米国「移民投資家」ビザ: 未来のための投資 マイケル B. ダイ (Michael B. Dye) 米国で永住権、つまり「グリーンカード」を得ようとしている投資家や起業家にとって、今ほどよい時 期はありません。2009年10月28日、米国のバラク・オバマ大統領は徐々に人気の出ている EB-5移民投資 家パイロット・プログラムを拡大する法律に署名しました。EB-5パイロット・プログラムは、おそらく 米国で直系の親類や米国雇用者からの長期的な仕事のオファーがない人にとって、グリーンカードを獲 得するための最も直接的な行程です。この独特なプログラムは外国人投資家と米国の両方にメリットが あり、全ての者にとってWin-Winの状況を生み出します。世界的な不況のさなかに、このプログラムは外 国人投資家を最も必要としている米国の多くの地域に彼らを引き付ける磁石のように作用し、参加する 外国人投資家に永住権保持者となる機会を与えます。2005年に完了した米国政府の調査によれば、EB-5 プログラムは2004年までに米国に10億ドル以上をもたらしたと推定されています。このプログラムの重 要な利点は、通常は流動的かつ官僚的である移民法の迷路の中を切り抜けることができる、永住権への 確実な行程であることが最も注目すべき点であり、近年このプログラムを最もうまく活用した多くのア ジア諸国に知られています(例えば、韓国や中国)。一方、他の国籍を有する多くの投資家は本プログ ラムを利用するのが遅れていますが、EB-5パイロット・プログラムに関する利点がより周知されるにつ れて今後変わることが期待されています。 EB-5 パイロット・プログラムは元々の EB-5 移民投資家ビザプログラムで最も新しく、かつ人気のある バージョンです。EB-5 移民投資家ビザの分類は、米国経済に利益をもたらし、10 人以上の常勤の労働者 を生み出す民間事業に携わるため渡航を希望する外国人のために、1990 年に米国議会によって立法され ました。必要投資額は基本的に 100 万ドルですが、非都心部あるいは失業率が高い地域として定義され る「目標雇用地域」であれば 50 万ドルになる場合があります。毎年用意される 10,000 の EB-5 投資家ビ ザの中で、3,000 は USCIS(United States Citizenship & Immigration Services)が指定する「地域セ ンター」に関連して 1993 年に設立されたパイロット・プログラムを使って申請する人のために確保され ています。民間や政府のエージェンシーは、ある一定の基準を満たせば地域センターとして認定可能で す。地域センターとは USCIS のサービスによって認定され、米国内の特定の地域にフォーカスし、輸出 売上の増加、地域生産性の改善、新雇用の創出、国内資本投資の増加などを通じて経済成長の促進を図 る団体、組織、エージェンシーです。現実的に言えば、地域センターは民間事業として多種多様な投資 家が事業目標を推進するための試みの中で、ファンドをプールできるようにしています。本稿執筆時に は、米国全体で 70 以上の地域センターがあり、多種多様な事業の試みをしています。例えば、ハリケー ン・カトリーナが原因による荒廃後のニューオリンズ市の再構築、バーモント州内の民間企業 2 社によ る各地でのスキー場の不動産開発、エタノール工場、農業プロジェクト、退職者コミュニティの開発と 運営、映画やテレビの制作プロジェクト、そしてカリフォルニアの建設機械製造と販売などがあります。 その他の地域センターは、フロリダ、ニューヨーク、ペンシルバニア、その他アメリカ全土に渡ってい ます。元々の EB-5「100 万ドル」の選択肢も利用できるものの、地域センターのパイロット・プログラ ムのプロセスは煩雑さが少なく、米国内で毎日の事業をマネジメントする責任を負いたくない投資家に とってはより適しているかもしれません。地域センターに参加することにより、10 以上の新たな雇用を 創出するという要件は、新たな組織により雇用が直接的または間接的に生まれたことを結果として示す ことで満たされます。したがって、投資家は新たな事業を運営するのではなく、自身の投資と引き換え にグリーンカードを受け取れます。全 EB-5 投資家の 90%以上が、地域センターのパイロット・プログラ ムを通じて投資することを選択しています。 地域センターの投資家は、一般的にある一定期間(5 年以上)後に投資を回収できる程度の低率のリター ンを得るでしょう。投資家はその事業をマネジメントしなければなりません。しかし、ほとんどの地域 センターは有限責任の投資を扱っているので、上記の法的要件を満たすには有限責任パートナーの権利 を持てば十分であると認められます。 EB-5パイロット・プログラムに参加するプロセスは比較的簡単です。永住権の請願書をUSCIS(U.S. Citizenship and Immigration Services)に提出して、申請者が規制上の要件を満たしていることを証明しま す。請願書が認可されれば、投資家は米国領事館で移民者ビザを得るか、すでに別のビザで米国に入国 している場合はステータス変更の申請をしなければいけません。これが完了すれば、申請者は条件付き の居住者ステータスを与えられます。この「条件付き」ステータスの理由の一つは不正投資を防ぐため です。21ヶ月後(ただし24ヶ月を越えない)に申請者は条件を外すための別の請願を行い、投資が維持 されて必要な雇用が創出または確保されていることを証明しなければなりません。2つ目の請願が承認さ れれば、永久的な「グリーンカード」が投資家に発行されます。投資家は5年間グリーンカード保持者と なった後に、米国市民になるための申請を提出できます。 パイロット・プログラムには投資家のための多くのメリットがあります。例えば、投資の見返りとして グリーンカードはその投資家、配偶者、21 歳以下で未婚の子供に発行されます。多くの人にとって移民 プロセスは何年もかかり非常に不確定ですが、EB-5 の地域センターのパイロット・プログラムでは、条 件付きグリーンカードを得るまでのプロセスの時間は一般的に 12~18 ヶ月で、さらに大幅に短い時間で 処理される場合もあります。投資家は米国内のどこに住んで仕事をしてもよく、年齢、言語、教育、以 前の仕事経験などの要件もありません。投資家は単に必要な自己資本や資金を持っている必要があるだ けです。地域センターのパイロット・プログラムの下では、投資家は米国の従業員を雇ったり毎日の事 業オペレーションを管理する義務もありませんん。パイロット・プログラムは、投資の本当の動機がグ リーンカード獲得であると考える投資家にとって最も適しています。また、退職者または成功したビジ ネスマンや女性が米国に居住して、世界でトップのカレッジや大学へのアクセスを子供に与え、永住権 保持者であれば大幅に安くなる国内授業料を利用することを希望する場合にも現実的な選択肢であるか もしれません。USCIS に指定されたそれぞれの地域センターには違いがあり、各プログラムに関する 様々な管理費は通常 2 万ドルから 6 万ドルの範囲です。したがって、実際のプログラムの合計コストは 「50 万ドル(投資額)」+「2 万~6 万ドル(管理費)」+「弁護士料」です。EB-5 プログラムを通じて永 住権を得るための重要な条件の一つは、ファンドの出所が合法的手段により得られていることでられて いることです(特に、投資家がどこでどのようにファンドを得たかは注意深く USCIS に示し、投資金が 合法的に獲得されたことを確証しなければいけません)。国際的な会計事務所によって用意された財務会 計書類が別途要求される場合もあります。一般的には、5 年後には投資家は複数の投資出口戦略から一つ を選べます。各プログラムで異なっており、要件や出口の手続きが変わります。 著作©2009 by マイケル B. ダイ
© Copyright 2024 Paperzz