郎・
羽生道弥・曽我欣治・野本卓也・新井善雄・
中野穣太・松尾武彦・瀧本真也・川東正英・
長田裕明
心臓腫瘍は比較的稀な疾患であり,組織型の判定
や血栓との鑑別にしばしば苦慮する.今回,血栓
との鑑別に苦慮した転移性肺癌の一例を経験した
ので,文献的考察を加えて報告する.症例は57歳
男性.脳梗塞の原因精査目的に施行した経食道心
エコーにて,左房内に径2cmの腫瘤を認め,左
房内血栓疑いにて手術目的に当科紹介.CTにて
右上肺静脈内にも腫瘤の存在が判明.右上肺静
脈・左房内腫瘤除去術を予定し術前検査を行っ
た.しかし,ワーファリン投与にも関わらず腫瘤
は入院後6週間で6cm大へと増大.血栓よりも,
主な腫瘍マーカーは陰性であったが腫瘍性病変の
可能性が考えられた.その後,脳梗塞再発や腸閉
塞と多発塞栓症をきたし,全身状態は徐々に悪化
し死亡した.剖検にて,右上肺静脈・左房内腫瘤
は転移性肺癌であった.
107) 脳梗塞を合併した左室内巨大血栓症の一手
術例
(福岡赤十字病院心臓血管外科) 安東勇介・
宮本和幸・河野博之
(同循環器科) 末松延裕・中城総一・
目野 宏・福泉 寛・山本光孝・大井啓司・
高瀬 進・稲生哲治
症例は25歳男性.ネフローゼ症候群の既往あるも
治療を自己中断していた.労作時呼吸困難のため
来院し,心臓超音波検査で高度のびまん性左室壁
運動低下(EF=18%)と左室拡大および左室内を
占拠する腫瘤像(7.1×3.3cm)を認めた.入院3
日目に運動性失語を生じ左前頭葉梗塞と診断.さ
らにその後のCT検査で左内頸動脈内血栓と両側
の腎梗塞を認めた.体外循環に伴う脳合併症を回
避すべく,脳梗塞発症から2週間をおいて腫瘤摘
出術を施行した.左室心尖部切開により摘出した
腫瘤は7cm大の血栓であった.術後は大きな合
併症なく順調に経過した.本例について文献的考
察を加えて報告する.
108) 左房内に多発したosteosarcomaの1例
(長崎大学医学部・歯学部附属病院循環器内科)
武富 梓・安永智彦・中田智夫・古賀聖士・
池田聡司・瀬戸信二・前村浩二
症例は67歳男性.2008年4月下旬に呼吸困難を自
覚し,近医に僧帽弁閉鎖不全症のよる心不全のた
め入院となった.7月7日に同疾患の精査・加療
目的で当科転院.入院時の経胸壁心エコーで僧帽
弁後尖基部と左心房後壁,右肺静脈流入部に30∼
40mmの構造物を認め,当初,左心房内血栓が疑
われた.心臓カテーテル検査で肺動脈圧,肺動脈
喫入圧の上昇を認め,僧帽弁直下の血栓による僧
帽弁逆流が心不全の原因と考え,当院心臓血管外
科にて血栓除去術を施行した.血栓と考えられ
た構造物は辺縁不整で黒褐色調を呈した実質性
腫瘍で,内部に出血を伴っており病理診断にて
osteosarcomaの診断が得られた.心腔内に多発
したosteosarcomaの報告は少なく,文献的考察
を加えて報告する.
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
109) 心雑音から発見された右心房腫瘍の一例
(九州厚生年金病院総合診療部) 浦田万起子
(同内科・循環器) 土倉潤一郎
(同医療情報部) 野間 充
(同内科・循環器) 坂本一郎・山本雲平
(同総合診療部) 林谷俊児
(同内科・循環器) 宮田健二・折口秀樹・
山本英雄・毛利正博
症例は67歳女性.3ヶ月前からの体重増加,下肢
のむくみ,高血圧(170/80mmHg)の精査目的で
当科紹介となった.脈は洞調律であった.漸増す
る後期拡張期雑音を聴取したため心エコーを施行
したところ,右房自由壁側に広基性の茎を有する
50mm×65mmの腫瘤を認めた.腫瘤は可動性で
収縮期に三尖弁に嵌頓しており,心雑音は腫瘤に
よる三尖弁口の狭窄によるものと考えられた.転
移性腫瘍や悪性リンパ腫は否定的であり,腫瘤の
エコー性状より粘液腫の可能性が最も高いと考え
られた.9月初旬に腫瘍切除術の予定である.右
房の自由壁側に発生する可動性腫瘍は稀であり,
画像所見と文献的考察を含めて提示する.
