酪農・肉牛編 - EM研究所

畜産マニュアル
酪農・肉牛編
株式会社
EM研究所
目 次
1. EMを導入する前に(必ずお読み下さい。)....................................P1
2. EMとは ..............................................................................................P3
3. 酪農・肉牛環境における微生物相のバランスと効果.....................P3
4. 酪農・肉牛におけるEMの活用メリット概念図 ............................P4
5. EM1の活用方法(概略説明).........................................................P5
6. EMボカシ(EM発酵飼料)の作り方と使い方 ............................P7
7. EM活性液およびEM5の作り方と使い方 .................................P14
8. EMセラミックスとEMの飲水投与.............................................P18
9. 牛糞尿の利用 ...................................................................................P19
10. 草地などへの利用............................................................................P20
11. 優良事例 ...........................................................................................P21
12. 書籍・ビデオのご案内 ....................................................................P48
13. EM関連商品のご案内 ....................................................................P49
14. EM1ご使用に際してのご注意・お問い合わせ先......................P50
1
EMを導入する前に(必ずお読み下さい。
)
1.考え方
EMが畜産に利用されて、10年以上たちます。当初は、悪臭を抑制する目的で使われていまし
たが、数多くの畜産農家が利用する中で様々な効果が出てきました。詳しくは後述しますが、生
産性の向上、畜産物の品質向上などの家畜に対する直接的な効果と、悪臭抑制、家畜糞尿の有効
利用などの間接的な効果の2つがあげられます。
この間接的な効果が、環境問題解決にとって重要な鍵となります。畜産業におけるEM利用の
真価は、環境保全型農業ができ、自己完結(リサイクル)型、永続可能なシステムを確立させる
ことです。例えば、EMが介在することによって家畜糞尿(有機物)を農地へ省力的に還元でき、
家畜糞尿(有機物)の持つエネルギーを有効利用し、土壌に起こる障害を抑え、土壌の肥沃化を
図ることが可能となり、草地に還元すれば、化学肥料を使わなくても草地の優良化が図られます。
本来、畜産業といえども農業の一部である以上、土から離れた畜産はあり得ないことを再認識
しなければなりません。「卵は、鶏が生むのではなく、土が生むのである」「牛乳は、乳牛から搾
るのではなく、土からとるのである。」という言葉があるように、すべての生物は土から生産され
る有機物によって生かされているのです。
従って、土台となるのは土であり、土とリンクしていなければ将来にわたっての畜産業の発展
はあり得ないと考えています。
2.基本的な飼育管理は必須条件
畜産業では悪臭対策が最重要課題ですが、それと並んで家畜の健康維持、病気発生の軽減も大
きな課題です。
この課題を解決するためには、基本的な飼育管理による良好な飼育環境を維持することが基本
となります。
しかしながら、生産性を上げるための過度な密飼いは、ストレスからくる病気などの障害を引
き起こす原因となり、その対策として抗生物質の多投や消毒剤の多用という悪循環に見舞われて
いるのが現状です。
家畜からみると、このような状況は決して良好な環境とは言えません。現在の経営環境からは
難しい現状にありますが、出来る限り飼育管理の環境を改善する必要があります。
1
EMを導入する前に(必ずお読みください。)
3.EMの働きは環境をよくすることが主目的
本来動物は、野に放たれ自由に生活し、よい自然環境の中で健康に育っています。その理由の
1つには、土と接することにより多種多様の微生物と出会いながら、生活をしていることがあげ
られます。
しかし、現在の畜産業の飼育形態ではそれは難しく、土と家畜が離れてしまっています。それ
を補うのがEMです。
EMは、土壌から抽出した有用微生物の集合体です。このEMを家畜に応用することによって、
土と出会うことと同様の条件を整えることができます。これがEM活用の原点です。
生きとし生けるものは、動物、植物にかかわりなく、微生物と共存共栄しているのです。食物
連鎖の底辺を支えているのは土であり、その中に棲む最小生物の微生物です。
従って、EMは薬剤のような感覚で使用するのではなく、環境(畜舎内外、家畜体内)改善を
目的に使用しなければなりません。また、EMは、生き物であり、ただ散布さえすれば求める効
果が出るものではなく、EMが働きやすい環境づくりも同時に行う必要があります。EMを使用
することによって、飼育環境を自然に近い状況に改善することができます。その視点に立ってE
Mを使用することが、より一層の効果を導き出すために重要となります。
4.EMをテスト導入する場合
EMの効果を確かめるためには、畜舎1棟単位で行って下さい。例えば、同一畜舎内を区切っ
て行っても畜舎全体に先住している微生物の影響を受けやすく、明確な効果の差が現れないこと
があります。決して薬剤的な使い方ではなく、生き物としての扱いが基本です。
従って、EMをテスト導入する場合といえども、畜舎内全体のEM散布、飼料添加などを行い、
微生物相の改善を念頭に入れることが重要であります。それによりEMを優占させ、有害菌の活
動を抑え込み、畜舎内の微生物環境を整えることができます。性急な効果のみを求めて判断し、
結論を出さないように心がけて下さい。
5.EMの導入適期
微生物の増減消長
原則として導入時期はいつでもよいです
が、悪臭抑制効果を確実にするには春先
春
夏
秋
冬
増殖期
活発期
減少期
停滞期
(2∼3月)の、気温が上昇する前が最適で
す。理由は気温上昇にともない、腐敗菌も
E M
導入適期
増殖し始めるので、その前にEMを散布す
ることなどによりEMの占有率を高めるこ
とにあります。
2
2
EMとは
EMとはEffective Microorganisms(有用な微生物群)の頭文字をとった略語のことです。
EMは、琉球大学農学部の比嘉照夫教授が開発したものです。
EMは空気の嫌いな嫌気性菌と、空気の好きな好気性菌など働きの異なる乳酸菌群・酵母群・
光合成細菌群・発酵系の糸状菌群・グラム陽性の放線菌群等を複合培養したものです。これらの
微生物は自然界に広く生存しており、ほとんどの菌種が食品加工などに利用されていますので人
畜無害です。
EMは開発以来、微生物土壌改良資材として水稲・野菜・果樹などの栽培に利用され、収量・
品質向上などに活用されてきましたが、糞尿の悪臭公害問題を抱えた畜産業でも、悪臭抑制に大
きな効果を上げることが確認され、急速に普及が進んできました。
現在では悪臭抑制効果だけでなく、家畜の病気やストレスの軽減、乳質・肉質・卵質の向上、
ハエの発生軽減、牧草の増収、サイレージの品質向上など、様々な効果が確認されています。
3
酪農・肉牛環境における微生物相のバランスと効果
土壌及び生活環境には多種多様な微生物が存在しています。人間は、昔から有用な微生物を利
用して食品加工などをしています。例えば酒、味噌、しょうゆ、チーズ作りなどで、乳酸菌、酵
母、麹菌などを利用しています。
また反対に、自然界には動植物に病原性のあるフザリウムや大腸菌などの微生物も数多く存在
します。
大部分の微生物は、本来動植物に対して無害ですが、その置かれた環境条件により有害作用を
起こすものがあります。例えば、子牛の肺炎や下痢の多くは、環境条件により常在菌が起病力を
発揮し発病したものと考えられています。このような菌は「日和見菌」と呼ばれ、有害菌が優勢
になった環境で害を及ぼします。
従って、個々の微生物の性質ではなく、微生物の群としての組成が重要になります。
微生物群の中に有害菌が多ければ、微生物群全体が有害な存在となり、逆に、有用菌が多ければ
群全体が有用な存在となり得るわけです。
実際には、群全体の中の有害菌、あるいは有用菌の絶対数は少なく、わずかな微生物バランス
でその方向性が決まってしまいます。また一般に有用菌より有害菌の方が繁殖力が旺盛であり、
通常の環境下では有害菌の働きが勝るため、悪臭の発生や病気の原因となる訳です。
例えば、生ゴミなどは腐敗菌によって腐るのが一般的であり、排出された家畜糞尿も腐敗の方
向に向きます。ところが、ここで有用菌が優占する環境を作ると、生ゴミや家畜糞尿なども腐敗
ではなく有用発酵へと進むことができます。
これは悪臭の出ない発酵した状態であり、EMのような有用菌を増やすということによって、
このような状態を作り出すことができるのです。
3
4
酪農・肉牛におけるEMの活用メリット概念図
環境保全型の酪農・肉牛の実現
畜舎悪臭
の抑制
地下水汚染問題解消
床面の乾燥
肉質の向上
乳質の向上
飼育環境改善
生産物の
品質向上
排水の水質向上
飼育管理向上
衛生と健康向上
育成率の向上
増体率の向上
● 罹病率の低下
● 薬剤使用量の減少
牛糞の
有効利用
良質な乾草、
サイレージ等の生産
牛糞堆肥の品質向上
水田・畑・草地へ還元
農作物
● 堆肥の悪臭抑制
● EMの土壌への定着
● 品質向上
● 堆肥生産の省力化と有効利用
● 土壌の肥沃化
● 保存性向上
4
● 収量向上
5
EM1の活用方法(概略説明)
酪農・肉牛でのEMの活用方法は3つあります。
①EMボカシ(EM発酵飼料)を食べさせる(p7)
②EM活性液やEM5を散布する(p14)
③EMセラミックス水またはEM希釈液を飲ませる(p18)
酪農におけるEM活用の一例
酪農飼養サイクル一例
哺育
EM処理
EMボカシを乳(牛乳・代用乳)に少量添加。
EM活性液を5∼10日に一回散布。
飲み水はEMセラミックス処理したきれいな水を与える。
ま
たEM希釈液(1000倍)
を投与してもよい。
(※1)
育成
育
成
飼料にEMボカシを1頭当たり約30∼50g添加。
EM活性液の散布頻度及び飲水処理のやり方は※1参照。
交配
妊娠
初回分娩
交配
妊娠
乳
牛
搾乳 EMボカシは1頭当たり約 30 gから飼料に添加をはじめて
徐々に増やす。最終的にはEMボカシを1頭当たり約 50 ∼
100 g添加。
(牛の毛並みやEMサイレージの施用の有無などで加減する。
)
EM活性液の散布頻度及び飲水処理のやり方は※1参照。
妊娠末期
分娩
乾乳
♀子牛
市場
廃牛
母牛
♂子牛
草地、飼料畑
糞尿処理
糞尿処理は、EMボカシの給餌等によ
り腸内細菌のバランスを改善し、糞尿
自体の悪臭を緩和することが前提。
EM処理した堆肥を草地に還元。堆肥散布後や生育期にEM
を散布するとなお良い。
詳しくはp.20参照
詳しくはp.19参照
乾草
作製時にEMを散布する
詳しくはp.20参照
サイレージ
仕込み時にEMを散布する。
詳しくはp.20参照
注)上記の活用例は、主にEMを活用できる部分を抜き出したものです。基本を守り薬剤等の使用回数や洗浄方法など
は、
家畜保健衛生所などの指導に従って下さい。
また、
しっかり洗浄することが基本であり、
その際にEMの密度を
どうあげていくかがポイントになります。EMの使用量は、季節や牛、牛舎の状況に合わせて加減して下さい。
5
EM1の活用方法(概略説明)
肉牛におけるEM活用の一例
肉牛飼養サイクルの一例
一貫
育成牛
種付け
繁
殖
EM処理
EMボカシを1頭当たり約 30 ∼ 50 g添加。
EM活性液を 5 ∼ 10 日に一回散布。
飲み水はEMセラミックス処理したきれいな水を与える。ま
たEM希釈液(1000 倍)を投与してもよい。
(※1)
EMボカシを1頭当たり約 30 ∼ 100 g添加。
(牛の毛並みや EM サイレージの施用の有無などで加減する。
)
分娩
EM活性液散布及び飲水処理のやり方は※1参照。
♀一部
哺育期
EMボカシをエサに少量添加。
EM活性液散布頻度及び飲水処理のやり方は※1参照。
離乳期
市場
導入(和牛、乳♂、F1)
肥育素牛
肥育前期
肥育中期
肥
育
EM処理した水と乾草を充分に与える。
EM活性液を 5 ∼ 10 日に一回散布。
飲み水はEMセラミックス処理したきれいな水を与える。
肥育前期はEMボカシを1頭あたり肉色やサシの状態を見な
がら 30 ∼ 50 gを添加する。
肥育中期及び肥育末期は肉色やサシへの影響を考えて、ボカ
シは添加しない。
肥育末期
出荷
糞尿処理
草地
糞尿処理は、EMボカシの給餌処理等
により腸内細菌のバランスを改善し、
糞尿自体の悪臭を緩和することが前提。
詳しくはp.19参照
EM処理した堆肥を草地に還元。堆肥散布後や生育
期にEMを散布するとなお良い。
詳しくはp.20参照
乾草
サイレージ
作製時にEMを散布する。 仕込み時にEMを散布す
る。
詳しくはp.20 参照
詳しくはp.20参照
注)上記の活用例は、主にEMを活用できる部分を抜き出したものです。基本を守り薬剤等の使用回数や洗浄方法など
は、
家畜保健衛生所などの指導に従って下さい。
また、
しっかり洗浄することが基本であり、
その際にEMの密度を
どうあげていくかがポイントになります。EMの使用量は、季節や牛、牛舎の状況に合わせて加減して下さい。
6
6
EMボカシ(EM発酵飼料)の作り方と使い方
EMボカシ(EM発酵飼料)の飼料への添加方法とは?
