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2014
小児感染免疫 Vol. 26 No. 4 525
日本小児感染症学会若手会員研修会第 5 回福島セミナー
海外渡航,小児科医の出番です!
グループワーク:グループ E
山 本 昇1) 富 樫 篤 生2) 濱 田 優 季3)
天 目 純 平4) 柳 沼 和 史5) 南 希 成6)
チューター
田 中 敏 博7)
はじめに
Steffen らの報告では,発展途上国に 1 カ月間滞在
した場合,何らかの健康問題の起こる頻度は 50∼
海外渡航では,旅行者下痢症や蚊媒介疾患など
60%,実際の疾病にかかる頻度は 20∼30%とされ
の感染症,動物咬傷,時差ボケ,高山病,うつ病,
ている2).つまり,渡航者が何らかの健康問題に
交通事故などさまざまな健康被害を起こす危険が
遭遇することは決してまれではない.これらを予
ある.近年,日本人の海外渡航者は増え続け,年
防するための実践は,渡航医学の 3 要素である渡
間 1,800 万人以上である .渡航先や渡航形態にも
航者,渡航内容を把握し評価すること,そして予
変化がみられ,海外渡航に小児を帯同することも
防計画が端緒となる1)
(図 1)
.
1)
日常的となっており,成人だけでなく小児の渡航
1.渡航者
者もさまざまな健康被害を被る危険性が増してい
年齢〔小児(16 歳未満),成人,高齢者(65 歳
る.渡航者の健康問題を扱う医療として渡航医学
以上)〕,健康状態(免疫不全の有無,慢性疾患の
があるが,日本ではまだ浸透していないのが現状
有無,常用薬の有無,妊娠の有無,アレルギーの
である.渡航医学は多分野にわたる総合的なもの
有無),予防接種歴,経済状況,出発までの期間な
であり,小児科医は小児疾患全般に精通し,予防
どを把握することが重要である1).年齢や健康状
接種に馴染みがある点でも,渡航医学に対して大
態の違いは,渡航中の疾病リスクに大きく影響す
いに貢献できると考えられる.
る.渡航者の死因では,心血管系が最も多く3),
今回,われわれは,野口英世博士生誕の地であ
特に生活習慣病罹患者や心血管系疾患などの慢性
る福島県で本セミナーが開催されたことから,渡
疾患を有する者は注意が必要である.当人の経済
航医学をテーマとしてとりあげ,グループワーク
状況や出発までの期間によっては,接種できるワ
を行った.渡航医学の概要と,その診療の流れを
クチンに制限が生じるため,それらの情報収集も
把握するための事例解説が柱であり,本稿で紹介
重要である.
する.
2.渡航内容
Ⅰ.渡航医学の 3 要素
海外渡航者の健康問題の発生頻度について,
滞在地域(どこの国か,都市部か,郊外か),滞
在期間(長期か,短期か),滞在目的〔観光か,仕
事 か, 留 学 か,visiting family and relatives
1)産業医科大学小児科 2)留萌市立病院小児科 3)長崎医療センター小児科 4)太田西ノ内病院 5)福
島県立医科大学小児科 6)長野県立こども病院総合小児科 7)JA 静岡厚生連静岡厚生病院小児科
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リスクアセスメント
渡航者
年齢,性別,予防接種歴
現病歴,既往歴
薬物の服用状況,アレルギー
渡航内容
渡航国・地域・都市
渡航期間
渡航目的(赴任の帯同,観光,VFR)
渡航地での活動内容
リスクマネジメント
予防計画
一般的な健康指導,現地の情報提供
感染症対策,予防接種,抗マラリア薬
基礎疾患の管理
各種書類の作成
図 1 渡航医学の 3 要素(文献 1)より作成)
表 1 外来で使用できる web 情報
WHO
http://www.who.int/ith/en/
http://www.who.int/ith/en/index.
