保険契約 - 財務会計基準機構

IFRS 公開草案
公開草案第5号
保険契約
INSURANCE CONTRACTS
コメント期限:2003 年 10 月 31 日
目次
コメントのお願い
はじめに
Pages 3-9
Paragraphs IN1-IN9
国際財務報告基準書(IFRS)第 X 号(案)
保険契約
目的
範囲
組込デリバティブ
預金要素のアンバンドリング
認識および測定
他の IFRS からの一時的適用除外
損失認識
会計方針の変更
再保険に対する出再者の会計
企業結合またはポートフォリオ移転により取得した保険契約
保険契約における裁量権のある有配当性
金融商品における裁量権のある有配当性
開示
報告金額の説明
キャッシュ・フローの金額、時期および不確実性
保険負債および保険資産の公正開示
発効日と経過措置
開示
金融資産の再指定
付録
A:用語の定義
B:保険契約の定義
C:他のIFRSの修正
結論の根拠
適用指針[案]
1
2-8
5-6
7-8
9-25
9-13
11-13
14-17
18-19
20-23
24
25
26-30
26-27
28-29
30
31-35
33-34
35
(以下省略)
-2-
コメントのお願い
国際会計基準審議会は、提案中の IFRS「保険契約」公開草案およびそれに関連した「結
論の根拠」および「適用ガイダンス」案のすべての点についてのコメントを募集する。特
に下記に示された質問に対する回答を歓迎する。コメントは、関連するパラグラフやパラ
グラフ群を明示し、明確な論拠を含んでおり、かつ可能な限り字句の修正案が示されてい
れば最も有用である。
コメントは文書により 2003 年 10 月 31 日までに到着するように提出いただきたい。
この公開草案に基づいた IFRS が有効になるまでは、国際会計基準(IAS)を含む現行の
国際財務報告基準(IFRS)がそのまま有効である。
質問1−範囲
(a) 本公開草案では、本 IFRS は、他の IFRS が対象としている特定の保険契約を除いて、
企業が発行する保険契約(再保険契約を含む)および企業が保有する再保険契約に適用
することを提案している。本 IFRS は、保険契約者の会計には適用されない。(本
IFRS[案]の2∼4項、および結論の根拠の BC40∼BC51 項)
本公開草案では、IFRS は保険契約を発行する企業の他の資産・負債には適用しないこ
とを提案している。特に、次のものには適用しない。
(i) 保険契約の見合いとして保有する資産(BC9 項および BC109∼BC114 項)
。これ
らの資産は現行の IFRS、例えば IAS39 号「金融商品:認識と測定」および IAS40
「投資不動産」により扱われる。
(ii) 保険契約を発行している企業が発行する、保険契約以外の金融商品(BC115∼117
項)。
この範囲は適切か?もしそうでないなら、どのような変更を提案するか?そしてその理
由は?
(b) 公開草案は、ウェザー・デリバティブは、提案されている保険契約の定義を満たさない
場合は IAS39 号の範囲とすると提案している(本 IFRS[案]の付録 C C3 項)
。これは
適切か?そうでないならば、その理由は?
-3-
質問2−保険契約の定義
本 IFRS[案]は、保険契約を、「ある主体(保険者)が、特定の不確実な事象(保険事象)
が保険契約者や他の受益者に不利な影響を与えた場合に、保険契約者や他の受益者に給付
を行うことを同意することにより、他の主体(保険契約者)から重大な保険リスクを引き
受ける契約」として定義している。
(IFRS[案]の付録 A および B、結論の根拠の BC10∼
BC39 項および適用ガイダンス[案]の IG 例 1)
本 IFRS[案]の付録 B にある関連ガイダンスおよび IG の設例 1 を伴ったこの定義は適切
か?そうでないなら、どのような変更を提案するか?その理由は?
質問3−組込デリバティブ
(a) IAS39 号「金融商品:認識と測定」では、企業に対し、ある種の組込デリバティブを主
契約から分離し、それらを公正価値で測定し、公正価値の変動を損益計算書で認識する
ことを求めている。この要件は、保険契約に組込まれたデリバティブにも継続して適用
されるが、組込デリバティブが以下に該当する場合は除く。
(i) IFRS[案]の範囲内の保険契約としての定義を満たす。または、
(ii) それが一定の金額(あるいは固定金額と金利に基づく金額)の保険契約の解約オ
プションである。
しかしながら、保険者は、次のものは分離して公正価値で測定しなければならない。
(i) 保険契約に組み込まれたプット・オプションあるいは解約オプションで、解約返
戻金額が株式や商品価格あるいは指数の変化に基づいて変動するもの。および、
(ii) 保険契約ではない金融商品の解約オプション
(本 IFRS[案]の 5 項および 6 項、結論の根拠の BC37 項および BC118∼BC123 項、お
よび適用ガイダンス[案]の IG 例 2)
ある種の組込デリバティブに対し IAS39 号の要件の適用除外とすることは適切か?そ
うでないなら、どのような変更がなされるべきか?また、その理由は?
(b) この方法で IAS39 号の範囲から除外される組込デリバティブの中には、(結論の根拠の
BC123 項で記載されている、生存依存型年金オプションや最低死亡給付金保証のよう
な)重大な保険リスクを移転するものではあるが、多くの人が基本的に金融商品である
とみなすようなものが含まれている。これらの組込デリバティブを、このプロジェクト
のフェーズIにおいて公正価値測定から除外することは適切か?そうでないなら、なぜ
か? フェーズIにおいて、公正価値測定の対象となるべき組込デリバティブを、どの
-4-
ように定義するか?
(c) 本 IFRS[案]は、質問3(b)で記載した組込デリバティブに対し、具体的な開示を提案し
ている(本 IFRS[案]の 29(e)項および適用ガイダンス[案]の IG54∼IG58 項)
。これらの
提案された開示案は適切か? もしそうでなければ、どのような変更を提案するか、そ
してその理由は?
(d) その他の組込デリバティブは、IAS39 号の要件から除外するべきか?そうであれば、ど
れを除外するのか、そしてその理由は?
質問4−IAS8 号の規準の一時的な適用除外
(a) IAS8 号「会計方針、会計上の見積りの変更および誤謬」
[改正に伴う 2005 年 5 月公表
の改訂公開草案]の5項および6項は、ある項目に明確に適用すべき IFRS が存在しな
い場合に、企業が当該項目に関する会計方針を設定する際に用いるべき規準を明示して
いる。2007年1月1日以前に開始する会計期間については、本 IFRS[案]では、保
険者に対して、以下に関する既存の会計方針の大部分について、それらの規準の適用を
免除する。
(i) 保険者が自ら発行した保険契約(再保険契約を含む)
(ii) 保険者が保有する再保険契約
(本 IFRS[案]の 9 項、および結論の根拠の BC52∼BC58 項)
IAS8 号[案]の 5 項および 6 項の規準に対しこの適用除外を認めることは適切か?も
しそうでないなら、どのような変更を提案するか、そしてその理由は?
