建設工事に関係する機械と安全・衛生について(PDF

No.
21
Safety news
編集・発行/レンタルのニッケン
安全・技術部
発行日/2003年 9月 1日
建設工事に関係する機械と
安全・衛生について
平成15年度 全国労働衛生週間のスローガンが「見つめて下さい心とからだ
見なおしましょう職場環境」となったことをふまえて、準備期間にあたる9月
の今号は、建設における生産活動に多く係わる機械を通して、安全・衛生と注
意点などを扱うことに致しました。
(各基準をクリアしたことを示すステッカー)
建設工事現場において、作業服が雨
でずぶ濡れの状態で溶接作業を行っ
ていた。同僚が気が付いた時には被
災者が足場の上に倒れ、右手付近に
溶接棒が取り付けられたままの溶接
棒ホルダーが転がっていた。作業服
が水に濡れており、革手袋や作業服
の抵抗が非常に小さくなっており、
溶接棒が左手に触れた瞬間、被災者
の身体に電流が流れ感電死亡したも
のと考えられる。
点検修理のため、幅約35cmの狭い場
所にて溶接作業中、火花が被災者の
作業服に燃え移り、被災者が火傷を
し死亡した。被災者はヘルメット、防
塵マスク、綿製の作業服、革製の腕カ
バー、革手袋、地下足袋を着用してい
たが、革製の前掛けや足カバー、安全
靴等を着用していなかった。
(中災防「アーク溶接等作業の安全」による)
建設の生産現場における機械は、一定の場所での恒常的なものでなく、多くは動力を
用いて、容易に移動が可能である、といった特性を持っております。
全 国 労 働 衛 生 週 間 の 準 備 期 間 中 に 、 事 業 場 で 実 施 す る 事 項 に あ げ ら れ て い る 中 の 、 騒 音、
振動、粉じん、排ガス等に関する作業環境管理の推進について、具体的にアーク溶接作
業があげられており、動力を用いたエンジン溶接機を扱って、建設機械全般の安全・衛
生につなげたいとし、目的に向いたく思います。
エンジン溶接機
特徴
3
直流アーク溶接法の採用により、電撃の心配が少なく、
電撃防止装置をつけなくとも安心して使用できる。
直流アーク溶接機と交流アーク溶接機の特徴の比較
項
目
直流アーク溶接機
電撃の危険性
1
主にディーゼルエンジンを動力源
とし、商用電源が不用であり、設置場
所への搬入、そこからの搬出が容易
である(可搬性に優れる)。一般に交
流の補助電源を持っており、各種の
電動工具の使用など、大型機ではエ
ンジン発電機としても使用できる。
2
アークの安定性
・商用電源を引くための手続き、工事、基
本料金が不用。
・軽油を燃料とし、低燃費。さらにスロー
ダウン機構の採用により、無負荷時の燃
料・オイルの消費量の節減と、スローダ
ウン運転時は、排ガス、騒音の発生がお
さえられ、環境改善にも有効。トータル
ランニングコストが割安である。
良
好
い
やや劣る
可能(棒プラス、棒マイナス)
磁気吹き現象
起こりやすい
あまり起こらない
必要な配電設備の大きさ
小さい
大きい
複
簡
単
簡
単
安
価
構
造
保
守
価
格
雑
やや面倒
高
価
不可能
中災防「アーク溶接等作業の安全」より
平坦で地盤の安定した場所を選ぶ。
.不安定な場所では「振動」の発生原
因となり、
ボルト・ナットの緩み、
配
線外れ、
断線や燃料漏れなど・危険!
