地中熱利用のための地盤条件の抽出と熱及び 水力による独立電源型

日本大学文理学部自然科学研究所研究紀要
No.49(2014)pp.155 − 162
地中熱利用のための地盤条件の抽出と熱及び
水力による独立電源型システムの開発
竹村 貴人*・中里 勝芳**・田島 丈雅***・高野 洋一***
Extraction of Geological Conditions for Ground Heat Utilization and the Development of
an Independent Source System Utilizing Heat and Water Power
Takato TAKEMURA *, Katsuyohi NAKAZATO **, Takemasa TAJIMA *** and Youichi TAKANO ***
(Received November 16, 2013)
In recent years, the Ground Source Heat Pump (GSHP) system and the groundwater storage system (GSS), which
stores pumped groundwater in a heat storage tank and extracts thermal energy, have introduce as a way to reduce carbon
dioxide, counter heat island problems, and promote energy conservation. The most important advantage of using a GSHP
lies in the significant reduction in electricity (about 40%) compared to conventional air conditioning which relies on air
heat sources. If the electricity necessary to operate the GSHP can be supplied from an independent source, air conditioning (cooling and heating) can be provided without using existing electric power transmission networks.
While sunlight is viewed as an appropriate source for electric power supply in metropolitan areas, supplying electric
power is also believed to be feasible by using small water power generators with irrigation canals in the suburbs, such as
in agricultural fields. The ultimate objective of this study was to obtain basic knowledge in order to develop an independent source-based air conditioning system based on the integration of a GSHP and a small water power generator. Then,
we studied the following two topics: 1) Evaluation of the potential used to determine whether a ground heat source can be
introduced and utilized effectively in a given region and 2) Development of the water-flow power generator based on lift
force to examine the feasibility of electric power supply by the small water power generator as one way to operate an independent source-based GSHP. Our results indicate that we can estimate performance of GSHP by using existing boring
data based on local government documents at the stage of GSHP introduction plan. This study also demonstrates that the