(b) IAS8 号[案]の基準の一時的な適用除外にかかわらず、本 IFRS[案]の 10∼13 項では
次のことを提案している。
(i) 異常危険準備金および平衡準備金を廃止する。
(ii) 保険者の既存の会計方針に損失認識テストがない場合、当該テストを強制する。
(iii) 保険負債から解放されるか、または解約されるか、あるいは満期になるまで、保
険負債を貸借対照表に計上し、保険負債を関連する再保険資産と相殺せずに表示
することを保険者に対して強制する。(本 IFRS[案]の 10∼13 項、および結論の根
拠の BC58∼BC75 項)
。
これらの提案は適切か?もしそうでないなら、どのような変更を提案するか、そしてそ
の理由は?
-5-
質問5−会計方針の変更
本 IFRS[案]は次のことを提案している。
(a) 保険者が保険契約に関する会計方針を変更する場合において、保険者が満たさなけれ
ばならない要件(本 IFRS[案]の 14∼17 項および結論の根拠の BC76∼BC88 項)。
(b) 保険者が保険負債に関する会計方針を変更する場合には、金融資産の一部または全部
を、公正価値で測定して、公正価値の変動を損益として認識するような金融資産のカ
テゴリーに再分類することができる(本 IFRS[案]の 35 項)
。
これらの提案は適切か?そうでないなら、どのような変更を提案するか、また、その理
由は?
質問6−アンバンドリング
本 IFRS[案]は、保険者に対し、貸借対照表に資産および負債が計上されないことを防ぐ
ために、いくつかの保険契約について、預金要素をアンバンドリングする(すなわち、分離
して別々に会計処理を行う)ことを要求することを提案する( 本 IFRS[案]の 7 および 8 項、
結論の根拠の BC30∼37 項および適用ガイダンス[案]の IG5 項および IG6 項)。
(a) アンバンドリングはこれらの場合について適切で実行可能か?もしそうでないなら、ど
のような変更がなされるべきか、またその理由は?
(b) 他の何らかの場合にアンバンドリングを求めるべきか?そうであればいつ、そしてその
理由は?
(c) アンバンドリングが求められる場合は明確か?そうでなければ、どのような変更が原則
の記述になされなければならないか?
質問7−出再者の会計処理
公開草案の提案では、保険者が再保険を購入した場合の財務報告上の変則的取り扱いを
制限することを提案している( 本 IFRS[案]の 18 および 19 項、および結論の根拠の BC89
∼BC92 項)
。
これらの提案は適切か?これらの提案に対し何らかの変更がなされるべきか?そうであ
ればどのようなもので、その理由は?
質問8−企業結合または契約移転で取得された保険契約
IAS22 号「企業結合」では、企業が、企業結合によって取得した資産および引き受けた
負債を公正価値で測定することを求めており、また IFRS 公開草案3号「企業結合」もその
-6-
ような要件を引き継いでいる。本 IFRS[案]では、保険負債および保険資産(および関連す
る再保険)をこの要求の例外とはしない。しかし、取得した保険契約の公正価値を次の2
つの要素に分割して表示することを、強制はしないが認めている。
(a) 発行した保険契約に対する保険者の会計方針に従って測定された負債。
(b) 負債が公正価値を反映していない範囲における、取得された契約上の権利義務の公正
価値を表す無形資産。この無形資産は IAS36 号「資産の減損」および IAS38 号「無
形資産」の適用範囲から除外される。これらの当初認識後の測定は、対応する保険負
債の測定と整合的である必要がある。しかし IAS36 号と IAS38 号は、取得した契約
上の権利および義務の一部ではない、更新や継続の期待を反映した、顧客リストある
いは顧客との関係に対しても適用される。
このような表示は、契約移転により取得した保険契約の群団についても適用可能とされ
る( 本 IFRS[案]の 20∼23 項および結論の根拠の BC93∼BC101 項)
これらの提案は適切か?そうでなければ、どのような変更を提案するか、そしてその理
由は?
質問9−裁量権のある有配当性
提案は、保険契約あるいは金融商品に含まれる、裁量権のある有配当性に関する一部の
局面を取り扱っている(本 IFRS[案]の 24 項および 25 項および結論の根拠の BC102∼
BC108 項)
。当審議会はこれらの特性について、このプロジェクトのフェーズ II で、より
深く検討するつもりである。
この提案は適切か?そうでなければ、このプロジェクトのフェーズ I で、どのような変更
を提案するか、そしてその理由は?
質問10−保険資産と保険負債の公正価値の開示
本 IFRS[案]は、保険者に対し、2006 年 12 月 31 日からの、保険資産および保険負債の
公正価値の開示を求めている(本 IFRS[案]の 30 項および 33 項、
結論の根拠 BC138∼BC140
項および適用ガイダンス[案]の IG60 項および IG61 項)
。
この開示を求めることは適切か?適切であるなら、最初に開示を求める時期はいつにす
べきか?適切でないなら、どのような変更を提案するか、そしてその理由は?
-7-
質問11−その他の開示
(a) 本公開草案は、保険契約から生じる保険者の財務諸表上の金額、および保険契約から生
じる将来キャッシュ・フローの見積金額、時期および不確実性についての開示を求める
ことを提案している。( 本 IFRS[案]の 26∼29 項、結論の根拠の BC124∼BC137 項お
よび BC141 項、そして適用ガイダンス[案]の IG7∼IG59 項)
。
これらの提案のうちどれかを修正または削除すべきか?何らかの更なる開示が求めら
れるべきか?変更案については、その理由を付けてほしい。
提案している開示の大部分は、現存する IFRS の要件を適用したものか、あるいは現存
する IFRS の要求を比較的直截に援用したものである。もし保険契約に関して提案した
開示の変更を提案するのであれば、どのような保険契約の特徴が、他のものに対し IFRS
が既に求めている同様の開示との違いを正当化するのか、説明して頂きたい。
(b) 提案している開示は、上位水準の要求件として位置づけ、それを、保険者がその上位水
準の要件をどのように満たすのかについて説明する適用ガイダンスで補足説明してい
る。
このアプローチは適切か?そうでないなら、どのような変更を支持するか、そしてその
理由は?
(c) 移行期の緩和措置として、保険者は、この IFRS を適用する最初の会計年度の末日より
も 5 年以上前に発生した保険支払の展開状況(クレーム・デベロップメント)に関する
情報を開示する必要はない(34 項、BC134 項および BC135 項)。
この移行期の緩和措置について何か変更すべきか?そうだとすれば、どのような変更か、
そしてその理由は?
質問12−非金融資産または負債の譲渡人による金融保証
本公開草案は、非金融資産または負債の譲渡人が、非金融資産または負債の譲渡に関係
して譲受人に対して行う金融保証については、IAS39 号「金融商品:認識及び測定」を適
用すべきであると提案している(本 IFRS[案]の 4(e)項、本 IFRS[案]付録 C の C5 項および
結論の根拠の BC41∼BC46 項)
。IAS39 号はすでに、金融資産または負債の譲渡に対して
行われる金融保証に適用されている。
IAS39 号を非金融資産・負債の譲渡に関連して行われる金融保証に適用するということ
-8-
は適切か?そうでないとすれば、どのような変更を行うべきか、そしてその理由は?
