「おしりから出血したら」~切らずに治る内視鏡手術~ 大阪市立総合医療センター 消化器内科 佐野 弘治 血便とは、肛門、大腸の病気が主な原因により便に血液が混じっている便のことです。大 腸の病気は多く、生命にかかわる大腸がん・大腸ポリープ、大腸憩室からの出血、細菌やウ イルスなどの感染症による感染性腸炎、痛み止めや抗生剤などの薬剤による薬剤性腸炎、放 射線照射性腸炎、潰瘍性大腸炎などいろいろとあります。今回、内視鏡治療が可能である大 腸がん(早期大腸がん)と大腸ポリープについて述べさせていただきます。 大腸ポリープとは、大腸にできた内腔に突出する隆起したもの(病変)です。良性のもの は、腺腫という腫瘍性病変や、過形成性ポリープ・炎症性ポリープなどの非腫瘍性病変があ ります。悪性のものは、がんという腫瘍性病変があり、命にかかわります。がんは、切り取 る(切除)必要があります。腺腫は、大きくなるとがん化していき、がんの芽であり、切り 取る必要がありますが、比較的小さく内視鏡治療が可能です。内視鏡治療の基準(適応)は、 腺腫、早期大腸がん(粘膜内がん) 、出血の原因となる大きな良性ポリープなどです。 内視鏡治療の方法は、下記の 3 種類があります。 ① ポリペクトミー ② 内視鏡的粘膜切除術(EMR) ③ 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 内視鏡治療による偶発症として、①出血、②腹膜炎、③腸管穿孔があります。内視鏡治療が できなかった場合は、外科的切除が必要です。 老人保健事業における大腸がん検診指針では、スクリーニング検査は、40 歳以上の者を 対象に便潜血検査の 2 日法、毎年 1 回をすすめています。異常があれば、①全大腸内視鏡 検査、 ②S状結腸内視鏡検査+注腸エックス線検査 の 2 通りの方法が推奨されています。 大腸の検査は、下記の 4 種類があります。 ① 注腸エックス線検査 ② 全大腸内視鏡検査 ③ CT 検査 ④ カプセル内視鏡検査 最近の楽な検査としては、③CT 検査、④カプセル内視鏡検査がありますが、③は組織検査 や治療が不可能で、放射線被ばくの問題があり、④は組織検査や治療が不可能で、検査時間 と費用がかかる問題があります。現在、病変の発見率が高く、組織検査や治療も可能な②全 大腸内視鏡検査が一番すすめられます。 血便があれば、早く受診して、全大腸内視鏡検査をうけてください。 検診で便潜血反応が 1 回でも陽性なら、全大腸内視鏡検査をうけてください。
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