街の固有性が変容するメカニズム ―古着集積を例にして

2015 年度 三田祭発表論文
街の固有性が変容するメカニズム
―古着集積を例にして―
慶應義塾大学 商学部
牛島利明研究会 15 期生
0
はじめに
近年,チェーン店の台頭に伴った地域の没個性化について,数多くの議論がなされてきた。
そのような状況下において,地域の個性を認識し,維持しようという潮流はより一層強まっ
ている。
本稿では,同業内に没個性化の進む店舗群と独自性を維持する店舗群の両方を有する業
種として,古着屋に着目した。そのなかでも,高円寺と下北沢の 2 つの集積地域に限定して
比較する。この比較検討を通じ,独自性の強い文化を維持する集積と,没個性化の進む集積
の差異を生み出した要因について考察を行う。この考察が,地域が有する独自性を維持・強
化し,その魅力によって多くの人々を惹きつける街づくりの一助となれば幸いである。
1
目次
はじめに
1. 問題提起・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
2. 先行研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
2.1 集積の利益
2.2 同業種集積による効果
2.3 古着市場の変遷
2.4 古着業界の動向
2.5 本章のまとめ
3. 下北沢と高円寺・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
3.0 本章の目的
3.1 古着屋の集積地
3.2 下北沢の概要
3.2.1 下北沢の地域性
3.2.2 下北沢の再開発
3.2.3 下北沢の古着屋集積
3.3 高円寺の概要
3.3.1 高円寺の地域性
3.3.2 高円寺の古着屋集積
3.4 下北沢と高円寺の類似点と相違点
3.5 本章のまとめ
4. 検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
4.0 本章の目的
4.1 検証 1:下北沢や高円寺への USED 店の進出に顧客がどのような反応を示したか
4.2 検証 1-1 下北沢の古着店への聞き取り調査
4.2.1 検証 1-1 においてインタビュー調査を行った古着屋のプロフィール
4.2.2 検証 1-1 下北沢の古着屋へのインタビュー調査結果
4.2.3 検証 1-1 のアンケート調査結果分析で扱う古着屋のプロフィール
4.2.4 アンケート調査結果分析(1)
4.2.5 アンケート調査結果分析(2)
2
4.2.6 検証 1-1 のまとめ
4.3 検証 1-2 高円寺の古着店への聞き取り調査
4.3.1 検証 1-2 においてインタビュー調査を行った古着屋のプロフィール
4.3.2 検証 1-2 高円寺の古着屋へのインタビュー調査結果
4.3.3 アンケート調査結果分析
4.3.4 検証 1-2 のまとめ
4.4 検証 2:顧客の反応の変化の有無が OLD 店の経営にどのような影響を与えたか
4.5 検証 2-1 下北沢と高円寺の古着店への聞き取り調査
4.5.1 検証 2-1 下北沢と高円寺の古着店へのアンケート調査結果
4.5.2 検証 2-1 下北沢と高円寺の古着店へのインタビュー調査結果
4.5.3 アンケート調査結果分析(1)
4.5.4 アンケート調査結果分析(2)
4.5.5 検証 2-1 のまとめ
4.6 検証 2-2 下北沢と高円寺の古着店への聞き取り調査
4.6.1 検証 2-2 下北沢と高円寺の古着店へのアンケート調査結果
4.6.2 検証 2-2 下北沢と高円寺の古着店へのインタビュー調査結果
4.6.3 検証 2-2 のまとめ
4.7 検証のまとめ
5. 結論・考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
参考文献・付録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61
3
1. 問題提起
大都市の商業について近年言及されることの多い現象の一つに,同一業種の零細小売店
舗群の集積が存在する。
このような零細小売店舗の集積は街に影響を与え,街全体が「ファッションの街」など「○
○の街」と呼ばれるようになり,顧客は遠くからでもその集積に通うようになる。同一業種
の集積がその街の独自性を形成し,顧客吸引力となるのである。
本稿では,下北沢,高円寺における古着小売業の集積をみていく。この 2 つの街は多数の
古着屋が集積し,
「古着屋の街」として街のイメージを確立してきた。希少性の高い古着や
年代物の古着,海外から仕入れた古着などを取り扱うこだわりの強い古着屋が多かったた
め,古着好きの人々が多数訪れていた。詳細は第 3 章で後述するが,この 2 つの街は「古着
屋の街」という側面以外にも,各種イメージ調査において同項目が挙げられるなど類似点が
多い。また,この 2 つの街はメディアによって,併せて取り上げられることもある。1
しかし,近年,リサイクル品など低価格の古着を取り扱う古着屋の進出に伴って,この 2
つの「古着屋の街」にも差異が生まれてきた。下北沢では,そのような低価格な古着屋(以
下,
「USED 店」と呼ぶ)が勢力を伸ばしてきた。一方,高円寺においては,同じく「USED
店」が進出していながらも,
「USED 店」が勢力を伸ばすことはなく,これまで存在してい
た高価値の古着を取り扱う店舗(以下,
「OLD 店」と呼ぶ)が依然として「古着屋の街」を
支えている。
「USED 店」の出現によって変化した下北沢,変化しなかった高円寺。それまではあらゆ
る点で類似していた下北沢と高円寺の間で,この差異が生まれた要因とは何なのか。
以下,まず第 2 章では,商業集積や古着業界全体の動向に関する先行研究を紹介する。続
く第 3 章で,下北沢と高円寺を歴史的背景から比較することでそれぞれの街の共通点,相
違点を明らかにした上で,第 4 章では,それぞれの街の古着屋の経営者に対する聞き取り
調査を中心に 2 つの街に差異を生じさせた要因を見出していく。
Daily PortalZ 「高円寺と下北沢はどっちがロックか」
http://portal.nifty.com/2010/02/04/c/
三浦展「
「汚れ」と「古さ」を許容する町の時代--高円寺,下北沢的世界」
『東京人』160 号
1
(2000)pp.139-145
4
【図表 1-1 本稿における「OLD 店」と「USED」店】
OLD 店
価格
USED 店
高い
安い
小 売 物 価 ※オールド品は買い付けによって仕入れ費用が掛かるため,高価格傾向。
統計と比
ユーズド品は店頭買い取りが行われるため価格は抑えられる。
較して
仕入れ
買い付け
買い取り
希少性
ある
ない
年代物(昔ながらのもの)
ただ着古したもの(リサイクル)
専門的(何年物しか扱わない)
多様
チェーンは(ほぼ)ない
チェーンもある
質
取扱種類
展開
例
昔ながらの希少価値の高いビンテー
ジ古着を中心に扱う商品など
5
リサイクルチェーン店など
2. 先行研究
2.1 集積の利益
木地(1984)によると商業集積とは「ある一定の地域内に商業施設が集中している現象
をあらわす」としている。都市や都市の中にある 1 地域に集中する商業施設については個
別の大型店舗の場合と規模に関係なく多数の経営が集中している場合がある。さらに多数
の経営が集中している場合も統一的に管理されている場合とそうでない場合がある。商業
集積にも様々なパターンがあるのだ。
また,このような集積のなかに店舗が立地することによって,店舗と顧客の両方に利益が
生じる。
川端(2008)によれば,商業の集積における店舗側の利益は「収入増大の力」
「費用節減
の力」
「付加価値増大の力」にあるという。
「付加価値増大の力」とは,銀座に店舗を出店す
ることでその店舗のブランド性が上昇するように,その集積地に出店することによって店
舗の社会的信用度が上昇し,競争優位性や成長力の強化につながる力である。店舗によって
そのような「付加価値増大の力」を享受できる最適な場所は異なってくる。
さらに,川端は顧客が享受する集積の利益として,
「費用節減」と「付加価値増大の利益」
を挙げている。費用節減効果とは,様々な小売店が一か所に集中することで多様な商品を一
か所で購入出来,比較購買がしやすくなる結果,探索コストを削減可能にさせる効果である。
また,付加価値増大の力とは,
「銀座で買った商品」
「原宿で買った商品」というように,そ
の場所のブランド性によって購入した商品にも特別な価値を加える力である。
このように集積には店舗と顧客に様々な利益をもたらし,そのような利益を求めて店舗
は集積するのである。
2.2 同業種集積による効果
2.1 では様々な業態,業種による集積,集積の利益について先行研究を用いて説明してき
たが,2.2 では同業種の店舗の集積を見ていきたい。
牛垣(2015)は,
「同業種型の商業集積地は,大規模な商業地でもあり全国展開するチェ
ーン店も存在するが,相対的にその割合は低く,小規模な個人商店が多く,多数の主体者に
よって自然発生的に形成される」ことを指摘している。
また牛垣は,同業種の集積について「特定業種の店舗が集積するため,来訪者はそれら
に興味をもつ人々に限定されるが,個人商店では大手企業にはできない挑戦的な商品を扱
う場合も多く,その分野に興味をもつ人々にとっては魅力的な空間」と示しており,さら
に,その分野の商品に対して高い知識や情熱を持った店員と顧客が多く,両者が商品を介
した関係を楽しむこともできると説明している。その業種の商品に強い興味を抱いている
6
顧客にとってはその集積は非常に魅力的に感じるのである。
さらに,同業種集積はその街に与える効果も大きい。西荻窪のアンティーク街について分
析した籾山(2000)は「同業種の小売店舗が高密度に集積することで広域的集客力を有し,
活力を有する街も存在する」としている。
西荻窪のアンティーク街は,最初の発生・成立から 20 年という比較的短期間に,停滞の
様相も見せず,約 70 軒ものアンティーク店が集積する街となった。西荻窪のアンティーク
店が個々の個性を保つことが可能であったこと,そのことにより,西荻窪のなかでのそれぞ
れの地域の成長期,安定期,停滞期など成長ステージが微妙にずれていたことで,「アンテ
ィーク店街」として一貫して成長を続けたのである。
同業種の店舗が特定エリアに集積することで「アンティーク街の西荻窪」のように,その
集積業種が街の代名詞になるという効果をもたらすのだ。
このように同業種の小売店舗が集積することによって,店舗,顧客のみならず,その集積
している街自体にも影響を与えているのである。
2.3 古着市場の変遷
株式会社ダイナックス都市環境研究所(2002)によれば,日本の古着市場は,国民経済の
成長に伴った市場の変化を受け,4 つの段階を移り変わってきた。以下,同書に従って古着
市場の変遷をまとめる。
第 1 期とする高度経済成長期前後は,実需系を中心とする時代であった。このころ,新品
衣料の代替品として,古着には一定の需要があったため,
「ビジネスの成立要因は,新品衣
料の供給能力不足と国民経済における購買力の不足であった。」と述べられている。しかし,
経済成長を通じて安定した品質かつ低価格の衣料品を大量生産できるようになり,古着屋
は,新品衣料の代替品としての需要がなくなり,古着市場は次第に衰退した。
第 2 期とする昭和 40 年代後半は,ファッション系を中心とする時代であった。若者文化
として日本に浸透したジーンズファッションは,海外からの中古衣料品輸入が広がる契機
となった。ジーンズだけでなく,皮のジャンパーやコート,柄物のポリエステルシャツ,ウ
エスタンシャツ,アロハシャツ等が市場に流通するようになり,新たに「ファッション型の
中古衣料市場」を創出した。この時期,古着だけでなく新品衣料も取り扱う新品併売店も登
場した。第 2 期において「ビジネスの成立要因は,消費生活の成熟の中での若者を中心とし
たファッション感覚の多様化である。
」と述べられている。また,
「専門店は,東京では原宿,
下北沢,高円寺のような若者文化の発信地に集中立地し,商業種集積効果を発揮しながら成
長していった。
」
,
「特定のブランドや年代ものを取扱うビンテージ・ショップも登場した。
」
とあることから,
この時期すでに下北沢と高円寺には OLD 店が存在していたことが伺える。
第 3 期とする昭和 50 年代は,リサイクル志向の時代といえる。昭和 48 年にオイルショ
7
ックが発生し,国民は省エネやリサイクルへの意識が高まった。この時期にフリーマーケッ
トやガレージセールが展開され,この流れの中でリサイクルショップが増えた。
「ビジネス
の成立要因としては,市民の環境配慮志向に加え,出展・買い取りの活動を通じてのコミュ
ニケーション志向,安価な掘り出し物が手に入る実需的志向が混在していた。
」とあり,古
着市場にまた新たな市場を生み出した。
第 4 期とする平成初年以降は,ファッション系と実需系の並存時代といえる。第 2 期に
創出されたファッション系の市場と第 3 期に登場したリサイクル志向の市場がそれぞれ拡
大してきた。リサイクル志向の市場の拡大については,長引く不況によって顧客のニーズが
強まったことも後押しとなり,中古衣料に対するマイナスイメージは払拭され,再び実需系
の市場が広がりつつあるといえる。
4 つの段階を経て古着屋の業態は,ファッション系専門店,新品商品併売店,買い取り小
売店,チェーン店など多様化してきたことが分かる。
2.4 古着業界の動向
次に,古着市場の動向を矢野経済研究所(2011)に沿って述べる。
顧客のリサイクル志向や節約志向の高まりにより,古着市場は不振が続くアパレル関連
市場の中で,数少ない成長市場であるといえる。顧客の古着に対するマイナスイメージが薄