output of the small water power generator can be increased by increasing the number of blades in the system. In addition,
this study shows that, theoretically, the output can exceed 1kW,which is enough power to control an area of 30-50 square
meters, by increasing the area of the blades.
Keywords: Ground source heat pump, small water power generator, independent system
ヒートポンプシステムは,特に海外において積極的に導
1 .はじめに
入されているが,国内ではその導入事例は海外ほど多く
近年,二酸化炭素削減,ヒートアイランド対策や省エ
はないのが現状である(内藤,2012)
。しかしながら,地
ネルギーの促進として,地中熱利用のヒートポンプ
中熱の利用は,エネルギー基本計画に再生エネルギーと
(GSHP; Ground Source Heat Pump)システムや汲み上げ
して取り上げられたことから,今後,国内においても積
た地下水を蓄熱槽に貯蔵して熱エネルギーを取り出すシ
極的に導入されていくことが想定されている。
ステム(GSS;Groundwater Storage System)の実用化・
地中熱ヒートポンプは地中にある熱,すなわち地盤
導入が急速に進んでいる。このような地中熱を利用した
(固相,液相と気相)の温度が一年を通じて安定であるこ
*
**
***
日本大学文理学部地球システム科学科:
〒 156-8550 東京都世田谷区桜上水 3-25-40
日本大学文理学部物理生命システム科学科:
〒 156-8550 東京都世田谷区桜上水 3-25-40
日本大学大学院総合基礎科学研究科:
〒 156-8550 東京都世田谷区桜上水 3-25-40
*
**
***
─ 155 ─
Dep. Geosystem Sciences, College of Humanities and sciences, Nihon
University: 3-25-40 Sakurajyosui, Setagaya-ku, Tokyo 156-8550, Japan
Dep. Integrated Sciences in Physics and Biology, College of
Humanities and sciences, Nihon University: 3-25-40 Sakurajyosui,
Setagaya-ku, Tokyo 156-8550, Japan
Graduate School of Basic Sciences, Nihon University: 3-25-40
Sakurajyosui, Setagaya-ku, Tokyo 156-8550, Japan
(111)
竹村 貴人・中里 勝芳・田島 丈雅・高野 洋一
とを利用したものであり,夏場は地中へ熱を放出し冬場
を地中熱ヒートポンプで空調を行う際,約 1 kW の電力
は地中から熱を採取することで,熱交換を通じて対象と
でコンプレッサーを稼働する必要がある。この地中熱
なる室温を制御するものである。また,空気熱源の空調
ヒートポンプの稼働に必要な電力を,独立電源で供給す
と異なり,室外機に相当する部分が地下に埋設されるた
ることができれば,既存の送電網を使う事なく,冷暖房
め,地中熱ヒートポンプの大気への排熱はゼロであり,
を行うことができる。都市部においては,その電力供給
都市部においてはヒートアイランド現象を緩和させるた
は太陽光が適当であると考えられるが,農地など郊外に
めの具体的な解決策となる。さらに,その利点でもっと
おいては用水路などを利用した小型水力発電の利用によ
も大きなものは空調の使用電力の大幅低減であり,地中
り電力供給が可能となると考えられる。
熱ヒートポンプは従来の空気熱源の空調に比べ使用電力
本研究では,地中熱ヒートポンプと小型水力発電シス
量で約 40%の削減が可能である。ここで,空気熱と地
テムを融合させることにより,独立電源型空調システム
中熱いずれのヒートポンプシステムにおいても,主とな
の開発のための基礎的な知見を得ることを最終的な目的
る消費電力は冷媒を圧縮膨張および循環させるコンプ
とし,次の 2 つの項目について研究を行った。1)地中
レッサーの稼働電力である。従って,GSHP の稼働効率
熱を効率的に導入・利用することができる地域であるか