資 格
多
極性の選択
設置
設置時の
交流アーク溶接機
少ない
点検・整備可能な十分な広さがあり、 風通しの良い場所を選び、排気ガ
ゴミやチリ、湿気が少なく、付近
スがこもるような場所を避け、室
に引火物、爆発物、可燃物がない
内では換気に注意する。
こと。
防音型の機種については機械の
扉を閉めて使用する。
接地(アース)について、次の作業は電気工事士免許取得者によります。接地線を一般電気工作物(出力10kw未満)
及び自家用電気工作物(発電電圧30v以上)に取り付け、接地線相互若しくは接地線と接地極とを接続し、又は接地
極を地面に埋設する作業。
運転前の準備と作業開始前点検
エンジン関係
漏電遮断器の作動の確認
冷却水、燃料、エンジンオイルの量。
バッテリ、ファンベルトなど一般の
エンジン搭載機械に準ずる。
テストボタンにより、
正常に作動することを
確認する。
(安衛法 技術
指針第3号)
溶接棒ホルダーの絶縁部に
損傷はないか。
溶接ケーブルは溶接電流と長さから
適正ケーブルを選定し、損傷のないこ
とを確認し、溶接機との接続には必ず
「圧着端子」を用いる。
災害防止と服装および保護具
服装
溶接用保護面、
保護眼鏡はよいか。
溶接用革製保護手袋、腕カバー、 通気、
換気について、
必要
高所作業を行なう場合、
前掛け、足カバーなどはよいか。 な換気ファンなどの準備。 安全帯はよいか。
皮膚は出ていないか。湿って
いないか。履物は適正か。保
護帽はよいか。
強烈な光線には紫外線が含
まれる。
紫外線で皮膚が焼ける。スパ
ッタやスラグが飛んで火傷
をする。
Co2、Co,Noxなどの発生がある。
保護マスクの準備はよいか。
アーク溶接機を用いて行なう
溶接、溶断等の業務につくには、特別教育を必要と致します。
(労安衛則第36条3)
エンジン溶接機を使ってアーク溶接作業を行なうにあたっては、電気に関する知識、規則をふまえた実践。アーク溶接の特性に対応する安全・衛
生上の保護具などのほか、直流アーク溶接機の安全性の確認、大型機ではエンジン発電機としても使用できるといったことも確認し、能力など確
認の上、有効に利用致しましょう。
建設工事に係わる動力を用いる機械で、
騒音、
振動、
排気ガスなどの基準が示されるものについて
エンジン溶接機は可搬性に優れ、屋内、屋外などの工事に幅広く使用されておりますが、溶接機であるが故での使用上の注
意点、規制が多くあり、機械をとうして、安全・衛生の方向を確認するのに適当と考えましたが、エンジンを搭載する他の建
設機械についても、騒音、排気ガスなどの基準、表示など確認致します。
騒音・振動について
国土交通省の資料をみると、平成12年、建設工事に起因する騒音に関する苦
情件数が全体の1/4強、振動については全体の1/2強となっており、それぞれ
の発生をできる限り防止することから、平成9年10月1日「低騒音型・低振動型
建設機械の指定に関する規程」を施行し、従来の「低騒音型建設機械」の指定基準
を全面改正され、騒音の測定値は、音源(機械)から発生するパワーレベルとされ
ました。表は各機械ごとの基準値です。
人が通常の生活をする領域で、いろいろな音を感じています。音には心良いも
のもありますが、やりきれないといった不快な騒音もあり 、基準値を踏まえて
機械の選定にあたり、更に作業場と周辺を考慮して臨む配慮が必要と感じます。
種
諸
バイブロハンマー
バックホー
種
ブルドーザー
バックホー
ドラグラインクラムシェル
トラクターショベル
振動基準値
機
騒音基準値
機
元
基準値(dB)
最大起振力
245kN(25tf)以上
70
最大起振力
245kN(25tf)未満
65
標準バケット山積(平積)容量
0.50(0.4)m3以上
55
クローラクレーン
トラッククレーン
ホイールクレーン
バイブロハンマー
油圧式杭抜機
油圧式鋼管圧入・引抜機
油圧式杭圧入・引抜機
アースオーガー
身近にある音[dB]
0
10
20
両
耳
で
聞
こ
え
る
限
界
30
さ郊
さ外
やの
き深
声夜
40
50
60
70
80
こ
お
ろ
ぎ
の
鳴
声
静
か
な
事
務
所
ふ
つ
う
の
会
話
音
騒
々
し
い
事
務
所
1m
電
車
の
中
90 100 110 120 130 140
電
車
の
通
る
ガ
ー
ド
下
非
常
に
う
る
さ
い
工
場
耳
が
痛
く
な
る
アースドリル
削岩機
ロードローラー、
タイヤローラー、
振動ローラー
