『摂食障害とは何か』

摂食障害を理解するためのパンフレット①
『摂食障害とは何か』
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摂食障害とは、どのような病気なのでしょうか?
摂食障害には、主には、2つのタイプがあります。
「拒食症(神経性無食欲症、神経性食思不振症)」
「過食症(神経性大食症、神経性過食症)」
もちろん、これらの定義を満たさない典型的でない摂食障害もあります。
拒食症(神経性無食欲症)とは、どのような病気なのでしょうか?
次の4つの条件が当てはまるものが、「拒食症(神経性無食欲症)」と言われます。
① 病的なやせ
② ボディイメージの歪み(ゆがみ)
③ 肥満恐怖・やせ願望
④ 生理がなくなる
では、それぞれ具体的にはどのようなことなのか、説明しましょう。
① 病的なやせ
病的なやせというのは、期待される体重の85%以下の体重になることを言います。
例えば、
身長170cmであれば、体重54kg以下
身長160cmであれば、体重46kg以下
身長150cmであれば、体重43kg以下
が、ひとつの目安です。ただ実際は、モデルさんらの体型を見ればわかるように、
これ以上にやせていても、健康な人はいます。
では、どのような人が拒食症なのでしょうか。
..
こうしたやせが、拒食症かどうかを診断するためには、②~④に示されるような
『心の問題があるかどうか』
『身体的に健康かどうか』
ということが、大事なポイントです。
これらに問題があると、拒食症という病気として診断されるわけです。
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-標準体重と病的なやせ-
標準体重というのは、簡易式の計算法で、以下のように算出します。
身長が160cm以上:(身長-100)×0.9
身長が150cm以上160cm 未満:50+(身長-150)×0.4
身長が150cm未満:身長-100
上記の病的なやせかどうかの目安は、この計算式で標準体重を算出し、その標準体重
の85%の体重があるかどうかをみてください。
② 肥満恐怖・やせ願望
これは理屈ではありません。
とにかくやせたい、体重が増えることが怖い。
100gでも増えれば、その後、永遠に増え続けて自分はブタみたいになると思い
込み、一方、2kgくらい減ってもまだまだと思ってしまう、そんな心です。
この肥満恐怖というものが怖いのは、例えば、体重が20kgくらいになり、これ
以上やせると死んでしまうというほどにやせても、体重が増えることへの恐怖感に
脅かされて、さらにやせようと試み、ときには本当に死んでしまうからです。
拒食症の人には、このような肥満恐怖・やせ願望という非常に怖い心があります。
③ ボディイメージの歪み(ゆがみ)
これは、肋骨が浮いて骸骨(がいこつ)のようにガリガリにやせていても、
「私は太
っている」「他の人の方がずっとやせている」と思いこんでしまうことです。
とても不思議で、とても怖いのですが、
やせればやせるほどに、ますます太っていると思い込み、
体重が回復すればするほどに、やせているかどうかが気にならなくなるのです。
これが病気の心なのです。
ボディイメージの歪みというのは、一言で言えば、まさに目が歪んでしまって、
“凸型の鏡に映る自分の姿”
を本当の自分だと思い込んでいるようなものです。
いくら他人の体型と比較したデータを示すなどして、やせ過ぎていることを証明し
ても、目が歪み、心までが歪み、
「自分は騙されているに違いない」などと思い込み、
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こちらの話を信じることが出来ないのです。
④ 生理がなくなる
健康的な体重を維持できず、①にあるような水準を遥かに下回って病的にやせると、
生理が止まってしまいます。
つまり、
“ホルモンの異常をきたし、からだに異常をきたすほどにやせる”
ということが異常であり、病気であることのひとつの証明となります。
拒食症の人は、
「だって、他の人だってダイエットしてるじゃない?」って言います。
けれど、普通の人はダイエットにトライしても、すぐに挫折したり、ダイエットを
していると言いながら、ケーキを頬張っていたりするものです。
例え、ある程度ダイエットに成功したとしても、やはりそれは健康な体重の範囲ま
でにとどめています。
それが生理が止まるレベルにまで体重が下がるのは、殆どの場合、やはり何らかの
心の問題が奥にあるからです。
それは、心の問題が身体に表れた拒食症という病気なのです。
過食症(神経性大食症)とは、どのような病気なのでしょうか?
