さいたま緑のトラスト地

福祉・環境科 第2班
さいたま緑のトラスト地
≪高尾宮岡の景観地≫
保全活動と今後の取り組み
柚
木
小
川
小
池
田
秋
山
広
末
深
町
市
野
長
谷
川
松
原
小
団
扇
山
口
メンバー紹介
目
柚木
貞雄(世話人)
秋山
圭子
小池田洋子
広末
市野つぎ子
小団扇省三
深町登美子
小川マレ子
長谷川宗壽
山口
次
1
2
3
4
5
6
7
8
はじめに
松原洋平(副世話人)
・・・・・・・・・・・
ナショナルトラスト運動
・・・・・
埼玉県内のトラスト運動 ・・・・・・・
高尾宮岡の景観地 ・・・・・・・・・
現地学習の実践活動記録 ・・・・・・
活動記録 ・・・・・・・・・・・・
禎孝
22
22
23
24
28
36
環境オピニオン ・・・・・・・・・・ 37
終わりに ・・・・・・・・・・・・・ 40
登
1.はじめに
月の周回衛星“かぐや”が写した地球は極めて美しくおだやかに輝いてい
ます。しかし、これとは裏腹に今、地球上に様々な異変が起きています。地
球温暖化や砂漠化、水不足、生態系の破壊など、どれひとつとっても深刻な
問題です。実は地球上には、3,000 万種の生きものが暮らしています。ひと
つひとつの命が、個性と役割を持ち、互いを必要として生きています。「生
物多様性」と呼ばれるこの命のつながりが、豊かな自然環境を育んできまし
た。私達人間は、いろいろな生きものの存在に支えられ生きているのです。
しかし人間が起こすさまざまな活動が原因で、生物多様性は急速に失われよ
うとしています。人間は自然を作り出すことは出来ません。
ところで、私達が暮らしている埼玉県では、森林のもつ機能の低下や、多
様な生物の保全低下、都市化の進展による平地林や里地の減尐等の危機に直
面しています。このような問題を身近
な北本市の西部(荒川の東側)に位置
する「さいたま緑の保全 8 号地高尾宮
岡の景観地」を選び、ここを学習の拠
点として、大切な自然を守っていくに
は、何をすべきか?また各地のトラス
ト地を訪ね、トラスト地の取得と保全
について学び、これからの我々の道標
高尾宮岡の景観地
にしたいと思います。
2.ナショナル・トラスト運動
美しい風景、歴史ある建物や町並み、懐かしいふるさとの風景を残したい
と思ったことはありませんか?
一人ひとりが尐ない負担で、又、企業からも寄付を募り、自然や歴史的な
環境を守ろうという運動が「ナショナル・トラスト運動」です。
豊かな 自然を将来に引き継ぎ、野生の生きものやそのすみかを確実に守
ることができる有効な方法です。今から 100 年前に、英国で始まりました。
≪英国ナショナル・トラスト≫19世紀にイギリスで産業革命とともに自然
が急速に失われるなかで、国民自らが大切な自然環境を守っていく活動とし
て、1895 年に非営利法人「英国ナショナル・トラスト」が設立されました。
100 年以上たった今、英国ナショナル・トラストは、エリザベス女王に次ぐ
広大な面積の土地を所有する組織に成長しました。
350 万人(17 人に 1 人)を超える会員の支援によって、約 25 万 ha (756、
250、000 坪) が確保されました。最近では野生の生きものたちの生息地の保
護にも力を入れています。
このように英国ナショナル・トラスト活動が広がったのは国民の意識の高
さ(保護すべき地域を管理・保全し次世代に伝える)と、ナショナルトラスト
法によって守られているからです。
以下、そのポイントをあげておきます。
譲渡不可宣言
取得した資産の内、特に保存すべき価値の高いものは譲
渡不可とし永久保存する。
相続税の免除
相続が発生した時、資産を寄付すると相続税が
非課税になり、一部公開が条件で住み続けられる。
≪日本のナショナル・トラストの現状≫
日本のナショナル・トラストがはじまったのは、高
度経済成長期まっただなかの鎌倉でした。
1964 年、古都鎌倉を乱開発から守るために、作
家の大佛次郎さんが立ち上り、鎌倉市民と共にナシ
ョナル・トラスト活動が展開されたのが始まりです。
現在、50 以上の団体が地域に根ざした独自のナシ
ョナル・トラストを展開し、土地や建物の取得をは
じめ普及啓発、環境教育、まちづくりをしています。
日本のナショナル・トラストも 40 年以上の歴史がありますが、ナショナル・
トラストを支える法律が整えられていません。活動が公益的であっても、通
常の土地取引と同じ税が課せられ、トラスト団体が「永久保存」のため土地や
建物を所有しているということで固定資産税、維持管理費捻出のための収入
にも法人税など厳しい状況にあります。ナショナル・トラストを支援する法
律の整備が待たれます。
3.埼玉県内のトラスト運動
埼玉県内にはナショナルトラスト運動を推進している機関が3系統あり
ます。第一は埼玉県が進めている「㈶さいたま緑のトラスト協会」であり、昭
和 60 年に基金が設立されました。2番目は㈶埼玉県生態系保護協会が指導・
運営しているトラスト団体があります。それは「見沼ランドトラスト」「サク
ラソウトラスト」「上福岡ビオトープトラスト」「おおたかの森トラスト」及び
「水のトラストしよっ基金」であります。3番目は狭山丘陵の自然環境を保全
する目的で出来た環境省認可の「㈶トトロのふるさと財団」であります。この
中で顕著な活動をしている4団体を一覧表にまとめました。(単位:万円)
トラスト団体名
所在地
代表者
購入保全地名称
㈶さいたま緑の
さいたま市
ト ラス ト保全 地
トラスト協会
進士五十八
第 1~10 号地
㈶トトロふるさ
所沢市
トトロの森
と財団
安藤聡彦
1~10 号地
おおたかの森ト
所沢市
