ワンダフルワールド通信No.38 2004年3月発行 こちら

ワンダフルワールド通信 No.38
日本ルイ・アームストロング協会 (ワンダフルワールド・ジャズ・ファウンデーション)
〒279-0011 浦安市美浜 4-7-15
WJF 事務局 ℡047-351-4464
ホームペ-ジ
2003 年 11 月発行
FAX047-355-1004
http://users.tapstep.net/saints/
発行人 代表 外山喜雄 編集長 山口義憲 編集 友永麻里子
NYサッチモハウス記念館 オープン
~ニューヨーク報告~
写真と文
外山喜雄、恵子
写真 小林 洋
ジャズの王様と言えば何と言ってもサッチモだ!
盛況。世界中から 50 人を越すプレス、10 台ほどのテ
その
“王様の家”
が、
この度記念館としてオープン、
レビカメラも取材に訪れた。前日の天気予報通りの雨
去る 2003 年 10 月 15 日、クラーク・テリー、ジョン・
と強風がウソのような秋晴れで終わったのは、サッチ
ファディス他ジャズ界を代表するジャズメン、ジャズ
モの念力か・・・天もこの記念すべきサッチモの日を、
評論家、ジャズ愛好家が集いオープニングのリボンカ
心から祝福してくれているようだった。
ット・セレモニーが盛大に開催された。
今回の記念すべきジャズ・イベントを聞きつけた
1971 年7月、ルイ・アームストロングがこの世を
音楽の友社、榎本孝一郎さんのご尽力で、同社出版
去つてもう 32 年になる。彼が亡くなるまで約 30 年を
の管楽器パラダイスがこのニューヨーク行きの特集
暮らしたニューヨークの家を、記念館として公開しよ
を組んでくれることになり、素晴らしい写真家小林
うという運動が始まったのは 1994 年。10 年越しの悲
洋さんが私たちに同行するという素晴らしい出演、
願が、この度めでたく実現の運びとなったわけだ!
取材旅行となった。
私たち夫婦も、式典
に招待され、並み居る
名ジャズメン達と舞台
をともにする栄誉に浴
した。
サッチモハウス・オ
ープンの日、早朝まで
強風、そしてあいにく
の雨模様だったが、式
典の始まる時間に合わ
せたように太陽が顔を
出し始め、ニューヨー
ク郊外のクイーンズ区
コロナ 107 番通りのサ
ッチモハウス前は
1,000 人ほどの人で大
サッチモハウス・オープン、挨拶するマイケル・コグスウェル館長
1
日本ルイ・アームストロング協会会員の皆様、
のジョン・ファディスがハウスの2階ベランダから
サッチモファン、ジャズファンの皆様
ウエストエンドブルースを・・・そして、通りを挟んだ
お待たせしました!!!
空き地に出来た特設ジャズ・テントのバンドへと演
その節は、皆様に大変お世話になり、
奏が引き継がれた・・・。このジャズテントでは、その
心より感謝いたします!!
後 11 時から3時まで、それこそ、アメリカのジャズ
ニューヨークのサッチモの家を「サッチモハウス
界を代表するジャズメン、特にトランペッターのオ
記念館」として公開しようという運動が始まったこ
ンパレード。私も、クラーク・テリー、ジョン・フ
とを、私たちが知ったのは 1996 年のこと。ジョン・
ァディス etc.・・・大変な大物の方々20 人ほどに囲ま
コルトレーン研究の第一人者で、ニューヨークのジ
れ、晴れの舞台に立ってきた。サミットに出席した
ャズシーンに太いパイプをお持ちの、藤岡靖洋さん
日本の首相よろしく、立ち位置に恵まれ、クラーク・
からもたらされた情報だった。この計画実現の手助
テリーと、ジョン・ファディスの隣!!!こんな場
けになればと、日本ルイ・アームストロング協会会
に、参加できて・・・一生の感激。
サッチモ・センテニアル・バンドがウェス
トエンド・
ブルースを引き継いで ・・・
。
員ならびにジャズファン約 1,200 人の方々に募金を
呼びかけたところ、何と嬉しいことに、それから2
ヶ月ほどのうちに多くの方々から 120 万円、約1万
ドルの寄付がよせられた。そして、その年の 11 月、
私達夫婦と日本ルイ・アームストロング協会理事小
泉良夫、富子夫妻でクイーンズ大学を訪問、1万ド
ルの小切手をハウスに手渡すことができた。その後、
この計画に賛同して下さった、当時MCAビクター、
現在ユニバーサル・ミュージックのジャズ部門のト
ップ青野浩史さんからも 50 万円ものご寄付が寄せ
演奏された曲は、全てサッチモゆかりの曲・・・元サ
られ、感激したのがついこの間のようだ。
ッチモ楽団のクラリネット奏者、ジョー・ムラーニ
クラーク・テリー、ジョン・ファディス、
の入ったルイ・アームストロング・センテニアル・
フランク・ウェス etc.・・・!!!