コンクリートポンプ(車)
騒音が身体にあたえる影響
甲状腺ホルモンの
分泌促進
オールケーシング掘削機
コンクリート圧砕機
瞳孔の拡大
アスファルトフィニッシャー
胃腸のぜん動
運動への影響
コンクリートカッター
どうき
空気圧縮機
筋肉の緊張
アドレナリンの分泌促進
血管の収縮
副腎皮質ホルモンの分泌促進
発電機
機関出力
(kW)
P<55
55≦P<103
103≦P
P<55
55≦P<103
103≦P<206
206≦P
P<55
55≦P<103
103≦P<206
206≦P
P<55
55≦P<103
103≦P
P<55
55≦P<103
103≦P<206
206≦P
P<55
55≦P<103
103≦P
P<55
55≦P<103
103≦P
P<55
55≦P<103
103≦P<206
206≦P
P<55
55≦P<103
103≦P
P<55
55≦P
P<55
55≦P<103
103≦P
P<55
55≦P<103
103≦P<206
206≦P
P<55
55≦P<103
103≦P
P<55
55≦P
P<55
55≦P
騒音基準値
(dB)
102
105
105
99
104
106
106
100
104
107
107
102
104
107
100
103
107
107
107
98
102
104
100
104
107
100
104
105
107
100
104
107
106
101
104
100
103
107
99
103
106
107
101
105
107
106
101
105
98
102
上表の数値から6を減じて得た値を下回る機械には
「超低騒音型」建設機械の標識を示すことができる。
排出ガスについて
建設機械が年間に排出するNox(窒素酸化物)の総量は、自動車など移動排出源排出総量の15%を占めているということです。
(国土交通省資料
より)建設機械から排出されるNox(窒素酸化物)、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、PM(粒子状物質)、黒煙を削減することにより、環境の改善を
はかることを目的に、平成3年に「建設機械に関する技術指針」が制定され、そのなかで建設機械の排出ガス基準値(第1次基準値)が定められ、平
成13年からは第2次基準値による指定も開始されました。
第2次基準値ステッカー
排出ガス第2次基準値
出力区分
対象物質
HC
Nox
CO
PM
(単位)
(g/kW・h)
(g/kW・h)
(g/kW・h)(g/kW・h)
黒煙
(%)
8〜19kW未満
1.5
9.0
5.0
0.8
40
19〜37kW未満
1.5
8.0
5.0
0.8
40
37〜75kW未満
1.3
7.0
5.0
0.4
40
75〜130kW未満
1.0
6.0
5.0
0.3
40
130〜560kW未満
1.0
6.0
3.5
0.2
40
※HC、Nox、CO、PMの測定方法、出力は、日本工業規格JIS B 8008「往復動内燃焼機関−排気
排出物測定−」による。
※黒煙の測定法法は(社)日本建設機械化協会規格 JCMAS T 004ー1995「建設機械用ディーゼ
ルエンジン−排出ガス測定方法」による。
※発動発電機専用エンジンの試験サイクルは、別に定める。
危険物の「指定数量」について
消防法で「危険物」と定義され、ある程度まとまった場合に、危険性がでてくることから、消防法上、危険性について、規制する必要があるレベル
となる量を「指定数量」といい、下表のようになり、容器、保管場所、届け出、危険物取扱いに関する資格など、必要に応じた対応がいります。
ディーゼルエンジンの燃料である軽油をみると、1000 が「指定数量」となり、その1/5(200 )以上、1000 未満の保管でも、届出の必要が
あります。200 未満の保管には拘束はなく、
容器は規格に合った材質のポリタンクで可です。
指定数量
種
類
品
危険物の指定数量と危険物申請(届出)の手続き
名
指定数量
第1石油類(ガソリン)
指定数量
申請(届出)の手続き
消防法第11条
火災予防条例
準則第46条
1,000
第3石油類(重油・廃油)
2,000
指定数量の1/5以上
指定数量未満
少量危険物貯蔵取扱届出書
第4石油類(ギャー油・シリンダー油)
6,000
指定数量の1/5未満
届出は要しない
ー
21
危険物貯蔵所(取扱所)設置許可申請書
第2石油類(軽油・灯油)
の
根拠条文
指定数量
No.
