化学テロへの医療対応 - IEMS

化学テロへの医療対応
防衛医科大学校 国際感染症学講座
兼 総合調整チーム 自衛隊調整班長
准教授 加來浩器
© 2009 IEMS-Japan
紀元~中世
ギリシャの火:石灰と石油による有毒ガス発生
© 2009 IEMS-Japan
- 660 A. D.
第1次世界大戦前
 1812年:窒息剤(ホスゲン)の生成
– イギリス人科学者デービィー
– COと Cl2 から生成
O
lll
Cl-CーCl
ホスゲン
 1848年:びらん剤(マスタード)量産の研究
– ステンハリス
CH2 CH2 Cl
S
CH2 CH2 Cl
硫黄マスタード
© 2009 IEMS-Japan
第1次世界大戦中
 1915年:ドイツ軍
– 4月22日、ベルギーのイーブルで塩素ガスの使用
» フランス軍に対して
» シリンダー(1万本)から、
168万トンのガスを噴霧
– 12月、ベルギーのイーブルでホスゲン使用
» イギリス軍に対して
© 2009 IEMS-Japan
第1次世界大戦中
 1917年:ドイツ軍
– ベルギー、イーブル(YPRES)でびらん剤(硫黄マスタード)を使用
– イペリット(YPERIT)と呼称
– 戦闘能力の低下が目的
» 死亡率は5%以下
– 防護マスクの改良
フルフェイス型
© 2009 IEMS-Japan
びらん剤で失明した兵士たち
© 2009 IEMS-Japan
WW1
ナチスにより、●●●人のユダヤ人がシアンガスで殺害された
600万
ナチスは、ユダヤ人捕虜で発生した発疹チ
フスの原因となった、コロモジラミ対策のた
めだと主張していた。
© 2009 IEMS-Japan
化学兵器とは?
有毒化学剤、又はこれを充填した砲爆弾等
-ミサイル、自由ロケット、地雷、雨下器など
化学剤とは
-ガス状、液体、固体であることを問わない
-人間・動物・植物へ直接的な毒作用
© 2009 IEMS-Japan
種類
神 タブン
経
代表的な化学剤
サリン
ソマン
V剤
び 精製マスタード
ら
ん 窒素マスタード
ルイサイト
ホスゲンオキシム
窒 ホスゲン
息
ジホスゲン
シ 青酸
ア
ン 塩化シアン
© 2009 IEMS-Japan
記号
GA
GB
GD
VX
HD
HN
L
CX
CG
DP
AC
CK
化学剤の特性


広範な地域を汚染できる

ガス状で使用されることが多い

気象条件・地形などの影響を受ける
通常の建物、構築物内に浸透する


効果が柔軟である


破壊を伴うことなく目的を達成
1時的な効果でも戦術的価値がある
個人防護が必要である

© 2009 IEMS-Japan
防護マスク、防護衣による個人防護
持続性と一時性
持続性
24時間以内では揮発せず、
液体の状態であるもの
灯油
一時性
24時間以内に揮発するもの
ガソリン
© 2009 IEMS-Japan
軍事的利用の目的
持続性
地域の使用拒否、兵站・武器等の汚染
マスタード、VX
一時性
地域への進出が可能なように、前進部隊
に先立ち使用する。
シアン化合物、ホスゲン
© 2009 IEMS-Japan
Ct、LCt50 など
Ct(Concentration Time、mg・min/m3)
曝露される気体(エアロゾル)の量を示し、
濃度と時間の積で表す。
LCt50(Lethal Concentration Time 50%)
半数致死量
ICt50(Incapable
半数不能量
© 2009 IEMS-Japan
Concentration Time 50%)
致死性(半数致死量)の比較
LCt50