れる一方で,古着が「ファッションアイテムの 1 つ」としてみなされるようになったのだ。
新品商品と古着の価格には大差はなく,ファストファッション2との競合も予測される。従
来「古着」といえば,衣類にある種のこだわりを持つ一部の人々が愛好しているものであっ
た。しかし近年になって,ブランド衣類やビンテージ衣類のみでなく,どのような衣類であ
っても買い取りを行うという古着専門のチェーン店が増加している。
以上より,古着市場の動向として,古着は成長市場であること,そのため近年では販売
方法・商品の多様化が進み,業界内でも異なった種類が混在し,詳細は 3 章で後述するが,
売上高の面から評価する場合,大手チェーンが成長しているというのが現状である。
2.5 本章のまとめ
本章ではまず,小売店舗の集積について説明した。集積には様々な利益があり,店舗のみ
ならず顧客もその利益を享受する。そのような集積の利益を求めて小売店舗は集積し,多く
の顧客がその場所に訪れるのである。
また,集積のなかでも同業種の店舗の集積には,特別な効果がある。同業種集積において
は顧客がその場所でしか触れることのできない商品に巡り会えるし,その業種の分野に強
2流行に対応した低価格な衣料品を短いサイクルで販売する業態のこと。
8
い興味を持つような顧客にとっては魅力的な空間となるのである。そして同業種集積はそ
の街に対しても影響を与える。
「アンティーク街の西荻窪」のように,その集積業種が街の
代名詞となり,街の固有性をつくりだすのである。
次に古着市場の変遷についてみてきた。古着市場は国民経済の変化に伴い,大きく 4 段
階を経て変遷してきた。そのような段階を経て現在,アパレル業界の不振が続くなかで古着
業は存在感を高めていて,大手チェーン進出や,販売方法・商品の拡張など業種としての多
様化が進んでいる。
9
3. 下北沢と高円寺
3.0 本章の目的
第 2 章では,小売店舗がなぜ一定地域に集積してくるのか,そしてその集積がどのよう
な利益をもたらすのかを先行研究をもとに説明してきた。本章では本稿で焦点を当てる「古
着屋」集積についての説明に移りたい。実際に古着屋が集積している地域を明らかにし,下
北沢,高円寺 2 つの街の地域性や歴史,そしてなぜこの 2 つの街に古着屋が集積したのか
をみていき,検証の章で 2 つの街の変化の有無の差異を生み出した要素を考察する予備段
階として,この章を進めていく。
3.1 古着屋の集積地
東京都特別行政区内の古着屋の立地
1990 年代を通して衣料品の消費市場は伸び悩んだが,古着市場は拡大を続けていった。
下村(2011)では,古着屋の立地の動向を『タウンページ』記載の特別行政区における店舗
数の推移で確認している。東京都特別区全体で見ると,1980 年代後半から 1990 年代前半
にかけて継続的に増えていったあと,1994 年から 1995 年にかけて急増していること,更
に 2005 年でピークを迎えるまで増え続けていたが,2008 年現在では減少していることが
分かる。
我々も下村と同様の方法で 2011 年版から 2015 年版にかけての東京都特別行政区全体及
び 2011 年から 2015 年版での上位 3 区である渋谷区,世田谷区,杉並区の「古着商」数の
推移を集計した。また,2011 年版から 2015 年版にかけては上位 3 区の入れ替わりは存在
しなかった。
【図表 3-1 「タウンページ」記載の「古着商」の数の推移(特別区全体と上位 3 区)】
250
192
200
181
172
161
167
46
42
38
41
27
18
2013年版
25
14
2014年版
29
15
2015年版
150
100
51
50
29
20
0
2011年版
29
21
2012年版
世田谷区
渋谷区
杉並区
(出所)
「タウンページ」各年版より作成
10
特別区全体
東京都特別区全体では,2011 年版以降も「古着商」の数は減少を続けているが,2014 年
版から 2015 年版にかけてでは上昇が見られている。また,渋谷区,世田谷区,杉並区も同
じく,2011 年から 2014 年版にかけては減少しているものの,2015 年版では上昇に転じて
いる。
下村(2011)が指摘しているように,東京都特別区内の古着屋の立地傾向の特徴として,
古着屋の立地が特別区内でもいくつかの区に集中し,それらの区内でも特定の地域への偏
在が著しいことがあげられる。2015 年版の『タウンページ』では,上位 3 区である渋谷区,
世田谷区,杉並区で全体の 50%を占めており,2008 年の 63%からは減少しているものの依
然として高い割合を占めている。下村(2011)では,1985 年の上位 3 区の占める割合が 23%
に過ぎなかったことから,古着屋の増加が特定の区への偏在として進んだことが分かると
述べている。また,これらの区内で見ても,特定の地域への偏在は著しい。2015 年版の『タ
ウンページ』でも,下村(2011)と同様に,渋谷区では渋谷駅周辺北部から原宿にかけての
地域,世田谷区では下北沢と三軒茶屋,杉並区では高円寺周辺に集積している。
下村(2011)では,上記で述べた古着屋の偏在は銀座,新宿,渋谷,池袋といった大資本
によって形成された既存の繁華街ではなく,零細小売店舗群の集積なのだと主張している。
しかし,嘉田(2009)が述べているように,近年では古着屋の中でも新品併売業態やセレク
ト型古着リサイクル店舗が支持を集めており,これらの店舗では大型化・チェーン化してい
るものが多く見られるようになった。【図表 3-2】と【図表 3-3】では,USED 店の店舗
数と売上の推移が順調に右肩上がりであることを示していることから,近年リサイクルチェ
ーン店をはじめとする USED 店が古着業のなかでも存在感を高めていることが伺える。
【図表 3-2 株式会社ハードオフコーポレーションの売上高と店舗数の推移】
株式会社ハードオフコーポレーション
11000
640
10000
620
9000
600
8000
7000
580
6000
560
5000
540
2007年3月期
2008年3月期
2009年3月期
売上高(百万円)
2010年3月期
店舗数
2011年3月期
(出所)
株式会社ハードオフコーポレーション(2011)『2011 年 3 月期決算報告と今後の経営戦略』
より作成
http://contents.xj-storage.jp/contents/AS91042/T/PDF-GENERAL/20110530931548.pdf
11
【図表 3-3 株式会社ウィゴーの売上高と店舗数の推移】
株式会社ウィゴー
300
140
250
120
100
200
80
150
60
100
40
50
20
0
0
売上高(億円)
店舗数
(出所)
株式会社ウィゴー(2015)『COMPANY INFORMATION 2015』より作成
https://www.wego.co.jp/profile.pdf
次節以降では,世田谷区下北沢周辺と杉並区高円寺周辺に集積している古着屋の実態に
ついて見ていく。これらの地域を選んだ理由は 2 つある。詳細は後述するが,1 点目は,下
北沢・高円寺においてほぼ同時期に大型化・チェーン化した古着屋の進出が見られるように
なったこと,2 点目は,原宿がラフォーレ原宿や表参道ヒルズなど大資本による開発が見ら
れるのに対して,下北沢・高円寺両地域とも近年に至るまで再開発が行われておらず,零細
小売店舗群としての特徴を色濃く残しているからである。
3.2 下北沢の概要
3.2.1 下北沢の地域性
下北沢の HP「ぶらり下北沢」によると,下北沢は渋谷から京王井の頭線急行で 3 分,新
宿から小田急小田原線急行で 10 分ほどの駅である。下北沢駅周辺地域には主要幹線道路が
通っておらず,
一番近い主要幹線道路である環状 7 号線も西側の隣駅である京王新代田駅,
小田急世田谷代田駅の更に西側に存在する。下北沢駅周辺地域は,北東から南西に向けて走
る小田急線と南東から北西に抜ける井の頭線を境にして東西南北 4 つの地域を形成し,お
よそ 6 つの商店街が存在している。駅前広場がないことによって,下北沢の最大の魅力で
ある車が進入してこない歩行者主体の都市構造が生まれた。北口すぐのしもきた商店街は
12
カフェやレディースアパレル,古着,雑貨などファッションや美容に関する店舗が多い。更
に北側の下北沢一番街商店街は,老舗が多く存在している一方で,カフェ,飲食店を始めと
したオリジナリティあふれる店舗が近年増加している。南口の井の頭線の高架をくぐった
東側にある,下北沢東会は新橋のような飲み屋街となっている。南口すぐにある下北沢南口
商店街は,
「若者の街」の様子を市場によく表しているといわれ,比較的大規模の人気店が
多く出店している。また,南口商店街以南には親栄商店街,代沢通り商店街が位置している。
ここからは林ほか(2011)の「東京における集客型市街地の変容過程に関する考察 その
5
下北沢の事例」をもとに,下北沢の街の変化についてみていく。
大正時代までは下北沢は郊外の農村であり,小田急線と京王井の頭線の下北沢駅の開設で
住宅地になった。戦中の建物疎開3で空き家が増加し,戦後には駅の北に闇市が形成された。
その後,50 年代から輸入品を扱う店舗が増加して,庶民的でおしゃれのイメージが下北沢
についた。
また,
現在における下北沢の賑わいの原点は一連の劇場の建設にあるという。さらに 1970
年代初頭,新宿のヒッピー4らのメッカ風月堂が閉店したことでヒッピーが下北沢に集中。
1986 年に渋谷にあった当時人気のライブハウスが下北沢に移動したことで,渋谷の若者も
移動してくるようになった。
すなわち,渋谷,新宿の文化と下北沢固有の庶民の文化と演劇の文化が現在のような下北
沢を形成しているのである。
下北沢の空間的変化をみてみる。1970 年代には小規模,大規模を問わずに建て替えがみ
られた。1980 年代の劇場の出現を境にそのような開発は小規模なものに限られたが,その
小規模開発も 1990 年代には落ち着いた。土地利用については,駅周辺からもともと住宅地
であった場所がしだいに商業地へと変化し,駅から離れた場所でも,住宅から商業地への小
規模な変化が点在するようになった。この変化が下北沢の魅力の一つの要素となっている。
林ほか(2011)は雑誌記事から今までの下北沢のイメージをみている。1980 年代後半で
演劇・音楽の記事が多く取り上げられ,1990 年代後半には若者向けの記事が急増している。
また,2000 年代に入ると,下北沢は住みたい街ランキングの上位になり,若者の憧れの街
として取り上げられるようになり,
「オシャレ」というワードも頻出してきた。さらにここ
数年では、外国人も多く訪れるようになり、観光地としての印象も増している。
つまり,下北沢という街は,街の変化とともに,街のイメージも変化してきたと言えるこ
とができる。
ここで下北沢のイメージとして取り上げられているものを紹介する。マクロミル「2006
年 東京・街のイメージ調査」では,住みたいと思う町 4 位,おしゃれな人が住んでいそうな
3激化する都市への空襲に備え,火災の延焼を防ふせぐため,建物を解体して防火帯を作る
こと。
4 伝統や制度などの既成価値観に縛られた人間生活を否定することを信条とし,文明以前
の野生生活への回帰を提唱する人々。
13
街 9 位,近所付き合いが楽しそうな街 5 位となっている。「 アットホーム『東京都在住の
若者に聞く駅のイメージに関するアンケート調査』
」からは住んでみたいまち 5 位(交通の
便がいい,活気がある,おしゃれ・庶民的),活気があるまち(男性 2 位,女性 1 位)
,庶民
的なまち(男性 4 位,女性 4 位)というような印象を多くの若者が持っていることが分か
る。
下北沢の「個性」を三浦(2007)は次のように紹介している。
①約 1500 もの個性的な店舗が混在している。
②下北沢という街は,にぎやかな駅前があるかと思えば,1 歩裏に入ると閑静な住宅街,そ
うかと思えば昔からあるようなアパートがあったりと,狭い空間のなかにも様々な顔を持
っている。下北沢は歩いていて楽しめる街。
③ごちゃごちゃと店舗が並んでいる光景はなんだか暖かく,ホッとする。
④次々に新しい店舗ができては消え,循環していく下北沢は,まさしくワンダーランドのよ
うな街。
⑤下北沢は芸術や文化が生活に溶け込んでいる街。
⑥夜になると下北沢はまた味わいのある面白さを与えてくれる。
「個性的な店舗」が乱立し,文化的な側面があり,「歩いて街を楽しめる」という点に下
北沢の特徴が見出されている。
しかし,三浦は下北沢での駅前広場建設計画や,大規模な店舗を誘導する地区計画を含む
「再開発」はそのような下北沢の魅力を損失させてしまうのではないかと危惧している。
3.2.2 下北沢の再開発
下北沢ではここ数年再開発が行われている。遠藤ほか(2010)によると,
「下北沢の再開発
は 2003 年の小田急線地下化の連続立体交差点事業決定を契機として 2 つの道路を新設す
る大規模な駅周辺の再開発である」と示されており、2006 年には建築規制を緩和する地区
計画が決定された。
しかし,このような再開発は下北沢の個性を破壊するようなものであり,下北沢らしさと
はかけ離れた都市空間をつくりだしてしまうことに反対した地域住民や商業者をはじめと
する市民団体や都市計画の専門家までもが計画の見直しを要求したのである。当時の報道
によると,
「再開発の背景には連続立体交差事業が,国の道路特定財源から補助される事情
がある。財源の性質上,道路整備の一環として行うため,道路を新設する必要があるという。
世田谷区は『道路や公園など都市基盤の整備が不十分。歩行者の安全や快適な買いもの空間,
防災上の課題を抱えている』」とされ,協議会世話人のコメントとして,「開発が進み地区