質問13−他のコメント
公開草案および適用ガイダンスに関して、何か他のコメントはないか?
-9-
序
本 IFRS[案]公表の理由
IN1. これまで、保険契約の IFRS は存在せず、保険契約は、本来なら適用があるはずの、
いくつかの現行基準(引当金、金融商品、無形資産に関する IFRS)の適用範囲から
除外されている。さらに、保険契約の会計処理は世界中で非常にまちまちであり、他
の産業の会計実務と整合していないことが多い。当審議会の保険契約プロジェクトを、
2005 年から IFRS 適用の多くの企業に間に合うように完成させるのは現実的ではな
いため、当審議会は本 IFRS[案]を発行して、
(a) 当審議会が本プロジェクトの第2フェーズを完成する際に、その内容を逆転させ
る必要が生じるかもしれないような重要な変更を要求せずに、限定的な改善を行
い、
(b) 保険契約を発行する企業(保険者)に、保険契約に関する情報の開示を求めるこ
と
とした。
IN2. 当審議会は、本 IFRS[案]を保険契約に係る本プロジェクトの足がかりとみなしてい
る。当審議会は、全ての関連する概念上、実務上の疑問を完全に検討し、十分かつ広
範なデュー・プロセスを完了した後、遅滞無く第2フェーズを完了させることを言明
する。
本 IFRS[案]の主な特徴
IN3. 本 IFRS[案]は、他の IFRS の適用範囲である特定の契約を除いて、企業が発行し
た保険契約(再保険契約を含む)および保有する再保険契約に適用される。本 IFRS
[案]
は、IAS39 号「金融商品:認識と測定」の適用範囲である金融資産・金融負債のよう
な保険者の他の資産・負債には適用されない。さらに、本 IFRS[案]は保険契約者の
会計を取り扱わない。
IN4. 本 IFRS[案]は、保険者に対し、他の IFRS により設定されたいくつかの先例および
フレームワークの適用を一時的に(即ち、2007 年 1 月以前に開始する会計年度につ
いて)免除する。しかしながら、本 IFRS[案]は、
(a) 異常危険準備金および平衡準備金を廃止する。
(b) 保険者の既存の会計方針に損失認識テストがない場合に、当該テストを強制する。
(c) 保険負債から解放されるか、または解約されるか、あるいは満期になるまで、保
- 10 -
険負債を貸借対照表に計上し、保険負債を関連する再保険資産と相殺せずに表示
することを保険者に対して強制する。
IN5. 本 IFRS[案]は、財務諸表が提供する情報の目的適合性と信頼性が高まることとなる
場合に限り、会計方針の変更を認める。特に、保険者は、以下のどれかを含む新規の
会計方針を採用することはできない。ただし、これらを含んだ既存の会計方針を引き
続き使用することは認められている。
(a) 保険負債を現在価値に割り引かずに測定すること。
(b) 保険負債を過度の保守主義に基づき測定すること。
(c) 保険負債の測定にあたり将来投資マージンを反映させること。
(d) 将来の投資管理費用に係る契約上の権利を、類似サービスに対して他の市場参加
者が課す手数料との比較により推定される公正価値を超える金額で間接的に測定
する手法を使用すること。
(e) 子会社の保険負債(および、もしあれば関連する繰延契約費)について、不統一
な会計方針を使用すること。
IN6. 保険者が保険負債に係る会計方針を変更する場合、本 IFRS[案]は、金融資産の全部
または一部を公正価値で測定する区分に再指定し、その公正価値の変動を損益計算書
で認識することを容認している。
IN7. 本 IFRS[案]は、また、以下の項目について提案している。
(a) 保険者に対して、組込デリバティブが保険契約の定義を満たす場合に、組込デリ
バティブを分離して公正価値で測定する会計処理を免除すること。
(b) 保険者に対し、貸借対照表に資産および負債が計上されないことを防ぐために、
いくつかの保険契約について、預金要素をアンバンドリングする(すなわち、分離
して別々に会計処理を行う)ことを要求すること。
(c) 保険者が再保険契約した場合の財務報告上の変則的処理を制限すること。
(d) 企業結合またはポートフォリオの譲渡により取得した保険契約に対し、表示規定
の拡大適用を容認すること。
(e) 保険契約または金融商品に含まれる裁量権のある有配当性について、限定的な部
分のみ扱うこと。
IN8 本 IFRS[案]は、以下について開示を求める。
(a) 保険者の財務諸表に含まれる、保険契約から生じた金額。
(b) 保険契約から生じる将来キャッシュ・フローの見積額、時期と不確実性。
(c) 保険者の保険負債と保険資産の公正価値。
- 11 -
IN9. 本 IFRS[案]は、2005 年 1 月 1 日以降の開始事業年度から有効となるが、早期適用を
奨励する。保険負債および保険資産の公正価値の開示要件は、2006 年 12 月 31 日か
ら適用される。
- 12 -
国際財務報告基準[案]
IFRS
X号
保険契約
目的
1. 本 IFRS[案]の目的は、以下のとおりである。
(a)当審議会が本プロジェクトの第2フェーズを完成する際に、その内容を逆転させる
必要が生じるかもしれないような重要な変更を要求せずに、保険契約の会計実務
に対して限定的な改善を行うこと。
(b) 保険契約の発行者(本 IFRS[案]では保険者と記載する。)に対し、財務諸表利用
者が主要なリスク要因とその感応度を分析することに資するような保険契約に関
する情報の開示を、コストが期待される便益を超過することなく、総体として合
理的かつ過度でない水準で、要求する。
範囲
2. 企業は本 IFRS[案]を、以下に対して適用する。
(a) 自ら発行した保険契約(再保険契約を含む)および保有する再保険契約。
(b) 自ら発行した裁量権のある有配当部分を有する金融商品(25 項参照)。IAS32 号
「金融商品:開示と表示」がこれらの金融商品に関する開示を扱っている。
3. 本 IFRS[案]は、35 項における経過措置を除き、保険者の保有する金融資産や保険者
の発行する金融負債の会計処理(IAS32 号および IAS39 号「金融商品:認識と測定」
参照)など、保険者の会計におけるその他の側面は取り扱わない。
4. 企業は本 IFRS[案]を、以下に対しては適用しない。
(a) 製造業者、卸売業者または小売業者が直接行う製品保証。(IAS18 号「収益」 お
よび IAS37 号「引当金、偶発債務および偶発資産」参照)
(b) 従業員給付制度に基づく雇用主の資産と負債(IAS19 号「従業員給付」および
IFRS[案]ED2「株式報酬」 参照)
、および、確定給付型退職給付制度が報告する
退職給付債務(IAS26 号「退職給付制度の会計および報告」 参照)。
(c) 企業結合において、支払われるまたは受け取られる条件付対価(IFRS[案]ED3 号
「企業結合」 参照)
。
(d) 非金融商品の将来の利用および利用権に応じて発生する、契約上の権利または契
約上の義務(例えば、ある種のライセンスフィー、ロイヤリティー、変動リース
料支払いおよび類似商品)
。および、ファイナンス・リースに組み込まれた借り手
- 13 -
によるリースの残価保証(IAS17 号「リース」、IAS18 号「収益」および IAS38
号「無形資産」 参照)
。
(e)金融保証、信用状あるいは保険契約等、どのような形態であるかによらず、企業が
金融・非金融資産・負債を第三者に譲渡する際に、企業が引き受けているかまた
は保持している金融保証(IAS39 号参照)
。
(f) 企業が保有する元受保険契約(例:企業が保険契約者である元受保険契約)
。
組込デリバティブ
5.