EMボカシとは、米ヌカ、フスマなどの有機物をEMで発酵させたものです。
EMの中の、主に乳酸菌、酵母が働いて有機物を発酵させ、その中で増殖した各種の菌やその
生成物が、腸内細菌のバランスを整え、家畜の体調を良好に導き、増体率を向上させます。さら
に腸内で発生する還元物質(悪臭の元)を減少させ、家畜糞尿自体の悪臭を元から抑える働きを
します。
EMボカシを作るには、米ヌカ、フスマを材料にするのが基本となっていますが、EMで発酵
できる有機物、例えば配合飼料を材料に用いることも可能です。ただし牛に与えるので動物性の
材料は使用できないことは当然です。
さらにEMボカシの飼料への混入比率は、目安としての許容量(P.11参照)を示しましたが、
経済的に考えると家畜の状態が良く、また悪臭がなければ量を少なくすることも可能であり、ま
た悪臭がある場合はその量を多くすることも必要です。
このEMボカシは誰にでも容易に作ることができますが、EMボカシの良し悪しにより効果に
差が生じますので十分注意して下さい。できの悪いEMボカシは、家畜に対して悪影響を及ぼす
ことがありますので、絶対に与えないで下さい。
1.EMボカシを作る材料(一例)
米ヌカ
100㎏
フスマ(一般フスマ)注1)
100㎏
EM1
400p
糖 蜜
400p
水(塩素のない水)注2)
新鮮な物 古くて酸化している物は望ましくない
40r
お湯2rは、水40rに含まれる
20r
水分調整用の水
注1:米ヌカだけを材料とすると固まりやすいので、フスマや配合飼料などを入れる。
注2:水道水の場合は一昼夜汲み置きして、塩素を取り除く。
2.EMボカシの作り方
q400pの糖蜜を2r程度の熱湯を加えて溶かします。
糖蜜は水では溶けにくいため、熱湯を使います。熱湯の
糖蜜
400p
お湯
2r
使用量は水の使用量に含めて下さい。
※古い糖蜜や品質の悪い糖蜜を使う場合、この時点
で煮沸して雑菌を死滅させた方がよく発酵します。
7
糖蜜
お湯
EMボカシ(EM発酵飼料)の作り方と使い方
wこれに38rの水を加えて100倍の糖蜜希釈液を作ります。
その糖蜜希釈液が40℃以上でないことを確認してから、
EM1を400p加えてEM・糖蜜100倍混合希釈液を作
ります。
※この希釈液は、米ヌカなどの主材料と混ぜ合わせる3
EM・
糖蜜100倍
混合希釈液
400p
日程前に作るとEMの活性度合いが高くなります。余
裕がなければ当日でも良いです。
e最初に材料の米ヌカ100kgとフスマ100kgをよく混ぜ
よく混ぜ
合わせます
合わせます。その後EM・糖蜜混合希釈液をジョウロ
などで加えながら、水分が均等になるようによく混ぜ
フスマ
100kg
米ヌカ
100kg
合わせます。
その時、全体の水分が30∼40%になるように、混合
希釈液を加える量を加減します。水分を加えすぎる
と、その後に調整しにくいので、EM・糖蜜混合希釈
液を20rくらい加え、状態を確認しながら残りを徐々
に入れてください。
【注】
1)水分の目安は混ぜ合わせた材料を強く握った時、
団子になる程度で、触ると壊れるくらいの状態
触ると壊れる
くらいで…
です。
2)水分が過剰になると腐敗になる場合があり、逆
に少ないと発酵が進まないので、充分注意して下
EM・糖蜜
100倍
混合希釈液
さい。
3)水分は混合希釈液で十分足りると思いますが、
足りない場合は、水分調整用の水20rで加減し
てください。
逆に多過ぎた場合は、米ヌカを足すなどして、
次ページに続く
全体の水分量を調整してください。
8
EMボカシ(EM発酵飼料)の作り方と使い方
rそして、でき上がったものを厚手のビニール袋に入
れ、口をしっかりと閉めます。また、これと同じ密
閉条件を設定できるものであれば、ビニール袋にこ
だわらずに、大型のポリドラムでも構いません。
厚手の
ビニール
で嫌気発酵
【注】
1)薄いビニール袋の場合、破れやすく空気が入る恐
れがありますので、厚手のものを使用して下さい。
薄手のビニールを使用する場合は2∼3重にして
使用して下さい。
2)右のようにビニール袋で密閉して嫌気状態にし、
大型のポリドラムでもOK!
直射日光の当たらない場所で発酵させます。
3)右のようなポリドラムで発酵させる場合、材料
を筒いっぱいに入れて下さい。
すき間があるとうまく発酵できないことがあり
ます。
筒
い
っ
ぱ
い
入
れ
る
4)袋や容器は2∼3日以内に使い切れる量のボカ
シが入る大きさが最適です。
t発酵期間は21∼40日が標準です。牛の場合は21日以
下のボカシを与えない方が良いです。また、積算温
3
5℃
35℃
合は積算しないで下さい。また、ボカシの温度が
∼
∼
度600℃を目安にします。ただし10℃以下の気温の場
5
0℃
以上 高 温 は 不
不適
適
50
℃以上 高
50℃以上にならないように注意して下さい。袋に穴
2
5℃
25℃
があいて空気が入ると50℃以上になる場合があるの
で注意して下さい。
発
発酵 適 温
1
0℃以下 発酵がすすみにくい
10℃以下 発酵がすすみにくい
積算温度の例
電 熱 器
(平均気温が20℃の場合)
20℃×30日=600℃
y発酵は気温が20∼40℃の所で行って下さい。EMボカ
シの発酵適温は25∼35℃です。冬期などの気温が低
い時期は、
古い保冷庫のような倉庫で加温して下さい。
ビニール袋
9
ポリドラム
EMボカシ(EM発酵飼料)の作り方と使い方
uEMボカシ完成の判定基準は、pHが5以下であるこ
とに加え、甘酸っぱい発酵臭がして、また良い芳香
臭がすることです。いやな腐敗臭がすれば失敗です。
また、表面に白いカビが発生したEMボカシは飼料用
には不適です。堆肥の発酵用や畑作などにお使い下
乳
酸
発
酵
臭
腐
腐敗 臭
甘
酸
っ
ぱ
い
さい。青カビや黒カビが発生すると失敗です。堆肥
に混ぜて処分し、牛に与えないでください。
iEMボカシの保存は、仕込み状態のまま嫌気状態を
納屋など1日の温度変化の少ない場所
保ち続けて保存します。密閉状態が保たれていれば、
保存期間
約3ヵ月
約3ヶ月間程度保存が可能です。
ただし、一度開封したボカシは、保管時に密閉を保
つことはもちろんのこと、遅くとも一週間以内に使
い切ってください。
oできあがったEMボカシは、できるだけ新鮮なもの
を給与した方が効果的ですので、毎月計画的に1ヶ
月以内に与えられる量を、2∼3日に使い切れる量
の大きさの容器に小分けして、作成することをおす
すめします。
ハウスのビニール
!0大 量に作る場合は、右のイラストのように大きな容
を3重くらい…
器や木枠などで作ることもできます。
ビニール
その場合、ビニールを3重ぐらい重ねて、上部に石
などの重しを置きます。
大きな
容 器
木枠
空気が入ると高温になりますので温度管理には注意
し、50℃以上には上げないで下さい。
石などの重しをのせる
水が入らないように注意
10
EMボカシ(EM発酵飼料)の作り方と使い方
3.EMボカシ(EM発酵飼料)の商品の紹介
コストを考えるとEMボカシは自分で作ることが基本ですが、労力がないとかEMボカシの良
いものができないという方は、市販されているものを購入して下さい。
EMボカシの使い方
1.EMボカシ給与量の目安
種
別
肉用牛
段
階
ボカシ給与量(/日)
哺育・育成
約
∼
g/頭
肥育期(ホルスタイン)
約
∼
g/頭、肉色などで判断するが、肥育中
期以降は与えない方が良い
肥育期(和牛・F )
∼
g/頭、肉色、サシの状態などで判断する
が、肥育中期以降は与えない方が良い
乳牛
繁殖牛
約
∼
g/頭
搾乳牛
約
∼
g/頭
注1:即効性を期待して過剰給与することは禁物です。微生物過多になる恐れがあります。
注2:地域により肉質の嗜好性が異なったり、飼料の違いがあるので、実施例(P5、6、P21∼
47)を参考にして自分の飼育状況に合った給与方法を見つけだす必要があります。
11
EMボカシ(EM発酵飼料)の作り方と使い方
2.EMボカシの給与方法
q飼料に混ぜて与える
3.床へ散布
徹底した床面改善
床面が、コンクリートの場合、今まで使用していた敷料などを取り除いて清掃し(殺菌消毒は必要
に応じて行い、その後水洗いも必ず行う)、濃度の高いEM活性液の10倍希釈液を床面に1m2あた
り約1L散布します。乾燥後、さらにEMボカシを床面が見えなくなる程度に敷き詰め(1m2あ
たり100g)、その上から新しい敷料を敷いて下さい。
これはコンクリート床などに棲みついている腐敗菌を抑える方法です。
敷き料をあまり使わない牛床の場合は、EMボカシは使わず、掃除で洗い流す際にEM活性液を使
います。(EM活性液についてはP.14∼17参照)
床面が土の場合は、敷き料などを取り除いた後に、EMボカシを床面が見えなくなる程度に敷き詰
め(1m2あたり100g)、その上から新しい敷料を敷いて下さい。
※ポイント
多孔質資材のメリット
床に撒くEMボカシに多孔質のゼオライト、EMX
セラミックス、炭などを混ぜます。
混入割合は、EMボカシ材料全体の1%程度です。多
孔質のものは、EMの住みかになり、EMの繁殖が
安定し、家畜糞堆肥の品質を上げることも期待でき
ます。
12
13
EM活性液およびEM5の作り方と使い方
7
EM活性液およびEM5の畜舎内外の散布方法とは?
EM活性液とは、糖蜜を餌(栄養源)にしてEM1を活性化させた液です。EM5は、糖蜜の
他に食酢と焼酎を混ぜて発酵させたものです。この活性化させた液は、EM1とまったく同じも
のではありませんので、特定の条件下でEMの代わりにコストダウンを図る目的で使用します。
EM活性液は、EMボカシと同じように主に乳酸菌と酵母などの比率が高くなっています。こ
れらの菌は発酵力が高く、また腐敗菌を抑える働きがあります。EM5も同様にアルコールや酢
酸、それらから作られるエステルなどが、悪臭抑制効果を発揮します。
従ってこれらを畜舎内外に散布することにより、悪臭を作り出す腐敗菌の活動を抑える働きがあ
ります。
この散布は、畜舎のEM密度を高めることが目的であり、定期的に散布する必要があります。
その回数は、導入当初の1∼3ヶ月は3日に1回の割合で行います。だだし、悪臭抑制効果が出
れば畜舎のEM密度が上がったと考え、散布回数を減らしていくことができます。
導入時期は、いつでもよいのですが、適期としては気温が上昇し始める春先(2∼3月)です。
気温の上昇に伴い腐敗菌の密度も高くなるので、その前にEMを優占させるようにします。
散布場所については、畜舎内は天井から床面、尿溝まで行い、畜舎外においても糞などが溜ま
り腐敗臭がする場所、堆肥舎周辺、また周囲の土壌にも行うと効果的です。
「EMボカシの飼料への添加」と「EM活性液の畜舎内外への散布」は、平行して行うことが基
本です。
1.EM活性液の作り方
ここでは、基本的な10倍活性液を説明します。慣れてくれば、糖蜜の量などは加減してもかまい
ません。
※EM活性液を作製する装置が多数市販されています。詳しくは、EMの販売店にお訪ねく
ださい。また、使用方法は、各装置のマニュアルに準じてください。
1)EM活性液を作る材料
EM−1
1r
糖蜜
1r
水(塩素のない水)注1)
8r
糖蜜
1r
糖蜜
注1:水道水の場合は一昼夜汲み置きし、塩素を取り除く
糖蜜希釈液
2)作り方
お湯3r
(1)1rの糖蜜を3rの熱湯でよく溶かします。
糖蜜は水では溶けにくいため、熱湯を使います。
※古い糖蜜や品質の悪い糖蜜を使う場合、この
時点で煮沸して雑菌を死滅させた方がよく発
次ページに続く
酵します。
14
EM活性液およびEM5の作り方と使い方
(2)その後水を5r入れて、糖蜜希釈液を作ります。
この糖蜜希釈液が40℃以上でないことを確認して
から、EM1を1r入れてよく混ぜます。合計
EM1r
EM
10rのEM・糖蜜混合液ができます。
水5r
合計10rのEM・糖蜜混合液
(3)それを密閉容器(ポリ容器など)に入れ、1日の
密閉容器
温度変化(最適気温25∼30℃)が少ないところに
置く。
ガラス容器は、破裂することがあり、危険ですの
で使用しないで下さい。EM1の10rポリ容器が
密閉容器
10rポリ容器
適しています。
(4)1∼2日経つと発酵し始め、ガスが発生してきま
す。容器が膨らんできたらガス抜きをし、その後、
再度容器がふくらんだらでき上がりです。でき上
がりの日数は、夏場で3∼4日、冬場で10∼14日
前後が目安ですが、地域により異なりますので十
分観察して下さい。
ふくらんだらガス抜きをする
再びふくらんだら…
完 成!!