計画が策定されると,新築されたビルには高い賃料を払える大手チェーン店だらけになる。
それでは街の個性は消えてしまう」と,下北沢らしさの損失が危惧されていた5。
5
「ここに注目:下北沢駅周辺の再開発 商店主団結、世田谷区へ要望書」
『毎日新聞』
(東
14
また,2006 年に下北沢フォーラムが行った調査結果によれば(
【図表 4】
【図表 5】
【図表
6】
)下北沢の多くの住民や商店が大型ビルの建設に反対していたことが分かる。また,
「街
並みが壊れる」
「街の魅力が破壊される」
「個性的で魅力のある小さな店舗がなくなる」とい
った反対理由が地域住民,商業者両方において回答数上位であることは,それまで小規模店
舗が集積する下北沢の特徴が失われることに不安を感じる地域関係者が多かったことを示
している。
京版)2006 年 3 月 16 日。再開発のもたらす影響に対する危惧はその後も継続的に表明さ
れている。たとえば,2008 年には,計画見直しを求める下北沢駅周辺の商店主らで作る下
北沢商業者協議会が開催したシンポジウム「SHIMOKITA VOICE(シモキタヴォイス)08」が
開催され,
「同駅前では,小田急線の地下化工事に伴い,幅最大 26 メートルの道路や駅前ロ
ータリーの建設などが計画され,06 年 10 月に都が区に事業を認可した。だが,地元の商店
主らは『路地中心の文化が失われる』と反発。『地元の意見を聞いて』と昨年,シモキタヴ
ォイスを初開催した。
」と報じられている(「シンポジウム:きょう,下北沢で 駅周辺再開
発計画見直し求め」
)
15
【図表 3-4 下北沢における大型ビル建設の可能性についての住民の評価】
地域住民
0%
20%
40%
60%
80%
賛成
どちらかと言えば賛成
どちらともいえない
どちらかと言えば反対
反対
無回答
100%
(出所)
「
『下北沢らしさ』調査報告」 2006 年下北沢フォーラム P19
http://shimokitazawa-forum.com/archive/survey.pdf
【図表 3-5 下北沢における大型ビルの建設の可能性についての商店の評価】
地域商店
1
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
賛成
どちらかと言えば賛成
どちらともいえない
どちらかと言えば反対
反対
無回答
90%
100%
(出所)
「
『下北沢らしさ』調査報告」 2006 年下北沢フォーラム P19
http://shimokitazawa-forum.com/archive/survey.pdf
16
【図表 3-6 「下北沢における大型ビルの建設の可能性についての評価」において反対,
または,どちらかといえば反対と答えた人の理由】
反対と答えた人の理由(地域住民)
土地を持っている人が有利なだけ
環境が悪化する
日陰になるところが増える
街の魅力が破壊される
個性的で魅力ある小さな店がなくなる
下北沢に大きなビルはふさわしくない
これまでの下北沢の街並みが壊れる
0
10
20
30
40
50
60
70
80
60
70
80
反対と答えた人の理由(地域商店)
土地を持っている人が有利なだけ
環境が悪化する
日陰になるところが増える
街の魅力が破壊される
個性的で魅力ある小さな店がなくなる
下北沢に大きなビルはふさわしくない
これまでの下北沢の街並みが壊れる
0
10
20
30
40
50
(出所)
「
『下北沢らしさ』調査報告」 2006 年下北沢フォーラム P19,20
http://shimokitazawa-forum.com/archive/survey.pdf
3.2.3 下北沢の古着屋集積
目視による現地調査で 100 店舗が確認された。
(下北沢駅を中心に半径 500m圏内。2015
年 11 月実施。
)その内,北口 64 店舗,南口 36 店舗であった。古着屋は,北口にある,し
もきた商店街に多く集積しており,リサイクルチェーン店をはじめとする USED 店も主に
北口で確認された。
また,下北沢におけるリサイクルチェーン店は以下【図表 3-7】の通りである。
17
【図表 3-7 下北沢のリサイクルチェーン店の開店年数】
店舗名
開店年数
ラグタグ下北沢南口店
1994 年(2006 年閉店)
(前・下北沢店)
ラグタグ下北沢北口店
1998 年
(現・下北沢店)
DonDonDown on Wednesday
下北沢店
2010 年 4 月
Do Style 下北沢店
2012 年春
トレファクスタイル下北沢店
2012 年 8 月
ジャンブルストア 下北沢店
2012 年 11 月
MODE OFF 下北沢店
2013 年 8 月
(出所)
ラグタグ下北沢南口店(前・下北沢店)
Tin Pan Alley HP 社史・沿革
http://www.tinpanalley.co.jp/history/index.html
ラグタグ下北沢北口店(現・下北沢店)
Tin Pan Alley HP 社史・沿革
http://www.tinpanalley.co.jp/history/index.html
DonDonDown on Wednesday 下北沢店
下北沢経済新聞 2010 年 5 月 7 日
http://shimokita.keizai.biz/phone/headline.php?id=911
Do Style 下北沢店
下北沢経済新聞 2012 年 12 月 14 日
http://shimokita.keizai.biz/phone/headline.php?id=1668
トレファクスタイル下北沢店
株式会社トレジャー・ファクトリー平成 24 年 7 月 18 日 News Release
http://pdf.irpocket.com/C3093/JA1b/LonM/YwPU.pdf
ジャンブルストア 下北沢店
下北沢経済新聞 2011 年 11 月 1 日
http://shimokita.keizai.biz/phone/headline.php?id=1336
MODE OFF 下北沢店
株式会社ハードオフコーポレーション
平成 26 年 3 月期 8 月度店舗売上高および出店状況についてのお知らせ
http://contents.xj-storage.jp/contents/AS91042/T/PDFGENERAL/140120130910021701.pdf
18
下北沢における古着屋の集積について取り上げた先行研究は管見の限り見当たらないた
め,下北沢で古着屋の集積が進んだ経緯については不明な点が多い。
ただし,三浦(2008)は若者文化が流入した 1970 年代にその後の下北沢で中心となる業
種の店舗が進出してきたことを指摘している。同書では下北沢でこの頃に「音楽の街」とし
ての性格を持つようになったことが明らかにされており,後述する高円寺における古着屋
の進出と同様に,音楽文化に関連する様々な店舗の一つとして 1970 年代に下北沢にも古着
屋が現れるようになったのではないかと推測される。
以下では,衣料品店の集積の経緯について述べる。
まず,三浦にしたがって,
〈盛り場-下北沢〉の誕生の流れを説明しよう。60 年代から 70
年代にかけて,近隣に大学のキャンパスが開設され,多くの学生が下北沢に下宿するように
なった。また 60 年代のカウンターカルチャー6を象徴するような音楽を売りにした店舗が
進出してきたことで「若者の街」としての側面を新たに併せ持つようになった。その後,70
年代後半に,
「演劇の街」という側面も持つようになり,80 年代後半以降増大したメディア
言説により「若者の増加→若者文化に合わせた店舗の展開→若者の増加」を加速させた。
この三浦(2008)
とほぼ同様の内容が佐々木隆爾,藤井史朗,世田谷自治問題研究所(2001)
でも指摘されている。同書では開設年次別に「1974 年以前」,
「1975 年~89 年」,
「1990 年
以降」にわけて事業所の業種の特徴を論じているが,それによると以下のことが分かる。
1974 年以前開設の商店には,食品,衣料や文化品小売業,またサービス・不動産業が多
い。飲食店は 1975 年以降,とりわけ 1975~89 年開設のものが多く,また最近の下北沢商
店街の特徴とも言える雑貨小売業は 1975 年以降,とりわけ 1990 年以降に開設している。
衣料品小売業は 1990 年以降に再び増加しているが,これは婦人服や若者向け衣料が中心と
なっている。
次にファッション系の店舗の推移について見てみよう。松川(2013)
,によれば,1988 年
の駅北側は比較的駅に近い位置にファッション系店舗の集中度が高い領域があり,南側は
分散している。経年的な変化を見ると,北側で大きく集中して立地していたものが,住宅地
の方に広がっていく領域変化が観察される一方,南側で分散していた領域が連結され,集中
していく様子が確認される。また,飲料中心型店舗が密度を増やしているような南側の駅か
ら遠い部分では,服店の立地はあまり確認できないことを述べている。
三浦(2008)は<衣料品店>の立地変化について<盛り場黎明期~75 年 5 月>,<盛り
場全盛期~88 年から 90 年にかけて~>,<現在の状況>に分けて分析している。<盛り場
黎明期の時期>では生鮮食料品を扱う店舗が多く、住宅地の商店街として機能していた。し
かし,この時期でも北側の一ブロックに「生地・ファッション」の店舗の集積が見られた。
<盛り場全盛期>の時期はファッション系の店舗の集積は次第にそれまで住宅地であった
6
既存の主流となっている文化に対抗する文化。ヒッピー文化などがこれにあたる。
19
西の地域に移動させ,込み入った路地の奥にあるような場所に立地する店舗が多いのが特
徴である。この現象の原因としては,下北沢を宣伝したメディア誌の影響,地価の上昇が挙
げられる。<現在の状況>においては,ファッション系の店舗数自体は 90 年時に比べて違
いはほとんどないが,南部に新たな集積地を形成していることが明らかにされている。
3.3 高円寺の概要
3.3.1 高円寺の地域性
下村(2011)を参考に高円寺について紹介すると,高円寺は新宿から JR 中央線快速で 10
分ほどの駅であり,関東大震災後と,高度経済成長期に人口が増加すると,杉並区の中でも
最も人口密度の高い地域になった。
高円寺は 3 つの大通りに囲まれているが,この地域内は幅の広い自動車道路が少なく,地
域を貫通する通りもない。高円寺には純情商店街,庚申通り商店街,パル商店街,ルック商
店街があるが,これらの通りでは自動車は進入できず,人々が徒歩で回遊する空間である。
「日本の特別地域特別編集 東京都杉並区」では,高円寺は杉並区で唯一の「江戸から続
く街」であるが,現在は若年層人口が高く,大人になってから高円寺に住み始める若者が多
いということが示されている。
高円寺の HP「高円寺観光案内7」には,
「商店街の数が多く,昔ながらの個人商店から若
者向けのサブカルチャーの強い店舗まで,日々多くの人で賑わっています。安価で親しみや
すいライブハウス,個性的な雑貨屋やインパクトのある古着屋などが立ち並ぶ高円寺は,新
宿・吉祥寺へのアクセスのしやすさもあって,全国的にも若者に非常に人気のスポットにな
っています。
」と紹介されている。高円寺も下北沢同様,
「若者の街」という性格を持ってい
ることが言えるだろう。
○高円寺のイメージ
ここで高円寺のイメージとして取り上げられているものを紹介する。
「アットホーム『東京都在住の若者に聞く駅のイメージに関するアンケート調査』」
(2013)では近所付き合いが楽しそうなまち 7 位となっており,地域に根ざしたお祭りや
イベントが多いといったイメージ強いといったイメージを持たれていることが示されてい
る。また,この「アットホーム『東京都在住の若者に聞く駅のイメージに関するアンケー
ト調査』」と「マクロミル『首都圏沿線・街のイメージの調査』」(2006)のどちらの調
査とも高円寺には庶民的なイメージが多くの人から持たれていることを報告している。
7
「高円寺観光案内」http://kouenji.biz/information/
20
さらに「平成 22 年度 杉並芸術会館(座・高円寺)開館による地域経済活性化等調査報告
書」が行った高円寺の来街者におこなった「高円寺のイメージに対する調査」で,
第一位 古着・雑貨の街
第二位 阿波おどりの街
第三位 生活の街
第四位 若者・学生の街
第五位 買い物の街
第六位 飲食の街
第七位 ロック・音楽・演劇の街 第八位 おしゃれな街
第九位 歴史ある街
という結果が出ており,高円寺に訪れる人々からは古着の街としてのイメージが強いよう
だ。
3.3.2 高円寺の古着屋集積
現地調査によって 91 店舗が確認された。
(高円寺駅を中心に半径 500m圏内。2015 年 11
月実施。
)内,北口 8 店舗,南口 83 店舗であった。古着屋は,高円寺パル商店街周辺を含
む南口に多く集積しており,USED 店も主に南口で確認された。
高円寺における USED 店は以下の【図表 3-8】の通りである。
【図表 3-8 高円寺の USED 店の開店年数】
店名
開店年数
トレファクスタイル 高円寺店
2008 年 8 月
トレファクスタイル 高円寺 2 号店
2010 年 11 月
2012 年 9 月(2014 年 5 月閉
Do Style-Outlet 高円寺店
店)
MODE OFF 高円寺純情商店街店
2013 年 7 月
DonDonDown on Wednesday 高円寺店
2014 年 8 月
セカンドストリート 高円寺店
2015 年 10 月
(出所)
トレファクスタイル 高円寺店
株式会社トレジャー・ファクトリー平成 20 年 8 月 1 日 News Release
http://pdf.irpocket.com/C3093/UcZX/Wl5r.pdf