IAS39 号は、ある種の組込デリバティブを主契約から分離し、公正価値で測定して
その公正価値の変動を損益として認識することを企業に要求している。組込デリバテ
ィブ自体で本 IFRS[案]の適用範囲内の保険契約である場合を除き、保険契約に組み
込まれている組込デリバティブに対しては IAS39 号が適用される。
6.
IAS39 号の例外として、保険者は、その行使価格が主たる保険負債の帳簿価額と異
なる場合でも、保険契約を固定金額(または固定金額と利率に基づいた金額)で解約
できる解約オプションを分離して公正価値で評価する必要はない。しかしながら、解
約返戻金が持分金融商品や商品価格または指数の変動に応じて増減する場合には、保
険者は保険契約に組み込まれたプット・オプションや解約オプションを分離しなけれ
ばならない。
預金要素のアンバンドリング
7. 保険契約の中には保険要素と預金要素の両方を有するものがある。場合によっては、
保険契約に対する保険者の現行の会計方針を預金要素に適用することは、保険者が保
険契約により受領した金額を返還する義務あるいは保険契約により支払った金額の
返還を受ける権利を認識しないことになる可能性がある。この場合、保険要素から生
じるキャッシュ・フローが預金要素から生じるキャッシュ・フローに影響しないので
あれば、保険者は次のように扱う。
(a) 保険要素を保険契約として扱う。
(b) 預金要素を IAS39 号の金融負債あるいは金融資産として扱う。
8.
多くの伝統的な生命保険契約は解約返戻金または満期保険金を提供するが、これは
預金要素とみなすことができる。しかしながら、保険者の現在の会計方針が、保険契
約者に給付を支払う契約に係るすべての負債を認識するのであれば、7項は保険者に
これらの解約返戻金あるいは満期保険金をアンバンドルすることを要求していない。
- 14 -
認識および測定
他のIFRSからの一時的な適用除外
9. IAS8 号「会計方針、会計見積および誤謬の変更」
[2002 年 5 月公表の改訂公開草案]
の 5 項および 6 項は、ある項目に明確に適用すべき IFRS が存在しない場合に、企業
が当該会計項目に関する会計方針を設定する際に用いるべき規準を明記している。
2007 年1月1日以前に開始する会計期間については、本 IFRS[案]では、保険者に対
して、以下に関する既存の会計方針についてはそのような規準を適用することを免除
する。
(a) 保険者が自ら発行した保険契約(再保険契約を含む)
(b) 保険者が保有する再保険契約
10.しかし、本 IFRS[案]は、IAS8 号[案]の 5 項および 6 項の規準の影響から保険
者を免除することとはしていない。特に保険者は、
(a) 将来の保険契約により生じうる将来の保険金支払に係る異常危険準備金や平衡準
備金を負債として認識してはならない。
(b) 11−13 項に記載されている損失認識テストを実施しなければならない。
(c) 保険負債(あるいは保険負債の一部分)が消滅した(即ち、当該契約で特定され
る義務から解放された、解約された、期間満了となった)場合、かつその場合の
み、認識の中止(すなわち貸借対照表からの除去)をしなければならない。
(d) 以下の相殺表示をしてはならない。
(i)
再保険資産と関連する保険負債との相殺、または
(ii) 再保険契約に係る収益と費用および対応する保険契約の収益および費用と
の相殺
損失認識
11.保険者は、報告日ごとに、保険契約に基づく将来キャッシュ・フローに関する現在
の見積りを使用して、損失認識テストを実施しなければならない。当該見積りが、将
来キャッシュ・フローの見積りに照らして、保険負債の計上額(関連する繰延新契約
費および無形資産の控除後)が不十分であることを示している場合には、保険者はそ
の不足額を全て損益として認識しなければならない。もし、保険者の既存の会計方針
がこれらの最低要件を満たす損失認識テストを要求している場合には、本 IFRS[案]
は当該テストに追加的な要求を課さない。例えば、本 IFRS[案]は、どのキャッシ
ュ・フローを含めるべきか、そのキャッシュ・フローの割引の要否およびその方法、
あるいは、キャッシュ・フローや割引率に関するリスクと不確実性に対する調整の要
否およびその方法については特定していない。
- 15 -
12.保険者の既存の会計方針が、11 項に定められた最小限の要件を満たす損失認識テス
トを要求していない場合、保険者は、以下のことを行わなければならない。
(a) 保険負債の帳簿価額から、次の帳簿価額を控除した金額を算定する。
(i)
当該負債に関連する全ての繰延新契約費、および
(ii) 当該負債に関連する企業結合やポートフォリオの譲渡により取得したあらゆ
る無形資産
(b) (a)により算出した金額を、保険負債に対して IAS37 号「引当金、偶発負債およ
び偶発資産」を適用したと仮定した場合の測定額と比較する必要がある。もし、
IAS37 号に基づく測定額が(a)により算出した金額より大きければ、保険者は関
連する繰延新契約費か無形資産を減額するか、保険負債の帳簿価額を増額しなけ
ればならない。
13.12 項に規定されたテストにあたっては、IAS37 号に基づく測定額には、12 項(a)に
規定された金額が将来の投資マージン(16 項(c)参照)を含む場合に、かつその場合
にのみ、当該マージンを含めなければならない。
会計方針の変更
14.保険者は、保険契約に係る会計方針の変更が、IAS8 号[案]の規準に照らして、財
務諸表を利用者の意思決定にとってより目的適合性があり、かつその信頼性を高める
場合に、かつその場合にのみ、当該会計方針を変更できる。
15.保険契約に係る会計方針の変更を正当化するためには、保険者は、当該変更が財務
諸表を IAS8 号[案]の規準への合致を強めることを示さなければならないが、当該
変更は当該規準への完全な準拠を達成するのに十分なものである必要はない。
16.保険者は、以下のいずれかの内容を含む既存の会計方針を継続して使用することが
できるが、以下のいずれかを含むような新たな会計方針は、14 項の要件を満たさな
い。
(a) 保険負債を現在価値に割り引かずに測定すること
(b) 保険負債を過度の保守主義に基づき測定すること、または
(c) 以下のいずれかの方法で、保険負債の測定に将来の投資マージンを反映する
こと
(i)
保険者の資産の期待収益率を反映した割引率を用いること
(ii) 当該資産の収益を予想収益率を用いて予測し、それを予測収益と異なる
率で割り引くことにより負債を測定すること
- 16 -
(d) 将来の投資管理手数料に係る契約上の権利を、類似サービスに対して他の市
場参加者が課す手数料との比較により推定される公正価値を超える金額で測
定すること。それらの契約上の権利に関する契約時点での公正価値は、将来
の投資管理手数料と関連する費用が類似の市場のそれと大幅に乖離していな
い限り、当初に支払われた契約の組成費用に等しいことが多い。