ラスト
足立圭子
サクラソウトラ
上尾市
江 川用 水路低 湿
スト
小川早枝子
地
所沢市北岩岡等
面積(ha)
購入
備
金額
その他
47.9ha
511,500
1.7ha
21,020
8.4ha
(含借用地)
3.0ha
(含借用地)
2,520
不明
考
詳細は下
表参照
H3 ~ 21
年購入
H7 ~ 21
年購入
H2 購 入
開始
≪さいたま緑のトラスト運動≫
県民・企業等から寄付を募り、土地や建物を取得・寄贈や遺贈を受け、優
れた自然や歴史的環境を県民共有の財産として保全し、次世代に引き継
ぐ運動です。
これまで取得された「緑のトラスト保全地」
保全地
名
称
所 在 地
面
積
取得年度
第 1 号地
見沼田圃周辺斜面林
さいたま市緑区南部領辻
1.1 ㌶
平成 2・3 年度
第 2 号地
狭山丘陵・雑魚入樹林地
所沢市上山口
3.4 ㌶
平成 6・7 年度
第 3 号地
武蔵嵐山渓谷周辺樹林地
嵐山町鎌形ほか
13.5 ㌶
第 4 号地
飯能河原周辺河岸緑地
飯能市矢颪ほか
2.3 ㌶
平成 10・11 年度
第 5 号地
山崎山の雑木林
宮代町山崎
1.3 ㌶
平成 13 年度
第 6 号地
加治丘陵・唐沢流域樹林地
入間市寺竹
11.2 ㌶
平成 14・15 年度
第 7 号地
小川原家屋敷林
さいたま市岩槻区馬込
0.7 ㌶
平成 12・13 年度
第 8 号地
高尾宮岡の景観地
北本市高尾
3.6 ㌶
平成 18 年度
第 9 号地
堀兼・上赤坂の森
狭山市掘兼
6.0 ㌶
平成 19 年度
第 10 号地
浮野の里
加須市北篠崎・多門寺
5.4 ㌶
平成 20 年度
第 11 号地
黒浜沼
蓮田市黒浜
未取得
平成 9 年度
未取得
私たち環境班11名全員「(財)さいたま緑のトラスト協会」に入会し、
各トラスト地でボランティアスタッフとして活動中です。
4.高尾宮岡の景観地
4.1 高尾宮岡の景観地の公開までのステップと課題
(1) 高尾宮岡の生態学的価値
JR北本駅から西へ 2.8km地点
の高尾 8 丁目付近一体に「まほろば
の郷」と称される場所がある。この
高尾宮岡の景観地を見た時、典型的
な里地であり谷津であることが分
かる。周囲は山林だけでなく屋敷林
を含めた地形の中に、ため池や湧水
湿地そして草地それに連なる水田
や畑・小川(水路)などを含めたいく
つかの環境から成り立っている。近接する北本市野外活動センターを含
めた「まほろばの郷」は広大な緑地と連携したことになる。高尾宮岡の景
観地には、高等植物 384 種(絶滅危惧種 10 種含む)野鳥 35 種(絶滅危惧
種5種含む)両性類・爬虫類・哺乳類 13 種(絶滅危惧種4種含む)昆虫
357 種(絶滅危惧種2種)が生息している。
(2) 保全8号地取得からオープンまでの経緯
①北本市では「高尾宮岡の景観地」を市民に啓蒙するため、住民参加型市
場公募債「北本ふるさと市民債」(総額 5、000 万円)を公募する。その
結果応募者は 420 名となり、抽選により 68 人が当選(内 42 人が 100 万
円)した。尚、指定地名称の「高尾宮岡の景観地」は埼玉県告示第 300 号
ふるさと埼玉の緑を守る条例により H14 年 3 月 5 日に緑の景観地とし
て、当時の土屋知事より指定を受けた名残である。
②埼玉県は「高尾宮岡のふるさと緑の景観地」の優れた自然環境を「さい
たま緑のトラスト保全第 8 号地」として保全していくため、自然環境調
査(調査会社:㈱環境・グリーンエンジニア)を実施すると共に保全環境
基本構想の検討に着手する(H17 年 11 月~H18 年 8 月)
③保全活用検討委員会が設置される(検討委員8名:座長;牧野彰吾/委
員:八谷美津子氏含む、事務局8名)検討委員会は平成 18 年 7 月 28 日
を皮切りに、北本市で 3 回開催され以下の三点が検討される。
ア)自然環境調査結果による検討
イ)保全整備基本構想の検討
ウ)保全活用基本構想等について検討
④埼玉県及び北本市は平成 19 年度、域内に散策路や湧水の保全対策整備
等を行い、平成 20 年 4 月 5 日(土)に一般公開された。
(3) 保全8号地の現状と課題
①緑のネットワークの立体的整備
オオタカ・ハイタカ・フクロウなどの鳥類が確認されている。従って北
本自然観察公園や隣接されている「まほろばの郷」と連携させ、「緑のネ
ットワーク」による環境整備が必要と考える。
②水辺・湿地環境の保全整備
湧水・井戸の利用により湿地の回復を考える。また域内に生活雑排水の
流入を防ぎ、湧水起源の流れと分離させる必要がある。
③水田の復元
水田の復元は景観的にも生物多様性の観点からも保全展開することが
相応しい。現在高尾保育園裏に田んぼが造成され、実験的に石戸小学
校の 5 年生が 5 月 26 日に体験学習の一環として田植えを行う。
④常緑広葉樹林への植生遷移
かつて林床管理が行われていたイヌシデ・コナラ林は現在シラカシ・シ
ロダモ・ヒサカキ・アオキ等の常緑広葉樹が低木層を中心に多く生育し
コナラ・イヌシデの世代更新候補の稚樹は殆ど見受けられない。
雑木林として維持していくためには、下草刈りや落ち葉掻き・間伐とい
った作業を定期的に行うシステムの構築が大事である。
⑤外来種の継続的な除去活動(摘出)
《植物》セイタカアワダチソウ・クワモドキ群落・オオアレチノギク
《動物》ウシガエル・アカミミガメ・ハクビシン
《鳥類》ガビチョウ(原産東南アジア)
⑥関連計画について
8号トラスト地に隣接して、上尾道路(R17 号バイパス)の建設が計画
されており将来、地区の景観も含めて環境への影響が懸念される。道
