侵襲の少ない審美修復としての コンポジットレジン充!

生涯研修コード 0
40
30
0
ク リ ニ カ ル
シ リ ー ズ
!
身近な臨床
侵襲の少ない審美修復としての
コンポジットレジン充!
<その2>
いのこし しげひさ
● 東京都台東区開業(イノコシ歯科医院)
● 日本歯科保存学会認定医,日本接
着歯学会理事・認定医,台東区歯科医師会理事 ●1
9
7
7年東京医科歯科大学歯学
部卒業,8
1年同大学大学院歯学研究科修了,同大学歯学部歯科保存学第一講座助
手,8
4年講師,9
0〜9
1年ベルギー王国ルーベンカソリック大学歯学部,保存修
復・歯科材料学教室客員教授,9
7年助教授,9
7年退職,同年東京都台東区にて開
業 ●1
9
5
3年2月生まれ,群馬県出身 ● 著書:猪越重久の MI 臨床 ● 主研究
テーマ:保存修復学
猪越 重久
<前号よりつづく>
要
約
光重合型コンポジットレジンは,変色しにくく,歯
6.窩洞形成ならびに仕上げ研磨用具
質接着性レジンを併用することで質の高い審美修復が
可能になる。この技法では,齲"や欠損の範囲が修復
1)齲窩の開拡に使用するバー(図8)
隣接面の齲窩の開拡は,隣在歯隣接面を傷つけない
するべき窩洞の範囲となり,生じた欠損形態を最小限
ために先の細い小児歯科用のダイヤモンドポイントを
の歯質削除で修復できる。それと同時に,歯質と類似
使う。ある程度の大きさのある齲窩ならば,ラウンド
のポイントでもよいが,隣在歯隣接面に近接した部分
の色調で修復できるため,患者には歯の喪失感を与え
の削除には,前述の小さなポイントがよい。
ることが少なく,修復後は確実に患者に喜ばれる。
2)仕上げ研磨用具(図9)
筆者が使用している形態修正用のダイヤモンドポイ
ント,仕上げ研磨用のジスクとラバーポイント,隣接
面研磨用のストリップス。
キーワード
ミニマルインターベンション/コンポジット
レジン/歯質接着性レジン
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3
1
7.齲窩の窩洞形成の一般的手順
齲窩の開拡と齲!検知液を用いた感染象牙質の除去
法の一般的手順は以下のようである。
①
象牙質齲!は穿下性に丸く広がるので,齲窩の
開拡は丸くなる。
②
図8
窩洞形成用のダイヤモンドポイント(マニー)
前列左から,CD‐53F,CD‐61F,CD‐60F,
CD‐62F
後列左から,BR‐48F,BR-S45,BR-S46
感染象牙質の削除は,マイクロモーターに装着
したスチールバーで行う。まず,齲窩側壁のエナ
メル象牙境から削除し,まず側壁を不染状態にす
る。手の感覚を頼りになるべく手際よく行う。特
に,歯肉側窩縁は遊離エナメル質を残してでも,
歯肉縁下に入らないよう注意する。
a:形態修正用のダイヤモンドポイント(マニー)
c:コンポマスター(松風)#13s,
#28。注水下で使用する。
図9
3
2
●
d:フィニッシングブラシ(3M
。咬合面のような起
エス ぺ)
伏のある面の仕上げ研磨によ
い。乾式で使用する。
仕上げ研磨用具
130
b:ポゴのジスクタイプ(デンツ
(左 上)と ス ー
プ ラ イ 三 金)
パ ー ス ナ ッ プ 紫8(松 風)。
平滑面の仕上げ研磨に最適で
ある。注水下で使用する。
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e:隣接面仕上げ研磨用ストリッ
プス,エピテックス(GC)
③
齲窩中央部の窩底部では,染色と削除を繰り返
多様な色調に対応するためには,コンポジットレジン
し,注意深く不染を目指すが,硬ければ淡いピン
の半透明性を利用して色調が歯質と漸次移行するよう
ク染でもよしとする。
に窩縁にベベル付与する。
④
自然着色は可能な限り除去する。
3)マトリックスとクサビ
8.隣接面を含む前歯の充!
