教育価 究員研究報告書

高等学校
平
成12年
度
教 育研 究員研究報 告書
地 理 歴 史 ・公 民
東京都教育委 員会
平 成12年 度
教 育 研 究 員(地 理歴 史 ・公 民)名
氏
No.
名
学
簿
校
名
一
1
佐
藤
創 一 郎
都
立
戸
山
高
等
学
校
2
渡
辺
純
規
都
立
玉
川
高
等
学
校
3
山
田
美
保
都 立 大 泉 学 園 高 等 学 校
一
4
北
原
淳
弥
都
立
向
丘
高
等
学
校
5
関
口
英
之
都
立
城
北
高
等
学
校
6
今
川
恭
一
都
立
水
元
高
等
学
校
z
濱
田
准
一
都
立
深
8
杉
浦
理
花
都 立 深 川 商 業 高 等 学 校
9
尾
澤
聡
都 立 町 田 工 業 高 等 学 校
io
佐
向
顕
都 立 武 蔵 村 山 東 高 等 学 校
11
沼
田
大
作
都 立 青 梅 東 高 等 学 校
12
萩
尾
慎
亮
都
13
森
義
輝
都 立 久 留 米 高 等 学 校
14
小
林
正
人
都
15
西
尾
理
都 立 小 平 西 高 等 学 校
立
立
福
田
川
生
無
高
高
高
等
等
等
学
学
学
校
校
校
』
一
16
17
』
1
担
大
山
梅
原
康
敏
都 立 府 中 西 高 等 学 校
弘
都
立
南
野
高
等
学
校
一
当
東京都教育庁指導部 高等学校教育指導課
指導主事
高
橋
基
之
都 立 教 育 研 究 所 教 科 教 育 部
指導主事
横
田
浩
二
研 究 主 題 〈地 理 歴 史〉
主 体 的 に学 び行 動 で きる 資 質 や 態 度 を育成 す る指 導 の工 夫
研 究 主 題 〈公
民〉
現 代 社 会 の 諸 問 題 に対 し、主 体 的 に考 え 、 自 ら課 題 を把 握 し、 判 断 し、 解 決 して い く資 質 や 態 度
を育 成 す る 指 導 の 工 夫
次
目
地理 歴史
2
主 題 設 定 の 理 由 と研 究 経 過
Qσ
1
異 民 族 ・異 文 化 と の 共 存 を 考 え る た め の 視 点
3
旧 ユ ー ゴ ス ラ ヴ ィ ア の 解 体 と民 族 紛 争
2
バ ル カ ン半 島 にお け る民 族 対 立
3
国際 協 力 に見 る異 文 化 との 共 存
7﹁
II日
5
1
ii
幕 末 日本 をめ ぐる国 際 環 境
11
日本 に よ る植 民 地 支 配 下 の 朝 鮮
13
20世 紀 初 頭 の 国 際 関 係 と十 五 年 戦 争 の 始 ま り
15
サ ン フ ラ ン シ ス コ平 和 条 約 の 成 立
17
-
本 の 国 際 関 係 の あ り方 を 考 え る た め の 視 点
り4 3
4
Q)
1
皿
ア ジ ア を め ぐ る 文 化 交 流 と交 易
Qり
1
i
中 国 仏 教 僧 の イ ン ド旅 行 と 東 ア ジ ア に お け る 仏 教 圏 の 形 成
方 見 聞 録)』 か ら探 る モ ン ゴ ル 帝 国 に お け る 東 西 交 流
3
「陶 磁 器 か ら 見 た 世 界 商 業 の 進 展 」
3
り4
『
世 界 の 記 述(東
1
り4
2
25
ま とめ
公
民
1主
II豊
皿
題 設 定 の 理 由 と研 究 の 経 過
26
か な 生 活 と 社 会 福 祉(第1分
科 会)
一 ラ イ フ プ ラ ン作 成 を 通 して 将 来 の 課 題 を 追 究 す る 「
現 代社 会 」 の授 業一
望 ま し い 政 治 の あ り方(第2分
科 会)
一 擬 似 体 験 を 通 じて の 将 来 の 社 会 シ ス テ ム を 考 え る 「政 治 ・経 済 」 の 授 業 一
28
<2》
民 主政 治 の大 切 さ を知 ろ う
く3》
民 主 政 治 の基 本 原 理 を知 ろ う
<4》
現 代 日 本 政 治 の 諸 課 題 を知 り、 望 ま しい 政 治 を作 る た め の 行 動 を 考 え よ う
0
4
望 ま しい政 治 とは何 なの か 考 え よ う
7
Qり
<1》
.........36
1
4
IV分
析 と考 察
… …44
48
一i一
研究主題
主体 的 に学 び行動 で きる資質 や態度 を育成 す る指導 の工夫
主 題 設 定 の 理 由 と研 究 経 過
第 三 の 産 業 革 命 を も た ら す と言 わ れ る 情 報 技 術(IT)革
命 。 パ ソ コ ンや 携 帯 電 話 等 、 生 徒 の
身 近 な 環 境 の 中 に も 、 そ の 流 れ は 着 実 に 浸 透 して き て い る 。ITに
よっ て情 報 は、 瞬 時 に世 界
を 駆 け め ぐ り、 社 会 を大 き く変 革 す る 。 こ の よ う な 激 変 す る21世 紀 の 情 報 社 会 を 生 き ぬ き 、 平
和 的 ・民 主 的 な 国 際 社 会 を 建 設 して ゆ く た め に 、 必 ず や 一 人 ひ と りが 国 際 的 視 野 か ら の 判 断 を
求 め られ る こ とに な る で あ ろ う。
そ こ で 、 本 部 会 で は 、 こ う し た21世 紀 に 続 くで あ ろ う 時 代 変 化 の 認 識 に 基 づ き 、 生 徒 一 人 ひ
と りが 自 ら課 題 を 設 定 し 、 考 察 ・判 断 ・行 動 で き る 資 質 や 態 度 を 育 む こ と を 目 的 と して 、 以 下
の3つ
1異
の 視 点 か ら 、 こ の 研 究 に 取 り組 ん だ 。
民 族 ・異 文 化 と の 共 存 を考 え る た め の 視 点
冷 戦 終 結 は 民 族 の 対 立 や 融 和 と経 済 の グ ロ ー バ ル 化 を 招 い た 。 国 際 化 と は こ の 文 脈 の 中 で 理
解 さ れ る べ きで あ り、 そ こ で 必 要 と な っ て く る の は 異 民 族 ・異 文 化 と の 共 存 の 能 力 で あ る 。 共
存 に 至 る 過 程 に は 認 知 、 衝 突 、 譲 歩 な ど様 々 な 相 が 見 ら れ る が 、 本 グ ル ー プ で は 、 異 民 族 ・異
文 化 との 接 触 か ら共 存 に 至 る 過 程 の 諸 相 に 対 し て 、 バ ル カ ン 半 島 に 於 け る 民 族 紛 争 と 国 際 協 力
とい う2つ の 問 題 を 取 り上 げ 、 生 徒 が こ の 共 存 能 力 と い う点 に 於 い て 、 主 体 的 に 学 び 行 動 で き
る 資 質 や 態 度 を 身 に 付 け 、 高 め ら れ る指 導 の 工 夫 を 試 み た 。
II日
本 の 国 際 関 係 の あ り方 を考 え る た め の 視 点
これ まで 、 わ が 国 の 国 際 関 係 は 、経 済大 国 と しての 優 位 性 に依 存 す る 部 分 が 大 きか っ た。 し
か し、 こ れ か ら は 、 激 変 す る世 界 情 勢 の 中 で 多 様 な 視 点 に 基 づ い て 、 再 構 築 さ れ な け れ ば な ら
な い 。21世 紀 に 生 き る 日 本 人 と して 、 国 際 関 係 の あ り方 を 考 え る た め に ど の よ う な 視 点 が 大 切
な の か に つ い て 、 生 徒 一 人 ひ と りが 自 ら の 課 題 と して 学 習 す る こ と が 重 要 で あ る 。 本 グ ル ー プ
は そ う した 観 点 か ら 、 「幕 末 日本 の 国 際 環 境 」、 「日 本 に よ る 植 民 地 支 配 下 の 朝 鮮 」、 「今 世 紀 初
頭 の 国 際 関 係 と15年 戦 争 」、 「サ ン フ ラ ン シ ス コ 平 和 条 約 の 成 立 」 を 題 材 と し て 選 び 、 生 徒 が 主
体 的 に 学 び 行 動 で き る 資 質 や 態 度 を 育 成 す る 指 導 の 工 夫 を試 み た 。
皿
ア ジ ア を め ぐ る 文 化 交 流 と交 易
国 際 化 や 世 界 の 一 体 化 が 進 み 、 人 的 物 的 交 流 ・接 触 の 機 会 は 限 りな く増 加 し て い る 。 そ れ に
伴 い 、 自 国 の 文 化 を 認 識 した 上 で 、 多 様 な 文 化 を理 解 ・尊 重 し 、 複 眼 的 な 視 点 か ら物 事 を 判 断
で き る 生 徒 を 育 成 す る こ とが 、 よ り一 層 求 め ら れ て くる 。 ま た 欧 米 だ け で な く、 ア ジ ア と の 国
際 交 流 の 比 重 は 、 今 後 ます ます 高 ま っ て 行 くで あ ろ う。 過 去 の 時 代 に も 、 ア ジ ア を め ぐ る 文 化
交 流 や 交 易 は 、 盛 ん に 行 わ れ て き た 。 ア ジ ア は 長 い 間 文 明 の 先 進 地 域 を 抱 え て お り、 そ こ か ら
派 生 す る 交 流 や 交 易 は 新 し い 豊 か な 文 化 を創 造 し 、 そ の 後 の 歴 史 に 多 大 な 影 響 を 与 え た 。 こ の
よ う な歴 史 を学 ぶ こ とは 、国 際 社 会 に生 きる 生徒 の資 質 を育 成 す るの に大 い に役立 つで あ ろ う。
そ こ で 本 グ ル ー プ で は 、 「東 ア ジ ア に お け る 仏 教 圏 の 形 成 」、 「 『世 界 の 記 述 』 か ら 見 た 東 西 交
流 」、 「陶 磁 器 」を 題 材 に ア ジ ア を め ぐ る 交 易 と 文 化 交 流 の 視 点 か ら授 業 展 開 の 工 夫 を 試 み た 。
一2一
1異
民 族 ・異 文 化 との共 存 を考 え る た めの視 点
1旧
ユ ー ゴ ス ラ ヴ ィアの 解 体 と民 族 紛 争
(1)教
材 と し て 取 り上 げ た 理 由
第 一 次 世 界大 戦 が 終結 す る まで世 界 地 図 に はユ ー ゴ ス ラ
ヴ ィ ア と い う 国 は な か っ た 。 ユ ー ゴ ス ラ ヴ ィア と い う 国 が つ く ら れ た 地 域 は 以 前 は オ ー ス
ト リ ア の 領 土 で あ り 、 オ ス マ ン帝 国 の 領 土 で あ っ た 。 第 一 次 世 界 大 戦 後 、 ス ラ ブ 系 の 民 族
で あ る セ ル ビ ア 人 、 ク ロ ア チ ア 人 、 ス ロ ベ ニ ア 人 、 モ ン テ ネ グ ロ 人 、 マ ケ ドニ ア 人 が 住 ん
で い る 地 域 に セ ル ビ ア 人 ・ク ロ ア チ ア 人 ・ ス ロ ベ ニ ア 人 王 国(1929年
王 国 に 改 称)が
に ユ ー ゴス ラ ヴ ィア
つ く られ た 。 住 民 の 多 くは キ リ ス ト教 徒 で あ っ た が 、 中 に は ス ラ ブ 人 で あ
り な が ら も 、 長 い オ ス マ ン 帝 国 支 配 の あ い だ に イ ス ラ ム 教 に 改 宗 した ス ラ ブ 人 も い た 。 ま
た 、 キ リ ス ト教 徒 で あ っ て も カ ト リ ッ ク も い れ ば ギ リ シ ア 正 教 徒(セ
ル ビ ア 正 教 徒)も
い
た 。 そ して 第 二 次 世 界 大 戦 終 了 後 、 連 邦 共 和 国 が 成 立 し た が 、 テ ィ トー 亡 き 後 は 、 以 前 か
ら の 民 族 対 立 や 経 済 の 地 域 格 差 に 対 す る 不 満 な ど か ら連 邦 は 解 体 し 、 各 地 で 民 族 紛 争 が み
ら れ る よ う に な っ た 。21世
紀 の 国 際 社 会 は 今 ま で 以 上 に 異 民 族 や 異 文 化 と の 接 触 ・交 流 が
多 く な り 、 異 民 族 や 異 文 化 と の 共 存 ・協 調 が 重 要 な 課 題 と な る で あ ろ う 。21世
紀 に生 き る
人 間 と して 、 民 族 の 違 い や 文 化 の 違 い に よ っ て 生 じ る 諸 問 題 を い か に 解 決 し 、 異 民 族 や 異
文 化 と の 共 存 に つ い て 、 生 徒 が 自 ら考 え 、 課 題 を 追 究 して い く こ と が で き る よ う 本 教 材 を
取 り上 げ た 。
(2)本
時 の ね らい
本 時 は5時
間 構 成 の 第4時
限 に あ た る 。 第1時
世 界 の お も な 人 種 と そ の 分 布 に つ い て 学 習 す る 。 第2時
も な 語 族 と そ の 分 布 に つ い て 学 習 す る 。 第3時
い て 学 習 す る 。 第4時
限 で は 、人 種 とは 何 か 、
限 で は、 民 族 と は何 か 、世 界 の お
限 で は 、 世 界 の お も な 宗 教 とそ の 分 布 に つ
限 で は 旧 ユ ー ゴ ス ラ ヴ ィ ア の 民 族 問 題 に つ い て 学 習 す る 。 第5時
限
で は キ プ ロ ス とス リラ ンカ の民 族 問 題 につ い て学 習 す る 。学 習 指 導 要 領 で の 関 連 分 野 は 地
理Bの
(3)展
「(3)現
代 世 界の 諸 課 題 の 地 理 的 考 察」 の
学
習
活
動
備
考
○ 旧ユ ー ゴス
○ 旧 ユ ー ゴ ス ラ ヴ ィ ア と新 ユ ー ゴ ス ラ ヴ ィ ア を 確 認 す る 。
○
ラ ヴ ィァ と新
○ 旧 ユ ー ゴ ス ラ ヴ ィ ア は6つ
パ にお け る
ユ ー ゴス ラヴ ィ
の 言 語 、3つ
ア
入
民 族 、 領 土 問題 の 地域 性」 であ る。
開例
学習項 目
導
「ク
の 宗 教 、2つ
の 共 和 国 、5つ
の 民 族 、4つ
の 文 字 が あ る民 族 構 成 が 複 雑 な
1つ の 国 家 で あ っ た こ と を 理 解 さ せ る 。
ヨ ー ロ ツ
旧ユ ー ゴス
ラ ヴ ィア の
○ 旧ユ ー ゴス
位 置 を地 図
ラ ヴ ィア の 複
帳 とプ リン
雑 な民族構 成
トの 地 図 で
確認
「
一3一
○ユ ー ゴス ラ
○ ヨ ー ロ ッ パ 人(ゲ
ヴ ィアの国 名
と南 ス ラ ブ 人 の 起 源 と移 動 に つ い て 理 解 させ る 。
の 由来
06つ
の 共 和 国 、5つ
○複 雑 な民族
2つ
構成
つ の 言 語 、3つ
展
ル マ ン 民 族 、 ラ テ ン 民 族 、 ス ラ ブ 民 族)
の 民 族 、4つ
の 文 字 を 理 解 さ せ る(6つ
の 宗 教 、2つ
の 言 語 、3つ
の 共 和 国 、5つ
の宗 教 、
の 民 族 、4
の 文字 の 関係 を ま とめ た プ リ
を プ リ ン ト
の地 図で 確
認
05つ
の 民 族 ご と に5つ
の共
和 国 の位 置
ン ト を 配 布 す る)。
○ お も な5つ
06つ
の共 和 国 が 構 成 さ れ て い る
が 、 ボ ス ニ ア ・ヘ ル ツ ェ ゴ ヴ ィ ナ 共 和 国 は 複 数 の 民 族 ・宗
の民
族 の分 布 を
地 図 で確 認
教 が 混 在 し て い る こ と を 理 解 させ る 。
○ 歴 史 的 な民 族対 立 や 、連 邦 内 で の 南 北 の経 済格 差 な どの
た め に民 族 紛 争 が 激 化 し 、 分 離 独 立 した こ と を理 解 さ せ る 。
開
○ 分 離 独 立 し た 新 しい 国 家 に お い て も 、 内 戦 が お こ っ た こ
と を 理 解 さ せ る(特
に ボ ス ニ ア の 内 戦 に つ い て)。
○ 新 ユ ー ゴ ス ラ ヴ ィ ア に お い て も コ ソ ヴ ォ 自治 州 の ア ル バ
ニ ア 人問 題 な ど、 まだ 民 族 問題 が 解 決 して い な い こ と を理
解 させ る 。
ま
と
め
○多民 族 国家
ONATOを
の課 題
い る こ と を理 解 させ る 。
中 心 と し て 、 平 和 ・共 存 へ の 努 力 が な さ れ て
○ 民 族 問 題 の 解 決 は 容 易 な こ とで は な い が 、 こ れ か ら の 国
際 社 会 に お い て は 重 要 な 課 題 で あ る こ と を理 解 さ せ る 。
(4)評
価の観点
① 世 界 の 諸 地 域 に は 深 刻 な 民 族 問 題 ・民 族 紛 争 が み ら れ る 地 域 も あ る こ
とを理 解 で きた か 。② 民 族 問題 の 解 決 は国 際社 会 に お い て重 要 な課 題 で あ る こ とが 理 解 で
き た か 。 ③ 異 民 族 ・異 文 化 を 理 解 し、 尊 重 す る こ と が 大 切 で あ る こ と を 認 識 で き た か 。
(5)指
導上 の留意点
① 世 界 の 国 々 の 中 に は 複 数 の 民 族 か ら な り、 複 数 の 言 語 が 使 わ れ て
い る 国 も 多 い こ と を 理 解 さ せ る 。 ② 世 界 の 多 くの 地 域 で 民 族 問 題 ・民 族 紛 争 が み ら れ る こ
と を理 解 さ せ る 。 ③ 多 民 族 国 家 で あ っ て も特 に 問 題 の み ら れ な い 国 家 も あ れ ば 、 多 く の 問
題 を 抱 え て い る 国 家 、 さ ま ざ ま な 努 力 を して い る 国 家 も 多 い こ と を理 解 さ せ る 。
一4一
2バ
ル カ ン半 島 に お け る 民族 対 立
(1)教
材 と し て 取 り上 げ た 理 由
米 ソ 冷 戦 構 造 が 崩 壊 した の ち 、 世 界 各 地 で 民 族 自 立 を 掲
げ た 多 く の 民 族 紛 争 が 勃 発 し て い る 。 中 で も最 も複 雑 で 過 酷 な 状 況 を も た ら して い る 紛 争
が 「バ ル カ ン の 民 族 紛 争 」 で あ る 。 バ ル カ ン 半 島 に お け る 民 族 対 立 は 、 半 島 の 地 理 的 特 殊
性 に よ り多 くの 民 族 が 半 島 内 に 流 入 した こ と 、 ビ ザ ン ツ 帝 国 、 オ ス マ ン帝 国 の 支 配 に 対 す
る 異 文 化 の 受 容 と反 発 、 ま た 、 ハ プ ス ブ ル ク 帝 国 に よ る 支 配 な ど複 雑 な 支 配 関 係 を 歴 史 的
観 点 か ら 追 求 し、 そ こ か ら派 生 した 民 族 主 義 が 現 在 の バ ル カ ン紛 争 の 要 因 と な っ て い る こ
と を 学 ぶ 。 こ の 問 題 を とお し、 民 族 の 違 い 、 文 化 の 違 い に よ る 摩 擦 が 戦 争 に ま で 発 展 す る
こ と 、 ま た 異 文 化 を 受 容 し、 国 際 協 調 、 共 存 の 考 え が 大 切 で あ る こ と を 理 解 さ せ る 。 現 代
社 会 で は 異 文 化 との 接 触 は避 け られ な い状 況 で あ る 。 その よ うな国 際 状 況 の 中 、異 文 化 と
の 接 触 で ど の よ う な 問 題 が 派 生 し、 そ れ を解 決 し と も に 真 の 国 際 社 会 を 築 い て い く た め に
は ど う す れ ば よ い の か を 考 え て い か な け れ ば な ら な い 。21世 紀 に 生 き る 生 徒 が 、 国 際 社 会
に 生 き る 人 と して 、 主 体 的 に 考 え 、 行 動 で き る よ う本 教 材 を 取 り上 げ た 。
(2)本
時 の ね らい
本 時 は4時
間 構 成 の 第3・4時
限 目 に あ た る 。 第1・2時
ロ シ ア の 南 下 政 策 と オ ス マ ン帝 国 の 領 土 を め ぐ る
限 目で は 、
「東 方 問 題 」 を 学 ぶ 。 本 時 で は 、 第 一 次
世 界 大 戦 前 の バ ル カ ン 戦 争 か ら 大 戦 後 の 国 境 線 画 定 ま で を サ ラ イ ェ ヴ ォ の 街=に 焦 点 を あ て 、
「ヨ ー ロ ッ パ の 火 薬 庫 」 か ら 第 一 次 世 界 大 戦 へ 、 そ の 後 の 国 家(ユ
ー ゴ ス ラ ヴ ィ ア)の
成
立 が 強 国 の 利 害 に よ っ て 決 定 さ れ た 歴 史 的 背 景 を理 解 させ る 。 さ ら に 、 第 二 次 世 界 大 戦 後
の テ ィ トー に よ る 多 民 族 国 家 の 経 営 、 冷 戦 構 造 崩 壊 後 の 民 族 対 立 の 噴 出 、 異 民 族 共 存 の 難
しさや ま た その 必 要 性 を理 解 させ る こ と を 目的 とす る 。最 後 に現 在 のユ ー ゴス ラ ヴ ィ ア 紛
争 の 概 略 を 解 説 し た う え で 、 イ ン タ ー ネ ッ ト ・新 聞 を 利 用 し 過 去 の 歴 史 で は な く 同 時 代 に
起 き て い る 問 題 で あ る こ と 、 そ の 解 決 の 難 し さ 、 必 要 性 を 認 識 させ て い く予 定 で あ る 。 学
習 指導要領での関連分野 は
国 際社 会」 及 び
「世 界 史B」
で あ る 。 ま た 、 「地 理B」
の
「世 界 史A」
の
の
「((5)地
「(3)現
「(3)現
代 の 世 界 と 日本 」 の
球世界の形成」の
「工
「オ
地域紛 争 と
国際対 立 と国際協 調」
代 社 会 の 諸 課題 の 地理 的 考 察 」 の
「ク
民 族領 土 問
題 の 地 域 性 」 と 関 連 して 学 ん で い く こ と も有 意 義 で あ る 。
(3)展
開 例(2時
間 続 き の 指 導 案 で あ る が 、1時
学習項 目
導
入
学
習
間 ご と の 授 業 も 可 能 で あ る 。)
活
動
○新ユ ー ゴス ラ
○ 新 ユ ー ゴ の大統 領選挙 の結 果や 外務 省の ホ ームペ ー
ヴ ィアの 概 要
ジ をみ て 身近 に感 じる。
○第一次 大戦 前
○ 白 地 図 に3C政
の列強の政策
また 地 図 か ら ロ シア の
策 の 拠 点 、3B政
備
考
パ ソ コ ン
策 の拠 点 を記 し、 白地 図
「南 下 政 策 」 の ね ら い を 知 り 、 プ リ ン ト
バ ル カ ン半 島 の 戦略 的重 要 性 を理 解 す る。
○民族主 義 、 領
○ オ ー ス トリア の ボ ス ニ ア併 合 、バ ル カ ン同 盟 の 結
土拡張政策
成 まで の 出 来事 を時 系 列 に理 解 す る。
一5一
「現 代 世 界 」
0バ
ル カ ン戦 争 に つ い て 学 び 、 特 に 第 二 次 バ ル カ ン
戦 争 は ス ラ ヴ民 族 同 士 の 戦 争 だ っ た 事 に 着 目 す る 。
○ サ ラ イェ ヴ ォ
○ サ ラ イ ェ ヴ ォ事 件 お よ び そ の 逸 話 を 紹 介 し僅 か な
事件
き っ か け と偶 然 か ら 、 セ ル ビ ア の 一 青 年 が 放 っ た 銃
プ リン ト
弾 が 世 界 大 戦 に 繋 が っ た こ と を 理 解 させ る 。
展
○ 第一 次 大 戦 後
○ ヴ ェ ル サ イユ 体 制 の も と ユ ー ゴ ス ラ ヴ ィ ア が 、 列
の新 国 家誕 生
国 の 利 害 の も と に 誕 生 した こ と を知 る 。
○ ナ チ ス
