プロジェクトS自主制作映画「家族」シナリオ【PDF形式 254KB】

『家 族』
第七稿
プロジェクトS
『家
シナリオ応募作品
族 』
登場人物
父子家庭
A
B
父:河本一郎
亡き妻:
学校の事務職、30代後半
文子
C
長女:恵子
小2
D
二女:咲子
保育園年長組
母子家庭
E
F
G
亡き夫:北野国雄
母:
良子
長男:勇介
特別養護老人ホームの寮母(福祉介護士))、30代半ば
小4
夫婦(子供のいない夫婦)
H
宮沢弘(会社員)
I
洋子(会社員)
J
共働き
、30代後半
弘と同年。
小宮山幹夫(河本文子の大学の後輩・札幌在住)、30代後半
K
関 光男(70代の男性
元教師で良子の恩師。現在、福祉関係の役職に就いている)
L
河本の同僚
M
保母A
N
児童センターの所長
O
勇介の小学校の校長先生
P
読みきかせボランティア(70代の女性)
Q
良子の同級生A
1
R
良子の同級生B
S
良子の同級生C
設定
制作意図
母子家庭、父子家庭、子どものいない夫婦に焦点を当て、子どもとは?、夫婦の絆とは? 親
子の絆とは? 生き甲斐とは? を問いかけ、現代人の悩みと夫婦間、親子間の愛情の深さと
尊さを須坂を舞台に生き生きと描く。
あらすじ
河本(学校職員)は妻を交通事故で亡くし、二人の娘(恵子・小学2年生、咲子・保育園年長
組)を抱えて四苦八苦しながらも妻を亡くした寂しさを感じる余裕もなく、毎日を懸命に生
きている。二人の子どもも父親をサポートして家の手伝いをしてくれている。北野(特別養
護老人ホーム職員)は須坂で生まれ育ったが、学生時代を他県で過ごし、そのまま就職して
結婚。一児を『設けた』が、夫が病死してから須坂に戻って子どもと二人だけで生活して
いる。須坂市の母子寡婦福祉会の集まりで河本一家と知り合い、その後親交を深めていく。
河本の二女がマレットゴルフの打球を頭にうけて、怪我をしたのをきっかけに、宮沢一家
(子どもはできないと医師の宣告をうけている夫婦)とつきあいが始まり、北野親子も加わ
って3家族の親交は深まっていく。宮沢夫婦の提案で、人形劇を上演することになり、3つ
の家族は力を合わせて上演の準備に励む。ところが、その最中に北野の一人息子(勇介)が
実は、養護施設から引き取られた子どもであることが、勇介本人に知られてしまい、勇介
は家をとび出して交通事故にあってしまう。しばらくは車椅子生活を余儀なくされるが、
幸い命に別状はなく、このことによって北野親子の絆は却って深まる。また、北野と河本
との仲も親密になっていく。人形劇は児童センターで上演し、成功裏に終わる。打ち上げ
をしているその場に、河本の亡き妻の大学時代の後輩(小宮山)が現れ、故人への想いと自
己の心情を吐露する。家族とは? との思いが、居合わせた者達の胸に去来する。須坂市で
毎年行われている竜の里マラソンに3家族は参加し、勇介も車椅子で参加。皆に助けてもら
いながらゴール。河本一郎と北野良子は結婚し、新しい命が良子のお腹に宿ることになる。
2
1
一郎宅・台所(朝食の準備の光景)
一郎がパジャマ姿(トレーナー)のままで、まな
板に向かっている。袋に入ったキュウリの漬け物を包丁で破って取り出し、まな板の
上で『ぶつ切り』にして、皿に盛る。カメラは導入部から一郎の手元の動作をアップ
で追い続けて、その後、まな板に向かう一郎の姿を撮す。
台所でみそ汁とご飯をもりつける一郎。台所の棚にはスーパーの袋に買ってきたばか
りの野菜が入って置きっぱなしになっている。空の牛乳パックも流しの横に積み上げ
られており、きれいな台所ではない。
『チリン、チリン』
2
一郎宅の居間
南部鉄瓶の鉄の鈴を台所で鳴らす一郎。
居間でランドセルに教科書を詰めていた恵子と絵本を読んでいた咲子
は鈴の音のする方を振り向く。横には、まだ畳んでいない洗濯物の山がある。一郎宅
では、洗濯物の山から恵子と咲子が着る物を選ぶ「システム」になっているので、必
然的にいつも二人の子供はあまり変化のない服装をこのドラマではすることになる。
咲子「ごはんだ!」
恵子とともに台所へ行く。台所のご飯とみそ汁の入った器ののった
お盆を運ぶ恵子。冷蔵庫から牛乳を取り出す咲子。
3
朝食の光景
恵子と咲子「いただきまーす」 おかずは海苔と漬け物だけの簡素な朝食。(テーブルには
新聞が乱雑に積み上げられていて、学校のプリント、郵便物、こどものおもちゃやお
菓子が雑多に置いてあって面積の半分近くを占拠している)恵子は比較的落ち着いて
食事しているが、咲子は椅子の上に「正座」して、箸でみそ汁の入ったお椀を引き寄せ
たりしている。カメラは一郎、恵子、咲子とパンして、三人の食事風景を捉える。タ
イトル『家族』挿入。居間の窓際には無き妻の元気だった時に一家4人で撮したお花見
の時の写真(キャビネ版で普通の木枠のフレームに入っている)がさりげなく置いてあ
る
4
一郎宅の仏間
仏壇にご飯とお茶が供えてある。
線香はすでに消えている。亡き妻
の遺影に3人で手を合わせる。出かける前に再度、合掌するのが河本家の日課になって
いる。
5
一郎宅玄関
恵子「行ってきまーす」 台所で食器を洗っている一郎に向かって
一郎「行っといで」 台所から。
恵子
玄関を出ようとするが、すぐ戻ってきて
恵子「お父さん、紅白帽のゴムとれちゃったからお願い!」
ランドセルから紅白帽を出す。
一郎「なんだって?」 台所から聞き返すが、恵子は既に玄関を出てしまっている。玄関に
はゴムの片方がとれた紅白帽が置いてある。
6
保育園のホール
一郎タイムカードを押し、手近の保母(保母A)に
3
「お願いします」と言って、咲子の手を握る。
保母A「夕方までにやっておきます」
と言って、恵子の紅白帽をかかげる。
一郎「いつもすいません」 保母Aは恵子の保育園時代の担任だったので、河本一家とは
気心が知れており、なにかと面倒をみてくれている。
7
保育園のホールへの入り口
一郎「行って来るよ」と言ってホールの入り口に佇む咲子に手を振る。
8
車中の会話
一郎と同僚の二人が乗っている。
同僚「おまえ、再婚する気はないのか?」(ハンドルを握りながら、助手席の一郎に向かっ
て言う)
一郎「・・・・・」
同僚「黙ってたって嫁さんみつからんぞ。文子さん亡くなったのは交通事故じゃないか、
おめえが悪いわけじゃない。この間の見合いの話、たまたま聞いてしまったが、あ
