放蕩息子のささやき

逗子聖ペテロ教会『いわお』70 号
主教
牧師
発行
日本聖公会横浜教区逗子聖ペテロ教会
ローレンス 三鍋裕
司祭イグナシオ 入江修
〒249-0006 逗子市逗子 6-5-2
Tel/Fax 046-871-2764
http://nskk.org/yokohama/zushi/
日本聖公会横浜教区逗子ペテロ教会
いわお編集委員会
2010 年 1 月 31 日発行
放蕩息子のささやき
司祭
イグナシオ
教区の人事異動の公示が出され、私
も7年の在任期間を経て、次の任地へ
向かうことになった。まだ引越しまで
丸々2ヶ月残されているが、今年の復
活祭は新しい任地で迎えることになる
ので、7年間の至らなさをここでまと
めて、深くお詫びしておきたいと思う。
7年前(2003年)の4月、私た
ちは7人でこの逗子に来た。そしてこ
の7年で、亘は学生生活のため仙台に
行き、充は永遠の住まいへと旅立って
しまった。ここには、充の最期の思い
出がたくさん残されている。
いろいろな場面が断片的に思い起こ
され、離れ難いという気持ちとここを
離れたいという気持ちが錯綜する。
この家、この部屋、そしてこの道を
学校へ、そして仕事へ向かい、また帰
って来たのであり、同じ時間と空間を
共に生きた証がここにはある。
病気が診断された日も、そして天に
旅立った日も、蝉時雨の季節だったこ
とが、今改めて思い起こされる。
しかし、彼は生きている。少なくと
も彼と出会っ
た人たちの中
に彼は生き続
け、語り続け
ている。
子どもの園
1
入江修
のJ君とD君を我が家で預かる時も、
私の中で彼が応えていた。
「俺が面倒見
てやるから、連れて来なよ」と。
そして1月11日の今年の成人式の
日、中学の担任で散々彼が困らせたK
先生が、成人式のお祝いの大きな花束
を持って訪ねて来てくださった。夕方
には、式を終えた同級生たちがビール
持参で来て、いっしょに祝杯をあげて
くれた。それは、私たち家族にとって、
とても嬉しいことだった。
そんな彼の生きた証の最期の場所
がここであり、私たちがここから次の
任地に向かうことは、私たちの心の新
たな出発でもある。
しかし、ここを離れたとしても、大
丈夫、彼は彼と出会った全ての人の中
で、今も生きているし、これからも生
き続けるだろう。
限りあるこの世にいる私たちにとっ
て、主の御許へと召された人の生きて
いるのを感じるということは、こうい
うことなのだろうか。
「わたしは復活であり、命である。
わたしを信じる者は、死んでも生きる。
生きていてわたしを信じる者はだれも、
決して死ぬことはない」
(ヨハネ11:
25-26)-この御言葉を、今改め
て思い巡らす。