バンド(リーダー、チューバ奏者デイビッド・オス
サッチモのために集まった、
トワルド)の演奏に始まり、1940 年頃にサッチモ・
ジャズ界を代表するプレイヤー達!!!
ビッグバンドで共演したギター奏者のローレンス・
サッチモ・オールスターズの
ルーシー(93 才)、ドラマーのジョニー・ブロウア
元メンバーも元気な姿を!!
ー(93 才)の入った平均年齢 75 才を越えるハーレ
サッチモの家は、家全体が大きなリボンで結ば
ム・ジャズ・アンド・ブルース・バンド。ベッシー・
れ・・・、イキですね、アメリカの人は・・・!!!それ
スミスを思わせるブルース&ゴスペルの黒人歌手、
が大きなハサミでカットされると、トランペッター
キャリー・スミスはウィントン・マルサリス・リン
ウェストエンド・
ブルース
ジョン・ファディス
カーン・センター・バンドのトロンボーン奏者、ワ
イクリフ・ゴードンとテイク・マイ・ハンド・プレ
シャス・ロードを熱唱。特別ゲストのテナー・サッ
クス奏者フランク・ウェスとジミー・ヒースは、ド
ラムのエディー・ロック、ベース、ジェイ・レオン
ハートを従えジャスト・フレンズを演奏、途中ロ
イ・ハーグローブが飛び入り。そして、いよいよト
ランペッター総出演によるトランペット・トリビュ
2
ート・ジュビリーの始まりだ。!!
ジャズ界を代表ミュージシャン、ジャズ評論家、
ジミー・オーエンスのアカペラ・ソロに始まり、ジ
ジャズプロデューサー達が一同に!!
ジャズ・ドキュメンタリー番組の傑作、
“ケン・バ
ーソンのマック・ザ・ナイフ、クラーク・テリー、ジ
ーンズのジャズ”日本版が、11 月末パイオニアから
ョン・ハレル、ニコラス・ペイトンによる南部の夕暮
発売されたばかりだが、サッチモハウス・オープン、
れ、クラーク・テリーはもう一曲、ブルースで渋い喉
まるでケン・バーンズのジャズの中に登場するプレ
を披露。そして、ランディー・サンキ、テレル・スタ
イヤーやジャズ評論家、サッチモの友人、音楽業界
ッフォード、アンコールでステージに残ったクラー
人の大集合だった!!!この日サッチモハウスに集
ク・テリー、
そして私がバーベキュー料理で踊ろうよ、
まったのは、サッチモハウス記念館の館長としてこ
元サッチモ・オールスターズのピアニスト、マーティ
の記念すべきオープニングを実現させた最大の功労
ー・ナポレオン加わり大スイング!!マーティは 81
者、マイケル・コグスウェル、元コロンビアの大プ
才にもかかわらず、十八番のセントルイス・ブルース
ロデューサー、ジョージ・アバキアンは 86 才で至っ
のソロも披露、全く衰えを見せていない矍鑠たるプレ
て元気。彼はコロンビア・レコードの名盤サッチモ
イを聞かせてくれた。トランペット・オン・パレード
大使の旅、プレイズ,WCハンディー、ホット5,
は続き、ジョン・ファディスのソロで、メモリーズ・
7,ベッシースミス等・・・のプロデューサー、マイル
オブ・ユー、女性トランペッター、イングリッド・ジ
スのマイルストーン、ラウンドミッドナイトもアバ
ャンセン、ウォーレン・バッシェ、マイケル・ロドリ
キアン・プロデュース、サッチモのマックザナイフ
ゲスが、オン・ザ・サニーサイド・オブ・ザ・ストリ
も氏のヒット作だ。サッチモの最も親しい親友、ジ
ート、ランディー・ブレッカーとマイケル・フィリッ
ャック・ブラッドレイ、元ダウンビート誌編集長で
プ・モスマンがオール・オブ・ミー、ビリー・テイラ