らあ、いいそ思うぞ。子供のためにも次の生き方をそろそろ考えろ。」
一郎「・・・・」(少し下を向く)
9
保育園の庭(夕刻)
園児たちと保母が砂遊びをしている。『カアーッ』とカラスが
鳴いて空を横切る。
咲子が空を見上げると一番星がみつかる。
咲子「あっ、お母さんの星だ。」
園児たち「サキちゃんのお母さん死んじゃったの?」
口々に言い合い、咲子をとりまく。
保母A「咲子ちゃんのお母さんはお星さまになっちゃたのヨ」
園児たち「どの星、どの星」カメラは引いて、離れたところから見守る一郎の後ろ姿。
10
一郎宅の居間。夕食後の光景。空の缶ビールと食器がおいてある。恵子がお盆を持
って片づけ始める。咲子は椅子に静座したまま動かない。
一郎「サキ、今日はなにして遊んだ?」二本目の缶ビール片手に。
咲子「・・・・」 下を向いたまま答えない。
11
須坂市母子寡婦福祉会の総会
会場正面(湯っ蔵んどor須坂温泉)の正面玄関の「須坂
市母子寡婦福祉会」の看板。
12
須坂市母子寡婦福祉会大広間
向かって左側が役員席。黒板も側にあり、式次第が
書いてある。右側に来賓席。来賓は5名が座っているが、席のひとつは一人が演説中
のため空いている。中央の演台で来賓のスピーチがされている。
13
来賓 関(架空の役職)のスピーチ。「・・・星に願いをというのは、私の好きな言葉で
すが夜空を見上げれば道標(みちしるべ)となる星はきっと見つかると思います。
4
母子寡婦福祉会の皆様とご子息の方々は手を携えて21世紀の須坂を共に支え、
新しい道を切り開いていっていただきたいと思います。今後のご活躍とご健勝を、
そして更なるご協力をお願いして私の挨拶とかえさせていただきます。」 関 深
々と頭を下げる。
14
拍手をする参加者。カメラはパンして席に着いている河本親子の姿。
一郎は、うつむき加減で半分寝ている。恵子は持参した本(岩崎ちひろの絵本、市立
図書館のシールが貼ってある)を読んでいる。 咲子は、ポケットゲームで遊んでい
る。
15
会食の風景
同じ会場だが(場合によっては総会の会場と隣の部屋という設定でも
可)、机が並べ替えられていくつかの「島」になっている。
折り詰めを皆食べている。子供の前には小さい折りが出されている。
河本一家の前に北野親子(良子と勇介)が座っている。良子、キョロキョロして落ち
着かない素振り。
一郎「はじめてですか? この会は。」(おそるおそるといった感じで)
良子「はい、昨年までは関西にいたんです。」
一郎「そうですか・・・」
良子「あっ、これ、私が漬けたんですけど、よければ召し上がってください」
手提げから出したタッパーに入った漬け物(奈良漬け)を差し出す。
一郎「これ好きなんですよ」 良子に向かって嬉しそうに言って、箸を出して自分の折と、
恵子、咲子の折りに小分けする。一郎の折りは食べ尽くしてしまって空っぽ。コッ
プのビールをグーット飲んで、奈良漬けをムシャムシャ食べる。
16
会食がほぼ終わって、勇介、恵子、咲子はゲーム機(咲子が持参した)で一緒に遊んで
いる。画面の後ろには、関と談笑している良子の姿(口パクのみ)。
ゲーム機の画面のアップ。主人公がエイリアンに追っかけられているシーン。
勇介の顔のアップ
勇介「ばっかだな、そこでジャンプしないから、つかまっちゃったじゃないか!」
17
市立図書館
図書の検索用の画面のズーム。ズームアウトして、検索用のパソコンを慣れない手
つきで操作している親子(ドラマとは無関係)の姿を斜め後ろから捉える。カメラは
パンして土曜午後の『本の読みきかせ会』の看板。
一郎と咲子、紙芝居の上演に聞き入っている。タイトルは『おんがえし』
読みかせのボランティア「アリさんは、そこでハトを狙っている人間におもいっきり噛み
つきました。痛たっ。人間は大きな声を出してひっくり返りました・・・。
そこへ、恵子が良子の手を引っ張ってくる。勇介も一緒。
5
恵子「ねっ、いたでしょう」
良子と勇介にむかって言う。(一郎と良子は母子会以来の偶然の出会い。普通なら簡
単な挨拶をして分かれるところだが、子供たちは既に友達になってしまっているの
でそのまま臥竜公園の花見へ行くことになる。
18
臥竜公園を散策する二家族。
あたりは満開の桜。二家族とも図書館からそのまま来たので、服装は変わらない。
19
東屋の前の石に登って遊ぶ恵子、咲子、勇介。恵子と咲子は身軽に上っていくが、
勇介は大柄なのでなかなか上がれない。
咲子「だいじょうだよー」下にいる勇介に向かって。
カメラは引いて東屋で話す一郎と
良子。
一郎「そうですか、須坂のお生まれ。」
良子「はい、夫が亡くなってからどうしようかと思ったんですが、おもいきってこっちへ
戻ることにしたんです。」
一郎「先ほどのお話では、ご両親は亡くなっているんですね。」
良子「しばらくは迷いました。でも高校の時の恩師が仕事を世話してくださったんで
す。」
一郎「老人ホームにお勤めとか?」
良子「はい、結婚するまでは、むこうでも特養(特別養護老人ホーム)に勤めていたんです
よ。あの人ともあの職場で巡り会えて、福祉介護士の試験の合格通知を職場に持っ
ていったら心底喜んでくれて・・・。でも、あの頃から仕事は休みがちでした。」(伏
し目がちに話す)
良子「ごめんなさい、私、自分のことばかり話してしまって」
一郎「いいんです。僕の方は、いきなり病院から電話がかかってきて、すっ飛んでいった
ら家内はもう・・・。」
20
良子の顔のアップ。
池の鳥に餌をやる恵子、咲子、勇介
恵子「こっちにおいでー」
3人ともはしゃいでいる。
鳥に向かって言う。
勇介「あっちからも来たぞー」 鯉も群がってきて、水面には大きな波紋ができている。
21
パソコンの画面
『臥竜公園の桜は今年はどうでしたか?2年生になった恵子ちゃんには文具を、咲子ちゃん
には絵本をお送りしました。毎日が大変でしょうが頑張ってください
キタギツネ』
一郎「また、いつもの足長オジサンか?」
小首を傾げて独り言を呟く。
22
小包で送られたキタギツネからのプレゼントを手にとる恵子と咲子。
複雑な表情で見守る一郎。切手を貼って郵送された大型の封筒には、『キタギツネ』
6
としか書いてない。
23
五味池つつじ園 展望台
良子「私、須坂のことほとんど知らないんです。おかしいでしょ?
