生涯研修コード 0 40 30 0 ク リ ニ カ ル シ リ ー ズ ! 身近な臨床 侵襲の少ない審美修復としての コンポジットレジン充! <その2> いのこし しげひさ ● 東京都台東区開業(イノコシ歯科医院) ● 日本歯科保存学会認定医,日本接 着歯学会理事・認定医,台東区歯科医師会理事 ●1 9 7 7年東京医科歯科大学歯学 部卒業,8 1年同大学大学院歯学研究科修了,同大学歯学部歯科保存学第一講座助 手,8 4年講師,9 0〜9 1年ベルギー王国ルーベンカソリック大学歯学部,保存修 復・歯科材料学教室客員教授,9 7年助教授,9 7年退職,同年東京都台東区にて開 業 ●1 9 5 3年2月生まれ,群馬県出身 ● 著書:猪越重久の MI 臨床 ● 主研究 テーマ:保存修復学 猪越 重久 <前号よりつづく> 要 約 光重合型コンポジットレジンは,変色しにくく,歯 6.窩洞形成ならびに仕上げ研磨用具 質接着性レジンを併用することで質の高い審美修復が 可能になる。この技法では,齲"や欠損の範囲が修復 1)齲窩の開拡に使用するバー(図8) 隣接面の齲窩の開拡は,隣在歯隣接面を傷つけない するべき窩洞の範囲となり,生じた欠損形態を最小限 ために先の細い小児歯科用のダイヤモンドポイントを の歯質削除で修復できる。それと同時に,歯質と類似 使う。ある程度の大きさのある齲窩ならば,ラウンド のポイントでもよいが,隣在歯隣接面に近接した部分 の色調で修復できるため,患者には歯の喪失感を与え の削除には,前述の小さなポイントがよい。 ることが少なく,修復後は確実に患者に喜ばれる。 2)仕上げ研磨用具(図9) 筆者が使用している形態修正用のダイヤモンドポイ ント,仕上げ研磨用のジスクとラバーポイント,隣接 面研磨用のストリップス。 キーワード ミニマルインターベンション/コンポジット レジン/歯質接着性レジン 日本歯科医師会雑誌 Vol. 5 8 No. 22 0 0 5−5 129 ● 3 1 7.齲窩の窩洞形成の一般的手順 齲窩の開拡と齲!検知液を用いた感染象牙質の除去 法の一般的手順は以下のようである。 ① 象牙質齲!は穿下性に丸く広がるので,齲窩の 開拡は丸くなる。 ② 図8 窩洞形成用のダイヤモンドポイント(マニー) 前列左から,CD‐53F,CD‐61F,CD‐60F, CD‐62F 後列左から,BR‐48F,BR-S45,BR-S46 感染象牙質の削除は,マイクロモーターに装着 したスチールバーで行う。まず,齲窩側壁のエナ メル象牙境から削除し,まず側壁を不染状態にす る。手の感覚を頼りになるべく手際よく行う。特 に,歯肉側窩縁は遊離エナメル質を残してでも, 歯肉縁下に入らないよう注意する。 a:形態修正用のダイヤモンドポイント(マニー) c:コンポマスター(松風)#13s, #28。注水下で使用する。 図9 3 2 ● d:フィニッシングブラシ(3M 。咬合面のような起 エス ぺ) 伏のある面の仕上げ研磨によ い。乾式で使用する。 仕上げ研磨用具 130 b:ポゴのジスクタイプ(デンツ (左 上)と ス ー プ ラ イ 三 金) パ ー ス ナ ッ プ 紫8(松 風)。 平滑面の仕上げ研磨に最適で ある。注水下で使用する。 日本歯科医師会雑誌 Vol. 5 8 No. 22 0 0 5−5 e:隣接面仕上げ研磨用ストリッ プス,エピテックス(GC) ③ 齲窩中央部の窩底部では,染色と削除を繰り返 多様な色調に対応するためには,コンポジットレジン し,注意深く不染を目指すが,硬ければ淡いピン の半透明性を利用して色調が歯質と漸次移行するよう ク染でもよしとする。 に窩縁にベベル付与する。 ④ 自然着色は可能な限り除去する。 