 神経剤
Nerve Agents
 マスタード
Mustard
 ホスゲン
Phosgene
 シアン化剤
Cyanide
 塩素
Chlorine
 暴動鎮圧剤 Riot Control
© 2009 IEMS-Japan
(mg‐min/m3)
10-200
1500
3000
2500-5000
6000
15000-88000
治療
特異的な薬物療法が必要
MARKⅠ 自己自動注射器
1 アトロピン
2mg
2 パム
600mg
© 2009 IEMS-Japan
種類
神 タブン
経
代表的な化学剤
サリン
ソマン
V剤
び 精製マスタード
ら
ん 窒素マスタード
ルイサイト
ホスゲンオキシム
窒 ホスゲン
息
ジホスゲン
シ 青酸
ア
ン 塩化シアン
© 2009 IEMS-Japan
記号
GA
GB
GD
VX
HD
HN
L
CX
CG
DP
AC
CK
最近のテロ事例
 1994年6月:松本サリン事件
– 150名の患者発生(7名死亡)
 1994年12月:新大阪駅VX暗殺事件
– 警察のスパイと疑われた信者
– ディスポの注射器を使用
– 経皮曝露5分後に死亡
 1995年3月:地下鉄サリン事件
– 6リットルのサリン、5つの地下鉄
– 5000名の患者発生(12名死亡)
© 2009 IEMS-Japan
地下鉄サリン事件での散布方法
揮発性
ナイロン袋
ポリ袋
新聞紙
© 2009 IEMS-Japan
サリン
© 2009 IEMS-Japan
© 2009 IEMS-Japan
© 2009 IEMS-Japan
© 2009 IEMS-Japan
歴史
 ドイツ:農薬開発の過程
– Gerhard Schrader ら
-各種German gasの合成
» タブン(GA) : 1936年
» サリン(GB) : 1938年
SARIN: Schrader,Ambros,Rudriger,van der Linde
» ソマン(GD) : 1944年
 チェコスロバキア
– サリンの改良(GV)
 英国:DDTに代わる硫黄を含む有機リン農薬
– ICI植物保護研究所の Ranajit Ghoshら
– V剤:1950年代 (Venom: 毒)
© 2009 IEMS-Japan
神経剤の構造式
タブン(GA)
サリン(GB)
シクロヘキシルメチルホス
ホノフルオリデート(GF)
有機リン系農薬との違いは?
© 2009 IEMS-Japan
ソマン(GD)
VX
P=O結合
vs
P=S結合
神経剤の物理的特性
 透明、無味、無臭
 無色の液体(ガスではない)
– 融点<0℃、沸点>150℃
 揮発性
– サリン(GB)>ソマン(GD)>タブン(GA)>GF > VX
– 皮膚、衣服を透過
一時性
持続性
 毒性
人の致死量(min/m3 )
© 2009 IEMS-Japan
タブン(GA)
サリン(GB)
ソマン(GD)
VX
400 mg
100 mg
50 mg
0.1 mg
神経の伝導
コリンエステラーゼ
神経終末部
アセチルコリン
© 2009 IEMS-Japan
神経
筋肉
腺
神経剤の作用
神経剤
神経終末部
アセチルコリン
© 2009 IEMS-Japan
・神経線維
・腺
・筋肉
・中枢神経
神経剤の症状
 有機リン中毒と同様
– 縮瞳が著明
 ムスカリン様作用、ニコチン様作用、中枢神経系
 症状発現までの時間
– 気道:数秒~数分、皮膚:数分~数時間
 重症度
– 吸収経路と曝露量(Ct)によって左右される
© 2009 IEMS-Japan
神経剤の症状
ムスカリン様症状