両親とも病弱でした
し。この五味池にも今日初めて来ました。」
一郎「北野さんも苦労されたんですね」
恵子、咲子、勇介「ねえ、あっちへ行っていい?」
一郎「いいけど、気をつけるんだよ」
三人とも、満開のつつじの方へ駆け出す。
良子「勇介は、まだ友達がいないんですが、恵子ちゃんたちといると生き生きしています」
一郎「勇介君、貫禄十分ですね」
良子「私とは正反対かな?」(ジョークを話すように軽く流したつもりだが、少し陰をたた
えた表情になる)
24
良子のアパート(土曜日の夕方)
勇介、お腹がすいて冷蔵庫を開けるがおやつは入
っていない。いつもの棚にもおやつは無い。居間の押入を探し、お菓子のブリキ缶
を開けると良子と夫の昔の写真が貼られたアルバムが出てくる。しげしげと手にと
って見入る勇介。
25
良子、玄関から入ってくる。写真をさっと押入に戻す勇介。
良子「ごめんね、PTAのソフトバレエの練習が長引いちゃって。おやつ無かったでしょ
う。奮発して今日はケーキを買ってきちゃった。」
勇介「ワーイ」
26
一郎宅の居間
洗濯物の山と新聞の山は相変わらずの状態。自家製ケーキを作りに
チャレンジする一郎。レンジから出したホカホカのケーキの生地に触って、
一郎「少し固かったかな?」 傍には手作りクッキングの本が開いた状態で置いてある。薄
力粉があたりに飛び散っている。
恵子「でも、おいしそうだよ」
生クリームをボールにあける一郎
一郎「えーと、生クリーム300ccに対して砂糖が・・・」 生クリームのパックの横の説明を読
みながら呟く。 ボールにあけた生クリームを一生懸命に泡立てる一郎。ボールの下
には、さらに大きなボールに氷水が入っていてクリームの入ったボールを冷やす形
だが・・・。クリームはボール一杯になっている。
咲子「お父さん、クリーム増えちゃったネ!」
とろけた生クリームがたくさんのったケーキを食べる一郎、恵子、咲子。
27
百々川緑地公園
マレットゴルフを始めようとする宮沢弘と洋子。洋子に弘がスイ
ングの仕方を教えている。近くには、恵子と咲子と勇介がクローバーの花を摘んで
首飾りを作ろうとしている。少し離れた川のほとりに一郎と良子の姿。
7
洋子「いくわよー」 と言ってスイング。ボールは、見当違いの方向に飛んで、コースをそ
れ、洋子に背中を向けてクローバーで首飾りを編んでいる咲子の方へ。
弘 「危ない」 叫ぶが、ボールは、咲子のそばの小石に当たって、振り向いた咲子の頭を
かすめる。駆け寄る一郎と良子。
28
病院のロビー 河本、北野、宮沢一家が立っている。咲子は頭に包帯を巻いている。
洋子「本当にすみませんでした。」
一郎「・・・・。先生は心配ないと言っていましたが・・・」
かすれるような声で。
洋子「咲子ちゃん。ごめんね。これからは、気をつけるから。おばさんを許してネ」
29
弘
車の中
弘が運転。洋子は助手席。
「ひやっとしたよ。」
洋子「頭から血を流して倒れたときは、もう駄目かと思ったわ」
車内にぶら下がってい
るお守りのアップ。
弘「しっかりした子だね。消毒の時も涙を少し流しただけなんだから。」
洋子「いじらしくなってきちゃった。」
30
喫茶店(回想シーン)
洋子の目の大きなアップ。
店内の窓から外を撮すと子供たちが無邪気に遊んでいる光
景。カメラはパンする。コーヒーを前にして、弘と洋子。小さなテーブルで向き合
って座っている。洋子はうなだれたままで、テーブルのコーヒーは二人とも手をつ
けていない。机の上には病院の診察券をはさんだ洋子の手帳が置いてある。
弘
「思い悩んだってしょうがないよ。」
洋子「・・・・・」 うなだれたまま。
弘
「子供には縁がなかったんだ。」
洋子「私の方がいけなかったなんて・・・。」
弘
「二人だけの家族だっていいかもしれないよ。」
自分に言い聞かせるように。
洋子懸命に涙をこらえている。
31
一郎の家の居間
居間は来客があるのでかなり片づけられている。
咲子と恵子は
洋子に買ってきてもらった二体のリカちゃん人形で遊んでいる。咲子は頭に包帯を
巻いている。(事故から約3日経過の設定、平日の夕方)。テーブルも片づいていてリ
カちゃん人形の箱と包み紙が置いてある。
洋子「咲子ちゃんごめんね。ゴルフはやらないことにしたの」 恵子の顔のアップをかぶせ
る。
咲子「ずっとゴルフやらないの?」
洋子「咲子ちゃんの頭の包帯がとれたら、いいかな?.」
咲子「やれば。気をつければいいじゃない。」リカちゃん人形をしっかりと抱いている。
恵子
リカちゃん人形を抱きながら頷く。
一郎「サキ、いつ包帯がとれるんだっけ?」 一郎 ジュースとお菓子を盆に乗せて持って
8
くる。
咲子「サキがいい子にしてたら、だって」
洋子「じゃ、大丈夫。咲子ちゃん、本当にいい子だもの」咲子の肩を優しくなでる。」
32
一郎宅の居間(31とは少し時間が経過している)
恵子と咲子は庭で遊んでいる。
庭は雑草が生えていて、あまり手を入れていない雰囲気を出す。居間の中から子供た
ちを見つめながら、
一郎「そうですか、宮沢さんは家内と同じ年の生まれなんだ。」
洋子「もう子供は諦めるているんですが、恵子ちゃんと咲子ちゃんを見てると、神様に子
宝をとお願いしたくなっちゃうんですよ」
一郎「あの子たちを可愛がってやってください」
33
臥竜公園での写生風景
うなずく洋子。
うさぎの親子を描く咲子
一郎「おねえちゃん、ペンギンさん描いているよ」
咲子「あのうさぎさん、お母さんがいる・・・」
34
保育園のロビー 夕刻
咲子
うさぎの親子のスケッチを園児たちに得意げに見せている
事務室では、保母Aが電話をしている。長時間保育の時間帯で保母の体制は手薄
になっている。ホールには保母の姿はない。
園児A「さきちゃん、絵うまいね」
園児B「あのうさちゃん、お母さんうさぎと話しているの?」
園児C「うさぎさんにはお母さんいるね」
園児D「さきちゃんちには、お母さんいないんだ」
園児E「うちは誰も死んでいないよ」
園児たち「さきちゃんののお母さん死んじゃったの?」
一郎、ホールへ
咲子のまわりに詰め寄る。
入ってくる。園児Dが、トコトコと一郎のところへ来て、
園児D「お母さんいなくて大変?」とニコニコして屈託なく訊く。
一郎「うるさい! お前たちのお母さんだっていつ死んじゃうかわからないんだぞ」 大声
でとなる。 園児たち、ワット散らばる。
35
そこへ、保母A事務室から出てくる。