を決めるものとして熱交換を行う地盤の有効熱伝導率が
どうかの目安となるポテンシャル量の評価,2)地中熱
もっとも重要なパラメータとなる。地盤の有効熱伝導率
ヒートポンプを独立電源型で稼働させるための一つの方
は地盤を構成する岩相,間隙率や地下水の有無,流速な
法として小型水力発電装置による電力供給を検討するた
どがパラメータとなっており,有効熱伝導率がより高い
め揚力型流水発電装置の開発を行ったので報告する。
地盤のほうが GSHP の稼働効率が高くなる。
地中熱ヒートポンプによる空調では,冷媒を循環させ
2 .地中熱の高効率利用のための地盤条件の評価
て地下水と熱交換を行うことで,冷房・暖房を行う。そ
本研究での調査の対象地は,下末吉面の淀橋台地西端
の稼働原理は逆カルノーサイクルで熱力学の第二法則に
に位置するとされる(稲子ほか 1978, 1979)東京都世田
従う事より,冷房・暖房の対象となる空間の初期温度と
谷区の日本大学文理学部を中心とした 5km グリッドの
熱交換を行う空間(空気熱源であれば室外機,地中熱源
領域を対象とした(図 1 )。本領域での模式的な地質構成
であれば地下水)の温度差が小さいほど,少ない電力で
は浅部から盛土,関東ローム層,礫層,上総層群相当層
2
冷暖房を行うことができる。例えば,30−50m の空間
である。また,本領域の標高は T.P22 ∼ 55m である。中
36
"
"
35
"
35
139
140
1
3
4
170
171
200
図 1 平均熱伝導率の推定範囲(図中の赤枠の範囲で領域の中心部は日本大学文理学部)
(産業技術総合研究所地質調査総合センター(編),2012)
(112)
─ 156 ─
1km
地中熱利用のための地盤条件の抽出と熱及び水力による独立電源型システムの開発
心部の日本大学文理学部構内には 80m の観測井があり,
率は地盤の熱伝導率が最も重要なパラメータとなる。こ
井戸内には 12 点の水温計が設置されている。また,観
こで,熱伝導率は地盤自体の熱伝導率とし,地中熱利用
測井設置時に採取したボーリングコアより,観測井の地
を前提とした熱交換チューブを介した時の地盤の熱伝導
質構成は,盛土,関東ローム層,礫層,上総層群相当層
を有効熱伝導率とする。地盤の有効熱伝導率を求める際
であった(船引ほか,2011)
。図 2 に 2011 年 8 月から 2013
に,直接的な方法として,ボーリング孔を用いた熱応答
年 2 月までの地下温度(地盤温度と地下水温度を合わせ
試験(TRT:Thermal respons test)がある(藤井・駒庭,
た温度)の月変動を示す。地下温度の変動は表層部の盛
2011)
。実際に地中熱ヒートポンプを導入するには,事
土層およびローム層で顕著に見られるが,礫層以下では
前に TRT を行うことで,導入時の設計に必要な有効熱
外気温の影響を受けず安定して 15℃であることがわか
伝導率を測定することができる。しかしながら,TRT を
る。地中熱利用において,その効率は外気温との差が大
行うためのコストを考えると,TRT の実施は地中熱ヒー
きいほど高くなるため,安定した地下温度の深度の把握
トポンプの導入を検討する段階では現実的ではない。
は重要であり,本領域においても,同様に礫層以下では
従って,検討段階では既存のボーリングコア資料による
年間安定した地下水温であることと考えられる。
岩相区分を元に地盤の熱伝導率を推定するのが現実的で
地盤中に熱交換チューブを挿入し,チューブ内の循環
あろう。本研究では,既存のボーリング資料として東京
液と地盤(土粒子と地下水)で熱交換をすることで,
都土木研究所がまとめている東京都土木技術支援・人材
ヒートポンプの稼働を行うことを考えると,熱交換の効
育成センター(2012)によるデータを用いて平均熱伝導
0
5
10
15
20
25
30
35
0
10
2012年8月
2012年9月
20
2012年10月
2012年11月
深さ(GL-m)
30
2013年11月
2012年12月
40
2013年1月
2013年2月
50
60
70
80
90
図 2 2011 年 8 月から 2013 年 2 月までの月ごとの地下温度
─ 157 ─
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竹村 貴人・中里 勝芳・田島 丈雅・高野 洋一
それぞれの熱伝導率は Gale(2004)によるものを使っ
率(K)を以下の式から求めた。
た(表 1 )
。 図 3 にボーリング資料から推定した平均熱
K =Σ(Li × Ki)/ ΣLi
(1)
伝導率の分布を示す。平均熱伝導率の高い地域は,図 4
にある地下水面の標高分布と比較すると,地下水面の標
ここで,Li は i 番目の層の厚さを,Ki は i 番目の層の熱
高が低い地域であることがわかる。また,図 1 の地質図