ニコチン様症状
中枢神経症状
食欲不振、悪心、嘔
筋線維性れん縮
めまい、倦怠感、不
吐、胃腸疝痛、多汗、 (眼瞼、顔、全身)、
安感、頭痛、発熱、
流涎、縮瞳、蒼白、
痙攣(全身)、筋力
不眠、多夢、精神錯
尿・便の失禁、胸部
減退(呼吸筋)
乱、昏睡
圧迫感、気管支分泌
増加、呼吸困難、肺
水腫、チアノーゼ
© 2009 IEMS-Japan
吸収経路と曝露の程度による症状の発現
吸収経路
気道性
経皮性
曝露の程度
軽度
中等度
重度
© 2009 IEMS-Japan
縮瞳、鼻汁、胸部圧迫感 曝露局所の発汗、筋れん縮
縮瞳、鼻汁、呼吸困難、
局所症状の増強
嘔気、嘔吐、失禁、脱力
嘔気、嘔吐、失禁、脱力感、
感、筋力低下、筋攣縮
筋力低下、筋攣縮
意識消失、痙攣、弛緩性麻痺、呼吸停止、死亡
神経剤傷者への薬物治療
アトロピン(アセチルコリン拮抗剤)
PAM(オキシム剤)
ジアゼパム(セルシン)
© 2009 IEMS-Japan
アトロピンの作用
神経
剤
アトロピン
神経終末部
アセチルコリン
© 2009 IEMS-Japan
神経
筋肉
腺
アトロピン
 抗コリン剤
 過剰のアセチルコリンをブロック
 ムスカリン様作用に対し効果
– 分泌の減少
– 平滑筋の収縮を減少
 ニコチン様作用に効果なし
– 骨格筋の症状
© 2009 IEMS-Japan
PAMの作用
PAM
神経剤
神経終末部
アセチルコリン
© 2009 IEMS-Japan
神経
筋肉
腺
PAMの作用
PAM
神経剤
神経終末部
アセチルコリン
© 2009 IEMS-Japan
神経
筋肉
腺
PAM(オキサイム)
 コリンエステラーゼから神経剤を解離させる
-エージング(Aging)前であれば効果的
 ニコチン様作用に効果
– 骨格筋の麻痺症状の改善
 ムスカリン様作用に対し効果なし
© 2009 IEMS-Japan
エージング(Aging):経時変化
 コリンエステラーゼと神経剤の複合体が変化
→結合が強固となり、パムを投与しても解離不能
 エージング時間
– サリン(GB)3~4時間
– ソマン(GD)2分
© 2009 IEMS-Japan
エージング(Aging)
強固な結合
コリンエステラーゼ
神経剤
時間経過
エージング後にPAMを投与しても
© 2009 IEMS-Japan
エージングが短いソマン対策は?
前投薬!
© 2009 IEMS-Japan
神経剤曝露に対する前投薬
臭化ピリドスティグミン(メスチノン:60mg)
 抗コリン剤
– 重症筋無力症の治療薬
– 神経剤がAch-Eに接合するのを防ぐ
 LCt50を増加させる
– 前投薬であり、引き続き治療薬を投与が必要
 効果
– ソマン(GD),タブン(GA)に対して有効
– サリン(GB),GF,VXには効果がない
© 2009 IEMS-Japan
臭化ピリドスティグミンの作用
コリンエステラーゼ
臭化ピリドスティグミン
© 2009 IEMS-Japan
臭化ピリドスティグミンの作用
神経剤
コリンエステラーゼ
© 2009 IEMS-Japan
臭化ピリドスティグミンの作用
神経剤
コリンエステラーゼ
コリンエステラーゼとの結合を防止
© 2009 IEMS-Japan
治療方針
気道確保(Airway)
呼吸管理(Breathing)
循環管理(Circulation)
投薬(Drug)
除染(Decontamination)
常に上記の順ではない
ABCDD vs DDABC
© 2009 IEMS-Japan
薬物治療
MARKⅠ
自己自動注射器