○ 第 二 次 世 界 大 戦 時 、 ナ チ ス ・ ド イ ツ の 政 策 に よ り、
・ ド イ
ツに よる民族 分
民 族 分 断が 図 られ ク ロア チ ア 人 の極 右 組 織
断政策
シ ャ」 に よ る セ ル ビ ア 人 虐 殺 が あ り民 族 対 立 が 激 化
「ウ ス タ
した こ とを知 る。
○ テ ィ トー の 民
0テ
ィ トー 大 統 領 に よ る 「自 主 管 理 社 会 主 義 」 の 概
族共存 政策
略 を 説 明 し、 危 う い バ ラ ン ス の 上 に も民 族 共 存 の 道
が 開 か れつ つ あ った こ とを 理 解 す る。
○連邦 崩壊
○ 現 在 の バ ル カ ン 諸 国 の 地 図 を用 い 、 経 済 不 振 や 米
白地図
ソ 冷 戦 構 造 の 終 結 後 連 邦 が 崩 壊 した 事 を 理 解 す る 。
開
○民族紛争
092年
ボ ス ニ ア紛 争 の資 料 写真 をホ ー ムペ ー ジ か ら
パ ソ コ ン
ダ ウ ン ロ ー ド し 、 サ ラ イ ェ ヴ ォ と い う街 の 悲 劇 お よ
び 戦 争 と平 和 に つ い て 考 察 させ る 。 ま た 、 ユ ー ゴ ス
ラ ヴ ィ ア 関 係 の ホ ー ム ペ ー ジ を見 て 、 民 族 紛 争 の 解
決 が 容 易 で な い こ と 、 逆 に 政 治 ・国 連 の レ ベ ル で 共
存 の 道 を 探 っ て い る こ と な ど を知 る 。
一
ま
と
○ 「戦 争 と平 和 」 ○
「民 族 紛 争 」
め
「サ ラ イ ェ ヴ ォ 」 「民 族 主 義 」 「民 族 共 存 」 の テ ー
マ で 戦 争 と平 和 に つ い て 自 分 な りの 考 え を ま と め て
み る 。
(4)評
価の観点
評 価 は単 に歴 史 的 知識 の習 得 の み に観 点 をお か ず 、 過 去 の 出来 事 か ら現
在 に 学 ぶ こ と は 何 で あ る か 考 察 す る こ と が 大 切 で あ る 。 パ ソ コ ンや 新 聞 ・資 料 を 多 く使 う
こ と に よ り 、 生 徒 自 身 が 考 え 多 様 な 価 値 観 を持 つ プ ロ セ ス を 大 切 に した い 。 ま た 、 最 後 に
レポ ー トを 課 す こ と に よ り 自 ら の 考 え を ま と め る 力 を 養 う こ と も大 切 で あ る 。 ① 大 戦 前 の
列 強 の 政 策 が 理 解 で き た か 。 ② 民 族 主 義 が 戦 争 に 繋 が る こ と も あ り得 る こ と を 理 解 で き た
か 。 ③ 異 民 族 ・異 文 化 を 理 解 し尊 重 す る 態 度 が 大 切 で あ る こ と を 認 識 で き た か 。
(5)指
導上の留意点
① ホ ー ム ペ ー ジ は あ らか じめ ア ド レス を提 示 し、 見 に 行 く ま で に 時
間 が か か ら な い よ う に す る 。 ② 生 徒 が 視 覚 的 に 理 解 で き る よ う に 地 図 ・資 料 は わ か りや す
い も の を 用 意 す る 。 ③ 生 徒 が 自 ら考 え る こ と が 出 来 る よ う 、 考 察 す る 時 間 や 発 問 に 考 慮 す
る 。 ④ 関 連 す る 他 の 科 目 、 特 に 地 理 との 連 携 に 配 慮 し、 「地 理B」
課 題 の 地 理 的 考 察 」 の 「ク
の 「〔3)現 代 社 会 の 諸
民 族 領 土 問 題 の 地 域性 」 との 関 連 に配 慮 す る 。
一6一
3国
際協 力 に 見 る異 文 化 との共 存
(1)教
材 と し て 取 り上 げ た 理 由
現 在 に 至 る まで 様 々 な 援 助 主 体 に よ り国 際 協 力 が 行 な わ
れ て き た が 、 そ の 過 程 で 多 くの 問 題 点 が 浮 上 し、 そ の 幾 つ か は 解 決 さ れ 、 ま た 残 り の 幾 つ
か は 課 題 と し て 残 っ た 。 問 題 発 生 の 根 源 的 要 因 の 一 つ と して 、 「非 西 欧 的 な も の は 遅 れ た
も の 、 開 発 ・改 善 さ れ な け れ ば な ら な い もの 」 とす る 考 え 方 が 、 こ れ ま で の 国 際 協 力 の 主
体 者 側 に あ っ た こ とが あ げ ら れ る 。 先 進 国 の 技 術 や 生 産 様 式 、 ま た そ の 背 景 と な る 考 え 方
が そ の ま ま で は発 展 途 上 国 に適 合 せ ず 、 問題 を解 決 す る どこ ろか む しろ拡 大 す る場 合 す ら
少 な く な か っ た 。 今 や 、 そ う し た 考 え 方 を 払 拭 し、 多 様 性 を 認 め 、 尊 重 す る こ と が 求 め ら
れ 始 め て い る 。 援 助 が 定 着 し 、 援 助 対 象 の 自立 を 促 す た め の 条 件 は 、 援 助 を さ れ る 側 の 主
体 性 を 引 き 出 す よ う な 「援 助 さ れ る 者 の 立 場 に 立 っ て 考 え ら れ た も の 」 で あ る と い う こ と
で あ り 、 そ れ は 地 域 性 の 理 解 の 上 に の み 成 り立 つ 異 文 化 の 尊 重 と理 解 に 他 な ら な い の で あ
る 。 そ して 、 こ の 非 西 欧 的 な る も の の 中 に 、 我 々 先 進 国 が 模 索 して い る 「
持 続 可能 な進 歩 ・
発 展 ・成 長 」 の 方 策 の ヒ ン トが 隠 さ れ て い る 可 能 性 が あ る 点 で も 、 こ の こ と は 大 き な 意 味
を持 つ 。
(2)本
時 の ね らい
1∼3時
こ こ に 示 す の は9時
間 構 成 の 第4∼5時
限 と 第8∼9時
限である。 第
限 で は 、 途 上 国 の 抱 え る 諸 問 題 と そ の 構 造 、 国 際 協 力 の 主 体 と し て 国 際 機 関 、O
DA、NGOそ
れ ぞ れ に つ い て の 仕 組 み と 実 績 及 び 問 題 点 な ど を 、 第4時
基 礎 知 識 と し て 紹 介 す る 。 第4∼5時
限以 降のため の
限 で は 、 ア ジ ア にお い て 食 糧 増 産 援 助 策 と して 導 入
さ れ た 先 進 国 型 農 業 が も た ら し た 社 会 的 変 化 の 事 例 を 通 し て 、 「地 域 性 の 尊 重 の 重 要 性 」
に つ い て 理 解 さ せ る 。 第6∼7時
限 で は 、 バ ン グ ラ デ シ ュ に お け る 日 本 のNGOの
具 体 的
活 動 例 を 通 し て 、 「異 文 化 と の 共 存 」 の 鍵 と な る 、 「表 面 事 象 の 背 景 や 構 造 的 要 因 の 理 解 の
必 要 性 」 に つ い て 理 解 さ せ る 。 第8∼9時
限 で は 、 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン教 材 を 利 用 し た 参 加
型 学 習 に よ り 、 「異 文 化 と の 共 存 」 に つ い て の 実 践 的 考 察 を 深 め る 。 な お 、 学 習 指 導 要 領
に お け る 関 連 分 野 は 、 「地 理A」
「イ
地 球 的 課題 の 地理 的 考 察」 の
「(3)現
(3-1)展
開 例(第4∼5時
学 習項 目
「ア
「キ
域 性 を踏 まえ て と ら え る現 代 世 界 の 課 題 」 の
諸 地 域 か ら 見 た 地 球 的 課 題 」 や 、 「地 理B」
「オ
居 住 、 都 市 問 題 の 地域 性 」 な どで あ る 。
限)
学
習
活
動
○ ア ジ ア各 地 の 絶 対 的 貧 困者 数 の 多 さを 日本 の 人 口
対 的貧困者 数
と対 比 さ せ な が ら 理 解 す る 。
○稲魂 信仰
○ ジ ャ ワ 島 の 二 ・ポ ハ チ 伝 説 と ア ニ ア ニ を 知 る 。
1
の
環 境 、 エ ネ ル ギ ー 問 題 の 地 域 性 」、 「力
○ ア ジアの 絶
入
1
「(2)地
代 世 界の 諸課 題 の 地理 的 考 察 」 の
人口、食料問題の地域性」 及び
導
の
備
考
「ア ジ ア 地 域 の 貧
困者 数 」
「二 ・ポ ハ チ 伝 説
○緑 の 革 命 は 、貧 困 層 救 済 の た め 、 食 料不 足 解 消 の
概 略 」 「ア ニ ア ニ
決 定 打 と して 導 入 さ れ た 経 緯 を 理 解 す る 。
の 図」
○ 国 及 び 地域 を地 図 帳 で確 認 す る 。
○ 在 来 種 とH
○ 高 収 量 品 種(HYV)開
発 の歴 史 とそ の特 性 につ い
一7一
「米 の 在 来 種 と 高
YVの
特性の
比較
て 、 在 来 種 の そ れ と 比 較 対 照 しな が ら理 解 す る 。 在
来 種 の 特 性 が 自 然 条 件 に 合 致 し、 そ れ に 応 じて 在 来
OHYV定
着
の条件
定 着 に は相 当 の経 済 力 が 必 要 で あ り、 貧
困 層 救 済 に な り得 な か っ た 事 を理 解 す る 。
OHYVの
開
OHYVの
短
OHYV導
と
め
「HYV導
入 に必
要 な諸 条 件 」
入 に よ る コ ス ト増 加 は 収 穫 量 増 加 を 上 回
所
り、 農 業 経 営 を 圧 迫 した こ と を理 解 す る 。
○ ジャ ワ島に
○ ジ ャ ワ 島 に お い て 、 人 口 急 増 とHYV導
お け るHYV
ク ロ ー ジ ャ ー を 進 め 、 貧 困 層 を拡 大 させ た こ と を 、
導 入 に よ る社
社 会 構 造 の 観 点 か ら理 解 す る 。
「HYV導
入 に よ
る生 産 費 変 化」
入が エ ン
「緑 の 革 命 に 起 因
す る社 会 問 題 」
「ジ ヤ ワ の 収 穫 制
会変化
ま
「ト ラ ク タ ー 導 入
に よ る影 響 」
農 法 が 確 立 さ れ た事 を 理 解 す る 。
展
収量種の比較」
度 の変 遷 」
○ 地域性 を重
OHYVと
視 した 新 品種
例 を 通 して 、 地 域 性 の 尊 重 の 重 要 性 を 理 解 す る 。
○有 機農 法へ
○ フ ィ リ ピ ン に お け るNGOに
よる緑 の 革 命 か ら有
「病 虫 害 の 爆 発 的
の転換事例
機 農 法 へ の 転 換 の 成 功 事 例 を 通 して 、 地 域 性 の 尊 重
発 生 の 要 因 」 「在
の重 要 性 を理 解 す る 。
来 品 種 ・農 法 尊 重
○ 地域 に合 っ
○ 途 上 国 に導 入 す る には どの よ うな農 法 が よい か を
の 有 効 性 」 「有 機
た農法
考える。
農法の有効性」
(4-1)評
価 の観 点
在 来 種 浮 き稲 と の 交 配 種IR422の
成功
「化 学 肥 料 使 用 と
地 力維 持 の重要 性」
① 途 上 国 地域 の在 来 農法 、社 会 構 造 、文 化 な ど は 、先 進 国 に対 して
決 し て 遅 れ た もの で は な く、 地 域 性 と の 調 和 を 持 っ て 必 然 的 に 形 成 さ れ て い る こ と を 理 解
で き た か 。 ② 先 進 国 技 術 に よ る 緑 の 革 命 が 途 上 国 の 農 村 社 会 に もた ら し た 功 罪 に つ い て 理
解 で き た か 。 ③ 開 発 ・成 長 、 進 歩 ・発 展 の 理 念 を具 現 化 す る 方 法 に つ い て 、 先 進 国 の も の
が 唯 一 絶 対 で は な く 、 文 化 が 異 な れ ば そ の 方 法 も ま た 異 な る こ と を 認 識 し 、21世 紀 の 国 際
協 力 の 在 り方 を 考 え る こ とが で き た か 。
(5-D指
導上の留意点
① 貧 困 の 原 因 は 人 口急 増 で は な く、所 得 分 配 の 不 平 等 で あ る こ
と を 押 え る 。 ② 取 り上 げ た 地 域 に つ い て は 地 図 帳 な ど を 用 い て 確 認 さ せ る 。 ③ 先 進 国 の 文
化 と途 上 国 の 文 化 の ど ち らが 正 しい の か と い う よ う な 二 者 択 一 的 思 考 に 陥 らせ ず 、 文 化 は
夫 々 の 地 域 性 に 根 ざ し た もの で あ り、 必 然 性 を備 え て い る こ と を 押 え る 。
(3-2)展
1
開 例(第8∼9時
限)
学 習 項 目1学
習
活
動
導
○ シ ミ ュ レー
○ シ ミュ レー シ ョン教材
入
シ ョンの説 明
プ ラ ン」 に つ い て 説 明 す る 。
○ シ ミュ レー
○ 状 況 設 定 、Y国
シ ョンの 開始
国 関 係 者 資 料 を 説 明 し、 ス ラ イ ドに よ る 地 域 紹 介 を
展
1開
1行 う 。 そ の 後4つ
「Y国Z村
基 礎 デ ー タ 、Z村
考
の農村 開発援 助
農 村 マ ッ プ 、Y
の 開 発援 助 プ ラ ンを示 す 。
一8一
備
○ ワ ー ク シ ー ト
1-3
0ス
ラ イ ド
○援 助 プ ラ ン
○ グ ル ー プ に分 か れ 、 援 助 プ ラ ンの 検 討 を 指 示 す る 。
の検 討
○ 決 定 した プ ラ ン と そ の 決 定 理 由 を 発 表 さ せ る 。
○ 発 表 ・再 発
○ プ ラ ン の 再 検 討 を指 示 す る 。
表及 び討論
○ 再 決 定 プ ラ ン とそ の決 定 理 由 を再 発 表 させ る 。
○ グ ル ー プ の 発 表 が 終 了 後 、 質 疑 応 答 と討 論 を 行 う 。
○ ま とめ
○ 立場 や 考 え の違 い に よ って 採 択 す る プ ラ ン が 異 な
ま
る こ とを示 し、誰 の ため の 援 助 か慎 重 に 考 え る こ と
が 重 要 で あ る こ とを説 明 す る。 そ の際 、 地域 性 の 理
と
解 の上 に立 って 相 手 先 の 文 化 を尊重 す る こ とが 大 切
で あ る こ とを説 明 す る。
め
○ こ の 授 業 で 学 ん だ こ と及 び 感 想 を記 入 させ る 。
(4-2)評
価の観点
○ ワ ー ク シ ー
① 主 体 的 に 学 び 行 動 す る こ と が で きた か 。② 地 域 性 の 理 解 の 上 に 立 っ
て 、 異 文 化 を 尊 重 ・理 解 す る こ と が 重 要 で あ る こ と を 認 識 で き た か 。 ③(4-1)の
(5-2)指
ト4
導上の留意点
③ に 同 じ。
① 発 展 途 上 国 の 人 々 も 日本 人 も 同 じ地 球 に 生 き る 市 民 で あ る こ
とに 気 づ か せ る よ う留 意 す る。② 国 際社 会 に お け る先 進 国 日本 の 役 割 につ い て 発 展 的 に 考
え ら れ る よ う 留 意 す る 。 ③ 各 グ ル ー プ の 援 助 プ ラ ンの 検 討 が 進 ま な い 場 合 、 状 況 に よ っ て
は検 討 が 進 む よ う教 師 が 適 宜 助 言 を行 う。
◎資料
●1.「
「望 ま し い 援 助 と は ∼Y国Z村
状況設定」
家 チ ー ム で す 。 今Y国
方 は4つ
の 農 村 開 発 援 助 プ ラ ン 」 ワ ー ク シ ー ト1∼4抜
『あ な た 方 は 後 発 発 展 途 上 国 で あ るY国
で はZ村
を 選 択 し、Y国
の 仕 事 は 責 任 重 大 で す 。 そ れ で は 頑 張 っ てY国
●2.「Y国
に派 遣 され た援 助 プ ラ ン評 価 専 門
の 農 村 開 発 援 助 プ ラ ン が4つ
の 援 助 プ ラ ン か ら最 適 の も の を1つ
概 要 及 び 基礎 デ ー タ」
粋
示 され て い ます 。 そ こで あ な た は
政 府 に助 言 し て 下 さ い 。 あ な た 方
に 最 適 の 援 助 プ ラ ン を 決 定 し て 下 さ い 。』
「Y国 は 東 南 ア ジ ア の 赤 道 直 下 に 位 置 す る 後 発 発 展 途 上
国 で あ る。 国 土 は 山が ち で 、気 候 は主 に熱 帯 雨 林 気候 、宗 教 は上 座 部 仏 教 であ る。主 な産業 は、
在 来 種 を 在 来 農 法 で 栽 培 す る 稲 作 を 中 心 と した 農 業 で 、 人 口 の 約80%は
農 村 に居 住 して い る 。
農 民 は 大 地 主 、 自 作 農 民 、 小 作 人 、 土 地 な し農 民 で 構 成 され て い る 。 人 口 は こ の30年 間 で 急 激
に 増 加 し、 貧 困 層 が 増 え 貧 富 の 差 も 拡 大 して い る 。 農 村 で は 土 地 な し農 民 が 増 え 、 貧 し く て 学
校 に 行 け な い 子 ど も の 数 も激 増 して い る 。 山 間 部 に は 焼 畑 や 狩 猟 を 行 っ て 自 給 自 足 の 生 活 を 営
む 少 数 民 族W族
が 暮 ら して い る 。 援 助 対 象 地 域 のZ村
て い る 。 山 地 に は 熱 帯 雨 林 とW族
は 平 野 と 山 地 か ら な り大 き なX川
の 居 住 地 域 が あ る 。 こ のZ村
が流れ
は 首 都 か ら 遠 く離 れ 、Y国
の中
で も 開 発 の 遅 れ た 貧 しい 地 域 で あ る 。 な お 今 回 の プ ラ ン の 予 算 上 限 額 は10億 円 で あ る 。』
●3.「Y国
1.Y国
関 係 者 か らの 聞 き 取 り 調 査 」
政府官僚
「こ の 国 は 貧 しい で す が 、 人 々 は 仕 事 熱 心 で 大 変 よ く働 き 、 こ れ か ら 発
展 す る 可 能 性 は 高 い と言 え ます 。 従 っ て 電 力 や 道 路 や 水 道 な ど を 整 備 し て 工 場 を 建 設 す れ ば 、
急 速 に 発 展 して い く と考 え て い ま す 。 ま た こ の 国 の 豊 か で 美 し い 自然 と歴 史 の 古 い 寺 院 や 伝 統
一9一
文 化 を 外 国 の 人 々 に 知 っ て も ら う た め 、 観 光 地 化 し た い と思 っ て い ます 。 従 っ て 外 国 の 会 社 と
資 金 を 出 し合 っ て 観 光 開 発 を した い と 思 っ て い ま す 。』
4,Z村
土 地 な し農 民
『私 た ち の 生 活 と い っ た ら ひ ど い もの だ 。 食 事 は1日2回
だね。当 然
私 の 家 に は 電 気 な ん て い う もの は な い 。 病 気 に な っ た と きが 一 番 つ ら い な 。 だ け ど子 ど も た ち
に は 、 読 み 書 き と計 算 が で き る よ う に な っ て も ら い た い 。 私 は 字 が 読 め な く て 、 農 業 か ら 他 の
仕 事 に 転 職 で き な い ん だ 。 よ い 暮 ら し を した い と思 っ て も地 主 の 土 地 は 小 作 人 た ち が 借 りて し
ま っ て 、 私 た ち の 借 り ら れ る 農 地 は こ の 村 に は 無 い ん だ よ 。 だ か ら農 業 労 働 者 と し て 地 主 や 自
作 農 民 や 小 作 人 に 雇 っ て も ら う の だ け れ ど 、 私 と 同 じ土 地 な し農 民 が 最 近 増 え て な 。 農 作 業 に
あ りつ く競 争 が 激 し くて 、 毎 日 は 仕 事 が な い ん だ 。 ま た 労 賃 も下 が っ て き た 。厳 しい 現 実 だ よ 。
だ け ど子 ど も も働 い て くれ る し、 毎 日 お 寺 で 祈 っ て い る か ら 、 何 とか 生 活 し て い け る ん だ 。』
こ の 他2,Z村
●4.「Z村
1.農
大 地 主3.Z村
小 作 人5.Y国
実 業 家6.少
数 民 族W族
農 村 開 発 援 助 プ ラ ン」
業 用 水 路 の 建 設 、 トラ ク タ ー の 輸 入 、 化 学 肥 料 ・農 薬 工 場 の 建 設 費 補 助
導 入 の た め に 、X川
に ポ ン プ 場 を 建 設 しZ村
『高 収 量 品 種
まで の 農 業 用 水 路 を 建 設 して 水 不 足 を 解 消 す る 。
そ し て トラ ク タ ー を10台 輸 入 す る 。 ま た 化 学 肥 料 ・農 薬 工 場 の 建 設 費 を 補 助 す る 。 工 場 が 建 設
さ れ れ ば 、 化 学 肥 料 や 農 薬 が 安 くな る の で 、 農 民 一 人 当 た りの 生 産 量 は 格 段 に 高 く な る 。 ま た
建 設 関 連 の 雇 用 及 び 工 場 労 働 者 と して の 雇 用 が 期 待 で き 、Y国
の 工 業 化 に も 結 び つ く。 し か し
村 の 一 部 に は 、 収 入 が 増 え る の は 地 主 だ け とい う 声 や 工 場 の 公 害 を 心 配 す る 声 が 聞 か れ る 。 な
お 電 力 供 給 は 他 の 国 の 援 助 に よ っ て 近 々 実 現 す る 見 込 み で あ る 。』
2.有
機 農 法 の 協 同 生 産 組 合 設立
『小 作 人 や 土 地 な し農 民 を 組 織 化 して 、 水 田 を 購 入 し 有
機 農 法 の 協 同 生 産 組 合 を 設 立 して 、 無 農 薬 有 機 肥 料 の 農 産 物 を 生 産 す る 。 養 魚 場 の 建 設 や 鶏 ・
豚 の 飼 育 を 行 い 、 糞 は 有 機 肥 料 に す る 。 ま た 組 合 で 、 貧 しい 人 に も低 利 で 融 資 で き る よ う 融 資
制 度 を 実 施 す る 。 有 機 農 法 は 人 手 が か か る の で 多 くの 農 業 労 働 者 が 必 要 と な り、 か な り多 く の
雇 用 が 期 待 で き る 。 しか し農 民 一 人 当 た りの 収 入 は 低 く、 組 合 の 生 産 物 の 売 り込 み も 組 合 員 で
行 わ な け れ ば な ら な い 。 ま た 生 産 規 模 も簡 単 に は 大 き くで き な い 。』
3.外
資 と の 合 弁 に よ る 自然 を生 か し た観 光 開 発
『外 国 企 業 と資 金 を 出 し合 っ て ホ テ ル を
建 設 し、 異 文 化 理 解 を 目 的 と し た 伝 統 工 芸 や 民 族 舞 踊 の 体 験 ツ ア ー 、 山 間 部W族
の 集 落 を訪 れ
た り貴 重 な 熱 帯 雨 林 の 森 を観 察 す る ネ イ チ ャ ー ツ ア ー を 実 施 す る 。 ま た 歴 史 的 寺 院 を 観 光 地 と
して 整 備 す る 。 雇 用 だ け で は な く、 手 工 芸 品 の 販 売 や 農 産 物 の 販 売 も期 待 で き る が 、 そ の 規 模
は そ れ ほ ど 大 きい も の で は な い 。 観 光 客 相 手 の 伝 統 工 芸 体 験 や 民 族 舞 踊 が 単 な る 観 光 シ ョ ー と
