人口減少の進展 短期・長期両方の視点での津波対策 研究の目的と流れ

東日本大震災後における津波避難の方針
中央防災会議「東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波
対策に関する専門調査会」報告(2011.9)
これからの想定津波の考え方
レベル2
レベル1
○発生頻度は極めて低いものの、
甚大な被害をもたらす最大クラスの津波
東京大学大学院情報学環 総合防災情報研究センター
/東京大学生産技術研究所
大原美保
人口減少の進展
・人命保護に加え、住民財産、地域
・住民等の生命を守ることを最優先とし、
住民の避難を軸に、とりうる手段を尽くした 経済等の確保の観点から、 海岸保
全施設等を整備
総合的な津波対策を確立
内閣府 南海トラフ巨大地震の被害想定(2012.8、2013.3)
短期・長期両方の視点での津波対策
◆国立社会保障・人口問題研究所による推計によれば・・・
数年以内
地域別将来推計人口(2013.3)
2040年の人口指数
日本の将来推計人口
十年-数十年以内
長期:人口流入の抑制
(2010年を100とした場合の2040年の人口)
100‐120, 3
50‐75
2010
短期:津波避難場所・ビル等の拡充
長期:津波避難場所・ビル等の維持管理
75‐100
100‐120
2060
浸水域外
・2010年~2040年にかけて人口減
全国の市区町村の:95.2%
南海トラフ沿いの131市町村の97.7%
・2040年の人口指数が75未満まで
下回る自治体が約半数。
出典:国立社会保障・人口問題研究所:日本の将来推計人口(平成 24 年1月推
計)
集落移転、浸水域内で
の建築規制等
浸水域
30‐50
50‐75, 61
人口流出の促進
リスク情報の周知
浸水域内での建築規制
30‐50, 5
75‐100, 62
中位推計では、
2005年:1億2,806万人
→ 2055年: 8,674人(67.7%へ)
○発生頻度は高く、津波高は低い
ものの大きな被害をもたらす津波
津波
出典:地域別将来推計人口(平成25年3月推計)
短期・長期両方の視点での津波対策
研究の目的と流れ
◆短期: 津波避難場所・津波避難ビルの拡充
目的:将来的な人口減少を考慮した上で、津波避難ビル等の短期的
対策および土地利用転換等の長期的対策の方針について検討する。
・例えば、国土交通省「津波避難ビル等に関する実態調査」
対象:沿岸等の市区町村610 団体
1,876棟(2011.6.30) →3,986棟(2011.10.30)に増加
・国土交通省「東日本大震災における津波による建築物被害を踏ま
えた津波避難ビル等の構造上の要件に係る暫定指針 (2011 11)
えた津波避難ビル等の構造上の要件に係る暫定指針」(2011.11)
対象:南海トラフ沿岸域
沿岸市町村の津波
ハザードマップ・HP
等の調査
等
南海トラフ巨大地震
時の想定津波
(内閣府2012)
国勢調査人口データ
(1995‐2010)
コーホート
変化率法
将来的な人口推計
(2015‐2040)
◆長期: 土地利用転換や建築規制等
津波防災地域づくりに関する法律(2011.12)
①都道府県知事による津波浸水想定の設定
②市町村での津波防災地域づくり推進計画の作成
③津波防護施設の管理等
④都道府県知事による津波災害警戒区域及び
津波災害特別警戒区域の指定
沿岸市町村による津
波避難先の指定状況
将来的な人口変動と
津波リスクの関係の分析
人口減少を踏まえた今後の津波対策方針の検討
内閣府による浸水域の想定状況
内閣府 南海トラフ巨大地震の被害想定
例:ケース4での想定浸水域(高知市)
両想定での各市町村の満潮時の
最大津波高さ
2003
満潮時の最大津波
波高さ(2012)
40
2012
3次メッシュで見た浸水域の傾向
最も面積の大き
い津波高さ
17.2
2.0 0.0
0.01‐0.3m
12.0
0.3‐1.0m
35
1‐2m
1:1.5
30
27.2
2m以上が
48.5%
25
10‐20m
10
20m
1:1
20
2‐5m
5‐10m
29.2
11.6
20m以上
15
10
浸水面積の割合
5
浸水50%以上
は約1/4
0
0
5
10
15
20
3.9
7.2
28.0
11.2
多くの市町村で、満潮時の最大津波
高さが概ね1.5倍になった。
5%以下
10%
満潮時の最大津波高さ(2003)
25%
17.0
内閣府想定は
全部で11ケース
50%
75%
32.1
100%
出典:内閣府
津波避難先の指定状況に関する分析
・津波ハザードマップやHP等から津波避難先を把握できた自治体:
12府県131市町村(2012年9月時点)
津波避難先の指定状況に関する分析
指定数 5811089
2600
3283
35
54
津波避難場所
津波一時避難場所
自治体数
17 11
津波避難ビル
0%
(内閣府が津波高さを公表しているのは24都府県)
25%
50%
75%
100%
・隣接した自治体や同一の都道府県でも、津波避難先の名称は様々。
津波高さが1m以上のメッシュ
の人口(H22)
静岡市の津波ハザードマップの事例
表面
裏面:津波避難ビルリスト有り
津波避難施設、避難目標地
点、津波緊急一時避難ビル、
民間津波避難協力ビルなど
その他
神奈川、静岡、愛知、三重、大阪、兵庫、和歌山、徳島、愛媛、高知、大分、宮崎
200000
高知市
150000
名古屋市
大阪市
和歌山市
100000
50000
今後、更なる避難先
の拡充が必要
0
1
10
100
1000
市町村の指定する避難先数