3)マトリックスとクサビ 8.隣接面を含む前歯の充! 窩洞形成時もあらかじめマトリックスを装着するこ とを考えて歯質削除を行うべきで,不用意に歯肉縁下 症例5 まで削除してはならない。両隣在歯が存在する3級な 1)舌側からか唇側からか らびに4級窩洞では,薄手のマトリックスを近遠心両 舌側からのアクセスは,器具が届きにくく,窩洞内 も見にくいため,感染歯質を取り残したり,隣在歯隣 隣接面にわたって歯冠部を囲むように装着する(図 1 0,1 1) 。 接面を傷つけてしまったり,必ずしも容易な処置では この薄いマトリックスでも,コンタクトのきつい症 ない。現在の光重合型コンポジットレジンは変色が少 例は通りにくいことがある。その場合は,細長いクサ なく,確実な感染歯質の除去と,その後の接着充"操 ビをきつく挿入して歯間を離開させておいて挿入す 作のやりやすさを考えれば,唇側から齲窩を開拡する る。 ことは,大きなメリットがある。したがって,齲窩の 開拡は,唇側舌側を問わず,やりやすい方向からアク 4)充!方法 セスすればよい。隣接面齲!が舌面に近い症例では, 隣接面の奥まった部分や歯肉縁下に入った部分は, 齲窩を舌側から開拡した方がやりやすい場合もある。 まずフロアブルコンポジットレジンを静かに流し込 み,光硬化させてから,コンポジットレジンペースト 2)唇面のベベル形成 を"入する。 充"するコンポジットレジンのシェードには限りが 研磨性を重視した前歯用コンポジットレジンの多く あり,これに対して充"される側の歯は,窩洞内やそ は,X 線造影性がないため,大きめの3級窩洞や4級 の周囲の色調はさまざまである。限られたシェードで 窩洞では,内部は前臼歯用コンポジットレジン(ほと 症例5 1 遠心隣 a:術 前。27歳 女 性。! 2 近 心 の 充"物 接 面 齲!と! 変色。 b:窩洞形成後:唇面にベベルを 付与した。 1 は舌側にクリアフィル APc:! X(シ ェ ー ド XL)を 充" し,唇側にクリアフィル ST (シ ェ ー ド A3)を 充"し 2 は ク リ ア フ ィ ル ST た。! (シ ェ ー ド A3)の み で 充 "した。クリアフィルメガボ ンド使用。 日本歯科医師会雑誌 Vol. 5 8 No. 22 0 0 5−5 131 ● 3 3 図10 透明マトリックス(ルミストリップス:井上ア 。 タッチメント社製) 25と38µm の2種類がある。4等分してケー スに保管しておく。使用時は,歯冠の高さに合 わせてハサミで切って幅を調整する。38ミクロ ンのものが,腰があって扱いやすい。25ミクロ ンのものは,薄くて隣接面に通しやすいが,腰 がないぶん,付形などの時の扱いが難しい。扱 い方のコツが分かってしまえば,25ミクロンの 方がよい。 図11 マトリックス装着手順。 透明マトリックスは,両隣在歯がある 場合は,ぐるりとまわして両隣接面に通 す(①,②)。その後,マトリックスを 窩洞歯肉側の歯肉溝内に入れ,マトリッ クスの両端を軽く引きながら,歯頸側を ぴったりと密着させ(③),クサビで固 定する(④)。こうすることで,多少歯 肉から出血があっても窩洞内に入ってこ ない。マトリックスの装着は,充!前 か,もしくはボンドレジン塗布後,光硬 化させる前に行う。 んどの製品は X 線造影性がある)を充!し,唇側面 に露出する部分に前歯用コンポジットレジンを充!す る。パルフィークエステライト Σ(トクヤマデンタ ル)は弱い造影性を有しているが,クリアフィル ST (クラレメディカル) ,フィルテック A1 1 0(3M エ スぺ) ,ソラーレ(GC)は,造影性がない。 