第4種
200
発電ウェルダー(エンジン溶接機) 2人用
1人用
スローダウン機構
スローダウン回転[2100min
(rpm)]で単相100V・3kVAの良質
電気を供給します。
超低騒音
夜間や市街地でも使用できる防音型です。
アーク音も抑えています。
低公害の排ガス
排出ガスは第2次基準値内で低公害です。
(作業場の換気には十分注意して下さい。)
1人用の主な仕様
発電
溶接
※写真は2人用
直流溶接出力
定格回転数: 3000rpm 3600rpm
定 格 出 力 : 7.9kw
8.74kw
定格電流/電圧:
260A/30.4V280A/31.2V
電 流 範 囲 : 60〜280A 60〜300A
定格使用率: 50%
50%
地 下・ピ ッ ト・機 械 室 等 の 狭 い 作 業 現 場 、リ ニ ュ ー ア ル 、新 築 工 事 で の 環 境 対 策 に 最 適 で す 。
溶接煙除去装置
ジェットヒューム
ケムトリ君
吸引性の高いブロワーを2基
0.1ミクロン以上の超微粒子
搭載し、作業状態にあわせ強
を99.9%以上捕獲する高性能
弱運転が可能な省エネ型です。
です。
主な仕様
処理風量:最大240m3/h
静
圧:最大18000Pa
電
源:単相100v
※各種消耗品は別途販売となります。
あとがき 9月は全国労働衛生週間の準備期間にあたり、可搬性に優れ
た建設機械の中で、排出ガス、騒音などといった衛生環境に大い
に係わりある、エンジン発電機を抽出して扱い、全般の建設機械にも思いを広げてい
ただきたいと願いつつ取り上げました。音、光、ガス、粉じんなどといったものから、電
ご意見ご要望はeメールをご活用下さい。
●e-mail:[email protected]
気、燃料などといったものまで、幅広い知識等確認し、作業開始前の点検を行ない、作
ホームページでも最新情報を
お届けしています。是非ご覧下さい。
業計画により、作業にあたっては「指差呼称」をもってあたるなど、基本が鮮明に浮か
http://www.rental.co.jp
びました。9月は台風も多く、感電などにも注意され、快適な生活の継続をご祈念申し
発行日/2003年 9月1日
主な仕様
処理風量:最大300m3/h
静
圧:最大18100Pa
電
源:単相100v
安全・技術部
る
で発生す
溶接作業
ムを
接ヒュー
溶
な
害
有
ます!
吸い取り
ン
グ
ン
グ
編集・発行/レンタルのニッケン
出力10kw未満 アース棒
主任技術者不要
付き
2人用の主な仕様
直流溶接出力
定格回転数: 3000rpm 3600rpm
定 格 出 力 : 7.5kw
8.32kw
定格電流/電圧:
250A/30.0V270A/30.8V
電 流 範 囲 : 30〜280A 30〜300A
定格使用率: 50%
60%
上げ、変わらぬご指導をお願い申し上げます。
M