化 し伝 統 の 破 壊 と 考 え る 人 々 や 祈 りの 場 の 寺 院 を 観 光 地 に す る こ と に 反 対 す る 人 々 が い る 。』
4.大
人 の た め の 識 字 教 室 ・職 業 訓 練 の 実 施 及 び 学 校 ・診 療 所 の 建 設
『生 活 レ ベ ル の 向 上 に
は学 問 が 不 可 欠 で あ る 。大 人 向 けの 読 み書 きや 簡 単 な 計算 を学 ぶ 夜 間の 識 字 教 室 を 開催 す る 。
ミ シ ン を 輸 入 して 、 縫 製 技 術 を 身 に つ け る 職 業 訓 練 所 を つ く る 。 技 術 指 導 時 以 外 は 無 料 で ミ シ
ン を利 用 で き る 。 ま た 学 校 と診 療 所 を 数 カ所 ず つ 建 設 し 、 教 材 ・学 用 品 、 医 療 機 器 ・医 薬 品 な
ど も援 助 す る 。』
一ia一
H日
本 の国際 関係 のあ り方 を考 えるための視点
1幕
末 日本 をめ ぐる 国際 環 境
(1)教
材 と し て 取 り上 げ た 理 由
幕 末 か ら明 治 維 新 に い た る 時 期 は 、 二 百 数 十 年 来 の 幕 藩
体 制 の 崩 壊 の ド ラ マ が 、 め ま ぐ る し く展 開 す る 時 期 で あ る 。 ま た 一 方 で 、 ア ジ ア の 東 端 の
島 国 日 本 が 、 パ ワ ー=ポ
リテ ィ クス が支 配 す る有 機 的 な世 界史 の 中 に編 入 させ られ て ゆ く
とい う画 期 も な し て い る 。 近 年 、 こ の 時 期 に お け る 英 仏 な ど 欧 米 列 強 の 影 響 に つ い て は 、
「世 界 の 中 の 日 本 」 と い う 視 点 か ら も 、 重 視 さ れ て き て い る 。 し か し 、 教 科 書 の 記 述 な ど
は断 片 的 か つ表 面 的 で 、視 野 がせ まい 。 そ こで 、 近 年 の 明 治 維 新 の 国 際 的 環 境 につ い て の
研 究 を ふ ま え 、 開 国 後 の 政 局 の 展 開 を 、 国 際 的 な 背 景 と結 び つ け な が ら 考 察 さ せ る こ と が
必 要 で あ る 。 つ ま り、 朝 廷 や 尊 王 穰 夷 の 志 士 た ち と公 武 合 体 の 幕 閣 や 諸 侯 と の 対 決 、 幕 府
独 裁 か 倒 幕 か を め ぐ る 複 雑 な 対 抗 や か け ひ き な どが 、 つ ね に 外 圧 に 対 す る 国 家 的 対 応 の 方
策 い か ん を め ぐっ て 展 開 して い る と い う視 点 を 持 た せ る こ と 。 さ ら に 、 民 衆 の 世 直 しの 潮
流 も また 、列 強 の圧 迫 と為 政者 た ち の政 争 激 化 の 中 で 、 ます ます 大 き くな り、歴 史 を 動 か
す 原 動 力 と な っ た こ と に 着 目 さ せ る 。 こ の よ う な 中 か ら 、 パ ワ ー=ポ
リテ ィク ス の支 配 が
進 む で あ ろ う21世 紀 の 世 界 の 中 で 、 国 民 と し て の 自 覚 を 持 ち 、 日 本 の 国 際 関 係 の あ り 方 を
自 ら考 え 、 判 断 す る 力 を 培 う こ と を ね ら い と して 、 本 教 材 を 取 り上 げ た 。
(2)本
時 の ね らい
本 時 は3時
の 転 換 に つ い て 、 第2時
間 構 成 の 第3時
限 に 当 た る 。 第1時
限では、開国後の 政局
限 で は 、 尊 王 撰 夷 運 動 の 展 開 を 概 観 す る 。 そ の 際 、 第1時
限で は 、
ロ シ ア の 対 馬 占 拠 事 件 を と りあ げ 、 植 民 地 化 の 危 機 を 感 じ と ら せ 、 か つ 民 衆 の 抵 抗 が こ の
事 件 を 解 決 す る 大 き な 力 と な っ た こ と を 理 解 さ せ る 。 第2時
の意図 を
「オ ー ル コ ッ ク の 覚 書 」 や ア ー ネ ス ト;サ
トウ の
限 で は 、 イギ リ スの 砲 艦 外 交
「英 国 策 論 」 な ど を 通 じ て 理 解
させ る。 ま た英 仏の 横 浜 軍 事 基 地 建 設 につ い て も注 目させ る 。 本 時 で は 、 イギ リ ス外 交 の
変 化 に よ る 倒 幕 勢 力 の 形 成 の よ うす 、 そ して フ ラ ン ス 外 交 の 幕 府 へ の 影 響 な ら び に そ の 意
図 を 理 解 さ せ る 。 そ し て 日本 が 独 立 を 保 ち 得 た 理 由 を 考 察 さ せ 、 さ ら に 、 そ の よ う な 環 境
の 中 で 主 体 的 に 行 動 し た 日本 人 の 姿 を 通 して 、 今 日 の 国 際 社 会 の 中 で い か に 行 動 して ゆ く
べ き か を 考 察 さ せ る 。 学 習 指 導 要 領 の 関 連 分 野 は 、 「日 本 史B」
とア ジ ア」 の
(3)展
1学
「(5)近
明 治 維 新 と立 憲 体 制 の 成 立 」 で あ る 。
習項 目
学
習
活
動
○ 前 時 の イギ リ スの 対 日政 策 を確 認 す る 。
対 日政 策
入
[
代 日本の形 成
開例
○ イギ リスの
導
「ア
の
備
考
◎ ワ ー ク シ ー ト①
◎ ワ ー ク シ ー ト②
○ 長州 藩 の藩
○ 下 関 戦 争 で 援 夷 の 不 可 能 を悟 っ た の み な ら ず 、 植
論転 回
民 地 化 の 危 機 感 を持 ち、貿 易 に よる富 国強 兵 を 目指
し た 、 高 杉 晋 作 ら の 蜂 起 ・改 革 運 動 を 理 解 す る 。
一il一
・史 料 「遊 清 五 録 」
(高 杉 晋 作)
○長 州再 征 と
0外 圧 を 機 に 藩 論 を 転 回 した 薩 長 両 藩 が 倒 幕 と い う
薩長 連合 の形
共 通 の 目標 に む か う こ と を 確 認 す る 。
成
○ 長 州 再 征 宣 言 に よ り窮 地 に 陥 っ た 長 州 藩 を 援 助 す
る こ と で 、 薩 摩 藩 との 盟 約 を 導 い た 坂 本 龍 馬 の 努 力 ・
意 図 を 理 解 す る 。(イ ギ リ ス の 役 割 に も留 意 す る)
展
・ グ ラ フ 「大 坂 に
○ 強 行 さ れ た 幕 長 戦 争 は 米 価 高 騰 に と も な う 「打 ち
お け る物 価 指 数 」
こ わ し 」「世 直 し 一 揆 」を 頻 発 さ せ 、 つ い に 中 止 に 至 っ
「幕 末 の 百 姓 一 揆 」
た こ とを理 解 す る。
○ フ ラ ンス の
○ 公 使 ロ ッ シ ュ 着 任 以 来 の 幕 府 支 援 策 を振 り返 り 、
・資 料
幕府 支援 と慶
彼 の意 図 を考 え る。
とフ ラ ンス外 交 」
喜 の 巻 き返 し
○ 親 仏 派(小
栗 忠 順 ら)が
幕 政 の主 導 権 を握 り、 徳
川 絶 対 主 義 を 目 指 した こ と 、 ま た そ れ に 対 す る 勝 海
開
舟 の 批 判 の 意 図 を理 解 す る 。
○ 倒 幕 勢 力 内 の 挙 兵 討 幕 路 線(薩
長)と
公 議政 体路
王政 復古 の ク ー
線(土
デ タ ー
○ 幕 府 勢 力温 存 をは か っ た慶 喜 の選 択 の 意 図 を理 解
そ れ ぞ れ の 意 図 を理 解 す る 。
・史 料 「議 題 草 案 」
(西周 助)
す る 。
・史 料 「海 舟 日 記 」
「開 国 起 原 」(勝 海 舟)
○大 政奉還 と
佐)の
「幕 末 日 本
1
ま
と
め
○ 日本 が 独 立
○ 英 仏 の 対 日 政 策 を 振 り返 り 、 そ れ に 対 し て 日 本 人
を 保 ち 得 た理
は どの よ うに対 応 した か もう一 度 、概 観 す る。
由
○ なぜ 日 本 は 独 立 を 保 ち 得 た の か 考 え る 。
(4)評
価 の観 点
◎ ワ ー ク シ ー ト③
① 列 強 の 外 圧 を う け 、 そ れ と 衝 突 ・妥 協 ・利 用 しな が ら 、 独 立 を 保 ち 、
明 治 維 新 を 実 現 させ た 当 時 の 日 本 人 の 行 動 を 理 解 で き た か 。 ② 民 衆 の 主 体 的 な 行 動 及 び 変
革 を 求 め る パ ワ ー が 歴 史 を 動 か す 力 と な っ た こ と を 理 解 で き た か 。 ③ そ れ ら を 通 して 、 今
日 の 国 際 社 会 の 中 で 日本 人 と し て 生 きて ゆ く上 で 重 要 な こ と に つ い て 考 え る こ と が で き た
か。
(5)指
導上の留意点
① 資 料 を 活 用 し や す い よ う に ワ ー ク シ ー トを 工 夫 す る 。 ② 資 料 ・統
計 を 読 み と り 、 生 徒 自 らが 考 え 判 断 して 歴 史 を 再 構 築 して ゆ け る よ う 、 適 切 な 助 言 を 与 え
る。
一12一
2日
本 に よ る植 民地 支 配 下 の 朝 鮮
(1)教
材 と して 取 り上 げ た 理 由
韓 国(大
韓 民 国)の
日 本 文 化 解 禁 政 策 、 ワ ー ル ドカ ッ プ
の 日韓 共 催 な ど に 見 ら れ る よ う に 、 日韓 関 係 の 新 しい 時 代 が 始 ま っ た 。 ま た 、 大 韓 民 国 と
朝 鮮 民 主 主 義 人 民 共 和 国 、 日 本 と朝 鮮 民 主 主 義 人 民 共 和 国 の 関 係 に お い て も新 し い 展 開 が
期 待 さ れ て い る 。 日 本 と 大 韓 民 国 、 日本 と朝 鮮 民 主 主 義 人 民 共 和 国 が 友 好 関 係 を 深 め て い
くた め に は 、 相 互 が 客 観 的 な 歴 史 事 実 を ふ ま え 、 誤 解 や 偏 見 を な く し、 現 在 の 課 題 を 解 決
し て い く こ とが 大 切 で あ る 。 そ の よ う な 観 点 か ら 、 日本 に よ る 植 民 地 支 配 下 の 朝 鮮 に つ い
て 、 生 徒 が 主 体 的 に 学 ぶ2時
間 構 成 の授 業 を構 想 した 。生 徒 が 能 動 的 に知 識 や 概 念 を 獲 得
す る 授 業 、 生 徒 が 新 た な 探 求 心 や 問 題 意 識 を持 て る 授 業 とす る た め に 、 授 業 時 間 を 多 く 確
保 し て 、 資 料 や 授 業 展 開 を 工 夫 し 、 ワ ー ク シ ー ト作 業 や 判 断 ・思 考 ・意 見 表 明 の 場 面 を 設
け た 。展 開例 と して示 す 、土 地 調 査 事 業 と興 南工 業 地帯 の 実 態 は 、 日本 に よる 植 民 地 支 配
下 の 朝 鮮 の 状 況 と して 具 体 的 で あ り 、 生 徒 の 学 習 意 欲 を 引 き 出 す 要 素 を 多 く含 む も の で あ
る と 考 え 、 教 材 化 した 。
(2)本
時 の ね らい
本 時 は2時
間 構 成 の 第1時
限 にあ た る。 本 時 で は土 地 調 査 事 業 を取 り
上 げ 、 そ れ を糸 口 に、 韓 国 併 合 まで の経 過 とそ の後 の植 民 地 政 策 につ い て理 解 させ 、 日本
の 植 民 地 下 に お か れ た 朝 鮮 の 状 況 に つ い て 具 体 的 に 考 え させ る 。 第2時
の 人 々 は 独 立 を 願 い な が ら も(三
・一 独 立 運 動)、 皇 民 化 政 策(日
限 で は朝 鮮 の 多 く
本 語 使 用 ・神 社 参 拝 の
強 制 、 創 氏 改 名 な ど)に 組 み 込 ま れ て い く こ と を学 習 す る 。 学 習 指 導 要 領 の 関 連 分 野 は 、
「世 界 史B」
の 「(5)地 球 世 界 の 形 成 」 の 「ア
の 「(3)現 代 の 世 界 と 日 本 」 の 「イ
(3)展
導
ニ つ の 世 界 大 戦 と平和 」 で あ る 。
開例
学
学習項 目
』
ニ つ の 大 戦 と世 界 」、 ま た は 「世 界 史A」
習
活
備
動
考
○朝 鮮 を植 民
○ 日本 の 企 業 が 朝 鮮 に 作 っ た 興 南 工 業 地 帯 に つ い て
資 料 「日 本 窒 素 肥
地 に して い た
の 資 料 を 見 て ワ ー ク シ ー ト作 業 を 行 わ せ 、 日 本 が 朝
料朝鮮事業絵 図」
日本
鮮 を 植 民 地 と し て い た こ と を確 認 す る 。
○ 日本 の 植 民
○ 教 科 書 で 日韓 併 合 後 の 日 本 の 植 民 地 政 策 の 概 要 に
地 政 策 の概 要
つ い て 調 べ さ せ る(ワ
○土 地調 査事
0土
入
展
ー ク シ ー ト作 業)。
地 調 査 事 業 の 「申 告 書 」 の 書 式 を 紹 介 す る 。
業の
業 の 「申 告 書 」
開
資 料 「土 地 調 査 事
『申 告 書 』」
○土 地 調査事
0土 地 調 査 事 業 に つ い て の 韓 国 ・歴 史 教 科 書 の 記 述
資 料 「韓 国 の 教 科
業 の実態
を 紹 介 し、 申 告 に よ り所 有 権 が 明 らか に な ら な い 土
書 に書 か れ た 土 地
地 は 朝鮮 総督 府 の所 有 に され た こ とを確 認 す る。
調査事業の実態」
一13一
ゆ 臓 併合ま
①
「故 意 に 申 告 を しな い もの も多 か っ た 」 と い う 韓
で の 経 過 と朝
国 教 科 書 記 述 に つ い て 、 な ぜ 「申 告 書 」 を 提 出 し な
鮮 の 人 々 の抵
い の か 、 本 当 に そ ん な 人が い た のか ど うか を 問 題 提
抗
起 す る。
② 上 記 の 問 題 に つ い て 自 分 の 意 見 を 形 成 す る1つ
の
資 料 「韓 国 併 合 ま
材 料 と して 、 韓 国 併 合 ま で の 経 過 と 朝 鮮 の 人 々 の 抵
での略年表」
抗 に つ い て 資 料 を 見 て 調 べ さ せ る(ワ
資 料 「義 兵 闘 争 の
ー ク シ ー ト作
業)。
回数」
③ 自 分 が 当 時 の 朝 鮮 の 農 民 だ っ た ら 『申 告 書 』 を 提
*判 断 す る 過 程 で
出 す る か ど うか考 え させ る。
当時の具体 的状 況
(a>2、3人
の生 徒 に 自分 の 判 断 とそ の理 由 を 発 言
に 目 を向 け 、 様 々
な こ と に気 づ き 、
させ る 。
(b)そ の 他 、 疑 問 に 思 っ た こ と を 出 さ せ る 。
疑 問 を持 つ こ と を
目的 とす る。
○ 日本 の 植 民
○ 他 人 の 意 見 や 疑 問 も参 考 に しな が ら 、 土 地 調 査 事
提 出用紙
地 政策 と朝鮮
業 を 中 心 と す る 日本 の 植 民 地 政 策 と朝 鮮 に つ い て 、
*提 出 さ れ た 意 見
自 分 の 意 見 ・感 想 ・疑 問(以
等は 「
世 界 史通信 」
ま
下3項
目)を
用 紙 に記
入 させ 提 出 させ る 。
と
と して ま と め 、 後
(a)自 分 が 当 時 の 朝 鮮 の 農 民 だ っ た ら
出 す か 、 出 さ な い か(判
め
『申 告 書 』 を
断 と そ の 理 由)る
日、生 徒 に 配 付 す
。
(b旧 本 の 植 民 地 政 策 と 朝 鮮 に つ い て の 意 見 ・感 想
(c)疑 問 に 思 っ た こ と 、 知 り た く な っ た こ と
〈4)評 価 の 観 点
① 韓 国 併 合 ま で の 経 過 と 日 本 の 植 民 地 政 策 の 概 要 を理 解 で き た か 。 ② 朝
鮮 総 督 府 に よ る 植 民 地 政 策 の1つ
の 具 体 例 と して の 土 地調 査 事 業 の実 態 を理 解 で きた か 。
③ 土 地 調 査 事 業 を 中 心 とす る 日本 の 植 民 地 政 策 と朝 鮮 に つ い て 、 し っ か り考 え る こ と に よ
り 、 知 りた い こ と や 疑 問 を 持 つ こ と が で き た か 。 ④ 日 本 の 植 民 地 政 策 と朝 鮮 に つ い て 、 自
分 の 意見 を形 成 で きた か 。
(5)指
導上の留意点
① 日本 の 植 民 地 政 策 の 評 価 に つ い て 様 々 な 意 見 が あ る こ と もふ ま え 、
教 師 が 生 徒 に示 す 内容 は具 体 的 事 実 に と どめ る 。② 判 断や 思 考 の 過 程 で 、知 識 を 活用 す る
こ と 、 様 々 な こ と に 気 づ く こ と 、 様 々 な 疑 問 を持 つ こ と を 重 視 す る 。 ③ 韓 国 の 教 科 書 も含
め 、 教 科 書 の 記 述 に つ い て は 、 具 体 的 事 実 の 記 述 部 分 と解 釈 を ふ く む 記 述 部 分 が あ る こ と
を 指 導 す る 。 ④ 提 出 され た 意 見 等 は 、 後 日 、 「
世 界 史 通 信 」 と して 生 徒 に 配 付 し 学 び あ い
を 深 め る 。 状 況 に よ っ て は さ ら に紙 上 討 論 を 組 織 す る 。 ⑤ な お 、 生 徒 か ら疑 問 や 意 見 等 が
多 く引 き出 せ る よ う発 問 や 雰 囲 気 作 りに 留 意 す る 。
一14一
320世
紀 初 頭 の 国 際 関 係 と十 五 年 戦 争 の 始 ま り
(1)教
材 と し て 取 り上 げ た 理 由
最 近 の 日本 史100年 間 を振 り 返 っ て 最 大 の 惨 禍 を あ げ る
とす れ ば 、満 州 事 変 か ら太平 洋 戦 争 敗 戦 まで の十 五 年 戦 争 で は な い だ ろ うか 。 航 空 機 に よ
る 空 か ら の 爆 撃 だ け で も 日 本 側 の 死 者 約25万6千
人 、 焼 失 家 屋 約221万 戸 、 罹 災 者 約920万
人 に も の ぼ っ た 。 ま た 、 広 島 ・長 崎 に お い て は 先 の 死 者 の ほ か 、 原 爆 に よ っ て 約19万 人 も
の 命 が 失 わ れ た 。 さ ら に 、 沖 縄 で は 住 民 を 巻 き込 ん だ 戦 い が 行 わ れ 戦 死 者 は 約18万8千
人
に もの ぼ る 。死 んで い っ た 人 々 に は そ れ ぞ れ の家 族 が い たで あ ろ う し、家 や財 産 、 職 場 や
仕 事 を 失 っ た 者 な ど は 計 り知 れ な い 。 今 日 の 豊 か な 日本 で 育 っ た 者 に は 、 戦 中 戦 後 の 人 々
の 暮 ら し は 想 像 もつ か な い 悲 惨 さ を 含 ん で い る 。 こ の20世 紀 の 日本 人 の 体 験 は 、 生 徒 達 に
考 え さ せ た い と思 い 教 材 と して 選 択 し た 。
(2)本
時 の ね らい
本 時 は4時
間 構 成 の 第3時
限 目 に 当 た る 。 毎 時 間 の 導 入 と して 、 パ ソ
コ ン を活 用 した ク イズ形 式 の 問題 演 習 を通 して こ の 時代 を考 察 す る こ とに必 要 な知 識 を学
習 さ せ る 。 展 開 例 と し て 第1時
限 目 は 玉 音 放 送 か ら始 ま るVTRや
写 真 な どの 視 聴 覚 教 材
を 使 用 し 第 二 次 世 界 大 戦 、 と くに 太 平 洋 戦 争 や 当 時 の 国 民 生 活 の 様 子 を 中 心 に 提 示 す る 。
ま た 、 今 世 紀 初 頭 の 外 交 関 係 を 鳥.rさ せ る た め に 、 あ らか じめ 作 成 し た 年 表 を 中 心 と し た
チ ャ ー ト図 等 を 、 教 科 書 や 資 料 集 を 使 っ て2∼4名
を 行 う 。 第2時
構 成 の グ ル ー プ で 完 成 させ る 作 業 学 習
限 目 に ヴ ェ ル サ イユ 体 制 と 日本 の 国 際 的 地 位 、 第3時
限 目に ワ シ ン トン会
議 か ら 日 独 伊 三 国 同 盟 ま で を 、 と く に 日本 を 取 り巻 く国 際 情 勢 と 国 内 事 情 を 中 心 に 考 察 す
る 。 と く に 日本 の 対 中 国 政 策 が 欧 米 列 強 と対 立 し て い た こ と を 理 解 さ せ る 。 さ ら に 満 州 事
変 後 の 日 本 の 外 交 方 針 と政 策 が 、 ア ジ ア に 利 権 の 持 つ 国 々 と 摩 擦 を 増 幅 さ せ た こ と を 考 察
させ る 。4時
「日本 史B」
(3)展
限 目 に は 日米 開 戦 と 日本 の 敗 戦 ま で を 扱 う 。 学 習 指 導 要 領 の 関 連 分 野 は 、
の 「(6)両世 界 大 戦 期 の 日 本 と世 界 」 の 「ウ
第二 次 世 界大 戦 と 日本 」 で あ る 。
開例
1
学習 項 目
○今 世紀 初頭
導
の 日 本 と世 界
入
展
開
学
習
活
動
備
○ パ ソ コ ン を使 っ た ク イズ形 式 の 問題 演 習 。
02∼3人
で1台
の パ ソ コ ン を利 用
(年 号 、 史 実 、 人 物 等 の 知 識 を 深 め る)
01900年
考
代 初 頭 の 東 ア ジ ア に お け る 日本 、 欧 米 列 強
○大 型 プロ ジェ ク
の 勢 力 図 を提 示 説 明 。
ター の 活 用
○ ワ シ ン トン
○ ワ シ ン トン会 議 に の ぞ む 日 本 の 方 針 や 立 場 を 、 平
○ 石橋 湛 山
会 議 前 の 日本
和 主 義 の 観 点 か ら 論 じ た 、 大 正10年7月23日
経 済 新報 』社 説
と世 界
社 説 か ら 当 時 の 日 本 と世 界 の 情 勢 を 探 る 。
一15一
の雑誌
『東 洋
○ 日本 の 対 中
○ 第1次
若 槻 内 閣 の辞 職 か ら、対 中 国外 交 政 策 の 流
国方針 と政策
れ と 変 化 を 理 解 し、 な ぜ 日本 が 大 陸 進 出 を 目指 し 、
○東方会議
『対 支
政 策 綱 領 第6項
』
満 州 を 重 要 な 地 域 と 見 な した の か を探 る 。
展
○ 中国大 陸の
○ 列 車 の通 過 を妨 げ なか っ た ほ どの爆 破 が 、 な ぜ 昭
○ 石 原 莞爾
情勢 と関東軍
和20年 ま で の 戦 争 へ 拡 大 した の か を 考 察 す る 。
問題私見』
・中 国 の 政 治 的 分 裂 → 柳 条 湖 事 件 →
不 拡 大 方 針 → 承 認 と国 内世 論 →
日本 政 府 の
リ ッ トン 調 査 団
「満 蒙
○ 『満州 事変 機密
作 戦 日記 』
へ と展 開 。
○ 満 州 国 と国
○ な ぜ 満 州 国 放 棄 よ り国 際 連 盟 脱 退 を 選 択 し た の か
際連盟 の脱退
を探 る 。
○そ の後 の外
○ 「満 州 は 日本 の 生 命 線 で あ る と」 い う 日 本 の 意 見