15
EM活性液およびEM5の作り方と使い方
(5)でき上がりの判定基準は、甘酸っぱい発酵臭です。
また、pHは、4.0以下です。
保存期間は約1ヶ月可能ですが出来るだけ早く使
用して下さい。
保存場所は、1日の温度変化の少ない納屋などが
適しています。
pH測定器の紹介(購入は園芸店)
甘酸っぱい
発酵臭
・デジタルpHメーター
・試色pH試験紙(pH3.2∼5.6の範囲用)
pH4.0以下
・山田式pH測定器
保存場所は納屋などの冷暗所
2.EM5の作り方
1)材料
EM1
1r
糖蜜
1r
食酢(注2)
1r
焼酎(注2)
1r
水(塩素のない水)注1)
10r
注1:水道水の場合は一昼夜汲み置きし、塩素を取り除く
注2:食酢と焼酎の代わりに「AL−V※」
(醸造アルコール+醸造酢)を使用してもよい。
この場合は、水:糖蜜:AL−V:EM1=10:1:1:1
※岐阜アグリフーズ株式会社 岐阜県各務原市 TEL 0583-84-1245(P.13参照)
2)作り方
EM活性液に準ずる
16
EM活性液およびEM5の作り方と使い方
3.EM活性液・EM5の使い方
畜舎内
q散布場所 畜舎内(床・かべ・天井・糞尿溝)に動力噴
霧器などで全体に散布します。畜舎外で糞尿
などがたまり腐敗臭がする場所、堆肥舎及び
その周辺、周囲の土壌にも散布して下さい。
家畜に直接かかっても問題はありません。
※ 冬期は、家畜に直接かかるとカゼをひく
恐れがあるので注意して下さい。
畜舎外
w希釈倍率と散布量
EM活性液を100倍に希釈し、1m 2あたり約
1r散布します。
e散布回数
EM使用開始当初の1ヶ月間は、3日に1回
程度散布します。
その後、悪臭が緩和されれば、月に1回の散布
回数に減らします。さらに、悪臭が緩和され
堆肥舎散布
れば希釈倍率を500倍程度に薄くしても構いま
せん。
r噴霧装置を使う
畜舎に噴霧装置が設置されている所では、そ
れを使用することも可能です。
その場合は、1000倍希釈液が標準です。
※1 ただし、噴霧装置を使用前に清掃しないと、EMによって配管内の汚れが溶解し、目詰
まりすることがあります。
※2 以前に使った消毒薬などが残っていないことを確め、十分水洗いしてから使用します。
〈濃いEM活性液で徹底した散布〉
畜舎内外の悪臭発生場所にEM活性液の50∼100倍希釈液を、悪臭が消えるまで3日間隔で徹底
散布して、腐敗菌よりEMの優占度を高める方法です。
ただし、濃い濃度の場合は、家畜の目に入らないように注意してください。
17
8
EMセラミックスとEMの飲水投与
1.EMセラミックスの使い方
EMセラミックスの使用場面
qEMセラミックスとは、EMあるいはEM−Xを粘土
飲水タンク
に浸潤させて焼き上げたセラミックスのことです。
EMセラミックスを水に入れることにより、水のク
ラスターを小さくし、EMが持つと言われる抗酸化
力の情報を水に転写することで、水の性質を良くし
家畜に対して様々な良い効果を与えることが期待で
きます。
井戸水
w飲水1tに対して、EMセラミックス1kgの割合で、
飲水タンクや井戸の中につるします。
e飲水タンクがない場合は、EMセラミックス入りの
濾過装置を配管することにより同様の効果を上げる
ことができます。
セラミックスろ過装置
rEMXセラミックスパウダーをEMボカシ作製時に
0.1%程度添加すると発酵が安定します。
2.EM希釈液の飲水投与
EM1を1000倍の割合で飲水に希釈します。
この希釈液は、1∼2日以内に使い切って下さい。
飲水
18
9
牛糞尿の利用
経営を考えた場合、良い乳や肉を作ることは重要ですが、悪臭対策や糞尿処理も重要であることは間違いあり
ません。一般的に、土壌の有機物不足が指摘され、畑に入れる有機物に注目が集まっています。草地や飼料畑
に撒きやすく、耕種農家が喜んで取りにくるような発酵糞尿を作ることがポイントではないかと思います。
前処理が重要
EMによる糞尿の処理は、EMボカシをある程度の期間、牛に給与することによって、牛の消化器官でEM
が働き、排出される糞尿自体の悪臭が少なくなることを前提としております。
このような糞尿が、EMを散布したり、床処理をしてEMの密度を高めた牛舎の中で、堆積すると酸化分解
や腐敗分解ではなく、発酵分解が行われ、アンモニア等の悪臭発生が抑えられて牛舎の臭いは抑制され、除
糞作業が楽になります。
牛糞の堆肥化
前述のようにEM処理された牛糞や固液分離後の固形物は堆肥プラントで処理する場合でも、臭いも少なく、
発酵もスムーズに行われます。
EMを利用して間もない時や、EMの密度が高まっていない時に、牛糞が堆積してるところから臭いが発生
する場合があります。発酵中に臭いが気になる場合や切り返し時、移動時は、EM活性液かEM5の50∼
100倍希釈液をプラント全体に散布すると、臭いは軽減します。
※EMで前処理していない牛糞に
EMを処理して、悪臭の少ない 堆肥の中にEM注入
「EM発酵家畜糞」にする場合
は、堆肥舎に積んでいる堆肥に
EM活性液の50∼100倍希釈液
差し込む
の注入と散布をします。また、
EMボカシの混和でも可能で
す。ただし、水分過剰になると
腐敗発酵する事があるので、床
E M活 性 液
がコンクリートの場合、水はけ
をよくしなければなりません。
尿溜槽や液肥槽(スラリータンク)の悪臭緩和と利用
尿溜槽や液肥槽の場合も、堆肥化と同様にEM利用された尿を処理することが前提ですが、定期的に糞尿溝に
EM活性液の希釈液を流し込むか散布したり、スクレーパーや糞尿溝を洗う場合の洗い水にEM活性液を投入
すると良く、悪臭や腐敗を抑えた糞尿自体を速やかに尿溜槽へ投入することがポイントです。
尿溜槽や液肥槽の悪臭緩和には、糞尿や汚水に対して
500∼1000倍の希釈濃度(例:糞尿10tに対してEM活性
液20∼10L)になるようにEM活性液を直接または、糞
尿溝を通して1週間に1回程度投入します。その後、悪
臭がなくなれば、徐々に間隔をあけることも可能です。
また、多孔質の炭、ゼオライトなどをEM活性液の100
倍希釈液に1晩浸け、その後、目の細かいネット袋に
入れEMの住処として尿溜槽に投入します。投入量の
目安は尿1tに対して10kgですが、多い方が効果的です。
悪臭のなくなったスラリーや尿は、草地や飼料畑に還
元し易いばかりか、有効な有機液肥として活用する事
が出来ます。
19
E M活性液
炭やゼオライト
10
草地などへの利用
●草地、飼料畑のEM活用方法
草地、飼料畑にEM処理した牛糞尿を2∼3t/10a散布しま
す。臭いがする場合などは、EM1を1L/10a撒きやすいよ
うに希釈して散布します。
牧草の播種などの管理は通常通り行い、適宜、EM1を1L/
10a撒きやすいように希釈し散布します。
EM処理した臭いのない牛糞尿等を施用すると通常より生育が
良くなってきます。
適宜、化学肥料の投入量や農薬使用量を減量してください。
●乾草のEM活用方法
刈り倒し後、できるだけ早くEMを散布すると、草が枯れてい
くときの劣化を抑えます。EM1を1L/10a撒きやすいよう
に希釈し散布します。
その後、乾燥を進め、ロール時に再度EM活性液の散布を行う
と更に良いです。
ベーラーに散布器をつけて、散布しながら梱包したり、収納庫
の床にも動噴やジョウロでEM活性液を散布するとさらに安定
します。
●サイレージのEM活用方法
1)デントコーン・牧草サイレージ(固定・スタックサイロの
場合)
デントコーン・牧草の10t重さに対し、EM1の1Lを散
布しやすい濃度に薄め、充分に牧草に絡めるように散布し
て鎮圧します。サイレージを仕込むときに糖蜜を50∼100
倍に薄めて入れると更に良いです。コーンサイレージの取
り出し口(取り出し場所)への散布は、カビや腐敗防止に
有効です。
2)ロールの場合
基本的に乾草の場合と同様です。
水分含量が少ない方が良いため、EM1は原液か数倍に薄
めた程度で散布してください。
注1:活性液の場合は、EM1の原液の使用量から計算します。
(例:EM1を1L散布する場合は、10倍活性液の10Lを散布することになります。)
注2:初めて、EMを使う場合には、草地やサイロのEMの密度を高めるために多少濃く使われることをおす
すめします。
注3:上記は、実際に使用しているEMの事例を参考にしていますが、絶対的数値ではありません。事例を
参考にご自身の牧場の環境やシステム、機械装置にあったEM使用の方法を確立してください。
20
11
優良事例
徹底したEM活用で
酪農環境改善に効果
おかやま酪農協同組合所属
東山 光子
岡山県笠岡市カブト中央町115
技術のポイント
1)導入時は徹底したEM散布及びEMボカシの給与を行い、環境改善を行う。効果が出てからはボカ
シの給与のみで、効果を維持する。
2)ボカシを給与し、においの少ない牛糞尿を加圧混練式高品質堆肥化装置を用いて堆肥化。
2週間でさらさらになる。
3)笠岡湾干拓酪農婦人部として平成12年度農林水産省経営局長賞を受賞
1. 基礎データ
4) 現時点の課題等(改良点、新規活用等)
1) 経営概要
特になし。
5) 実際のEM活用
(1)経営年数:30年以上
(2)経営形態:耕地酪農(飼料作物を自家生産)
(1)餌:給与時に自家製ボカシを一頭あたり
(3)飼養品種:ホルスタイン
一握り(約50∼100g)与えている。
(4)全飼養頭数:約145頭
○自家製ボカシの作り方
※搾乳中頭数:80頭(2003年12月現在)
・原材料
(5)労働形態及び労力:自家(家族)経営
:米ヌカ及び籾ガラ
・使用する混合液:EM1原液及び糖蜜の
全労力:4名(本人、若夫婦、孫1名)
100倍希釈液
(6)その他特徴的なこと
・製造方法
笠岡湾干拓酪農婦人部として平成12年度
基本的に、畜産ガイドブックを参考に大型
農林水産省経営局長賞を受賞した。
攪拌機を用いて作製。その後、ドラム缶に
移して密閉し約一ヶ月間発酵させている。
2. EMとの関わり
(2)飲水:未活用
1) EM導入:平成7年
(3)畜舎内:未活用
2) EM導入のきっかけ
導入してから最初の2年は、悪臭とハエ
対策に徹底的にEMを散布したが、現在は
笠岡湾干拓酪農婦人部の活動として、普
EMボカシを給餌するだけ。
及所の横浦先生よりEMについて話を聞き、
婦人部の活動として牛舎の悪臭対策にEMを
(4)EM活性液:未使用
使うようになる。
(5)サイレージ処理時:未活用
3) 今までに実感している効果
(6)乾草作製時:未活用
牛舎に悪臭がない。
(7)子牛:未活用
ハエがいない。
すべて自家育成であるため、新生子牛に
病気になりにくい。
特別なEM活用はしていない。
健康な牛に育つ。
牛糞堆肥が良質。
21
優良事例
写真1
写真3
牛舎
3. 糞尿処理
4. その他
1) 処理過程
1) 病害関係
(1)敷き料:オガクズ
加圧混練式高品質堆肥化装置
(1)現在困っている病気等
(2)固液分離はしていない
特になし
きゅうひ
(3)糞尿は厩肥として利用する。
(2)EM導入以前困っていた病気等
繁殖障害、乳房炎
(4)堆(厩)肥
(3)一ヶ月にかかる医療費
①牛糞の発酵施設
EM導入前より減少
加圧混練式高品質堆肥化装置
(4)病害関係全般に対してEM導入は効果があった
②堆肥化の流れ
2) 搾乳
a. 糞尿を戻し堆肥と混ぜて水分調整。
b. 加圧混練式高品質堆肥化装置に投入
(1)搾乳方法:機械搾乳
し、加圧することで、温度が上がる。
c. ロータリー式攪拌機付きの堆肥舎で発酵
(2)搾乳回数:2回/1日
(3)乳量や乳質について
させると、約2週間でさらさらになる。
①一日あたりの搾乳量(生乳生産量)
約 2,000㎏/1日
d. さらに堆肥舎に積んで熟成させる。
②乳質の主な特徴
③活用法:自家使用(草地)及び販売
体脂肪数 20∼30万
④販売時の価格:4,000円/2,000㎏
(4)牛乳の主な出荷先
⑤主な購入者:畑作農家、果樹農家
岡山酪農べいふぁーむ牛乳
⑥使用者の反響:
明治おいしい牛乳
悪臭がない。東山牧場の堆肥を使用す