html
CDC
http://wwwnc.cdc.gov/travel/
fit for travel
http://www.fitfortravel.nhs.uk/
home.aspx
FORTH
http://www.forth.go.jp
日本渡航医学会
http://www.travelmed.gr.jp/
http://www.mofa.go.jp/mofaj/
外務省渡航関連情報
toko/index.html
海外邦人医療基金
http://www.jomf.or.jp
表 2 トラベラーズワクチンの分類
・国際的に接種証明が必要なワクチン
黄熱,髄膜炎菌
・渡航国や地域に応じて推奨されるワクチン
A 型肝炎,B 型肝炎,日本脳炎,狂犬病,ポリオ
黄熱,腸チフス,髄膜炎菌,コレラ,ダニ媒介性脳炎
(文献 11)より作成)
示したホームページや地域別の感染症情報ソフト
(Tropimed®,TRAVAX® など)
を参考にされたい.
1)トラベラーズワクチン
渡航時に行うワクチンをトラベラーズワクチン
という(表 2).国内で承認されているワクチンに
(VFR)か〕によるリスク評価を行う1).発展途上
は,A 型肝炎,B 型肝炎,破傷風,狂犬病,日本
国や郊外への渡航,長期の渡航(1 カ月以上)
,
脳炎,黄熱があり,詳細は表 3 に示した.腸チフ
バックパッカーなどは感染症のリスクが高くな
ス,ダニ媒介性脳炎などのワクチンは国内未承認
る.留学の際は,留学先からワクチン接種の証明
であり,個人輸入という形で限られたトラベルク
書を要求されることや,寮に入る場合は髄膜炎菌
リニックなどでしか接種ができない4).髄膜炎菌
ワクチンの接種が義務化されていることがあり,
ワクチンは,最近国内で承認されたものがあり,
それらへの対応も必要となる.
近々わが国でも発売予定である.全国の地域別の
3.予防計画
予防接種実施機関やトラベルクリニックの情報
渡航中の健康維持のため,特定の渡航者や渡航
は,厚生労働省検疫所の FORTH(For Traveler s
先に合わせた健康教育を行う.一般的な健康指導
Health)や日本渡航医学会のホームページ(表 1)
を行い,現地の感染症情報,医療情報,危険情報
に掲載されている4).これらのワクチンは自費診
などの情報提供を行う.そして少なくとも,推奨
療が主体となる.ワクチン価格については,ホー
される予防接種,マラリア予防,旅行者下痢症の
ムページで検索可能な施設もあるので,そちらを
対処,昆虫媒介疾患の予防などの感染症対策は行
参照されたい.
うべきである.事前に情報を得る際には,表 1 に
小児では,まずわが国における定期接種に相当
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表 3 国内承認ワクチンの通常接種スケジュール
ワクチン
接種の目安
接種
回数
スケジュール
主な地域
滞在期間
短期
長期
備考
A 型肝炎(不活化)
3
0,2∼4,24 週
発展途上国全域
○
○
B 型肝炎(不活化)
3
0,4,20∼24 週
アジア( 中 国 )
アフリカなど
―
○
―
破傷風(トキソイド)
3
0,3∼8 週,6 カ月以降
渡航先問わず
△
○
基礎免疫終了後,10 年以上経過
している場合
狂犬病(不活化)
3
0,4 週,6∼12 カ月
発展途上国全域
△
○
曝露前接種は 1 歳以降
曝露後接種も必要
日本脳炎(不活化)
3
0,1∼4 週,1 年後
東アジア(中国)
東南・南アジア
△
○
黄熱(生)
1
アフリカ
中南米
○
○
―
曝露前接種は 1 歳以降
―
生後 9 カ月以上
(文献 1)より作成)
するワクチンの接種が基本となる.そのうえで,
絶対的適応は,① マラリアの高度流行地域に滞在
渡航先に応じてトラベラーズワクチンを選択する.