路は地区の東側に近接し、高架(約 17 ㍍)で立ちはだかるように建設さ
れる予定となっている。そのため飛来してくる鳥が道路の防音壁にぶ
つかる恐れがある。そのためハイタカやオオタカなどが飛来しなくな
ってしまう可能性がある。また地区内の湧水や湿地への悪影響等も想
定される。このため8号保全地区内の東側にバッファゾーンを設け、
主にスギ・シラカシ・ケヤキ等の植栽を行って高木の樹林帯を整備して
地区内の環境を保全していく必要があると思われる。
4.2 高尾宮岡の景観地に関連する法と県環境基本計画及び保全整備策と課題
環境基本法と緑のトラスト地(高尾宮岡の景観地)との関連図
環 境 基 本 法
埼玉県環境基本条例
関
連
条 例
●埼玉県ふるさと埼玉の
緑を育てる条例
関
連
法
●自然環境保全法
●自然再生推進法
●埼玉県自然環境保全条例
●自然公園法
●埼玉県自然公園条例
●環境影響評価法
●埼玉県希尐野生動植物の
●都市緑地法
種の保護に関する条例等
●外来生物法
●鳥獣保護法等
総
埼玉県環境基本計画
法令に基づ
目的達成のための
計
画
ゆとりとチャンスの
く計画等
埼玉プラン
分野別中期基本計画
整合
彩の国豊かな自然環境づくり計画
合
環境の保全及び創造に
関する県の各種計画等
埼玉県広域緑地計画
彩の国地域創造プラン
埼玉県地球温暖化対策地域推進計画
埼玉県森林・林業長期ビジョン
埼玉県ふるさとの川再生基本プラン
景観アクションプラン
埼玉県環境配慮方針
学校における環境教育基
彩の国さいたま環境学習実践指針等
本計画等
緑のトラスト保全8号地「高尾宮岡の景観地」の保全整備
策
(1) 課題などの整理(対象地の豊かな価値を伝えていくに当っての課題)
*生活スタイルの変化に伴う里山林の利用停止
*産業構造の変化に伴う土地利用形態の変化
*尐子高齢化社会等により地域文化の伝承の難しさ等があげられ、これ
が対象地内部において以下の事項を招いている。
◇谷津の構成要素の減尐や消失
◇池の開放水面の縮小、水辺エコトーンの衰退
◇水路の環境悪化
◇谷津の植生撹乱
◇里山林の常緑樹林化
◇竹林の拡大の進行
《豊かな資源性》
現在でも素晴らしい里山の景観が残っている
◎谷津地形に成立した豊かな湧水と清らかな流れ
◎谷津斜面を覆う歴史を感じさせる里山林と屋敷林
◎これらに依存する里山特有の動植物、湿地や水辺特有の動植物
◎郷土的な文化を保持する神社と年中行事
《考察》高尾宮岡の景観地の里山林、屋敷林と農耕地が一体となった農村
的な風景地域の核として存在する社寺と社寺林、これらの基盤
である谷津地形と湧水等を適正に保全、育成、活用しながら地元
の方々と調和のとれた里地を後世に継承し実現しなければなら
ない。
◆自然的な資源である、水と緑の適正な保全と育成
◆人文的な資源である、郷土的な風景と地域文化の継承と育成
◆貴重種の保全
(2) 基本的な保全活動
水環境の保全・復元・ 湧水と細流の保全(生活排水との分離)
育成
谷と水辺のエコトーンの復元と育成
水辺の生態的多様性の向上
生きもの環境保全・復 里山林の生態的多様性の向上
元・育成
貴重種の保全(高等植物 10 種、鳥類5種、
哺乳類等4種、昆虫2種)
郷 土 環 境 の 継 承 ・ 復 郷土の歴史を伝える利用形態(4 社、1寺、
元・地域的な連携の向 縄文晩期遺跡類等)
上
人的資源の積極的な活用
5.
現地学習の実践活動記録
5.1 北本自然観察園
私たち課題学習班は各自の学びたいことを
提出し、その学習テーマの理解と学習計画作
成のために埼玉県における自然学習、環境教
育の拠点施設で2月19日に、北本自然観察
指導員『高野徹先生』によるレクチャー及び
園内観察からスタートしました。また隣接す
る荒川ビオトープも案内していただきました。
(5/21)北本自然園にて
それから3ヶ月ほど過ぎた5月21日、再び
北本自然観察園にて「自然公園管理手法」についての学習をしました。私たち
が今自然環境保全(生物多様性の保全)に関し、何ができるかを分かりやすく
説明していただきました。
○ 生物に関心を持ち、正しく理解する
○ 生態系・種・遺伝子に目を向ける
○ 地域の「生きもの台帳」を作ってみる
○ 各市町村でレッドデーターブックの整備も必要である
○ 環境評価・土地利用計画に意見を出す事も忘れずにする
○ 行政の支援を受ける 場合によっては立候補も NGO の立ち上げ
私は学習と観察を通じ、大量生産・大量消費のライフスタイルの中で環境
を保全・再生することの大変さを強く感じました。また“残っている里山は
戦前のような明るい林内を保持することは不可能に近く、別の見方からいか
に生物多様性を確保できるかの視点で考えることが良いのでは”との説明
を受けました。すでに大木となり利用見込みのない木々を目の当たりにし、
一方で木材資源大量輸入国日本の現状考えるに、何とかならないものかと思
いました。
5.2 早稲田大学〔所沢キャンパスA・B地区〕
(1)狭山丘陵と所沢キャンパス
早大所沢キャンパスは首都圏の緑の孤島
と呼ばれる狭山丘陵の一角にあり、狭山湖北
側の尾根と接しています。キャンパスが自然
B湿地で水生動物の観察
環境に恵まれているのは、狭山湖水源林から
連なるコナラの雑木林と谷戸部の湿地があるからです。現在、所沢キャン
パスの A 地区には武蔵野の雑木林が広がり、B地区には狭山丘陵最大の湿
地が存在し、多様な生物の生息環境が維持されています。この生物多様性
に恵まれた自然環境が大学の存在によって乱されないように、キャンパス
内には「自然環境調査室」が設置され、日々の調査活動を続けながら調和
と保全への提言を行っています。わが環境班は、当調査室長≪大堀聰先生