出荷先の評判:EM導入前より良い
ると野菜がよくとれる。一般の牛糞堆肥
だと野菜に苦みがあるが、東山牧場のは
甘みがある。などの感想をいただいている。
2) EM活用
5. 訪問調査時の状況
1) におい、ハエの状況
ボカシを食べさ
異常気象で雨や湿気がおおいため、少しハ
せている牛の糞
エがいたが、においは少ない。
2) 牛の状態
尿なので、処理
にEMは特に活
用していない。
良好。落ち着きがある。
写真2
さらさらの牛糞堆肥
22
優良事例
EM導入10年目の酪農
寺岡牧場
寺岡 豊一
北海道千歳市都752番地
技術のポイント
1)高品質なEM活性液を作り、できるだけ牛とEMを接触させている。
2)牛の飼料全体にEM処理をする。(自家生産粗飼料は特にEMを多く)
3)環境改善は糞尿処理より、まず口から。給飼・給水にEMを積極的に使用する。
4)ビールカスにEMを混ぜて発酵させた良質のボカシを作り、給飼している。
1. 基礎データ
2. EMとの関わり
1) 経営概要
1) EM導入:平成6年
2) EM導入のきっかけ
(1)経営年数:45年
(2)経営形態:耕地酪農(飼料作物を自家生産)
現代農業の環境汚染が問題になり始めた時
(3)飼養品種:ホルスタイン種
期に比嘉先生の本やビデオ、講演を拝聴し、
(4)全飼養頭数:乳牛70頭(育成含む)
長年求めていた物がEMであると実感した。
3) 今までに実感している効果
※内、現在搾乳中の頭数は35頭
(5)労働形態及び労力
(1)牛舎の環境改善
①労働形態:家族経営
悪臭緩和とハエの発生低減
②全労力:4名(本人、妻、娘、息子)
(2)病傷減少
2) 立地条件
乳房炎、蹄底腐乱、肝臓障害、後産(胎
盤)停滞などが減少
(1)全敷地面積:17.5ha(借地4ha含む)
(3)廃棄牛乳、糞尿処理問題の解決
飼料畑17ha
牛乳は産業廃棄物に指定されており、川
(デントコーン7ha・牧草10ha)
に流せない
4) 現時点の課題等(改良点、新規活用等)
①乳牛の健康管理を中心に考え、EM自然農
法の牧草作りに着手している。
②EMによる蘇生型酪農を目標に各種改善を
行う。
5) 実際のEM活用
(1)自家製EM活性液の作り方
EM1:糖蜜:水=1:1:23
上記混合液をポリタンク(25L)にいれ
て、常温で仕込んでいる。
写真1
牧場全景
23
優良事例
写真2 EM活性液の保管
写真3
ビールカスボカシの作製
写真4
ビールカスボカシの保管
(2)餌
自家製ボカシ(ビールカスボカシ)の作
り方
・原材料
近くのサッポロビール園よりビール
カス(水分65%、温度27∼30℃)を入
手する。
・製造方法
仕込みにはコンパネ作りの箱(容量
1.5t)を2ヶ使用する。4t車からビー
ルカスを投入する際にEM活性液を希釈
(3)飲水
せずにジョウロで散布しながら踏圧す
る。積み込み後、ビニールフィルムに
地下26mよりくみ上げた井戸水を使用し
密封して砂袋をのせる。ビールカス3t
ている。EM処理は、井戸から牛舎への配
に対してEM活性液を50L使用する。EM
管の途中にEMXセラミックスパイプ35を24
活性液はボカシを仕込む4∼5日前に
個封入した太いパイプを設置して、水をセ
作製しておく。
ラミックスに接触させる方法をとってい
る。このEM処理水は、牛の給水やEM活
仕込み後45日程度で完成し、1頭あ
性液作りなど作業全般に使用している。
たり12∼15kg/日のボカシを餌に混ぜて
与えている。
(4)畜舎内
EMを活用する前から、ビールカスを
牛舎内の各作業は毎日休むことなく続
利用していたが、うまく発酵せずに捨て
くため、朝夕の搾乳時にEM活性液(200
たり、発酵が不完全な物を使用して、牛
倍希釈)をジョウロに入れて持ち歩き、
が下痢したり、免疫力が下がり、いろい
通路、尿溝、牛床等に散布しながら、搾
ろな病気などにかかることがあった。
乳作業をする。特に牛乳が牛床等にこぼ
れた時は多めに散布する。その他、子牛
EMを使うようになってビールカスの
の独房や牛舎各所に週1回位散布する。
発酵に失敗がなくなった。結果的に長
期保存、良質安定生産が可能となり、
(5)サイレージ
通年飼料はバンカーサイロにてEM発酵
すべてがうまくいくようになった。
24
優良事例
処理を行っている。自家製ボカシをデン
3. 糞尿処理
トコーンに1%添加し、デントコーン400t
1) 処理過程
に対しEM活性液1000Lに水を1500L添加し
(1)敷き料:廃材チップ
て、サイロ切り込み時に均等に散布する。
(2)固液分離はしていない
タイヤショベルにて均平踏圧後、ビニ
(3)糞尿は堆肥として利用する
ールシートで覆い、重しをのせて重圧密
(4)堆肥
封し、2ヶ月位熟成させる。気温の変化
①牛糞の発酵施設:堆肥場
は年中あるが、EM処理したサイレージは
②発酵期間:約3ヶ月
カビの発生や二次発酵等、サイレージの
③活用法
劣化腐敗現象などは起きない。また、過
発酵糞尿は堆肥として草地へ還元する
去10年間問題は発生していない。
が、足りない状態である。春は牛舎か
(6)草地、飼料畑のEM利用状況
ら出たばかりの糞尿を即草地に還元し
牧草畑には年6回程度EM活性液(500
ている。
2) EM活用
倍希釈)を散布(100L/10a)している。
1回目は雪溶け後、2、3回目は1番草
<敷床処理>
の収穫時、4、5回目は2番草の収穫時、6
育成牛舎には週1回の割合でEM活性液の
回目は秋処理時に行っている。また、EM
200倍液を散布している。
堆肥、EM液肥を毎年3回以上散布する。
<敷料処理>
飼料用デントコーン畑には秋の収穫後
成牛敷料に廃材チップ使用しているが、残留
にEM堆肥を散布、春のEM堆肥の散布後
薬品除去のためにEM活性液を散布している。
にはEM活性液の散布も行っている。
<その他>
なお、平成13年よりEMによる液肥作り
給与飼料のEM処理と床、バンクリーナー溝
を開始し、平成14年春からEM液肥(100t)
へのEM散布で糞尿の発酵が良くなり、臭気
の利用を始めた。現在、比嘉先生の指導
がない。また、堆肥製造中に雨水で洗い流
によるEMドバドバ散布に挑戦しており、
された液を100tタンクにため、EM活性液を
EM密度の高い飼料畑になるように、年間
投入して液肥として利用している。
300∼400tのEM液肥を投入している。
(7)乾草
刈り倒し終了直後、スプレイヤーでEM
活性液(500倍希釈)を全面散布する。そ
の後乾燥を進め、仕上がり時期に再度EM
活性液の散布を行い、ベーラーにて梱包
する。また、収納庫の床にもジョウロで
EM活性液を散布する。倉庫に収納後、山
積した上から散布することもある。
(8)子牛
新生子牛の初乳給与時にEMXを200ml
写真5
給与している
25
堆肥場
優良事例
強く言われているが、比嘉先生の指導にあ
るEMによる草地再生が可能であることを確
信した。
(図2参照)
4. その他
1) 病害関係
(1)現在困っている病気等:関節障害
(2)EM導入以前困っていた病気等
肝臓障害、乳房炎
写真6
(3)一ヶ月にかかる医療費:共済の範囲
地下にある液肥貯蔵槽
※医療経費はEM導入前に比べて減少した。
※具体的効果
(4)病害関係全般に対してEM導入は効果があ
過去3年間、草地には堆肥散布のみで収
った。EMによる抗酸化作用によって全頭
量、質とも良好。雑草(エゾノギシギシ)の
健康になり、過去3年間、病死牛はない。
発生が激減した。
病気発生数は10年前の1/5になった。
2) 搾乳
平成6年春からEMを使い始め、良質な
EM堆肥が有効利用できるようになった。
(1)搾乳:機械搾乳
平成8年より農薬及び除草剤の使用を中
(2)搾乳回数:2回/日
止し、平成10年より化学肥料の使用も中止
(3)乳量や乳質について
している。EMを活用することで酪農環境の
①一日あたりの搾乳量(生乳生産量)
改善や飼料作物の安全性に対しても改良が進
約600∼700 ㎏/日
む事を実感している。
※バランスの良い生乳を安定的に産出
牧草畑の追肥として年3回EM堆肥の散布
②乳質の主な特徴
を行い、デントコーン畑にも年3回散布し
乳脂肪 4.19%
ている。現在、我が牧場の堆肥生産量が間
乳蛋白質 3.30%
に合わなくなりつつあり、EM液肥使用が重
乳糖 4.54%
要な課題となってきた。さらに良質なEM液
無脂固形分 8.84%
肥が出来るように試行錯誤している。
生菌数 3,000個
化学肥料の使用中止から約3年目の平成
体細胞数 91,000個
14年頃から、牧草畑に変化が現れるように
体細胞は10万前後で安定し、搾乳成績
なった。18年程使用している永年草地で急
はEM導入以前より良くなった。
速に草の再生がよくなってきた。
(4)牛乳の主な出荷先:サツラク農協(組合
つまり、連作すると
員として市販乳向け出荷中)
まず、マメ科牧草が消え、イネ科牧草が群
→同農協では毎年消費者の牧場見学会を
落形成する。
行い、環境改善の実態を直接見てもらう
群落と群落の間に雑草がはびこるが、EMの
ことを10年くらい続けている。
3) におい、ハエの状況
使用(EM活性液散布や堆肥の施用)を続け
るとイネ科群落が増大して雑草の生える隙間
悪臭は無く、サシバエが秋に少々発生する程
がなくなり、マメ科牧草が再生してくる。
度で昨年は黒アゲハチョウが多数発生した。
草地更新せよとの指導は現在も各関係者から
26
優良事例
図1
EMによる酪農サイクル
乳牛
良質健康牛乳
EM堆肥産出
飼料
良好環境
社会環境改善
健康乳牛、長命牛
飼養管理者
快適農作業
無農薬
無化学肥料
EM有機肥料
安心・安全
良質・多収
図2
飼料畑
概略図 寺岡牧場のEM技術
ビールカス
EM処理水
飼料
良質な牛乳
EM処理
糞尿
EM処理
サイレージ
乾草
EM
EM処理
EM処理
草地
畑の中で堆肥がEM醗酵
牧草収穫
マメ科牧草の復活、イネ科牧草の群落が均一化→草地の連作可能に
27
EM使用堆肥が
100%畑に還元
されることによ
って、自己完結
型となり、EMサ
イクルが出来た。
EM堆肥使用によって、
化学肥料、農薬、除草剤を
全く使わなくてよい。
堆肥
優良事例
遠別微生物研究会における
ホルス肉牛の事例
遠別微生物研究会
会長
北海道遠別町
島内 一彦
技術のポイント
1)高品質のEMボカシ(以下、ボカシ)とEM活性液(以下、活性液)の追求
2)牛の健康管理と牛糞尿の有効活用
1. 遠別微生物研究会
同研究会は平成13年1月、
「有用微生物を
研究することにより、安全で環境にやさしい
農畜産物を作り、日本社会に貢献しようと
する者の連携を図り、情報交換を増進するこ
とにより、生産・流通・消費の振興をする」
ことを目的として、地域の農家有志26人で発
足した。事務局を遠別農業高校内に置き、現
在は会員約60名で、会長は島内一彦氏、事
務局長は白崎定男氏(同高校教諭)
、顧問は
写真1
牛舎
田中敏幸(同高校校長)からなっている。
2. 基礎データー
3. EMとの関わり
1) 経営概要
1) EM導入:平成10年∼
2) EM導入のきっかけと実感している効果
牧場名:(有)茂野牧場
(1)牧場長
:島内 一彦
(2)経営年数
:30年
畜舎の床にボカシを散布したことにより、趾
間腐爛が激減したことから、EMに取り組んだ。
(3)経営概要
①経営内容
牛舎の消臭効果は劇的であった。EM活用
:肥育
以前は、堆肥を散布するため堆肥運搬の車が
生後1週間の子牛を購入し、19∼20ヶ
道路を通っただけで、しばらく周辺に悪臭は
月で出荷している。
漂い、搬入した農地からの臭いは消えなかっ
②飼養品種
(4)全飼養頭数
:ホルスタイン
た。ところが今は誰がどこを通ってどこで堆
:1,400頭
肥を散布したか分からない程悪臭が減った。
(5)労働形態及び労力 :会社組織→従業員:
(6)全敷地面積
EM導入以前、畜舎では、3日にあげず天
7名
井まで掃除し完全消毒をしていたので、事
:53ha
故率(牛の死亡率)は低かったが、薬漬け
