オナーズプログラムから得た経験 早稲田大学 博士後期課程 2 年 顔写真 図師 知文 私はこれまで約 1 年 5 ヶ月の間、オナーズプログラムの学生として、プログラムが主催 するさまざまな正課外の行事に参加させていただきました。プログラムでは、連携コーデ ィネータや独立行政法人に所属する研究者方との共同研究や、世界トップクラスの教授陣 によるサマーレクチャー、4 ヶ月の海外武者修行研修、国際シンポジウムへの参加など、多 種多様な活動に取り組ませていただきました。このような、1 つの研究室に在籍していたの では得ることが難しい貴重な経験を積めたことが、本プログラムに参加して得られた私に とって最も価値のあることだったと考えております。 オナーズプログラムが提供する共鳴場、産・学・独の連携と協働による研究指導では、 異なるバックグラウンドをもつ研究者の方々と研究計画・成果について議論をさせていた だいたことにより、研究課題を俯瞰的に捉える視点をもつことができました。例えば、私 は計算機実験を主たる研究手法としておりますが、得られた計算結果に対して、その計算 条件は実験で現実的に達成できるものなのか、またその計算結果はどのように実験研究に フィードバックできるのか、などの意見交換をさせていただき、ナノエレクトロニクス分 野における自らの研究課題の意義を明確にすることができました。更に本プログラムが定 期的に主催する国際シンポジウムで、研究発表をし、民間企業の方々と議論する機会もい ただきました。これにより、研究成果を産業へどのように展開できるかなど、オナーズプ ログラムに参加するまでは考えたことがない多角的で実践的な研究アプローチ方法を知る ことができました。 私はこれまで 2 回ほどオナーズプログラムが主催する夏季集中講義に参加させていただ きました。そこでは、ナノエレクトロニクス分野において世界の第一線で活躍されている 教授陣の講義を当地に近いかたちで受講させていただきました。英語による世界トップク ラスの講義を受講するという経験は、海外の講義内容だけではなく、国際的研究者になる ために必要な素養ともいうべきものを学ばせていただく機会ともなりました。 現在、私はオナーズプログラムが提供する留学制度を利用し、4 ヶ月の海外武者修行研修 としてフランスのグルノーブルに滞在しております。グルノーブルの生活では、留学生と して英語講義の受講や研究実習、海外でのアパート生活という、本プログラムに参加しな ければ経験することができなかった貴重な体験をさせていただいております。研究実習で は、MINATEC に所属する先生に師事し、専門科目のご指導をいただいおります。英語で のコミュニケーションは私にとっては苦労が多く、意思疎通がうまくいかないときなどは 歯痒い思いばかりしておりますが、専門科目を通して教授の方と気持ちが通ったときなど は、言葉に表し難い喜びを感じております。このような異国での日常生活は、不慣れなこ とばかりで戸惑いの連続ではありますが、これまでの日本での生活では感じることができ なかったグローバルな価値観、国際的な視野を得られた気がします。 2 年も満たない期間にこのように数多くの経験を積んできたことは、私の研究姿勢だけで はなく生活の価値観をも変え、今後の研究生活の糧になると確信しております。得られた 経験を活かし、オナーズプログラムの目的の1つでもある、次世代のナノエレクトロニク スをリードする国際的な人材になれればと考えております。 【業績リスト】 (1) 学術雑誌論文 1. T. Zushi, Y. Kamakura, K. Taniguchi, I. Ohdomari, and T. Watanabe, “Molecular Dynamics Simulation of Heat Transport in Silicon Nano-structures Covered with Oxide Films”, Jpn. J. Appl. Phys., vol. 49, 04DN08-4, 2010. 2. T. Zushi, Y. Kamakura, K. Taniguchi, I. Ohdomari, and T. Watanabe, “Molecular Dynamics Simulation on Longitudinal Optical Phonon Mode Decay and Heat Transport in a Silicon Nano-Structure Covered with Oxide Films”, Jpn. J. Appl. Phys., vol. 50, 010102, 2011. (2) 国際会議における発表 1. T. Zushi, Y. Kamakura, K. Taniguchi, I. Ohdomari, and T. Watanabe, "Simulation on the Heat Transport in a Silicon Nano-structure Covered with Oxide Films", International Conference on Solid State Devices and Materials (SSDM), Sendai, Japan, Oct. 7-9, 2009. 2. T. Zushi, Y. Kamakura, K. Taniguchi, I. Ohdomari, and T. Watanabe, “Molecular Dynamics Simulation of LO Phonon Mode Decay in Si Nano-Structures Covered with Oxide Films”, International Conference on Simulation of Semiconductor Processes and Devices (SISPAD), Bologna, Italy, Sep. 6-8, 2010. 3. T. Zushi, K. Ohmori, K. Yamada, and T. Watanabe, “Molecular Dynamics Simulation of Heat Transport in Silicon Fin Structures”, International Conference on Simulation of Semiconductor Processes and Devices (SISPAD), Denver, USA, 2012. 4. H. Minari, T. Zushi, T. Watanabe, Y. Kamakura, S. Uno, and N. Mori, “Impact of Oxidation Induced Atomic Disorder in Narrow Si Nanowires on Transistor Performance”, Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers, Kyoto, pp. 122-123, 2011. 5. T. Watanabe, T. Zushi, M. Tomita, R. Kuriyama, N. Aoki, and T. Kamioka, “Phonon Dispersion in <100> Si Nanowire Covered with SiO2 Film Calculated by Molecular Dynamics Simulation”, The Electrochemical Society (ECS), Honolulu, USA, Oct. 7- 12, 2012. 6. N. Mori, G. Mil’nikov, H. Minari, Y. Kamakura, T. Zushi, T. Watanabe, M. Uematsu, and K. Itoh, “Nano-Device Simulation from an Atomistic View”, International Electron Devices Meeting (IEDM), Washington DC, USA, Dec. 9 - 11,2013. (3) 国内学会における発表 1. 図師知文, 久木田健太郎, 鎌倉良成, 谷口研二, 渡邉孝信, 大泊巌, “酸化膜に覆われたシリコ ンナノ構造中の熱輸送シミュレーション”, 春季第 56 回応用物理学関連連合講演会, 筑波大学, つくば市, 茨城県, 2009 年 3 月. 2. 図師知文, 鎌倉良成, 谷口研二, 大泊巌, 渡邉孝信, “分子動力学法によるシリコンナノ構造中 の熱輸送シミュレーション”, 秋季第 70 回応用物理学会学術講演会, 富山大学, 富山市, 富山県, 2009 年 9 月. 3. 図師知文, 鎌倉良成, 谷口研二, 大泊巌, 渡邉孝信, “Siナノ構造中のLOフォノン緩和に関する 分子動力学シミュレーション”, 秋季第 71 回応用物理学会学術講演会, 長崎大学, 長崎市, 長 崎県, 2010 年 9 月. 4. 図師知文, 大毛利健治, 山田啓作, 渡邉孝信, “分子動力学法による立体構造シリコン中の熱輸 送シミュレーション”, 秋季第 73 回応用物理学会学術講演会, 愛媛・松山大学, 松山市, 愛媛県, 2012 年 9 月. 5. 図師知文, 大毛利健治, 山田啓作, 渡邉孝信, “立体構造シリコン中の熱輸送に関する分子動力 学シミュレーション”, シリコン材料・デバイス研究会 (SDM), 東京, 2012 年 11 月.
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