特集記事 05 ウェアラブル睡眠センサと BREW® 携帯電話との連携 黒沢 章 用いて安定的に検出した脈拍間隔を基にして睡眠判定を 生活習慣の多様化や競争社会におけるストレスか ら不眠に悩まされる人が増えています。 そこで(株) 行う,手首に装着するだけの腕時計型のセンサです。(図 1) また, ウェアラブル睡眠センサには, 携帯情報機器向 電話を連携させることで, 共に携帯性に優れた特長 けの無線通信技術である Bluetooth® が内蔵されていま す。 測定したデータは Bluetooth を経由して別の対向機 器へ送信され, 対向機器にて測定データの解析が行わ れます。 これによって利用者は身体に接続するケーブル などに悩まされることなく測定を行うことができるようになりま を生かし, ウェアラブル睡眠センサの活用の幅を広 した。 (図 2) 東芝・ 研究開発センターでは小型で携帯に便利な ウェアラブル睡眠センサを開発し, 自宅や外出先で 簡単に睡眠状態を測定できる環境の構築を進めて います。 このウェアラブル睡眠センサに BREW®携帯 げることができます。 zz z ... PC ៤Ꮺ㔚 1 不眠に悩む人が多い現代社会 睡眠は前日の疲れやストレスを癒 (いや) す, 人間 にとって必要不可欠なものですが, 現代社会ではストレス や夜型の不規則な生活を送る人が増えており, 多くの人 が不眠に悩まされています。 これを改善するためには自 身の正確な睡眠の状態を知る必要がありますが, これま では, 脳波や眼球運動などを測定する特殊な装置を使 用するため, 多数のケーブルを身体に装着する必要があ りました。 そこで (株) 東芝 ・ 研究開発センターでは, 身体へ の負担が少なく自宅や外出先で手軽に自分の睡眠状態を 測定できる, 小型で携帯性に優れたウェアラブル睡眠セ ンサの研究 ・ 開発を行っています。 2 PDA ኻะᯏེ 図 2. ウェアラブル睡眠センサ利用のイメージ 測定データは, Bluetoothで対向機器に送信されます。 3 BREW 携帯電話の優位性 ウェアラブル睡眠センサの小型で携帯性に優れた特 徴を生かすために, 対向機器にはモバイル機器のノート 型 PC や PDA が利用されていましたが, 外出先での利 用や広く一般的に普及している点を考慮した結果, 携帯 電話が新たな候補に挙がりました。 手首に装着するだけの睡眠センサ 睡眠状態と自律神経の活性状況には相関性が高いこ とと, 自律神経の活性状況は脈拍間隔のゆらぎ成分から 判別できることが判っています。 ウェアラブル睡眠センサは この点に着目し, 脈拍間隔を測定する脈波センサと寝返り などを検知する加速度センサを内蔵し, 加速度データを 表 1. 各モバイル機器の比較 (凡例) ◎: 非常に優れている ○: 優れている △: あまり優れていない ×: 優れていない 携帯性 価格 普及率 性能 ノート型 PC × × ○ ◎ PDA ○ △ × ○ 携帯電話 ◎ ◎ ◎ △↑ 表1はノート型 PC,PDA と携帯電話を比較した表です が,これから見て取れるとおり,携帯電話は携帯性,価格, 図 1. ウェアラブル睡眠センサの概観 ウェアラブル睡眠センサは, 腕時計と同様に手首に装着します。 普及率においてノート型 PC,PDA を上回っています。 普及率については現時点で 70% を超えており [3],1 人が 1 台ずつ携帯電話を保有する日は近いと思われます。 ま た, 外出先で測定を行いたい場合などパソコンをそのた めに持ち歩くのは負担ですが, 携帯電話は常に持ち歩く ものですので, この携帯性は強みです。 12 「東芝ソリューション テクニカルニュース」2007年(春季号) 比較の中では唯一性能が他を下回っていますが, BREW 携帯電話では最適化されたプログラム実行環 境により,ノート型 PC や PDA と遜色のないレベルま で上がっています。 Ԙ᷹ቯᣣࠍㆬᛯߒ߹ߔޕ この比較結果により, BREW アプリケーションの開 発を得意とし,BREW 携帯電話と Bluetooth 対応機 器の連携実績が多い当社は, (株) 東芝 ・ 研究開発 センターからの依頼を受け, ウェアラブル睡眠センサと ԙ᷹ቯᣣߩ⥄ᓞ⚻ߩᵴᕈ ⁁ᴫߩㆫ⒖ࠍ␜ߒ߹ߔޕ 連携する BREW アプリケーションの開発を行いました。 4 Ԛ⥄ᓞ⚻ߩᵴᕈ⁁ᴫ߆ࠄ ್ቯߐࠇߚ⌧⌁⁁ᘒߩㆫ ⒖ࠍ␜ߒ߹ߔޕ BREW 携帯電話で睡眠状態を解析, 表示 図 3 はウェアラブル睡眠センサと携帯電話を連携さ せた場合の処理の流れです。 