現在ラットガー大学ジャズ研究所長ダン・モーガン
ーがソロピアノ、オール・ザ・シングス・ユー・アー
スターン、サッチモの新誕生日を発見世界を大騒ぎ
で飛び入りした後、最後のフィナーレは、ジョン・フ
させたタド・ジョーンズ、黒人の評論家スタンレイ・
ァディスを中心に、最後まで残っていたトランペッタ
クラウチ・・・その他にも、ジャズライターとしてあま
ー全員によるジャムセッション、曲は、
インディアナ。
りにも有名なナット・ヘントフ、アトランティック・
秋吉敏子カーネギーホール・コンサートのリハから駆
レコードの故ネシュイ・アーティガンの弟で共同経
けつけたジム・ロトンディも加わり、ハイトーン合
営者の方・・・。
戦・・・出演を予定されていたジョー・ワイルダーは体
調がすぐれず欠席、ちょっとサッチモ・スタイルの奏
者が少なかったには心残りだったが、天国のサッチモ
に届けとばかりの、トランペットのスリリングな競演。
どこからか天の方から、サッチモの“オー・イエース”
というかけ声が聞こえたような気もした瞬間だった。
出番待ち クラーク・テリー、
外山喜雄、ニコラス・ペイトン
サッチモ・
バンドOB、
左マーティー・
ナポレオン(
P)
夫妻
右ジャック・
レスバーグ(
B)夫妻
ェレミー・ペルト、ルー・ソロフ、エディー・ヘンダ
海外からは、スエーデン・ジャズ博物館のスタッ
フ、カナダ、イギリス、ドイツ等各国のジャズファ
ン、フランスからはホット・クラブ・オブ・フラン
スのメンバーに加え、テレビ・クルーも派遣されて
きていた!!
3
ミュージシャンでは、元サッチモ・オールスター
なんと学校の名前はルイ・アームストロング小学校と
ズのピアニスト、マーティー・ナポレオン、ベース
ルイ・アームストロング中学校。サッチモの家のある
のジャック・レスバーグ、クラのジョー・マレーニ、
コロナの街の人々が、隣人サッチモの名前を称えるた
1940 年代のサッチモビッグバンドのギタリスト、ロ
めにと陳情し実現した学校名だという。
ーレンス・ルーシー・・・そしてサッチモのために集ま
サッチモハウスのある 107 番通りのこの区画は、こ
ったトランペッター達は、前述した通りクラーク・
の日を記念してルイ・アームストロング・プレイスと
テリー、ジョン・ファディス(今回のイベントの音
命名されることが市議会で決定され、式典で発表され
楽監督も担当)
、ランディー・ブレッカー、ニコラス・
大きな拍手を呼んでいた。ハウスの向かい側の歩道に
ペイトン、ランディー・サンキ、ウォーレン・バッ
は、サッチモゆかりのソールフードの屋台がならび、
シェ、ルー・ソロフ、ロイ・ハーグローブ、トム・
サッチモが大好きだったニューオリンズの料理ビー
ハレル、ジミー・オウエンス、ジェレミー・ペルト、
ンズ・アンド・ライスや飲み物を楽しんだ。
マイケル・ロドリゲス、イングリッド・ジェンセン、
サッチモハウスの一般公開は翌 16 日からだが、こ
テレル・スタッフォードジム・ロトンディ、そして
の日の出席者には特別に“王様の家”の中を巡るガ
私、また、サックスのフランク・ウェス、ジミー・
イド付きツアーが用意され、見学希望者が長い列を
ヒース、ドラムのエディー・ロック、ベース、ジェ
作っていた。
サッチモハウス前の通りは、ルイ・アー
ムストロング・
プレイスと命名された
イ・レオンハート・・・。
サッチモの隣人、床屋さん
ルイ・アームストロング小、中学校の
可愛い生徒達も・・・!!
