なぜ、今HIV感染症か? 職業感染予防も含めて

なぜ、今HIV感染症か?
職業感染予防も含めて
長崎大学病院感染制御教育センター
塚本美鈴
Q. なぜ、今HIV感染症か?
A. これまでの発表のとおりです
Q. でも、本当に受け入れ
要請がきたら?
A. 特別あつかいは、なし、で大丈夫です
こんなことでは感染しません!
洋式トイレの便座
咳・くしゃみ・汗・涙
電車の吊革や手すり
同じ皿の料理を食べたり
飲み物の回し飲み
プール
お風呂
蚊やノミに刺される
日本の医療機関・
理髪店・美容院の器具など
業務上感染する可能性がある疾患
• 血液媒介感染症
– B型肝炎、C型肝炎、HIV、HTLV-1 etc.
• 呼吸器感染症
– 結核、インフルエンザ、百日咳、etc.
• ウイルス感染症
– ノロウイルス、麻疹、風疹、水痘、
ムンプス、etc.
• 皮膚感染症
– 疥癬
標準予防策の基本的な概念
検査などで把握できる感染症は
氷山の一角!
把握している感染症
標準予防策=
スタンダードプリコーション
把握していない感染症
全ての(施設利用者・職
員など)が何らかの病原
体を持っていることを仮
定して日常的な対応を
求めたもの
・未検査
・検査の 潜伏期
・未知の病原微生物
福祉施設標準予防策の重要性が高まっています!
標準予防策 基本の4原則
その1. 手洗いの実施
その2. 使い捨て手袋の使用(個人防護具)
その3. マスク・ゴーグル・ガウンの使用
(個人防護具)
その4. 物品の個別化
標準予防策 基本の4原則
その1.手洗いの実施
いつ?
どのように?
5月5日は世界手指衛生の日
“衛生的なケアが安全なケア”~世界保健機構(WHO)
~命を救うあなたの手指衛生~
手指衛生5つの瞬間
その1:患者に触れる前
その2:清潔・無菌操作の前
その3:体液に暴露する
リスクの後
その4:患者に触れた後
その5:患者周囲の環境に触れた後
5月5日は世界手指衛生の日
“衛生的なケアが安全なケア”~世界保健機構(WHO)
~命を救うあなたの手指衛生~
手指衛生5つの瞬間
その1:患者に触れる前
患者エリアに入る前と後
ならわかりやすい!
その2:清潔・無菌操作の前
その3:体液に暴露する
リスクの後
その4:患者に触れた後
その5:患者周囲の環境に触れた後
手洗いの問題点
• 手間がかかり、いちいちできない!
– 時間がかかる
– 洗面台まで行かなければならない
• 手荒れする
• 着衣(白衣)が濡れる
• 水が冷たい
米国での手洗い遵守率 40%
手洗いとアルコールの効果の比較
手洗いの方法
普通の石鹸と流水
細菌の減少率
15秒: 1/4〜1/13
30秒: 1/60〜1/600
速乾性アルコール
30秒: 1/3000
1分: 1/10,000〜30,000
手洗いや消毒も科学。石鹸は、皮脂などを落としているだけ。
アルコール製剤には、長時間作用型の消毒薬が配合。
手指衛生の前
流水と石鹸による手洗い
前
石鹸流水後
アルコール性手指消毒剤
前
後
ベッドリネン
ベッド柵
吸引ビン
アルコールと流水石鹸の使い分け
目に見える汚れ
あ り
流水と石鹸
な し
アルコール手指消毒薬
ただし・・・
芽胞菌(クロストリジウム ディフィシル)やノロウィルスな
どは効果が劣るので要注意!!
特に下痢患者の排泄ケア後や、食事介助の前は、
流水・石鹸による手洗いが必要
流水と石鹸による手洗い手順
1.石鹸を泡立てよくこする
4.指をクロスさせ指の間
を十分に洗う
2.手の甲のしわを伸ばす
ようにこする
3.手掌に石鹸を泡立て
指先爪の間を洗う
5.親指と手掌をねじり洗い
6.手首を忘れず洗う
速乾性手指消毒剤すりこみの手順
標準予防策 基本の4原則
その2&その3 個人防護具の使用
手袋
血液、体液、障害のある皮膚(傷、湿
疹)に触れるとき→採血の時は必ず付けます
フェイス
シールド付
マスク
粘膜、粘液、汚物(オムツ交換時)に
触れる時
マスク・ゴーグル
目、鼻、口に、血液・体液などが飛び散
る可能性のあるとき
エプロン・ガウン
血液、体液、分泌物、汚物(吐物・排
泄物)などが皮膚や白衣を汚染する可
能性のあるとき
プラスチック
エプロン
標準予防策や感染経路別予防策
実施のために・・・・
手指衛生と同様に
重要です!
マスクや手袋などPPEの正しい選択と使用が重要!!