窩洞形成時もあらかじめマトリックスを装着するこ
とを考えて歯質削除を行うべきで,不用意に歯肉縁下
症例5
まで削除してはならない。両隣在歯が存在する3級な
1)舌側からか唇側からか
らびに4級窩洞では,薄手のマトリックスを近遠心両
舌側からのアクセスは,器具が届きにくく,窩洞内
も見にくいため,感染歯質を取り残したり,隣在歯隣
隣接面にわたって歯冠部を囲むように装着する(図
1
0,1
1)
。
接面を傷つけてしまったり,必ずしも容易な処置では
この薄いマトリックスでも,コンタクトのきつい症
ない。現在の光重合型コンポジットレジンは変色が少
例は通りにくいことがある。その場合は,細長いクサ
なく,確実な感染歯質の除去と,その後の接着充"操
ビをきつく挿入して歯間を離開させておいて挿入す
作のやりやすさを考えれば,唇側から齲窩を開拡する
る。
ことは,大きなメリットがある。したがって,齲窩の
開拡は,唇側舌側を問わず,やりやすい方向からアク
4)充!方法
セスすればよい。隣接面齲!が舌面に近い症例では,
隣接面の奥まった部分や歯肉縁下に入った部分は,
齲窩を舌側から開拡した方がやりやすい場合もある。
まずフロアブルコンポジットレジンを静かに流し込
み,光硬化させてから,コンポジットレジンペースト
2)唇面のベベル形成
を"入する。
充"するコンポジットレジンのシェードには限りが
研磨性を重視した前歯用コンポジットレジンの多く
あり,これに対して充"される側の歯は,窩洞内やそ
は,X 線造影性がないため,大きめの3級窩洞や4級
の周囲の色調はさまざまである。限られたシェードで
窩洞では,内部は前臼歯用コンポジットレジン(ほと
症例5
1 遠心隣
a:術 前。27歳 女 性。!
2 近 心 の 充"物
接 面 齲!と!
変色。
b:窩洞形成後:唇面にベベルを
付与した。
1 は舌側にクリアフィル APc:!
X(シ ェ ー ド XL)を 充"
し,唇側にクリアフィル ST
(シ ェ ー ド A3)を 充"し
2 は ク リ ア フ ィ ル ST
た。!
(シ ェ ー ド A3)の み で 充
"した。クリアフィルメガボ
ンド使用。
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図10 透明マトリックス(ルミストリップス:井上ア
。
タッチメント社製)
25と38µm の2種類がある。4等分してケー
スに保管しておく。使用時は,歯冠の高さに合
わせてハサミで切って幅を調整する。38ミクロ
ンのものが,腰があって扱いやすい。25ミクロ
ンのものは,薄くて隣接面に通しやすいが,腰
がないぶん,付形などの時の扱いが難しい。扱
い方のコツが分かってしまえば,25ミクロンの
方がよい。
図11 マトリックス装着手順。
透明マトリックスは,両隣在歯がある
場合は,ぐるりとまわして両隣接面に通
す(①,②)。その後,マトリックスを
窩洞歯肉側の歯肉溝内に入れ,マトリッ
クスの両端を軽く引きながら,歯頸側を
ぴったりと密着させ(③),クサビで固
定する(④)。こうすることで,多少歯
肉から出血があっても窩洞内に入ってこ
ない。マトリックスの装着は,充!前
か,もしくはボンドレジン塗布後,光硬
化させる前に行う。
んどの製品は X 線造影性がある)を充!し,唇側面
に露出する部分に前歯用コンポジットレジンを充!す
る。パルフィークエステライト Σ(トクヤマデンタ
ル)は弱い造影性を有しているが,クリアフィル ST
(クラレメディカル)
,フィルテック A1
1
0(3M エ
スぺ)
,ソラーレ(GC)は,造影性がない。
5)シェード選択
コンポジットレジンの色合わせに一番影響をするの
が,コンポジットレジンのオパシティー(不透明性)
である(図1
2)
。透明すぎれば明るいシェードでも暗
くなり,不透明すぎれば色味の濃いシェードでも明る
く仕上がってしまう。付属のシェードガイドは,参考
程度考えること。コンポジットレジンは,半透明であ
図12 新製品を入手した場合は,すべてのシェード
について厚さ1mm 程度の硬化体を作製し,透
明なアクリル板(シリコンポイントのケースな
ど)に並べてシアノアクリレートで接着してお
く。比較対照として,使い慣れた製品のシェー
ドも一緒に並べておけば,白と黒を背景にして
見比べ,対照と比べることで,新製品のおおよ
そのオパシティーを推測できる。
るため背景色の影響を強く受けるので,さまざまな症
例で経験を積むのが一番よいと思う。
験上パルフィークエステライト Σ(トクヤマデンタ
単色充!で通常用いられるシェードは,標準的なオ
ル)やクリアフィ ル ST(ク ラ レ メ デ ィ カ ル)で は
パシティーに調整されていることが多く,筆者は,経
A2を 基 本 と し て い る。若 い 方 の 明 る い 色 調 な ら
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4
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A1,A0.