図 4. 睡眠状態の表示 一晩の睡眠状態の遷移がグラフで表示されます。 㽲⣂ᵄ㑆㓒䈫ടㅦᐲ䉕 ⚂1⑽䈗䈫䈮ㅍା䈚䉁 䈜䇯 㽳⣂ᵄ㑆㓒䈎䉌⣂ᜉᢙ䉕 ▚䈚⚂1⑽䈗䈫䈮␜ 䉕ᦝᣂ䈚䉁䈜䇯 㽴1ಽ㑆⫾Ⓧ䈘䉏䈢⣂ᵄ 㑆㓒䈫ടㅦᐲ䈎䉌⥄ᓞ ⚻䈱䉉䉌䈑䉕⸃ᨆ䈚 ⚂1ಽ䈗䈫䈮␜䉕ᦝᣂ 䈚䉁䈜䇯 図 3. 携帯電話連携時の処理の流れ ウェアラブル睡眠センサから約1秒ごとに送信されたデータに 対して, 約 1分間隔でゆらぎ解析が行われます。 ズムに合わせて制御して快適な睡眠環境を提供するシス テムです。 また, 携帯電話で解析した結果を携帯電話本 来の通信機能を利用して専門家に送付し, メールなどで 睡眠に対するアドバイスを受けるサービスが検討されてい ます。 このような個人向けの活用のほかに, 携帯電話で の解析結果をサーバで受信 ・ 集積し, 従業員の健康管 理に役立てるほか, 乗り物の運転などの危険を伴う業務 に従事する場合や精密さを要求される業務に従事する場 合の健康状態チェックなど, 企業システムへの応用も実 用例として考えられます。 なお, 本稿の執筆にあたっては, (株) 東芝・研究開発センター のヒューマンセントリックラボラトリーに協力いただきました。 【特許】 *本稿に記載の技術は, 特許出願中です。 【参考文献】 ウェアラブル睡眠センサで測定した脈波間隔と加速度は 脈波間隔 ( 約 1 秒 ) ごとに携帯電話に送信され, 携帯電 話は 1 分ごとに自律神経の活性状況を解析します。 この 間もデータは継続して送られてくるため, 自律神経の活 性状況の解析は, 次のデータが送信される前に終わらせ る必要がありますが, BREW 携帯電話はこの処理を問題 なく行える処理性能を持っています。 図 4 は 1 日の睡眠状態の表示機能です。 測定を行った日を選択すると, その日の一晩の睡眠状 態の遷移が表示されます。 BREW 携帯電話はデータ保 存領域として利用できる大容量のメモリを持っているため, 一晩の睡眠状態を複数日分保持することができます。 こ れにより, 複数の日付にわたる睡眠状態のトレンドが確認 できるようなっています。 5 [1] 鈴木琢治 . “家庭で手軽に測れる腕時計型睡眠センサ”.東芝レビュー Vol.60 No.4,2005 年 4 月 ,( オンライン ), 入手先 <http://www.toshiba.co.jp/tech/review/2005/04/60_04pdf/rd01.pdf > (参照 2007-2-28) [2] 亀山研一 , ほか . “快眠のための睡眠判定と睡眠モニタシステム” . 東芝レビュー Vol.61 No.10,2006 年 10 月 ,( オンライン ), 入手先 <http://www.toshiba.co.jp/tech/review/2006/10/61_10pdf/a11.pdf> (参照 2007-2-28) [3] 総務省 .“電気通信サービスの管乳契約数の状況 ( 平成 18 年 9 月末 )”. 報道資料 ,2006 年 12 月 25 日 ,( オンライン ), 入手先 <http://www.soumu.go.jp/s-news/2006/061225_1.html> (参照 2007-2-28) 【関連 URL】 [1] (株) 東芝 . “熟睡?自宅で寝ている間に簡単チェック, 装着型の睡 眠センサを開発” . 研究開発センター最新技術情報 , 2004 年 10 月 , ( オンライン ), 入手先 <http://www.toshiba.co.jp/rdc/rd/detail_j/0410_01.htm> (参照 2007-2-28) Profile 携帯電話連携で進む睡眠センサ実用化の検討 ウェアラブル睡眠センサと BREW 携帯電話の連携 が実現されたことにより, その実用サービスやシステムが 検討されています。 例えば, 携帯電話とエアコン, 照明 などの情報家電とを連携させ, 情報家電を個人の睡眠リ 黒沢 章 ソリューション第四事業部 社会情報システムソリューション部 情報システム第一担当 主務 主に官公庁, 企業内情報システムの開発に従事。 2005 年 5 月より BREW 関連アプリケーションの開発 に従事。 13 「東芝ソリューション テクニカルニュース」2007年(春季号)
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