であった。EM導入により、薬剤による消毒
28
優良事例
○EM活性液の作り方
は必要なくなった。更に事故率はほとんど
糖蜜を湯で溶かし、水とEM1を入れて
無く、牛の増体率が向上し、成長のばらつ
100倍にする。バルククーラーに移し、30℃
きが無くなる等々、実績が表れてきた。
で14日間発酵させる。ポリ容器に入れて会
また、ある酪農家の尿だめが決壊して糞尿が
大量にビート畑に流れ込むという事故があっ
員の酪農家に配る。
た。ビートは枯れてしまうと思ったが、一日、
(2)飲水:EM活性液を水槽に入れて1000倍に
希釈して飲水投与
葉が弱っただけで、その後は以前にもまして生
(3)牛舎内:
長し、思わぬ増収となった。この偶然の出来事
がヒントになり、その被害に遭ったビート農家
日常の舎内散布や出荷後空き牛舎の清掃
が、土がやせたビート畑に25t/10aの生糞を入
時に活性液を活用
れてみたところ、大きすぎるくらいのビートが
収穫できた。それでいて硝酸態窒素の問題は無
かった。それを見た、会員が肥料メーカーで土
壌診断をした結果、この畑では、20t/10a位の
生糞の施用であればカルシウムがやや少な目だ
が、土の化学性は完璧であると診断された。
3) 実際のEM活用
(1)エサ:EMボカシを混ぜて与える。
○自家製ボカシの作り方
・原材料:米ぬかとフスマ+EM活性液+糖蜜
・製造方法:
写真3
活性液を作るバルククーラー
米ぬかとフスマを半々にして撹拌機に入
(4)サイレージ:作成時に活性液を散布。
れ、ジョウロで活性液を散布しながら30分
回転、その後、紙袋に入れて室温30℃の発
平成16年の6月15∼18日、乾草を収穫する
酵室に入れる。25日以上嫌気発酵させる。
とき、ロールベーラー(収穫機)で300kgロ
上記ボカシを1%餌に混ぜている。
ール当たり1L(EM活性液を2倍に希釈)の
活性液を散布しながらロールした。たまたま
活性液が切れてしまいEMのかからない二つ
のロールが出来てしまった。これがとても興
味深い結果をもたらした。
ロール直後の乾草の水分を測ったところ草
が若かったので両方とも25%あった。活性
液を散布しないで巻いたロールは、2∼3
日で温度が40℃迄あがり1週間したら下が
り、3週間したらまた上がりだし、カビが生
え、枯れて褐色に変色した。
活性液を散布したロールは、温度は上が
写真2 二台の撹拌機でボカシを仕込み右の発酵室
で寝かせる
らず、草の匂いが残っていて緑色も残って
いた。さわってみると湿度も残っていた。牛
の嗜好性も大変良い。EMを活用している農
29
優良事例
家は皆ロールベーラーに活性液の散布装置を
4. 糞尿処理
付けている。
1) 処理過程
(5)乾草:作成時に活性液を散布。
(1)敷き料:おがくず・バーク・牧草
(6)初生犢(とく・仔牛):ボカシ。
(2)固液分離はしていない
電解液にEMボカシを10g混ぜている。
(3)牛糞尿利用法
:堆肥
(4)堆肥
①牛糞の発酵施設 :戻し堆肥の施設
②発酵期間
:3カ月
③活用法
:一部草地と畑ヘ
自家使用
④耕作農家への堆肥の販売
1円/1kgで畑作・果樹農家へ販売。
評判が良い。
2) EM活用
牛床にボカシ散布
堆肥の山に臭いがしてきたら活性液散布。
写真4 乾草ロールのEM未使用(手前)とEM使用
の差を説明する島内さん(右から5人目)
堆肥の切り替えし時に活性液散布
5. 病害関係
1) 現在困っている病気等:ナシ
2) EM導入以前に困っていた病気等:
趾間腐爛、子牛の下痢や呼吸器病
3) 一ヶ月あたりの医療費
①医薬代(ワクチン等含む):40万円
②治療費
:20万円
※医療経費はEM導入前と比較して減少
病害関係全般にEM導入は効果があった
写真5
悪臭の無い牛糞の山
6. 訪問調査時の状況
1) におい、ハエ
○失敗談
EM使用後、次々成果を見たことから、ボ
・におい
:ナシ
カシを仕上げまで与え続けたところ、肉色
・ハエ
:少ない
が濃くなり、黒っぽくなった。以前は5が最
2) 牛の状態
高で評価を受けたが、今は4が最高となり、
落ち着きがあり、悠然としている
3) 牛舎内の様子
5は格外となる。健康になった証拠ではあ
るが、現在は、仕上げの半年前からボカシを
病気対策を考えて、清掃がされている
与えないようにしている。
30
優良事例
高城の畜産農家に根付く
EM技術
㈲クリーン企画
宮崎県北諸県郡高城町大井手493−1
福嶋 茂
技術のポイント
1)足かけ10年の地域に根ざした普及(サイレージを作る地元農家の約3割がEMを活用している。
)
2)繁殖牛だけでなく、養鶏、養豚にもEMを普及させている。
1. 基礎データ
して行っていたが成功例がなかった。平成
1) 経営概要
5年に畜産課の職員が大阪の肉屋を視察し
(1)経営年数:9年(平成6年5月∼)
た際、EMの情報を聞き、琉球大学農学部の
(2)経営内容:EM代理店(地域へのEM普及)
比嘉教授に電話をかけEMを取り入れる。
その後、自然農法センターの職員に来て
EM及びEM関連商品、農産物等の販売・企画
いただきEM勉強会を開催したことで地域へ
(3)労働形態及び労力:有限会社
広がっていった。比嘉教授の講演会もこれ
従業員:4名(本人、妻、子、及びパート)
2) 立地条件
までに2回開催している。
霧島連峰に守られるように息づく高城の町
平成6年から1年半ほど4種類の資材を
は北部地域の60%が、手付かずのまま山林の
使った比較試験も行った。平成7年からユ
形で残されており、南部地域の60%にも、静
ートピア畜産展開事業が始まる。各農家が
かな田園風景が広がっている。大淀川の本流、
作製した自家製のEMボカシを餌に添加する
また、花ノ木川、東岳川、有水川、穴水川の
ことから始まったが、品質が悪くなったり、
四つの支流の水量も豊かで、年間平均降雨量
ネズミの被害に遭うなどの問題があったため
2,500mmという天からの恵みも多く、農林業
現在は岐阜アグリフーズ(株)のEMフィー
に最適の気候条件も整っている地域である。
ドBAを利用している。その後サイレージへ
(1)その他特徴的なこと:
の添加が主流となり現在に至っている。
3) 今までに実感している効果
元高城町役場畜産課長が現場でEMの普
及活動や技術指導を行っている。
サイレージの品質が向上し腐敗が激減し
200軒のサイレージを作る農家の内、約
た。穴があいても穴周りの一部が悪くなるだ
60軒がEMを活用している。
けで済んでいる。また持ち帰ってからの二次
発酵がなく、においが手につかなくなった。
2. EMとの関わり
畜舎内の悪臭が緩和し、糞が臭くなくな
1) EM導入:EMを使いはじめたのは、平成5
り、ハエも激減した。牛も健康になっている。
4) 現時点の課題(改良点、新活用法等)
年から
2) EM導入のきっかけ
農家は目新しいものに飛びつきやすく、す
ぐに飽きやすい。全体的な広がりと定着が
高城町では平成元年頃より役場として畜産
課題である。
公害(悪臭、害ハエ)の対策を補助事業と
31
優良事例
事 例 1
【自家製EM活性液】の作り方
住所:宮崎県北諸県郡高城町
夏)EM1:糖蜜:水=1:1:16
氏名:倉田正人
秋)EM1:糖蜜:水=2:2:14
上記混合液を20Lの密閉容器(タン
1. 基礎データ
ク)で 発酵させて完成。
1) 経営概要
(1)経営年数:50年(父の時代から)
12ha分の飼料作物をサイレージに仕込むとき
(2)経営内容:繁殖 ※水稲等との複合経営
にEM1(1Lのボトル)16本程度使用している。
(3)飼養品種:和牛(宮崎県産100%)
(4)全飼養頭数:約90頭(繁殖牛:53頭)
(5)経営形態及び労力
自家(家族)経営
全労力:3名(主に夫婦)
2) 立地条件
(1)全敷地面積:6.5ha(内草地6ha)
(2)農場(牧場)周囲の環境
・近隣の住宅地は少ない
(3)けい留つなぎ式牛舎(運動場:3,000㎡)
で舎飼い
サイレージ
2. EMとの関わり
3. 糞尿処理
1) EM導入:平成5年
1) 処理過程
2) 今までに実感している効果
(1)敷料 :オガクズ
①においが少なく、ハエが少ない。
(2)固液分離 :分離していない。
②当農場の堆肥を活用すると作物が良く生育
(3)堆(厩)肥
して病気にかかりにくく、障害も少ないと
①牛糞の発酵施設:堆肥舎
評判になり堆肥がよく売れるようになった。
②発酵期間 :2ヶ月
③E M を活用したサイレージ処理により、
③活用法 :自家使用、販売
700ppmの硝酸態窒素濃度が100ppm以下に
(園芸農家、水稲農家)
なり、濃度障害や下痢などを抑えている。
またサイレージの腐れが少なく、二次発酵
※自家使用する時の活用先は草地
(全量の80%)
2) EM活用
しにくいため、ロスが少ない。
3) 実際のEM活用
糞尿処理にEMは未活用
(1)餌:サイレージ作製時に活用
4. 病害関係
※具体的な活用法
①5tのワゴン車で撹拌する際5∼6倍
EM導入以前は「下がり」や「白痢」があ
に薄めたEM活性液(後述)を10Lの
ったが、現在は特にない。
ジョウロでかける。さらにサイロに
仕込む際にもう10Lかける。
EMボカシは使っていない。
32
優良事例
事 例 2
は、敷料に混ぜてしまう。
住所:宮崎県北諸県郡高城町
※サイレージへの活用はしていない。
名前:大浦義信
(2)牛舎内:活用
※敷き料を敷く前に敷床にEMボカシを散布。
1. 基礎データ
1) 経営概要
(1)経営年数:30年
(2)経営内容:繁殖(水稲との複合経営)
(3)飼養品種:和牛(宮崎県産100%)
(4)全飼養頭数:140頭(繁殖牛:90頭)
(5)労働形態及び労力
自家(家族)経営
全労力:4名→本人、妻、息子、嫁
2) 立地条件
(1)全敷地面積:10ha
ボカシ製造場
7ha: 飼料用イネを栽培。
3ha:水稲
3. 糞尿処理
(2)農場(牧場)周囲の環境
1) 処理過程
①近隣の住宅地:少ない
(3)スタンチョン式牛舎(運動場:500m )で
(1)敷料 :カンナクズとノコクズ
2
舎飼い
(2)固液分離 :分離していない
(3)堆(厩)肥
2. EMとの関わり
①牛糞の発酵施設:堆肥舎
1) EM導入:平成5年
②発酵期間 :2∼3ヶ月
2) 今までに実感している効果
③活用法
・自家使用:草地、水田に活用
ハエ、悪臭ともに少ない。
3) 実際のEM活用
・耕作農家等への堆厩肥の販売:
水稲農家、畑作農家
(1)餌:自家製EMボカシを活用。
・販売時の価格:2,000円/1t(取りに来て)
【自家製EMボカシ】の作り方
※水稲農家は稲ワラと交換
※大根栽培農家に大根の品質がよくな
・製造方法
ったと評判
米ヌカ300kgにEM1が1本が入るよ
2) EM活用
うに混合液(EM1:糖蜜:水=1:
1:100)をミキサーで混ぜ込み、ドラ
糞尿処理にEMは未活用
ム缶に仕込む。
4. 病害関係
1週間∼10日発酵させる。
導入前より特に問題なし。
EMボカシを親に一握り程度、子牛には4
∼5頭に2∼3掴み程度餌に混ぜている。
開けたドラム缶のボカシが残った場合
33
優良事例
事 例 3
・サイレージを積むときにジョウロで散
住所:宮崎県北諸県郡高城町
布。20aあたり原液1L
氏名:久保初雄
3. 飼養管理
1. 基礎データ
1) 飼育形態
1) 経営概要
つなぎ式牛舎(運動場:25㎡)で舎飼い
(1)経営年数 :40年
4. 糞尿処理
(2)経営内容 :繁殖(水稲との複合経営)
1) 処理過程
イネ :60a
飼料用イネ:20a
(1)敷料 :オガクズ
(3)飼養品種 :和牛(宮崎県産100%)
(2)固液分離:分離していない
(4)全飼養頭数:19頭
(3)堆(厩)肥
※繁殖牛の飼養頭数は11頭
①牛糞の発酵施設:堆肥舎(約15㎡)
(5)労働形態及び労力
②発酵期間:2∼3ヶ月
自家(家族)経営
③活用法 :自家使用(草地、水田)
2) EM活用
全労力:2名(本人、妻)
糞尿処理にEMは未活用であるが、堆肥に鶏
2. EMとの関わり
糞を水分調整として混ぜて発酵させている。
1) EM導入:平成5年