サッチモが住んでいた頃からのお隣さん、セルマ
お婆さんも元気・・・。75 才くらいだろうか、スマー
トな黒人女性、サッチモが生きていた 30 年前はなか
なかの美人・・・いや今も素敵ですが・・・私の袖を引っ
張ってある黒人を指して、この人がサッチモの床屋
さんだよ、と教えてくれた!!時間があったら是非
ジャズ・テントでのトランペット・ジュビリーの
散髪してもらいたかった!!!
後は、サッチモハウスを管理するNYクイーンズ大
また、人がたかっている 40 才くらいの黒人の方・・・、 学音楽学部の学生達のフルバンドが登場、サッチモ
誰かと思ったら、例のサッチモと子供達が階段でラッ
ハウスで保管する 1940 年代のサッチモ楽団の譜面
パを吹いている有名な写真、その少年の一人だっ
を再現、リボンカット式典の終わりを締めくくった。
た!!!子供が大好きだったサッチモらしく、近くの
ピアニスト霧生トシ子さんのお嬢さんで、同大学に
小学校、中学校の子供達もスクール・フラグを大きく
留学中のジャズ歌手の霧生ナブ子さんがこのビッグ
拡げて、セレモニーのお祝いに駆けつけて来ていた。
バンドをバックにエイント・ミスビヘイビンを熱唱
したのが楽しかった。
サッチモハウス記念館オープン!!!
興奮は夜まで!!!
10 時に始まり午後3時まで続いたリボンカッ
ト・セレモニーの興奮は、44 丁目にある有名ジャズ
クラブ、バードランドが主催した「サッチモハウス
記念館オープン記念特別ライブ」へと引き継がれ、
夜9時から、そして 11 時からの2ステージ、文字通
り、全米また世界からのサッチモ・ファンが式典の
4
余韻を楽しんだ。出演はデイビッド・オストワルド
はガイド付きで、書斎、バスルーム、キッチン、メ
のサッチモ 100 年記念バンド。1965 年からサッチモ
イドさんの部屋等を巡る、約 40 分のツアーが用意さ
が亡くなるまで、オールスターズのメンバーとして
れ、時々隠れたスピーカーからサッチモの肉声を録
在籍したクラリネット奏者、ジョー・ムラーニがゲ
音したテープが流れる。ベースメントの部屋には、
ストに入り、トランペッター、ランディー・サンキ
サッチモのトランペット、ゴールドディスクその他
が素晴らしいプレイを聞かせた。
ゆかりの品が展示され、スーベニア・コーナーも開
私たちもゲストで夫婦で出演、同じくゲスト出演
設されている。マンハッタンからタクシーに乗って
の予定だったクラーク・テリーは、残念ながら昼間
も 30 ドル、30 分くらい。地下鉄でも、もちろん簡
の式典の疲れがとれず、欠席となった。サッチモハ
単に行くことが出来る。
ウス、オープン記念ライブと言うことで、ヤンキー
質素な王様の家の、ちょっとした贅沢に
ズ地区優勝がかかった第6ゲームの夜だったにもか
思わず“クスッ”と笑う!!
かわらず、超満員の盛況!!サッチモフリークの集
望めばビバリーヒルズの豪邸にも住むことの出来
まりのようなニューヨーク・ジャズライブ。でも、
たサッチモ。しかし彼は、ニューヨークの郊外、ワー
ゲスト出演した日本からのサッチモ・フリークであ
キング・クラスの人たちが住むクイーンズ区コロナ
る私を、皆さん大喜びしてくれ、大変嬉しかった。
107 丁目 34-56 番にある、さほど豪華ではないレン
他人のバンドにゲストで入って、あまり勝手もでき
ガ造りのこの家にすみ、気さくな隣人達との交流を楽
ないとおとなしく始まったのだが、私のサッチモ張
しんだ。ルイは 1943 年から他界する 71 年まで愛妻ル
りのボーカルが受けに入って、いつの間にか気がつ
シールとともにこの家で暮らし、隣人達を愛し隣人達
いたらバンドを仕切ってしまっていた・・・。
に愛され、子供達を可愛がったと言う。
この日の前日も、デイビッドのサッチモ記念バン
ニューオリンズのスラムに生まれ、世界的な音楽家、
芸術家となったジャズ王、
サッチモ。
そんな偉大な
“王
トン・マルサリスとの共演が多い黒人トロンボーン
様”の慎ましやかな生活をこのハウスでのぞき見し、
奏者のワイクリフ・ゴードン、コルネットのエド・
でも、そんな中にもちょっとした贅沢があったりする
ポルサー等と共演、一流ミュージシャン達と2日間
のを発見して、
クスリと笑ったりするのも、
感慨深く、
も演奏をすることができ、大変貴重な経験をさせて
また、身を正される様な気にもなるものである。
(極
もらった。
めつけは王様のバスルームです・・・)
バードランドでの記念セッション
ドが出演、私たちはこの日もゲスト出演し、ウィン
“コングラッチュレイションズ、
ポップス(親爺さん)!!!”