次の3つの条件が当てはまるものが、「過食症(神経性大食症)」と言われます。
① 抑えられない過食衝動と過食
② 体重を増やさないためにとる不適切な問題行動。不適切な問題行動とは、以下のよ
うなものを指す。
・ 指を喉に突っ込むなどして吐く
・ 下剤を乱用する
・ 過食が止まっている時期は、絶食したり、極端に少ない量の食事しかとらなか
ったりする
・ 例えば、1日10000回縄跳びをする、腹筋などの筋トレに没頭する、何時
間も歩き続けるなど、過剰な運動に没頭する
③ 肥満恐怖とそれに伴って自分に課す体重制限
では、それぞれ具体的にはどのようなことなのか、説明しましょう。
① 抑えられない過食衝動と過食
過食とただの“むちゃ食い”との違いは、抑えられない過食衝動にあります。
止めたくても止められず、ときには、涙を流しながら、過食する人もいます。
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このように、自分の意志でコントロールできないから、病気なのです。
② 体重を増やさないためにとる不適切な問題行動
過食をするだけでは、どんどん太っていきます。
実際、そうした過食症の人もいます。
しかし、その殆どは、拒食症の人と同様に、病的な心の問題である肥満恐怖や、や
せ願望があり、何とかやせよう、それも、病的なレベルまでやせようとします。
しかし、現実は過食を止められないわけです。
そこで、普通の人では行わないような不適切なありとあらゆる手段を使って、やせ
ようとするわけです。
こうした行動も、病的な心から生まれた行動であり、まさに病気であることを示す
ものです。
摂食障害は、治るのでしょうか?
「摂食障害が治るのか」という疑問には、
「十分に治りうる」とお答えしたいと思います。
なぜ、このような歯に衣を着せたような答え方をするのか。
それには、いくつかの理由があります。
1.摂食障害の治療に必要な条件
① 摂食障害を十分に知っていて、かつ、治療をあきらめない治療者と治療スタッフ
(看護師や心理士など)
② 安心できる治療環境
③ 本人、もしくは家族の治療をやり通す覚悟
ここでは詳細は省きますが、これらの条件が全て満たされ、時間を味方に出来れば、
殆どの摂食障害の方が、十分に治りうると思います。
もちろん、軽いレベルであれば、こうした条件が揃っていなくても治ります。
しかし、根の深い重いレベルの摂食障害には、こうした条件が必要になります。
但し、現実は①②の条件を兼ね備えた治療機関はそう多くはありません。
どのような病気であっても、どのような治療機関にかかるかによって、治療の明暗
を分け、人生を左右しますが、摂食障害はまさに人生を左右しかねない病気であり
ながら、このように適切な治療機関を見つけるのは、なかなか大変であるというの
が、実情ではないかと思われます。
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2.摂食障害治療の性質
摂食障害は、心とからだの病気です。
ですから、心とからだの両方を治さなくてはなりません。
例えば、拒食症でガリガリにやせてしまったからだは、強制的な入院で無理に食べ
させるか、栄養剤を飲んでもらうか、あるいは点滴などをすることで体重を増やし、
ある程度、回復を図ることが出来ます。
けれど、心の問題は、簡単ではありません。
拒食症という病気によって生まれた心の問題、例えば、ボディイメージの歪みとか、
肥満恐怖などは、大抵は、体重の回復に伴って消えていきます。
しかし、その摂食障害の発症のもとにある心の問題は、体重の回復だけでは治りま
せん。
摂食障害になるには、摂食障害になるだけのもともとの心の問題があります。
それは、その人のパーソナリティに基づくものですが、そのパーソナリティに基づ
く心の問題をみて、どのようにすれば、それを自らの課題として克服していくこと
が出来るのか。
この課題を克服したときに、本当に摂食障害は治って、その目は輝き、再び摂食障
害になる可能性はなくなっていくのです。
言い方を変えるなら、これまでの性格、あるいは思考や行動パターンを変えていく
必要があるのです。
それまで眠っていた本当の自分に目覚めてもらい、新たな自分に成長していっても
らう必要があるのです。
そのように考えると、治療は、マニュアルだけに則って、同じように治せるもので
はありません。
基本的な治療原則はありますが、一人ひとりの個性に合わせた治療が必要です。
そして、本人の心の成長を図るには、治療スタッフのあきらめずに創意工夫し続け
る姿勢、さらには洞察力などが求められ、成長のための時間が必要となります。
だから、治療には時間を味方につける必要があるのです。
摂食障害は、治さないといけないのでしょうか?