トレファクスタイル 高円寺 2 号店
株式会社トレジャー・ファクトリー平成 22 年 11 月 15 日 News Release
http://pdf.irpocket.com/C3093/kzOO/JKn7/yg33.pdf
Do Style-Outlet 高円寺店
DORAMA HP 新店舗お知らせ詳細
http://www.dorama.co.jp/open/post_9.shtml
MODE OFF 高円寺純情商店街店
21
株式会社ハードオフコーポレーション
平成 23 年 3 月期 3 月度店舗売上高および出店状況についてのお知らせ
http://contents.xj-storage.jp/contents/AS91042/T/PDF-GENERAL/20110411982915.pdf
DonDonDown on Wednesday 高円寺店
DonDonDown on Wednesday HP お知らせ
http://www.dondondown.com/don/news/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E6
%9D%89%E4%B8%ā6%E5%8C%BA%E3%81%AB%E6%96%B0%E5%BA%97%E8%88
%97%E3%80%8C%E9%AB%98%E5%86%86%E5%AF%BA%E5%BA%97%E3%80%8D%
E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3-3/
セカンドストリート 高円寺店
総合リユースショップ セカンドストリート / 衣料・服飾専門ユーズドセレクトショッ
プ HP 店舗検索
http://www.2ndstreet.jp/shop/search?order=postingDate
先述の下村(2011)をもとに,高円寺に古着屋が集積した経緯を確認しておこう。
○集積の契機
高円寺に古着屋の集積が発生したことにはどのような経緯があったのだろうか。下村に
よれば,それには高円寺の内生的要因と外生的要因が関係している。
高円寺は 1970 年代以来,フォークやロックを中心とするポピュラー音楽に携わる人々の
集まりであり,ライブハウスや中古レコード店など音楽関連施設も多く存在していた。古着
屋もそのような音楽文化に関連する店舗の 1 つにすぎなかった。そんな中 1987 年に集積の
核となる古着屋が出現し,それを境に古着屋が増えたのである。つまり,高円寺の古着屋の
集積は音楽文化の一要素から離脱して発展し始めた結果なのである。
また,このような発展を促したのは,1980 年代後半のグローバルな古着流通機構の確立
と,国内における古着需要の増大という外生的要因であった。
このような経緯で高円寺において古着屋集積が発生したわけだが,集積を維持している
要因について下村が指摘するのは以下の 2 点である。
① 店舗の借りやすさ
高円寺は原宿や下北沢など,ほかの古着屋集積地と比べて賃料が安く,さらに建物の使い
方の自由度の高く,供給店舗が多いため開業しやすく,若い経営者はとりわけ高円寺のなか
でも裏通りなどさらに賃料の安い場所へ店舗を構えた。
22
② 集積が集積を呼ぶ
近年の古着屋集積は,すでに集積が集積を呼ぶという循環によって維持されている。この
循環は 3 つの場合がある。
(1) 古着屋として新規開業を志す人が,高円寺が他地域よりも経営しやすい場所であると判
断して,高円寺に来る場合
(2) もともと高円寺で古着屋ではないほかの業種を経営していたが,古着を求めて高円寺に
来る客の増加をみて古着業に業種転換をする場合
(3) 高円寺の古着屋で従業員として働いている人が,客層をよく知っている,空き店舗の情
報を探しやすいなどの理由で,元の職場と近い場所で独立開業するという場合
3.4 下北沢と高円寺の類似点と相違点
ここまでの下北沢と高円寺の街の地域性や文化,さらに古着屋が集積してきた経緯を説
明してきた。下北沢と高円寺の類似点として「庶民的な街」でありながら,
「若者の街」
としても機能していることがまず挙げられ,そのような性格にはそれぞれの街の文化性が
影響しているのである。また,2 つの街には古着屋に限らず昔から個性的な店舗が存在し
ているのである。
また相違点としては,下北沢では住民と商店が問題視されている再開発問題があり,高
円寺ではそのような問題はみられなかった。さらに,下北沢では「おしゃれな街」「観光
地」としての性格も備えるようになり,高円寺は「古着の街」として印象が依然として強
いことがわかった。
23
【図表 3-9 下北沢と高円寺の類似点と相違点】
高円寺
下北沢
類似点
街の性格
下町らしい庶民的な要
庶民の文化を持ち,かつ
素に加え,若者が多い街
若者の街
である
個性的なお店が多い
個性的なお店が多い
文化的側面
音楽
音楽,劇場
古着屋の集積時期
1980 年代後半
1980 年代後半
古着屋の出現の要因
音楽文化
明確ではないが,若者の
街 と し て の 側 面 と 文化
的側面
同時期における USED 店の進出
有り
有り
(【図表 7】【図表 8】参照)
相違点
再開発問題の有無
特にみられなかった
多 く の 反 対 が あ る なか
進行中
街の性格
来街者のイメージが「若
若 者 の 街 に 合 わ せ た,
者の街」
「おしゃれな街」 「おしゃれな」要素を持
という印象より「古着屋
った飲食店,カフェが増
の街」という印象が強
えているなど,「おしゃ
い。
れな街」として人気を集
めている。
外 国 人 も た く さ ん 訪れ
るようになるなど,近年
観 光 地 と し て の 側 面も
持っている。
24
【図表 3-10 下北沢と高円寺の古着チェーン店推移】
7
6
5
4
3
2
1
0
2009
2010
2011
2012
下北沢
2013
2014
2015
高円寺
(出所)
【図表 3-7】
【図表 3-8】より作成
3.5 本章のまとめ
本稿で古着屋集積として下北沢と高円寺に注目する理由は 2 つある。第一に,下北沢・高
円寺において,ほぼ同時期に大型化・チェーン化した古着屋の進出が見られること,第二に,
下北沢・高円寺両地域とも近年に至るまで零細小売店舗群としての特徴を色濃く残してい
るからである。
下北沢,高円寺は,ともに庶民的な要素を持ちながら,同時に「若者の街」としての性格
も兼ね備えている点で共通している。また,それぞれの街の「らしさ」を持った個性的なお
店が多い。さらに 2 つの街とも音楽・演劇など昔から文化的な側面を兼ね備えている点も
類似点の 1 つであり,その文化的側面も 2 つの街に古着屋が現れた要因の 1 つだと考えら
れるのである。
しかし,再開発が進む下北沢とそうでない高円寺という点では,2 つの街の違いがある。
また,下北沢は「古着の街」という性格以外にも,若者の街らしい「おしゃれな街」として
の機能も備えるようになったが,高円寺は未だに「古着の街」としての印象が最も強いこと
が伺えた。
また,
【図表 3-10】より,下北沢も高円寺もここ数年で「USED 店」の 1 つであるリサ
イクルチェーン店が出店してきていることから,どちらの街も「USED 店」が進出してき
ている傾向がみてとれる。
25
4. 検証
4.0 本章の目的
「USED 店」
(リサイクル品など低価格の古着を取り扱う古着屋)の進出による街の変化
を最も敏感に感じ取っているのは,それぞれの街の同業者,つまり既存の古着屋の経営者で
あろう。そこで本章では,下北沢,高円寺で,基本的に「USED 店」が進出してきたここ 4
年に開業している古着屋に対する聞き取り調査を中心として,
「USED 店」による街全体の
古着屋に変化が生まれた下北沢と,変化が現れなかった高円寺の違いを生んだ要因につい
て明らかにしていきたい。
4.1 検証 1:下北沢や高円寺への USED 店の進出に顧客がどのような反応を示
したか
検証 1 では顧客に焦点を当て,下北沢と高円寺において「USED 店」が進出してきたこ
とで,街にやってくる顧客はどのような反応を示したのかを明らかにしたい。
まず,古着屋の経営者への聞き取り調査を解釈する上で,「顧客のニーズが経営方針を決
めている」という前提を置く。ドラッカー(2001)の定義に従えば,
「マーケティングが目
指すものは,顧客を理解し,製品とサービスを顧客に合わせ,おのずから売れるようにする
こと8」にある。また,「顧客が求めているもの」「顧客の期待を超えているもの」であるか
どうかを考慮することが,マーケティング活動の起点だと見なすことができるからである9。
4.2 検証 1-1
下北沢の古着店への聞き取り調査
4.2.1 検証 1-1 においてインタビュー調査を行った古着屋のプロフィール
下北沢の古着屋にインタビューを行った。インタビューには,5 店舗の経営者に応じてい
ただいた。
A 店…下北沢で 6 年経営している単独店である。古着のみを取り扱っており,買い付け10に
より古着を仕入れている。客層の中心は 31~44 歳であり,男性女性ともに買いに来る。下
北沢以外の地域で経営したことはないが他地域で経営したいと考えている。
P.F.ドラッカー(2001)
『マネジメント【エッセンシャル版】-基本と原則』p.17。
理央周(2015)
10 事業者自ら市場などに出向く仕入れ方法。店舗に持ち込まれた商品を仕入れる買い取り
と対になる。
8
9
26
B 店…下北沢で 9 年経営している単独店である。古着のみを取り扱っており,買い付けと
業者仕入れにより古着を仕入れている。客層の中心は 15~44 歳であり,男性女性ともに買
いに来る。下北沢以外の地域(中野)で経営したことがある上,他地域で経営したいと考え
ている。
C 店…下北沢で約 13 年経営している古着店であり,系列店が存在する。古着のみを取り扱
っており,買い付けにより古着を仕入れている。客層の中心は 15~30 歳であり,女性が主
に買いに来る。下北沢以外の地域(池袋)で経営したことがある上,他地域で経営したいと
考えている。
D 店…下北沢で 1 年経営している単独店である。古着のみを取り扱っており,買い付けに
より古着を仕入れている。客層の中心は 20 代等の若者であり,男性が主に買いに来る。下
北沢以外の地域(原宿)で経営したことがある上,他地域で経営したいと考えている。
E 店…下北沢で 10 年経営している単独店である。主に年代物のビンテージ系の古着を取り
扱っている。
4.2.2 検証 1-1 下北沢の古着屋へのインタビュー調査結果
A 店,B 店,C 店,D 店,E 店へのインタビューによる,古着店から見た下北沢の街の雰
囲気について記載する。
・A 店の証言
下北沢駅の北側と南側では雰囲気が異なる。南側は大手のチェーン店が多く,商圏が広い。
北側では個人店が多い。下北沢のまわりには高校や大学が多く,街を歩いている人は若い人
が多い。週末には地方からたくさんの人々がやってくる。さらに団体が多く,そのなかでも
女性の割合が非常に高い。
また下北沢という街に対するリピート率が高い。下北沢を歩いているだけでステータス
ということで,何か特別な目的がなくても,下北沢にやってくる人が多く,その中で特別に
何か購買しようという目的がなくても,お店に入ってくる人も少なくない。下北沢では,こ
こ 5 年で古着屋の新規出店が多いが,入れ替わりが激しいということはない。下北沢には
古着以外のお店も多く存在しているため,人が集まる。高円寺より人がやって来るから商売
になる。マーケット11があるぶん出店しやすい。
11
市場,需要。
27
・B 店の証言
B 店は 8 年前にお店を構えた。
近年,下北沢に USED 店が増えてきたことで街の様子が何となくおかしくなってきた。
増えてきた USED 店は,一見すると OLD 古着屋に見えてしまい,古着についてそれほど
知識のないお客には区別がつかないのである。USED 店は買い取りによる仕入れなので,
非常に安い価格で売ることが可能である。
このように OLD 店より非常に安い古着を取り扱っている USED 店の増加によって,下
北沢の古着屋にやってくるお客は徐々に安いものを求めてくるようになった。USED 店に
お客をとられているという感覚はないが,今まで下北沢に多く存在していた OLD 古着を求
めてくるお客が下北沢に来なくなったのは事実。つまり,古着のロマンを求めてくる人が下
北沢では少なくなってしまった。
・C 店の証言
そもそも下北沢の近辺には大学があるが,USED 店の出現によって学生が多くなった。
学生は安さを求めてやってきて,古着=着古したものを購入する傾向がある。2~3 年前か
ら高校生もたくさん訪れるようになり,とにかく下北沢に訪れる人の層が若くなっている。
古着屋だけに限らず,下北沢の街全体のお店が安くなった。一見セレクトショップ12と間
違えてしまうような古着屋が増えたのは最近のことである。
再開発で街の雰囲気が変わった。再開発前は昔ながらのお店や地元ながらのお店,古着店
が入り混じり,昭和のイメージだった。だが再開発によって昔ながらのお店(ファッション
系にかぎらず,例えば立ち飲み屋さんや畳屋さん)が廃業や,移転するようになった。その
ため再開発後,下北沢はきれいなイメージや商業的なイメージ(南口にできたきれいなビル
が象徴となっている)になった。
・D 店の証言
4 年ほど前までは,
「the・下北沢13」といえる古着屋が多かった。3~4 年前からは,きれ
いで「古着屋らしくない古着屋14」が多くなった。
下北沢という街のイメージは変化したのではないか。再開発で下町の風情が失われて,外
国人や若年層のお客さんが増えた。下北沢に訪れるようになった新しい顧客層のなかには,
古着を今まで購入してこなかった人も多く,そのような顧客層に対応するお店が増加した
12