おめでとうございます!!!
☆また、サッチモハウス・オープンの記事は、スイ
ング・ジャーナルがジョン・コルトレーン研究で
しられるジャズ評論家藤岡靖洋さんを現地派遣、
ニューヨーク新名所
ジャズライフが現地ジャズライターに取材委託、
サッチモ記念館へ皆様もお出で下さい!!
ジャズワールドには私が投稿・・・ジャズ各誌に報
ニューヨークの新名所、サッチモ記念舘とも言え
道されている。また、時事通信もニューヨーク発
るサッチモハウス・ミュージアム。翌 16 日のオープ
として、セレモニーの模様を配信、日本マスコミ
ンから多くの入館希望者が詰めかけている。開館時
各方面にニュースが流れた。
間は朝 10 時から4時まで、入館料8ドル。入館者に
5
6
サッチモのために集まったトランペッター達:クラーク・テリー、ジョン・ファディス(今回のイベントの音楽監督も
担当)
、ランディー・ブレッカー、ニコラス・ペイトン、ランディー・サンキ、ウォーレン・バッシェ、ルー・ソロフ、
ロイ・ハーグローブ、トム・ハレル、ジミー・オウエンス、ジェレミー・ペルト、マイケル・ロドリゲス、イングリッ
ド・ジェンセン、テレル・スタッフォードジム・ロトンディ、そして私、外山喜雄。また、サックスのフランク・ウェ
ス、ジミー・ヒース、ワイクリフ・ゴードン(tb)ドラムのエディー・ロック、ベース、ジェイ・レオンハート・・・。
サッチモ楽団のメンバーだった、ジョー・間レイニー、ジャック・レスバーグ、マーティー・ナポレオン!!!
デイビッド・オスワルドがリーダーのサッチモ生誕100年記念バンド。ニューヨークのオールドタイマー
集めた、ニューヨーク・ハーレム・ジャズ&ブルース・リジェンズ、、
、このバンドにはなんと1940年代にサッチモ
7
バンドで活躍した94才ローレンス・ルーシー(g)の顔も見えた!!