○ 国際連盟 規約 第
交政策
に 対 し て リ ッ トン が 反 論 す る 根 拠 と し 、 後 に 東 京 裁
11条 、 九 力 国 条 約 、
判 の根 拠 に もな った 国 際 条約 とは 、 どの よ う な もの
パ リ不 戦 条 約
開
○ リ ッ トン 報 告 書
だ っ たの か を理 解 す る。
○宣戦 布告 な ○ 国 際 連 盟 脱 退 後 の 日 本 は ど う 動 い た の か 。 そ れ に
○ 『五 相 会 議 決 定
き戦 争 と南 進
対 す る 国際 情 勢 を探 る。
対支 方策』
政策
○ 日 中 戦 争 と南 進 政 策 を 通 して 、 日 本 と諸 外 国 の 対
立 を探 る。
ま
と
め
○国 際的孤 立
○ 日本 は 、 ドイ ツ や イ タ リ ア と 同 盟 を結 び 枢 軸 陣 営
回避の外交
を 形 成 し 、 自 由 主 義 陣 営 ・共 産 主 義 国 の ソ 連 と 世 界
が3勢
(4)評
価の観点
力 に分 割 され た こ と を理 解 す る。
① 太 平 洋 戦 争 へ の 道 の り を 、 今 世 紀 前 半 に お け る東 ア ジ ア を め ぐ る 国 際
情 勢 と 日本 の 外 交 政 策 、 及 び 国 内 事 情 の 関 係 か ら 見 つ め 直 せ た か 。② なぜ 日本 は 世 界 の 国 々
と戦 争 関 係 に 陥 っ て し ま っ た の か を 自 分 な り に 考 え を 持 つ こ と が で き た か 。
(5)指
導 上 の 留意 点
① 事 前 に 実 施 し た 、 戦 争 に 関 す る 生 徒 ア ン ケ ー トを 十 分 に 活 用 す る
と と も に 、 生 徒 が 公 正 に 判 断 が で き る よ う に つ と め る 。 ② 知 識 の 定 着 と考 察 の 向 上 を 図 る
た め に パ ソ コ ン を 利 用 した 問 題 演 習 を グ ル ー プ で させ る 。 ③ 各 学 習 項 目 に お い て 適 度 な 設
問 を重 視 し 、 生 徒 の 発 言 を 促 し主 体 的 考 察 と授 業 参 加 を 喚 起 す る 。
一ts一
4サ
ン フ ラ ン シ ス コ平 和 条 約 の 成 立
(1)教
材 と し て 取 り上 げ た 理 由
今 日 国 際 社 会 で は さ ま ざ ま な 問 題 を抱 え て い る が 高 度 成
長 ・安 定 成 長 をへ て 経 済 大 国 と な っ た 日 本 が そ の 中 で どの よ う な 役 割 を 果 た し て い くか 、
世 界 か ら注 目 さ れ て い る 。 戦 後 の 日本 の 再 出 発 は サ ン フ ラ ン シ ス コ 平 和 条 約 で あ っ た 。19
45年 か ら1952年 に わ た る 約7年
間 のGHQに
よ る 日 本 の"非
軍 事 化 ・民 主 化"を
はか っ た
占 領 政 策 下 で は 徹 底 的 に 日 本 経 済 は 抑 え ら れ た 。 しか し 占領 政 策 が 転 換 され 、"経 済 自 立 ・
再 軍 備"へ
とむ か っ た条 約 締 結 を実 現 させ た の は 、 国 際 環境 の 変 化 とそ れへ の 対 応 で あ っ
た 。 す な わ ち 米 ソ 冷 戦 の 進 行 が 米 国 の 占 領 政 策 を転 換 させ 、 全 面 講 和 か 単 独 講 和 か 揺 れ る
中 後 者 が 選 択 さ れ 独 立 を し 、 さ ま ざ ま な 問 題 を抱 え て な が ら も 経 済 大 国 へ 歩 み 始 め た こ と
を 、 史 料 を 用 い て 考 察 させ 今 日の 日 本 の 出 発 点 を 知 り、 い つ の 時 代 で も 国 際 環 境 を も と に
政 策 が 行 わ れ る こ と を 確 認 させ る こ と を 目的 と す る 。
(2)本
時 の ね らい
本 時 は2時
間 構 成 の2時
限 に あ た る 。 第1時
に つ い て の 内 容 を 取 り上 げ る 。 特 にGHQの
を確 認 さ せ る 。 第2時
五 大 改 革指 令 の 内容 、 国民 生活 の 圧 迫 の 様 子
限 で は米 ソ冷 戦 の 進 行 、 占領 政 策 の転 換 に よる 日本 の独 立 、サ ン フ
ラ ン シ ス コ 平 和 条 約 締 結 に ま つ わ る2つ
の 講 和 論 、 条 約 の 内 容 と現 代 に つ な が る 問 題 点 を
取 り上 げ る 。 学 習 指 導 要 領 で は 「日 本 史A」 の 「(4)第2次
「ア
(3)展
世 界 大 戦 後 の 日 本 と世 界 」 の
戦 後 政 治 の動 向 と国 際社 会 」 で あ る。
開例
学
学習項 目
導
限 で は 占領 政 策 と諸 改 革
習
活
動
○ 占領 期 の
○ 占領 期 の 日本 は どん な状 況 で あ っ た か 、 前 回
日本
の 授 業 を 思 い 出 し、GHQの
備
考
対 日初期 政 策 を復
習 す る 。 また この 時期 極 度 に圧 迫 され て い た 国
入
民 生 活 の 様 子 も再 確 認 す る 。
○ 米 ソ冷 戦
○ 戦 後 の 世 界 の 国 々 の情 勢 を地 図 で確 認 し、 米
の進行
ソ 冷 戦 の 進 行 を年 表 事 項 ・参 考 資 料 で 確 認 す る 。 前 首 相 フ ル ト ン 演 説 」、
参 考 資 料 は 「チ ャ ー チ ル
「中 ソ 友 好 同 盟 相 互 援 助
条約」
展
開
○ ア メ リカ
○ 終 戦 後 共 産 主 義 陣 営 が 勢 力 を 拡 大 し、 米 国 が
参 考 資 料 は 「ロ イ ヤ ル 陸
の 対 日占 領
極 東 に お け る 共 産 主 義 の 防 壁 と し て 日本 に 期 待
軍長官の演説」
政策の転換
して い た こ と、米 ソ冷 戦 の 進 行 と い う 国 際 環 境
の 変 化 に よ っ て 日本 の 位 置 づ け が 変 わ っ た こ と、
そ の た め 米 国 が 日本 を"非
線 か ら"独
軍 事 化 ・民 主 化"路
立 ・経 済 自 立"路
線 に い か に 切 り替
え た か を 年 表 事 項 ・参 考 資 料 を も と に考 察 す る 。
一17一
○ 単独 講和
○ 当 時 講 和 形 式 を め ぐ っ て 全 面 講 和 論 と単 独 講
参 考資 料 は
と全 面 講 和
和 論 が あ っ た が 、後 者 が 選 択 され た理 由 を参 考
「吉 田 首 相 の 国 会 発 言 」
資 料 を 読 み な が ら考 え る 。 東 大 総 長 南 原 繁 が 知
(『毎 日新 聞 』)「世 論 調 査
識 人 の 立 場 か ら永 世 中 立 ・非 軍 事 化 を提 唱 し 、
結 果 」(『 朝 日 新 聞 』 『毎
吉 田 内 閣 は現 実 的 に 当時 の国 際 環 境 で は 冷 戦 終
日 新 聞 』)
「世 界 』、
結 後 共 産 陣 営 を含 め た 全 面 講 和 を 待 つ こ と は 難
し く 、 と りあ え ず 資 本 主 義 陣 営 と講 和 を 結 ん で
い く 以 外 、 方 法 は な い とい う 考 え を持 っ て い た
こ と を理 解 す る 。
○ 講和 条約
○ 条 文 を 読 み 、 連 合 国 との 戦 争 状 態 が 終 結 し た
参 考 資 料 は 「サ ン フ ラ ン
の 内容 と問
こ と を理 解 す る 。 ま た 、 条 約 締 結 国 と の 間 の 国
シ ス コ平和 条 約 」
題点
家 と して の補 償 問題 は解 決 してい った が 、 ア ジ
ア 諸 国 の 人 々 か ら個 人 と し て の 補 償 を 求 め る 声
が あ が っ て きて い る こ とを理 解 す る。
○ 千 島列 島 の帰 属 をめ ぐる認 識 の 違 い か ら、 旧
ソ連 との 間 に 領土 問題 が生 じて い る こ と を理 解
す る 。
○ 同 日結 ば れ た 日米 安 全 保 障 条 約 に よ っ て 米 軍
が 日 本 に駐 屯 す る よ う に な り 、 基 地 問 題 が 生 じ
て い る こ と を理 解 す る 。
○ ま とめ
○ い つ の 時 代 で も一 国 だ け で 政 策 は 行 え ず 、 国
ま
際 環 境 に左 右 さ れ る と い う こ と 、 そ の 中 で 状 況
と
を 見 極 め 判 断 しな け れ ば な ら な い こ と を 理 解 す
め
る 。 また 一 つ の 政 策 が様 々 な意 味 で 後 世 に影 響
を 与 え る こ と も理 解 す る。
(4)評
価 の観 点
① 史 料 を 読 解 し 、 当 時 米 ソ 冷 戦 が 進 行 した た め ア メ リ カ の 対 日 政 策 が 転 換
し た こ と を 読 み 取 れ た か 。 ② 講 和 条 約 締 結 に お け る2つ
の 考 え 方 を理 解 で きた か
③ 講和
条 約 締 結 の 影響 、 そ の 後 の 日本 の社 会 の変 化 が 理 解 で きた か 。
(5)指
導 上 の 留意 点
① 史 料 の 精 選 に 努 め 、 生 徒 が 理 解 しや す い よ う に 工 夫 す る 。 ② 両 講 和
論 に つ い て は簡 潔 、 客 観 的 に説 明す る 。
一18一
皿
ア ジァ をめ ぐ る文 化 交 流 と交 易
1中
国 仏 教 僧 の イ ン ド旅 行 と東 ア ジ ア に お け る 仏 教 圏 の 形 成
(1)教
材 と し て 取 り上 げ た 理 由
仏 教 は 紀 元1世
紀 頃 、 シ ル ク ロ ー ドの 彼 方 か ら キ ャ ラ バ
ン と 共 に 中 国 へ 伝 来 し た と言 わ れ て い る 。 中 国 の 支 配 者 た ち は 国 家 の 安 定 の 拠 り所 を 仏 教
に 託 し 、 そ の 求 め に 応 じて 西 域 の 多 く の 僧 た ち が 中 国 へ や っ て き た 。 西 域 僧 の 布 教 と 漢 語
訳 の 仏 典 を 通 し て 、 人 々 は 仏 教 を理 解 し 、 そ れ と共 に 仏 教 は 中 国 に 根 付 く こ と に な る 。 し
か し 、 信 仰 の 深 ま り と共 に 、 イ ン ドに 赴 い て 、 よ り深 く仏 法 を 知 り た い とい う 中 国 僧 も 続
出 し た 。5世
紀 の 法 顕 や7世
紀 の 玄 奨 ・義 浄 は 多 くの 国 々 を訪 れ て 、 そ れ ぞ れ の 地 域 の 人 々
と親 し く交 わ り、 文 化 交 流 を 果 た す と共 に 経 典 を 持 ち 帰 り 、 漢 訳 を し た 。 そ し て 、 そ れ ら
の 漢 訳 経 典 に基 づ い た 仏 教 文 化 が華 開 き、東 ア ジ アへ 伝 播 したの で あ る 。
こ れ か らは ます ます 地 球 規模 で物 事 を 考 え 、行 動 しな け れ ば な らな い 時代 とな った 。 そ
の た め に は 国 や 民 族 の枠 を超 えて 交流 し、 異文 化 を お互 いが 十 分 理 解 しあ え る 関 係 を築 く
必 要 が あ る 。 ま た 、 新 しい 時 代 に ふ さ わ し い 文 化 を 形 成 し な け れ ば な ら な い 。 そ こ で 中 国
仏 教 僧 の イ ン ド旅 行 と そ の 後 の 仏 教 文 化 と い う点 か ら 、 国 際 交 流 と そ れ に よ る 文 化 形 成 を
学 習 し 、 国 際 社 会 に 生 き る 人 間 と して の 自覚 を 育 成 す る こ と を ね ら い と し て 、 こ の 教 材 を
と りあ げ た 。
(2)本
時 の ね らい
本 時 は 「東 ア ジ ア ・内 陸 ア ジ ア 世 界 の 形 成 」 の8時
1時 限 目 は 東 ア ジ ア ・内 陸 ア ジ ア の 風 土 、 第2時
は 秦 ・漢 帝 国 、 第5時
限 目に あ た る。 第
限 目 は 中 華 文 明 の 起 源 、 第3・4時
限 目 は 遊 牧 国 家 の 動 向 、 第6・7・8時
限 目
限 目は唐 帝 国 と東 ア ジ ア 諸
民 族 の 活 動 を と りあ げ る 。 本 時 で は 玄 突 の 旅 行 記 な ど を 資 料 と し て 、 旅 の 様 子 や 帰 国 後 の
経 典 の 漢 訳 化 した こ と を 知 り 、 東 ア ジ ア 文 化 の 特 色 で あ る 漢 訳 仏 教 圏 の 形 成 を考 察 させ る 。
学 習 指 導 要 領 で の 関 連 分 野 は 「世 界 史A」 の 「(1)諸 地 域 世 界 と交 流 圏 」 の
ア 世 界 」、 「世 界 史B」
の 「(2)諸 地 域 世 界 の 形 成 」 の 「ウ
「ア
東アジ
東 ア ジ ア ・内 陸 ア ジ ア 世 界 の
形 成」 で あ る。
(3)展
開例
学習項 目
導
学
習
活
動
○ 「西 遊 記 」 の 絵 を 見 て 、 三 蔵 法 師 は実 在 の 人 物 で 、
ワ ー ク シ ー ト
遊記」
本 や ドラ マ な ど の
○ 挿 し絵
「西 遊 記 」 の モ デ ル に な っ た こ と
「西 遊 記 」
を確 認 す る。
を した こ と を確 認 す る 。
○ 玄 装 以 外 に も 、 中 国 人 で イ ン ドに 取 経 の 旅 に 出 た
一
考
○ 玄 と 「西
○ 玄 装 は イ ン ドに経 典 を 求 め 、 仏 教 を学 ぶ た め に 旅
入
備
僧 が 百 人 以 上 い た こ と を理 解 す る 。
一19一
}
○旅 の行程
○ 法 顕 ・玄 ・義 浄 の ル ー ト を 地 図 上 で 確 認 す る 。
ワ ー ク シ ー ト
○ ル ー トに 関 連 す る 地 形 を 記 入 し 、 旅 行 の 困 難 さ を
○ 東 ア ジ ア大 地 図
考 える。
○ トル フ ァ ン 、 カ シ ュ ガ ル 、 ガ ン ダ ー ラ な ど の 写 真
○写真
を見 て 、 旅先 の雰 囲気 をつ か む 。
展
○ 旅行の様子
0玄 の 旅 行 は 高 昌 国 王 や 西 突 厭 国 王 な ど の 援 助 に
よ っ て も 助 け ら れ た こ と を考 察 す る 。
○ 玄奨 と義 浄 は ナ ー ラ ン ダー寺 院 で研 究 生 活 を した
ρ
○資料
「大 慈恩寺 三 蔵法
師伝 」
こ と を学 習 す る 。
○ ハ ル シ ャ 王 の 開 い た 大 法 論 大 会 で 玄 奨 は イ ン ド僧
と学 術 交 流 した こ と を 学 習 す る 。
開
○帰 国後 の経
○ 帰 国 後 、 求 法 僧 は 持 ち 帰 っ た 経 典 の 翻 訳 に 従 事 し、 ○資 料
典の翻訳
中 国 人 は ま す ま す 漢 訳 経 典 か ら仏 教 に 入 る こ と に な
「玄 癸 帰 唐 図 」
り、 仏 教 が 中 国 に 普 及 し た こ と を 学 習 す る 。
「般 若 心 経 」
○ 玄突 著 「
大 唐 西域 記」 は 当 時知 られ て い な か っ た
「大 唐 西 域 記 」
西 域 ・ イ ン ド の 地 理 ・風 俗 ・宗 教 な ど が 記 さ れ て い
た こ と を学 習 す る 。
・日本
○ 新 羅 は 仏 教 を 国 教 と し 、 す ぐれ た 仏 教 建 築 や 美 術
ワ ー ク シ ー ト
など漢訳 仏教
が 生 ま れ 、 高 麗 の 時 代 に は 「高 麗 大 蔵 経 」 を 完 成 さ
○ 中 国 ・朝 鮮
圏の形 成
せ た こ と を学 習 す る 。
本の年表
○ 日本 は 遣唐 使 を 派 遣 し、唐 に な らっ て律 令 国 家 の
○パ ネ ル
○朝鮮
ま
と
建 設 を す す め 、 仏 教 を盛 ん に し た こ と を学 習 す る 。
・日
「仏 国 寺 」
「高 麗 大 蔵 経 」
め
「薬 師 寺 」
レ 東大寺」
(4)評
価 の観 点
① 中 国 仏教 僧 の 旅行 の 困難 さ と同 時 に 多 くの 人 の援 助 に よ って 助 け られ
た こ と を 理 解 で き た か 。 ② 玄 な ど の 漢 訳 した 経 典 が 朝 鮮 ・日 本 に 伝 わ り 、 東 ア ジ ア 世 界
の 特 徴 で あ る 漢 訳 仏 教 圏 を 形 成 した こ と が 理 解 で き た か 。
(5)指
導上の 留意点
① ワ ー ク シ ー トに 図 や 写 真 、 地 図 、 資 料 を の せ 、 興 味 ・関 心 を 育 て 、
わ か り や す い も の に 工 夫 す る 。 ② 難 解 な 資 料 に つ い て は 、 生 徒 が 理 解 しや す い よ う に 意 訳
す る 。 ③ 中 国 仏 教 僧 の 訳 し た 漢 訳 経 典 に 基 づ く仏 教 文 化 が 朝 鮮 や 日 本 に 伝 播 し 、 東 ア ジ ア
文 化 を 形 成 した こ と を 注 目 さ せ る 。
一20一
2『
世 界 の 記 述(東
(1)教
方 見 聞 録)』 か ら探 る モ ン ゴ ル 帝 国 に お け る 東 西 交 流
材 と し て 取 り上 げ た 理 由
モ ン ゴ ル 帝 国 の 成 立 に よ り、13∼14世
紀 の ユ ー ラ シ ア大
陸 の 大 部 分 に は 、 政 治 的 秩 序 が も た ら さ れ 、 経 済 ・文 化 両 面 で 東 西 交 流 が 盛 ん に な っ た 。
モ ン ゴ ル 帝 国 は 、 広 大 な 領 土 に駅 伝 制 を 設 け て 、 内 陸 の 交 通 路 を 整 備 し 、 通 商 に 力 を 注 い
だ 。 同 じ頃 、 十 字 軍 を 契 機 に め ざ ま しい 経 済 発 展 を遂 げ た イ タ リ ア 諸 都 市 の 商 人 は 、 東 方
の 産 物 を 求 め て 、 モ ン ゴ ル 帝 国 の 商 業 路 に 足 を踏 み 入 れ る こ と に な る 。 ヴ ェ ネ チ ア 出 身 の
マ ル コeポ
ー ロ は 、 父 や 叔 父 と と も に 、 中 央 ア ジ ア 経 由 で 元 を 訪 れ 、 フ ビ ラ イ=ハ
え た 。 マ ル コeポ
ンに仕
ー ロ は 、 モ ン ゴ ル 人 の 補 佐 役 と し て 支 配 層 を形 成 した色 目人 の 政 策 ス タ ッ
フ と し て 活 躍 し、 元 朝 に お け る 色 目 人 重 用 の 具 体 例 と して 、 モ ン ゴ ル 帝 国 の 世 界 帝 国 的 性
格 を 象 徴 し て い る 。 マ ル コeポ
ー ロ が 、 口 述 した 「
世 界 の 記 述(東
方 見 聞 録)』 は 、 途 中
の 陸 海 路 の 見 聞 や フ ビ ラ イ 治 世 の 出 来 事 の み な ら ず 、 ジ パ ン グ な ど の 伝 聞 も含 ん で い る 。
そ して泉 州 や杭 州 な どの都 市 の 繁 栄 が 当 時 の 世 界 最 高 水 準 だ っ た こ と も紹 介 して い る 。
「世 界 の 記 述 』 の 中 の 文 章 を 紹 介 す る こ と に よ り 、 モ ン ゴ ル 帝 国 に お け る 東 西 交 流 の 様 子
を 理 解 させ た い 。 ま た 、 最 近 話 題 に な っ た マ ル コ=ポ
ー ロ は、 実 は 中 国 に行 って い な い と
い う説 と そ れ に 対 す る 従 来 か ら の 説 明 を 提 示 し、 生 徒 に 考 え さ せ る 。 「モ ン ゴ ル の 平 和 」
に よるユ ー ラ シ ア循 環 交 易 路 の 発 展 とユ ー ラ シ アの 一 体 化 、及 び 元 の 大 都 を 中心 と した 東
西 交 流 を理 解 さ せ る た め 、 『世 界 の 記 述 』 を 取 り上 げ た 。
(2)本
時 の ね らい
中 国 支 配 、 第2限
本 時 は 、3時
間 構 成 の 第3時
限 目 に あ た る 。 第1時
限 目 で は 遼 ・金 の
目 で は モ ン ゴ ル 帝 国 の 出 現 と 元 の 中 国 支 配 を 学 習 す る 。 本 時 で は 、 『世
界 の 記 述 』 を 用 い 、 モ ン ゴ ル 帝 国 の 出 現 とい う 時 代 背 景 の 中 で の 東 西 交 流 の 発 展 を 考 察 さ
せ る 。 学 習 指 導 要 領 で の 関 連 分 野 は 、 世 界 史Aの
ラ シ ア の 交 流 圏 」、 ま た は 世 界 史Bの
「(3)諸
「(1)諸
地 域 世 界 と交 流 圏 」 の
地 域 世 界 の 交 流 と再 編 」 の
「オ.ユ
「ウ.内
ー
陸 ア ジ
ア の動 向 と諸 地 域 世 界 」 で あ る 。
(3)展
開例
学
学習項 目
○ マ ル コ=ボ
ー
ロ の紹 介
活
動
ー ロ は黄 金 の 国 ジパ ン グ を西 欧 に初 め
て紹 介 し、 ヴ ェ ネチ アか ら中国 、 イ ン ドまで 旅 した
導
入
○ マ ル コ=ポ
習
備
考
○ マ ル コ=ポ
ー ロ
の 肖像 画 と コ イ ン
旅 行 家 と して有 名 な こ とを説 明 す る。
○ マ ル コ=ボ
ー
ロの旅 の行 程
○ マ ル コ=ポ
ー ロの 旅 の 行 程 をモ ンゴ ル帝 国 の 領 域
と と も に、 確 認 させ る。
○ 地図
「モ ン ゴ ル
帝 国の地図 とマ ル
コ=ポ
ー ロの行路 」
一
○ モ ン ゴ ル帝
○ マ ル コ=ポ
国 の 発 展 とマ
父 が 東 方 貿 易 に 従 事 し た 商 人 だ っ た こ と 、 フ ビ ラ イe
OVTR:映
ル コ=ポ
ハ ン に 色 目 人 と して 重 用 さ れ た こ と 、 ハ ン の 使 節 と
『マ ル コ=ポ
の一生
ー ロ
ー ロの 人 生 と略 歴 を知 る。 特 に 父 と叔
して 中 国 各 地 を 歴 訪 した こ と 、 帰 国 後 自 らの 体 験 を
一21一
○ 資 料 「略 年 譜 」
画
ー ロ 』
口 述 し た こ と な ど を 年 譜 やVTRか
展
ら確 認 させ る 。
○元 の中 国統
○ 元 が モ ン ゴ ル 人 第 一 主 義 を と り、 モ ン ゴ ル 人 と 色
治 の 説 明 と、
目 人 が 支 配 構 造 を 形 成 し 、 マ ル コ=ポ
モ ンゴル帝 国
多 くの 色 目人 が 元 朝 に お い て 重 用 さ れ た こ と を 説 明
で 活 躍 した 西
す る 。 そ して 、 東 西 交 通 網 の 発 達 に 伴 い 、 多 く の 西
二 、 ル ブ ル ッ ク 、
方世 界の 人々
方 世 界 の 人 々 が 多様 な 目的で モ ンゴ ル帝 国 を 訪 れ た
イ ブ ンeバ
の紹 介
こ と を紹 介 す る 。
タ等 の略 歴
○ 『世 界 の 記
○ マ ル コ=ポ
述(東
の 紀 行 文 を 当 時 の 挿 し絵 や 写 真 付 きで 紹 介 し 、 生 徒
方見 聞
録)』 の 紹 介
ー ロ著
ー ロ を は じめ
『世 界 の 記 述 』 の 中 の い く つ か
に 様 々 な 事 実 を 読 み と らせ る 。
○ ワ ー ク シ ー
ト
・元 の 支 配 構 造
・ プ ラ ノeカ
ル ビ
ッ ト ゥー