≫に依頼し、キャンパス内の湿地とその周辺の雑木林についての講義およ
びこれら地域の自然観察会を開いていただ
きました。
(2)B地区湿地では
所沢キャンパスでは校舎やグラウンドな
どを含んだ開発済みのA地区と手付かずの
市内最大の湿地(広さは 3 ㌶)をもつB地
区があります。もともとB地区は水田でし
たが、減反政策や大学の進出により水田は
(3/4)所沢早稲田大学キャンパス
放棄され、ヨシやミゾソバが繁っています。
B地区の開発は残された湿地の保護と活用を最優先に考えて慎重に対処さ
れることと思います。実際に観察したところでは、雑木林のあちこちから
湧き出る湧水によって維持され、トンボやホタルが生息できる水辺空間が
確保されているようです。また、周辺のコンクリート水路の垂直壁面には
生き物が移動しやすくするための細かい気配りがなされていました。
5.3 さいたま緑のトラスト保全第8号地「高尾宮岡の景観地」
(1)豊かな緑と歴史的環境宝庫
私たち環境班は 4 月 12 日に
当地区の環境保全ボランティ
ア指導員である『八谷美津子
先生』のご指導を仰ぎ、植物
観察と保全活動の心得を勉強
する機会が与えられました。
野外活動センターから県道を
横切り、「前谷津」に入る導入
路を整備するにあたり、八谷
先生から「持ち込まず」「持ち
(4/12)高尾宮岡の景観地にて
出さず」の精神を教えられま
八谷先生(下段中央)を囲んで
した。つまり整備するための
砂利を荒川から持ち込むことになっていたが、その土砂の中には外来生
物の種子が混入されている恐れあるため、北本市近郊の土砂で整備する
ことを進言し、今の導入路が整備されたことを教えられました。イネ科
のヨシやススキ・姫ガマ等が群生しそれらを一部伐採し開放水面が作ら
れ、ドジョウや日本赤ガエルのオタマジャクシが生息し、青鷺の採餌場と
なり啄んでいる姿を確認できました。この景観地には高等植物が 357 種
あり、うち絶滅危惧種が 10 種あります。今回確認出来たのは「カタクリ」
や滋養強壮剤のもととなる「イカリソウ」及び「イチリンソウ」などが確認
できました。
谷の奥にはコンコンと湧き出る神秘的な湧水があり、それが貴重な動
植物を支えています。また谷の最奥には宮岡氷川神社・厳島神社・須賀神
社が、わずか 50m四方に隣接し厳かな歴史的な雰囲気を漂わせていまし
た。昔から村の鎮守の神様であり、河川航行の安全・商売繁盛の神様とし
て信仰されてきたと思われます。また宮岡氷川神社前遺跡からは縄文晩
期の遺跡が多数出土していることを考えると、この景観地で古代から生
活していたことが分かります。帰途、ツル性の植物やオオブタクサ・セイ
タカアワダチソウ等の外来種の選別的除草について勉強しました。また
野犬に襲われた狸と思われる骸は保護活動の難しさを教えられました。
(2)保全活動スタート
4 月 4 日は私たち環境班が「緑のトラ
スト協会会員」となって初めての活動
日です。まず 8 号地の斜面林に群生し
ている竹林の整備を行いました。指導
員の『八谷美津子先生』より説明を受
けました。この斜面林にはシラカシ・シ
(4/4)高尾宮岡ボランティア活動
ロダモ他多様な植生の中に竹林が群生
している一帯があります。竹林が群生すると他の植物が育ちません。竹
林には鳥たちの隠れ場としての役目もありますが、今回は部分的に伐採
をして陽のあたる場所を確保する作業という事でした。他のメンバーが
斜面林の水辺に近いところの竹を伐採し、私たちはそれを運び出す作業
を行いました。
作業終了後八谷先生のもと斜面林の中を植物観察し、樹林群の下に数
株のシュンランのきれいな花や、狸の糞場も観察しました。
(3)土地の人に聞く
この8号地の東方に、湧水池のある厳島神
社があります。そのすぐ隣の農家の庭先に赤
いペンキを塗った舟がありました。ご主人の
新井さんにお話を伺いました。この舟を荒川
や鳥羽井沼などに運んで、うなぎやなまず・鯉
などを獲っています。9月になれば荒川では
鮎も釣れると話していました。又、荒川の河
荒川で釣り上げた鯉の魚拓
川敷で川の水をポンプで引いて、稲作もされ
ておられます。
新井さんはこの地域で生まれ育ち、現住地には昭和 40 年代から住んで
おられる。その頃この谷津にはまだ田
んぼが残っていたが、間もなく作られ
なくなり藪になってしまったそうです。
このままでは業者に埋め立てられ、い
つか公害問題などが起こりはしないか
と心配もされましたが、「高尾宮岡の景
観地」として保全された事により、歩道
石戸小 5 年生の田植え体験
が整備され藪も刈られ谷津がきれいになったそうです。
新井さんは地域でも神社の総代や阿弥陀堂の世話役などもされ、里山保
存会会員としても活動されています。5月にはトラスト地の中に田んぼ
を作り、地域の小学生に田植えの指導役もされました。「休日には小学生
が稲の育ち具合を見に来ているよ(^O^)」と楽しそうでした。「沢山の人が
この景観地の自然を楽しみに来てくれる事がうれしい」とも話して下さ
いました。
5.4 さいたま緑のトラスト保全第5号地「山崎山の雑木林」
県東部の大宮台地と低地が接する位置にある 1.3 ㌶の雑木林で所在地は
宮代町字山崎です。
“平成 12 年山崎山がトラスト 5 号地に選定され、保全計
画が検討された時期に、人材の育成が大切との考えから「山崎山こどもエコ
クラブ」を立ち上げ、活動はすでに 100 回目を
超えています“と語る、NPO 法人(宮代水と緑
のネットワーク)副代表理事『茂木俊二先生』
と、NACS‐J 自然観察指導員の『正能先生』の
案内で隣接する水田や、新しい村も含め自然観
察学習を行いました。<農のあるまち宮代>と言