写真撮影:小林 洋
8
サー・チャールス・アット・ホーム
~ユー・アー・ザ・サンシャイン・オブ・マイ・ライフ~
ピアニスト、サー・チャールス・トンプソンがト
ンの新田豊彦さんと渡辺治道さん私たちで、地図を
ロンボーン奏者ビック・ディケンソンと吹き込んだ
片手にサーチャールス邸探索ドライブに出かける。
名作レコード、ビック・ディケンソン・ショーケー
運転は是非ロスで運転したいという藤崎、粉川が担
ス。このレコードの中に、彼のオリジナル、
“サー・
当。空港の傍を通るフリーウェイ 405 号線に乗って
チャールス・アット・ホーム”と言う曲がある。ユ
約 30 分、サンタモニカを過ぎ、ハリウッド、ビバリ
ニゾンのリフが、シンプルに繰り返されるブルース。
ーヒルズの西側を過ぎもうひと山越えたバーバン
“アット・ホーム”・・・家でくつろぐと言う意味もこ
ク・ブールバードで降りる。降りて1キロ足らず、
もっているのだろう・・・いかにもサー・チャールスら
2,3 分のところ、いかにもロスらしい素敵なアパー
しい、中間派ジャズの名演奏のひとつだ。
トの前で、サー・チャールスの元気そうな笑顔が私
今年8月 27 日から9月1日、ロスアンゼルス・ス
たちを待っていた。
イート・アンド・ホットジャズ祭に出演したデキシ
ーセインツは、今年5月、新浦安ハブで日本ルイ・
アームストロング協会主催の再会セッションをした、
サー・チャールスさんをロスの自宅に訪ねた。
ベッドルーム、リビングルーム、キッチン、バス
サー・チャールスさんと奥様のまきこさんは、ハ
リウッドからもう一つ山を越えたロスの北部、バーバ
ンクの清楚なプール付きアパートに住んでいる。素敵
な奥様に恵まれ、毎日すぐそばのゴルフ場に通い、か
つてセミプロでならしたゴルフを 10 ドルで楽しむの
が、1918 年生まれ、85 才の彼の健康の秘訣。サー・
チャールスの元気さは驚異的で、奥さんがこうこぼし
ルームのこじんまりした素敵なアパート、ドアを開
ていた・・・“この間車を運転して、スピード違反で捕
けると正面のリビングルームにグランド・ピアノが。
まりましてネ・・・それがネ、100 マイル出てたって言
私たちを迎え入れると、早速サー・チャールスは、
うんですから”
、100 マイル=160 キロである・・・。
歓迎のピアノを弾き始めた。曲は、スティービー・
8月 28 日、ジャズ祭の開催されているロス空港の
ワンダーのヒット曲、
“ユー・アー・ザ・サン・シャ
マリオットホテルで、8人乗りクライスラーのバン
イン・オブ・マイ・ライフ”。私たちが彼のサンシャ
をレンタル、セインツのメンバー、マイク・レズニ
イン!!最大の歓迎の言葉だ。それほど、ハブでの
コフ、粉川忠範、鈴木孝二、藤崎羊一、ジャズファ
9
~サー・チャールス・トンプソンと
中間派ジャズ~
日本ルイ・アームストロング協会の歓迎会を喜んで
下さっているのだ!!!!
バスルームと寝室には、歓迎会の写真が何枚も飾
外山喜雄
られていた。
中間派ジャズと言う言葉がある。
明るいロスの日差しが差し込むベッドルーム。大
1950 年代、バンガードというレコード・レーベ
きな鏡台の前には沢山の写真が飾られ、中には、サ
ルにそんな名演奏の数々が録音された。
ー・チャールスが小学生の時の写真も・・・。40 人ほ
メンバーはピアノのサー・チャールス・トンプソ
どの白人のクラスメートの中に一人だけ黒人のサ
ンを中心に、トロンボーン、ビック・ディケンソン、
ー・チャールス少年・・・彼の通った小学校は、彼以外
ベース、ウォルター・ペイジ、クラリネット、エド
皆白人・・・人種差別の厳しかった当時としては、大変
モンド・ホール、ドラム、ジョー・ジョーンズ、ト
珍しいことだったという。
ランペット、ルビー・ブラフ、、コールマン・ホー
よけいなことだが、寝室にあるベッドは一つだ
キンス、ジョー・ニューマンが入った盤もある。
け・・・ダブルベッドがとても印象的だった。
メンバーからもわかるように、カウント・ベイシ
リビングルームのオーディオ・セットからは、イ
ーのメンバーやサッチモ・オールスターズのメンバ
リノイ・ジャケやコールマン・ホーキンスと録音し
ー、またスイングからモダン畑のジャズメンによる
たサー・チャールスのCDや、ハンプトン、ベイシ
色々な要素を持ったジャズ。
ーなどスイングのオムニバス盤のジャズが流れ、そ
スイングジャズより一寸モダン、でもモダンジャ
んな中、誰かが録音しプレゼントした新浦安ハブの
ズではない。デキシーっぽい面も有るがビーバップ
ライブCDもかかっていた。
的で、ホットと言うよりはクールなジャズ・・・。
奥様が手配してくれた、ケータリングの中華が山
一体このジャズを何と呼んだものか・・・。
ほど届き、全員超満腹に。
困ったすえ“中間派ジャズ”と素晴らしい命名を
夜のコンサート出演に間に合わせるため、帰宅時
したのは、司会者として有名になる前、ジャズ評論
間が迫り、お別れの挨拶をしていると、また、来た
家として活躍していた大橋巨泉さんだったという。
ときと同じように、サー・チャールスは“ユー・ア
“中間派ジャズ”のサウンドに最大の影響を与え
ー・ザ・サンシャイン・オブ・マイ・ライフ”を演
ているのが、ピアニスト、サー・チャールス・トン
奏して、私たちを送ってくれた。
プソン。何故って、中間派ジャズと呼ばれる全ての
ロスの明るい太陽の下、素敵な奥様に恵まれ、コ
録音に、彼のピアノ入っているからだ。“中間派ジ
ンサートに、レコーディングに、ゴルフにと、悠々
ャズ”って、サー・チャールスのジャズなんだ・・・。
自適の生活を送る“サー・チャールス・アット・ホ
サー・チャールスのピアノソロを聴いていると、そ
ーム”を訪ねる小旅行は、温かい感激の中、再会を
う納得させられてしまう。
約束して終わりました。
こんな逸話がある。ニューヨークのジャズ・スト
サー・チャールスさん、奥様、お元気で。また、
リート 52 番街にジャズがあふれていた 1950 年代は
日本で、お会いしましょう!!!