○ ワ ー ク シ ー ト
『世 界 の 記 述 』 と
14世 紀 写 本 の 挿 し
絵
写 真 「交 紗 」
○ マ ル コeボ
ー
○ マ ル コ=ポ
ー ロ は 、 中国 に行 って い ない とい う説
○ ワ ー ク シ ー ト
ロ は中国 に行 っ
が あ る こ と を説 明 し 、 そ の 理 由 を 提 示 す る 。 そ れ に
て い な い とい
対 す る 従 来 か ら の 説 明 も提 示 し 、 生 徒 に 考 え させ る 。 ル コeポ
う説 の 紹 介
F.ウ
ッ ド著
『マ
ー ロ は本
当 に 中国 に行 っ た
の か』
開
○ モ ンゴル帝
○ モ ン ゴ ル 帝 国 に よ る 「世 界 交 易 シ ス テ ム 」 が 形 成
国に よる
さ れ た こ と 、 そ し て マ ル コ=ポ
「世
ー ロ に代 表 され る イ
○ ワ ー ク シ ー ト
「ユ ー ラ シ ア 大 陸
界交易 シ ステ
タ リ ア商 人 も東 方貿 易 に進 出 した こ と を地 図 で 説 明
ム」 の 形 成 と
す る 。
文化 交流
○ モ ン ゴ ル の 征 服 は 、 多 くの 文 化 圏 との 接 触 を 促 し、 ○ ワ ー ク シ ー ト
マ ル コ=ポ
循 環 交 易 路 図」
ー ロ も ロ ー マ 教 皇 と フ ビ ラ イ の 仲 介 を し、
西 方 に 火 薬 ・羅 針 盤 等 が 伝 わ っ た こ と を 説 明 す る 。
ま
と
め
○ マ ル コ=ポ
ー
○ モ ン ゴル帝 国 の成 立 に よ る東 西 交 流 の 活 発 化 とい
ロ の 旅 と後 世
う 時 代 背 景 と マ ル コ=ポ
の影 響
航 海 時代 へ の影 響 をふ まえて 説 明 す る。
(4)評
価 の観 点
ー ロ の旅 につ い て 、 後 の 大
① モ ン ゴル帝 国 の成 立 に よ り、東 西 の貿 易 や 文 化 の 交 流 が 飛 躍 的 に発 展
し た こ と を 理 解 し た か 。 ② 元 に お い て は 、 モ ン ゴ ル 人 と 色 目 人(西
を 形 成 し 、 マ ル コ=ポ
方 の 人 々)が
支配構 造
ー ロ を は じ め とす る 多 くの 色 目 人 が 重 用 さ れ た こ と を 理 解 し た か 。
③ 多 少 の フ ィ ク シ ョ ン性 を持 つ
『世 界 の 記 述 』 を 検 証 し て い く こ と に よ り 、 様 々 な 事 実 が
導 き 出 さ れ る こ と を理 解 した か 。
(5)指
導 上 の留 意 点
① 生 徒 の 学 習 意 欲 を高 め 、 モ ン ゴル 帝 国 時 代 の 東 西 交 流 につ い て の
理 解 を 深 め る よ う な 資 料 を用 意 す る 。 ② 資 料 を 活 用 しや す い よ う に 、 図 や 写 真 を使 用 す る 。
③ 紀 行 文 か らの文 章 の 引用 の際 に は 、適 切 な選 択 を行 う よ う留 意 す る。④ 生 徒 に考 え させ
る ワ ー ク シ ー トで は 、 資 料 を 整 理 し て 提 示 し、 理 解 しや す い よ う に す る 。
一22一
3「
陶 磁 器 か ら見 た 世 界 商 業 の 進 展 」
(1)教
材 と し て 取 り上 げ た 理 由
英 語 でchinaと
呼 ば れ る よ うに 、磁 器 は 中 国 で 発 明 され 、
主 原 料 や 製 造 方 法 な どの 点 で 、 か つ て 他 地 域 で は 生 産 が 難 しい 商 品 で あ っ た 。 各 地 に 残 さ
れ た 陶磁 器 か ら陶 磁 器 の 生 産 や 交 易 の 実 態 を知 る こ とが で き、 さ らに 、 中 国磁 器 そ っ く り
に 作 ら れ た ヨ ー ロ ッパ の 陶 磁 器 や 西 ア ジ ア や 日 本 ・ヨ ー ロ ッパ の 影 響 を受 け た 中 国 磁 器 か
ら 、 東 西 の 文 化 交 流 を 理 解 で き る 。 陶 磁 器 を 一 つ の 例 と し て 、 世 界 商 業 の 進 展 と17・18世
紀 の ア ジ ア を め ぐ る 交 易 と 文 化 交 流 の 歴 史 を 理 解 さ せ る こ と を ね ら い と して 、 本 教 材 を 取
り上 げ た 。
(2)本
時 のね らい
本 時 は2時
目 に あ た る 。 第1・2時
動 向 を 、 第3・4時
間連続の
「演 習 世 界 史 」3回(6時
間)に
お け る 第5時
限
限 目 に 明 ・清 ・李 氏 朝 鮮 ・ 日 本 と 、 オ ス マ ン な ど イ ス ラ ム 帝 国 の
限 目 に オ ラ ン ダの 盛 衰 、 イ ギ リ ス 革 命 、 三 十 年 戦 争 、 ブ ル ボ ン朝 と普 ・
填 の 動 向 、 ロ シ ア の 発 展 を 学 ぶ 。 本 時 は 陶 磁 器 や 茶 を 例 と し て ア ジ ア 交 易 へ の ヨ ー ロ ッパ
人 の 参 入 と17・18世
紀 の 東 西 文 化 交 流 を 学 び 、 第6時
限 目 に は 砂 糖 ・綿 花 ・コ ー ヒ ー ・奴
隷 な ど の 取 り引 き を 中 心 に した 大 西 洋 貿 易 の 展 開 と英 仏 植 民 地 争 奪 戦 争 に つ い て 学 ぶ 。 学
習 指 導 要 領 で の 関連 分 野 は
「世 界 史A」
の
「(2)一 体 化 す る 世 界 」 の
「イ
ア ジア の諸帝
国 と ヨ ー ロ ッパ の 主 権 国 家 体 制 」 で あ る 。
(3)展
開例
学習項 目
導
入
学
習
活
動
備
考
○ 磁 器 の特
○ 市 販 の 磁 器 を 手 に 取 り 、 土 器 ・陶 器 と 比 べ 、 原 料
素 焼 き の 植 木 鉢 ・陶
徴 、 英語 の
と焼 成 温 度 ・製 造 技 術 が 違 う こ と を 理 解 す る 。 か つ
器 の 鉢 ・有 田 焼 の 壺 ・
chinaと
て の 中 国 の 特 産 品 と し て 、 磁 器 が 英 語 でchinaと
英 和 辞 書 ・VTR
い う
よ
言 葉 の由 来
ば れ る こ と を知 る。
○ アジ アの
○ 中 国 磁 器 は ア ジ ア各 地 に運 ば れ 、 イス ラ ム 世 界 に
磁 器交 易 と
も 多 く伝 わ っ た こ と を 復 習 す る 。
青花」
○ 当時 の世 界商 業 に お け る ア ジ ア 産の 主 な商 品 は 香
VTR「
アジ アにお
辛 料 、 絹 な ど で あ っ た こ と を 確 認 す る 。!7世
紀初 頭
行」
け る交易 と
オ ラ ン ダ は 東 イ ン ド会 社 を 設 立 し 、 中 国 の 生 糸 や 絹
資料
ヨ ー ロ ツ パ
織 物 ・陶 磁 器 、 東 南 ア ジ ア の 香 辛 料 な ど を 輸 入 し て
の輸 入 品 」
人の参入
ヨ ー ロ ッパ 各 国 に 販 売 す る と 共 に 中 国 産 の 生 糸 と 日
「日 曜 美 術 館 」
「トプ カ プ 宮 の 中 国
イ スラム世
界
展
017世
紀 の
世 界陶 芸紀
「東 イ ン ド か ら
本 銀 と の 交 易 で も利 益 を あ げ た こ と を理 解 す る 。
年表
○ 日本 の 磁
○ 秀 吉 の 朝 鮮 出 兵 以 後 、 朝 鮮 人 陶 工 に よ り有 田 で 日
資 料 「オ ラ ン ダ 東 イ
器 生 産の 開
本 の磁 器 生 産 が 始 ま った こ とを 理 解 す る 。
ン ド会 社 名 入 り有 田
開
始
の染 付 」
地図
一23一
紀 初 頭 ヨ ー ロ ッパ で 中 国 磁 器 な ど を 模 倣 し て
VTR「
世 界陶 芸紀
○ ヨ ー ロ ツ
018世
パの 磁器 生
磁 器 生 産が 始 ま っ た こ と を知 る 。
行 」 「マ イ セ ン 」
産
○ 当 時 の 人 々 が どの よ う な 食 器 を 使 用 して い た か を
資料
知る
○ ヨ ー ロ ツ
○ ヨ ー ロ ッパ と ア ジ ア の 文 化 交 流 を示 す も の と し て
資料
パ とアジ ア
は 暦 法 ・時 計 ・地 理 や 科 挙 ・農 本 思 想 ・庭 園 ・漆 器 ・
ア ジ ア の文 化 交 流 」
の文化交流
扇 子 な どが あ る こ と を 知 る 。 日 本 の
の
「ヨ ー ロ ッ パ と
「鎖 国 」 や 中 国
「海 禁 」 は ヨ ー ロ ッ パ と の 交 流 が 体 制 の 動 揺 に は
至 らぬ よ う に した 政 策 で あ る こ と を確 認 す る 。
018世
紀英
018世
紀 英 国 で 、 喫 茶 の 習慣 が 広 まる よ うに な っ た
国の 喫茶 の
こ と 、 茶 の 対 価 と して 中 国 に 大 量 の 銀 が 流 入 し た こ
習 慣 の広 ま
と を知 る。
資 料 「広 東 に お け る
茶 の 取 り引 き」
り
ま
○ 世 界商業
017・18世
の進展
る と共 に、 ア メ リ カや ア フ リカ と ヨー ロ ッパ と の 交
紀 の ア ジ ア と ヨー ロ ッパ との 交 流 を 知
と
資 料 「中 国 か ら イ ギ
リスへ の茶 の輸 出額 」
易 と文 化 交流 や世 界商 業 の進 展 を示 す 例 と して 何 が
め
あ る か な ど を考 え る 。
(4)評
価 の観 点
①17・18世
紀 の ア ジ ア と ヨ ー ロ ッパ と の 交 易 に お い て 、 陶 磁 器 が 商 品 の
一 つ で あ り、 世 界 各 地 の 陶 磁 器 生 産 も東 西 文 化 の 交 流 の 一 例 で あ る こ と を 理 解 で き た か 。
② 生 糸 ・香 辛 料 ・茶 な ど が 当 時 の 世 界 商 業 に お け る 重 要 な 商 品 で あ る こ と を 理 解 で き た か 。
(5)指
導上の留意点
① 絹 や 茶 ・陶 磁 器 な ど の 商 品 の 対 価 と し て の 銀 の 中 国 へ の 流 入 に 着
目 さ せ る 。 さ ら に 、 ヨ ー ロ ッパ に お け る 茶 の 消 費 拡 大 に 伴 う 中 国 へ の 銀 の 流 入 が 、 そ の 後
の ア ジ ア と ヨ ー ロ ッ パ と の 貿 易 構 造 の 変 化 に つ な が る こ と に 触 れ る 。 ② 図 版 ・VTR・
材 提 示 装 置 な ど を 活 用 し 、 よ り具 体 的 に 理 解 で き る よ う に す る 。
一24一
教
まとめ
今 回 の 研 究 は 、 「生 徒 の 主 体 的 な 学 習 」 の 研 究 ・実 践 を 目指 し、 常 に 「主 体 的 に 学 ぶ と は ど
う い う こ と か 」 と い う 問 い を 念 頭 に 、 互 い の 意 見 を ぶ つ け 合 い な が ら 、 指 導 案 を 作 成 して きた 。
そ の 中 か ら 「生 徒 に 主 体 的 に 学 習 さ せ る 」 と い う こ と は 、 単 に 作 業 的 ・体 験 的 な 学 習 を 導 入 す
る こ と で あ る と い う 限 定 的 な と ら え 方 を す る の で は な く、 も っ と 多 様 な 指 導 の 工 夫 が 可 能 な の
で は な い か とい う共 通 の 認 識 に到 っ た。 そ こで まず 、 シ ミ ュ レー シ ョン教材 を利 用 した取 組 で
は 、 生 徒 同 士 の 討 論 ・発 表 を 通 し て 、 生 徒 が 問 題 意 識 を 持 ち 、 自 ら探 求 して ゆ こ う と す る 姿 勢
を 引 き 出 した 。 ま た 、 パ ソ コ ン や 視 聴 覚 教 材 を 利 用 す る こ と に よ り、 生 徒 の 興 味 ・関 心 を 引 き
っ け る と と も に 、 探 究 さ せ る 材 料 を 与 え よ う と した 取 組 を 行 っ た 。 さ ら に 、 プ リ ン ト(ワ ー ク
シ ー ト)の 工 夫 に よ る 生 徒 の 能 動 的 な 活 動 や 資 料 等 の 提 示 方 法 の 工 夫 か ら 、 主 体 的 な 探 求 を 導
き 出 す 取 組 な ど を 行 っ た が 、 い ず れ も何 らか の 場 面 に お い て 「生 徒 の 主 体 的 な 学 習 」 を 引 き 出
す こ と にが で きた 。
しか し、 我 々 の 研 究 主 題 に も掲 げ た よ う に 、 主 体 的 に 「学 ぶ 」 だ け で な く 、 「行 動 す る(で
き る)」 こ とが 今 、 地 理 歴 史 科 に 求 め ら れ て い る 課 題 で あ る 。 そ の 点 か ら 考 え て み る と 、 必 ず
し も 各 々 の 取 組 が 充 分 で あ っ た と は 言 え な い 。 例 え ば 、 「国 際 協 力 」 に つ い て そ の 重 要 性 を 理
解 す る と い う だ け で な く 、 も う一 歩 す す ん で 積 極 的 に 参 加 して ゆ こ う とい う 生 徒 の 意 識 を 高 め
る た め の 工 夫 が 必 要 で あ っ た 。 ま た 歴 史 で は 、 歴 史 的 な 見 方 ・考 え 方 を も と に 今 、 ど の よ う に
行 動 で き る か(す
べ き か)を
具 体 的 に 考 察(決
意)さ
せ る ため の 工 夫 が 大 切 で あ っ た 。今 回 の
研 究 で 得 た 、 こ れ ら の 課 題 を 踏 ま え 、 今 後 も 「主 体 的 に 学 び 行 動 で き る 」 よ う な 指 導 の 工 夫 を
追 究 し、 継 続 的 な 検 証 を し て ゆ き た い 。
一25一
概究主題
現 代 社 会 の 諸 問 題 に対 し、主 体 的 に考 え 、 自 ら課 題 を把 握 し、
判 断 し、解 決 してい く資質 や態 度 を育 成 す る指 導 の 工 夫
1主
1主
題 設 定 の 理 由 と研 究 の 経 過
題 設 定 の理 由
科 学 技 術 の 発展 は 、生 産 や 流 通 か ら消費 生 活 の あ りよ うまで を変 え、 私 た ち に物 質面 で の
充 足 を も た ら し た は ず で あ る 。 た と え ば 、 情 報 通 信 技 術 の 発 達 に よ り実 現 した 、 フ ァ ッ ク ス
や 携 帯 電 話 、 パ ー ソナ ル コ ン ピュ ー タの飛 躍 的 な普 及 は、 私 た ちの 社 会 生 活 に大 きな利 便 を
与 え た 。 こ の 情 報 化 の 進 展 は ま だ 過 渡 期 の 段 階 で あ り 、 公 共 部 門 で は 次 代 の 社 会 目標 と も 見
な さ れ つ つ あ る 。 しか し、 こ の こ と が 、 本 来 は 社 会 の 現 実 の な か で 見 聞 き し、 あ る い は 触 れ
た り言 葉 を 交 わ した り して 獲 得 して き た は ず の 事 物 や 人 間 との 関 係 を 、 そ の 関 係 を 形 成 す る
際 の 入 口 に 相 当 す る情 報 の み で 覆 い 隠 して しま う よう な社 会 の 実 現 に終 わ っ て し ま うな ら、
私 た ち か ら事 物 や 人 間 と の 関 係 を積 極 的 に つ くろ う と試 行 錯 誤 す る 個 々 人 の 主 体 性 を 奪 っ て
し ま うだ ろ う。 また 、 そ の 情 報 が 玉 石 混 清 で 多 岐 に わ た る ため に 、受 動 的 で 偏 っ た 受 け 取 り
方 を す れ ば 、 公 正 な 判 断 に つ な が る も の か ら は ほ ど遠 い も の と な っ て し ま う に 違 い な い 。
私 た ち は 、 科 学 技 術 の 発 展 が 人 間 の さ ま ざ ま な 活 動 に 「光 」 を 与 え た 反 面 、 自然 環 境 へ の
負 荷 を増 大 さ せ 、 人 間 自 身 の 安 全 を 脅 か す 「影 」 を も与 え た こ と を 、 す で に 知 っ て い る 。 地
球 環 境 問 題 は そ の な か で も重 要 な 一 例 だ ろ う 。 しか し 、 酸 性 雨 に よ る 森 林 破 壊 や 温 室 効 果 ガ
ス の 地 球 温 暖 化 に つ い て 、 情 報 と し て 知 っ て い る=眺
め て い る だ け で は 、 そ れ を 課 題 と して
把 握 し問 題 を 解 決 し よ う とす る 姿 勢 に は ほ ど 遠 い 。 こ の こ と を 、 自分 の 身 近 な 生 活 を 見 直 し
た 上 で 、 自 分 に は 何 が で き る の か を 考 え 、 社 会 シ ス テ ム そ の も の が もつ 問 題 点 と して 主 体 的
に考 え られ る よ う に な らな け れ ば 、私 た ちが そ の事 象 と関係 を結 ぶ接 点 に な らな い か ら だ。
現 代 社 会 は 、一 つ の情 報 で 判 断 す る こ と を許 さぬ 、複 合 的 な要 因 で生 じて い る 諸 問 題 か ら
成 り立 っ て い る と言 っ て も よ い 。 学 校 教 育 の 現 場 で は 、 生 徒 が 情 報 を与 え ら れ 語 彙 を 増 や し
て い く だ け で な く 、 具 体 的 な 事 例 を 通 して 学 び 、 そ れ を 使 っ て 言 葉 で 説 明 で き た り 、 社 会 人
と な っ た 後 も職 業 上 ・生 活 上 生 起 す る 諸 問 題 に 対 処 で き る よ う な 見 方 ・考 え 方 を 、 自 分 の 従
来 の 見 方 ・考 え 方 に 組 み 込 め るe成
長 で きる よ う な授 業 が 肝 要 で あ ろ う。 そ の よ う な精 神 態
度 は 、 物 質 的 に は 豊 か な 社 会 の な か で 、 現 状 を 追 認 し 、 無 関 心 な ま ま そ の な りゆ き を 現 在 の
政 治 に 任 せ き り に な っ て い る 、 ご く私 的 な 生 き方 を 豊 か に して い く契 機 に な り う る 。
「生 き る 力 」 の 源 泉 と は 、 つ ま る と こ ろ 自 己 の 幸 福 を 追 求 す る 意 志 に ほ か な ら な い 。 そ の
た め に は 、 自 分 の 個 人 史 を ど の よ う に 未 来 に 向 か っ て か た ち つ くっ て い くの か を 、 具 体 的 に
イ メ ー ジ す る こ とが 必 要 で あ る 。 未 来 の 個 人 史 は 自 己 責 任 に よ る 選 択 の 連 続 だ か ら で あ る 。
そ し て 、 こ こ で 引 き 出 さ れ た 当 事 者 感 覚 を 、 さ ら に す す ん で 社 会 シ ス テ ム の 選 択e改
革 の意
志 へ と架 橋 で き る よ う な 「考 え る 力 」 の 育 成 は 急 務 で あ ろ う 。 課 題 追 究 型 学 習 は 、 そ の た め
の 準 備 運 動 と し て 必 要 不 可 欠 な の で あ る 。 新 学 習 指 導 要 領 に 即 して 、 こ の 課 題 追 究 の 型 や 方
法 を 工 夫 す る こ とが 、 今 年 度 公 民 科 研 究 の 主 題 で あ る 。
一26一
2研
究 の経 過
公 民 科 部 会 で は 、 主 題 の 趣 旨 に 沿 っ た テ ー マ と して 、 「豊 か な 生 活 と 社 会 福 祉 」 と 「望 ま
し い 政 治 の 在 り方 」 を 扱 う こ と と し 、2つ
第1分
の 分 科会 に 分 か れ て研 究 を 行 っ た 。
科 会 で は 、 課 題 追 究 型 学 習 を 公 民 科 の 導 入 部 と し て 進 め る た め 、 『現 代 社 会 』 に 新
し く加 わ っ た 大 項 目 「現 代 に 生 き る 私 た ち の 課 題 」 の う ち 「豊 か な 生 活 と社 会 福 祉 」 を 取 り
上 げ 、LHRで
の 進路 指導 や ビ ジ ネス系 の専 門学 校 で す で に一 部 行 わ れ て い る ラ イ フ プ ラ ン
の 作 成 を 通 し て 、 生 徒 自 己 の 将 来 を具 体 的 な 未 来 像 と し て 提 示 す る 作 業 を とお し て 、 人 生 各
過 程 に お け る さ ま ざ ま な 問 題 に 対 処 す る た め 、 就 業 ・結 婚 ・出 産 ・娯 楽 ・住 宅 ・医 療 ・税 な
ど の う ち か ら興 味 関 心 に 応 じて 課 題 を設 定 し 、 特 に 社 会 保 険 や 国 民 年 金 、 公 共 事 業 な ど 公 共
部 門 が 担 う社 会 福 祉 に つ い て 、 少 子 高 齢 社 会 と の 関 連 で 将 来 の 社 会 状 況 の 変 化 を 見 据 え な が
ら 、 基 礎 的 な 説 明 も 交 え た 授 業 展 開 の 工 夫 を 検 討 した 。
第2分
科 会 で は 、 新 学 習 指 導 要 領 、 『政 治 ・経 済 』 の 大 項 目 に お け る 「現 代 の 政 治 」 の 中
の 「民 主 政 治 の 本 質 」 と 「現 代 政 治 の 特 質 」 を取 り上 げ る 。 最 初 に 、 生 徒 に 独 裁 政 治 と 民 主
政 治 と を 対 比 させ 、 生 徒 が 身 近 な 問 題 と照 ら し合 わ せ な が ら主 体 的 に 判 断 す る 授 業 を 組 む 。
次 に 、 独 裁 制 へ の 批 判 と し て ヒ ト ラ ー を 取 り上 げ 、 な ぜ 当 時 の ドイ ツ 人 が 民 主 制 を 放 棄 し、
一 人 の 人 間 に全 権 を委 ね 、遂 に は戦 争 に至 っ て しま っ たの か を学 習 す る。 さ らに 、現 代 の 民
主 政 治 の 体 制 を 比 較 検 討 す る 。 そ の こ と に よ っ て 、 民 主 政 治 の 本 質 を 深 く追 究 す る 。 最 後 に
現 代 政 治 の 特 質 と し て 、 薬 害 エ イ ズ の 問 題 を 取 り上 げ 、 そ の 中 か ら 、 生 徒 は 民 主 主 義 が 国 民
の 不 断 の 努 力 に よ っ て 維 持 、 発 展 さ れ て 行 く もの で あ る 事 を 考 察 す る よ う 指 導 の 工 夫 を 行 っ
た。
3主
題 の展 開 図
[問
題 解 決 的 視 点 を 生 み 出 す 土 壌 と は な に か?l
l
l幸
福 の 追 求=「
生 き る 力 」 の 源 泉1
1f
豊 か な 生 活 と社 会 福 祉(第1分
科 会)
望 ま しい 政 治 の 在 り方(第2分
科 会)
ラ イ フ プ ラ ン作 成 を 通 して 将 来 の
擬 似 体 験 を 通 じて 将 来 の 社 会 シ ス テ
課 題 を 追 究 す る 「現 代 社 会 」の 授 業
ム を 考 え る 「政 治 ・経 済 」 の 授 業
-
経 済 的側 面 か らの ア プ ロー チ
政 治 的 側 面 か らの ア プ ロ ー チ
自 己 選 択 か ら社 会 選 択 へ
1社 会 選 択 か ら 自 己 選 択 へ!