5を,色味の濃い色調なら A4を選択する。
バイタインリング(bitine : bi=2つ,tine=角)は
積層充!する場合は,内部の第一層目は下地を作る
リング状のセパレーター兼用マトリックスリテーナー
意味合いから明度の高めのシェードを使う。筆者はク
で,その名の通り2本の角があり,この部分(把持
リアフィル AP-X(シェード XL)を頻繁に使ってい
脚)でマトリックスを挿入した歯間部を挟み込むこと
る。
で,マトリックスリテーナーとしてだけでなく,セパ
レーターとしても機能する。
6)形態修正
セクショナルマトリックスは,弾性に若干の違いが
4級や6級では,切縁隅角と唇面の隅角線部がポイ
見られるが,いずれの製品もほぼ3
0µm の厚さの金属
ントになる。まず,唇面と隣接面の隅角部は丸めすぎ
製で豊隆が付与されており,リングを併用することで
ないように。歯頂側の切縁隅角は,通常のマトリック
スを使用するとコンポジットレジンで埋まってしまう
ので,これを先の細い仕上げ用のダイヤモンドポイン
トで注意深く削除して incisal embrasure を適切に付
与する。バーでの付形には限りがあるので,最後にプ
ラスチックストリップスで仕上げを行う。
7)仕上げ研磨
充!当日の仕上げ研磨は,舌で触ってもらって違和
感 の な い 程 度 に と ど め,次 回,冷 水 痛 や 咬 合 痛 の
チェックもかねて再度仕上げ研磨する。
9.臼歯部隣接面齲!の充"
症例6
図13 バイタインリング・セクショナルマトリック
スキット
左:パロデントマトリックスシステム(デンツ
プライ三金)
コンタクトの回復が最大の課題である。それには,
中左:コンタクトマトリックスシステム(ダン
バイタインリングとセクショナルマトリックスを使う
中右:コンポジタイト(GDS/フィード)
右:コンポジタイトゴールド(GDS/リンカイ)
(図1
3)
。
ビル/モリムラ)
症例6
a:術前。36歳,男性。主訴は,
4 の充!物脱落。
!
b:窩洞形成後,マトリックスを
装着(コンポジタイトゴール
ド使用)。
c:仕上げ研磨後。クリアフィル
AP−X(シェード XL)とク
リアフィルメガボンド使用。
ミラー像のため反転した。
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強固な接触点を有するふくらみのある隣接面を再現で
れば,窩洞形成は低速のスチールバーで表面をなでる
きる。歯間部が狭く,豊隆マトリックスが入らない場
程度にとどめる。窩洞の範囲は,欠損部だけではな
合は,平板状マトリックスを使う(図1
4)
。
く,歯冠全体にスムーズな形態になるように広げ,充
齲!による実質欠損が小さく,窩洞形成後もコンタ
"物表面が唇#面の最大豊隆部から歯肉側窩縁までス
クトが保存されている症例では,あえて歯間離開を
ムーズに移行するようにする。この時,近遠心歯頸側
行って歯間部に挿入するマトリックスの厚みを補償す
はプラークやペリクルが歯面に残ると接着が不良とな
る必要はない。また,実質欠損が大きくなり,バイタ
るので,充"される範囲の歯面を確実に清掃してお
インリングの装着が不可能な症例では,間接法修復で
く。
選択するシェードは,A3を基本として,窩壁の色
行うのが妥当である。
調が濃い場合は OA3を選択する。
1
0.歯頸部の充!
1
1.切縁破折の充!