本稿では,特定のブランドだけを扱うのではなく,事業者独自のコンセプトに沿った新
品商品を取り扱う小売店のことを指す。
13 D 店のいう「the・下北沢」といえるお店とは,お店の商品の陳列の仕方に統一感がな
く,無造作に服が配置してあるイメージだという。
14 D 店のいう「古着屋らしくない古着屋」とは一見するとセレクトショップなのではない
かという印象を持ち,新品と古着のどちらを売っているのかが区別がつかないようなお店
のことを指している
28
のであろう。
・E 店の証言
前まで来ていた OLD 古着を求めるようなお客さんがいなくなった。そのような顧客から
は「下北沢が古着に愛情を持っているマニアの人々にとっては面白くない街になってしま
った」と言われることもある。
古着業界全体の話にも当てはまることでもあるが,下北沢に来る人たちは USED 系の安
い古着を求めてくるようになった。
4.2.3 検証 1-1 のアンケート調査結果分析で扱う古着屋のプロフィール
下北沢へのインタビュー調査で得た結果をもとに,アンケート調査も合わせ,より深く下
北沢の古着屋の特徴について考えていく。
G 店…下北沢で 11 年経営している単独店である。古着のほかに新品も取り扱っており,買
い付けにより古着を仕入れている。客層の中心は 15~30 歳であり,性別の差は特に感じな
い。下北沢以外の地域では経営したことがなく,今後も経営したいとは考えていない。
H 店…下北沢で 3 年経営している古着店であり,系列店が 3 店存在する。古着のほかに新
品も取り扱っており,買い付けによって仕入れている。客層については,年齢・性別ともに
差は感じていない。下北沢以外の地域(岩手)でも経営したことがあり,他の地域でも経営
したいと考えている。
I 店…下北沢で 2 年経営している古着店であり,系列店が 5 店存在する。古着のほかに新品
も取り扱っており,業者から仕入れている。客層の中心は 15~30 歳であり,女性が主に買
いに来る。
4.2.4 アンケート調査結果分析(1)
下北沢で得られたアンケート結果を分析すると,
【図表 4-1】のようになる。これをもと
に「5.商品について (1)商品ラインナップについて最も意識してることはどれですか?(1
つ選択)a.流行への対応
b.個性の強さ
c.他の服との合わせやすさ
d.価格の安さ
e.希
少性 f.その他」という質問項目に対して,
「a,流行への対応」と回答した店が G,H,I 店であ
る。この 3 店について,
「3.街について (1)街のアドバンテージ」の項目を合わせてまとめた
表が,
【図表 4-1】である。
29
【図表 4-1 3.街について(1)街のアドバンテージの項目まとめ】
G店
H店
I店
5.商品について
3.街について
(1)商品ラインナップ
(1)街のアドバンテージ 1 位
流行への対応
古着目当てで人が来る,立ち寄りやすい,若者がたくさ
他服との合わせやすさ
ん来る(順位不明)
流行への対応
古着目当てで人が来る
流行への対応
2位
若者がたくさん来る
3位
若者がたく
流行情報が
さん来る
早い
購入意欲が
古着目当て
高い
で人が来る
(出所)
アンケート調査結果より作成
【図表 4-1】の「3.街について」より,3 店舗とも上位 3 位以内に「古着目当てで人が来
る」
「若者がたくさん来る」を選択している。つまり,これらの店舗は下北沢に集まる古着
目当ての若者のニーズに対応して,流行に対応した品揃えを行っている,と考えられる。
4.2.5 アンケート調査結果分析(2)
下北沢と高円寺で得られたアンケート結果を分析すると,
【図表 4-2】のようになる。こ
れをもとに「1.お店の基本情報 (2)また新品商品も取り扱っていますか。」という質問項目に
対して,
「ある」と回答した店と「ない」と回答した店を,下北沢と高円寺それぞれにおい
て分類した。
また,
「5.商品について (1)商品のラインナップについて最も意識してることはどれです
か?(1 つ選択) a.流行への対応 b.個性の強さ c.他の服との合わせやすさ d.価格の安
さ e.希少性 f.その他」という質問項目に対して,
「a.流行への対応」
「d.価格の安さ」と回
答した店,
「4.お客さんについて (1)お客さんはどんな人が多いですか。
(①は複数回答可)
」
という質問項目に対して,年代を伺っている①において「a.15~30 歳」と回答した店を,
下北沢と高円寺それぞれにおいて分類しまとめた表が,以下の【図表 4-2】である。
【図表 4-2 5.商品について (1)商品のラインナップの意識のまとめ】
下北沢
新品商品の
高円寺
ある
ない
計
ある
ない
計
取り扱い
商品ライン
a.流行への対応
2
1
3
1
0
1
ナップ
d.価格の安さ
3
0
3
0
0
0
客年代
a.15~30 歳
8
5
13
2
5
7
30
(出所)
アンケート調査結果より作成
【図表 4-2】から,下北沢は,高円寺よりも商品ラインナップにおいて,流行へ対応し
ており安価であること,また客年代も若者寄りという傾向を持つことがわかる。
4.2.6 検証 1-1 のまとめ
以上のインタビュー調査から,以下のような特徴が指摘できる。
・下北沢に訪れる顧客の求めるものが OLD 古着から USED 古着に変化した(B 店)。
・学生(若者)は古着=安いものだと思って,安い古着を求めていることで,下北沢の古着
屋の低価格化が進んでいる(C 店)
。
・2~3 年前から,
「古着屋らしくない古着屋」が増加した(D 店)
。
・3~4 年前まで来ていた OLD 古着を求めてくるような顧客は下北沢に来なくなった(E
店)
。
おそらくは,USED 古着屋が出現してきた 2011 年ごろから,下北沢の古着屋に訪れる顧
客のニーズが変化し,低価格な古着を求めるようになった顧客が増えた一方,今まで下北沢
に多く存在していた OLD 店の古着を求める顧客が減少したと言える。また,ここ数年で下
北沢では再開発が行われ,下町の風情がなくなり,より綺麗な街,商業地というイメージが
増して,
「古着屋らしくない古着屋」も目立つようになった。その流れから,若者も多く街
に来るようになり,その変化に対応し流行を取り入れる店も出てきた。一方で,OLD 古着
を求めるような古着に対して高い知識や愛情を持った顧客が下北沢には少なくなった。つ
まり, 下北沢の 5 店舗の古着屋への聞き取り調査から得られた証言から,下北沢に訪れる
顧客の反応が変化したことが考えられるのである。
4.3 検証 1-2
高円寺の古着店への聞き取り調査
4.3.1 検証 1-2 においてインタビュー調査を行った古着屋のプロフィール
V 店…古着のみを取り扱っている高円寺の古着店であり,系列店が存在する。
W 店…高円寺で 4 年経営している古着店であり,系列店が存在する。古着のみを取り扱っ
ており,買い付けにより古着を仕入れている。客層の中心は 15~30 歳であり,男性が主に
買いに来る。高円寺以外の地域(大宮)で経営したことあるが,他地域で経営したくないと
考えている。
31
X 店…高円寺で 18 年経営している単独店である。古着のみを取り扱っており,買い付けに
より古着を仕入れている。客層の中心は 15~30 歳であり,男性が主に買いに来る。高円寺
以外の地域(町田)で経営したことあるが,他地域で経営したくないと考えている。
Y 店…高円寺で 25 年経営している古着のみを取り扱っている単独店である。
4.3.2 検証 1-2 高円寺の古着屋へのインタビュー調査結果
・V 店の証言(高円寺と下北沢に出店している店舗の高円寺店)
下北沢は若い人が多い街で,高円寺の店舗に比べて商品の価格が安く,流行に沿った商品
を取り扱っている。高円寺は下北沢より訪れる人の年齢層が高く,古着屋の商品の価格は下
北沢と比較すると高い。
高円寺と下北沢のどちらの店舗もオーナー自身のこだわりであるビンテージタイプの古
着を扱っているが,状態の良い商品は高円寺の店舗に置き,高円寺には置けない商品は下北
沢の店舗で扱っている。
高円寺で,ここ数年 USED 店が増えてきているのは事実だが,そのことによってお店の
経営や顧客が変化したという印象はない。
・X 店の証言
高円寺では,こだわりの強い店がたくさん存在するが,ここ数年は量販的なお店も増えて
きている。大きな物件が空くとそのようなお店が入ってくるようになった。
しかし,量販的なお店が増えたことによる影響は特にない。そのような量販店の商品は低
価格であるから,それと比べて値段が高いと思われることはあるが,売上や経営に影響が出
たということはない。
昔と今の古着に対するイメージの変化はあると思う。昔は古着を買う人は,誰も着ていな
いものを着たい,何か特別なものを着たい,という人が多かった。しかし,今は古着といえ
ば安いというイメージが若者に定着してしまっている印象。
・Y 店の証言
高円寺に訪れる顧客は高価値,希少価値の高いものを求めている。何か特化したものを購
入してくる。
USED 店がここ数年増加してきてはいるが,何も影響はない。そのような USED 店に並
んでいるような商品では高円寺に古着を求めてやってくる顧客のニーズを満たすことは出
来ないはずだから,こだわりが強く,何かに特化した服を取り揃えているお店が多い高円寺
では USED 店の出現による顧客の変化はないのではないか。
32
4.3.3 アンケート調査結果分析
問題提起で述べた「OLD 店」
「USED 店」の定義に従って,下北沢と高円寺で得られたア
ンケート結果を分析すると,
【図表 4-3】のようになる。これをもとに「1.お店の基本情報
(2) また新品商品も取り扱っていますか。」という質問項目に対して,「ある」と回答した
OLD 店・USED 店と,
「ない」と回答した OLD 店・USED 店を下北沢と高円寺それぞれに
おいて分類すると【図表 4-4】のようになる。ここから,高円寺には新品商品を取り扱っ
ていない店舗が下北沢よりも多いことがわかり,従来通りに OLD 古着を取り扱っているこ
とが推測できる。
また,
「1.お店の基本情報(5)来店する顧客の新規客と常連客の比率を教えてください。」と
いう質問項目に対する回答【図表 4-5】と,
「3.街について(1)この街の地域としてのアドバ
ンテージの上位 3 つまで教えてください。
」という質問項目に対する回答【図表 4-6】を比
較した。
【図表 4-5】から,高円寺の古着屋には下北沢よりも常連客が多く訪れているとい
うことが分かる。1.(5)と 3.(1)の回答から,
「常連客が多い」と回答した店舗は「古着
目当てで街に来る人が多い」ことが街のアドバンテージであると考えていることがわかっ
た。つまり,高円寺の古着屋には古着目的に街を訪れている常連客が多くみられるといえる。
【図表 4-3 『下北沢と高円寺の OLD 店舗・USED 店舗』
】
OLD 店
USED 店
下北沢
11
5
高円寺
12
4
(出所)
アンケート調査結果より作成
【図表 4-4 『1.お店の基本情報(2) また新品商品も取り扱っていますか。回答』】
OLD 店
ある
USED 店
ない
ある
ない
下北沢
6
5
4
1
高円寺
3
9
4
0
(出所)
アンケート調査結果より作成
33
【図表 4-5 『1.お店の基本情報(5)来店する顧客の新規客と常連客の比率を教えてくださ
い。回答』
】
新規客が多い
常連客が多い
下北沢
15
6
高円寺
12
11
(出所)
アンケート調査結果より作成
【図表 4-6 『3.街について(1)この街の地域としてのアドバンテージの上位 3 つまで教え
てください。回答』
】
34
(出所)
アンケート調査結果より作成
4.3.4 検証 1-2 のまとめ
以上のインタビュー調査から,以下のような特徴が指摘できる。
・高円寺の店舗では状態の良い商品を取り扱っている(V 店)
。
・古着業全体で顧客の古着に対するイメージの変化が生じてきた(X 店)
。
・高円寺に古着を購入しにやってくる顧客は何かに特化した希少性の高い古着を求めてい
る(Y 店)
。
・高円寺に USED 店が進出してきたのは事実だが,経営や顧客の反応に影響はない(V 店,
X 店,Y 店)
。
高円寺においても USED 店が進出してきているが,そのことによる既存の古着屋への影
響を指摘する証言は見られなかった。古着業界全体で古着に安いものというイメージがつ
いてしまっている現在でも,W 店と Y 店の証言からも伺えるように,高円寺においては,
訪れる顧客は希少価値の高い特別な古着を求めており,自分の欲しい古着を取り扱ってい
るお店に行くのである。また,アンケート調査結果分析からも,高円寺では従来通りに OLD
古着を取り扱っていることが推測でき,古着目的に街を訪れている常連客が多くみられる
ことがわかった。このような高円寺の古着購入者の特性から,USED 店の進出による顧客
の反応の変化は見られないと考えて良いだろう。
35
4.4 検証 2:顧客の反応の変化の有無が OLD 店の経営にどのような影響を与え
たか
検証 2 では,検証 1 で示した下北沢における「USED 店」の出現による顧客の反応の変
化が下北沢の「OLD 店」に与えた影響に焦点を当てたい。本章の目的は検証 1-1,1-2 に
見られる顧客の需要の変化の有無が,古着店の経営にどう影響を与えたのかを明らかにす
ることである。本稿 1-1 より下北沢では USED 店の進出以降,低価格な古着の顧客ニー
ズが上昇したこと,また OLD 店が販売している古着を買う顧客が減少したことが明らかに
なった。一方,1-2 から,高円寺においては USED 店の進出以降も顧客ニーズに大幅な変
化は見られず,OLD 店の商品を求めていた顧客層が依然として高円寺へ訪れていることが
示唆された。そこで検証 2 では,検証 1 で示した USED 店の出現による顧客の反応の変化