5)シェード選択 コンポジットレジンの色合わせに一番影響をするの が,コンポジットレジンのオパシティー(不透明性) である(図1 2) 。透明すぎれば明るいシェードでも暗 くなり,不透明すぎれば色味の濃いシェードでも明る く仕上がってしまう。付属のシェードガイドは,参考 程度考えること。コンポジットレジンは,半透明であ 図12 新製品を入手した場合は,すべてのシェード について厚さ1mm 程度の硬化体を作製し,透 明なアクリル板(シリコンポイントのケースな ど)に並べてシアノアクリレートで接着してお く。比較対照として,使い慣れた製品のシェー ドも一緒に並べておけば,白と黒を背景にして 見比べ,対照と比べることで,新製品のおおよ そのオパシティーを推測できる。 るため背景色の影響を強く受けるので,さまざまな症 例で経験を積むのが一番よいと思う。 験上パルフィークエステライト Σ(トクヤマデンタ 単色充!で通常用いられるシェードは,標準的なオ ル)やクリアフィ ル ST(ク ラ レ メ デ ィ カ ル)で は パシティーに調整されていることが多く,筆者は,経 A2を 基 本 と し て い る。若 い 方 の 明 る い 色 調 な ら 3 4 ● 132 日本歯科医師会雑誌 Vol. 5 8 No. 22 0 0 5−5 A1,A0. 5を,色味の濃い色調なら A4を選択する。 バイタインリング(bitine : bi=2つ,tine=角)は 積層充!する場合は,内部の第一層目は下地を作る リング状のセパレーター兼用マトリックスリテーナー 意味合いから明度の高めのシェードを使う。筆者はク で,その名の通り2本の角があり,この部分(把持 リアフィル AP-X(シェード XL)を頻繁に使ってい 脚)でマトリックスを挿入した歯間部を挟み込むこと る。 で,マトリックスリテーナーとしてだけでなく,セパ レーターとしても機能する。 6)形態修正 セクショナルマトリックスは,弾性に若干の違いが 4級や6級では,切縁隅角と唇面の隅角線部がポイ 見られるが,いずれの製品もほぼ3 0µm の厚さの金属 ントになる。まず,唇面と隣接面の隅角部は丸めすぎ 製で豊隆が付与されており,リングを併用することで ないように。歯頂側の切縁隅角は,通常のマトリック スを使用するとコンポジットレジンで埋まってしまう ので,これを先の細い仕上げ用のダイヤモンドポイン トで注意深く削除して incisal embrasure を適切に付 与する。バーでの付形には限りがあるので,最後にプ ラスチックストリップスで仕上げを行う。 7)仕上げ研磨 充!当日の仕上げ研磨は,舌で触ってもらって違和 感 の な い 程 度 に と ど め,次 回,冷 水 痛 や 咬 合 痛 の チェックもかねて再度仕上げ研磨する。 9.臼歯部隣接面齲!の充" 症例6 図13 バイタインリング・セクショナルマトリック スキット 左:パロデントマトリックスシステム(デンツ プライ三金) コンタクトの回復が最大の課題である。それには, 中左:コンタクトマトリックスシステム(ダン バイタインリングとセクショナルマトリックスを使う 中右:コンポジタイト(GDS/フィード) 右:コンポジタイトゴールド(GDS/リンカイ) (図1 3) 。 ビル/モリムラ) 症例6 a:術前。36歳,男性。主訴は, 4 の充!物脱落。 ! b:窩洞形成後,マトリックスを 装着(コンポジタイトゴール ド使用)。 c:仕上げ研磨後。クリアフィル AP−X(シェード XL)とク リアフィルメガボンド使用。 ミラー像のため反転した。 日本歯科医師会雑誌 Vol. 5 8 No. 22 0 0 5−5 133 ● 3 5 強固な接触点を有するふくらみのある隣接面を再現で れば,窩洞形成は低速のスチールバーで表面をなでる きる。