(e) 子会社の保険負債(および繰延新契約費)に不統一な会計方針を使用するこ
と。
17.14−16 項は、既に IFRS を適用している保険者の会計方針の変更と、初めて IFRS
を適用する保険者の会計方針の変更の双方に適用される。
再保険に対する出再者の会計
18.保険者が再保険を購入する場合には、
(a) 保険者(出再者)は、保険負債の測定基礎を変更してはならない。測定基礎の変
更の例としては、非割引ベースから割引ベースへの変更がある。
(b) 出再者は、再保険契約の契約締結時の権利を測定するために、再保険契約の取得
費用を考慮した正味支払金額を用いなければならない。その結果、次の(c)を除き、
契約締結時点で利得を認識しない。
(c)
出再者は、再保険契約時の再保険者からの受取金額を、当期または過去の期間に
おいて費用として認識した新契約費の再保険者持分を補填する金額の範囲内で、
収益として認識しなければならない。その他全ての再保険者からの契約締結時の
受取金額は、再保険契約に基づく出再者の権利に係る当初の帳簿価額を減少させ
る。
(d) 出再者の正味支払金額が、元受保険契約に基づく出再者の負債の関連する部分に
係る帳簿価額よりも小さい場合(例えば、負債が非割引ベースで測定されている
場合)には、出再者は、元受契約のリスク・エクスポージャーの期間にわたり、
体系的かつ合理的な基準により、当該差額を収益として認識しなければならない。
(e)
出再者の正味支払金額が、元受保険契約に基づく出再者の負債の関連する部分に
係る帳簿価額を超過している場合、それは当該負債が過小評価されているかもし
れないという証拠である。出再者は、11−13 項の損失認識テストを実行するにあ
たり、この証拠を考慮しなければならない。
19.出再者は、再保険契約に基づく権利に対して IAS36 号「資産の減損」を適用しなけ
ればならない。
- 17 -
企業結合やポートフォリオの譲渡により取得した保険契約
20.本 IFRS[案]は、保険負債や保険資産(および関連する再保険を含む)を、買収企業
が企業結合の際に取得した資産および引き受けた負債を公正価値で測定するという
要求(IFRS[案])
)ED3 号「企業結合」参照)の例外とはしない。しかしながら、本
IFRS[案]は、取得し保険契約の公正価値を、次の二つの部分に分離するという拡張し
た表示を強制はしないが認めることとする。
(a) 発行した保険契約についての保険者の会計方針に従って測定された負債、およ
び
(b) 取得した保険契約上の権利および義務の公正価値を表す無形資産。当該負債が
その公正価値を反映していない範囲に限る。
21.保険契約の群団を取得した保険者は、20 項に示した拡張した表示を使用してよい。
22.本 IFRS[案]は、20 項および 21 項に示した無形資産を、以下の基準の適用範囲か
ら除外する。
(a) IAS36 号「資産の減損」
。11−13 項の損失認識テストでカバーされるからであ
る。
(b) IAS38 号「無形資産」
。これらの資産の取得後の測定は、関連する保険負債の
測定と整合的でなければならない。
23.企業結合やポートフォリオの譲渡により取得された保険契約上の権利および義務の
一部を構成しない、契約更新や再契約の期待を反映した顧客リストや顧客関係につい
ては、IAS36 号や IAS38 号を適用する。
保険契約における裁量権のある有配当性
24.ある種の保険契約は、保険者が支払いに対する裁量権を有する配当部分と、裁量の
余地がない固定支払部分とを含んでいる。そのような契約の発行者は、
(a) 固定支払部分を裁量権を有する有配当性部分から分離して報告してもよいが、強
制はされない。
(b) 裁量権を有する有配当部分から生じる未割当剰余を、負債か資本のどちらかに分
類しなければならない。本 IFRS[案]は、発行者が未割当剰余をどのように負
債または資本と決定するかについて明示しない。発行者は、未割当剰余を負債要
素と資本要素に分類してもよいが、当該未割当剰余を負債でも資本でもない中間
的な区分に分類してはならない。
(c) もし、当該契約が IAS39 号の適用範囲である組込デリバティブを含んでいる場
合には、
当該組込デリバティブに対しては IAS39 号を適用しなければならない。
- 18 -
(d) 10−13 項および 23 項(a)-(c)に記述された全ての点を除き、会計方針の変更が財
務諸表の目的適合性および信頼性を向上されるものでなければ、そのような契約
に対して既存の会計方針を継続しなければならない。
金融商品における裁量権のある有配当性
25.24 項の要件は、保険契約でないが、発行者が支払いに対する裁量権を有する配当部
分と、裁量の余地がない固定支払部分を含むような金融商品の発行者にも適用される。
さらに、発行者は当該負債を、少なくとも固定支払部分に IAS39 号を適用した測定
結果以上で測定して認識しなければならない。報告される負債総額が明らかに(固定
支払部分に IAS39 号を適用した測定結果より)大きい場合には、発行者は固定支払
部分に IAS39 号を適用した測定結果を決定する必要はない。
開示
報告金額の説明
26.保険者は、保険契約から生じる貸借対照表および損益計算書上の金額の識別および
説明をする情報を開示しなければならない。
27.26 項を遵守するために、保険者は次の事項を開示しなければならない。
(a)保険契約とそれに関連した資産・負債・収益および費用についての会計方針
(b)保険契約から生じる資産、負債、収益および費用(もし、キャッシュ・フロー計算
書を直接法で作成しているなら、そのキャッシュ・フロー)の重要な金額
(c)これらの金額の測定に大きな影響を及ぼす仮定の決定プロセス、および、実行可能
な場合はそれらの仮定の数量的開示
(d)保険資産および保険負債を測定するために用いられた仮定が変化した場合の影響。
財務諸表に重要な影響を及ぼす変化の各々について、その影響を別々に表示
(e)保険負債、再保険資産および、もしあれば繰延新契約費の重要な変化
キャッシュ・フローの金額、時期および不確実性
28.保険者は、保険契約から生じる将来キャッシュ・フローの見積金額、時期および不
確実性を利用者が理解できるようにする情報を開示しなければならない。
29.28 項を遵守するために、保険者は次の事項を開示しなければならない。
(a)保険契約から生じるリスクの管理目的、およびリスク軽減のための方針
(b)将来キャッシュ・フローの金額、時期および不確実性に関して、重要な影響を及ぼ
す保険契約の契約条件
- 19 -
(c)保険リスクに関する情報(再保険によるリスクの軽減前と軽減後の双方)
。それに
は次の情報が含まれる。
(i)
重要な影響を及ぼす変数が変化した時の、報告された損益および資本の感
応度
(ii)
保険リスクの重要な集中
(iii)
実際の保険金額とそれまでの見積額との比較(クレーム・デベロップメン
ト)
。クレーム・デベロップメントの開示は、現在でも保険金支払いが残っ
ているもののうち、最も早期の重要な保険金支払いが発生した期間まで遡
