キューバ共和国医療情報 以下は必ずしも最新の医療事情ではありません。詳細(特に緊急時対応や予防薬の 服用方法など)については現地医療事情に詳しい医療専門家から常に最新のアドバ イスを受けるようにしてください。 最新更新履歴:2016 年 1 月更新 1.赴任前の準備 (1)予防接種 入国に際し義務付けられている予防接種はないが、破傷風、狂犬病、A 型肝炎、B 型肝炎、腸チフスの接種を推奨する。任国で接種可能なワクチンはキューバ製(また はブラジル製)であり、WHO により問題ないとされているものではあるが、本邦で接 種を済ませてからの赴任が望ましい。 (2)その他の準備 使い慣れている常備薬があれば持参するとよい。一般薬は薬局で購入可能である が、キューバ製が主体。日本の薬局で購入できるような感冒薬や胃腸薬、湿布薬(貼 るタイプ)など入手困難であり、バンドエイドや衛生材料も種類が少なく、品質も良くな い。歯科治療は可能ではあるが日本で済ませることが望ましい。眼鏡、コンタクトレン ズの入手は、処方箋なしで購入可能で、ソフトコンタクトレンズが 15,000 円程度。コン タクトレンズのケア製剤についても購入可能であるがメーカー等指定がある場合は持 参が望ましい。また在庫が不安定なことも多い。 2010 年 5 月より外国人は入国の際に海外旅行傷害保険に加入が必須条件になっ ており、加入証明書のコピーを持参することが必要である。 2.医療事情 キューバ国民は医療を無償で受けることができる。外国人(観光客、駐在員等)は 有料である。医療機関は全て公的施設で、プライベート施設はない。外国人が受診で きる医療機関は全国各地にあり、SMC(Comercializadora de Servicios Medicos Cubanos S.A, キューバ医療サービス流通会社)という外国人向けの医療サービス を 行 っ て い る 会 社 が 発 行 し て い る パ ン フ レ ッ ト や Web サ イ ト (http://www.smcsalud.cu/smc/es)で最寄りの医療機関を探すことができる。首都ハ バナにおいてはシーラガルシア病院が推奨される。 医療費の支払いについては、外国人の場合は上記 SMC の中の「ASISTUR 」とい う組織が一括して対応する。本人払いではなく、保険会社から直接支払いをする場合 の窓口は各医療機関ではなく、外国人の医療費の保険会社との会計窓口になってい る。 キューバの医療システムは 3 層構造で、【一次医療】家庭医・ポリクリニコ(総合診 療所)→【二次医療】州立病院 →【三次医療】大学病院・研究センター となっている。 1 人の家庭医が住民数百~3000 名ほどを担当し、予防医療~一次診療を行う。全国 民がどこかの家庭医でカバーされている。検査(採血、心電図、超音波、レントゲン、 All Rights Reserved, Copyright (c) 2016 Japan International Cooperation Agency 点滴など)が必要な場合は地域のポリクリニコ(24 時間対応で入院可能)で実施する。 西洋医療の他、針、灸、マッサージなどの伝統医療も盛んに行われている。ポリクリコ で対応できない場合は、全国 15 州に所在する 152 か所の州立病院へ移され、最終 的には 15 か所の三次医療対応可能な大学病院での対応となる。三次医療レベルの 病院は、ハバナ市とビシャクララ州等 3 州にあり、その他11州は二次医療レベルの 病院となる。キューバは医療先進国とも言われ、三次医療レベルの病院では高度医 療も期待できる。 日本人医師はおらず、日本語が通じる医師もいない。英語を話す医師もいるがス ペイン語が主体となる。 (1)医療機関 首都ハバナ市 CLINICA CENTTALK CIRA GARCIA シーラガルシア病院 http://www.cirag.cu/ 外国人向け医療機関、三次医療レベル 所在地:Calle 20 No.4101 Esq.41. Playa. La Habana, Cuba 電話:(53)(7)204 281 外来予約はメール、Web、電話で可能 診療時間:一般医:8:30~16:00、 専門医:9:00~15:30 診療科:産婦人科、熱傷、感染症を除く全ての診療科目、40 床(個室) 医療施設等:ICU3 床(ICU 専門医常勤】、救急車 5 台(ICU 救急車あり)、希望すれ ば往診も可能。