保育園の事務室
保母A「お父さん、子供のことかだら!」(少し強い口調で)
一郎「こう毎日では咲子が可哀想です」
保母A「こらえてやってください。」
一郎:唇をかみしめて下を向く。
36
児童センター玄関
既に閉館時間が過ぎている。児童は恵子だけ。恵子がランドセ
ルを背負って玄関で所長先生と立ち話をしている。
一郎「スミマセン。遅くなって・・・」
恵子を引き取る一郎。咲子も一緒にいる。
9
37
車中
助手席の恵子に向かって
一郎「今日咲子のお友達に大きな声をだしちゃった。」 後席のチャイルドシートの咲子、
下を向いたまま、顔を上げない。
38
百々川緑地公園
沈む夕日を河原に座った一郎、恵子、咲子がじっと見ている(夕
陽をバックに後ろ姿を捉える。)一郎は真ん中に座り、恵子は左、咲子は右に座っ
ていて、一郎が両手を両脇の子供の肩においている。。
39
同日夜の一郎宅居間。
子供たちは既に寝ている。相変わらず洗濯物や、新聞、
チラシが散らばっている。一郎、缶ビールを手にしながら、居間の床に直に寝っ
転がっている。天井を向いて、しばし考え事。居間に置いてある家族の写真の妻
と視線が合う。
一郎「よしっ・・・」と言って、起きあがる。
40
パソコンに向かう一郎の後ろ姿
41
画面はコンピューターミュージックの入力画面のアップ
五線譜に音符が並んで
いる
42
40と同じ画面で一郎のコンピューターを操作する姿を後ろからとらえる。
郎マウスをクリックするとメインテーマの一部が流れる
一
気がつくと恵子が眠そ
うな顔で傍らに立っている。一郎、マウスをクリックして音楽を止める。恵子
一
郎を見つめて、不思議そうな表情。
一郎「この曲はお母さんと作ったんだよ」
43
特別養護老人ホームのお祭り(モデルは須坂荘のお祭り)
入所者同士が車椅子で廊
下にいて雑談。お祭りに来た人々がそのまわりをひっきりなしに歩いていく。模擬
店のコーナー。寮母の制服姿の良子がポップコーンを忙しく焼いている。恵子、咲
子、勇介は良子の近くにいる。一郎、良子をじーっと見ている。
良子「はいっ」と言って、カップに詰めたポップコーンを恵子と咲子に渡す。勇介にはワ
ンテンポ遅れて渡す。大事そうに持ち嬉しそうな表情の恵子、咲子、勇介の姿。
44
レストラン
43と同じ日の夕刻の設定。お祭りは終わり、夕食を共にすることに
する。人物の服装は良子以外は変わらない。良子は普段着に着替えている。夕食は
終わってほぼ空になった食器がいくつか、テーブルに残されている。お子さまラン
チに付いてきたおもちゃで3人のこどもが遊んでいる。一郎、恵子、咲子は同じシー
ト。良子、勇介は反対側のシートに座って二家族は向かい合って座っている。食後
のコーヒーやジュースを飲みながら、
一郎「大変な職場なんですね。ごくろうさまです。」 良子の顔をまじまじと見る。
良子「以前と同じ仕事なんですけど、こちらの方が、なんというか働き甲斐みたいなのが
10
あるんです。」 一郎
やや怪訝そうな表情。
良子「私が生まれ育った場所だからかな? とっても暖かいんです。」 良子の顔はやや赤
味がさしている。一郎、小さくだが何度も頷いて嬉しそうな表情。恵子と勇介は少
しビックリした顔でそれぞれの親を見ている。
咲子「おしっこ」 一郎、一瞬、二の句がつけなくて躊躇する。
良子「じゃ、おばさんが連れて行ってあげる」 と言って立ち上がる。
45
学校のシーン
教室の斜め後方からのショット。終わりの会の光景。
勇介の担任「はい、じゃ、今日の宿題は、自分の赤ちゃんの時の思い出話をお家の人にき
いて書いてくること」
勇介のちょっと困った顔を正面から捉える
「起立」の声で、皆立ち上がる。
46
良子のアパート居間
良子、編み物をしている。勇介、テレビを見ているが、ちら
と良子を見て、
勇介「僕はどんな赤ちゃんだったの?」
良子「まるまる太って可愛い子だったわ」
勇介「じゃ、写真見せてよ」
良子「・・・・」
勇介「僕が生まれたときの家族の写真は無いの?」
良子「勇ちゃんが生まれる前にお父さんは病気で亡くなったの。だから、家族の写真はな
いの!」
居間からプイット出ていく勇介。うつむき加減で勇介を見送る良子。小
さな仏壇を前にして亡き夫(国雄)の遺影を見つめる良子。
良子「国雄さん・・・」 小さな声で呟く。良子の顔のアップ
47
病室のシーン(回想シーン)
国雄
鼻に酸素のチューブがつながれている。包帯をまいた腕には点滴のチューブ。
良子、国雄の顔をのぞき込む。
国雄「・・・・・」(苦しい息であえぎながら、何かを言おうとしているが、言葉にならない)
国雄
ベッド横の引き出しを力なく指さす
引き出しを良子が開けると、
良子へと上段に大きく記された折りただんだ一枚の紙が出てくる。ミミズ
の這ったような字が大きく記されている。
文面は、『良子。ぼくがいなくなったあとのことは、すべてまかせます。さいこんする気
がほんとうにないのなら、あの子をぼくたちの子としてそだててほしい。なま
えは「勇介」(大きめの字で)。二人家族(さらに大きな字で)でぼくのぶんまで生
きてくれ。
国雄』 国雄のナレーションでゆっくりと読み上げる。
良子、国雄の手を握りしめて何度も頷き、涙が頬を伝う。
48
臥竜公園
小学校のマラソン大会
良子の表情のアップ。
応援に集まった父母の中に良子がいる。良子が
来るのを勇介が嫌がっていたので、彼女は目立たない所にいたつもりだったが、勇
介はめざとく見つけてしまう。勇介のクラスがスタート準備で移動し出す。
11
勇介「来なくていいって言ったろ!」
歩きながら、少し離れたところにいる良子に向か
って言う。
49
マラソン大会の模様
集団から、大きく離されて走る勇介。太っているので走りっ
ぷりはぎこちない。校長先生が足踏みするように伴走している。先にゴールしてい
たクラスメートが勇介が走ってくるのを見ると、さっと駆け寄って一緒に走り出す。
「勇介、勇介!」のかけ声とともに子供の集団が一緒にゴールイン。ゴールで待って
いた子どもと先生、親たちから拍手が起きる。
番号札を渡されて喜ぶ勇介(肩で大きく息をして、真っ赤な顔をしている)。じっと
見守る良子。
50
須坂祇園祭り
笠鉾の行列
弘が御神輿を担いでいる。 洋子、一郎、恵子、咲子、
良子、勇介が笠鉾とともに歩いている。咲子、くたびれた様子でややふてくされ気
味。
51