らなければならないが、10 年以上遡る必要はない。また、通常ならば1年
以内に完了する保険金支払いについては、この情報を開示する必要はない。
(d)保険契約が IAS32 号「金融商品:開示と表示」の適用範囲であったとすれば、IAS32
号が要求するであろう金利リスクおよび信用リスクについての情報
(e)もし、保険者が組込デリバティブを公正価値で測定するよう求められておらず、ま
た公正価値で測定しない場合、主保険契約に含まれる組込デリバティブの重要
な金利リスクおよび市場リスクへのエクスポージャーについての情報
保険負債および保険資産の公正価値
30.保険者は、保険負債および保険資産の公正価値を開示しなければならない。
発効日および経過措置
31.企業は、この本 IFRS[案]を、2005 年 1 月 1 日以降開始する会計期間の年次財務諸表
に適用しなければならない。早期適用を推奨する。企業が本 IFRS[案]をより早い決
算期で導入する場合には、その旨を開示しなければならない。
32.33∼35 項にある経過措置は、すでに IFRS を適用している企業がこの本 IFRS[案]
を初めて適用する時にも、IFRS を初めて適用する企業(初度適用者)にも適用され
る。
開示
33.保険者は、2006 年 12 月 31 日よりも前の日付については、自社の保険資産および保
険負債の公正価値開示する必要はない。例えば、2006 年 12 月 31 日終了年度の財務
報告においては、保険者は同日現在における公正価値を開示するが、2005 年 12 月
31 日における公正価値をその財務報告で開示する必要はない。
34.保険者は、本 IFRS[案]を適用する最初の会計年度の末日より 5 年以上前に発生し
た保険事故のクレーム・デベロップメントについての情報を開示する必要はない。
- 20 -
金融資産の再指定
35.保険者が保険負債に関する自社の会計方針を変更する場合、金融資産の一部または
全部について、公正価値で測定して、公正価値の変動を損益に認識する金融資産のカ
テゴリー*に再分類することを、要求はしないが認めることとする。この再分類は、
保険者が本 IFRS[案]を初めて適用する際に会計方針を変更する場合に、また 14
項により認められているその後の方針変更を行う場合に認められる。保険者は再分類
を IAS8 号[案]
「会計方針、会計上の見積りの変更および誤謬」に基づく会計方針
の変更として扱うこととする。
IAS39 号の現行の版では、このカテゴリーは売買目的で保有される金融資産に限定されて
いる。2002 年 6 月に提案された IAS39 号の改訂案によれば、企業はあらゆる金融資産につ
いて、このカテゴリーに含めるように定めることを、取得時に選択することができるよう
になる。
*
- 21 -
付録 A:
用語の定義
この付録は本 IFRS[案]の重要な部分である。
(cedant)
(direct
insurance
contract)
裁量権のある有 (discretionary
participation
配当性
feature)
出再者
元受保険
公正価値
(fair value)
財務リスク
(financial risk)
保険資産
(insurance
asset)
(insurance
contract)
保険契約
保険負債
保険リスク
保険事故
保険者
保険契約者
(insurance
liability)
(insurance
risk)
(insured event)
(insurer)
(policyholder)
再保険契約における契約者
再保険契約でない保険契約
投資家または保険契約者が有する、最低保証支払に加
えて次のような追加の給付を受け取る契約上の権利
(a)契約全体の支払の中で重要な一部分となる
と思われる。
(b)金額あるいは時期は契約上、契約発行者の裁
量に依る。そして
(c) 契約上、次のいずれかに基づく。
(i) 特定の契約群団あるいは特定の契約
タイプについてのパフォーマンス
(ii)発行者が保有する特定の資産プールに
ついての実現および/または未実現の投
資収益
(iii)契約を発行した会社、ファンドまたは
その他の主体の損益
十分な知識と意志のある独立第三者間の取引におい
て、資産が交換され、または負債が決済される価額
特定の利率、証券価格、商品価格、外国為替レート、
価格またはレートの指数、信用格付けまたは格付け指
数、またはその他の変数のうち、非金融変数の場合に
はその変数が契約の当事者特有のものでないもので、
一つあるいはそれ以上の、将来の変動リスク
保険契約に基づく、保険者の正味の契約上の権利
ある主体(保険者)が、他の主体(保険契約者)から、
特定の不確実な事象(保険事象)が保険契約者や他の
受益者に不利益を与えた場合に保険契約者や他の受
益者に補償を行うことを同意することにより、重大な
保険リスクを引き受ける契約。(この定義の適用につ
いてのガイダンスは付録 B 参照)
保険契約に基づく保険者の正味の契約上の義務
財務リスク以外のリスクで、契約の保有者から発行者
へ移転されるもの
保険契約により担保される不確実な将来の事象
保険契約の発行者
保険契約の保有者
- 22 -
再保険契約
(reinsurance
contract)
再保険者
(reinsurer)
保険契約で、ある保険者(再保険者)が他の保険者(出
再者)に対し、出再者の発行した1つあるいはそれ以
上の契約から生じた損失について補填を行うために
発行する保険契約
再保険契約の発行者
- 23 -
付録 B
保険契約の定義
この付録は本基準書[案]の不可欠の一部分である。
B1.
本付録は、付録Aにおける保険契約の定義の適用ガイダンスを提供する。本付録は以
下の論点を取扱う。
(a)
「保険者」という用語(B2 項および B3 項)
(b)
「不確実な将来事象」という用語(B4 項∼B6 項)
(c)
現物給付(B7 項)
(d)
保険リスクと財務リスクの区別(B8 項∼B16 項)
(e)
保険契約の例(B17 項および B20 項)
(f)
重要な保険リスク(B22 項∼B24 項)
(g)
保険リスク水準の変化(B25 項および B26 項)
保険者
B2.
参照の便宜上、本 IFRS[案]は、保険契約を発行する企業を保険者と表現する。その
企業が、法的あるいは監督上、保険者とみなされているかどうかにはよらない。
B3.
保険契約の定義上、保険者は、保険契約者から重要な保険リスクを引き受けることが
必要である。これは、保険者が保険契約者とは異なる主体である場合にのみ可能であ
る。相互会社の場合、相互会社は各保険契約者からリスクを引き受け、そのリスクを
プールする。保険契約者は所有者として、彼らの許容範囲の中でプールされたリスク
を共同で負うが、相互会社は依然として保険契約の本質であるリスクを負っている。
不確実な将来の事象
B4.
保険契約の本質は、不確実性(あるいはリスク)である。保険契約の開始時点では次
のうち少なくとも一つの事象が不確実である。
B5.