する場合(サハラ以南のアフリカ,パプアニュー
予防接種スケジュールについては,A 型肝炎,
ギニア,ソロモン諸島,南米アマゾン川流域な
B 型肝炎,破傷風などの不活化ワクチンは一般的
ど)
,② マラリア発症後に適切な医療対応が期待
に 3 回接種が必要となるが,2 回目と 3 回目の接
できない場合,のいずれかである6).
種間隔は 6 カ月∼1 年あり(表 3)
,出発前に少な
3)蚊媒介疾患の予防
くとも 2 回目まで終了するようにスケジュールを
蚊媒介疾患としてはマラリアや黄熱,日本脳炎
立てるべきである1).
の他に,最近国内での感染が問題となっているデ
また,渡航先によっては,国内未承認の輸入ワ
ング熱などがある.媒介する蚊の種類により活動
クチンの使用が避け難い.その際,国内で承認さ
時間が異なるため,蚊の対策をとる時間帯はそれ
れている定期予防接種に該当するワクチンでは
ぞれの流行状況に応じて判断する必要がある1).
「予防接種健康被害救済制度」
,任意予防接種に該
予防法として,危険な時間帯は外出を控え,屋内
当するワクチンでは
「医薬品医療危機総合機構法」
への蚊の侵入を防ぐために殺虫剤や蚊取り線香を
による救済制度が適応される.しかし,未承認ワ
用い,就寝時は蚊帳も使用する.外出時は,長袖,
クチンはそれらの補償の対象とはならないことの
長ズボンを着用し,露出部に昆虫忌避剤を塗布す
説明が必要となる.
る1).昆虫忌避剤(いわゆる「虫除け」)は,N,N
2)マラリア予防
蚊の曝露予防と予防内服に大別され,ここでは
予防内服について述べる.
現在,国内ではメフロキン,アトコバン/プログ
アニル合剤が承認されている .後者は,費用が
1)
ジエチル 3 メチルベンザミド(DEET)を含んだ
ものが最も効果が高く,使用が推奨される.製品
により DEET の濃度が異なり,海外ではより濃度
の高いものが販売されている.
4)旅行者下痢症対策
高価なため長期滞在者には好まれない傾向がある
海外渡航者の健康被害のなかで最も頻度が高い
が,他の抗マラリア薬と比較しても安全性と忍容
ものである7).1 日 3 回以上の非有形便,腹部の疝
性が高く,副作用の出現による中断率が最も低い
痛,倦怠感,嘔気・嘔吐などを呈するもので,平
といわれている5).マラリアに対する予防内服の
均罹病期間は 3∼4 日である8).予防が重要であ
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り,汚染された水や食物(生野菜,果物類など)
渡航医学に関する専門外来で,渡航者の背景の
を避ける必要がある.スタンバイ治療のため,抗
情報を得るためには時間を要することから,病院
菌薬や下痢止め,経口補水液(ORS)を持参する
ホームページのフォーマットにあらかじめ入力し
ことも推奨される.経口抗菌薬として成人ではレ
てもらうなどの工夫がなされていることもある.
ボフロキサシンが使用され,小児ではアジスロマ
実際の診療では,経済的な事情や出発までの時間
イシンが使用されることが多く,ORS としては
により予防対策に制限があることもあるが,本症
OS 1® の粉末製剤などがある.
例では最大限の対策を行う場合を想定した.
5)高山病予防
1.渡航者の情報
高山病は,2,400 m 以上の高度へ急速に上昇し
年齢:夫婦(ともに 35 歳),子ども 1 人(8 歳)
.
た際に生じる3).低酸素により,ホルモン調節の
居住地:横浜市内.
失調を通じて体液貯留の異常をきたし,間質の浮
既往歴:基礎疾患なし,アレルギーなし.
腫を起こすことが病態の中心となる.頭痛に加
予防接種歴:家族全員が小児期の定期接種はす
え,消化器症状(食欲不振,嘔気,嘔吐)
,倦怠感
べて接種済み.
または虚脱感,めまいまたはもうろう感,睡眠障
罹患歴:水痘・ムンプスは全員が罹患済み.
害を伴う1).