じめ、カウント・ベイシーの奥さんがこの通りを通
りかかった。すると、ご主人、ベイシーのピアノが
聞こえてくる・・・。
“家の主人は、今日休みのはずだ
けど・・・”と中を覗くと、ピアニストはサー・チャ
ールスだった・・・。
彼に最初に会ったのは、今から 15 年ほど前、彼
が六本木のジャズクラブ、アフター・シックスに半
年契約で出演していた時だった。伝説のプレイヤー、
サー・チャールスが日本に!!!通い詰める内に、
10
すっかり友達になってしまった私達。よく彼を我が
伝統の幽玄の美にも通じる世界・・・。ピアノの詩人、
家に招待して、たっぷりピアノソロを聴かせてもら
ピアノの俳人、サー・チャールスの心が、やさしく
った。丁度、彼がステイしていた六本木のマンショ
スイングし始める時でもある。
ンの部屋にピアノがなかったこともあって、ピアノ
代表作“ビック・ディケンソン・ショーケース”
練習がてら来てくれたのである。
はそんな秀作、傑作のたっぷり詰まった名盤だ。憧
彼のピアノを幸運にもとことん聴き込ませても
れのジャズマンと日本で知り合いになり、1992 年
らったお陰で、サー・チャールス・スタイルの分析
には、キングレコードから“サー・チャールス・ト
にも長けて来た。
ンプソン・ショーケース”と言う私たちとの共演レ
丁度私たちの頭の中にも、時々昔の想い出が蘇
コードを出すことが出来た。その後何度も、日本ル
ってくるように、彼のピアノにも、ある時はベイシ
イ・アームストロング協会の例会にゲスト出演。ア
ーが、ある時はアート・テイタムが、またテディー・
メリカへ帰ってからも、日本を訪れるたびに特別セ
ウィルソン、エリントン、アール・ハインズ、ナッ
ッションを持たせてもらっている。昨年、そして今
ト・キング・コールまで、、様々なピアニストの想
年5月、新浦安ハブでのセッション。ジーパス・ク
い出が乗り移ってくるのがわかるのである。そんな
リーパス、エブリバディー・ラブス・マイ・ベイビ
時、ピアノを弾くサーチャールスの眼は、半ば上目
ー、オールド・ファッションド・ラブ、マギー若か
遣いに彼のアイドルの、また友人のピアニスト達の
りし頃・・・。私たちにとっても、サー・チャールス
姿を遠くに探すような、夢見る目つきをしている。
さんにとっても、日本ルイ・アームストロング協会
そして何と言っても、リズム・セクションが優しい
会員の皆さんにとっても、素敵な想い出のセッショ
スイング感をかもし出しているとき、サー・チャー
ンを積み重ねている・・・。こんな素敵な、巡り合わ
ルス独特の単音のフレージングが魔法のように生
せに感謝!!!