(a)
保険事故が発生するかどうか。
(b)
保険事故がいつ発生するか。
(c)
保険事故が発生したとき、保険者がいくら支払要求されるか。
保険契約の中には、保険契約開始前に発生した事象から生じた損失であっても、契約
期間中に損失が顕在化すれば保険事故となるものもある。また、契約期間終了後に損
失が顕在化したとしても、保険期間中に発生する事象が保険事故となるものもある。
B6.
事象が既に発生しているが、その経済的な影響が不確実な事象を対象とする保険もあ
- 24 -
る。その一例として、既に報告された支払請求の悪化に係る元受保険者の損失を担保
する再保険がある。この契約における保険事故は、クレームに係る最終的な費用の顕
在化である。
現物給付
B7.
保険契約によっては、現物給付を要求または容認している場合がある。例えば、保険
者が保険契約者に保険金を支払う代わりに盗難に遭った物と同等の物を直接給付す
る場合である。また、その他の例として、保険者自らが所有する医療施設とスタッフ
を用いて契約により担保される医療サービスを提供する場合がある。
保険リスクと財務リスクの区別
B8.
保険契約の定義は、保険リスクに言及しており、本 IFRS[案]では、この保険リスク
を、財務リスク以外で保険契約者から保険者に移転されるリスクと定義している。保
険者が重要な保険リスクを負わず、財務リスクのみを負う契約は保険契約ではない。
B9.
付録Aの財務リスクの定義は、金融および非金融変数のリストを含んでいる。当該
リストには、ある特定地域の地震損害指標や気温の指標など、契約当事者に固有でな
い非金融変数を含んでいる。契約当事者の資産が損害を受けるまたは損壊するような
火災の発生の有無など、その当事者に固有の非金融変数は除かれている。さらに、契
約当事者が保有する非金融資産の公正価値の変動リスクは、当該公正価値が、そのよ
うな資産の市場価値(金融変数)の変化のみではなく、保有する特定の非金融資産の
状況(非金融変数)を反映している場合には、財務リスクではない。例えば、特定の
自動車の残存価値を保証することにより、保証者が当該自動車の物理的状態の変化の
リスクにさらされる場合には、当該リスクは財務リスクではない。
B10. 契約の中には、保険者が重要な保険リスクに加えて財務リスクを負うものがある。例
えば、多くの生命保険は保険契約者に最低利回りを保証する(財務リスクを生じる)
と同時に、当該保険契約者の勘定残高を大きく上回ることもある死亡給付金の支払い
を保証する(死亡リスクという形で保険リスクを生じさせている)
。このような契約
は保険契約である。
B11. 一部の保険契約においては、保険事故が発生すると、ある価格指数にリンクした支払
いが行われるものもある。このような契約は、保険事故を条件とする支払いが僅少で
ない場合は保険契約である。例えば、消費者物価にリンクした生存依存型年金は保険
契約である。それは、支払いが年金受給者の生存という不確実な事象を要件としてい
るためである。価格指数へのリンクは組込デリバティブである。しかしながら、当該
- 25 -
組込デリバティブは保険契約の定義に合致するため、分離し公正価値で測定する必要
はない(本 IFRS[案]の 5 項参照)。
B12.
保険リスクの定義は、契約により新たに生成されるリスクではなく、保険契約者か
ら保険者へ移転するリスクに言及している。例えば、契約者が1通貨単位の些細な損
失を被った場合に、100 万通貨単位の支払いを発行者に要求する契約を考える。この
契約では、契約者は1通貨単位の些細なリスクを発行者に移転している。同時に、当
該契約は、保険事故が発生したときには発行者が 999,999 通貨単位を支払う必要があ
るという非保険リスクを生成している。この契約の発行者は、契約者から重要な保険
リスクを引き受けていないので、当該契約は保険契約ではない。
B13. 保険契約の定義は、保険契約者または他の受給者に不利益な影響を与える不確実な事
象に言及している。この定義は、保険金支払額が経済的実損額に等しいものに限定し
ていない。例えば、損害を受けた古い資産を新しい資産に取り替えるのに十分な保険
金を支払う「新価保険」を除外していない。同様に、定期保険における保険金支払額
を、保険契約者の扶養家族が被った経済的損失の額に制限していない。
B14. 特定の不確実な事象が生じたときに支払いを要求するが、保険契約者または他の受給
者に対する不利益な影響を支払いの前提条件として要求していない契約もある。これ
らの契約は、契約者がリスクを軽減するために当該契約を利用しているとしても保険
契約ではない。例えば、当該企業の資産から生じるキャッシュ・フローに関連する非
金融変数をヘッジするために、契約者がデリバティブを利用する場合である。保険契
約の定義は、保険契約者または他の受給者に不利益な影響を与える不確実な事象を、
契約上の支払いの前提条件と記述している。
B15. 失効リスクもしくは継続リスク(契約の価格決定をする際に発行者が期待するよりも
早くに、もしくは遅くに契約相手が契約を解約するリスク)は、契約相手への支払い
が契約相手に不利に影響する不確実な将来事象が条件ではないので、保険リスクでは
ない。したがって、発行者を失効リスクもしくは継続リスクにさらす契約は、さらに
保険リスクを伴わない限り、保険契約ではない。
B16. 費用の予期しない増加は、契約相手先に不利に影響しないため、費用リスク(契約を
履行することにより、契約の価格設定をする際に期待していた以上の費用を発行者が
負担するというリスク)は保険リスクではない。したがって、発行者を費用リスクに
さらす契約は、保険者を保険リスクにもさらすものでない限り、保険契約ではない。
- 26 -
保険契約の例
B17. 以下は保険契約の例である。
(a) 財産の盗難または損害に対する保険
(b) 製造物責任、職業専門家賠償責任、民事賠償責任または訴訟費用に対する保険
(c) 生命保険および前払式葬儀プラン(人が死亡することは確実であるが、いつ死
亡するか、または、ある種の生命保険において、保険でカバーされている期間
内に死亡するかという点は不確実である)
(d) 生命偶発年金(私的年金)と恩給(公的年金)
(不確実な将来事象−年金受給者
または恩給受給者の生存−に対する補償は、年金受給者または恩給受給者があ
る一定生活水準を維持することを助ける。そうでなければ彼らの生存は不利益
な影響を与えることになるであろう。)
(e) 労災、医療保険
(f) 保証金保証保険、身元保証保険、履行保証保険と入札保証保険(企業が契約上
の義務、例えばビルの建設義務、を履行できなかった場合に支払いを行う保険)
(g) 信用保険、支払いの前提条件として、債務者が期日どおりに支払をしなかった
場合に、契約者が損失を被ることを要求するもの。これらの契約は、金融保証、
信用状、債務不履行に関する信用デリバティブあるいは保険契約といった、様々
な法律的形態がある。しかしながら、もし、発行者が、金融・非金融資産・負
債を他の当事者に移転する場合には、これらの契約は IAS39 号「金融商品:認
識および測定」の対象である。
(h) 製品保証。製造者や卸売業者の代りに他の当事者が間接的に発行する製品保証
