⃝ 今日の授業のおしながき ⃝ GHQと日本国憲法 ●○○○○○○○○○○○ ⃝ 占領政策下における対立軸 日本政治論 第3講 秦 正樹 北九州市立大学法学部政策科学科 2016年 10月 18日(火) 火曜4限(新館401) 秦 正樹 日本政治論(北九州市立大学法学部) ⃝ 片山・芦田内閣と革新勢力 ⃝ 吉田茂長期政権の誕生 ⃝ イデオロギー対立と55年体制 ● 今日の授業のおしながき ⃝ GHQと日本国憲法 ●●○○○○○○○○○○ ⃝ 占領政策下における対立軸 ⃝ 片山・芦田内閣と革新勢力 ⃝ 吉田茂長期政権の誕生 ⃝ イデオロギー対立と55年体制 今日の授業のおしながき 今日の授業内容と目標 l 占領政策下における日本政治の様相とイデオロギー • GHQとイデオロギー対立:保守的なG2 v.s. 革新的なGS • 現在のイデオロギー的基盤の嚆矢:各政権の奇跡 • 保守勢力と革新勢力の危機感:そして日本は55年体制へ… l GHQと日本政府の関連から「自民党」の源流を理解する 参考資料など l 秦のWEBページ(以下参照)に参考資料があります http://hatam.sakura.ne.jp/kitakyu_nihonseiji.html l 疑問や不明点があれば,オフィスアワーや授業後にでもどうぞ. 秦 正樹 日本政治論(北九州市立大学法学部) ⃝ 今日の授業のおしながき ● GHQと日本国憲法 ●●●○○○○○○○○○ ⃝ 占領政策下における対立軸 ⃝ 片山・芦田内閣と革新勢力 ⃝ 吉田茂長期政権の誕生 ⃝ イデオロギー対立と55年体制 日本の敗戦とGHQによる占領統治へ 敗戦と占領政策 l ポツダム宣言の受諾と敗戦 • 1945年8月15日:ポツダム宣言の受託と玉音放送 • 1945年9月 2日:降伏文書への調印(ミズーリ号) → 太平洋戦争の終結・連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)に よる日本の統治の受託 → 日本は主権を失う 秦 正樹 日本政治論(北九州市立大学法学部) ⃝ 今日の授業のおしながき ● GHQと日本国憲法 ●●●●○○○○○○○○ ⃝ 占領政策下における対立軸 ⃝ 片山・芦田内閣と革新勢力 ⃝ 吉田茂長期政権の誕生 ⃝ イデオロギー対立と55年体制 GHQ統治と日本国憲法のなりたち 日本国憲法の施行 l 大日本帝国憲法から日本国憲法へ • まずは,日本政治の根幹をなす「憲法」の大幅な改定作業 • 論点:主権は「国民」(憲法研究会案・マッカーサー案)? それとも「天皇」?(松本私案・政府案) • 政権:東久邇宮稔彦王・幣原喜重郎・第一次吉田茂が担当 日本国憲法のなりたち l 1946年1月: 内務相・松本烝治による憲法問題調査委員会 • 松本私案と4原則:特に天皇を「総覧ス」と位置づけ • GHQ(ホイットニー)はマ案を前提とする修正を「切望する」 • 政府→GHQ:「憲法改正案説明補充」(松本私案と同様) • GHQ激おこ.48時間以内の回答→マ案を採用・閣議決定 秦 正樹 日本政治論(北九州市立大学法学部) ⃝ 今日の授業のおしながき ⃝ GHQと日本国憲法 ●●●●●○○○○○○○ ● 占領政策下における対立軸 ⃝ 片山・芦田内閣と革新勢力 ⃝ 吉田茂長期政権の誕生 ⃝ イデオロギー対立と55年体制 占領政策をめぐる政治的対立 GHQにおける日本統治の2つの視座 l 行政組織としてのGHQ • GHQ(連合国軍最高司令官総司令部):様々な部局から成る • 「民主化と復興」「共産主義の砦」→「天皇」の取扱は除外 l 連合国軍最高司令官総司令部参謀第2部(通称 G2)→ 保守系 • GHQ内における保守派集団.