子供衣類の設計に関する安全対策ガイドライン (改訂版) 平成 22 年 2 月 全日本婦人子供服工業組合連合会 日本織物中央卸商業組合連合会 協同組合 関西ファッション連合 1 は じ め に 近年、子供が巻き込まれる事故が多発、社会的な問題となっております。とりわけ交通事故、公園などに設置された遊具 類や自転車による事故の未然防止、また、服装による「潜在的」危険から発生する事故から子供を守るため、わが国のあら ゆる分野で「安心・安全」の確保に向けた取組みが行われております。 わが国のベビー・子供服業界におきましては、従前から子供衣類に起因する事故を防止するため、各社ごとに自主規制基 準を設け、事故の未然防止に努めておりますが、依然として「ひやり・ハッと」を経験したとする事例も多く報告されてお ります。昨今では消費者(母親)のベビー、子供服に対する「安心・安全」を求める意識が高まっており、供給する側の生産 者としは、より安全で安心できる商品を提供することが社会的使命であると認識しております。 平成 20 年 6 月、全日本婦人子供服工業組合連合会、日本織物中央卸商業組合連合会、協同組合関西ファッション連合の 三団体が協力して「子供衣類の設計に関する安全対策ガイドライン」を策定、広く業界に周知致しましたところ約 80%の企 業が参考になったと回答されました。ここに、1 年を経過したのを機会に 21 年 10 月、ベビー・子供服取り扱い企業 50 社 を対象にアンケートを実施するとともに委員会を設置、前後 3 回に亘る検討を行い、多岐に亙る多数の意見を集約、見直し を行いました結果を報告するものです。 但し、本ガイドラインは、「ベビー・子供衣類の設計に関する安全確保のための手引書であり、事業者自らが自主的に基 準を設ける際の参考として活用される」ことを主目的に策定されたものです。 なお、アンケートにご協力戴いたにもかかわらずご意見が反映されていない向きもありますがこの点ご容赦願いたく切 にお願いする次第です。今後ともご協力賜りたく、宜しくお願い申し上げます。 以上 平成 22 年 2 月 全日本婦人子供服工業組合連合会 日本織物中央卸商業組合連合会 協同組合 関西ファッョン連合 2 【子供用衣類の設計に関する安全確保】 本「ガイドライン」は、全日本婦人子供服工業組合連合会、日本織物中央卸商業組合連合会、協同組合関西ファッショ ン連合の会員の組合員が製造、販売する子供用衣類の安心、安全を確保するために作成、推進しているものです。 これより先、欧米ではすでに公的機関による子供用衣類の安全対策として安全規格(P 参考資料参照・輸出業務の参 考にして下さい。)が制定されており、潜在的事故の未然防止策を積極的に推進しているが、わが国においてはこれまで 企業内基準を作成し、各々に対策が講じられておりましたが、平成 20 年 6 月、業界初の指針が公表されました。これを 契機に広くべビー・子供服取扱い事業者に周知徹底させるとともに子供用衣類に起因する危害、危険から次世代を担う子 供を守り、消費者の利益保護及び消費生活の安定向上を図ることを目的としております。 (但し、今後社会環境の変化に対応するため時代の要請とともに見直しを行なうものとする。) 【根 拠】消費者基本法(改正:平成 16 年 6 月 施行・抜粋) 事業者の責務 ① 事業者は、その供給する商品及び役務に関し環境の保全に配慮するとともに、当該商品及び役務について 品質等を向上させ、その事業活動に関し自らが遵守すべき基準を作成すること等により消費者の信頼を確保するよ う努めなければならない。(第 5 条 5 の 2) ② 事業者団体は、事業者の自主的な取組を尊重しつつ、事業者と消費者との間に生じた苦情処理体制の整備、事業者 自らがその事業活動に関し遵守すべき基準の作成の支援その他の消費者の信頼を確保するための自主的な活動に努 めるものとする。(第 6 条) 3 【目 的】 「子供用衣類に起因する潜在的事故を未然に防止し、安心、安全を確保することを目的とする。」 【対 象】 1 歳から 12 歳までの年齢の子供が着用することを目的とした衣類とする。 日常の着衣として一般的に着用されている場合は対象とする。但し、大人の監督の下で着用される祝祭日用の衣類、専門 的なスポーツ衣類及び舞台用衣類は除く。 【デザイン上の留意点】 (1) 子供の発達心理学、行動心理学を参考に子供の年齢に伴う能力及び衣類が使用される環境や状況を考慮した設計をする こと。 (2) 潜在的な危険要因(つまづき等による転倒、引っかかり等による転倒、部品の脱落等による誤飲、衣類の部品による皮 膚等挟み込みや首等の締め込みなど)による危害を防止するため、 「危険要因」を排除、隔離、遮断したりすることによ り、それぞれのリスクを最小限に抑えるよう適切な措置を講ずること。 (3) 技術の進歩及びライフスタイルや子供の体型・運動機能の変化によって新たな危険要因が出現することを認識し、新た なデザインをする際にはその都度リスク評価し、新たなリスクに配慮した設計をすること。 4 子供用衣類の設計に関する安全対策ガイドライン (改 訂 版) (注 文中にある数値は設計の際の目安であり規制値を表すものではない。) 平成 22 年 2 月 区 安 全 対 策 ガ イ ド ラ イ ン 分 【全体のデザイン】 上 着 ・遊具や自転車等に引っ掛からないよう、体型、機能性・危険性を十分に考慮した設計をすること。特に袖、裾は不用 意に広め、長めに設計しないこと。 (注意表示) サイズの適性や着用方法について保護者が確認できるような注意表示を付記することが望ましい。 【フード】 ・対象年齢等も考慮し、デザイン上の意図を十分に検討した上でフードを採用すること。 ・視覚、聴覚の妨げにならないよう、フードのサイズに留意すること。 ・力が加わった際に本体から外れるようなホック仕様等も有効に活用すること。 【フード及び衿首の引き紐】 ・7 歳~8 歳未満の製品(参考サイズ 120 ㎝未満)についてはフード及び衿首部分に引き紐は採用しないことが望ましい。 ・紐を使用する際には、外側に出る紐の長さを紐が入っている部分の生地のたるみを伸ばした状態で 10 ㎝以下(または、 どちらの端においても 5 ㎝以下)とすることが望ましい。 ・紐をフード後部で固定したり、フード紐口で縫い止めて見せかけデザインにするなどの仕様とすることが望ましい。 ・引っ掛かりを防ぐため、紐の先にはトグルボタン等の装飾品を使用したり、必要以上に大きな結び目を作らないこと が望ましい。 5 【上着の裾の引き紐】 上 着 ・引き紐の出口は後身頃側には作らないこと。 ・裾等に紐を使用する際には、外側に出る紐の長さを、紐が入っている部分の生地のたるみを伸ばした状態で 10 ㎝以下 (または、どちらの端においても 5 ㎝以下)とすることが望ましい。 ・素抜け防止のため、紐の中心で衣類に縫い止めるか、紐口で縫い止めて見せかけデザインにするなどの仕様とするこ とが望ましい。 ・引っ掛かりを防ぐため、紐の先にはトグルボタン等の装飾品を使用したり、必要以上に大きな結び目をつくらないこ とが望ましい。 ・ロング丈にデザインされている場合は着用時にその全部が衣類の内部に隠れるよう配慮するなど危険性を考慮した設 計をすること。 【ファスナー】 ・対象年齢等を考慮し、使用するファスナー、スライダー、引き手等について適正で扱いやすいものを厳選すること。 ・ファスナーの取り付け位置を顎や首を挟まないように慎重に設定し、上部をホック、ボタン、面ファスナー等で留め たり、インナーフラップを取り付けたりして直接肌に当たらないように工夫すること。 ・転倒時に身体を傷つけないよう、引き手に鋭利なあるいは長い棒状の形態を避ける。あるいは持ち手を押さえるフラ ップを取り付けることが望ましい。 ・突起や外れやすい部品がないこと。 ・ファスナーの代替仕様として、ホック、ボタン、面ファスナ等を積極的に検討すること。 6 【全体のデザイン】 ズボン ・遊具や自転車等に引っ掛からないよう、体型、機能性・危険性を十分に考慮した設計をすること。 ・歩行時に裾を踏んだり他のものに引っかからないよう、不必要な寸法の弛みがないことが望ましい。 パンツ 【ウエストの引き紐(ゴムを含む)】 スカート ・着用のため引き紐を結ぶ必要がある場合は紐出し口を衣類の内側に用いることが望ましい。 ・紐出し口が衣類の外側に付く場合、外側に出る紐の長さを、通常の着用状態で 30 ㎝以下(どちらの端においても 15 水 着 ㎝以下とする)とすることが望ましい。 ・素抜け防止のために紐の中央部を固定したり紐口で縫い止めて見せかけデザインにすることが望ましい。 ・引っ掛かりを防ぐため、紐の先にはボタン等の装飾品を使用したり、必要以上に大きな結び目を作らないことが望ま しい。 【裾の紐】 ・裾から垂れ下がる紐の長さを 3 ㎝以下とすることが望ましい。 ・引っ掛かりを防ぐため、紐の先にはトグルボタン等の装飾品を使用したり、必要以上に大きな結び目を作らないこと が望ましい。 ・裾あげ用の紐は、裾を伸ばした際に内側に収まる仕様とし、過度に長くならないように考慮すること。 ・デザイン上特に幅の広いロールアップは避け、着用時に裾が落ちないよう工夫すること。 ・下端の裾が足首までに届くようにデザインされている場合、着用時にその全部が衣類の内部に隠れるように配慮する など危険性を考慮した設計をすること。 7 【ファスナー】 ・着用するために設計されたファスナー部分には、直接肌に当たらないように持ち出しを付ける等の工夫することが望 ましい。 【水着のインナー素材】 ・陰茎部等の皮膚が挟丸事故を防止するため、水着に用いるメッシュ形状素材は用いないこと。 【リボン・ネクタイ・紐】 ・対象年齢等も考慮し、デザイン上の意図をよく検討した上で採用すること。 装 飾 ・飾りリボンの場合、引っ掛かりを防ぐため、結び目を固定し、容易に外れないようにするか、つくり付けリボンがス ナップ等で簡単に取れるようにすることが望ましい。 付 属 ・リボン・紐の端が容易にほつれたり、解けたりしないように適切に処理すること ・リボンや紐が衣類から垂れ下がる長さは 5 ㎝以下とすることが望ましい。 副資材 ・ネクタイやリボンの首回り一周仕様を避け、あるいは簡単に取り外せるように設計することが望ましい。 【ポケット】 ・機能性・危険性を十分考慮した上でポケットの大きさ、付け位置を設定すること。 ・容易に引っかからないようポケットにフラップを付ける等の工夫をすることが望ましい。 【ボタン・ビーズ・アクセサリー類】 ・転倒時に身体を傷つけないよう、鋭利なものは使用しないことが望ましい。 ・誤飲の危険があるため、容易に取れないよう、しっかり取り付けること。 ・食品に類似した形状のものは使用しないことが望ましい。 8 ・材質に安全性が確認されていること。 ・鉛を含有する金属製品は使用禁止とする。 装 飾 【ホック】 付 属 ・使用する箇所の素材、仕様に応じたものを厳選し、打ち損じによる突起、誤飲の危険につながる外れ等に十分注意す ること。 副資材 【ワッペン】 ・鋭利な箇所がある等、危険性が高いと思われるワッペン類は使用しないこと。 【刺繍・スパンコール・ラメ含む】 ・対象年齢も考慮し、直接肌に刺激を与えないよう、素材の選定、取り付け位置、取り付け方法に十分留意すること。 ・特に乳幼児向けの商品については、熱圧着刺繍の採用や裏側に見返し、当て布を施すなど直接肌に刺激を与えないよ うに配慮することが望ましい。 ・モノフィラメント糸などの使用は禁止とする。 【洗濯ネーム・ブランドネーム・飾りテープ・カットワーク等】 ・対象年齢も考慮し、直接肌に刺激を与えないよう、素材の選定、取り付け位置、取り付け方法に十分留意すること。 ・ヒートカット部分が熱溶解で硬化し、バリ状にならないこと。また、着用時に肌を刺激し、チクチク感を与える場合 は使用しないこと。 ・特に乳幼児向けの商品については、直接肌に刺激を与えないように配慮した仕様(ネームを外側に付けるか、あるいは 転写マークを使用する等)が望ましい。 9 【面ファスナー】 ・直接肌に刺激を与えないよう、取り付け位置や取り付け方法、使用材料(テープ角を丸くするソフトな材質の選択) などに十分留意すること。 靴 下 【靴下・タイツ類】 ・7 歳~8 歳未満の製品(参考サイズ足長 13~19 ㎝以下のサイズ)には足裏には滑り止めの加工を施すことが望ましい。 【ジャガード靴下製品の柄飛び糸】 ・ジャガードの柄の糸渡りを 2.5 ㎝未満とすることが望ましい。 ・つま先周辺には柄飛び糸がないことが望ましい。 着ぐるみ ・7 歳~8 歳未満の製品(参考サイズ 120 ㎝未満)に足部分がついている場合、室内での使用を想定して、足裏に滑り止め の加工を施すことが望ましい。 そ の 他 【その他】 ・特に乳幼児向け商品は飾りモチーフ等の装飾品や引き紐などは衿回りや袖口等、口に入れ易い場所に取り付けないこ とが望ましい。 【モノフィラメント】 ・縫い糸、素材等には肌に刺激を与える恐れがあるモノフィラメント糸は使用禁止とする。 10 ※ 子供用衣類のデザインに関する安全確保の提案 設計関する具体的留意事項 危害、危険発生年齢及び危害例等の詳細については 『東京くらし・Web「くらしの安全情報サイト」 http://www.anzen.metro.tokyo.jp/tocho/kyougikai/pdf/h18_kyougikai_houkokusho.pdf をご参照ください。 11
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