は、本 IFRS[案]の対象である。しかしながら、製造者や卸売業者が直接発行す
る製品保証は、IAS18 号「収益」および IAS37 号「引当金、偶発負債および偶
発資産」の対象であるため、適用対象外である。
(i) 権原保険(保険契約の締結時点で顕在化していない土地所有権の瑕疵を担保す
る保険)
。この場合、不確実な将来事象は所有権の瑕疵が顕在化することであり、
瑕疵そのものではない。
(j) 旅行保険(旅行中の損害に対して、保険契約者に金銭や現物を補償するもの)
(k) 特定の事象が債券の発行者に不利な影響を及ぼした場合に、元本や金利を減額
支払されるのに備えるキャット・ボンド(特定の事象が重要な保険リスクを生
じないもの、例えば事象が金利の変化や為替レートの変化であるとき、を除く)。
(l) 契約者に不利益な影響を与える、気候や地質学上や、その他の自然の変数に基
づく給付を要求する保険スワップおよびその他の契約
(m) 再保険契約
- 27 -
B18. 以下は、保険契約でない契約の例である。
(a) 法的に保険契約の形態をとっているが、保険者を保険リスクにさらされていない
投資契約、例えば、保険者が重要な死亡リスクに全くさらされない生命保険契約
(これらは非保険金融商品である。
)
(b) 法的に保険契約の形態をとっているが、例えばいつくかの財務再保険契約や団体
契約のように、被保険損失の直接の結果として保険契約者による将来の支払いを
調整する仕組みを通じて、重要な保険リスクを保険契約者に移転している契約(こ
れらは非保険金融商品である。
)
(c) 自家保険、すなわち、保険で担保しうるリスクを自ら保有しているもの(他者と
契約を結ばないので保険ではない。
)
(d) 契約(ギャンブル契約のようなもの)で、特定の不確実な将来事象が発生した場
合に支払いを行う契約であるが、契約の支払いの前提条件として、その事象が契
約者や契約で特定された受益者に不利益を及ぼすことを要件としない契約
(e) 財務リスク、すなわち、特定の金利、証券価格、商品価格、外国為替レート、価
格またはレートの指数、信用格付け、信用指数、またはその他の変数(非金融変
数の場合は、契約当事者に限定的でない変数)の、一つまたはそれ以上の変動の
みに基づいて当事者の一方に支払いを行うことを要求するデリバティブ(IAS39
号「金融商品:認識および測定」参照)
(f) 債務者が期日どおりに支払をしなかったために、契約者が損害を被ったかどうか
に関わらず、気象的、地理的、その他物理的な変数に基づいて支払義務が生じる
金融保証契約(あるいは信用状、クレジット・デリバティブの債務不履行商品、
もしくは信用保証保険契約)(IAS39 号参照)
(g) 契約者が不利益を被るかどうかに関わらず、気象的、地理的、その他物理的な変
数に基づいて支払義務が生じる契約(一般にウェザー・デリバティブと称される。
)
(h) 契約の保有者が不利益を被るがあるかどうかにかかわらず、気象的、地理的、そ
の他物理的な変数に基づいて、元本や金利を減額支払されるのに備えるキャッ
ト・ボンド
B19. 前項に記述されているような契約が金融資産や金融負債を創出する場合、それらの契
約は IAS39 号の対象となる。何よりも、このことは、契約当事者がいわゆる預り金
会計を用いるであろうことを意味している。
(a) 契約の発行者は、受け取った対価を収益ではなく金融負債として認識する。また、
(b) 契約の保有者は、支払った対価を費用ではなく金融資産として認識する。
B20. B16 項に記述された契約から金融資産や金融負債が生じない場合には、 IAS18 号「収
益」が適用される。IAS18 号によれば、サービス提供を伴う取引の損益を、信頼性を
- 28 -
もって見積もることができる場合には、その取引の収益を、当該取引の完了段階に応
じて認識することとなる(IAS18 号 20 項)。
重要な保険リスク
B21. 当該契約から発生する保険者の正味キャッシュ・フローの現在価値に重要で不利な変
化を生じさせることが合理的に起こりうる場合のみ、またその場合に限り、保険リス
クは重要であるといえる(保険者は再保険からの回収については分離して会計処理す
るので、見込まれる再保険による回収分を考慮する前である)。保険事故の発生の可
能性が極めて低い場合、あるいは、保険事故が発生した場合のキャッシュ・フローの
現在価値が契約上のすべてのキャッシュ・フローの期待現在価値(すなわち、確率に
よる加重平均)の小さな部分しか占めていない場合でも、この条件は満たされる。
B22. 保険事故の発生が、全ての合理的に起こりうるシナリオにおいて保険者の契約上のキ
ャッシュ・フローの現在価値に僅少な変化しか生じさせない場合、保険リスクは重要
ではない。保険者は保険リスクの重要性を、財務諸表に対する重要性によってではな
くむしろ、契約毎に評価しなければならない*。したがって、契約群団全体について
重要な損失が発生する可能性がほとんどない場合で、保険リスクが重要であることも
ある。
B23. 以上の議論から、ある契約が解約時もしくは満期時の支払金額以上の死亡給付金を支
払うのであれば、追加的な死亡給付金が重要でない(すなわち、契約群団全体に照ら
してではなく当該契約に照らした判断の結果、僅少である)場合を除き、当該契約は
保険契約ということになる。同様に、生存を条件とする支払いの合計が重要でない場
合を除き、保険契約者の生存者に一定金額を支払う年金契約は保険契約となる。
B24. B21 項は、キャッシュ・フローの現在価値に言及している。この記述は、損害額およ
びその結果としての保険者による支払額は分かっているが、それらの時期が分からな
い契約を扱っている。損害が予想より早く生じる場合には、保険者は損失を被ること
になる。例えば、定額の終身保険(言いかえれば、保険期間の終了日がなく、保険契
約者が死亡した場合はいつでも定額の死亡保険金を支払う保険)である。保険契約者
が死亡することは確実であるが、死亡日は分からない。契約群団全体としては損失が
ない場合でも、個別契約に関しては、保険者は保険契約者が早期に死亡することによ
る重要な損失を被るであろう。
*
この目的のためには、同一の契約当事者に対して同時に行なわれた複数の契約(あるいは
他の形で相互連関性のある契約)は単一の契約を形成する。
- 29 -
保険リスク水準の変化
B25. ある契約が契約締結時あるいはそれ以降に保険契約の要件を満たした場合、当該契約
の全ての権利および義務が消滅、または失効するまで、当該契約は保険契約のままで
ある。ある契約が契約時に保険契約に該当しなかった場合には、発行者の正味キャッ
シュ・フローの現在価値の重要な変化が生じる可能性が合理的に起こりうるようにな
った場合に、かつその場合にのみ、事後的に保険契約として再分類しなければならな
い(B21 項参照)
。
B26. 重要な損失の発生確率もしくは現在価値が時の経過とともに増加するかもしれない
ことを発行者が契約時に予知することができる場合には、損失の期待現在価値(すな
わち、確率による加重平均)がその時点では非常に小さくても、契約は当初から保険
契約である。言いかえれば、保険リスクを重要にする事象が生じうる場合には、契約
は当初から保険契約である。
- 30 -