感染経路の遮断(リスクを低くする)
医療環境における職員の安全を守る
個人防護具(Personal Protective Equipment; PPE)
予防策別に必要なPPE
◎必要
○血液・体液、分泌物に汚染される可能性のある場合必要
標準
接触
飛沫
空気
○
◎
○
○
○
直接・
間接接触時
○
○
マスク
○
○
◎サージカル
◎N95
ゴーグル
○
○
○
手 袋
エプロン
防水ガウン
マスク
●脱着や交換のタイミングについての判断が困難
○
1.必要なときに着ける
血液、体液、分泌物、汚物(吐物・排泄物)などが
皮膚や白衣を汚染する可能性のあるとき 、など
2.不必要になった時点で即廃棄
防護具着用のまま、色々な物に触れない
(伝播リスク拡大)
3.患者間あるいは汚染→清潔ケアにうつる際は交換する
処置前後のパームスタンプ
処置前の手袋
吸引処置後
PPEの“汚染” と “清潔” の区域
•汚染– 前部の外側
感染病原体がいたかもしれない、体の部位、
物質、環境表面に触った、あるいは触った恐
れのあるPPEの区域
•清潔 – 内側, 背部の外側, 頭や背中のひも
•感染病原体に触ったおそれのないPPEの区域
手袋の外し方 (1)
•手首近くの縁の外側をつまむ
•手袋が裏表反対になるように、
手から脱がしてゆく
•手袋した反対の手で持つ
手袋の外し方 (2)
•残っている手袋の手首
の下に手袋していない
指を滑り込ませる
•両方の手袋のバッグを
作るようにして、内側
から脱がす
•廃棄する
ゴーグル・フェイスシールドの外し方
•イヤ/ヘッドピースを手袋
していない手でつまむ
•顔から外す
•再処理/廃棄用に指定され
た容器に入れる
ガウンの外し方
•ひもをほどく
•首と肩から脱ぎ下ろす
(プラスチックのディスポタイプ
ならば肩あたりを持って引き剥
す)
•汚染した外側を内側へとくる
くる巻いてゆく
•たたみ、まるめて一束にする
•廃棄する
マスクの外し方
•マスクのひもをつま
んではずす
•素手で表面(外側)
に触れないように注
意する
•顔から外す
•廃棄する
大切なこと・・・・
それは、
個人防護具(手袋・マスク・エプロン・
ゴーグル))をはずしたらすぐに
手指衛生!
手袋に蛍光塗料を塗ってみてみると・・・・
どうしても手の汚染は免れません
注意深く脱いでも・・・・
手袋を脱いだ後のワンプッシュを忘れずに♪
標準予防策 基本の4原則
その4 物品の個別化
歯ブラシ、くし、ブラシ、カミソリ、シェーバー
ポータブル便器・尿器(長期施設利用者の場合)
タオル・バスタオルといったリネン類など
★HIVの感染予防だけを考えれば、歯ブラシ、
くし・ブラシ、カミソリ、シェーバーだけで
十分です。
しかし、病原体はそれだけではないので、
個人専用とする物品の範囲を広げています。
HIV陽性者の洗濯物は通常の取り扱いで問題あ
りません。
針刺し事故による感染率
3の法則
B型肝炎ウィルス 20-40%
30%
C型肝炎ウィルス 1.2-10%
3%
HIVウィルス
0.1-0.4%
0.3%
曝露状況別感染のリスク
暴露状況
血液等*の付着した器材によ
る針刺し、切創
血液等*の粘膜への飛散
傷害された皮膚**への血液
等*の付着
血液等*が付着していた環境
表面と傷害された皮膚の接触
HBV
HCV
HIV
○
○
○
○
△
○
○
○
×~△ ×~△
×
×
* 血液等:血液、体液(髄液、関節液、胸水、腹水、羊水など)
** 傷害された皮膚:擦過傷、皮膚炎、あかぎれなど
標準予防策の遵守
手袋を着用しましょう!!
*もし、針をさしてしまった場合、
体内に入る血液量を減少させることができます!
福祉施設・医療施設でのインフルエンザ、
ノロウイルス胃腸炎、疥癬(かいせん)
などの感染症の集団発生
標準予防策や経路別予防策の
“破綻”
が最も考えられます
HIV陽性者の受け入れ要請がきたら~
普段通りのアセスメントで問題ありません。
・生活課題(ニーズ)の洗い出し
・病気(HIV)についての情報整理
⇒HIV感染症は他の感染症に比べて感染リスクが
きわめて低く、治療でウイルス量は検出限界以
下に抑えられていることがほとんどです。
・本人、主介護者の思い
本人の周囲で誰がHIVの事を知っているのか?
「病気を知られたくない」⇔「きちんと知ってもらい
たい」
葛藤
長崎みたいな田舎だと誰か
知り合いがいるかもしれないし・・・・
Q. 他の施設利用者やご家族に、HIV陽性者の受け入れにつ
いて説明したほうがよいですか?
福祉施設は、さまざまな疾病や障害を持つ方が利用していま
す。その方たちの個人情報を周囲に知らせていないのと同様、
説明する必要はありません。
Q. 風評被害が心配です。
受入れ実績のある福祉施設から、「施設利用者、家族、地域住
民からの風評被害があった」という報告はありません。また、
HIV陽性者の受け入れをパンフレットなどで表明している福祉
施設もありますが、利用率に特段の影響はありません。
社会福祉施設で働くみなさんへ
HIV/エイズの正しい知識~知ることから始めよう~より抜粋
Q. 出血が心配です
HIVの感染力は、他の血液を媒体にする感染症よりも極めて弱
いものです。あわてず、直接手に触れないように手袋などを着
用して対処すれば、心配はいりません。血液に触れてしまった
場合は、すぐに流水と石鹸で洗い流してください。HIVは健康
な肌からは感染しません。
Q. HIV/エイズの研修を行いたいのですが、適当な講師が見
つかりません。どうすればよいでしょうか。
長崎大学病院の私どもやHIV拠点病院の主治医、地元の保健
所、医師会に相談してみるのもよいでしょう。
夜間休日時の連絡体制も相談しておきましょう。
社会福祉施設で働くみなさんへ
HIV/エイズの正しい知識~知ることから始めよう~より抜粋、一部改訂
どちらもダウンロードできます
ご清聴ありがとうございました