が OLD 店に与えた影響を商品ラインナップと商品価格についてと古着店の撤退と移転に
ついて検証していきたい。したがって,検証 2-1 では顧客の変化が古着店の商品ラインナ
ップと商品価格に影響を与えたことを,検証 2-2 では顧客の変化が古着店を撤退や移転さ
せたことを示す。
また,検証 1 でインタビューした店舗に加え,検証 2 では F 店も取り扱うことで顧客の
反応の変化が下北沢の「OLD 店」に与えた影響を明らかにする。F 店のプロフィールは以
下の通りである。
F 店…下北沢で約 7 年経営している古着店であり,系列店が存在する。古着のみを取り扱っ
ており,業者仕入れにより古着を仕入れている。客層の中心は 15~30 歳であり,男女とも
に買いに来る。下北沢以外の地域で経営したことある上,他地域で経営したいと考えている。
4.5 検証 2
下北沢と高円寺の古着店への聞き取り調査
4.5.1 検証 2-1 下北沢と高円寺の古着店へのアンケート調査結果
古着店が持つ街のイメージや古着店の経営についての傾向を明らかにするため,下北沢
と高円寺の古着店に対し質問紙を配布してアンケート調査を実施した。(2015 年 10 月 26
日実施。質問項目は巻末参照。
)
「商品のラインナップについて最も意識してることはどれですか?(1 つ選択) a.流行
への対応 b.個性の強さ
c.他の服との合わせやすさ
d.価格の安さ e.希少性
f.その他」
という質問項目について,回答数は,下北沢は 17 店舗,高円寺は 13 店舗である。
図 1,図 2 から,第一に,下北沢では個性の強さを意識している店舗が多い傾向がある。
また下北沢では商品ラインナップについて,流行への対応と価格の安さと希少性を重要だ
と 3 店舗が挙げている。第二に,高円寺では個性の強さと希少性を意識している店舗が多
い傾向にある。
36
【図表 4-7 下北沢の古着店の商品ラインナップに対する意識】
下北沢
店舗数
(%)
a.流行への対応
3
18
b.個性の強さ
6
34
c.他の服との合わせやすさ
1
6
d.価格の安さ
3
18
e.希少性
3
18
f.その他
1
6
(出所)
6%,
1店舗
下北沢(N=17)
18%,
3店舗
18%,
18%, 3店舗
3店舗
6%,
1店舗
a.流行への対応
c.他の服との合わせやすさ
e.希少性
34%,
6店舗
b.個性の強さ
d.価格の安さ
f.その他
アンケート調査結果より作成
【図表 4-8 高円寺の古着店の商品ラインナップに対する意識】
高円寺
店舗数
(%)
a.流行への対応
1
8
b.個性の強さ
5
42
c.他の服との合わせやすさ
2
17
d.価格の安さ
0
0
e.希少性
4
33
f.その他
0
0
(出所)
0%,
高円寺(N=13) 8%,
0店舗
1店舗
33%,
4店舗
42%,
0%,
5店舗
0店舗
17%,
2店舗
a.流行への対応
c.他の服との合わせやすさ
e.希少性
b.個性の強さ
d.価格の安さ
f.その他
アンケート調査結果より作成
4.5.2 検証 2-1 下北沢と高円寺の古着店へのインタビュー調査結果
下北沢・高円寺の古着店の聞き取り調査から,商品ラインナップに関わる内容をまとめる
と以下のようになる。
・下北沢:C 店の証言
C 店は下北沢の雰囲気が変わる前から価格帯が低い古着店であったため,雰囲気の変化
後も価格帯は変化していない。しかしながら,雰囲気の変化は商品ラインナップに影響を与
えた。C 店では 2,3 年より前には国外の古着のみを売っており,商品と商品との間がない
ほどに詰めて置いていた。なぜならお客さんが商品を掘り出して見ていたからだ。だが,2,
3 年前~現在では国外の古着に加え国内の古着も売り,見やすく商品を陳列するようになっ
た。なぜなら街に若者が増えたことで,若者にも商品を見てもらえるように商品をきれいに
見やすく配置する必要が出たためである。再開発が影響しているかどうかは断定できない
が,下北沢の古着店の価格は安くなった。
37
・下北沢:E 店の証言
USED 店の増加によって顧客の求めるものが以前とは異なってきたが,特にお店のコン
セプトは変えていない。洋服なので多少流行りを意識することはあるが,お店の軸は変えて
いない。高円寺では未だに昔ながらのこだわりを持った古着屋が多い印象がある。下北沢は
若者が多いため,安さが重要視されてしまう。USED 店の増加による売り上げへの影響は
特にないが,やはり顧客が値段重視になってきているのは感じている。ただ,そのことによ
って取り扱う商品を低価格にすることはしていない。
・下北沢:F 店の証言
その場で買い取りをする低価格なお店がある結果,下北沢のお店全体の価格が下がった。
・高円寺:W 店の証言
服飾業界全体で商品価格が高いか安いかの二極化が進み,中間層がなくなってきている
という現状がある。また価格を高くすると経営が厳しいから,商品価格を安く設定する古着
店もある。
・高円寺:X 店の証言
高円寺がある中央線沿いの街はマニアックな街であり,マニアックな店舗が根強く残っ
ている。そのためこだわりが強い者が高価格な古着を買うこともあるし,ファストファッシ
ョンの流行の影響で安いものを買う人もいる。つまり,OLD 店の顧客は一定数いるので,
リサイクル店の進出や低価格志向が店の経営に影響を及ぼすことはないと考えている。以
前は古着を売ればすぐさま売れていったが,古着のビジネスの変化により,こだわりのあま
りない顧客から見ると,ビンテージなどの古着と着古した衣料などの中古衣料が区別でき
なくなってきている。また古着のイメージについては以前と現在で変化が見られる。以前は,
古着は他と違うものを着たい,かぶりたくないという人が買うものというイメージだった
が,現在では古着は安いというイメージが若者に定着してきている。
・高円寺:Y 店の証言
高円寺に訪れる顧客のニーズは高価値,希少価値の高いものであり,何か特別な特徴があ
る古着に特化したものである。そして高円寺に来る顧客のニーズは USED 店では補えない
ため,USED 店の進出によって商品ラインナップに影響ない。また,高円寺の古着屋には
古着に何か特別なものを求める人々を引き寄せる力があり,USED 店ではそのような人た
ちのニーズを満たすことが出来ないため淘汰されてしまうし,高円寺で成功するには何か
個性を持たなければならない。古着屋の現状としては希少価値の高いものを売る店舗とと
ことん安いものを売る店舗に二極化している。
38
ここで,改めて下北沢と高円寺のアンケート調査を見ていきたい。ここでは,アンケート
対象を上記の定義に従って OLD 店と USED 店に分類し,その中から OLD 店を抽出して
アンケート結果を分析し,
下北沢の OLD 店と高円寺の OLD 店との回答の差異を見ていく。
分析する項目は「下記の項目をお店で経営していく中でより重視している順に並べてくだ
さい。 a.売り上げの増加 b.商品のコンセプトを統一する c.流行に対応する d.より多くの
人の共感を得る e.自分の感性に深く共感してもらう f.お店のブランドイメージ確立 g.特
になし」と「商品ラインナップについて最も意識してることはどれですか?(1 つ選択) a.
流行への対応 b.個性の強さ c.他のー服との合わせやすさ d.価格の安さ e.希少性 f.その他」
の 2 つである。
4.5.3 アンケート調査結果分析(1)
最初に「商品のラインナップについて最も意識していることはどれですか?(1 つ選択)
a.流行への対応
b.個性の強さ
c.他の服との合わせやすさ
d.価格の安さ
e.希少性
f.
その他」の結果を分析する。
【図表 4-9】から,下北沢の OLD 店と高円寺の OLD 店では
「価格の安さ」との回答の割合に明確な差が見られる。
【図表 4-9 下北沢の OLD 店と高円寺の OLD 店の商品ラインナップに対する意識】
商品ラインナップ
下北沢 OLD 店
高円寺 OLD 店
差
a.流行への対応
14%
14%
0%
b.個性の強さ
36%
43%
-7%
c.他の服と合わせやすさ
7%
14%
-7%
d.価格の安さ
14%
0%
14%
e.希少性
21%
29%
-8%
f.その他
7%
0%
7%
計
100%
100%
(出所)
アンケート調査結果より作成
4.5.4 アンケート調査結果分析(2)
次に「下記の項目をお店で経営していく中でより重視している順に並べてください。 a.
売り上げの増加 b.商品のコンセプトを統一する c.流行に対応する d.より多くの人の共感
を得る e.自分の感性に深く共感してもらう f.お店のブランドイメージ確立 g.特になし」の
結果を見る。ここでは重視している順番の 1 位から 5 位までに注目する。各項目について,
1 位なら 5 点,2 位なら 4 点,3 位なら 3 点,4 位なら 2 点,5 位なら 1 点を加算していき,
各項目の合計点を総合計点で割った割合を分析した。
【図表 4-10】から,下北沢の OLD 店
と高円寺の OLD 店の回答の明確な差異が見られるのは「より多くの人の共感を得る」と「お
39
店のブランドイメージ」の回答であり,前者は下北沢で多く,後者は高円寺で多い。
【図表 4-10 下北沢の OLD 店と高円寺の OLD 店の経営で重視しているもの(1 位から 5
位まで抽出,N=9, 7)】
経営・戦略について
下北沢 OLD 店
高円寺 OLD 店
a.売り上げの増加
22%
14%
8%
b.商品のコンセプトを統一する
18%
20%
-2%
c.流行に対応する
16%
12%
4%
d.より多くの人の共感を得る
21%
9%
12%
e.自分の感性に深く共感してもらう
13%
20%
-7%
f.お店のブランドイメージ確立
9%
25%
-16%
g.特になし
7%
0%
7%
計
100%
100%
下北沢>高円寺の差 max
下北沢<高円寺の差 max
(出所)
アンケート調査結果より作成
以上のアンケート調査結果からも,OLD 店の中でも下北沢の OLD 店と高円寺の OLD 店
の回答では差異が見られることが分かり,上記のインタビュー内容を裏付ける数値データ
となっている。
4.5.5 検証 2-1 のまとめ
下北沢において USED 店が進出し顧客層が若くなったことは,商品ラインナップに変化
を与えた。商品ラインナップにおいて特に影響があったのは価格面と商品の並べ方である。
若者が下北沢に多くなり,安さへのニーズが高まったことから,下北沢の古着店全体で価格
が下がった。また,若者が増えたことにより商品を見やすく配置するなどのインタビュー調
査による事例もあるため,下北沢の古着店で商品の陳列方法にも変化が起きたと言えそう
である。
一方,高円寺においては USED 店の進出以後も商品ラインナップに変化がない。なぜな
ら高円寺の顧客層には安さを重要視する者もこだわりが強い者もいるため,USED 店で満
たしきれないこだわりが強い者のニーズを OLD 店が満たす役割を担っているからだ。さら
にアンケート調査結果分析からは同じ OLD 店においても街によって違いがみられること
が明らかになった。下北沢の OLD 店では高円寺の OLD 店より,より多くの人から共感を
得る傾向と,価格の安さを重視する傾向がみられる一方,高円寺では店のブランドイメージ
40
を重視する傾向がみられる。つまりアンケート調査結果がインタビュー調査結果を再度立
証することとなっている。
4.6 検証 2-2
下北沢と高円寺の古着店への聞き取り調査
4.6.1 検証 2-2 下北沢と高円寺の古着店へのアンケート調査結果
顧客の変化が古着店の撤退や移転等経営にどのような影響を与えたかを述べる前に,下
北沢と高円寺の古着店の経営のアンケート調査結果を確認しておこう。アンケートにおい
て,下北沢と高円寺の古着店に対し,「下記の項目をお店で経営していく中でより重視して
いる順に並べてください。
対応する
a.売り上げの増加 b.商品のコンセプトを統一する
d.より多くの人の共感を得る
e.自分の感性に深く共感してもらう
c.流行に
f.お店のブ
ランドイメージ確立 g.特になし」という質問を行った。回答数は,下北沢は 11 店舗,高
円寺は 9 店舗である。
【図表 11】に示した通り,アンケート結果から,第一に下北沢ではよ
り多くの人の共感を得ることを重視して経営を行う店舗が多い傾向,第二に,高円寺では自
分の感性に深く共感してもらうこととお店のブランドの確立を重視して経営を行う店舗が
多い傾向が読み取れる。
【図表 11 下北沢,高円寺の古着店が経営において最も重視していることは何か?】
9%,1店舗
下北沢(N=11)
9%,1店舗
9%,1店舗
18%,2店舗
9%,1店舗
18%,2店舗
28%,3店舗
a.売り上げの増加
b.商品コンセプト統一
c.流行に対応
d.多くの共感
e.深い共感
f.ブランドイメージ確立
g.特にない
41
高円寺(N=9)
11%,1店舗
33%,3店舗
34%,3店舗
0%,0店舗
0%,0店舗
22%,2店舗
0%,0店舗
a.売り上げの増加
b.商品コンセプト統一
c.流行に対応
d.多くの共感
e.深い共感
f.ブランドイメージ確立
g.特にない
(出所)
アンケート調査結果より作成
4.6.2 検証 2-2 下北沢と高円寺の古着店へのインタビュー調査結果
下北沢・高円寺の古着店のインタビュー調査から,古着屋の経営に関わる内容をまとめる
と以下のようになる。
・下北沢:A 店の証言
古着屋の継続には店のファンをつくることと街に合わせたサービスの提供が重要になっ
てくる。
・下北沢:B 店の証言
USED 店が増えたことで,経営が厳しくなったことは間違いない。だが経営が厳しくな
ったのは USED 店に顧客を取られているからではない。下北沢に古着を買いに来る人々が,