CT、MRI、心臓血管撮影/治療可能。 ER は 24 時間体制で、夜間は 4 名(内科、外科、麻酔科、ICU)の医師 が常駐し、他科はオンコール体制。 院内に薬局あり。 病室はすべて個室で 40 床(1 泊 80CUC)。VIP ルームあり。 デング熱等感染症の場合は、感染症専門病院へ移送となる。 CIMEQ(Centro de investigaciones Medico Quirurgicas) シーメック http://www.sld.cu/sitios/cimeq/ 所在地:Call 216 esq. 13. Siboney. Playa Ciudad de La Habana.Cuba 電話:(53)(7)273-6548、(7)858-1000(emergency) キューバ政府や軍関係者が主に利用している内務省の総合病院。外国人の受診可 能であるがシーラガルシア病院の方が外国人向けである。 地方 ビシャクララ市 Amaldo Millian Castro 病院 キューバ中部にあるビシャクララ州の州都にある第三次医療機関。施設敷地に心臓 センター、癌センター、小児・母子センター、医学校などがある。 所在地:Carretera a la Pollera, Villa Clara 電話:(53)(42)271 234/272 016 All Rights Reserved, Copyright (c) 2016 Japan International Cooperation Agency 診療時間:月~金:8:00~17:00、土:8:00~12:00、ER は 24 時間対応 診療科目:小児、産婦人科、心臓血管科以外のすべての診療科。620 床。 医療施設等:CT、MRI 血管造影、超音波、マンモグラフィ等、日本の総合病院に準じ た施設である その他:外国人専用の外来診療室、受付あり。外国人用入院病室 5 室あり(2015.10 月末現在設備の改修中) 首都以外に三次医療施設がある地方 3 州のうちの一つである。 腎臓移植、骨髄移植, 肝細胞移植等高度医療が行われている。 (2)緊急時の対応と措置 救急車は、SIUM(Sistema Integrado Urgencia Medicas 総合医療救急サービ ス)により、手配が可能である。電話:救急車 104(消防 105、警察 106)。 各病院にも救急車があり手配可能である。 地方から首都への移動も必要に応じて、上記救急サービスを利用可能(有料)。 外国人患者の要望に応じて、母国へ帰国するための緊急移送も海外旅行傷害保 険のサービスを利用した実績あり。(医療的に対応できずに、第三国へ移送する必要 が生じることはキューバにおいて想定されていない)。緊急移送の際の医療費支払い は、上記に記載のとおり、「ASISTUR」という組織が窓口になる。 3.医薬品、衛生用品 (1)携行することが望ましい医薬品 使い慣れている常備薬や、持病薬があれば持参する。湿布薬(貼るタイプ)、うがい 薬、虫除け、虫刺され薬(日本で売っているような製品)は入手できないため、必要な 場合は携行すること。キューバはデング熱があるため、防蚊対策は肝要である。現在 中南米カリブ地域でも流行しているジカウィルス感染症については、キューバにおい て感染例の報告はないが、予防として防蚊を徹底すること。医薬品に限らず、すべて のものに言えることであるが、品揃えが一定されず在庫切れも多く流動的である。 (2)現地で調達できる医薬品 キューバ製の医薬品が主体となるがたいていのものは病院内の薬局、市中薬局で 入手できる。 (3)現地で調達できる衛生用品 生理用ナプキン、避妊具、歯ブラシ、バンドエイドなど衛生用品はスーパー、薬局な どで入手可能であるが品質はあまりよくない。ナプキンは 10 個で 450 円程度と高価 である。化粧用のコットンや綿棒は購入できない。医薬品と同様に在庫切れのことも 多く、入手できる時に購入しておく必要あり。ガーゼなどの衛生材料も大型スーパー や薬局で購入可。キューバではティシュペーパー(箱)は入手できず、トイレットペーパ ーは質が悪くかつ高価である。 All Rights Reserved, Copyright (c) 2016 Japan International Cooperation Agency 4.妊娠、出産、育児 (1)妊娠した場合の対応 産科の医師を探し、受診する。シーラガルシア病院では妊婦健診は可能だが、分 娩の対応はなく、分娩は国立母子病院で行う。