食塩依存性高血圧で降圧を示す 紅タデスプラウト ヒトキマーゼ抑制作用を介した新規作用機序 福岡大学 筑紫病院 循環器内科 浦田 秀則 組織レニン・アンジオテンシン系 心血管系組織自体がレニン-アンジオテンシン系の因子全てを有し、 局所でアンジオテンシンIIを産生し、これが心血管障害の原因となる 循環(古典的)R-A系 組織R-A系 アンジオテンシノーゲン アンジオテンシノーゲン レニン(?) レニン アンジオテンシンI アンジオテンシンI ACE キマーゼ アンジオテンシン変換酵素(ACE) アンジオテンシンII 高血圧 カテプシンG アンジオテンシンII ? 福岡大学 臓器障害 1 ヒト心臓(左室)ホモジネート中AngⅡ産生 各種酵素阻害薬効果 コントロール カプトプリル EDTA 衝撃的事実として ヒト心臓のAngII産生のうち、 約80%はACE非依存性であった (キマーゼ依存性) NEM SBTI PMSF 2 Urata H et al. Circ Res1990 キマーゼ阻害薬の初期対象疾患 1.心筋梗塞後心筋リモデリングや心不全抑制 Ihara 2000, Hoshino 2003, Wei 2010 2.線維化抑制が期待される病態 動脈硬化 Ihara 1999, Uehara 2000, 2002 腎硬化症 Toth 1999 不整脈 Nakashima 2000 3.糖尿病 Maeda 2010 4.高脂肪酸由来内皮機能障害 Azekoshi 2010 3 食塩付加マウス高血圧モデル開発 & キマーゼ阻害薬の効果 (TPC-806) 福岡大学 4 キマーゼ阻害剤の用量依存性降圧効果 収縮期血圧 (mmHg) 高食塩負荷(2%NaCl飲水)マウスモデル 165 高食塩水(2%NaCl飲水) HS-control 高食塩水+キマーゼ阻害剤25mg HS-CI 25mg 高食塩水+キマーゼ阻害剤50mg HS-CI 50mg 高食塩水+キマーゼ阻害剤75mg HS-CI 75mg 高食塩水+キマーゼ阻害剤100mg HS-CI 100mg 145 125 105 週 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 125 Devarajan S & Urata H Am J Physiol 2015 各種降圧薬のSBPへの効果 高食塩負荷(2%NaCl飲水)マウスモデル 165 SBP (mmHg) 高食塩水(2%NaCl飲水) (利尿剤) HS-control 高食塩水+利尿薬 (ACE阻害剤) HS-HCTZ 高食塩水+ACE阻害薬 (AⅡ拮抗剤) HS-captopril (脂質低下剤) 高食塩水+AⅡ拮抗薬 HS-losartan (Ca拮抗剤) 高食塩水+アルドステロン受容体拮抗薬 HS-EPL 高食塩水+Ca拮抗薬 HS-amlodipine NW-control 正常水のみ 145 ** 125 105 週0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 6 Devarajan S & Urata H Am J Physiol 2015 食塩負荷前後の各臓器AngⅡ産生能 (×102pg (2%,NaCl飲水3ヶ月) AⅡ/分/mg) * * *, p<0.05 7 Devarajan S & Urata H Am J Physiol 2015 背景のまとめ 1. ヒト組織でAII産生の主体はヒトキマーゼ 2. 食塩依存性高血圧マウスモデルの確立 腸管キマーゼ活性化が昇圧に関与 3. 同モデルでキマーゼ阻害薬降圧効果証明 他の降圧薬の効能は著明ではなかった 福岡大学 Devarajan S & Urata H Am J Physiol82015 キマーゼ簡易測定法の確立 Nma/Dnp 型蛍光発色基質修飾 アンジオテンシンI NO2 Nma Dnp O NO2 Asp-Arg-Val-Tyr-Tle-His-Pro-Phe -His-Lys-NH2 NH 切断 CH3 ヒトキマーゼ Emittion 355 nm Exitation 460 nm Department of Cardiovascular Diseases, Fukuoka University Chikushi Hospital 9 Ferry G & Urata H