われるだけに希尐な野草を多く見ることが出
<山崎山ほっつけ田んぼ>にて
来ました。
水田は江戸時代中期の開墾当時の様子を残
す、堀上田(ほっつけたんぼ)があり現在も田んぼの学校として活用され、昨年
東京から小学校9校、町内の小学校2校の 5 年生など 800 名が参加したと聞
きました。
新しい村では地元宮代の野菜農家が作った野菜の直売所や、ハーブ園や果樹
園が楽しめる観光農園になっています。
野草の保全地も確保され保全活動も活発
に行われています。チョウジソウが近くの
天地返しの場所で見つかり今、特にそれの
保全活動に力を入れているようです。(野
草を人工的に増やし観光に利用すること
(4/24)山崎山の雑木林にて
には異論もあります)
トラストの面積は小規模ながら周辺とのバランスがよく、自然を満喫する
ことが出来ました。
5.5 さいたま緑のトラスト保全第11号地
「黒浜沼」
蓮田駅から車で 12〜3 分の所に位置し 21
年度の保全地(7.5 ㌶)に指定されています
が、まだ取得は済んでいません。
(取得費の
(4/24)黒浜沼にて
割合は県が 2/3、蓮田市が 1/3)
《地形、環境の変化》 沼は
慈恩寺台地の南西部の「谷地」
の開口部が元荒川の氾濫によ
り土砂が堆積し、せき止めら
れて出来たものと推測されて
います。当時は一つの沼でし
たが今から 380 年位前、道を
作る為に沼は二つに分けられ、
上沼と下沼となりました。
1979 年、貴重な生態系を維
ホタルの里の観察学習
持しているとして、埼玉県自然環境保全条例に基づき「埼玉県自然環境保全
地域」に指定されています。
その頃までは釣り場として人気が高く、「午前 10 時頃来たのでは座る場所
も無い程だった」と NPO 法人黒浜沼の自然を守る会の『福田先生』が話して
おりました。釣人の捨てていったゴミや生活排水の流入で沼は汚染し、その
沼を取り巻く環境も悪化しました。沼の水質悪化を防ぐため、周辺の特定環
境公共下水道が整備され、1986 年埼玉県の「自然 100 選」に指定されたこと
から、捨てられていたゴミなどもボランティアの手で拾い集められ、尐しず
つ回復してきているそうです。
(ほたるの里)作り・・・ホタルの棲める環境づくりに成功
平成 8 年ごろ沼周辺のホタルは絶滅したのではと心配する中、何とか数匹を
捕獲することが出来たので、ホタルの棲める場所を造成し、そこに捕獲した
ホタルを放し、昔から生息していた黒浜のホタルを復元しました。
「黒浜沼周辺の自然を大切にする会」のメンバーの情熱が多くのホタルを
呼び戻したのです。
《トラスト地の特徴 》
浮水植物、沈水植物、挺水植物が群生(ヒシ,キンギョ
モヨシ,マコモ等)
絶滅危惧種の生息(ミズワラビ・ミズニラ・ワレモコ
湖沼の貴重な生
ウ・ジョウロウスゲ等)
態系
トンボ 21 種類が生息。(埼玉県の 1/4)貴重種や個体数
の尐ないトンボも生息(ベニイトトンボ・コフキトン
ボの雌の異色型・オオモノサシトンボ等)
多様な環境・田ん 野鳥の種類が多い。120 種類(埼玉県の 1/3 強)、遊禽
ぼ ( 谷 地 田 ) 雑 木 類・渉禽類、(カイツブリ・オオヨシキリ・シギ・カワセ
林・屋敷林等
ミ等)が主体
5.6 おおたかの森トラスト地と炭焼き場
<おおたかの森竹炭作成ボランティア活動>
(1) 資材置き場跡地がトラスト地として誕生
埼玉県西部に広がる雑木林には絶滅の危機に瀕しているオオタカが
生息しています。この地域は江戸時代
に新田開発が行われ、畑を乾燥と強い
風から守るために、住民により屋敷林
や大きな雑木林が作られました。農業
とともに生きてきた雑木林はオオタカ
のほか、キツネ・タヌキ・野ウサギなど
の多くの野生の生き物が棲む豊かな森
(5/7)煙霧の中の作業を終えて
になりました。ところが近年このよう
な雑木林が産廃施設や資材置き場などに転用され、日一日と雑木林が削
減されています。今回訪れた観察学習の場は、これまで解体業者がごみ
焼却を行っていた資材置き場(7、426 ㎡)でしたが、民間自然保護団体「お
おたかの森トラスト」(足立圭子代表)が、かっての森の再生を目指して
2008 年 3 月に購入したものです。このトラスト地は、みんなの広場・コナ
ラの森再生・疎林と水辺の創出・アカマツ山再生試験の4つのゾーンに
分けて、再生・整備するものです。敷地内では水辺のビオトープ作りやア
カマツ・コナラなどの苗木作りなども進行中で、自然再生活動が幅広い
市民参加による地域作りとして取り組まれている様子が観察できまし
た。
(2) おおたかの森炭焼き場で保全活動
ここは、同団体が借用している 12 ヶ所のトラスト地(約 7.6 ㌶)の一つ
で、炭焼き場として活用されています(他に椎茸作りも)。
取り出す前の竹炭
次の材料をセット
炭焼きは炭窯を使った本格的な方法ではなく、地面に穴を掘って焼く「伏
せ焼き」の方法を採用し、材料には地域の竹林で間伐したモウソウ竹が使
用されます。生産された竹炭・竹酢液や消臭用品などは販売され、その収
益金はトラスト地の購入資金の一部に当てられています。
さて、私たち環境班メンバーは、ほのかに立ち上がる煙霧の中で炭焼き
作業に没頭しました。以下、体験後の主な所見をあげてみましょう。
① 刈り出した木で炭焼き・キノコづくり・竹の有効活用を通して自然の大
切さを学ぶとともに、活動資金に当てることの実態を知ることができ
ました。
② 自然を守るスーパーウーマン『足立圭子さん』の行動力と、リーダーが
顔を真っ黒にして働く情熱的な姿に感動しました。
(3) 「おおたかの森」を守ろう―― 募金にご協力を!
私たちは呼びかけました!!
