工場ルポ № 201 産業用モーターの塗装 東四工業㈱ 〒510-0104 三重県三重郡楠町大字南五味塚 785 TEL(0593)97-2088 (1)会社の概要 高い技術力が要求されるモーターの捲(ま)き綿加工。東四工業株式会社はその精密な加工ノウ ハウを基盤に伸展,すでに 30 年を越える実績を築き上げているが,製造工程における革新的な自動 化システムをいち早く確立し,「人と技術の二つのパワーを融合」した経営理念のもと,品質第一 主義を貫いている。今日,3 工場を竣工(しゅんこう),モーターの製造販売から修理,さらにはエ スカレーターの踏み段加工・組み立てと付加価値の高い多角経営を推し進め,ISO 取得を目指した生 産体制が整えられている。 経営指針:人と人との信頼感を高めつつ,常に技術の先取りと生産性向上への取り組みを強化し, モーター製造の自動化を含めた物造りの革新と品質の安定化を推進する。 (2)モーターの製造工程 モーター1 台の組み立てに用いられている部品点数は 50∼60 点,機種としては約 120 種類ある。 《工程概要》 ①モーター組み立て:軸受け(ブラケット)やフレーム・シャフト・固定子鉄心(コイルが納め られワニス処理を施す)・回転子鉄心等の部品が集合し,組み立てられる。 ②モーターの機能試験 ③塗装 ④銘板の取り付け ⑤梱包 ⑥出荷 (3)塗装工場の概要 ①塗装設備 塗装工場の自動化ラインが完成したのは今年の 5 月,その設備概要は次の通りである。 塗装装置:SUNAC1400 自動静電塗装システム(旭サナック㈱),1 レシプロ 4 ガン(ガンは EAB-30A)。3 色対応のオートカラーチェンジャー。 コンベヤー全長:40m(同速度:0.5∼1m/min)生産能力:27,000 台/月。塗料の主力はア クリルラッカー系,塗膜厚は 30 μ m。 ②塗装工程 ①マスキング:O リングでモーターのフランジ部をマスキングする。 ②ハンガーへの着荷:マスキング機能を有する特殊設計のハンガーが使用されている。モータ ーを載せる前にあらかじめハンガーの円形台座を油で塗布しておく。これはモーター内部へ の塗料ミストの侵入を防止し,またハンガーからの取り外しを容易にする効果を果している。 重量のあるモーターの着荷・脱荷はミニチェインブロックで行う。 ③脱脂:洗浄ブースでモーター本体の脱脂を行う。 ④塗装:自動静電塗装(モーターの形状によっては前補正を施す場合がある。塗装時間は 20 ∼30s 台) ⑤セッティング ⑥焼き付け乾燥:焼き付け温度 50∼80℃ ⑦ハンガーからの脱荷 (4)自動化の要点 今回,工場を案内していただいたのは山中 實専務取締役さんである。自動塗装ラインの特徴に ついて,次のように要点を語られている。 ①自動化の目的 モーターの組み立て工場では NC 旋盤, 自動加工機,ロボットなどによる自動 化が早くから進められていたものの, 塗装部門は従来,1 名の熟練スプレーマ ンによる手吹き塗装が行われていた。 しかし,3K の代表的な職場として挙げ られている塗装工場のイメージを払拭 (ふっしょく)し,最終工程である塗 装の品質安定化を図り,効率的な塗装 設備の稼動と塗料消費量の削減のため, 今年 5 月,SUNAC1400 自動静電塗装シス テムを導入する。 ②導入時に当たっての工夫 限られた塗装ラインスペースをフル に生かした設備設計がポイント。 たとえば, l ミニチェインブロックの取り付け。これは使用の際,天井から取り出せるようになっている。 作業者は,モーター搬入コンベヤーから塗装ラインへの移載作業の時に軽減化が図られる。 l 塗装効率と仕上がり品質を考慮した特殊ハンガーの設計および小型レシプロの採用による省 エネ等。 l 焼き付け乾燥炉を階上に設置しスペースの有効利用を図る。 l 迅速な色替えができる 3 色対応のカラーチェンジャーを設置。 などの工夫を凝らしてある。 本社工場の取材に当たり,小方修一代表取締役はじめ山中 實専務取締役,現場スタッフの方々 にご配慮いただきました。ここに改めて御礼を申し上げます。
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