第92号 ぐんぎん Business Report (平成26年 7月30日) ぐんぎん経営倶楽部事務局 群馬県前橋市元総社町194 TEL:027-254-7315 海外拠点レポート:「ライトトラック」が示す米国自動車市場の特徴について 「ぐんぎん Business Report」は、今週より計3回のシリーズとして、当行のニューヨーク支店、上海駐在員事務所、インドネシ アのバンクネガラ・インドネシアへの派遣行員による、現地の自動車市場に関するレポートをリレー形式でお届けします。第一 回目の今回は米国自動車市場レポートです。 昨年の米国の新車販売台数は1,558万台と、景気回復の追い風を受けてリーマンショック前の水準(2007年:1,615万台)に迫 る勢いとなりました。今年も5月までの販売状況は堅調で、2007年を上回る販売台数(1,630万台前後)になると見込まれており ます。米国自動車市場は、新車販売台数の約半分を「ライトトラック」が占めている点が特徴です。本レポートでは、米国自動 車市場の象徴とも言える「ライトトラック」の概要について、お伝えします。 1.「ライトトラック」とは 米国における自動車の種類は、「乗用車(パッセン ジャーカー)」と「ライトトラック」に分類されます。 「ライトトラック」は貨物の積載量が約1.8トン未満の トラック等の総称で、SUV、ピックアップトラック、 ミニバン等を指します。乗用車よりも一回り大きな車と 考えるとわかり易いかもしれません。 SUV ピックアップ トラック ミニバン 資料出所:Automotive News 2.「ライトトラック」に対する米国ユーザーのニーズについて 米国は国土が広大で公共交通機関が行き届かない地域も多く、車での長時間移動が一般的です。また、降雪地で の冬場の走行や田舎道など悪路での走行も考える必要があるため、長時間走行性と悪路走破性という2つの要件を 満たす、SUVやピックアップトラックなどの「ライトトラック」を購入するユーザーが多くなります。 車種別年間販売台数の第1位を、ピックアップトラックの代表格であるフォードのFシリーズが維持し続けている ことからも、「ライトトラック」の需要の高さがうかがえます。 3.米国自動車メーカーの「ライトトラック」生産手法について 米国自動車メーカー各社は、「ライトトラック」部門において様々なバリエーションの車種を用意していますが、 それらに使用しているプラットフォーム(車両の車台部分)は共通のものを流用しているため、コストを抑えた生 産が可能となっています。 共通のプラットフォームの上に、トラックの荷台を載せるとピックアップトラックになり、2~3列シートの大き な車室を載せるとSUVになり、より大きな居住空間のある車体を載せるとミニバンになる、といった具合です。 同じプラットフォームで、一般的な価格帯の車から、付加価値の高い車までカバーできる生産手法が、米国自動 車メーカーの利益を支える源泉となっているようです。 米国政府が、トラック(ライトトラックを含む)の関税を25%(乗用車は10分の1の2.5%)と高めに設定してい るのは、「ライトトラック」が米国自動車メーカーの貴重な収益源である証であると言えるでしょう。 4.日系メーカーの取組みとビジネスチャンスについて 「ライトトラック」の代表格であるピックアップトラックは、ビッグスリー(GM、フォード、クライスラー) の独壇場と言えます。日系メーカーもこの巨大市場への参入を図ってはいるものの、大きなシェア獲得には至って いない状況です。 しかし、「ライトトラック」の最大の欠点は「燃費」です。事実、リーマンショック直後には、「ライトトラッ ク」の販売シェアが大きく低下しました。足元の景気回復に沸いている米国ですが、低燃費志向も徐々に高まって おり、危機感を抱いたビッグスリーは、搭載エンジンの改良や車体の軽量化技術の開発など、燃費向上への取組み を強めております。 こうした流れは、高度な低燃費技術を背景に、小型車で幾多の低燃費車を開発した実績を有する日系メーカーに とっては、シェア獲得のビジネスチャンスが高まりつつあると言えるでしょう。 本件に関する相談、詳細に関するお問合せ先:群馬銀行 法人部(岡安)027-254-9314 以上 ● 本資料の内容につきましては万全を期しておりますが、正確性・完全性を保証するものではありません。本資料に依拠した ことによりお客さまが被った損害については、群馬銀行は一切責任を負いません。本資料の複写・複製・転載等を禁じます。
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