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この質問を読んで、「そんなこと当たり前でしょ」と言われるかもしれません。
しかし、実際に、摂食障害の人の言動に接し、その関わりの難しさを実感すると、
「もう
摂食障害のままでも仕方ないんじゃないか」と思ってしまうことが多々あります。
この質問に対しての回答は、一言で答えたいと思います。
摂食障害を治さないといけないのは、
『その治療に、その人の生命、その人の人生がかかっている』
からです。
『人として生きてほしい。幸せになってほしい』
だから、治療をするのです。
また別に述べますが、治療には、“医者”としてだけでなく、この“人(ひと)”として
という部分がとても重要になってきます。
では、具体的に『その治療に、その人の生命、その人の人生がかかっている』というこ
とについて、説明しましょう。
1.高い死亡率
摂食障害の死亡率については、これまでにいくつかの調査がなされていますが、概
ね7~8%です。
7~8%と言えば、15人に1人くらいで、かなり高い死亡率です。
死亡する理由としては、
・ やせによる衰弱死(多臓器不全を伴う)
これは、何となくイメージできると思います。
人間は、やはり活動するのに最低限度のエネルギーを補給しなければ死んでしまい
ます。
・ 低血糖発作
やせによって身体に予備エネルギーがない状態のときに、例えば、食事を抜いたり、
何日も絶食を続けたり、激しい運動をしたりすると、血糖値が下がり、脳にエネル
ギーが供給されなくなり、意識障害を来たし、ときに、死に至ります。
・ 低カリウム血症
胃液まで吐くような激しい嘔吐、あるいは下剤の乱用による下痢を繰り返すことに
よって、低カリウム血症をきたします。低カリウム血症をきたすと、四肢の麻痺や
不整脈を起こし、やはり死に至ることがあります。
嘔吐や下剤の乱用を繰り返している人は、定期的に血液検査を行い、体の状態を確
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認しておく必要があります。
・ 自殺
殆どの摂食障害の人が、
「自分なんて生きる価値がない」と思い込んでおり、強い見
捨てられ不安があります。
摂食障害になってまで、SOS を出しているのに、誰にもその本当の気持ちを理解して
もらえなければ、自殺に至ってしまうのかもしれません。
2.心身ともに将来に影響する
摂食障害を長く続けていると、まず体の面で将来に影響を及ぼします。
最もわかりやすいのは、骨や歯への影響です。
摂食障害の発症は、主に思春期から青年期にかけてですが、これは成長期にもあた
り、骨を作る時期に当たります。
この時期に、拒食症になると、
・ 食べないのですから、まずカルシウムの摂取不足が起こります
・ やせが進むと、女性ホルモンの分泌が止まり、その影響で、カルシウムをとっ
ても骨に吸収されなくなります。閉経後の女性の方が、骨粗しょう症となって、
骨折などしやすいのはこのためですが、これと同じ状態になります。
これらの理由から、まず背が伸びません。
また、カルシウムがその基礎となっている歯や骨がもろくなり、30 才くらいでも、
殆ど入れ歯をしないといけなくなってしまったり、ちょっとつまづいても骨折した
りするようになります。
他にも、脳が萎縮してしまったり、子宮や卵巣が萎縮してしまって、不妊症になっ
たりすることもあります。
一方、心の面への影響は、からだ以上に大きなものがあります。
摂食障害がある限り、頭の中にあるのは、食べることと体型や体重のことばかりで
す。
常に太ることへの不安や恐怖感に脅かされる毎日で、その人生に喜びも幸せもあり
ません。
また、摂食障害がある限り、その摂食障害に至ったもともとの心の問題も抱えたま
まです。
「自分なんて生きている価値もない」
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「誰も私のことなんてどうでもいいんだ。きっと見捨てられてしまうんだ」
「だから、いい子にしていないといけない」
「周りの人と比べると、自分なんて…」
こうした心の問題を抱えていると、社会の中でもうまく対人関係がとれず、ストレ
スを処理しきれず、社会適応が出来ません。
何とか偽りの自分の仮面をつけて頑張る人もいますが、その心は、ぼろぼろです。
仕事でもひとつの場所で頑張り続けることはかなり困難ですし、結婚しても相手に
合わせる余裕など本当はありませんから、多くの場合、すぐに結婚生活は破綻して
しまいます。
このように、摂食障害という病気は、その生命や人生そのものに影響を与えるので
す。
ですから、家族も医療者も、単に病気だけを見るのではなく、常にその人の人生と
いう視点から見て、幸せな人生を生きていってもらうために、全身全霊を賭けて、
その治療にあたる必要があるのです。
なぜ、摂食障害になったのか?