(好気性の菌体を使用)
2) 今までに実感している効果
堆肥のにおいが少ない。
5. その他
サイレージのにおいが少ない。
1) 病害関係
(1)現在困っている病気等
特になし
(2)EM導入以前に困っていた病気等
子牛の下痢
サイロ
3) 実際のEM活用
(1)餌:サイレージ処理とボカシを活用。
・濃厚飼料には岐阜アグリフーズ(株)の
EMフィードBAを1回の給餌時に親に
100g、子牛に50g程度餌に混ぜている。
34
優良事例
EM技術を活用し
和牛生産11年
西尾 忠雄
香川県高松市植田町3
技術のポイント
1)経営全体にEMを導入している。
2)最初は肥やさず大きく育てることが前提である。
食いつきがよく、病気になりにくく、大きく育てるためには素牛導入時のEM活用が肝心である。
3)導入時より、EMXを使いこなすことにより牛の成長や病気予防に効果を上げている。
4)高タンパクのEMボカシを使いこなすことにより牛の成育や肉質が著しく良好で、サシもよく入る。
また同時に、サシを入れるには6∼15ヶ月が勝負であると考えている。ビタミンAとカルシウム
のバランスが重要であり、ビタミン剤を使っている。
5)以上の実績から、現在は安い飼料でEMボカシを作り、EMボカシの大量投与や飼料全体を発酵さ
せることを試している。
1. 基礎データ
①経営形態:自家(家族)経営
1) 経営概要
②労力:本人以外パート3名
(6)生産と消費の形態
(1)経営年数:48年(昭和30年∼)
牛は、主に東京の市場に毎月2頭を出荷。
(2)経営内容:肥育(一部繁殖との一貫経営)
(畑作、水稲との複合経営)
一部は、東京と地元の自然食レストラン
水田80a、畑30a、肥育牛280頭
で食材として利用されている。
(3)飼養品種:鹿児島系、兵庫系
2. EMとの関わり
※主な血統:忠福
1) EM導入:平成4年
2) EM導入のきっかけ
平成4年3月、高松南部農協主催の比嘉
照夫教授の講演会に出席し、話の内容に感
動した。早速、半分の牛150頭にEMボカシ
を与え、与えない牛との比較試験を始めた。
更に、平成4年8月、高松市畜産振興協
議会で枝肉共励会が開催され、そのとき最
優秀を受賞した和牛がEMを取り入れている
農家ということを知って、全面的にEM導入
写真1
名札
を決心した。
その後、いろいろな研究をする中で、特殊
(4)全飼養頭数:280頭
なEMボカシを開発することにより、サシの
(和牛272頭、繁殖和牛8頭)
入る技術が確認されてきた。
(5)労働形態及び労力
35
優良事例
後15ヶ月以降に与える。
現在では和牛1頭で1,000kgの出荷経験も
∼現在(平成13年∼)∼
あり、経済的効果は抜群である。
3) 今までに実感している効果
ロ)EMボカシの作り方(DCP7.27%の蛋白)
牛の発育が良くなり、悪臭がなくなり、ハ
シメジキノコカス60.61%
エがわかなくなった。
大豆カス 12.12%
①病気の発生率低下
米ヌカ 9.09%
EM導入後はほとんど病気が無くなった。
ミカンカス 9.09%
②成長率の向上
アマミカス 9.09%
最初はEM1原液6L、糖蜜6L、水
出荷まで一般では32ヶ月かかるが、EMを
使用すると28ヶ月で850∼900㎏に成長する。
100Lを上記材料に混合していたが、最
近は小規模作業所のあじさいが作る活
③敷き料交換期間
性液25L、糖蜜30L、水100Lを混合して
敷き料は半年∼1年に一回交換している。
いる。シメジカスの水分が多いため、
④肉質の向上
これをボカシ6t当たりに使用する。
通常EMボカシだけでは、サシが入りにく
材料を大型ミキサーで攪拌しながら、
いと言われているが、特殊EMボカシを使
混合液を散布する。その後は7tタンク
うことによって、その問題も解決した。
4) 現時点の課題(改良点、新活用法等)
にて密閉保存3ヶ月間嫌気発酵させる。
上記ボカシを下記の割合でエサに混
EMを活用し、安い材料でいかに重い枝肉を
ぜている。
とるかを模索中である。
5) 実際のEM活用
繁殖牛:約80%
肥育牛:約40%
(1)餌 (2)飲水
①EMボカシの作り方
池の水を使用。10tタンク3本にEMXセ
∼導入直後(平成4∼12年)∼
ラミックスと日向土、木炭をそれぞれ
イ)「特殊EMボカシ」
(DCP23%の高蛋白)
15kgを入れた水を使用している。
※DCP:可消化粗タンパク質
(3)牛舎内
大豆カス20%
牛舎のEM散布は行なっていない。
ごまカス18%
米ヌカ22%
1日に牛1頭に7kgから8kgのエサがい
フスマ20%
る。その1割としても800gのEMボカシが
トウモロコシ20%
入っていることになり、出てきた糞はEM
の固まりみたいな物であり、畜舎にEMを
EM1と糖蜜を上記材料1tに対して1
散布する必要がない。
Lずつ添加した後、30%になるように水
(4)EM活性液
分調整する。その後密閉容器に移して約
購入した活性液を飼料用ボカシ作製用と
1ヶ月嫌気発酵させる。
して使用。
上記の特殊EMボカシを生後15ヶ月ま
で与えて太らせる(1日あたり800g/頭)
。
(5)繁殖及び肥育素牛
普通では、DCP23%の高蛋白のエサを与
素牛導入時にEMを活用している。
えると下痢をするが、EMボカシにすれ
導入時に、フスマ1kgに1.5mlのEMXとビ
ば問題なくサシがよく入る。
タミンA剤をしみこませたものを給与。
7日目まで
米ヌカ主体の通常のEMボカシは、生
36
:約2kg/日
優良事例
20∼25日まで :約3kg/日
次範囲を狭めて、6㎡に1頭が望ましく、
100日まで
最後は3.5∼4㎡位に狭めた方が良い。
:約4kg/日
繁殖成績はEM導入前と比較して良い
経験上、EMボカシを使っていれば、発情
し易いはずである。発情がない場合は、EMX
を250ml飲ませる。それでもこない場合はさ
らに250ml飲ませれば、発情するはずである。
肥育成績はEM導入前と比較して良い
出荷まで一般では32ヶ月かかるが、EMを
使用すると28ヶ月で850∼900㎏に成長する。
ポイントは関節関係の病気防止。最初が
肝心である。食いつきが良く、病気になりに
写真2
くく、大きく育つ。最初は肥やさず大きく育
素牛用飼料攪拌機
てる。そのためには、EMXを素牛導入時に
施用する。
約3ヶ月間で一頭あたりEMXを約500ml
サシを入れるには6∼15ヶ月までが勝負で
与えることになる。
しっかりビタミンAとカルシウムのバランスを
※最初が肝心である。食いつきが良く、
病気になりにくく、大きく育つ。
とることが重要であり、ビタミン剤をつかっ
最初は肥やさず大きく育てる。
ている。また通常EMボカシだけでは、サシが
入りにくいと言われているが、特殊EMボカ
3. 飼養管理
シを使うことによって、その問題も解決した。
1) 飼育形態:舎飼い飼育
2) 飼料
①運動場:あり(面積50㎡)
①主な粗飼料原料:ワラ
②採用している牛舎の種類:フリーストール。
②主な濃厚飼料原料:粕類
1日2回給餌。飲料水不断給水。
∼導入当初(平成4∼12年)∼
エサの材料は、フスマ:トウモロコ
シ:大麦=1:1:1の割合で混合し、
大豆カス、米ヌカ、ビールカスをそれぞ
れ全重量の10%加え、後にEMボカシ
(800g/頭)をエサの上から撒く。
∼現在(平成13年∼)∼
繁殖用:EMボカシ72%
フスマ18%
ヘイキューブ10%
肥育用:EMボカシ40%
写真3
【シメジキノコ粕(40%)・ト
牛舎
ウモロコシ・ふすま・ハイポニ
ック・みかんジュース粕など】
③飼育密度
50%
育成時期の密度は広い方が良い。特に15
ヘイキューブ10%
∼20ヶ月間では広い方が良い。その後は逐
37
優良事例
5. その他
※素牛導入時は 2. 5)
(5)にあるEMX入り
1) 病害関係
フスマを2∼4kgと上記に配合した飼
料を与える。
(1)現在困っている病気等
各用途に分けてエサを撹拌機の中で置い
なし
ておく→熱が出る。
(2)EM導入以前に困っていた病気等
この状態のエサを与えると肉質が柔かく
胃腸障害、肝臓障害、腸の脂肪壊死等
なった。専門家に50℃以上になると材料
(3)一ヶ月あたりの医療費:共済の範囲
の中のビタミンが分解されてしまうと指導
※医療経費はEM導入前と比較して減少した。
され、温度が50℃にならないよう朝晩撹
(4)病害関係全般にEM導入は効果があった。
拌機で撹拌する様になった。
EMXを使い出して牛が病気にかからなく
なった。
4. 糞尿処理
6. 訪問調査時の状況
1) 処理過程
1) 悪臭、ハエの発生について
(1)敷き料
敷床にはオガクズを使用。処理はシャベル
ハエは10分の1位に減った。悪臭はない。
ですくって出して積んでおくだけ。肥育後半
悪臭があると牛の肉色が悪くなる。
においては床の出し替えはしない(年1回)。
(2)固液分離:分離していない。
2) 農場内施設概要
牛舎の数:4棟(7,000㎡)
きゅうひ
(3)糞尿は厩肥(堆肥)として利用している。
飼料タンク:3つ
(4)堆(厩)肥
堆肥舎:1棟
①牛糞の発酵施設:
7. 今後の課題
牛糞は、投入口より、傾斜面を時間
をかけて下に流れ落ちるような流下式
安心・安全の牛肉生産は当然であり、い
発酵処理施設を昭和52年に補助を受け
かに良い牛になるように仕上げるか。そし
て作った。牛糞が落ちたところが堆肥
て、枝重をとることが重要である。
舎になっている(1200㎡)
。昭和57年に
3,000万円かけて改築した。
EMの効果については賛否があるが、EM
②発酵期間:1年以上
は使い方次第で必ず効果はでる。そのため
③活用法:耕作農家への販売
には個々の条件に合わせた使用方法があり、
イ)販売時の価格:1万円/2t車
EM活用の基本を守ること、さらに観察力と
ロ)主な購入者と使用の際の反響
創意工夫が必要である。
牛糞堆肥は、地域内のハウス農家(キ
ュウリ・カーネーション)が土づくりの
ために買いに来る。花の色が鮮明に出
て、野菜は無農薬で出来るようになり、
収量が多く穫れるようになるという。
2) EM処理
牛舎内散布と同様の理由で、糞尿処理に
EMは特に活用していない
38
優良事例
クス
トピッ
Topics
EMの散布だけで
抜群の消臭効果
井口 清美
徳島県阿南市中大野町
技術のポイント
EMの原液を牛舎と堆肥の切り返し時に散布するだけで、消臭効果がある
1. 基礎データ
4) 実際のEM活用
1) 経営概要
(1)餌は未活用
(2)飲水
(1)経営年数 :43年(昭和35年∼)
(2)経営内容 :肥育専業
飲料水のタンクにEMXセラミックスを投入
(3)飼養品種 :和牛
(飲料水のタンクにゴキブリがいなくなった)
(4)全飼養頭数:約150頭
(5)労働形態及び労力
自家(家族)経営
・本人以外の就労(全労力:3名)
2. EMとの関わり
1) EM導入 平成8年
2) EM導入のきっかけ
雑誌などでEMの記事を見たり、実際に比
嘉教授の講演会に参加してEMの事を知っ
た。以前より色々な発酵菌を使用していた
が、それらは堆肥の発酵促進の目的のみで
畜舎全体に使用できるものではなかった。
畜舎全体の臭気の改善と堆肥の発酵促進
写真1 上 EMXセラミックス処理 下 牛舎と敷床
に使用を試みた。
3) 今までに実感している効果
となりに公民館や塾があるが畜舎があるこ
(3)牛舎内
とに気付く人が少ないほどに臭気が軽減した。
月に一度、500Lの水に1LのEM原液を混
また、床の乾きが早いことが臭気の減少に
ぜ、約1,500㎡の畜舎に動噴で散布する。
もつながっていると思われる。
(導入時には EM1と糖蜜と混合して噴
牛の健康状態がよく、共済組合から他の畜
霧していた)
舎と比較して事故が少ないといわれている。
EM導入前は鉄の柱が腐食しはじめていたが、
EMを使用してからは腐食が止まっている。
39
優良事例
3. 飼養管理
とはないが、毎年同じ農家が取りに来るの
1) 飼育形態
と少しずつではあるがお客が増えていること
からすると品質は問題ないと考える。