110) 高血圧治療経過中に偶然発覚した右室原発
粘液腫の一例
(久留米大学内科学講座心臓・血管内科部門)
吉村彩子・金谷誠司・香月与志夫・上田集宣・
熊谷俊一・福井ミノリ・姉川敬裕・三池太朗・
甲斐久史
(同外科学講座心臓・血管外科部門)
福永周司・青柳成明
(同内科学講座心臓・血管内科部門)
今泉 勉
59歳男性.高血圧に対し近医にて内服加療中.無症状
にて経過していたが, 08年3月に施行した心エコー
図検査にて右室腔内に腫瘤性病変を認め,精査加療目
的に当院に紹介入院.初診時胸部X線・心電図・血液
検査に特記所見なし.心エコー図上右室自由壁内に埋
没する茎を有し,右室腔内に突出する直径2.5cm大で
ほぼ球状の腫瘤影を認めた.理学所見・血液検査・画
像検査上悪性を疑う所見はなく,良性腫瘍を疑ったが,
腫瘍サイズおよび本人の希望を考慮し,外科にて手術
を施行.右室内肉柱に埋没した部分は周囲に線維化・
石灰化を伴い,それに連続して右室内腔に突出した表
面平滑な腫瘍の全摘に成功し,病理診断は粘液腫であ
った.心臓原発腫瘍は珍しく,なかでも右室に原発す
る粘液腫は極めて稀であり,文献的考察も含め報告す
る.
112) 血栓を含む下肢動脈閉塞に対するPTAの検討
(福岡和白病院) 津田泰任・斉藤太郎・
比嘉 徹・野口博生・石橋史行・仲村圭太・
池田尚子
下肢動脈閉塞に対するPTAにおいて血栓の存在は
大きな障害である.2006年3月より2007年12月ま
で当院で経験した血栓を含むPTAでPIT(Pulse
infusion thrombolysis)を用いた11症例を検討し
た.男性8例,女性3例,平均年齢75.8±12.2歳.
急性閉塞症例は7例で造影上血流の改善を4例に
認めたが,膝下の病変が高度であり完全際疎通は
得られなかった.残り3例では部分的血流は得ら
れたが有効な再疎通は得られなかった.臨床経過
では下肢部分切断が2症例,壊死が高度の為切断
不能が1症例であった.残り4例は切断を免れ保
存的加療となった.亜急性ないし慢性閉塞症例は
4例であり全例再疎通に成功した.急性期症例で
は発症後数日経過した症例が多く多量の血栓が末
梢まで存在し,血栓の処置が不十分に終わったこ
とが低い成功率の要因であると考えられる.
113) 重症下肢虚血に対するカテーテル治療の有
効性
(小倉記念病院循環器科) 登坂 淳・
曽我芳光・浦川知子・安藤献児・岩淵成志・
横井宏佳・野坂秀行・延吉正清
【背景と方法】膝下動脈病変による重症下肢虚血
に対するのバイパス術の有効性は報告されている
が,全例で手術可能なわけではない.当院で膝下
動脈病変単独によって重症虚血肢となった患者
でバイパス術が施行できなかった28症例(30肢,
Rutherford class 4 8肢,class 5 12肢,class 6 10
肢)について,カテーテル治療の有効性を検討し
た.【結果】平均フォローアップ期間は579±432
日であり,全症例のうち86%が男性,71%が糖尿
病患者,46%が透析患者であった.手技成功率は
90%(27/30肢)であった.カプランマイヤー解
析を行った結果,3年間での生存率は74.9%,救
肢率は92.8%であった.【結語】バイパス術が困
難な重症下肢虚血に対するカテーテル治療は有効
と考えられた.