なぜ、摂食障害になってしまったのか。
この疑問は、本人だけでなく、家族も疑問に思われることです。
A.なぜ、拒食症になってしまったのか。
まずは、その原因について、考えてみましょう。
原因というものは、それが取り除かれれば、解決するものです。
....
ですから、拒食症の始まりに見られたダイエットは、原因ではなく、きっかけに過
ぎません。
ダイエットの他に、風邪を引いてあまり食べられなくなったことがきっかけになる
こともあります。
では、原因と考えられるものについて、述べていきましょう。
1.親の育て方について
これについては、必ずしも育て方の問題とは言えません。
もちろん、多くの場合、本人はまだ未成年であり、子供である場合が多いですから、
親の育て方が影響しているのは事実です。
しかし、そのことと拒食症の発症とは、必ずしも一致しません。
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どのようにみても、親の育て方には問題なかった。
でも、その子供は拒食症になった。
そうした例は、たくさんあります。
一方、いくらか影響もあっただろうなと思われることもあります。
特に、世代間連鎖といって、母親自身が自分の母親に育てられたときの歪みを、自
分の子供を育てるときに伝えてしまって、その歪みがさらに強化されてしまい、子
供の代になって病気になって発症しているのだろうと思われることもあります。
ただいずれにせよ、治療のためには、
親は、自分の育て方の問題を気にして、自分を責めない
ことが大切です。
治療には、親の育て方が原因だとする考え方がありますが、そうでない場合の方が
多いですし、病気を治したいのであるならば、そうした考え方はプラスにはなりま
せん。
親が自責的になると、子供もとても辛くなってしまって、なかなか病気から抜け出
せなくなってしまうからです。
病気を理解し、関わりを工夫していくことは必要ですが、親は自分を責めないこと
です。
自分を責める姿は、摂食障害である本人と同じ姿であり、親はそうではない明るい
姿を見せることが大切なことです。
2.社会やマスコミの影響について
この影響は、間接的なものですが、否定出来ません。
私たちは、治療の中で標準体重というものを持ち出しますが、現在の女性の平均体
重は、この標準体重を下回っています。
今の日本では、どこを見ても“ダイエット”という言葉がもてはやされています。
女性雑誌を見ると、モデルたちの体型は、拒食症の域に入るぎりぎりのラインであ
り、現代の多くの女性たちは、この体型を理想化します。
さらには、ブランドものの洋服を買いに行くと、そこには拒食症にならなければ着
られない服が売られ、標準体重くらいになると、自分に合ったサイズの服がないこ
ともあります。
まさに、社会が拒食症になることを勧めているような風潮があるといっても過言で
はないと思います。
このことに影響を受けて、心の問題がさほど深いものでなくても、拒食症になる人
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たちが出てきているように思われます。
摂食障害を予防するには、まずこの異常な“常識”を変えることから始めなくては
ならないでしょう。
3.性格の問題
性格、あるいは人格の未熟さは、殆どの場合、摂食障害の発症に影響しています。
もちろん、このような性格であれば、必ず摂食障害になるというものではありませ
ん。
しかし、発症する人にはよく似たパターンがあります。
いくつか例を挙げてみましょう。
・ 周りの目を気にする
・ 両親に面倒をかけない“いい子”
・ 勉強、音楽、美術、運動など、常にトップでいないと落ち着かない
・ 自分には何の価値もないと思っている
・ 普段から全くストレスを感じない
・ もやもやした気持ちやイライラした気持ちをうまく解消できない
・ 自分の気持ちを言葉に出せない
・
治療では、こうした性格の問題にも気付いてもらって、少しずつ修正をかけていく
必要があります。
B.なぜ、過食症になってしまったのか
過食症には、2つのパターンがあります。
ひとつはからだの問題からくる過食、ひとつは心の問題からくる過食、この両方が
重なっていることもありますが、このような2つのパターンがあります。
1.からだの問題からくる過食
これは拒食症の反動としての過食です。
わかりやすく述べるなら、拒食症になってガリガリにやせてしまうと、からだは栄
養不足の状態になります。
すると、脳の中にある空腹中枢、満腹中枢といった摂食中枢からは、
「栄養不足だか
ら、もっともっと食べなさい。栄養を早く補給しなさい」というサインが出ている
わけです。
しかし、一方で、脳の表面意識からは、やせによる病的な思考で支配されているた