休憩地点で止まっている笠鉾の横で、洋子が咲子を抱きかかえて笠鉾を間近に見せ
ている。休憩していた氏子姿の担ぎ手Aが咲子にジュースを差し出す。ようやくニ
ッコリしてジュースを受け取る咲子。
担ぎ手A「この下、こぐれば風邪ひかねえですむぞ」
52
御神輿の下をくぐる勇介、恵子、咲子。思わず良子の肩を叩いて後に続く一郎と良
子。洋子も後に続く。
53
芝宮神社
鳩に餌をやる勇介、恵子、咲子。横には御神輿。少し離れたところに一
郎と良子と洋子。氏子姿の弘が近づいてきて片手を挙げて「ヨッ。」
54
百々川河川敷 須坂の花火大会会場
花火はまだあがっていない。
一郎、恵子、咲子、良子、勇介、弘、洋子がシートの上に座っている。恵子、咲子、
勇介は夜店で買った光る腕輪でキャッキャッと遊んでいる。咲子、勇介のTシャツ
のお腹に腕輪を入れて光る勇介のお腹をさして笑っている。シートの上には良子と
洋子のつくったつまみがパックに入って並べられている。
一郎 「不思議な話なんですけど、我が家にはキタギツネさんという人からのプレゼントが
舞い込むんですよ」(缶ビールを片手に)
一同怪訝な顔をして一郎を見る。
一郎「妻が亡くなってしばらくして花束とか、子供たちの着るもの、オモチャとかが送ら
れてくるんです。差出人はいつも『キタギツネ』となってるんです」
ここで、花火が打ち上げられて会話は中断。しばし、皆、花火にみとれる。
55
花火の切れ目に、ジュースを飲んでいる恵子、咲子、勇介を横目に
弘「子供がいるっていいことですね」
12
一郎「でも、いいことばかりじゃないですよ。」
良子「私は、どちらかというと、自然体で接しているつもりなんですけど・・・」
洋子「私たち、子育てに励む河本さんと北野さんを見ているとなにかやらなきゃ と真剣に
思い始めたところなんです。」
良子「具体的にはなに考えているの?」
弘「人形劇!」
洋子「学生時代に人形劇のサークルをやっていたんです。この人ともそこで知り合ったん
です」
良子「おもしろそうね」
弘「みなさんもやってみませんか?」
56
一郎宅の居間
一郎、洋子、弘、良子がテーブルに向かい合って座っている。居間
とテーブルの上は、比較的きれいになっている。
一郎「人形劇ってどうするんだい?」
洋子「サウンド・オブ・ミュージックで使われていたマリオネットはみんな知っているけ
れど、実際はいろいろあって指人形、棒人形、手遣い人形、それに影絵で表現する
場合もあるし・・・。今回は、スタッフも少ないから手遣い人形がいいと思うわ。」
弘「彼女、なかなかの遣い手でね。2体の人形で一幕を演じきったこともあって・・・。しば
らくはサークルの語りぐさになっていたんだ。」
洋子「そんな、昔の話は言わないで!」(顔を紅潮させて)
一郎「出し物はなにをやるの?」
洋子「親子の絆をテーマにしたいからデ・アミーチスの『母をたずねて』がいいと思うの。
私の卒論も人形劇をテーマにしたし、『母をたずねて』も、一つのケースとして研
究した覚えがあるから脚本もなんとか書けると思うわ。」
弘「卒論のタイトルは『人形劇における空間利用と人物移動に関する一考察だったけ?』
洋子 さえぎるように「もう、弘さんたら!」弘をにらみつけてから、
洋子「実はみんなで出来ないかと思って私なりにアレンジしたシナリオを書いているとこ
ろなの。サブタイトルは『星のみちびき』にしようと思うの」やや誇らしげに
良子「でも、どこで演じるの」
弘「親子でたくさんみてくれる所でやれないかな?」
隣の部屋の戸がガラリと開いて、
咲子が顔を出す。
咲子「おやつは?」 隣室には、恵子、勇介がトランプで遊んでいる姿がチラリと見える。
その横には、洗濯物が山となって置いてある。
57
人形の製作工程のカット。新聞を切ったり、紙粘土を使って人形を作る工程を挿
入。
58
一郎宅の居間
(前のカットとは日数が経っている) 布と毛糸で人形を作る洋子と
弘。良子も針を持って、一緒に人形作りをしている。
一郎「音楽はどうするの?」
13
良子「河本さん、ギターやってたんですって?
ちゃーんと恵子ちゃんから聞いているわ
よ。」
一郎「参ったな」(頭をかくが、まんざらでもない表情)
59
良子の部屋
人形劇の舞台の背景(背景の一部)を一生懸命つくっている良子。
良子「勇介、毛糸を出して」
勇介、しばらく押入をゴソゴソしているが、開けた紙箱に
は小さめの木の箱が入っていて、それを開けるとミニアルバムに貼られたたくさんの写
真と封筒の束が入っている。別の段ボール箱を開けると毛糸(古い毛糸がいくつかあるが
赤が目立つようにレイアウトしておく)が出てくる。
60
一郎宅の居間
人形劇の舞台が半分出来ている。担当は、手遣い人形が洋子と弘、
良子 舞台背景と大道具、小道具は全員、一郎は音楽と効果音。
一郎と洋子
「母をたずねて」のポスター(A2程度の大きさ)を作っている。恵子と
咲子は手書きのチラシ(A4サイズ)をつくっている。勇介は庭で金槌をふるって大道
具を作っている。金槌の音を挿入。
61
児童センター事務室。玄関から事務室をガラス戸越しに撮影。ポスターを手に持っ
た一郎と洋子が所長先生に何度も頭を下げてお願いしている。恵子と咲子もチラシを
持って横に立っている(口バクのシーンのみ)。児童センターでの人形劇の上演は既に
内諾を得ているが、この日は『座長』の洋子が正式にお願いに来ているという設定。
62
パソコンの画面
「・・・というわけで、『母をたずねて』を皆で上演しようということになりました。
場所は恵子がお世話になっている児童センターのホールです。
皆、張り切って練習しています。
キタギツネ様」
最後の「キタギツネ様」を入力する画面を撮す。ウィンドウの下の画面には、添付
ファイルのロゴ。カーソルが移動して添付ファイルをダブルクリック。恵子と咲子
の作ったチラシが画面いっぱいにひろがる(チラシをスキャナーで読み込んで画像
ファイルにしてある)。カットは変わって画面横にいる恵子と咲子の表情を捉える。
二人ともケラケラと笑う。チラシの画面にはキタギツネさんもきてね!と加筆して
あり、恵子と咲子のプリクラの写真も隅に貼ってある。
63
勇介の10歳の誕生日 良子の部屋。壁には、『勇介の10歳の顔』と書かれた少し大き
めの似顔絵が飾ってある。作者は恵子と咲子。狭い部屋の卓袱台にはささやかな
料理が並んでいる。鳥の唐揚げ、サンドイッチ、サラダ、いなり寿司、巨峰etc.