1
シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 装 置 と して の
当 事 者 感 覚 を 引 き出 す た め の
ラ イ フ プ ラ ン作 成
擬 似 体 験(モ
i
個 人 の 幸 福 追 求=「
1[
生 きる力 」 の育 成
デ リ ン グ)
1
「i社
一27一
会 の 幸 福 追 求e「
考 え る力 」 の育 成
H豊
か な 生 活 と 社 会 福 祉(第1分
一
1研
科 会)
ラ イ フ プ ラ ン 作 成 を通 して 将 来 の 課 題 を追 究 す る 「現 代 社 会 」 の 授 業 一
究 内 容 と方 法
本 分 科 会 で は 、 全 体 で4時
間 の 単 元 学 習 を 設 定 した 。 第1・2時
で は 、 ラ イ フプ ラ ンの 基 礎
と な る 諸 活 動 を 、 人 生 上 の い つ 頃 の 時 期 に 設 定 す る か を ア ン ケ ー ト方 式 で 記 入 し、 さ ら に そ の
諸 活 動 に か か る 費 用 を 生 涯 賃 金 との 差 で 考 え る 作 業 を 行 わ せ る 。 第3時
で は 、 自 己 の 身 体 ・生
命 の 安 全 が 脅 か さ れ た 事 態 に 備 え る 社 会 保 険 制 度 に つ い て 紹 介 し、 そ れ を 補 う生 命 保 険 や 老 後
に 備 え る た め の 年 金 制 度 に つ い て も説 明 し 、 そ の 多 く を 私 費 で ま か な う ア メ リ カ 合 衆 国 の 例 、
日 本 以 上 の 高 福 祉 を 実 現 し 、 現 在 で は さ ま ざ ま な 問 題 も 抱 え る ス ウ ェ ー デ ン の 例 を 取 り上 げ 、
比 較 し な が ら 将 来 の 高 齢 福 祉 社 会 の 進 展 を 見 据 え た 公 共 部 門 の 規 模 も考 え る 。 第4時
卒 無 業 者(い
わ ゆ る フ リ ー タ ー)の
で は、 学
問 題 を 取 り上 げ 、 ラ イ フ プ ラ ン作 成 に 際 して 見 え 隠 れ す る 、
多 様 な 経 験 を し た い 、 有 名 に な り た い な ど 、 若 者 文 化 で 個 性 を発 揮 し た い と す る 「夢 」 指 向 を
実 際 問 題 と して 検 証 す る こ と を 通 して 、 「豊 か な 生 活 」 と は ど う い う こ と な の か を 考 え る 。 こ
の4時
間 の 授 業 の 後 、 生 徒 は 個 々 に 、 自 己 の 未 来 に お い て 生 起 し て くる 諸 課 題 の う ち 、 最 も 関
心 の も て る 主 題 を 設 定 し て 、 課 題 追 究 の 学 習 に 取 り組 む こ と に な る 。 な お 、 新 学 習 指 導 要 領 に
お け る 関 連 分 野 は 、 「現 代 社 会 」 の 「(1)現 代 に 生 き る 私 た ち の 課 題 」 の う ち 、 「豊 か な 生 活 と
福 祉 社 会 」 で あ る。
2指
導計画
1学
《1》
習
項
目1具
体 的 な 学 習 内 容 ・学 習 項 目i留
意
点
ラ イ フプ ラ ンの 作 成
ラ イ フプ ラ ンの 作 成
第
・自 己 の ラ イ フ プ ラ ン を 作 成 す る
。
・生 涯 の 収 入 と 、 諸 活 動 に か か る 費 用 を
i
時
ラ イ フプ ラ ンの検 討
・ラ イ フ プ ラ ン 中 の 収 入 の 種 別 や 支 出 の
2
各 項 目 を検 討 す る 。
時
・租 税 に つ い て 理 解 す る
《2》
うにす る 。
・収 支 の 差 を 計 算 さ せ る
お お まか に 計算 す る 。
第
・具 体 的 に 考 え さ せ る よ
・給 与 明 細 書 や 各 種 カ タ
ロ グ な ど を具 体 的 に 示
。
す 。
ラ イ フプ ラ ンか らの 展 開 例
第 社 会 保 険 をめ ぐって
・社 会 保 険 を 理 解 す る 。
3
・こ れ か ら の 高 齢 社 会 の 中 で の 社 会 保 障
時
・将 来 の 自 分 に も 関 わ る
や 国 家 の 役 割 を考 え る 。
・
第
4
備 軍」 に な っ て い な
通 じて 、 働 く こ と の 意 味 や
時
い か?
活 」 につ い て 考 え る 。
「フ リ ー タ ー 予
させ る 。
「フ リ ー タ ー 」 に つ い て 考 え る こ と を
君 は
問題 で あ る こ と を 意 識
「豊 か な 生
一
・現 時 点 の ラ イ フ プ ラ ン
と現 実 の ギ ャ ッ プ に 気
つ かせ る 。
《3》 ラ イ フ プ ラ ン か ら 展 開 す る 課 題 追 究 学 習
第 各 自の課題 追究学習
・ラ イ フ プ ラ ン の 作 成 を も と に 、 第3・
・身 の 回 り の 出 来 事 か ら
5
4時 の 授 業 を 参 考 に し な が ら 自分 の 将
社会 システムの選択 ま
時
来 に関 わ る こ とが らに つ い て個 々 に主
で カバ ー で きる よ う適
題 を 設 定 して 課 題 追 究 学 習 を行 う 。
宜助言す る。
s
一28一
3指
導案
第1時
ラ イ フ プ ラ ンの 作 成
(1)本
時 の ね らい
「ラ イ フ プ ラ ン 」 の 作 成 を 通 じ て 、 将 来 の 進 路 、 収 入 、 家 族 構 成 、 経 済 活 動 を 考 え 、 将
来 起 こ る 選 択 や 決 定 を 意 識 させ る 。 ま た 、 各 種 の 保 険 制 度 が 予 想 外 の 事 態 に 対 し て 必 要 不
可 欠 な 制 度 で あ る こ と を 認 識 させ る 。
(2)本
時 の展開
一
学
導
入
10
分
習
項
目
生 涯賃金の実態
① 人生設計の作成
学
習
活
動
指導上の留意点
・ 「ラ イ フ プ ラ ン 」作 成 前 に 、 各 種 資
・各 種 の 白 書 を 示 し 、 平 均 賃
料 を 参 考 に 、 生 涯 賃 金 と生 涯 に 必 要
金 や 職 種 ・年 齢 に よ る 賃 金
な金 額 を計 算 す る。
差 に 注 目 させ る 。
・ラ イ フ プ ラ ン の 計 算 の 前 段 階 と し て
将 来 設 計 を 問 う ア ン ケ ー トに 答 え る 。
・不 確 定 要 素 が 大 き い の で 、
細 部 に こ だ わ らず 、 ア ン ケ ー
ト記 入 さ せ る 。
② 将来の収 入つ い
展
・ア ン ケ ー ト の 結 果 に 沿 っ て 資 料 プ リ
ン トを使 い 、 生 涯 の 家 計 収 入 の 概 算
て
を出 す 。
開
③ 必 要 なお 金 に つ
いて
④ い く ら余 裕 が あ
30
る か?
⑤ 予 想 外 の支 出
・生 涯 に 必 要 と な る お 金 を 項 目 別 に 整
理 し、 具 体 的 に 金 額 計 算 す る 。
・予 想 収 入 か ら 支 出 を 引 い た 余 剰 金 を
計算する。
・ア ン ケ ー ト項 目 以 外 の 基 本 的 な 支 出
あ る こ
と を理 解 す る 。
入 の伸 び な どの不 確 定 要 素
・各 個 人 で 考 え ら れ る 収 入
(遺 産 相 続 等)や
支 出が あ
る か 考 え させ る。
・ ア ン ケ ー ト結 果(多
を 上 回 る こ と)か
あ り、 金 利 や 物 価 動 向 、 収
が あ る こ と を意 識 させ る 。
(直 接 税 や 各 種 保 険 費 用)が
分
・作 業 は シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で
くは 支 出 が 収 入
ら、 予 想 以 上 に経
・普 段 は 意 識 し な い 所 得 税 や
保 険 制 度 を強 調 す る 。
済 的 自立 が 大 変 な こ と を理 解 す る。
保険制度 の存 在
・将 来 の 設 計 は 予 定 通 り に 行 か な い こ
と 、 予 想 外 の 事 態 に 対 して 経 済 的 な
ま
と
め
10
分
・突 然 の 死 や 大 病 、 各 種 災 害
の 可 能 性 を 認 識 させ る 。
解 決 の 方 法 を考 え る。
・予 想 外 の 事 態 に 対 応 す る た め に 公 的
な社 会 保 険 制 度 や 私 的 な生 命 保 険 ・
・保 険 制 度 に つ い て は 、 簡 単
にふ れ る だ け にす る 。
損 害 保 険 制 度 が あ る こ と を理 解 す る 。
一
(3)評
①
価 の観 点
ア ン ケ ー トは す べ て 将 来 の こ と な の で 、 不 確 定 要 素 に 対 して 具 体 的 に イ メ ー ジ で き る
か が ポ イ ン トに な る 。 作 成 過 程 で い い 加 減 に 記 入 さ せ ず 、 真 剣 に 考 え て 出 来 た か ど うか 。
②
将 来 の 収 入 や 支 出 に つ い て の 意 識 が 深 ま っ た か 。予 想 外 の 支 出 や 収 入 の 設 定 が 出 来 た か 。
③
将 来 の マ イ ナ ス 要 因 を 考 え る こ と 、 具 体 的 な 解 決 方 法 を 考 え る こ とが 出 来 た か 。
一29一
第2時
ラ イ フプ ラ ンの検 討
(1)本
時 の ね らい
「ラ イ フ プ ラ ン」 の 結 果 か ら予 想 外 の 支 出 項 目で あ る 直 接 税 ・各 種 保 険 が あ る こ と を 理
解 さ せ る 。 ま た 、 個 人 の 興 味 に あ わ せ て 支 出 項 目 を 具 体 的 に検 討 す る 。
(2)本
時の展開
皿
学
習
項
目
所 得 税 ・住 民 税 ・
導
入
10
分
保 険の存在
学
習
活
動
指導上 の留意点
・給 与 明 細 書 を 使 い 、 収 入 か ら 税 金 を
・特 に 生 徒 の ア ル バ イ ト経 験
納 め る こ と、 就 職 後 は 社 会 保 険 に 加
者 か ら具 体 例 を 提 示 す る 。
入 す る こ とを理 解 す る。
①計 算の留意点
・収 入 に は 企 業 規 模 別 ・産 業 別 ・学 歴
・各 種 統 計 の 提 示
別 格 差 が あ る こ と 、 支 出 に も個 人 に
よっ て 大 きな 違 い が あ る こ とを 理 解
する。
展
② 個 別展 開
・ラ イ フプ ラ ンの各 項 目 につ い て 、 個 人
・具 体 的 な 生 涯 賃 金 、 住 宅 路
の 興 味 ・関 心 に あ わ せ て 各 自 で 資 料
線 価 、 自動 車 カ タ ログ 等 の
にあ た り、 具 体 的 な金 額 を計 算 す る 。
開
③ 所 得 税 ・住 民 税
と は 何 か?
30
④ 社 会 保 険 と は何
か?
・各 種 白 書 を資 料 に し て 生 涯 に 直 接 税
を どれ くらい納 め る か理 解 す る。
・社 会 保 険 に は 健 康 ・厚 生 年 金 ・雇 用
の 各保 険 が あ る こ とを給 与 明 細 書 を
資 料 を示 す 。
・各 種 控 除 、 税 率 の 累 進 制 等
に注 意 させ る。
・保 険 が 必 要 な ケ ー ス を 自 動
車 保 険 を例 に示 す 。
通 して理 解 す る。
分
⑤ 生 命 保 険 ・損 害
保険
・人 生 が プ ラ ン通 り に 行 か な い 場 合 は
・一 般 的 な 生 命 保 険 の モ デ ル
ど う い う状 態 が 考 え られ る か 、 ど う
プ ラ ン ・カ タ ロ グ を 使 い 展
し た ら対 応 で き る か 考 え 、 具 体 的 に
開 す る。
書 く。
税 金 ・保 険 の 重 要
ま
と
め
10
分
・収 入 に 比 べ て 税 金 ・保 険 の 額 が 高 い
こ と、 なぜ そ れ だ け必 要 なの か考 える。
性
・交 通 事 故 ・火 事 等 に よ る 家 屋 の 被 害
・経 済 破 綻 に 関 し て 、 保 険 が
多 くの 役 割 、 大 き な 効 果 が
あ る こ と に気 づ か せ る 。
や 癌 な どの 病 気 等 で どれ くらい の お
金 が 必 要 に な るか 理 解 す る 。
(3)評
価 の観 点
①
直 接 税 ・各 種 保 険 が ど れ だ け 生 活 に 関 わ っ て い る か 。 そ の 必 要 性 を 理 解 で き た か 。
②
将 来 の 予 想 外 の 事 態 に 対 して 解 決 方 法 を 考 え る こ と が で き た か 。 保 険 制 度 の 重 要 性 を
認 識 した か 。
第3時
(1)本
社 会 保 険 をめ ぐ って
時 の ね らい
一30一
第1・2時
で 簡 単 に ふ れ た 社 会 保 険 に つ い て 、 そ の 必 要 性 を 具 体 的 に 考 え させ 、 社 会 保
険 制 度 の 概 要 を 理 解 さ せ る 。 そ して 、 そ れ に つ い て 大 き く異 な る や り方 を と っ て い る ア メ
リ カ 合 衆 国 と ス ウ ェ ー デ ン を と りあ げ 、 両 者 の 比 較 を 通 じて 、 こ れ か らの 日本 の 社 会 保 障
や 政 府 の あ り方 に つ い て 考 え さ せ る 。
(2)本
時 の展 開
一
学
習
項
学
目
習
活
動
指導 上の留意点
一
導
入
10
分
人 生 に お け る リス
病 気 に な っ た 場 合 、 どの よ う な 費 用 が 、
・医 療 費 に 関 す る 資 料 を 用 意
ク
どの 程 度 必 要 か知 る 。
・そ れ 以 外 の リ ス ク に 関 わ る
・病 気 、 入 院 、 重 病 の 場 合 な ど
社会 保険
社 会 保 険 につ い て 理 解 す る 。
・社 会 保 険 に つ い て の 概 略
費 用 もお お ま か に 示 す 。
・資 料 を 用 意 す る 。
・ワ ー ク シ ー トに 保 険 料 な ど
現 在 の 日 本 の 医 療 、 年 金 、介 護 、労 災 、
計 算 させ な が ら記 入 させ 、
雇 用 の 各 保 険 制 度 の 概 要 を理 解 し、 保
自分 の ラ イ フ プ ラ ン の 中 で
険 料 や 給 付 額 、 給 付 内 容 を知 る 。
考 え させ る 。
・民 間 医 療 保 険 、 生 命 保 険 に
展
つ い て も簡単 に ふ れ る。
開
ア メ リ カの社 会 保
医 療 制 度 を中心 に ア メ リ カの社 会 保 障
・資 料 を 用 意 す る 。
障制 度
制 度 を理 解 す る。
・背 景 、 国 民 の 意 識 、 問 題 点
・国 民 皆 保 険 の 制 度 は な い
30
分
に もふ れ 、 考 え さ せ る 。
・民 間 医 療 保 険 の 発 達
ス ウェ ー デ ン の 社
医 療 制 度 を 中心 に ス ウ ェー デ ンの 社 会
会保 障制度
保 障 制 度 を理 解 す る 。
・高 福 祉
典 型 的 な2つ
・高 負 担
の タ 医 療 制 度 を 中心 にそ れ ぞ れ の 国 の 社 会
・「大 き な 政 府 」 「小 さ な 政 府 」
イプ の社 会 保 障 制
保 障 制 度 につ い て 比 較 しな が ら 考 え
・政 府 の 役 割
度 について
る。
・租 税 か 保 険 か
な ど も 考 え させ る 。
ま
と
め
10
分
こ れ か らの 日本
こ れ か ら の 日 本 の あ る べ き社 会 保 障 に
ついて考える。
・今 後 の 高 齢 化 の 進 行 に つ い
て も資 料 と と も に 示 す 。
・政 府 の 規 模 、 役 割 な ど
・自分 の ラ イ フ プ ラ ン と の 関
連 も意 識 させ る 。
「
(3)評
①
価 の観 点
社 会 保 険 の 必 要 性 を 十 分 に 理 解 し 、 こ れ か ら の 自分 の 生 活 に も 関 わ る 問 題 で あ る と い
う意 識 を も っ て 考 え る こ と が で き た か 。
②
社 会 保 障 の さ ま ざ ま な か た ち や 方 向 性 に 対 し て 、 興 味 ・関 心 を 持 っ て 目 を 向 け ら れ た
か。
③
こ れ か ら の 社 会 保 障 や 政 府 の あ り方 に つ い て 、 考 え て い こ う と す る 意 識 が も て た か 。
一31一
(4)資
料
ワ ー ク シ ー ト1(自
分 が 支 払 う社 会 保 険 料 は い く ら ぐ ら い?)
(抜 粋)
①健康保 険保険料
一 般 の 労 働 者(政 管 健 保)の 場 合
標 準 報 酬 月 額 の8.5%(そ
賞 与 等 の1%(本
(標 準 報 酬 月 額 は 、8月1日
れ を 労 使 で 折 半)
人 負 担 は そ の5分
を 基 準 と し た そ の 前3ヶ
の1)
月の報酬の平均金額 を
も と に 算 定)
・年 収550万
円の人の場合
標 準 報 酬 月 額 は 約(〉
1ヶ
月 の保 険 料 は
円
約()円
×0.085=約(円
そ の うち、 本 人 の 負担 分 は
約()円
一 一→1年
×0.5e約()円
間 では
自 分 の10年
約()円
ご と の 保 険 料 を 計 算 し て 、 ワ ー ク シ ー ト2に
記 入 しよ う
③介護保 険保険料
40才
∼64才
で は … 一般 労 働 者 の 場 合 、標 準 報酬 月 額 を もと に算 出
一人平均
65才
月3100円(政
管 健 保 の 場 合)で
あ る(そ
れ を 労 使 で 折 半)
以 上 で は … 所 得 段 階 に 応 じ市 町 村 で 設 定 、 一 人 平 均
1年
で は)円
一 一→
自 分 の10年
ご との保 険 料 を計 算 して
、
⑤雇用保険保険料
・年 収550万
円 の 人 の場 合
1ヶ
月 の保 険 料 の本 人負 担 は
1年
で は)円
→
自 分 の10年
約(円
×0。0055=約(円
ご と の 保 険 料 を 計 算 し て 、 ワ ー ク シ ー ト2に
(※ 数 値 は 、 東 洋 経 済 新 報 社 「社 会 保 障 年 鑑2000年
ワー ク シ ー
ト2
保険 料
版 」 に よ る)
(社 会 保 険 料 一 覧 表)
10代
20代
30代
健康保険
年金保険
介護保険
雇用保険
合
記 入 しよ う
計
一32一
S
80代
∼
合
計
ワ ー ク シ ー ト(生 涯 の 収 入 と支 出
一 覧 表)
20代
10代
()才
3・ 代i
合
計
の時
私 は
その頃 は
こん な私 で い た い
収
賃
本人
金
配偶者
入
年
金
収入合計
基本生活費
支
子 どもの 教 育
(公 立)
自動 車
出
住
賃貸料
宅
住 宅購入
旅
国内
行
海外
趣
味
一人 暮 ら し
月12万
円
…
年144万
円
夫 婦
月20万
円
…
年240万
円
子 ど も1人
月6万
円
…
年72万
中 学 校 ま で350万
円
高 校 ま で570万
円()円
大 学 ま で1100万
円
()万
ζ
円 ×
×
円 ×()台=()
…
年()万
円 ×()年=()
税
社会保 険料
支出合計
第4時
2
君 は 「フ リ ー タ ー 予 備 軍 」 に な っ て い な い か?
(1)本
時 の ね らい
せ っ か く ラ イ フ プ ラ ン を 立 て な が ら 、 実 際 に は 職 業 人 と して の 将 来 設 計 に 関 して 、 フ ァ ッ
シ ョ ン と して の 「夢 」 と 、 着 実 な キ ャ リ ァ 形 成 の 現 実 との 間 が 不 分 明 に な っ て い る 生 徒 が
多 い こ と が 予 想 さ れ る 。 本 時 で は 、特 に大 都 市 と そ の 周 辺 で 急 増 す る 高 校 生 の 「フ リ ー タ ー 」
指 向 を取 り上 げ 、 進 路 指 導 の 観 点 も織 り込 み な が ら 、 将 来 の 「豊 か な 生 活 」 が 、 「い ろ い
ろ 経 験 した い 」 「合 わ な い 仕 事 は した くな い 」 「有 名 に な りた い 」 「夢 を 追 い 続 け た い 」 と
い っ た 近 視 眼 的 な 職 業 ・勤 労 観 か ら は 必 ず し も 実 現 し な い こ と を 理 解 さ せ 、 き た る べ き 社
会 を 生 きぬ く た め の 基 本 的 な 姿 勢 を 形 成 し、 か つ 自 身 に と っ て の 「豊 か な 生 活 」 を 模 索 す
る足 が か りを獲 得 す る こ と を 目標 とす る 。
一33一
(2)本
時の展開
学
習
項
目
学
習
活
指導上の留意点
動
・前 時 で 作 成 し た ラ イ フ プ ラ ン を 見 直
・前 時 作 成 の ラ イ フ プ ラ
導
し 、 再 検 討 す る 。 記 入 した 出 来 事 が
ン を あ ら か じめ 回 収 し
入
極 端 に 少 なか っ た り、不 自然 な 出 来
て お き、 問 題 に な る 部
事 の連 続 や 実 現 可 能 性 の 薄 い 出 来 事
分 を生徒 毎 にチ ェ ッ ク
ラ イ フ プ ラ ンの再 検 討
10
分
して お く 。
が な い か チ ェ ックす る。
キ ャ リ ア
・イ メ ー ジ の
難 しさ
展
・チ ェ ッ ク が 特 に 多 か っ た 生 徒 の プ ラ
・プ ラ ン を 紹 介 す る 生 徒
ン を 紹 介 し、 本 人 に そ の 理 由 を 述 べ
に はあ らか じめ 断 っ て
て も らい 、将 来 の夢 とそ れ を具 体 的
お く。 プ ラ イ バ シ ー の
な 職 業 と結 び つ け る こ と の 難 し さ を
尊 重 に努 め る こ と。
考 え る。
開
フ リー タ ー と は何 か
30
将 来 の職 業 を考 え る
分
・最 近 の 高 校 生 の 中 に フ リ ー タ ー 指 向
・資 料 を 配 布 し 、 個 々 の
が 出 て き て い る こ と を 紹 介 し、 フ リー
類 型 が 理 解 しや す い よ
タ ー 指 向 に は どの よ う な 類 型 が あ る
う実 際 の 経 験 者 の 証 言
の か を理 解 す る 。
な ど具 体 例 を 挙 げ る 。
・ ワ ー ク シ ー ト記 入 作 業 を 通 し て 、 自
・産 業
・業 種
・職 種 の 一
分 が 選 ぶ 職 業 と興 味 ・関 心 や 適 性 の
覧 表 も配 布 し 、 自 分 の
判 断 との 関 連 な どを 考 え る 。
選 ぶ 職 業 と適性 を考 え
る際 の参 考 とす る。
仕 事 を 通 して 得 ら れ る
・ ワ ー ク シ ー ト記 入 結 果 を 踏 ま え 、
・社 会 福 祉 の 観 点 か ら 職
・金 銭 の
業安定所 な どの公 共部
と
獲 得 や 夢 の 実 現 だ け で は な く、 自 己
門が職業紹介や労 働市
め
の 適 性 や 興 味 ・関 心 を も考 慮 し て 考
場 の 拡 大 に果 た して い
10
え られ るべ きこ とを理 解 し、就 職 難
る 役 割 も指 摘 す る 。
分
の 現 代 社 会 に お け る 「生 き が い 」に
ま
「働 く と い う こ と 」 が 名 声
もの
つ い て 考 える 。
1
(3)評
①
価の観点
フ リ ー タ ー 指 向 が 、 高 校 生 だ け で な く 、 大 学 生 や20代
の 会 社 員 な ど の 世 代 に も見 ら れ
る こ と を 理 解 し た か 。 就 職 し た 後 も 「仕 事 が 合 わ な い 」 な ど の 理 由 で こ の 指 向 を 再 び も
つ こ と も あ り え る こ と を 理 解 し た 上 で 、 フ リー タ ー を め ぐ る 職 業 観 に つ い て 考 え る こ と
が で きた か 。
②
「働 く と い う こ と 」 に 対 す る 自 分 の ス タ ン ス を 考 え 、 そ れ を 具 体 的 な 職 業 と 結 び つ け
る こ と が で き た か 。 仕 事 を 通 し て 得 ら れ る 「生 き が い 」 に つ い て 、 考 え を 深 め ら れ た か 。
一34一
(4)資
1.フ
料
リ ー タ ー の 類 型(日
本 労 働 研 究 機 構 作 成)
一
類
型1概
要1割
合
モ ラ トリア ム 型
A離
学 モ ラ トリ ア ム 型
職 業 や 将 来 に対 す る見 通 し を持 た ず に
教 育 機 関 を 中 退 ・修 了 し 、 フ リ ー タ ー
男 性 の40%
と な っ た タ イプ
B離
職 モ ラ トリアム 型
離 職 時 に 当 初 の 見 通 しが は っ き り し な
女 性 の40%
い ま まフ リー ター と な った タ イプ
夢 追求型
C芸
バ ン ドや 演 劇 、 俳 優 な ど 、 芸 能 関 係 を
能志向型
志 向 して フ リー ター と な っ た タ イプ
D職
人
・フ リ ー ラ ン ス
ケ ー キ職 人 、バ ー テ ン ダー 、 脚 本 家 な
ど 、 自 分 の 技 能 ・技 術 で 身 を 立 て る 職
志 向型
男 性 の20%
女 性 の30%
業 を志 向 して フ リー タ ー とな る タ イプ
や む を得 ず 型
E正
正 規 雇 用 を志 向 しつ つ フ リー タ ー とな っ
規雇用志向型
た タ イ プ 、 特 定 の 職 業 に参 入機 会 を
待 っ て い た タ イプ 、お よび 比 較 的 正 社
員 に近 い派 遣 を選 ん だ タイ プ
F期
間 限定 型
学 費稼 ぎの た め 、 また は 次 の 入 学 時 期
や就 職 時期 まで とい っ た 期 間 限 定 の 見
男 性 の40%
女 性 の30%
しを もっ て フ リー ター とな る タイ プ
Gプ
ラ イ ベ ー
ト ・ ト ラ
ブ ル型
本 人 や 家 族 の病 気 、事 業 の 倒 産 、 異 性
関 係 な どの トラブ ル が契 機 と な っ て フ
リ ー タ ー と な っ た タ イ プ
2.ワ
ー ク シ ー ト の 一 部(全
国 高 等 学 校 進 路 指 導 協 議 会 編 『大 学 ガ イ ダ ン ス ノ ー ト 』実
務 教 育 出 版 よ り)
「働 く とい う こ と」 の 意 味 や 意 義 を 、 具 体 的 な 職 業 を 例 に 考 え て み よ う 。
■
私 が あ こが れ る職 業
職
業
名
そ の 職業 に ひか れ る理 由
ど ん な 能 力 ・資 格 が 必 要 か
圏
■
上 記 の 職 業 に つ い て 、 次 の 点 か ら チ ェ ッ ク して み よ う 。
興 味 ・関 心 に 合 っ て い る
ど ん な 興 味?