111) 急性下肢動脈閉塞症に対し経カテーテル的
血栓除去術を含む集学的治療にて救肢・救命しえ
た2症例
(仁愛会浦添総合病院循環器センター)
相澤直輝・柿本忠俊・木村朋生・田村謙次・
梅原英太郎・大塚敏之・小村泰雄・大城康一
114) 上肢アプローチでの下肢動脈インターベン
ションの有用性の検討
(九州大学病院第一内科) 藤原昌彦・
仲村尚崇・辛島詠士・平松伸一・小田代敬太・
赤司浩一
(同第二内科) 福永亮太・伊東啓行
急性下肢動脈閉塞症は,発症後6時間が治療の
GoldenHourとされる.長時間経過症例では血流
再開後のMNMS(筋腎代謝症候群)を発症する
可能性が高く,救命のため下肢切断術が選択され
るケースも多い.今回我々は発症6時間以上経過
し,本人・家族と相談の上,経カテーテル的血栓
除去術による再還流療法にCHDFなどの集学的治
療を併用し救肢・救命できた2症例を経験した.
【症例1】74歳,女性.既往歴:慢性心房細動12
時間前発症の左下肢の疼痛・しびれにて受診.左
総腸骨動脈塞栓あり.CHDF併用にて経カテーテ
ル的血栓除去術施行.【症例2】27歳,男性.既
往歴:拡張型心筋症(CRTD施行)6時間前発症
の腰背部痛・両下肢のしびれにて受診.左右総腸
骨動脈・左腎動脈塞栓あり.経カテーテル的血栓
除去術施行.術後第8病日まで連日血液透析施行.
【目的】今回我々は上肢アプローチにおける下肢
動脈インターベンションの治療成績を検討した.
【方法】当院では2006年8月から2008年8月まで
に下肢動脈インターベンションを75症例施行し
た.そのうち上肢アプローチでガイドシースを上
肢より挿入した症例は12例(男9例 女3例:
平均年齢71歳)であった.【結果】手技成功率は
100%であり,穿刺部合併症・末梢血栓塞栓症等
の重篤な合併症も認めなかった.【結語】下肢イ
ンターベンションに対し上肢アプローチによって
手技を行うことは,低侵襲であり術後管理も含め
て有用であると考える.今回は上肢アプローチを
選択した理由,患者背景,手技方法,経過および
どのような症例を上肢アプローチで行うべきかを
含めて検討する.
くまもと県民交流館パレア(2008 年 12 月) 1015
115) 腎動脈狭窄症(RAS)に対するステント
治療(PTRA)の臨床的有用性
(萩原中央病院循環器科) 青木裕司・
瀬川 潤・板家直樹・冬野隆一・佐野哲朗・
三浦靖史・古賀義則・縄田義夫・冬野喜郎
【目的】腎動脈狭窄症(RAS)に対するステント
治療(PTRA)の臨床的有用性を検討した.【方法】
当院にてPTRAを施行した症例を対象に,術前後
の血圧・血清Cr値(sCr)・服用降圧薬数を比較
した.
【結果】対象は41症例(両側性6例,片側
性35例).PTRAの初期成功率は100%で,合併症
は2%(穿刺部出血).収縮期血圧は,術前162±
10.5mmHg,術後6M 142±21.3mmHg(p<0.05)
と改善し,服用降圧薬数も2.3±0.3剤から1.9±0.4
剤へと減量できた.sCrは,1.12±0.41から1.01±
0.34と改善傾向であった.とくに術前に腎障害
(sCr≧1.5mg/dl)を有する症例では,40%でsCr
の改善があり,悪化した症例は認めなかった.6M
後の再狭窄率は13%であった.
【結語】PTRAは安
全かつ高い手技成功率で施行可能であり,血圧管
理・腎保護の観点からも臨床上有用である.
116) 当院での膝窩動脈アプローチによる浅大腿
動脈完全閉塞病変に対するPPIの検討
(南海病院循環器内科) 伊藤健一郎・
藤本書生・秋岡秀文・軸丸季美子・高倉 健
【目的】浅大腿動脈( SFA)慢性完全閉塞病変
(CTO)に対するPPI症例について考察すること.
【方法】膝窩動脈を穿刺し体表面エコーガイド下
にガイドワイヤーを逆行性にpenetrationさせ総
大腿動脈に合流させた後,バルーン拡張,さらに
はステント(smart stent)を適宜留置する.
【成績】
全例(12例)でワイヤーは総大腿動脈へ合流した.