伝導率である。また,本研究では,岩相を礫,砂,シル
にある後期更新世ー完新世の海成または非海成堆積岩類
ト,粘土とし,それぞれの熱伝導率を表 1 にまとめた。
に相当する谷地形の部分に沿って平均熱伝導率が高く
なっており,地形による影響がでている。これは熱伝導
表 1 平均熱伝導率の測定に用いた岩相ごとの
熱伝導率(Gala, 2004)
熱伝導率(W/(m・K))
不飽和
飽和
礫,砂
0.77
2.5
シルト
1.67
1.67
粘 土
1.11
1.67
ローム
0.91
0.91
率の値が比較的に低いロームが少ないことや,熱伝導率
の高い礫・砂層が厚く堆積しているためと考えられる。
また,図 5 には領域内の礫層の上面深度が示されてお
り,本領域での礫層は南東および北東方向の傾斜をもっ
ており,礫層中の水には水頭差が生じていることから水
の流れがあると考えられる。地下水に流速がある場合は
放熱の効果が高くなり地中熱利用の効率はさらに上がる
ため,実際には先に求めた平均熱伝導率よりも高い平均
熱伝導率が期待できる。
図 3 ボーリング資料から推定した平均熱伝導率(W/
(mK))の分布
(114)
─ 158 ─
地中熱利用のための地盤条件の抽出と熱及び水力による独立電源型システムの開発
図 4 ボーリング資料から収集した孔内水位(GL-m)の分布
図 5 ボーリング資料から収集した段丘礫上面の標高分布(T.P m)の分布
─ 159 ─
(115)
竹村 貴人・中里 勝芳・田島 丈雅・高野 洋一
業を頻繁に行う必要がある(大友,2010)。従って,さま
3 .揚力型流水発電装置の効率化
ざまな物が流下する自然環境下の流水を活用する発電で
3.1 装置概要
は,水車の効率が高いだけでは実用化が困難であり,羽
我が国には,比較的流速の早い中小河川や灌漑用水路
根に浮遊物が付着しにくい構造の水車または羽根の付着
が多く,その潜在的発電力能力は数百万 kW になると推
物を容易に除去できる機能を備えた水車を開発する必要
定されている。また,四方を海に囲まれた我が国は,海
がある。水車効率が比較的高い水車にするためには抗力
流や潮流の流水エネルギーを利用しやすい環境にあり,
を用いるよりも,揚力を主に用いる方が有利であると考
これらの莫大な流水エネルギーを発電に活用するための
えられている。プロペラ水車はすべての水車の中で最も
流水発電装置の開発は重要な課題となっている(例え
機械効率が高い揚力型水車ではあるが,上記したように
ば,NEDO, 2010)
。
浮遊物が羽根に絡まり易いという致命的な欠点を持つ。
河川,用水路,潮流や海流等の自然環境の流水をその
そこで,この研究では,水深方向に配置した複数の羽
まま用いて発電を行う場合,河川や用水路では,流体中
根が流路幅方向に設けたシャフトに沿って主に揚力によ
の草木,紐や袋等の浮遊物,海洋ではそれらに加えて長
り往復直線運動を繰り返すときの力を高い機械効率で回
い海藻が水車の羽根に徐々に付着する。特に,プロペラ
転運動に変換させて発電する装置を開発することにし
水車やダリウス水車のように羽根が流水により一定方向
た。この水力発電装置を河川や用水路に設置すると,羽
に回転するタイプの水車では,浮遊物が羽根に絡みやす
根の下端を下流方向に傾けるだけで羽根に付着したさま
く一旦付着すると除去されにくく,水車のパワー係数は
ざまな浮遊物を流水により容易に除去することが可能と
徐々に低下する。このため,羽根に付着した物の除去作
なる。図 6 は羽根 2 枚が設置されている本装置の写真で
図 6 本研究で用いた揚力型流水発電装置(田島,2013)
(116)
─ 160 ─
地中熱利用のための地盤条件の抽出と熱及び水力による独立電源型システムの開発
ある。羽根の翼型は NACA0015 であり,翼弦長 10cm,
低かった。この原因は負荷が少し大き過ぎたことによる
翼長 90cm の羽根を用いた。羽根を含めた装置の詳細に
ものと思われる。羽根 3 枚の結果を除けば,出力は羽根
ついては田島(2013)に詳しい。
の枚数にほぼ比例して増しているように見える。一方,
流水速度が 1.25m/s のときは,羽根 1 枚でも翼角の反転
3.2 回流水槽を用いた実験
ができたので,往復直線運動を繰り返すことが可能にな
本研究では,稼働時の出力データを取得するために,
り,出力 5 W が得られた。この流速では,出力は羽根の
三井造船株式会社昭島研究センターの回流水槽(五十嵐
個数にほぼ比例して増加し,羽根 5 枚のときの出力は
工業株式会社製,垂直循環型(水面加速装置付き))を用
78W となった。この発電機効率を考慮しない結果から
いた。この回流水槽は測定部の両側面と底面に観測窓
は,羽根の枚数にほぼ比例して出力は増加するように見
が設けられており,水中での羽根の運動を観察できる。
える。
発電実験は羽根を水面下に 80cm 浸し,1.0m/s または
