Text by 松岡 聖子 チーフ・ワインコンサルタント/ Berry Bros. & Rudd [wine] ワインの話 チーズとワイン(その2) 4月号に掲載されたチーズ「プティ・リヴァロ」と、アルザス地方の白ワイン「リースリング」の相性が新鮮だったと の嬉しい声もいただきました。今回も引き続き、白ワインとそれに合うチーズをご紹介しましょう。 2007 Montagny Premier Cru, Maison Nicolas Potel とチーズ Coulommiers モンタニーはブルゴーニュ地方のコート・シャロネーズ 地区南部に位置しており、AOC は白ワインのみです。 コート・ドールのワインに比べると、比較的手頃な価格 で入手できます。このワインの造り手であるニコラ・ポテ ルは、偉大な醸造家であった父亡き後に、ヴォルネィの Domaine Pousse d Or を売却し、1997年にネゴシア ン* としてのビジネスを始めました。醸造や熟成を行う設 備の充分整っていない栽培者にとって、販売網を有する ネゴシアンの歴史的役割は大きく、ワイン業界を支えてき ました。しかし、ドメーヌ元詰め ( 栽培者が醸造、瓶詰 クロミエ(Coulommiers) くなってきていますが、実際は熱意のあるネゴシアンのワ 造られ、アーモンドとともに柑橘系の香り、そしてほのか インには、ドメーヌ元詰めワインに匹敵するような高品質 な樽香のする、バランスのとれたクリーミーなワインです。 まで行う ) が高く評価されてきたため、その存在感が薄 なものもあります。ポテルの場合、葡萄栽培に最適な畑 このワインには、イル・ド・フランス産の白カビタイプの の最良の区画から、低収量で樹齢の高い木の葡萄を買 チーズ、クロミエ(Coulommiers)を合わせてみまし い付けています。ポテル自身が栽培者と密に連絡を取り Montagny Premier Cru, Maison Nicolas Potel Berry Bros. & Rudd 3 St.James’ s Street, London SW1A 1EG www.bbr.com email: [email protected] た。クロミエという名前は統制されていないため、結果と 合い、管理や収穫時期の助言を行い、健全な葡萄栽培 して他の産地で様々な特徴を持つチーズに使われていま への努力を惜しみません。これにより、テロワールを最 す。この本家イル・ド・フランスのクロミエは、クリーミー 大限に生かすことができます。 でまろやかな風味を持つチーズです。ブリータイプのチー ポテルはネゴシアンのビジネスにおいては、2009年 ズですが、ブリーほど大きくないので、6、7 名でのディ に彼の名前を残したまま Maison Nicolas Potel を離 ナーの際に、そのまま食卓に置くには最適なサイズです。 した。2008年のヴィンテージからは、彼が造るワインは マンベールやブリーのように、いろいろな熟成度で楽しむ れ、Maison Roche de Bellene を新たに設 立しま ご帰国時のワインのご購入、 イベン トやテイスティングなどのお問い 合わせは下記までご連絡ください。 このワインは、プルミエ・クリュの畑からとれた葡萄で Maison Roche de Bellene として販売しています。彼 熟成期間は 2 ヵ月頃が食べ頃だといわれていますが、カ ことができます。 匂いもそれほど強くなく、 食べやすいチー は、ネゴシアンのビジネスだけでは飽き足らず、2005年 ズです。ほのかにアーモンドの香りを持ち、モンタニーと に畑を買い付け、2007年には葡萄栽培から醸造まで行う クロミエの持つ滑らかさが、絶妙な調和をみせています。 彼自身のドメーヌのワインも造り始めました。有機栽培に こだわり、ボーヌ郊外の醸造所においてもエコロジーを 徹底させています。年々畑を買い足しており、天才醸造 家ポテルの動向は今後も目が離せないでしょう。 * ネゴシアン 葡萄畑を所有せず、葡萄やワインを買い付けて、ブレンドや醸造、 熟成、瓶詰めを行い、販売する人 被害に遭う前の日本人駐在員の方からよく聞 盗まれると個人情報や大切なデータまで盗まれ くのは、 「竹澤さん、うちには盗られるような大 てしまい、事態は深刻化します。 金や高価なものはないから、泥棒に狙われませ また、百歩譲って、本当に盗るべきものが全 んよ。 」これは大きなカン違い。 く無かったとしても、外見からは「何も無い」 侵入犯は、忍び込んだ成果が50ポンドもあ とは侵入者にはわかりません。何かあると思っ 我が家を守るセキュリティとは? ればハッピーです。ブランド物のバッグ、アク て入られただけで、窓やドアが破壊され、在宅 第 86 回 セサリー類、テレビや DVD といったデジタル 時に侵入された場合には、何よりも大切な家族 家電や携帯電話など、盗品市場で換金すれば の命に危険がおよぶ可能性もあります。「うち 50ポンドくらいにはなるモノがどの家にもあ は大丈夫」という過信は禁物。一定の警戒心を ります。皆さんが 「高価ではない」 と思ってい もって正しい防犯対策を考えてください。 セキュリティの カン違い(3) ても、侵入者にとっては十分盗む価値がある、 (セコム PLC 竹澤 稔) ということを忘れないでください。パソコンを Pelican Club Europe 14
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