休日の設定で、夕方の比較的早い時間に宴がもたれている。良子、一郎、洋子、
弘、恵子、咲子、勇介がいる。
64
食卓の料理は既に片づけられ、ケーキを食べるシーン。バースディーケーキには火
14
が灯されていて、カーテンが閉められ、部屋の明かりが消される。
「ハッピーバースディー
勇ちゃん・・・」バースディーソングが終わって、皆、勇介の方を
見るが、勇介、ロウソクをじっとみつめたまま。 火の灯ったロウソクのアップ
良子に「勇ちゃん」とせがまされて、ハッとして勇介、ロウソクを一息で吹き消す。
一同「おめでとう」と言ってクラッカーを鳴らす。テープが飛んで勇介の顔にかかる。
65
良子の部屋。 誕生会は終わり、大人達は紅茶を飲んでいる。洋子は隣の部屋で勇介
と脚本の読み合わせをしている(勇介は劇中のマニローの声を担当するため)。隣室
との境の戸は閉められている。勇介のぎこちなく読むマニローのセリフが聞こえて
くる。
隣室からの声
勇介「俺はかっぱらいはやらないぞ」
洋子「それじゃ、力み過ぎよ、いつも話すときのような感じでで」隣室での会話なのでセ
リフの声は小さい
恵子と咲子は『母をたずねて』の絵本を二人で読んでいる。本には須坂図書館の青いシー
ル。
一郎「あとは、駅のベンチを作らないといけないな」
弘「やっぱり、駅員さんも登場させた方がいいよね。人形作らなきゃ!」
良子「いろいろと出てきますね」ヤヤ、うんざりした表情で。
隣室からの声
皆なんとなく会話が途切れて聞いてしまう。
洋子「もっと気持ちを込めて」
勇介「きっとお母さんに会えるぞ」
洋子「もう一回」
勇介「お母さんに会えるぞ・・・」 最後は尻すぼみになる。
洋子「勇ちゃん、どうしたの?」
勇介「お母さんに会えないよ!」 大きな声で。押入を慌ただしく開けて中を乱暴に引っか
き回す音。
一郎、良子、弘、顔を見合わせる。恵子と咲子は不安そうな表情。
勇介、隣の部屋から荒々しく戸を開けて現れる
勇介「・・・・」 一枚の紙を持って立ちつくし、良子を睨む。後方には、洋子の怪訝な表情。
良子「勇ちゃん?」 キョトンとした表情で。
勇介
良子を睨み、無言で 手に持っている紙を見せる。国雄が病室で最後に良子に渡した
メモ書きのアップ。さらにズームして『良子へ』の文字のアップ。良子、ハットす
る。
勇介「僕は・・・、誰?・・・。 お母さんだって、本当のお母さんじゃないんだろー!」呆然と
して声も出ない良子の表情のアップ。
外へ裸足で駆け出す勇介。
良子「勇ちゃん」 ハッとして玄関に向かう。
15
一郎「勇介君!」
良子「ゆう!」
良子を追っかける形で出ていく。
玄関の外からの声。
後に続く洋子と弘。
恵子と咲子の目線からのシ
ョット
車のブレーキ音
66
恵子と咲子の表情のアップ。それにかぶせて救急車のサイレン音。
担架に乗せられ、救急車に運び込まれる勇介。そばで一郎の左手首をじっと握りし
めて立っている良子。ハットして手を離し、一郎をチラリと見て、救急車に乗り込
む良子。
一郎「良子さん!」 走り去る救急車。弘と洋子は少し離れたところで恵子と咲子と一緒に
救急車を見送っている。
67
病院の待合室
医師からの説明を聞く良子
医師「さいわい、右足の骨折と顔面の打撲だけですみました。命に別状はありませんよ。
当分は松葉杖と車椅子を使うことになりますが。」 うなだれて説明を聞く良子
や離れたところから心配そうに見つめる一郎、弘
や
別のところから良子を見守る関
の姿。
68
病院の二人部屋
めている勇介
隣のベッドは空いている。 顔に包帯をまいて、右足にギブスをは
良子、勇介の包帯だらけの頭に顔を寄せて話をしている。
勇介「入学式の前に、関先生んちへ挨拶に行ったろ。あの時お母さんと話しているの聞い
ちゃったんだ・・・。僕が、施設から引き取られたってこと。」(関宅の応接間で関と
良子が話しているシーンを挿入。勇介は、隣室でテレビを観ているが、隙間の開い
た障子から隣室の二人の話を伺っている)
良子「勇ちゃん。・・・もっと早く話せばよかったかもしれないけど、お父さんは病気の体で、
随分あちこちととんで歩いて・・・ (少し絶句して涙をぬぐう)、ある所で生まれたばか
りの赤ちゃんを見てこの子だと決めたの(施設の職員に抱きかかえられて泣きじゃく
っている赤ん坊の姿を挿入)。それが勇ちゃんだったの。勇ちゃんを引き取って育てて
ほしいって、それがお父さんの最後のお願いだったの・・・。だから、勇ちゃんは私とお
父さんの子なのよ」涙を流す良子。
勇介
「引っ越してから関先生の所で晩御飯をご馳走になったよね。あの時、先生は、言
ったんだ。毎日夜空を見上げてご覧。僕を導いてくれる星がきっと見つかるから
って。今日、車にはねられる前にお母さんの叫ぶ姿を見て思ったんだ。僕のお星
様はやっぱり『お母さん』だって。」
良子と勇介、両手をしっかりと握り続け涙を流し続ける。 音楽挿入(シーン68最後までの音楽)
場面は変わって病室の窓から満点の星空を眺めるショット。
69
深夜の病院のガラントしたホール 良子と一郎がソファアに並んで座っている。
良子「サキちゃん達は?」
一郎「宮沢さん達が面倒を見てくれています。今日は、本当に大変でしたね」
良子「もっと大きくなってから・・・」(絶句して下を向いたまま)
16
一郎「でも・・・、却って親子の絆を深められたのでは?」 ゆっくりと一語一語かみしめるよ
うに話す。
良子 一郎の肩にすがるようにして泣き崩れる。
音楽終了
70
同日 一郎宅 恵子と咲子は洋子と弘宅で寝ているので今日は一郎が一人でいる。
一郎、洗濯物の散らばった居間に寝っ転がって天井を向いて考え事をしている。
子供が傍にいないので気持ちが内側を向く。良子がシーン66で握った左手首を右
手でなでる。
一郎「良子さん・・・」 天井を向いたままつぶやくように。
71
人形劇当日
てある。
児童センター 『母を訪ねて 星のみちびき』の手製のポスターが貼っ
玄関には沢山の靴。ホールは親子連れで賑わっているが、大人の姿も多
い。
音楽挿入
客席の後方からロングで人形劇の舞台をとらえる(客は約50名)。だんだんズ
ームしていく。カットは変わって、人形劇の舞台をやや横から捉える。舞台側から客
席を撮る。客席にいる小宮山と関の姿。咲子の保育園のクラスメートの姿。保母Aも
一緒。黒子姿で懸命に人形を操る弘と洋子。勇介、舞台の後方で車椅子に乗って脚本
を一生懸命めくっている。恵子と良子は、次の舞台セットを準備している。
音楽終了
72
人形劇
①駅の待合室。二人の姉妹が乗る列車が分からずにウロウロして、どすんと男の子(鍋を持
ったマニロー)とぶつかってしまう。マニローの人形操作は弘。声は勇介。
マニロー「気をつけろ!」と言って舞台の外へ駈けていく。
姉「ごめんなさい」
遠ざかるマニローに向かって。
妹「あの子、きたないかっこしているネ」
姉「わたしたちだって、きれいなかっこじゃないわヨ」姉と妹の人形は洋子が一人で演じ
る。声も洋子が一人二役を演じる。ステージ後ろの勇介に発声のタイミングを良子が出
している。
妹 声を出して笑う。二人が腰掛けるベンチを黒子が出す。二人の姉妹ちょこんと座る。
(座る動作の表現が難しければ、ベンチは無しで立ったままの演出でもよい)
妹「お姉ちゃん、お腹空いたね」
マニローが通路をやってくる。手には鍋。小脇にはパンを抱えている。二人に気がついて