大正デモクラシーの強化によっ て戦前日本との連続性を重視して効率的な統治をめざす • 主に,吉田・幣原・岸・外務省派など国内保守系と協調関係 l 民政局(Government Section; 通称 GS)→ 革新系 • GHQ内における革新派集団.とくに財閥や軍閥解体を行い, 戦前との完全な決別による民主的体制の構築をめざす. • 主に,片山哲・芦田均などの国内革新系と協調関係 秦 正樹 日本政治論(北九州市立大学法学部) ⃝ 今日の授業のおしながき ⃝ GHQと日本国憲法 ●●●●●●○○○○○○ ⃝ 占領政策下における対立軸 ● 片山・芦田内閣と革新勢力 ⃝ 吉田茂長期政権の誕生 ⃝ イデオロギー対立と55年体制 革新勢力の進出と退潮 片山内閣の樹立 l 第23回総選挙(1947年4月25日):新憲法下での初選挙 • 保守系:日本自由党(131)+民主党(124) • 革新系:日本社会党(143)+国民協同党(31)+α → 日本社会党+民主党+国民協同党による連立政権の樹立 l 片山哲内閣の樹立:日本にも社会主義の到来?! • 「挙国一致内閣」をめざすも頓挫:とくに自由党・吉田茂によ る「容共」路線(党内左派)への強いアレルギー 「今日の機密を明日はモスクワに漏らす反乱分子とは組めない」 • 組閣当日は連立政権を樹立できず,片山が全閣僚を一人で兼任 → 片山内閣の始まりから足をくじかれる結果に… • 社会主義路線の徹底:国家管理による運営をめざす 秦 正樹 日本政治論(北九州市立大学法学部) ⃝ 今日の授業のおしながき ⃝ GHQと日本国憲法 ●●●●●●●○○○○○ ⃝ 占領政策下における対立軸 ● 片山・芦田内閣と革新勢力 ⃝ 吉田茂長期政権の誕生 ⃝ イデオロギー対立と55年体制 片山内閣における政策の方向性 社会主義路線の徹底 l 旧内務省の解体:戦前日本の政治体制を抜本的に変える 1. 地方行財政部門 → 旧自治省(現・総務省) 2. 警察部門 → 警察庁 3. 土木部門 → 旧建設省(現・国土交通省) 4. 衛生社会部門 → 旧厚生省・旧労働省(現・厚生労働省) 5. 調査部門 → 内事局第二局→公安調査庁 6. 出版・著作権部門 → 文部省社会教育局文化課(現・文化庁) 7. 神道部門 → 神社本庁(宗教法人) l 社会主義への傾倒:「国家管理」を強化するべく公社・公団が乱立 • 石炭業界の解体をめざす(当時の中心的なエネルギー) → 与党民主党や財界からの猛反発にあって失敗.退陣へ. 秦 正樹 日本政治論(北九州市立大学法学部) ⃝ 今日の授業のおしながき ⃝ GHQと日本国憲法 ●●●●●●●●○○○○ ⃝ 占領政策下における対立軸 ● 片山・芦田内閣と革新勢力 ⃝ 吉田茂長期政権の誕生 ⃝ イデオロギー対立と55年体制 芦田内閣の樹立と退陣 芦田内閣の樹立 l 芦田均内閣:「日本で最も存在感のない内閣」と呼ばれる • 引き続き,社会党+民主党+国民協同党の連立政権 • 政策の方針は片山内閣を引き継ぐ(芦田は片山内閣の副総理) • G2からは中道左派政権に対する期待大 • 吉田「たらい回し政権」:選挙してねーじゃん!→世論も同調 芦田内閣の退陣 l 昭和電工事件:昭和電工・政府高官・GHQ間での贈収賄事件 • 昭和電工が政府高官やGHQに賄賂を送り見返りを受けていた • GHQは捜査権を警察→検察へ求めるも,警視総監・秦野章と ゴードン・ウォーカーによりGHQの関与をリーク → 芦田内閣も引責辞任(その後芦田も逮捕されるが無罪) 秦 正樹 日本政治論(北九州市立大学法学部) ⃝ 今日の授業のおしながき ⃝ GHQと日本国憲法 ●●●●●●●●●○○○ ⃝ 占領政策下における対立軸 ⃝ 片山・芦田内閣と革新勢力 ● 吉田茂長期政権の誕生 ⃝ イデオロギー対立と55年体制 第二次・第三次吉田内閣 第二次・第三次吉田内閣 l 吉田政権の誕生:G2による山崎猛首班工作の失敗→不信任決議 • 馴れ合い解散と選挙:民主自由党は単独過半数を獲得(264) • 民主自由党:芦田内閣へ反発した民主党一部+自由党 → その 後,残りの民主党一部と合同して「自由党」(吉田自由党」へ • 片側講和:「反共」路線と親米的な政策の推進 サンフランシスコ講和条約と日米安保 l サンフランシスコ講和条約・日米安保条約の締結(1951年9月8日) • 講和条約の締結により日本は主権を回復.GHQの撤退 • 国会は大揉め → 首席全権として吉田一人で調印 • 野党民主党は講和条約には賛成するが,安保条約には反対 →「ワンマン首相」と呼ばれるも,世論は評価(支持率は58%) 秦 正樹 日本政治論(北九州市立大学法学部) ⃝ 今日の授業のおしながき ⃝ GHQと日本国憲法 ●●●●●●●●●●○○ ⃝ 占領政策下における対立軸 ⃝ 片山・芦田内閣と革新勢力 ● 吉田茂長期政権の誕生 ⃝ イデオロギー対立と55年体制 第四次・第五次吉田内閣 第四次吉田内閣 l 鳩山一郎の公職復帰と抜き打ち解散 • 鳩山総裁擁立論:吉田 v.s. 鳩山が自由党内で揉める • 抜き打ち解散(1952年8月):吉田自由党はギリギリ過半数 • 分裂自由党(鳩山自由党)結党:超保守派. →「バカヤロー解散」:鳩山自由党が不信任案に賛成して解散 第五次吉田内閣 l バカヤロー解散後の吉田自由党:ついに過半数割れ • 改進党との連立政権で吉田はどうにか延命するもレームダック → レームダック政権:「死に体」政権.実質的な運営困難に • 疑獄事件における指揮権発動・国会への警察投入への強い批判 → なおも解散で抵抗しようとするも内閣総辞職→鳩山政権へ 秦 正樹 日本政治論(北九州市立大学法学部) ⃝ 今日の授業のおしながき ⃝ GHQと日本国憲法 ●●●●●●●●●●●○ ⃝ 占領政策下における対立軸 ⃝ 片山・芦田内閣と革新勢力 ⃝ 吉田茂長期政権の誕生 ● イデオロギー対立と55年体制 イデオロギー対立と55年体制 「革新」としての日本社会党の誕生 l サンフランシスコ講和条約と社会党の分裂 • 右派社会党:安保は反対だけど講話条約は受け入れる派 • 左派社会党:安保も講話条約も共に反対.非武装中立論 l 逆コース批判:日本の民主化と逆行する政策(吉田路線)への懸念 → 1955年総選挙後,社会党再統一により「日本社会党」誕生 「保守」としての自由民主党の誕生 l 鳩山 v.s. 吉田の仁義なき戦いから保守合同へ • 鳩山政権に対して吉田は抵抗(保守内部の内輪もめ) • 55年総選挙:鳩山民主党は勝利するも過半数に届かず… • 社会党合流 → 社会主義路線への転換への強い危機感 →「 とりあえず 一緒にやろうや!」:保守合同 → 自民党爆誕! 秦 正樹 日本政治論(北九州市立大学法学部) ⃝ 今日の授業のおしながき ⃝ イデオロギーって何? ●●●●●●●●●●●● ⃝ 右翼と左翼/保守と革新 ⃝ イデオロギーと政治争点 ⃝ 日本に独特なイデオロギー ⃝ 政治を見るものさし 参考図書 【おすすめの解説書】 • 史料にみる日本の近代:開国から戦後日本までの奇跡 (URL:http://www.ndl.go.jp/modern/cha5/index.html) • 石川真澄(2004)『戦後政治史 新版』岩波書店. → シラバス図書とは少し異なるが,わかりやすい. • 増田弘編著(2016)『戦後日本首相の外交思想:吉田茂から小泉純一郎ま で』ミネルヴァ書房. → つい先日出版された.とくに吉田茂の政治への考え方などについて,史料 や回顧録にもとづいていてとてもおもしろい!! 秦 正樹 日本政治論(北九州市立大学法学部)
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