症例7
症例8
クサビ状欠損の修復では,齲!による脱灰部がなけ
切縁の破折では,破折断面のみに保持を求めるので
はなく,唇面に広めのベベルを付けて接着面積を広げ
る。こうすることで,保持も強くなり,色調適合性も
よくなる。充"に先立ち,薄手のマトリックスを近遠
心にぐるりとまわす(図1
5)
。切縁に近い 部 分 な の
で,シェードは A1ないし A2で対応する。
1
2.ダイレクトベニア
症例9
図14 35µm 厚のメタルマトリックス(カーハーベ製
/フィード)
1)適応症
目的は,上顎前歯部の歯冠形態と色調の改善のふた
症例7
a:術前。42歳,男性。主訴は,
54|歯頸部の磨耗部の修復。
点線で示す範囲が,充"す
る領域。この部分をスチール
バーで軽くなでる程度に形成
する。
3
6
●
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b:仕 上 げ 研 磨 後。654|歯 頸
部 に ク リ ア フ ィ ル ST
(シ ェ ー ド A2)を 充"し
た。クリアフィルメガボンド
使用。
症例8
a:窩洞形成後。56歳,男性。主
1 切 縁 部 の 破 折。!
2
訴 は,!
近心に小さな象牙質齲!が見
られたので,齲窩を開拡し,
1
感 染 象 牙質 を 削 除 し た。!
は,唇面に広めのベベルを付
与した。
2 は X 線造
b:仕上げ研磨後。!
影性の強いクリアフィル APX(シ ェ ー ド XL)を 充"し
1 は切縁付近まで舌側
た。!
に ク リ ア フ ィ ル AP-X
(シ ェ ー ド XL)を 充"し,
唇 面 に ク リ ア フ ィ ル ST
(シ ェ ー ド A1)を 充"し
た。クリアフィルメガボンド
使用。
2)歯質削除
唇面はエナメル質表面をなでる程度の切削とし,唇
面と隣接面の隅角部は研磨用ストリップスで,歯表面
のペリクルを除く。歯冠部が回転して隅角部が一部突
出している場合には,同部を削除せざるを得ない場合
があるが,その場合には,コンポジットレジンの厚み
がしっかり確保できるくらい削除せざるを得ない。生
活歯において象牙質が露出した場合には,接着操作に
は細心の注意が必要である。
図15 切縁破折症例では,唇面に広めのベベルを付
与し(①),薄手の透明マトリックスを近遠心
にぐるっとまわす(②)。
3)マトリックス
通常の充"に用いる透明マトリックスを使ってサー
ビカルフェンスを作る(図1
6)
。これは,歯頸部での
つである。いずれの場合も,唇面上にコンポジットレ
レジンのはみ出しを防ぐと同時に,付形を容易にす
ジンを盛りつけて,形態や色調の補正を行うのだか
る。
ら,最終的な形態をイメージして,コンポジットレジ
ンを盛るだけのスペース(変色歯の場合は背景色を遮
4)シェード選択
蔽できる)が確保できるかを判断する必要がある。生
研磨性に優れた前歯用コンポジットレジンを使用
活歯において,レジンのスペースを確保するために,
し,必ず明度の高いシェードを使う。製品としては,
唇側歯質を象牙質に及ぶまで削除することは,極力避
クリアフィル ST(クラレメディカル)
,パルフィー
けるべきである。
クエステライト Σ(トクヤマデンタル)がよい。背景
が自然な色調であれば A0.