・舎飼い飼育:4×8mに6頭
踏み込み :敷床の製材カスを1ヶ月ご
とに交換
2) 肥育牛
(1)肥育素牛導入:約7ヶ月齢
(2)出荷月齢 :約27ヶ月齢
3) 飼料
農協の配合飼料・稲ワラを中心とした粗飼料
4. 糞尿処理
1) 処理過程
写真3 堆肥
(1)敷き料:製材カスを使用している
きゅうひ
(2)糞尿は厩肥(堆肥)として利用している
(3)固液分離はしていない
(4)堆(厩)肥
①牛糞の発酵施設:
牛小屋のとなりに屋根付きの発酵施設
を設置している。そこで、1m程度の山
を発酵段階ごとに作って発酵を促進させ
ている。
写真4 堆肥の小袋
2) 堆肥製造におけるEM活用
堆肥攪拌時に上から動力噴霧機でEM1の
500倍希釈液を散布する。
3) EMを使った効果
畜舎にEMを散布しすぎると乾きすぎて、
堆肥作成行程で熱が出なくなる事があった。
堆肥製造の初期の段階では堆肥の山を攪
写真2 堆肥舎
拌する際にはにおいがどうしても発生するの
②発酵期間:約7ヶ月で発酵終了・出荷
で、攪拌した直後にEMの希釈液の散布を行
③活用法:耕作農家等への堆厩肥の販売
う。においの軽減には非常に効果がある。
※販売時の価格:2tで7,000円
発酵も非常に早くなったようで最近では6
20kg(小袋)で200円
ヶ月以上熟成させると白くなるのを越えて青
(親類に販売してもらっている)
みを帯びたようになる。この状態は堆肥とし
農家や使用者から直接的に意見を求めたこ
て非常によい状態ではないかと考えている。
40
優良事例
牛のリンパ球に対する
EM発酵飼料の効果
EM研究機構 東京事務所
東京都港区赤坂3ー16ー11東海赤坂ビル4階
塩谷 圭子
技術のポイント
EM発酵飼料は、分娩前後の乳牛の免疫能低下を抑え、肝機能低下を軽減することが確認された。
2) 材料および方法
生体に有害な微生物が侵入しても、必ず発
病するとは限らない。体内に侵入した細菌や
妊娠末期の臨床的に健康と思われる成乳
ウイルスを制御する仕組みは「免疫系」と呼
牛6頭を、EM発酵飼料投与群(投与群)4
ばれ、免疫力が弱いと病気になり、強いと病
頭、非投与群(コントロール群)2頭に分けて
気にならない。この生体防御機能を強くする
供試した。
ため、さまざまな方法がとられている。ヒト
EM発酵飼料150g/日を飼料に添加し、分
の医療分野においてはEMXの免疫増強作用
娩予定日前8週から分娩後4週まで1日1
が確認されている。EMを使用した畜産現場
回経口投与した。
において、家畜の健康増進の報告が多々あ
分娩前8週(EM発酵飼料投与前)、分娩
り、EMが生体防御機能を増強した結果と考
前4週、分娩前2週、分娩後2日、分娩後
えられる。そこで、牛に対するEMの効果を
2週および分娩後4週の計6回採血を行な
リンパ球幼若化能を指針として、検討したの
い、白血球数、リンパ球数、好中球数、
で報告する。
AST、γ-GTP、FFA、T-Cho、BHB、Ca、
Albを測定した。また、免疫能の指針として、
分娩前後の乳牛のリンパ球に対する
EM発酵飼料の影響
リンパ球幼若化試験を行なった。
3) 成績
1) はじめに
(1)白血球数、好中球数およびリンパ球数
分娩前後の乳牛は免疫能の低下がみられ、そ
白血球数、好中球数およびリンパ球数の
の結果、様々な病気にかかりやすく酪農家に経
推移を図1−1に示した。コントロール群、
済的損害を与えている。この免疫能の低下を
投与群とも分娩後2日に白血球数および好
予防するために様々な試みがされているが、周
中球数が増加したが、リンパ球数は変動し
産期疾患の減少がみられない酪農家が多い。
なかった。両群ともほぼ同様に推移した。
乳牛にEM活性液またはEM発酵飼料を投
(2)リンパ球幼若化能
与することにより、乳牛の病傷事故率の低
リンパ球幼若化能の推移を図1−2に示
下が報告されている〔3〕
。そこで、分娩前後
した。コントロール群では、分娩前4週か
の乳牛にEM発酵飼料を投与し、免疫賦活作
ら分娩後2日にかけてリンパ球幼若化能は
用を期待してリンパ球に対する効果および血
低下した。これに対して投与群のリンパ球
液生化学的性状について検証した。
幼若化能は低下することなく推移した。
41
優良事例
白血球数の変動
50
12000
40
10000
30
刺激指数
個/μl
14000
8000
6000
4000
好中球数の変動
0
40
PWMで刺激した場合
20
刺激指数
個/μl
10
-20
0
0
-20
-40
-60
-80
リンパ球数の変動
60
6000
Con-Aで刺激した場合
40
刺激指数
5000
個/μl
20
-10
2000
16000
14000
12000
10000
8000
6000
4000
2000
0
PHAで刺激した場合
4000
3000
20
0
2000
-20
1000
0
8W前
4W前
2W前
2D後
2W後
-40
4W後
8W前 4W前 2W前 2D後
W:週、D:日
コントロール群
2W後 4W後
W:週、D:日
投与群
コントロール群
図1-1 白血球数・好中球数・リンパ球数の変動
図1-2
白 血 球 数:1μl中の白血球の数。白血球は、血液の細
胞成分のひとつで、リンパ球、好中球、単
球、好酸球、好塩基球に分類される。免疫機
能の中心的な存在である。
好 中 球 数:1μl中の好中球の数。病原体を取り入れ、
酵素によって消化する働きがある。
リ ン パ 球 数: 1μl中のリンパ球の数。リンパ球はTリンパ
球とBリンパ球に分類され、Tリンパ球は病原
体を認識し攻撃する役割を持ち、Bリンパ球は
抗体を作る役割を持つ。
リンパ球:免疫細胞の中のリンパ球を元気にして若返らせること。
幼 若 化 リンパ球幼若化能の値が高いほど、リンパ球の活性が高
まったと考えられ、免疫能が増強したと考えられる。
P H A : リンパ球を刺激して、分裂を起こさせる試薬の1種。
主にTリンパ球を刺激する。
P W M : リンパ球を刺激して、分裂を起こさせる試薬の1種。
主にBリンパ球を刺激する。
Con-A:リンパ球を刺激して、分裂を起こさせる試薬の1種。
主にTリンパ球を刺激する。
42
投与群
リンパ球幼若化能の変化
(3)血液生化学的検査
血液生化学的検査結果の推移を図1−
3に示した。ASTはコントロール群で分
娩後に増加した。γ-GTPはコントロール
群で分娩後4週にやや上昇した。FFAは
両群とも分娩後に高値を示した。T-Choは
両群とも分娩後2日まで低下した。投与
群では分娩後2週から回復したがコント
ロール群では回復が遅かった。BHBはコ
ントロール群で分娩後高値を示した。Alb
はコントロール群で分娩後4週に低値を
示した。Caは両群とも分娩2日後に低下
した。分娩2日以降、投与群はコントロ
ール群より高値で推移した。
6000
250
5000
BHB(μmol/L)
300
200
150
100
3000
2000
1000
0
0
50
4.6
4.4
40
30
20
4.2
4
3.8
3.6
3.4
10
3.2
0
3
1500
12
11
1000
Ca(mg/dl)
FFA(μEq/L)
4000
50
Alb(g/dl)
γ-GTP(IU/L)
AST(IU/L)
優良事例
500
0
10
9
8
7
-500
6
8W前
4W前
2W前
2D後
2W後
4W後
T-Cho(mg/dl)
250
200
150
W:週、D:日
コントロール群
100
50
8W前
4W前
2W前
2D後
2W後
投与群
図1-3 血液生化学的検査値の変動
4W後
A S T : 別名GOT。肝臓、心臓等に多く含まれる酵素で、肝機能の指標のひとつ。肝臓や心臓の障害によ
って血液中に出る。
γ-GTP : 肝臓に多く含まれる酵素で肝機能の指標のひとつ。ASTと同様、肝障害によって血液中に出る。
F F A : 遊離脂肪酸。食欲不振に伴って体脂肪から動員され、血液中に出る。
T - C h o : 総コレステロール。食餌または肝臓および体脂肪から動員され血液中に出る。重い肝障害で低下
する。
B H B : β-ヒドロキシ酪酸。ケトン体のひとつ。肝臓に入ってきた遊離脂肪酸のうち、肝臓で処理しきれ
ないものがケトン体になり、肝機能が低下すると増加する。
A l b : アルブミン。タンパク質の1種。肝臓で合成されるため、肝機能低下が長期に及ぶと低下する。
C a
: カルシウム。ほとんど変動しないが、分娩後乳汁に急激に移行し起立不能になることがある。
43
優良事例
4) 考察
されたが、投与群ではASTやγ-GTPの上昇が
抑制され、肝障害の進行が抑えられたものと
白血球数は、分娩時に好中球数の増加に
伴い増加することが知られている〔1〕。今
考えられた。また、コントロール群のAlbは、
回、両群とも分娩後2日に好中球数の増加
分娩後4週で減少傾向がみられ、分娩後肝機
により白血球数が増加し、EM発酵飼料の影
能の低下が続いていたと考えられた。T-Cho
響はみられなかった。
は分娩が近づくにつれて低下し、分娩後は増
コントロール群のリンパ球幼若化能は、
加することが知られているが〔1〕
、両群とも
PHA、PWMおよびCon-Aのいずれの刺激に
同様の結果が得られた。しかし、投与群は、
おいても分娩前4週から低値を示し、分娩
分娩後2週より回復し、採食量の増加または
後2週に回復する傾向がみられた。分娩前
肝臓で合成されるT-Cho量が増加しているこ
後の乳牛のリンパ球幼若化能は低下すること
とが考えられた。コントロール群のBHBは
が報告されており〔5〕
、今回同様の結果が得
分娩後高値を示し、著しいエネルギー不足と
られた。しかし、EM発酵飼料を投与した場
それによる肝機能低下が推察された。今回、
合、コントロール群のような低下がみられな
両群とも分娩後FFAの増加がみられたにもか
かった。PHAおよびCon-AはTリンパ細胞の
かわらず、コントロール群では分娩後肝機能
PWMはBリンパ細胞の幼若化の指標であり、
低下の傾向がみられたが、投与群では分娩後
EM発酵飼料投与はTリンパ細胞、Bリンパ細
の肝機能低下が起こらなかったので、EM発
胞とも活性を維持したと考えられる。よっ
酵飼料は分娩後の肝機能低下を軽減すること
て、EM発酵飼料は分娩前後におけるリンパ
が推察された。また、両群ともCaは分娩後
球幼若化能の低下、すなわち免疫能の低下
2日に低下したが、投与群のCaはコントロ
を防ぐ作用を有するものと考えられた。
ール群より高く、EM発酵飼料は分娩後のCa
低下を軽減する可能性が推察された。
近年ヒトの分野でプロバイオティクスおよ
び腸内細菌と免疫の関係が明らかになり、研
以上より、分娩前からEM発酵飼料を投与
究が進んでいる。乳酸菌をマウスやラットに
した結果、分娩前後におけるリンパ球幼若
投与した結果、免疫機能が増加した報告や、
化能の低下を抑え、分娩、泌乳による肝機
乳酸菌を使った発酵乳の保健効果などの報告
能の低下を軽減することが確認され、分娩
がされている〔4〕
。EM発酵飼料には、乳酸
前後における感染症および代謝病の予防に有
菌およびその発酵によって生成された成分が
効なことが確認された。今回、供試牛数が
含まれるため、EM発酵飼料のリンパ球賦活
少なかったことから統計処理が行なえなかっ
作用は、乳酸菌の場合と同様の機序で発現
たので、今後さらに供試牛数を増やし検討
した可能性が考えられた。
を加える必要がある。
牛は、エネルギーの摂取が不足すると体
参考文献
脂肪からFFAを動員してエネルギーを得るた
〔1〕荒瀬 淳,戸山幸恵,吾郷 亘,福島義信:乳牛の分娩
前後における血液および血液性化学的検査値について.
家畜診療,321,39−44(1990)
〔3〕比嘉照夫:新世紀EM環境革命,総合ユニコム.(2003)
〔4〕堀徹治,清島潤子,志田寛,保井久子:Lactobacillus
casei シロタ株の老齢マウスへの経口投与による細胞性
免疫増強作用およびインフルエンザ感染予防効果の検討.