パム 600mg
アトロピン 2mg
 軽症
MARKⅠ 1セット(自分で)
 中等症 MARKⅠ 2セット(バディが注射)
 重症
MARKⅠ 3セット+セルシン
© 2009 IEMS-Japan
種類
神 タブン
経
代表的な化学剤
サリン
ソマン
V剤
び 精製マスタード
ら
ん 窒素マスタード
ルイサイト
ホスゲンオキシム
窒 ホスゲン
息
ジホスゲン
シ 青酸
ア
ン 塩化シアン
© 2009 IEMS-Japan
記号
GA
GB
GD
VX
HD
HN
L
CX
CG
DP
AC
CK
びらん剤の歴史
 1917年ドイツ軍
– ベルギー、イーブル(Ypres)で硫黄マスタードが使用
 1918年米国
– ルイサイト開発
 第一次世界大戦後の使用例
– イタリア→エチオピア
– 日本→中国
– エジプト→イエメン(疑い)
– イラク→イラン
– イラク→クルド人
© 2009 IEMS-Japan
第2次世界大戦中
 日本
– ホスゲン
– びらん剤
» イペリット、ルイサイト
イペリット接触によるびらん
© 2009 IEMS-Japan
イペリット取り出し作業
第2次世界大戦中
相模海軍工廠
神奈川県
寒川町
イペリット爆弾の組立作業をおこなう豆陽中学校の生徒
© 2009 IEMS-Japan
寒川ビール瓶事案(平成14年9月25日)
© 2009 IEMS-Japan
硫黄成分を検出するAP2C
© 2009 IEMS-Japan
屈斜路湖旧軍遺棄化学爆弾の処理(平成8年10月)
主担任:北海道
協 力:陸自北部方面隊、海自大湊地方隊
© 2009 IEMS-Japan
5師団による処理施設の開設(屈斜路湖近傍)
© 2009 IEMS-Japan
イペリット充填
100式50kg投下弾
26発の遺棄弾に安全化処置を施
し、北海道庁に引き渡す
© 2009 IEMS-Japan
びらん剤の種類
 マスタード
‐硫黄マスタード
‐窒素マスタード
 ルイサイト(L)
 ホスゲンオキサイム(CX)
© 2009 IEMS-Japan
びらん剤の構造式
イペリット
精製マスタード
© 2009 IEMS-Japan
クロルエチル基
硫黄マスタード(HD)
 無色~黄色~茶色の油状の液体
– 液体は水より重い
– 揮発性が低い(持続性)
– 水にはわずかに溶解する
 無色の蒸気を放出
– ニンニク臭、からし臭、ネギ臭
– 蒸気は空気より5倍重い
– 温度、PHが上昇すると分解速度大となる
 高温で催涙作用を有する有毒ガスが発生
– 汚染物の焼却時に注意が必要
© 2009 IEMS-Japan
マスタードの毒性
Ct50(mg・min/m3)
臭い
眼
気道
皮膚
© 2009 IEMS-Japan
1-10
60-200
100-500
1000-2000
マスタードの症状
 曝露経路
– 蒸気:吸入、眼、皮膚
– 液体:皮膚、経口
 曝露数時間後に症状発現
– 曝露量に依存:4時間以内に症状発現すれば重症
– 眼
» 軽度結膜炎から重度眼障害
– 気道(呼吸器)
» 上気道の軽度刺激→気道粘膜・筋肉の壊死、出血
» 6時間以内に呼吸器症状出現すれば、死亡する
– 皮膚
» 紅斑と水疱
– 経口
» 嘔吐、下痢
© 2009 IEMS-Japan
マスタードによる結膜炎
© 2009 IEMS-Japan
マスタードによる皮膚のびらん
© 2009 IEMS-Japan
マスタードによる全身のびらん
© 2009 IEMS-Japan
マスタードによる水疱
© 2009 IEMS-Japan
マスタードによる皮膚壊死