津波避難先の指定状況に関する分析
津波避難場所、津波一時避難場所、津波避難ビルの指定先の分類
・浸水域の人口に対
して、著しく避難先が
少ない市町村が存在。
コーホート変化率法による人口推計
◆コーホート変化率法
・コーホート:同じ年又は同じ期間に生まれた人々の集団
小中学校
津波避難場所
その他の学校
公共建物
津波一時避難場所
公共住宅建物
民間建物
津波避難ビル
公園等のスペース
0%
20%
40%
60%
80%
100%
①基準年次(t 年)から5年後までの年齢階級別コーホート
変化率を用いて、t+5 年における 5 歳以上の人口を計算する。
1995
(H7)
2000
(H12)
0-4歳男
2005
(H17)
2010
(H22)
・・・・・・・
2015~2040
(H27~H52)
5-9歳男
道路関連スペース
・実態としては、「避難場所」には建物自体、屋上、公園等のオープンス
ペースなど様々なものが含まれ、定義があいまい。
・道路関連スペースは、津波一時避難場所の約2割
・民間建物は、津波避難場所の約4割、津波一時避難場所の約5割、
津波避難ビルの約6割と多い。一層のガイドラインが求められる。
変化率
変化率
変化率
平均変化率
②t+5 年の 0~4 歳人口は、t+5 年女子の 15~49 歳人口と婦人子ども比か
ら求める。0~4 歳の男女別人口は、0~4 歳人口とこども性比から求める。
婦人こども比=0~4歳人口÷25~34歳女子人口 (式1)
こども性比=0~4歳男子人口÷0~4歳女子人口 (式2)
コーホート変化率法による将来的な人口推計
・宅地造成・埋め立て等により3時点の変化率が存在しないメッシュ、H7~H22の
人口増加率が3倍以上となるメッシュは除外
→ 津波浸水が確認され、将来的な人口変動を算出したメッシュ: 3858
浸水のある3858メッシュのうち、浸水面積割合50%以上の860メッシュでの集計
1.0‐1.5
10.8%
0.2‐0.4
20.7%
0.8‐1.0
11.6%
0.6‐0.8
18.3%
0.4‐0.6
24.3%
1.2
10.0
0.8
0.6
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
1.4
浸水面積割合25%以上の1514メッシュでの分析
津波防災地域づく
りに関する法律
(2011)による集団
移転促進事業や
津波災害警戒区
域指定のニーズが
高い地域
最も面積の大きい津波
波高さが
1m以上のメッシュ
ュ数
人口流出の促進
高知県土佐清水市
(94)
宿毛市(123)
最も大きいバブ
ルは名古屋市
の675か所
大分県
佐伯市(36)
10
0
0
0.5
0.0‐0.2 0.2‐0.4
2040年の
高齢化率
0.4‐0.6
0.6‐0.8
時間(市町
村の値)
0.8‐1.0
高齢化率が40%以上、かつ1mの津波到
達最短時間が30分未満が、全体の23.4%
将来的な人口変動と津波避難先の関係
須崎
( 3)
須崎市(83)
20
0.0
津波リスクの高い地域での将来的な人口減少・高齢化
人口減少率が著しく
低くはなく、かつ浸水
リスクが大きい地域。
避難先の指定数
1
1.5
‐10
‐20
人口指数が0.6以下で津波高さ2m以上のメッ
シュが全体の23.3%
60‐
30‐60
10‐30 1mの津波
5‐10
の最短到達
0‐5
5.0
浸水面積割合25%以上の1514メッシュでの分析
全国平均0.84
30
最も面積大
の津波高さ
2040年の
人口指数
0.2
将来的な人口変動と津波避難先の関係
40
10 0
10.0
0.01‐0.3m
0.3‐1.0m
1‐2m
2‐5m
5‐10m
10‐20m
0.4
0
50
15.0
8.0
60
6.0
4.0
2.0
0.0
1
メッシュを集計した市町村の人口指数
人口指数平均値は0.68
人口問題研究所の日本の将来推計人口では、
出生中位(死亡中位)推計の2040年の人口指数は0.8 →本結果は人口減少大。
人口減少率が高く、
かつ浸水リスクが大
きい地域。
20.0
12.0
市町村の2040年時点の人口指数
まとめと今後の課題
・対象地域は南海トラフ沿岸域として、津波避難場所・津波避難ビ
ル等の指定状況を把握した。
→多様な名称、著しく指定数の少ない市町村の把握
・コーホート変化率法を用いた将来的な人口変動の推計を行い、
津波リスク 避難先の指定状況との関係を分析した
津波リスク・避難先の指定状況との関係を分析した。
→津波リスク地域での将来的な人口減少・高齢化を予測
→人口減少を考慮した長期的施策のニーズが高い地域の抽出
・今後の課題:
2012年度末以降の公開データを追加した分析
短期的対策、長期的対策の優先順位付け基準の検討
集落別、港別など、市町村内での更なる詳細な分析
変化率等のパラメータを変えた場合の人口推計
人口流入の抑制
リスク情報の周知
による人口流入の
抑制、
津波避難ビル等の
拡充、維持管理
最も面積の大きい津波
波高さが
1m以上のメッシュ
ュ数
人口問題研究所による人口
口指数
1.5‐3.0
5.0%
0.0‐0.2
8.5%
メッシュ割合
(%)
メッシュ割合
(%)
浸水メッシュの人口指数(2040年)
3.0‐
0.8%
将来的な人口変動と津波リスクの関係
全国平均0.84
50
避難先の指定数
高知県高知市(90)
40
徳島県阿南市(36)
三重県伊勢市(65)
30
静岡県浜松市(207)
20
10
0
0
0.5
1
‐20
1.5
最も大きいバブ
ルは名古屋市
の675か所
‐10
市町村の2040年時点の人口指数