腸内細菌学雑誌,16,17(2002)
〔5〕佐藤 繁:乳牛の分娩前後における免疫能の変化および
免疫賦活物質の影響.東北家畜臨床研誌,21(2)
,61−
70(1998)
め、分娩後の乳牛では泌乳によるエネルギ
ー不足が起こってFFAは増加し、肝機能が低
下しやすい。両群とも分娩後にFFAが高値を
示し、差が認められなかった。しかし、コン
トロール群のASTは分娩後に高値を示し、γGTPも分娩後4週にやや上昇し、コントロ
ール群では分娩後肝障害が生じたものと推察
44
優良事例
EM投与による血液性状と
乳質の変化
帯広畜産大学 名誉教授・獣医師
佐藤 邦忠
ポイント
最近、EMを導入する畜産農家が増加している。EMを使って病気が減った、元気になったなど報告
が届いている。
一方、一般消費者はO-157やBSEなどの不安から安全な畜産物を求める声をあげている。
EMを使用している農家で、万が一傷病が発生した場合、EMが原因と疑われかねない。
そこで、EMの安全性を確認するため、新生子・乾乳・泌乳期の牛にEM1原液とEMボカシを30日
間経口投与し、血液性状・乳質の変化・糞便の細菌種類と数・目視による健康状態の観察を行い、
EMを経口投与しても障害の発生しないことを確認した。
1. はじめに
ている臨床的に健康と判断した個体である。
①EM1投与区
日本の畜産環境は、家畜の能力の限界に
近い飼養管理法が求められており、例えば
肉牛(ホルスタイン種)の新生子期15
泌乳量についてみるとこの3 0 年程の間に
頭に、EM1原液(3ml/日)を飲水に
2,000kg/搾乳期間から、8,700kg/搾乳期間と
混ぜ30日間経口投与。
②EMボカシ大量投与区
世界に類を見ない急激な延びとなっている。
乳牛の泌乳期10頭に500g/日のEMボカ
しかし、このような急激な変化に牛の体の
シを飼料に混合して30日間経口投与。
機能が追い付かず新生子の死亡、育成期の消
③EMボカシ標準投与区
化器障害、あるいは分娩後の代謝障害や乳房
炎などの疾病発生率が高まり、畜産の衛生環
乾乳期5頭、泌乳期10頭の計15頭に60g/
境の改善が強く求められている。さらに、近年
日のEMボカシを飼料に混合して10日間
糞尿の処理や畜産廃棄物の処理の問題、農地
経口投与し、同様に30g/日を残りの20
への除草剤や殺虫・消毒剤散布による化学物質
日間経口投与。
の汚染、給与飼料の質と量、あるいは飼料添
※EM1は乳酸菌・酵母主体の有用微生
物群(液体):(株)EM研究所製造
加物などその量や質の問題が山積している。
今回の試験は、このEM1及びEMボカシ
※EMボカシは、EM1を1容、米糠を
を牛新生子期・乾乳期・泌乳期の牛に30日
100容、糖蜜を1容に水の10容を加え
間経口投与し、疾患予防効果について、特
て良く混和し、3週間加熱発酵させ
に血液検査と乳質の変化等を調べ、その効
pH4.5に調整したもの(粉体):「商
果を解析する。
品名 EMフィード」ときわ園製造
飼料登録済み
2. 試験方法
調査は、投与開始1週間前、投与期間中
期(15日目)
、投与終了1ヶ月後に各区のそ
試験は、以下の3つの区に分けて行った。
れぞれの個体から糞及び血液を採取した。糞
試験の供試動物は全て遠別地区で飼育され
45
優良事例
については細菌の種類と数を求め、血液に
ど、EMを活用し、悪臭やハエの発生が少な
ついてはタンパク質、アルブミン、A/G比、
くなるなど環境改善が進み、さらにEMを活
GOT、GTP、総コレステロール、Ca、P、
用してサイレージの硝酸態窒素含有量が低下
Mg、血糖、ヘマトクリットなどについて分
したと述べている。
酪農経営は、乳量と反比例するように厳
析した。
しくなり、飼料給与の改善が迫られている。
また、乳質について乳検の検査結果を用
さらに、食糧(肉、内臓、乳、乳製品など)
いた。
の細菌汚染や、化学物質の検出精度が高ま
3. 結果
り、加えてその障害の検査方法が開発され、
試験期間中、一般状態、食欲、ならびに
消費者から色々な面での指摘が出て大きな社
糞便性状(導入時に下痢、抗生物質投与を
会問題を引き起こしており、安全で化学物
合わせて3頭)に異常な変化が認められず、
質や細菌汚染が無い事を証明する事が強く求
さらに糞便中の細菌で伝染性病原微生物は
められている。
今回、糞中の細菌、EM投与による一般状
検出されなかった。
糞便の細菌学的検査では、E s c h r i c h i a
態の観察、ならびに血液検査の結果からEM
coli,Candida sp., Bacillus sp., Staphylococcus
による牛の健康障害、細菌感染、さらに化
sp., Pseudomonas sp., Fungi sp., Enterococcus
学物質によると思われる血液性状の変化は認
faecalis, Streptococcus sp., Enterococcus
められなかった。
EMの作用機序については、解明できなか
faecalis などが検出されたが、生菌数として
ったが、有用微生物群が牛の体の中で複数
は疾病発症を疑う程多くはなかった。
の抗体を産生し、細菌感染に対して抵抗し
血液性状、乳検の成績は表1および表2
ていること、あるいは消化器官内で細菌が
に示すごとくであった。
代謝・増殖する時に生産する物質が病原菌
4. 考察
の発育をどのように抑制していることなど、
EMの畜産利用について、有限会社コスモ
不明な点は多いが、今回の試験結果から感
スファーム(肉牛)や小堀(乳牛)がEMを
染症の発生原因、あるいは体調不良となる
経口投与や牛床へ散布することにより、疾
要因は認められなかった。このことから、
病発生率の低下、肉質の向上、乳質の改善
EMを投与した牛の肉及び乳汁には、細菌あ
ならびに糞尿による環境汚染予防効果の報告
るいは代謝産物による汚染はないと考える。
をしている(1998)が、今回の試験成績で
今後、EM1ならびにEMボカシは、環境
も血液検査及び乳検成績にEM投与による悪
汚染の予防、疾病発生率を減少、さらによ
感作的な変化は見られなかった。
り有効な自然環境の保全方法など広く応用
寺岡(2001)は、ビール粕をEM処理し、
可能であり、推奨できる資材である。
(参考文献)
飼料の一部として乳牛に経口投与することに
より新生期・育成期・乾乳期・泌乳期の疾
・EM活用事例集 ’
98(1998)
患発生率が低下し、牛が健康となるため乳
・EM活用事例集2001(2001)
質の改善・繁殖成績の向上など明らかな効果
を認めている。また、畜舎内の悪臭を抑え、
環境汚染防止効果もあげている。
小堀(1998)は、EMボカシを給与するな
46
優良事例
表1
EM投与前後の血液性状
項目
E
M
1
投
与
区
E
M
ボ
カ
シ
大
量
投
与
区
E
M
ボ
カ
シ
標
準
投
与
区
蛋白
アルブミン
A/G
GOT
LDH
コレステロール
尿素窒素
Ca
P
Mg
血糖
ヘマトクリット
蛋白
アルブミン
A/G
GOT
LDH
コレステロール
尿素窒素
Ca
P
Mg
血糖
ヘマトクリット
蛋白
アルブミン
A/G
GOT
LDH
コレステロール
尿素窒素
Ca
P
Mg
血糖
ヘマトクリット
投与開始1週間前
投与期間中期
投与終了1ヶ月後
平均値
標準偏差
平均値
標準偏差
平均値
標準偏差
5.21
2.91
1.35
48.07
127.13
84.80
12.41
9.90
8.53
2.49
127.13
30.21
7.09
3.35
0.93
68.50
19.13
158.00
9.95
9.35
6.41
2.61
73.88
2.23
6.73
3.38
1.05
81.53
18.87
151.33
15.32
9.53
7.11
2.31
77.47
29.77
0.69
0.21
0.34
11.56
141.50
33.31
3.35
0.74
1.05
0.20
23.34
6.20
0.63
0.23
0.18
17.61
4.91
57.21
2.31
0.56
0.72
0.21
6.40
29.73
0.52
0.22
0.26
13.98
5.45
60.08
3.26
0.71
1.33
0.19
8.27
2.42
5.29
3.32
1.77
46.80
54.67
85.47
16.56
12.11
8.46
2.03
83.07
30.93
7.27
3.83
1.12
84.67
17.33
119.00
8.73
9.73
6.87
2.20
68.67
32.10
7.13
3.69
1.12
83.53
20.47
153.40
12.81
10.09
7.05
2.13
74.67
31.21
0.44
0.18
0.42
13.88
46.64
23.59
14.83
7.96
0.79
0.18
8.20
5.14
0.38
0.21
0.09
11.50
12.66
52.05
2.37
0.06
0.15
0.20
4.16
3.39
0.67
0.22
0.23
16.15
6.49
72.07
4.11
0.53
0.69
0.32
8.42
2.29
5.30
3.52
2.17
48.20
27.33
89.67
14.97
10.61
8.57
1.94
92.87
28.70
7.16
3.75
1.11
68.50
19.88
175.13
10.08
9.74
6.64
2.36
68.50
32.09
6.93
3.73
1.27
80.13
19.20
142.67
10.13
9.88
6.57
8.06
70.84
31.23
0.39
0.12
1.04
14.60
13.77
23.88
2.16
0.40
0.58
0.38
7.14
3.16
0.44
0.19
0.11
13.85
6.40
59.54
2.96
0.55
0.61
0.18
2.88
2.31
0.68
0.17
0.27
17.89
5.41
73.22
2.40
0.60
1.61
22.12
14.11
2.44
※EM1投与区 :肉牛新生子期15頭の平均値
EMボカシ大量投与区:乳牛泌乳期10頭の平均値
EMボカシ標準投与区:乳牛泌乳期10頭と乾乳期5頭の平均値
表2
EM投与による乳検成績の変化
項目
E
M
ボ
カ
シ
大
量
投
与
区
E
M
ボ
カ
シ
標
準
投
与
区
日乳量
最高乳量
乳脂率
総蛋白率
無脂固形分率
濃厚飼料給与
体細胞数
体重
日乳量
最高乳量
乳脂率
総蛋白率
無脂固形分率
濃厚飼料給与
体細胞数
体重
投与開始1週間前
投与期間中期
投与終了1ヶ月後
平均値
標準偏差
平均値
標準偏差
平均値
25.1
42.1
4.0
3.3
8.9
11.0
43.8
674.6
23.0
36.2
4.6
3.6
8.9
6.4
20.4
635.8
6.67
2.67
0.53
0.48
0.49
2.21
48.69
71.35
9.10
6.10
0.81
0.62
0.47
1.96
16.13
73.81
28.1
36.4
4.1
3.5
9.1
11.2
21.4
673.4
22.7
35.4
4.9
3.6
9.1
6.9
30.2
635.8
6.00
9.89
0.55
0.40
0.47
2.05
7.40
70.99
7.03
6.80
0.46
0.59
0.65
1.59
29.57
73.81
26.3
36.4
4.1
3.6
9.2
12.1
42.6
669.1
28.1
40.4
4.4
2.9
8.3
8.4
32.2
630.3
※EMボカシ大量投与区:泌乳期10頭の平均値
EMボカシ標準投与区:泌乳期10頭の平均値
47
標準偏差
7.20
9.89
0.45
0.49
0.54
1.11
41.72
66.68
10.297
3.52
0.36
0.26
0.33
1.34
29.17
71.71
12
書籍・ビデオのご案内
「EMでいきいき家庭菜園」
¥1,800円+税 サンマーク出版
EM代理店、全国の書店にて販売
48
13
EM 関連商品のご案内
微生物土壌改良資材
EM1
EM1は、好気性と嫌気性の微生物
(主な微生物は乳酸菌群、酵母群、光
合成細菌群、発酵系の糸状菌群、グラ
ム陽性の放線菌群)を複合培養したも
のです。これら種々の微生物の働きが
土壌中で連動し合い相乗効果を発揮し
ます。
¥19,000+税/10L ¥2,000+税/1L ¥1,048+税/500ml
※EMとはEffective Microorganisms(有用微生物群)の頭文字を取った略語です。
EMXセラミックス
EMXの波動効果とセラミックの機能性をドッキング!
●家畜の飲料水への利用(Kタイプ、Sタイプ)
水中に含まれる不純物をとり、E-セラの波動効果により抗酸化力
のある水にします。
●餌への投入(Nパウダー)
内臓にたまりやすい悪性のガスを吸着することで匂いの軽減にも
なり、また排泄物は能力の高いコンポストとなります。
●匂い対策(Nパウダー)
セラミックのパウダーを排泄物表面に散布することにより匂いを
軽減します。
ネオモラセスト
(高品質・高濃度糖蜜)
EM1を活用して
EM発酵資材(EM
ボカシ)やEM活
性液をつくるとき
に使います。活性
化する場合に不可
欠な資材。
〔1ë¥900+税
/製造(名)松久〕
Kタイプ\1,000+税/500g
Sタイプ\1,000+税/1000ml
Nパウダー\1,000+税/500g
49
書籍、ビデオ、EM
などについては
(株)EM研究所へ
問い合わせ下さい。
14
EM1ご使用に際してのご注意・お問い合わせ先
注意事項
1.EM1は、人間の飲料用ではありません。
2.EM1は、化学合成物質を一切使用せず、厳重な衛生管理のもとで製造し、また、第
三者検査期間で安全性を確認していますので、人畜無害です。
3.EM1は、微生物資材であり、薬剤のような即効的な効果は期待できません。
4.EM1をはじめて使用する場合、環境条件により効果に差が見られることがあります
ので、使用方法の基本を守り、試作してから順次拡大して下さい。
5.本畜産マニュアルは、標準的な使用方法です。目安として下さい。
6.EM1は、十分な管理のもとに培養していますが、微生物の性質上使用後の結果に対
する損害の責任は本品代金の範囲内とさせて頂きます。
株式会社
EM 研究所 <EM製品に関するお問い合わせはこちらまで>
〒421-1223 静岡県静岡市葵区吉津 666
フリーダイヤル
TEL:054-277-0221 FAX:054-277-0099
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EM 研究所
検索
50
サンキュー や さ い
0120-309-831
EM1の安全性確認証明書
総括(マウスを用いた単回投与・急性毒性試験)
EM1の原液10ml/Kgを雄のマウスに経口投与し、1週間一般状態
の観察と体重測定を行った。また、投与1週間後に屠殺・解剖を行い、
各臓器の肉眼的観察を行った。
その結果、死亡、下痢、立毛、麻痺、痙攣、行動変化等の異常は認め
られなかった。体重測定結果は順調な増加傾向を示し、毒性による体重
減少は認められなかった。解剖の肉眼的観察所見では、各臓器に異常は
認められなかった。
これらの結果から、EM1の原液の10ml/Kgを雄のマウスに経口投
与した範囲では毒性は認められなかったと推測された。
総括(マウスを用いた連続経口投与毒性試験)
EM1の100倍希釈液を給水瓶に入れ、雄のマウスに3週間自由に飲
水摂取させた。試験期間中、一般状態の観察と飼料摂取量、飲水摂取量
ならびに1週間2回の体重測定を行った。また、投与3週間後に屠殺・
解剖を行い、各臓器の肉眼的観察を行った。
その結果、死亡、下痢、立毛、麻痺、痙攣、行動変化等の異常は認め
られなかった。食餌効率も対象群と比べ有意差は認められず、飲料水摂
取量も3週間の合計が約111ml/匹であり、試料原液に換算すると
1.1ml/匹であった。
体重測定結果は順調な増加傾向を示し、毒性による体重減少は認めら
れなかった。解剖の肉眼的観察所見では、各臓器に異常は認められなか
った。
これらの結果から、EM1の100倍希釈液を雄のマウスに3週間経口
投与した範囲では毒性は認められなかったと推測された。
EM1畜産マニュアル 酪農・肉牛編
2005年2月18日 第1刷発行
編集・発行所
(株)
EM研究所
〒421-1223 静岡市吉津666
印刷・製本
日興美術株式会社
C ( 株 )EM研究所 〈無断複製・転載を禁ず〉
¥ 4 0 0( 税 込 )
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