歯間部が狭く,豊隆マトリックスが入らない場 程度にとどめる。窩洞の範囲は,欠損部だけではな 合は,平板状マトリックスを使う(図1 4) 。 く,歯冠全体にスムーズな形態になるように広げ,充 齲!による実質欠損が小さく,窩洞形成後もコンタ "物表面が唇#面の最大豊隆部から歯肉側窩縁までス クトが保存されている症例では,あえて歯間離開を ムーズに移行するようにする。この時,近遠心歯頸側 行って歯間部に挿入するマトリックスの厚みを補償す はプラークやペリクルが歯面に残ると接着が不良とな る必要はない。また,実質欠損が大きくなり,バイタ るので,充"される範囲の歯面を確実に清掃してお インリングの装着が不可能な症例では,間接法修復で く。 選択するシェードは,A3を基本として,窩壁の色 行うのが妥当である。 調が濃い場合は OA3を選択する。 1 0.歯頸部の充! 1 1.切縁破折の充! 症例7 症例8 クサビ状欠損の修復では,齲!による脱灰部がなけ 切縁の破折では,破折断面のみに保持を求めるので はなく,唇面に広めのベベルを付けて接着面積を広げ る。こうすることで,保持も強くなり,色調適合性も よくなる。充"に先立ち,薄手のマトリックスを近遠 心にぐるりとまわす(図1 5) 。切縁に近い 部 分 な の で,シェードは A1ないし A2で対応する。 1 2.ダイレクトベニア 症例9 図14 35µm 厚のメタルマトリックス(カーハーベ製 /フィード) 1)適応症 目的は,上顎前歯部の歯冠形態と色調の改善のふた 症例7 a:術前。42歳,男性。主訴は, 54|歯頸部の磨耗部の修復。 点線で示す範囲が,充"す る領域。この部分をスチール バーで軽くなでる程度に形成 する。 3 6 ● 134 日本歯科医師会雑誌 Vol. 5 8 No. 22 0 0 5−5 b:仕 上 げ 研 磨 後。654|歯 頸 部 に ク リ ア フ ィ ル ST (シ ェ ー ド A2)を 充"し た。クリアフィルメガボンド 使用。 症例8 a:窩洞形成後。56歳,男性。主 1 切 縁 部 の 破 折。! 2 訴 は,! 近心に小さな象牙質齲!が見 られたので,齲窩を開拡し, 1 感 染 象 牙質 を 削 除 し た。! は,唇面に広めのベベルを付 与した。 2 は X 線造 b:仕上げ研磨後。! 影性の強いクリアフィル APX(シ ェ ー ド XL)を 充"し 1 は切縁付近まで舌側 た。! に ク リ ア フ ィ ル AP-X (シ ェ ー ド XL)を 充"し, 唇 面 に ク リ ア フ ィ ル ST (シ ェ ー ド A1)を 充"し た。クリアフィルメガボンド 使用。 2)歯質削除 唇面はエナメル質表面をなでる程度の切削とし,唇 面と隣接面の隅角部は研磨用ストリップスで,歯表面 のペリクルを除く。歯冠部が回転して隅角部が一部突 出している場合には,同部を削除せざるを得ない場合 があるが,その場合には,コンポジットレジンの厚み がしっかり確保できるくらい削除せざるを得ない。生 活歯において象牙質が露出した場合には,接着操作に は細心の注意が必要である。 図15 切縁破折症例では,唇面に広めのベベルを付 与し(①),薄手の透明マトリックスを近遠心 にぐるっとまわす(②)。 3)マトリックス 通常の充"に用いる透明マトリックスを使ってサー ビカルフェンスを作る(図1 6) 。これは,歯頸部での つである。いずれの場合も,唇面上にコンポジットレ レジンのはみ出しを防ぐと同時に,付形を容易にす ジンを盛りつけて,形態や色調の補正を行うのだか る。 ら,最終的な形態をイメージして,コンポジットレジ ンを盛るだけのスペース(変色歯の場合は背景色を遮 4)シェード選択 蔽できる)が確保できるかを判断する必要がある。