Eur J Biochem 2001 食品抽出物のヒトキマーゼ阻害活性スクリーニング 福岡県工業技術センター生物食品研究所(久留米) が県産品・未利用資源を中心に約1000食材収集 食品などを水・熱水・EtOH抽出法を規格化、 →食材ライブラリ-化 2010年からヒトキマーゼ阻害 活性食品探索に生物食品研 究食材ライブラリーを活用 キマーゼ阻害活性を有する機能性食品として 福大筑紫病院でキマーゼ阻害食材のin vitro探索 10 キマーゼ阻害活性の一次スクリーニング(in vitro) 基質 ヒトキマーゼ + 食品抽出物 阻害効果の確認 (水・熱水・EtOH) 段階希釈 (2、4、… 32倍希釈) 水、熱水抽出物原液:抽出物10mg/ml in dH2O エタノール抽出物原液:1g素材/30ml in EtOH 50%以上の 阻害活性を持つもの 抽出物 水 熱水 エタノール スクリーニング数 782 782 928 4倍希釈 117(15.0%) 148(18.9%) 148(15.9%) 32倍希釈 27(3.5%) 16(2.0%) 7(0.8%) ( )内は、各抽出物スクリーニングサンプル中に占める割合 11 キマーゼ阻害活性の一次スクリーニング(in vitro) 抽出物の阻害効果(抜粋) 100 EtOH Water 60 40 20 ※ 32倍希釈したサンプルの阻害効果 水、熱水抽出物原液:抽出物10mg/ml dH2O エタノール抽出物原液 :1g素材/30ml EtOH サンプル 福岡大学 J I H G E D C 紅タデ A 0 ブルー K ベリ… 阻害率(%) 80 12 紅タデスプラウト 福岡県の特産品の(全国 の約3/4は福岡県朝倉 産)「紅たで」は香辛料とし て薬味や刺身のつまとして 食され、「たで酢」としても 川魚の塩焼きなどに使用 されている。 食経験があり、基本的な安全性は確認されている。 13 “タデスプラウト”含有フラボノイド ヒペロシド 37.8% イソケルシトリン 3.3% イデイン 7.4% ルチン 1.1% ケルシトリン 7.3% ケルセチン 12.2% 14 タデ含有キマーゼ阻害フラボノイド ルチン ルチン O-Glc-Rha O-Gal イデイン ケルセチン ヒペロシド O-Gal イソケルシトリン O-Glc イソケルシトリン ケルシトリン O-Rha ケルシトリン Gal : ガラクトース Glc : グルコース 15 Rha : ラムノース 各種食品のヒペロシド含有量 植物名 対タデスプラウト ヒペロシド含量 ヒペロシド比 タデスプラウト 15.09 mg/g 成長タデ(葉) 2.22 mg/g - 6.7倍 オトギリソウ 1.73 mg/g 8.7倍 ラフマ 1.47 mg/g サンザシ 0.03 mg/g 10.2倍 503.0倍 16 食塩依存性高血圧マウスの収縮期血圧 経口タデ乾燥粉末投与 用量効果検定 ・500,250mg/kg群2週目以降有意 ・125mg/kg群では3週目以降有意 ・62.5mg/kg群では有意差なし 経口ヒペロシド投与 用量効果検定 ・20,10mg/kg群では1週目以降有意差 ・5mg/kg群では2週目以降有意 ・2.5mg/kg群では1~8週目で有意差なし Devarajan S & Urata H 2015 17 家庭早朝血圧 収縮期 140 mmH g 130 (n=11,M:F=8:3) 131 129 130 127 P=0.04 126 P=0.02 120 110 プラセボ タデスプラウト 200mg タデスプラウト 400mg タデスプラウト 800mg 血圧値はデータ自動送信機能付き血圧計にて測定 (オムロン 自動血圧計 HEM-7251G) タデスプラウト 2000mg 18 浦田 2015 1日推定食塩摂取量(2番スポット尿法) 全体 12.4±3.6g/日 18.1g以上 (4.7%) 6g未満 (1.2%) 6.1g~8g (5.8%) 18.1g以上 (6.8%) 6g未満 (0%) 6.1g~8g 16.1g~18g (13.6%) 14.1g~16g (11.4%) 16.1g~18g (14%) 8.1g~10g (18.6%) (2.3%) 男性(目標10g以下) 13.0±3.2g/日 8.1g~10g (18.2%) 10.1g~12g (20.5%) 