性 格 や 行 動 の特 性 に 合 って い る
ど ん な性 格?行
仕 事 に や りが い が あ る
ど の よ う な 点 に?
一35一
動 の 特 性?
皿
1指
望 ま しい政 治 の あ り方(第2分
科 会)
一擬 似体 験 を通 じての将来の社会 システム を考 える 「政 治 ・経 済 」 の 授 業
導計 画
学
習
項
目
留
具体 的 な学 習 内 容 ・学 習 活 動
意
点
《1》 望 ま しい政 治 と は何 な の か考 え よ う
・身近 な問 題 か ら望 ま しい 政 治 の 在 り方 を
独 裁 政 治 は悪 い か
第
視 した り無 関 心 で あ る
考 え る きっ か け をつ か む。
・ワ ー ク シ ー トで 独 裁 政 治 と 民 主 政 治 を 比
1
・人 々が 自己 の 都 合 を重
こ と に注 目 させ る。
較 し、 そ れぞ れ につ い て の 問 題 意 識 を持
時
つo
第
民 主 政 治 を批 判 す る
2
時
・多様 な独 裁 政 治 の 形 態 を理 解 し、 民 意 を
・独 裁 政 治 の 民 衆 抑 圧 に
ま とめ る 困難 さに気 づ く。
・現 代 日本 政治 の諸 課 題 か ら民 主 政 治 の 問
・身 近 な 問 題 に 引 きつ け
も触 れ る。
て 考 え させ る。
題 点 の概 要 を学 習 す る。
《2》 民 主政 治 の大 切 さを 知 ろ う
第
強 力 な 指 導 者(ヒ
3
権 を 委任 した 経 緯
トラ ー)に
全
・議 会 制民 主 主義 を放 棄 して しま う実 例 を
知 り、危 険性 と必 然 性 につ いて学 習 す る。
時
第
・現 代 日本 の 議 会 制 民 主
主 義 の 現 状 と比 較 させ
る 。
・なぜ ヒ ト ラ ー が 支 持 さ れ た の か を 考 え る 。
君 の 心 が 戦 争 を起 こす
4
時
・い じめ な ど 身近 な問 題
・身 近 な 問題 に似 て い る こ と に気 づ く。
に引 きつ け て考 え させ
・独 裁 制 の 危 険性 と民 主 主 義 の 重 要 性 につ
る。
いて理解する。
《3》 民 主 政 治 の 基本 原理 を知 ろ う
第
・民 主 政 治 の 意義 と原理 を理 解 す る。
現 代の民 主政治体制
・基 本 原理 相 互 の 関 連 を
・議 院 内 閣 制 と大 統 領 制 を比 較 す る。
5
重 視 させ る 。
・制 度 や機 構 の維 持 運 用 に対 す る主 権 者 の
6
時
・具 体 例 を 示 す 。
不 断 の努 力 の必 要 性 を理 解 す る。
《4》 現 代 日本政 治 の諸 課 題 を知 り、望 ま しい政 治 を作 るた め の 行 動 を考 え よ う
"薬 害 エ イ ズ"問
題 に み る 日本
第
政 治 の 諸 課 題(Part1薬
7
イ ズ っ て 何?)
時
8
時
ト作 業 か ら企業 、行 政 、医 療 機 関の 三 者
題 に み る 日本
政 治 の 諸 課 題(Part2な
ぜ?
薬 害 エ イ ズ)
(指 導 案 は省 略)
政 治 へ の 国 民 の参 加 に つ い て
企 業 、行 政 、 医療 機 関 の行 動 に つ い て の
シ ミュ レー シ ョン を通 して 問題 解 決 の視
・主 権 者 の 主 体 的 な行 動 が民 主政 治 を支 え
・行 政
・企 業
く、可 能 性 を 示 す 。
・国 民
・医 師
・マ ス コ ミ の 各
立 場 を調 べ 予 習 す る と と もに で ロー ル プ
レイ を行 い なが ら問 題解 決の 方途 を探 る。
ジ シ ョ ン)が
持 つ 制 約 を知 り
そ れ を乗 り越 え る可 能性 を 追 究 す る 。
一36一
し自分 に 引 きつ け て 考
え させ る 。
9
・各 立 場(ポ
・正 答 を 求 め る の で は な
・身近 に あ る類 似 点 を示
点 を探 る。
第
la
に伝 える よ う工 夫す る 。
・政 治 の 力 と 世 論 の 力 を 理 解 す る 。
る もの で あ る こ と を理 解 す る 。
時
・具 体 例 を 示 し 、 リ ア ル
の 関 係 を理 解 す る 。
・行 政 の 機 能 の 重 大性 を理 解 す る 。
(指 導 案 は省 略)
"薬 害 エ イ ズ"問
第
害 工
・薬 害 エ イ ズ 問 題 の 概 要 を知 り、 ワ ー ク シ ー
、
・状 況 設 定 が 内 包 す る問
題 点 を示 唆 す る。
・総 合 的 な 提 案 をす る よ
うに促 す 。
2指
導案
<1>望
ま しい 政 治 と は 何 な の か 考 え よ う
第1時
「独 裁 政 治 は 悪 い か 」
q)本
時 の ね らい
望 ま し い 政 治 の 在 り方 に つ い て 考 え る 導 入 部 で あ る 。 民 主 政 治 の 在 り方 を 考 え る 観 点 か
ら 、 独 裁 政 治 を民 主 政 治 に 対 立 す る 政 治 と して 取 り上 げ 、 両 者 を 対 比 さ せ な が ら そ れ ぞ れ
につ い て の 問 題 意 識 を持 たせ る。
(2)本
時 の展 開
学
学習項 目
生徒 の手 に よ
る文 化祭 とは?
導
習
活
動
指導上 の留意 点
・文 化 祭 の 出 し物 に つ い て 、 文 化 祭 委 員 主 導
型 と生 徒 話 し合 い 型 、 ど ち ら が い い か 考 え
ん ど く さい
・自 分 の 都 合 し か 考 え て い
か ら 文 化 祭 委 員 が や っ て くれ た 方 が い い 。
ない こ とに気 づ かせ る 。
(文 化 祭 委 員 主 導 の 回 答 例:め
分
・そ れ ぞ れ 挙 手 さ せ 数 人 に
意 見 を 聞 く。
る 。
入
10
・ワ ー ク シ ー ト① を 配 布
話 し合 い 型 の 回 答 例;や
っぱ り自分 た ち で
や り た い 。)
あ な たが 望 む
政 治 とは
・住 み 良 い 独 裁 政 治 の 国(=A国)と
て い る 民 主 政 治 の 国(=B国)を
腐敗 し
・ワ ー ク シ ー ト② を 配 布
比 較 し、
自分 が ど ち ら を支 持 す るか を考 え る。
・数 人 に 発 表 さ せ 、 次 の 発
問 につ な げ る板 書 を す る 。
・A国 選 択 者 はB国
展
選 択 者 へ 、B国
選択 者 は
A国 選 択 者 へ 、 そ れ ぞ れ 批 判 を 考 え る 。
(A国
選 択 者 へ の 批 判)支
配 者 が 変容 した
・数 人 に 発 表 さ せ 、 次 の 展
開 に関 連 させ る よ う に 板
書 す る。
ら ど うす る の か 。 国 民 に は ど うす る こ と も
開
で き ない で は な い か 。
(B国
35
選 択 者 へ の 批 判)議
員 が 腐 敗 して い
る とい う こ とは そ れ を選 ん で い る 国民 自 身
が不 真 面 目だ とい う こ とで は な い の か 。
分
独 裁 政 治 と民
主政治の 問題
点
・そ れ ぞ れ の 批 判 の 具 体 例 を 考 え 、 問 題 意 識
を持 つ 。
(A国
せ る 。
選 択 者 へ の 批 判 の 具 体 例)
ど ん な 国 が あ る か?
(B国
選 択 者 へ の 批 判 の 具 体 例)
日本 の 選 挙 体 質 、 圧 力 団 体 、 低 投 票 率
ま
と
め
一
・考 え さ せ 、 数 人 に 発 表 さ
・独 裁 政 治 に つ い て 、 自 己 の 都 合 や 無 関 心 を
理 由 に 支 持 す る もの が い る こ と を 確 認 す る 。
・民 主 政 治 で は 主 権 者 の 行 動 が 問 わ れ る こ と
を確 認 す る。
一37一
・簡 単 な 紹 介 に と ど め る 。
・A国
に つ い て;
独 裁 につ い て の 議 論 は多 岐 にわ た 乙が 、独 裁 につ い て の 以 下 の よ う な定 義 、す な わ ち
「
① 行 政 ・立 法 ・司 法 ・軍 事 な ど の 諸 権 力 が 身 分 的 支 配 者 や 君 主 で は な い と こ ろ の 一 人
ま た は 少 数 の グ ル ー プ に 実 質 的 に 集 中 す る こ と で あ り、 ② そ れ は 現 行 法 体 系 を 停 止 あ る
い は 無 視 す る こ と に よ っ て 成 立 し、 ③ そ の 結 果 、 市 民 的 自 由 権 は 大 幅 に 否 認 さ れ 、 ④ 諸
権 力 手 段 は 専 制 的 に 使 用 さ れ 、 しか も⑤ 政 治 的
決 定 は 、 イデ オ ロギ ー や 使 命 感 に よ っ
て 迅 速 か つ 脅 迫 的 に な さ れ や す い と い う特 徴 を 持 つ 政 治 支 配 の 形 態 」(高 畠 通 敏
政 治 学 へ の 道 案 内 』 三 一 書 房1984)を
『新 版
押 さえた 上 で 、授 業 に お い て は 、 民 主 政 治 に対 立
す る 政 治 の 在 り方 と し て 、 民 意 が 極 め て 反 映 さ れ に く く主 権 者 の 自 由 な 政 治 的 意 思 表 明
が 弾 圧 され る上 記 ③ ④ ⑤ を強調 した モデ ル を設 定 す る 。
・B国
に つ い て:
日 本 を モ デ ル とす る 。 民 主 政 治 の 基 本 原 理 で あ る 、 国 民 主 権 主 義 、 議 会 制 民 主 主 義 、
権 力 分 立 制 、 法 の 支 配 が 制 度 と して 整 っ て い る 一 方 で 、 制 度 の 運 用 、 主 権 者 の 行 動 等 の
面 で 問 題 を抱 え てい る モ デ ルで あ る。
(3)評
価の観点
①
独 裁 政 治 を 支 持 す る 者 が い る こ と に 気 づ く こ とが で き た か 。
②
政 治 家 の腐 敗 は主 権 者 の行 動 に依拠 す る もの で あ る こ とに気 づ くこ とが で きた か 。
第2時
「民 主 政 治 を批 判 す る 」
(1)本
時 の ね らい
独 裁 政 治 の 具 体 的 な 事 例 お よ び 民 主 政 治 の 問 題 点 に つ い て の 具 体 的 な 事 例 を 取 り上 げ 、
現 実 の 民 主 政 治 の 課 題 に つ い て の 問 題 意 識 を 深 め 、 望 ま し い 政 治 の 在 り方 を 探 らせ る 。
(2)本
時の展開
学習項 目
生徒 の 手 に よ る
文 化 祭 と は?
学
習
活
動
指導上 の留意点
・前 時 の プ リ ン ト の 結 果 を 見 な が ら
、文
化 祭 の 出 し物 を ど うや っ て 決 め れ ば よ
(Qど
う や っ て 決 め る?A話
ば い い 。Qど
入
る?み
10
化 祭
化祭委員は司会で き
ん な 、 ち ゃ ん と 意 見 と か い う の?
バ ラバ ラ の 意 見 が 出 て き た ら ど う す る
の?「
分
う や っ て?A文
し合 え
委 員 が 司 会 し て 、 み ん なで 意 見 言 っ て 、
採 決 して 。Q文
時 の 生 徒 の意 見 を
ま と め た も の)を
配 布す る。
・前 時 の プ リ ン ト結 果 を 読 む
いか考える。
導
・資 料(前
早 く帰 りた い か ら な ん で もい い 」
と か 言 う 人 い る ん じ ゃ な い?)
・民 意 を ま と め る 困 難 さ に 気 づ く
→ み ん な の 意 見 を ま と め て くれ る リ ー
ダー が必 要 だ。
時 間 を持 つ 。
・指 導 者 が 必 要 な こ と に 気 づ
か せ る。
・ク ラ ス の メ ン バ ー が 積 極 的
で な い と、 決 め る こ とが 困
難 な こ と に気 づ か せ る。
・ク ラ ス の メ ン バ ー が ク ラ ス
全 体 の こ と を考 え る必 要 が
あ る こ とを 気 づ か せ る。
・説 教 調 に な ら な い よ う 気 を
つ け た い 。
一38一
→ メ ンバ ー 一 人 一 人 が ク ラ ス の こ と を
考 え て くれ な き ゃだ め だ。
1
一
さ ま ざ ま な独 裁
・多 様 な 独 裁 政 治 の 形 態 が あ る こ と を 理
・資 料 を 配 布 す る 。
政 治(リ
解す る。
・ナ ポ レ オ ン の 例 か ら 、 独 裁 は 政 治 的 安
・そ れ ぞ れ の 例 は あ く ま で 一
ー ダ ー
が 必 要 だ)
展
面 で あ り、一 方 で 民 衆 の 抑
ナ ポ レオ ン
定 を も た らす 一 面 が あ る こ と を 理 解 す 1圧
開発独裁
る 。
民 主 集 中制 、 他
もお こ なわ れ た こ と に も
ふ れ る 。
・開 発 独 裁 の 例 か ら 、 経 済 発 展 に は 強 力
な 指 導 力 が 必 要 な場 合 が あ る こ と を 理
開
解 す る。
35
分
現 代 日本 政 治 の
・制 度 が 整 っ て い て も 、 主 権 者 の 行 動 と
課 題 か らみ る民
運 用 如 何 で は、 民 意 の 反 映 は 失 わ れ る
主 政 治 の 問題 点
危 険 が あ る こ と を理 解 す る 。
・資 料 を 配 布 す る 。
・批 判 的 な 視 点 で は な く 、 ク
ラ ス 文 化 祭 出 し物 問 題 に 引
(一 人 一 人 が ち ゃ
きつ け て 誰 もが 陥 る 可 能 性
ん と考 え な き ゃ
を示 す 。
だ め だ)
日本 の 選 挙
圧 力団体
低投 票率
・望 ま し い 政 治 の 在 り方 に つ い て 考 え る 。
ま
と
め
5
(主 権 者 が 主 体 的 に リ ー ダ ー を 選 択 し
・次 時 の 予 告 を 含 ん だ 問 題 意
識 を持 たせ る。
監 視 す る 民 主 政 治)
分
① ② ③
(3)評
価の観点
多 様 な 独 裁 政 治 の 形 態 を理 解 で き た か 。
民 主 政 治 の 問題 点 を理 解 で きた か 。
望 ま し い 政 治 の 在 り方 を 追 究 し よ う と して い る か 。
〈資 料 〉
《ワ ー ク シ ー ト① 》
ど っ ち が い い?
① 文 化 祭 。 ク ラ ス の 出 し物 ど っ ち が い い で す か 。(ど ち ら か に ○ を つ け る)
A:文
化 祭 委 員 が な ん で も 決 め て み ん な が そ れ に 従 っ て や っ て い く型
B:み
ん な で 話 し 合 っ て 決 め 、 そ れ に 従 っ て や っ て い く型
● そ れ は な ぜ で す か 。()
② 文 化 祭 。 ク ラ ス の 出 し物 み ん な で 決 め る と し て 、 ど う や っ て 決 め た ら い い で す か 。 具 体 的 に 書 い て くだ さい 。
()1
《ワ ー ク シ ー ト② 》
ど っ ち が い い?そ
の2
① この 世 に次 の 二 つ の 国 しか な い と した らあ な た は ど ち らの 国 に住 み た い で す か 。
A国:と
て も住 み 良 い ん だ け ど独 裁 政 治 の 国
この 国 は政 治 に対 して ま じめ な 一 人 の 支 配 者 に支 配 され て い る 国 で す 。 そ の 支 配 者 は 国 民 が 幸 せ に 暮 らせ
る よ う に と、 い ろ い ろ な 施 策 を迅 速確 実 に お こな い ます 。普 通 に暮 ら して い る 分 に は な に不 自由 の な い 生 活
が 保 障 され て い ます 。 しか し、 国 民 が 政 治 に 口 を出 す こ とや 支配 者 を批 判 す る こ とは絶 対 に 許 され ませ ん 。
一39一
即 死刑 で す 。 この 点 に つ い て は とて も厳 し く取 り締 ま りが あ ります 。 つ ま り、い い 支 配 者 な ん だ け ど国 の 政
治 に つ い て は一 切 物 が言 え ず 、 刃 向 か う とち ょっ と怖 い国 で す 。
B国:民
主 政 治 な ん だ け ど国 会 議 員 が腐 敗 して い る 国
この 国 は民 主 的 な 政 治 を行 うた め の 制 度 が整 っ て い る国 で す 。 選 挙 を して 国 会 議 員 を選 ん で そ の 人 達 の 話
し合 い に よっ て 政 治 が 決 ま ります 。 しか し、 国会 議 員達 は あ ま りま じめ で はあ りませ ん。 彼 らは腐 敗 して い
ます 。 国 民 もあ ま り心 地 よ くは 暮 ら して い ませ ん 。 で も政 治 に 関 して国 民 は全 く自 由 に物 が言 え ます 。 国 会
議 員 を い く ら批 判 しよ う と捕 ま る こ とは あ りませ ん 。立 候 補 も年 齢 以 外 の制 限 は あ りませ ん 。 つ ま り、 国 会
議 員 は腐 敗 して い るん だ け ど、 政 治 につ い て 自由 に考 え る こ とが で き、場 合 に よ っ て は 国民 が 政 治 参 加 す る
こ と も可 能 な 国 で す 。
さあ 、 どち らが い い で す か 。 よい と思 う方 に○ をつ け て くだ さい 。A国
・B国
② ど う して そ の 国 を選 ん だの で す か 。
()
<2>民
主 政 治 の 大 切 さ を知 ろ う
国 の 指 導 を 一 人 に 任 せ て し ま う こ と の 危 険 性 一 ヒ トラ ー を例 と して 一
第3時
強 力 な 指 導 者(ヒ
(1)本
トラ ー)に
全 権 を委 任 した経 緯
時 の ね らい
生 徒 が 、 議 会 制 民 主 主 義 の 精 神 を 放 棄 して 、 一 人 の 指 導 者(ヒ
トラ ー)に
全権 を委任 し
て し ま っ た 経 緯 を 勉 強 す る こ と に よ っ て 、 そ の 危 険 性 を 現 代 の 民 主 主 義 の 現 状 と照 ら し 合
わ せ なが ら、考 察 す る 。
(2)本
時の展開
学
学習項 目
導
入
10
分
ヒ トラ ー と い
う人 物 の 紹 介
会 制民主 主 義
開
35
分
活
動
・ヒ ト ラ ー の 写 真 を提 示 す る 。 ア ウ シ ュ ビ ッ
ツのユ ダヤ 人 虐殺 の話 をす る。
指導上 の留 意点
・ヒ トラ ー の 危 険 性 を 認 識
す る よ うに す る 。
・ヒ ト ラ ー の 生 い 立 ち を 簡 潔 に 話 す 。
ヒ トラ ー の 議
展
習
・ 『我 が 闘 争 』 を 資 料 と し て 、 生 徒 に 読 ま せ
義 の 在 り方 及 び 総 理 大 臣
る。
の リー ダー シ ッ プ に つ い
批 判の紹 介
ワ イマ ー ル 共
・ワ イ マ ー ル 共 和 国 に お け る 議 会 制 民 主 主 義
和 国の崩 壊 と
の 混 乱 ぶ り と ドイ ツ の 困 難 な 状 況 が 、 当 時
「独 裁 制 」 へ
の ドイ ツ国 民 に、 強 力 な リー ダー シ ッ プ を
の道
・現 代 日本 の 議 会 制 民 主 主
て 考 え させ る 。
発 揮 す る 政 治 家 を 求 め た こ と を理 解 す る 。
・全 権 委 任 法 に よ っ て 、ヒ ト ラ ー に 全 権 を 委
ね た 経 過 を説 明 す る。
なぜ ヒ トラ ー
ま
と
め
5
分
に全 権 を 委 ね
たの か
・ヒ トラ ー に 全 権 を 委 任 した 経 緯 は 理 解 し た
が 、 で は な ぜ も っ と立 派 な指 導 者 に委 ね ず 、
ヒ トラ ー の よ う な 男 に 委 ね た の か を 考 察 す
る。
(3)評
①
・左 の よ う な 疑 問 を 生 徒 は
持つ。
・第4時
に この 疑 問 を深 く
考 察 す る。
価 の観 点
現 代 日本 の 民 主 主 義 と ワ イ マ ー ル 共 和 国 に お け る 議 会 制 民 主 主 義 の 現 状 と が 比 較 で き
1'
たか。
②
ワ イ マ ー ル 共 和 国 が 「ヒ トラ ー の 独 裁 」 に 至 っ て し ま っ た 危 険 性 と 共 に そ の 必 然 性 を
理 解 で きたか 。
③
な ぜ ヒ トラ ー の よ う な 男 に 全 権 を 委 ね て し ま っ た の か とい う 疑 問 が 持 て た か 。
第4時
君 の 心 が 戦 争 を起 こ す
(1)本
時 の ね らい
第3時
の 授 業 を 受 け て 、 な ぜ 当 時 の ドイ ツ 人 が ヒ トラ ー を 支 持 した の か を 追 究 す る 。 さ
ら に 戦 争 に 至 っ て し ま っ た 理 由 に つ い て 深 く追 究 し 、 そ れ が 自 分 の 身 近 な 問 題 と類 似 し て
い る こ と に 気 付 く。
(2)本
時の展 開
学 習項 目
復 習 と ヒ トラ ー
導
入
10
分
の ビデ オ 鑑 賞
学
習
活
指導上 の留 意点
動
・前 時 の 復 習 を 簡 潔 に 行 い 、 ヒ ト ラ ー の 演 説
の ビデ オ を見 せ る 。
・ヒ トラ ー と い う 人 物 と そ
れ を熱 狂 的 に 支持 す る 人
た ち を 実 感 と して 知 っ て
も ら う。
なぜ ヒ トラ ー
・ヒ トラ ー の 巧 み な 大 衆 操 作 を 知 る 。
を支 持 した か
・当 時 の ド イ ツ 人 の 置 か れ た 状 況 と そ の 怒 り
・具 体 例 を 挙 げ て 説 明 す る 。
と夢 に つ い て 話 し、 そ れ を ヒ トラ ー が 語 っ
展
た こ と を話 す 。
開
35
分
なぜ戦 争 に至 っ
・ヒ トラ ー を 支 持 した 層 、 反 対 した 層 、 傍 観
・い じ め の 問 題 な ど 生 徒 の
て しまっ た の
した 層 、 無 関 心 な 層 に 分 け 、 そ れ ぞ れ に つ
身 近 な問 題 と照 ら し合 わ
か
い て 、考 察 す る。
せ なが ら説 明 す る 。
・丸 山 真 男 の 論 文 を 資 料 に し て 戦 争 の 芽 が 徐 々
に で き て い く過 程 を 説 明 す る 。
「独 裁 制 」 の
ま
と
め
5
分
危険性
(3)評
・生 徒 と と も に ジ ェ ス チ ャ ー
を交 えて 説 明 す る 。
・君 の 心 が 戦 争 を 起 こ す と い う こ の 授 業 の 題
・さ ま ざ ま な 欠 陥 は あ る が
名 の 意 味 を 考 え させ る 。 そ こ か ら 生 徒 は 、
民 主 政 治 の 大 切 さが 生 徒
ヒ トラ ー の 例 か ら一 人 の 人 間 に 政 治 を 任 せ
に 深 く認 識 さ れ る よ う に
る こ とが よ い こ と な の か ど う か 考 え る 。
す る。
価 の観 点
①
ヒ トラ ー を 支 持 し て し ま っ た 社 会 的 、 心 理 的 メ カ ニ ズ ム を 理 解 した か 。
②
上 記 の こ とが 現 在 の 自 分 た ち に もあ り え る 事 だ と 追 究 し た か 。
③
<3>民
「独 裁 制 」 の 危 険 性 と民 主 主 義 の 重 要 性 に つ い て 、 切 実 に 捉 え た か 。
主 政 治 の 基 本 原 理 を知 ろ う
第5・6時
(1)本
前4時
現 代の民主主義体制
時 の ね らい
間 の 授 業 を ふ り返 り 、 民 主 政 治 の 意 義 と そ の 原 理 を 理 解 す る と と も に 、 世 界 の 政 体
一41一
を 比 較 し、 わ が 国 の 政 体 の 特 徴 と 、 そ の 問 題 点 を 知 る 。
(2>本
時の展 開
学
学習項 目
民 主 政治 の
導 正統制
習
活
動
・前 時 ま で の 授 業 を ふ り 返 り
、(個
指導上 の留意点
人 と社
会 の 幸 福 追 求 と い う 観 点 か ら)民
入
・A国
と ドイ ッの 類 似 性 や 相 意
主政
点 に 言 及 し、 第 二 次 世 界 大 戦
治が現在 、世 界 にお いて正統 制 を認 め
が 人類 に とっ て 、 ま た は 日本
られ て い る こ とを 知 り、 そ の 背 景 と な
に とっ て も、 そ こか ら多 くを
る歴 史 的 経 験 との 関 連 を理 解 す る 。 ま
学 ば な け れ ば な ら ない 経 験 と
た 、 ドイ ツ の 経 験 は わ が 国 の経 験 と類
な っ て い る こ とに 触 れ る。
似 す る 面 も あ る こ と を知 る 。
民主 政 治 の
原理
民主 政 体の
比較
展
・民 主 政 治 を 支 え る 原 理 で あ る 国 民 主 権
・用 語 の 説 明 に 終 始 す る こ と な
や代 議 制 、 人 権 の 保 障 、 権 力 の 分 立 、
く、 相 互 の 関 連 に よ り民 主 政
法 の支 配 な ど を理 解 し、 な ぜ そ れ らが
治 が 成 り立 っ て い る こ と へ の
民 主 政 治 を支 え る もの とな っ て い る か
理 解 を促 す 。
を考 察 す る 。
・民 主 政 体 の 代 表 的 な も の で あ る イ ギ リ
・三 権 分 立 の 原 則 の 意 義 に つ い
ス の議 院 内 閣 制 と ア メ リカ の 大 統 領 制
て触 れ 、 各 国 が そ の原 則 を踏
日本 国 憲 法
を比 較 し、 そ の 相 違 点 と共 通 点 に 気 付
まえ な が ら政 体 を工 夫 す る こ
に み る 日本
く。 民 主 政 体 に も い ろ い ろ な も の が あ
とに よ って 、 そ れ ぞ れの 政 治
の政治体制
り、 各 国 そ れ ぞ れ が 、 そ の 国 の 歴 史 や
風 土 をつ くって い る具 体 例 を
文 化 、 社 会 に 合 っ た 政 体 を持 っ て い る
示す 。
こ と を理 解 す る。
・日 本 の 現 在 の 政 治 政 体 は
開
.
