工場ルポ №250 PDP(プラズマ・ディスプレイ・パネル)キャビネットの塗装 東北ムネカタ株式会社P.B.Gモールディング・ビジネスユニット岐阜 〒503-0407 岐阜県海津郡南濃町徳田榊野 99-3 TEL(0584)57-2522 最近、家電関連の量販店に行って見ると 50 インチ,61 インチ等の大型画面を謳(うた)い文句にしたプ ラズマテレビがずらりと並んでいるコーナーがある。その映像の美しさと音響の迫力。思わず、普通の テレビから買い替えてしまいたくなってしまう。ただし、その価格を確認すると、現状では「高嶺の花」 のようである。しかし、われわれがその映像を楽しめるのも、そう時間はかからないような予感がする。 (1) 会社の概要 2003 年「工場ルポ」のスタートは、東北ムネカタ株式会社P.B.G(プロダクション.ビジネス.グ ループ)モールディング・ビジネスユニット岐阜(以後、岐阜工場と略称)におけるPDP(プラズマ・ ディスプレイ・パネル)キャビネットの塗装工場からである。 《会社沿革》 1991 年 4 月 : ムネカタグループのプラスチック製造部門の中部地区拠点として創業。主に テレビキャビネット向けのプラスチック成型,塗装,組み立てを加工を行う。 1996 年 1 月 : ISO9001 認証取得 1999 年 2 月 : ISO14001 認証取得 2002 年 4 月 : P.B.Gモールディング・ビジネスユニット岐阜として新たなスタートを切る。 当社グループ企業の最大の強みは、プラスチック成型品の金型から成型加工,製品設計等までを含 めた総合技術を擁していることで、海外での製造工場も有している。 (2) 塗装設備の概要 昨年 5 月、岐阜工場ではPDPキャビネットの生産増加に伴って、新たに塗装ラインを立ち上げた。 既設の自動レシプロラインおよび熟練の手吹き塗装でも、その増産に追いつけなくなったからで、 現在、2 直交替制の生産が続いている。 ①設備の概要 コンベヤー全長:420m(同速度:4m/min)。塗装装置:大型電動塗装ロボットシステム「アポロ ボット EE10A」定置型・2 台。ガンは 1 号機が「ロボガンⅡEAB90」,2 号機が「パールガン AGB40」 2 丁を装着(旭サナック㈱)。 プラスチック素材:ABS 樹脂。使用塗料:アクリル樹脂塗料。標準塗膜厚:12μm。 ②塗装工程 1)ブロワーにより成型品表面の除塵(じん)を行う。 2)自動除電 3)ロボット塗装(静電塗装):成型品の見切り部分・裏側まで塗料が回り込むように塗装する。 塗装時間:40s。 4)ロボット塗装(パールガン)」たとえばシルバー色の光沢美装仕上げ。 5)予備乾燥 6)本乾燥:遠赤外線乾燥炉 7)検査 塗装終了後、シルクスクリーン印刷,組み立て工場へと進む。また、2 コート仕上げの場合はこ のシルバー色の塗装後、艶(つや)消しの黒色をレシプロラインで塗装する。 ③ゴミ不良の追放 整理の行き届いた塗装工場。スタッフの作業服には、アメリカ映画「ゴーストバスターズ」とい うオバケ退治のタイトルをもじって、「ダストバスターズ」と印刷されたワッペンが付けられて いる。これは、ゴミ不良を皆無にしようという標語の実践であって、現場に携わる人たちが無意 識のうちに塗膜品質の向上に努めている。 (3) 新設ラインの特徴 塗装ロボットシステムの導入に当たっては、岐阜工場におけるスタッフと旭サナック技術陣との合 作による創意工夫が、いくつかの課題をクリアし高品質塗膜の維持管理に結びついている。 ①小設置スペースと増産の問題解決 新設の工場スペースは 7m×18.9m。その範囲でPDPキャビネット(寸法例:50 インチの場合、 ヨコ 1220×タテ 710mm)を約 36,000 台(月)塗装する問題の解決策を見いだすことであった。 当初、立体的なライン設計やタクト方式による被塗物の平面セット等が提案されたが、大型塗装 ロボットの作動能力の高さと、オーバーヘッドコンベヤー方式(立てて吊(つ)る)による追従塗装 で、量産塗装に対応することが解明された。 ②ラインスピード・アップの問題解決 オーバーヘッドコンベヤー方式で、大型部品を立てて吊り生産性を上げるという難問は、特殊ハ ンガーの設計(連動部がタイヤ 4 個とキャスター4 個で構成されたボックスケース状のハンガー) が解決。これは被塗物が絶対に揺れないための工夫で、塗装ブース周辺から内部に至るコンベ ヤー連動部が二股(また)式になっていて。ライン運行時のハンガーの揺れを防止している。 また、ゴミ付着の防止策として被塗物は傾斜角度を付けたハンガーに取付けられている。 ③塗膜品質の問題解決 2 コート仕上げに限らず、塗装仕上げの塗り肌は高級感のある意匠性が要求されている。そのため 2 台の塗装ロボットには、それぞれガンの機種を変えて、高度な光沢仕上げを行っている。 1 台目:塗装ロボット用静電ガン・ロボガンⅡを装着。静電効果の付き回り性を応用して正面・ 側面など底面も含め 6 面を均一に塗布する(普通のテレビキャビネットは 4 面塗装)。 2 台目:パールガン 2 丁を装着。低圧霧化・少量吐出等の特性を生かし、ハイレベルな光沢意匠 塗膜に仕上げているなど、従来にない創意工夫が凝られた設備であることを実感した。 岐阜工場の取材に当たり、堀内則男グループリーダーはじめ細川英利チームリーダー、塗装・ 組立ラインの手塚武彦サブリーダーの皆さんにお世話になりました。厚く御礼申し上げます。 ▲ 大型電動塗装ロボットを導入した 新設ライン入口側 ▲ 除塵・除電ブースでホコリ対策も万全 ▲ 除塵・除電ブースでホコリ対策も万全 ▲ 塗装ロボット制御盤
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