経済状況:渡航にかかわる費用に制限は不要と
高山病予防は,ゆっくり登ること(2,400 m 以
のこと.
上では 1 日 300 m 以下の登上速度)8)が最も有効と
される .予防薬としてアセタゾラミドが代表的
9)
出発までの期間:2 カ月間
2.渡航内容
である .治療は,高度降下が最も簡単かつ効果
地域:ケニア.
的である.
期間:10 日間.
10)
6)海外での医師の探し方
短期渡航者の場合,宿泊先のホテルの紹介や,
目的:観光(サファリツアー).
3.予防計画
海外旅行保険のコールセンターに連絡し,提携病
ワクチン推奨度は,渡航者における頻度の高い
院の紹介を受けることが勧められる.長期渡航者
疾患と重症化するリスクの高いものが対象となる
の場合,予めホームドクターを確保し,日頃から
(図 2).渡航先での最新の感染症情報は,表 1 に
健康管理をしてもらう方法が推奨されている.こ
示したホームページなどから収集し必要な予防計
れにより,健康問題の発生時に迅速に対応しても
画を立案する.
らうことができる1).
予防接種:ケニアは,① 衛生環境が良好である
医療機関情報は,外務省渡航関連情報や海外邦
とはいい難く,腸チフスや A 型肝炎などへの備え
人医療基金(表 1)
,旅行保険会社のホームページ
が必要である,② WHO の黄熱汚染国に指定され
などから得られる.医療システムに関する情報
ている,③ 髄膜炎ベルトの地域に含まれている.
も,外務省渡航関連情報の中で国別に詳しく紹介
また一般論として,④ 野生動物と接触の恐れがあ
されている.
る場合は狂犬病のリスクもある,⑤ B 型肝炎は性
Ⅱ.事例解説
「家族 3 人(父 35 歳,母 35 歳,男児 8 歳)で,
2 カ月後にケニアにサファリツアーに行く予定
なのですが,どんなワクチンを接種しておくの
がよいでしょうか? ワクチン以外にも何か気
をつけたほうがよいことはありますか? お金
のことは気にせず,できる対策はすべてとって
いきたいと思っています」
行為や汚染された医療器具の使用で感染し得る
が,感染経路が不明な場合もあり,実際にはいつ,
どこで,感染の危険性に曝されるかはわからな
い,⑥ 破傷風菌は世界中の土壌に存在し,傷口か
ら体内に侵入し感染する.以上のことから,渡航
前に接種するワクチンとして腸チフス,A 型肝
炎,黄熱,髄膜炎菌,狂犬病,B 型肝炎,破傷風
が候補として考えられた.渡航の期間や目的を踏
まえると,各疾患の頻度やリスクが最大であると
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IMPACT
High
CFR>10%
or
Frequent
Sequelae
Meningococcal
Yellow Fever Disease
Poliomyelitis
Vaccination
Essential
Japanese Encephalitis
Hepatitis B
Intermediate
CFR<10%
and/or
Sequelae
Tetanus
Rabies
Diphtheria
Hepatitis A
(risk exposure)
Typhoid Fever
Low
CFR<2%
Cholera
Measles
Influenza
INCIDENCE
Very Low
<0.1
Low
0.1∼0.9
Intermediate
1∼99
High
100
per 100,000
図 2 開発途上国への旅行者におけるワクチンの評価(文献 12)より引用)
表 4 事例解説:本症例におけるワクチン接種スケジュール案
*1
黄熱(生)
A 型肝炎
髄膜炎菌
B 型肝炎
破傷風*2
狂犬病*3
腸チフス
0 週
2週
4週
6週
8 週
は 2 回目ワクチン接種推奨期間
*1
黄熱ワクチンは検疫所で接種するため,基本的に他のワクチンとの同時接種ができない.
*2
破傷風ワクチンは,DPT の追加接種後 10 年経過していない小児には不要である.
*3
国産品は,現在,曝露前接種用としては入手困難である.今回は,輸入ワクチンを用いる計画とした.
