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頭部領域におけるプロトン MR スペクトロスコピーの
検査時間短縮の試み
岩手医科大学附属病院 中央放射線部
○平田 洋介
早川 勧
桐内 美喜男
(Hirata Yousuke)
(Hayakawa Susumu)
(Kirinai Mikio)
目時 毅
江刺家 邦雄
嶽間澤 博
(Metoki Tsuyoshi)
(Esashika Kunio)
(Gakumazawa Hiroshi)
【目的】
従来、MRスペクトロスコピーの分野では煩雑な操作手順とデータ解析を手動操作で行いデータ収集時
間を長く設定していたので検査時間が長くなっていた。今回、新規導入されたMRI装置ではMRスペクトロス
コピーの操作が簡素化されデータ収集から解析までのワークフローが改善されほぼ自動化された。そこで
データ収集時間に関連している積算回数NSA(Number of Signals Averaged)の比較検討し検査時間短縮を
試みた。
【検討項目】
NAA含有ファントムと健常ボランティアの解析グラフからノイズ比の測定と代謝物質の信頼度を表す標準
偏差%SDをNAA(N-アセチルアスパラギン酸)で比較する。そしてボランティアの解析グラフでNAAのピーク
とベースラインノイズを視覚評価する。
【撮像条件・使用機器】
撮像条件はMRSSE法 TR=2000ms Voxel size 20mm×20mm×20mm一定で行う。TE=35msとTE=136ms
の2種類でNSA、16回(32秒)、32回(1分4秒)、64回(2分8秒)、128回(4分16秒)、256回(8分32秒)、512回(17
分4秒)を比較する。使用機器は日立メディコ社製Echelon Vega Ver.1.4 1.5Tesla 使用コイルはHead
8chanel、解析ソウトはS-provencher社LCModelを使用する。
【測定方法】
解析グラフよりNAAの信号強度(SI)とベースラインノ
イズの信号強度(SI)からNAA-ノイズ比を算出する
(Fig.1)。
計算式
代謝物質の%SDは解析結果の表より抽出する。
【結果】
ファントムの計測は中心部にVoxelを設定し
3回計測して平均値を求めた。TE=35msは
NSAが増えるとNAA-ノイズ比と%SDは小さくな
った。TE=136msもNSAが増えるとNAA-ノイズ
比と%SDは小さくなった。ファントム測定では、
NSAの回数が多くなるほど%SDが小さくなり測
定データの信頼度が向上した(Fig.2)。
ボランティアの計測は被殻近傍にVoxelを
設定し1回のみの計測を行った。TE=35msの
NAA-ノイズ比はNSAが増えると小さくなった
が、%SDはNSA32からほぼ一定で変化が少な
い。TE=136msもNAA-ノイズ比はNSAが増え
ると小さくなったが%SDはNSA32からほぼ一定
Fig.1 NAA-ノイズ比
測定方法
Fig.2 ファントム測定結果
で変化が少ない(Fig.3)。
ボランティアの視覚評価は、TE=35msでは
NSA16、32はベースラインノイズが多くNAAの
ピークもあまり高くはないがNSA64からベース
ラインノイズが減りNAAのピークが高くなった。
TE=35msでは%SDを小さく保ったままベースラ
インノイズを考慮するとNSAは64回で可能で
ある(Fig.4)。TE=136msではNSA16、32、64は
ベースラインノイズが多いがNSA128からはベ
ースラインノイズが減少した。TE=136msでは
NSAを128回で可能である(Fig.5)。
Fig.4 ボランティア
TE=35ms 解析グラフ
Fig.3 ボランティア測定結果
Fig.5 ボランティア
TE=136ms 解析グラフ
【結語】
ファントムと健常ボランティアの計測結果からNSAを検討した結果、データの信頼度を保ちつつデータ収
集時間を短縮させるにはTE=35msでは64回の2分8秒、TE=136msでは128回の4分16秒まで短く設定するこ
とが可能だった。
【まとめ】
代謝物質の信頼度を著しく低下させずにNSAを減らしてデータ収集時間の短縮が出来た。以上の結果
を踏まえ簡素化された操作方法と定量化された解析結果の表示がリアルタイムに処理され装置のパフォー
マンスを最大限に活用する事でMRスペクトロスコピー検査の時間短縮が可能になった。