め、
「もし少しでも食べたなら、ブクブク太るぞ。太ると、みんなから見捨てられる
ぞ」というような声が出ているわけです。
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そんなふうに本当はからだは食べることを求めているのに、そのサインが抑えられ
ているわけです。
それが多くの場合、菓子類や清涼飲料水などの間食をきっかけとして、摂食中枢か
らの食べたいというサインが、脳の表面意識からの食べるなと言う声に打ち勝ち、
突然に、過食が始まるのです。
この場合、長く食べることを我慢してきた反動で、意志の力による抑えは、全く利
かなくなります。
2.心の問題からくる過食
これは、簡単に言うと、イライラしたときのやけ食いです。
ただ誰もがやけ食いから過食症になるわけではありません。
過食症になる人は、やはり拒食症のところで述べたような性格の問題があって、
衝動性をコントロールする力が弱いのです。
ですから、こうしたやけ食いのような過食が始まると、一時期にとどまらず、いつ
終わるともしれず、繰り返されるようになるのです。
摂食障害の子どもに関わる家族の心構え
心構えのポイントは、
『摂食障害を理解し、心に余裕を持つ』
ことです。
もし、これができれば、暗闇の中に陥った子どもに光をもたらし、病気を治すことに大
きく役立つことが出来ます。
① 摂食障害を理解する
これは何よりも大事なことですが、非常に難しいことです。
書店に並ぶ本やインターネットでは、摂食障害についていろいろなことが述べられ
ていいますが、それは一致した見解ではありません。
一体、どのように理解するとよいのか。
どのように理解すると、治るのか。
その理解には、大きく分けて、次の3つの問題があることを知る必要があります。
・ 体の問題
・ 病気による心の問題
・ 性格に基づく心の問題
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また、実際に関わる場面では、
本人に「どのように言えばいいのか」というコミュニケーションの取り方
に悩みます。
実は、
「このコミュニケーションの取り方そのものは、治療の要(かなめ)
」
になります。
ですから、このコミュニケーションの取り方については、上の3つの問題の視点か
ら、この病気の性質を理解した上で、一つひとつの対処法を考え、学んでいかなく
てはなりません。
但し、なかなかわからないと思って、プレッシャーを感じないで下さい。
これは、医者や看護師などの治療スタッフであっても、優れた関わりのできる治療
者のやり方を見て、経験を積み重ねる必要があります。
これが出来るようになれば、それだけで非常に優れた治療者になれます。
ですから、少しずつ理解し、少しずつ対処できるようになることを目指してくださ
い。
そうしなければ、対処法をマスターする前に、燃え尽きてしまいます。
② 心にゆとりを持つ
摂食障害の子どもと関わるようになると、必死になればなるほどに、底なし沼に入
ったかのように、どうすればいいかわからなくなり、深みにはまって、苦しみが増
していきます。
そして、そのうちにもがき疲れ、その心は燃え尽きそうになります。
しかし、この治療では関わりこそが要であり、よい関わりをするためには、関わる
人たちがいつもエネルギーに満ち、心が光ある状態に保っている必要があります。
ですから、もし、関わっていることで疲れ、余裕がなくなってくれば、一時、関わ
るのを止めて、心のゆとりを取り戻してください。
そんなことはできない、とても本人を放っておけないと思うかもしれませんが、少
しくらい関わる時間を減らしても、治療には大きく影響しません。
それよりも、どうか心にゆとりを取り戻してください。
そのしんどさを誰かに話してもよいでしょうし、同じようにこの病気で悩む他の家
族と話をすることで心が和むこともあるでしょう。
ちょっと家から離れて旅行に行ってもかまいません。
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もし旅行に行って、少しでも忘れて気分転換し、明るい気分に慣れたら、それは子
どもにとっても、必ずプラスになります。
治療者であっても、疲れ切った状態で接すると、うまく対処できず、かえって関係
を悪化させることがあります。
この治療で大切なのは、
「関わる人たちが常に心にゆとりを持ち、エネルギーのある状態で接し、
子どもの心の闇(やみ)に光を灯す」
ことです。
疲れたときには、どうか自分が休むことを優先し、その上で、子どもと接すること
を考えてください。
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