やってくる。
マニロー「おまえ達、列車に乗るのか?」ビックリしたように。
姉は無視してそっぽをむくが、妹は答える「私たち、お母さんに会いに行くの」と汽車の
切符をみせる。
マニロー「こんなに遠いところまで行くのか!」動作を大袈裟にして、いかにもビックリ
17
した感じで。
舞台横からのカット。恵子と咲子が舞台の後ろにいて次の背景を用意している。舞台
前の横でシナリオと舞台を見ながらMDデッキを操作する一郎。勇介は、車椅子に座っ
て緊張した面もちで脚本に目を通している。
汽車がホームに到着してくる効果音。音楽がかぶさり、カメラは再度、舞台の待合室
の風景を正面から撮す。マニロー、二人の姉妹と一緒にベンチに座っている。
マニロー「俺は、この近くに住んでるんだ。おっかあは病気でさ。俺がホームで靴磨きや、
荷物運びをしたり、列車にもぐりこんで飯をわけてもらったりしてなんとかやっ
ているんだ。」
姉「おかあさん、具合悪いんですか?」
マニロー「ずっと寝たきりだ。でも、俺のことはいつも心配してくれてるんだ。泥棒だけ
はするなと言っているけど・・。客も分かってくれる人がいて、時々金を恵んで
くれるんだ。列車の客って気前がいいんだぞ。」
妹「やっぱり、お母さんいるんだ!」やや不服げに。
マニロー「でも俺なんか、兄弟いないもん。お前らはひとりぼっちじゃないんだぞ、俺に
言わせりゃ『ふたりちぼっちだ』」姉妹に向かって言い聞かせるように。
制服姿の駅員が近づいてくる。人形操作は、弘がマニローと駅員を同時に演じる。駅員
の声は弘。
駅員「こらっ。また、切符なしで列車に乗ったな!」マニローに向かって
マニロー「俺はかっぱらいはやらないぞ」
駅員「わかっている。だが、どうして、さっきは線路の上を走って逃げたんだ?」
マニロー、困ったなというゼスチャー。
駅員、マニローの手をつかもうとする。マニロー、抱えていたパンを姉妹に与える。
マニロー「『ふたりちぼっち』、元気でな。寂しくなったら星を見ろ!同じ(おんなじ)星
をお母さんもみているぞ。きっと星に願いは届くぞ。」そのまま、駅舎の外(舞台の袖へ)
へ小走りに走って逃げて行き、舞台から消える。駅員もマニローを追いかける形で同じ
方向へ走って消える。
姉妹、マニローの遠ざかった方を見る。
マニロー「『ふたりぼっち』、頑張れよ」舞台の外から。
姉妹「ありがとう」
マニロー「『ふたりぼっちー』」
遠ざかりながら、叫ぶようなセリフ。いずれもマニロ
ーの声のみで姿はみせない。舞台は姉妹がマニローを見送っている姿。
ホールの客席の光景。シートを敷いた上に皆座っている。熱心に観る関と小宮山の顔。
②場面転換して姉妹と母の再会の場面。母がベッドに寝ている。母の人形操作と声は良子。
姉妹がベッドの傍に寄り添っている。良子と洋子の人形操作を斜め前から撮る。
母「おお、神様、夢ではないんだね。」傍らの姉妹を抱きしめる。
母「おまえ達のおかげで、私は手術をうける決心をしたよ」
姉妹「お母さん」
母の手を二人で握り締める。
咲子の保育園の同級生と保母Aの泣いている顔を順次クローズアップ。
18
73
エンディングのテーマとともに、姉妹、母、マニローの人形登場し、拍手喝采。
74
ホールは明るくなり、拍手をうける河本、北野、宮沢一家。
75
人形劇の舞台を片づけている良子の所へ、良子の同級生A,B,Cが近づく。Cはよちよ
ち歩きの子供同伴。
同級生A「こっちへ戻ってきたなら、ちゃんと教えてよ」良子の肩を後ろから軽く叩いて
良子「来てくれてたの?」
顔がパット明るくなる。
同級生B「関先生がみんなに声をかけてくれたの」
同級生達のいる方を振り向く。
同級生C「感動しちゃった。」
同級生A「これから同窓会やらない? て話になったんだけど、良子はどう?
良子「今日はちょっと・・・」
関が近づく。はっと気がつく良子。 同級生達、良子の傍を離れる。
良子「先生・・・」
関「よかったよ。本当によかった。思いがストレートに伝わってきましたよ」
良子「ありがとうございます・・・」
関「勇介君のことはきいています。実はあの日、病院へ行ったんです」
良子 (チラリと勇介の方を見て)「いつもご心配いただいてありがとうございます。あの子
も随分よくなりました。」 少しビックリした表情で。
関「所長さんが話していたけれど、あなたの仕事ぶりは評判らしいね。困ったことがあれ
ば、いつでも相談に来てください」
一礼して立ち去りかけて、車椅子の勇介に 一言、
二言話しかけて去る。勇介ニコッと笑う(この時のセリフは口パクのみ)
76
一郎宅の居間。手巻き寿司のネタを広げたり、すし飯をつくっているシーン挿入。
河本、北野、宮沢の一家が勢揃いして、皆で手巻きずしパーティ。テーブルの上に
は、リンゴ、、ワイン、地酒、ビール、ジュースの瓶が並んでいる。
一郎「今日は、みんな、ご苦労様でした。乾杯。」
一同「乾杯。」 皆ビールやジュースのグラスに口をつけ、手巻きずしに手を出す。
そこへ、来客を告げるチャイム。一郎、玄関へ行く。なかなか、戻ってこない。
77
恵子、咲子、勇介(松葉杖を傍らに置いてある)、今日演じた人形で遊んでいる。
勇介「『ふたりぼっち』は寂しいかい?」姉妹の手遣い人形を取り出した恵子と咲子に向
かって(劇中のマニローの声色で)。
咲子「寂しくなんかないよ、おねえがいるもん」人形で演じながら
勇介「『ふたりぼっち』頑張れよ!」
恵子「私たち頑張るよ」咲子の人形に合わせて自分の人形も動かしながら言う。
78
そこへ、一郎戻ってくる。
19
一郎「サキ、恵子、キタギツネさんが来たよ。」 少し当惑した表情で。
小宮山が遠慮がちに入ってくる。
小宮山 皆に向かって「初めまして。小宮山と申します。文子さんのゼミの後輩なんです。」
手巻きずしのネタが並んでいる食卓を見て、
「すみません。お焼香だけさせてください。」
79
文子の遺影に、お菓子を供え、焼香して手を合わせる小宮山。恵子と咲子にも小さ
なプレゼントの紙の包みを渡して優しく頭をなでる。
恵子と咲子「ありがとう」と言って、包みを開ける。中には文具が入っている。
小宮山「これで失礼しますから。『母を訪ねて』とてもよかったですよ。」
一郎「札幌からおみえになったそうですね。ゆっくりしていってください。
小宮山 遠慮がちにテーブルの隅の席に腰掛ける。
「実は、今日こちらに来たのは文子さんとの約束を果たすためだったんです。」勧
められた湯飲みを手にして)
一郎 怪訝な顔をして小宮山を見やる。少し間をおいて
一郎「約束ってなんですか?」
小宮山「文子さんの理想です。」 一郎の険しい表情のアップ。
小宮山「私たちの提唱していた理想の『家族』の姿について、(セリフにかぶせて大学のゼ
ミのシーンを挿入。黒板には
家族、コニュニティー、大家族→小家族、構成員、
血縁とは? 等が書かれていて、その前で文子と若き小宮山が議論している。登場
人物は文子と小宮山:野球帽をかぶって若く見せる のみで、黒板の前のシーンを
口パクだけで演出する)夜があけるまで論じ続けたことがあります。そのうち二人
でこたつで寝ちゃったりもしました。」 やや明るい口調で。 一郎、下を向いて
いる。
小宮山「でも、あの時の約束で私も、文子さんも、それぞれが所帯を持ったなら、そして
子供が出来たら、お互いの子供を自分の家族の一員のように接してみたいねと話