「一人の行動は小さくとも、みんなが動けば変えられる」
環境班が 5 月 7 日に㈶埼玉県生態系保護協会の紹介で訪ねた所沢市の「お
おたかの森トラスト」(足立圭子代表)は、所沢市と狭山市にまたがる「北
中・水野の森」の一部である所沢市東狭山ヶ丘 5 丁目にある 4、850 ㎡の平
地林の一部の購入を計画しています。
購入を所沢市及び県に働きかけてきましたが、今年度予算の措置は困
難となり広く県民に呼び掛け募金を募ることになりました。課題学習の
多大な成果を与えていただいた縁ある「おおたかの森トラスト」、に微力
ながら協力したいと考え、皆様方にもご支援をお願いした次第です。
募金(金額):目標は400万円(一口500円)
募 金 締 切:平成21年9月30日
6/26 朝日新聞(埼玉地区版)参照
福祉環境科内に呼びかけた成果
30名(47口)¥23,500円
5.7
見沼自然の家一日主(いちにちあるじ) <施設管理体験学習>
5 月 31 日班員 10 名は、さいたま市及び川
口市にまたがる見沼田んぼの中の 1 軒家、
見沼自然の家(川口市所有の築 140 年以上
の古民家で 30 年前まで居住していた)を「一
日主」体験学習のため訪れました。(財)埼玉
県生態系保護協会が川口市から管理を委嘱
されている「一日主」の内容は、古民家の掃
除や来訪者の応対をしながらゆったりと静
(5/31)見沼自然の家にて
かな自然の中で管理運営を一日体験するこ
とにより、多くの見沼ファンを育て「見沼田んぼ」の
自然と文化を守る活動を支えていくものです。午前
中は 2 名で主を務め、ほかの人たちは子どもエコク
ラブの『伊藤絹子先生』の案内で、自然の家周辺の
ランドトラスト 1・3 号地の自然観察と説明を受けま
した。来訪者は尐なく、静かに写真を撮ったり庭の植
物を観察したり、古民家内部を興味深く見学したり
していました。
野鳥のオオヨシキリや藪がないと住めないウグイ
スや他の小鳥たちが庭や周辺の林の中で囀り、静寂
さを際立てていました。そんな中で子どもの頃、海・
山人だった留守番の主の一人から古民家の軒下に見
(5/31)一日主
られる蟻地獄(ウスバカゲロウの幼虫)は、すり鉢状の穴を掘ってその底部で
滑り落ちてくる蟻を捕食する話や、クモが糸を張る様子などを話してくれま
した。私の知らない昆虫の世界の話などで、楽しく自然の学習ができました。
午後からは世話人一人が主となり、ほかの人は近くの緑のトラスト 1 号地
「見沼田んぼ周辺斜面林」へ移動しました。雤が強くなり一人残った主は 22
畳と土間の空間から忍び寄る湿気と孤独に耐え、夕方 5 時まで雤の観察に集
中できたようです。このようなことから詩も生まれカギを掛けて帰る頃には
詩人になっていました。
5.8
見沼田んぼ周辺斜面林
各トラスト地での状況把握するための学
習活動の一環として 5 月 31 日にトラスト
保全第 1 号地を訪問し、ボランティアの加
倉井憲一先生から説明を受けました。
1 号地は緑区南部辻領にあり、見沼代用水
東縁に沿った自然のままの斜面林です。広
(5/31)見沼田園周辺斜面林
い竹林と倒木もある自然林で構成され、植
生もかなり豊富なように見受けられました。このトラスト地の最大の特長は
斜面林に隣接する湾曲した見沼代用水の流れと、斜面林の前に広がる見沼田
圃が一体となったバランスであり、この優れた構成が自然環境や埼玉らしい
原風景としての景観を生み出しています。更にトラスト地の両端には開かず
の門で有名な、国昌寺と大きな山門で知られる総持寺の間に挟まれているこ
とも、保全のための重要な要因であると思われます。見沼代用水はコンクリ
ート護岸されていますが、トラスト地に接する部分は自然のままであり、川
幅も広くゆったりとした流れであることも価値を高めています。
この斜面林の面積は、サッカーコートより若干大きい 1.1ha です。平成 2
年に 7.1 億円の巨費で 1 号地として取得されました。すでに 19 年が経過して
おり保全のために第 1・3 土曜日にボランティア活動も行われています。主な
活動は竹林の繁茂を防止するための伐採管理であり、一区域を完全に除去し
て竹林に変わる植生の変化を観察しています。植物観察会も行われています
が基本的には植生保護のために立ち入り禁止
です。現在も見沼の自然は、東西の用水路に沿
った散策路や斜面林が繋がりを持って分布し
ています。見沼田んぼは都心から 20~30 ㎞圏
に 1、250ha を超える農地の広がる貴重な大規
模緑地空間です。見沼の自然がこの様に維持さ
れてきた最大の要因は、川口市や都心を洪水か
(5/31)見沼代用水の様子
ら守るために農地の転用を厳しく防止した「見
沼三原則」であることが分かります。この原則に変わって、1995 年に「見沼田
んぼの保全・創造・活用の基本方針」が制定され、農家や土地所有者・地域・都
市住民と行政が一体となって、保全・創造・活用を図るための土地利用の方策
として施行されています。これは将来的な見沼の自然保護や土地の活用等に
密接に関与する規則であり、すでに種々の難しい問題も派生していますが今
後の展開を注視したいと思っています。
6.活動記録
№
1
2
3
4
5
6
日
H21.
2.19
H21.
3. 4
H21.
3.31
H21.
4. 4
H21.
4. 9
H21.
4.12
人
10
9
5
6
7
4.24
所
8
4.24
自然観察公園)
公園観察
(自然学習指導員)
早稲田大学自然環境調査
早大自然環境
大堀 聰先生
室&トラスト保全2号地&トトロ
調査室研究課
(早稲田大学自然環境調査
の森 1・3 号地
題体験
室代表)
船で荒川を下
大石昌男先生(NPO 法人東
りながらの水
京湾と荒川・利根川・玉川を
環境勉強会
結ぶ水フォーラム代表)
埼玉県緑のトラスト保全 8 号地
斜面林に群生
八谷美津子先生
「高尾宮岡の景観地」ボランテ
する笹竹の伐
〔財〕埼玉県生態系保護協
ィア活動
採整理
会北本&桶川支部長
県政による水
田中深貴男先生
環境出前講座
(農林部生産振興課)
p○m
9
10
11
H21.
4.30
H21.
5. 7
H21.
