保険募集の弊害防止措置の見直し

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保険募集の弊害防止措置の見直し
2012 年 8 月掲載
平成 23 年 7 月 8 日に「保険業法施行規則」、「保険会社向けの総合的な監督指針」「主要行等向け
の総合的な監督指針」等の改正案がパブリックコメントに付され、平成 24 年 4 月 1 日から施行又は適
用されている。
●規制等の概要
①
非公開情報の保護措置(規則 212 条 2 項 1 号、212 条の 2 第 2 項 1 号)
銀行等は、その銀行業務において取り扱う顧客の非公開金融情報(顧客の預金、為替取引、資金の
借入に関する情報や資産に関する情報)が、事前の書面等による同意を得ることなく、保険募集に利
用されることを防止する措置を講じなければならない。また、保険募集業務において取り扱う非公開
保険情報(家族構成や交友関係、親子・婚姻関係、保険契約の有無・内容等)が、事前の書面等によ
る同意を得ることなく、銀行業務に利用されることを防止する措置を講じなければならない。
今回の改正により、非公開金融情報を保険募集業務へ利用する際に事前同意を取得する際には、当
該同意の有効期間及びその撤回の方法等を顧客に具体的に明示しなければならないこととなった。
②
保険募集指針の策定、公表および実施(規則 212 条 2 項 2 号、212 条の 2 第 2 項 2 号)
銀行等は、保険募集に係る保険契約の引受けを行う保険会社の商号または名称の明示、保険契約の
締結にあたり顧客が自主的に判断を行うために必要と認められる情報の提供その他の事項に関する指
針を定め、公表し、その実施のために必要な措置を講じなければならない。
③
法令等遵守責任者・統括責任者の配置(規則 212 条 2 項 3 号、212 条の 2 第 2 項 3 号)
銀行等は、保険募集に係る法令等の遵守を確保する業務に係る責任者を各営業所・事務所に配置し、
さらに、その責任者を指揮し、法令等の遵守を確保する業務を統括する統括責任者を、本店・主たる
事務所に配置しなければならない。
④
優越的地位の不当利用の禁止(規則 234 条 1 項 7 号)
銀行等は、その信用供与の条件として保険募集をするなど、その取引上の優越的地位を不当に利用
して保険募集をしてはならない。
なお、保険業法上の規制ではないが、取引上の地位が相手方に優越していることを利用して保険募
集を行った場合には、優越的地位の濫用として、独占禁止法に基づく課徴金納付命令を受けるおそれ
もある(優越的地位の濫用・独占禁止法 19 条・2 条 9 項 5 号)。
⑤
他の取引への影響の説明(規則 234 条 1 項 8 号)
銀行等は、保険募集を行うに際して、顧客に対し、あらかじめ、保険契約の締結等が当該銀行の顧
客に対する業務に影響を与えない旨を説明した書面を交付しなければならない。
今回の改正により、この規制に加え、住宅ローンの申込みを受け付けている顧客に対して、住宅関
連火災保険等の契約の締結が当該住宅ローンの貸付けの条件ではない旨の説明を書面の交付により行
うこととされた。
⑥
預金との誤認防止(銀行法施行規則 13 条の 5 第 1 項)
銀行等は、保険会社が保険者となる保険契約を取り扱う場合には、業務の方法に応じて、顧客の知
識、経験、財産状況および取引の目的をふまえ、顧客に対し、書面の交付等により、預金との誤認を
防止するための説明を行わなければならない。
今回の改正により、顧客が当該説明内容を理解したことについて、書面を用いて確認しなければな
らないこととなった(主要行等向けの総合的な監督指針Ⅲ-3-3-2-2(4)、中小・地域金融機関向けの総
合的な監督指針Ⅱ-3-2-5-2(4))。
以上の規制に加え、銀行の融資先に対する規制として、以下のものがある。
●融資先への保険募集に関する規制のポイント
(1)事業資金融資先に対する銀行窓販の禁止(規則 212 条 3 項 1 号、212 条の 2 第 3 項 1 号)
銀行等は、原則として、法人の事業に必要な資金の貸付けを行っている場合の当該法人などを保険
契約者・被保険者とする保険契約の締結の代理・媒介により、手数料その他の報酬を得ることを行っ
てはならず、それを確保するための措置を講じなければならない。
ただし、今回の改正により、以下の商品については適用除外となり、これらの保険商品の販売が可
能となった。
①
一時払い終身保険
②
一時払い養老保険
③
積立傷害保険
④
積立火災保険
⑤
事業関連保険(銀行等のグループ会社を保険契約者とするものに限る)
(2)タイミング規制(規則 234 条 1 項 10 号)
銀行等は、その役員または使用人が、顧客が当該銀行に対して融資の申し込みを行っていることを
知りながら、当該顧客またはその密接関係者に対し、保険契約の締結の代理または媒介を行ってはな
らない。
これまで、当該規制は、融資の内容を問わずに禁止されていたが、今回の改正により、非事業性資
金の融資申込者に対する保険募集は規制の対象外となった。
パブリックコメントによれば、アパートローン(住宅以外の賃貸用のマンションやアパート、賃貸
用の店舗、事務所等の不動産に対するローン)については、当該ローンで取得した不動産において、
賃貸を業として行われているのであれば、事業性資金と認定するとのことであり、注意が必要である。
また、一階部分を店舗、二階以上を住居とするような併用住宅であっても、一部でも事業に必要な貸
付けが含まれていれば、事業性資金の融資として、タイミング規制の対象になるとしている。
(3)担当者の分離規制(規則 212 条 3 項 3 号、212 条の 2 第 3 項 3 号)
銀行等は、原則として、その使用人のうち、事業資金の融資に関して顧客と応接する業務を担当す
る者が保険募集を行わないことを確保するための措置を講じなければならない。
なお、この規制には、地域金融機関についての特例が定められており、当該特例を選択した場合、
代替措置を講じれば担当者の分離措置までは要求されていない。一方で、担当者分離の措置を講じて
いるか代替措置を講じているかを問わず、特例を選択した場合には、融資先の従業員数にかかわらず、
保険契約者1人当たりの保険金その他の給付金の額の合計額が制限されていた(小口規制。規則 212
条 4 項、212 条の 2 第 4 項)。
今回の改正により、このうち、地域金融機関の特例を選択した場合であっても担当者分離の措置を
講じている場合には、従業員数 50 人超の融資先に対しては、小口規制は適用されないこととなった。