1.25m/s の流速で行い,羽根の数を変えて発電量(出力)
3.3 発電機効率を考慮した出力
を浪越エレクトロニクス DW-777 を用いて測定した。こ
前記したように,出力は発電機効率に依存するため,
こで,測定される出力値は発電機の効率に依存するた
使用した発電機 SKY-HR250 の発電機効率を考慮したを
め,測定される出力値については注意を払わなければな
出力を算出した。表 2 は流速 1.25m/s の時の各出力が得
らない。本研究では,SKY-HR250 という 1 つの発電機
られたときの回転数を考慮した発電機効率である。実際
を用いてすべての発電実験を行っているため,個々の実
に測定された出力値をその出力が得られたときの発電効
験から得られた出力値については発電機効率を考慮する
率で割った値が図 7 の○であり,発電機効率が 1(100%)
必要がある。ここでは,実際に電力計で測定された出力
と仮定したときの出力である。実際には,発電機効率 1
値を報告し,そのあとで発電機効率を考慮した出力につ
は有り得ないので,発電機効率が 0.8 であると仮定した
いて述べることにする。
場合に,流速 1.25m/s で得られる出力は図 6 の△にな
図 7 は流水速度が 1.25m/s のときの羽根の数と得られ
る。5 枚 の 羽 根 を 用 い た と き の 出 力 は 85W,4 枚 で は
た最大出力の関係を示している。羽根が流水により往復
68W,3 枚では 57 Wになり,それぞれのエネルギー抽出
直線運動を繰り返すため,出力がかなり変動することが
率(出力 / 入力)は,0.21,0.22,0.24 となる。これらの
予想されたが,フライホイールを用いることにより比較
エネルギー抽出率はプロペラ水車の効率(0.3)
(平本,
的安定した出力が得られた。羽根が 2 枚から 5 枚までは
2000)には及ばないが,下掛け水車の効率(0.15)よりも
出力は徐々に増加したが,羽根 3 枚のときの出力はやや
高い値となった。
120
100
100%
出力(w)
80
80%
60
40
20
0
0
1
2
3
4
5
6
図 7 流速 1.25m/s の時の羽根の枚数と得られた最大出力の関係
─ 161 ─
(117)
竹村 貴人・中里 勝芳・田島 丈雅・高野 洋一
表 2 流速 1.25m/s の時の発電機回転数を考慮した発電機効率
羽根の数
(個)
流 速
(m/s)
出 力
(w)
5
1.25
78
583
73
4
1.25
60
475.2
71
3
1.25
40
537.1
56
2
1.25
23
500.7
4.おわりに
発電機回転数
(rpm)
発電機効率
(%)
サー稼働用電力として利用できる。しかしながら,羽根
本研究では,地中熱ヒートポンプと小型水力発電シス
にかかる抵抗による部材の曲げなどを考えると,面積を
テムを融合させることにより,独立電源型空調システム
増大させた時の羽根の素材の強度を設計に十分に考慮す
を開発することを最終目標に設定し,そのための設置条
る必要がある。そのための評価手法の一つとして本研究
件と小型水力発電装置の効率化に関する評価手法の開発
を行った粒子法による流体シミュレーションは,剛体に
を行った。その結果,地中熱ヒートポンプの設置の導入
かかる力の計算を加えて行うことで,小型水力発電装置
時に判断するためには,既存のボーリング資料を活用す
の設計に十分,寄与できるものになると考えられる。
ることで,検討することができることを示した。また,小
型水力発電装置に関しては,羽根の枚数により出力を増
やすことができることが実証された。さらに,本研究で
得られた結果から,羽根の面積を 4 倍にし,流速 2 m/s
の用水路に設置することで,1 kW を超える出力が得ら
れると考えられる。従って,この電力は 30−50m2 の空
間を地中熱ヒートポンプで空調を行う際のコンプレッ
謝辞
本研究は,平成 23,24 年度の日本大学文理学部自然科学研
究所総合研究費課題「地中熱と水力による独立電源型空調シ
ステムの開発とその最適設置地点の探索に関する基礎研究」
により行われたものの一部をとりまとめたものである。共同
研究者である地理学科の関根智子教授と羽田麻美助教および
本学工学部機械工学科の船引彩子博士には地理情報の扱い方
教えて頂きました。ここに記して,感謝いたします。
引用文献
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(Web 版),http://doboku.metro.tokyo.jp/start/03-jyouhou/
geo-web/00-index.html
田島 丈雅(2013)翼への付着物を容易に除去できる新規揚
力型流水発電装置の開発,日本大学大学院総合基礎科学
研究科相関理化学専攻 修士論文.
─ 162 ─