5,A1もしくは A2を,
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症例9
a:術前。2
7歳,女性。主訴は,1|1
の形態の改善。
b:4年間経過後の所見。1|1にパル
フィークエステライト(シェ ー ド
A1)を充!した。クリアフィルメ
ガボンド使用。
図16 サービカルフェンス装着手順
① 一方の隣接面にマトリックスを通し,唇側を回して他方にも通す。
② マトリックス下端が歯肉に届くまで下げてから,舌側から引いて唇面に密着さ
せる。
③ 唇面のマトリックスの切縁端を歯肉側に押し下げて,マトリックス下端が歯肉
溝にはいるようにする。この後,近遠心歯間部にクサビを挿入する。
特に明度を上げたい場合や変色歯の場合には,OA
5)形態修正と仕上げ研磨
1,OA2ま た は HO の い ず れ か を 使 用 す る。HO
前歯そのものの形態を再現することになる。まず,
は,非常に白いので,接着前にあらかじめ歯面上で固
唇面中央部を平坦に仕上げ,マトリックスで作った歯
めて色調を確認するべきである。
頸部の部分と移行的に推移するように仕上げる。次い
3
8
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で,切縁の高さを決め,それから,切縁隅角と唇面の
るい色調を選択する。筆者の経験では,A1が最も多
隅角線部を適正な形態に仕上げる。歯頂側の切縁隅角
く,次が A2である。A3を使用した経験はない。離
は,先の細い仕上げ用のダイヤモンドポイントで注意
開部が大きい場合,前臼歯両用のコンポジットレジン
深く削除して付形する。最終的な形態は,背景色の遮
で舌側半分を充!することも多いが,この場合も XL
蔽の程度や口元との関係を見ながら決める。治療終了
や A1といった明るいシェードを使用する。
時には,患者に,
「歯ブラシが当たりにくいところに
歯に位置異常があって歯質削除が必要な場合を除
茶渋がつくことがありますから,半年に1回くらい詰
き,特に歯面削除の必要はない。ブラシコーンや研磨
めたものを磨きましょう」と話しておく。
用ストリップスで歯面清掃をすればよい。歯面は非切
削エナメル質なので,セルフエッチングのボンディン
1
3.正中離開の閉鎖
グシステムでも,リン酸エッチングを併用する必要が
ある。
症例1
0
充!に際して最も重要なのが,マトリックスの扱い
コンポジットレジンは,研磨性に優れた前歯専用コ
である。正中離開を封鎖する場合,近心の歯肉溝に透
ンポジットレジンを使用し,シェードは,基本的に明
明マトリックスを入れただけでは,歯肉側の鼓形空隙
症例10
a:術前。49歳,男性。主訴は,1|1
の正中離開の閉鎖。
b:1年半経過後の所見。歯質削除は行
うことなく,パルフィークエステラ
イ ト(シ ェ ー ド A1)を 充!し
た。クリアフィルメガボンド使用。
図17 正中離開症例の修復手順
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9
図18 セラミックプライマーと金属プライマー(ク
ラレメディカル)
図19 チェアーサイド用サンドブラスター。マイク
ロエッチャーⅡ(モリ ム ラ)(上)とアドアブ
レーダー(モリタ)(下)
が三角形に大きく開いてしまう。そこで,ボンドレジ
ンを塗布後,マトリックスを遠心隣接面から舌側を
通って近心まで回し,舌側を押さえながら近心の歯肉
溝に入れて光硬化させる(図1
7‐a)
。
コンポジットレジンは,まず歯肉側1/3くらいまで
歯頸側部分が多少膨らむように充!し,光硬化させる
(図1
7‐b)
。その後,歯頂側部に充!し(図1
7‐c)
,
マトリックスを圧接しながら,光硬化させる(図1
7‐
d)
。槍状の細いダイヤモンドポイントで隣接面形態
を整えた後,同様の処置を反対側に行う。
図20 オペーカーとオペークシェードのコンポジッ
トレジン(クラレメディカル)
1
4.リペアならびにマスキング修復
ペ ー ク シ ェ ー ド(OA1,OA2,OA3,HO)を 選
1)必要な器材
択する(図2
0)
。
金属やセラミックスに対する接着では,いかにして
新鮮面を露出させ,そこに化学的に接着させるかがポ
イントになる。そのため,セラミックプライマー,金
2)前装部の破折修理
症例1
1
属プライマー,そして口腔内サンドブラスターが必要
となる(図1
8,1
9)
。
背後に前装冠の金属や歯頸部の変色歯質が存在する
◇セラミック(またはコンポジットレジン)のみの
場合
場合では,隠したい背景色の上に薄く塗布をして,こ
◇メタルのみの場合
れを遮蔽するオペーカーが必要となる。オペーカーと
◇メタルとセラミック(またはコンポジットレジ
しては,クリアフィル ST オペーカー(US)
(クラレ
ン)の場合
メディカル)
,パルフィークエステライト LV オペー
以上の3つの場合がある。いずれもサンドブラスト
カー(トクヤマデンタル)
,メタフィル Flo オペーク
を行い,セラミックプライマーや金属プライマーを接
(サンメディカル)がよい。
着性レジンと組み合わせて使う。破折がセラミックに
オペーカーの上に充!するコンポジットレジンは,
限局している場合は,標準シェードの高明度コンポ
修復部位の色むらを少なくするために,不透明なオ
ジットレジン(A1,A2)で良いが,メタルが背景
4
0
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症例11
a:術 前。63歳,女 性。
主 訴 は,レ ジ ン 前 装
2
冠 の 前 装 部 脱 落。"
3 ま で の5歯 に
から !