© 2009 IEMS-Japan
びらん剤の構造式
精製マスタード
ジクロロアルシン
© 2009 IEMS-Japan
ルイサイトの症状
 眼:結膜炎
 皮膚
– 疼痛:1分以内に出現
– 組織の壊死:5分以内に出現
» マスタードより組織の壊死が多い
 呼吸器:気管粘膜壊死、肺水腫
 ルイサイトショック
– 毛細血管の透過性増加
– 血漿量低下、血液濃縮
– 血圧低下、循環不全、死亡
© 2009 IEMS-Japan
マスタードとの違い
BAL(British Anti-lewisite)によるルイサイト治療
 ジメルカプロール
 キレート化療法
– ヒ素、水銀、銅、鉛、金、ビスマス、クロム等
 10%(100mg、1ml)BAL筋注(静注禁忌)
– 初回体重11kgあたり0.5ml(最大4ml)
» 1回接種量は、金属中毒時(2.5mg/kg)よりも多い
– 以後4時間、8時間、12時間目に投与する
© 2009 IEMS-Japan
種類
神 タブン
経
代表的な化学剤
サリン
ソマン
V剤
び 精製マスタード
ら
ん 窒素マスタード
ルイサイト
ホスゲンオキシム
窒 ホスゲン
息
ジホスゲン
シ 青酸
ア
ン 塩化シアン
© 2009 IEMS-Japan
記号
GA
GB
GD
VX
HD
HN
L
CX
CG
DP
AC
CK
© 2009 IEMS-Japan
窒息剤の作用部位と症状
くしゃみ、疼痛・・・・ 鼻咽頭
嚥下痛・・・・・・・・・・ 口腔咽頭
窒息・・・・・・・・・・・・
喉頭
疼痛・咳・・・・・・・・・ 気管・気管支
胸部圧迫感、呼吸困難
肺水腫
© 2009 IEMS-Japan
微小気管支
肺胞
ホスゲン曝露 2時間後の胸部レントゲン写真
© 2009 IEMS-Japan
ホスゲン(CG)
 常温で無色の気体(沸点8℃)
-加圧、低温で無色液体
-空気より3.5倍重い
-青いとうもろこし、腐敗堆肥臭
 速効性、一時性
-水により迅速に加水分解(炭酸ガス、塩酸)
 効果:主として肺にのみ作用
– 結膜への刺激は軽度
– 喉頭浮腫による気道閉塞、肺水腫
© 2009 IEMS-Japan
ホスゲン(CG)の臨床症状
 軽度曝露
– 咳、胸部圧迫感、嘔気、頭痛、流涙
– 肺水腫を起こさず気管支炎の症状のみ
 中等度曝露
– 12-24時間後に肺水腫
» 疼痛の咳、呼吸困難、チアノーゼ、泡沫性の喀痰
– 筋肉労作により症状が悪化
 重度曝露
– 曝露後4時間以内に肺水腫の徴候が出現
– 喉頭スパスムにより突然死の可能性
– 24-48時間で無酸素症
© 2009 IEMS-Japan
 治療
–
–
–
–
気道確保、呼吸・循環管理
ベッドレスト
曝露後ただちに、および4時間後に再評価
異常があれば24から36時間後に再評価
 予後
– <4時間:重篤、多くは死亡
– >4時間:死にいたることはほとんどない
© 2009 IEMS-Japan
種類
神 タブン
経
代表的な化学剤
サリン
ソマン
V剤
び 精製マスタード
ら
ん 窒素マスタード
ルイサイト
ホスゲンオキシム
窒 ホスゲン
息
ジホスゲン
シ 青酸
ア
ン 塩化シアン
© 2009 IEMS-Japan
記号
GA
GB
GD
VX
HD
HN
L
CX
CG
DP
AC
CK
シアン化合物(血液剤)

シアン化水素(AC)
 塩化シアン(CK)
– 高い水溶性
– 難水溶性
– 揮発性高
– 揮発性高
– 空気より若干軽い
– 空気より重い
– アーモンド臭
– アーモンド臭
– 数秒で症状発現
– 数秒で症状発現