より安さを求めるようになり,B 店の商品が高価格であることに対する理解をしなかった
ためである。
B 店では毎回海外に行って仕入れてきた商品だけを扱っていて,かなりの費用がかかっ
てしまうため,商品の価格もある程度上げざるを得ない。しかし,USED 店は基本的にリ
サイクル品などの買い取りによる商品を扱っているので,非常に低価格で商品を販売でき
る。この仕入れの違いによる価格の差に顧客は敏感に反応し,古着の知識をあまり持たない
人たちは安い古着にどんどん吸い寄せられてしまう。その結果このような現象が起きるよ
うになってから,商品のラインナップが高価格であることを知ってもらうため,
「海外から
の買い付け品である」という張り紙を店内に貼っている。
しかし,このまま USED 店が増え続けてきたら経営上,本当に厳しくなるかもしれない。
42
買い取りなどをして特に希少価値も高くなく,何も特別感もない,ただ誰かが着古した安い
古着を取り扱うことで,そのような安さを求めてくる顧客の反応に対応でき,経営を回復で
きるかもしれないが,これまで貫いてきたお店のコンセプトを変えるくらいなら,お店をや
めたいと考えている。
やめたいと考えている理由としては USED 店にお客が移るのが嫌なのではなく,街の雰
囲気や顧客の求めることの変化によって自分の店に合う顧客が来なくなるのが,本当に残
念だからである。実際,B 店で取り扱っているようなこだわりのある古着を求める顧客がこ
の下北沢という街自体に来なくなってしまったという現状がある。
このような状況にある店舗は,B 店だけではない。おそらく下北沢にある強いこだわりを
持った古着屋は,下北沢で自分のコンセプトを貫くことに限界を感じ,多くは下北沢にみき
りをつけて撤退し,他の地域へ移ってしまった。実際,この現象が原因で高円寺での経営に
専念したお店もある。
・下北沢:D 店の証言
再開発で下町らしさが消え,外国人や新しいお客さんが増えている。今まで相手していた
層と新しいお客さん(例,以前古着を買うのをやめていた顧客で古着を買うようになった顧
客)に対応している。
・下北沢:E 店の証言
下北沢にこだわりの強い古着を求める顧客は減ってしまったが,この店に来るために下
北沢に来る顧客は多い。下北沢では,OLD の古着屋は減ってきている。しかし,そのよう
な状況のなかでも,自分の店の商品に強いこだわりを持ち,しっかりとしたベースを持って
いる古着屋は何店舗か残っている。
・下北沢:F 店の証言
街の雰囲気が変わったことによって,古着屋さんはテイストを変えるようになった。つま
り,今っぽいものにテイストをシフトし,流行を取り入れている。一方こだわりが強い OLD
店では,顧客の嗜好に歩み寄れないという理由で閉店することがある。
・高円寺:V 店の証言
リサイクル店が半年前,先週と開店してきており増えてきてはいるが,経営や顧客に影響
はない。長いこと経営しているビンテージ店とかだとなおさら影響がないと考えている。下
北沢の古着店が移転して高円寺で経営している例は知らない。
・高円寺:W 店の証言
高円寺は商売っ気がなく,時間が止まっているかのように以前から店に置いてあるもの
43
に変化がない。一方,下北沢では商売意識が高く競争が激しい。USED 店の増加に合わせ
て客のニーズが変わったとしても,経営にマイナスに働かないと考えている。一定数の顧客
はもともと通っていた古着店に行くし,USED 店は嫌だというプライドがある人がいるか
らだ。
・高円寺:X 店の証言
高円寺と下北沢の違いとしては下北沢の方が,年齢層が低いことが挙げられる。また高円
寺はマニアックな店が多かったが,ここ 10 年で量販店的な店が増えており,大きな物件が
空くと USED 店が入っている。X 店としては,現状としては狙いを絞って顧客を作ること
が大事だと考えている。また低価格志向になったとしても,下北沢は道がせまいので,移転
はしない。
4.6.3 検証 2-2 のまとめ
下北沢では,USED 店が増えたことによる古着店全体の低価格化やファストファッショ
ンの影響で,下北沢に増えた若者の顧客が低価格志向になったということが起きた。その結
果,OLD 店が下北沢からの撤退や移転を余儀なくされたのではないかと考えられる。翻っ
て,顧客の志向に合わせて店の経営方針を変えることで古着店の継続につながっている店
舗が存在することもインタビューから明らかになった。
一方高円寺では USED 店が増えても古着店全体の低価格化や顧客の低価格志向は起こら
なかった。理由としてはこだわりを持ち USED 店の古着を敬遠する顧客がいたことと,こ
だわりがあって OLD 店に通う顧客が一定数いるからである。
4.7 検証のまとめ
本節では,古着店へのアンケート調査とインタビュー調査から検証 1 と検証 2 で明らか
になったことを述べる。
検証 1 では,下北沢と高円寺における USED 店の進出によって,どのような影響があっ
たのかを検討した。その結果,下北沢では USED 店の進出によって USED 古着を求める顧
客が増えたことと,高円寺では USED 店の進出以降も顧客が OLD 古着を求める傾向にあ
ることが証明された。検証 2 では,検証 1 での顧客の商品への反応の変化が古着屋の経営
にどう作用したのかを示した。そして,顧客の変化が古着屋の商品ラインナップと古着店の
撤退や移転に影響していることを裏付けた。
この「顧客の変化が店舗の撤退や移転を余儀なくさせる」という同様の現象は秋葉原のデ
パートや長崎のホテルにおいても起こっている。大河原(2001)によれば,50 年間続いて
いたアキハバラデパートが撤退した理由は「秋葉原の客層の変化」にあるとし,
「ここ数年
44
は,20 歳代前後の若い人たちが急速に増えた。その変化に伴って,アキハバラデパート自
体も変化しなければならなくなってきた」からであると述べられている。また,長崎におい
ても,お客様のニーズを読めなかった」ことで廃業したセンチュリーホテルと顧客ニーズの
変化の結果生まれた宿泊特化型のホテルであるウイングポートと東横インの事例が存在す
る15。したがって,検証 2 で明らかにした,来街顧客の変化により下北沢の古着店が撤退や
移転を余儀なくされたという現象は,他の産業・地域においても共通に観察できる。
「撤退と新規参入、激変する長崎市のホテル(すくらんぶる)」『朝日新聞』2004 年 6
月 20 日朝刊(長崎版)
。
15
45
5. 結論・考察
本稿では,地域の没個性化が進行し地域の個性の維持に注目が集まる中で,没個性化
の進む店舗群が存在する業種として,古着屋に焦点を当てた。
第 2 章では,商業集積と古着屋業界に関する先行研究を取り扱った。商業集積につい
ての先行研究からは,顧客,小売店の両者に対する集積の利益の意義が明らかとなった。
また,同業種の集積についての先行研究から,一つの業種が多数集積することによって,
商品についての知識やこだわりを持った顧客に対する求心力を発揮させるほか,集積業
種がその街の固有性を作り出すことが明らかになった。
古着屋業界全体については,業界全体の変遷を歴史的にさかのぼり調査した。それに
より,古着に対する消費者のニーズには,ファッション性を重視する OLD 品指向のも
のと,価格の安さを求める USED 品指向のものの 2 種類が別個に発生することがわか
った。さらに,時代ごとで古着に対する一般消費者のイメージが変容し続けてきたこと,
現在はそれぞれのニーズに対応すべく OLD 品と USED 品が並存することで,業界全体
が成長する傾向にあることが明らかとなった。
第 3 章では,下北沢と高円寺それぞれの地域性や歴史について比較対照することを通
じて,2 つの街自体が持つ類似点と相違点を明らかにした。
文献や調査から,どちらの街も都心部からのアクセスが良く庶民的であることがわか
った。その中で,どちらも「若者の街」というイメージも確立していること,リサイク
ルチェーン店が未発達な時期から古着屋の集積が見られ始めていたことなどが類似点
として挙げられた。一方,下北沢は再開発を通じて「古着の街」としての性格以外にも
様々な機能を備えるようになり,高円寺は依然として「古着の街」として強い印象を放
っているという違いも見られ,類似した 2 つの街にも異なった特徴があることもわかっ
た。
第 4 章では第 3 章で示した 2 つの街の共通点と相違点を踏まえ,リサイクルチェー
ン店の発達を背景に,街の固有性が変容するメカニズムに対してふたつの観点から検証
を行った。ひとつは,どちらの街にもリサイクルチェーン店の出店が見られたものの顧
客の反応に違いが生じているのではないかという点,もうひとつは,顧客の反応の違い
によって店舗の経営に対する意識に変化が生じているのではないかという点である。こ
の 2 点に焦点をあててインタビュー調査およびアンケート調査を実施した。
46
検証 1-1 より,下北沢の古着店はリサイクルチェーン店をはじめとする USED 店の
出現に伴う変化が伺えた。その変化とは,従来下北沢の古着に希少性やこだわりの強さ
を求めて来街し OLD 品を購入していた顧客層が下北沢から離れていく一方,従来の顧
客層と入れ替わる形で,古着に対して安さや流行を求める顧客層が増加していることだ。
これは,おしゃれさといったブランドイメージの確立など下北沢が様々な機能を備えた
ことによって,従来下北沢へ来訪することのなかった新たな客層が多く流入したことに
起因する現象だと考えられる。
検証 1-2 では,高円寺の古着屋について取り上げた。高円寺の古着屋は,現在の古
着屋業界全体に見られる USED 店の出現については認めている。だが,高円寺に希少
性やファッション性の高い OLD 品を求め,かねてより来街していた顧客層の変化とい
った影響はないと考えていることが明らかとなった。これは高円寺という街が「古着の
街」としての固有性を維持し,古着に対して強いこだわりを持った顧客を引き寄せる力
を持続している要因となっていることが,現地での聞き取り調査などからも考えられる。
また高円寺においては,リサイクルチェーン店の進出以降も経営方針を変えない,
OLD 品取扱店が主流であり続け,顧客層の変化も見られなかった。そのため,従来通
りの古着屋が多く存在すると考えられる。
検証 2 では,顧客から店舗への影響について商品ラインナップと店の撤退・移転の 2
点から検証を行った。
検証を通じ,下北沢では価格と陳列方法について変化が起きていることが明らかとな
った。これは検証 1 でも言及した通り,来街者層の若年化による影響が大きいと考えら
れる。また下北沢の古着屋の主流は,従来の OLD 品を取り扱うこだわりの強い店舗か
ら USED 品を取り扱う低価格指向の店舗へのシフトチェンジしていることが考えられ
る。その理由としては,OLD 品取扱店の移動や撤退が考えられる。OLD 品取扱店の移
動,撤退により, OLD 品を求めに下北沢に訪れていた従来の顧客は街に「面白さ」を
感じなくなり,下北沢に訪れなくなってしまっていた。
結論として,USED 店の進出により,「古着の街」でありながらも変化が生じた下北
沢,
「古着の街」として変わらず強い固有性を保っている高円寺の差異を生んだ要因は,
顧客の反応の変化の有無である。街の個性は店の個性の集積によって形成されるため,
「○○の街」ができる。同じように「○○の街」と呼ばれていても,下北沢のように変わる
街と高円寺のように変わらない街がある。街の雰囲気が変わっていくと,個々の店がど
こかで抵抗力を失って,個性が守られないことがある。そのため街全体のあり方によっ
て経営と個性,どちらを重んじるかのバランスが変わる。つまり,特定業種内での経営
は街全体のありかたによって異なる。したがって,自分の店の個性を守ることのみが固
47
定客の来店や店自体の生き残りにかかわるわけではなく,街全体のビジョンをも重んじ
て経営していくことが店の生き残りに必要になってくるのである。しかし,店の個性を
軽んじる経営は店の没個性化を招き,街の変化に拍車をかけることになる。故に街の雰
囲気の変化と店の個性の喪失が相互に影響しあい,街の没個性化の循環を生んでいるの
である。
今後の課題としては,量的調査におけるサンプル数の少なさから,地域ごとの古着屋
の傾向は知ることが出来ても全容の把握までは至らなかったこと,下北沢から撤退し,
高円寺への移動を行った店舗に対する聞き取り調査が行えず,移動理由について確認で
きなかったことが挙げられる。
48
49
参考文献
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50
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(デイリータウンページ:職業別)東日本電信電話.
NTT タウンページ株式会社編(2011)『2010 年 11 月 19 日現在 江戸川区版』(デイリータ
ウンページ:職業別)東日本電信電話.
NTT タウンページ株式会社編(2011)『2010 年 11 月 19 日現在 江東区版』(デイリータウ
ンページ:職業別)東日本電信電話.
NTT タウンページ株式会社編(2011)『2010 年 11 月 19 日現在 豊島・文京区版』(デイリ
ータウンページ:職業別)東日本電信電話.
NTT タウンページ株式会社編(2011)『2010 年 11 月 19 日現在 渋谷・新宿区版』(デイリ
ータ a ウンページ:職業別)東日本電信電話.
NTT タウンページ株式会社編(2011)『2010 年 11 月 19 日現在 港区版』(デイリータウン
ページ:職業別)東日本電信電話.
NTT タウンページ株式会社編(2011)『2010 年 11 月 19 日現在 中央・千代田区版』(デイ
リータウンページ:職業別)東日本電信電話.