5.21
船上環境学習会
(船に乗って荒川を下る)
北本市
埼玉の水環境について
県民活動センター
「高尾宮岡の景観地」観察
「山崎山の雑木林」
5.31
埼玉県緑のトラスト保全 11 号
地「黒浜沼」
蓮田市
ナショナル・トラスト活動
10
と税制度
「県民活動センター」
おおたかの森トラスト「森の再
9
生事業」ボランティア活動
所沢市
11
H21.
12
北本市
宮代町
8
9
師
高野 徹先生
埼玉県緑のトラスト保全 5 号地
H21.
講
北本自然観察
北本市
8
的
埼玉県自然学習センター(北本
am
○
8
目
埼玉県緑のトラスト保全 8 号地
H21.
7
場
高尾宮岡の景
観地観察
山崎山雑木林
の観察
黒浜沼の観察
ナショナル・ト
ラスト活動
竹炭作りのボラ
ンティア活動
八谷美津子先生
〔財〕埼玉県生態系保護協
会北本&桶川支部長
茂木俊二先生(NPO 法人宮
代水と緑のネットワーク理事)
正能先生(自然観察指導員)
福田昭次先生
(蓮田市環境学習館長)
堂本泰章先生
〔財〕埼玉県生態系保護協
会事務局長
足立圭子先生
〔財〕埼玉県生態系保護協
会所沢支部長
埼玉県自然学習センター(北本
公園管理手法
高野 徹先生
自然観察公園)
と園内観察
(自然学習指導員)
見沼自然の家一日主体験&
見沼自然の家
伊藤絹子先生(自然の家子供エコク
埼玉県緑のトラスト保全 1 号地
一日主体験と
ラブ)
1号地観察
加倉井先生(1 号地ボランティア)
北本市
さいたま市
13
14
15
16
17
H21.
5.26
H21.
6. 7
H21.
6.30
H21.
7. 9
H21.
7.25
2
埼玉県緑のトラスト保全 8 号地
小学生の田植
高尾宮岡の景観地北本市
え体験
生物多様性とは何か
8
「COP10 が目指すもの」
大宮ソニックシティー
4
-
10
生物多様性勉
強会
緑のトラスト夏祭り準備会
(7/25)準備
「おおたかの森」募金協力
募金協力ボラ
(福祉環境科内にて)
ンティア
トラスト 8 号地里山保存会
香坂 玲先生
(名古屋市立大学大学院経
済学研究科准教授)
緑のトラストボランティア
活動
おおたかの森トラスト事務局
埼玉緑と川の再生キャンペーン
各トラスト地パネル
八谷美津子先生他
(トラスト広報活動参加)
展示&クラフト作・
上田清司埼玉県知事
丸太切り
進士五十八理事長
新都心駅コンコース
7.環境オピニオン
(実践活動で得た私見)
(^_^) 次世代へ繋げていこう大切な自然環境・生態系
都会人でも里山人でもない私にとって、数箇所のトラスト地を巡り解
説を聞きながら自然観察・森林の保全・生物多様性・絶滅危惧種・外来種の
動植物が、環境に与える影響などを学ぶことが出来たことは、今後の人
生に大きな収穫でした。学校教育や地域活動の中で自然を楽しみながら
多様な生態系のバランスを保つ望ましい将来像を次世代の子供たちに繋
げていくことが必要と思います。
(+_+) 豊かな自然を子孫にのこしたい
私の隣町である「高尾宮岡のトラスト」は、お花見・摘み草・写真撮影と
子供や孫など家族一緒に子供公園から地続きの地の恵みを受けてきまし
た。19 期福祉環境科(環境班)では、全員そろって(財)さいたま緑のトラス
ト協会に入会しました。子供たちの健全な発育と生きる力を得るのに自
然環境が一番大切と埼玉県連の集会で話し合われました。「持ち込まず」、
「持ち出さず」を掲げ、保全活動に励んでいるボランティアスタッフの皆
さんと共に勉強させていただきたいと思っています。
(*_*) 環境保全は「足元」から
「ナショナル・トラスト」と言う言葉を今回初めて耳にし、さいたま緑の
トラスト保全 11 号地に、住んでいる蓮田の「黒浜沼」が指定される事を知
りました。今回 NPO の『福田さん』にいろいろ説明して頂き、黒浜沼の
周辺には湿性植物・絶滅危惧種などが生育し、谷地田・雑木林・屋敷林など
多様な環境が残っている貴重な場所であることを知りました。この貴重
な自然を次世代に手渡すため私に出来る手伝いを始めたいと思い、早速
「NPO 法人黒沼周辺の自然を大切にする会」に入会させていただきました。
まずは地元黒浜沼の保全活動をしっかりやりたいと思います。
(^_^) 未来の子供たちに
課題学習を終えて頭の中に残った言葉は、生物多様性の保全というこ
とでした。聴きなれない言葉でしたが分かるにつれてその重要性を感じ、
今まで高山植物を見るだけの人から守る人にならなければと思うように
なり山歩き・森林浴などでたくさんの恩恵を受けてきましたので、その良
さを知ってもらい何かお手伝いが出来ればと考えています。
また身近な所から、日々の生活のなかででも出来る事を始めていこうと
思います。未来の地球、そして子供達のために 1 歩を踏み出しましょう。
(+_+) トラスト地から学んだもの
温暖化・環境汚染・自然保護を考える時に、最終的に原因である人の存
在に行き着いてしまいます。一つの自然保護のあり方としてトラスト地
を学びましたが、発祥のイギリスとは考えも規模も保全のあり方も本質
的に異なっていました。視察したトラスト地は都市近郊の貴重な自然で
すが、里山としての活用も困難であり、繁茂する雑草や竹類との終わりの
ない格闘の場となっている様に思われました。自然の維持をトラスト地
として拡大し推進するためには、税制面の法改正が必須であり、また汚染
や破壊の防止には人の一極集中を避け、更にはエネルギー・化学物質を含
めた生活のあり方を、全国民が考えなければならないと感じました。
(-_-)zzz 趣味と実益
「生物多様性」なんと難しい言葉だろう。こんな言葉は初めて聞きまし
た。スーパーで並んでいる野菜は一年中何でもあります。キュウリやトマ
トなど季節に関係なくいつでも買え、色や形や大きさ等ほとんど同じで
す。 家庭菜園で蒔くために買ってくる種には≪一代交配≫とよく書いて
あります。一代だけ決められたとおりの野菜となり、形がそろい大きさも
ほぼ同じで味も本来の味と微妙に違います。これら一代限りから採取し
た種では同じものは絶対にできません。形・質がめちゃくちゃな物となっ
てしまいます。科学の力を借りた現在の野菜を、自分達が食べているので
す。人間を含め色々な動植物が共存しているなかで、これを人間だけが壊
していいものでしょうか? 何代か先の子孫が迷惑をすることでしょう。
(^<^) 身近な緑地を守りたい
最近家の近くを散歩中に、かって雑木林だった所がいつの間にか広い
空き地になっているのに気がつきました。付近にいた人に“ここにあった
林は無くなってしまったんですね”と聞いてみたところ、“この辺りは全
体が区画整理中でいづれここも宅地になるのでは”との残念な答えが帰
ってきました。あいかわらず貴重な緑地を元手に、開発型で進められてい
る区画整理事業は見直す必要があるのではないでしょうか?