12.1g~14g (27.3%) 14.1g~16g (14%) 12.1g~14g (22.1%) 10.1g~12g (25.6%) 女性(目標8g以下) 11.9±3.9g/日 福岡大学 18.1g以上 (2.4%) 16.1g~18g (7.1%) 14.1g~16g (16.7%) 12.1g~14g (14.3%) 6g未満 (2.4%) 6.1g~8g (9.5%) 8.1g~10g (19.0%) 10.1g~12g (28.6%) 19 (A群)プラセボ群 (B群)ポリゴナム400mg (C群)ポリゴナム800mg 前観察期 (2週間) -2W 受診① 0W 受診⑤ 食品開始 4W 8W 受診③ 受診④ 後観察期 (2週間) 12W 受診⑤ 食品終了 14W 受診⑤ 家庭血圧測定(毎日) *家庭血圧は本試験用の血圧計を用いて ①起床後1時間以内(排尿後、朝食前)に1~2分間の安静後2回測定する。 ②就寝前に1~2分安静後2回測定する。 *受診日は絶食で来院して下さい(水・白湯はOK) *お薬手帳をお持ちの方は、受診時に持ってきて下さい。 *降圧薬、降圧作用がある健康食品は期間中禁止です。 *試験前より使用している医薬品、健康食品は期間中変更しない限り継続可能です。 A群、B群、C群、 ●ポリゴナム400mg ●ポリゴナム800mg ●プラセボ(偽薬)800mg のいずれかです。 試験終了時まで、参加者・医師ともに誰がどの 群を服用しているか分かりません。 プラセボ(偽薬)を服用された方には試験終了時に ポリゴナムサプリメント3ヶ月分を差し上げます。 20 前向き2重盲検対照比較試験(家庭収縮期) 早朝 家庭収縮期血圧 朝の家庭収縮期血圧は、タデ 400mg摂取後の6、7、11で統計 的有意差あり。 その他の週も、タデ400mg摂取 の方が低値を示した。 142→136, -6 mmHg 前 間 2 週 12週間の血圧観察 後 間 2 週 就寝前 家庭収縮期血圧 136→125, -11 mmHg 夜の家庭収縮期血圧は、タデ 400mg摂取後の1-3,6,7,9-13週 目で統計的有意差あり。 その他の週も、タデ400mg摂取 の方が低値を示した。 前 間 2 週 12週間の血圧観察 後 間 2 週 21 前向き2重盲検対照比較試験(家庭拡張期) 早朝 家庭拡張期血圧 朝の家庭拡張期血圧は、タデ 400mg摂取後に統計的有意差が 確認されなかった。 しかし平均値は、タデ400mg摂 取の方が低値を示した。 89→86, -3 mmHg 前 間 2 週 12週間の血圧観察 後 間 2 週 就寝前 家庭拡張期血圧 80→77, -3 mmHg 夜の家庭拡張期血圧は、タデ 400mg摂取後の全ての週で統計 的有意差が確認された。 前 間 2 週 12週間の血圧観察 後 間 2 週 22 前向き2重盲検対照比較試験(家庭心拍数) 早朝 家庭心拍数 前 間 2 週 12週間の心拍観察 夜の家庭心拍数は、タデ400mg 摂取後の全ての週で統計的有 意差が確認されなかった。 しかし平均値は、タデ400mg摂 取の方が低値を示した。 朝の家庭心拍数は、タデ400mg 摂取後の全ての週で統計的有 意差が確認されなかった。 しかし平均値は、タデ400mg摂 取の方が低値を示した。 後 間 2 週 就寝前 家庭心拍数 前 間 2 週 12週間の心拍観察 後 間 2 週 23 食塩・キマーゼ仮説 食塩過剰摂取 腸管キマーゼ活性化 ソルト・キマーゼ系の提唱 骨格筋キマーゼ活性化 高血圧 皮膚キマーゼ活性化 AⅡ関与? アルドステロン関与? 24 交感神経関与? 福岡大学 25 ま と め 1.ヒトキマーゼ阻害作用を介す紅タデスプラウトの健康補助 降圧食品の新規開発 2.既存の健康降圧食品と異なる新規機序 3.食塩過多摂取血圧軽度上昇症例(推定約4000万人)で 有効性を示す 4.紅タデスプラウト含有フラボノイドは創薬シーズになり得る 福岡大学 26 お問い合わせ先 福岡大学 研究推進部 担当コーディネーター 産学官連携センタ― 芳賀 慶一郎 TEL 092-871-6631(内線 2809) FAX 092-866-2308 e-mail [email protected] 27
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