10例(83%)でガイドワイヤーはすべて真腔を通
過し合流したが,2例(17%)でCTO起始部にお
いて偽腔を通過した.うち1例では対側からワイ
ヤーを真腔に通しなおした.初期成功率は92%で
あり,合併症として膝窩動静脈シャント形成を1
例認めた.【結論】SFAのCTOは従来wire不通過
によるfailureが多かったが,膝窩動脈アプローチ
による体表面エコーガイド下PPIではワイヤー通
過率は高く,従って初期成功率も高い.
117) 8Fr.ガイドカテーテルによる血栓吸引が奏
功した留置5日目での左腸骨動脈ステント血栓症
の1例
(長崎労災病院循環器科) 松本雄二・
荒川修司・佐藤修身・河野浩章・早野元信
症例は64才男性で左下肢の間欠性跛行にて精査入
院となった.血管造影にて左外腸骨動脈に75%狭
窄を認め同日カテーテル治療を施行しPalmazス
テント留置にて血行再建を行った.経過良好であ
ったが治療5日後に効果判定目的にてトレッドミ
ル運動負荷試験を行ったところ途中より急激に左
下肢痛出現した.左下肢冷感・皮膚色不良を伴い
左そけい部以下の脈拍触知不可であり急性動脈閉
塞を疑い緊急血管造影を施行した.血管造影にて
左腸骨動脈ステント部は血栓性に完全閉塞してい
た.8Fガイドカテーテルにて血栓吸引を行い大
量の血栓を吸引でき,ステント近位端に解離を伴
う残存狭窄を認めたためSMARTステントを追加
留置し血行再建できた.術後の経過良好であった.
1016 第 105 回九州地方会
118) 腹痛で来院した腹腔動脈解離の1例
(高邦会高木病院循環器センター) 吉廣 剛
腹部症状を主訴に来院した60歳男性.腹部精査の
際のCTで腹腔動脈解離を指摘された.腹腔動脈
から総肝動脈・左胃動脈・脾動脈に解離が及んで
いたが,臓器虚血は認めなかった.保存的加療に
て経過観察を行った.腹腔動脈解離は非常に稀な
疾患で,画像所見を含め,文献的考察を交えて報
告する.
119) 孤立性上腸間膜動脈解離の2例と腹腔動脈
解離の1例
(九州中央病院循環器内科) 古賀智子・
酒匂哲平・梶原正貴・鬼木秀幸・河野 修・
冨永光裕・大森 将
大動脈解離を伴わない孤立性上腸間膜動脈解離,
腹腔動脈解離は比較的稀である.腹痛で発症し,
保存的加療で軽快した高血圧合併の3例を経験し
たので報告する.3症例とも40代の男性.主訴は
急激に発症した持続性あるいは間欠性の腹痛.2
例は受診同日のCTで診断されたが,1例は細菌
性腸炎として加療を受け,腹痛が増悪し,受診3
日目のCTで診断された.CT所見では解離の部位,
解離の程度は異なり,1症例のみ降圧治療に抗凝
固療法を併用した.3症例とも治療経過は良好で,
症状およびCT所見の改善を認めた.高血圧以外
のリスクファクターとして3例ともに高脂血症,
2例に糖尿病,肥満を認めた.臨床像,治療につ
いて若干の文献的考察を加えて報告する.
120) 急速な経過で死亡した腎梗塞の一剖検例
(北九州市立八幡病院循環器科) 岩瀧麻衣・
原田 敬・樫山国宣・大江学治・剱 卓夫・
太崎博美
症例は80歳女性.8年前より狭心症及び高血圧に
て当院通院中であった.今回,自宅で安静中に突
然激しい右下腹部痛出現,疼痛持続するため当院
救急外来受診.来院後腹部CTにて右腎梗塞を認
めた.腎動脈エコーでは右腎上・下極に血流を認
め,中央部付近のみの限局性腎梗塞と思われた.
発症から時間が経過していたことや,画像診断所
見より保存的加療とした.腹痛は翌日も持続して
いたが,入院3日目に不穏状態となり,血行動態
悪化・意識レベル低下し死亡した.剖検では腎梗
塞の進行を認めたが,腸管等の他の腹部臓器には
著変はみられなかった.腎梗塞により致死的な経
過に至った症例で,文献的考察を加え病態等を検
討したので報告する.