(文献 1,6)を参考に作成)
は評価されないものの,要望もあることから,す
トリパノソーマ症(アフリカ睡眠病),サンチョウ
べての接種を行う計画とした.その場合の接種ス
バエによるリーシュマニア症,ブユによるオンコ
ケジュール案を表 4 に示す.この場合,約 5 週間
セルカ症などがある.前述の通り,虫除け対策は
で必要な予防接種が完了する.
重要である.
マラリア予防:ケニアでは,ナイロビを除くほ
その他:旅行者下痢症や,現地での観光プラン
ぼ全域で 1 年を通してマラリアへの注意が必要と
によっては高山病対策についても考慮する必要が
なる.特に流行地域に長期滞在する場合は,マラ
リア予防薬の服用が勧められる.
ある.
4.症例のまとめ
昆虫媒介疾患の予防:蚊媒介疾患である黄熱,
家族 3 人で,2 カ月後からサファリツアーのた
マラリア,デング熱の他に,ツェツェバエによる
めケニアへ 10 日間旅行する予定である.予防対策
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をとることが可能な疾患として腸チフス,A 型肝
2010
5)Schlagenhauf P, Tschopp A, Johnson R, et al:
炎,黄熱,髄膜炎菌,狂犬病,B 型肝炎,破傷風,
Tolerability of malaria chemoprophylaxis in
マラリアなどがあげられ,出国までに予防接種や
non immune travelers to Sub Saharan Africa:
予防内服の実施が推奨される.その他にも昆虫媒
multicentre randomized, double blind, four arm
study. BMJ 327:1078 1081, 2003
6)マラリア予防専門家会議:日本の旅行者のための
マラリア予防ガイドライン 2005.フリープレス,
東京,2005
7)Gary B, Phyllis E, et al:CDC Health Information
for International Travel 2014:The Yellow Book,
Oxford University Press, Oxford, 2013
8) Jong, EC Sanford C:The travel and tropical
medicine manual forth edition. MEDSI, 2008,
322 332
9)Beidleman BA, Fulco CS, Muza SR, et al:Effect
of six days of staging on physiologic adjustments and acute mountain sickness during
ascent to 4300 meters. High Alt Med Biol 10:
253 260, 2009
10)Leaf DE, Goldfarb DS:Mechanism of action of
acetazolamide in the prophylaxis and treatment
of acute mountain sickness. J Appl Physiol
102:1313 1322, 2007
11)Hill DR, Ericsson CD, Pearson RD, et al:The
practice of travel medicine:guidelines by the
Infectious Disease Society of America. Clin Infect
Dis 43:1499 1539, 2006
12)Steffen R, Connor BA:Vaccines in travel
health:from risk assessment to priorities. J
Travel Med 12(1)
:26 35, 2005
介疾患や旅行者下痢症,高山病などの対策が必要
である.
結 語
日本人の海外渡航者は増え続けているが,渡航
者や医師の渡航医学に関する知識や認識はいまだ
不十分といわざるを得ない.われわれは,渡航の
際に考慮すべき事項をまとめ,事例解説を行うこ
とで,一連の診療の流れを提示した.近年,小児
を含む海外渡航者が増加していること,また渡航
医学自体がさまざまな領域にまたがる総合的な学
問であることから,われわれ小児科医が大いに貢
献できる分野ではないかと考えられた.
文 献
1)濱田篤郎:トラベルクリニック 海外渡航者の診
療指針.医学書院,東京,2013
2)Steffen R, Rickenbach M, Wilhelm U, et al:
Health problems after travel to developing
countries. J Infect Dis 156:84 91, 1987
3)Dupont HL, Steffen R:Textbook of Travel
Medicine and Health, BC Dcker, 2001
4)日本渡航医学会 海外渡航者のためのワクチンガ
イドライン 2010 作成委員会:海外渡航者のため
のワクチンガイドライン 2010.協和企画,東京,
*
*
*