連結冠が装着されて
2 の前装部が
お り,"
剥離脱落していた。
表
b:6年 経 過 後 の 所 見。
サ ン ド ブ ラ ス ト 後,
ア ロ イ プ ラ イ マ ー,
メガボンドプライ
マ ー+ポ ー セ レ ン ア
ク チ ベ ー タ ー、ボ ン
ドレジンを塗布して
光 硬 化 さ せ,パ ル
フィークライトオ
ペーカー(トクヤマデン
タル)で金属部を遮蔽
し た。ク リ フ ィ ル ブ
ライト
(シェード UO)
を充!した。
リペアとマスキングに必要な器材
充!用コンポジットレジン
セラミック
プライマー
セラミックのみ
前装部破損
金属
プライマー
●
メタルのみ
セラミックとメタル
●
変色歯質とセラミック
変色部の
マスキング 変色歯質とメタル
●
接着性レジン
オペーカー
●
標準シェード
オペークシェード
●
[もしくは●]
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
にくる場合は,オペーカーとオペークシェードのコン
ては,歯頸部の窩洞だけでなく前装部表面を1ないし
ポジットレジンが必要となる(表)
。
2mm くらいコンポジットレジンで被覆するように充
!する。そのために,窩洞に近い前装部はあらかじめ
3)歯頸部変色歯質のマスキング
サンドブラスト処理を行っておく(図2
1)
。
症例1
2
まとめ
前装冠修復歯の歯頸部の変色を修復する場合には,
露出根面の感染象牙質を削除すればよい。充!に際し
2回にわたって接着性レジンとコンポジットレジン
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4
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症例12
a:術前。39歳,女性。
2 歯頸部
主 訴 は,!
の色調改善。メタル
ボンド冠が装着され
2 は,露 出 し た
た!
歯根が黒く変色して
いた。
b:根面を一層削除後,
メタルボンド唇面の
中央部付近までサン
ドブラストし,接着
手順を踏んでからオ
ペ ー カ ー(ク リ ア
フ ィ ル ST オ ペ−
カー(US))を探針
で採取し,注意深く
変色部に塗布し,光
硬化させた。
c:ク リ ア フ ィ ル ST
(OA1)を ポ ー セ
レン部にかぶるよう
に充"し,仕上げ研
磨した。
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顕,豊島義博
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MID(Minimal Intervention Dentistry)の体系を支える歯科接
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ション.クインテッセンス出版,東京,2
0
0
4.
図21 歯頸部象牙質は,ラウンドスチールバーで感
染 歯 質 を 除 去 す る(①)
。前 装 部 ポ ー セ レ ン
は,口腔内サンドブラスターで唇面中央部付近
まで光沢がなくなるまでブラスティングする
(②)。
6)星野悦郎,宅重豊彦:3Mix-MP 法と LSTR 療法.日本歯科評
論社,東京,2
0
0
0.
7)伊藤和雄:EDTA,
GM によるデンティンボンディング理論の
確立と新しい齲!検知液「カリエスチェック」
.歯界展望,1
0
4:
9
1
0〜9
2
3,2
0
0
4.
8)秋本尚武,桃井保子:レジン充"でいこう
を用いた MI 修復について,その概要を解説した。頁
数の関係で臨床術式に関しては,その詳細を述べるこ
とができなかったので,参考文献を参照してほしい。
コンポジットレジン充"は毎日行う処置である。日々
の臨床に少しでもお役にたてれば幸いである。
4
2
●
140
日本歯科医師会雑誌 Vol.
5
8 No.
22
0
0
5−5
使いこなしのテク
ニック.永末書店,京都,2
0
0
2.
9)
猪越重久,
田上順次,
奈良陽一朗,
日野浦
編:使いこなそうコンポジットレジン
光,
福島正義,
桃井保子
Minimal Intervention の
ための修復テクニック.月刊「歯界展望」別冊,医歯薬出版,
2
0
0
4.
1
0)猪越重久:猪越重久の MI 臨床.デンタルダイヤモンド社,東
京,2
0
0
5.