、 イ ギ リス の
議 院 内 閣 制 に似 て い る こ とに気 付 く。
・旧 憲 法 下 の 体 制 と 新 憲 法 下 の 体 制 を 比
・日本 が 第 二 次 世 界 大 戦 へ と 突
較 し、 そ の 相 違 点 に 気 付 く。 ど の よ う
き進 ん で い っ た 原 因 を 、 旧 憲
な 意 図 か ら現 在 の わ が 国 の 政 治 体 制 が
法 下 の 体 制 の 問題 点 か ら考 察
つ くられ て い る の か を考 察 す る。
す る よ う促 す 。
・ ドイ ツ の 現 政 体 も 、 ワ イ マ ー ル 時 代 へ
・ ドイ ツ の 大 統 領 の 性 格 、 ま た
の 反省 か ら、 ど の よ うな 配 慮 が な さ れ て
は 内 閣 不 信 任 制 度 にお け る建
い るか を知 る 。
設 的 不 信 任 投 票 な ど、具 体 例
を示 す 。
日本 の 政 治
・ 日 本 の 政 治 体 制 ・機 構 に お い て 、 国 民
・情 報 の 公 開 、 地 方 分 権 化 、 行
体制 の 問題
審 査 、 地 方 政 治 と 国 政 との 関 係 、 行 政
政 の民 主 化 な どの 動 きに触 れ
点
の 在 り方 な ど に ど の よ う な 課 題 が あ る
る 。
か 考 える 。
ま
と
め
国民主権
・制 度 や 機 構 は 絶 対 的 な も の で は な く そ
・政 治 権 力 は 国 民 よ り 設 定 さ れ
の機 能 が 十 分 に発 揮 さ れ る よ う に 修 正
る が 、 そ の 行 使 の あ り方 も 、
され 、 そ の 運 用 上 の 工 夫 が 不 断 に な さ
国 民 に よ り吟 味 さ れ る 必 要 が
れ る必 要 が あ る こ と 、 ま た そ れ が 主 権
あ る こ とを指 摘 す る 。
者 で あ る 国 民 の 義 務 で もあ る の が 民 主
政 治 の根 本 原理 で あ る こ とを理 解 す る 。
一42一
〈資 料 〉
※ 第8校
時 に て使 用
シ ミ ュ レ・一 シ ョ ン シ ー ト
ア メ リ カ で は 早 期 に エ イ ズ へ の 対 応 が な さ れ た の に 、 日 本 で は ア メ リ カ と 比 較 し て2年
4ヵ
月 対 応 が 遅 れ た 。 そ の 間 の 企 業(製
薬 会 社)・ 行 政 ・医 療 機 関 の 態 度 や 行 動 は 、 ど の よ
う な 過 程 で 決 定 さ れ た の か 。 想 像 し な が ら 、 意 志 決 定 過 程 の3つ
の モ デ ル の どれ に 当 て は
ま る か 考 え よ う。
〈 問 題 の2年4ヵ
月(1983年3月
∼85年7月)〉
ア メ リ カで は… …
1983年3月
ア メ リ カ 防 疫 セ ン タ ー(CDC)が
、 次 の こ と を 正 式 発 表 した 。
「… 血 友 病 患 者 の エ イ ズ は 、 治 療 薬 と し て 使 わ れ て い る 非 加 熱 血 液 製 剤
が 原 因 とみ られ る … 」
→ エ イ ズ は ウ ィル ス で あ り、 輸 血 に よ る 感 染 経 路 が 疑 わ れ る 、 と い う 見
解 に対 して 、 血 友 病 の 治 療 薬 と して エ イ ズ に 対 す る 有 効 性 が 期 待 さ れ
た加 熱 製剤 が 認 可 され た 。
1984年5月
同 年9月
エ イ ズ ウ ィル ス は 同 定 さ れ 、 抗 体 検 査 も 開 始 さ れ る 。
血 液 製 剤 に 含 ま れ る エ イ ズ ウ ィ ル ス を 加 熱 す る と不 活 性 化 す る こ と が 証
明 され る。
同 年10月
ア メ リ カ 血 友 病 財 団(NHF)も
非 加 熱 製 剤 か ら加 熱 製 剤 へ 変 更 す べ き こ
と を勧 告 。
日本 で は … …
1985年7月
加 熱 製 剤 は5社
意 志 決 定 過 程 の3つ
⑤
一 括 して承 認 さ れ る。
のモデ ル
合理 的決定
明 確 な 問 題 意 識 が あ り 、 解 決 ま で の 過 程 が 目的 に 向 け て 合 理 的 で 首 尾 一 貫 し て い
る 。迅 速 に 決 定 す る 。
最 適方法
A三
最
⑤
圖 一
短
組織 的決定
組 織 内 の 作 業 手 続 き に 基 づ い て 決 定(前 例 重 視)。 各 組 織 の 要 請 を 重 視 す る 。
ま た 、 組 織 内 の 利 益 を 重 視 す る 傾 向 。 決 定 の 結 果 が 合 理 的 で な くて も 説 明 が 可 能 。
一43一
脚
⑤
関 係 重 視(組 織 内 ・組 織 間)
政治的決定
組 織 内 の 人 間 関 係 の 反 映 した 決 定 。 個 々 人 の 問 題 へ の 利 害 と駆 け 引 き を重 視 す る 。
人
人
人
人
人
注G.Allisonの
力 関 係 ・利 害重 視
政 策 決
定 過 程論 を参 考 に考
案 した モ デ ル で あ る 。
<4>現
代 日 本 政 治 の 諸 課 題 を知 り 、 望 ま し い 政 治 を 作 る た め の 行 動 を 考 え よ う
第10時
政 治 へ の 国 民 の参 加 に つ い て
(1)本
時 の ね らい
望 ま し い 政 治 の あ り方 の ま と め と し て 、 架 空 の 状 況 設 定 で 行 政 ・企 業 ・国 民 ・医 師 ・マ
ス コ ミの 立 場 か ら 、 ど の よ う に 問 題 解 決 に 向 け て 関 わ っ て い くか の ロ ー ル プ レ イ を 行 う 。
そ れ ぞ れ の 立 場 の 持 つ 制 約 を 乗 り越 え て 、 い か に 望 ま しい 結 果 を 引 き 出 す か 、 シ ミ ュ レ ー
シ ョ ン す る 中 で 、 国 民 が 具 体 的 な ビ ジ ョ ン を 持 っ て 、 政 治 に 関 わ っ て い く重 要 性 と 主 権 者
と して そ れ を 担 う責 任 に 気 づ く。
ロ ー ル プ レ イで は 、 そ れ ぞ れ の 立 場 か ら主張 、 行 動 す る こ とに よ って 、 そ れ ぞ れ の 立 場
の論 点 、状 況 を把 握 させ 、お 互 い の 立 場 を理 解 させ る よ うにす る 。今 回 の ロー ル プ レ イ で
は 、 さ ら に 、 お 互 い の 立 場(ポ
ジ シ ョ ン)か
ら の 見 解 が 、 課 題 に 対 して 建 設 的 な 合 意 や 提
案 の 創 造 に 結 び つ く よ う 、 工 夫 して 進 め る こ と と す る 。
ま た 、 第9校
時 に お い て は 、 ロ ー ル プ レ イ の 方 法 を 学 ぶ と と も に 、 行 政 ・企 業 ・国 民 ・
医 師 ・マ ス コ ミ に つ い て 、 イ ン タ ー ネ ッ トや 担 当 者 を 訪 問 す る な ど に よ り 、 そ れ ぞ れ の 役
割 を十 分 理 解 す る調 べ 学 習 を行 う。
一44一
(2)本
1
時の展開
学
学 習項 目
習
活
動
指導上の留 意点
一
ロ ー ル プ レ
導
イの 確 認
・架 空 のA病
れ の 立 場(ポ
の 発 生 に対 して 、 そ れ ぞ
ジ シ ョ ン)か
ら どの よ
う に 関 わ っ て い くか を ロ ー ル プ レ イ
入
・状 況 設 定 の ポ イ ン ト と な る 点 を
わ か りや す く提 示 で き る よ う に
配慮する。
する こ とと、 その状 況設 定 につい て
理 解 す る。
5者
展
開
の立場
上の制約
各立 場 の方
・5つ
の グル ー プに分 かれ 、 それぞ れ
・国 民 と マ ス コ ミ の 立 場 は 、 こ の
の 立 場 の 制 約 に つ い て あ ら か じめ 確
状 況 につ い て い ま だ知 ら され て
認 す る。
い な い とい う設 定 なの で 、 も し
・グ ル ー プ 毎 に ど の よ う な 行 動 を と る
仮 にA病
の 存 在 を知 っ た ら ど う
針制作
か 方針 を立 て る 。 ま た 、 そ の 方 針 を
す る か 、 また は 他 の 立 場 に対 し
各立 場 の方
遂行 す る に あ っ た っ て 、 他 の 立 場 へ
て 、 どの よ うに 対 応 して ほ しい
針 、要望 発
の 要 望 事 項 を 挙 げ て お く。
か を考 え る よ う に指 示 をす る 。
・時 間 を 決 め て 相 談 タ イ ム を と る 。
表
・各 立 場 の 方 針 要 望 を き き 、 そ れ に 対
して 、 ど の よ う な 回 答 を す る か 、 ま
・ 「マ ス コ ミ 」 は 各 立 場 へ の イ ン
タ ビ ュー事 項 を考 え る 。
た 、 方針 を 変 更 す る 必 要 は な い か 、
他 の 立 場 へ の 質 問 等 を協 議 す る 。
要 望 へ の 回
答
・あ ら か じめ 司 会 者 を た て て 各 立 場 同
士 で 質疑 応 答 をす る 。
合 意 の形 成
(討 論)
・こ の 事 態 に ど の よ う に 対 応 す る べ き
か を討 論 す る 。
・各 立 場 の 要 求 を 主 張 す る だ け で
な く、 総 合 的 な 提 案 を す る よ う
に 促 す 。5つ
の立場以外 の立場
へ の 要 望 ・依 頼 も 可 能 で あ る 事
最終 決論
を 示唆 す る 。
・各 立 場 毎 に 再 度 、 方 針 と他 の 立 場 へ
の 要 望 を 話 し合 う 。
ま
と
結論 発表
・各 立 場 の 決 定 を 発 表 し 、 こ の ロ ー ル
プ レイ に よ っ て 気 づ い た 事 な ど 、 互
め
い に感 想 を述 べ 合 う。
(3)評
価の観点
①
そ れ ぞ れ の 立 場 の 持 つ 制 約 を 乗 り越 え る こ と の 難 し さ を 感 じる こ と が で き た か 。
②
問 題 解 決 に 向 け て 、 自他 の 立 場 を活 か し合 う 発 想 を持 つ こ と が で き た か
③
お 互 い の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 通 して 、 事 態 を 解 決 に 導 く糸 口 を 探 る 事 が で き た か 。
④
情 報 の 公 開 は 、 責 任 の 分 散 に つ な が り、 最 終 的 に は 国 民 の 自 己 責 任 が 問 わ れ る 事 に 気
づ い た か?
一45一
〈資 料 〉
状況設定
最 近 、 原 因 不 明 のA病
が ア メ リ カ か ら 日 本 に 上 陸 して き た 。 突 然 に3日
間、高熱 を出 し
て 亡 く な る ケ ー ス が 増 え て き て い る 。 治 療 薬 は ま だ 開 発 さ れ て い な い 。A病 患 者 の10%が
ガ ン患 者 と して 抗 が ん 剤Bを
抗 が ん 剤Bの
、
投 与 さ れ て い る 者 で あ っ た と報 告 さ れ て お り、 ア メ リ カ で は
投 与 を 一 時 停 止 す る よ う勧 告 す る 措 置 が 取 ら れ た 。 た だ し、 抗 が ん 剤BとA
病 との 因 果 関 係 は 立 証 さ れ て い な い 。
日本 で は 、 抗 が ん 剤Bは
副 作 用 も 少 な く、 ガ ン ー 般 に は 効 果 が 高 い と し て 、 比 較 的 安 価
に て大 量 に販 売 され て 、 使 用 され て い る。
一 方 、 抗 が ん 剤 と して は 、Bよ り も 効 果 が 高 い と して 製 薬 会 社 が 認 可 を 求 め て い る 新 薬
Cは 副 作 用 と して 性 染 色 体 に損 傷 を 与 え る 等 の 懸 念 が あ り、 厚 生 省 で は 認 可 を 手 控 え て い
る状 況 で あ る 。
ち な み に 新 薬Cを
開 発 して い る の は 一 社 で あ り、 大 量 生 産 体 制 は 整 っ て い な い 。 販 売 さ
れ れ ば高 額 とな る こ とが 予 想 され る 。
ま た 、 い ま だ 日 本 で はA病
に つ い て の 情 報 は マ ス メ デ ィア に 乗 っ て い な い 。
各立場 の制約
【
行 政(厚 生 省)1国
民 全 体 の 健 康 の 維 持 増 進 を図 る 責 任 を負 い 企 業 や 医 師 に対 して 、指 導 的 立
場 にあ る。 国民 の 安 全 を考 え薬 品 の 認 定 な ど を図 る と と もに判 断 に よって は 、
企 業 に 多 大 な 損 害 を 与 え 、 国 民 か ら も損 害 賠 償 を 要 求 さ れ る 立 場 に あ る 。
1企 業(製 薬 会 社)i医
薬 品 の 販 売 開 発 を 通 して 、 社 会 に 貢 献 し て い る 。 しか し、企 業 で あ る か ら
には 営 利 が 第 一 目的 で あ る。 他 社 との競 争 に 勝 ち残 って い か な け れ ば な ら な
い 。 ま た 、 同時 に 、賠 償 責 任 を負 う リス ク も も って い る。
塵
医 療 の 専 門 家 で あ る 。 しか し 、A病
は 難 し い 。 そ して 、A病
につ い て は 不 明 な点 が 多 く、 説 明 や 判 断
も ガ ン も患 者 の 生 命 に か か わ る 病 気 で あ り、 経 過 に
よ っ て は 、 訴 訟 に 発 展 す る 可 能 性 も あ る 。 ま た 、 新 薬Cの
効 果 とそ の対 価 と
して の 価 格 を どの よ う に 判 断 す る か が 迫 ら れ て い る 。
塵
医 学 の 専 門家 で は な い。 そ の た め 、実 際 の 医 療 現 場 で は 、医 師 の判 断 に依 存
す る 傾 向 が あ る 。 高 額 の 新 薬Cは
す べ て の 人 が 服 用 で きる訳 で はな い。 また 、
情 報 の 真 偽 が 判 断 で きな いの で 、 ・
セ ンセ ー シ ョナ ル な 報 道 に触 れ る と、 パ ニ ッ
ク に陥 る危 険 性 を持 っ てい る。
1マ ス コ ミ(新 聞 社)1国
民 に 最 新 の 情 報 を提 供 し、 世 論 を形 成 す る 一 助 と な る と い う 社 会 的 役
割 を 担 っ て い る 。 しか し 、 マ ス コ ミ も企 業 で あ る か ら に は 営 利 を 考 え る 必
要 もあ る 。
一46一
ワ ー ク シ ー
ト
一47一
IV分
析 と考 察
1生
徒の状況
第1分
科 会 、 第2分
科 会 そ れ ぞ れ に 、 指 導 案 を実 際 の 授 業 に 取 り入 れ て 試 行 錯 誤 を 行 っ た 。
第1分
科 会 の ラ イ フ プ ラ ン の 作 成 で は 、 生 徒 自 身 が い ま だ 夢 と現 実 の 分 離 し た 意 識 の 中 で
生 活 して い る 年 代 で あ る こ と か ら 、 プ ラ ン の 立 て 方 が い きお い ス テ レ オ タ イ プ の 型 に は ま っ
た も の に な り や す く、 個 々 人 の 生 き方 の 志 向 性 を 反 映 し た も の に な り に く い と い う傾 向 が 見
ら れ た 。 第2分
科 会 の意 思 決定 過 程 モ デ ル を使 った作 業 学 習 で は 、個 々 の意 思 決定 の 過 程 を
な ぜ そ れ ぞ れ の モ デ ル に 分 類 し た の か 、 言 葉 で 説 明 す る こ と に 困 難 を示 す 生 徒 が 見 受 け ら れ
た 。 し か し 、 こ の2つ
の 作 業 学 習 は い ず れ も生 徒 が 問 題 の 本 質 に 深 く 関 わ っ て い く視 点 や 態
度 を育 て る 仕 掛 け(ハ ー ド)で あ り、 む し ろ そ こ に つ ま ず い て くれ る こ と が ね ら い で も あ る 。
そ の つ まず き 、 引 っ 掛 か りを 見 守 り、 解 き ほ ぐ し、 導 く援 助(ソ フ ト)を 担 当 す る の が わ れ わ
れ 教 員 の 役 目 で あ る 。 そ の 意 味 で こ の 指 導 案 は 、 生 徒 が 自 ら課 題 を 把 握 す る 契 機 を つ く る も
の で あ る が 、 同 時 に そ れ が 生 徒 そ れ ぞ れ の 中 で 展 開 さ れ る よ う指 導 の 工 夫 が な さ れ る こ と を
教 員 側 に要 求 す る もの で もあ る 。
2第1分
第1分
科 会 の研 究 内 容 に つ い て
科 会 で は 、 ラ イ フ プ ラ ンの 作 成 を 通 して 自 己 の 未 来 像 を か た ち づ く り、 そ こ か ら さ
ま ざ ま な 課 題 を 追 究 し て い く授 業 を 工 夫 し た 。 生 徒 は 、 ラ イ フ プ ラ ン の 作 成 と 人 生 の 諸 費 用
の 計 算 を 通 し て 将 来 の 自分 の 姿 、 生 き方 を 具 体 的 に イ メ ー ジ し よ う と し 、 自分 を 取 り ま き こ
れ か らそ の 中 で 生 き て い く社 会 を 実 感 を も っ て と ら え る 端 緒 とす る こ とが で きた 。 そ の 上 で 、
社 会 保 険 や フ リ ー タ ー の 問 題 に つ い て 考 え る こ と を 通 し て 、 自分 自 身 に と っ て の
活 」、 自 分 を と り ま く真 の
「豊 か な 生
「豊 か な 社 会 」 を 実 現 し て い く た め に 主 体 的 に 考 え 、 学 ん で い こ
う と い う姿 勢 を も た せ る こ とが で き た 。 そ れ を 課 題 追 究 学 習 や 公 民 科 科 目 の 他 の 領 域 で の 学
習 を 通 じて さ ら に 深 め さ せ て い く こ と が 、 こ れ か ら の 課 題 で あ る 。
3第2分
第2分
科 会 の研 究 内容 に つ い て
科 会 で は 、 「望 ま しい 政 治 の あ り方 」 を 考 察 す る よ う 、3つ
の 視 点 か ら授 業 の 工 夫
を 行 っ た 。 第 一 の 視 点 は 、 独 裁 政 治 と民 主 政 治 を 、 生 徒 の 身 近 な 問 題 か ら対 比 さ せ る こ と に
よ っ て 、生 徒 に そ れ ぞ れ に つ い て の問 題 意 識 を持 た せ た 。 第二 の視 点 は 、過 去 の歴 史 か ら ヒ
トラ ー を 取 り上 げ 、 国 の 指 導 を 一 人 に 任 せ て し ま う こ と の 恐 ろ し さ を 生 徒 に 認 識 さ せ た 。 第
三 の 視 点 は 、 現 代 日本 政 治 の 問 題 と して 、"薬
害 エ イ ズ 問 題"を
の よ う に 政 治 に 参 加 す べ き か を 考 え させ た 。 以 上 の3つ
取 り上 げ 、 主 権 者 と し て ど
の 視 点 に 共 通 して 意 識 した こ と は 、
生 徒 をそ の 当 事 者 の立 場 に立 たせ 、生 徒 が 主 体 的 に 問 題 解 決 を す る よ うな授 業 を 計 画 した こ
とで あ る。
一48一