52
53
付録
古着屋アンケート
慶應義塾大学商学部牛島利明研究会
私たちは論文執筆のために「街の形成過程と集積する古着屋の特徴の違い」について調査しています。お
手数ではございますが、下記のアンケートの回答にご協力お願いいたします。なお、ご回答の内容は幣研
究会の共同論文の参考とさせていただく以外に使用いたしません。
1.お店の基本情報
(1)系列店舗数を教えてください。
a.系列店を持つ(
店舗)
b.単独
(2)また新品商品も取り扱っていますか。 新品商品の取り扱い: ある・ない
(3)主要な仕入れの方法について当てはまるもの教えてください。(複数回答可)
a.お客さんからの買い取り
b.買い付け
c.業者仕入れ
(4)この街にお店を構えて何年目ですか。
d.その他(
年目
(5)来店する顧客の新規客と常連客の比率を教えてください。
新規:常連=(
):(
)
2.開業について
(1)このお店を開業する前にどこか他の街で古着屋を経営していましたか。
Yes【①の質問をお答えください】
No【(2)の質問へ進んでください】
①それでは、どの街で経営していましたか。また、何年前に移動し、なぜその地域から移動してきたので
すか。
場所
年前
移動理由:
(2)どこか他の街で古着屋を営業してみたいと思いますか。
Yes【②の質問をお答えください】
No【③に進んでください】
②具体的にどの街で営業してみたいですか。また、それはなぜですか。
場所:
理由:
③他の場所で出店してみたいと思わない理由を教えてください。
理由:
3.街について
(1)この街の地域としてのアドバンテージの上位 3 つまで教えてください。
54
a.古着目当てで街に来る人が多い
b.買物目的でなくとも立ち寄りやすい
e.購入意欲の高い人が多い
が活発
f.若者がたくさん来る
g.地価が安い
j.その他 (
が築ける
d.商店街
h.お客さんと深いつながり
)
) 2(
1(
c.流行情報が早い
) 3(
)
(2)この街の地域としてのディスアドバンテージとして最も当てはまる要素を教えてください。(1 つ選
b.地価が高い
d.特にない e.その他(
)
Yes 地域のイベント参加など具体的な繋がりがあれば教えてください(
)
択)a.競合店が多い
c.交通のアクセスが悪い
(3)この街にある他の店、住民と繋がりはありますか。
No
(4)この街を歩いている人はどのような人が多い印象ですか。(①は複数選択可)
b.31~44 歳
①a.15~30 歳
②a.男性
b.女性
④外国人
a.多い
d.差は感じない
c.差は感じない
b.地元以外の人
③a.地元の人
c.45~64 歳
b.少ない
c.差は感じない・分からない
c.いない
4.お客さんについて
(1)お客さんはどんな人が多いですか。(①は複数選択可)
b.31~44 歳
①a.15~30 歳
②a.男性
b.女性
④外国人
a.多い
d.差は感じない
c.差は感じない
b.地元以外の人
③a.地元の人
c.45~64 歳
b.少ない
c.差は感じない・分からない
c.いない
(2)来店する顧客はこの街に古着を買う以外にどんな目的でやって来ますか。(複数回答可)
a.イベント
b.観光
c.仕事
d.通学
e.古着以外の買い物
g.その他(
f.わからない
)
5.商品について
(1)商品のラインナップについて最も意識してることはどれですか?(1つ選択)
a.流行への対応
b.個性の強さ
c.他の服と合わせやすさ
f.その他(
)
(2)取り扱っている商品に共通すること(こだわり)は何がありますか?
こだわり:
55
d.価格の安さ
e.希少性
6.経営・戦略について
(1)下記の項目をお店を経営していく中でより重視している順に並べてください。
a.売り上げの増加
感を得る
b.商品のコンセプトを統一する
e.自分の感性に深く共感してもらう
c.流行に対応する
f. お店のブランドイメージ確立
h.その他(
(
d.より多くの人の共
g.特になし
)
)→(
)→(
)→(
)→(
)→(
)→(
)
(2)今後お店の規模をどのようにしていきたいですか。(複数回答可)
a 現状維持
(
b 店舗拡大(店舗面積の拡大)
c 多店舗展開(店舗数の増加)
d その他
)
7.街の新規出店について
(1)この街は古着屋の新規出店が多いと感じますか?
Yes / No
(2)印象として、この街で新しく出店した店は続くと感じますか?
Yes / No (印象としてどれくらいの期間で撤退しますか。
年)
(3)この街で古着屋が生き残るために必要な要素とは何だと思いますか?
必要だと思う要素:
8.他店への意識について
(1)古着屋が多く集まるなかで、他店を意識していますか?
Yes【①をお答えください】
No【(2)へ進んでください。】
①その他店への意識のなかで最も当てはまるものはどれですか。
a.競争意識(客の奪い合いなど)
b.情報の交換(流行など)
c.協力(同じ街に出店している店同士の
仲間意識)
d.その他(
)
(2)他店と何か差別化を図っていますか。
Yes 具体的にどのような差別化を図っていますか。(
)
No
ご協力ありがとうございました。
ご不明な点がございましたら、[email protected] までご連絡
ください。
56
質問項目意図
1.お店の基本情報
(1)本論文の「はじめに」にて,チェーン店の台頭に伴った地域の没個性化について,数多
くの議論がなされてきた状況下において,地域の個性を認識し,維持しようという潮流は
より一層強まっているとの旨を記載した。この質問により系列店を持つ店舗か持たない店
舗かを把握することで,地域がどれほど没個性化しているのか,または個性の強さがある
のかを判断する狙いがある。加えて,チェーン店を没個性的なものとして扱っているから
こちらの項目でアンケートをとった店舗がチェーン店か否か判断するためでもある。
(2)商品として古着のみで経営している古着屋の場合,5(1)の商品ラインナップでは個性の
強さや希少性などこだわりの強さを示す項目を選ぶと考えたため。一方,商品として新品
商品を取り扱っている古着屋の場合,古着に対するこだわりが商品として古着のみを取り
扱っている古着屋よりもないと考えたため。
(3)仕入れ方法と商品ラインナップでの選択を掛け合わせて見たいからである。例えば,買
い取りを行っている店舗が商品ラインナップで重要視していることとして価格の安さを挙
げた場合,商品ラインナップとして価格の安さを重視しているからこそ,買い取りを行っ
ているのだと考えられる。つまり,アンケート結果を併せてみる事で,店の経営のための
行動を理解することができるためである。
(4)何年目の店舗かを知ることで,街が変遷を知るためにどの店舗にインタビューすればい
いのかを判断する時に取捨選択しやすくするため。
(5)新規客と常連客の比率によって,下北沢と高円寺が主に古着購買の街としての機能を果
たしているのか,それとも古着購買以外の街としての機能があるのかを知ることができる
ため。常連客が多いのならば,古着を目的に街に来ている人が多いと言える。また,新規
客が多いのならば,古着購買以外を目的に街に来ている人が多いと言える。
2.
(1)アンケートの答えにおいて,街の変化によって撤退や移転した店舗があるならば,より
詳しくその古着店に撤退や移転理由をインタビューしたいため。
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(2)移転を行いそうな店舗が,どのように街のイメージやその変化をとらえ古着店の立地戦
略を決めているのかを理解するため。
3.
(1)この質問をした狙いは主に 3 つある。
1 つ目は古着店の視点での街のイメージをつかむためである。問題提起にて 2 つの街は
多数の古着屋が集積し,
「古着屋の街」として街のイメージを確立してきたが,似ている
2つの古着屋の街でも差異があると述べた。2 つの街のイメージは既存の街のイメージの
アンケート調査によってつかめるが,それらのイメージはどれも来訪者の視点からのイメ
ージであり,既存の資料では古着店の視点での街のイメージを述べられない。
2 つ目は店舗として店舗がある街に出店することにどのような利益があると考えている
のかを知りたいためである。川端(2008)の見解によると,場所には付加価値増大の力が
あるがその付加価値増大の力は何なのかを具体的に明らかにするためにこの質問をした。
3 つ目は,古着の街というイメージについて店舗がアドバンテージととらえているのか
を選択肢 a の回答数によって確認したいからである。下北沢と高円寺はどちらも古着の街
として言われてきているが古着の街というイメージについて店舗がどうとらえているのか
を知ることが狙いである。
(2)既存の街のイメージ調査においては街のディスアドバンテージについては述べられてい
ない。したがって経営戦略について関連しているディスアドバンテージを明らかにするた
めにこの質問を行った。
(3)下北沢と高円寺では商店街や地域のイベントがあるが,それらと古着店がどのようなつ
ながりを持っているのかを確認したいため。
(4)下北沢と高円寺はどちらも若者が多い町として名が知られている。しかしながら,若者
が多い町でもその他の年齢層でどのような者が多い街なのかを明らかにするためにこの質
問を行った。また,○○という人物像が多い街として街のイメージを定義づける為にこの
質問を行った。
4.
(1)街の来訪者と店の来店者の層が一致しているのか,一致や相違を確認するためである。
3.(4)により街に来る者の人物像が露わになったが,来訪者と店に来る者の人物像が重なる
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わけではないので,同じ質問項目で共通点や差異を確認するためである。
(2)街の来訪者が古着を買う以外に街に来る目的は何かを確認し,街の機能にはどのような
ものがあるのかを見るためである。下北沢と高円寺における消費者にとっての付加価値増
大の利益とは何かを見るためにある。
5.
(1)問題提起より,2 つの街に共通する特徴として希少性の高い古着や年代物の古着,海外
から仕入れた古着などを取り扱うこだわりの強い古着屋が多かったため,古着好きの人々
が多数訪れていたというものがある。そこで商品ラインナップと訪れる顧客の中にどのよ
うな関係があるのかを明らかにするためにこの質問をした。
(2)こだわりが店の形態や店の立地場所によって共通するところと相違があるところがあ
る。それらをこの質問から抽出し,こだわりがどう古着店の経営やサービスにひびいてい
るのかを明らかにするためである。
6.
(1)経営において重要視していることとしていないことは何かを見つけ,それらがどのよう
に古着店の経営に関わっているのかを知るため。また,古着店で重要視していることと商
品ラインナップとを比べることで,古着店で経営上重視していることが古着店の経営にど
う影響しているのかをわかるためである。
(2)店の規模をどのようにしていきたいかは経営スタイルに影響する。そこで店の規模と経
営スタイルの間にどのような関係があるのかを見るためにこの質問を行った。また今後の
経営についての店の規模を変えることや「2.(2)どこか他の街で古着屋を営業してみたいと
思いますか。
」という質問を組み合わせることで今後の経営についての傾向をみるためで
ある。
7.
(1)「古着屋の集積が集積を呼ぶ」状態であるのかについて確認するために質問した。
(2)古着店が下北沢や高円寺においてで生き残り競争が激しいのかどうかを見ることによっ
て,撤退や移転がどのような頻度でおこなわれているのかをとらえるため。
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(3)この街で古着屋が生き残るために必要な要素が商品ラインナップや経営戦略とあってい
るのかを見るため。
8.
(1)古着屋集積地にある古着屋がどのような差別化要因を持っているのかを把握するためで
ある。差別化の要因を知ることによって,独自性の強い文化を維持する集積と,没個性化
の進む集積の差異を生み出した要因について考察を行うためである。
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謝辞
本論文を作成するにあたり,下北沢・高円寺の古着屋の皆さまにご助力いただきました。
複数回にわたりインタビューに答えていただいたお店も多くあり,大変お世話になりまし
た。この場を借りて心より感謝申し上げます。
なお,本稿の文章は本稿執筆者の見解であり,誤りがあるとすればその責任は執筆者にあ
ります。
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「街の固有性が変容するメカニズム―古着集積を例にして―」
2015 年 11 月 19 日発行
©2015 Ushijima Toshiaki Seminar, Faculty of Business and Commerce, Keio University.
著者・発行者 慶應義塾大学商学部 牛島利明研究会 15 期生
大島泰一 (はじめに,1.問題提起,2.先行研究,3.下北沢と高円寺,4.検証,5.結論)
板橋輝 (1.問題提起,2.先行研究,3.下北沢と高円寺,4.検証,5.結論,参考文献・付録)
木曽可南子 (2.先行研究,3.下北沢と高円寺,4.検証,5.結論,参考文献・付録)
五十峯唯 (2.先行研究,3.下北沢と高円寺,4.検証 1,5.結論)
岡村真琴 (2.先行研究,3.下北沢と高円寺,4.検証 1-2,5.結論)
谷口理文 (2.先行研究,3.下北沢と高円寺,4.検証 2)
橋田佳奈 (2.先行研究,3.下北沢と高円寺,謝辞)
大島茉子 (2.先行研究,3.下北沢と高円寺,4.検証)
市川彩乃 (2.先行研究,4.検証)
佐藤淳史 (2.先行研究,4.検証)
村越香里 (2.先行研究,4.検証)
渡邊敦孔 (3.下北沢と高円寺)
飯田裕也 (3.下北沢と高円寺,4.検証)
織井春那 (3.下北沢と高円寺,4.検証)
菅原千晴 (3.下北沢と高円寺,4.検証)
中島果穂 (3.下北沢と高円寺,4.検証)
中山裕麻 (3.下北沢と高円寺,4.検証)
星野桃代 (3.下北沢と高円寺,4.検証)
印刷・製本 株式会社エイト通商
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