生 研磨性に優れた前歯用コンポジットレジンを使用 活歯において,レジンのスペースを確保するために, し,必ず明度の高いシェードを使う。製品としては, 唇側歯質を象牙質に及ぶまで削除することは,極力避 クリアフィル ST(クラレメディカル) ,パルフィー けるべきである。 クエステライト Σ(トクヤマデンタル)がよい。背景 が自然な色調であれば A0. 5,A1もしくは A2を, 日本歯科医師会雑誌 Vol. 5 8 No. 22 0 0 5−5 135 ● 3 7 症例9 a:術前。2 7歳,女性。主訴は,1|1 の形態の改善。 b:4年間経過後の所見。1|1にパル フィークエステライト(シェ ー ド A1)を充!した。クリアフィルメ ガボンド使用。 図16 サービカルフェンス装着手順 ① 一方の隣接面にマトリックスを通し,唇側を回して他方にも通す。 ② マトリックス下端が歯肉に届くまで下げてから,舌側から引いて唇面に密着さ せる。 ③ 唇面のマトリックスの切縁端を歯肉側に押し下げて,マトリックス下端が歯肉 溝にはいるようにする。この後,近遠心歯間部にクサビを挿入する。 特に明度を上げたい場合や変色歯の場合には,OA 5)形態修正と仕上げ研磨 1,OA2ま た は HO の い ず れ か を 使 用 す る。HO 前歯そのものの形態を再現することになる。まず, は,非常に白いので,接着前にあらかじめ歯面上で固 唇面中央部を平坦に仕上げ,マトリックスで作った歯 めて色調を確認するべきである。 頸部の部分と移行的に推移するように仕上げる。次い 3 8 ● 136 日本歯科医師会雑誌 Vol. 5 8 No. 22 0 0 5−5 で,切縁の高さを決め,それから,切縁隅角と唇面の るい色調を選択する。筆者の経験では,A1が最も多 隅角線部を適正な形態に仕上げる。歯頂側の切縁隅角 く,次が A2である。A3を使用した経験はない。離 は,先の細い仕上げ用のダイヤモンドポイントで注意 開部が大きい場合,前臼歯両用のコンポジットレジン 深く削除して付形する。最終的な形態は,背景色の遮 で舌側半分を充!することも多いが,この場合も XL 蔽の程度や口元との関係を見ながら決める。治療終了 や A1といった明るいシェードを使用する。 時には,患者に, 「歯ブラシが当たりにくいところに 歯に位置異常があって歯質削除が必要な場合を除 茶渋がつくことがありますから,半年に1回くらい詰 き,特に歯面削除の必要はない。ブラシコーンや研磨 めたものを磨きましょう」と話しておく。 用ストリップスで歯面清掃をすればよい。歯面は非切 削エナメル質なので,セルフエッチングのボンディン 1 3.正中離開の閉鎖 グシステムでも,リン酸エッチングを併用する必要が ある。 症例1 0 充!に際して最も重要なのが,マトリックスの扱い コンポジットレジンは,研磨性に優れた前歯専用コ である。正中離開を封鎖する場合,近心の歯肉溝に透 ンポジットレジンを使用し,シェードは,基本的に明 明マトリックスを入れただけでは,歯肉側の鼓形空隙 症例10 a:術前。49歳,男性。主訴は,1|1 の正中離開の閉鎖。 b:1年半経過後の所見。歯質削除は行 うことなく,パルフィークエステラ イ ト(シ ェ ー ド A1)を 充!し た。クリアフィルメガボンド使用。 図17 正中離開症例の修復手順 日本歯科医師会雑誌 Vol. 5 8 No. 22 0 0 5−5 137 ● 3 9 図18 セラミックプライマーと金属プライマー(ク ラレメディカル) 図19 チェアーサイド用サンドブラスター。マイク ロエッチャーⅡ(モリ ム ラ)(上)とアドアブ レーダー(モリタ)(下) が三角形に大きく開いてしまう。