み出されて・・・いつの間にか聴く人は、すっかり“中
間派ジャズ”ミスター・サー・チャールス・トンプ
ソンの世界に引き込まれている!!!それは日本
2003 年日本ルイ・アームストロング協会
懇親クリスマスパーティーのお知らせ
御家族、お友達も
お誘い合わせて
いらしてください
ダンス!
大抽選会
楽しみ盛り沢山♪
日時 12 月 23 日(火・祝日) 13:00~16:30
場所 新浦安 HUB(047-381-5207)
JR 京葉線新浦安駅前オリエンタルホテル B①(駐車場無料)
Dixie saints Play
X’mas Songs
(駐車券はお帰りの際店の者にお申し出ください)
会費:WJF 会員 5,500 円 一般 6,000 円
(ご飲食込み)
☆2003年 WJF 活動報告
非会員の方も
☆8月ニューオリンズツアー(楽器プレゼント)報告
ご遠慮なくご参加ください
☆演奏:外山喜雄とデキシーセインツ他
☆お客様飛び入りコーナー(ご希望の方はふるってお申し出ください。)
お申し込みは WJF 事務局まで
〆切 12月 19 日
TEL:047-351-4464 FAX:047-355-1004
E-mail:[email protected]
11
サッチモの孫達へ楽器を!!!
活動にご協力、有り難うございます!!
宇田川允敏様 (会員)
WJF会員の宇田川さんは、ニューオリンズの子
供達へ楽器をの運動にご協賛下さり、大きな力とな
って下さっています。
去る、5月、お住まいの杉並区教育委員会、教育
主事、坂田篤様を通じ、杉並区高井戸東小学校のブ
ラスバンドで不要になった楽器をご寄付頂けるとの、
↑
新大久保グローバルで
宇田川さんと高井戸東小学校
からの楽器
嬉しいご連絡を頂きました。
楽器はメロホーン(小型のホルンのような楽器)
9本、そしてチューバ 1本。ほとんどの楽器が、
楽器修理が必要でしたので、ボランティアで楽器修
←ロクさんこと鵜沢緑郎さん。
この度グローバル楽器店を
退社されました。
ありがとうございました。
理をお願いしている、新大久保の楽器代理店グロー
バルで落ち合いました。
同社社員でデキシーの世界では“ロクさん”の愛
称で知られる、鵜沢緑郎さんのご紹介で、楽器プレ
ゼント運動の初期から、福田忠道社長の力強いご協
賛を頂き感謝しております。
★WJF会員募集中!!
楽器のご寄付と嬉しいお便り
ありがとうございます!!
ジャズを愛する皆様、どうぞ会員になって下さ
い!!また皆様のお知り合いの方々に、ぜひWJ
Fへのご入会をお勧め下さい。
畑田延浩様 神戸市
=WJF年会費=
クラリネット
井手圭子様 富山市 アルトサックス
一般会員(General Membership)
\6,000
以前 Email でお問い合わせさせて頂いた井手と申
学生会員(Student Membership)
\3,000
します。20 年程前に購入し高校時代にブラスバンド
賛助会員(Friends of Louis Armstrong)\12,000
で使っていたアルトサックスです。古いものですが、
ワンダフルワールドジャズ基金:
良かったらどなたかに使っていただいて下さい。想
年会費以外の寄付金
い出深いものですが、使わずに持っているより、喜
■寄付金及び会費のお振込み先■
郵便振替
んでいただける方に使っていただいた方が、サック
00110-4-415986
スも喜ぶかと思い送らせていただきます。
UFJ 銀行浦安支店
普通:5175119“ワンダフルワールド”
お問い合わせは TEL047-351-4464
WJF事務局
日本ルイ・アームストロング協会のHP!
http://users.tapstep.net/saints/
10
12
《編集後記》
銀行振込
サッチモの家が大きな
リボンで結ばれ、オープ
ニングカットと共にウエ
ストエンド・ブルースが
流れる ・・・
そしてトラン
ペット・トリビュート・
ジュビリーの始まり!
サ ッチモ ハウ ス記 念
館オープンに参加した
外山夫妻のレポートは
臨場感にあふれ、サッチ
モを愛する心にあふれ
ています。そしてこのイ
ベ ン トは 、来 年創 立
周年を迎える日本ル
イ・アームストロング協
会の大きな節目となる
ものです。
(山)
ワンダフルワールド・J・F