– LCt50:2,500-5,000( mg/min/m3 ) – LCt50:11,000( mg/min/m3 )
© 2009 IEMS-Japan
シアン化合物の作用機序
 吸収
– 吸入>経口>経皮
 血液を介して全ての組織に運ばれる
 ミトコンドリアでの細胞呼吸を障害し組織
が酸素欠乏となる
– ATPの産生を障害
– 酸素を血液から取り込むことができない
© 2009 IEMS-Japan
シアン化合物による症状
症状発現
高濃度曝露時
低濃度曝露時
発現:10~18秒
死亡:5~8分
呼吸数増加(深い)
高血圧、頻脈
呼吸数減少、
呼吸停止(1~2分)
遅く、ゆっくり進行
徐脈,低血圧、
心停止
© 2009 IEMS-Japan
頭痛、不安、
筋力低下、運動
失調、眼振、筋硬
直
シアン化合物の作用機序
Hgb Fe2+
シアン化合物
細胞
ミトコンドリア
チトクロームオキシダーゼ Fe3+
細胞内呼吸障害
© 2009 IEMS-Japan
赤血球
シアン化合物の作用機序
Hgb Fe2+
細胞
ミトコンドリア
チトクロームオキシダーゼ Fe3+
細胞死
© 2009 IEMS-Japan
赤血球
治療
まず
– 亜硝酸アミル吸入
– 3%亜硝酸ナトリウム(10ml)
次に
– 25%チオ硫酸ナトリウム(50ml)
© 2009 IEMS-Japan
シアン化合物に対する治療(1)
Hgb Fe2+
細胞
①亜硝酸アミルの吸入
②亜硝酸ナトリウムの投与
赤血球
メトヘモグロビ
ンの生成
MetHgb Fe3+
ミトコンドリア
チトクロームオキシダーゼ Fe3+
© 2009 IEMS-Japan
シアン化合物に対する治療(2)
Hgb Fe2+
赤血球
メトヘモグロビ
ンの生成
細胞
MetHgb Fe3+
ミトコンドリア
チトクロームオキシダーゼ Fe3+
チトクロームオキシダーゼ
とシアン化合物の結合が
解離
© 2009 IEMS-Japan
シアン化合物に対する治療(3)
赤血球
細胞
MetHgb Fe3+
ミトコンドリア
チトクロームオキシダーゼ Fe3+
解離したシアン化合物が
メトヘモグロビンと結合
© 2009 IEMS-Japan
シアン化合物に対する治療(4)
赤血球
細胞
MetHgb Fe3+
ミトコンドリア
シアン化合物に反応
チオ硫酸ナトリウム
③チオ硫酸ナトリウムの投与
© 2009 IEMS-Japan
シアン化合物に対する治療(5)
赤血球
細胞
MetHgb Fe3+
ミトコンドリア
チオ硫酸ナトリウムと結合
チオ硫酸ナトリウム
腎へ排出
© 2009 IEMS-Japan
治療ー対症療法
 気道確保、呼吸・循環管理
 100%酸素
 代謝性アシドーシスの補正
 少なくとも24から48時間観察
© 2009 IEMS-Japan
最近話題の化学剤!
© 2009 IEMS-Japan
くしゃみ剤(嘔吐剤)
 有機ヒ素化合物
– ジフェニルクロロアルシン(DA)
– ジフエニルシアノアルシン(DC)
 低濃度の場合
– 鼻、のど、目の粘膜に刺激→くしゃみ、咳、前額部痛
 高濃度の場合
– 呼吸器深部→嘔吐、呼吸困難、不安感→死亡
 旧軍のあか剤
– DA+DCの混合剤
© 2009 IEMS-Japan
(福岡県の苅田港遺棄化学兵器 H12.11月)
第2次世界大戦中
 日本
– 赤筒
» くしゃみ性毒ガス
» ジフェニールシアノアルシン
– こんにゃく爆弾
こんにゃく爆弾
© 2009 IEMS-Japan
© 2009 IEMS-Japan
備えあれば、憂いなし!
おわり
© 2009 IEMS-Japan