学級の 「荒れ」 に関する一考察 - 東京成徳大学・東京成徳短期大学

志村聡子・深谷和子
TABLE5学級経営の現状に関する重回帰分析の結果
荒れ子ども因子2なかま間トラブル
荒れ子ども因子3教師への反抗
荒れの原因因子l教師外帰属
荒れの原因因子2教師内帰属
股近の子ども像因子1社会性未発達
最近の子ども像因子2疲れ・ストレス
最近の子ども像因子3反抗
自信因子l教師として
自信因子2社会人として
①●
重相関係数(R)
決定係数(R2)
属’●●6−
43
0
5
無力感因子l指導行動に伴う無力感
無力感因子2対人関係上の無力感
無力感因子3指導外の無力感
*******
*7
*3*
476509690952
3*
50
荒れクラス担任像因子l児童理解の不全
荒れクラス担任像因子2指導力低下
荒れクラス担任教師像3融通の効かなさ
荒れクラス担任像因子4放任主義
荒れ子ども因子l規範への不服従
単相関係数
卯馳蛇認Ⅳ弱加鯛弱妬布弱別〃妬帥W
O
00
31
20
●O
●O
■O
●O
●O
●O
●1
●
●1
凸3
命
G4
●
一
一●一
一
一①一
一●●
“偲閃偲師脆帥帥髄皿舵加喝叫妬旧肥
●一
●。一
申●一
ひゆ一
◆令一
e●一
。●一
●●④●
一
標準回帰係数
(
N
=
3
4
4
)
自信に関する各標準因子得点、および「荒れ」
捉える傾向がある。さらに、教師は「学級の荒
の経験を説明変数として、重回帰分析(一括投
れ」に関して、どうにも手をつけられなくなっ
入法)を行った(TABLE5)。解析の結果、説明
た末期的な状態を「荒れ」として捉える傾向が
率は30.0%で説明率の検定は1%水準で有意
あり、これが「荒れ」への気づきを遅らせてい
であった(F(4,339)=36.240,p<、01)。
る要因となっていると思われる。
標準偏回帰係数の有意性をみると、指導行動
「荒れ」の原因について検討したが、教師生
に伴う無力感、最近の子ども像3(反抗)、対
活における無力感の高低において原因の認識に
人関係における無力感では負の係数を示し、教
差がみられ、無力感(指導上・制度的)の高ま
師としての自信において正の係数が得られた。
りに伴って、原因を教師以外に帰属する傾向が
これらの結果から、教師の無力感や「荒れ」
強くなる。また、自信の高低による差異に関し
の経験は、学級経営にはマイナスの影響を及ぼ
ては、自信が高くなるほど教師側に原因がある
していることが示唆された。
とする傾向が強くなる。従って、仮説が支持さ
れる結果を得た。さらに、「荒れ」ているクラ
V、まとめ
スの担任像に関しても、「荒れ」を経験してい
ない教師ほど批判的な捉え方をする傾向がみら
教師は学級の「荒れ」に関して、子どもの規
れる。教師と子どもとの関係のみならず、教
範の崩れとみており、さらに、「荒れ」ている
師間の相互理解を深めることの必要性が示唆さ
クラスの教師に関しては「児童理解の不全」と
れる。
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学級の「荒れ」に関する一考察
論文集.568.
「荒れ」を段階的に捉えると、第1段階程度
東京都教育庁指導部(1999):小学校における学級
の「荒れ」はある程度経験を穂むと誰でも経験
経営に関わる調査について.
し、教師内に原因があるとする傾向がみられる
が、第2段階まで進むと、教師より子ども側の
浦野裕司・松村茂治(1999):「荒れる学級」で教
要因が影響していると捉えられる。さらに、状
師は子どもたちをどう認知したか(2).教育心理学
況の進行を懸念するよりは収束するであろうと
会第40回総会発表論文集,438.
予測する傾向が、「荒れ」を進行させる可能性
を広げてしまうことが推察される。
Ⅵ、今後の課題
本研究は、教師を対象とする調査によって、
学級の「荒れ」を捉えようと試みたが、むろん
子ども側の心理や発達上の問題をも明らかに
し、教科指導の方法の改善や心理的成長の支援
など、現代の子どもに合った教育方法の検討を
はじめ、残された問題は多い。
この現象について、さらにデータの量的調査
の蓄積が必要であり、また個々のケースの詳細
な事例研究も、予防的対策に必要と思われる。
引用文献
深谷昌志・戸塚智・三枝恵子・深谷和子・土橋稔.
鶴巻景子・島田美佐江(1999):「学級の荒れ」に
関する考察一教師調査を通して一.第6回日本
子ども社会学会抄録集,44-45.
学級経営研究会(1999):学級経営をめぐる問題の現
状とその対応一関係者間の連携による魅力ある
学級づくり−.平成10年・'1年度文部省委託研究
中間報告.
小島梢(1999):教師はどう変わっていけばよいの
か一教師が協働で育つ「学校おこし」の中で−.
総合教育技術.44-46.
品田笑子(1999):教師の管理意識と児童の不適応
行動の関係の分析.教育心理学会第40回総会発表
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