121) CVカテーテルに起因したMRSA敗血症性血
栓症に対する保存的治療の経験
(宮崎大学循環呼吸・総合外科学)
西村正憲・矢野光洋・長濱博幸・矢野義和・
遠藤穣治・古川貢之・横田敦子・鬼塚敏男
症例は69歳,女性.胃癌のため他院にて胃全摘術
を受けた.術前より左内頸静脈にCVカテーテル
を挿入されていたが,術後2日目より38℃台の
発熱を認め,カテーテル抜去後も発熱が持続し
た.CTによる感染源の検索の結果,左頸静脈か
ら腕頭静脈内の血栓および左頸部皮下膿瘍を認
め,敗血症性静脈血栓症と診断された.血液培養
でMRSAを分離し,VCMおよびヘパリンの経静
脈投与が開始された.感染性血栓の観血的摘出を
必要とする可能性もあると判断され,当科に転院
となった.転科後も,VCM 100mg/日(後に800
mg/日に減量)の投与を継続したところ次第に
炎症の消退を認め,フォローアップのためのCT
にて血栓の縮小と静脈の閉塞を認めた.VCM中
止後,炎症の再燃なく軽快退院した.文献的考察
とともに報告する.
122) 下肢静脈瘤に合併した血管腫瘍の一例
(新杏病院) 河野智紀・佐多直幸・
浜田直和・堀之内尚志・網谷 滋・宮原健吉・
大木 聡・森山由紀則
(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
塗木徳人・坪内博仁
症例は57歳男性.左下腿の腫脹,疼痛が出現し
たため,近医整形外科を受診し当院へ紹介され
た.両下肢静脈瘤による血栓性静脈炎の診断によ
り,当院外来にて抗炎症剤などの治療を施行する
も改善を認めず,両下肢静脈瘤の手術目的にて当
院入院となる.外来通院時より,両下肢静脈瘤
とは別に右大腿部内側に軟部腫瘤を触知してい
た.同腫瘤に一致して拍動音を聴取したため右下
肢動脈造影検査を施行した.右浅,深大腿動脈を
栄養血管とする血管種様に造影される腫瘤像を認
めたため,大伏在静脈高位結紮術及び右大腿部
軟部腫瘍摘出術を施行した.病理組織検査にて
hemangiopericytomaと診断された.今回我々は,
下肢静脈瘤に血管腫瘍(hemangiopericytoma)を
合併した興味深い症例を経験したため,多少の文
献的考察を加えて報告する.
〈演題取り下げ〉
42) 慢性心房細動に対するBox Isolationと抗不
整脈薬とのハイブリッド療法の有用性
(国際医療福祉大学) 中島英子・高嶋英夫・
熊谷浩一郎
Circulation Journal Vol. 73, Suppl. II, 2009
Official Journal of the Japanese Circulation Society
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Circulation Journal 第三種郵便物認可 平成21年 4 月20日発行
Vol.73 Supplement II
地方会記事
第116回日本循環器学会北陸地方会
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・889
2008年7月6日 金沢市 金沢大学 会長 山岸 正和 ・
第100回日本循環器学会北海道地方会
2008年9月20日 札幌市 北翔大学北方圏学術情報センター「ポルト」
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・900
会長 島本 和明 ・
第209回日本循環器学会関東甲信越地方会
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・905
2008年9月27日 千代田区 東京ステーションコンファレンス 会長 清野 精彦 ・
日本循環器学会第132回東海・第117回北陸合同地方会
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・918
2008年11月15・16日 名古屋市 名古屋国際会議場 会長 伊藤 隆之 ・
第106回日本循環器学会近畿地方会
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・939
2008年11月29日 神戸市 神戸国際会議場 会長 大柳 光正 ・
第93回日本循環器学会中国地方会
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・961
2008年11月29日 呉市 呉阪急ホテル 会長 松浦 秀夫 ・
第210回日本循環器学会関東甲信越地方会
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・978
2008年12月6日 千代田区 ベルサール神保町 会長 池田 宇一 ・
第93回日本循環器学会四国地方会
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・990
2008年12月6日 松山市 松山市総合コミュニティセンター 会長 芦原 俊昭 ・
第105回日本循環器学会九州地方会
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・1003
2008年12月6日 熊本市 くまもと県民交流館パレア 会長 川筋 道雄 ・