そこで,ボンドレジ ンを塗布後,マトリックスを遠心隣接面から舌側を 通って近心まで回し,舌側を押さえながら近心の歯肉 溝に入れて光硬化させる(図1 7‐a) 。 コンポジットレジンは,まず歯肉側1/3くらいまで 歯頸側部分が多少膨らむように充!し,光硬化させる (図1 7‐b) 。その後,歯頂側部に充!し(図1 7‐c) , マトリックスを圧接しながら,光硬化させる(図1 7‐ d) 。槍状の細いダイヤモンドポイントで隣接面形態 を整えた後,同様の処置を反対側に行う。 図20 オペーカーとオペークシェードのコンポジッ トレジン(クラレメディカル) 1 4.リペアならびにマスキング修復 ペ ー ク シ ェ ー ド(OA1,OA2,OA3,HO)を 選 1)必要な器材 択する(図2 0) 。 金属やセラミックスに対する接着では,いかにして 新鮮面を露出させ,そこに化学的に接着させるかがポ イントになる。そのため,セラミックプライマー,金 2)前装部の破折修理 症例1 1 属プライマー,そして口腔内サンドブラスターが必要 となる(図1 8,1 9) 。 背後に前装冠の金属や歯頸部の変色歯質が存在する ◇セラミック(またはコンポジットレジン)のみの 場合 場合では,隠したい背景色の上に薄く塗布をして,こ ◇メタルのみの場合 れを遮蔽するオペーカーが必要となる。オペーカーと ◇メタルとセラミック(またはコンポジットレジ しては,クリアフィル ST オペーカー(US) (クラレ ン)の場合 メディカル) ,パルフィークエステライト LV オペー 以上の3つの場合がある。いずれもサンドブラスト カー(トクヤマデンタル) ,メタフィル Flo オペーク を行い,セラミックプライマーや金属プライマーを接 (サンメディカル)がよい。 着性レジンと組み合わせて使う。破折がセラミックに オペーカーの上に充!するコンポジットレジンは, 限局している場合は,標準シェードの高明度コンポ 修復部位の色むらを少なくするために,不透明なオ ジットレジン(A1,A2)で良いが,メタルが背景 4 0 ● 138 日本歯科医師会雑誌 Vol. 5 8 No. 22 0 0 5−5 症例11 a:術 前。63歳,女 性。 主 訴 は,レ ジ ン 前 装 2 冠 の 前 装 部 脱 落。" 3 ま で の5歯 に から ! 連結冠が装着されて 2 の前装部が お り," 剥離脱落していた。 表 b:6年 経 過 後 の 所 見。 サ ン ド ブ ラ ス ト 後, ア ロ イ プ ラ イ マ ー, メガボンドプライ マ ー+ポ ー セ レ ン ア ク チ ベ ー タ ー、ボ ン ドレジンを塗布して 光 硬 化 さ せ,パ ル フィークライトオ ペーカー(トクヤマデン タル)で金属部を遮蔽 し た。ク リ フ ィ ル ブ ライト (シェード UO) を充!した。 リペアとマスキングに必要な器材 充!用コンポジットレジン セラミック プライマー セラミックのみ 前装部破損 金属 プライマー ● メタルのみ セラミックとメタル ● 変色歯質とセラミック 変色部の マスキング 変色歯質とメタル ● 接着性レジン オペーカー ● 標準シェード オペークシェード ● [もしくは●] ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● にくる場合は,オペーカーとオペークシェードのコン ては,歯頸部の窩洞だけでなく前装部表面を1ないし ポジットレジンが必要となる(表) 。 2mm くらいコンポジットレジンで被覆するように充 !する。