これからは都市計画の中で緑を守っていく必要があると考えます。
(@_@) 生物多様性という言葉
生物多様性という言葉から入った環境班。私にとって馴染みのない言
葉でした。地球上のさまざまな生物を生息する環境と共に保全し、次世代
の子供たちにそのまま引き継ぐことが大事です。豊かさや便利さを求め
て来た私達世代が、気付かず失ってしまった環境が沢山あるという事を
知りました。では今出来る事は何があるのでしょうか? 私達は、緑のト
ラストの会員となり保全活動のボランティアから始めました。小さな一
歩ですが、一歩前進です。
(^J^) 人間にとって森林とは?
森林の存在は人間にとってどんな意味があるのでしょうか?
単に、人間に「役立つ」という考え方だけで森林に接して良いのでしょう
か? ただ、効用面からのみで森林を考えるのではなく、その効用の根源
にある生命活動 ----- 光合成・生育・更新・分配そして土壌生成などに、
もっと注視しなければなりません。
「森林の危機」は、こうした森林の生命活動が危機に瀕していることを示
すものであり、それは同時に人類の危機でもあるからです。
(^^♪ 環境問題はパラダイム・シフト
人間が生きる道はイバラです。エネルギーや食糧及び水は有限の時代
となり、豊かさとは何かと考え直さなければならない時です。
成長パラダイムから持続性可能なパラダイムに変化させなければなり
ません。私たちが身近で出来ることは、温室効果ガスを削減できる基とな
る緑の保全と、日常生活のパターンを「ALWAYS 三丁目の夕日の時代」に尐
しでも近づけることが大事だと思われます。
(^_^)v 絶望しても何も生まれない
よく使われる言葉に「シンク・グローバリイアクト・ローカリイ」という
のがあります。グローバリイな思索は観念論が多いので、誰でも調子のよ
いことが言えます。しかしローカルなアクションは相も変わらぬ自然破
壊ばかりではないでしょうか? 第一このスローガンが叫ばれて、緑が豊
かになった所があるでしょうか? 水質が向上した水系があるのでしょ
うか? 野性動物が安心して生活を送れる場が確保されたのでしょう
か? 子供たちが野生に帰って飛び回れる遊び場が増えたでしょうか?
何とそらぞらしい! と思いつつも絶望してはいけません。 とにかくそ
れぞれの「まち」で地道な自然保護や環境保全の積み上げを、私たち市民
一人ひとりの手で成し遂げていかなければと思っています。
《 課題学習の現地で出会った希尐種 》
ヒ シ
キンラン
コフキトンボ(雌の異色型)
8.おわりに
「多くの人が20世紀を戦争と自然破壊の時代であった。21世紀は環境
の世紀としなければ人類は持たない。」と語り、新しい世紀はスタートしま
した。果たしてチェンジできているのでしょうか。 否、人々はますます多量
の資源を消費し、廃棄物を自然界に撒き散らすライフスタイル、すなわち持
続不可能をエスカレートさせているように思えます。 私たちは「さいたま緑
のトラスト保全活動」をはじめ、多くのトラスト活動を学びました。
結論として多様な自然を守り、持続可能な生態系を再生(取り戻す)するた
めには、まだまだ多くの人の叡智(えいち)が必要であることを痛感しました。
失われた自然の大きさと、将来世代へ引き継ぐべき自然が見えてきました。
将来世代への遺産(生物多様性)の保全・再生は、なんと魅力ある挑戦でしょ
う。 私たちは、課題学習を通して多くの人と出会い、その中でお互いに学び
あうことの大切さと連帯の必要を感じました。課題学習班 11 名の最大の喜
びと成果は、人と人の出会によりそこに感動と共感(きずな)が生まれたこと
です。私たちは自然環境や農的景観に対する感性の共有という基礎(土台)が
ほぼ出来たと思います。 しかしこれだけではどうにもなりません。
今後の課題として
環境にはどうしても市民参加(市民運動)必要です。 しかし
◇ ながら今までの実績が乏しく行政主導でなされてきたこと
もあり、組織化という手法の確立が必要です。
◇
環境問題は、利害関係者という立場の違う集団との調整が不
可欠、従って「絶対」ということはなく、調整能力が必要です。
◇
環境を守りたい、その次にはどうしても「知り・判る」こと、す
なわち専門性や、政策形成能力が求められます。
参考文献
・ナショナル・トラスト活動と税制度
(社)日本ナショナルトラスト協会
・緑のトラスト保全地ガイド*埼玉県*
埼玉県環境部みどり再生推進室
・いのちは支えあう「第 3 次生物多様性国家戦略」
(財)自然環境研究センター 環境省自然環境局
・環境を守る最新知識
(財)日本生態系協会(株)信山社サイテック
・かけがえのない自然
柴田
敏隆
監修
・環境保護の市民政治学
村上
明夫
第一書林
・見沼見て歩き
・荒川読本
・自然環境保全調査業務報告書
カワイ出版
NPO 法人(見沼保全じゃぶじゃぶラボ)
立正大学教授
元木靖
国土交通省荒川上流河川事務所
埼玉県環境部みどり再生課
(含保全整備基本構想)
・埼玉県環境基本計画
幹書房
埼玉県環境部環境政策課