Text by 松岡 聖子 チーフ・ワインコンサルタント／ Berry Bros. & Rudd [wine] ワインの話 ポートワイン（その1） 寒くなっていくこの季節には、チーズと相性がよく、体が温まる世界三大酒精強化ワインのひとつ、ポートワインを 試してみてはいかがでしょうか。砂糖を加えた甘口ワインと誤解して敬遠されている方もまだ多いので、この機会 にポートワインについてご紹介したいと思います。 ポートワインの歴史 ポートワインといえば英国といわれるほど、現在に至る ⃝★ドウロ渓谷 ポルト ポルトガル スペイン まで深いつながりがあります。17 世紀には、政治的背景 Corgo）、スペイン国境に近いドウロ・スペリオール （Douro Superior）の 3 地区に分かれています。大西 洋からの湿った風はマラン山によって遮られ、東に行くに により英国におけるフランスワインの消費が減少しました。 従い降雨量は減り、大陸性気候になっていきます。上流 これに代わるものとして、ポルトガルワインを発掘してい 部では、夏は乾燥し気温が 45 度に達することもあり日較 くことになります。ワインを自国に船で輸送する際、劣化 差も激しく、真冬はマイナス 10 度という厳しい気候条件 を防ぐための手段を考え、輸送前にブランデーを添加す です。この過酷な自然環境のもと、長い年月をかけて開 ることもありました。 墾された片岩と花崗岩の急斜面に位置する段々畑、ここ 17 世紀後半にイギリス人のワイン商が、ドウロ地区ラ から、世界に誇るポートワインが生まれます。葡萄畑の標 メゴの修道院で甘口で滑らかな口当たりの、感動的なワ 高、傾斜度、日照量、土壌、樹の間隔などすべてが厳し インに出合いました。その醸造方法は、発酵後でなく途 く管理され、畑の格付けが行われています。 中でブランデーを加えたことによってできたワインと知り、 葡萄はドウロ川上流地域で栽培されますが、ポートワ これをヒントにポートワインは生み出されたといわれてい インの取引は、河口の港ポルト市が中心です。 ポートワ ます。同時にこの頃、ポルトに英国資本のワイン輸出業 インの名前は出港地であるポルトガル第二の都市ポルト 者が設立されました。18 世紀初めには、ポルトガルとの (Porto) に由来しています。 条約が締結され、安い関税でポルトガルワインが入手で きるようになり、英国との交易は盛んになっていきます。 ドウロは 1982 年にスティルワインの原産地呼称統制法 こうしてポートワインは英国にて重要な位置を占めるように （DOP）に認定され、ポートワインだけではなく、赤ワイ なり、クリスマスの風物詩のひとつとしてポートワインとス ンにも力を注ぎ品質も向上しています。 ティルトンチーズが挙げられるほど、英国とは切り離せない また、美しいドウロ渓谷に広がる葡萄畑を見ながらの ものとなりました。 クルージングや、スペインとの国境に向けて渓谷沿いを 走る鉄道の旅、伝統あるポートワインや品質向上したドウ ポートワインの産地－ドウロ渓谷 ロワインを試飲したりなど、史跡を巡る旅を楽しむにもお 世界遺産に指定されるほどの素晴らしい景観から、観 勧めのスポットです。 光地としても注目を浴びているのがドウロ渓谷です。ポル トガル北部のドウロ渓谷での葡萄栽培は、ローマ帝国時 ご帰国時のワインのご購入、 イベン トやテイスティングなどのお問い 合わせは下記までご連絡ください。 Berry Bros. & Rudd 3 St.James’ s Street, London SW1A 1EG www.bbr.com email: [email protected] 代にまで遡ります。1756 年には世界に先立ち、公式に生 産地域の境界が定められたポートワイン産地です。ドウ ロ川はスペインを水源とし、大西洋河口のポルトまで流 れており、渓谷沿いの葡萄畑は 100km にもおよびます。 ポルトから東に約 80km 離れたところからポートワインの 葡萄畑は始まり、バイショ・コルゴ（Baixo Corgo） 、良 質のポートワイン生産の中心地であるシマ・コルゴ（Cima 世界遺産に登録されたドウロ渓谷の段々畑 Pelican Club Europe 14
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