そのために,窩洞に近い前装部はあらかじめ 3)歯頸部変色歯質のマスキング サンドブラスト処理を行っておく(図2 1) 。 症例1 2 まとめ 前装冠修復歯の歯頸部の変色を修復する場合には, 露出根面の感染象牙質を削除すればよい。充!に際し 2回にわたって接着性レジンとコンポジットレジン 日本歯科医師会雑誌 Vol. 5 8 No. 22 0 0 5−5 139 ● 4 1 症例12 a:術前。39歳,女性。 2 歯頸部 主 訴 は,! の色調改善。メタル ボンド冠が装着され 2 は,露 出 し た た! 歯根が黒く変色して いた。 b:根面を一層削除後, メタルボンド唇面の 中央部付近までサン ドブラストし,接着 手順を踏んでからオ ペ ー カ ー(ク リ ア フ ィ ル ST オ ペ− カー(US))を探針 で採取し,注意深く 変色部に塗布し,光 硬化させた。 c:ク リ ア フ ィ ル ST (OA1)を ポ ー セ レン部にかぶるよう に充"し,仕上げ研 磨した。 参考文献 1)福島正義,真鍋 顕,豊島義博 編:新・MI 臨床&接着修復 MID(Minimal Intervention Dentistry)の体系を支える歯科接 着臨床.デンタルダイヤモンド社,東京. 2 0 0 2. 2)Fejerskov, O. & Kidd, E. ed. : Dental Caries. The Disease and its Clinical Management, Blackwell Munkusgard, London, 2 0 0 3. 3)熊谷 崇,熊谷ふじ子,藤木省三,岡 賢二,Bratthall, D.: クリニカルカリオロジー.医歯薬出版,東京,1 9 9 6. 4)Roberson,T., Heymann, H. & Swift, E. ed. : Sturdevant s Art and Science of Operative Dentistry4th ed. Mosby. St. Louis. 2 0 0 2. 5)吉山昌宏,桃井保子 監修:う!治療のミニマルインターベン ション.クインテッセンス出版,東京,2 0 0 4. 図21 歯頸部象牙質は,ラウンドスチールバーで感 染 歯 質 を 除 去 す る(①) 。前 装 部 ポ ー セ レ ン は,口腔内サンドブラスターで唇面中央部付近 まで光沢がなくなるまでブラスティングする (②)。 6)星野悦郎,宅重豊彦:3Mix-MP 法と LSTR 療法.日本歯科評 論社,東京,2 0 0 0. 7)伊藤和雄:EDTA, GM によるデンティンボンディング理論の 確立と新しい齲!検知液「カリエスチェック」 .歯界展望,1 0 4: 9 1 0〜9 2 3,2 0 0 4. 8)秋本尚武,桃井保子:レジン充"でいこう を用いた MI 修復について,その概要を解説した。頁 数の関係で臨床術式に関しては,その詳細を述べるこ とができなかったので,参考文献を参照してほしい。 コンポジットレジン充"は毎日行う処置である。日々 の臨床に少しでもお役にたてれば幸いである。 4 2 ● 140 日本歯科医師会雑誌 Vol. 5 8 No. 22 0 0 5−5 使いこなしのテク ニック.永末書店,京都,2 0 0 2. 9) 猪越重久, 田上順次, 奈良陽一朗, 日野浦 編:使いこなそうコンポジットレジン 光, 福島正義, 桃井保子 Minimal Intervention の ための修復テクニック.月刊「歯界展望」別冊,医歯薬出版, 2 0 0 4. 1 0)猪越重久:猪越重久の MI 臨床.デンタルダイヤモンド社,東 京,2 0 0 5.
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