し合ったんです。(一同小宮山の顔を見つめている) 十年たって再会出来たとして
も、子供同士は赤の他人なんていうのはつまらないというのが文子さんの持論だ
ったんです(再度、ゼミのシーンを挿入)
文子さんとは、卒業後も手紙でご指導
を仰いだり、メールで近況を報告しあったりしていたんです。二人目のお子さん
も生まれて本当によかったと思っていた矢先でした・・・。」
一郎「小宮山さん、お子さんは?」
小宮山 少しうつむいて
「10年ほど前に結婚しましたが、子供ができないまま妻は去っていきました。
今日、恵子ちゃんと咲子ちゃんにお会いできて本当によかったです。河本さんが
お父さん役をきちんとやっている姿を見て目頭が熱くなりました。」
一郎
「・・・・」小宮山を直視して、無言。
小宮山 鞄から、大型の封筒を大事そうに取り出す。
「これは、文子さんからゼミの引き継ぎの時にいただいたものです。」封筒か
ら色紙を取り出して、一郎に手渡す。『優しさ+厳しさ+許す心+α=家族』
20
と書かれてあり、沢山の肌の色の違った子供に取り囲まれている父親と母親の
姿(複数)が手書きで描かれている。
「文子さんのかかれたものです。お受け取り下さい」
一郎「よろしいんですか?」 両手で色紙を受け取る。色紙をジッと見つめて
「文子・・・」と小さく呟く。
小宮山「僕にとって大学時代の文子さんとのゼミは、終わっていないんですヨ。でも、
これは、河本さんがお持ちになるべき物です。よろしければ、私も河本さん達
の家族の一員になったつもりで、恵子ちゃんや咲きちゃんを見守らせてくださ
い。」
一郎 頷く。
80
玄関に小宮山を見送る一郎
一郎「今日はこれからどうされるのですか?」
小宮山「駅の傍のホテルに宿をとってあります。明日は、めいっぱい、この街を歩いてみ
るつもりです。お墓参りもさせて下さい。」
一郎「ご案内しましょうか? 須坂の街は迷路みたいですから。」
小宮山 首を振って 「一人で須坂を歩いてみたいんです。お寺の場所も分かると思います。」
一郎「それでは、気をつけて」
恵子、咲子「また、来てね」会釈して去っていく小宮山。
一郎、しばし、うつむいて思案しているが・・・。
81
一郎宅の玄関前のシーンをややロングで撮る。音楽スタート。以後は口パクのシー
ンになる。
小宮山玄関から出てきて、歩み去る(玄関は既に閉まっている)。一郎、玄関から出てきて、
小宮山を追いかける。振り返った小宮山としばし会話。一郎、会釈して玄関に入っていく。
小宮山、その姿を見送っている。
82
お寺のシーン。一郎と小宮山、文子のお墓参りをしている。やや上から見下ろす形
のショット。
以上、セリフはなく、音声は挿入した音楽のみ。
83
竜の里マラソン。 マラソン大会の大きな看板。県民須坂運動広場のメイン会場。ス
タート前でやや緊張したり、リラックスしている大勢の参加者の姿。10kmと15km
のマラソンがスタート。参加者の集団がカメラの前を威勢良く疾走していく。勇介
の校長先生もマラソンに参加。カメラの前を横切って行く。
84
ウォーキング・コースで参加している咲子、一郎、勇介、関。一郎と関、勇介の車椅
子を押している。途中のブドウ畑(既に収穫済み)の光景も挿入する。階段では他の
参加者も手を貸して勇介の車椅子を支えてくれている。外のコースを歩き終えて県
21
民須坂運動広場に勇介の車椅子を押して入場すると、既に走り終えた(歩き終えた)
恵子、洋子が駆け寄り、「頑張れ、頑張れ、勇ちゃん」と言いながら、ゆっくり『伴
走』しだす。すると勇介のクラスメート一同が駆け寄り「勇介、勇介」と走りにあ
わせてかけ声を出しながら伴走。校長先生も一緒。クラスの皆と観客の拍手につつ
まれて、最後は一人で車椅子を動かしてゴールする勇介。自然と拍手が湧き起こる。
ゴールで拍手する良子に向かって
勇介「来なくていいって言っただろ!」照れくさげに) 良子は勇介の強い拒否の姿勢を受
けて伴走はせずに、咲子と一緒にゴールで待っていることにする(咲子は幼児なので
マラソン大会には参加できない)。
良子「来年はちゃんと走るのよ!」『完歩証』の証書を勇介に渡し、車椅子を押す。
85
夕陽が迫る臥竜公園
マラソン大会と同じ日に訪れているので、服装は前のカット
と変わらない。各自ゼッケンだけ外している。
恵子と咲子は勇介の車椅子を押して、鳩の群の中に分け入っていく。鳩が一斉に飛び立
つ。その光景を見ながら、
一郎「来年は、みんなで一緒に走れるかな?」
良子「・・・一緒にって、『家族』で、ですか?」 ゆっくりまばたきをしながら、一郎をじ
っと見つめる。
一郎
一瞬怪訝な顔になるが、目を見開いて、良子を見つめる。
一郎「そう。家族で一緒に走るんです!」頬を紅潮させて、頷きながら。 二人、歩み寄っ
て両手を握りあう。
カメラはひいて沈む夕陽をバックに、向き合う二人を捉える。二人の長い影も可能なら撮
影する。
エンディングのメイン・テーマ スタート。
86
米子の滝の荘厳な光景のアップ。 お宮に祈願する一郎、恵子、咲子、良子、勇介の
姿。弘と洋子も少し後ろから手を合わせている。
メインテーマを続けながら、
87
パソコンのメールソフトの画面に文面が表示される
一郎のナレーションで読み上
げる
「キタギツネ様。この度、私は良子さんと結婚することにしました。これからも私たち一
家をあたたかく見守っていってください。」画面上をカーソルが動いていって、Window
下のファイルのロゴをクリックすると画面には一郎の礼服姿、良子の花嫁衣装姿、勇介、
恵子、咲子が寄り添っている姿が展開される。
音楽を続けながら
22
88
峰の原のスキー場
『峰の原スキー場』と『スキーこどもの日』の看板。ゲレンデ
には家族連れの姿が目立つ。緩斜面には、小さな雪の滑り台が設営され、子どもた
ちが、喜んでソリで滑り降りている。スキー場でスキーを楽しむ一郎、良子、恵子、
咲子、勇介、弘、洋子の姿。リフトへ向かう河本、宮沢一家に、丁度、間近のレス
トランから出てきた良子の同級生Aが片手を口にあてて声をかける。同級生A カメ
ラを構えて片手を大きく挙げてVサイン。恵子と咲子、ストックを片方ずつ挙げて
Vサインをつくる。一郎、良子、勇介、弘、洋子も立ち止まって2本のストックを片
手に持ち替え、空いている手を挙げる。
89
シャッター音で静止画となる。
咲子の卒園式の一コマ。卒園式終了後の保育園のホール。卒園証書を手にした咲
子を中央に、一郎、良子、恵子、勇介、来賓のリボンをつけた関が記念写真にお
さまる。バックには『卒園おめでとう』の飾り文字と紙で造った花のデコレーシ
ョンが飾ってある。
90
シャッター音で静止画。
咲子の入学式の日。式の始まる前の一コマ。小学校正面玄関前。『入学おめでと
う』の紙の文字が玄関のガラスに張ってある。一郎、良子、咲子が記念写真にお
さまる。
91
シャッター音で静止画。
メールソフトの画面
良子のナレーション
「キタギツネ様。新たな命が宿りま
した。今度のお正月は私たちの新しい家族を写真で紹介できると思います。優し
さ、厳しさ、許す心を持って新しい家庭を築いていきたいと思います」
再び、シャッター音。
臥竜公園の東屋付近での桜をバックにした、河本一家(一郎、良子、勇介、恵子、咲子
の姿)
エンディングのメイン・テーマをかぶせながら、スタッフのタイトル、協力団体リスト、
謝辞の挿入。
END
23