キューバの乳児死亡率は低いが、妊 産婦死亡率が高く、妊娠中の管理や分娩・周産期管理についての状況は不明なため 妊娠が判明したら、安定期に早めに本邦への帰国することを勧める。 (2)出産後の対応 出産、分娩に関する情報は少ない。乳幼児の予防接種、乳児健診は可能である。 乳幼児予防接種スケジュール ※ワクチンはキューバ製である。 ワクチン名 接種年齢 追加接種 BCG 出生時 なし ポリオ(経口、生ワクチン) 出直後、3 歳、9 歳 HB(B 型肝炎)母体陽性 出生後 12-24 時間、 なし 1、2、12 ヶ月 HB(B 型肝炎)母体陰性 出生後 12-24 時間 DPT+HB (母体陰性) 2、4、6 ヶ月 (ジフテリア・百日咳・破傷風・B 型 肝炎) DPT 18 ヶ月 Hib 2、4、6 ヶ月 髄膜炎菌性髄膜炎 B+;C 3、5 ヶ月 なし P.R.S(麻疹、風疹、耳下腺炎) 12 ヶ月、6 歳 DT(ジフテリア、破傷風) 6歳 AT(腸チフス) 9-10 歳、12-13 歳、15-16 歳 TT(破傷風) 13-14 歳 (3)育児 哺乳びん、チクビ、粉ミルク、紙おむつ、ベビーパウダー、ベビー石けん、乳幼児用 衣類などの育児用品は、スーパー等で入手可能だが、品揃えはよくなく、在庫も流動 的である。中国製が多く日本製はない。 5.手術 (1)現地で可能な手術 二次医療レベルの州立病院では様々な手術を行っており、首都の病院(シーラガ ルシア病院)であればある程度安心した治療を受けることができる。 (2)手術設備の状況 各病院基本的な設備は整っている。 All Rights Reserved, Copyright (c) 2016 Japan International Cooperation Agency (3)その他の留意点 医療事情が良く、母国より安価な治療が受けられるため、キューバへ治療目的に 渡航(医療ツーリズム)する外国人が増加している。美容整形や男性泌尿器科手術、 脊椎の内視鏡手術などが多いとのこと。 6.現地での傷病 (1)一般の疾病 上気道感染や旅行者下痢症のような胃腸症状が起こりやすい。冬場(1-2 月)は気 温も低くなり風邪を引きやすい気候となる。上道水の消毒はされているが水道管の老 朽化等の問題から衛生が十分ではなく、水が問題の下痢や食中毒もある。飲用水は ボトルウォーターを飲むこと。またキューバにおいても高血圧や糖尿病等の生活習慣 病罹患者が多く、食生活や喫煙等の影響から心臓血管疾患、脳血管疾患患者が増 加している。 (2)風土病、感染症 キューバで留意する感染症は、①デング熱、②レプトスピラ症、③ジアルジア症、 ④アメーバ赤痢、⑤コレラ、⑥腸チフス、⑦A 型肝炎、⑧狂犬病、等である。 マラリアはない。ワクチンで予防できる疾患(A 型肝炎、腸チフス、狂犬病)は予防 接種をすることが推奨される。食品や水の衛生に留意し、防蚊対策を徹底すること。 ヒトの狂犬病 2006 年に 1 例の報告があるが、それ以前 40 年は発生ない。HIV 感染 者の実数は不明だが、政府のコントロール下にあるとのこと。現在中南米カリブ地域 でも流行しているジカウィルス感染症については、キューバにおいて感染例の報告は ないが、予防として防蚊対策を徹底すること。 (3)有害動物、病害虫 デング熱を媒介する蚊や、咬まれると狂犬病を発症する可能性のある野良犬がい る。ソファやベッドにダニや南京虫がつくこともある。 動物ではないが、魚によるシガテラ中毒(食中毒、知覚過敏を主とする神経症状が 特徴)がある。サイクロン等でサンゴ礁が破壊されることにより、有害なプランクトンが 発生しそれを餌にする魚がシガテラ毒を持つ。シガテラ毒は加熱、冷凍しても毒が消 えないため、サイクロン発生時期の近海で獲れた(サンゴ礁)魚は注意すること。 7.保健衛生 (1)飲料水 水道水は飲料としては不適であり、煮沸またはミネラルウォーターを利用すること。 ミネラルウォーターはスーパーで購入可能。キューバ製は 1 種類のみ。 (2)濾過器の入手 濾過器の使用は一般的ではなく、入手は困難 (3)その他の留意点 なし。 All Rights Reserved, Copyright (c) 2016 Japan International Cooperation Agency
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